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2013年度入試の出題傾向

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2013年度入試の出題傾向
特集 地理A・地理B
2013年度入試の出題傾向
学校法人 河合塾 講師 佐 藤 裕 治
1.はじめに
表1 地理B(本試)出題分野別一覧
大学入試における地理Bという教科の位置づけは、セ
自然環境
ンター試験で2012年度から地歴科と公民科の試験枠が統
てしまうことは地理のおもしろさを伝えることを困難に
してしまうことになる。入試問題を分析してみると、地
理という教科の特性を生かすことと、客観的に学力を評
地域調査
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
文化・衣食住
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
◎
地図・図法
○
地形図
○
○
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
人口・食料問題
○
○
○
○
○
○
都市・移住問題
○
○
環境・エネルギー問題
○
民族・領土問題
○
アジア
CIS
○
○
2007
2008
2009
2.センター試験の出題傾向
○
○
○
◎
●
◎
◎
○
●
○
●
○
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
北アメリカ
●
○
●
南アメリカ
○
オセアニア
日本
○
○
○
○
○
○
66.4
64.5
65.1
66.4
62.2
61.9
○
複合地域
倫理
2006
○
○
◎
世界史B
○
○
ヨーロッパ
政治・経済
○
村落と都市
アフリカ
50,000
倫理、政治・経済
2010
2011
2012
2013年
平均点
○
工業
地球的課題
日本史B
◎
エネルギー・鉱産資源
貿易・直接投資・援助
地誌
◎
○
交通・通信
100,000
3
○
国家・国家群
地理B
0
○
国際交流
200,000
150,000
○
気候
消費・余暇活動
図1 センター試験受験者数の推移(地歴公民科)
現代社会
◎
○
生活と文化
覚える。
人
250,000
◎
○
林業・水産業
価することの二つの課題に真剣に取り組んでいる良問が
少なくないことに、地理に関わるものとして強い共感を
◎
○
農業
の学習は教科本来の目的をゆがめてしまうと危惧する見
方もあるが、受験を通じて真剣に学習する機会から外れ
◎
○
資源と産業
立大学、とりわけ難関校とされる大学の文系の学部で、
ことから、地理の受験生は減少傾向にある。受験のため
◎
○
自然災害
科目として受験生が増加している(図1)
。しかし、私
日本史、世界史に比べ地理で受験できる大学が限られる
◎
地形
植生・土壌
合され、多くの国立大学で「地歴・公民」に4単位科目
を指定したことから、センター試験における理系の選択
2008 2009 2010 2011 2012 2013
●
注)◎大問のテーマ ●地誌の大問で取り上げられた地域 ○小問のテーマ・地域
日本史Bでは絵図を含め4問、世界史Bで3問が地図を使
用した設問で、例年よりページ数が増えたのと対照的であ
■工夫された図表が多いが分量はやや減少
る。しかし、受験生にとって初めて目にするような図表も
センター試験の地理Bの出題分野は、大問6題で、現行
多くみられた。第2問 問1では3か国の産業別就業者割
過程での入試が実施された2006年度以降は
「自然環境」、
「資
合の変化を示す三角グラフ、第2問 問6では四つの産業
源と産業」
、
「生活文化と都市村落」
、
「地域調査」
、
「現代世
について都道府県ごとの全就業者に占める割合と県庁所在
界の諸課題」
、
「地誌」の各分野から1題ずつ出題する形式
都市集中度を示した散布図、第6問 問1では数値標高デ
が定着している(表1)
。解答と素材の形式(表2)でみ
ータを使った鳥瞰図など、とくに工夫された図表が用いら
ると、図表など資料の分量がやや少なかったため、問題冊
れた。こうした受験生にとって目新しい図表は、判読のス
子のページ数も現行過程では最も少ない31ページであった。
キルが問われるため、読み取りに手間取る場合もある。し
今年度は日本史B、世界史Bでも地図を使った問題が多く、
かし、これらの問題の正答率は比較的高かったことから、
