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A-a1. A-a2. 1 - Kanazawa University, Institute for Theoretical Physics

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A-a1. A-a2. 1 - Kanazawa University, Institute for Theoretical Physics
A-a1.
アドバンスト・ブラッグ共鳴器による大強度ミリ波光源の開発
金沢大自然, ロシア科学アカデミー応用物理学研究所a)
鎌田啓一,相澤公佑,
河村実希子,傍島望,小田原周平,中川拓,Naum S. Ginzburg a)
Intense sub-millimeter wave source using advanced Bragg resonator
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa Univ., Institute of Applied Physics, RAS a)
K. Kamada, K. Aizawa, M. Kawamura, N. Sobajima, S. Odawara, T. Nakagawa, N. S. Ginzburg a)
ここで取り上げる大強度ミリ波光源とは,出力が MW 級より大きいものを指す。現在までにジャ
イロトロン等で約 200 GHz,1 MW 級のものまでは実用段階まで開発が進んでいるが,更に大強度の
GW 級の電磁波源は開発段階にある。小型で簡便な GW 超級のエネルギー源として,大強度相対論的
電子ビーム(以下 IREB)を用いる。しかし,IREB は,電極部プラズマの影響を回避できず,良質(エ
ネルギー幅が狭く,電流の時間的変化が少ない)な電子ビームを得る事は難しい。また,自らの空
間電荷により,ビーム断面方向に電位差を生じ,ビームにエネルギー幅を生じることは避けがたい。
こうした IREB を電磁波源に利用するには,電磁波発生機構がビームエネルギーに余り敏感でない
も の を 適 用 す る 必 要 が あ る 。 IREB を 用 い た 自 由 電 子 メ ー ザ ー (FEM) や CARM(cyclotron
auto-resonance maser)では,レーザーにおける鏡の様に発振部の片端または両端に Bragg 共鳴器
を用いてフィードバックをかけ発生周波数を制限している。新たに提案されたアドバンスト Bragg
共鳴器では,遮断周波数に近い先進波と IREB の相互作用を強める構造を持つのが特徴である。こ
の結果,IREB のようにビームエネルギーに幅を持つ場合でも,発生電磁波の周波数モード選択度が
高まる事が期待できる。金沢大学では,この方式の提案者である Ginzburg 氏と共同で,既存の IREB
発生装置を用いた原理検証実験を推進している。
A-a2.
ヘリカル・ウィーグラーの設計
金沢大自然
河村実希子、鎌田啓一、小田原周平、傍島望、中川拓
Design of Helical Wiggler coil for Advanced Bragg Resonator
Kanazawa Univ.
M. Kawamura, K. Kamada, S. Odawara, N. Sobajima, T. Nakagawa
現在我々は IREB(Intense Relativistic Electron Beam)を用いた研究を行っている。その応用とし
てアドバンスト・ブラッグ共鳴器を用いた高周波の大強度ミリ波光源の開発を目指している。現在予想
される FEM(Free Electron Maser)に用いる装置はヘリカル・ウィーグラーである。そこでヘリカル・
ウィーグラーの設計を行っている。
ヘリカル・ウィーグラー磁場は二重らせんコイルを用い、2 つのコイルに逆向きの電流を流すことで
発生できる。これによりできた磁場には次のような特徴がある。中心軸上では軸方向の磁場をもたず、
径方向の磁場のみをもつ。そして、軸方向に進むにつれ
て、軸に沿ってらせん状に磁場の向きが回転する。
現段階で考えられているパラメータは、コイル径 3 cm、
コイルピッチ幅 3~5 cm、電流 5~10 kA、中心磁場 0.1 T
である。これらのコイルと電源を含めて現在設計を進め
ている。講演では詳細を報告する。
図:ヘリカル・ウィーグラー磁場発生コイル
1
A-a3.
新型発振管を用いた電磁波出力向上の試み
金沢大自然
相澤公佑,栗原智章, 大林雅俊, 安藤利得, 鎌田啓一
Increase of Output Power of superradiance using a new waveguide.
Kanazawa univ.
K. Aizawa, T. Kurihara, M. Ohbayashi, R. Ando, K. Kamada
当研究室では大強度相対論的電子ビーム(IREB)を用い、後進波管からの短パルス高出力電磁波放射を目指
している。これまでにエネルギー 550 keV、電流約 4.5 kA、パルス幅 14 nsの電子ビームから、発振周波
数 5 GHz、出力約 300 MW、パルス幅約 5 ns、TM01モードのマイクロ波放射を確認している。
シミュレーションの結果から、現在使用している電子ビ
ームのパラメータが、この後進波管に対して最適でないこ
とがわかっている。そこで更なる高出力化のため、現在の
電子ビームに対して最も効率がよくなるような発振管を設
計、製作した。
電子ビームと発振管壁との距離は、近づくほどその相互
作用が強まる。したがって電磁波放射実験を行う際に、以
前よりも大きな径の発振管に合った電子ビームを作り出す
必要があった。我々はこの条件を満たす均一なビームの生
成に成功し、これを用いて電磁波放射実験を行った。そし
て、放射を確認することができた。実験は始まったばかり
である。ビームのアラインメントや工夫によって、GW 級の
図 1:Slow Wave Structure
電磁波発振の可能性がある。詳細を講演で報告する。
A-a4.
ギガワット級の大強度単パルスマイクロ波をつかってできる物理現象
金沢大自然
安藤利得、栗原智章、大林雅俊、相澤公佑
Applications of Giga Watt Class High Power Pulse Microwave .
Kanazawa Univ., Graduate School of Natural Science and Technology.
R. Ando, T. Kurihara, M. Ohbayashi, K. Aizawa,
マイクロ波が開発されて久しいが、これまでに無かったような応用が近年いろいろな方面でなされている。
特にマイクロ波を用いたある化学反応においては反応時間を非常に短くできたり、触媒が不必要になったり、
これまでに無い新しい材料の開発ができることがわかってきている。これらはマイクロ波の新しい可能性を
示すものである。これらはすべて定常もしくはパルス幅が長い繰り返しパルスのマイクロ波を使うことによ
ってなされている。
ところで我々は大強度のマイクロ波を作ることに成功しており、マイクロ波の出力は 300 メガワットに
達する。瞬間の電力は非常に大きい。このマイクロ波はこれまでのところあまり応用例がない。このマイク
ロ波を何かに有効に利用できないかと考えている。
その一つの目標として我々は自由空間でマイクロ波を集光することによって自由にプラズマ生成すること
とを試す。これは将来の核融合装置への応用が考えられる。また、物質の表面にマイクロ波を当てることに
よって、表面の物質を昇華させるアブレーションを行なう。レーザーではデブリなどが発生するなどの短所
があるが、マイクロ波を使ってこれらを克服できないか調べたい。またパルス幅は非常に短く 5×10^{−9}
秒である。1つのパルスのエネルギーは 1 ジュール程度と小さいのが特徴である。その他の応用として、ジ
ュール数が小さいことから、被測定物に大きな温度上昇を伴わずに、物質のマイクロ波に対する物性の応答
が単パルスで測定できるのではないかと考えている。
2
A-a5.
大強度短パルスマイクロ波によるプラズマ生成の試み
金沢大自然
大林 雅俊,栗原 智章,相沢 公佑,安藤 利得
A trial of plasma production by high power short pulse microwave.
Kanazawa univ.
M. Ohbayashi , T. Kurihara, K. Aizawa, R. Ando
当研究室では、大強度短パルスマイクロ波発振器の開発を行っている。現在TM01モード、周波数 5 GHz、パルス幅 5 ns、
出力約 300 MWのマイクロ波発振を達成している(1)。本研究は、TM01モードを指向性の高い直線偏光ビームへ変換し、
さらにミラーで集光することによってアブレーション技術等へ応用することを目的としている。モードの変換にはブラソ
フアンテナを用いる(図1)。現在までに、変換効率約 45%、最大電力密度 47 kW/cm2を得ている(図2)。
今回、ブラソフアンテナで得られた直線偏光ビームをブラソフアンテナの直後に設置した真空容器に当てることで沿
面放電現象を確認したので、そのことに関して報告する。
図1: 準光学アンテナ
図2: 検波による強度分布
(1) K. Kamada, T. Nishiguchi, N. Tomisawa, R. Ando and N. S. Ginzburg : “S-band Superradiance in
Corrugated Waveguide”, Proc. 15th Int. Conf. High-Power Particles Beams, (St. Petersburg,
2004), 3036(cd).
A-a6.
トムソンパラボラエネルギー分析器による高強度パルス重イオンビームの特性評価
海老江武・三宅秀典・北村岩雄・伊藤弘昭・升方勝己( 富山大学工 )
Evaluation of an intense pulsed heavy ion beam by Thomson par abola ener gy spectrometer
T Ebie, H Miyake, I Kitamur a, H Ito, K Masugata ( Univ of Toyama )
生成されたイオンビームの電流密度波形 (Ji ) を示す。現在はパル
スイオン加速器に同軸型マルクス発生器を組み込み、定格出力 200
J i ( A/cm2 )
高強度パルス重イオンビーム ( PHIB ) は、イオン注入と同時に材
料表面を高温に加熱することができ、SiC 等の高融点材料への新し
いイオン注入法として期待されている。本研究では、高純度の PHIB
発生を目指して、ガスパフプラズマガンをイオン源としたイオンの
加速実験を行っている。図 1 に本研究で用いたイオンダイオードで
60
50
40
30
20
10
0
-10
Ji
0
100
200
t ( ns )
300
400
kV、15 kA、100 ns のパルス電源を使用して、陽極から 55 mm 下流
でイオン電流密度 54 A/cm2 のイオンビームが得られている。
今回は PHIB のエネルギーや純度を評価するために、トムソンパ
ラボラエネルギー分析器 ( TPES ) を製作して、固体飛跡検出器
( CR-39 ) に対するイオンビームの照射実験を行ったので報告する。
図 2 に実験配置図を示す。イオンダイオードのアノード表面から
50 mm 下流に TPES が配置されている。TPES 内に電界と磁界を発生
させ、イオンが通過すると電界と磁界による偏向を受け、TPES 内に
設置された CR-39 上にイオン種とエネルギーに応じたトラックパタ
ーンが出現する。このトラックパターンを解析することによってビ
ームに含まれるイオン種とエネルギーを特定することができる。
講演では、TPES による実験結果及び特性評価を報告する。
3
図 1.イオン電流波形
Cathode
Thomson Par abola
Ener gy Spectr ometer
Anode
N
S
Magnetic deflector
10mm
CR-39
Electr ic deflector
50mm
図 2.実験配置図
A-a7.
プラズマフォーカスから発生する中性子の評価
水野 俊哉、中田 洋平、H.R.Yousefi、北村岩雄、伊藤弘昭、升方 勝己(富山大学)
Evaluation of neutron produced by Plasma Focus Device
T.Mizuno, Y.Nakata, H.R.Yousefi, I.Kitamura, H.Ito, K.Masugata (Univ. of Toyama)
Ich ( kA )
Vsci ( V )
プラズマフォーカスは、DD 反応によって中性子を発生させることがでることから、パルス中性子源とし
ての応用が期待されている。そのためには中性子の方向性、強度、発生量の評価を行うことは必要である。
本研究では,今までシンチレーションプローブによる中性子の強度の計測してきた。本研究では定量的に中性
子を評価するために銀励起型アクティベーションカウンターを使用して測定を行い、シンチレーションプロ
ーブとの相関関係を報告する。
本実験では駆動電源に 44.8 F のコンデンサバンク、
600
メーザー型 PF 電極を使用した。アノードは長さ 242
-15
mm、
直径 50 mm、
カソードは長さ 230 mm、
直径 100 mm
とし、材質は共に銅である。実験時の充電電圧は 30 kV
I ch
400
として、チャンバー内を2.0 x 10-2 Pa まで排気した後
-10
に重水素を封入して実験を行った。今回はシンチレー
200
ションプローブを軸方向 10 m、銀励起型アクティベー
-5
ションカウンターを軸方向 2 m に配置した。
Vsci1
図は中性子出力波形を示したものである。Ich は放電
0
0
電流波形、
Vsci はシンチレーションプローブの出力波形
0
1
2
3
4
である。Vsci は Ich がディップし時に急激に立ち上がっ
time ( s )
ており、440 ns 後に再び立ち上がっている。最初のピ
図: 中性子出力波形
ークは硬 X 線で、2 つ目のピークは中性子である。
詳細は講演にて報告する。
A-a8.
パルス磁場を用いたテラヘルツ・ジャイロトロンの開発
福井大学遠赤外領域開発センター
森 秀明, 土屋博崇, La Agusu, 印牧知廣,
光藤誠太郎, 小川 勇, 斉藤輝雄, 出原敏孝
Development of a tera hertz gyrotron using a high-field pulse magnet
FIR Center ,University of Fukui H. Mori, H. Tsuchiya, La Agusu, T. Kanemaki, S. Mitsudo, I. Ogawa, T. Saito and T. Idehara
福井大学ではパルスマグネットを用いたテラヘルツ・ジャイロトロンの開発を進めている。前回の千葉秋
季大会 1)では,主磁場強度 19 T 超において,二次高調波で 1 THz の発振に成功したことを報告した。その後,
発振モードの同定を進めている。図 1 に,カットオフ周波数
586 GHz のハイパスフィルタを用いて2次高調波での発振
High Pass Filter φ 0.3
を測定した結果を示す。主磁場強度 19 T 以下の広い磁場範
8 f
= 586 GHz
囲において発振を確認している。
6
しかし発振実験では,主磁場強度の値はパルスマグネッ
トに流れる電流から求めたものであり,発振周波数の値に
4
曖昧さが残る。そこで発振周波数の直接測定を行うため,長
パルス発振の実現とその条件探索を行った。また,それと並
2
行して,キャビティの形状から発振モードスペクトルを計
0
算し,実験結果との比較を行っている。それから図の各磁場
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
における発振のモードの同定が可能である。講演ではこれら
B (T)
の結果を報告する。
図 1: ハイパスフィルタを用いた実験結果
1) 日本物理学会 2006 千葉秋季大会 26aQA-5
P (a.u)
cut off
4
A-a9.
Optimum Design of a 1 THz CW Gyrotron (Gyrotron FU CW III)
Using a 20 T Superconducting Magnet
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
3-9-1 Bunkyo, Fukui 910-0027
La Agusu, H. Mori, S. Mitsudo, I. Ogawa, T. Saito, and T. Idehara
Development of the THz sources with high output power are the
important task for the applications in the THz technology and
spectroscopy. In gyrotron with the pulse operation, the frequency of 1
THz has been observed experimentally in the Research Center for
Development of Far-Infrared Region (FIR Center FU) [1]. The continuous
wave operation is necessary for the convenience of applications. In this
report, we optimize the design of the gyrotron tube in order to achieve
high output power at 1 THz of frequency with the maximum magnetic
field of 20 T. The cavity would be optimized to solve mode competition
problem. Another, important mechanism could decrease the efficiency of
gyrotron is mode conversion at the tapering part of tube. Mode
conversion will be minimized in this design.
[1] Idehara et al., Int. J. Infrared and Millimeter Waves, 27, 3 (2006).
A-a10.
高出力 Large Orbit Gyrotron の開発 3
福井大学遠赤外領域開発研究センター,
日本原子力開発研究機構, B ニージニーノブゴロド州立大学,
C
長岡技術科学大学極限エネルギー密度工学研究センター
林 俊明,鎌田正輝 A,La Agusu,小川 勇,V. N. Manuilov B,斉藤輝雄,出原敏孝,
橋本宏一郎 C,伊藤弘平 C,大門正樹 C,江 偉華 C,八井 浄 C
A
Development of High Power Large Orbit Gyrotron 3
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
A
Japan Atomic Energy Agency
B
Radiophysical Department of Nizhny Novgorod State University
C
Extreme Energy-Density Research Institute, Nagaoka University of Technology
T. Hayashi, M. Kamada A, La Agusu, I. Ogawa, V. N. Manuilov B, T. Saito, T. Idehara,
K. Hashimoto C, K. Ito C, M. Daimon C, W. Jiang C, and K.Yatsui C
Large Orbit Gyrotron (LOG) はモード選択性が高く,安定した高次高調波動作が可能であり,サブミリ波領域の高
出力電磁波源として期待できる。LOG は,空洞共振器軸を旋回中心とする大旋回半径電子ビームを用いる。そこで,
大強度パルスパワー発生装置 ETIGO-IV を用いて,LOG の開発を行っている。ETIGO-IV の出力特性は,電圧 400
kV,電流 13 kA,パルス幅 120 ns である。ETIGO-IV によって発生される高エネルギーの電子ビームは、ラーマ半
径が大きくなるため,LOG の入射電子ビームとして適している。
現在、検波器を用いて、基本波動作での発振波形の測定を行っている。得られた発振波形と,電子加速電圧及び
外部印加磁場の値を用いて,発振のサイクロトロン周波数を評価した。さらに、ハイパスフィルターを用いて、発振周
波数領域を決定した。
5
A-a11.
PFN を用いた短パルス高出力高周波ジャイロトロンの開発
福井大学遠赤外領域開発研究センター,
A
日本原子力開発研究機構
A
林 俊明,鎌田正輝 ,La Agusu,小川 勇,斉藤輝雄,出原敏孝
Development of a high power and high frequency gyrotron using a PFN
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
A
Japan Atomic Energy Agency
T. Hayashi, M. Kamada A, La Agusu, I. Ogawa, T. Saito, T. Idehara,
Voltage (kV)
サブミリ波領域の高出力電磁波源として,短パルスの高出力電子ビームを用いた高周波ジャイロトロンの開発を
行っている。高出力電子ビーム発生のため,電子銃用電源として,パルスフォーミングネットワーク(PFN)を設計・製
作した。PFN は,出力電圧 40 kV から 100 kV で動作し,パルス幅 1.2 μs である。図1に出力波形の例を示す。
現在,第一段階として,この PFN を電源とし,既存の電子銃と超伝導マグネット(8 T)を用いたジャイロトロンの開発
を行っている。既存の電子銃は,最大ビーム電流が 1 A 程度である。そこで,製作した PFN を電源として用いるため,
電子銃と並列に,ダミー抵抗を接続することを考えてい
る。設計中のジャイロトロンは,基本波動作で,発振モー
0
ド TE03,発振周波数 202 GHz,加速電圧 40 kV で,ビー
ム電流 1 A の時,出力約 15 kW が期待できる。
-50
VC =60 kV
次の段階では,より高出力を得るため,最大電流の
-100
大きい電子銃が求められる。現在,新しい電子銃の設
0
1
2
3
4
Time (µ s)
計も進めている。
講演では,PFN の出力特性と,ジャイロトロンの設計
図 1 PFN の出力電圧波形の例
について述べる。
6
A-p1.
Design of a 100 kW Short Pulse Submillimeter Wave Gyrotron
for Plasma Diagnostics
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
3-9-1 Bunkyo, Fukui 910-0027
1
Radiophysical Department of Nizhny, Novgorod State University,
650005, Gagarin av., 23, Nizhny Novgorod, Russia
La Agusu, T. Hayashi, T. Kanemaki, S. Mitsudo, T. Saito, T. Idehara, and V. N. Manuilov 1
Availability of the high power source (higher than 100 kW) at the submillimeter
wave regime is very important for application in the plasma diagnostic
experiment or plasma scattering measurement. A gyrotron with 100 kW-class
power at submillimeter wavelength is under development at the Research Center
for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui (FIR Center FU).
It will use the power supply based on the pulse forming network (PFN)
principles which has been constructed and operated at the FIR Center. It has
produced 70 kV, 1.2 microsecond flat pulse. The preliminary estimation shows
that for the second harmonic operation the gyrotron could achieved 100 kW
power level at the wavelength of 0.76 mm using 18 A, 70 kV beam power. The
magnetron injection type electron gun has been designed (Fig. 1). The first trial
candidate of operating cavity mode is TE6,5. The complete design and simulation
results will be presented.
Fig. 1 Electron gun design
A-p2.
赤外線カメラ
赤外線カメラを
カメラを用いた FU CWI の放射ビーム
放射ビームの
ビームの測定
福井大学遠赤外領域開発研究センター
福井大学遠赤外領域開発研究センター
中野智彰、
中野智彰、坂井和喜、
坂井和喜、星月久昇、
星月久昇、小林一生、
小林一生、光藤誠太郎、
光藤誠太郎、小川 勇、斉藤輝雄、
斉藤輝雄、出原敏孝
Measurement of radiation beam of FU CW I with an infrared camera
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
T. Nakano, K. Sakai, H. Hoshizuki, I. Kobayashi, S. Mitsudo, I .Ogawa. T. Saito,T. Idehara
w (m)
我々は、サブミリ波帯
サブミリ波帯の
波帯のセラミック焼結
セラミック焼結・
焼結・表面改質研究のための
表面改質研究のためのシステム
のためのシステムを
システムを構築中である
構築中である。
である。この電力源
この電力源に
電力源に
は 300 GHz, FU CW Ⅰを用いる。
いる。FU CW Ⅰはモードコンバーターを
モードコンバーターを内蔵し
内蔵し、水平方向に
水平方向に出力ビーム
出力ビームが
ビームが得られ
る。現在、
現在、動作の
動作の最適化、
最適化、赤外線カメラ
赤外線カメラによる
カメラによる出力
による出力ビーム
出力ビームの
ビームの解析等を
解析等を進めている。
めている。
真空窓から
真空窓から水平方向
から水平方向に
水平方向に放射される
放射される出力
される出力ビーム
出力ビームを
ビーム をミリ波吸収
ミリ波吸収
0.04
板に照射し
照射し、温度上昇の
温度上昇の分布を
分布を赤外線カメラ
赤外線カメラで
カメラで測定した
測定した所
した所、
Measurements
Irradiation Time 60s
fitting
ほぼガウス
ほぼガウス分布
ガウス分布で
分布でフィットできる
フィットできる形
できる形であった。
であった。この温度上昇
この温度上昇
Horizontal 12kV
wo=0.01487
0.03
分布は
分布は電力分布を
電力分布を反映していると
反映していると考
していると考えられる
えられる。
zc=0.18687
図 1 の黒点は
黒点は真空窓から
真空窓から吸収体
から吸収体まで
吸収体までの
までの距離ごとに
距離ごとに測定
ごとに測定した
測定した
0.02
振幅 1/e 半径を
半径を示している。
している。ガウスビームの
ガウスビームの場合下の
場合下の(1)式
(1)式で
1/e 半径が
半径が広がる。
がる。図の実線は
実線は(1)式
(1)式でデータ点
データ点をフィットし
フィットし
0.01
たものである。
たものである。これから、
これから、出力ビーム
出力ビームは
ビームは真空窓直後を
真空窓直後を除いて
ほぼガウスビーム
ほぼガウスビームと
ガウスビームと考えられる。
えられる。
0.00
0.0
w (z ) = w 0
 λz
1+ 
 πw 2
0





2
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
z (m)
(1)
図1
7
出力ビームの径の広がり
1.4
A-p3.
DNP-NMR 用光源-GYROTRON
FU CWⅡ
Ⅱの開発
用光源
福井大学遠赤外領域開発センター
大阪大学蛋白研究所 1
村瀬浩規, 印牧知廣, La Agusu, 出原敏孝, 斉藤輝雄, 小川勇, 光藤誠太郎
藤原敏道 1, 高橋大樹 1
Development of Gyrotron FU CWⅡ
ⅡforDNP-NMR
Research center of Development for Far-Infrared Region, University of Fukui
Institute for Protein Research, Osaka University1
H.Murase, T.Kanemaki, La Agusu, T.Idehara, T.saito, I.Ogawa, S.Mitsudo,
T.Fujiwara1, D.Takahashi1
これまで福井大学遠赤外領域開発センターでは, セラミック焼結への
応用を目的とした, 連続動作可能な GYROTRON FU CWⅠの開発を進
めてきた。これと並行し動的核偏極・核磁気共鳴(DNP-NMR)のための
安定した光源として, GYROTRON FU CW II の開発を行っている。発
振周波数は 395GHz, 最大出力 100W, 発振モードは TE
26
で連続動作
可能である。現在までに, ジャイロトロン管を構成するコレクタ, キャ
ビティ, 及びその冷却装置が完成した。このジャイロトロンは, 組立調
整中であるが, 完成した後は 8 T の主磁場マグネットを用いた二次高
調波発振により 395GHz での CW 動作を目指している。講演では, ジ
ャイロトロンの動作確認及び, 発振試験の結果について報告する。
A-p4.
