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遺伝子組換え実験等安全管理マニュアル

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遺伝子組換え実験等安全管理マニュアル
遺伝子組換え実験等安全管理マニュアル
自治医科大学組換えDNA実験安全委員会
委員長 小澤 敬也
副委員長 遠藤 仁司
安全主任 古川 雄祐
平成18年6月(改訂第2版)
目 次
Ⅰ)総 論
1、遺伝子組換え実験に対する規制の流れ p.
2、カルタヘナ議定書の概要 p.
3、カルタヘナ法の概要 p.
4、遺伝子組換え生物等の定義 p.
5、第一種使用と第二種使用 p.
1
1
1
2
3
Ⅱ)第一種使用に関する手続き p. 3
Ⅲ)第二種使用に関する手続き
1、機関実験と大臣確認実験 p.
2、第二種使用等の種類 p.
3、申請のための基礎知識 p.
4、大臣確認実験の範囲 p.
5、機関実験に当たって執るべき拡散防止措置 p.
6、保管、運搬に当たって執るべき拡散防止措置 p.
7、申請の実際 p.
4
4
4
6
6
8
8
Ⅳ)譲渡等・輸出に関する措置
1、遺伝子組換え生物等を譲渡するときの措置 p. 12
2、遺伝子組換え生物等を輸出するときの措置 p. 12
3、罰則等の措置 p. 12
Ⅰ)総 論
1、遺伝子組換え実験に対する規制の流れ
国際的な規制
日本における対応状況
NIH 組換 え DNA 実験 ガイ ドラ イ (文部省)大 学等におけ る ( 科 学 技 術 庁 ) 組 換 え
1970 年代
1980 年代
ン
組換え DNA 実験指針
DNA 実験指針
→大学等を対象
→大学等以外を対象
OECD 組 換え DNA 技術 の安 全 性
に関する考察
バイオ テクノ ロジー に関す る安 全
1990 年代
上記指針の改定(10∼11 回)
性に関する考察
生物の多様性に関する条約
(文科省)組換え DNA 実験指針[2000 年1月]
→国内すべての研究機関、高等学校等を対象
2000 年代
生物の 多様性 に関す る条約 のバ イ
オセー フティ ーに関 するカ ルタ ヘ (関係6省)遺伝子組換え生物等の使用等の規制による
生物の多様性の確保に関する法律[2004 年2月]
ナ議定書[2003 年9月]
2、カルタヘナ議定書の概要
1)目的
改変された生物(Living Modified Organism、略称LMO)の使用等による生物の多様性への悪影響を
防止すること。
2)適用範囲
生物の多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるすべてのLMOの国境を越え
る移動、通過、取扱いおよび利用について適用。ただし人のための医薬品であるLMOの国境を越える移
動については適用しない。
3)主な措置
LMOを、①環境への意図的な導入を目的とするもの(種子など)、②拡散防止措置の下での利用を目
的とするもの、③食用、飼料用、加工用を目的とするものの3つに分け、それぞれに対応した安全な取扱
い、包装および輸送、必要な情報の提供を義務付ける。
議定書締結国:131ヶ国(平成18年2月現在、アメリカ合衆国は不参加)
3、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)の概要
1)目的
国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等の規制に関する措置を講ずるこ
とにより、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保する。
2)規制対象
遺伝子組換え生物等:①細胞外において核酸を加工する技術(遺伝子組換え技術)、または②異なる分
類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術(科間細胞融合技術)のいずれかの利用で得られた核酸ま
たはその複製物を有する生物。
1
3)基本的事実の公表
主務大臣(環境大臣など関係6大臣)は、遺伝子組換え生物等の使用等による生物多様性影響を防止す