表2 過去10年間のセンター試験(地理B、地理Aは2013年度のみ)の解答形式と素材形式
地理B
2004年
2005年
正誤文判定
*1
14
17
組合せ解答
*1
12
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2013年
14 12(13)
15
15
15
6
13
10
13
10
13
19
11
12
12
18
11
13
14
18
18
18
22
20
27
26
24
23
19
20
(1)
(1)
(1)
(3)
(2)
(2)
(3)
(3)
(4)
(3)
(4)
図
(内地形図 )
*2
表
写真
6
2006年
3
1(3)
2007年
地理A
3
4
4
2
5
2(5)
6
1(3) 5(10)
7
4
0
1
0
0
31
32
33
35
34
38
40
35
35
31
30
マーク数
35
35
35
36
36
37
36
35
35
35
33
62.1
70.2
65.1
58.4
66.4
64.5
65.1
66.4
62.2
61.9
47.4
平均点
2(5)
6
ページ数*4
*3
1(4) 4(11)
注)図・表・写真の数は,問題中のそれぞれ番号の合計を示す。2006年以降は現行課程による入試。
*1 組合せ形式の正誤文判定を含み、括弧内はマーク数を示す。*2 地勢図を含む。*3 括弧内は写真の枚数を示す。*4 空白のページは含まない。
受験生にも図表判読の地理的技能はかなり身についてきて
いると考えられる。
地理Aは2単位教科でのセンター試験受験が限定されて
きたため、受験生が減少傾向にあるが、問題の構成は「地
理の基礎的事項」
、
「国際交流」
、
「地誌」
、
「現代世界の諸課
題」、「地域調査」
(地理Bと共通)の大問5題で定着して
いる。
図2 センター試験の理系・文系別得点分布
(河合塾センターリサーチによる)
(人) 【地理B
(文・理別)
】
12,000
文系
23,194
10,000 人数
平均点
63.2
標準偏差 14.8
8,000 理系
人数
95,314
62.1
6,000 平均点
標準偏差 13.6
4,000
理系
文系
2,000
■地理の標準偏差は過去10年間で最小
2013年度のセンター試験の地歴・公民の4単位教科の平
均点は目標とされる60点に近く、科目間の得点差もきわめ
て小さいという点でみごとな結果であった(表3参照)。
しかし、標準偏差と得点分布でみると地理は標準偏差が小
さく、とりわけ世界史、日本史との差が大きい。昨年度の
分析で、世界史B、日本史Bに比べて、地理Bは平均点付
0
の割合は小さく、90点を超える高得点者はきわめて少ない
0
10年間で最小であり、高得点をねらう地理の受験生にとっ
ては、今年度はさらに厳しい状況であった(図2参照)。
40
60
80
100
(点)
60
80
100
(点)
60
80
100
(点)
60
80
100
(点)
3,000
2,000
Bの標準偏差は拡大し、地理Bの標準偏差は13.91と過去
20
(人) 【日本史B
(文・理別)
】
10,000
文系
9,000
人数 112,194
8,000 平均点
63.4
7,000 標準偏差 19.3
理系
6,000 人数
18,085
5,000 平均点
64.1
標準偏差 18.5
4,000
近の受験生が多く、そこそこの点は取れるものの80点以上
と指摘したが、今年度は、昨年度に比べ世界史B、日本史
0
文系
理系
1,000
0
20
40
(人) 【世界史B
(文・理別)
】
6,000
文系
人数
65,635
5,000 平均点
64.1
標準偏差 21.4
4,000 理系
人数
8,220
62.4
3,000 平均点
標準偏差 20.8
2,000
文系
1,000
表3 地歴・公民のセンター試験平均点
2012年度
0
2013年度
平均点
標準偏差
平均点
標準偏差
世界史B
60.93
20.28
62.43
21.89
日本史B
67.92
18.48
62.13
19.48
地理B
62.16
14.40
61.88
13.91
倫理、政経
67.14
15.82
60.68
15.14
0
理系
20
40
(人) 【倫理、
政・経
(文・理別)
】
3,500
文系
3,000 人数
29,527
平均点
61.9
2,500 標準偏差 14.7
理系
2,000 人数
13,561
平均点
61.7