ミリ波・サブミリ波電磁波材料プロセッシング装置の開発と応用
福井大遠赤センター, 産総研 A
光藤誠太郎, 坂井和喜, 小林一生, 中
野智彰, 斉藤輝雄, 出原敏孝, 佐治他三郎, 佐野三郎 A
Development and applications of millimeter and submillimeter wave material processing systems
Univ. of Fukui FIR-center, AISTA
S. Mitsudo, K. Sakai, I.
Kobayashi, T. Nakano, T. Saito, T. Idehara, T. Saji, S. SanoA
高出力ミリ波を用いたセラミック焼結法は,ジャイロトロン光源を用いた新技術の一つであり,従来法より短
時間で高密度・高強度・緻密な構造をもつセラミックを焼結することができる画期的な方法として注目されてい
る. この焼結法は,従来の抵抗炉のように外部加熱による焼結法と比較し, 自己発熱を特徴とする. 電磁波加熱
の主な利点として,1)急速・内部加熱が可能,2)選択加熱が可能,3)低温で,かつ短時間で緻密な焼結が
可能であるという点が挙げられる. 3)については「非熱的効果」と呼ばれ,むしろ電磁波の周波数および出力
に依存する効果である. 我々は, 非熱的効果を利用することにより, 通常の加熱では高密度化しない難焼結性セ
ラミックスの炭化硼素を, 無加圧無添加で相対密度 90% 以上に緻密化することに成功しており, 電磁波過熱の
「非熱的効果」により, 通常過熱では得られない新素材の開発等が期待される.
我々のグループは, 電磁波加熱周波数や電磁波出力の増大にともない, 顕著に現われてきた電磁波加熱に特有
の「非熱的効果」による新素材開発とそのメカニズムの解明を行うことを目的とし, 研究を行っている. 本講演
では, 福井大学遠赤外領域開発研究センターの 2.45 GHz∼300 GHz にわたる電磁波加熱装置を紹介するとと
もに, これらの装置を用いて行っている電磁波加熱の研究について紹介する.
8
A-p5.
高出力 28 GHz Gryotron を用いたセラミックス
いたセラミックス焼結
セラミックス焼結
福井大学遠赤外領域開発研究センター
福井大学遠赤外領域開発研究センター
小林一生,
, 坂井和喜,
小林一生
坂井和喜, 塚田翔太,
塚田翔太, 星月久昇
光藤誠太郎,
光藤誠太郎, 斉藤輝雄,
斉藤輝雄, 出原敏孝
Ceramics sintering by using a high power 28 GHz Gyrotron
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui
I. Kobayashi, K. Sakai, S. Tsukada, H. Hoshizuki, S. Mitsudo, T. Saito, T. Idehara
高出力ミリ
高出力ミリ波加熱
ミリ波加熱は
波加熱は従来の
従来の電気炉加熱よりも
電気炉加熱よりも短時間
よりも短時間・
短時間・高強度・
高強度・緻密な
緻密な構造の
構造のセラミックスを
セラミックスを焼結すること
焼結すること
ができる。
。 高出力,
ができる
高出力,高周波による
高周波による加熱
による加熱は
加熱は非熱的効果と
非熱的効果と呼ばれる電磁波加熱
ばれる電磁波加熱に
電磁波加熱に特有の
特有の効果をもたらし
効果をもたらし,
をもたらし, 通常の
通常の
加熱では
加熱では実現
では実現できない
実現できない高品質
できない高品質の
高品質の焼結体を
焼結体を得ることが期待
ることが期待できる
期待できる。
できる。
我々は最高出力 2.5kW の 24 GHz Gyrotron で炭化硼素の
炭化硼素の相
対密度 90%を
90%を超える焼結体
える焼結体を
焼結体を無加圧で
無加圧で焼結することに
焼結することに成功
することに成功し
成功し
ている。
ている。しかし,
しかし, 安定して
安定して 90%を
90%を超える焼結体
える焼結体を
焼結体を得るまでには
至ってない。
ってない。一方、
一方、炭化硼素の
炭化硼素の焼結において
焼結において,
において, 焼結時の
焼結時の電界
強度が
強度が増加すると
増加すると緻密化
すると緻密化が
緻密化が促進する
促進する結果
する結果を
結果を得ている。
ている。 そこで
より高出力
より高出力 Gyrotron を用いることにより安定
いることにより安定して
安定して高密度
して高密度の
高密度の炭
化硼素焼結体が
化硼素焼結体が得られることが期待
られることが期待され
期待され,
され, 現在,
現在, アルゴン雰
アルゴン雰
囲気中で
囲気中で 2000℃
2000℃以上の
以上の加熱が
加熱が可能な
可能な炭化硼素焼結システム
炭化硼素焼結システムを
システムを
製作中である
製作中である。
である。
また、
また、この高出力電磁
この高出力電磁は
高出力電磁は加熱システム
加熱システムにより
システムにより焼結
により焼結を
焼結を行った,
った,
他のセラミックスの
セラミックスの結果についても
結果についても合
についても合わせて報告
わせて報告する
報告する予定
する予定で
予定で
ある。
ある。
図 15kW 28 GHz Gyrotron 加熱システム
A-p6.
Gyrotron FU CW Ⅰによるサブミリ
によるサブミリ波材料加熱
サブミリ波材料加熱
福井大学遠赤外領域開発センター, A 産総研
坂井和喜,小林一生,中野智彰,
光藤誠太郎,斉藤輝雄,出原敏孝,佐治他三郎,佐野三郎 A
SMMW Material processing by using a Gyrotron FU CW Ⅰ
FIR-Center Univ. of Fukui, AAIST
K.Sakai, I.Kobayashi, T.Nakano,
S.Mitsudo, T.Saito, T.Idehara, T.Saji, S.SanoA
電磁波加熱によるセラミックスの焼結は 2.4 GHz または 28 GHz を主流に開発・研究が行われ,従来の電気
炉の加熱に比べ短時間で高密度,高強度の焼結体ができることが報告されている。電磁波による焼結の特徴
は加熱体自身が発熱する内部加熱方式であるため,急速加熱,選択加熱が可能であることのみならず,低温
で緻密な焼結が可能である等,非熱的効果とよばれる現象が
上げられる。非熱的効果は周波数が高いほど効果も顕著に表
れてくる。そこで我々はサブミリ波帯である 300 GHz のジ
ャイロトロン(Gyrotron FU CW Ⅰ)を用いて通常の加熱で
は得られない新素材開発を試みている。
現在までに焼結体を加熱するアプリケーターの特性を調
べるために,赤外線カメラによる内部の電磁波強度の分布計
測,水負荷による出力測定等を行った。またミラーを取り付
け,スポット照射時のビーム特性の測定を行った。
講演では実際の材料加熱の結果についても紹介する。
図1:Gyrotron FU CW Ⅰを用いた材料
加熱装置
9
A-p7.
MD シミュレーションによる 弾性接触 動摩擦法則 の探求(I)
金沢工業大学 工学部
濱田 吉視,吉居 学,表 紀吉,林 啓治
Law of wearless dynamic friction as explored based on MD simulations ( I )
Kanazawa Institute of Technology
Y.Hamada, M.Yoshii, N.Omote, K.Hayashi
Nano-Electromechanical System(NEMS)に用いる所望の動摩擦特性を有する材料の開発への応用を目指
した基礎研究として,sub-µm サイズの系における 定常滑りに伴う弾性接触条件下での動摩擦現象について,
分子動力学(MD)シミュレーションに基づいて,法則性の探究およびその原子論的な由来の解明を進めてき
た [1,2].さらに,微細加工技術を利用して材料の phonon 物性を修飾することにより 所望の動摩擦特性を
有する NEMS 用人工材料を設計する Phonon-Band Engineering 手法を提案し,開発に取り組んできた [3].
今回は,秋の全国大会で報告した MD モデルを用い,2 次元最密格子 A(原子質量 mA,Lennard-Jones(LJ)
ポテンシャル深さεAA,格子定数σAA)と C(原子質量 mC,LJ ポテンシャル深さεCC,格子定数σCC)から構成
される摩擦系について,mC / mA および εCC / εAA を系統的に振った際に,動摩擦力が急に増大する滑り速度
の閾値が格子 A の phonon 物性由来の成分と格子 C の phonon 物性由来の成分とに分離していく様子を分析
した.また,局所擬似温度の空間分布の経時変化を可視化することにより,エネルギー散逸のミクロダイナミ
クスを解析した.これらにより得られた成果として,まず,mA,mC,εAA,εCC は滑り速度の閾値に,各格子
の固有振動数を概ね介して反映されることを明らかにした.さらに,結晶格子 A と C とのうち,原子間ポテ
ンシャルの非調和性の大きい方の格子に,エネルギー散逸が優先的に起こることを示唆する結果を得た.例
えば,σCC/σAA=35/32 の場合に,εCC / εAA=1 のもとでは格子定数の小さい A に優先的に起こる散逸が,εCC / εAA
を大きくすると C に優先的に起こるように critical に変わる振舞いを見出した.
本研究は文部科学省の助成による.
[1] 林,他,Conference on Computational Physics (2006) p32.
[2] 表,他,Conference on Computational Physics (2006) p34.
[3] K. Hayashi et al., Computer Phys. Commun., 142, 238 (2002)
A-p8.
MD シミュレーションによる 弾性接触 動摩擦法則 の探求(II)
金沢工業大学 工学部
佐々木 真也,田中 大介,表 紀吉,林 啓治
Law of wearless dynamic friction as explored based on MD simulations ( II )
KIT
Shinya Sasaki, Daisuke Tanaka, Noriyoshi Omote, Keiji Hayashi
Nano-Electromechanical System(NEMS)に用いる所望の動摩擦特性を有する材料の開発への応用を目指
した基礎研究として,sub-µm サイズの系における 定常滑りに伴う弾性接触条件下での動摩擦現象について,
我々は,分子動力学(MD)法により,三次元モデルを用いてシミュレーション解析を進めると共に,それと
並行して,二次元モデルを用いたシミュレーション解析にも取り組んできた [1-3].後者に関しては,物理的
な本質を損なわない限りにおいて単純化した MD モデルを採用することで,様々な実験パラメターを系統的
に振って膨大なデータに取ることを可能とし,統計的に見えてくる“メゾスコピック系における動摩擦法則”
について,フォノン物性とのかかわりあいに着目して,原子論的な由来の解明を進めてきた.
例えば,メゾスコピック系では動摩擦力の滑り速度依存性に閾値(動摩擦力が急激に増加する滑り速度)が
存在することを,三次元 MD モデルを用いたシミュレーション解析において見出した.さらに,二次元モデ
ルを用いた解析から,滑り速度の閾値が簡明な法則性に則って決まることを明らかにし,その由来について
フォノン物性に基づいた説明を与えた.
今回は,二次元 MD モデルを用いて見出した上記の法則性およびその原子論的由来を指針として,三次元
MD モデルを用いたシミュレーションの結果を検討した.三次元系においては滑り速度の閾値の決定に,本
質的には二次元系と同様に,フォノン物性が反映されるものの,さらに,三次元系に特有の種々のファクタ
ーも効いていることを明らかにした.
本研究は,文部科学省の助成による.
[1] Keiji Hayashi and Noriyoshi Omote, Conference on Computational Physics (2006) p32.
[2] Noriyoshi Omote and Keiji Hayashi, Conference on Computational Physics (2006) p34.
[3] 表,他,日本物理学会講演概要集 61 (2)(第 2 分冊)p.237 (2006).
10
A-p9.
ノイズを含む入力がある Hodgkin-Huxley ニューロンの挙動
福井大工 諸屋博,平田隆幸
Behavior of the Hodgkin-Huxley neuron with external input including noise
Faculty of Engineering, Univ of Fukui. H.Moroya & T.Hirata
Hodgkin-Huxley 方程式(H-H 式)とは、ニューロン
の挙動をモデル化したものでありニューロンの挙動を
理解するために様々な視点から多くの研究がなされて
いる。H-H 式は、膜電位 v とイオンチャネルの活性化
および不活性化パラメータ n, m, h によって記述された
4 元連立の微分方程式である。
この方程式は外部入力 Iext を変化させることにより
様々な挙動を示すことが知られている。本研究では H-H
式に与える刺激電流 Iext としてノイズを加わえたもの
を与え、それによる膜電位の挙動の変化を調べた。
f (x) =
I0 + ξ(t)
1
x2
√
exp (− 2 )
2σ
2πσ
v (mV)
v (mV)
60
40
20
40
20
-20
0
(2)
20
40
60
time (ms)
80
100
0
(c)
14
12
10
8
6
4
2
0
0
(b)
0
-20
(1)
I0 は定数であり、ξ(t) は式 (2) のガウス分布に従うラ
ンダムノイズである。I0 , σ 2 のパラメーターを変化さ
せて H-H 式の挙動を調べた。
図 1 に I0 = 9、σ 2 が 0 と 1 のときの膜電位 v と刺
激電流 Iext の時系列を示す。初期値は、(v, m, n, h) =
(0, 0, 0, 0) を用いた。
80
60
Iext (µA)
=
100
(a)
80
0
Iext (µA)
Iext
100
20
40
60
time (ms)
80
100
20
40
60
time (ms)
80
100
40
60
time (ms)
80
100
(d)
14
12
10
8
6
4
2
0
0
20
図 1: 膜電位と刺激電流の時系列。I0 = 9、(a) が σ 2 = 0
のときの、(b) が σ 2 = 1 のときの膜電位 v の時系列変
化を示している。また、(c) が (a) の際の、(d) が (b) の
際の入力を示している。
A-p10.
ビスマスクラスターの光学的性質
富山大・理
吉田信司、五葉見道、池本弘之
Optical properties of bismuth clusters
University of Toyama, S.Yoshida, A.Goyo, H.Ikemoto
[序] 結晶のバルク Bi は3配位共有結合からなる層状構造をしており、層間の相互作用により半金属性を示す.
粒径が約 5nm 以下になると、Bi クラスターはアモルファス半導体に転移することがラマン散乱測定から推測されて
いる[1].本研究では、Bi クラスターのサイズに依存した半金属−半導体転移を、光学定数から検討する.
[実験] Bi を KBr 基板上に島状蒸着することにより、クラスターを作成した。試料の種類は平均膜厚で示す.分子
研 UVSOR BL6B に設置されたフーリエ変換干渉分光計(Bruker IF66v)を用いて,0.05eV から 0.9eV のエネルギー
範囲で光透過率・反射率を測定した。
[結果] 図 1 に 10nm,0.5nm 薄膜の光吸収係数と,ビスマス結晶の文献
値[2]を示す.10nm 薄膜の光吸収係数は文献値に近い値を示している
ため,バルクと同様に金属的であると考えられる.0.5nm 薄膜は、光吸
収係数がバルク状態より小さい値を示した.X 線回折測定を行うと,
10nm 薄膜は明確な結晶が現れた.0.5nm 薄膜はブロードなピークをも
ち,アニールにより結晶ピークが成長した.0.5nm 薄膜は結晶状態とア
モルファス状態が混在していると推測している.
0.5nm 薄膜にはアモルファスクラスターが存在し,アモルファスクラス
ターは,バルクに比べバンドギャップが拡大していると推測している.
[1] M.G.Mitch, et.al., Phys. Rev. Lett. 67(1991)875
図 1 Bi クラスターの光吸収係数.
[2] A.D.Lenham,et al. J.Opt.Soc.Am. 55(1965)1072
△は Bi 結晶の文献値[2]を示す.
11
A-p11.
テルルクラスターのEXAFS
富山大・理A、弘前大・理工B
五葉見道A、吉田信司A、池本弘之A、宮永崇史B、新田清文B
EXAFS Study of Tellurium Clusters
Uni.Toyama A,HirosakiUni.
B
A.GoyoA,S.YoshidaA,H.IkemotoA,T.MiyanagaB,K.NittaB
[序論] 結晶Teは、2配位共有結合の3回螺旋鎖で構成された半導体である。孤立電子対軌道と、隣接鎖上の反結合軌道が重なるこ
とにより鎖間相互作用が生じ、鎖内の共有結合を弱めている。一般に、数個∼数千個の原子から成るクラスターは、その局所構造がバ
ルクとは異なり、物性も変化することが知られている。Teクラスターについて、EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)測定を
行い、最近接原子間距離・配位数などを導出し、Teクラスターのサイズによる構造変化について検討する。
[実験方法] 島状蒸着法によりTeクラスターを作成し、NaCl母材中に孤立させた。Teクラスターの粒子サイズは、基板上に蒸着するTe
の平均膜厚によって制御した。平均膜厚300nm(300nm試料)の試料と平均膜厚0.5nm(0.5nm試料)の試料について、KEK-AR
NW10Aにおいて、Te-K吸収端のEXAFS測定を20Kから室温の温度範囲で行った。
[解析] 300nm、0.5nm試料の20KのEXAFS振動χ(k)を2∼18Åの範囲でフーリエ変換した結果|
FT(r)|
を図1に示す。0.5nm試料の最近
接原子間距離は、300nm試料に比べて短くなっている。また、0.5nm試料は300nm試料に比べて鎖間の最近接原子のピークが著しく低
い。次に、2.4∼3.8Åの範囲で、|
FT(r)|
に逆フーリエ変換を行って得たχ(k)に対して、最小二乗のFittingを行った。Fittingの結果から、
共有結合長は0.5nm試料で2.79±0.01Åで、300nm試
料に比べて0.04Å短くなっている。配位数は、300nm試
0.18
料で規格化すると、0.5nm試料では1.95±0.02となり、2
300nm
0.5nm
配位構造が残存している。図2はFittingから得られたデ
バイ因子の温度変化を示す。低温での静的なみだれ
0.004
0.09
は0.5nm試料の方が大きいが、温度変化による乱れは、
0.002
300nm試料に比べると0.5nm試料の方が小さい。共有
結合が短くなっていることと、デバイ因子の温度変化が
小さいことから、0.5nm試料においては、共有結合が強
300nm
0.5nm
0
0
2
4
0
6
r(Å)
図 1:|
FT(r)|
まり、鎖間の相互作用が減少していると考えている。
0
100
200
300
T(K)
図 2:デバイ因子
A-p12.
Bi ナノ薄膜
ナノ薄膜の
薄膜の原子構造と
原子構造と電子状態
電子状態
金沢大理
竹森
陽平、斎藤
峯雄
Atomic Structure and Electronic
Electronic State of Bi Nanofilms
Nanofilms
Univ. of Kanazawa
Y. Takemori, M. Saito
数原子程度の厚さでできているナノ薄膜は結晶では見られない特異
な物性が現れることが期待される。V 族元素である Bi 結晶はヒ素構造
(A7)を取るが、ナノ薄膜は膜厚が非常に小さい場合黒リン構造(A17)
と類似の構造になることが最近明らかになった[1]。
本研究では、第一原理計算を行い超薄層の Bi 膜の原子構造と電子状
図 1. Bi 薄膜(
薄膜(2 層)の最安定構造
最安定構造
態を明らかにした。フリースタンディングモデルを用い単位胞に膜厚
の 2 倍以上の真空層を導入した。計算コードは PHASE[2]を用い、
GGA
計算を行った。
計算により得られた Bi 薄膜の最安定構造を図 1 に示す。Bi 薄膜は
0.5Åのバックリングをしていることがわかる。バックリングしていな
い構造(図 2)も計算したがバックリングしているものより 0.02
図 2. Bi 薄膜(2
薄膜(2 層)の準安定構造
eV/atom エネルギーが高く準安定であった。そこで、この系は双安定
な系であることがわかった。最安定構造は、0.2eV のエネルギーギャップを持つ半導体であるが、準安定な
構造は金属であることがわかった。
[1] T. Nagao et al., Phys. Rev. Lett.93
Lett.93,
93, 105501 (2004)
[2] http://www.fsis.iis.uhttp://www.fsis.iis.u-tokyo.ac.jp/
12
A-p13.
シリコン超薄膜による超格子構造の電子状態の計算:バンドギャップと光学特性の超格子
周期依存性
金沢工業大学工学基礎物理 西田昌彦
Electronic Structure Calculations of Superlattices Composed of Si Ultrathin Quantum Films: Periodicity
Dependence of Energy Gap and Optical Property
Kanazawa Institute of Technology Masahiko Nishida
シリコン(Si)半導体は主要エレクトロニクス部品としてパソコ が、超格子構造の電子構造は超格子周期に依存しうる.2 層の
ン、携帯電話などの電子機器の集積回路で使用されているが、 バリア層と 6 層の井戸層からなる(Siw)6/O/(Sib)2 超格子では、価
バルクの Si は、そのバンドギャップが間接遷移型であるため、 電子帯端がゾーン中心(Γ点)にあり、伝導帯端もΓ点に現れ
非常に微弱な赤外発光しか示さず、オプトエレクトロニクスへ て直接遷移型になる.しかも、そのバンドギャップ(1.95 eV)に
の応用には不向きな素材である.そのため、今後のオプトエレ 対する振動子強度(0.168)と発光寿命(1.07×10-2 (μs))の計
クトロニクスの発展は、Si を用いた電子素子と、GaAs や GaP な 算値は可視発光素子として十分使えるレンジにある.ところが
どの化合物半導体を用いた発光素子とのハイブリッド化に頼ら 計算によると、例えば、(Siw)5/O/(Sib)3 超格子では伝導帯端は
ざるを得ない.しかし一方では、Si 基板上で広く確立されている Γ点に現れるが、価電子帯端はΓ点とゾーンエッジ(X´点また
Si 素子の製造過程を利用したオプトエレクトロニクスの発展へ は X 点)との中間に現れ、また、(Siw)7/O/(Sib)5 超格子の場合は、
の根強い願望があり、Si による発光素子を実現するため、Si の 価電子帯端はΓ点に現れるが、伝導帯端が Z 点に現れて、い
低次元化物質(ポーラス Si、Si 超微粒子、Si/Ge 合金や超格子 ずれも間接遷移型となる.このように、超格子の周期によって
等)からの発光特性の研究がここ十数年間行われてきた.しか は超格子構造が直接遷移型にならない場合がある.超格子周
しながら、これまでのところ、Si 素子からの安定で持続的な発 期はシリコンの膜厚(m+n)や Si/O 界面の Si-O-Si ボンド角の
違いによって変わる.シリカガラス(アモルファス SiO2)に対する
光特性が実現できたという報告はない.
最近、厚さの異なる2つの Si(001)超薄膜と単原子層酸素と NMR 測定と第 1 原理計算によれば、Si-O-Si ボンド角は 120o
w
b
で構成した短周期の超格子構造((Si )m/O/(Si )n 超格子構造、 から 180oまで分布しているが、その中心は 151oにある.
ここで(Siw)m は m 層からなる井戸層、(Sib)n は n 層からなるバリ
本講演では、シリコン膜厚の違いや Si/O 界面の Si-O-Si ボ
ア層を示す)を提案し、その電子状態を計算して発光特性を論 ン ド 角 の ば ら つ き に 伴 う 超 格 子 周 期 の 変 化 に 対 し て
じ た (1). 電 子 状 態 の 計 算 に は 拡 張 ヒ ュ ッ ケ ル 型 の 非 直 交 (Siw)m/O/(Sib)n 超格子構造の電子構造がどのように変わるかを
Tight-Binding 法 (Extended Huckel-type Nonorthogonal 調べた結果について報告する.
Tight-Binding 法) (2) を用いた.特に、超格子構造のバンドギャ (1) M. Nishida: Japan. J. Appl. Phys. 43 (2004) L1330.
ップが直接型になるか間接型になるかが最も重要な点である (2) M. Nishida: Phys. Rev. B 58 (1998) 7103.
A-p14.
