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講演> 若手大学教員として, 女性研究者として (大学教育

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講演> 若手大学教員として, 女性研究者として (大学教育
Kobe University Repository : Kernel
Title
<講演>若手大学教員として,女性研究者として(大学教育
研究センター第4回研究集会)(大学教育研究センター第4
回研究集会)
Author(s)
山下, 京
Citation
大學教育研究,05:110-115
Issue date
1997-03
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004625
Create Date: 2017-04-01
大学教育研究
講演「若手大学教員として、女性研究者として」
山下
京(大阪大学人間科学部助手)
ただいまご紹介にあずかりました、大阪大学人間科学部で助手をしております山下と申します。よろしくお願
いいたします。
本日は、若手研究者として、あと助手世代の代表選手としてお話をすべく呼んでいただきました O と思ってい
たんですが、これまでの先生方のお話をお伺いすると、かなり内容深いものでしたので、私の話というのは助手
の小話みたいな感じなんで、すけれども、私も助手になってまだ I年半ぐらいですので、あまりキャリアがあると
おいえないんで、すけれども、今回、このような場でお話させていただくことになりまして、助手の同僚の方とか
先輩の助手経験者の方に、お話をいろいろ伺って取材してきましたので、その話も交えてお話させていただきた
いと思います。
まず、助手の仕事についてなんですが、皆さん、ご存じのように、助手というのは大学人のキャリア段階では、
まず最初の一歩みたいなもんです。そしてこの助手の仕事ですが、大学人の皆さんにはわかりやすいんですが、
一歩世間に出ますと、割と世間的には「教授のかぱん持ち」みたいなイメージがあります。これは本当に経験し
たんですが、私、よく企業などに調査に行くんですが、文部技官の方が、技官という響きが「官」に弱い日本人
にアピールするのか、丁重に「あ、技官の先生」というふうに扱われるわけですね。助手の場合は、かぱん持ち
みたいに扱われます。
その助手の仕事についてですが、教育指導とか事務、雑用、研究室でプロジェクトがあればそれを推進したり、
果ては、私たちの場合は、お茶くみ、コピーとり、電話とりなど雑用がいろいろあります。そして何といっても
研究も重要です。授業の方は基本的には講師の方と違って、担当する授業というのはあまりありません。人間科
学部では、心理学実験という実習系の授業は助手が交代でやっておりまして、あと、講座の実験実習も、これは
講座によりますけれども、大体、助手が主体となって計画を立てて講座内の学生を指導しています。あとは、最
近ふえた文献購読というのがありまして、これは本当は語学の授業なんですけれども、助手が交代でやるという
ことになっております。あとは、いろいろ、細々、講座内の指導ですね。ですから教育、研究とかいう点でいけ
ば、教育の方はそんなに負担はないわけです。あと、管理的な仕事というのも、教授、助教授のような偉い立場
ではありませんから、講座内の学部生、大学院生の指導とか、そういう類のものです。
それでは助手の仕事が、その分気楽で研究三昧なのかというと、なぜか、いろいろ事務的なこととか雑用が結
構多くて、これでつぶれたりします。雑用というのも講座内のことが多いですから、この意味でも、
「教授のか
ぱん持ち J とか秘書的な役割という見方はあたっていて、まさに「アシスタント」だと思います。人間科学部で
も、研究室によっては秘書さんがし、らっしゃる講座がありますので、本当に事務処理的なことはその方にやって
いただくというラッキーな講座もあるわけです。ちなみに私の講座には秘書さんがいらっしゃいません。
このように実際、助手の仕事というのは、かなり広範囲であいまいな面があると思います。先ほど川嶋先生は、
助教授は位置づけ的にあいまいであるとおっしゃっておられましたが、助手は、何か仕事があいまいな面がある
ということです。後にも述べますけれども、助手の世代というのは次の講師などのステップに向けての期間であ
り、その聞に業績も上げなければなりません。時間配分が結構難しい面があるわけです。実際、講座だったら上
にいらっしゃる教授の方によって、助手の仕事というのは範囲とか量が全く変わってしまうわけです。
人間科学部は小講座制から大講座制になりましたので、各講座の中の色というのは薄められたかといえば、そ
んなことは全然ありません。形は大講座制になりましたが、慣例的に小講座制の運営というのがずっと残ってる