1,500 標準偏差 15.4
1,000
文系
500
0
理系
0
20
40
4
表4 再現答案による設問別正答率(河合塾調べ)
(2013年度センター試験地理B)
■センター試験の「難問」
表4は、
受験生の再現答案による設問別正答率(河合塾調べ)
正答率
設問 解答
番号 番号
正答率
設問 解答
番号 番号
正答率
1
85.1
13
57.5
25
46.8
2
45.5
14
66.2
26
41.0
第
3
72.3
第
15
38.8
27
61.4
1
4
59.8
3
16
40.4
28
63.1
問
5
90.0
問
17
73.1
29
88.4
占めていたことがわかる(表6)
。出題者は、問題文で鳴門市
6
36.4
18
59.8
小計
60.1
が天日乾燥による製塩が盛んであったこと、観測点のある徳島
小計
67.8
小計
55.4
30
84.9
市は徳島県東部(鳴門市に近い)にあることなど、ていねいな
7
78.7
19
64.9
31
11.9
伏線を張っているため、徳島市が冬季でも日照時間が長いこと
8
56.6
20
55.1
32
81.5
9
88.0
21
67.9
6
33
80.4
10
58.5
4
22
92.1
問
34
84.9
11
61.5
問
23
80.9
35
61.0
づいておらず、日照時間は日の出から日の入りまでの可照時間
12
68.2
24
65.6
小計
66.7
(昼の時間)の影響がより大きいと理解していたと思われる。
小計
68.6
小計
71.1
合計
64.8
を示したもので、正答率が40%を下まわる設問が35問中3問あ
設問 解答
番号 番号
った。最も正答率が低かったのが第6問 問2(例題1)である。
徳島市、会津若松市、宮古島市の月別日照時間を示すグラフの
判定を求めるこの問題の正答率は再現答案のデータでは11.9%
であった(表5)
。解答番号ごとのマーク率をみると、冬季の
日照時間が長いアを宮古島市と判定した受験生が3/4以上を
は自明であると考えたと思われる。また、会津若松市と宮古島
市の違いは、6月、7月の日照時間にあり、梅雨明けが早く、
6月、7月の日照時間が長いほうを宮古島市と判断できると考
えたと想像する。しかし、受験生の多くは問題文の伏線には気
問題作成部会の見解(大学入試センター HP)によれば、「中
学校での日本地誌に関わる知識の定着が予想よりも大幅に低か
ったこと」が正答率の低い原因と分析しているが、むしろ文章
の読解力の低さと日照時間に関する基本的知識の欠
如のため正答率がきわめて低かったと考えるほうが
妥当であろう。
表5 第6問 問2 例題1のマーク率
①
②
③
④
⑤
⑥
上位層
1.8
2.1
7.2
23.4
15.3
50.2
中位層
1.8
2.8
5.3
25.4
9.7
54.6
下位層
4.2
6.2
6.6
25.8
8.7
48.2
全体
2.3
3.1
6.3
24.6
11.9
51.5
注)上位層 偏差値 55.0 以上 注)赤字が正解。
中位層 54.9 ~ 45.0
下位層 44.9 以下
表6 第6問 問2 例題1各都市のマーク率
ア
イ
ウ
5.4
30.9
63.4
徳島市
18.2
53.8
27.7
宮古島市
76.4
15.0
8.6
会津若松市
次いで正答率が36.4%と低い第1問 問6(例題
2)では、オーストラリアのグレートアーテジアン
盆地の「被圧地下水を利用した大規模灌漑農業や、
ウシやヒツジの放牧」を、正しいと判断した受験生
(①・③をマーク)が全体で6割近くを占め、下位層
5
第
2
問
第
第
5
問
第
注)サンプル数は3129人(現役生2478人、高卒生1035人)
。
サンプルの平均点は65.1で、地理B受験生全体の平均点(61.9)より3.2点高い。
大問ごとの小計、合計は得点率を示す。
例題1 センター試験 地理B 本試 第6問 問2
例題2 センター試験 地理B 本試 第1問 問6
では7割が正しいと判断していた(表7)
。
「ウシや
ヒツジの放牧」の部分は正しいだけに、塩分濃度の
高い地下水が「灌漑農業」には適さないことまでは
把握できていなかったと思われる。
表7 第1問 問6 例題2のマーク率
①
②
③
④
上位層
32.1
45.6
17.8
4.6
中位層
40.1
31.6
26.1
3.0
下位層
35.8
25.5
34.3
4.2
全体
35.9
36.4
23.7
3.9
■得点差がついた問題
例題3 センター試験 地理B 本試 第5問 問2
