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極東通関によるモスクワ・シベリア地域への輸送

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極東通関によるモスクワ・シベリア地域への輸送
平成 21 年度
農水産物・食品試験輸出調査(ロシア)事業報告書
極東通関によるモスクワ・シベリア地域への輸送
(鉄道・航空)
2010 年 3 月
日本貿易振興機構(ジェトロ)
農林水産部
はじめに
ジェトロは、2008 年より、農商工連携事業の一環として従来から力を入れてきた地域産
品の海外販路開拓のための取り組みを一層強化している。新たな取り組みのひとつとして
始まった試験輸出事業は、富裕層・中間所得層の拡大とともに持続的な消費市場の拡大が
見込まれる地域を対象に実際にモノを輸送し、①通関状況の確認②輸送状況、輸入手続き・
必要書類の整理③仕向先までの輸送における課題の抽出をすることで、当該国に関心のあ
る輸出者等関係者に情報を提供している。
2008 年度はロシア向けに輸送ルートの開拓に主眼をおいた航空輸送(果実)
・シベリア鉄
道活用輸送(コメ)
、香港向けに消費者へ直接届けることを想定した宅配輸送を実施した。
本報告書は、2009 年度に実施した 2 案件のうち、ロシアの極東通関によるモスクワ・シ
ベリア地域への航空・鉄道輸送(一次加工野菜)をとりまとめたものである。
これは、ウラジオストクのみならず、シベリア地域 100 万人都市のひとつである、ロシ
ア第 3 の都市ノボシビルスクや欧州ロシアのモスクワまで市場を拡大していくビジネスモ
デルの構築を想定したものである。まずは日本の産地の港を活用し、不定期船による最短
日数でロシアのウラジオストクに輸送する。ウラジオストクの輸入者を経由して、ウラジ
オストクからの航空便と鉄道による輸送状況を確認することとした。
輸送品は、ロシアの野菜は輸入品が多くを占め需要が期待されることから、輸送環境や
通関日数といった条件に耐えうる商材として一次加工野菜を選定し、品質保持のため想定
される気温や荷扱いに対応した梱包を施した。
輸送実験は社団法人北海道総合研究調査会の企画提案をジェトロが採択し北海道の関
係者の協力を得て実現したものである。
報告書の構成は以下の通りである。
Ⅰ 総論(平成 20、21 年度ロシア向け試験輸出の総括)
Ⅱ 平成 21 年度試験輸出の要旨
Ⅲ 平成 21 年度試験輸出の実施報告(社団法人北海道総合研究調査会作成)
本報告内容が日本の各地域で同様にロシア極東地域への輸出を希望する関係者の参考と
なれば幸いである。
2010 年 3 月
農林水産部
Copyright (C) 2010 JETRO. All rights reserved.
【免責事項】
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、
あるいは懲罰的損害及び利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるいは
その他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえ、
ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
本報告書は信頼できると思われる各種情報に基づいて作成しておりますが、その正確性、完全
性を保証するものではありません。ジェトロは、本報告書の論旨と一致しない他の資料を発行し
ている、または今後発行する可能性があります。
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目
論
次
(平成 20、21 年度ロシア向け試験輸出の総括) ...... 1
Ⅰ
総
Ⅱ
平成 21 年度試験輸出の要旨 ...................................................... 8
Ⅲ
平成 21 年度試験輸出の実施報告 ............................................. 11
Copyright (C) 2010 JETRO. All rights reserved.
Ⅰ 総 論 (平成 20、21 年度ロシア向け試験輸出の総括)
21 年度試験輸出実施方針
ロシアの農水産物・食品の輸入は、近年伸びが著しく、2008年秋の金融不況による景気の
低迷にもかかわらず、2007年の水準を上回り堅調な伸びを示しており、今後も日本産品の
輸出先として有望である。そこで、昨年度に続き、ロシアを対象に農水産物・食品の試験
輸出を実施した。
ロシア向けの輸出の担い手が未だ限定的であるなか、経験者からは、輸入手続きや必要
書類が不明である、コストやリードタイムの問題をはじめとしてなかなか成約に結びつか
ない、テスト販売のための少量輸出にも困難を感じるなどのコメントが聞かれるところで
ある。また、日本海側からアプローチすることが多い極東ウラジオストクやハバロフスク
であるが、人口がそれぞれ 60 万人弱と市場規模が限定的であることから、ロシア市場への
期待は、ロシア第 1、第 2 の都市であるモスクワ、サンクトペテルブルグ方面への販売とな
っている。
このことから、今回の試験輸出では、極東を拠点にした販路拡大の実現に向けて、以下
の点を検証・確認事項とした。なお、輸送品目は昨年度と変え、その品目に対するロシア
の通関や検疫等輸入時の問題点や輸送事情などをまとめることとする。
①日本からロシア極東までは、日本海側各自治体の利用が見込まれるロシアからの不定
期船を使い、リードタイム短縮の可能性と活用への課題抽出。
②輸送ルートは極東からモスクワまでとし、輸送手段は昨年度のシベリア鉄道に加え、
航空便を利用し各々の利便性の比較対象する。
③極東を拠点にした販路拡大の実現に向けて、ロシアのディストリビューター等に商品
ニーズやロシアの商習慣等をインタビュー。
図 ロシアの農水産物・食品輸入
100 万ドル
出所:ロシア通関統計
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1
輸送品目について
輸送品目は、賞味期限の長さや品質保持のしやすさ、通関手続きの簡略化のため、野菜
のなかでも一次加工したもの(真空パック入りピーターコーン)とした。ロシアにおける
野菜・同加工品の輸入状況は以下のとおりである。
2009 年の農水産物・食品の輸入のうち品目別では、野菜は輸入額の 6%と、肉類 24%、
果実・ナット 17%、飲料 7%に次ぐ品目となっている。野菜のなかでは、生鮮トマトの輸
入の伸びが著しく、輸入額の 40%近くを占める。以下パプリカ、きゅうり、たまねぎの順
となっている。ロシアの小売では、伝統料理に使われる野菜のほか、主に生食用としてト
マト、パプリカ、きゅうりが陳列され利用頻度の高さから 3 種セットのパッケージの形で
も売られている。
図
品目別輸入状況
100 万ドル
図
野菜の種類別輸入状況
100 万ドル
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2
輸送品の真空パック入りピーターコーンは、税関コード 2005-80(野菜調製品:冷凍では
ない)に分類された。同品目は、野菜の調製品のなかでは 5 番目の 4 万 9,723 トンの実績
がある。この品目分類には、今回の輸送品と同様の商品のほか、缶詰等も含まれる。
図
スウィートコーン調整品の輸入
100 万ドル
ロシアの小売で野菜は、生鮮野菜、缶びん詰、野菜を使った惣菜等の形態で扱われてい
る。極東のウラジオストク、シベリア鉄道沿線のノボシビルスク、首都モスクワの小売視
察結果では、各地ともに日本のようなバラエティーさはないが生活に必要な生鮮野菜が豊
富に陳列されていた。生鮮野菜は、地場産かどうか、輸入品については国・地域名が表示
してあり、多くが輸入品で賄われていることがわかった。地域による違いは、ウラジオス
トクにはまだマクドナルドのようなファストフードチェーンがなく大量に特定の野菜を必
要とする業態がないが、ノボシビルスク、モスクワと西側の欧州に近づくにつれてファス
トフードチェーンが増えていくことと、モスクワに至っては、葉物を中心としたサラダ用
パック入り生鮮カット野菜の取扱があったことである。このカット野菜のメーカーはモス
クワ中心部に大々的な広告宣伝をしており、各地域で見られた、サラダ用野菜がトマト、
パプリカ、きゅうりの 3 種セット中心という状況から進んで、葉物を食す習慣の広がりを
確認することができた。
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3
写真 カット野菜会社の広告
輸送ルート
日本の輸出希望者の関心が高いロシアのモスクワ・サンクトペテルブルグ向け輸送には、
主に①日本から欧州を経由す
る海上輸送②航空輸送③極東
経由の輸送が利用されている。
このうち、今回の極東通関によ
るモスクワ・シベリア地域への
航空・鉄道輸送は③に該当する。
このルートは日本からの距
離も近く、日本の中古車を買付
けに来たロシア船員の持ち帰
り土産がきっかけで日本産食
出所:ジェトロ作成
品になじみのある極東地域を拠点とするものである。ロシア向けには、水産物や飲料を中
心に既にコンテナ単位での取引もあるが、今後取り組まれる品目についてはロシアの需要
がまとまるまで小ロット輸送への対応が必要である。そこで、産地に近い港に立寄り極東
の港に直行する不定期船を利用し、小ロットとリードタイムの縮小への対応ができないか
検証することとした。極東ウラジオストク港で輸入通関し国内貨物になった後は、ウラジ
オストクから航空機・鉄道を使ってモスクワとシベリア地域のノボシビルスクへの輸送状
況を確認する。
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表
試験輸出の概要
極東通関によるモスクワ・シベリア地域への航空・鉄道輸送
ルート
小樽港→ウラジオストク港(直行)
(鉄道)ウラジオストク→モスクワ/ノボシビルスク
(航空)ウラジオストク→モスクワ/ノボシビルスク
*ウラジオストクからの鉄道輸送は出発の目処が立たず断念。
輸送時期
2010 年 2~3 月
通関場所
ウラジオストク港
輸送品目
一次加工野菜(真空パック入りピーターコーン)
ルートの特長
・極東を拠点としたロシアの他市場展開へのビジネスモデル
・モスクワまでの沿線に 100 万人都市が点在し日本産需要がまとまる可能性
・コンテナ単位に至らない小ロット貨物への対応
検証事項
・日本からウラジオストク港までの不定期船の運行状況
・ウラジオストクからモスクワ、ノボシビルスクまでの航空・鉄道運行状況
・一次加工野菜の輸入手続き、必要書類、通関状況の確認
・ロシアの小売、卸、輸入者等需要者のニーズと商習慣と日本のとるべき対応
分析結果
輸送結果について分析しまとめると以下のとおりである。
分析 1:ウラジオストクからの航空・鉄道輸送
日本からロシア向けに農水産物・食品を輸送する場合、現状日本の輸送業者は、ほかの
国への輸出とは異なり、ロシアの港に到着後の国内輸送については関与していない。した
がって、今回の実験ではウラジオストクからロシア国内の輸送事情について情報収集した。
1 トン程度の輸送量で、小樽からウラジオストク(不定期船)、通関後ウラジオストクか
らノボシビルスク及びモスクワ(航空・鉄道)までのトータルの料金が、キロ当たり鉄道
利用の場合 500 円、航空便利用の場合 550 円程度ということがわかった(ノボシビルスク
とモスクワでは料金に余り差がなかった)(5.輸出コスト分析参照)。運行頻度は調査時点
で、鉄道が週 2~3 回、航空便がモスクワ行毎日、ノボシビルスク行週 5 日(3.シベリア鉄
道輸送、4.航空貨物輸送参照)であった。今回の実験では、鉄道の貨物受付代理店のほう
で管理している分につき、十分な量の貨物が集まらないという理由で当初予定の列車には
積載されずまたいつ積載されるのか目処もたたなかった。集荷の具合は季節的な理由や突
発事項による影響が考えられるが、日本のような予定が立てやすい運行サービスではない
ことを念頭に入れ、ビジネスモデルを構築する必要がある。
なお航空輸送は、日本からウラジオストク、ハバロフスクへ、2010 年 3 月末から成田発
のチャーター便が就航することになっており、2009 年末の規制緩和でチャーター便におい
ても貨物輸送が可能ということで活用の可能性が広がっている。
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分析 2:コストやリードタイムの削減を目的とした不定期船の活用
ロシア極東各港への定期船は一部を除き、日本国内各港の立寄り、韓国の釜山経由とい
ったルートをたどることから、1~2 週間かかっている。ロシアまでの輸送時間の短縮のた
めには定期的に直行するルートが望まれるが、安定的な取扱貨物量の確保が課題である。
ロシアへは日本から中古車の輸出が盛んであったことから、日本海に面する日本の主要港
にはロシアから不定期船が入港していた。今回の実験では、景気低迷により減少したもの
の中古車を輸送する不定期船を活用して輸送日程の短縮を試みた。
日本の各港で諸条件は異なると思われるが、今回抽出された課題は、①不定期船の入港
スケジュールがある程度予測できなければロシア側の輸入者への納入期限に遅れるリスク
が高いこと、②使用する船によってロシア側の着岸港が通常の貿易港ではないなど現地の
受入れ体制にも影響がでることである。したがって、輸送日程の大幅短縮等のメリットを
生かし不定期船を利用するためには、信頼できる船会社であることは大前提であるが、そ
の入港状況につき日本の代理店等を通じ安定性・確実性等を確認し利用の可能性を検討、
ロシアの輸入者とも現地の港湾事情について確認し輸入通関に支障がないよう準備する必
要がある。
分析 3:ウラジオストクを拠点にした販路拡大
ウラジオストクに着荷した貨物は一旦輸入者の倉庫に入れられ、ノボシビルスクとモス
クワ向けに発送された。現状ウラジオストクで日本からの輸入品を扱う業者は小規模であ
り、自社倉庫に大量の在庫をかかえ、シベリア沿線都市やモスクワ等に販路拡大する余力
があるわけではない。そうした理由から、ウラジオストクにおける日本食品の知識や馴染
み深さを利用し販路拡大するためには、日本側もウラジオストクの輸入者と共同で他地域
への営業に参画し売上げに貢献する商材としての地位を築く必要がある。今回の調査でイ
ンタビューしたノボシビルスク所在の大手コメ・野菜の流通業者は、取扱経験はなかった
ものの日本産には関心をもっていることが判明した。時機を逃さず営業することが肝要で
ある。
ロシアの流通事情として、小売業者へのインタビューによると、小売は多くの在庫はも
たず、輸入者や卸などのディストリビューターが倉庫機能を担っていた。小売は、ディス
トリビューターに納品の厳しいペナルティも用意しており、ディストリビューターとして
は、納品期限が遅れるリスクの高い商材の扱いには慎重にならざるを得ない状況にある。
一方ウラジオストクの高級小売店の店長は、既に現状の取引で棚は埋まっている状況では
あるが、現地に日本に馴染みのある客が多いことから日本産品には関心が高く、あれば売
れるとコメントしており、日本側としてはますますディストリビューターと良好な関係を
保ちながらさまざまな課題を克服し売れる商材にしていくことが重要である。
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今後の課題
農林水産省をはじめ各方面のここ数年の取り組みによってロシア向け農水産物・食品輸
出にかかる経験は増えており、ロシア市場の特徴や実態について情報が共有されつつある。
それらの情報のうち、この試験輸出事業においては、実際にモノを輸送することにより、
日本からの輸送ルート、ロシアの通関状況、輸入手続き、必要書類の情報を蓄積してきた。
また、試験輸出にかかる現地の輸入者をはじめ関係者へのインタビューを通じ、輸送にか
かるロシアの慣習や事情がみえてきた。
(表 試験輸出で情報収集できたこと)
現段階では、ロシアへの農水産物・食品の輸出は、経験者によると困難との意見がもっぱ
らであり、一般に難しいといわれる中国と比較してもロシアのほうがさらに難しいという。
日本の製造、物流業者のロシアへの進出状況が自動車等工業製品に限定的であることも原
因のひとつであると考えられる。
食品関連の規則については、ロシアは WTO 未加盟であるものの、EU などを参考にしなが
ら少しずつ整備されているところではあるが、まだ不明瞭な部分も多い。
こうしたことから、ロシアに輸出するにはロシアの輸入者からの情報に頼らざるを得な
い。
この状況を打開し、ロシア向け輸出を円滑に進めるためには、今後もロシア向け輸出の
機会や経験を増やし、継続的な取引を行なうことによって日本の関係者のノウハウを蓄積
していくことが肝要である。
表 試験輸出で情報収集できたこと(インタビュー情報も含む)
制度情報
提出書類(ロシア側)
提出書類(日本側)
ロシア食品輸入制度法令マニュアル http://www.jetro.go.jp/world/russia_cis/ru/reports/07000131
衛生・疫学検疫証明書(コメ、果実、一次加工野菜)
GostR適合証明書(コメ、パック入り果実、一次加工野菜)
輸入検疫許可書(コメ、果実)
品質安全証明(コメ・一次加工野菜)
遺伝子組み換えでないことの証明(コメ)
食品成分分析証明(コメ)
薫蒸証明(コメ)
農薬リスト(コメ)
通関場所
ウラジオストク港(コメ、一次加工野菜)、モスクワ・シェレメチェボ空港(果実)
輸送ルート・手段
北海道・定期船→ウラジオストク・シベリア鉄道→モスクワ(コメ)
成田・航空→モスクワ・シェレメチェボ空港(果実)
北海道・不定期船→ウラジオストク・鉄道/航空→ノボシビルスク・モスクワ(一次加工野菜)
注)1 一事例であることに留意
2 各書類のサンプルは20,21年度の試験輸出実施報告書の参考資料にある
参考:20 年度報告書
http://www.jetro.go.jp/world/russia_cis/ru/reports/07000108
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Ⅱ 平成 21 年度試験輸出の要旨
ロシアの極東通関によるモスクワ・シベリア地域への航空・鉄道輸送(一次加工野菜)
調査背景
北海道のロシア向け農水産物・食品輸出はサハリン向けに実績があるが、大きな経済交
流に発展しておらず、また北海道産の輸出においては出荷量の確保や供給体制に課題があ
る。北海道発の輸出量を拡大するため、道内、ロシアの双方の業者への情報提供や商談成
立の機会を増やすことも念頭において輸送実験を行なうものである。
確認事項
北海道に寄港する不定期船利用による極東ウラジオストクを拠点にしたモスクワ・シベ
リア地域への市場拡大の可能性。
①産地の港湾活用によるロシアまでの輸送時間短縮の観点から不定期船利用の可能性
②極東のウラジオストクを拠点としシベリア鉄道沿線の 100 万人都市のひとつであるノ
ボシビルスクとモスクワへ鉄道・航空輸送状況
