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全文 - 内閣府経済社会総合研究所

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全文 - 内閣府経済社会総合研究所
経済分析
第47号
昭和49年7月
☆労働時間の決定要因と時間短縮が生産に
及ぼす効果
☆レジャー消費とレジャー活動の計量分析
経済企画庁経済研究所編集
本 誌 の 性 格 に つ い て
本誌は,経済企画庁経済研究所員が研究した成果の一部を掲載したものである。
経
済
第
分
47
1974.7
析
号
経済企画庁経済研究所
目
< 分 析 1>
次
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に
及ぼす効果
ま え が き ····················································1
第一章
労働(時間)供給関数の推計 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 4
1
レジャー時間需要に関する仮説 ············································· 4
2
クロスセクションデーターによる労働供給関数の推計 ·············· 6
(1)
製造業中分類データーによる分析 ···················································· 7
(2)
(3)
1)
変数の種類 ··············································································· 7
2)
回帰計測結果 ············································································ 7
製造業都道府県別データーによる分析 ············································· 11
1)
変数の種類 ·············································································· 11
2)
回帰計測結果 ··········································································· 11
他の回帰計測結果との比較 ···························································· 16
1)
わが国での計測結果との比較 ······················································ 16
2)
アメリカにおける計量分析結果との比較 ······································· 16
(イ) 産業別によるクロス・セクション分析 ······································· 17
(ロ) 地域別によるクロス・セクション分析 ······································· 17
(ハ) 職種別によるクロス・セクション分析 ······································· 17
(ニ) 収入階級別によるクロス・セクション分析 ································· 18
(ホ) 国別データによるクロス・セクション分析 ································· 18
3
タイム・シリーズ・データーによる所得=余暇選好の
分析 ······························································································· 18
(1)
時系列分析上の仮説と時系列モデル ··············································· 18
-1-
(2)
変数の種類 ················································································· 19
(3)
労働時間の回帰式と計測結果 ························································· 20
1)
賃金率および労働者構成に関する変数による回帰··························· 21
(イ) 総実労働時間 ········································································ 21
(ロ) 所定内労働時間 ····································································· 22
2)
教育および消費時間の生産性の効果 ············································· 22
(イ) 総実労働時間 ········································································ 22
(ロ) 所定内労働時間 ····································································· 24
(ハ) 教育年数の意味する内容 ························································· 24
3)
レクリエーション相対価格の効果 ················································ 25
(イ) 総実労働時間 ········································································ 25
(ロ) 所定内労働時間 ····································································· 26
4)
通勤時間COTの効果 ································································· 26
(4)
労働日数についての回帰結果 ························································· 26
(5)
アメリカにおける時系列分析との比較 ············································· 27