学力ランク別でみたときに、上位層と中位層で最
も差が大きかった問題が第5問 問2(例題3)で、
あり、上位層と中位層では正答率に28.2ポイントの
差がみられた(表8)が、上位層を細かくみるとS
ラ ン ク( 偏 差 値65.0以 上 ) と A ラ ン ク( 同64.9〜
60.0)との間での正答率の差が22.7ポイントで、と
くに大きい。マーク率をみると多くの受験生が確信
をもって判定できたのは、
「アはアメリカ合衆国で
はない」ことだけと思われる。下位層では63.2%、
中位層でも48.5%がアをサウジアラビアと判定して
おり、これは経済的な状況よりもイスラームにおけ
る女性の社会的地位の低さが喫煙率にあらわれてい
ると判断したのではないかと思われる。また、下位
層・中位層ではアメリカ合衆国をイと判断したもの
が最も多かった(表9)が、これはアメリカ合衆国
における飽食による肥満の問題と糖尿病が結びつい
てイメージされていることではないかと思われる。
上位層は、これらの個々の指標に関するイメージを
統合して国を判定しており、単一の指標だけで判断
したと思われる中・下位層との違いが明確にあらわ
れている。
一方、中位層と下位層で差が大きかったのが第1
表8 第5問 問2 例題3のマーク率
問 問3(問題省略)である。この問題はアメリカ
合衆国の西岸・内陸・東岸の月平均気温のグラフの
判定を求めており、
「年較差の小さな西岸、冬季に
とくに低温になり年較差も大きな内陸」を根拠に判
定できる基本点な問題である。上位層は86.2%、中
上位層
中位層
験生に認識させることが重要と思われる。
③
④
⑤
⑥
13.8
19.2
7.7
16.3
60.1
31.9
18.2
32.2
0.6
1.1
17.5
28.6
17.5
34.6
全体
0.3
0.3
16.6
15.0
41.0
26.7
表9 第5問 問2 例題3各都市のマーク率
の正答率は42.9%にとどまった。センター試験の自
きちんとできるだけで、確実に得点できることを受
②
0.0
0.1
下位層
位層は71.5%と高い正答率を示すのに対し、下位層
然環境に関する問題は、このような基本的な理解が
①
0.3
0.3
アメリカ合衆国
インド
上位層
ア
イ
ウ
0.3 21.5 78.3
73.9 18.5
中位層
ア
イ
ウ
0.4 35.5 64.1
下位層
ア
イ
ウ
1.7 46.1 52.1
7.7 51.1 32.5 16.4 35.0 35.2 29.7
サウジアラビア 25.9 60.1 14.1 48.5 32.0 19.5 63.2 18.6 18.1
6
表10 地形図から自然災害を判読する問題例
3.国公立二次・私大の出題傾向
■地理的スキル①−地形図から自然災害を判読
大学
1984年の長野県西部地震によって生じた御嶽山南麓の谷頭で生じた大規
東京大
昨年度は2011年の東北地方太平洋沖地震(東日
京都大
多くみられた(表10参照)
。地形図を用いて自然
災害の前後のようすを判読させる問題は、東京大
(例題4)や京都大(例題5)で出題された。東
京大の問題では土砂崩れにともなう地形の変化だ
けでなく、
「風景」の変化を問う点が目新しい。
京都大で取り上げられた雲仙普賢岳の火山活動に
伴う地形変化はこれまでにも、センター試験地理
B(1999年追試)
、筑波大(2007年)などでも出
題されている。日本女子大の問題は、
「東日本大
震災津波詳細地図」
(原口強・岩松暉著、古今書院、
2011年)を用いて、津波被害の状況を判読させて
いる。佛教大の問題は、ハザードマップと地形図
を対応させ、ハザードマップに示された浸水深を
地形図から判定させるという工夫がみられる。自
然災害と地形図に関する出題はこれまでもみられ
たが、ここで例にあげた問題は、単なる地図記号
や等高線の判定だけでなく、自然災害のリスクを
予測するなど地形図の活用を意欲的に示そうとし
ている点で、新課程で求められる地理的技能を入
試問題でどう評価するかの試みの例とみることが
できる。
例題5 京都大 ⅠB
7
模土砂崩れ(伝上崩れ)の前後の地形図を示し、土砂崩れ前後の風景の
変化、多量の土砂が流下したようす、多量の土砂が一度に崩れることに
伴う下流部での災害の可能性を論述させる。(例題4)
本大震災)に関連した出題がかなりみられたが、
今年度も、震災に限らず自然災害に関する問題は
内容
日本女子大
(人間社会学部)
佛教大
(3/1実施)
1991年の雲仙普賢岳の噴火活動の前後の地形図を示し、この地域で生じ
