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《2012 年 米国のドラッグストア Part-1》
I.
経済全体
2008 年 9 月の証券会社リーマンブラザーズショック以後、米国の経済は急速に底なし沼のよ
うな不況に突入した。その後徐々に回復をしているがそのペースはゆっくりとしたものだ。そ
の要因としては、回復が遅れている住宅市場、原油等の価格アップ、8%台という高止まりの
失業率、政府の緊縮予算、弱い輸出市場、そしてヨーロッパ危機などがあり、2014 年までは
本格的な景気回復はないだろうと言われている。そのため消費者は消費に対して非常に慎重で、
2012 年の GDP の伸びは 2011 年の 1.7%よりは良いものの 2.1%程度、そして 2013 年は 2.4%
と予測されている。GDP の 71%を占める一般消費の拡大が今後の小売業成長のカギだ。
【世界銀行による実質国内総生産(GDP)伸び率の見通し】
(12 年 6 月 12 日発表)
国
世界全体
米国
ユーロ圏
中国
日本
2012 年
2.5%
2.1%
▲0.3%
8.2%
2.4%
2013 年
3.0%
2.4%
0.7%
8.6%
1.5%
II. ショッピングに対する消費者の新しい考え方
不況による財政上の圧迫は強く、消費者はショッピングパターンを変え、高額ブランドを回避し、
購入量を抑えて必要不可欠商品のみのショッピングとなった。
消費者行動
店に入るとセール価格商品を探す
チラシを注意深く見るようになった
価格をより重要視する
より安い価格を求めて、店舗を見てまわる
安い価格を求めて大量購買する
クーポンを集め、他の人と必要なクーポンを交換し合っている
%
82
69
65
59
30
34
そして、店舗で品物を見てから買い物はアマゾン等のネットでするスタイルも普及し、店舗が
「ショールーム化」(ショールーミング)している。
III. 小売業の状況
主要小売業 3 業態の中で、ディスカウントストアは売上げ金額で 5.7%、既存店ベースで 3.6%、
ドラッグチェーンは全体で 5.7%、既存店で 3.5%成長とほぼ同じような成長を示した。一方、ス
ーパーマーケットは全体で 3.0%、既存店舗で 1.6%の成長と一番低かった。かつて小売業は全て
「ウォルマートとの戦い」であった。しかし近年は「アマゾンとの戦い」に変わってきている。
品揃えの多さはアマゾンンの方が遥かに多く、超大型店の売り場は無用の長物となってきており、
「ビッグボックス(大型店)の死」という言葉が誌面を飾るようになっている。
業態別にみると、ディスカウントストアは食品・ジェネラルマーチャンダイズ・消耗雑貨・HBC
そしてファーマシーを取り入れることと、その低価格により成長を続けたものの以前の勢いは無
い。米国一の小売業であるウォルマートはスーパーセンターの飽和により、ウォルマート・ネイ
バーフッド・マーケット、ウォルマートエキスプレス(フードデザート地帯へ 200 坪程度の店
を実験的に展開)
、ウォルマート・オン・キャンパス(学校内)という新たなフォーマットの開発
を通してさらなる成長を模索している。勿論これらのフォーマットには調剤機能が取り入れられ
るので、調剤市場はさらに激戦となる。またウォルマートはウォルマート・ネイバーフッド・マ
ーケットのブランド再構築を考えており、いずれウォルマートマーケットに統一して、700 坪~
1900 坪程度の店を展開していく。住宅立地や街中立地に出店する戦略は、伝統的にそれらの立
地を得意としてきたドラッグストアやスーパーマーケットとぶつかり、これらの業態にとっての
脅威になっている。ウォルマート・オン・キャンパスフォーマットはアーカンソー大学の中に作
られたが、予測を遥かに超える好結果を出している。ターゲットは大型店では食品を強化した
PFresh フォーマットを、そして街中ではサイズをスケールダウンしたシティ・ターゲットを強
化している。
スーパーマーケット業態の低い成長は、他の業態が顧客の来店頻度を上げるためにこぞって食品
を強化していることと、低価格性と近場の便利性を求めている消費者ニーズに十分対応出来なか
ったことによる。近年の消費者はよりクーポンを使用するようになっており、価格重視になって
いる。この傾向は景気が回復しても続くと見られている。そのため最近のスーパーマーケットは
バリューミールコンセプトで消費者にディスカウントを強力に訴求している。そのような環境下、
スーパーマーケットは成長のために現在約 10%の市場シェアを持つ調剤に力を入れている。ス
ーパーの中で一番調剤が強いのはクローガー(調剤の売上げは 70 億ドル)で、全小売業の中で
調剤売上げランキング第 6 位の位置にある。また健康と環境に関心の高いスーパーの代表格で
あるホールフーズマーケットや小型店で低価格志向のトレーダージョー等は好業績を継続した。
【マスマーケット小売業 2011 年業績】
項目
売上金額
前年比
構成比
既存店舗売上成長率
純利益率
平均店舗面積
店舗平均売上
坪当り売上
店舗数
店舗数増加率
スーパーマーケット
5777 億ドル
+3.0%
40%
+1.6%
1.3%
1280 坪
16.0 百万ドル
12,492 ドル
36,195 店
+0.5%
ディスカウントストア
6217 億ドル
+5.7%
43%
+3.6%
2.0%
3076 坪
30.1 百万ドル
9,792 ドル
20,660 店
+1.2%
ドラッグストア
2518 億ドル
+5.7%
17%
+3.5%
1.4%
308 坪
7.8 百万ドル
28,908 ドル
24,613 店
+0.1%
【米国小売企業売上高ランキング 2011】
順位
1)ウォルマート
2)CVS ケアマーク
3)クローガー
4)コストコ
5)ウォルグリーン
6)ホームデポ
7)ターゲット
8)ベストバイ
9)ロウズ
10)アマゾン
売上高
($百万)
446,950
107,100
90,374
88,915
72,184
70,395
69,865
50,705
50,208
48,077
前年比
(%)
6.0
11.8
10.0
14.2
7.1
3.5
3.7
0.9
2.9
40.6
最終利益高
($百万)
16,387
3,461
602
1,462
2,714
3,883
2,929
-1,231
1,839
631
前年比
(%)
-4.2
1.0
-46.1
12.2
29.8
16.3
0.3
-196.4
-8.5
-45.2
既存店
成長率
1.6
2.3
4.9
10.0
3.3
3.0
3.0
-1.7
0.0
n/a
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