③各都市における日本産の需要拡大の可能性
検証方法
①小樽港からウラジオストクまで不定期船による輸送実験と運行状況・コストの確認
②ウラジオストクからノボシビルスク、モスクワへの航空・鉄道輸送実験と運行状況・コ
ストの確認
③各都市における卸、小売へのインタビューの実施
輸送ルート
北海道の小樽港からウラジオストク港に不定期船で輸送、ウラジオストクで輸入通関、
輸入者の倉庫に搬入後、ノボシビルスクとモスクワへ鉄道と航空便を利用して輸送する。
輸送品
北海道の一次加工野菜の代表として、加熱処理トウモロコシ真空パックを選定した。一
次加工品は植物検疫の対象とならず、通関日程の短縮によるリードタイムの縮小が期待さ
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れる。ロシア国内の貨物の移動では、マイナス 20 度の環境が想定されることから凍結を防
ぐため断熱材を利用した梱包で対応した。
輸送前手続
輸送前手続として、まず、ウラジオストクの輸入者あてに検査用サンプルを送付。送付
に当たっては国際クーリエサービスを利用するが、輸入者から同輸送会社に対し検査用サ
ンプルとして必要である旨のレターを渡しておけば通関が可能である。輸入者側では、通
関業者に通関コードを確認し必要書類の特定を行なう。日本の輸出者は、輸入者の指示に
従い書類を用意する。輸入者は輸出者が用意した書類を添付し、衛生・疫学検査証明書、
GOST-R 証明を取得、輸入時に必要な書類を準備した。
輸送結果
○不定期船の利用
それまで小樽港に月 1 回来ていたロシアの不定期船であったが、今回の輸送実験で利用
を予定していた船は、天候や積荷の関係で入港が遅れることになった。他社の船に変更し
たが、ウラジオストクにおいて不定期船の到着が現地でいうところの商業港(通常、輸入
食品の通関に対応)ではなく、漁業港(中古自動車が着岸)であったため、ロシアの港湾
管理者が今回の輸送品の取扱や通関・検疫手続に不慣れであり想定を大幅に超える日数が
かかった。
○ウラジオストクからの航空輸送
ノボシビルスク、モスクワともに品質を保持した状態で貨物を受け取ることができた。
別途実施した航空輸送の運行状況のヒアリングでは、ウラジオストク空港からロシア各地
へは 16 空港と結ばれており、今回実験のモスクワ、ノボシビルスクへはほぼ毎日就航して
いる。
○ウラジオストクからの鉄道輸送
有蓋貨車による鉄道輸送についてはウラジオストクの輸送代理店に貨物を持ち込んだが、
運行に必要な貨物量が集まらないなどの理由でいつ輸送されるか目処がたたず輸送を断念
することとなった。別途実施した鉄道の運行状況のヒアリングでも、こうした荷積みの延
期はあるとのことである。
○ロシア国内の航空輸送・鉄道輸送の利便性
ウラジオストクからの航空輸送、鉄道輸送の運行状況や料金について輸送会社や代理店
へのインタビューによりとりまとめた。キロ当たり料金については、コンテナ単位ではな
く少量輸送を想定した 1 トン程度の貨物の場合、鉄道がノボシビルスクまで 117 円、モス
クワまで 124 円、航空便が輸送頻度の高さからモスクワとノボシビルスクの差がなく 172
円となった。これを、小樽港の物流会社の倉庫に入れてからノボシビルスク、モスクワに
到着するまでのトータルコストで計算すると、キロ当たり航空 553.3 円、鉄道 498.2 円(ノ
ボシビルスク)
、同航空 553.3 円、鉄道 505.3 円(モスクワ)となり、航空輸送と鉄道輸送
の差は全体の 1 割程度に納まった。
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まとめ
○基本事項を押さえれば不定期船利用の可能性は大きい
20 年度の試験輸出で韓国経由の定期船が 13 日間要したのと比べれば、今回は 3 日間と大
幅短縮できた。抽出された不定期船利用の課題については、事前の確認により回避の可能
性もある。貨物がまとまらず定期船航路の開設には至らない現状では不定期船利用を検討
することも重要な視点である。
○国内貨物ではウラジオストク・モスクワ間の鉄道と航空の料金差はキロ当たり 50 円前後
(1 トン程度の貨物の場合)
鉄道貨物と航空貨物の運賃比較の結果、両者の差は 50 円前後であることがわかった。小
ロットで鮮度が重視される輸送品には大幅に時間短縮ができる航空貨物による輸送も視野
に入れることが可能。
○一次加工野菜の可能性
生鮮品に比べ通関において植物検疫検査がなく、事前書類の取得が容易である。賞味期
限の長さも好評であった。ロシア市場では年間を通じて国産、輸入品の生鮮野菜が供給さ
れており、また、缶・びん詰、冷凍野菜があり競合品は多い。
○シベリア鉄道沿線の都市への展開はディストリビューターの力が大きい
現地調査におけるヒアリングの結果、ディストリビューターによる小売店への売込みや
ディストリビューター間取引といった状況から、ロシアの流通では、ディストリビュータ
ーの役割が大きいことがわかった。日本の輸出者はよいディストリビューターを選び、と
もに協力して販売網を広げる姿勢が必要である。
○競合する商品は市場に溢れる。その中でどのように消費者にアピールするかが重要
現在ロシア市場には欧州、中央アジア、中国などからの輸入品があり、価格面で日本産
品が優位に立つのは難しい。ヒアリング結果では、健康ブームや安全安心の意識の高まり
を背景として日本産品に対するよいイメージがきかれた。ロシアの消費者に受け入れられ
るために、消費者向けに「なぜ高いか」「どのように品質がよいか」を伝えていく姿勢は重
要であり、そのためにもロシアのディストリビューターと販売促進活動の協同作業を検討
するべきである。
以上
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Ⅲ 平成 21 年度試験輸出の実施報告
<
第1章
目
次
>
調査概要 ................................................................................................................. 12
1.調査の目的 ................................................................................................................. 12
2.輸送実験の概要.......................................................................................................... 14
第2章
輸出前手続き.......................................................................................................... 20
1.貿易実務の流れ.......................................................................................................... 20
2.輸出入契約の締結 ...................................................................................................... 23
3.サンプル輸送 ............................................................................................................. 27
4.衛生・疫学検疫証明書............................................................................................... 30
5.GOST-R適合証明....................................................................................................... 32
第3章 輸送実験結果.......................................................................................................... 34
1.輸送スケジュール ...................................................................................................... 34
2.不定期船輸送 ............................................................................................................. 37
3.シベリア鉄道輸送 ...................................................................................................... 45
4.航空貨物輸送 ............................................................................................................. 49
5.輸出コスト分析.......................................................................................................... 55
第4章
ロシアマーケットの現状 ....................................................................................... 60
1.市場調査..................................................................................................................... 60
2.流通の各段階における現状と日本産品に対する評価 ............................................... 69
3.販売促進活動の方法 .................................................................................................. 78
第5章 調査のまとめ.......................................................................................................... 80
資料編1 輸出前日本側準備書類 ........................................................................................82
資料編2 輸出前ロシア側準備書類...................................................................................105
資料編3 輸出時書類......................................................................................................... 118
資料編4 各種根拠法.........................................................................................................126
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第1章
調査概要
1.調査の目的
今回のモデル地域の北海道では、以前よりロシア向け、特にサハリン向けに農水産物・
食品の輸出が行われてきたが、大きな経済交流に発展しているとはいえない。また、生産
規模の小さな中小企業が多く、出荷量の確保や通年での供給体制に課題がある。北海道を
経由した物流量を拡大していくためには、まず道内企業、ロシア企業双方への情報提供や
マッチング機会を提供することで、ビジネス機会の拡大を図ることが求められる。
今回の調査では、新たに農水産物の一次加工品を輸送品目とし、新規の検証事項を設定
することによる参考情報の拡充を目的としている。調査のポイントは、以下の 4 点である。
○不定期船とシベリア鉄道を活用した「産地直結型試験輸出」
○シベリア鉄道沿線の 100 万人都市を含めた日本産品の展開可能性の調査
○極東からモスクワ・ノボシビルスクまでのシベリア鉄道と航空便の輸送比較
○販売促進に係る情報整理
<不定期船とシベリア鉄道を活用した「産地直結型試験輸出」>
ロシア・モスクワへの日本産品輸出の拡大に当たり多品種の商品を常温、小ロット、低
コストで運ぶことのできるルートを追究する。
日本からロシア・モスクワへの輸送ついては、現在国際航空便、欧州経由の船便、極東経
由のシベリア鉄道などのうち、コスト、リードタイムの面から、国際航空便より安価で船
便より速いシベリア鉄道を使用し、今後の利用可能性について調査する。
日本から極東までについては、北海道(小樽)からの不定期船を利用する。不定期船の
利用については、日本海側の各都市から出港するロシア極東地域向けの不定期船の活用を
念頭においたものである。日本・ロシア間の不定期船は、ロシアへの自動車輸出が低調に
なった現在でも小樽~ウラジオストク港を月 1~2 便運航している。不定期船は釜山経由の
定期船と比較し、日本・ロシア間を直接結ぶためリードタイムの短縮が見込まれる。また
占有面積に応じた課金など小ロット輸送への対応が期待される。
<シベリア鉄道沿線の 100 万人都市を含めた日本産品の展開可能性の調査>
モスクワは商圏 1,000 万人規模の巨大なマーケットであるが、シベリア鉄道利用によっ
て、起点となる極東地域のほか、モスクワまでの沿線にノボシビルスク、オムスク、エカ
テリンブルグ、ペルミ、ニジニ・ノヴゴロドなど 100 万人都市に展開することで需要を増
やし、日本からの輸送量を将来的に拡大していくことを念頭におく。輸送実験ではシベリ
ア鉄道沿線都市のうちノボシビルスクへの配送状況を調査する。
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12
<極東からモスクワまで(ノボシビルスク)シベリア鉄道と航空便の輸送比較>
ウラジオストクを配送拠点(ハブ)としロシア国内各地へ配送するビジネスモデルを追
究する。輸送実験では、ウラジオストクからモスクワ(ノボシビルスク)まで、シベリア
鉄道と航空便の輸送状況を比較する。リードタイム、コスト、手続き、インフラ、安全性、
即応性などの面から状況を確認し、今後の活用と取扱い品目の展開可能性を調査する。
<販売促進に係る情報整理>
日本からの輸出量を増大させるためには、現地の通関や検疫等の輸入手続きにかかわる
問題の究明に加え、ロシアの輸入者の販路を拡大することが重要である。現状として、ロ
シアの輸入者や小売業者への売込みは行われているが、ロシア市場への売込み方法につい
てともに模索するには至っていない。
モスクワをはじめ、各地での販売促進方法についての商習慣を整理し、ロシア向け農水
産物・食品の輸出に関心を持つ企業がロシアのバイヤーと商談する際の参考とする。
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13
2.輸送実験の概要
(1)輸送ルート
輸送ルートは、まず小樽港から不定期船(トランパー船)でウラジオストクに運び、通
関を行う。通関後、一部の商品を国内貨物としてモスクワとノボシビルスクに運ぶ。その
際、シベリア鉄道を利用するルートと航空機を利用して運ぶルートの 2 種類のルートを用
いた輸送実験を計画した。
今回、不定期船を利用した理由は、輸送時間の短縮とコスト削減である。
2008 年度調査では小樽
図表 1-1 輸送ルート
港から韓国経由の定期船利
シベリア鉄道
不定期船
た。一方、直接小樽港からウラ
航空機
モスクワ
かかった日数が 13 日間であっ
シベリア鉄道
ノボシビルスク
ウラジオストク港到着までに
小樽港
た。この際は、小樽港出港から
ウラジオストク
用でコメの輸送実験を行っ
ジオストク港へ運航する不定
航空機
期船は、出港から 3 日で到着す
るといわれている。理由としては、定期船の場合、釜山港でコンテナの積み下ろしが発生
し、留め置かれるため時間がかかるためである。
図表 1-2 輸送先位置図
<航空機>
●
モスクワ
●
ノボシビルスク
<シベリア鉄道>
ウラジオストク●
●小樽
<不定期船>
※なお、シベリア鉄道輸送については発送の目途が立たなかったことから、やむなく鉄
道の輸送実験を中止している。詳細は、
「第Ⅲ章 輸送実験結果」を参照のこと。
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14
(2)輸送品目および選定理由
今回の試験輸出では、北海道産の「トウモロ
コシ真空パック」を一次加工野菜のモデル品目
として試験を行った。輸送量は 1 箱 20 本入り
商品を 60 箱(重量で約 500kg 程度、梱包材重
量込み)である。北海道産トウモロコシの真空
パック商品を取り上げる理由は、以下のとおり
である。
図表 1-3 輸送商品写真
○小樽港を利用した「産地直結型」試験輸出を行うために北海道の代表的産物を選定し
た(北海道庁が昨年ハバロフスクの見本市に本商品を出品し、現地バイヤーから高い
評価を得た実績あり)
。
○野菜等の生鮮品を輸出するには、ロシアの植物検疫や品質保持への対応が課題となる
が、本輸送品のような一次加工野菜の場合、植物検疫が不要と想定され、かつ常温で
長期保存できることから、コールドチェーンの整備が遅れているロシアで流通上の取
り扱いが有利であること。
○ロシアでは、生産環境の条件や気象条件などから、野菜を中央アジアや中国などから
の輸入に頼っている状況にあり、価格等課題はあると思われものの、安全安心で高品
位の日本産野菜へ潜在需要があると考えられること。
○日本国内各地に、生産した野菜を一次加工し保存が利くパッケージ包装をする業態が
あり、真空パック形態では、ジャガイモ、カボチャ、サトイモ、タケノコ、エダマメ
などの商品があり、他の産地や品目に展開可能なこと。
○スイートコーンは、北海道以外にも、千葉、茨城、群馬、長野などで生産されており、
北海道以外の他の産地に展開が可能なこと。
○缶・瓶詰めと比較して軽量で廃棄物も少なく、冷凍食品と比較して保存コストが少な
