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保険法・第9回 生命保険契約の関係者 保険事故 保険期間 保険金額
生命保険契約の関係者 保険法・第9回 • Aが、B保険会社と、Cが死亡したときに、Dに対して 保険金が支払われる生命保険契約を締結した。2条 の定義規定確認。 – – – – 保険契約者・・・A。契約当事者。 保険者・・・B。契約当事者。 被保険者・・・C。 保険金受取人・・・D。受益者。 • 自己のためにする保険契約と他人のためにする保 険契約、自己の生命の保険契約と他人の生命の保 険契約・・・教科書 保険事故 • 生命保険契約における保険事故は、被保険者の一 定時点における生存または死亡 – 生存:生存保険 – 死亡:死亡保険(いわゆる生命保険で意識するもの) • 生存・死亡の態様に条件がついていない – 傷害保険や疾病保険との違い • 終身保険はいつ死亡しても保険事故発生、定期保 険は一定期間内の死亡が保険事故 保険期間 • 保険事故の発生が保険期間内であることが 必要 • 定期保険では、一定の期間が設定されてい るが、終身保険では被保険者の死亡まで → 被保険者が死亡するかどうかではなく、 いつ死亡するかが問題となる – たとえば、子供が成人するまでは得られる保険金を増や すような場合(成人すれば経済的需要は低下する) 保険金額 保険料 • 保険事故が発生した場合に、保険者が保険金受取 人に対して支払う義務を負う金額。 • 生命保険は定額保険である=損害填補ではない= 具体的に発生した損害(経済的損害)とは無関係に、 あらかじめ約定した金額を払う • 保険契約において、保険契約者が保険者に 対して支払う対価 • 契約で定められる • 損害保険と異なり、毎月払いのような形が多 い – 経済的需要の算定困難の故の定額保険方式 • 被保険利益・保険価額を観念できない(例:年収50 万円の人間でも1億円の生命保険契約を締結でき る)し、損害保険の種々のルールのうち適用されな いものも多い – 保険の種類による。貯蓄性の高いものには一時 払いも。 1 生命保険商品の特徴 生命保険商品の特徴 • 生命保険会社と契約を締結する場合、死亡保険だ けを購入することは稀で、様々な特約を付加して購 入する。 • この場合、生命保険契約の本体部分(主契約)は生 命保険であっても、特約部分は、傷害保険や疾病 保険の性質を帯びることになる。 • 契約を締結する段階で、主契約の保険金額を決め て終わり、ではなく、どのようなニーズがあるかに よって特約を追加していく – 自動車保険で責任保険のみならず損害保険・傷害保険 がセットになっていたり、火災保険で責任保険と損害保険 のセットに費用保険がついていたりするのと同様に複雑 – 商品の複雑さの原因 自己のためにする生命保険契約と第 三者のためにする生命保険契約 • 自己のためにする生命保険契約 – 保険契約者と保険金受取人が同一人 – 経済的需要が高まる一定期間のみ死亡保険金が支払わ れる(定期保険/生命保険の一種) – 怪我や病気に対しても備える – 癌が発見された場合に、被保険者が生きるための保険給 付をつける(リビング・ニーズ特約) • 傷害保険契約は、生保も損保も扱うことができるが、 生保では主契約に付帯する形をとるのに対し、損保 では単独商品となっていることが多い。ただ、性質 決定は、契約形態によらず、その内容による。 自己の生命の保険契約と 他人の生命の保険契約 • 自己の生命の保険契約 – 保険契約者と被保険者が同一人物 • 他人の生命の保険契約 • 第三者のためにする生命保険契約 – 保険契約者と保険金受取人が別人 – 保険契約者と被保険者が別人物 – 他人に生命保険をかける、ということ – 死亡が保険事故なら、被保険者の同意が必要 (38条)。同意なければ契約は無効。 • 人格権侵害防止 • 悪用(一番極端なのが保険金殺人)の防止 被保険者の同意 • 他人の生命の保険契約 – 契約締結時点(38条) – 保険金受取人による保険金請求権譲渡/質権設定時点 (47条) – 保険金受取人の変更(45条)。 • 自己の生命の保険契約 – 保険金受取人による保険金請求権譲渡/質権設定時点 (47条) 被保険者の同意が不要な場合 • 生存保険の場合 • 難しい問題・・・未成年者を被保険者とする場 合、同意をすることになる親権者と被保険者 との間に利益相反がある。 → コラム28 • 傷害保険の難問・・・347頁以下 • 契約を締結するときと同様、権利の譲受人や質権 者が故殺する危険がある=権利者の変更時に同意 が必要となっている。 2 被保険者の同意(続) • 同意の方式 – 法は特定の方式を要求していないが、同意の存 在を明確にするため、実務上は、書面による同意 (被保険者の署名又は記名捺印)を要求。 – 受取人の変更に対しても面接or書面で確認。 – 同意の時期は法定されない(通常は契約締結 前) – 生命保険会社は、モラル・リスク対策のため、同 意については慎重な実務である。 団体保険と被保険者同意 • 団体保険契約とは、保険契約者が団体(法人など)となり、そ の構成員を被保険者とする契約である。 – 他人の生命の保険契約=同意が必要 – 団体構成員の同意の有無の問題(確実さ・迅速さ)→ 金融庁の監督 指針でも確認要求。 • なぜ法人が団体保険を締結するか? – 被保険者の遺族に対して、退職金や死亡弔慰金を支払うため → 全額が遺族に行かない場合の問題 – 従業員の死亡で会社が儲けているという批判→受取人が会社の場 合、遺族が直接保険者に請求? – 代替的な人間の採用・教育等の費用の確保(生命保険の形をとって いるが、一種の費用保険としての性質) • 遺族と会社の対立・・・[百選55] 被保険者同意の法的性質 • 法律行為ではなく準法律行為である • 保険者または保険契約者を相手方とする単独行為 である • 同意の撤回の可否:保険法制定時に争われた – 故殺されそう→同意撤回・・・できる? – 保険者が保険契約者・被保険者間の事情を判断出来な いし、撤回を認めると法律行為が不安定になる – 一度同意すると撤回できないが、被保険者に解除請求権 を与えた(58条)。 生命保険契約の種類 • • • • 保険事故による分類 保険期間による分類 保険金支払い方法による分類 被保険者数による分類 → 教科書を見ながらポイントだけ説明 • 「殺されそう!同意を撤回して保険金が渡らないようにしよう」で はなく、「殺されそう、保険者に契約を解除してもらおう」 生命保険契約の成立 • 募集 • 申込み – 保険契約者・被保険者による告知、場合によって は医師の診査 – 被保険者同意 – 第一回保険料の支払 • 承諾 – 責任の開始、遡及 生命保険契約の募集 • 生命保険募集人が勧誘し、加入することが多い – ダイレクトのシェアはまだまだ低い • 生命保険の募集人と損害保険の募集人の違い – 損保は、代理店が中心 • 代理権を与えていることが多い – 生保は、従業員が中心 • 健康状態の判断が必要なため、契約締結や告知受領の代理権 は与えていないことが多い(=媒介権限のみ)。保険料の受領権 限は与えていることが通例。 • 保険会社の人であるにもかかわらず、代理権がないので、募集 人に健康状態の問題を伝えたにもかかわらず、保険者から告知 義務違反解除がされる、というような紛争が多い 3 参考:媒介 保険仲立人による媒介 保険契約 保険契約 加入者 (将来の契約者) 保険者 (保険会社) 加入者 (将来の契約者) 尽力 (事実行為) 尽力 (事実行為) 契約締結の諾否・条件の 判断をするのは、募集人 ではなく保険会社である。 募集人に告知受領権なし (診査医にはあり) 募集人(使用人) 委託者 (保険者) 雇用契約により、 保険者は使用人に、 保険募集における媒介 権限・保険料受領権 を与えている。 委託 (仲立契約) 性質は準委任 保険仲立人 (独立の商人 中立的立場) 仲立人は、前スライドの募集 人と同じ媒介を行っているが 立場が契約者・保険者から 中立であり、加入者の需要に 適合する保険を媒介する 契約成立過程 契約の成立と責任の開始 • 加入者が書面で募集人に保険契約申込書に記入し て交付する。(申込み) • 契約成立は保険者の承諾時 • 申込みや告知の時点と承諾の時点がずれることで、いくつか の法的問題が生じる – 諾成契約だが、紛争防止のため書面でなされるのが通常 – 第1回保険料相当額も支払われる – 告知(保険者の質問に対し書面で回答) – 診査(告知書で問題なければ告知書扱いで契約するが、 医師の診査が必要と判断されれば、診査医扱いとなる) →保険会社の医師が判断 – 被保険者の同意 • 保険者による承諾の意思表示(保険証券の交付) – 例1:10月1日に申込み、保険料も交付。8日に承諾。10月4日に被保 険者が死亡していた。 • 契約は10月8日に成立するが、保険者の責任は10月1日から発生(責任 開始条項・責任遡及条項) → 生命保険金は支払われる – 例2:10月1日に申込み、8日に承諾。保険料は10月15日に支払。10 月12日に被保険者が死亡していた。 • 契約は10月8日に成立するが、保険者の責任は10月15日から発生(責 任開始条項) → 生命保険金は支払われない – 保険料が支払われた時点から責任が開始することで、保険料を支 払った保険契約者の期待を保護するとともに、保険料の前払いを確 保し、確実に保険料を超注する。 承諾前死亡 • 責任遡及条項は契約成立が前提 • 保険契約の申込み後、保険者が被保険者の 死亡を知った場合に、契約締結を拒否するこ とが認められるか(告知から契約締結できる 状態であったことが前提)? – 保険者の承諾義務の問題 • 信義則上、保険者は承諾義務を負う? • 保険料を受け取っている場合、保険適格性を有してい れば引き受ける趣旨? • [百選53] 4