た地形変化、地図中の小学校が受けた災害について論述させる。
(例題5)
2011年の東北地方太平洋沖地震による津波被害を受けた岩手県大槌町の
中心部の地形図に、津波による浸水の範囲を網かけで示し、図から読み
取れる津波被害の状況を述べた文章の正誤を判定させる。
信濃川下流部の新旧地形図から読み取れる事柄についての設問に加え、
新潟市が作成した当該地域のハザードマップを示し、洪水時の浸水深の
最も深い地域や避難所に指定されている施設を判読させる。
例題4 東京大 第1問 設問B
■地理的スキル②−統計地図やグラフの作成・判読
表11 主題図やグラフの作成や判読に関する問題例
大学
入試問題で地理的技能をどう判定するかは、さまざ
まなグラフや統計地図に関してもこれから重要な課題
名古屋大
となってくると思われる。こうした試みは、これまで
を問う問題がみられる(表11参照)
。名古屋大の問題
二段階の問題形式をとっている。この形式はグラフを
作成するスキルと、グラフから各指標の関係性を読み
取る能力を同時にみることができる点から、今後国公
立二次試験などで出題が増える可能性がある。散布図
をはじめとした「統計資料のグラフ化・グラフの読み
取り方」は新課程の教科書でも詳しく取り上げられて
の関係を示すグラフ(散布図)を完成させ、そのグラフから読み取れ
都心と郊外を結ぶ鉄道を含む1辺10kmの正方形の範囲を東西・南北そ
北海道大
れぞれ10等分したメッシュマップを示し、人口、高齢者数をそれぞれ
5段階で塗り分けた階級区分図から読み取れることを述べた文章の正
誤を判定する。(例題7)
(例題6参照)は、まず散布図を作成させ、そのうえ
でその完成したグラフから傾向を読み取らせるという
タウンの統計表をもとに、「計画時に予定された人口」と「敷地面積」
ることを説明させる。(例題6)
はセンター試験では多くみられたが、国公立二次・私
大の問題でも描図問題や論述問題などで、地理的技能
内容
1960年代に建設された日本、イギリス、アメリカ合衆国の五つのニュー
コーヒー豆の一般市場価格とフェアトレード市場価格の推移を示すグ
一橋大
ラフから、フェアトレードが市場を通じた取引にどのようなルールを
設け、それによって生産者がどのような利益を得るかを説明させる。
法政大
(文学部)
1950年、1980年、2008年の3時点におけるアメリカ合衆国、韓国、タイ、
日本、フランスの産業別人口構成の推移を示した三角グラフから国を
判定させる。
図3 『新詳地理B』p.113
技能をみがく 統計資料のグラフ化・グラフの読み取り方 散布図
いる(帝国書院『新詳地理B』p.112~113 図3)
。
北海道大の問題(例題7)は設問の内容は図の読み
取りの文章の正誤の判定で、センター試験でみられる
形式ではあるが、近年の北海道大の試験問題はフルカ
ラー印刷されており、この問題のメッシュマップも五
つの階級があざやかな色彩で塗り分けられている。教
科書の図版がカラーになったにもかかわらず、センタ
ー試験をはじめほとんどの入試問題がモノクロ印刷さ
れ、3色ないし4色刷りの地形図もモノクロで、河川
も等高線も判断がつきにくい地図を示して、
「読図せよ」
という問題は地図嫌い、地理嫌いを生みかねないが、
例題6 名古屋大 問題Ⅲ 問2
カラー刷りの入試問題が増えてくると、こうした主題
図に関する問題はさらに多様化することが予想される。
例題7 北海道大 1 問8(原問はカラー刷り)
8
4.論述問題の形式とテーマ
の長文論述中心であったが、最近は100字足らずの比較的
短い論述中心に変わった。各大学とも全体として、要点を
表12ー1・表12ー2・表13は、2013年度の国公立大の二
絞ったコンパクトな解答を求める傾向がみられ、総字数は
次試験における論述問題の設問内容と解答の分量(一部解
あまり変化していないため、論述問題の数は10〜15問程度
答欄の大きさや解答すべき内容から推測)を示したもので
と比較的多くなっている。
ある。問題全体に占める論述問題の割合や総字数、1問あ
論述問題の内容は、主題図や統計資料などの判読とその
たりの解答分量は大学によって異なり、筑波大や大阪大の
理由や要因、背景などを答えさせる形式が非常に多い。し
ように1問あたり200〜400字で答えさせる大学もあるが、
たがって、単なる知識ではなく論理的な説明ができるかが
北海道大、京都大は40〜50字程度の短い論述が中心で、東
ポイントとなるが、『新詳 資料地理の研究』は図表が豊富
京大も60字程度の問題が多い。一橋大はかつて200〜400字