いという利点があり、また包装が小売サイズから業務用サイズまで柔軟に対応できる
こと。
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(3)調査協力企業
本事業の協力企業は、以下の 6 社である。以後、報告書内では役割名で記載を行う。
図表 1-4 調査協力企業一覧
地域
日本
ロシア
生産者
A社
(札幌市)
役割
名称(所在地)
生産者
A 社(札幌市)
輸出者
B 社(札幌市)
物流会社
C 社(札幌市)
輸入者
D 社(ウラジオストク)
最終荷受人①
E 社(ノボシビルスク)
最終荷受人②
F 社(モスクワ)
輸出者
B社
(札幌市)
輸入者
D社
(ウラジオストク)
物流業者
C社
(札幌市)
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最終荷受人
E社
(ノボシビルスク)
最終荷受人
F社
(モスクワ)
(4)輸送実験スケジュール
輸送実験のスケジュールは、以下のとおりとなった。
図表 1-5 輸送実験スケジュール
11 月下旬
↓
12 月
↓
1月
~
2 月上旬
↓
1 月下旬
~
2 月上旬
↓
2 月上旬
…
輸入者と協議開始
…
①荷受人との協議・契約
・価格、取引条件、決済方法、輸送ルート等の決定、契約の締結
②ロシア側輸出入許可申請
・取引相手による申請
③検査機関での商品成分等の検査
④衛生・疫学検疫証明書
…
⑤GOST-R 規格適合および各種認証の取得
・輸出者・取引相手による書類作成・取得
・取引相手や代行業者等による認証の取得
…
⑥国際輸送に関する書類等の作成
・輸出者による国際輸送に必要となる各種書類等の作成
…
⑦出荷・国内輸送
・商品の出荷、出発港への輸送
…
⑧日本側通関・積込(小樽港)
・通関業者による通関
・国際貨物輸送業者による船舶への積み込み
…
⑨国際輸送(小樽港→ウラジオストク港)
・不定期船(トランパー船)にて輸送
…
⑩ロシア側通関
・取引相手あるいは現地通関業者による通関
…
⑪ロシア国内輸送(ウラジオストク→ノボシビルスク・モスクワ)
…
⑫着荷・意見収集
…
⑬報告書取りまとめ
↓
2 月中旬
↓
2 月中旬
↓
2 月下旬~
3 月中旬
↓
3 月下旬
↓
3 月下旬
3 月下旬
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(5)街の概要
①ウラジオストク
沿海地方の州都であり、シベリア鉄道の起点
を持つことからシベリアの玄関口といえる。人
口は 60.5 万人(2009 年 1 月時点)である。主
な産業としては、造船業と漁業、軍港関連産業
がある。2012 年には APEC 首脳会議が開催さ
れることが決定しており、現在、開催に向けて
交通網の整備が進められている。
ウラジオストク市街の様子
②ノボシビルスク
ロシアのほぼ中央部に位置し、鉄道や水路な
どを持つロシアの交通拠点である。人口は 140
万人(2009 年 1 月時点)であり、ロシア国内
でモスクワ、サンクトペテルブルクに次ぐ第 3
の都市となっている。戦前に重工業に傾斜した
産業政策が進められ、工業都市として発展した。
また、近郊には筑波研究学園都市のモデルとも
なったアカデミーガラドクが建設され、大学や
研究機関が多数集積している。
ノボシビルスク駅前の様子
③モスクワ
ロシアの首都であり、政治と経済の中心であ
る。人口は約 1,051 万人(2009 年 1 月時点)
である。交通網が集約している都市であり、鉄
道については 13 線路、9 つのターミナル駅が
ある。欧州、ロシア極東、中央アジアなどの結
節点である。また、11 の地下鉄路線、4 つの主
要空港(シェレメチェヴォ国際空港、ドモジェ
ドヴォ国際空港、ヴヌコヴォ空港、ヴィコヴォ
空港)がある。
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モスクワ市街の様子
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図表 1-6 都市間比較
ウラジオストク
ノボシビルスク
モスクワ
約 60.5 万人
約 139.7 万人
約 1,050.9 万人
1,077.9 人/km²
27.6 人/km²
9,632.4/km²
連邦管区
極東連邦管区
シベリア連邦管区
中央連邦管区
行政区画
沿海地方
ノボシビルスク州
モスクワ連邦市
約 560k ㎡
約 500k ㎡
約 1,100k ㎡
モスクワとの時差
+7 時間
+3 時間
-
日本との時差
+1 時間
-3 時間
-6 時間
(+2 時間)
(-2 時間)
(-5 時間)
-
5,953km
9,289km
9,289km
3,336km
-
-
約 6.3 時間
約 9 時間
21,571.8
19,370.3
30,552.1
小売売上高:百万ルー
16,422.8
75,413.3
2,365,583.0
ブル(対前年比、%)
(118.9)
(121.9)
(105.3)
外食売上高:百万ルー
743.8
3,458.1
112,044.0
ブル(対前年比、%)
(108.9)
(121.0)
(108.6)
人口(2009 年 1 月 1
日現在)
人口密度(2009 年 1
月 1 日現在)
面積
(サマータイム時)
ウラジオストクから
の距離
(鉄道営業キロ)
モスクワからの距離
(鉄道営業キロ)
ウラジオストクから
の平均飛行時間
平均月額名目賃金
:ルーブル(2008 年)
出典:ロシア地域.都市の主要社会経済指標 2009(ロシア連邦国家統計局)などから作成
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第2章
輸出前手続き
日本からロシアへ商品を輸出する場合、輸出に必要な各種証明書を事前に取得しておく
ことが必要となる。本章では、輸出者と輸入者間の契約から実際の商品の輸出前までに用
意すべき書類の取得方法等について整理を行う。
1.貿易実務の流れ
日本からロシアに商品を輸出する場合、大きく分けると、①輸出入契約の締結、②輸出
前手続きの実施、③日本国内輸送、④日本側通関、⑤国際輸送、⑥ロシア側通関、⑦ロシ
ア国内輸送、⑧販売というプロセスをとる。
ロシアへの輸出の際、日本の製造者や輸出者は、日本の港までの商品の状況を把握して
いるが、その後は物流会社や輸入者に一任する場合が多くみられる。また、輸出前手続き
についても、主に輸入者がロシア側で取得する書類であるため、日本の製造者や輸出者側
で認可までの詳細なプロセスを全て把握することは難しい。
しかしながら、輸出前手続きの際、急に輸入者側から追加書類の提出を求められた場合
など、製造者や輸出者もロシア現地での手続き内容について理解していれば、的確な対応
が可能である。よって、そうした理解を促すために輸出前手続きの全体フローを整理する。
ロシアへ輸出の際の全体フローとそれぞれの場面で必要となる書類および発給される書
類について図表 2-3 に整理した。
まず、はじめに輸出入契約が締結され、その後、サンプル輸出、衛生・疫学検疫証明書
の取得、GOST-R 適合証明の取得という流れになる。GOST-R 適合証明の取得には、衛生・
疫学検疫証明書の取得が必要要件となっており、衛生・疫学検疫証明書の取得には輸出入
契約書の提出が求められるため、順にステップを踏んでいくことが必要となる。
昨年度の試験輸出の際は、イチゴ、ミカン、リンゴ、コメ等の農産物であり、衛生・疫
学検査証明書および GOST-R 適合証明の他に、輸入検疫許可証の取得が求められた。これ
は、対象となる商品の輸入を許可するとともに、輸入される際に受ける検疫の種類と検疫
の場所を指定するための証明書である。
しかしながら、今年度試験輸出を行ったトウモロコシの真空パックは、一次加工されて
おり植物検疫が求められない商品であったため、輸入検疫許可証の取得は不要であった。
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図表 2-1 輸出前に取得が必要となる書類
平成 20 年度調査
航空輸送
シベリア鉄道活用輸送
イチゴ、ミカン、デコポ
輸出商品
今年度調査
トウモロコシ
コメ
ン、日向夏、リンゴ
(真空パック)
輸入検疫許可証
○
○
-
衛生・疫学検疫証明書
○
○
○
GOST-R 適合証明
△※
○
○
※パッケージ入りのイチゴが GOST-R 適合証明の対象となっている
今回の試験輸出では、日本からサンプル商品を国際航空貨物で輸送し、輸入者に届くま
でに 8 日間、輸入者が衛生・疫学検疫証明書を取得するまでに 25 日間、GOST-R 適合証明
を取得するまでに 23 日間を要した。全体で 56 日間、サンプルが輸入者に届いてから各種
証明書を取得までに 48 日間(約 7 週間)を要した。
ディストリビューターへの聞き取りによると、輸入に必要な各種証明書を取得完了まで
には、サンプルを検査に出してから通常 5~6 週間かかると見込んでいるとのことである。
今回、年末年始を含んでいたことを考慮すると概ね通常通りの日数で証明書を取得できた
といえる。
図表 2-2 今年度試験輸出の際に要した輸出前手続きの日数
内容
本試験輸出で要した日数
8 日間
サンプル輸送
衛生・疫学検疫証明書の取得
25 日間
GOST-R 適合証明の取得
23 日間
合計
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56 日間
図表 2-3 ロシアへ輸出の際の全体フロー
輸出入契約の締結
契約書
サンプル送付
輸出前手続き
衛生・疫学検疫証明書の
事業内容
証明書
品質安全
証明書
製造
証明書
パッケージ
内容
商品台帳
プロフォーマ
インボイス
試験調書
衛生・疫学
検疫証明書
取得
GOST-R 規格適合証明書の
GOST-R
適合証明
取得
日本国内輸送
B/L
日本側通関
イン
ボイス
国際輸送
ロシア側通関
通関手続
ロシア国内輸送
販売
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パッキン
グリスト
2.輸出入契約の締結
輸出入契約書は、輸入者が作成した契約書案に基づき協議した。今回の試験輸出で取り
交わされた契約書は、前文と 13 の項目からなっている。特に、注意すべき点について以下
に記載する。
図表 2-4 輸出入契約書の項目
前文
7.商品の引渡し
1.契約の対象
8.支払い
2.品質
9.罰則規定
3.価格
10.不可抗力
4.納期と日付
11.その他の条件
5.資材とマーキング
12.法的所在地と明細
6.船積み方法
13.双方の署名
(1)「1.契約の対象」
今回の契約における取引条件は CFR(C&F、運賃込み)ウラジオストク条件で成立した。
ロシアのディストリビューターへのヒアリング調査によると、
CFR のほかにも FOB や CIF
など様々な条件で取引を行っており、事業者間の取引の継続回数を考慮したり、FOB およ
び CIF 価格の比較を行ったりしながら、それぞれの取引ごとに決定しているようである。
今回の試験輸出の契約書も契約の対象となる商品や価格などについてはインボイスを参
照するとの記載となっている。契約書に記載する内容を包括的にすることで、商品内容が
変わっても新たに契約書を取り交わすことなく取引きが可能となる。各種証明書を所得す
る際に契約書の提出が求められるが、輸入者からは、このような包括的な契約書の内容で
も証明書の取得は可能であるとのコメントを受けている。
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<事例>「契約の対象」についての記載例
今回の試験輸出の契約内容
1.契約の対象
本契約書の不可欠部分であるプロフォーマ・インボイスに記載の数量、種類を、CFR
ウラジオストク条件の価格で日本製商品を売り手は販売して、買い手はこれを購入し
た。
(2)「2.品質」
品質の確認にあたっては、
「各ロットの品質証明として商品原産国の権限のある機関が発
給する品質証明書(Quality Certificate)で確認しなければならない」としている。今回の
試験輸出では、工場が所在する保健所が発行した営業許可書を品質証明書として事前送付
した。
(3)「6.船積み方法」
輸出者は商品の出荷後 3 営業日(休日・祭日を除く)以内に、FAX で輸入者に出荷の通
知を行うこと、そして船の出港後 3 営業日以内に以下の 5 種類の書類を FAX で送付するよ
う求められた。
①輸出入契約書
②コマーシャル・インボイス
③パッキングリスト
④船荷証券(B/L、総重量と純重量を記載したもの)
⑤品質安全証明書
このうち、輸出入契約書と品質安全証明書は事前に送付してあったため、出荷後に送付
の必要があるものはコマーシャル・インボイス、パッキングリスト、船荷証券の 3 種類で
あった。
【留意点】品質安全証明書は品目によって求められる書類が異なるため、想定外の書類
の提出を求められることがある。それにかかる費用は、本包括契約ではどちらが負担する
か記載がない。20 年度調査におけるコメの輸出では、出港直前に書類を求められ、出港が
遅れるとともに、書類作成にかかる経費が輸出者側の負担となった。
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(4)「8.支払い」
輸入者提案の契約書では、正式発注後 30%、本船ウラジオストク港到着後 20%、ウラジ
オストクの倉庫搬入後 30 日以内 50%の 3 回払い条件となっており、この条件内容で契約し
た。
輸出者側は、一括前払い条件を求めたが、輸入者の了解が得られなかった。輸入者から
は、輸出者が被るリスクに対して理解は示されたが、輸入商品の国内販売までの期間の金
利負担が大きいことから、結果として上記の契約条件となった。
ディストリビューターへのヒアリング調査によると、ウラジオストクでは、ディストリ
ビューターが小売店に商品を納入した場合、支払いは 1~2 カ月後という例が多いというこ
とである。日本とロシアの金利差を考慮すると、ロシアのディストリビューターにとって
は現在の日本の低金利は魅力的であり、あるディストリビューターでは、長期的な取引を
継続している輸出者に対して、輸出者側への支払いを 120 日後の後払いにする代わりに、
日本での銀行の金利分の一部を負担するという条件で取引しているということであった。
(5)「9.罰則規定」
この項目では、納期遅延に係るペナルティの支払い条件を定めている。輸入者提案の契
約書では、船積み遅延 1 日につき商品代金の 0.1%、30 日以上の遅延で欠陥商品が 10%を
超える場合、輸入者は契約解約の権利を持つという条件が含まれていた。輸入者はこの条
件は譲歩不可能としたため、輸出者は当該条件を受け入れた。
輸入者側からは「もし商品の納入が実施されなかった場合、外貨管理局から商品代金の
回収を必ず要求される。理由としては、以前に実際の商品納入の実績がなく不法に海外送
金が行われた事件があったためである。よって 9.罰則規定はすべての輸出取引において必
要不可欠な条件になっている」との説明を受けた。ただし、他の事例について、ヒアリン
グによると罰則規定がない契約もあるとのことで、納期遅延によるインボイスの見直しに
ついての記載があるのみということであった。
<事例>「納期遅延」についての記載例
今回の試験輸出の契約内容
9.罰則規定
本契約付属書による納期を守らない場合、売り手が本契約書に記載した商品価格より
1 日当たり 0.1%の遅延違約金を支払い、さらに前金のあった場合それを買い手の口座
に返金する。
30 日以上の納期遅延があり、欠陥商品の率が契約数量の 10%を上回る場合、買い手
は解約の権利を持つ。
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(6)盛り込まなかった事項
下記の 2 項目は、輸出者の提案を受け、輸入者が削除に合意した項目である。今回は、
試験輸出である点、契約金額が小額であることが考慮されて譲歩されたもの判断される。
通常の輸出取引では、買い手の立場が強いので盛り込まざるを得ない事項と考えられる。
①クレーム処理
輸入者は商品受領後 30 日以内であり、ウラジオストク商工業会議所の証明書があれば、
クレーム提起でき、輸出者はクレーム受領後 15 日以内にこれを検討し、回答しなければな
らない。
②調停
調停については、ウラジオストク市の仲裁裁判による(ロシア連邦の法律が適用)
。
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3.サンプル輸送
輸出前手続きを行い、衛生・疫学検疫証明書および GOST-R 適合証明を取得するために
は、ロシア側に商品のサンプルおよび関係書類を送り、ロシア現地の検査機関にて検査を
受けることが必要となる。
ただし、必要となる関係書類は商品によって異なる。ヒアリング調査によると現地輸入
者も新たな商品を取り扱うごとに政府関係機関に問合せを行い、必要となる書類を確認し
ながら進めているとのことであった。今回の試験輸送にあたっても、サンプル輸送後に事
業内容証明書が要求された。
<事例>
輸入者に、新たな商品を輸入する際の手順を確認した。
新たな商品を輸入する際は、まず輸入を検討している商品の写真やサンプルを通関業者
に見せ、その商品が膨大な通関コードのうち、どのコードに該当するかを明確にするとの
ことであった。通関コードがわかると、輸入に必要な書類が明確になる。
その後、消費者権利保護・福利監督局にロシア語に翻訳された商品のパッケージ内容を
見せ相談し、必要な検査内容を確認する。その際、栄養ドリンクのように内容物が複雑な
商品や子ども用食品については、ウラジオストクでは検査できないため、モスクワへ送る
よう指示が出される。
今回の試験輸出にあたり、輸入者に対して送った書類等は以下のとおりである。
□①商品サンプル
10 パック(3kg)
□②品質安全証明書(日本語、露語)各 1 通
□③営業許可書(日本語、露語)各 1 通
□④パッケージ内容一覧(日本語、露語)各 1 通
□⑤事業内容証明書
□⑥商品台帳
□⑦インボイス
2通
□⑧航空運送状
1通
①商品サンプル
検査に必要なサンプル量は、最低でも、液体であれば 2.5 リットル、固体であれば 2.5kg
が必要である。これは、ロシア国内の 2 カ所に検査に出す必要があるためである。
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②品質安全証明書
商品の品質内容を証明するための書類で、生産者が輸出者に対して発行した。様式は任
意であり、商品の品質を保証する旨を記載する。輸入者によると、この書類はロシア特有
の書類であり、他国の輸出者も最初は戸惑う場合があるとのこと。ロシア側での「衛生・
疫学検疫証明書」および「GOST-R 適合証明書」の取得の際に必要となる。
③製造者の営業許可書
製造者の資格を確認するための書類であり、輸入者からは当初 ISO 証明書の要求があっ
たが、製造地の保健所による営業許可書の写しで対応した。ロシア側での「衛生・疫学検
疫証明書」および「GOST-R 適合証明書」の取得の際に必要となる。