るための施策の実施に関する基本的な事項等を定め、これを公表する。
4)実際の措置
遺伝子組換え生物等の使用形態を、①拡散を防止しないで行う使用等(第一種使用等)、②拡散を防止
しつつ行う使用等(第二種使用等)の2つに分け、講ずるべき措置を規定。
5)輸入する生物の検査
6)情報の提供
7)輸出に関する手続き
8)科学的知見の充実、国民の意見の聴取
9)罰則等
4、遺伝子組換え生物等の定義
カルタヘナ法における生物の定義:核酸を移転、または複製する能力のある細胞または細胞群、ウイル
スおよびウイロイド
次のものは生物から除外する:①ヒトの細胞等、②分化能を有する、または分化した細胞等(個体およ
び配偶子を除く)であって、自然条件において個体に成育しないもの
生物として扱われるものの例
生物として扱われないものの例
○動植物の個体、配偶子
●死んだ動植物の個体
○動物の胚、胎児(胎仔)
●ヒトの個体、配偶子、胚、培養細胞、臓器
○植物の種子、種イモ、挿し木
●動植物培養細胞(ES 細胞を含む)
○ウイルス、ウイロイド
●動物の組織、臓器
●切り キャベ ツ、種 なし果 実、稲 わら( 籾のつ い
ていないもの)
注)①ES細胞は胚に戻すという人為的な操作を行わなければ個体に成育しないので、生物として扱わ
れない。一方、ES細胞から分化してできた生殖細胞、ES細胞が移植された胚、ES細胞から分化
した細胞が移植された個体は生物として規制の対象となる。
②培養細胞は対象とならないが、個体に移植し生着している場合、その個体は遺伝子組換え生物等
に該当する。
③ノックアウトマウスの場合、単に遺伝子を欠失しているものであれば対象外(但、そのような場
合はほとんど考えられない)。異種由来のマーカー遺伝子(Neo、LacZなど)が導入されている
場合は、遺伝子組換え生物等として扱う(こちらがほとんど)。
④遺伝子組換えウイルスを動物に接種した場合、ウイルス核酸が染色体に組み込まれた場合にのみ
遺伝子組換え生物等となる。
⑤ハイブリドーマは、細胞融合技術によって作製されたものであるが、通常の培養では遺伝子組換
え生物等とはみなされない。個体に移植した場合は、動物使用実験として規制の対象となる。
2
5、第一種使用と第二種使用
1)第二種使用とは、「環境中への遺伝子組換え生物等の拡散を防止する意図をもって行う使用等であっ
て、そのことを明示する等の措置を執って行うもの」
→ ①拡散防止措置があらかじめ省令によって定められており、その措置を行うことが義務付けら
れている(機関実験)
②省令に定められていない実験を行う場合には、主務大臣に確認の手続きを行わなくてはなら
ない(大臣確認実験)
2)第一種使用とは、「当該措置を執らないで行う使用等」
→ すべて大臣の承認が必要となる
第一種使用の例
第二種使用の例
○圃場での遺伝子組換え植物の栽培
●実験室における遺伝子組換え生物等の使用
○遺伝子組換え微生物の撒布
●培養設備での遺伝子組換え微生物の培養
○遺伝子組換え動物の放牧
●実験動物施設における遺伝子組換え動物の繁殖、
○遺伝子組換え大豆の食料や飼料としての使用
飼育
○遺伝子組換えトウモロコシの運搬
●特定 の措置 を講じ ている 網室に おける 遺伝子 ○遺伝子組換えウイルスを用いた遺伝子治療
組換え植物の栽培
●遺伝子組換え生物等の保管、運搬
Ⅱ)第一種使用に関する手続き
第一種使用等は、環境中で遺伝子組換え生物等の使用等をするもので、使用する生物等の種類や受容環
境ごとに、生じる可能性のある生物多様性影響、防止措置が異なると考えられる。
→ 第一種使用規定を策定し、主務大臣の承認を受けなくてはならない(別紙1)。 3
Ⅲ)第二種使用に関する手続き
1、機関実験と大臣確認実験
まず大臣確認実験に該当するかどうかを判定する。通常行う遺伝子組換え実験の多くは機関実験に該当
する(別紙2)。
2、第二種使用等の種類
研究二種省令における使用等及び実験の種類
遺伝子組 換え微 生物を 用いる実 験で、 他に当 てはま ら
微生物使用実験
ないもの
大量培養実験
20 Lを超える培養設備を用いるもの
動物作成実験
動物使用実験
動物接種実験
遺伝子組換え実験
実験
植物作成実験
使用等
植物接種実験
植物等使用実験
きのこ作成実験
遺伝子組換え動物を用いる実験