参考資料-1 ··············································································· 35
参考資料-2 ··············································································· 36
第二章
労働時間および出勤日数減少が生産および労働生
産性に及ぼす影響 ······································································ 40
1
労働時間に関する収穫逓減 ························································ 40
2
時短と労働生産性に関するモデル ·············································· 41
(1) 辻村モデルの内容 ·········································································· 41
(2) 労働日数および1日当り所定内労働時間を用いたモデル ························ 41
3
回帰計測結果 ············································································· 43
第三章 労働時間の需給連立モデル ······················································ 47
1 労働需給連立モデルの内容 ·························································· 47
(1) オーエンの完全雇用期についてのモデル············································ 47
(2) 労働需給連立モデル ······································································· 48
2
回帰計測結果 ············································································· 49
<分析2>
レジャー消費とレジャー活動の計量分析
まえがき ··························································································· 67
1
レジャーの範囲 ·········································································· 67
2
レジャー時間とレジャー消費の集計 ··········································· 69
(1) レジャー時間の算出 ······································································· 69
-2-
1)
年平均月間総実労働時間 ····························································· 69
2)
通勤時間 ·················································································· 69
3)
生理的基礎生活時間および家事時間 ·············································· 70
4)
レジャー時間( L T )とレジャー日数( L D ) ········································ 71
(2)
レジャー消費支出と価格指数の集計 ········································ 71
1)
商業的レクリエーション支出( E R ) ········································ 71
2)
商業的レクリエーション物価指数( P ( R )) ································ 72
(3)
観光行楽レクリエーション支出と価格指数の集計·························· 73
1)
観光,行楽レクリエーション支出( E ST ) ································· 73
2)
観光,行楽レクリエーション物価指数( P ( ST )) ························· 75
3
市場レクリエーション需要の推計 ······································ 75
(1)
分析に用いる変数 ······························································ 75
1)
被説明変数 ···································································· 75
2)
説明変数等 ···································································· 75
(2)
回帰結果 ········································································· 76
1)
商業的レクリエーション需要の推計 ······································ 76
2)
観光,行楽レクリエーション需要の推計 ································· 76
4
レジャー活動需要の分析 ··················································· 79
(1)
行動モデルとレジャー活動 ··················································· 79
1)
レジャー時間の実質評価の方法の違いによるケース ···················· 79
2)
世帯単位と労働者単位によるケース ······································· 79
(2)
レジャー活動指数の比較 ······················································ 80
(3)
レジャー活動需要関数の計測 ················································· 82
