Comments
Description
Transcript
ワイヤレス USB 技術
特 集 SPECIAL REPORTS ワイヤレス USB 技術 Wireless USB Technology 松村 正文 中川 英之 小久保 隆 ■ MATSUMURA Masafumi ■ NAKAGAWA Hideyuki ■ KOKUBO Takashi 近年,機器間の接続に適した近距離のワイヤレス技術の普及が進んできており,その要求に応える無線通信技術の一つ として,UWB(Ultra Wide Band)が注目を集めつつある。UWB は短距離ではあるが,その超広帯域を生かして高速の 無線データ通信を可能とする。この技術の有力な応用先の一つとして,一般家庭にも普及している高速シリアルインタ フェースである USB(Universal Serial Bus)2.0 のワイヤレス化が検討されている。 東芝は,この技術に積極的に取り組むとともに,応用製品を開発していく。 Short-range wireless technologies suitable for connecting devices have become popular in recent years. Among these, ultra wide band (UWB) has been coming under the spotlight as a wireless technology that meets the needs of the times. Although UWB is a short-range data communications technology, it features very high-speed data communications due to the use of a wide frequency band. In addition, Universal Serial Bus (USB) 2.0, a high-speed serial cable that has become popular with consumers, is regarded as one of the leading applications of UWB technology. Toshiba will continue to actively pursue such wireless technologies and develop related application products. 1 まえがき WMAN (約50 km以内) 近年,機器間のネットワーク接続において,2.45 GHz 帯 Bluetooth 到達距離 や 5 GHz を使用する無線 LAN や,2.45 GHz 帯を使用する TM(注 1) の普及が進んできている。一方,ネットワー ク接続される機器はパソコン(PC)や携帯情報端末(PDA) WiMAX TM(注 2) Wi-Fi 약(注 3) WLAN (約100 m以内) だけでなくAV 機器の世界にも広がってきており,それに応 ZigBee じて無線通信技術に対する要求も,より多様化してきている。 10 k そ の 要 求 に 応 える 無 線 通 信 技 術 の 一 つとして ,U W B (Ultra Wide Band)が注目を集めつつある 。UWB は FCC ら注目を集めてきた無線通信技術であり,認可された帯域は 3.1 ∼ 10.6 GHz である。各無線方式の通信速度と到達距離 の関係を図1に示す。 100 k 1M 10 M 100 M 1G 通信速度(ビット/s) (1) (米国連邦通信委員会)によって 2002 年 2 月に認可されてか UWB BluetoothTM WPAN (約10 m以内) 図1.各ワイヤレス方式の通信速度と到達距離の関係−近距離のワイ ヤレス方式において,非常に低消費電力で低速なものから高速なものま で,用途により多くの規格が出てきている。 Relationship between throughput and distance for various wireless systems UWB は,その超広帯域を生かして短距離ではあるが高速 な無線データ通信を可能とする技術で,一般家庭にも普及 している高速シリアルインタフェースである USB(Universal Serial Bus)2.0 のワイヤレス化が,この技術の有力な応用と (2) して検討されている 。 ここでは,東芝が次世代の有力な無線通信アプリケーション として注目しているワイヤレス USB について,以下に述べる。 2 ワイヤレス USB とは ワイヤレス USB とは,UWB によって USB2.0 のワイヤレス 化を実現しようとするものである。USB IF(Implementers Forum)によって標準化作業が進められ,2005 年 5 月に最初 の仕様であるリビジョン 1.0 がリリースされた。ワイヤレス化 に 使 用 され る U W B 無 線 通 信 技 術 は ,W i M e d i a T M( 注 4 ) (注1) Bluetooth は,Bluetooth SIG, Inc.の商標。 (注2) WiMAX は,WiMAX Forum の商標。 