で、簡潔な解説は論述問題の解答の手本として活用できる。
表12ー1 国立大二次の論述問題の分量とテーマ:その1(2013年度)
1題あたり
論述
総字数
平均字数
問題数
テーマ(設問内容)
■立体図において集落が立地している地形の名称と特徴。■地勢図読図(カルデラ湖の成因、地形的特徴)。■地形図読図
(集
落立地の自然条件、イチゴ栽培地域の地形や標高の特徴)。■自動車工業のノックダウン方式の説明。■日本の自動車メー
北海道大学
15
800字
55字
程度
20~100
カーの生産台数の下落の原因となったタイの自然災害の説明。■バイオエタノール燃料の大量使用に対する批判内容。
■ハイブリッドカーの長所。■レアメタルの一般的特徴。■アフリカの国境に地形や民族構成を反映しない単純な直線が
多い理由。■女性の労働力率を高める政策を実施すると合計特殊出生率が上昇する理由。■中国系住民が東南アジアの各
地に移住し定着するようになった歴史的要因。■「緑の革命」の目的と問題点。■輸出加工区で取られる企業に対する具
筑波大学
(地球学類)
3
900字
300字
筑波大学
(地球学類以外)
4
1600字
400字
体的な優遇措置の説明。
■地形図読図(地形と集落立地、土地利用との関係、およびそれから推測されるこの地域の低地の成り立ち)
。■ヨーロッ
パの5地点の雨温図の判定とその理由。■20世紀後半の発展途上国における大都市の変容。
■新旧地形図読図(地形に関連づけた土地利用の変化の説明)。■ヨーロッパの5地点の雨温図の判定とその理由。■人
口転換モデル図をもとにした第1段階から第4段階までの人口増減の特徴と変化の要因。■中国における農業の地域的特
徴の説明。
■風化作用の強度分布図をもとに、二つの緯度帯で風化作用が弱い理由。■風化作用の激しい地域が、植物の生育に好ま
しい条件を備えていることの説明。■風化作用が極めて活発なガンジス・ブラマプトラ川下流域やジャワ島で土壌の更新
をもたらす自然的要因。■地形図読図(土砂崩れ前後の風景の変化、多量の土砂が流下したようす、多量の土砂が一度に
崩れることに伴う下流部での災害の可能性)。■長大な山脈が海岸に近い地域を走る二つの地域(アンデス山脈中部、ア
東京大学
15
930字
62字
30〜90
トラス山脈)で砂漠気候がみられる側とその要因。■インド南西部の降雨が集中する時期とその理由。■農産物の適地適
作による大規模生産と国際取引がもたらす問題点。■インドネシアで漁獲量に対する養殖業生産量の割合が高い理由。
■水産資源を管理するための国際的取り組みが必要とされる理由。■アメリカ合衆国の都市の年齢別人口構成比率で、30
〜44歳の年齢層とその子の世代である0〜14歳の年齢層の間にほとんど差がない社会的理由。■韓国の都市では日本の都
市と比べて高齢化が進んでいない理由。■日本の電気機械工業都市(日立)で1985〜90年の時期に人口減少が始まった理
由。■日本の自動車工業都市(豊田)を含む地域で国や自治体が工業の業種の幅を拡げる政策を進めている理由。
■日本列島が冬に寒い理由。■イギリスやフランスで河口部にデルタが発達しない理由。■黒部川でデルタが形成されな
東京学芸大学
8
1000字
125字
程度
60〜400
い理由。■農業の生産性に関する三つの指標(農業従事者1人あたり農地面積、単位面積あたり肥料使用量、単位面積あ
たり穀物収穫量)に基づいたアルゼンチン、日本、バングラデシュの農業の特徴や差異。■アメリカ合衆国内におけるト
ウモロコシの用途の変化とその背景。■1980年代半ば以降、東南アジアに多くの日本企業が進出した要因。■1950年代以
降の都市人口の推移の特徴とその地域的傾向や差異。■都市人口の変化にともない多くの都市内部で生じている問題。
■コーヒー豆、カカオ豆、茶、バナナ等の一次産品の生産者が、「前世紀前半に定着した産業構造の負の遺産」を象徴す
る存在であったことの説明。■コーヒー豆の一般市場価格とフェアトレード市場価格の推移を示すグラフから、フェアト
レードが市場を通じた取引にどのようなルールを設け、それによって生産者がどのような利益を得るかを説明。■イギリ
一橋大学
9
775字
86字
50〜150
スにおける消費者行動の推移を示す統計資料から、フェアトレード商品の商品自体の品質だけでない付加価値について説
明。■交通手段の発達が国際観光に及ぼした影響。■国別国際観光収入や世界遺産の地域別分布統計から、
発展途上国(貧