わけです。系によっても、 3系あるんで‘すが、全然異なっておりまして、私が所属しております行動系というと
ハ
U
第 4回 研 究 集 会 : 大 学 人 の ラ イ フ コ ー ス を 考 え る
ころでは、教授の先生は毎日いらっしゃいますし、夜遅くまで電気がついておりますけれども、 5階の社会系に
行きますと、真っ昼間から割と暗くてシーンとしてます。ですから当然、そういう講座では、助手の仕事も少な
くなると思われます。まだ私の講座なんかは割合自由にやらせてもらっていますので、ましな方です。ですから
講座によって全然違うということです。それとあと、なぜだか先生の傾向によりましては、本来、教務がやるべ
きような大学事務の仕事がまわってきたりもします。人間科学部も大講座化に向けていろいろ事務的なことがあ
りましたんで、こういう仕事が助手に回ってきたりとか、学会などを引き受けることになれば、これはこれで非
常に労力を割かれることになります。
このように助手の仕事というのは何が仕事なのか、どこまでが職務なのか、自分の役割は何なのかという規定
がちゃんとわからない、あいまいなところに問題があるように思います。助手の仕事の特徴は、
「役割あいまい
性 Jが高いことではな L、かと思います。メンタル・ヘルスの研究などから言いますと、仕事における「役割あい
まい性」の高さは、大きなストレスの原因になるわけなんです。実際、先輩助手の話を聞きましでも、助手の仕
事は、難しいものでも負担が重いものでもないけれども、精神的な負担があるとおっしゃっておられました O そ
れは後に述べますように、助手の地位というのが長期的な立場ではないと、テニュアを得たものではないという
ことも関係しますけれども、
「役割あいま l¥
"
生 Jが高く、それがストレッサーとなると言えるかもしれません。
実際、私も企業において調査をすることがありますが、社員のうつ傾向に一番影響力を持っていたのが、この
「役割あいま L、
性 Jの高さだったということを、先日、報告会で言ったところです。
ところで助手の仕事を表現したものとして社会心理学をやっております助手経験者の言葉に有名なものがあり
ます。ちょっとどぎついんですけれども、いわく「助手の仕事は娼婦と同じである」というものです。これはど
ういうことかといいますと、助手は仕事を愛してはならないと、多分愛すべきものではないという意味でしょう。
しかし、仕事を愛していないことを相手に悟られてはならないと、これは特に上の人に対してだろうと思います。
とにかく、仕事を愛してはならないが、仕事を愛してないことを悟られではならないということです。このよう
な格言めいた言葉が出てくる背景には、
「役割あいまい性」の高さに加えて、これから述べるような理由も大き
くかかわっているかもしれません。
それは、まず第 1に、先ほど言いましたように助手のポストというのが、長期的に落ち着けるポストではない
ということです。特に、これは阪大の人間科学部のみにおいてそうなのかもしれませんが、どこか他の大学に出
ていかなければなりません。それが重圧となってくるわけです。先輩助手の言によりますと、こういう立場だと、
必然的に長期的展望に立って仕事ができないという弊害が生まれやすいと聞いております。例えば、学部の運営
とか将来展望とかいうような長期的な話には、どうせここに長くいるわけではないという意識が出てきて、積極
的にかかわる気が起こらないということがあるということです。ですから、先ほど梶田先生の大学人としての成
長の 4の 3ですね、
「自分の属する大学などの将来像について考え、望ましい姿の実現のために同僚などと協力
して努力できる Jと、こういう設問に素直に「は Lリと言えないようなところに問題があるのではな L、かという
ことです。ただ、競争などはもちろん必要ですから、ずっと助手から上に上がっていけるような、そういう競争
のないぬるま湯体質がいいと言っているわけでは決してありません。
もう一つ、ストレスの原因として助手の経験者から聞いておりますのが、学内人事というのが、講座の教授と
か上の方の方の意向でほとんど決まり、第三者的機関の関与する余地がないこととか、業績よりも、学閥や人物
評価で就職が決まる部分も大きいというので、常に人間関係に気を配っていなければならないとか、そういうこ
ともストレスとして働くと聞いています。ある先輩助手の忠告によりますと、上司には忠誠を尽くして、同僚と
はうまくやって、その上でだれかの人脈というレッテルを張られないように、諸先生方とまんべんなくつき合い
するのがコツであると、非常に難しいと思うんですけれども、口を酸っぱくして言っておられました。
そして、話はちょっともとに戻るんですが、
「役割あいま L、性」の高さといえば、そもそも助手の仕事という