動物 によ り保 有さ れて いる 遺伝 子
組換え生物等を用いる実験
遺伝子組換え植物を用いる実験
植物 によ り保 有さ れて いる 遺伝 子
組換え生物等を用いる実験
遺伝 子組 換え きの こ類 を用 いる 実
験
細胞融合実験
保管
実験の過程において行われる保管以外の保管
運搬
実験の過程において行われる運搬以外の運搬
注)①大量培養実験は1回の培養量が20L 以上の場合に適用となる。2Lの培養を同時に10フラス コ
で行っても大量培養実験とはならない。拡散防止措置が異なるので、要注意。
②単にハイブリドーマを培養するだけならば、細胞融合実験とはならない。DT40を用いた微小 核
細胞融合法、植物のクロロプラスト・フュージョンなどが該当する。細胞融合実験はすべて大臣
確認が必要となる。
3、申請のための基礎知識(別紙3、4)
1)核酸供与体、供与核酸、ベクター、宿主の定義
① 核 酸 供 与 体 : 供 与 核 酸 が 由 来 す る 生 物 ( こ の 場 合 は ヒ ト を 含 む ) 。 siRNA や antisense
oligonucleotideなどをある生物の細胞に導入する場合、当該生物を核酸供与体と見なす。 ②供与核酸:組換え核酸のうちベクター以外の部分。同定済核酸と未同定核酸に区分される。同定済核
酸とは、❶機能がわかっているもの、❷その核酸の移入のみであればセルフクローニングまたはナチュラ
ルオカレンスとして考えることができる同種あるいは別種の核酸をいう。後者は交配可能な植物間の核酸
導入の場合などが該当する。
③ベクター:組換え核酸のうち移入された宿主内で当該組換え核酸の全部または一部を複製させるもの。
プラスミド、ウイルスが該当し、リポソーム、精子(遺伝子組換え魚の作成に用いられる)はベクターと
して扱わない。
④宿主:組換え核酸が移入される生物。培養細胞に遺伝子組換えウイルスを感染させる実験の場合、宿
主はウイルスとなる。培養細胞は「遺伝子組換え生物等を保有する細胞」として記載する。
4
2)実験分類の定義
①実験に使用する生物等によってクラス分類が規定されており、まず自分の使用する生物等および核酸
供与体のクラスを、研究二種省令第3条の表および研究二種告示別表第2にて確認する(平成18年2 月
に改正)。表に記載されていない生物等を使用する場合は大臣確認実験となる。
研究二種省令第3条の表における各実験分類に該当する生物の定められ方
クラス1
クラス2
クラス3
クラス4
微生物
哺乳 動 物 等( 哺 乳 綱 お 哺乳 動 物 等に 対 す る 病 哺乳 動 物 等に 対 す る 病 哺乳 動 物等 に 対す る 病
きのこ類
よび 鳥 綱 )に 対 す る 病 原性が低いもの
原性 が 高 いが 、 伝 播 性 原性 が 高く 、 伝播 性 も
寄生虫
原性がないもの
が低いもの
動 物
すべて
該当なし
該当なし
該当なし
植 物
すべて
該当なし
該当なし
該当なし
高いもの
研究二種告示別表第2における各実験分類に該当する生物の定められ方
クラス1
原核生物
真 菌
右記 以 外 のも の ( 哺 乳
動物 等 に 対す る 病 原 性
がないものに限る)
右記 以 外 のも の ( 哺 乳
原 虫
動物 等 に 対す る 病 原 性
がないものに限る)
右記 以 外 のも の ( 哺 乳
寄生虫
動物 等 に 対す る 病 原 性
クラス2
クラス3
Bacillus cereus、
Bacillus anthracis 、
Candida albicans、
Rickettsia typhi、
Clostridium
Salmonella typhi、
perfringens、etc
etc
クラス4
該当なし
Acanthamoeba 属、
Plasmodium 属 ( ヒ ト
及び サ ル に寄 生 性 が あ
該当なし
該当なし
該当なし
該当なし
るものに限る)、etc
Coenurus cerebralis 、
etc
がないものに限る)
ウイルス
BIV、
Vaccinia virus、
SARS coronavirus、
Zaire Ebola virus、
Bacterial viruses、
Hepatitis C virus、
West Nile virus、
