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看板の照明

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看板の照明
看 板の照 明
1 看板の照明の考え方
2 照明器具の取り付け位置の設定
照明器具を看板の上側に取り付けるか、
下側に取り付けるかにより、
屋外広告は一般に30∼120m離れた場所の動いている人々が見る
ものとして計画されることが多いため、単純かつ明快であることが求めら
れます。一般的に、文字数が少ないほど、絵が大きいほど、色彩がはっき
次の長短所がありますので、
これを考慮して取り付け位置を決定する必
要があります。
(a)看板の上側に照明器具を取り付ける場合
りしているほど、背景がシンプルであるほど、
そして広告物の特徴が明快
(イ)照明器具が広告を隠すことはありません。
であるほど、広告の効果が発揮されます。
(ロ)反射グレアが不快感を与えやすくなります。
屋外広告の照明・サインにおいても設置地域の条例やガイドラインな
どを参照し、制限
(色、明るさなど)
がある場合に対し配慮することが必
要となります。関連する屋外広告物法は、屋外広告物行政における規
(ハ)昼間に照明器具が看板に影をつくることがあります。
(ニ)照明器具の保守が困難になる場合があります。
(b)看板の下側に照明器具を取り付ける場合
制の基準を定めており、実際の屋外広告物規制は、地方公共団体
(都
(イ)照明器具に広告が隠れることがあります。
道府県、政令市、中核市、景観行政団体である政令市及び中核市以
(ロ)反射グレアが最小限に抑えられます。
外の市町村)
が屋外広告物法に基づく条例、規則等を定めて独自に
(ハ)昼間に照明器具が看板に対して影をつくりません。
なお、
いずれの場合も交通に影響を与えないよう配慮が必要です。
行われています。
よって、地域差はありますが、屋外広告物法の運用に関するベース
1)
は、国土交通省が屋外広告物条例ガイドライン
(案)
として、地方公共
また、下部から上方に照射する方向に対しては特に、照射範囲外の
天空などへの漏れ光の抑制に配慮します。
団体への参考に、技術的助言として示されています。
以下は一般論として看板の照明に対する解説を示しますが、設置地
域の屋外広告における照明に関わる規制やガイドラインの実情に合わ
せた適用が必要です。
1 看板照明(外照式)の設計ポイント
屋外広告の中で、
塗り看板は自発光の電気サインなどと比較して、
絵
や表示の塗り替えなどの自由度が高く、
自発光表示に伴う昼間の電力
使用が不要なメリッ
トがあります。
この看板の夜間における見え方と宣伝
効果をより効果的に生かすために外照式の看板照明が行われます。
(a)適切な明るさであること
照明された看板の見え方は、同じ明るさの看板でも設置場所の周辺
条件によって異なります。看板の背景や周辺の明るさとコントラストをつ
けて、看板を目立たせるような明るさにしなければなりません。
また、同時に看板面の反射を考慮しつつ、環境に配慮することが必
要です。一般的な看板の表面の推奨照度を表1に示します。
表1 一般的な看板照明の推奨照度
看板表面の平均的な反射
高 い
低 い
推 奨 照 度
周辺が明るい場合
周辺が暗い場合
500 lx
200 lx
1000 lx
500 lx
(b)明るさのムラが少ないこと
広告看板は、建築物などの立体的なものの投光照明とは異なり、平
坦なものであるため、看板表面に明るさのムラがあると、宣伝効果を失
うばかりでなく、美観をも損なうことになります。看板全体を均一に照明
することが理想ではありますが、最大照度と最小照度の比
(G)
の望まし
い値は次のようになります。
G≦4
(c)照明器具の取り付け位置および照射方向が適切であること
光源からの直射光や反射光が、
看板を見る人に対してグレアを与えない
ようにしなければなりません。
そのための器具取り付け位置および照射方
向を、
照明器具の配光を考慮した上で適切なものとする必要があります。