HACCP の証明書でも認められる場合もあるが、ロシアでは ISO により生産者の適格性
を判断することが一般的であるとのこと。
④パッケージ表示や記載内容の一覧
原材料名や消費期限といった食品表示の部分だけでなく、パッケージに記載されている
全ての内容について、日本語およびロシア語での記載が求められる。
「GOST-R 適合証明書」
の取得の際に必要となる。
⑤事業内容証明書
ロシアの検査機関より、生産者の事業内容について確認できる資料の提出がサンプル送
付後追加で求められたため、事業内容証明書を送付した。
⑥商品台帳
ロシアの検査機関より、日本側での成分検査結果を示した資料の提出を追加で求められ
たため、商品台帳を送付した。
⑦インボイス(プロフォーマ・インボイス)
今 回 は サ ン プ ル 輸 送 で あ る た め 、「 NO COMMERCIAL VALUE / VALUE FOR
CUSTOMS PURPOSE ONLY」と明記した。
⑧航空運送状
今回のサンプル輸送では、DHL 社のサービスを利用した。
輸入者によると、DHL 社や FedEx 社などの国際貨物便サービスを使うと、GOST-R 取
得のためのサンプル商品の輸入実績が多いため、比較的留め置かれることなく輸入可能で
あるとのこと。サンプルを衛生局に持っていく際も、国際貨物便で入れた書類を添付する
と、どのように国内に持ち込んだのかについて不要な詮索がないとのことである。
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参考までに、本調査のサンプル商品の輸送にかかった費用としては、
3kg のサンプル商品で、梱包サイズが 31cm×22cm×24cm となり、
・ウエイトチャージ 44,590 円
・燃料サーチャージ 6,243 円
・保険料 2,500 円
の合計 53,333 円であった。
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4.衛生・疫学検疫証明書
発 給 機 関
ロシア連邦保健社会発展省 連邦消費者権利保護・福利監督局
沿海地方
支局(略称 ロスポトレブナドゾル)
発
給
日
関 係 法 令
2010 年 1 月 11 日
食品の安全および栄養価衛生基準 SanPiN2.3.2.1078-01
食品の安全および栄養に関する衛生基準 SanPiN2.3.2.1078-01 への「補足
と改定№5」SanPiN 2.3.2.2227-07
有 効 期 間
2015 年 1 月 11 日まで(5 年間)
申
輸入者
請
者
所 要 日 数
約 3 週間(年末年始を含む)
提 出 書 類
□輸出入契約書、□品質安全証明書、□営業許可書
□事業内容証明書、□商品台帳、□各種試験調書
発 給 費 用
9,377 ルーブル(約 28,131 円)
※各種試験費用の合計
衛生・疫学検疫証明書は、ロシアの検査機関によって実施されるサンプル検査の結果お
よび輸出者から提出された書類を総合的に判断し、輸入される予定の商品が「食品の安全
および栄養に関する衛生基準」に適合しているかを証明する書類である。
今回の試験輸出した商品は「プラスティック素材で真空パック包装されたスイートコー
ン」とされ、関係法令として「食品の安全および栄養価衛生基準 SanPiN2.3.2.1078-01」
と「食品の安全および栄養価衛生基準 SanPiN2.3.2.2227-07」への適合が確認された。
衛生・疫学検疫証明書発給には、以下の調書が発給根拠となっている。
調書名
試験調書 No.3830-p
(ラボラトリー試験)
試験調書 No.3711
(遺伝子組み換え試験)
検査証明 No.3955/p/01
発給機関
国立高等専門教育機関 太平洋
国立経済大学 実験センター
「オケアン」
極東国立総合大学
食品品質分析試験センター
「プリモルスキー」
連邦国立保健機関
発給日
費用
2009 年
2,450 ルーブル
12 月 28 日
(約 7,350 円)
2009 年
1,062 ルーブル
12 月 21 日
(約 3,186 円)
2009 年
5,865 ルーブル
「沿海地方衛生検疫センター」 12 月 30 日
合計
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30
(約 17,595 円)
9,377 ルーブル
(約 28,131 円)
他の事例をヒアリングすると、ハバロフスクで同様のトウモロコシ真空パック商品が衛
生・疫学検疫証明書の発行を受けており、認証取得にあたり提出した書類を比較すると、
今回の試験輸出では「営業許可書」と「事業内容証明書」
、「商品台帳」が追加となってい
る。
図表 2-5 認証取得の際の提出書類
2009 年ハバロフスク
提出書類
2010 年ウラジオストク
1.品質合格証明書
1.品質合格証明書
2.パッケージ内容
2.営業許可書
3.パッケージ内容
4.事業内容証明書
5.商品台帳
なお、発給機関および発給根拠となる試験研究機関がそれぞれの地域に所在するため、
トウモロコシ真空パックの検査については対応可能であった。
図表 2-6 認証取得の際の提出書類
発給機関
発給根拠法
発給根拠
2010 年ウラジオストク
連邦消費者権利保護・福利監督局沿海地方支局
・
「食品の安全および栄養に関する衛生基準」SanPiN2.3.2.1078-01
・「食品の安全および栄養に関する衛生基準 SanPiN2.3.2.1078-01
への「補足と改定№5」SanPiN 2.3.2.2227-07」
・試験調書№3830-p:実験センター「オケアン」
・GM 作物分析試験調書№3711:極東国立総合大学食品品質分析試
験センター「プリモルスキー」
・検査証明№3955/p/01:連邦国立保健機関「沿海地方衛生検疫セン
ター」発行
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31
5.GOST-R 適合証明
発 給 機 関
国立高等専門教育機関「太平洋国立経済大学」
「科学サービス」認証機関
発
2010 年 2 月 2 日
給
日
関 係 法 令
「食品の安全および栄養に関する衛生基準」SanPiN 2.3.2.1078-01 付則 1
インデックス 1.6.3,1.6.3.1
「消費者向け梱包された食品」GOST R51074-2003 第 3 章、第 4.13,4.13.2
有 効 期 間
2011 年 2 月 2 日まで(1 年間)
申
輸入者
請
者
所 要 日 数
約 3 週間
提 出 書 類
□輸出入契約書、□品質安全証明書、□営業許可書
□試験調書№3830-p(ラボラトリー試験)
□衛生・疫学検疫証明書、□商品シール
発 給 費 用
6,490 ルーブル(約 19,470 円)
GOST は 1925 年ソビエト連邦により起案された品質基準である。ほとんどの CIS 諸国
でも基本基準となっているためロシアの基準を GOST-R と呼んでいる。
今回の試験輸出した商品は関係法令として「食品の安全および栄養に関する衛生基準
SanPiN 2.3.2.1078-01 付則 1 インデックス 1.6.3,1.6.3.1」と「GOST R51074-2003 第 3
章、第 4.13,4.13.2」の要求基準に合致していることが確認された。
GOST-R 適合証明の発給には、前述の「衛生・疫学検疫証明書」が必要となるため、発
給までに時間を有する。
なお、GOST-R を取得すべき商品のリストを変更する政府令が 2010 年 2 月 15 日から有
効となり、飲料水や小麦粉、缶詰、冷凍野菜などの商品で GOST-R の義務検査が必要なく
なった。
ただし、ウラジオストクのディストリビューターのヒアリング調査では、GOST-R の取
得義務がなくなっても、小売店から GOST-R の適合証明書マークの添付が引き続き求めら
れると見込まれるので、継続して GOST-R 適合証明を取得するとの考えが示された。
ハバロフスクでの証明書発給事例と比較すると、根拠法として参照する付則が異なって
いた。ハバロフスクでは今回試験輸出したトウモロコシ真空パックを「ボイルした野菜」
に分類しているのに対して、今回のウラジオストクでは「野菜の缶詰(密閉した容器に入
れられたもの)
」に分類している。
なお、GOST-R の発給機関および発給根拠となる試験研究機関はそれぞれの地域に所在
しトウモロコシ真空パックの検査について対応可能であった。
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32
図表 2-7 認証取得の際の提出書類
発給機関
発給根拠法
2010 年ウラジオストク
国立高等専門教育機関太平洋国立経済大学「科学サービス」
GOST R51074-2003 第 3 章、
第 4.13,4.13.2
発給根拠
衛生基準 2.3.2.1078-01 付則 1 インデックス 1.6.3,1.6.3.1
衛生・疫学検疫証明書:2010 年 1 月 11 日〜2015 年 1 月 11 日まで
有効の№25.PT.01.916.P.000003.01.10
連邦消費者権利保護・福利監督局沿海地方支局
試験調書№3830-p:「ダリネヴォストーチナヤ」実験所
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33
第3章
輸送実験結果
本章では、日本国内での商品搬入から日本側通関、出荷、ロシア側通関、ロシア国内輸
送までの輸送実証結果をモデル商品の流れに沿って整理する。
1.輸送スケジュール
小樽港倉庫への商品搬入からロシア各地への輸送の流れは下図のとおりである。
図表 3-1 モデル商品輸送のスケジュール
梱
包
国内輸送
日本側通関
荷
積
不定期船輸送
荷
揚
ロシア側通関
倉庫保管
①
②
シベリア鉄道輸送
航空輸送
(ノボシビルスク駅積降)
最終荷受地到着
(最終荷受地(モスクワ)到着)
(ノボシビルスク、モスクワ)
(倉庫保管)
倉庫保管
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34
図表 3-2 モデル商品輸送のスケジュール
経過
日付
2月1日
月
2月2日
火
2月3日
2月4日
2月5日
2月6日
2月7日
2月8日
2月9日
2 月 10 日
2 月 11 日
水
木
金
土
日
月
火
水
木
2 月 12 日
金
2 月 13 日
2 月 14 日
2 月 15 日
土
日
月
2 月 16 日
火
2 月 17 日
水
2 月 18 日
木
2 月 19 日
2 月 20 日
金
土
2 月 21 日
日
2 月 22 日
2 月 23 日
2 月 24 日
2 月 25 日
2 月 26 日
2 月 27 日
2 月 28 日
3月1日
3月2日
3月3日
3月4日
3月5日
3月6日
3月7日
3月8日
3月9日
3 月 10 日
3 月 11 日
3 月 12 日
3 月 13 日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
シベリア鉄道利用
小樽港倉庫へ商品搬入
航空機利用
備考
VICTOR 号延期との連絡
(2/15~2/17 予定)
商品にパッケージラベル添付
17 日間(通常 5 日間程度)
VICTOR 号延期との連絡
(2/23~2/24 予定)
テク リブカ号の入 港情報
を取得
テクリブカ(TEKLIBKA)号小樽港到着
→悪天候のため接岸できず
テクリブカ号入港
通関手続き完了
商品積み込み
テクリブカ号出港(18 時)
3 日間
テクリブカ号がウラジオストク港に入港
テクリブカ号から商品積み下ろし
→通関倉庫へ
振替休日(2/27 分)
祖国防衛者の日(休日)
通関手続き開始
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22 日間(通常 1 週間程度)
国際婦人デー(休日)
35
経過
日付
シベリア鉄道利用
3 月 14 日
3 月 15 日
3 月 16 日
3 月 17 日
3 月 18 日
3 月 19 日
3 月 20 日
3 月 21 日
3 月 22 日
3 月 23 日
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
3 月 24 日
水
3 月 25 日
木
3 月 26 日
金
航空機利用
通関手続き終了
輸入者倉庫へ移動
(シベリア鉄道輸送中断)
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航空貨物発送
(ノボシビルスク)
同日到着→翌日引取
航空貨物発送
(モスクワ)
同日到着→翌日引取
36
備考
2.不定期船輸送
(1)船倉予約
日時:2009 年 12 月~(最終決定は 2010 年 2 月 15 日)
海運には、特定の航路に定期的に運航される船(ライナー船)を活用する定期船輸送と、
特定の航路を定めずに、貨物の有無により不定期に運航される船舶(トランパー船)を活
用する不定期船輸送がある。日本海側各地の港からロシア極東の各地の港へ、一定の頻度
で不定期船が運航されており、日本とロシアとの貿易において重要な役割を果たしている。
今回の試験輸出の取引条件は CFR(C&F)であるため、輸出者が日本国内の物流会社を
通じて、海上輸送を手配した。不定期船利用の輸送契約形態は様々であるが、今回は、不
定期船の一部のスペースを借り輸送するスペース・チャーターで運ぶこととなった。
日本の物流会社へのヒアリングによると、コンテナ積載に適していない貨物(重機、建
設資材、小ロット貨物など)は不定期船で運ばれることが多く、スペース・チャーターに
よる輸送は世界的にみると増加傾向とのことである。
図表 3-3 小樽港
今回、試験輸出の輸出港となる小樽港は、
2008 年実績で外航商船が 854 隻入港、貨物
取扱量は輸出が 41.7 万 t、輸入 が 45.8 万 t の
港である。主な輸出品としては完成自動車が
全体の 86%を占めている。
海外の定期航路について、旅客航路ではサ
ハリンのホルムスクへ向かう小樽-ホルムス
ク航路がある。また、コンテナ航路では中国
の青島、大連、上海への航路がある。
しかしながら、ロシアの大陸側への定期貨
出典:北海道開発局 HP
物航路はなく、現在は不定期船で輸送している。
ロシアでの輸入自動車の関税引き上げの影響を受け、ロシア極東地域との不定期船の運
航数は減少したが、試験輸出前までの概ね 1 カ月に 1 度のペースで運航が行われていた。
図表 3-4 小樽港からの不定期船出港実績(平成 21 年 1 月~平成 22 年 3 月まで)
船名
総トン数
入港日
出港日
仕出港
仕向港
OMSKIY-114
2,360
H21.1.5
H21.1.7
ウラジオ
オリガ
KAPITAIN KONSHIN
2,478
H21.1.31
H21.2.2
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
1,577
H21.2.13
H21.2.15
ウラジオ
ウラジオ
697
H21.3.3
H21.3.8
ウラジオ
カムチャッカ
1,577
H21.3.9
H21.3.16
ウラジオ
ウラジオ
KYAYRYUZUVO
ALEXANRA-K
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37
船名
総トン数
入港日
出港日
仕出港
仕向港
1,577
H21.5.7
H21.5.14
ウラジオ
ウラジオ
798
H21.5.25
H21.5.28
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
1,577
H21.5.28
H21.6.5
ウラジオ
ウラジオ
SMILE
1,598
H21.6.18
H21.6.19
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
1,577
H21.6.25
H21.7.3
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
1,577
H21.7.12
H21.7.14
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
1,577
H21.8.6
H21.8.20
ウラジオ
ウラジオ
BREEZE
2,150
H21.10.26
H21.10.28
ウラジオ
ウラジオ
VICTOR
2,163
H21.11.24
H21.11.30
ウラジオ
ウラジオ
VICTOR
2,163
H21.12.23
H21.12.28
ウラジオ
ウラジオ
TEKULIBKA
2,317
H22.2.17
H22.2.18
ウラジオ
ウラジオ
VICTOR
2,163
H22.2.23
H22.3.1
ウラジオ
ウラジオ
VICTOR(予定)
2,163
H22.4.5
H22.4.9
ウラジオ
ウラジオ
ブリーズ(予定)
2,150
H22.4.5
H22.4.8
ウラジオ
ウラジオ
ALEXANRA-K
NIKOLAY KASATKIN
(参考)
物流会社との連絡調整を行いながら、輸出前手続きに必要となる日数を考え、1 月末以降
に小樽港を出港する船舶を探した結果、ウラジオストクに拠点を持つ MOOR KON
SERVICE CO.,LTD が所有するビクトール(VICTOR)号が合致したため、12 月に仮予約
を行った。
しかしながら、ロシア側船会社より合計 4 度の日程変更が行われ、当初のスケジュール
から 1 カ月近くの遅れが生じる懸念が生じたため、急遽、EAST LINE SHIPPING
COMPANY が所有するテクリブカ(TEKLIBKA)号への積み込みに変更した。
図表 3-5 ビクトール号からテクリブカ号へ変更までの経過
12 月 24 日(小樽入港時)
・船長より「次回の小樽入港は 1 月 28 日~30 日を予定」との連絡を受ける。
12 月末
ビクトール(VICTOR)号が小樽港出港後、燃料切れのため漂流、航行不能とな
る事故が発生した。
・漂流については、次回スケジュールに影響を与えるものではないとの連絡をロシア側船
会社より受ける。積荷の集荷の関係で「小樽入港は 2 月 1~3 日を予定」との連絡あり。
1 月 19 日
・ビクトール(VICTOR)号の積載貨物が少ないため、韓国へ立ち寄る旨、連絡あり。
「小
樽入港は 2 月 5 日~7 日を予定」
。
2月2日
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38
・ビクトール(VICTOR)号より韓国の積載貨物をウラジオストクに運んでから、再度小
樽に向かう旨、連絡あり。
「小樽入港は 2 月 15 日~17 日を予定」。
2 月 12 日
・ビクトール(VICTOR)号より入港予定がさらに遅れる旨、連絡あり。
「小樽入港は 2 月
23 日~24 日を予定」
。
・この時点で、日本側物流会社との相談の上、2 月 17 日小樽港入港予定のテクリブカ
(TEKLIBKA)号への変更を行った。
物流会社に確認したところ、