大学教育研究
のは、助手のあいまいさというのは、採用された時点から始まっていたと思われるわけです。これはどういうこ
とかといいますと、助手として採用されましでも、どういう仕事をするとか、大学のシステムは、こうなってま
すよとか、何の説明もなかったということです。これは、ちゃんと説明されておられる大学もあると思うんです
けれども、大阪大学ではありませんでした。それが少し意外であり、問題もあるんじゃないかという意見があり
ました。多くの方は、大学院生からいきなり先生という立場、社会人になられたわけなんですけれども、仕事に
関しては完全な O J Tですね。先輩助手から代々引き継がれる、いろいろ細々教えてもらうような徒弟制と言い
ましょうか、先輩にくっついて覚える、先生に教えてもらって覚えるということになっています。
別に、それはそれで大きな混乱はないわけなんですけれども、ある一定以上の大きさの企業には限られるんでー
すけれども、民間企業でしたら入ったら必ず研修があり、企業人として恥ずかしくないように、それこそ電話の
どり方から、いろいろな訓練・研修が行われます。その他、節目節目に研修とか試験があったりするわけなんで
す。中高年になりましてもライフ・プラン・セミナーとか定年後の生活設計、ぬれ落ち葉にならないためにはど
うしたら L山、かとか、そういうありがたいものまであるわけです。阪大でも中高年の、停年後の生活についての
セミナーというのはあったらしいんですけれども、私たち助手世代に役に立つようなセミナーは行われていない
というのが正直なところです。
それであと、下世話の話なんで、すけれども、給与体系とか福利厚生がどうなってるかとかいう話も全然聞いた
ことがないんです。ですから、そういうこともよくわからないということです。このように、採用された時点か
らあいまいさに耐えて、あいまいな仕事をうまく処理していくというのが、よい助手の一つの条件といえるかも
しれません。
そして、もう一つ大きな問題というのが教育についての問題です。教授ともなられますと、洗練された教育技
法というのを身につけておられると思うんですけれとも、私たちはそういうベテランの方々とは違って、教育に
関しても非常に試行錯誤なわけです。研究は失敗しましても自分一人のことで済むんですけれども、教育はそう
はいきません。多くの人が、いきなり院生から先生になったわけですが、問題なのは教育に関して教育がないと
いうことです。大学では、研究に関しては査定があるんですけれども、教育に関しての査定というのはあまりな
いように思います。サービスとしての教育の質向上が叫ばれている中で、私たち助手世代のような教育未熟者の
不安解消の意味でも、教育技術に関する研修や教材の紹介とか、教育に関する情報へのアクセス、そういうルー
トがたくさん聞かれていることが必要だと思います。そういうことが組織的にもっと広くなされていれば、なさ
れているとは思うんですけれども、まだまだ宣伝不足の面があると思います。
私は詳しくはありませんけれども、アメリカではそのような教育研修システムみたいなのは、かなり当たり前
であると聞いております。私が所属しております社会心理学講座の教授が留学していた大学では、ファカルティ
ー・ディベロップメント・コミッティというのがあって、新任の教師は必ずここの研修を受けなければならない
ということでした。そこでは、授業の仕方とか、そういうことを懇切丁寧にレクチャーしてくれると聞いており
ます。そういうシステムについては、ここにいらっしゃる皆様の方がお詳しいと思いますので、詳しいお話を伺
わせていただければと思います。
この点につきましては、大学教員ばかりでなく調査の結果、小・中・高校の教員の方でも同様のニーズがある
と私たちは聞いてます O 小・中・高の教員の方というのは、まさに教員として、研究者としてではなく教員とし
て採用されているわけです。こういう教育専門の立場の方の間でも教育研修のニーズが高いということです。ま
して私たちの場合、教員としてだけではなく、研究者としての立場もあるということで、二つの立場をうまくこ
なしていかなければなりません。研究と教育の両立という課題からすれば大学教員の場合、もっとこういうシス
テムを充実させていただければいいと思います。
今も昔も教員修行というのは、個人個人が工夫したり勉強してやってる状態です。今のような個人的レベルで
第 4回 研 究 集 会 : 大 学 人 の ラ イ フ コ ー ス を 考 え る
はなく、教育技術を学ぶためとか、研修や講義を受けたいとか、情報にアクセスしたいという人には、聞かれた
環境が組織レベルでもっと整備されていれば心強 L、と思います。または、教員同士が個々に抱える問題などを話
し合うような、教員同士のネットワーク的な組織、そういう組織があってもいいと思います。