(d)照明器具が看板の視認性を損なわないこと
照明器具は、看板を見る際にじゃまにならないような位置に取り付け
なければなりません。
また、昼間に看板の視認性を損なうような影ができ
ないように配慮する必要があります。
(e)照明器具の保守・点検が容易であること
照明器具が必要最小限の保守しか必要とせず、保守・点検の費用
を抑えるように配慮する必要があります。
また、保守作業は設計照度を
満足するように適切に行われなければなりません。
図1 光源
(器具)
の配列方式
(推奨例)
看 板の照 明
3 光源の選定
看板の構造
看板照明の光源の選定においては、色の見え方も重要な要素であ
前面パネル
特 長
前面パネル
リウムランプ、蛍光ランプ、
LEDなどがあります。
内照式
に用いられる光源としては、水銀ランプ、
メタルハライドランプ、高圧ナト
看板取付面
るため、寿命・効率などに加え演色性を考慮することが大切です。一般
この中から、看板広告の色彩を考慮して、
その色彩を表現するために
適した光源を選択します。一般的には、暖色系の色彩が主たる対象の
正 面
場合には相関色温度の低い光色、寒色系の色彩が主たる対象の場
側面(断面)
発光面の明るさが非常に均一
直射式に比べて、低輝度
小・中型看板
(2.5m未満)
に効果的
前面にパネルがあり透過光で見せる
合には相関色温度の高い光色が適しています。
看板取付面
色の見え方を重視する場合は、平均演色評価数Raが80以上の光
源を目安とすると良いでしょう。
更に対応できるように、極端に相関色温度が高くも低くも無いニュート
ラルな光色を選定したり、比較的広い範囲で相関色温度の光色バリ
エーションを有するLEDや蛍光ランプを光源とし、後々の切り替えに対
応しやすいような工夫を、
あらかじめ組み込むこともよいでしょう。
自らは光を発せず、外部からの照明の明るさによって看板の表示を
ダブル配光型 LED 正面
側面(断面)
看板取付面
4 看板照明(自発光式)の設計ポイント
直射式
︵LED・ネオン管︶
また、看板の広告が頻繁にリニューアルされる場合は、
デザインの変
大型の看板にも対応しやすい
内照式に比べて、高輝度
中・大型看板
(1m以上推奨)
に効果的
見せる外照式の看板と異なり、看板自体に光源が組み込まれ、
自ら発
光するものは広義には自発光式の看板と言えます。
ネオン正面
自発光式の看板照明は古くはネオンサインとしてネオン管などの光源
側面(断面)
直接光を見せる
が看板に組み込まれ、光源自体の発光を直接見せる直射式の看板が
背面パネル
代表的ですが、
自発光の看板の中でも、半透明のガラスやプラスチック
看板の表示や表現スタイルは新規性やデザイン性を高めるため多
背照式
ライト形式の内照式看板などもあります。
看板取付面
板などの背面に光源を設置し、
その透過光によって表示を見せるバック
様に進化しており、分類のされ方や呼称のされ方も、
それに伴い多様で
す。自発光の看板として、LEDなどの発光を見せることで文字表示や
映像表示を行うディスプレイも広義には自発光式の看板の一種とされ
ることもあります。
また、
デジタルサイネージとも言われる、広告用の大型
液晶ディスプレイなどの表示板もバックライトを伴う自発光式の看板の
一種とされることもあります。加えて、内照式の看板の外側に自発光式
の光源を直視できるように一体化したような複合型など、多様な形態が
存在します。
ここでは、LEDを使用したチャンネル文字の看板を事例に述べていき
ます。
凹形状の溝形
(チャンネル)
の中に光源を配置し、文字サインを形成
したものであり、図2に自発光式のチャンネル文字看板の構造図を示し
ます。便宜上、前面に光透過パネルを有す内照式と、光源自体の発光
を見せる直射式、背照式に大別しています。
正面
側面(断面)
背面の仕上げや色の影響を受
ける
内照式に比べて、低輝度
小型看板
(1m未満)
に効果的
表示をシルエットで見せる
図2 自発光式のチャンネル文字看板の構造図
図2の文字看板の事例に対し、