Lassa virus、
ウイロイド Plant viruses、etc
Newcastle
disease Yellow fever virus 、
virus、etc
Marburg virus、etc
Hantaan virus、etc
②認定宿主ベクター系
特殊な培養条件下以外での生存率が低い宿主と当該宿主以外の生物への伝達性が低いベクターの組み合
わせで、具体的なリストは研究二種告示別表第1に記載されている。このうち特に安全性が高いと考えら
れるもの(B2)を、特定認定宿主ベクター系とする。
特定認定宿主ベクター系を用いる場合は、拡散防止措置のレベルが一段下がる。
区分
名 称
EK1 、 SC1 、 BS1 、 Thermus 属 細 菌 、 Rizobium 属 細 菌 、 Pseudomonas putida 、
B1
Streptmyces 属細菌、Neurospora crassa、Pichia pastris、Schizosaccharomyces pombe 、
Escherichia coli B 株
B2
EK2、SC2、BS2
5
4、大臣確認実験の範囲
以下の遺伝子組換え実験とすべての細胞融合実験が大臣確認実験となる。
①宿主または核酸供与体が研究二種告示別表第2のリストにない。ただし、ⅰ)認定宿主ベクター系を
使用、ⅱ)核酸供与体がウイルス以外の生物、ⅲ)同定済み核酸で、病原性・伝染性がない場合を除
く。
②宿主または核酸供与体がクラス4である。
③宿主がクラス3である。
④核酸供与体がクラス3で、ⅰ)認定宿主ベクター系を使用せず、ⅱ)未同定核酸ないしは病原性・ 伝染性に関係する。
⑤宿主がウイルス以外のクラス2で、供与核酸が薬剤耐性遺伝子である。
⑥自立的な増殖力、感染力を保持したウイルスまたはウイロイド。ただし、ⅰ)ワクシニアウイルス
以外の承認生ワクチン株、ⅱ)レトロウイルス(ヒトレトロウイルス以外)、ⅲ)バキュロウイルス、
ⅳ)植物ウイルス、ⅴ)ファージを除く。
⑦LD50が100μg/kg以下の蛋白性毒素をコードする核酸を含む。
注)マウスマラリア原虫(Plasmodium berghei)は、げっ歯類にのみ感染し、ヒトには感染しないと
考えられていることから、一般的に研究に使用されている。しかしながら研究二種告示別表第2のリスト
に掲載がない。マラリア原虫に関する記載は1ケ所のみで、原虫のクラス2の項に「Plasmodium属(ヒ
ト及びサルに寄生性があるものに限る)」とある。また原虫のクラス1の条件に、「哺乳動物等に対する
病原性がないものに限る」とある。以上からマウスマラリア原虫を使用する実験はすべて大臣確認が必要
となる。リストに見あたらない生物等を使用する場合は、すみやかに安全委員会に相談のこと。
5、機関実験に当たって執るべき拡散防止措置(別紙9)
1)拡散防止レベルの決め方
①宿主と核酸供与体の実験分類の大きい方に従って設定
②特定認定宿主ベクター系(B2)を用いる場合は、核酸供与体がクラス1、2の場合はP1、
クラス3の場合はP2に下がる。
③供与核酸が同定済核酸で、哺乳動物に対する病原性、伝達性に関係しない場合は、宿主の実験分類に
従って設定する。
④認定宿主ベクター系を用いず、供与核酸が哺乳動物に対する病原性、伝達性に関係する場合は、
宿主または核酸供与体の実験分類の高い方からさらに1段上げて設定する。
2)拡散防止措置の実際
①微生物使用実験の場合に執る拡散防止措置:P1∼P3
P1:窓、扉の閉鎖や取扱い後の手洗い、飲食の制限、実験内容を知らない者が立ち入らないための
措置が必要である。
6
P2:P1レベルの仕様に加え、安全キャビネット、高圧滅菌器、「P2レベル実験中」の表示が
必要となる。
P3:P2レベルの仕様に加え、前室の設置、洗浄・滅菌可能な床、自動で操作可能な手洗い設備、
不活化可能な排水設備、給排気設備、専用の作業着、出入りの制限、「P3レベル実験中」の
表示が必要となる。
②大量培養実験の場合に執る拡散防止措置:LSC∼LS1
③動物使用実験の場合に執る拡散防止措置:P1A∼P3A
動物の飼育室としての構造、設備を有する以外に、逃亡防止設備(ネズミ返し)、糞尿等の回収設備が
必要である。また「遺伝子組換え動物飼育中」の表示が必要である。