A l l i a n c e で 標 準 化 作 業 が 行 わ れて い る M A C( M e d i a (3) (注3) , (注5) Wi-Fi,Wi-Fi Alliance は,米国 Wi-Fi Alliance の登録商標。 Access Control)層と物理層 を使用し,MAC 層の上層に (注4) WiMedia は,WiMedia Alliance の商標。 PAL(Protocol Adaptation Layer) を定義することによって, 36 東芝レビュー Vol.61 No.4(2006) の標準化時と同様,市場でデファクトを獲得した方式が,将 USBケーブル 来,事実上の標準方式となることが予想される。しかし USB IF や 1394 TA(Trade Association)は WiMedia UWB TM Alliance を支持することを,既に表明している。これにより事実上, USB IF に認定されるワイヤレス USB 製品は WiMedia HWA DWA (ホスト側) (デバイス側) TM Alliance が推す Multiband OFDM 方式を採用しなければ, 認定製品を市場にリリースすることができない。なお,この 方式では距離 3 m で 480 M ビット/s,10 m で 110 M ビット/s の通信速度で USB2.0 の無線化を実現する。 2.2 図2.ワイヤレス USB に関する典型的な応用例−ワイヤレス USB を 利用するときの標準的な応用例を示す。 Typical wireless USB application WiMedia WiMedia TM TM Alliance Alliance は,UWB を実装した機器の相互接 続性を保証するための業界標準を策定する団体である。無 (注 5) 線 LAN における Wi-Fi Alliance に相当する団体と考え ると理解しやすいであろう。具体的には,物理層や MAC 層 既存の USB2.0 規格との互換性を保ちつつワイヤレス化を だけではなく,ワイヤレス USB やワイヤレス 1394 などの上位 実現するものである。 層に対して同時に UWB 資源を使用できるようにするための ワイヤレス USB の典型的な応用例を図2に示す。 コンバジェンシ層や,IP(Internet Protocol)ネットワークを実 2.1 現するための層の仕様策定,互換性テストや認証・ロゴプロ UWB の技術動向 UWB を利用してデータ通信を行うための標準化作業は, IEEE(米国電気電子技術者協会)802.15 タスクグループ 3a (TG3a) において議論された。 グラムの標準化作業などを行っている。 典型的なプロトコルスタックを図4に示す。WiMediaTM に 準拠した物理層と MAC 層を採用することで,一つの無線モ UWB によるスループットと距離の関係を図3に示す。近 距離では高速通信できるが,距離が離れるにつれ急激にス ジュールでワイヤレス USB 以外にも IP や Bluetooth TM など, 複数のアプリケーションを同時に使用することが可能である。 ループットが下がる。 標準化の候補としては UWB Forum が推す DS-UWB (Direct Sequence UWB)方式と WiMediaTM Alliance が推 BluetoothTM USB IEEE 1394 IP ネットワーク アプリケーション アプリケーション アプリケーション アプリケーション す Multiband OFDM(直交周波数分割多重)方式の 2 方式が 残っていたが,どちらも信認されない状態が続き,2006 年 1 月の IEEE 会合においてはついに標準化されることなく, TG3a は解散することが決議された。これによりBluetooth ワイヤレス USB PAL ワイヤレス 1394 PAL BluetoothTM PAL WiMediaTM WiNet TM コンバージェンス層 WiMediaTM MAC 層 500 450 WiMediaTM 物理層 スループット(Mビット/s) 400 350 300 図4.UWB に関する典型的なプロトコルスタック−ワイヤレス USB や IP ネットワークを利用するときの標準的なプロトコルスタックである。 250 Typical UWB protocol stack 200 150 TM 100 またワイヤレス USB のロゴ認証に関しては,WiMedia 50 Alliance が物理層と MAC 層のテスト仕様を USB IF に提供 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 通信距離(m) 図3.UWB のスループットと通信距離の関係− UWB をデータ通信 で利用する場合,近距離では高速通信できるが,距離が離れるにつれ 急激にスループットが下がる。 Relationship between throughput and distance for UWB することにより,USB IF のロゴ認証プログラムをパスすれば, WiMedia TM レベルにおける相互接続性が保証されるように なる予定である。 2.3 ワイヤレス USB の構造 USB2.0 をワイヤレス化するにあたって,既存のソフトウェ ア資産をそのまま継承できるように仕様策定された。