ダイヤモンド超ナノ薄膜のエネルギーギャップと光学特性:電子状態計算によるサイズ
効果の研究
金沢工業大学工学基礎物理 西田昌彦
Energy (eV)
Energy Gaps and Optical Properties of (001) Ultrathin Quantum Films of Diamond: A Study of Size Effects by
Electronic State Calculations
Kanazawa Institute of Technology
Masahiko Nishida
ダイヤモンドは典型的な共有結合型のワイドバンドギャップ(室温で 5.5 eV)半導体である.同じ結晶構造のシリコンやゲルマニ
ウムに比べると、格子定数が小さい、体積弾性率が大きい、凝集エネルギーが大きい、化学的に安定、絶縁耐圧が高い、熱伝導
率が最大、熱膨張率が最小、硬さが最大など魅力的な性質を持っている.し
[バルクの2次元バンド構造]
かし、そのバンドギャップが間接遷移型であるため、シリコンと同様にそのま
までは発光材料として使えない.最近になって、ダイヤモンドを超薄膜化する
ことにより直接遷移型に変換出来ることが判明した.
本講演では、ダイヤモンドの直接遷移型(001)量子超薄膜からの紫外線
発光素子実現の可能性を探るため、Extended Huckel-type Nonorthogonal
Tight-Binding(EHNTB)法 (1)を適用してその電子状態を計算し、バンドギャッ
プの性質と発光特性を調べる.右
[3次元バルクのバンド構造]
20
図は、EHNTB 法で計算したダイヤ
Γ 2′ c
X 3c
15
モンドの3次元バルクのバンド構造
L1c
10
Γ15c
とその(001)面 への2次元 投影 を
L3c
示す.2次元バンド端(価電子帯端
5
X1c
Γ 25′ v
と伝導帯端)が超薄膜の有限化に
0
よってどのように振舞うか、また、バ
X4 v
-5 L3′ v
ンドギャップとその振動子強度が膜
L1v
-10
X1v
厚に対してどう変化するかについて
-15
講演で述べる.
L
Γ
′
2
v
1v
-20
[文献] (1) M. Nishida: Phys. Rev. B
-25
58 (1998) 7103.
Γ
L
Λ
∆
X
13
A-p15.
鉄原子の電子状態に及ぼす水素原子の影響
金沢工業大学
小川 健治,藤岡 靖士,高野 則之
Effects of Hydrogen on Electron States of Iron
Kanazawa Institute of Technology
K.Ogawa, Y.Fujioka, N.Takano
水素原子が関与する現象に鉄の水素脆性破壊があるが,水素原子が鉄原子にどのような影響を及ぼすかは
はっきりしていない.今回は Full Potential Linearized Augmented Plane Wave(FLAPW)法に基づく WIEN97 コー
ドを用い,鉄原子と水素原子からなる格子モデルの軸比(c/a)を変え,第一原理により全電子状態を計算した.
Fe 状態密度の図 1(a)と八面体位置に H を入れた場合の Fe-H 状態密度の図 1(b)より Fe の電子状態は全体的
に影響を受ける.軸比と全エネルギーの等高線図より弾性係数の変化についても考察する.
(a)Fe
(b)Fe-H
図 1.状態密度の変化.左が鉄の上,下スピン,右が水素原子により BCC の軸比が変わり影響を受けた鉄と水
素の上,下スピンを表す.
14
B-a1.
カンチレバーを
カンチレバーを用いた磁化測定装置
いた磁化測定装置の
磁化測定装置の開発
福井大工学部,
福井大遠赤センター
センターA 鈴木 康仁 戸田 充 A 藤井 裕 A 光藤 誠太郎 A
福井大工学部, 福井大遠赤
Development of a magnetometer device by using a cantilever
FIR center , Univ. of FukuiA
Department of Applied Physics, Univ. of Fukui ,
A
A
Y. Suzuki , M. Toda , Y. Fujii , S. MitsudoA
AFM の開発と普及に伴って、微小な力を検知するカンチレバー
は高感度なものを容易に入手することが可能になってきた。また、
カンチレバーを使うことで非常に高い感度で小さな試料の磁化を計
支柱
測することができるため多くの磁化測定で利用されている 1)。だが、
ピエゾステージ
多くの場合トルクを用いて間接的に磁化を計測するため試料は磁気
試料
異方性を持っていなければならない。そのため我々はカンチレバー
サンプルホルダー
の先端に永久磁石を付着させることで磁場勾配を発生させる測定方
カンチレバー
法を考案した。まず、装置全体に磁場を印加し、サンプルホルダー
Ti台
Ti台
先端に付着させたサンプルを磁化する。ピエゾステージを動かして
試料をカンチレバーに近づけると磁化した試料に対して磁石が反応し、
図1.装置断面図
装置断面図
その力がピエゾ端子に伝わって電圧が発生するので検出した電圧値から磁化がわかる。将来的に希釈冷凍機への
実装を考えているため、直径 30mm、高さ約 80mm の上図のような円筒形の磁化測定装置を現在開発している。
1)
E. Ohmichi and T. Osada: Rev. Sci. Instrum. 73(2003)
3022
73
B-a2.
カイラルらせん磁性体 CuB 2 O 4 の高周波 ESR
福井大遠赤セ,青学大理工 A,国際高等研 B
藤田 敏之,藤本 好邦,光藤 誠太郎,
A
出原 敏孝,斉藤輝雄,高阪 勇輔 ,矢野真一郎 A,秋光 純 A,本河 光博 B
High Frequency ESR studies on Chiral Helimagnet CuB 2 O4
Research Center for Development of FIR Region, Univ. of Fukui, Department of Physics and Math
ematics, Aoyama-Gakuin UniversityA , International Institute for Advanced StudiesB
T. Fujita, Y. Fujimoto, S. Mitsudo, T. Idehara, T. Saito, Y. Kousaka, S. Yano, J. Akimitsu, M. Motokawa
CuB2 O4 は、低温で逐次相転移を示す物質であり、反対称性交換相互作用がその磁性に重要な役割を果たし
ている。 TN = 21 K で弱強磁性転移、さらに低温 T*=10 K で不整合カイラル螺旋磁性へと転移する [1]。また
T* 近傍では B//a の磁化率に異常が現れ、カイラルソリトン格子
モデル[2]による説明がなされている。我々はこの物質における
逐次相転移現象の理解とカイラル磁性体に特有な現象の発見を
目指し ESR 測定を行っている。
右図は磁場 15 T、周波数 600 GHz まで測定し得られた、 2 K
における ESR の周波数−磁場ダイアグラムである。既に報告さ
れているギャップレスの ESR モード(実線)に加えて、約 180
GHz のゼロ磁場ギャップを持つ新たな ESR モードを観測した。
これら2つの ESR モードは、結晶学的異なる2つの非等価な銅
サイトにおける常磁性共鳴と螺旋磁性共鳴であると考えている。
講演は、得られた ESR スペクトルを示し、解析の結果得られて
いる交換相互作用の大きさを結晶構造と磁気相図と比較しなが
ら議論を進める予定である。
[1]. G. A. Petrakovskii et al.: Low Temp. Phys. 28 (2002) 606.
図: 2K における周波数−磁場ダイアグラム
[2]. J. Kishine et al.: Prog. Theor. Phys. Suppl. 159 (2005) 82.
15
B-a3.
NMR から見た CuB2 O4 の磁気相図
◦
福井大工,北陸先端大 A ,ロシア科学アカデミー B
安田 洋祐,藤井 裕,
菊池 彦光,千葉明朗,山本 善之 A ,堀 秀信 A ,G. PetrakovskiiB ,M. PopovB ,L. BezmaternikhB
Phase diagram of CuB2 O4 probed by NMR
◦
Dept. Applied Physics, Univ. Fukui; JAISTA ; SB RASB
Y. Yasuda, Y. Fujii,
H. Kikuchi, M. Chiba, Y. Yamamoto , H.Hori , G. Petrakovskii , M. Popov , L. BezmaternikhB
A
A
B
B
CuB2 O4 は ,温 度 及 び 印 加 磁 場 の 強 さ と 方 向 に よ り 多 段 階 相 転 移 を 起 こ す 磁 性 体 で あ る .
ゼ ロ 磁 場 中 に お い て , TN
に 温 度 を 下 げ て い く と ,T ∗
=
21
∼
K で 常 磁 性 相 か ら 整 合 相 で あ る 弱 強 磁 性 相 に 転 移 す る .更
9.5 K で 不 整 合 な ヘ リ カ ル 相 へ と 二 度 の 相 転 移 を 起 こ す [1].
また,近年,次々と新たな相転移が報告され,その磁気構造に興味が持た
1000
CuB2O4 single crystal
れている.そこで,多段階の相転移を起こす CuB2 O4 のスピンダイナミク
11
B-NMR 実験を行った.図 1 に磁
-1
(s )
場を c 軸の方向に約 3.97 T 印加した時のスピン-格子緩和率 T1−1 の温度
T
-1
変化を示した.温度を 10 K から下げていくと,温度の低下とともに T1−1
10
は減少していくが,約 6.5 K において小さな異常が見られる.さらに温度
を下げていくと,約 5 K 付近から
T1−1
f = 53.74 MHz
B // c - axis
B ~ 3.97 T
100
1
スを調べるため,単結晶試料を用いて
の傾きが変化している様子が観測
1
された.この結果から,約 5 K と 6.5 K において二度の相転移が起こって
1
10
T (K)
いることが示唆される.今回の講演では、c 軸 のみならず a 軸に磁場を印
加した時の B − T 相図について議論する予定である.
図 1: 磁場を c 軸に約 3.97 T 印
[1] B. Roessli et al., Phys. Rev. Lett. 86 (2001) 1885.
加したときのスピン-格子緩和率
T1−1 の温度変化.
B-a4.
P-doped Si の高周波 ESR
福井大学工,
福井大学工,福井大学遠赤セ
福井大学遠赤セ A
杉山和裕,
杉山和裕,藤井裕,
藤井裕,菊池彦光,
菊池彦光,千葉明朗,
千葉明朗,光藤誠太郎,
光藤誠太郎,藤田敏之 A,藤本好邦 A
High frequency ESR of P-doped Si
Dept. of Appl. Phys., Univ. of Fukui; AFIR Center,Univ. of Fukui
K. Sugiyama, Y. FujiiA, H. Kikuchi, M. Chiba, S. MitsudouA, T. FujitaA, Y. FujimotoA
近年量子コンピュータの応用へ向けての研究が、盛んに行われている。
1.6
35GHz
0.8
P-doped Siにおけるスピン系は、最も有力視されているものの一つである。
0
スピン系の振舞に関する基礎的な情報を得るために、高周波、高磁場下で
Signal [arb. unit]
80GHz
のESR実験を行った。
P-doped Siの低磁場下におけるESR実験は1960年代にすでに行われてお
-0.8
100GHz
-1.6
-2.4
り、ドナー濃度3×1017 cm-3以下では、31P核との超微細相互作用により、
110GHz
-3.2
Temprature=2K
2本に分裂したESRスペクトルが観測されている。1) 又、ドナー濃度が
-4
17
-3
3×10 cm 以上の試料においては不純物伝導により1本のスペクトルが観
-0.015
-0.01
-0.005
0
0.005
0.01
0.015
∆B[T]
図1 P-doped Si(ドナー濃度 1.77×10 17 cm-3;低濃度試料)のESRスペクトル
測されている。
0.06
今回京大理の水崎グループおよび韓国のKAISTより、ドナー濃度が1.77
0.04
×1017 cm-3と6.7×1017 cm-3の2つの試料の提供を受け、35~110GHzの周波数
で、1~3Tの磁場においてESR実験を行った。その結果を図1及び図2に示す。
35GHzにおける1T程度の磁場下では、すでに報告されている低磁場での結
果を再現している。一方、強磁場においては、いずれの試料においても、
Signal [arb. unit]
0.02
0
110GHz
80GHz
-0.02
-0.04
35GHz
-0.06
スペクトルの線型に変化が現れている。この変化の機構について報告する。
Temprature=2K
-0.08
-0.1
-0.015
-0.01
-0.005
0
0.005
0.01
0.015
∆B[T]
1) G. Feher,et al . Phys. Rev. 168 (1959) 1245.
図2 P-doped Si(ドナー濃度 6.7×1017 cm-3;高濃度サンプル)のESRスペクトル
16
B-a5.
パルス磁場下での NMR 技術の開発
福井大工, 東大物性研 A
川口秀章, 藤井裕, 菊池彦光, 千葉明朗, 光藤誠太郎, 大道英二 A
Development of NMR technic under pulsed magnetic field
Dept. of Appl. Phys., Univ. of Fukui; A ISSP, Univ. of Tokyo
H. Kawaguchi, Y. Fujii, H. Kikuchi, M. Chiba, S. Mitsudo, E. OhmichiA
核磁気共鳴技術の分解能の向上のためには、強い磁場下での核磁気共鳴測定が必要である。従来の定常磁場で
は、超伝導磁石では約 20 T 程度、ハイブリッド型磁石では約 40 T 程度であるが、非破壊パルス磁場では約 70
T 程度の磁場が発生させることができため、電子スピン共鳴の分野などで分解能の向上が著しいパルス磁場に着
目した。しかし、パルス磁場では磁場発生時間が数ミリ∼数十ミリ秒と短いので、核磁気緩和時間が長いと核磁
気モーメントの分極が十分に得られないこと、測定時間内でも磁場が大きく変動して核スピンのコヒーレントな
状態が崩れてしまうという問題がある。加えて、パルス磁場用コイルはインダクタンスが小さいので、定常電流
を流して磁場を発生させるには大きな電流が必要で、パルス磁場の前に定常電流を流すのはあまり適さない。そ
のため我々のグループではコンデンサバンクを用いたパルス磁場発生装置により二段階パルス磁場を用いる方法
を着想した。パルス磁場を二つ組み合わせるのはコンデンサバンクを二つ使えば比較的容易である。
二段階パルス磁場の発生条件としては、第一パルス磁場は緩和時間の長い試料でも核磁化を得られるようにす
るため少し低めの磁場で長時間のパルスを出すようにする。そして、第一パルス磁場終了前に NMR 信号の観測
を行うための短時間で磁場の高い第二パルス磁場を発生させる。
前回は、ミニチュアコンデンサバンクを用いた二段階パルス磁場の発生について述べた。今回は、パルス磁場
波形をパワー MOSFET によって NMR 測定用に成形し試行実験を行ったので、当日は現状について報告する。
B-a6.
サブミリ波磁気共鳴力顕微鏡法の実験技術開発
福井大遠赤センター,福井大工A
戸田充,大野奈津子,藤井裕,光藤誠太郎,
出原敏孝,小川勇,斉藤輝雄,印牧知廣,千葉明朗
Development of Experimental Techniques for Sub-millimeter Wave Magnetic Resonance Force
Microscopy
FIR-Center Univ. of Fukui, Fac. of Eng. Univ. of FukuiA
M. Toda, N. Ohno, Y. Fujii,
S. Mitsudo, T. Idehara, I. Ogawa, T. Kanemaki, M. ChibaA
現在我々は、ESR、NMR 信号の超高感度な力学的計測法であり、またナノメートルスケールの空間分解能を
有する MRI 法としても知られる、磁気共鳴力顕微鏡法(Magnetic Resonance Force Microscopy ; MRFM)の
開発に取り組んでいる[1]。これまで MRFM の実験は、技術的な容易度、生体への応用を見据えて主に 0.3-3 GHz
(UHF 帯)の周波数域で実験が行われてきた。これを超える周波数を用いた実験は数えるほどしかなく、過
去の最高周波数のレコードは、クライストロンを用いた 23 GHz の実験である[2]。高周波化のメリットとし
ては、信号強度の増大、空間分解能の向上、動的核偏極法への応用が期待される。
高周波化に取り組むためには、適当な高出力サブミリ波光源の有無が、目標を達成する上で重要な鍵であ
る。当センターでは数年前に、230∼300 GHz の周波数域で高出力(∼10 W)CW サブミリ波を発振するジャ
イロトロン FU-IV の開発に成功した。また、それに引き続いてより高周波(∼THz)のサブミリ波を発振する
CW ジャイロトロンの開発にも取り組んでいる。これらの実績は、当センターが MRFM の高周波化に取り組む
上で、世界的に優れた環境を整えている事を意味している。現在、室温・サブミリ波用プローブを開発中な
ので、その進展状況について報告する。
[1] 日本物理学会第 61 回年次大会、講演番号 D-a3、大野他
[2] G. Alzetta et al., J. Magn. Res. 141 (1999), p. 148-158.
17
B-a7.
ダイヤモンド鎖化合物 Cu3(OH)2(MoO4)2 の磁性
福井大工、 福井大遠赤セ A、 東大物性研 B
田邊雄一、 菊池彦光、 藤井裕 A、 千葉明朗、 松尾晶 B、 金道浩一 B
Magnetic properties of the diamond chain compound Cu3(OH)2(MoO4)2
Department of Applied Physics, Fukui University, FIR Center FUA, ISSPB
Y. Tanabe, H. Kikuchi, Y. FujiiA, M. Chiba, A. MatsuoB, K. KindoB
最近、一次元磁性体のモデルとしてダイヤモンド鎖が注目されている。ダイヤモンド鎖は、磁性を担う原子(イオ
ン)が菱形を単位として一次元的に連なっているものである。しかしダイヤモンド鎖に対応する現実物質が少なく、実
験的に詳しく研究された物質はアズライト(Cu3(CO3)2(OH)2)などしかない。1)
そこで、我々はダイヤモンド鎖構造を持つ物質と考えられるリンドグレナイト(Cu3(OH)2(MoO4)2)を作製し、磁性を
調べた。リンドグレナイトは、S=1/2 スピンをもつ Cu2+イオンがダイヤモンド鎖をなしている。図 1 は磁化率、図 2 は約
60T までの磁化の測定結果である。講演ではこれらの詳細を報告する。
図 1.磁化率の温度依存性
図 2.磁化の磁場依存性
1) H.Kikuchi, et al., Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 227201
B-a8.
S=1/2 低次元磁性体(CPA)2CuBr4 の ESR
福井大遠赤セ,福井大工 A
藤本好邦,藤田敏之,藤井裕,光藤誠太郎,出原敏孝,
斎藤輝雄,佐々木隆暁 A, 菊池彦光 A,千葉明朗 A
ESR studies of S=1/2 low dimensional magnet (CPA)2CuBr4
FIR Center, Univ. of Fukui, Fac. of Eng., Univ. of Fukui
Y. Fujimoto, T. Fujita, S. Mitsudo, Y. Fujii, T. Idehara, T. Saito, T. SasakiA, H. KikuchiA, M. ChibaA
低次元反強磁性体(CPA)2CuBr4 は斜方晶(Pna21)の結晶構造を有している. 磁性を担う Cu2+イオンは Br 四面
体の中心に位置し, b 軸方向に二本足梯子鎖を形成している [1]. 磁化率の振る舞いから,この物質はゼロ磁
場で約 2.3 K のスピンギャップを持ち,梯子方向の方が横木方向よりも 2 倍程度大きな相互作用を持つスピ
ンラダー物質であると考えられている [1].スピンラダー系では磁場中で一次元磁性体に特有の状態である,
朝永-ラッティンジャー液体状態(TLL)を示すことが理論的に期待されている. 事実,この物質では NMR 測
定による緩和率がべき乗則に従って振る舞うことから TLL 相の存在が指摘されている [2].
我々は(CPA)2CuBr4 の低温での磁気状態を調べるために多結晶試料を用いた ESR 測定を行っている. 高温で
は比較的線幅の広い信号が一つ観測される(常磁性共鳴). 低温では, 常磁性共鳴信号の低磁場側に新たな信
号が観測される. この信号の線幅は温度の減少に伴い, 指数関数的な減少を示す. また温度 4 K において,
300 GHz までの周波数依存性の測定から, 共鳴周波数は, 磁場の約 2/3 乗に従うことがわかった. これらの
特徴は, 量子サイン-ゴルドンモデルのブリーザー励起でよく説明される. 講演では, 測定結果の詳細を示
し, (CPA)2CuBr4 の磁場温度相図と比較し議論する予定である.
[1]. R. D. Willett et al, Inorg. Chem. 43 (2004) 3804.
[2]. 佐々木隆暁他: 2006 年日本物理学会秋季大会, 23aPS-92.
18
B-a9.
有機ラジカルをドープしたトルエン溶液における 1H-DNP の観測
福井大工 , 福井大遠赤セ A 伊藤 秀忠 , 戸田 充 A , 藤井 裕 A
Observation of 1H-DNP in toluene solution doped with organic radical
Faculty of Engineering , University of Fukui , FIR center A H . Ito , M . Toda A , Y . Fujii A
NMR信号を増幅させる手段としてDNP(動的核偏極)がある。NMR分光による構造解析の短時間化
や、NMR量子コンピュータなどへの応用が期待されている。DNPは電子スピン系の大きな偏極を核
スピン系へ移すことに起因する。ジャイロトロンを利用した高周波DNPの開発のため、X-band ESR
システムでマイクロ波を照射し、すでに成功例が報告されているサンプルでNMR信号の増幅を観
測することにした。
ESR用のマイクロ波を効率的に照射するため周波数可変の円筒型キャビティを使用した。キャ
ビティ内にNMR用コイルを入れるとQ値が低下してしまうため、サンプルをキャビティ外に出した
状態でNMR測定を行うことにした。そこで糸と
おもりを利用し、ESR照射状態からNMR測定にス
ムーズに移行できる、サンプルシャトル法を採
用した。手始めにトルエン溶液にBDPAラジカル
を溶かしたサンプルで、約0.41 T の磁場下で
マイクロ波入射電力を変えて1H-NMRを観測した
と こ ろ 、 8 dBm で は 通 常 の NMR 信 号 だ が 、
37 dBm になると負の値に信号が増幅している
ことが分かり、DNPの効果が観測された。
図 1 マイクロ波入射電力 8 dBm,37 dBm 時の1H-NMR スピンエコー
B-a10.
単結晶 TMNIN の 1H-NMR
福井大工, 岡山大院自然 A 徳島裕記, 藤井裕, 千葉明朗, 神戸高志 A
1H-NMR
study of single crystal TMNIN
Department of Applied Physics, University of Fukui, Okayama Univ.A
Y. Tokushima, Y. Fujii, M. Chiba, T. KambeA
(CH3)4NNi(NO2)3 (TMNIN)は S=
=1 のハルデン系の物質
2+
パウダーサンプルを用いた 1H-NMR の測定では、ギャップ
の潰れる約 2.7 T より高磁場域において、1 K 以下の低温で
核磁気緩和率 1/T1 が極大値を持ち、さらに低温でスペクトル
形状が変化することが報告されている。[1]
Intensity (a.u.)
である。Ni イオン間の交換相互作用は反強磁性的で
J/kB= -12 K、エネルギーギャップは ∆//kB = 4.5 K である。
TMNIN
f = 288MHz
T = 0.43K
32個
32個
12個
12個
4個
そこで今回、その TMNIN の単結晶試料を作成し、高周波
1
H-NMR を 3He 温度で行った。図 1 は 288MHz における単
結晶のサンプル数によるスペクトルの変化を示している。サン
プルは c 軸が磁場と平行になるように並べている。
6.75
6.765
6.78
6.795
6.81
B (T)
図1: サンプル数による 1H-NMRスペクトルの変化
サンプルの数が多いとき、パウダーサンプルの時に見られたようなスペクトルの形が観測された。サンプル
の数を減らしていくにつれて、ピークの位置がはっきりしてくることが確認された。また、緩和率が極大になる
温度においてスペクトルも変化することが単結晶を用いることでわかった。
[1] T. Goto et al. Phys. Rev. B 73 (2006) 214406
19
B-a11.