さらに例えば、内照式と背照式の複
合型で文字前面の輝度を得ながら、背照式で文字の後方に異なる光
色を照射し、壁面から文字が浮いたような演出を行うなど、演出手法に
は広いバリエーションが考えられます。
また、LEDを背照式に用いる場合には、光源のイメージが直接、取り
付け外壁に写りこむことを抑制するためにも、背面にも保護用の背面
パネルの設置が望まれます。
内照式+背照式(複合型)
背面パネル
看板取付面
前面パネル
正面
側面(断面)
図3 内照式と背照式を組み合わせたチャンネル文字看板の構造図
看 板の照明
5 自発光式の文字看板の留意点
(a)照度と輝度との混用に対する留意点
旧来から内照式看板において、
その明るさを計測評価する場合、看
板表面に照度計を向けて、照度計の受光面が、
ほぼ接触するような位
置で照度を測定し、看板の明るさを照度
(lx)
で評価するという慣例も存
在します。
多くの他の照明分野では、
このような表面の明るさは、輝度計を使用
し輝度
(cd/m2)
で評価されるため、意図せず照度と輝度が混用される
ことがあり意思疎通には留意が必要です。
前記の測定法による照度を、輝度の目安とするに当たり、拡散板表
面の光の出射を、
およそ均等拡散する光放射源と仮定すると、前記照
度
(lx)
をπ
(約3.14)
で割ったものが輝度
(cd/m2)
相当の目安の値とな
ります。
看板パネル面輝度
(cd/m2)
相当 ≒ 均等拡散
(lx)÷ 3.14
現実的には看板表面は理想的に均等拡散する光放射源ではない
ため3.14より僅かに高めの数値がよりフィットすることもあります。
また、光源がLEDの場合などで発光面内の明暗のムラを少なくし、輝
度分布の均斉度が高い場合、平均輝度が低めの設定でも暗く感じに
くいという傾向もあります。
(b)高彩度な色光の輝度設定の留意点
白色光や僅かに色づいた光色と異なり、鮮やかな色光を内照式文
字看板に使用する場合、同一輝度では高彩度な光色の方が明るく
感じることがあります。
これは人間の目が有する特性で、
ヘルムホルツ・
コールラウシュ
(Helmholtz-Kohlrausch)
効果とよばれるものです。
例えば、
白色の内照式文字看板と、鮮やかな青色の内照式文字看
板が隣接して、同一輝度で配置されていると、鮮やかな青色の文字の
方が明るく見えるというような現象です。
高彩度な色光を使用する場合、
白色光と類似の明るさの感覚を得よ
うとするなら、
より輝度を減じて使用する必要があります。
また、表面をカラーパネルとし、昼間に光源が非点灯な状態でもカ
ラー表現ができる内照式文字看板において、表面色に類似した有色
LEDを光源として使用されることがあります。
この場合、有色LED固有
の色再現となるため、例えば企業のロゴなどのように非常に厳密に色
彩が規定されている場合には色の確認が望まれます。
(c)光源の相関色温度に対する留意点
旧来は内照式看板の光源には蛍光ランプが多く用いられていました。
そして、
前面プラスチックパネルの白色部が、
黄ばんだ印象になることを
抑制し、
白さを強調するため、
これらに使用される蛍光ランプは一般的に
使用される蛍光ランプの昼光色6500K近傍より高い相関色温度、
例
えば8000K近傍などの光色が採用されていたことも多くあります。
また、使用する光源が前面プラスチックパネルを透過する際に、短波
長側の光が減衰する割合が高い傾向があるため、一般的には使用す
る光源の直接的な相関色温度より、前面プラスチックパネルを透過し
た後の相関色温度は低下します。
よって、前面プラスチックパネルとLEDを使用した内照式看板と、先
のような、異なる光源を使用した看板類が混在し、対比して見られる場
合、僅かに黄ばんだ印象になる場合もあり、
このような場合は、
LEDの
相関色温度を高めのものに設定するとよいでしょう。
〔参考文献〕
1)
国土交通省:屋外広告物ガイドライン
(案)
(2006)
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