1)
CaseIのレジャー活動指数について ······································ 82
2)
CaseIIのレジャー活動指数について ······································ 85
(4)
む
す
レジャー(時間)と市場レクリエーションの代替弾力性 ················· 85
び ·················································································· 86
基礎資料および参考資料 ································································· 87
-3-
< 分 析 1>
労働時間の決定要因と時間短縮が
生産に及ぼす効果
経済研究所
雇用・賃金ユニット
古 賀
誠
藤 間 淑 夫
舩 津 鴻 太
間を除いた残りの時間であるが,これらの生活
まえがき
時間に関する資料が十分でない現状では勤労者
実質所得の上昇に伴って,わが国でも週休2
の労働時間面から接近するのが手っ取り早い方
日制や夏休み制度など余暇増加が現実の問題と
法である。
してクローズ・アップされている。わが国では
このような労働時間面からの分析としては,
余暇の少なさと,生活のあわただしさがしばし
アメリカでは1930年代のダグラスの先駆的研究
ば指摘されている。レジャーの過し方そのもの
をはじめ,主としてクロス・セクション・デー
も忙がしい。しかし,レジャーはただ増えれば
ターによる所得=余暇選好の面からの分析が加
良いと言うものでもない。人々は常に労働より
えられているものが多い。わが国でも,国際比
もレジャーを好むとは限らない。高令者その他
較,産業別によるクロス・セクションでの比較
就職面でのハンディキャップ層に仕事が与えら
などの形で部分的にとりあげたものがあるが,
れないことによって強制されるレジャーは,か
なお計測例にとぼしく,また,時系列データー
りに生活の最低水準が保障されたとしても,楽
による分析や,企業側からの労働需要の側面か
しみよりは苦痛を与える場合があるし,また,
らの分析はほとんど行なわれている例がない。
その他の人々にとっても,過ぎたレジャー時間
われわれは,ダグラスから,フィネガン,フ
は,時間を楽しむよりは,オーエン(J.D.OWen
ライシャーに到る所得=余暇選好に関する研究
注)後出
)が述べているように時間をツブスこと
と,その後のベッカーおよびオーエンの理論な
に苦しむことになろう。ここでは,レジャーの
らびに実証的研究を参考として,わが国の労働
限度以上の増加は,人々にマイナスの効用を与
時間決定要因を供給側および需要側の両面から
えるものに外ならない。
検討し,さらに今後の労働時間短縮,なかんず
その意味でも,週休,休日,休暇,時間等の
く,週休2日制等の普及による労働日数の減少
レジャーに関連する施策のあり方は,人々の自
が生産面に及ぼす影響を計測してみることとし
発的選好をよく反映するものでなければならな
た。
い。反面,時間制度は企業の需要としての側面
この論文は,三つの部分に別けられる。
がきわめて大きな要素を占めていること,ま
第一章では,供給側からの所得=余暇選好の
た,それが生産に響く問題であることも忘れる
分析を,クロス・セクション,タイム・シリーズ
ことはできない。
の両面からのデーターを用いて行なっている。
いわゆる余暇時間は労働時間その他の生産時
第二章では,労働時間,労働日数の短縮が労
-1-
働生産性に及ぼす影響を生産関数を用いて計測
している。
第三章では,使用者側からの労働時間ベース
での労働需要関数の推計を行ない,これに第一
章でとりあげた労働者側からの供給関数を加え
た労働需給連立モデルを作成して推計を行なっ
ている。
なお,この小論の最終的取りまとめに当って
は
慶応大学経済学部 小尾恵一郎教授
慶応大学商学部
西川 俊作教授
同
佐野 陽子教授
からの有益な御批判を載いて修正が加えられて
いる。コメントをお寄せ載いた上記諸先生に厚
く御礼申し上げたい
の仮定に基く推計であるから,計測期間(昭
30~47年)における時間数の近傍で成立する
ものであって,上記の弾性値がどこまでも延
長して成立することを意味しているわけでは
ない。
ハ)女子および若年層は一般に賃金水準の割に
短い労働時間を選好する傾向があり,かつ職
場における労働が協業的形態で行なわれるた
め,これらの労働者の割合が高い分野では,
他の労働者層の労働時間も短くなるとする仮
説は,わが国の産業および地域によるクロ
ス・セクション分析からは立証されない。
これらの労働者の割合は,むしろ産業の性
格等(女子比率の高い産業は労働の重度,苦
痛度が他の分野に比べて比較的低いか,ある
いは中小企業性軽工業分野が多く,むしろ相
対的に労働時間が長いなど)を表わしている
面のほうが強いとみられる。
ニ)しかし,全労働者の労働時間と時間当り平
均賃金についての分析においては,前者が企
業の所定の労働時間制度の枠に規制される反
面,後者は性,年令等による労働者属性別賃
金格差がなお大幅に存在するわが国の場合に
は,労働者構成の差(または変化)がみかけ
上の平均賃金率の差(または変化)に影響を
及ぼし,労働時間に対する所得効果の推計に
バイアスがかかる可能性がある(前記ロ)の
所得効果はこれらの影響を除いて計測された
ものである。)
ホ)労働者の教育水準と労働時間との間には正
の関係が認められる。
全労働者平均の育教年数(義務教育卒を0
年とした最終学暦までの年数による)の総労
働時間に対する弾性は,併用する他の独立変
数の種類によって異なった値が算出される
が,大まかにみて,0.1~0.2前後と推定され
る。
労働時間に正の関係を示す要因としては,
高学歴ほど,労働が快適であること,高学歴
化が賃金の過大評価をもたらすこと(教育コ
ストを除いたネットの賃金よりも支払賃金は
<分析結果の概要>
イ)所得=余暇選好の分析結果によると,時間
当り賃金と労働者の年平均月間労働時間との
間では,クロス・セクション,タイム・シ
リーズの何れにおいても右下りの労働供給曲
線が得られる。
年平均月間労働日数によってみても同様で
ある。
ロ)実質賃金率に対する労働時間の弾性は,労
働者の種類,用いたデーターの種類などによ
って異なった値が得られるが,所定内労働時
間のクロスセクション・データーからは-
0.2前後と推定される。
タイム・シリーズ・データーによる場合
は,総労働時間としては-0.2前後,月間所
定内労働時間および月間労働日数としては
-0.1前後の弾性値が得られる。
以上からみて,時間当り実質賃金の1%の
上昇によって労働時間は0.2%前後の割合で
減少することが推定されるが,時系列的には
所定外労働時間を長期的に減らすことによっ
て対応している面があり,所定内労働時間と
しては0.1%前後となる。労働日数も所定内
時間と同様である。