S=1/2 カゴメ格子反強磁性体 Znx Cu4−x (OH)6 Cl2 の 1 H-NMR
福井大工
久保雄太、菊池彦光、藤井裕、千葉明朗
1
H-NMR of S=1/2 kagomé lattice antiferromagnet Znx Cu4−x (OH)6 Cl2
Dept. Applied Physics, Univ. Fukui
Y. Kubo, H. Kikuchi, Y. Fujii, M. Chiba
カゴメ格子反強磁性体は幾何学的にフラストレートしたスピン系であり,これまで数多くの実験的,理論的研
究がなされてきた.もっとも顕著に量子効果が現れるスピン数 S が 1/2 の場合はスピン液体状態が期待される
事から注目を集めている.実験的に最もよく調べられてきたカゴメ格子モデル化合物 SrCr9−x Gax O19 (SCGO)
はカゴメ格子を形成する Cr3+ の一部が非磁性イオン Ga3+ で置換
されカゴメ面が完全ではないため,完全なカゴメ格子磁性体が望
ZnxCu4-x(OH)6Cl2
1
H-NMR
f =42.5MHz
4
10
で磁気秩序がないことを報告した [1].また Zn を Cu で置換した
Cu4 (OH)6 Cl2 はパイロクロア格子を形成する.今回この S=1/2 カ
ゴメ格子反強磁性体 Znx Cu4−x (OH)6 Cl2 の磁性を更に調べるため
-1
性イオン Cu2+ (S=1/2)が構造的に完全なカゴメ格子を形成し,
Weiss 温度が約 −300K 以上であるにもかかわらず,2K に至るま
T1-1(s )
まれていた.最近,Shores らは ZnCu3 (OH)6 Cl2 (x=1) における磁
3
10
2
10
x=0
x=0.5
x=1
1
に粉末試料を作成し,磁化率測定と H-NMR 測定を行った.図 1
は磁場が約 1T における T −1
1 の温度依存性の結果である.
2
4
6 8
2
10
Temperature(K)
4
6 8
100
図 1 T −1
1 の温度依存性
[1] M P. Shores,et al ; J. Am. Chem. Soc. 127 (2005) 13462.
20
B-p1.
Co の高周波ドハース・ファンアルフェン効果
富山県立大工
山元 修司,前澤 邦彦,福原 忠
High frequency de Haas-van Alphen effect in Co
Toyama Prefectural Univ.
S. Yamamoto, K. Maezawa, T. Fukuhara
ξ
ε
Arb.unit
Amplitude
Co の dHvA 効果とバンド計算については McMullan らによる論文[1]があるが、磁気異方性を考慮したフ
ェルミ面と dHvA 振動数ブランチの対応についてはなお不明な点が多く、バンド計算から予測される各振動
数ブランチを実験的に測定できていない方位がある。本研究の目的はこれまでに観測されていない高周波振
動の角度依存性および有効質量の測定、結晶磁気異方性(スピンモーメントの向き)によるフェルミ面の形
状変化を観測することである。測定は温度 T = 0.5K、12T までの外部磁場において、磁場変調法を用いて行
われた。
図 1 に、磁場を[0001]方向に印加したときのドハース・ファンアルフェン振動を示す。図 2 はフーリエ解
析により得られたスペクトルを示している。この磁場範囲では 13.2MG(ε)及び 100MG(ξ)の振動が顕
著で、他に 156MG(η)
、393MG(ψ)の振動が存在している。また、100MG 振動の電子の有効質量を求
めると m*= 3.9m0 となった。これらの振動数の角度依存性の測定結果をもとにフェルミ面について考察する
η
120 H[kG]
100
0
ψ
200
400
F[MG]
図2 FFT 解析結果
図1 dHvA 振動
[1]G.J.McMullan et al.,
Phys. Rev. B46 (1992) 3789.
B-p2.
強磁性 CeRu2(GexSi1-x)2 のホール効果
富山県立大工,防大応物
A
Hall effect in ferromagnetic CeRu2(GexSi1-x)2
Toyama Prefectural Univ., National Defense AcademyA
藤堂 誠,福原 忠,前澤 邦彦,清水 文比古
A
M. Todo, T. Fukuhara, K. Maezawa and F. ShimizuA
Ce 化合物の異常ホール効果を調べるため、強磁性整列状態のホール効果を測定している。今回は X≧0.7 で強磁性基
底状態を示す CeRu (Ge Si ) について調べた。実験を行った磁場範囲はμ H<1.1T であり、どの試料もωcτ<<1 の弱
磁場条件を満たしていると考えられる。
図 1 は、X=1.0、X=0.9 及び X=0.7 のホール抵抗の解析から求めた異常ホール係数Rsの温度変化である。ここで、
Rsを Rs=Rs0+Rs(T) と残留項と温度変化する項の和で表されると仮定すると、Rs(T)は X=1.0 では図2に示
すように、T 以下で、低温でRs(T) ∝T4、高温でRs(T) ∝ T2となっている。X=0.9,0.7 でも同様の振る舞いが
見られた。これは、局在モーメントによるスキュー散乱に起因する異常ホール効果を取り扱った Kagan-Maksimov の理
論でよく説明でき、上記の特
T[K]
4
5
6
7
5
徴的な温度変化は、スピン波 0.5
0.8
の励起による散乱の温度変化 0.4
4
によって理解される。
0.4
2
x
1-x 2
0
Rs(T)[10-9m3/C]
RS(10-8 m3/C)
c
0.3
0.2
0.1
X=1.0
X=0.9
0
3
0
0
200
2
400
T4
600
1
X=1.0
X=0.7
-0.1
0
2
4
6
8
図1
T(K)
10
0
0
10
20
30
T2
図2
21
40
50
60
70
B-p3.
重い電子系化合物 CeNi2Ge2 の長周期結晶構造
富山県立大工 杉山太基,福原忠,前沢邦彦
Long-period crystal structure in the heavy-fermion compound CeNi2Ge2
Toyama Prefectural University
Taiki Sugiyama, Tadashi Fukuhara and Kunihiko Maezawa
CeNi2Ge2 は引き上げによって作製した結晶と溶解後に急冷して作製した結晶では様々な性質の違いがある
ことがわかってきた。この相違が何に起因するかはわかっていない。中性子回折の実験から散乱ピークが見
つかっている。そこで、X 線回折によってこのピークについて明らかにしたいと考えた。実験では、単結晶
を用いてサンプルの(00L)スキャンを行った。図は引き上げによって作製した単結晶試料の回折パターンであ
る。図中の(002)∼(0010)と指数付けしたピークは正方晶 ThCr2Si2 型構造からくるピークで、その他に矢印
で示したような周期性のある反射が見られた。これは、C 軸方向での長周期構造によると考えられる。急冷
によって作製した試料では、図中の矢印のよ
うな長周期構造は見られなかった。また、引
き 上 げ に よ っ て 作 製 し た CePd2Si2 と
CeRu2Si2 でも同様の測定を行った結果、長周
期構造は見られなかった。長周期構造と物性
との関連を調べている。
B-p4.
エレクトロトランスポートによる
エレクトロトランスポートによるセリウム
によるセリウム金属
セリウム金属の
金属の純良化
富山県立大工
佐野 学,前澤 邦彦,福原
忠
Purification of Cerium metal by electro transport
Toyama Prefectural University M.Sano, K.Maezawa and T.Fukuhara
Ce は酸素や水素に対して活性が高く、99.99%表示の市販の Ce でも、非金属不純物を考慮すると、一桁以
上純度が落ちると言われている。Ce 化合物を作製したとき、残存するこれらの不純物が、本来の特性を隠し
てしまう。そこで、化合物単結晶を作製する際、あらかじめ Ce の純良化が必要となる。本研究ではエレクト
ロトランスポート法(SSE 法)を用いたとき、Ce の純度にどのような変化が見られるか調べることである。
実験は市販の Ce から作製した棒状の試料に SSE 法を行う。Ce 3N と Ce 4N の二種類を使用した。SSE 法の条
件は、真空度が~5×10-8[Pa]、~650℃で 162 時間電流を
流した。
Ce 4N
SSE
before
SSE
A
C
K
SSE
1.1
cm
SSE
0
0.3
cm
0.6
cm
純度の評価は、電気抵抗測定によって行った。
の試料について、 前の試料( )、 後
の試料のアノード側( )、中央部( )、カソード側( )
の測定結果を図に示す。図より 前に μΩ であ
った残留抵抗値ρ は 後、カソード側、中央ともに
μΩ まで下がった。最も高い試料はアノード側の
μΩ という結果となった。この結果より、不純物
の移動偏析の他に、高温による脱ガスの効果が、セリウ
ム金属の純良化に大きく影響しているのではないかと思
われる。Ce 3N では、SSE 前のρ は 2.6μΩcm であるの
に対し、中央部で 1.8μΩcm まで減少したが、これ以上
の純良化はできないことが分かった。
0
22
2
before
1.5
A
1
C
K
0.5
0
0
5
10
T(K)
15
図: SSE 法によるρ-T 特性
20
B-p5.
量子臨界点近傍の CeCu6-xAux のホール抵抗
富山県立大工,阪大院理 A,富山大理 B
奥野 一静,福原 忠,前澤 邦彦,大貫 惇睦 A,桑井 智彦 B,石川 義和 B
Hall resistivity of CeCu6-xAu x near the Quantum Cr itical Point
Toyama Pref. Univ., Grad. School Sci. Osaka Univ.A, Toyama Univ.B
I.Okuno, T.Fukuhara, K.Maezawa, Y.ŌnukiA, T.KuwaiB and Y.IshikawaB
重い電子セリウム化合物の量子臨界点近傍のホール効果を研究している。そこで今回は、非フェルミ流体
的振る舞いを示す典型的な系である CeCu6-xAu(QCP;x=0.10)
の測定結果を報告する。これまでにx=0.0, 0.05,
x
0.10, 025, 0.50 の5つの単結晶サンプルにおいて、磁場をそれぞれの結晶軸方向にかけてホール抵抗ρxy を測
定した。
H//c と H//a については電流方向を90度変えた実験を行なったが、
顕著な異方性は見られなかった。
図に H//c、j//b のときの各サンプルにおけるホール抵抗の結果を示す。
x=0.0
(CeCu6)
の2T とx=0.05 の1T 付近における変曲は、
メタ磁性転移によるものと考えられ、不純物である Au を置換
していく事によって転移磁場が低磁場にシフトしている事が
伺われる。またこの転移磁場以下のρxy の磁化に比例する異常
項成分は、以下で述べる x=0.10 以上のサンプルとは異なり、
非常に小さいか、もしくは負の符号をもっていることがわかる。
一方、x=0.10, 0.25, 0.50 では H<12T で弱磁場条件を満たして
おり、特に5∼6T 以下の弱磁場領域では異常項を仮定する事
で、ρxy の磁場変化をおおむね説明することができる。また、
低磁場領域のフィッティングから得られた正常ホール係数は
通常の金属に比べ1桁程度大きい値であったが、これは重い電
子系において顕著な、マルチバンドによる有効質量や電子の緩
和時間の磁場変化によるものと推測している。
図: CeCu6-xAux のホール抵抗
B-p6.
(Nd1-xRx)3Al の電気的、磁気的特性
富山大工 山方亮一、西村克彦、森克徳
Electromagnetic properties of (Nd1-xRx)3Al
Faculty of eng., Toyama Univ., R. Yamagata, K. Nishimura, K. Mori
Magnetization(emu/mol)
【緒言】Nd3Al は Mg3Cd 型の六方晶である。同一の結晶構造をとる物質には、非磁性の超伝導体である La3Al
や、低温での構造変化や近藤効果といった特異な物性を持つ Ce3Al などが存在する。しかし、Nd3Al に関す
る詳細な報告は現在のところなく、非常に興味深い。今回はこの Nd3Al の物性を調査するとともに、Nd サイ
トへ他の希土類元素(R)を置換することにより、物性がどのように変化するのか調べることを目的とする。
【実験方法】試料は、Nd、R(=Gd,Ce)、Al を目的の組成比
[ 104]
で秤量したものを、Ar ガス中にてアーク溶解させ、真空
x=0
x(R=Gd)=0.1
1.5
中 500℃で一週間(R=Ce の場合はその後 200℃で三日間)
x(R=Ce)=0.1
アニールを行い準備した。作成した各試料は、表面での X
H=0.1T
線回折にてほぼ単相であることを確認した。電気抵抗測定
1
Tc=68K、x=0
Tc=70K、x(R=Gd)=0.1
は直流四端子法、比熱測定は熱緩和法、磁化測定は PPMS
Tc=59K、x(R=Ce)=0.1
を用いて行った。
0.5
【実験結果】Fig.1 は Nd3Al の磁化の温度依存性、及び
x(R=Gd,Ce)=0.1 置換に伴う転移温度の変化を示している。
0
図より試料が強磁性体であることが確認できる。これらの
0
100
200
転移温度変化の結果は電気抵抗率測定の結果と一致し、
Temperature(K)
Gd 置換により転移温度は若干上昇したが、Ce 置換では明
Fig.1
1-xRx)3Al の磁化の温度依存性(R=Gd,Ce)
Fig. (Nd(Nd
1-xRx)3Alの磁化の温度依存性(R=Gd,Ce)
らかな減少を示した。
23
B-p7.
富山大工
GdNi1-xCux の磁気熱量効果
畠山 直美,小倉 慎太郎,西村 克彦,森 克徳
Magnetocaloric effects of GdNi1-xCux
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
N. Hatakeyama, S. Kogura, K. Nishimura, K. Mori
-⊿Tad [K]
近年、希土類金属間化合物を使った磁気冷凍応用の研究が行われている。磁気熱量効果(MCE)として知ら
れている等温磁気エントロピー変化( S)と断熱温度変化( Tad)の大きな値を示す材料が応用に適していると
考えられる。また、一次磁気転移を示す化合物が大きな MCE を引き起こす可能性がある。
希土類金属間化合物 GdNi は斜方晶 CrB 型の結晶構造を持ち、キュリー温度 TC=71K の強磁性の化合物で
ある。一方、GdCu は立方晶 CsCl 型を持つが TM=239K でマルテンサイト変態が始まり、冷却していくにつ
れ徐々に斜方晶 FeB 型に変化していき 5K においておよそ 80%が FeB 型となる。また、その割合は再び常
温にした際も保持される。しかし、およそ 800K まで温度を上昇させると CsCl 型にもどる。そのため、GdCu
は TNCsCl=141K、TNFeB=40K という二つのネール温度を持つ
反強磁性の化合物である。
6
x= 0.0
本研究では GdNi1-xCux を作製し、Ni を徐々に Cu に置換し
0.1
5
ていくことによる磁気転移温度と磁気的性質の変化、また磁化
0.3
0.35
測定から磁気エントロピーを求めることと比熱測定によって
4
0.4
0.5
磁気冷凍材料としての性能を調査し、考察することを目的とす
3
0.6
る。
1.0
0-4T
2
今回の研究では、GdNi0.7Cu0.3(x=0.3)で最も大きな磁気熱量
効果 Tad=5K が観測された。これは強磁性秩序(x<0.3)と反強
1
磁性秩序(x>0.4)の間の磁気的性質が変化する境界濃度である。
0
磁気的特性の詳細は当日報告する。
50
100
T [K]
図: GdNi1-xCux の断熱温度変化の温度依存性
B-p8.
富山大理
PrCu4Ag の純良結晶の作製と物性
石野昇, 池生剛, 桑井智彦, 水島俊雄,
石川義和
Preparation and Physical properties of High-quality Polycrystalline PrCu4Ag
Dept. of Phys., Univ. of Toyama, N. Ishino, T. Ikeno, T. Kuwai, T. Mizushima and Y. Isikawa
PrCu4Agは立方晶MgSnCu4型のラーベス相であり, アーク溶解法ではマルチフェーズになり, 作製が
困難だと報告されている.[1] 我々は昨年の講演において, ほぼ単相の試料の作製に成功したことと, そ
の試料の電気抵抗率, 比熱, 磁化, 熱電能の測定結果を報告した. 帯磁率では3 Kに反強磁性転移に対応
(311)
すると思われるピークを, また2 Kまでの比熱測定では最低温
領域で比熱の鋭い立ち上がりを観測した. そこで今回は, さら
に不純物相の少ない, より信頼性の高い試料を作製することと,
以上の比熱測定によって, 2.4 Kに転移に伴うピークを観測した.
最低温では核比熱による比熱の増大も観測され, 電子比熱係数
γは約1.1 J/mol K2の非常に大きな値が得られた.
[1] T. Takeshita et al., J. Solid State Chem. 23 (1978) 225.
10
20
(511)
(440)
(331)
(111)
(200)
うにX線粉末回折パターンの全ピークを指数付けできた. 0.5 K
(422)
(222)
PrCu4Ag単相の多結晶試料の作製が確認され, 図に示したよ
(220)
慎重なアーク溶解により試料を作製し, 740℃で2週間アニ
ールを行った. X線解析の結果, 不純物が認められない,
4
intensity
2K以下の比熱測定を行うことを目的とし研究を進めた.
PrCu Ag
30
40 50 60
2 (degree)
70
図 PrCu4AgのX線粉末回折パターン
24
80
B-p9.
新しい立方晶 PrCu4Pd の基底状態
濱田雅宏, 池生剛, 桑井智彦, 水島俊雄,
富山大理
石川義和
The ground state for new material of cubic PrCu4Pd
Dept. of Phys., Univ. of Toyama, M. Hamada, T. Ikeno, T. Kuwai, T. Mizushima and Y. Isikawa
立方晶の結晶構造をもつ Pr 化合物における四重極効果による物性が最近注目されている.J=4 の 4f
電子が立方対称の結晶場下でダブレットΓ3の基底状態にあると磁気モーメントは0で磁性を持たない
が,四重極モーメントを持つ.このことに起因して低温で比熱等に異常が現れることが報告されている.
の多結晶試料の作成をアーク溶解により今回試みた.
x 線解析および磁化測定の結果,不純物として銅を無
視できない量含むものの,立方晶 PrCu4Pd が形成さ
れていることを確認した.銅の寄与を除いた帯磁率の
結果を図に示す.2 K までの実験では磁気転移は見ら
1.2
250
1
PrCu4Pd #3
0.8
m=0.0337g
H=0.05T
(emu/mol)
PrCu4Pd
200
0.6
1/ (mol/emu)
PrCu4Ag は立方晶 MgSnCu4 型のラーベス相であり
(1)、同様に立方晶の構造を持つと予想される
0.4
150
0.2
0
0
2
100
4
6
8
Temperature(K)
10
PrCu Pd #3
4
m=0.0337g
H=0.5T
50
れなかった.図に示すようにキュリーワイス則がほぼ
全測定温度で成り立ち,常磁性キュリー温度θp∼0 K
0
0
50
であることがわかった.
100
150
200
Temperature(K)
250
300
PrCu4Pd の逆帯磁率の温度依存性
(1) T. Takesita, S. K. Malk and W. E. Wallace, J. Solid State Chem. 23 (1978) 225.
B-p10.
スクッテルダイト化合物 Yb1-xLaxFe4Sb12 の La の置換効果
富山大理
張帥, 池生剛, 桑井智彦, 水島俊雄, 石川義和
Substitution effect of La in new series of skutterudite compound Yb1-xLaxFe4Sb12
Dept. of Phys., Univ. of Toyama, S. Zhang, T. Ikeno, T. Kuwai, T. Mizushima and Y. Isikawa
It is recently suggested that Yb ions are in a divalent state and the magnetic moment is solely due to
itinerant-electron paramagnetism of [Fe4Sb12] in YbFe4Sb12[1], and an intermediate material between a nearly
ferromagnetic material and a weakly ferromagnetic material is also reported[2]. We prepared the new series of
double
filling
in
skutterudite
compound
Yb1-xLaxFe4Sb12
and
expected
to
investigate
how
the
weak-ferromagnetism will change due to the substitution effect of La on Yb-site.
Present crystals of Yb1-xLaxFe4Sb12 have been prepared by the Sb self-flux method at different x. The chemical
ratio of Yb, La, Fe and Sb of these single crystals was determined by the electron-probe micro analysis (EPMA),
and the magnetization measurements were carried out from 2 K to 300 K on the SQUID magnetometer. We have
determined two different samples with the similar filling ratio of Yb, in which one expresses enhanced
paramagnetism until 2 K while the other has a transition temperature, TC, of the weak ferromagnetism, which is
thought to be caused by the impurity of YbFe4Sb12. The origin of the transition of magnetization from
weak-ferromagnetic to enhanced paramagnetic state due to the substitution of La was considered as, taking into
account the number of transferred electrons to the anions from the divalent Yb atoms and trivalent La atoms.
[1] W. Schnelle et al., Phys. Rev. B 72 (2005) 020402 (R).
[2] I.Tamura et al., J. Phys. Soc. Jpn. 75 (2006) 014707.
25
B-p11.
磁化誘起SHG法によるCo添加TiO2(110)の磁性起源の考察
北陸先端大マテリアル,防衛大 A,理研B,東工大応セラ研C 湯浅真擁,渡邊亮輔,八幡佳成,水谷五郎,
鈴木隆則A,瀬川勇三郎B,松本祐司C,山本雄一C,鯉沼秀臣C
Origin of the magnetism of Co doped TiO2(110) by using magnetization induced optical second harmonic generation
School of Materials Science, Japan Advanced Inst. of Sci. and Tech. , National Defense Academy of JapanA ,RIKEN B, Tokyo Inst. of
Tech. Materials and Structure LaboratoryC M. Yuasa, R. Watanabe
Y. Yahata, G. Mizutani, T. Suzuki, Y. Segawa, Y. Matsumoto, Y. Yamamoto and H. Koinuma
近年、盛んに研究されているスピントロニクス分野において、希薄磁性半導体は非常に重要な役割を果たすと考えられ
ている。Co を添加した TiO2 (Co:TiO2)は透明、かつ室温で強磁性を発現し、希薄磁性半導体の可能性が指摘されている。
しかしながら、この物質の強磁性の起源は解明されておらず、キャリア誘起磁性(希薄磁性半導体)説と、Co 金属クラス
ター説が提案されている。本研究は表面磁化の研究に有用な磁化誘起光第二高調波発生(MSHG)法を用いて、Co:TiO2 の
表面磁化を観測し、Co の存在状態と磁性の起源の考察を行った。SH 光観測配置は縦カー配置で行った。基本光は Nd:YAG
レーザーの三倍波励起の OPG/OPA を用いた(λ=770 nm)。偏光配置は入射側 S 偏
光、出射側 S 偏光で入射側に P 偏光成分を加えた。図は SH 光強度の磁場依存性
の測定結果である。±2.5 kG で SH 光強度に差がみられ、MSH 光が観測された。
今回の入射波長では、基板-薄膜界面からの SH 光は観測されないが、MSH 光が
観測できた。これは試料最表面から MSHG であることを示している。最表面では
Co 金属クラスターは酸化されてしまい、磁性に寄与しない。従って、この結果は
キャリア誘起磁性(希薄磁性半導体)である可能性が高いことを示している。また
MSH 光強度の方位角依存性の結果についても異方性がみられた。Co イオンが磁
性の起源の場合は、磁化するとき Co 金属クラスターと違い Co イオン周辺の酸素
による配位子場の影響を受けるため MSH 光強度は異方性を持つと考えられる。
これも磁性の起源が Co イオンであるということを示唆している。
26
図: SH 光強度の磁場依存性
C-a1.
N-tert-butylformamide‐
‐formamide 錯体の
錯体のフーリエ変換
フーリエ変換マイクロ
変換マイクロ波分光
マイクロ波分光
金沢大学理学部
山中勝史,
金沢大学理学部 ○山中勝史
山中勝史 田村秀,
田村秀 神谷鈴俊,
神谷鈴俊 藤竹正晴
FTMW Spectroscopy of N-tert-butylformamide-formamide complex
Faculty of Science, Kanazawa-Univ. ○M.Yamanaka, S.Tamura, S.Kamiya, M.Fujitake
[序]タンパク質はアミノ酸がペプチド結合により鎖状につながった構造をしている。今回、タンパク質分子
間の繋がりについての情報を得ることを目的として、それぞれペプチド結合をもつ
N-tert-butylformamide(NTBF)と formamide の錯体の純回転スペクトルを測定した。また、二つの窒素による超
微細構造により、スペクトルが複雑で分離が不十分のため、14NH2-COH の同位体置換分子 15NH2-COH を用い
て錯体の配位構造の決定を目指した。
[実験]ヒートノズル(90℃)に NTBF と 15NH2-COH 試料
を 1 対 1 で混合し、ネオンキャリアーガスでチャンバ
ー内に分子線を噴射させて錯体を形成させた。
8~16GHz の測定範囲で a-type 及び b-type の R-branch 遷
移を観測した。解析は、剛体回転に遠心力ひずみ効果
と核四極子相互作用を加えた有効回転ハミルトニアン
を用いて最小二乗フィットを行った。そこから分子定
formamide
N-tert-butylformamide
数を決定し、配位構造を求めたので報告する。
C-a2.