助手の仕事とその問題点については、大体これぐらいなんですが、あと、もう一つ、きょう私が呼んでいただ
きまして、私に期待されている役割が「女性研究者としての立場」ということです。心理学では「性役割」とか
「ジェンダー」とかの女性研究者は、かなり多いわけなんですけれども、私個人としましては、女性研究者が女
性問題を好むという傾向はあまり好きではないわけです。といいますのはこういうことは、むしろ男性の口から
語っていただく方が、本当はし巾、と;~"うからです。しかし、せっかくですから、きょうはこの方面についてもお
話させていただきます。大体、心理学というのは、比較的女性研究者が多いところなんですが、先輩女性研究者
にお話を聞くと、就職や昇進、あるいは結婚、出産にかかわる話がごろごろと出てきます。まず、レジュメの中
1
.4%が左にありまして、右端が 7.7%なんですけ
の数字なんですけれども、これは何の割合だと思われますか。 5
れども、これは一番左が、阪大人間科学部における修士課程在学中の女性の割合です。その隣が博士課程。初め
は女性が 50%いるわけですね。もう 50%より多いぐらいです。学部では女子学生の方が、多いくらいです。それ
9.3%となります。職業として研究者になれた
が、博士課程になりますと 4割に減りまして、助手の女性比率は 1
人が 19.3%です。そして一番右が 7.7%で、これが教授の割合です。いきなり教授に飛んでおりますのは、講師と
助教授の方に、今、女性がいらっしゃらないということです。そしてこの 7.7%なんですけれども、これにも実は
事情があります。人間科学部が大講座制に移行するに伴いまして、助教授の方が教授に大部分なってしまわれた
わけですね。それで、一気に 3人にふえたわけなんですけれども、去年、もしもこの発表をさせていただいたと
したら、一番右の数字は 0%です。私の講座の教授の一人はこの 7.7%の一人で女性教授なのですけれども、阪大
全体で見ましでも女性教授は少ないと感想を述べていらっしゃいました。
私なんかは女性で、かっ他の大学から来ましたので、助手に採用されたのも大変運がよかったと思います。先
ほどお話しましたように、男性でも助手から次に移るときは大変な面があると思うんですが、女性となるともっ
と大変であると先輩女性研究者は言います。昔から言われているようなんですが、職が回ってくる順というのが、
男性の家庭持ちが l番で次が男性の独身、そして次が女性の独身で、女性の家庭持ちが一番最後というふうなこ
とがあるらしいです。今は大分、薄れたのかもしれませんが、夫に養ってもらっている女よりも、家族を養わね
ばならん男を就職させるのが先みたいなことを暗に言われたという女性先輩研究者の方もいらっしゃいます。世
間でも女子大学生は氷河期とか不景気のあおりで、就職しにくいとか女性の転職はむずかしい状況であると言わ
れていますが、女性研究者においてもどうもそういう面があるということです。
そういう状況に置かれている女性研究者ですが、先ほど梶田先生のご講演でもふれられていましたが、働きが
いという点では非常に高いわけなんです。私が調査しておりまして一つ驚いたのが、日本の大企業の中で働き続
0代以上で働きつづけている女性の方というのは、もう l割ぐらいで、その中で役職者
ける女性の少なさです。 3
というとほんの一握りになります。これに比べて、公務員になりますと、女性の方の働き続ける割合が高まりま
すし、働きがいが比較的高いんです。そして一つ驚いたのは、小・中・高校の教員の方のデータなんですけれど
も、このような方々は、女性比率が非常に高く、大阪府下の場合ですと 65%ぐらいが女性でした。そして、その
働きがいというのが、本当に異常と言ってもし沖、ぐらい高いんです。だんだん時聞が押してきましたんで、
OH
Pを使うのは申し訳ないのですが、働きがい意識における全国データと教員の男女のデータの比較を見ていただ
きたいと思います。
I今の仕事が楽しし、」かどうかという設問に対する回答ですが、
「そう思う」という方が、
1
.8%の方しか楽しいと言いませんが、教員の女性の方は 69%、つ
全国の普通の一般企業に勤めてる女性の方は 3
、に関しても 67%の人が仕事に生きが L
、を感じると回答し
まり 7割の人が楽しいと答えています。仕事の生きが L
6.38%ですから、教員女
ております。全国の一般企業に勤める女性のデータでは、生きがし、を感じるという人は 1
q
o
大学教育研究
性の働きがし、の高さはほぼ 4倍どいうことになります。もうーっすごいのが、今の仕事を続けた L、かどうかとい
うことなんですが、教員データをみますと男性も女性もどっちも高いですが、女性の方が高くて、 79.15%、約 8
割の人が今の仕事を続けたいと言っておられるわけです。こういうふうに非常に教員女性の働きがし、は高いとい
