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鉄道利用を便利で快適にするアプリを開発
MCPC award 2015 グランプリ・総務大臣賞・モバイルビジネス賞 東日本旅客鉄道株式会社(JR 東日本) >>> DATA 業種 運輸業 活用分野 情報提供サービス テクノロジ WiMAX、音波ビーコン 路線や駅の「今」がスマホでわかる 鉄道利用を便利で快適にするアプリを開発 図 2 システムの全体像 温度も分かる「山手線トレインネット」 をサービスメニューに加えた。 松本氏は、 「実は、このようなサー ビスの基礎研究には 2005 年頃から 「駅に着く前に列車の遅延がわか 録している。 れば別の駅に行ったのに」 「自分が乗 のか知りたい」─。時刻表通りに運 車上システム(TIMS) 山手線の車内にいる人 (トレインネット) ・列車内情報 定額で大容量通信ができる環境も 情報要求 整ったことから、実験に取り組み始め たのが 2011年。本格的なプロジェク 外部システム (ATOS 等) (気温、混雑度 など) 着手していました。スマホが普及し、 既存の運行管理データを活用 山手線内は混雑率や温度情報も る駅では遅延の影響はどのくらいな ・ 「スマートフォンアプリ」 ・ 「地上システム」 ・ 「車上システム」の 3 つで構成 ・外部システムとも連携することで、 スマートフォンへの各種情報の提供を実現 ・無線通信では、 車上システム∼地上システム間において WiMAXを使用 WiMAX 通信 情報取得 ・運行情報 ・列車位置情報 ・発車時刻情報 ・天気情報 ・時刻表等 トが 2013 年 4 月に立ち上がり、実際 鉄道では、少しの遅延でも正確な情 の乗り換え・乗り継ぎの検索サービス のアプリ開発を10月頃に開始し、約 報を求める人が多い。的確な情報提 が鉄道会社以外から数多く提供され 半年でリリースにこぎつけました」と、 供がなされれば、最適な行動がとれ 広く浸透している。 るからだ。 「 JR 東日本アプリ」では、運行情報 このニーズに応えたのが、J R 東日 はもちろんのこと、利用路線の列車が 本が2014年3月に提供を開始した 「JR どこにいるかの「列車位置情報」 、駅 (A u t o n o m o u s d e c e n t r a l i z e d 東日本アプリ」である。 ではコインロッカーの空き状況、さら Tr a n s p o r t O p e r a t i o n c o nt r o l 開始時に掲げた「 2 年間で 20 万ダ に東京の山手線においては車両の混 System) など各種の外部システムから ウンロード」という目標をわずか3日間 雑状況といった詳細情報を発信して 収集できる。また、個々の列車の安全 サービス提供の仕組みは、ATOS まうと、認識された乗車車両が 1両ず でクリア。その後も順調に実績を伸ば いる。 確実な運行を支える「TIMS」 (Train などの外部システムおよび山手線の れてしまうことになる。 線を対象(2016 年 3月26日現在)とし し、累計で160 万ダウンロード超を記 サービスの企画・開発に携わった Information Management System) TIMSから必要な情報をサーバに集め、 このような問題を回避するために た「列車位置情報」、 「山手線トレイン 鉄道事業本部 サー と呼ぶ車上システムでは、車両ごとの 利用登録したユーザがスマホのアプリ 採用したのが音波 Beacon。山手線を ネット」の 4つ。これらに加えて、 「毎日 ビス品質 改革 部 乗車率や車内温度なども測定・収集し から情報を取得する形になっている。 走る各編成の各車両に人の耳には聞 アプリを使ってもらいたい」という狙 IC T 情 報 発 信プロ ている。これらを新しいアプリのコンテ このシステムを構築する際には、大 こえない音波を発するBeaconを設置 いで松本氏自身が練り上げたゲーム ジェクトチームの松 ンツにも利用することにしたのである。 きく2 つの課題があった。 し、利用者がアプリを立ち上げた時 コンテンツの 「トレすご」 (すごろくゲー 本貴之 氏は、 「鉄 道 アプリ画面では、よく利用する路 まず、車上システムであるT I M S か の操作でスマホのマイクから音波を取 ム) も好評を博している。 