N-tert-butylformamide ミクロ溶媒和
ミクロ溶媒和クラスター
溶媒和クラスターの
クラスターの分子構造
金沢大学院自然科学研究科 ○尾本康暢
尾本康暢,
尾本康暢 本江信一郎,
本江信一郎 大橋信喜美,
大橋信喜美 藤竹正晴
Microsolvation Structure of N-tert-butylformamide
Graduate School of Natural Science & Technology, Kanazawa-Univ. ○Y.Omoto, S.Hongo, N.Ohashi, M.Fujitake
我々は生体内におけるペプチド鎖の振る舞いを理解するために、ペプチド分子ミクロ溶媒和クラスターの
純回転スペクトルを測定・解析し、その分子構造を研究している。前回の物理学会北陸支部では
N-tert-butylformamide(NTBF)に水分子やメタノール分子が配位した錯体の分子定数を報告した (1) 。今回は
NTBF の rs 構造を用いて、新たに観測した錯体を含めてその配位構造の決定を目指した。
今回報告する錯体は計 5 種類。NTBF に水分子が 1 つ配位したものが 2 種類
(図に一例を示す)、2 つ配位したものが 1 種類、メタノール分子が 1 つ配位し
たものが 2 種類である。測定にはフーリエ変換マイクロ波分光器を用いた。
N
C
ヒートノズルに NTBF 液体試料を入れ、水蒸気又はメタノールガスを約 1%混
合させた Ne をキャリアガスとして用いた。また、NTBF 水和錯体については
O
H218O, D2O を用いて同位体置換分子の分子定数を決定し、置換原子の rs 座標
NTBF
を求めた。
normal 種と同位体置換分子種の分子定数から求めた錯体の配位構造と、ペ
water
プチド分子の溶媒和構造について考察する。
(1)
Ow
2005 年度日本物理学会北陸支部定例学術講演会, E-a8, E-a9, E-a10
27
C-a3.
N,N−ジメチルアセトアミド−水錯体のフーリエ変換マイクロ波分光
金沢大学理学部
○桑野 恵, 大橋 信喜美, 藤竹 正晴
FTMW Spectroscopy of N,N-Dimethylacetamide-H 2O complex
Faculty of Science, Kanazawa-Univ. ○M. Kuwano, N. Ohashi, M. Fujitake
N,N−ジメチルアセトアミド(CH3)C(=O)N(CH3)2 は、フ
ォルムアミド HC(=O)NH2 の三つの水素をメチル基に置
換した構造をもつペプチド分子の一つである。生体中で
はペプチド分子を含む有機分子が重要な役割を果たして
おり、このような分子の生体内での運動を調べる上で、
N,N−ジメチルアセトアミドに水分子が配位した水錯体
のメチル基内部回転について研究することは有用である
と考えられる。
金沢大学分子物理学研究室では、すでにモノマーのメ
N,N−ジメチルアセトアミド−水錯体
チル基内部回転ポテンシャル障壁の高さを発表した[1]。今回の研究では、N,N−ジメチルアセトアミド−水
錯体の測定を行い、その結果から、N,N−ジメチルアセトアミドに水分子がついたとき、メチル基内部回転
ポテンシャル障壁の高さがどの様に変化するかを発表する。
[1]M. Fujitake, Y. Kubota, N.Ohashi, J. Mol. Spectrosc. 236 (2006) 97-109
C-a4.
乳酸メチル−水錯体のフーリエ変換マイクロ波分光
金沢大学院自然科学研究科
○本江信一郎, 藤竹正晴
FTMW Spectroscopy of Methyl lactate-H 2O complex
Gr aduate School of Natur al Science & Technology, Kanazawa-Univ. ○S.Hongo, M.Fujitake
我々の研究室では生体関連分子に注目し研究に取り組んでいる。その一つとして、不斉炭素を含む乳酸メ
チルを取り上げ、それに水分子が配位した錯体の研究を行っている。
乳酸メチルの最安定構造は、
分子内にある C=O と HO-C*が水素結合するものであると報告されている[1]。
実験では水分子を含んだキャリアーガス(Ne)を用いて、乳酸メチル
を真空状態であるチャンバー内にパルス
状に噴射した。その結果、乳酸メチルモ
E
A
505-404
ノマー以外の強いスペクトルを観測する
事ができた。また、分子内に持つ 2 個の
メチル基(CH3-O,CH3-C*)のどちらかに
MHz
よって分裂した A-species と E-species も観測することができた。これらのスペク
トルを解析し、決定した分子定数と ab initio 計算で求めた乳酸メチル−水錯体の
最安定構造の分子定数を比較したところ、左図のように乳酸メチルの分子内水素
乳酸メチル−水錯体
結合に、水分子が入り込むような構造であった。
[1]P. Ottaviani, B. Velino, W. Caminati Chemical Physics Letter428 (2006) 236-240
28
C-a5.
メチルメルカプタン(CD3SH)のマイクロ波分光
富山大 理 松島達朗、楠恵一、小林かおり、常川省三
Microwave Spectroscopy of Methyl Mercaptan (CD3SH)
Department of Physics, University of Toyama
T. Matsushima, K. Kusunoki, K. Kobayashi, and S. Tsunekawa
CD3SH 分子はメチルメルカプタン分子(CH3SH)のメチル基の3つの水素が重水素に置き換わった重水素置換体であ
る。ノーマル種のメチルメルカプタン分子(CH3SH)は、すでに星間分子として確認されており、その重水素置換体も
今後観測される可能性がある。
本研究では CD3SH の 200 から 240 GHz までのマイクロ波分光を行い、帰属遷移を増やすこと、ねじれ振動第一励起
状態の帰属を行うこと、すでに測定、解析、帰属が行われている 12∼200 GHzまでの帰属データと、本実験での帰属
データをあわせ Fitting を行い、分子定数を改良することの 3 つを目的として実験を行っている。
実験では、周波数変調をもちいて、200−240 GHzまでのスペクトルデータを途切れることなく測定した。スペクト
ルの周波数は挿引周波数を上げた時と、下げた時の平均値を測定値とした。
帰属には IAM Hamiltonian をもちいて周波数(計算値)を求め、シリーズごとに級数展開、Combination で確認を
行いながら帰属を進めた。帰属データの大半はねじれ振動基底状態(Vt=0)のものであった。ねじれ振動第一励起状態
(Vt=1)の周波数を算出するためには、ねじれに効く分子定数の決定が必要なので、低い J、K でねじれに効く分子定
数を決定しながら、計算値を参考にして帰属を進めている。現在までに Vt=0、A 対称種 443 本、E 対称種 526 本、Vt=1、
A 対称種 37 本、E 対称種 51 本の 1057 本が帰属されている。
C-a6.
メタノール(CH318OH)のマイクロ波分光
富山大 理
篠崎康博、木村将士、小林かおり、常川省三
Microwave Spectroscopy of CH318OH
Department of Physics, Faculty of Science, University of Toyama
Y. Shinozaki, M. Kimura, K. Kobayashi, and S. Tsunekawa
我々は主に 200 GHz 以上でのマイクロ波分光を行っている。
A−
A+
この研究は、今までのデータと新しく帰属したデータを含めて
解析することを目指した。
メタノール (CH318OH)は CH3 基と OH 基が内部回転するね
E
じれ振動を持つ分子で、それにより回転スペクトルは複雑にな
る。200 GHz 以下での測定及び解析は過去に報告されている
が、
200 GHz 以上のラインも含めた解析はまだ不完全である。
278170
使用している分光器は、我々の研究室で開発した装置である。 278140
Vt=0
発振源の基本周波数は 60∼87.5 GHz であり、3 逓倍器を使用
J=6←5
して 200 GHz 以上のシグナルを出している。その 3 逓倍器か
63-←53- A− 278146.044 MHz
ら 3 逓倍のほかに 4 倍、5 倍のシグナルが同時に出ていること
6
3+←53+ A+ 278146.879 MHz
を確認した。その一例、4 倍波での Vt=0、J=6←5 のラインを
図に示す。4 倍、5 倍で測定したラインを主に a-type 遷移の解
63 ←53
E 278161.055 MHz
析に利用した。
[1] Y. Duan, L. Wang, and K. Takagi, Journal of Molecular Spectroscopy, 193, 418-433 (1999)
29
C-a7.
イクステンディド
イクステンディド・ネガティブ・
ネガティブ・グロー・
グロー・セルを
セルを用いた可変遠赤外
いた可変遠赤外分光
可変遠赤外分光
○御厩 純一、山岸 篤史、林 健介、高橋 一将、米津 朋尚、森脇 喜紀、高木 光司郎、天埜 堯義 A、松島 房和
富山大・理、カナダ・ワーテルロー大学 A
TuFIR spectroscopy with Extended negative glow cell.
○J.Onmaya, A.Yamagishi, K.Hayashi, K.Takahashi, T.Yonezu, Y.Moriwaki, K.Takagi, T.AmanoA, F.Matsushima
Department of Physics, Toyama University. University of Waterloo,CanadaA
H3+のスペクトルは、最初に実験室で観測されたが[1]、その後、宇宙空間でも観測された。この分子は、宇宙の歴
史や星間化学、天文学などで重要な位置を占める。しかしH3+は対称性がよくダイポールモーメントを持たないため、
回転スペクトルを観測するためには、ダイポールモーメントを持つH2D+、D2H+[2]のようなD化物を調べる。我々の
研究室でも過去にH2D+の生成が観測(Jka Kc= 21 1-11 0, 31 3-21 2, 20 2-10 1)されている。
今回、H2D+、D2H+の強いスペクトルが観測できるように、コイルによってセル中に均一な磁場を発生させる、イ
クステンディド・ネガティブ・グロー・セル[3][4]を作成した。このセルを液体窒素温度に冷却し、ホローカソードを用
いた直流放電により生成されるカチオン分子の観測を試みた。
[1] T.Oka,Phys.Rev.Lett.45
45,531(1980)
45
[2] T.Amano, T.Hirao, J.Mol.Spectrosc,233
233,7(2005)
233
[3] S.Civis,A.Walters,M.Y.Tretyakov,S.Bailleux,and M.Bogey,J.Chem.Phys.108
108,8369(1998)
108
[4] F.C.De Lucia,E.Herbst,G.M.Plummer,and G.A.Blake,J.Chem.Phys.78
78,2312(1983)
78
C-a8.
半導体レーザーを用いた Ca+イオンの分光
富山大学理学部 ○梶澤祐太、笠原圭太、長井信吾、永田正浩、森脇喜紀、松島房和
Spectroscopy of Ca+ ion using an ECLD
Dept. of Physics, Toyama University Y.Kazisawa,K.Kasahara,S.Nagai,M.Masahiro,Y.Moriwaki,F.Matsushima
レーザー冷却はイオントラップで捕獲した単一(数個)の Ca+イオンの S1/2-P1/2 遷移(①⇔②)と P1/2-D3/2 遷移(②⇔③)の冷
却サイクルを構成することでイオンを冷却する。
我々は TuFIR を用い D3/2-D5/2 の遷移周波数を高精度での決定を目指す。
これは D3/2 から D5/2 への励起が冷却サイクルから外れイオンが棚上げすることで高精度に測定できる。高精度で周波数
を決定すると TuFIR の校正や評価に用いることができる。
レーザー冷却の光源には、半導体レーザーと回折格子で構成された littrow 配置の外部共振器型レーザーを用いる。こ
のレーザーはペルチエ素子を使い温度の制御と調節を行い、回折格子に取り付けられたピエゾ素子により共振器長の微調
整を行う。この方法により Ca+イオンの S1/2-P1/2 遷移周波数の前後数
GHz 掃引することができる。イオントラップは3つの回転双曲面を組み
合わせたもので、これに交流電場をかけることで擬似的にポテンシャル
極小を作りそこにイオンを捕捉できる。レーザー冷却を行うためには高
真空を維持する必要があるためロータリーポンプとターボ分子ポンプ
を使用し、10-9Torr 程度の真空度を達成する。これらの装置を使ってま
ずは Ca+イオンの分光を行った。
30
C-a9.
Rb 原子のレーザー冷却
富山大・理 ○嶽良太、熊田泉実、森脇喜紀、松島房和
Laser cooling of Rb atoms
Univ. of Toyama ○ R. Take, I. Kumada, Y. Moriwaki and F. Matsushima
中性原子のレーザー冷却・トラップは、当初は理想的な準位構造、共鳴周
波数付近で発振する色素レーザーがあること、原子線の作り易さなどから Na
原子に限られていた。最近では、半導体レーザーの開発に伴い質量の大きい
Rb や Cs などのアルカリ金属、アルカリ土類金属、希ガスなどの原子を用い
たレーザー冷却・トラップが行われるようになってきている。
本実験では、外部共振器型半導体レーザーを用いて磁気光学トラップを構
築し、85 Rb 原子を冷却・トラップすることを目標としている。図 1 に示した
飽和吸収分光法で得られる信号で、レーザー周波数を精密に制御することが
できる。現在、外部共振器型半導体レーザーは製作したサーボロック電子回
路で周波数ロックに成功しているが、外部ノイズにより周波数の安定が不十 図 1: Rb 飽和吸収スペク
分である。また、四重極磁場を発生させるためのアンチヘルムホルツコイル、 トル
さらに外部磁場を打ち消すための補正用コイルを製作した。今後、磁気光学トラップを成功させ、冷却
された原子の温度を測定したいと考えている。さらに、構築した磁気光学トラップのシステムを用いて
冷却された気体中での原子同士の衝突、分子の生成などの物理現象を観測する予定である。
1
31
C-p1.
ナノ結晶 CsPbX3 (X = Cl, Br) における非常に強い励起子発光
福井大学 遠赤外領域開発研究センター ゚大澤弘武 斎藤忠昭 近藤新一
Ex tremely- strong ex citon lu min e scen ce in n anocr ystalline CsPbX 3 (X = Cl, Br )
Resear ch Cen ter for Develop men t of Far-In frared Reg ion, Un iv ersity of Fuku i
H.Oh sawa, T. Saito , S. Kondo
18
14
a
CuCl/Al2O3
d∼80nm
77K
RS
12
F
10
1
8
6
F
4
2
2
0
3.15
3.20
3.25
3.30
3.35
700
F
600
b
X
500
400
CsPbCl3 /Al2O3
d∼110nm
77K
F
1
300
200
100
RS
X
2
0
2.90
2.95
3.00
3.05
3.10
3.15
Photon energy (eV)
C-p2.
ナノ結晶 CuX (X = Cl, Br) における桁違いに強い励起子発光
福井大学遠赤外領域開発研究センター 三上 研太,斉藤 忠昭,近藤 新一
Extremely-strong exciton luminescence in nanocrystalline CuX (X = Cl, Br)
Research Center for Development of Far-Infrared Region, University of Fukui K. Mikami, T. Saito, S. Kondo
Normalized luminescence intensity
300
金属ハライドは化合物間の接触による固体化学反応の傾向が非常に強い。
6
Z3
CuCl/KBr
この性質を利用して我々は、10数年来、数多くの新奇な光機能性物質を作
4
d∼110nm
1
250
77K
I1
2
製し、その光学的性質を報告してきた(60件以上)。今回の別の講演にお
2
0
いて、ナノ結晶CsPbX3(X = Cl, Br)が、従来からよく研究されているCuXに
200
3.20 3.25 3.30
比べて、100倍以上の強い励起子発光を示すことを報告するが、これも一例
である。本講演では、我々の作製したナノ結晶 CuXが従来のCuXに比べて
150
1: as-depositd
2: 70℃,3min
数千倍ないし1万倍もの、桁違いに強い励起子発光を示すことを報告する。
3: 95℃,30min
4: 95℃,90min
100
3
CuXは励起子の結合エネルギーが通常の半導体に比べて非常に大きい
(CuCl: 190meV、CuBr: 108meV)ので、固体の励起子研究のモデル物質と
50
4
して、光物性の草分け時代(1960年代)から現在に至るまで多様な研究が
2
1,2
行われている。量子テレポーテション(量子状態伝送)に使う もつれ合
1
0
った光子対 の発生に半導体で初めて成功した実験(K. Edamatsu et al.,
2.6 2.7 2.8 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3
Nature 43, 167 (2004))もCuClの励起子分子を用いて行なわれた。このよう
Photon energy (eV)
な実験の成否は励起子発光の 効率の良さ に強く依存する。
図の inset はスペクトル 1,2 の拡大図で、CuCl の励起子発光帯が観測されている。CuCl と KBr を固体化学反応させて
作製したナノ結晶 CuBr は、
従来の CuBr の数百倍の強度
(積分強度では数千倍)
を有する束縛励起子発光を示す
(LNT)
。
RT では数万倍の自由励起子発光となる。
32
Normalized luminescence intensity per absorbed photon
16
Normalized luminescence intensity
我々は今までにナノ結晶 CsPbX3 (X = Cl, Br)の LNT で
のレーザー発振と RT での光誘導放出を観測した。これ
らは励起子の発光効率が非常に高いことに基づく。ナノ
結晶 CsPbX3 が非常に強い励起子発光を示すことは既に
報告したが、一般にはあまり認識されていない。そこで
今回は、強い励起子発光を示すモデル物質として数多く
の研究がなされている CuX (X = Cl, Br)と我々の CsPbX3
(X = Cl, Br)とを直接比較し、後者が前者に比べて 100 倍
以上の強い励起子発光を示すことを、同一の実験装置に
よる実測データを用いて説明する。
図中の F は励起子発光、RS は励起光の Rayleigh 散乱
を示す。Rayleigh 散乱強度は CuCl と CsPbCl3 とで同程度
であることを念頭に同図を見れば参考になる。我々は、
CuBr についても桁違いに強い励起子発光を示すナノ結
晶を作製した(別の講演を参照)
。
C-p3.
SrAl2O4:Eu,Dy における長残光の励起スペクトルの帰属
福井工業高等専門学校
島田 佳明,坂田 豪,北浦
守
Origin of excitation spectra for long-lasting afterglow in SrAl2O4 :Eu,Dy phosphors
Fukui National College of Technology
Y.Shimada, T.Sakata, M.Kitaura
SrAl2O4:Eu,Dy 蛍光体は, 長残光物質としてよく知られている[1]. この物質では Eu2+からの発光
が観測され, 光によって作られた電子とホールが Eu2+サイトで再結合する. しかし, 光吸収のプロ
セスについてはまだよく分かっていない. 蛍光は Eu2+の 4f→5d 吸収により生ずることが, これま
での研究から確認されている. しかし, 残光についてはまったく調べられていない. そこで, 残光
の励起スペクトルを測定して, 蛍光のそれと比較した. 実験では, 5 分間光を照射し, 遮断した後 10
分間にわたって残光強度の測定を行った. 励起光の波長をかえてその積分強度を求めることで, 残
光の励起スペクトルを得た.
右の図には, SrAl2O4:Eu,Dy 蛍光体の残光に対する
1.5
励起スペクトルを示す. 残光は 2.5 eV から励起され,
afterglow
SrAl O :Eu,Dy
2.8 eV 付近まで徐々に上昇する. 2.8 eV から 4 eV ま
fluorescence
RT
ではほぼ一定の強度を保つが, その後は再び上昇する.
1.0
一方, 蛍光もまた 2.5 eV で励起されており, このこ
とは 2.5 eV∼4 eV の範囲における残光と蛍光が同じ
0.5
プロセスによって生じていることを示す. 4 eV 以上に
おいて蛍光は減少しており, この領域では残光と蛍光
の励起プロセスが異なることを示す. 講演では拡散反
0
射のデータもあわせて励起過程を議論する.
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
[1] T.Matsuzawa et al.: J. Electrochem. Soc., 143 (1996)
PHOTON ENERGY (eV)
2670
4
INTENSITY (arb. units)
2
C-p4.
InN における顕微赤外反射スペクトルの解析
福井大学
柳川徹,栗原健太, 福井一俊, 山本暠勇
Analysis of Microscopic Infraredreflectance Spectra of InN
Fukui Univ T.Yanagawa, K.Kurihara, K.Fukui, A.Yamamoto
我々はこれまで Al2O3 基板上の InN の赤外反射測定を行い、キャリアによるプラズマ反射と基板からの多重反射を考慮した
式を用いて反射スペクトルのフィッティングを行い、光学的にキャリア密度等の
1.0
物性値を求める研究を行ってきた。今回は、この解析方法を顕微赤外測定に応用
調べるために顕微赤外反射スペクトルのマッピング計測を行い、得られたそれぞ
れの反射スペクトルと可視画像を比較し、フィッティングで得られたパラメータ
が外観とどのような関連性があるのか検討した。
0.8
Reflectance
した場合、顕微反射スペクトル同士の違いがどのような物理的意味を持つのかを
0.6
0.4
0.2
試料全体の反射スペクトル測定は大型放射光施設 SPring-8 の BL43IR 赤外物
0.0
性ビームライン(吸収・反射分光ステーション)で行い、また局所部分の顕微反射
cm-1 付近の最大反射領域では 64 点中 1 点を除きほぼ同一強度でありながら、650
∼950
cm-1 にかけては反射率の強度に大きな差異が見られている。この領域のス
ペクトル形状は主にキャリアによるプラズマ振動に依存するため、講演では各フ
ィッティングパラメータのマッピング間の相関を可視画像も含め議論したい。
33
o bs
ca lc
0.8
Reflectance
の領域で、スポットサイズは各々、50 μm × 50 μm、8 × 8 マス(400 μm × 400 μm)
測定結果とそのフィッティングの一例を図2に示す。図1に示すとおり、600
1000
1.0
FT-IR)と赤外顕微鏡(VARIAN 600 UMA)を用いた。測定領域は 450∼6000 cm-1
図 1 にマッピング測定を行った全 64 点の反射スペクトルを重ねて示す。また、
800
Wavenumber[cm -1 ]
図1、各位置での反射スペクトル
測 定 及 びマ ッ ピン グ 計測 に はフ ー リエ 変 換赤 外 分光 光 度 計(VARIAN 3100
の合計 64 点で測定を行った。波数分解能は 4cm-1 である。
600
0.6
0.4
0.2
0.0
600
800
1000
W ave n u m b e r [ c m - 1 ]
図 2、InN の反射スペクトルとフィッティング
C-p5.
AlN の反射スペクトルの角度依存性
福井大遠赤 A, 金沢大工B,鈴木文也 A, 岸田正明 A, 福井一俊 A, 直江俊一 B
Angle dependence of reflection spectra in AlN
Univ. of FukuiA,Kanazawa Univ.B, F.SuzukiA, M.KishidaA, K.FukuiA, S.NaoeB
AlN はⅢ−Ⅴ族窒化物半導体の中で最大のバンドギャップを持ち、Ⅲ−Ⅴ族窒化物半導体の光学特性を理解する上で
重要な物質の1つである。特にΓ点で基礎吸収端を担うバンドが GaN の場合と反転していることが、現行の c 面成長
AlN 薄膜の発光効率の低さと関係している。そこで今回、我々は AlN の基礎吸収端近傍の光学定数の異方性を c 面成長
薄膜から求めるために、反射スペクトルの入射角依存性を基礎吸収端近傍で測定した.