ただし,弾性値一定(Constant Elasticity)
-2-
労働時 間の決 定要因 と時間 短縮が 生産に 及ぼす 効果
労働日数減少率の3割半程度以内に止めたほ
うが良いと推測される。
なお,この推計はコブ・ダグラス型による
弾性値一定を前提としているが,これが妥当
するのは計測期間(昭35~47年の13年次)の値
の近傍においてであり,どこまでも延長して
適用される性格のものではないこと,急激な
スピードでの時間,日数の短縮に対してその
まま成立するとは限らないこと,とくに計測
期間中の1日当り労働時間の変化の幅はきわ
めて小さいこと,製造業全体として得られた
値であって,個別業種,個別企業ごとには差
があり得ること等についての十分に留意する
ことが必要である。
ヌ)労働時間の供給曲線が右下りであると同じ
く,企業側からみた労働時間の需要曲線もま
た右下りである。
完全雇用に近い期間における労働時間需要
は,労働の能力賃金率(工業製品卸売物価で
実質化),民間粗資本ストック,雇用量(完
全雇用時の供給労働力(人員)に近似)
,技術
進歩の関数として計測される。
,商業的
ル)一方,能力賃金率(PCで実質化)
レクリエーション相対価格を説明変数とする
労働時間の供給関数と前記需要関数による需
給連立モデル(労働時間および賃金を内生変
数とする)によって推計すると,労働時間供
給の賃金に対する弾性は-0.17程度となり,
単一方程式による推計値と一致する。
一方需要の弾性は-0.6~-0.8とかなり高
く,需要曲線の傾斜は供給曲線よりも大き
い。両曲線から得られる結論としては,労働
力不足経済(完全雇用期)において労働力不足
からまず賃金が上昇すると,労働時間の供給
は減少し,企業は労働時間供給確保のためよ
り高い賃金を提示し,それが労働時間供給を
名目的に高く,しかも平均教育年数の延長が
全労働者の平均賃金のみかけ上の上昇をさら
に過大評価させる)
,賃金が教育年数の関数で
あることを前提として,教育の規模の経済が
働らくことなどがあるとされる。
ヘ)消費時間の生産性向上(同一コモディティ
生産に要する時間の短縮)は労働時間に対し
てプラスの効果を与えるものと推定される。
ただし,その代理変数として用いた時間節
約的耐久消費財普及率を独立変数として扱う
ことの問題点や,他の適切な代理変数が得ら
れなかったことなどから,その労働時間に及
ぼす効果等については確定的な結論は得られ
ていない。
ト)市場レジャーの相対価格(商業的レクリ
エーション相対価格)の上昇は,労働時間に
プラス(レジャー時間にマイナス)の効果を
与えることが推計されているが,回帰式に用
いる他の変数の種類や産業によって,得られ
るパラメタ値に差が生じる。
チ)往復通勤時間が労働時間の短縮に影響を及
ぼすという結果は得られない。
リ)週休2日制等の普及による労働日数の減少は,
マンアワー当りでみた労働生産性を向上さ
せる効果があるものと推定され,労働日数減
少がそのまま生産量減少をもたらすとは思わ
れない。
製造業計としては,労働生産性の労働日数
に対する弾性は-2.0~-2.4前後にあるもの
と推計される。この値は,別種のデーターか
ら算出された辻村教授の推計による所定労働
時間についての弾性値とほぼ一致している。
ただし,1日当り所定労働時間に対するマ
イナスの弾性は,労働日数に対するマイナス
の弾性に比べてかなり大きい(出勤日1日当
り労働時間延長に伴う疲労増加が生産性に及
ぼすマイナスの効果が大)から,週休2日制
等の実施を出勤日当り労働時間延長(注)を
伴って実施する場合には,マン・アワー当り
労働生産性にマイナスの影響を及ぼさないた
めには,1日の労働時間延長率を年平均月間
(注) 製造業においては週休1日半制を採用する企
業は従来からきわめて僅少であり,この1日当り
労働時間延長には,週休1日半から週休2日への
移行等によるみかけ上の延長は事実上含まない。
-3-
証分析を参考にしている。
さらに減少させる。その結果労働時間と賃金
は需給均衡点に向って収斂することとなり,
結果は安定的である。
図
1 レジャー時間需要に関する仮説
レジャー時間の増加=労働時間の減少が長期
的にみて賃金水準と関係していることは,1930
年代にすでにダグラス(PH.Douglas)3)の研究
で数量的に示されている。
週当り労働時間と1時間当たり賃金との間の
ネガテイブの関係にいつては限界効用理論に基
く説がある。
ナイト(Frank H. Knight)4)によると,人
は「労働の最後の単位から受取る賃金によって
もたらされる満足の効用が,同じ単位の労働か
ら生ずる労働の不効用と等しくなるまで」労働
する。もし賃金が上昇すれば,追加される賃金
はより少い満足しかつけ加えなくなり,した
がって労働の同じ単位から生ずる苦痛が同じで
あるなら,その少い満足に見合うまで労働時間
は減少すこるととなる。ピグー(AC. Pigou)5)
も同じ説に立ち,賃金上昇が労働時間減少をも
たらすと確信していた。労働時間は賃金の下落
と,快適な労働条件によって長期化がもたらさ
れその逆の場合に減少すると考えたわけであ
る。
労働時間の需要供給曲線
第一章
労働(時間)供給
関数の推計
―所得=余暇選好の分析―
本章では,労働者側からの所得・余暇選好に
ついて計量的な分析を行なってみる。分析は産
業別および地域別のクロス・セクションデー
ターと,タイム・シリーズデータとによって,
横断的計量と時系列的計量の両面からの分析を
加え,両結果をチェックすることとした。
分析の対象とする労働時間としては,
「総実労
働時間」および,労働時間制度により密接な
「所定内労働時間」とをとりあげる。
分析に当っては,ベッカー(Gary S. Becker)1)の時間のアロケーションに関する理論
とオーエン(John D. Owen)2)の理論および実
これに対して,ライオネル・ロビンス(Lionl
Robbins)6)はその関係の不確定性を指摘し,労
働時間と賃金の関係が負であるか否かは「収入
の単位当りの必要努力(労働時間)に対する
所得需要の弾性(elasticity of demand for
income in terms of effort)
」によって異なる
とした。
労働時間は総所得と所得の単位当り努力価格
(注)3)Paul H. Douglas : “The Theory of Wages,, Chapter XII. -1957年版による。
4)Frank H. Knight : “Risk, Uncertainty
( 注 )1)G a r y S . B e c k e r : “ A T h e o r y o f t h e
and Profit.”
Allocation of Time.” The Economic
5)A. C. Pigue : “A Study in Public Fina-
Journal LXXV. (September, 1965)
nce.”
2)John D. Owen : “The Price of Leisure.”