また, ワイヤレス USB 技術 37 特 集 既存の USB ホスト及びデバイスをそのまま無線化すると (4) いう観点から,Wire Adapter という概念が導入された 。 し,それぞれが独立したバスのようにふるまう。したがって, USB2.0 のインタフェースである EHCI(Enhanced Host Con(注 6) これはホスト側とデバイス側で,それぞれ HWA(Host Wire troller Interface) における Pipe Adapter) とDWA(Device Wire Adapter) と呼ばれる,UWB においては新たに RPipe(Remote Pipe) という概念で代用 無線部との物理インタフェースが図 2 のように USB2.0 で接続 される。 される場合に使用される。 の概念は Wire Adapter Wire Adapter により構築された USB デバイスのトポロ Wire Adapter は仮想 USB ホストコントローラとして動作 ジーと Pipe の関係を図5に示す。この図では,HWAドライ バは USB ホストに接続されている HWA との間で Pipe を 構築し,DWAドライバは無線通信経由で HWA と接続され USB2.0 デバイス HWAドライバ デバイスとの間で RPipe を構築していることを示している。 USB2.0 デバイス HWA DWAドライバ DWA 自身が持っている USB2.0 ハブに接続されている USB ワイヤレス USB デバイス USB ホスト (PC) USB クラスドライバ ている DWAとの間で RPipe を構築し,USB クラスドライバは DWA ワイヤレス USB USB2.0 デバイス このように Wire Adapter は,それぞれが仮想的なバスを 構築するために利用される。 ワイヤレス USB をサポートする際の,典型的なホスト側の スタック図を図6に示す。図 6 右は HWA と DWA をサポー トするためのスタック階層であるが,一方,ホストと USB2.0 Pipe ではなくPCI バスのように USB2.0 以外のバスで WiMediaTM RPipe MAC 層,物理層と接続されているケースでは,HWA の RPipe 概念の導入は不要となるため図 6 左のようになる。 図5.ワイヤレス USB に関する典型的なプロトコルスタック−ワイ ヤレス USB をサポートするための標準的なプロトコルスタックである。 Typical wireless USB protocol stack 2.4 UWB の法制化 UWB は FCC によって 2002 年 2 月に認可され,ITU-R (International Telecommunication Union-Radio communication sector) スタディグループ1(SG1)TG 1/8のワーキング USB クラスドライバ USB クラスドライバ グループ 3(WG3)においては,2005 年 10 月に電力マスクの 勧告案が出された。この勧告案では米国(FCC 案),欧州 USB ポート USB ポート DWA ドライバ DWA ドライバ (CEPT(欧州郵便電気通信主官庁会議)案),日本の三つの 暫定電力マスクが併記され,これらを元に各国は状況に応 じて法制化を考えるということになっている。これにより, USB ポート USB ポート HWA ドライバ 5 GHz 帯以下で UWB を使用する際は− 41.3 dBm/MHz まで の出力が認められることとなったが,2006 年 2 月末現在の 勧告案では,欧州, 日本で使用するためにはDAA (Detect and WHCI ドライバ USB ポート バスドライバ EHCI ドライバ PCI, PCI express バス USB ホスト Avoid)の実装が必須となっている。この DAA とは被干渉 システムの存在を検出したら避けなければならない技術で あり,どのようにして検出し,どのようにして避けるかという WiMediaTM MAC 層/物理層 ワイヤレス USB ソフトウェア 既存ソフトウェア ハードウェア 図 6 . Wire Adapter が 可 能 と す る USB デ バ イ ス のト ポ ロ ジ ー − Wire Adapter を導入することで新たに構築される USB デバイスの トポロジーとPipe の関係を示す。 Wire Adapter-enabled USB device topology 問題は,技術的な観点からはもちろんのこと,各 UWB の 互換性を維持するための仕様策定という観点からも,これか ら議論が必要である。 2006 年 2 月末時点における, 日米欧の暫定電力マスクを図7 に示す。また,ワイヤレス USB で使用される周波数帯域を (5) 表1に示す 。バンドグループは,ワイヤレス USB が一つの ネットワークを形成するときに使用するバンドであり,バンド ID(IDentification)は,ある特定の時間に使用する周波数 帯域である。これらを比較してもわかるとおり,2006 年 2 月末 (注6) USB において,ホストとデバイスの通信用バッファ間の論理的な コネクションのこと。 38 時点ではワイヤレス USB を使用するうえで,日米欧共通で フルに使用可能なバンドグループがないのが現状である。 