連続光源としてはシンクロトロン放射光(分子科学研究所極端紫外光実験施設(UVSOR) BL7B 3m 直入射分光ライン)
を用いた。
光は強く直線偏光しており、p 配置での反射測定となっている。
測定温度は 20K、入射角度は c 軸(試料法線)を 0 度として、6 度から 60 度
0.20
Incident Angles
6 deg
60 deg
0.18
図1は入射角 6 度及び 60 度での反射スペクトルを示している。60 度の
スペクトルにおいては 6.05eV 付近に波構造の異常が観測され、波の振幅
の減少と位相のずれが見られる。
これは、1) m 面(c 面に垂直)側では 6.05eV
Reflectance
で行った。
付近で吸収が始まっていること。2)まだ透過領域である c 面側では干渉が
0.16
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
続いていること。を示しており、m 面成長試料を用意しなくても異方性を
6.0
6.2
6.4
Photon Energy (eV)
調べることが出来ることを示している。講演では実験結果に対する解析と、
基礎吸収端近傍の光学定数の異方性について議論したい.
図 1.AlN の反射スペクトル
C-p6.
AlGaN 混晶の励起子発光とその発光減衰曲線
福井大遠赤 A, 金沢大工B 鈴木将孝 A,中川尚人 A, 坂井友英 A, 福井一俊 A, 直江俊一 B
Excitonic Photoluminescence and its Time Resolved Decay Curves of AlGaN Alloys
Univ. of FukuiA Kanazawa UnivB M.SuzukiA, N.NakagawaA, T.SakaiA, K.FukuiA, S.NaoeB
我々はⅢ−Ⅴ族窒化物半導体の励起子発光(UV発光)の発光メカニズムの解明を目的として、三元混晶 AlGaN を対象
に、発光減衰曲線の測定を行っている。これまでの我々の測定で、AlGaN のUV発光は異なる時定数を持つ3つの単一
指数関数成分から成っていることが分かった。そこでこれら 3 成分を fast、middle、slow 成分とし、その由来を調べる
ために、バンド間励起によって生じたUV発光の発光減衰曲線を発光帯全域で測定した。またそれらの温度依存性を 10K
∼170K の範囲で測定した。
励起光源には、シンクロトロン放射光源(分子科学研究所極端紫外光
定 は シ ン グ ル バ ン チ 運 転 モ ー ド 時 (177ns 間 隔 、 パ ル ス 幅 約
450ns(FWHM))に時間相関単一光子計数法を用いて行った。
図1に発光ピーク位置での Al0.67Ga0.33N の発光減衰曲線の温度依存
性を 10K から 170K の範囲で示す。この図より 10K から温度上昇につ
れ、減衰曲線の長い部分が急速に落ち、緩和時間の 3 成分の内、最も長
い Slow 成分主体から、Middle、Fast 成分主体へと温度上昇に伴って移
り変わっていることが良くわかる。講演時には、これら 3 つ緩和時間成
分各々の発光エネルギー位置依存性と、またそれらの温度依存性につい
10K
30K
50K
70K
90K
110K
Al0.67Ga0.33N
LOG PL Intensity (arb. units)
実験施設(UVSOR) BL7B 3m 直入射分光ライン)を使用し、時間分解測
0
20
40
60
Time(ns)
ての解析結果をもとに発光帯の構造について議論したい。
図1.発光ピーク位置での発光減衰曲線
34
130K
150K
170K
80
C-p7.
PbCl2:Br−結晶における発光特性の濃度依存性
福井大工 徳永 修児, 伊豆原 翔, 中川 英之
Concentration dependence of luminescence properties in PbCl2:Br−crystals
Syuji Tokunaga, Sho Izuhara, and Hideyuki Nakagawa
Department of Electrical & Electronic Engineering, Fukui University
Ratio of Intensity [V2/V1]
鉛ハライド (PbX2:X=Cl, Br, I)は常温で紫外線や放射線の照射によって黒化することが知られて
いる.その感光過程では結晶表面からハロゲンが脱離して金属鉛微粒子が結晶中に残されるが,
光励起直後から分解に至る素過程は明らかではない.この感光過程を解明するには,光励起直後
に起こる励起子の格子緩和と電子正孔対分離機構にハロゲンがどのような役割を演じるかを明確
にしなければならない.本研究では,PbCl2 結晶に異種のハロゲンである Br−イオン を微量添加し,
励起子状態が受ける影響を発光特性に注目して調べた.
PbCl2:Br−結晶を母体の基礎吸収端尾部の 4.4eV で励
1.2
起すると,3.15eV と 2.95eV に 2 つの発光が観測される.
1.0
以後,これらをそれぞれ V1 発光帯と V2 発光帯と呼ぶ.
−
0.8
今回は,その積分強度比を幾つかの Br イオン濃度に
0.6
対して決定した.その結果を図 1 に示す.縦軸は V1 発
光帯に対する V2 発光帯の積分強度比を,横軸は Br−イ
0.4
オンの濃度検定した結果を示す.Br−濃度の増加とと
0.2
もに積分強度比が比例して増加する.もし,V1 発光を
0.0
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Br−イオン 1 個が関与する緩和励起子状態からの発光で
Concentration of PbCl2-PbBr2 [mol%]
−
あると考えると,V2 発光は Br イオン 2 個が関係した
図 1:積分強度比(V2/V1)の Br−濃度依存性.
緩和励起子状態からの発光と考えられる.
C-p8.
カドミウムハライド結晶における Co2+イオンの偏光吸収スペクトル
福井大工 松田 紘和,西村 光郎,中川 英之
Polarized absorption spectra of Co2+ ions in Cadmium halide crystal
Dep. Of Electrical & Electronics Engineering, Fukui University
H.Matsuda, M.Nishimura, H.Nakagawa
カドミウムハライド結晶に遷移金属イオン(Co2+)を不純物として添加した結晶の電荷移動型遷移に
関与する励起状態の構造を解明するため偏光吸収スペクトルの測定を行った.カドミウムハライド結晶
晶の C 軸方向とそれに垂直方向に偏った偏光に対して明確
な二色性が期待できる.
本研究で用いる結晶は電荷移動型遷移の波長域では強い
吸収を示す.また,C 軸に平行な面を端面研磨するのは困
難である.そのため劈開面に沿って薄く劈開された結晶に
C 軸に対して 45°傾いた方向から偏光を入射し,正常光線,
異常光線に対するスペクトル(図 1)を測定した.この結
果から計算によって偏光吸収スペクトルを求めた.講演で
は得られた偏光吸収スペクトル構造の同定を行う.
Absorption Coefficient(cm-1)
は層状結晶であるため結晶の C 軸方向とそれに垂直な方向とで著しい異方性を持っている.従って,結
300
o-ray
e-ray
200
100
図 1
0
2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4
Photon Energy(eV)
45 ° 入 射 に お け る CdI2:Co2+
(0.1mol%)結晶の吸収スペクトル
35
C-p9.
Y 欠損 Y(P,V)O4:Eu における発光特性のマグネシウム添加効果
福井高専 A, 福井大工 B 坂田 豪 A,稲田洋平 B,中島康夫 B,島田 佳明 A,北浦 守 A,中川英之 B
Effect of Mg2+ doping on luminescence properties in Y(P,V)O4:Eu with Y deficient
A
FNCT , University of FukuiB
T.SakataA, Y.InadaB, Y.NakajimaB, Y.ShimadaA, M.KitauraA, H.NakagawaB
赤色系長残光性物質として Y2O2S:Eu,Mg,Ti が知られている.この物質は化学的に不安定で光照射
によって劣化する.そのために硫黄を含まない赤色系長残光性物質の開発が望まれている.本研究
では Y3+イオンが欠損した Y(P,V)O4:Eu 赤色蛍光体に Mg2+イ
15K
Y(P,V)O :Eu,Mg
オンを共添加したところ,弱いながらも残光が観測されたの
1.0
でその結果を報告する.残光が最も強く観測されたサンプル
Excitation Emission
0.8
の組成は Y0.6P0.65V0.35O3.39:Eu0.08, Mg0.02 であった.現在のところ, 0.6
X線回折による構造解析はまだ行っていない.このサンプル
0.4
の発光スペクトルと励起スペクトルを右上の図に示す.発光
0.2
スペクトルは鋭い構造からなり, その最も強いピークは 625
0
200
300
400
500
600
700
800
nm に位置する.この発光位置で測定した励起スペクトルは,
Wavelength(nm)
330 nm から急激に立ち上がり 260 nm で最大に達する.サン
プルを水銀灯で励起したところ,赤色の残光が 5 分程度持続
Y(P,V)O :Eu,Mg
することが分かった.このサンプルに 15K で 300nm の光を
EX.300nm
30 分間照射した後に測定した熱発光グロー曲線を右下の図に
EM.624nm
示す.熱発光が 250 K から現れており,そのグローピークを生じ
させるトラップが残光を引き起こすと考えられる.現在は Y 量およ
び共添加種の検討を引き続き行っている最中である.
[1] W.M.Yen and M.J.Weber, INORGANIC PHOSPHORS, CRC
0
50
100
150
200
250
300
PRESS (2004), p.357.
Intensity(arb. units)
4
Intensity(arb. units)
4
Temperature (K)
C-p10.
Zr 添加 YPO4:Mn における発光増大機構の解明
稲田洋平,中島康夫,北浦 守 A,金吉正実 B,中川英之
福井大工,福井高専 A,信越化学 B
YPO4:Mn に Zr を共添加すると青色発光が著しく増大す
Emission Spectra
る . 本 研 究で は ,そ の 発 光増 大 機構 解 明 を目 的と し
600
YPO4:Mn と YPO4:Zr,Mn の発光スペクトルの測定結果
を右図に示す.励起位置は Xe 放電によるエキシマ発光の
エネルギー位置 7.2eV である.上の図の YPO4:Mn では
9.4K において 1.9eV に赤色発光,2.5eV に青色発光が観測
される.300K においては,赤色発光は観測されず青色発
光だけが観測される.赤色発光,青色発光共に Mn2+から
Emission Intensity [arb. units]
YPO4:Mn および YPO4:Zr,Mn の光学的性質を調べた.
Exci. 7.2eV
YPO4:Mn
9.4K
300K
×20
300
0
10000
YPO4:Zr,Mn
5000
の発光であると推測される.一方,下の図の YPO4:Zr,Mn
では青色発光が支配的である.
この発光スペクトルの変化
は Mn 周りの環境場の変化に起因すると報告されている[1].
講演ではこの変化について,励起スペクトル,ESR スペ
クトルを交えて考察する.
[1] 中島他 日本物理学会 2006 年秋季大会 25aPS47
36
0
1
2
3
4
Photon Energy [eV]
図: YPO4:Mn,YPO4:Zr,Mn の発光スペクトル.
C-p11.
MgAl2O4:Eu2O3 結晶における発光スペクトルの微細構造
福井大工 Azah Ahmad Bakir, 中川英之
Fine Structure of Luminescence Spectra in MgAl2O4:Eu2O3
Dept. of Electrical & Electronics Eng.,Univ. of Fukui Azah Ahmad Bakir,中川英之
本研究では,Eu2O3 を不純物として添加した MgAl2O4:Eu2O3 単結晶を赤外線集中加熱炉により FZ 法で作製し,その
単結晶の吸収,発光及び発光の励起スペクトルの測定を行った.図 1 に Eu3+による吸収帯位置 4.6eV で励起したときの
Eu3+イオン中心の発光スペクトルを示す.測定は 4.4K で行った.横軸は光子エネルギー,縦軸は発光強度を示し最大強
度を 1 に規格化している.1.7eV 付近でのブロードな発光帯は
MgAl2O4:Eu3+ Emission Spectra
母体結晶でも観測され,Al3+の欠陥によるものと考えられてい
T=4.4K
1.0
る.このことの根拠については講演で詳しく報告する.シャー
ち 5D0→7Fj(j=0∼6)遷移に対応する発光である.講演ではこ
れらの発光スペクトルの微細構造に関するアサイメントと吸収
及び励起スペクトルの解析結果を報告する.
【参考文献】
加藤誠之 福井大学修士論文(2005)
Exci. at 4.6eV
Emission Intensity(a.u)
プな発光構造は Eu3+の 4f 電子配置の多重項間の遷移,すなわ
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
1.6
Yong-Nian Xu and W.Y.Ching,Phys. Rev. B43(1991)4424
1.7
1.8
1.9
2.0
Photon Energy(eV)
MgAl2O4:Eu の発光スペクトル
37
2.1
D-a1.
水素用磁気冷凍 −磁性体磁気特性とAMRサイクル−
金沢大理, 物質・材料研究機構 強磁場 A
近藤 卓矢, 池田 正和, 松本 宏一, 神谷 宏治 A , 沼澤 健則 A
Magnetic refrigeration for hydrogen liquefaction -Magnetic characteristics and AMR cycleDept. of Phys. Kanazawa Univ., NIMSA
T.Kondo, M.Ikeda, K.Matsumoto, K.KamiyaA , T.NumazawaA
での温度範囲で磁気相転移の起こる磁性体の磁化やエ
次世代の水素エネルギー社会では、水素の貯蔵、輸
送において密度の高い液化水素が有望である。金沢大
ントロピーの変化について報告してきた。
学と物質・材料研究機構では、水素液化用磁気冷凍の
水素液化の為には、このような幅広い冷凍温度幅が
研究を進めている。
要求される。このため磁性体に磁場変化を与えたとき
現在、一般的に用いられている気体の膨張・圧縮を用
に起こる磁気熱量効果と、熱交換ガスの流れを同期さ
いた気体冷凍機では高い熱効率を得られていない。そ
せて寒冷を発生させる AMR(Active Magnetic Regen-
れに対し磁気冷凍は、原理的にはカルノー効率が期待
できるために気体冷凍よりも高い熱効率をもつ冷凍機
erator) サイクルを採用することを考えている。また現
在では、これらの磁性材料を用いて磁気冷凍サイクル
が実現できると注目している。
の数値解析を行っている。
我々は、これまで磁気冷凍に用いる磁性材料として、
講演では、AMRの原理、磁性材料の磁気特性及び、
水素液化温度である 20K から液体窒素温度の 77K ま
磁気冷凍サイクルの数値解析結果を報告する。
D-a2.
!
" # $
"
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)*+
&
1
$
140
$
Attenuation (dB/cm)
'*
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ρ
σ
ρ
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σ
120
100
2
".%
"
-
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1
- ,3"
,3 ' (4(*5&(('6
38
10MHz
80
60
40
0.5
,%
0.1MPa
0.5 MPa
1.0 MPa
1.5 MPa
2.0 MPa
2.5 MPa
1
1.5
2
Temperature (K)
97%Aerogel
2.5
D-a3.
Aerogel 中での液体 3He の超音波測定
金沢大理
三原信吾、辻井宏之、阿部聡、鈴木治彦、松本宏一
Acoustic properties of liquid 3He in Aerogel
Dept. of Phys. Kanazawa Univ.
S. Mihara,H. Tsujii,S. Abe,H. Suzuki,K. Matsumoto
物質の新しい状態の情報を得るとき、その性質が外的な影響によりどのように変化するの
かを調べることは有効な手段である。低温における液体 3He は不純物を自然に排除してしま
う性質を持っている。この性質は純粋なフェルミ流体の研究を可能にしていたが、一方で系
への不純物の導入ができなかった。しかし Aerogel を用いることで超流動 3He に不純物を導
入できるようになってからは盛んに研究が行われるようになった。Aerogel は SiO2 の鎖状高
分子から成り立っている空孔率が高い物質である。Aerogel 中での液体 3He の超流動転移で
は量子相転移が存在することが発見されており、非常
に興味深い系である。また、その性質は未だ解明され
ていない問題も多くあり、我々は超音波によるこの系
の研究をするための準備を進めているところである 。
超流動 He 中では通常の液体中には存在しない特有
の音波モードがいくつかあり、さらに Aerogel 中に
He を閉じ込めた系では Aerogel によって音波モード
が変調を受け、新しい音波モードが存在する。これら
の音波モードの研究は超流動の性質を明らかにする
ための有効な手段である。我々のグループでは、核断
熱消磁冷凍機による 1 mK以下の超低温領域で超音波
測定を行い、これらの音波モードを観測・解析してい
く予定である。
現在、実験セルの製作がほぼ終了し、冷却の準備に
取りかかっている。講演では実験の詳細等について報
告する。
D-a4.
Enriched
195
Pt の核磁性
金沢大・理、カザン大 *
上野歩、桑田成康、藤井貴久彦、阿部聡、松本宏一、鈴木治彦、 Mamin Georogy*
Nuclear magnetism of Enriched
195
Pt
Dept. of Phys, Kanazawa Univ., Kazan Univ.*
A. Ueno, N. Kuwata, K. Fujii, S. Abe, K. Matsumoto, H. Suzuki, G. Mamin*
遷移金属 Pt は 6 つの同位体のうち 195Pt
のみが核スピン 1/2 を持ち、その天然存在
195
比は 33.8%である。
Pt の濃度を変える
ことにより 電子系を変化させることなく
核スピン間の距離を変えることができる。
我々は、195Pt の存在比を変えた enriched
195
Pt を用い NMR 測定と、2K~300K の温
度領域で SQUID を用いた直流帯磁率測定
を行った。その結果、20K 以下の領域にお
いて
195
Pt の濃度、試料の形状に依存した
磁化の増大が観測された。より低温での詳細を調べるために交流インピーダンスブリッジ
LR-700 を用いて行った希釈冷凍機温度領域での帯磁率測定により、その増大はピークを持
つ結果が得られた(図)
。今回はこれについて報告する。
39
D-a5.
Direct magnetic coupling between nuclei of 141Pr and 3He in the
system of “solid Van Vleck paramagnet PrF3 – liquid 3He”.
A.V.Savinkov1,2, H.Suzuki1, M.S.Tagirov2, A.V.Klochkov2, K.R.Safiullin2, A.N.Yudin2,
D.Irisov2.
1
2
Department of Physics, Kanazawa University, Kakuma–machi, Kanazawa 920-1192, Japan
Department of Physics, Kazan State University, Kremlevskaya str, 18, 420008, Russia
We suggest dielectric Van Vleck paramagnet PrF3 for the dynamic polarization of 3He nuclei
in the system “solid PrF3 - liquid 3He” in high magnetic fields by “solid effect” method. One of the
most important aspect of the problem is possibility of transferring the nuclear polarization from
141
Pr nuclei to nuclei of liquid 3He. Our result of search for the direct magnetic coupling by 3He
and 141Pr NMR method is represented in this report.
The sample was nonoriented powder of PrF3, all measurements were made at temperature T =
1.6 K. We found by calculations that the probability of the cross-relaxation effect between the
nuclei systems of 141Pr and 3He has maximum at NMR frequency f0 ~ 6.5 MHz in an external
magnetic field H0 = f0/γ(3He). Measurements of the field dependencies of 141Pr NMR at frequency
3.24 MHz, 6.63 MHz and 19.6 MHz showed a little increasing of 141Pr nuclear spin lattice
relaxation time only at f0 = 6.63 MHz in applied magnetic field H0 = 212 mT, i.e. H0 = f0/γ(3He)
exactly. Also T1 of 3He nuclei decreased. However we did not observed any effects in T1 of 141Pr at
the same experimental conditions when liquid 3He was replaced with liquid 4He.
D-a6.
重い電子系 CeRu2 Si2 の超低温領域における熱膨張測定
A
B
金沢大・理、理研 、阪大大学院
A
B
瀬川芳紀、吉田潤、阿部聡、松本宏一、鈴木治彦、高橋大輔 、大貫惇睦
Thermal Expansion Measurement of Heavy-Fermion CeRu2 Si2 at Ultra Low Temperatures
Dept. of Phys. Kanazawa Univ., RIKEN A , Graduate school of Sci. Osaka Univ .B
Y. Segawa, J. Yoshida, S. Abe, K. Matsumoto, H. Suzuki, D. TakahashiA and Y. Onuki B
典型的重い電子系 CeRu2 Si2 は、超低温、低磁場下
における磁気測定から、その基底状態が量子臨界状
態である可能性が見出されている [1]。更にその結果
は 3D SDW model [2] による臨界指数とは異なる温度
依存性を示しており、新しいタイプの量子臨界現象
という見地から非常に興味深い。
そこで我々は、この現象の詳細を明らかにするた
めに Capacitance 法を用いて熱膨張を測定した。図は
CeRu2 Si2 の磁場 0.016 mT, 52.6 mT における c 軸方向
の線熱膨張 D L/L の温度依存性である。磁場 52.6 mT
2
においては、線熱膨張は 250 mK 以下で T の温度依
存性を示し、Fermi 液体論と一致する。一方、0.016
mT では、約 50 mK 以下で、T 2 からの逸脱が観測さ
れた。これらの結果は磁気測定で観測された異常と
対応していると考えられる。
[1] D. Takahashi et al. Phys. Rev. B 67, 180407 (2003)
[2] L. Zhu et al. Phys. Rev. Lett. 91, 066404 (2003)
40
D-a7.
m SR によるアルカリ金属カリウムの相転移の研究
金沢大理、理研 *
長崎欣史、薛芸、 Savinkov A.V. 、金子浩 、阿部聡、松本宏一、鈴木治彦、鈴木栄男*、渡邊功雄*
Phase Transition of Alkali Metal Potassium by m SR
Dept. of Phys. Kanazawa Univ., RIKEN
*
*
*
Y. Nagasaki, Y. Xue, Savinkov A. V., H. Kaneko, S. Abe, K. Matsumoto, H. Suzuki, T. Suzuki and I. Watanabe
我々はカリウム金属の CDW(電荷密度波 )転移の可能性について研究しており、 X線回折による格子定数の
温度変化の測定から、少なくとも約 20K付近で相転移 を起こしている可能性を見出した。
更なる詳細の解明のために、理研との共同研究で英
国の RIKEN-RALにおいて、カリウム金属の m SRの実験
を行った。
図1に Asymmetry の時間変化 を示す。
カリウム 金属に入射したミ ュ オ ンが崩壊する時 に
放出される陽 電 子の入射方向と試料の後方における
カウント 数が示す異方性の緩和において約 20Kでその
振る舞いが大きく異なり、これは相転移 を示している
と考えられる。
図1、m SR における Asymmetry の時間変化。
D-a8.
高温超伝導体 LSCO の格子歪み
金沢大理、金沢大医 A
村上真一、加納裕士、中村直識、藤下豪司、岡本博之 A
Lattice distor tion of high T c superconductor LSCO
Fac. of Sci.,MedA.,Knazawa Univ., S.Murakami,Y,Kanou,N,Nkamura,H.Fujishita,H.OkamotoA
最近、例えば、YBCO で高温超伝導体の微小な格子歪みが正確に求められるようになってきており、
超伝導にともなう格子の異常が見いだされている。その異常は新しい臨界指数の導入などにより解釈さ
れている。しかし、我々は、構造相転移にともなう秩
序パラメーターと格子歪みの結合の場合と同様に、超
伝導秩序パラメーターと格子歪みの結合により解釈
できるのではないかと考えた。簡単な現象論では格子
歪みは秩序パラメーターの二乗に比例することが期
待される。そこで、高温超伝導体である LSCO につい
て粉末 X 線回折測定を行い、格子歪みの温度変化と超
伝導の秩序パラメーターである BCS ギャップの二乗
の比較を試みた。また、YBCO と MgB2 についても同
様に分析したのでその結果を報告する。
41
図;La1.85Sr0.15CuO4(180K以上で正方晶)の格子定数の温度変化
斜方晶の b は正方晶では c になる。
D-a9.
T*構造 Nd1.4Ce0.2Sr0.4Cu1-xMxO4 の熱電能とホール係数
金沢大理、金沢大医 A
中村直識、村上真一、加納裕士、金井貴志、林誠、
A
山田貴洋、藤下豪司、岡本博之
Thermoelectric power and Hall coefficient of Nd1.4Ce0.2Sr0.4MxO4 with
*
T structure
A
Fac.of Sci.,Med .,Univ.of Kanazawa N.Nakamura, S.Murakami, Y.Kanou,
T.Kanai,M.Hayashi,T.Yamada, H.Fujishita,H.OkamotoA
高温超伝導体の常伝導相は異常であり、二次元のCuO2面に
おける電子濃度や不純物イオンのスピン数の違いにより
物性を変化させる。右図に214系構造のLSCOの熱電能の不
純物イオン濃度とスピン依存性を示す。1)その異常金属相
も十分高温では正常な金属相に変わるという事が、代表的
な214系T,T’構造及びYBCOでは指摘されている。しかし、
もう1つの代表的な構造であるT*構造ではその常伝導相が
異常金属相かどうかもよくわかっていないので、今回T*構
造Nd1.4Ce0.2Sr0.4Cu1-xMxO4(M=Zn,Ni,Mg)の熱電能・ホール係
La2-ySryCu1-xMxO4 の熱電能
数を常温以下で調べた。その結果を報告する。
1)J.Takeda et al.J.Phys.Soc.Jpn(1996)
D-a10.