「船全体を借り切る用船と異なり、スペース・チャーターで
は、スケジュール変更のリスクはあり得る。しかしながら、通常は概ね 1 カ月前~2 週間前
までにスケジュールは確定でき、今回のビクトール(VICTOR)号が特殊な事例である」
との回答を得ている。
当初、積み込みを予定していたビクトール(VICTOR)号は、スペース・チャーターの
中でも物流業界でいうところの「買い付け船」と呼ばれる船であり、揚荷または積荷が決
まっており予定にあわせてスケジュール運航される通常の船と異なり、積荷がある程度し
か決まっておらず、入港してからブッキングするなどして荷物を貯めるというタイプの船
であった点もスケジュール変更に影響を与えたものと推測される。
図表 3-6 試験輸出での費用
輸送地点
輸送量
試験輸出費用
(見積時点費用)
小樽港~
60 ケース
134,786 円
184,200 円
ウラジオストク
(510kg)
(約 264.3 円/kg)
(約 361.2 円/kg)
図表 3-7 不定期船
ビクトール(VICTOR)号
(総トン数 2,163t、純トン数 1,023t)
テクリブカ(TEKLIBKA)号
(総トン数 2,317t、純トン数 801t)
出典:http://www.mareud.com/
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39
(2)国内輸送・倉庫搬入
日時:2010 年 2 月 1 日/場所:小樽港物流会社倉庫
輸出者から小樽港にある倉庫に商品が運び込まれたのは、不定期船に積み込み予定日の 5
日前であった。商品が搬入された時点では、不定期船への積み込みは 2 月 5 日~7 日と予定
されていた。しかし、搬入後、不定期船の入港予定日が変更されたため、結果的に 17 日間
倉庫で保管された。
(3)ラベル添付・梱包
日時:2010 年 2 月 5 日
13:00 ころ/場所:小樽港物流会社倉庫
輸入者より、ロシア語表記の製品情報を包装材および段ボールに貼付するよう指示があ
ったため、物流会社の倉庫内にて添付を行った。製品情報は、ロシア輸入通関の際に必要
となるため、日本国内で完了しておく必要がある。なお、ラベル表記については、事前の
輸入関係書類の申請の際、確認されたものである。
また、商品の表側には、日本製であることをロシア側消費者にわかりやすく伝えるため、
農林水産省が商標権を有する「農林水産物・食品輸出促進ロゴマーク」を添付した。
船内での凍結を防止するために、緩衝材で梱包した段ボールの外側を、さらに断熱材で
囲った。
図表 3-8 ラベル添付・梱包の様子
商品裏面にラベル添付
商品表面に「食品輸出促進ロゴマーク」添付
20 本入り段ボールを積み上げる
それぞれの段ボールを緩衝材で梱包
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40
発泡スチロールの断熱材(厚さ 10cm 程度)
パレットの上にも断熱材
商品上部の段ボールは税関検査用に開放
梱包済み荷姿
<事例>農林水産物・食品輸出ロゴマークの取得
「農林水産物・食品輸出促進ロゴマーク」は、国産の農林水
図表 3-9 農林水産物・食品
輸出促進ロゴマーク
産物・食品を海外に輸出するにあたり、日本産品であることの
識別を容易にし、その品質やおいしさ等を海外の消費者にアピ
ールすることを目的として、農林水産省によって定められたマ
ークである。
デザインは右図のとおりであり、マークの左下は「日本食品
の品質」とロシア語で記載されている。ロシア語のほか、英語、
簡体字、繁体字、韓国語、フランス語、スペイン語など 18 言
語のデザインが用意されている。
マークの使用にあたっては、定められた様式により農林水産省輸出促進室長あてに申請
する必要がある。今回の試験輸出にあたっては、申請から 1 週間ほどで使用が許諾され、
輸出者においてマークを印刷したシールを作成し、商品の表面に添付した。
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41
(4)通関
日時:2010 年 2 月 18 日
午前/場所:小樽港物流会社倉庫
通関手続きは荷積当日の午前に行われ、輸出許可通知書は即日発給された。
(5)荷積
日時:2010 年 2 月 18 日
15:00 ころ/場所:小樽港
通関を終えた積荷は、木箱に納められ、不定期船が停泊しているバースまで運び込まれ
た。商品の梱包にあたっては、物流会社から木枠で囲う方法(費用 23,000 円)と木箱で囲
う方法(費用 54,000 円)が提示された。木枠の方がコスト的には削減できるが、物流会社
との協議の結果、自動車等の他の積荷を考慮し、木箱での輸送となった。
商品は、一旦、岸壁に置かれた後、他の積荷(主に中古車)と一緒に順次積み込みが行
われた。物流会社から船側に依頼を行い、凍結の懸念のない場所に置いての輸送となった。
図表 3-10 荷積の様子
バースに搬入
フォークリフトで岸壁へ
岸壁で荷積を待つ
船倉内部
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42
(4)輸送
日時:2010 年 2 月 18~20 日
20 年度の試験輸出では、
定期船への積載を確認した後、船会社の東京支社が船荷証券(Bill
of Lading、B/L)を発行、送付という流れであったため、輸出者から輸入者側へ関係書類
を送付するのに、出港後 1~2 日間を要した。
今回は、不定期船での輸送であり、小樽港からウラジオストク港まで直行である。よっ
て、輸送期間が非常に短い。
そのため、今回の試験輸出では、船荷証券(B/L)をあらかじめ作成し、船長に差し入れ、
積載と同時に船長がサインと会社のスタンプを押印するという方法がとられた。よって、
発行までの時間のロスはなかった。
物流会社によると、不定期船の場合、書類を船長に託送依頼するのが通常の方法とのこ
とである。よって、船荷証券(B/L)3 通のうち、1 通は原本として輸入者へ郵送、1 通は
船長による託送、1 通は輸出者の控えとした。また、パッキングリストについては、原本で
なくても良いとのことであったのでコピーを船長に託送依頼した。
船積書類については、データにて船荷証券(B/L)、パッキングリスト、インボイスを輸
入者に翌日送付した。また、原本については同じく翌日 DHL 社のサービスを用いて郵送し、
輸入者の手元には 2 月 25 日に到着している。
なお、テクリブカ(TEKLIBKA)号は、2 日後の 2 月 20 日にウラジオストク港に入港し
た。
図表 3-11 船積書類の送付
<船長託送>
<DHL による郵送>
○船荷証券(B/L)※原本
1通
○船荷証券(B/L)※原本
○パッキングリスト※コピー 1 通
○パッキングリスト※原本
1通
1通
○インボイス※原本 1 通
発送日:2 月 18 日
発送日:2 月 19 日
到着日:2 月 20 日
到着日:2 月 25 日
図表 3-12 輸送にかかった日数の比較
<昨年度試験輸出>
<今年度試験輸出>
1~5 日目
1~3 日目
石狩湾新港~釜山港
6~10 日目
11~13 日目
小樽港~ウラジオストク港
釜山港積換え等
釜山港~ウラジオストク港
合計
13 日間
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43
合計
3 日間
(5)荷揚
日時:2010 年 2 月 21 日午前/場所:ウラジオストク港
テクリブカ(TEKLIBKA)号がウラジオストク港に到着した翌日に、積荷が港に降ろさ
れた。その際、問題が発生した。
ウラジオストク港は、
「商業港」と「漁業港」と呼ばれる 2 つの港に分かれている。商業
港は主に食品の輸入を取り扱う港であり、通関体制や倉庫設備なども食品に対応したもの
となっている。一方、漁業港は主に自動車の輸入を取り扱う港であり、食品に対応した通
関体制や倉庫設備が整っていない。
テクリブカ(TEKLIBKA)号は中古車運搬を主としており、今回、漁業港に入港した。
積荷は輸入者の手により漁業港内の凍結の恐れのない倉庫に搬入されたため、商品の品質
への影響はなかったが、そのまま放置された場合、商品の劣化の危険性もあった。
輸入者からは、入港する埠頭の場所を何度も尋ねられていたが、船会社から明確な返答
を得ることができないまま入港を迎えた。後日、輸入者から、上記のように食品保管に適
していない埠頭もあるため確認しておきたかったとのコメントがあった。
図表 3-13 ウラジオストク港の位置
商業港
商業港
ウラジオストク駅●
ウラジオストク駅●
漁業港
漁業港
出典:Google Earth
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44
3.シベリア鉄道輸送
(1)輸入通関
日時:2010 年 2 月 22 日~3 月 15 日/場所:ウラジオストク漁業港
荷揚げされた商品は、ウラジオストク漁業港の保税倉庫内にて通関されるのを待った。
今回の試験輸出の商品は植物検疫の対象ではなかった。しかし、商品の到着から通関完了
までに 22 日間留め置かれた(20 年度試験輸出では 14 日間であった)。
ウラジオストクのディストリビューターへのヒアリングによると、通常、通関には 1 週
間程度を見込んで、対応を行っているとのことである。また、ロシア国外から定期的に大
量の商品輸入を行っているディストリビューターでは、定期的に輸入している農産物では 4
日間程度を見込んで対応を進めているとのことである。
そうした通常の通関と比べ、今回の通関は非常に日数がかかっている。輸入者によると
理由としては、
①祖国防衛者の日(2 月 23 日)を含む連休、国際婦人デー(3 月 8 日)を含む連休を含
んでいたため。
②食品の通関に不慣れな漁業港側に接岸したため、手続きに時間がかかったため
の 2 点が考えられるとのことである。ただし、20 年度の試験輸出の通関では①の影響がみ
られなかったことから、②の要因が強いと思われる。
図表 3-14 保税倉庫の様子
保税地管理事務所
図表 3-15
1 月 1 日~5 日
1月7日
保税倉庫内部
2010 年のロシアの祝祭日
新年休暇
降誕祭
2 月 23 日
祖国防衛者の日
(2 月 22 日も休みとなり 4 連休)
3月8日
5月1日
春と労働の祝日
5月9日
勝利の日
6 月 12 日
ロシアの日
11 月 4 日
民族統一の日
国際婦人デー
出典:在日ロシア連邦大使館 HP
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45
(2)倉庫保管
日時:2010 年 3 月 16 日~3 月 21 日
/場所:輸入者倉庫
通関翌日に商品は、輸入者の倉庫に移され、そこでシベリア鉄道輸送および航空輸送の
準備が行われた。
(3)鉄道輸送
シベリア鉄道を利用した輸送方法には大きく分けて、①小口貨物を集め運ぶ郵便-手荷物
貨物輸送、②コンテナに積み込み貨物専用列車を利用して運ぶコンテナ輸送、の 2 パター
ンがある。今回の試験輸出では、20 年度同様、郵便-手荷物貨物輸送の利用を考え、準備を
行ってきた。
郵便-手荷物貨物輸送を選んだ理由としては、①小ロットでの産地直結型試験輸出を想定
していたため、②輸入者から郵便-手荷物貨物輸送が時間的、コスト的に最適であるとの意
見が出されたためである。
図表 3-16 郵便-手荷物貨物輸送とコンテナ輸送の比較
郵便-手荷物貨物輸送
特徴
コンテナ輸送
・小口の荷物を輸送する場合、コス ・コンテナ 1 本分以上の貨物に適し
トを抑えることができる
ている
・有蓋貨車に積み込み、旅客車に連 ・冷蔵貨物の輸送が可能(冷蔵コン
結して輸送
テナには電源があるため積み替
・旅客車の速度で輸送が可能(貨物
え時も鮮度保持が可能)
車と比べて速い)
運行スケジュール
日数
事前準備
週 2~3 回
週2回
モスクワ 10~12 日
モスクワ 14 日
ノボシビルスク 6~8 日
ノボシビルスク 10 日
3~4 日
3~5 日
※郵便-手荷物貨物輸送については、ウラジオストクの輸送会社ジェルドルエクスペジツィヤ社、
コンテナ輸送については、ウラジオストクの輸送会社ダリエフトランス社へのヒアリングによる
輸送にかかる日数は、貨物取扱輸送会社からモスクワまで 10~12 日間、ノボシビルスク
まで 6~8 日間と提示を受けているが、実際には 20 年度調査ではモスクワまで 9 日間で到
着しており、多少の余裕をみた日数の提示であると見込まれる。
運行スケジュールが週に 2~3 回となっている。事前準備期間としては、通常 3~4 日を
見ておく必要があり、木枠などを作り出荷する場合は 7 日程度を見込む必要がある。そう
いった点を考慮すると 1 週間程度の準備期間を見込んでおく必要がある。ちなみに、H20
年度調査では、出荷手続きから出荷まで 6 日間を要している。なお、積み込まれた荷物は
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46
送り状番号と暗証番号を Web 上で入力するこ
図表 3-17 荷物追跡サービス
とで、場所が追跡サービスを用いて追跡が可
能となっている。
コストについては、重さや容積による基本
料金の他に、大型の荷物の場合、凍結を防止
する場合、壊れやすい商品輸送の場合などは
追加料金を求められる。
今回の試験輸送では、ウラジオストクから
ノボシビルスクが 153kg の輸送で 4,523 ルー
ブルであったため 1kg 当たりに換算すると約
輸送会社 Web 内にある入力フォームに、送り状
の番号と暗証番号を入力すると荷物の輸送状況
を知ることができる
88.7 円、ウラジオストクからモスクワまでは 4,879 ルーブルであったため 1kg 当たりに換
算すると約 95.7 円となる。
図表 3-18 試験輸出での費用
輸送地点
輸送量
現地費用
日本円換算
ウラジオストク
18 ケース
3,823 ルーブル
約 13,569 円
~ノボシビルスク
(153kg)
+輸送料 700 ルーブル
(約 88.7 円/kg)
ウラジオストク
18 ケース
4,179 ルーブル
約 14,637 円
~モスクワ
(153kg)
+輸送料 700 ルーブル
(約 95.7 円/kg)
今回、シベリア鉄道輸送については、郵便-手荷物貨物輸送を取り扱うウラジオストクの
輸送代理店へ申し込んでいたところ、集荷量が少ないという理由により、荷積みを延期さ
せられた。輸入者から発車日の確認を求めたが、明確な返答が得られず、輸送の目途が立
たなかったため、鉄道輸送試験自体を中断した。コンテナ輸送会社へのヒアリングでも、
こうした荷積みの延期はあるとのことである。
図表 3-19 シベリア鉄道の様子
貨車の様子(ノボシビルスク)
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コンテナ貨物引取所(ノボシビルスク)
47
<コンテナ輸送について>
ロシア鉄道極東鉄道会社ウラジオストク支部へのヒアリングによると、コンテナ輸送も
専門代理店が取り扱っている。コンテナ輸送には、冷蔵コンテナと通常のコンテナがあり、
ウラジオストクで冷蔵コンテナ輸送を扱っている代理店は、ダリレフトランス社とセベロ
サパティモルセンター社の 2 社となっている。
特に、ダリレフトランス社はウラジオストク商業港内に拠点を持ち、船便をそのまま列
車に乗せることができるという強みを持つ。
荷物については、極東鉄道子会社のダリジャッホ社を窓口として、保険をかけることが
でき、保険が掛けられた商品は、武装した係員が配置された車両で輸送されるため、紛失
の恐れはないとのことであった。
破損については、賞味期限が迫っているようなものは代理店の時点で受け付けず、代理
店で商品の中身をみて温度調整をしながら、コンテナにつめるとのことであった。
図表 3-20 ウラジオストクからの営業キロ数
モスクワ
9,289km
エカテリンブルク
7,475km
ノボシビルスク
5,953km
イルクーツク
4,104km
出典:
「シベリア・ランドブリッジ-日ロビジネスの大動脈-」
(辻久子、2007 年)を基に作成
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48
ハバロフスク
766km
ウラジオストク
0km
4.航空貨物輸送
(1)輸入通関
輸入通関については、シベリア鉄道輸送の場合と同様である。
(2)倉庫保管
倉庫保管については、シベリア鉄道輸送の場合と同様である。
(3)航空貨物輸送
今回の試験輸出は、当初、ウラジオストク航空のウラジオストク-ノボシビルスク便、
ウラジオストク-モスクワ便を利用して航空貨物を輸送することを想定していた。
ウラジオストク航空にヒアリングしたところ、貨物の輸送については、まず代理店を通
さず直接、ウラジオストク航空の貨物部に連絡を入れる申し込みを行うことから始まると
のことであった。スペースに空きがあれば成約となり、あとは輸送に間に合うように空港
に隣接する航空貨物倉庫に搬入すれば良い。その他の航空会社は代理店を通じて、同様の
手続きを取っているとのこと。
料金は、500kg 以上の貨物の場合、ノボシビルスクまで荷物 1kg 当たり 42 ルーブル+タ
ーミナル使用料 6 ルーブルとなり、加えて基本料として 1 貨物当たり 1,500 ルーブルが請
求される。1t 以上の貨物の場合、従量料金が多少割引となる。
ウラジオストク航空では、モスクワについてもノボシビルスクと同額で運送していると
のことである。これは他航空会社の便もあり、競争が激しいためであるとの説明を受けた。
輸送時間は、モスクワまでであれば 10 時間、ノボシビルスクまでは 5~6 時間で輸送可
能であり、到着後 3 時間程度で引取が可能な状態になる。
コールドチェーンについて、航空貨物倉庫には冷蔵室があり温度管理が可能である。飛
行機内部は冷蔵室はないものの 5~15℃の温度管理で運んでおり、到着先の倉庫にも冷蔵室
がある。これまでの実績として、冷凍肉を品質劣化なく運んだ実績を持つとのことである。
図表 3-21 試験輸出での費用
輸送地点
輸送量
現地費用
ウラジオストク
2 ケース
2,500 ルーブル(見積時) 約 7,500 円(約 441 円/kg)
~ノボシビルスク
(17kg)
3,387 ルーブル(実 績) 約 10,161 円
(
約 598 円/kg)
ウラジオストク
2 ケース
2,500 ルーブル(見積時) 約 7,500 円(約 441 円/kg)
~モスクワ
(17kg)
3,137 ルーブル(実
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日本円換算
績) 約 9,411 円(約 554 円/kg)
ウラジオストク空港からロシア各地への路線は、以下の通りである。8 社の航空会社が乗
り入れ、ロシア国内 16 空港へ運航を行っている。毎日運航が行われているのは、モスクワ、
ハバロフスク、ユジノサハリンスクの 3 都市であり、ノボシビルスク、ペトロパブロフス
ク・カムチャッキーの 2 都市は日曜日を除く 6 日間の運航が行われている。
図表 3-22 ウラジオストク空港からロシア各地への運航スケジュール