う特徴がみられます。大学教員でとったデータは持っていませんので本当のところはわかりませんが、やはり、
働きがいは非常に高いと思います。
どちらにせよ、大学教員という職業は女性にとっても働きがいが高く、教授ともなれば世間体がし市、職である
ことは間違いがないと思います。しかし、女性が働き続けることにおいて最大の難関ともいうべき出産、子育て
という点では、問題が残ると思われます。時間がなくなってきましたけれども、特に、女性研究者はいつ子ども
を生むべきかという問題はかなり大きいようです。私も、この問、結婚し、たしましたので、この問題は切実です。
梶田先生のような、皿洗いをしてくださるだんな様だったらいいと思います。私の場合は、同じ研究者同士で結
婚いたしましたが、相手の直属のゼミの教授の方は、
「内助の功」みたいなことを、結婚式のスピーチのときに
説いておられまして、私は内心困ったなと思いましたが、これも女性に期待される役割ということで仕方がない
面があります。ですから、キャリアの充実と研究と家庭との両立という問題があるので、結婚はしても、出産に
なると考えざるを得ないというようなお話も先輩女性研究者からは聞きます。実際にデータを見ましでも、働き
続ける女性の 3
0代後半から 4
0代の層というのは子育てとか、家庭との両立というような問題がありますのでスト
レスが高くなるというデータも示されています。
また、大学教員には、小・中・高校の教員のように産休で休んでいる聞に教務を代わって担当してもらえるよ
うな確立したシステムがないことも問題があると先輩の皆さんは言っておられました。ですから、実際問題とし
まして、産休・育休のような休みがとりにくい状況があるわけです。ただし、育児休業制度とかいうのが、これ
が制度化されたら万事丸くおさまるかといえば、そういう問題ではないということも聞きました。これはどうか
というと、制度化してしまうとかえって大学側の方が女性教員を雇わなくなると、敬遠するということが心配さ
れるという話を聞いています。
以上、助手の現状について、女性研究者としての立場について、報告してまいりましたけれども、これからは
大学も冬の時代に入り、定員削減や助手廃止の方向に動きつつあります。先ほど言われましたように、
「任期制」
なども珍しくなくなってきています。現に、よその学部で助手になった私の先輩は、 3年の任期中に他の大学で
ポストを見つけられなかったので、研究生となって、また、講座に戻ってこられました。こういう立場になると
非常にしんどいわけです。これは、私たちにとっても「対岸の火事」というわけではありません。
最後になりましたが、あまりまとめらしいことも言えず申しわけないんですけれども、冒頭で述べましたよう
に、助手というのは大学人のキャリアの第一歩で、これからこなしていかなければならない課題はたくさんあり
ます。社会人入試とか聞かれた大学とか、そういうことが一般的になってきますと、これまでのようなシステム
や講義の仕方では対応が不可能になってくると思います。私は、社会人入試で大学院に舞い戻ってきたので、特
に感じるのですが、社会人入試で入ってこられた方というのは、定年退職された後の企業の重役さんとか、社会
経験豊富な方ですから、非常に熱心で授業に厳しいわけなんです。ですから、ずっと大学の中だけで従順な学生
相手に講義をしてこられて、講義自体はうまいんだけれども、十年一日型みたいな、新しい知識を入れてないよ
うな授業では全然満足されないわけです。本当にあった話ですが、その重役さんが、ゼミの担当教授をばかにし
てゼミを仕切り出したとかいうような、とんでもないことも起こりうるわけです。これはその方に、多分に問題
があると思うんですけれども、こういう状況を見ますと「怖いな」と思います。これからは厳しい状況が待って
いると覚悟しております。舌足らずではありましたけれども、きょう報告させていただいたようなことが皆様の
議論にお役に立てば、私が話を聞かせていただいた先輩研究者や同僚の方々にも顔向けができると思います。
どうもありがとうございました。
Aq
第 4回 研 究 集 会 : 大 学 人 の ラ イ フ コ ー ス を 考 え る
「若手大学教員として,女性研究者として」
大阪大学人間科学部助手山下京
1. 助 手 と い う お 仕 事
-助手の仕事とは?
役割暖昧性の高さ
長期的展望の欠如
oJT, 徒 弟 制
-教育研修制度
情報アクセス/ネットワーク
2. 女 性 研 究 者 と し て の 立 場 か ら
-51
.4%
→
4
1
.5%
→
19.3%
→
7.7%
-キャリア充実と家庭生活
働きがいは高い?
産休・育児休業制度
3
.
まとめ
-定員削減,助手廃止の方向
-
冬の時代に向けて
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