Li2(Pd1-xNix)3B の超伝導特性
富山大工
石山 淳悟,西村 克彦,森 克徳
A study of Ni substitution effect in Li2Pd3B superconductor
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
J. Ishiyama, K. Nishimura, K. Mori
Magnetization(emu/cm3)
【はじめに】2001 年に MgB2 において 39K の超伝導転移温度が発見されて以来、高い超伝導転移温度(Tc)
を持ち、構成がアルカリまたはアルカリ土類元素を含むホウ化物を探索するためにさまざまな実験や理論上
の研究が行われている。 最近、立方晶系ホウ化物 Li2Pd3B 化合物が Tc≒8K の超伝導体であることが発見さ
れた。
そこで、
本研究は Pd に Ni を置換することによって Li2(Pd1-xNix)3B 化合物の超伝導特性の変化を調べ、
アルカリ金属を含んだホウ化物超伝導体についての物性を詳しく調査することを目的とする。
【実験方法】目的の Li2(Pd1-xNix)3B はアーク溶解プロセスを2段階に分けて作製する。初めに、目的の組成
に合わせて秤量し、十分に真空引きした後、アルゴン雰囲気中
0
で(Pd1-xNix)3 を溶解させた。
次に、作製した(Pd1-xNix)3 と Li をアーク溶解した。このとき、
Li は沸点が低いためアーク溶解中に飛散することが考えられ
-5
ることから、あらかじめ目的の組成の2∼5倍の量を準備する。
【実験結果】作製した試料は、粉末 X 線回折測定により x=0.2
x=0
Tc=8.0K
x=0.05 Tc=6.8K
まで、ほぼ単相であることがわかった。この試料を電気抵抗率
x=0.1 Tc=6.4K
-10
x=0.15 Tc=6.1K
x=0.2 Tc=5.9K
測定、および磁化測定をすることで、各試料の Tc を決定する。
x=0.5 Tc=5.7K
右図は Li2(Pd1-xNix)3B の磁化の温度依存性を示している。こ
2
4
6
8
10
の図より、x=0 の試料は 8.0K まで反磁性を示していることか
Temperature(K)
ら Tc=8.0K であることがわかる。そして、Ni 置換濃度が増加
するにしたがって Li2(Pd1-xNix)3 の臨界温度は減少していくこ
図: Li2(Pd1-xNix)3B の磁化の温度依存性
とがわかる。
42
D-a11.
RuSr2(LnCe2-xSrx)Cu2Oz 構造での Ru1232 化合物の超伝導性と強磁性
富山大学
西田 圭吾,西村 克彦,森 克徳
Superconductivity and Ferromagnetism of the Ru-1232compounds
in the RuSr2(LnCe2-xSrx)Cu2Oz system
Fac. of Eng., Univ. of Toyama
K. Nishidai,K.Nishimura,K.Mori
43
M(emu/mol)
3
M(emu/cm )
[緒言]
1950 年代から超伝導と磁性の共存の可能性について研究されてきた。特にルテニウム銅酸化物での超伝導
と磁性の共存は RuSr2(Gd,Sm,Eu)1.6Ce0.4Cu2O10-δ(Ru-1222)によって初めて報告されており、遅れて
Ru-1212 が報告された。近年 1232 構造をもった Ru 系層状銅酸化物 RuSr2Ln3Cu2Oz(Ln=Gd,Nd,Er,Ce)の
合成に初めて成功したということが報告されている。この物質は,約 100K 以下で強磁性を示すと同時に約
15K 以下で超伝導状態となるという珍しい物質であることが判明し、その研究が進められている。
[実験方法]
SrCO3 と CuO の粉末を混ぜ 910℃で 10h焼成し、
Sr2CuO3 を作製した。
次に Sr2CuO3 と RuO2,RuO2,Ln2O3、
CeO2,CuO の粉末を秤量し 30 分間混合した。これを円柱のペレットに圧縮し、950℃で 24h仮焼きし、常温
H=50G
で冷やした。そしてそれを取り出し粉々にし、また円柱のペレット
10000 T=2K
に圧縮し、大気中 1050℃で 24h酸素フローを行い常温で冷やし
20
た。この操作を2回行った。できた試料を 400℃で 24hアニール
fc
0
10
を行い 0.5℃/min の速度で冷やした。
-10000
できた試料は粉末X線回折法によって単相であることが確認され
-10000
0
10000
H(G)
0
た。次に SQUID を用いて磁化測定を行った。
[実験結果]
TC=44K
-10 zfc
磁化の磁場依存性によりヒステリシスループが確認された。そ
0
100
200
300
して磁化の温度依存性によって超伝導転移温度(TC )
、磁気転移
T(K)
RuSr 2(ErCe2)Cu2OZの磁化曲線
温度(TM)がそれぞれ確認された。
D-p1.
リラクサー誘電体 PZN-PT のドメイン構造
富山大 理 A、秋田大 教 B
江戸太樹 A、 高木純 A、 水澤康 A、 飯田敏 A、 留野泉 B
Structues of Domain in relaxor dielectrics PZN-PT
Univ. Toyama A, Akita UnivB.
H. EdoA, J. TakagiA, Y. MizusawaA, S. IidaA, and I. TomenoB
リラクサーPZN-9%PT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-9%PbTiO3)は酸化物強誘電体の一種と言われている。この物質は優
れた圧電効果、広い温度範囲で高い誘電率を持ち、周波数分散などの特性がある。本実験ではX線トポグラフ
ィを用いてドメインを観察し、PZN-9%PT のリラクサー的な特性を構造的に明らかにする。
PZN-9%PT の結晶板(110)のロッキングカーブを測定し、X線トポグラフィを用いて(220)面を観察した。
この実験によって得られたX線トポグラフを左図
に示す。トポグラフ中には大まかに、斜めと[001]方
向に伸びるストライプ状の像の2種類が見られる。
その中にも白黒が反転する領域と反転しない領域の
4種類とそれに加え、どちらとも決めがたい領域2
種類の計6種類が観察された。また、斜めに伸びる
領域(ⅰ)の境界面は(101)面、[001]方向に伸びる領域
(ⅱ)の境界面は(1-10)面であるとして説明できる。そ
れに加え、偏光顕微鏡観察による消光角から(ⅰ)の結
晶構造は斜方晶あるいは正方晶と菱面体晶が、(ⅱ)
の結晶構造は斜方晶と菱面体晶があると判断した。
D-p2.
L-ロイシン および L-システインをドープした硫酸グリシン単結晶の作製と強誘電特性
富山大学・院・理工 高木厚 北山貴章 中谷訓幸 喜久田寿郎 山崎登志成
Growth and Ferroelectrics Properties of L-Leucine- and L-Cysteine-Doped Triglycine Sulfate Crystals
University of Toyama: A.Takagi, T.Kitayama, N.Nakatani, T.Kikuta, T.Yamazaki
焦電効果が利用されている赤外線検出器はいろいろな分野で応用されている。このデバイスには強
誘電体結晶である硫酸グリシン(TGS)に光学活性体であるL-アラニンをドープすることが非常に有効
であることが研究されてきた。本研究ではL-ロイシンおよびL-システインをドープした TGS 単結晶
を作製し、その結晶形と強誘電特性を調べた。
下図は得られた結晶の例である。L-ロイシンをドープした場合には結晶形に影響は見られず誘電特
性も pure TGS とほとんど同じであった。L-システインをドープした場合には結晶形が大きく変化し、
成長領域ごとに異なる内部バイアス電場が発生するなどの影響も観測された。
Pure TGS L-ロイシン5% L-システイン 20% 44
D-p3.
重水素置換したリン酸2水素カリウムの強誘電特性
富山大・院・理工、大分大・工 A 八木潤二、喜久田寿郎、山崎登志成、中谷訓幸、小林正 A
Ferroelectric Properties of Deuterated Potassium Dihydrogen Phosphate
University of Toyama, Oita UniversityA:J. Yagi, T. Kikuta, T. Yamazaki, N. Nakatani, T. KobayashiA
リン酸2水素カリウム(KDP)の強誘電性への重水素置換効果を調べるため、重水素置換率の異なるい
くつかの単結晶を作成し、誘電特性を測定した。組成を K(H1-xDx)2PO4 と表したときの重水素置換率 x
は、転移温度から算出した[1]。図は x=0 と x=0.88 の場合の転移温度付近の誘電率の逆数を示したもの
である。一般に重水素置換によって転移の1次性が強く現れるといわれているが[2]、重水素置換によ
って温度履歴が大きくなっていることがわかる。
[1] G. M. Loiacono et al.: Applied Physics Lett. 24 (1974) 455.
[2] B. A. Strukov et al.: Sov.Phys.Solid State 14 (1972) 885.
D-p4.
V-Ni-Ge 系準結晶相の探索と構造評価(Ⅰ)
富山大学・理
越谷 翔悟,伊藤 真吾,岡部 俊夫
Search for quasicrystals in the V-Ni-Ge system and their structural characterization.
Department of physics, University of Toyama S. Koshiya, S. Ito, T. Okabe
《
序論》
V-Ni-Si系合金では,
現在知られているIcosahedral Phase(I
相),
Dodecagonal Phase(Do
相),
Decagonal Phase(De
相),
Octagonal
Phase(O相)の4種類全ての準結晶相が発見されている.
本研究では,
Si を同族元素のGe にて置換し,
V-Ni-Ge 系準結晶相の探索を行い,
V-Ni-Si 系準結晶相との比較を行う.
《
実験》
Ar アーク炉を用いて,
種々の組成でV-Ni-Ge 系合金試料を作成した.
その後,
スパッタリング法及び単ロール法により急冷試料を作
成した.
試料の組成の評価には蛍光X 線分析装置を用い,また,
試料の構造評価には粉末X 線回折装置(XRD)と透過型電子顕微鏡(TEM)
を用いた.
《
結果》
試料の構造評価について,
XRD の結果によると単ロール法による急冷によっても準結晶相は形成されず,
急冷の前後で特定できる
構造について違いがみられないが,格子定数に変化が生じている.現在は,これが急冷によるものか,
それとも組成の変化によるものな
のかについて調べている.
また,
スパッタリング法による急冷の前後の構造評価を進めている.
100
100
V
1
5
N
i
1
0
Ge急冷後
V
1
5
N
i
1
0
Ge急冷前
90
90
σ
N
i
2
V
3(
a
=
9
.
0
0
Å,
c
=
4
.
6
2
Å)
σ
N
i
2
V
3(
a
=
9
.
0
0
Å,
c
=
4
.
6
8
Å)
80
80
β
Mn
(
a
=
6
.
4
8
Å)
β
Mn(
a
=
6
.
4
7
Å)
70
70
60
Intensity
Intensity
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
38
40
42
44
46
2Θ
(
°)
48
50
52
54
38
Fig.1:
急冷前のXRD 結果
40
42
44
46
2Θ
(
°)
48
Fig.2:
急冷後のXRD 結果
45
50
52
54
D-p5.
V-Ni-Ge 系準結晶相の探索と構造評価(Ⅱ)
富山大学・理,伊藤真吾,越谷翔悟,岡部俊夫
Search for quasicrystals in the V-Ni-Ge system and their structural characterization
Department of physics, University of Toyama, S.Ito, S.Koshiya, T.Okabe
<序論>V-Ni-Si 系合金は,これまでに発見されているすべての準結晶相(Icosahedral phase,Decagonal phase,Dodecagonal
phase,Octagonal phase)が報告されている(1-3).本研究では,Si を同属元素である Ge で置換し, V-Ni-Ge 系での準結晶作
成を目指す.また,その構造を評価し,V-Ni-Si 系との比較を行う.<実験>試料は Ar ガス雰囲気中のアーク溶解により
作成した.組成評価には蛍光 X 線分析装置(XRF)を,構造評価には粉末 X 線回折装置(XRD)と透過型電子顕微鏡(TEM)を
使用した.<結果>作成した試料のいくつかで,擬似 12 回方向及び擬似 8 回方向の回折像を観察した.これらの回折像
はそれぞれσ-Ni2V3 構造(Tetragonal : a=9.0Å,c=4.7Å)とβ-Mn 構造(Cubic : a=6.5Å)を示す.また,σ構造とβ-Mn 構造
は V-Ni-Si 系でも報告されており,Dodecagonal 相,Octagonal 相の関連相であると考えられる.
a*
a*
a*
<左図>擬似 12 回方向の回折像
a*
σ-Ni2V3 structure (Tetragonal : a = 9.0Å c =4.7Å) [001]軸入射
<右図>擬似 8 回方向の回折像
[001]
[001]
β-Mn structure (Cubic : a = 6.5Å) [001]軸入射
1)K.H.Kuo, D.S.Zhou, and D.X.Li, Philos.Mag.Lett.55,33,(1986) 2)N.Wang, H.Chen, and K.H.Kuo, Phys.Rev.Lett.59,1010,(1987)
3)H.Chen, D.X.Li, and K.H.Kuo, Phys.Rev.Lett.60,1645,(1988)
D-p6.
ZnO ナノ結晶の作製と構造評価
富山大学 理学部
新田峻介, 岡部俊夫
Formation of ZnO nanocrystals and their structure evaluation
Department of Physics ,University of Toyama
Shunsuke Nitta, Toshio Okabe
本研究では、酸化物半導体である ZnO のナノ結晶をそのサイズをコントロールして作製することを目的とする。まず、基板上に Zn を蒸
着し、その表面の酸化をコントロールすることによって Zn と ZnO の二層膜を作り、次にこれを Zn の融点以上の温度の炉で酸素を供
給しながら加熱する。融解した Zn と気体 O₂を ZnO 膜の粒界で反応させて新たなZnO 結晶を作る。蒸着量、加熱条件を変えることで、
ZnO ナノ結晶を作製し、SEM で形状観察、TEM で構造評価を行う。本講演では、以上の研究内容についての詳細と、研究の現状に
ついて報告する予定である。以下の図に酸化の様子を示す(基板断面図)。
図1:蒸着後1ヶ月の膜
図2:蒸着の1ヶ月後 350 度で
図3:蒸着の半月後 350 度で
1時間加熱した膜
2.5 時間加熱した膜
図1は、膜が3層構造になっており、下から ZnO 層(平均膜厚 1.4μm、粒径 1.4μm)、Zn 層(平均膜厚 1.4μm、粒径 1.4μm)、
ZnO 層(平均膜厚 1.4μm、粒径 1.4μm)で、図2は、ZnO 層(平均膜厚 1.6μm、粒径 1.0μm)、図3は ZnO 層(平均膜厚 2.0μ
m、粒径不明)の単層であると思われる。
46
D-p7.
自律型スノーボードロボットの開発
福井大工 大場公隆,平田隆幸
Development of an autonomous snowboard robot
Faculty of Engineering, University of Fukui M.Ohba & T.Hirata
自らの状態を把握し斜面を滑走・ターンする自律型ス
ノーボードロボットの製作を試みた。最初にスノーボー
ドロボットが満たすべき条件を調べるための研究からは
じめた。まず人工ゲレンデ(斜面)として幅 900mm 長
さ 1800mm の斜面の斜度を調整できる斜面を作成した。
コースの表面素材はベニア板,ホワイトボード,フェ
ルトの3種類を用意し、人工ゲレンデとしての妥当性
を調べた。
製作したスノーボードロボットを図 1 に示す。幅
65mm 長さ 190mm のボード上に重心移動のための錘
2つ、それを動かすサーボモータ、電池、ルネサステ
クノロジーの H8-3069 を乗せたものを製作した。総重
量は 296 gで、本体 246 g、錘が各 25 gである。人工
ゲレンデの傾斜角、表面素材を変えるなど、様々な条
件でスノーボードロボットの滑走特性を調べた。 図 1: スノーボードロボット
D-p8.
群ロボットにおける接触コミュニケーションシステム
福井大工 川地 秀幸、平田 隆幸
Data transmission during physical contact in swarm robot
Faculty of Engineering, University of Fukui H.Kawachi & T.Hirata
社会性昆虫の行動戦略を群知能の手本にしようという研究がなされている。例えば、蟻は道標とし
てのフェロモンを介したコミュニケーションと、接触を介したコミュニケーションを行っている。こ
こではロボットが物理的に接触した時、数バイト程度のデータを交換する電気回路を設計し、群ロボ
ットにおけるローカル・コミュニケーションの役割を調べた。
ここでの接触コミュニケーション回路は、接触した時に 3 本のラインを使い送信と受信を同時に行
う。3 本の通信ラインの 1 本は GND に用い、他のラインは動的に送信、受信用のラインに割り当てられ
るという特徴をもっている。図 1 に本実験で用いたロボッ
トを示す。3 本の通信用のラインは、円柱型のロボットの
側面に取り付けられ、360°どの角度から接触しても通信
できるようになっている。ロボット間での接触から通信を
開始し終了するまでに必要となるデータの計測を行った。
ここでは送信データの搬送周波数、ロボット同士が衝突
送受信用
した際に起こりうるインターフェース間でのチャタリング
GND
や衝突の反動によるインターフェース面の不完全接触を考
慮し、接触してから通信を開始するまでの待ち時間のパラ
メータを変化させていき成功率を調査した。また、送信デ
ータ量を増加させていった場合での成功率を調査した。
図1:実験で使用したロボット
47
D-p9.
はしごを壁に立てかけた時の摩擦は決まるのか?
福井大工 竹井健太、平田隆幸
Can we know the frictional force between the ladder and wall ?
Faculty of Engineering, University of Fukui K.Takei & T.Hirata
はしごを壁に立てかけた時、壁や床に対する垂直抗力、摩擦力は一意的に決められるのか?一見すると、簡単なつり
合いの式から決められると思えるが垂平方向、鉛直方向のつり合いの式と、モーメントのつり合いの式で変数4つに対
して関係式は3つしかなく、一意には決まらない。ここでは、立てかける角度を変化させ、壁と棒の接点にはそれぞれ
粒度の異なる紙やすりを取り付け実験を行った。 長さ30cm重さ140gの木製の棒を電子天秤に一方向にのみ倒れるように固定し壁に立てかけるようにした。鉛
直方向の抗力を計測するために電子天秤を用いた。壁には木材より十分に重いブロックを使用した。さらに精度を上げ
るため電子天秤とブロックは除震台の上に置き、まわりの振動を軽減できるようにした。
紙やすり
壁
(
ブ
ロ
ッ
ク
)
分
散
除
震
台
棒
電
子
天
秤
40
拡大
120
400
120
θ
棒側の紙やすりの番号
す
紙や
40 400
番号
りの
の
壁側
図2:床での垂直抗力の分散。
壁への立てかけ角度、 θ = 60 度。
図1:実験装置の模式図
D-p10.
福井大学物理工学科における博物館(ミュージアム)の活動
福井大学工学部物理工学科
光岡広貴 菊池彦光 玉川洋一 光藤誠太郎
Activity of a physics museum in Fukui University
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
H.Mitsuoka H.Kikuchi Y.Tamagawa S.Mitsudo
講義を受けて帰る―大学とはそのような場所なのでしょうか。福井大学物理工学科には講義後に学生が立
ち寄り、さまざまな活動をする特別な部屋があります。そこはミュージアムと呼ばれる部屋で、そこでの活
動は主に次の通りです。
・ 物理に関する模型や実験器具の保管・展示
・ 望遠鏡や非電化冷蔵庫を作る…学生が自発的・意欲的に学ぶ(創る)
・ 新入生合宿・公開講座…学生や地域への発表を企画
・ 夕食会やパーティー…学生と教員、学年を超えた交流
・ 課題を教えあう・雑談を楽しむ…学生の休憩室
ミュージアムには学生たちが休み時間や講義後に集まって
楽しい時間を過ごしたり、夜遅くまで一生懸命に活動していま
す。また教員も時折出入りをし、学生へアドバイスをしたり、
興味深い話をしていってくれます。
ミュージアムとは学生が主体的に活動またはサポートして
くれる場所であり、学生同士だけでなく教員とも交流を深めら
れるような今までにない新しい場所でもあります。ミュージア
ムができたことで物理工学科全体が変わってきたようです。講
演ではこれらの活動について詳しく報告します。
48
図: 夕食会にて
D-p11.
学部学生による物理演示実験の開発に参加して
金沢大学 中川拓, 鎌田啓一, 阿部聡, 安藤利得, 佐藤政行, 藤竹正晴, 松本宏一
Report of ”Demonstration of physics by undergraduate students”
Kanazawa Univ.
T.Nakagawa, K.Kamada, S.Abe, R.Ando, M.Sato, M.Fujitake, K.Matsumoto
中川は「金沢大学サイエンス・ラボ」(学生が物理演示実験開発の活動を行う組織) に参加し、学生代
表を務めている。その立場から見た、効果・成果を報告する。
「金沢大学サイエンス・ラボ」の運用は、応募学生と教員の全員で方針を決定した後、5人程度のグ
ループに分かれてそれぞれが企画を進行することとした。月に1回全体で集まり、その際に進行状況を
報告する。企画に行き詰まったときは教員と相談することもできるという方式となっている。これに
より、材料・工具の種類・使い方・手の動かし方といった実験系教員の本格的な技術を得ることができ
る。さらに、研究室配属前の学生にも教員と関わる機会ができた。
具体的な目標に向かって活動する環境ができたことで、自主性・積極性・能動性が引きだされた。ま
た、普段から活動に多く参加する学生の他に、ときどき活動状況を気にかけて様子を見に来る学生も
いる。学生のコミュニティとしても機能しているといえるかもしれない。現在は物理学科の学生が中心
であるが、他学科の学生も少なからず参加している。また、工学部にも参加の意思を示す学生がいる。
こうして、他学年・他学科・他学部の学生との交流も生まれるが、全員に共通の空き時間がないため、
全体で集まる会の日時決めは困難を極めるという側面もあり、代表としては頭を痛めるところである。
49
E-a1.
長距離相互作用による1次元系の相転移について ◦
金沢大自然 青木健一、 小林玉青、富田洋
Phase Transition in One-Dimension with Long-range interaction
◦
Ken-Ichi Aoki , Tamao Kobayashi and Hiroshi Tomita,
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University
最近接相互作用のみの Ising 模型においては、DRG(Decimation Renormalization Group) によってくりこみ変
換を完全に実行することが出来、相関距離が正確に求められて、有限温度では相転移が起こらないことが示されて
いる。一方、Ising 模型に長距離(非局所的)相互作用がある場合には、量子力学的なトンネル効果が抑制される。
この場合には、相互作用空間を適切に制限するくりこみ群の一般的手法により、くりこみ群方程式を解析的・数値
的に解くことが可能である。それにより、局在化相転移が起こる臨界摩擦に関する定性的な予想が得られている。
更に今回は、一般的な散逸量子系 (二重井戸ポテンシャル)を経路積分で定式化し、散逸項を非局所的有効相互
作用として扱う。具体的には、平均場近似を拡張して、左右の平均場を別々に扱うことにより、臨界摩擦の大きさ
の定量的な評価を行う。また、Ising 系と量子力学系との比較に関しても議論したい。
E-a2.
!"
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50
E-a3.