東芝レビュー Vol.61 No.4(2006) 日本 欧州 米国 −30 −40 となるが,これらに関してはまだ今後どのように進展するかを 見守る必要がある。前者に関しては,2006 年 3 月末には欧州 及び日本で共に法制化される予定であるが,それに対応 するための DAA に関する標準化の議論が進行中である。ま TM た後者に関しては,2006 年以降,WiMedia 電力(dBm/MHz) −50 や USB IF によ り, 互換性テストや認証・ロゴプログラムに関する仕様策定や, −60 相互接続性をテストする場が設けられることになるだろう。 −70 したがって,今後,製品化するにあたって,これらの進展 を考え合わせて計画を立てる必要がある。 −80 日本,欧州ともローバンドは DAA が必須。 ただし 4.2 ∼ 4.8 GHz 帯に関しては,日本 は 2008 年 12 月末,欧州は 2010 年 6 月末 まで DAA なしでも可。 −90 −100 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 4 9,000 10,000 11,000 周波数(MHz) あとがき 2006 年 1 月にラスベガスで開催された 2006 International CES 図7. UWB に関する暫定電力マスク−日米欧の UWB に関する暫定 電力マスクを示す。 (注 7) において,当社はワイヤレス USB のデモンスト レーション (参考展示) を行った。 低消費電力,低コストでありながら高スループットが見込 Proposed spectrum mask of UWB める UWB を利用して,一般家庭にも普及している高速シリ アルインタフェースである USB を無線化したワイヤレス USB に関しては,将来的には普及が予想されるため,今後も動向 表1.ワイヤレス USB で使用される周波数帯域 を把握し,製品化を検討していく予定である。当社は,ワイヤ Frequency band used by wireless USB system バンド バンド グループ ID 1 2 3 4 5 レス USB に限らず,新市場を切り開いていく新規無線通信 周波数(MHz) 下限 中心 上限 1 3,168 3,432 3,696 2 3,696 3,960 4,224 3 4,224 4,488 4,752 4 4,752 5,016 5,280 5 5,280 5,544 5,808 6 5,808 6,072 6,336 7 6,336 6,600 6,864 8 6,864 7,128 7,392 9 7,392 7,656 7,920 10 7,920 8,184 8,448 11 8,448 8,712 8,976 12 8,976 9,240 9,504 13 9,504 9,768 10,032 14 10,032 10,296 10,560 技術に関しても,積極的に取り組んでいく。 文 献 松村正文,ほか.次世代ワイヤレス通信技術(UWB)への挑戦.東芝 レビュー.60,4,2004,p.36 − 39. USB Implementers Forum, Inc.“USB.org-Welcome” . < http://www.usb.org/>,(accessed 2005-12-19) . . WiMediaTM Alliance.“WiMedia Alliance-HomePage” < http://www.wimedia.org/>,(accessed 2005-12-19) . USB Implementers Forum, Inc. Wireless Universal Serial Bus Specification Revision 1.0. 2005-05, 293p. WiMedia Alliance, Inc. MultiBand OFDM Physical Layer Specification Release 1.1. 2005-07-14, 138p. ID : IDentification 松村 正文 MATSUMURA Masafumi は 可 能 で あるが ,利 便 性 の 観 点 から 今 後 普 及 が 進 む に デジタルメディアネットワーク社 コアテクノロジーセンター ワイヤレスシステム技術開発部主務。ワイヤレス機器の開発 に従事。 Core Technology Center つれて,種々の検討が必要であろう。 中川 英之 NAKAGAWA Hideyuki バンドグループ中のある特定のバンド ID の帯域だけを使用 することによって,ワイヤレス USB として使用し通信すること 3 今後の課題 製品化を検討するうえでは,UWB の法制化や,ワイヤレス USB の相互接続性を保証するためのロゴプログラムが重要 (注7) International CES は,Consumer Electronics Association の商標。 ワイヤレス USB 技術 デジタルメディアネットワーク社 コアテクノロジーセンター ワイヤレスシステム技術開発部。ワイヤレス機器の開発に 従事。 Core Technology Center 小久保 隆 KOKUBO Takashi デジタルメディアネットワーク社 コアテクノロジーセンター ワイヤレスシステム技術開発部参事。ワイヤレス機器の開発 に従事。 Core Technology Center 39 特 集