7
6、保管、運搬に当たって執るべき拡散防止措置
1)保管に際しての注意
①遺伝子組換え生物等が漏出、逃亡等しない構造の容器に入れる。
②容器の外側に遺伝子組換え生物等である旨を表示する。
③容器は所定の場所に保管する。
④組換え体を保存している冷蔵庫などに「組換え体保存中」のラベルを貼る。
2)運搬に際しての注意
①遺伝子組換え生物等が漏出、逃亡等しない構造の容器に入れる。
②P3、LS2レベル以上あるいは大臣確認前の場合は二重に容器に入れる。
③外側の見やすい箇所に、取扱いに注意を要する旨を表示する。
7、申請の実際(別紙3、4)
1)申請書の書き方 実験の概要
核酸供与体
核酸供与体の特性
供与核酸の由来生物の種名、系統名を記載する。
siRNA、antisense oligo の場合は標的生物となる。
1)分類上の位置、実験分類、2)病原性、有害性を記載する。
例)HIV Ⅰ型:レトロウイルス科レンチウイルス属(クラス3)
ゲノム DNA、cDNA、合成 DNA などと記載する。
供与核酸の特性
機能、サイズ、構成、accession number なども忘れずに。
マーカー、プロモーター遺伝子については省略も可。
1)名称、由来 生物、2)構 成、3)伝達 性、宿主特異 性について記 載
遺伝子組換え生
物等の特性
ベクター等の特性
する。ウイルスは宿主等の欄に記載する。
例)pUC119、E. coli 用クローニングベクター
1)分類上の位 置、実験分類 、2)自然環 境における分 布状況、生育 可
宿主等の特性
能環境、3)繁 殖、増殖様式 、4)病原性 、有害物質の 産生、5)栄 養
要求性、薬剤耐性について記載する。
遺伝子組換え生物等
の特性(宿主等との
相違を含む)
親生物と比べて 、新たに付与 されることが 予想される又 は付与された 特
性を記載する。 さらに遺伝子 組換え動物の 場合は、1) 組換え核酸の 移
入法、育成の経 過、2)供与 核酸の存在状 態、形質発現 の安定性、3 )
繁殖、増殖様式等について記載する。
遺伝子 組換 え生物 等を 保有し てい る 親生物と比べて 、新たに付与 されることが 予想される又 は付与された 特
動物、植物又は細胞等の特性
性を記載する。
区分:P1、P2、P3、P1A、P2A など
区分及び選択理由
選択理由:ベクターとし て遺伝子組換えレトロ ウイルス(P2)を用い る
等
拡散防止措置
施設等の概要
P2 に関しては許可が必要なので、許可を得た部屋番号を記載する(別 紙
9にて申請)。
遺伝子組換え生物等
を不活化するための オートクレーブ、次亜塩素酸処理、焼却など
措置
8
2)申請の例
①一般的な遺伝子発現実験:微生物使用実験
実験の概要
ヒトの転写因子 E2F-6 を pIRES2-EGFP ベクターに組み込 み、lipofectin を用いて NIH-3T3
細胞に導入し、発現が変化する遺伝子を DNA チップを用いて解析する。
核酸供与体
核酸供与体の特性
ヒト、オワンクラゲ、E. coli
実験分類:クラス1
病原性、有害性なし
ヒト E2F-6 cDNA :転 写因 子、 2.0kb、 GenBank #AK096197 (同 定
済み核酸)
供与核酸の特性
GFP cDNA:蛍光タンパク質、0.7kb(サイズ等省略可)
E. coli aminoglycoside 3'-phosphotransferase cDNA:酵素
遺伝子組換え生
(neomycin 耐性遺伝子)、0.8kb(サイズ等省略可)
物等の特性
ベクター等の特性
宿主等の特性
pIRES2-EGFP:哺乳細胞用発現プラスミド
E. coli JM109 株(K12 株由来):クラス1、認定宿主(B1, EK1)、 病原性なし、有害物質の産生なし
遺伝子組換え生物等
の特性(宿主等との ネオマイシンに対する耐性を獲得する。
相違を含む)
遺伝子 組換 え生物 等を 保有し てい る E2F-6 の強発現により細胞 増殖、分化能などに変 化が生ずることが予 想
動物、植物又は細胞等の特性
区分及び選択理由
拡散防止措置
施設等の概要
される。
区分:P 1
選択理由:核酸供与体、宿主ともにクラス1のため
P 1実験室
遺伝子組換え生物等