航空会社
目的地
機材
UN
モスクワ(ドモジェドヴォ)
B767
UN
モスクワ(ドモジェドヴォ)
B767
○
○
SU
モスクワ(シェレメチェヴォ)
A330
○
○
SU
モスクワ(シェレメチェヴォ)
B767
XF
モスクワ(ヴヌコヴォ)
XF
アバカン
A330/TU204
月
FV
バルナウル
A320
バルナウル
A319
U6
エカテリンブルク
A320
XF
エカテリンブルク
TU204
U6
エカテリンブルク
A320
XF
エカテリンブルク
A320
XF
イルクーツク
A320/TU204
S7
イルクーツク
A320
U6
イルクーツク
A320
U6
イルクーツク
A320
FV
イルクーツク
A319
XF
ハバロフスク
A320
XF
ハバロフスク
A320/TU204
XF
ハバロフスク
A320/TU204
SU
ハバロフスク
A320
XF
クラスノダール
XF
クラスノヤルスク
A320/TU204
XF
クラスノヤルスク
A320
FV
クラスノヤルスク
A320
XF
マガダン
A320
XF
マガダン
A320
XF
ノボシビルスク
TU204
S7
ノボシビルスク
A320
ノボシビルスク
A320
FV
ノボシビルスク
A319
S7
ノボシビルスク
A320
50
水
木
金
土
○
○
○
15:15
○
○
15:55
18:00
○
○
○
○
14:15
16:40
○
17:10
19:30
○
11:45
14:30
13:40
16:00
○
○
○
○
○
○
21:05
23:10
22:25
03:05
12:40
17:30
13:50
16:35
16:15
21:10
17:00
21:35
○
07:00
11:15
○
10:45
13:10
12:40
15:00
16:15
18:30
22:25
00:55
07:00
08:20
07:30
08:50
08:00
09:20
09:00
10:20
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
到着時間
13:10
○
○
○
出発時間
○
○
○
○
○
TU204
S7
火
○
A320
FV
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日
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
10:00
15:35
07:30
12:25
17:00
19:15
17:05
19:25
08:00
14:20
08:00
14:50
10:00
12:15
10:45
16:05
18:25
20:35
20:25
22:20
20:35
22:45
図表 3-23 ウラジオストク空港からロシア各地への運航スケジュール(つづき)
航空会社
目的地
機材
SU
ペトロパブロフスク・カムチャッキー
A320
SU
ペトロパブロフスク・カムチャッキー
A320
XF
ペトロパブロフスク・カムチャッキー
A320
S7
ペトロパブロフスク・カムチャッキー
A320
XF
ペトロパブロフスク・カムチャッキー
A320/TU204
XF
ロストフ
A320
日
月
火
水
木
金
○
○
土
出発時間
到着時間
○
08:45
14:00
09:00
16:40
10:15
15:20
○
10:45
16:10
○
14:30
19:35
07:30
15:15
○
○
○
○
○
○
○
XF
サンクトペテルブルク
TU204
○
14:50
17:35
FV
サンクトペテルブルク
A320
○
○
17:05
22:10
FV
サンクトペテルブルク
A319
○
20:25
01:20
FV
サンクトペテルブルク
A320
21:05
02:25
FV
サンクトペテルブルク
A319
22:25
06:35
XF
ソチ
TU204
11:45
21:20
XF
ヤクーツク
TU204
08:00
12:20
R3
ヤクーツク
16:00
18:00
XF
ユジノサハリンスク
A320/TU204
08:00
09:50
XF
ユジノサハリンスク
A320/TU204
08:15
10:05
SU
ユジノサハリンスク
A320
08:15
10:00
XF
ユジノサハリンスク
TU204
○
08:30
10:20
SU
ユジノサハリンスク
A320
○
09:15
11:00
XF
ユジノサハリンスク
TU204
09:30
11:20
○
○
○
○
Ty154
S7
ユジノサハリンスク
A320
HZ
ユジノサハリンスク
B767
XF
ユジノサハリンスク
TU204
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
出典:http://www.airagency.ru/ (2009 年 12 月 1 日時点)を基に作成
※航空会社欄に記載の略称と正式名称の対応は以下のとおり。
UN…トランスアエロ航空
SU…アエロフロート・ロシア航空
XF…ウラジオストク航空
FV…ロシア航空
U6…ウラル航空
S7…シベリア航空
R3…ヤクーチア航空
HZ…サハリン航空
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51
○
○
11:05
13:00
16:10
17:50
18:30
20:20
図表 3-24 ウラジオストク空港から主な空港までの所要時間(目安)
ペトロパブロフスク・
カムチャッキー
約 4 時間
モスクワ
約 9 時間
エカテリンブルク
約 8 時間
ユジノ
サハリンスク
約 1.8 時間
ノボシビルスク
約 6.3 時間
ハバロフスク
約 1.3 時間
イルクーツク
約 4.5 時間
出典:
「シベリア・ランドブリッジ-日ロビジネスの大動脈-」掲載地図を基に作成
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52
(4)最終荷受人への受け渡し
①ノボシビルスク
日時:3 月 24 日 20 時~3 月 25 日
ノボシビルスクへは、2010 年 3 月 24 日にウラジオストクを出発したシベリア航空 3272
便に載せ、輸送した。ウラジオストクを出発したのが現地時間の 20 時 35 分(ノボシビル
スク時間 16 時 35 分)であり、ノボシビルスクの空港に到着したのは 22 時 45 分(モスク
ワ時間)であった。飛行時間は約 6 時間であった。
翌日の 13 時ころに貨物ターミナルから貨物到着の連絡が入ったので、自家用車で貨物タ
ーミナルに引き取りに向かった。貨物の引き取りには、AirWayBill が必要であった。引き
取り手数料は 91 ルーブル(約 273 円)であった。
日本で梱包用段ボールに巻いた緩衝材で送った。到着した商品に傷はなく、心配された
凍結および再解凍は見られなかった。
図表 3-25 ノボシビルスクでの航空貨物荷受けの状況
航空貨物荷姿
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商品の状況
53
②モスクワ
日時:3 月 25 日 14 時~3 月 26 日
モスクワへは、2010 年 3 月 25 日にウラジオストクを出発したアエロフロート・ロシア
航空 720 便に載せ、輸送した。ウラジオストクを出発したのが現地時間の 14 時 40 分(モ
スクワ時間 7 時 40 分)であり、モスクワ・シェレメチェヴォ空港に到着したのは 16 時 40
分(モスクワ時間)であった。飛行時間は 9 時間であった。
貨物の処理に 4 時間が費やされ、翌朝、アエロフロート・ロシア航空より荷物が到着し
引取可能であるとの連絡票が送られる。
今回の試験輸出では、モスクワの荷受人は、シェレメチェヴォ第 1 貨物ターミナルに荷
物を引き取りに向かった。
貨物の引き取りには、①パスポート、②会社からの委任状、③GOST-R 適合証明のコピ
ー、④物流会社からの連絡票(必ず必要というわけではない)が必要となる。
貨物ターミナルで必要書類を見せながら、航空貨物運送状を入手する。運搬用の自家用
車をターミナル内に入れた後、貨物ターミナルに貨物引き取り手数料(340 ルーブル、約
1,020 円)を支払う。動植物検疫所で許可をもらい荷物を受け取ることができる。最終荷受
人によると、ターミナルに到着してから、荷物引き取りまでにかかった時間は約 1 時間半
であったとのこと。
ノボシビルスク行きの航空貨物と同様に緩衝材のみでの梱包であったが、外傷はみられ
なかった。商品についても凍結および再解凍は見られなかった。
図表 3-26 モスクワでの航空貨物荷受けの状況
航空貨物荷姿
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商品の状況
54
5.輸出コスト分析
今回の試験輸出では約 500kg の商品を輸送した。試験輸出の実績のコストは、以下のと
おりである。参考までに、輸出量を倍の 1,000kg にして、ロシアでの通関がスムーズにい
ったと想定した推定費用を算出している。
(1)日本国内輸送(輸送準備)
生産者から物流業者の倉庫に商品が引き渡され、不定期船へ積み込むまでの手数料やロ
シア向けのパッケージのラベル貼りにかかった費用は 40,000 円であった。商品を梱包した
木箱などの資材については、
「(3)海上運賃」に計上している。
図表 3-27 日本国内輸送(輸送準備)での費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
食品入庫料
変動
500kg
3,000 円
3,000 円
6,000 円
取扱い手数料
固定
1式
10,000 円
10,000 円
10,000 円
出庫料
変動
500kg
3,000 円
3,000 円
6,000 円
ラベル貼り作業費
変動
2,400 枚
10 円
24,000 円
48,000 円
合計
40,000 円
70,000 円
(2)日本国内通関
通関に必要となる費用は、輸出量の大きさによって変化はないと見込まれるため、試験
輸出の実績と 1,000kg の輸出を想定した場合と同額としている。
図表 3-28 日本国内通関での費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
通関
固定
1式
5,900 円
5,900 円
5,900 円
税関検査作業量
固定
1式
10,000 円
10,000 円
10,000 円
合計
15,900 円
15,900 円
(3)海上運賃
今回の海上運賃は、船会社との直接の交渉であったため、通常よりかなり安い金額とな
っている。見積時点では、1 箱当たり 18,000 円との見積となっていた。物流会社へのヒア
リングによると、不定期船の海上運賃(スペースチャーター料金)は、貨物量、船の量に
応じて価格が変動するとのことである。
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55
図表 3-29 海上運賃
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
海上運賃
変動
3箱
5,000 円
15,000 円
30,000 円
海上運送保険
変動
-
5,786 円
5,786 円
11,572 円
木箱梱包費用(資材代込)
変動
3個
18,000 円
54,000 円
108,000 円
港湾荷役料
固定
1式
35,000 円
35,000 円
35,000 円
船舶代理店料
固定
1式
25,000 円
25,000 円
25,000 円
合計
134,786 円
209,572 円
(4)輸入通関
ロシア側での輸入通関にあたり通関業者への支払いが発生し、今回は 9,500 ルーブルで
あった。また、保税倉庫保管料が発生し、特に今回は長期の保管となったため、予定額の 2
倍程度が費用として発生した。
図表 3-30 輸入通関での費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
通関ブローカーへの支払
固定
1式
9,500 ルーブル
28,500 円
28,500 円
保税倉庫保管料
固定
1式
19,130 ルーブル
57,390 円
57,390 円
合計
85,890 円
85,890 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
(5)輸出地国内輸送費用
①鉄道利用(ノボシビルスクまで)
試験輸出では海上輸送した 500kg の商品のうち、150kg をノボシビルスクに鉄道輸送す
場合、4,523 ルーブルであった。
図表 3-31 鉄道利用(ノボシビルスクまで)の費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
鉄道輸送料
変動
150kg
4,523 ルーブル
13,569 円
90,460 円
鉄道輸送保険
変動
150kg
1,320 ルーブル
3,960 円
26,400 円
合計
17,529 円
116,860 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
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56
②鉄道利用(モスクワまで)
試験輸出では海上輸送した 500kg の商品のうち、150kg をモスクワに鉄道輸送する場合、
4,879 ルーブルであった。ノボシビルスクとモスクワまでの鉄道輸送料金の差は 150kg で
356 ルーブルであるので、1kg 当たり 7.12 円となりあまり大きな価格差はない。
図表 3-32 鉄道利用(モスクワまで)の費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
鉄道輸送料
変動
150kg
4,879 ルーブル
14,637 円
97,580 円
鉄道輸送保険
変動
150kg
1,320 ルーブル
3,960 円
26,400 円
合計
18,597 円
123,980 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
③航空利用(ノボシビルスクまで)
試験輸出では海上輸送した 500kg の商品のうち、約 17kg をノボシビルスクに航空輸送
した。試験輸送でのコストは 3,387 ルーブルであった。1,000kg の場合を推定する際は、航
空物流会社へのヒアリングから得られた 1 貨物当たり 1,500 ルーブルの基本料金と従量料
金は 47 ルーブル/kg を用いて、輸送費用を算出した。
図表 3-33 航空利用(ノボシビルスクまで)の費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
航空輸送料
変動
17kg
3,387 ルーブル
10,161 円
145,500 円
航空輸送保険
変動
17kg
150 ルーブル
450 円
26,400 円
合計
10,611 円
171,900 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
④航空利用(モスクワまで)
試験輸出では海上輸送した 500kg の商品のうち、約 17kg をモスクワに航空輸送した。
試験輸送でのコストは 3,137 ルーブルであった。ノボシビルスクへの輸送より価格が安い
のは競合する航空会社が多いためと見込まれる。1,000kg の場合を推定する際は、航空物流
会社へのヒアリングから得られた 1 貨物当たり 1,500 ルーブルの基本料金と従量料金は 47
ルーブル/kg を用いて、輸送費用を算出した。航空物流会社へのヒアリングでは、ウラジ
オストクからノボシビルスクの航空輸送料とウラジオストクからモスクワまでの航空輸送
料は同額である。
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図表 3-34 航空利用(モスクワまで)の費用
経費項目
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
分類
数量
航空輸送料
変動
17kg
3,137 ルーブル
9,411 円
145,500 円
航空輸送保険
変動
17kg
150 ルーブル
450 円
26,400 円
合計
9,861 円
171,900 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
(6)認証類取得費用
2 種類の試験と衛生・疫学検疫証明書および GOST-R 適合証明の取得のために要した費
用は合計で 47,601 円であった。その他、認証手続きの費用等を加えると 89,805 円であっ
た。認証類取得費用は輸出のたびに発生する費用ではなく、特に使用可能な回数に制限が
ない限り、有効期限内であれば繰り返し使えるものである。
図表 3-35 認証類取得費用
試験輸出実績
単価
金額
1,000kg の場合
(推定)
経費項目
分類
数量
遺伝子組み換え試験
固定
1式
1,062 ルーブル
3,186 円
3,186 円
ラボラトリー試験
固定
1式
2,450 ルーブル
7,350 円
7,350 円
衛生・疫学検疫証明書
固定
1式
5,865 ルーブル
17,595 円
17,595 円
GOSR-R 適合証明
固定
1式
6,490 ルーブル
19,470 円
19,470 円
認証手続き費用
固定
1式
12,000 ルーブル
36,000 円
36,000 円
輸送費等諸経費
固定
1式
2,068 ルーブル
6,204 円
6,204 円
合計
89,805 円
89,805 円
※1 ルーブル=約 3 円で算出。
(7)輸出コストまとめ
各段階のコストを積み上げ、1,000kg の商品を小樽港から不定期船を利用して輸出する場
合のコストを求めると、ノボシビルスクまで鉄道利用する場合 498.2 円/kg、航空を利用
する場合 553.3 円/kg、モスクワまで鉄道を利用する場合 505.3 円/kg、航空を利用する
場合 553.3 円/kg となる。
一般的に航空貨物輸送には高額なイメージがあるが、ロシア国内での輸送に限ると鉄道
との価格差はあまり大きくなく、不定期船を含めた輸送費全体で比べると 1 割程度の輸送
費増に収まる。
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図表 3-36 輸出コストのまとめ
試験輸出実績
1,000kg の場
合の推定値
kg 当たり単価
(1,000kg の場合)
日本国内輸送(輸送準備)
40,000 円
70,000 円
70.0 円
日本国内通関
15,900 円
15,900 円
15.9 円
海上運賃
134,786 円
209,572 円
209.6 円
輸入通関
85,890 円
85,890 円
85.9 円
鉄道利用(ノボシビルスクまで)
17,529 円
116,860 円
116.9 円
鉄道利用(モスクワまで)
18,597 円
123,980 円
124.0 円
航空利用(ノボシビルスクまで)