Universitaire Pers Rotterdam 1969.(斎
6)Lionel Robbins : “On the Elasticity of
藤精一郎訳「レジャーの経済学」日本経済
Income in Terms of Effort” Economica
新聞社,昭和46年)
X. (June, 1930)
-4-
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
図1
収入の増加と時間短縮との選択に直面すること
になるが,逆に考えると,1時間当り賃金が下
っても人は従来の総所得を維持したいと考える
であろうから労働供給の弾性は負であると考え
た。
最近の理論では労働者は効用極大をめざして
その所有する時間を〃労働〃と〃レジャー〃に
配分するのであって,賃金上昇はこの配分に際
して所得効果と代替効果(価格効果)を生じ,
その結果で時間配分が変化するのであると考え
る。賃金上昇に伴う労働時間の減少がみられる
のは,賃金上昇のもたらす強い所得効果が相対
的に弱い代替効果を圧倒した結果である。ベッ
カー(Gary S. Becker)は次のように説明する。
世帯はいわば一つの会社のようなものであっ
て,市場財と時間とを投入してコモディティを
生産する。このコモディティは効用関数に直接
含められコモディティを生産する生産関数は,
効用を最大とするようなコモディティのコンビ
ネーションを選択する。財の制約は賃金その他
の収入によって与えられ,時間の制約は全可能
時間である消費に向う全時間は全可能時間と労
働時間の差である。ここで,すべての時間と行
動を現金収入につぎこむときには,可能最大限
の収入― Fullincome ―を得ることができる
が,しかし消費のためにも時間は必要であり,
より豊かな国ではさらに効用を追加するため
に現金収入を失うことを選ぶ。この失われた
所得 ― Forgone earnings ― は効用追加の
ためのコストである。時間の価値はこのForgone earningsに等しく,ここでレジャーの価
格は単位時間当り賃金によって計られる。
賃金上昇は収入増加に伴って効用の追加をも
たらす効果と,効用追加のために用いるコスト
増加(時間の価格上昇)という相い対立する二
つの効果をもたらす。ベッカーはこれを次のよ
うな二つの例でうまく説明している。
稼得収入(=賃金,earning)が変化せず,
それ以外の所得の増加のみで全所得(Fullincome)が増大するときには,効用追加のた
めに用いられる時間の価格(労働しないことで
ロビンスの所得と労働時間の関係
(effort price per unit of income)との関
数であり,第1図はその関係を示したものであ
る。いまOE2は最初の各単位当り所得に費され
た労働時間,OI2は労働者の得た所得の全単位
とする。労働時間の総計はOE2×OI2すなわち
OI2P2E2の面積となる。
ここで時間当り賃金が上昇すると各単位所得
当り必要労働時間は小となり,この新レートは
OE1で表わされる。ここで労働者がOI1の所得
を欲して前よりもI2I1単位だけ所得を追加する
と労働時間の全量はOI1P1E1となる。
これが最初のOI2P2E2よりも大きいか否かは
所得への需要の弾性が1よりも大であるか否か
によってきまる。もし1よりも大であるなら単
位所得当り労働時間の減少よりも所得の金額の
比例的増加のほうが大となり,労働者はむしろ
より多く働き,労働供給カーブは正となる。こ
X Y
/
れを式に示すと eD = −
においてeD>
dX dY
1のケースである。eD=1のときには労働時間は
変化しない。0<eD<1のとき労働時間は減少し
eD=0で更に減少する。ここではYが1%減ると
Xも1%減るから労働供給の弾性はeS=-1であ
り,これからeD+eS=-1.0の関係が成立する。
eD=-1-eSであるがeDを直接求めるのは困難
だから直接時間当り賃金に対する労働時間の弾
性値が求められ,eDはこれから推計されること
になる。
ダグラスの分析は,この考え方に立って行な
われており,時間当り賃金の上昇によって,総
-5-
生ずる得べかりし所得)は変化せず,しかも全
所得の増加で大部分のコモディティ消費が増大
する。この全コモディティのアウトプット増加
のためには,消費のための時間が増大しなけれ
ばならず,したがって労働時間は減少する,こ
れが所得効果である。
しかし,賃金がそれと同じ率で増大するとき
には,すべてのコモディティについて,消費に
費す時間の単位当りコストが増大することにな
る。財に比べて相対的に時間を多く必要とする
もの,つまりForgone earningsの大なるコモデ
ィティほどその価格が大幅に上昇することにな
る。
そこで,つぎに,〃賃金上昇分〃が〃その他
の所得の減少〃によって完全に相殺し合うよう
な補完的ケースを設定してみると,このような
賃金上昇は時間集約的コモディティ(timeintensive commodities)ないし,得べかりし
所得の多くかかるコモディティ(earningsintensive commodities)から,より財集約的
(goods-intensive)なコモディティへの消費
のシフトをもたらし,これらのコモディティか
らのシフトは,全消費のための時間を減少さ
せ,労働時間を増大させる。これが代替効果
(価格効果)である。
賃金上昇が上記のような補完的なものでない
通常の場合は,賃金上昇は所得効果と代替効果
(価格効果)を同時にもたらし,労働時間,余
暇時間の増減は,この両効果の相対的強さに依
存することとなる。賃金上昇の下で,われわれ
が通常観測する労働時間の減少は,強い所得効
果が弱い代替効果を相殺した残余である。
ところでベッカーは,労働時間の生産性向上
に伴う賃金上昇のもたらす効果に対置して新