を不活化するための オートクレーブ、次亜塩素酸処理
措置
注)①この実験において仮にCandida albicans(クラス2)の酵素遺伝子を供与核酸とすると拡散防止
措置はP2となる。
②Candida albicans(クラス2)の酵素遺伝子を供与核酸としても、E. coliがχ1776 でプラスミ
ドがpBR322なら、特定認定宿主ベクター系(B2、EK2)のため、拡散防止措置はP1で良い。
9
②特定の遺伝子をマウス培養細胞に発現させ、マウスに移植する実験:微生物使用実験、動物使用実験
(動物接種実験)
実験の概要
ヒト変異型 FLT3 遺伝子をレトロウイルス発現ベクターに組み込み、マウス造血幹細胞に導入、
放射線照射マウスに移植して白血病モデルとする。
核酸供与体
核酸供与体の特性
ヒト、オワンクラゲ、E. coli
実験分類:クラス1
病原性、有害性なし
FLT3-ITD cDNA : サ イ ト カ イ ン 受 容 体 、 2.5kb 、 GenBank
#BC036028(同定済み核酸)
供与核酸の特性
GFP cDNA:蛍光タンパク質、0.7kb(サイズ等省略可)
E. coli aminoglycoside 3'-phosphotransferase cDNA:酵素 遺伝子組換え生
物等の特性
(neomycin 耐性遺伝子)、0.8kb(サイズ等省略可)
ベクター等の特性
pMYs-IG:レトロウイルス発現ベクター
E. coli JM109 株(K12 株由来):クラス1、認定宿主(B1, EK1)、 宿主等の特性
病原性なし、有害物質の産生なし
レトロウイルス:クラス2
遺伝子組換え生物等
の特性(宿主等との
相違を含む)
E. coli:ネオマイシンに対する耐性を獲得する
レトロウイルス:癌原遺伝子(変異型サイトカイン受容体)を保有する
遺伝子 組換 え生物 等を 保有し てい る 移植マウスの 骨髄において 、変異型 FLT3 を 発現した造血 幹細胞が増 殖
動物、植物又は細胞等の特性
し、最終的には白血病を発症することが予想される。
区分:P 2、P 2 A
区分及び選択理由
選択理由:ベクターとして遺伝子組換えレトロウイルス(P2)を用いる。
またレトロウイルスを感染させた細胞をマウスに移植する(P2A)。
拡散防止措置
施設等の概要
P 2実験室(本館2階RIセンター組換え DNA 実験室)
遺伝子組換え生物等
を不活化するための オートクレーブ、次亜塩素酸処理、焼却
措置
注)①この実験においてレンチウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクターを用いても拡散防止 措置は同じ。
②この実験においては、マウスの体内でレトロウイルスが増幅する可能性は低いので、マウスは 宿主、遺伝子組換え生物に該当しない。レトロウイルス発現ベクターを直接マウスに接種し、
ゲノムに組み込まれると考えられる場合は、遺伝子組換え生物として扱う。
③レトロウイルスを産生するためのpackaging cell lineは生物として扱わなくて良い。
④この実験で用いているFLT3 はウイルスの受容体として働く可能性は低いが、サイトカインまた
はケモカインの受容体を用いて遺伝子組換え生物等を作成する場合は注意が必要である。ウイル
ス学教科書等で感染受容体として知られているものは、大臣確認が必要である。例)CD4、 CXCR4、CCR5、DAFなどを組み合わせで用いる場合
10
③特定の遺伝子をマウス個体に発現させる実験:動物接種実験
実験の概要
E2F-1 ノックア ウトマウス に自然発症 した腫瘍に 対する E2F-1 の 治療効果を in vivo で確 認
する。E2F-1 ノックアウトマウスは Jackson Laboratory から購入する。
核酸供与体
核酸供与体の特性
供与核酸の特性
遺伝子組換え生 ベクター等の特性
物等の特性
ヒト
実験分類:クラス1
病原性、有害性なし
ヒト E2F-1 cDNA:転 写因子 、1.3kb、 GenBank # AF086380 (同 定
済み核酸)
pDC515 アデノウイルス用シャトルプラスミド
pBHGfrt Δ E1 アデノウイルスゲノムプラスミド