10,611 円
171,900 円
171.9 円
9,861 円
171,900 円
171.9 円
1,000kg の場
合の推定値
kg 当たり単価
(1,000kg の場合)
不定期船利用~鉄道利用(ノボシビルスクまで)
498,222 円
498.2 円
不定期船利用~鉄道利用(モスクワまで)
505,342 円
505.3 円
不定期船利用~航空利用(ノボシビルスクまで)
553,262 円
553.3 円
不定期船利用~航空利用(モスクワまで)
553,262 円
553.3 円
経費項目
輸出地国内輸送費用
航空利用(モスクワまで)
経費項目
<参考>成田-ウラジオストク便による航空貨物輸送
成田-ウラジオストク便が 2010 年 3 月に就航した。調査段階では輸送会社からの料金表
は明確になっていないが、IATA 料金を参考とすると成田-ウラジオストク間は 440 円/
kg と見込まれる。
国内輸送、国内通関が同額と仮定した場合、成田からウラジオストク経由でモスクワま
での航空貨物で送った場合のコストは、日本国内輸送(輸送準備)70.0 円+日本国内通関
15.9 円+国際航空輸送 440.0 円+輸入通関 85.9 円+輸出地国内輸送費用 171.9 円=783.7 円
/kg と推定される。
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59
第4章
ロシアマーケットの現状
現在、ロシアでは世界各地から野菜や果物が輸入されている。そうしたロシア市場の現
状を把握するとともに、日本の農産物や一次加工品の参入可能性を検討する。
1.市場調査
今回の商品仕向地であるウラジオストク、ノボシビルスク、モスクワの 3 都市での代表
的な小売店を紹介し、その後、農産物および一次加工品の状況をまとめる。
(1)ウラジオストク
①ショッピングセンター「クレーバー・ハウス」
ウラジオストク駅より徒歩 10 分ほどにあるショッピ
ングセンターである。地上 6 階、地下 1 階からなる店内
には、服飾品や子ども向け玩具、レストランなどが入り、
ウラジオストクでは高級~中級向けの店の 1 つとして位
置付けられている。地下に食料品売り場があり、生鮮品
から加工品まで豊富な品揃えをしている。地元のディス
トリビューターであるダイイチ社が日本商品を中心と
する専用棚を 1 台設置していた。
クレーバー・ハウス外観
②ハイパーマート「Bラーゼル」
ウラジオストク駅より 4km ほど離れた場
所にある中規模スーパーマーケットである。
地上 2 階の建物は、1 階が食料品売り場、2
階が家電売り場となっている。生鮮品や加工
品まで豊富な品揃えであり、同じ製品でも多
くのメーカーの製品を取り扱っている点が注
目できる。地元のディストリビューターであ
るエイラン社、ダイイチ社がそれぞれ 1 台の
日本商品を中心とした専用棚を設置していた。
Bラーゼル外観
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③ショッピングセンター「イグナト」
「Bラーゼル」の斜め向かいに立地するウラジオストクにある高級店を代表する店の 1 つであ
る。ファッションデパートのような位置付けであり、商品単価も高い。地上 5 階、地下 1 階の建物に
は、地下はレストランが入り、地上部分はファッション関係の店が入る。1 階部分にスーパ
ーマーケットが入り、加工食品を中心に販売している。酒類の専用コーナーがあり、ビン
テージワインなど他店には見られない品揃えであった。しかし、農産物のコーナーは小さ
く、他店と比べて品揃えに特色は感じられなかった。
イグナト外観
イグナト内部
④スーパーマーケット「パルス」
ウラジオストクに拠点を持つ小売店であり、
ウラジオストク最大のスーパーマーケットで
あり、食品売場面積 1,500 ㎡、約 2 万品目を
取り扱う。来店者に日本への訪問経験を持つ
人が多く、日本商品の売れ行きが良いとのこ
と。
パルス外観
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(2)ノボシビルスク
①ハイパーマーケット「アシャン」
ノボシビルスク郊外に位置するフランス資本のハイパーマーケットである。店内では、
食料品のほかに調理器具、衣料品などを販売している。店内のフードコートには、和食を
はじめ 10 店舗以上の店が並び、中央にはスケートリンクが配置されているのが印象的であ
る。アシャンのならびに日用雑貨の IKEA、ショッピングモールの MEGA がある。ロシア
では西部を中心に各地に展開している。
アシャン外観
アシャン内部
②スーパーマーケット「シベリア・ギガント」
ノボシビルスク市内に 3 店舗を構える低所
得者~中間層向けのスーパーマーケットであ
る。店内は、ハイパーマーケットのように在
庫を積み上げるタイプであるが、品揃えはそ
れほど多くはない。
シベリア・ギガント外観
③ハイパーマーケット「METRO」
ノボシビルスク市内に 2 店舗を構えるドイ
ツ資本のハイパーマーケットである。小規模
な商店やレストラン向けに販売する会員制を
とっている。2010 年 3 月現在、ロシアには
80 店舗を有しており、最もロシアの東側に進
出している店舗はクラスノヤルスクまでとな
っている。ノボシビルスク市内に和食レスト
ランが多くなってきたことを受けて、店舗内
METRO外観
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62
には和食コーナーを設け、醤油やわさびなどの調味料、みそ汁、のりなどをまとめている。
④ハイパーマーケット「RENTA」
サンクトペテルブルクが本店であるハイパ
ーマーケットである。ノボシビルスク市内に
5 店舗を展開している。
RENTA外観
⑤ショッピングセンター「MEGAS」
シベリア・ギガントが中間層~高所得者を
ターゲットとして展開しているショッピング
センターである。食料品売り場は、通常より
高い値段設定となっており、地元の野菜にこ
だわったコーナーや海外からの少し珍しい果
物(イチゴ、パイナップルなど)を揃えたコ
ーナーが設置されていた。惣菜コーナーには、
寿司コーナーが設置されており、小ぶりの寿
司が 3 個で 30~60 ルーブルで販売されてい
た。また、和食コーナーも設置されていた。
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MEGAS外観
(3)モスクワ
①高級ショッピングセンター「アズブカフクーサ」
アズブカフクーサは高級食材を取り扱うチェーン店であり、モスクワ市内に 26 店舗を展
開している。日本からの果物や野菜が販売されているが、他の商品と比べ、非常に高値で
販売されている。
アズブカフクーサ外観
ディスプレイにも力を入れる
②ショッピングセンター「ペレクリョーストク」
ペレクリョーストクは、モスクワ拠点のスーパーチェーンであり、モスクワ市内だけで
数十店舗の展開が行われている。購買層は、中間層から高所得者層である。
ペレクリョーストク外観
(今回訪問したのはキエフスカヤ駅近くのショッピングセンター内の店舗)
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(4)農産物の価格帯
各地域での農産物の価格帯は下表のとおりである。ヒアリング全体を通した消費者の傾
向としては、以下のとおりにまとめることができる。
①まず、ロシア国内で生産された農産品を選ぶ。価格も安く、新鮮であると捉えている。
ただし、トマト、キュウリ、ジャガイモなどロシア産の商品は限定的である。
②ロシア国内で生産されていない農産物については、ヨーロッパや中央アジアなどの国
から輸入された商品から選ぶ。ただし、価格が高いものが多いので、品質と価値を見極め
購入する。
③ロシア産やヨーロッパ・中央アジア産の商品がない場合、あっても価格的に折り合わ
ない場合は、中国製の商品を購入することになる。中国産の農産物は、取り扱われている
種類数も多く、価格も安い。しかしながら、安全面に対する不安を持たれている。
④日本の商品は、一度でも利用されていると抵抗感なく購入につながっているようであ
るが、高級すぎるというイメージがある。
図表 4-1 主要農産物の地域別・産地別価格帯
品目
トマト
産地
ロシア産
ウラジオストク
-
440
100~110
-
110~140
ノボシビルスク
135~145
150~180
スペイン、ウズベキ
スタンなど
-
-
155~200
-
2,500(北海道)
375
-
-
-
-
-
525
イスラエル
105~130
-
20~25
45~350
フランス、オランダ
など
-
20~25
80~85
イスラエル
35~40
300(島根県)
-
95
オランダ
30~40
250
-
205~225
-
-
230~400
-
150
-
15~110
40~50
-
2,500(北海道)
45~65
-
中央アジア
・欧州産等
キュウリ
パプリカ
ジャガイモ
中国産
日本産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
日本産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
ニンジン
タマネギ
中国産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
日本産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
日本産
オランダ
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65
モスクワ
230~400
-
ヨーロッパ産
-
25~40
-
-
-
-
-
-
40~60
30
オランダ
-
-
-
-
-
-
-
-
品目
トウモロコシ
(真空パック)
リンゴ
産地
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
ロシア産
ウラジオストク
-
280~500
スペイン、タイ
-
-
95~170
中央アジア
・欧州産等
アメリカ
85~95
480~510
(青森県)
-
890~1,520
中国産
日本産
イチゴ
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
コメ
韓国、イスラエル
中国産
ロシア産
中央アジア
・欧州産等
中国産
日本産
-
80~90
95~170
アメリカ
85~95
480~510
(青森県)
ノボシビルスク
120~125
-
モスクワ
200
-
-
-
40~80
-
45~120
50~170
フランス、ドイツ、 ベルギー、フランス
ポーランドなど
など
55~70
-
2,500~3,000
-
(青森県)
-
400
960~3,500
880
イスラエル、アメリ
イスラエル
カなど
-
-
50~
-
45~120
50~170
フランス、ドイツ、 ベルギー、フランス
ポーランドなど
など
55~70
-
2,500~3,000
-
(青森県)
※2010 年 3 月中旬の商品 1kg 当たりの店頭価格。単位ルーブル。1 ルーブル=約 3 円。
※モスクワは中間層から高所得者層向けのスーパーを訪問したこともあり、他都市と比較すると価格が全
体に高くなっている点に留意。
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図表 4-2 ロシアのスーパーにおける農産品販売の様子(ウラジオストク「パルス」の例)
豊富な種類のトマトが並ぶ
果物の種類も豊富
1kg 当たりの価格が表示される
バラ売りの商品は計量して値札をつける
ボルシチ用のセットも販売される
新潟産のコシヒカリが店頭に並ぶ
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このほか、農産物の一次加工品として小売店に出回っていた商品としては、缶詰類、瓶
詰類、冷凍野菜などが見られた。これらの商品は、ロシア国内だけでなく、ヨーロッパや
中国など世界各地で製造されている。
また、野菜コーナーではサラダ用に小分けされた野菜のセットが販売されていた。小売
店へのヒアリングによると、忙しくする世帯が多くなっているので惣菜や手間の省けるパ
ックなどの売り上げが大きくなっているとの意見があった。
図表 4-3 農産物の一次加工品の例
種類
品目
価格
製造国
(ルーブル)
缶詰
瓶詰
冷凍
豆
150~190
ハンガリー
オリーブ
190~210
スペイン
トマトピューレ
60~120
ロシア、ベトナム
キノコ
350~430
ロシア(最高ランクに位置付けられるキノコの値段)
トマトホール
80~100
中国
トウモロコシ
35~40
中国
ミックス野菜
170~200
ロシア
ジャガイモ
150~190
ロシア
※価格は、1 缶、1 本、1 パックの価格。
図表 4-4 サラダ用の野菜パックを販売する Belaya Dacha Group の HP
出典:http://www.belaya-dacha.ru/
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2.流通の各段階における現状と日本産品に対する評価
通常、日本から輸出された商品は、輸入者であるディストリビューターを通じて、小売
店やレストランへ供給される。流通の各段階の事業者へヒアリング調査を行い、商取引の
状況や日本産品に対する評価の把握を行った。
(1)ディストリビューター
ディストリビューターは、輸入者として商品を輸入し、自らの倉庫で商品を適正に管理
し、小売店やレストランからの要望に応じて商品を発送するというようにロシアの流通の
要を担っている。
ディストリビューターは、それぞれ中国、ヨーロッパ、中央アジア、アメリカなどに独
自の流通網を持ち、小売店やレストラン等のニーズに合致した商品の仕入れを行っている。
日本の商品については、しょう油や酢、インスタント食品、菓子類などのドライグローサ
リーを取り扱っているディストリビューターは多いが、日本の農産物を扱っているディス
トリビューターは数少なく、日本に地理的に近いウラジオストクでも 3 社程度といわれて
いる。
ディストリビューターは、常に新しい商品を小売店に提案することで、取扱量を拡大し
ている。そうした背景から、いずれのディストリビューターも、市場に多く出回っていな
い日本産品について興味関心を持っている。しかし、日本からどういった商品が輸出可能
であるかについての情報が乏しく、まずは商品の情報を知りたいとの要望が出された。
商品の情報を受けた後、価格、品質、消費期限などを考慮し、取り扱うことのできる商
品を取捨選択し、小売店等に提案していくとのことである。
<ヒアリング結果①>
A社
A 社は、ウラジオストクに拠点を持つ輸入・卸売会社である。ウラジオストク市内に倉
庫を持ち、日本産品の取り扱いを行っている。
-取り引きで重視していることは?
スケジュールどおりに輸送されることが重要である。小売店に卸す際、納品が遅れると
ディストリビューター側に罰金を求められる場合がある。罰金額は不足商品金額の 6%とい
う例がある。小売店と交渉できても許容範囲は 1 週間程度までである。また、輸出者への
支払いと小売店からの代金納入にタイムラグがあるので、ディストリビューター側のキャ
ッシュフローの面からもスケジュールどおりに輸送されることが重要となる。
-日本産品に対する評価および興味関心のある食材は?
現在、取扱商品に独自性を出すために、資金のほとんどを日本産品、韓国産品の取り扱
いに振り向けている。昨年度、日本のコメの販売を行った。パッケージも良く、引き続き
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取り扱いたいと考えている。現在、価格が折り合わずに取引きが中断しているが関心はあ
る。その他、日本のスルメや乳製品に興味を持っている。
-日本産品の販売拡大について重要と考える点は?
現在、韓国のイチゴを輸入している(下の事例を参照)。日本からイチゴを輸入したが、
販売に苦労した。理由は、すでに市場に中国産、韓国産、オランダ産、米国産のイチゴが
出回っており、差別化が難しいからである。試食会やアンテナショップで商品を消費者に
アピールすることが必要と考える。
今年から、ウラジオストクのショッピングセンター内に日本の自治体と協力しながらア
ンテナショップを設置する予定である。
<事例>韓国産イチゴの定着
A 社では 3 年前から韓国産のイチゴの輸入を行っており、現在は週に 1t の輸入を定期
的に行っている。小売価格は、1kg 当たり 900 ルーブル(約 2,700 円)であり、日本で
販売されている 1 パック(約 300g)当たりに換算すると約 810 円と高級な商品に分類さ
れる。
この韓国産のイチゴも当初から売れたわけではなく、取引初期は 70kg の販売も難しい
状況であった。新しい商品であるため 1 年目は、ディストリビューターと韓国輸出者お
よび韓国農林水産食品部の間で、多くの協議の場を設けつつ、取引きが進められた。そ
れでも、輸送途中での商品の凍結や熟し過ぎによる商品の傷みの発生など、多くの失敗
があった。
しかし、失敗を改善しつつ、安定的な入荷の実現と品質確保が可能になると、消費者
から支持が高まり、現在の販売量が確保されるようになった。ディストリビューターは、
「品質は、証明書などのマークで保証されるものではなく、消費者からの信頼感(安定
した品質、安定した入荷など)により保証される」と話している。
<ヒアリング結果②>
B社
B 社は、ウラジオストクに拠点を持つ輸入・卸売会社であり、他の地域のディストリビ
ューターに卸すことを主たる事業としている。主な取扱商品は、コメやソバの実などの穀
物や海産物、野菜、キノコ、果物などの缶詰である。
-主な輸入国は?また輸送方法は?
穀物は中国からの輸入が多い。缶詰は、ロシア国内のものに加えて、ベトナム、タイ、
インド、中国のものを取り扱っている。20 フィートコンテナ 1 個を最小ロットとしながら、
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自社の倉庫から極東・シベリア地域に商品を鉄道、船などを使って送っている。
-日本産品に対する評価および興味関心のある食材は?
現在、ロシアで供給が不足している商品はあまりなく、逆に商品が過剰で売り込むこと
が大変な状況になっている。
日本の商品は、品質は良いが、価格が高すぎる。当社の商品ラインナップとは異なる。
しかしながら、健康ブームを背景に一定のマーケットは存在すると考える。
現在、韓国の脱脂粉乳を取り扱っている。家庭用の小さなパッケージから工場用の 25kg
入りの商品まで様々である。日本の商品に興味はあるので、求めやすい価格であれば商談
したいと考えている。
<ヒアリング結果③>
C社
C 社は、ノボシビルスクに拠点を持つ輸入・
卸売会社である。小売店、ディストリビュータ
ーの両方に商品を卸している。主な取扱商品は
コメや果物であり、コメは 6 年連続でロシア
最大の取引者となっている。
-主な輸入国は?また輸送方法は?