しい国)が国際観光業の恩恵を受けていないとする主張の根拠。■国別国際観光収入や世界遺産の地域別分布統計のデー
タだけでは、発展途上国(貧しい国)が観光業の恩恵を受けてこなかったと結論づけることができない理由。■自然保護
と観光振興を両立させることの難しさの説明。■世界遺産に登録された遺跡(アンコールワット)が2004年まで危機にさ
らされていた理由。■日露戦争の結果、奉天の満鉄附属地(駅前)に放射直交路型の街路形態が採用された理由。
■地形図(浜松)読図(台地に茶畑が分布する理由、佐鳴湖の富栄養化の理由、海岸平野の地形的特徴と集落立地の関連性、
新潟大学
10
440〜
54字
640字
20〜140
海食崖の成因)。■三重県の熊野灘沿岸部で南海トラフ周辺で発生する地震にともなう津波被害が予想される理由。■地
図上の地域(ユーラン半島)の過去から現在の自然環境に留意した農牧業の特徴。■ECの共通農業政策について、導入
から1980年代までの経緯の説明。■北アメリカ地域の将来推計人口が増加傾向にある理由。■日本の人口の高齢化が進ん
だ理由。■アジア地域で、日本のような高齢化が進んだ国が存在するにもかかわらず、今後の人口増加が見込まれる背景。
■回帰線付近に大砂漠が形成される理由。■緯線と経線の設定方法の違い。■サモアが2011年12月にそれまで国の西側に
福井大学
8
800字
程度
100字
設定されていた日付変更線を東側に移した背景。■インターネットの登場が世界にもたらした影響。■インドを中心とす
60〜160 る南アジアの農業の地域的特徴(モンスーンの影響に触れながら)。■植民地時代に南アジアから輸出された農産物を例に、
南アジア以外の地域に与えた影響。■南アジアにおける言語と宗教の分布。
9
表12ー2 国立大二次の論述問題の分量とテーマ:その2(2013年度)
1題あたり
論述
総字数
平均字数
問題数
テーマ(設問内容)
■地形図(北海道のある地域)読図(堤防にはさまれた部分の土地利用、三日月湖の判定と形成過程、「越中組」
・
「大和」
などの地名の理由)。■地形輪廻の説明。■二枚の地形図の南北の位置関係とその判定理由。■「フェーン」と「やませ」
愛知教育大学
15
1200字
80字
程度
15〜300
の説明。■ジェット気流と交通の関わりの説明。■寒流が陸地を砂漠にする原因の説明。■アフリカの多くの国で宗主国
の言語が公用語になっている理由。■アフリカの人口問題と経済問題の指摘。■日本からアジア諸国への技術貿易が黒字
である理由とそれによる日本への影響。■(タイにおける最低賃金の引き上げを報じた新聞記事をもとに)タイの賃金引
き上げに対する日系企業の対応の予想。■サンベルトの製造業を例に、アメリカ合衆国の技術輸出額が多い理由。■イギ
リスの工業地域のうち、バーミンガムを中心とするミッドランド地方で鉄鋼業が早くから発達した理由。
■地図に大西洋中央海嶺を記入し、この海嶺で生じている自然現象を説明。■地図にモンスーンアジアの1月の気候に影
響を与える高気圧の位置と日本、インド付近の風向を記入し、記入した情報をもとに気候の特徴を説明。■図中の地域(カ
ナダ内陸部)に多くの湖が分布する理由。■外来河川の説明。■1970年時点の日本におけるアルミニウム工場の分布図を
もとに、アルミニウム工場立地の一般的特徴を説明。■1980年時点の日本における銑鋼一貫工場を創業年代ごとに分類し
1000字
名古屋大学
9
程度
た分布図をもとに、日本の製鉄所の立地の変化を説明。■1930年頃にアメリカ合衆国で計画的に建設された市街地の地図
100字
をもとに、人々の交通と消費行動に関連づけながら都市計画上の特徴を説明。■1960年代に建設された日本、イギリス、
30〜10
アメリカ合衆国の五つのニュータウンの統計表をもとに、
「計画時に予定された人口」と「敷地面積」の関係を示すグラフ
(散
布図)を完成させ、そのグラフから読み取れることを説明。■統計表によるニュータウンの判定とその理由。■1970年代
に20歳代後半から30歳代前半を中心に入居した日本のニュータウンで近年顕著となっている問題。■1950年に人口上位5
位までの大都市圏(ニューヨーク、東京、ロンドン、パリ、モスクワ)に人口が集中した共通の要因。■1950〜1980年の
30年間に高い人口増加率を示した大都市圏に共通する特徴と、1980年代ごろにそれらの大都市圏が抱えていた問題。
■日本の地熱発電量とデンマークの風力発電量の変遷を示したグラフをもとに、両国で発電の変遷が異なっている理由を
説明。■新旧地形図(普賢岳)読図(この地域で生じた地形変化、地図中の小学校が受けた災害)。■牛の肉や骨・乳以