らたに消費時間の生産性(Productivity of
Consumption time)という考え方をとり入れ
ている。
資本,技術の長期的進歩は労働生産性のみな
らず消費時間の生産性をも向上させる。
人々は床屋でひげを剃る代りに,電気カミソ
リによって自宅で剃ることが容易にできるよう
になり,店にでかけ,待ち,そして剃ることそ
のものに要する時間さえも節減される。映画舘
にでかけて映画をみることは,テレビによる自
宅での観覧にかわる。
こうして,消費時間の生産性向上はコモディ
ティ1単位の生産に要する時間を少なくする。も
し,各コモディティにおける生産性向上の程度
が同じであるなら,forgone earningsがより
大きいコモディティほどその相対価格の下落が
大となるから,これらのコモディティへむけて
の代替を生ずることになろう。しかし,その反
面消費時間の生産性向上は,その結果として
full-incomeの上昇をもたらすこととなるか
ら,そこから所得効果をも生ずる。時間の節約
で余った時間は,それを用いるコモディティへ
の需要を増加させ,それが財への需要増加をも
たらす。その財は,賃金を一定とすると労働時
間の増加によってのみ手に入れることができる
のであるから,ここでは所得効果が労働時間に
プラスの効果を与えることとなる。
賃金上昇による場合とは明らかに逆方向のこ
の所得効果はわが国の電化製品を中心とする
「時間および労働節約的耐久消費財ブーム期」
における有業率や労働時間の動きにあらわれた
勤労者世帯の行動を見る上で参考になるのでは
ないかと思われる。
2 クロス・セクション・データーによ
る労働(時間)供給関数の推計
クロス・セクションによる分析は産業別(製
造業中分類)データーと地域別(都道府県)の
2種類について行なう。
産業別,地域別とも資料は労働省「賃金構造
基本調査」を用いる。年次は昭和45年を対象と
する。なお外に昭和36年についても計測してみ
たが,調査に所定内労働時間および賃金がな
く,総実労働時間が産業,地域の繁閑の度の違
いで変り,あまり良い結果が得られないため除
外した。
回帰式は直線型と対数型を想定したが,ここ
では結果が比較的良好で弾性値の観測に便利な
-6-
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
-
R=0.893(自由度調整済)
S=0.019
D・W=2.044
eHW=-0.256
両対数型を採用した。
(1)
製造業中分類別データーによる分析
1)変数の種類
被説明変数;月間所定内労働時間
(男子年令計)
HS
(男女計,男子計,男子年令別)
説明変数;所定内1時間当り賃金
Lf
6.136
HS = e
両対数型(自然対数)による最小自乗回帰の
結果は第1表のようになる。
-
替効果を圧倒していることがわかる。賃金率の
みを独立変数として用いたケースでは,労働
時間の賃金に対する弾性値eHWは性年令計で
中高年男子で-0.23となり,労働者グループに
よって-0.2前後から-0.5前後までの幅広い値
が得られる。
この結果にはバイアスがかかっている可能性
があることを考慮し,フィネガン7)等の例にな
らって,産業別の全雇用者に占める女子比率Lf
と男子の若年比率Lyを独立変数として追加す
る。フィネガンが想定しているこの2変数の符
号条件を無視して,有意の結果を得たものを示
すと次のようになる。
(性,年令計)
-0.028
⋅ Lf
(1.49)
(注) 7)T. Aldrich Finegan: “Hours of Work in
United
Stase; A
(3.73)
-0.190
⋅ WS
(6.04)
0.028
⋅ Lf
)
0.034
⋅ Ly
(2.46) (1.54)
)
男子若年についてはLf,Lyについて有意の結
果を得たものがなく,かつこれらの変数を加え
てもeHW=-0.458~-0.496と高い弾性を示す
ことには変りがない。若年労働者については他
の労働者層に比べて労働時間の賃金に対する負
の弾性が大きくなる原因として次の二つの原因
があげられよう。
その一つは,若年層は高い賃金よりも短い労
働時間を選好する傾向が強いということであ
る。これには若年層は生涯収入が大と見込ま
れ,かつ家族扶養の責任が軽いことなどによっ
て本来的に中高年層に比べて所得よりも余暇を
選好する度合が強く,かつ若年賃金水準が相対
的に高い製造業分野には単調労働分野が多いこ
と,仕事の細分化で将来の独立のための仕事を
つうじての技能経験の習得が困難であることな
どによって労働の苦痛感もより大きいことなど
が影響していると考えられる。
その二つは若年層における産業間賃金格差の
急激な縮小である。すなわち,労働時間は中高
-0.19,男子計で-0.33,若年男子で-0.49,
the
0.038
⋅ Lf
R=0.916( 〃
S=0.019
D・W=3.189
eHW =-0.19
スでも労働時間と逆相関を示し,所得効果が代
(5.17)
(5.67)
6.172
HS = e
所定内賃金率WS(1時間当り)はどのケー
-0.256
-0.172
⋅ WS
-
2)回帰計測結果
⋅ WS
)
R=0.909( 〃
S=0.019
D・W=3.208
eHW =-0.17
ついて中立的と仮定する。
6.760
(2.24)
(男子40~49才)
Ly
消費者物価,消費時間の生産性等は産業別に
HS = e
(6.45)
-0.024
⋅ Lf
R=0.927( 〃
S=0.017
D・W=2.606
eHW =-0.267
WS
男子に占める若年(24才以下)労
働者の割合
⋅ WS
-
(男女計,男子計,男子年令別)
女子労働者の割合
-0.267
6.685
HS = e
Cross-Sectional
Analysis” Journal of Political Economy.