E. coli DH5 α 株(K12 株 由来) :クラス 1、認 定宿主( B1, EK1) 、
宿主等の特性
病原性なし、有害物質の産生なし
遺伝子組換えアデノウイルス:クラス2
遺伝子組換え生物等
の特性(宿主等との
相違を含む)
遺伝子組換えアデノウイルスの感染を受けたマウス。欠損した E2F-1 を
ふたたび発現するようになる。
遺伝子 組換 え生物 等を 保有し てい る E2F-1 ノックアウトマウス はゲノムにネオマイシ ン耐性遺伝子が組み 込
動物、植物又は細胞等の特性
まれている。
区分:P2、P2A
区分及び選択理由
選択理由:遺伝子組換えアデノウイルス(クラス2)を作製する(P2)。
また作製した遺伝子組換えアデノウイルスをマウスに注射する(P2A)。
拡散防止措置
施設等の概要
P 2実験室(本館2階RIセンター組換え DNA 実験室)
マウス逃亡防止設備としてネズミ返しを設置
遺伝子組換え生物等
を不活化するための オートクレーブ、次亜塩素酸処理、焼却
措置
注)①ノックアウトマウスの作製から行う場合は、動物作成実験となる(P1A)。
②複製しない核酸(DNAワクチン、antisense oligonucleotideなど)を直接接種した場合は、
接種された動物は遺伝子組換え生物には該当しない。
11
Ⅳ)譲渡等・輸出に関する措置
1、遺伝子組換え生物等を譲渡するときの措置(別紙13)
譲渡者は以下の情報を譲受者に提供する義務があり、違反すると罰則が適応される。
①遺伝子組換え生物等の使用等をしている、自治医大において機関承認を受けていることを明記
②ⅰ)宿主または親生物の名称、ⅱ)組換え核酸の名称
③譲渡者の連絡先
情報提供義務の適用除外
①適正使用情報が定められていない遺伝子組換え生物等の譲渡の場合
②委託して運搬させる場合(業者等に対しては情報提供を行わなくても良い)
③第一種使用規程の承認や第二使用等における拡散防止措置の確認の適用除外に当たる場合
④特定遺伝子組換え生物等の場合
⑤2回以上にわたって譲渡する場合 情報提供は以下のいずれかによることとされている。必ず学事課へも提出すること。
①文書の交付
②容器等への表示
③ファックス
④電子メール
2、遺伝子組換え生物等を輸出するときの措置(別紙12)
遺伝子組換え生物等を輸出する場合、一定の様式で表示(文書添付)、通告を行わなくてはならない。
一方、輸入に関する規定は定められていない(輸入後の使用を規程に則って行えば良い)。
通告義務の適用除外
①議定書締約国以外の国に輸出:アメリカは議定書締結国ではないので、通告義務の適用除外。
ただし記録は残しておく(輸出届出書および様式第12∼14)
②ヒト用の医薬品の輸出
③一定の遺伝子組換え生物等を輸出する場合(通告のみ適用除外)
輸出の手続き
①まず別紙12を作成
②カルタヘナ法施行規則第37条に従い、様式12、13、14のいずれかを作成
通常の研究用遺伝子組換え生物等の場合 → 様式第12
食用、飼料用または加工用の場合 → 様式第13
環境への意図的な導入の場合 → 様式第14
③様式12、13、14のいずれかを添付して当該生物等を発送
④様式12、13、14のいずれかのコピーと別紙12を学事課に提出(米国に送る場合も提出)
注)大学での研究はほとんどが様式第12 に該当するので、学事課ホームページからのダウンロー ドは様式12に統一してある(13頁参照)
3、罰則等の措置
カルタヘナ法違反に対して、最も重い場合で1年以内の懲役もしくは100万円以内の罰金または両方 が
科される。情報の提供の不備だけでも罪に問われるので注意が必要である。
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様式第12(第37条第1号関係)
※Living modified organisms(遺伝子組換え生物等であること)
Destined for contained use(拡散防止措置の下での利用を目的とする)
※※Requirements for the safe handling, storage, transport and use(安全 な取扱い、保管 、輸送及び利用 に
関する要件)