Glasgow algorithm を用いた有限密度格子 QCD
◦
金沢大自然 出淵 卓、 小林良貴
The finite density QCD by Glasgow algorithm
◦
Taku Izubuchi and Yoshitaka Kobayashi,
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University
QCD には、閉じ込めのある低温領域と、閉じ込めのない高温領域の間に chiral 相転移があると考えられており、
それぞれの相は hadron 相 (閉じ込め相) 、quark gluon plasma 相 (QGP 相、非閉じ込め相) と呼ばれています。こ
れらの相構造を解明する為、これまでにモデル計算や格子 gauge 理論の数値 simulation などの様々なアプローチ
が試みられてきました。また最近では、重イオン衝突による実験結果も出てきています。この相構造を詳しく調
べる事は QCD の深い理解にとって必須であるのみでなく、初期宇宙や高密度星の物理の基礎である状態方程式を
定めるという意味でも重要です。
表題にあります Glasgow algorithm を用いると、grand canonical 分配関数の中に含まれる fermion 行列の行列
式が任意の化学 potential に対して得られ 、それを元に grand canonical 分配関数を全ての canonical 分配関数に
fugacity と呼ばれる重みを付けて足しあげた形、いわゆる fugacity 展開で表わす事が可能です。この手法により、
上述の相構造の解析を試みる予定です。
E-a4.
フレイバー対称性とラディアティブシーソー模型
およびコールドダークマター
◦
金沢大学理論物理学研究室 久保治輔 梶山裕二 岡田寛
Flavor Symmetry,Radiative Seesaw Model and Cold Dark Matter
◦
Jiske Kubo,Yuji Kajiyama and Hiroshi Okada
Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University
ニュートリノ質量は他の三セクターと比べて非常に小さいということが知られている。そのことを説明する最も有
名なモデルにカノニカルシーソーがある。しかしこのモデルは実験で測定できる領域を遥かに超えた粒子を導入さ
せねばならない。一方 Zee-model に代表されるように、真空期待値を持たないヒッグスを導入させてニュートリ
ノ質量をループ効果でだそうという試みもある。このモデルはあまり重い粒子を必要とせず、ダークマター候補に
もなりうる。今回我々は Ma 氏によって提案されたモデル Ma-model(hep-ph/0601225)に、新たにフレーバー
対称性を導入した。それにより予言力のあるニュートリノセクターを構成でき、又特有のシグナルが出る為 LHC
の実験で検証可能なモデルとなっている。ここではどのような予言ができるのかといった事はもちろん、ダーク
マターの解析などから、このモデル特有のシグナルがどう出るのかといった事を中心に紹介する。
51
E-a5.
離散的なフレーバー対称性に対するアノマリーとゲージ結合定数の統一
金沢大学理論物理学研究室 荒木威
Anomaly of discrete family symmetries and gauge coupling unification
Institute for Theoretical Physics, Kanazawa University
Takeshi Araki
アノマリーとは量子レベルにおける対称性の破れであり、もしその対称性が連続的な対称性であれば 、
その場合は対応するネーターカレントの非保存を意味する。しかし 、離散的な対称性に対しては保存カレ
ントを定義できないので、アノマリーは無いと考えられている。これに対し本講演では、離散的な対称性
に対しても藤川の方法によってアノマリーが定義できることを示す。特に、フレーバー対称性として導入
された非可換で離散的な対称性のアノマリーに注目する。そして、低エネルギー領域に存在するフレー
バー対称性が高エネルギー領域ではアノマリー自由であったと考え、そのアノマリーが Green-Schwarz
(GS) 機構によって相殺されているべきと仮定する。フレーバー対称性として非可換離散群を導入する場
合、その対称性が低エネルギー領域で hard に破れないために新たな SU (2)L 二重項のヒッグス粒子を導
入することが多いが 、その場合、新たに導入されたヒッグス粒子はゲージ結合定数のベータ関数に影響
を及ぼすので、GUT スケールでの統一が不可能になる。しかし 、上述のようにフレーバー対称性のアノ
マリーが GS 機構によって相殺されていると仮定すれば 、ゲージ結合定数がプランクスケールで統一す
る可能性がある。なぜなら、GS 機構のアノマリー相殺条件が Kac-Moody レベルの値に大きく依存して
2 と変更さ
いるからであり、これらの値によってゲージ結合定数の統一条件が k1 g12 = k2 g22 = k3 g32 = gst
れるからである。
本講演では、フレーバー対称性として Q6 を導入し超対称化したモデルを例にとり、具体的にアノマ
リーとその相殺条件を求め、プランクスケールでの統一が可能であるかど うかを調べる。
1
E-a6.
QCD における双対マイスナー描像とゲージ依存問題
金沢大自然, 金沢大総合メディア基板センター A
関戸暢 o , 石黒克哉 A , 鈴木恒雄 A
The dual meissner effect and gauge dependence problem in QCD
Kanazawa Univ.
Toru Sekido,Katsuya Ishiguro,Suzuki Tsuneo
QCD のクォークの閉じ込めを説明する有力なモデルとして、デュアルマイスナー効果がある。それは超伝導のマ
イスナー効果の類推で、カラー磁場をもったモノポールが QCD 真空に凝縮しカラー電場を絞り線形ポテンシャ
ルを導くというものである。しかし QCD にはモノポールがあらわには含まれていない。一方、QCD ではない
が非可換ゲージ場とヒッグス場を含むモデルであるジョージアイ-グラショウモデルにモノポール古典解が存在す
ることが’tHooft と Polyakov によって示された。このモデルを背景として’tHooft は QCD にアーべリアン射影
という部分的なゲージ固定を施すとモノポールの自由度を抜き出すことができ、このモノポールが凝縮すること
でデュアルマイスナー効果が引き起こされるという考え方を提案した。格子シミュレーションでは’tHooft 流モ
ノポールを格子で定義した DGT モノポールを用いた研究がおこなわれており、例えばストリングテンションな
どの閉じ込めに関る物理量がモノポールからの奇与によって導けるというモノポールドミナンスが確かめられて
いる。しかし、唯一不満な点はこれらの結果のほぼ全てが MA ゲージと呼ばれる特定のゲージ固定を適応した場
合でしか得られていないことである。この問題をここではゲージ依存問題と呼ぶ。
しかし最近の研究でこのゲージ依存問題は解決されつつある、つまりこれまでの数値計算では統計が少なく MA
ゲージ以外では妥当な計算ができていなかったのである。もっとも悪いゲージ固定として知られていたローカル
ユニタリゲージからでも統計を十分とればストリングテンションのアーベリアンドミナンスを完全に示すことが
できることがわかった。この発表ではゲージ固定によらないアーベリアンドミナンスを示すと共に、ゲージ固定
によらないデュアルマイスナー描像を数値計算の結果と合わせて発表する。
52
E-a7.
量子的真空の揺らぎの解析−完全反射境界面と測定過程の影響−
福井大工
芹生正史
Analysis of quantum vacuum fluctuations - influence of a perfectly reflecting mirror and
the detecting process Unive. of Fukui
M. Seriu
空間に自明でない境界があるとき、量子場の真空の性質にその影響が及ぼされることは
Casimir 効果などでよく知られている。このような非自明な空間での量子真空は、その揺ら
ぎの性質等、解明すべき点が非常に多い。さらにこの問題の理解は、その普遍性のため、例え
ば重力波検出器内の量子雑音の問題・初期宇宙での量子場の振舞いの研究など、幅広い応用に
つながることが期待される。
今回は、空間に完全反射性の無限平面を一つ置いた場合に、電磁場の真空の揺らぎにどのよ
うな効果があるかを解析する。まず、先行する研究結果 [1] を再検討し、その不十分な点を明
確にして、これを中心に詳細に分析する。より具体的には、古典的試験粒子の速度分散の真空
期待値を解析的に求め、境界に対するその方向依存性、距離依存性、時間依存性等を議論す
る。その結果、先行する研究 [1] では見落とされていた、境界までの光の伝達時間に対応した
特異項が速度分散に現れることがわかる。これについて自然な解釈を試みる。また、実際の測
定過程に関係したスイッチング効果についても詳しく調べ、その意味を議論する。
[1] H. Yu and L.H. Ford, Phys. Rev. D70, 065009 (2004)
53
E-p1.
ダブルベータ崩壊観測のための GSO(Gd2SiO5)検出器の開発
福井大工 鈴木 茂仁,犬飼 裕介,玉川 洋一
Developments of GSO(Gd2SiO5) detector for double beta decay
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
S. Suzuki, Y. Inukai, Y. Tamagawa
【はじめに】 ダブルベータ崩壊観測はニュートリノの質量を求めるために行われているもので、この崩壊
を起こす原子に Mo-100 や Ca-48、Gd-160 等が挙げられる。その中でも我々は Gd-160 に着目し、この原子
を含む GSO 結晶を使った検出器の開発を進めている。ダブルベータ崩壊を測定する上で大きな障害となるも
のが 2 つある。
①環境放射線、宇宙線の event 数が多くダブルベータ崩壊のバックグラウンド event が同定しづらくなる
②非常に稀な崩壊であること(1 原子あたり 1/1020[event/year]程度)
①を解決するため、鉛・無酸素銅による遮蔽、宇宙線ベトーカウンタの設置によるバックグラウンド除去を
行い、設置前との比較を行った。
②を解決するため結晶を大型化したが、製造過程上結晶に亀裂が生じてしまう。この亀裂がダブルベータ崩
壊に影響の無いことを調べるために、結晶を貫通する加速器ビームを用いての評価実験を行った。
【実験方法】
① GSO 結晶に PMT(光電子増倍管)を接着したものを遮蔽材なし、鉛+無酸素銅で遮蔽、鉛+無酸素銅+
宇宙船べトーカウンタの3つのパターンで測定し、バックグラウンドの減少を比較
② 密度の非常に高い GSO 結晶(6.71[g/cm3])の結晶内部の構造も調べるために結晶を貫通する高エネルギ
ー加速器ビーム(momentum=2GeV)を用いて GSO から発生するシンチレーション発光量を測定し評価
【結果・考察】
① 鉛・無酸素銅による遮蔽により 90%、これと併せて宇宙線ベトーカウンタを設置することにより鉛・無
酸素銅のバックグラウンドからさらに3%の除去に成功した。
② GSO 結晶は均一な形をしていない。そのため CT により結晶の径を詳しく調べ、ビーム実験データにこ
の値を考慮し補正した結果、結晶の亀裂への影響は無視できるものであることが示された。
E-p2.
K + 中間子稀崩壊実験用レンジスタック検出器の開発
福井大工
山本 祥平、天羽 達、玉川 洋一
Developments of Range Stack Detectors for a Rare Kaon Decay Experiment
Fac. of Eng., Univ. of Fukui
+
S. Yamamoto, T. Amou, Y. tamagawa
ch
米国の国立ブルックヘブン研究所のE787/E949実験では、 K 中間子稀崩壊実験が行われている。この実験の大
きな目的は、 K + → π +ν ν の崩壊確率の正確な決定である。しかし、 K + にはいくつもの崩壊のモードがあり、中で
+
+
も K + → π +ν ν は、非常に稀な崩壊モードである。この崩壊モードの検出にはπ 、 µ 、γ などの複数の粒子を判
別するための複合素粒子検出器が使用される。その中で我々が開発を行っているレンジスタックは、 K + が崩壊する際、
+
生成されるπ 中間子の検出に使われる検出器である。 現在、 K + 中間子稀崩壊実験に使われる検出器の改良計画が
進められており、
より検出効率を向上させた新型レンジスタック検出器の開発が急がれている。
そこで我々は開発を行い、
旧型との比較検討を行っている。
新型と旧型の大きな構造的違いは、プラスチックシンチレ
PMT1
2800
PMT2
ーターを細分化したところにある。これにより検出位置を増
2500
やし検出器の位置分解能の向上が期待できる。しかし、検出
2200
域の縮小、また構造の複雑化により、収集光量、エネルギー
分解能、に影響が出ることが懸念されるため、様々な観点か
1900
ら実験を行い、旧型レンジスタックとの比較検討を行った。
1600
プラスチックシンチレーター内での光量減衰量の測定を行
1300
った。これにより、旧プラシンとの透過性の違いを明らかに
1000
できた。この結果より透過性が1.56倍向上したことが確認で
1
2
3
4
5
きた。 また、検出器の光量収集能力を測定する実験では、
position
旧型に比べ1.77倍の向上がみられた。
プラシンの光量減衰量
さらに現在、エネルギー分解能等の検討を行っている。
54
E-p3.
入射粒子識別用シリコンストリップ検出器の性能評価
福井大工 1, KEK2
新庄信明 1,小林正明 2,杉本章二郎 2,玉川洋一 1
Development of Si-strip detector for incident particle identification
Faculty of Eng., Univ. of Fukui1, KEK2
N.Shinjo1, M.Kobayashi2, S.Sugimoto2, Y.Tamagawa1
[はじめに]
K+中間子の稀崩壊( K + → π +νν )の探索を目的とした実験(BNL-E787/E949)が行われた。E949 実験では、dE/dx
測定によるか荷電粒子識別用検出器としてプラスチックシンチレータのホドスコープが使用されたが、それ
に対し、エネルギー分解能・位置分解能の面における性能の向上を狙い、Si-strip 検出器を開発してきた。特
にエネルギー分解能は粒子の識別精度を左右する重要なパラメータであり、増幅回路、ケーブル等を含めた
ノイズの影響を十分に検証する必要がある。本研究では、これまで飛跡検出器として主に用いられてきた
Si-strip 検出器を dE/dx 測定器として使用し、ビームライン上において dE/dx 測定による荷電粒子識別、及び
通過位置測定を目的に Si-strip 検出器(16K-SSSD-WB 1467)の性能評価を行った。
[実験方法]
高エネルギー加速器研究機構(KEK)の陽子シンクロトロン(KEK-PS)T1 ラインにてビーム実験を行った。T1
ラインには、上流に置かれた固定標的で生成されるπ+/p が導かれる。ビームの運動量 0.7GeV におけるエネ
ルギー分解能、及びノイズの測定を行った。
[結果と考察]
エネルギー損失分布よりピーク値μ及び標準偏差σを求め、π+についてσに対するエネルギー分解能を算
出すると、ΔE~16%を得た。これは、BNL-E787 実験より得られたプラスチックシンチレータのホドスコープ
におけるエネルギー分解能 30%に対して大きく改善された。また、フラットケーブル長に対するノイズの電
荷量 ENC(Equivalent Noise Charge)を求め、1720e(at 30cm)、4200e(at 200cm)を得た。
E-p4.
APD によるカロリメーター
によるカロリメーターの
カロリメーターのエネルギー分解能向上
エネルギー分解能向上
福井大工
今井大輔,吉田拓生
Improvement in Energy Resolution of Calorimeters by APDs
Univ. of Fukui
Daisuke Imai, Takuo Yoshida
LHC などの次世代の大型加速器を用いた素粒子実験では、シンチレーティングタイル・ファイバー型カロ
リメーターが用いられる。このカロリメーターでは、カスケードシャワー発生時のシンチレーティングタイ
ルの発光が、タイルに埋められた波長変換用(WLS)ファイバーを通して外に引き出される。通常、この光は光
電子増倍管(PMT)で読み出されるが、本研究では、これを PMT よりもはるかに高い量子効率を持つ「アバラン
シェフォトダイオード(APD)」で読み出すことによって、カロリメーターのエネルギー分解能の向上を図る。
本研究では、はじめに厚さが 4mm と 2mm、面積 20cm×20cm のプラスチックシンチレーターに溝を掘り、直
径 1mm の WLS ファイバーを埋め込んだ雛形シンチレーティングタイルを作成した。このタイルに Minimum
Ionizing Particle(MIP)を照射し、得られる光信号を APD で読み出す実験を行い、MIP のエネルギー損失に
対する分解能を詳細に検討した。用いた APD は波長 500~800nm の光に対し最大で 85%の量子効率を持つ市販
品で、受光面は 5mm×5mm である。室温中(25℃)での測定の結果、一個の MIP から得られる平均光電子数は厚
さ 4mm のタイルで 74 個、2mm のタイルで 31 個という結果が得られた。また、液体窒素を用いて APD を-80℃
まで冷却し測定を行った結果、S/N 比の向上が確認された。カスケードシャワー発生時のカロリメーターの
信号はこれらの MIP 信号の重ね合わせである。今回の測定データーに基づき検討した結果、カロリメーター
のエネルギー分解能は、PMT を用いるよりも、APD を用いた方が若干ながら良くなることが分かった。
55
E-p5.
大気中ラドン濃度測定用自由空気電離箱の開発
福井大院工
齊藤岳穂,小形好弘,玉川洋一,吉田拓生,西川嗣雄
Development of the Free Air Ionization Chamber for Measurement of Radon Concentration in Air
Graduate School of Eng., Univ. of Fukui
T.Saito,Y.Ogata,Y.Tamagawa,T.Yoshida,T.Nishikawa
これまでラドンとその娘核種の大気中での性状や挙動を明らかにするために様々な方法でそ
れらの測定が行われてきた。ラドンとその娘核種濃度の測定では、一般的にサンプリングをおこ
なう方法がとられている。しかし、この方法では測定点の大気の状態を乱し、その周辺のラドン
濃度分布がラドン濃度を測定することにより変化する可能性がある。
そこで
①ラドン濃度を測定しようとする場の空気を乱すことなくラドン濃度を測定する。
②短時間のラドン濃度変化を統計精度よく連続的に測定する。
③ラドン及びその娘核種からのα粒子のエネルギースペクトルを測定してラドンのみだけでな
く、その娘核種濃度も測定する。
これらの条件を満たす新しいラドン濃度測定器の実用化を目的に、検出気体が空気である単純な
2 枚の平行平板電極の電離箱を製作し、α粒子のエネルギースペクトルを得るためのパルスの取
り出しを試みた。
その結果、電離箱にシールドをする必要があるが、10cm×10cm の平行平板電極を用いた電離
箱ではパルスは取り出せることを確認したので報告をする。又、実用化に向けスケールアップを
試みているがその現状についても合わせて報告をする。
E-p6.
放射線源の核種と位置が特定可能なコンプトンカメラの開発
福井大学 原子力・エネルギー安全工学 武藤啓太郎 徳田圭介
玉川洋一
Development of Compton camera for identification the γ-source
Fukui University
Keitaro Muto. Keisuke Tokuda. Yoichi Tamagawa..
コンプトンカメラはガンマ線を検出し放射線核種の特定だけでなく、放射線源方向(又は位置)を検出す
ることができる。コンプトンカメラは現在人工衛星などに搭載されており、そのシステムは非常に大掛かり
かつ、高価なものになっている。本研究はガンマ線の特性であるコンプトン散乱や光電効果、結晶の材質を
利用して効率よくガンマ線を検出できるかどうかをシミュレータ Geant4 で検討した。又放射線源方向をPC
画面上に描画し把握しやすくするためのアプリケーションの開発及び放射線源の方向にカメラを向けるため
のシステムを作成し、実際の線源を用いて実験を行っている。
本コンプトンカメラは散乱体と吸収体で構成されており、
散乱体でコンプトン散乱したガンマ線が吸収体で光電効果を
起こした場合に1つの角度を求めることができる。一対の検出
器で求めた散乱角により放射線源は円錐状に特定され、この検
出器を複数個おいて放射線源方向を特定することができた。又
方向だけでなく、位置を特定することもできた。
現在では高分解能、測定時間短縮を両立するための検証を行
っている。放射線源方向を PC 画面上に表示し、放射線源方向
にカメラを向けるといった試みも開始した。
本研究により、廃炉となった原子炉の汚染状況を人間の作業
時間を短縮することで安全に測定する事が可能となる他、放射
線源核種を扱う研究機関においての放射性物質漏れなどに対
図 1: 放射線源方向の描画
応することができると考えている。
56
E-p7.
重粒子線治療シミュレーション基盤の開発(Ⅰ)
富山商船高専 A,JST CRESTB
高瀬
亘 A、川口
貴司 A、阿蘇
司 AB
Development of the simulation framework for particle therapy (I)
Toyama Nat. Coll. of M. T.A, JST CRESTB W.TakaseA, T.KawaguchA, T.AsoAB
がんの治療法としてX線治療がある。IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)などのX線治療は照射範囲が
広範囲にわたるため、患部周辺の正常組織へも影響を与えてしまう欠点がある。重粒子線治療はこの問題を解決する
治療法として期待されている。重粒子が物質に照射すると、物質内での重粒子エネルギー損失割合の分布はブラッグ
ピークと呼ばれるピークを形成する。このピーク位置を患部に合わせることで、正常組織への悪影響を抑えた治療を
効果的に行えると考えられる。
医療現場で重粒子線治療を患者に行う際、事前にシミュレーションを行い、効果と安全性を確認する必要がある。
そのシミュレーションは患者への重粒子線の放射結果を正確に予測できるものでなければならない。また、医師や医
学物理師はプログラムに不慣れである可能性があるので、誰
でも容易にシミュレーションを行えるような基盤を開発す
る必要がある。そのため本研究では、国立がんセンター、兵
庫県立粒子線医療センターなどの施設と連携し、ツールキッ
ト Geant4 を利用して陽子線治療のためのシミュレーション
基盤の開発を行っている(図参照)。本講演ではこれらのシミ
ュレーション基盤開発に要求される条件とシミュレーショ
ンが持つべき機能についての詳細を報告する。
図
開発したシミュレーション基盤で再現した治療照射装置
E-p8.
重粒子線治療シミュレーション基盤の開発(Ⅱ)
富山商船高専 A、JST CRESTB 川口 貴司 A、高瀬 亘 A、阿蘇 司 A,B
Development of the simulation framework for particle therapy (Ⅱ)
Toyama Nat. Coll. of M. T., JST CREST
T. KawaguchiA, W. TakaseA, T. AsoA,B
重粒子線治療とは、従来の放射線治療と違い X 線やγ線ではなく重粒子線を使ってがん病巣を集中的に攻撃し、切ら
ずにがんを治す最先端治療である。現在、日本では5ヵ所の施設で治療が行われており、普及を目指したハードウェアの
本研究では、Geant4[1]を利用した汎用性のあるシミュ
レーション基盤の開発を行っている。開発したシミュレー
ションは安全性および信頼性の面から十分な検証を行う
ことが不可欠である。そこで、兵庫県立粒子線医療センタ
ー(HIBMC)と国立がんセンター(NCC)の協力の下、両施
設で行われた測定結果とシミュレーション結果の比較検
証を行っている。図は散乱体の影響による陽子線のアイソ
陽子線の広がり (mm)
研究・開発が進められている。
センターでの広がりを表したグラフである。
本講演では、これらの検証結果について報告する。
90
□ 150MeV 測定値
80 ■ 150MeV シミュレーション値
△ 190MeV 測定値
70 ▲ 190MeV シミュレーション値
○ 230MeV 測定値
60 ● 230MeV シミュレーション値
50
40
30
20
10
0
0
0.5
1
1.5
2
散乱体厚 (mm)
2.5
図 散乱体の影響による陽子線の広がり
[1]S.Agostinolli et al. ”Geant4, A simulation toolkit”, Nucl. Instr. Meth. A506, (2003)250-303
57
3
E-p9.
陽子線 CT のシミュレーションによる検討
富山商船高専
磯野 友洋,藤坂 克彦,阿蘇 司
Simulation study for proton Computed Tomography
Toyama Nat. Coll. of M. T.
T.Isono, K.Fujisaka, T.Aso
現在、放射線による腫瘍の治療が普及してきている。一般的に X 線 CT による診断と X 線による治療が行
われる。近年は陽子線や炭素イオン等の重粒子線治療もおこなわれるようになった。重粒子線は、深部にあ
る腫瘍を効果的に治療できると期待されている。しかし、X 線 CT による画像診断は X 線の物質への感度を
表すと考えることができる。この点から、陽子線治療に X 線 CT 画像を用いると、陽子線による治療効果と
X 線診断画像との間の感度が適応しないことが考えられる。陽子線治療の際には、陽子線による診断画像を
元に治療計画を立てることができれば効率的である。また、陽子線 CT は、X 線 CT に比べて少ない放射線量
で画像再構成が可能であると期待されている。
本研究の目的は陽子線を用いた画像診断の可能性をシミュレーションにより検討することである。陽子線
CT の有用性を検証するために30×26cmの楕円柱形の水と、その内部に骨組織、および肺組織を直径3
cmの円柱として配置した医療用ファントムに、X 線または陽子線を照射するシミュレーションを行った。
これらのシミュレーション結果を解析することにより、陽子線 CT と X 線 CT の比較を行い、陽子線 CT の利
点と不利点を検証した。本発表では、検証によって得られた陽子線 CT の特徴について報告する。
58
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