(Oct., 1972)
-7-
第1表
製造業中分類クロスセクションによる賃金=余暇選好モデル
男
年
女
令
計
計
男
年
令
子
計
⎛ 昭45年 ⎞
⎜
⎟ ( N = 20)
⎝ 所定内 ⎠
男
子
20 ~ 24 才
男
子
40 ~ 49 才
l n H S = a + bl n W S ( ケ ー ス 1)
1
a
b=eHW
6.295
-0.190(8.35)
7.118
-0.328(9.61)
7.877
-0.490(7.78)
6.613
-0.230(6.77)
0.885
0.019
2.120
0.910
0.019
2.127
0.871
0.023
1.881
0.838
0.025
2.615
-
R (自 由 度 調 整 済)
S (標
準
誤
差)
D・W(ダービンワトソン比)
2
a
b=eHW
c
l n H S = a + bl n W S + cl n L f ( ケ ー ス 2)( 符 号 条 件 c < 0)
6.760
6.685
7.743
6.136
-0.256(5.17)
-0.267(6.45)
-0.467(3.77)
-0.172(5.67)
-0.028(1.49)
0.024(2.24)
0.004(0.21)
0.038(3.73)
-
R (自 由 度 調 整 済)
S
D・W
3
a
b=eHW
d
0.893
0.019
2.044
0.863
0.023
1.893
0.909
0.019
3.208
l n H S = a + bl n W S + dl n L y ( ケ ー ス 3)
6.375
7.111
7.936
-0.195(8.13)
-0.328(9.11)
-0.496(7.39)
-0.016(0.77)
0.001(0.06)
-0.008(0.33)
6.458
-0.237(8.33)
0.062(2.96)
-
R (自 由 度 調 整 済)
S
D・W
4
a
b=eHW
c
d
0.927
0.017
2.606
0.882
0.019
2.168
0.904
0.020
2.108
0.863
0.023
1.944
0.890
0.021
2.544
l n H S = a + bl n W S + cl n L f + dl n L y ( ケ ー ス 4)( 符 号 条 件 c < 0)
6.756
6.706
7.719
6.172
-0.253(4.87)
-0.264(6.28)
-0.458(3.55)
-0.190(6.04)
-0.026(1.25)
0.027(2.35)
0.008(0.34)
0.028(2.46)
-0.006(0.28)
-0.015(0.80)
-0.011(0.42)
0.034(1.54)
-
R (自 由 度 調 整 済)
S
D・W
0.886
0.019
2.074
0.925
0.018
2.900
0.855
0.024
1.985
0.916
0.019
3.189
(注)1) H S :所定内労働時間
W S : 所 定 内 1時 間 当 り 所 定 内 賃 金
Lf:女子 比率
Ly: 若 年 比 率
2)( )はt-value
3)自然対数による両対数モデル
年層を含めた企業全体の時間制度によって規制
されるが,一方賃金は中高年層にはなお大きな
企業間賃金格差を残しながら,若年層賃金格差
は需給ひつ迫によって急速に縮小し,その産
業,規模間の賃金水準の差は月間賃金では名目
的にはほとんど解消されるという結果になって
いる。これはクロス・セクションによるみかけ
上の賃金弾性を過大にしよう。
男女計および男子年令計については変数Lf
が有意であるがLyは有意でない。男子40~49才に
ついては両変数とも有意である。これらの追加
によって男女計の賃金弾性は高まるが,男子計,
男子40~49才層については低くなる。Lf,Lyの
意味づけには種々の解釈が成り立つ。フィネガ
ンは次のように解釈している。
〔女子比率Lf〕
女子比率については,女子は家事労働時間が
長いことによって市場での労働時間が短かくな
るから労働時間との相関は負である。
女子比率が男子の労働時間にも影響を及ぼす
のはi)同一産業内,同一職種内で男女の労働
時間が同じであり(同一に規定され)
,ii)労働
-8-
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
時間が労働者の選好に敏感である範囲において
である。通常は男女計の労働者の労働時間を分
析する場合にのみ必要になるものである。
〔平均年令Y〕
年令については,労働時間との関係が複雑で
確定できない。
すなわち
i)高令者ほどレジャーの限界費用は小である
が,ただし,これは労働=余暇選好に対してよ
りは退職の決定に影響を及ぼすであろう。
ii)労働よりもレジャーを選ぶことは収入減の
みならず労働の副産物としての生産性向上への
経験をも失なわせることになる。とくに,将来
に長い労働時間をもつ者にとってより失うもの
を多くする。
以上のi)
,ii)からは労働時間と年令との間に
負の相関(われわれの若年比率Lyについては
正の相関)が想定できる。
iii)しかし,高令者ほど生涯収入(Iifetime