※※※ The contact point for further information, including the name and address of the individual and
institution to whom the living modified organisms are consigned(追加的な情報のための連絡先)
(1) Name, address and contact details of the exporter(輸 出者の氏名又は名称、住 所又は所在地及び連絡先 に
ついての詳細)
Name(氏名又は名称)
Address (住所又は所在地)
Tel, telex or fax number(電話、テレックス又はファクシミリの番号)
Contact person(連絡責任者)
(2) Name, address and contact details of the importer(輸入者の氏名又 は名称、住所又は所在地及び連絡先 に
ついての詳細)
Name(氏名又は名称)
Address (住所又は所在地)
Tel, telex or fax number(電話、テレックス又はファクシミリの番号)
Contact person(連絡責任者)
注)①※の欄には、遺伝子組換え生物 等の名称を括弧書で記入する。経済協 力開発機構(OECD)において商業 化
段階にある遺伝子組換え植物に適 用されるものとして開発された識別記 号等の国際的な識別記号が付されてい る
ものにあっては、その記号を括弧内に記入する。
②※※の欄には、輸出しようとしている遺伝子組換え生物等が、危険物輸送に関する国連勧告、国際 植物防疫条
約又は国際獣疫事務局における国 際家畜衛生規約において措置が求めら れているものである場合には、これら の
勧告等における区分又は措置の内容を記入する。措置が求められていない場合には、その旨記入する。
③※※※の欄の(2)の輸入者の 項には、輸入者が仕向先と異なる場合 には、その仕向先である個人又は団体 の
氏名又は名称、住所又は所在地及び連絡先についての詳細を併せて記入すること。
(参考)記入例
Living modified organisms / Destinied for contained use:
(Recombinant adenoviral expression vector for E2F-1)
Requirements for the safe handling, storage, transport and use:
UN2814 (Infectious substances affecting humans)
The contact point for further information, including the name and address of the individual and
institution to whom the living modified organisms are consigned
(1) Name, address and contact details of the exporter
Name: Jichi Medical University
Address: 3311-1 Yakushiji, Shimotsuke, Tochigi 329-0498, Japan
Tel, telex or fax number: +81-285-58-7400/+81-285-44-7501
Contact person: Yusuke Furukawa, MD
(2) Name, address and contact details of the importer
Name: School of Life Sciences, University of Science and Technology of China
Address: Room 5-124, P. O. BOX 4, Hefei, Anhui 230027, P. R. China
Tel, telex or fax number: 3601437
Contact person: Ming Su, PhD
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