外の三つの用途。■羊がエクメーネの拡大に果たした役割。■アメリカ合衆国における牛と豚の飼育方法とその生産物の
京都大学
16
700字
44字
輸送技術と輸送先の特徴。■都道府県別製造品出荷額分布図(食料品、印刷)をもとに出荷額の多い地域の特徴。■製品
20〜80
の輸出額・輸入額の推移を示したグラフをもとに、この製造業(電気機械器具)の近年の動向(海外諸国との競争、技術
的課題)の説明。■ラテンアメリカ5か国の貿易統計に示された国(ジャマイカ)の他の4か国に見られない文化的特徴
(歴史・住民・言語)。■メキシコのNAFTA成立を契機とした輸出向け工業の立地の変化。■ブラジルで日本への出稼ぎ
大阪大学
5
1000字
200字
100〜300
が1990年代に増加した背景。
■東京とロンドンの気候の特徴を二つ以上の気候要素と二つ以上の気候因子を用いて説明。■気候表によるケッペンの
気候区分の判定とその理由。■大気の大循環模式図による恒常風の名称の判定と風向の理由。■EUの加盟国拡大の特色。
■EUの共通農業政策の概要と問題点。
■新旧地形図読図(海岸線の特徴とその変化、交通路の分布とその変化、集落の分布とその変化)。■地形図から読み取
れる地域変貌の理由の調査方法。■日付変更線が180度の経線から外れている海域の例とその理由。■ニュージーランド
和歌山大学
12
(不明) (不明) の農牧業の自然環境に対応した地域的違い。■太平洋北西部が世界最大の漁場となっている理由。■OECDの目的。■縫
製業の立地が大都市を指向するものと労働費を指向するものとに分かれる理由。■ロンドンのインナーシティに取り残さ
れた住民の特徴。■ドックランズに倉庫街が立地していた要因。■パークアンドライド方式の説明。
表13 公立大二次の論述問題の分量とテーマ(2013年度)
1題あたり
論述
総字数
平均字数
問題数
高崎経済大学
(前期)
7
高崎経済大学
(中期)
3
首都大学東京
(文系)
700字
100字
程度
前後
テーマ(設問内容)
■広大な土地で大型農業機械を利用した大規模生産(企業的穀物農業)の土地生産性と労働生産性。■プランテーション
農業の問題点。■1980年代半ば以降の円高によって工場の海外移転が促進された要因。■EUが発足するまでの過程。
(推測) (推測) ■EUの共通農業政策の内容。■ヨーロッパ諸国における経済格差や移民に関する問題。
300字
100字
程度
前後
(推測) (推測)
1200字
11
程度
(推測)
100字
前後
■用語の説明(華僑、ASEAN:東南アジア)。■アフリカのプランテーション農業の特徴とその問題点。
■新旧地形図(勇払平野ウトナイ湖周辺)の読図(ウトナイ湖の成因、湖の面積の求め方、湖の水位の変化、湖周辺の湿
地の植生と土壌の特徴、土地利用の変化)。■ウトナイ湖周辺の自然環境の変化に影響を与えた社会的、経済的背景。
■1984年から1999年にかけてASEANの加盟国が増加した経緯と時代背景。■現在のASEAN加盟国内で生じている民族
20〜300 問題とその背景。■3都市の雨温図の判定とその判断理由。■ハブ空港を活用した航空輸送の特徴と利点。■航空輸送に
(推測) よる国際旅客数および都市圏人口からみた世界の上位10都市の順位の違いとその理由。■日本、アメリカ合衆国、ドイツ
の輸送機関別国内旅客輸送量の割合からみた各国の輸送機関別構成の特徴とその地理的背景。
■地形図(室戸岬周辺)読図(図中の散策ルートで観察できる土地利用、図中の高台の地形の成因、海岸沿いと高台の集
落形態の特徴とその理由、図中の集落の町並み景観写真をもとにその特徴と気候条件との関係)。■カナダの地図中の凡
首都大学東京
(理系)
11
1200字
100字
例(湖沼)の成因。■地図中の植生(タイガ)がカナダの産業、貿易、環境に与える影響。■多文化主義を特徴づける2
程度
前後
枚の景観写真から読み取れるカナダの多文化社会の特徴。■カナダとアメリカ合衆国の間の貿易統計から読み取れる両国
(推測) (推測) の経済的関係。■マングローブ林が成立する自然環境。■マングローブ林の面積がバングラデシュで増加、ベトナムで減
少した原因。■マングローブ林が自然災害に対して果たしてきた役割。■地球温暖化が進行した場合のマングローブ林生
育域が受ける影響。
本コーナーは、学校法人 河合塾様にご協力いただきました。
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