果物はヨーロッパやラテンアメリカ、アフリ
カ、中国から、コメは、エジプト、ベトナム、
C社
インド、タイなどから輸入している。ノボシ
ビルスク、ウラジオストク、ナホトカ、ノボ
ロシスクに大型倉庫を持っており、注文に応
じて鉄道やトラックを用いて輸送する。輸入
の際、ノボシビルスクに運ぶことだけ考える
とウラジオストク経由の方が割安であるが、
モスクワに商品を卸すことを考慮すると西側
からの輸送がベターである。
-取り引きで重視していることは?
倉庫内には世界中から運ばれてきた商品が並ぶ
消費期限の長さは重要である。ロシアは広
大なので、消費期限が短いと各都市に納品することが難しくなる。また、地域の温度帯も
マイナス 40℃~プラス 40℃まで様々であるので、温度管理も重要である。
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-日本産品に対する評価および日本産品の販売拡大について重要と考える点は?
日本の輸出者から提案を受けた経験がなく、情報が全くない状況である。日本の商品に
は非常に興味を持っている。情報を提供いただき、定期的な供給が可能で価格が見合えば
取り引きを検討したい。FOB も CIF にもどちらも対応しており、価格の有利な方で取り引
きしている。
日本の商品は高い。なぜ値段が高いのかを消費者に伝え、品質の良さを PR する機会を設
けることが重要である。テスト販売は、商品にもよるが 300 ケースくらいから始めてはど
うかと考える。
当社では、3 年前から中国産のトウモロコシ真空パックの商品開発を行っている(下の事
例を参照)
。ロシアに適したパッケージ等を検討しながら、販路拡大を行う方法もある。
<事例>中国産トウモロコシの商品開発
C 社は、3 年前から中国の企業と連携し、トウモロコシの真空パックの商品開発を行い、
現在、ロシア各地の小売店に卸している。商品開発にあたっては、パッケージデザイン
や内容量、品質、消費期限など、細かな内
容までロシア側から指導を行ったとのこ
とである。
店頭小売価格は 1 パック 450g で約 80
ルーブルであり、ディストリビューターへ
の納入価格はおよそ半値である。2009 年
からは年間販売量を 350t に拡大したが、
それほど PR に力を入れなくても売れ続
けるヒット商品になっているとのことで
ある。
商品開発された中国産トウモロコシ(真空パック)
<ヒアリング結果④>D 社
D 社は、モスクワに拠点を持つ輸入・卸売会社であり、2006 年から航空貨物を使って日
本の果物を輸入し、モスクワ市内の高級スーパーに卸している。
-小売店との取引はどのようになっているか?
小売店ごとに異なる。例えば、小売 A からの支払いは納品の 2 カ月後と遅い。一方、小
売 B からの支払いは納品の 1 カ月後と早いが、クレーム時の対応が厳しく、例えば、注文
に対して 100%の納品が達成できなかったら、全額支払いを行わないといった条項が付いて
いる。
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-日本産品に対する評価および興味関心のある食材は?
昨年から日本の商品の仕入れ値が上がり、販売に苦労している。理由としては、日本で
の市場価格の高騰、輸送費の増加などである。仕入れ値が上がっても、小売店への卸価格
には反映しにくい面があり、利益率が縮小している。
日本商品は価格が高く、これ以上高い値段での販売は難しい。仕入れ価格が手頃な新商
品については前向きに検討したいと考えている。
-日本産品の販売拡大について重要と考える点は?
他国からも商品が多く入ってきている。日本産品の販売拡大には差別化が重要である。
日本の農産物が持つ生での品質の良さが損なわれる冷凍商品などでは差別化が難しいの
で、販売は難しいと考える。
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(2)小売店
スーパーなどの小売店では、商品の調達は全てディストリビューターを通じて行うとい
う事業者が多かった。
農産物については、小売店からディストリビューターに週 1~4 回程度注文を出し、1~2
日後にディストリビューターが納品するという形式となっている。小売店としては、①商
品の取扱点数が多く直接管理しきれない、②商品保存は主にディストリビューターの倉庫
で行うことになるので小売店が大規模な倉庫を持つ必要がない、③ディストリビューター
の対応が早く商品補充に問題が生じない、などの理由からこの形式が採られている。一方、
ディストリビューターにとっては倉庫を持ち、常に在庫を抱えながらの対応となるので、
負担は大きくなる。
小売店とディストリビューターの契約は様々であるが、ある小売店の場合、期限内にデ
ィストリビューターが商品を納入できない場合、不足した商品の金額に対して 6%のペナル
ティを求めているという。
小売店からみた、日本商品の評価として出された意見としては、
「日本の商品は全般に高
価であり、一般消費者向けとは言えないが、健康ブームの中、一定の需要は見込める」と
いったものが多かった。
日本商品で興味関心のあるものとして名前が挙がったのは、アスパラガス、タマネギ、
ジャガイモ、トマト、キュウリ、ゴーヤ、カボチャ、タケノコ、コメ、穀物類、コーヒー、
寿司用のネタ、野菜缶詰、海産物缶詰、スルメなど乾物、ナッツ類(スナックなど)など
があった。ディストリビューター同様、小売店からも日本の商品の情報が不足していると
の意見が出された。
新商品を小売店が取り扱う場合、まずディストリビューターの提案を受けて、少量のテ
スト販売から開始するのが通常であり、当初は試食などを行いながら商品の知名度を上げ、
売れ行きが好調となれば増量して発注を行うという流れになる。
一方、小売店からディストリビューターに「こういった商品を仕入れたい」と逆に注文
する場合もあり、その際、ディストリビューターはできる限り対応しているとのことであ
る。よって、一定規模を販売可能な小売店に対して日本商品を売り込むことは、ディスト
リビューターに売り込むのと同様に重要である。
<ヒアリング結果①>スーパーマーケット A
スーパーマーケット A は、ウラジオストクに拠点を持つ小売店である。ウラジオストク
市内で最大のスーパーマーケットであり、食品売場面積 1,500 ㎡、約 2 万品目を取り扱う。
-商品の仕入れ方法は?
農産物については全てディストリビューターを通じて仕入れている。1 カ月間の販売計画
を立て、輸送期間、通関機関(約 1 週間)を考慮して、ディストリビューターに発注して
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いる。商品選定にあたっては、品質、パッケージ、価格、消費期限の残存日数、輸送方法
などが大きな決定要因となる。輸入品の産地指定は国レベルまでである。
-日本産品に対する評価および興味関心のある食材は?
当店は、日本を訪れた経験のあるお客様が多く、日本産品の品質の高さをよく知ってい
る。そのため、日本産の商品があれば、まず先に売れていく。
ウラジオストクで季節的に入手できない農産物として、タマネギやジャガイモがある。
日本からの農産品ではトマトやキュウリに興味がある。また、
期間は 2 週間~2 カ月くらい。
ゴーヤを入手したいと考えているが、対応できるディストリビューターがいないため、販
売できずにいる。
-新たに商品の取り扱い場合の方法は?
小売店側も他店との差別化を図り、消費者
に新たな提案を行うために、常に新しい商材
を探している。
消費者にあまり知られていない商品は、デ
ィストリビューターの提案を受けて、少量の
テスト販売から開始する。店内のインフォメ
ーション、レジ前のモニタ、惣菜コーナーで
新商品を利用したメニューを提供し食べ方
充実した総菜コーナー
を広めるなどの方法で、お客様に PR してい
る。
<ヒアリング結果②>スーパーマーケット B
スーパーマーケット B は、ノボシビルスクに拠点を持つ小売店である。ノボシビルスク
最大のスーパーマーケットチェーンであり、市内にスーパーマーケット 3 店舗、小規模な
小売店 9 店舗、中間層から高所得者層を狙ったハイパーマーケット 1 店舗と異なる業態の
店舗を展開している。
-商品の仕入れ方法は?
商品は全てディストリビューターを通じて仕入れている。果物などは週に 3~4 回の発注
を行い、ディストリビューターから翌日または翌々日に納品を受けている。野菜や果物に
ついては 7 日後には代金を支払っている。グローサリーは 45 日後に代金を支払う。
-日本産品に対する評価および興味関心のある食材は?
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中間層~高所得者層をターゲットとしたハ
イパーマーケットで販売するプレミア商品の
種類が不足している。日本産品は、そうした
店舗での販売が期待できる。品目としては、
①コメ、穀物類、②コーヒー(インスタント、
挽いた豆、生豆)
、③カボチャ、④タケノコ、
⑤寿司用のネタ、⑥ソース類(中国製のしょ
う油などと一線を画した質の良い商品を揃え
たい)
、⑦野菜缶詰、海産物缶詰、⑧ナッツ類
などがあげられる。
スーパーマーケット B 外観
-日本産品の販売拡大について重要と考える点は?
中国製品は商品 PR が少なくても、価格が安いので売れていく。日本製品の場合は、商品
PR が重要と考える。新商品を取り扱う場合、まず小売店とディストリビューターが試食や
割引販売などの新商品の PR 方法を検討する。そうした PR 方法の実現に向けた協力の依頼
がディストリビューターを通じて輸出者への要望として現れる。
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(3)レストラン
現在、ロシアでは日本食の店が至る所に見られる。モスクワで日本食を提供する店は、
600 店舗とも 2,000 店舗とも言われているが、日本で一般的に食べられているような日本食
を提供する店は極めて限られており、日本人の料理人を有しているのは、十数店舗にすぎ
ないといわれている。また、日本食といってもほとんどが寿司である。特に、サーモン、
チーズ、アボガドなどを巻き、表面にトビッコをあしらったロール巻が人気である。
ただし、日本食の店で日本の農産品が使われていることは稀であるとのこと。コメでも、
日本産よりも、日本米ではあるがコスト的に安い米国産のニシキ(Nishiki)やイタリア産
のヒノデ(Hinode)
、ロシアの南西部クラスノダール産のものが使われているとのことであ
る。
ウラジオストクのレストランにヒアリングしたところ、日本の農産物で興味があるもの
としては、季節によって入手が困難となるニンジン、タマネギ、ピーマンや、ロシアであ
まり流通していないシイタケ、キノコ類、ホウレンソウ、納豆などがあげられた。
モスクワのレストランでは、生魚、サツマイモ、レンコン、ナガイモ、サトイモ、トウ
モロコシなどがあげられた。
また、レストランを日本食材の PR の場として捉えて活用してはどうかというアイディア
が出された。特に、日本の果物を利用したデザート店は、日本から航空輸送をして果物を
運んだとしても、ビジネスプランが成立し得るのでないかとの意見が出された。
<ヒアリング結果①>レストラン A
2006 年にウラジオストクで寿司のデリバ
リーを始める。2008 年からレストランを開
始。地元ウラジオストクで人気のある寿司・
和食レストランである。
-商品の仕入れ方法は?
ディストリビューターに毎日発注してい
る。その日または翌日には納品される。支払
いは納品されたその時に行う。
レストラン A 外観
-日本産品に対する評価は?
和食といっても野菜などは地元産のもので対応可能である。コメも日本産を使いたいが、
少し高い。現在はアメリカ産の日本米「Nishiki」を使用している。たくわんは日本製また
は韓国製の商品を使い、寿司用がりは中国製を使っている。
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<ヒアリング結果②>レストラン B
日本人の料理人により日本食の創作料理な
どが提供されている。日本からの食材輸入に
取り組みたいと考えている。
-日本産品に対する評価は?
生鮮商品はリスクが高い。コストの面では、
シベリア地方くらいまでは良い勝負になるの
でないか。物流コストは、輸送量に応じて低
減される。商流が拡大すればコストの問題は
解決していくと考える。
レストラン B 外観
-日本産品の販売拡大について重要と考える点は?
現在、ロシア以外の国であるが、日本のレ
ストランが複数集まり日本食材を使ったメニ
ューづくりを行い、ブランドの発信を図ろう
と準備している。日本の情報が身近になれば、
高い売価も評価してもらえるようになると考
える。旅行会社とのコラボレーションで日本
を知ってもらうことも重要となるであろう。
ロシア人に人気のロール巻
3.販売促進活動の方法
ロシアのディストリビューターと交渉する際に、「販売面での協力」を依頼される場合が
多い。その具体的な内容についてヒアリングを通じて確認を行った。
前項にあるように、小売店が新しい商品を取り扱う場合、少量のテスト販売から始める
ことが一般的であり、その商品の特徴を消費者に伝え知名度を高めるため、小売店はディ
ストリビューターに対して効果的な販売促進活動を行うことを商品取扱開始の条件として
提示していることがある。ディストリビューターは単独での実施が難しいため、輸出者や
生産者に協力を求めているという構造になっている。
特に、日本の商品は他の商品と比べて高値であるので、こうした消費者への PR 活動の実
施を強く求められる傾向がある。
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販売促進活動として、一般的に捉えられているものとしては、以下のものがある。
①小売店内での試食販売
②小さいパッケージに入ったサンプル品の提供
③食べ方や商品の特徴をまとめた店内用 POP やチラシの作成
④割引した価格での納入による店頭での値引販売
⑤販売促進のための広告掲載
⑥アンテナショップでの知名度向上
①~⑤については、小売店を通じた販売促進活動である。内容については、日本の小売
店でも実施されているものもある。試食販売については、小売店内で実施する場合もある
が、小売店でチラシを配り、近くのレストランへ誘導して試食会を行うという方法もある
とのことである。⑥については、ウラジオストクでは日本商品を扱っているディトリビュ
ーターがアンテナショップを出店予定しており、島根県が共同で取組む予定であるとのこ
とである。
モスクワの日本食レストラン経営者からのアイディアとして、見本市や試食会はコスト
がかかるので、レストランを使ってはどうかという提案がなされた。また、レストラン間
で協力し、ある程度のロットの商品を仕入れ、地域 PR(例として九州フェアなど)を行う
という可能性も示された。
図表 4-5 販売促進活動の例
道路脇の広告
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店内 POP
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第5章
調査のまとめ
<基本事項を押さえれば不定期船利用の可能性は大きい>
20 年度の試験輸出で韓国経由の定期船を利用した場合、ウラジオストク港まで 13 日間を
要した。一方、今回の試験輸出では到着まで 3 日間と大幅な時間短縮が可能となった。
不定期船が予定どおり入港しなかった点やウラジオストク港で食品対応の港に入らなか
った点など課題も発見されたが、事前の確認により対応可能な内容である。
定期船の航路開設は、不定期船の貨物輸送実績による部分が大きい。産地から直接商品
を送るという将来を見据えると、不定期船の積極的な利用を検討することは地域戦略を考
える上で重要な視点となる。
<一次加工品の可能性>
一次加工品は植物検疫を求められることがなく、事前準備の書類の取得もスムーズであ
った。今回の試験輸出した商品が 15 カ月という長期保存が可能な商品であった点はヒアリ
ング先等で大変好意的に受け取られた。
ロシアの市場では、年間を通じて国産、輸入品による生鮮野菜供給のしくみが構築され
ており、また、缶詰、瓶詰、冷凍野菜のアイテム数も日本と同様に充実している。
そうした市場において日本の一次加工品が受け入れられるためには、加工をしても日本
の農産物の持つ品質を伝えることのできる商品であったり、他製品との差別化など販売の
工夫が重要である。
<シベリア鉄道沿線の都市への展開はディストリビューターの力が大きい>
今回、ヒアリング調査により、ディストリビューターによる小売店への積極的な営業活
動の様子やディストリビューター間の商品移動の状況を把握することができた。また、複
数の地域に拠点を持ち、広い販売網を持つディストリビューターも確認できた。現地調査
を通していえることは、ロシアにおける流通を考えた場合、ディストリビューターの役割
が大きい点である。日本産品輸出の拡大を図るためには、良いパートナーを持つことが重
要であり、輸出者がディストリビューターと協力して販売網を広げる姿勢が必要となる。
<国内貨物では鉄道と航空の料金差が小さい>
今回、鉄道貨物と航空貨物の運賃比較を行うことができたが、国際輸送などで見られる
ほど大きな価格差はなく、輸送時間を考慮した場合は、航空貨物の利用も視野に入れる必
要がある。航空貨物は、小ロットの商品を、鮮度を落とさずに、頻繁に送ることが想定さ
れる日本の産品には適した輸送法であるといえる。
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<競合する商品は市場に溢れる。その中でどのように消費者にアピールするかが重要>
現在のロシアには、欧州、中央アジア、中国などから様々な商品が輸入されており、価
格面で日本産品が優位に立つことは非常に難しい。しかしながら、健康ブームや安心・安
全の意識の高まりを背景とした日本産品に対するイメージの良さは、いずれのヒアリング
先からも聞くことができた。ロシアの消費者に日本産品が受け入れられるためには、「なぜ
高いのか」
「なぜ品質が良いのか」を消費者に丁寧に伝えていく姿勢が重要である。そのた
めには、日本での販売と同様に、ディストリビューターと協力し、販売促進活動も含めた
展開方針を検討していく必要がある。
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