会 社 だ からこそ 取 線や駅を登録することで、利用路線 ら地上のサーバに情報をどう送信す 得することにより、利用者のIDと乗車 今後もコンテンツの拡充を図ってい 得できているリアル の運行 情報、利用駅の構内図や施 るか。これについては、自社が株主に 車両を結び付ける仕組みを構築した。 く考えだが、 「サービスの良さをきち タイム情報があるの 設、時刻表、店舗案内など多種多様 もなっているUQコミュニケーション 松本氏は、 「この方法ならアクセス んと伝えダウンロード数を増やしてい で、これをサービス な情報の中から必要なものを簡単に ズのWi M A Xサービスを用いること する端末数が限られることなく、スマ くためのプロモーションにも力を入れ の中に組み込もうと チェックできる。 で解決した。 ホでの無線通信の ON/OF F 操作も ていく計画」 (松本氏)という。 考えました」と話す。 また、T I M S からの情報活用につ もう1つは、 「山手線トレインネット」 意識せずに済みます。他社のサービ また、その他の鉄道会社との連携 列車の運行状況や いては、山手線を対象として、利用者 スで採用実績があったことも背中を を深めており、 「最終的なゴールは、お 列車の位置、発車時 が乗車した列車の乗車位置(車両) ・ 押してくれました」と説明する。 客様が家を出られたときに駅や路線 刻などの情報は、首 区間に合わせた停車駅の各種情報 都圏 在 来 線の運 行 (乗換路 線、ホーム案内図、駅構内 を管理する「ATOS」 図)とともに各車両の混雑状況と車内 図 1 JR 東日本アプリ 提供情報の一例 運行情報 すでに160 万以上の ダウンロード 遅 延等 の 情 報を 迅速に提供 列車位置情報 利 用 駅を基 点に、 列車がどこを走行 しているかをリア ルタイムに提示 コインロッカー空き状況 駅に設置してあるコイ ンロッカーの空き状況 がわかる Profile 東日本旅客鉄道株式会社 http://www.jreast.co.jp/ 6 本社所在地 東京都渋谷区代々木 2-2-2 設 立 1987 年 4月1日 資本金 2000 億円 事業内容 東日本旅客鉄道 鉄道事業本部 サービス品質改革部 ICT 情報発信プロジェクトチーム 松本貴之氏 旅客鉄道事業、貨物鉄道事業、旅客自動車運送事業、 旅行業など アプリ 地上システム ・各種コンテンツデータ ・ユーザ情報 ・アクセスログなど サービス提供までの経緯を説明する。 で利用者の乗車車両をどのように特 後もバグがあれば速やかに修正して 温めてきた構想が、IC T の普及で 定するか ─その通信手段として無 いこうというスタンスで取り組んだか 一気に現実のものとなったのである。 線 LANやBluetoothが候補にあがっ ら」と松本氏は明かす。出足から順調 たが、11 両編成の山手線で、車両の に推移したダウンロード数も想定以 前寄りあるいは後ろ寄りに乗車した 上だという。 場合、隣の車両からの電波を拾ってし アクセス数 が 多いコンテンツは、 車上からの情報収集にWiMAX 車内は音波 Beaconで ID 認証 人気アプリの 1つであるす ごろくゲーム「トレすご」 。 毎日の利用に応じてすごろ くを進め、路線を制覇でき る。ゲームを毎日使っても らえば、アプリ全体の利用 頻度アップにつながる 列車関連の 4つの情報に加え オリジナルゲームも好評 「運行情報」、時刻表、首都圏の17 路 の状況がわかるようなきめ細かな情 報を、また外出した先ではタイムリーに 名産品やグルメなどの情報を提供して プロジェクト発足から1年でサービ いくこと。日々の行動をより快適で楽 ス開始というスピーディな展開は、 「ま しくするパートナーの役割を担いたい」 ずやってみようという精神、リリース と松本氏は意気込みを語っている。 7 顧客サービス強化 顧客サービス強化 鉄道情報のアプリといえば、路線 新ビジネスの開発 新ビジネスの開発 車両ごとに設置した Beacon 装置からの音をスマホのマイ インターネット クで拾い、 「何号車に乗ってい 位置情報 る人か」を把握して情報提供 スマートフォン (温度、 混雑状況など) 行するのが当たり前とされる日本の