earnings)が小と見込まれることからは,労働
時間と年令の間に正の相関(Lyについては負の
相関)が考えられる。
iv)さらに,夫の家族に対する責任は或る年
令まで高まるが,しかし或る年令を越えるとそ
れ以降は減少する。
労働時間に対してiii)とiv)の前段とは,i)
,
ii)とは逆の影響を及ぼす。
フィネガンの以上の説に従うと,Lfの符号
条件は負,Lyについては不定となる。
わが国では,フィネガンが分析したアメリカ
の場合に比べて,一般に男女間,年令間賃金格
差が大幅であることも考慮する必要があろう。
このことからは次のようなことが考えられる。
まず,年功賃金体系が一般的で,年令,性な
どによる賃金格差が大きいときには,企業間の
個別賃金水準が同じであるとしても平均賃金は
労働者構成の違いだけでも差が生じてしまうこ
とになる。
つぎに,Lf,Lyが産業の特性などの別のもの
を反映している可能性もある1)。
いま,労働時間Hと女子比率Lfの相関をみ
第2表
変数間の単相関係数(製造業中
分類別,昭 45 年)
r
HrLf
HrLy
WrLf
WrLy
LfrLy
H W
男女計
男子計
-0.8919
0.7307
0.1756
-0.8960
-0.2862
0.4089
-0.9149
0.7522
0.1988
-0.6649
-0.2105
0.4089
男
子
20~24 才
-0.8780
0.7619
0.2003
-0.8533
-0.2704
0.4089
男
子
40~49 才
-0.8476
0.7428
0.2335
-0.5166
0.0887
0.4089
(注)1) H , W は所定内労働間時および1時間当
り所定内賃金を示す。
男子計および男子年令階級別は,それぞ
れ別の労働時間および賃金である。
2) L f は各産業全労働者に占める女子比率,
L y は同じく 男 子全労働 者に 占める男 子若
年(24才以下)比率である。
ると,第2表のように単相関係数HrLfは,男女
計および男子年令層別のいずれについても,
0.73~0.76と明瞭な正相関を示している。一
方,女子比率と賃金との間には,男女計および
男子若年についてはそれぞれWrLf=-0.89お
よび-0.85というより強い逆相関がみられ,男
子計および男子40~49才については-0.6~
-0.5のやや弱い逆相関がみられる。
これを労働時間を縦軸,質金を横軸にとった
相関図によって女子比率との関係をみると,第1
図のようになる。
男女計については女子比率の高い産業では賃
金率水準との相対的な関係では労働時間が短く
なる方向に偏る傾向があり,これには,女子の
ほうが男子よりも短い労働時間を選好する傾向
が強いか,あるいは,女子比率の高い産業で
は,個別賃金の比較の場合に比べて,男女平均
賃金としては,他の産業に比べて賃金水準が過
小評価されている(供給曲線に左方へのバイア
スがかかっている)などの原因が考えられる。
これに対して,男子年令計,男子40~49才など
では,女子比率Lfの高い産業ほど男子供給曲
線が上方に偏る傾向がみられる。このように,
賃金水準との相対関係では,女子比率が高いほ
ど男子労働時間が長くなっており,Lfは
-9-
第1図
45 年産業別(製造業)男子 40~49 才
供給曲線のシフト要因となっていると考えられ
る8)。
同じ賃金の下では労働の苦痛が大であるほ
ど短い労働時間が選好されるから,男子性産業
には鉄鋼,機械,非鉄など身体的疲労が大きく,
また汚れ作業の多い産業や,石油精製,化学な
どの装置産業のように精神的緊張度の強い労働
や深夜にわたる交替勤務が必要とされる産業が
多いこと,一方女子比率の高い産業は繊維,
衣服,精密,電機などのように比軽的軽労働分
野や中小企業性分野が多いこと,これらの分野
の男子労働者は事務,技術,管理,監督などの
労働に従事する者が多いことなどが男子供給曲
線のシフトをもたらしているとみられる。
以上の結果からすると,Lfが高いと,男子
てはめて決定するわけにはいかない。
一方若年比率Lyが有意であるのは,男子40~49
才についてのみであるが,Lyの追加はeHWの値に
はあまり影響していない。
特異な値を示している若年男子以外について
みると,労働時間の賃金に対する弾性は,男女
計年令計で-0.19~-0.256(ケース1および
2),男子年令計で-0.267(ケース2),男子
40~49才で-0.17~-0.19(ケース2および4)
となる。男女計からみると,賃金に対する弾性
は-0.2%前後から-0.25%前後にあると推定
される。これは賃金の10%の上昇が労働時間の
2%~2.5%9)前後の減少をもたらすことを示
( 注 ) 9)男 女 計 の ケ ー ス 2に よ る 弾 性 e HW = -
0.256については,次の仮定の下では過大
労働時間も,労働時間の短い女子にひきずられ
評価になっていることが前記コメントで指
て短くなるという協業的な労働のシステムを前
摘された。
提とした女子比率に関する仮説は,わが国の産
いま,企業の労働時間 HSが男子時間で
業によるクロス・セクション分析ではあてはま
きまってくるものと仮定し,男女計の賃金
らなくなる。Lfはむしろ産業の性格など,別
を男,女賃金の幾何平均で表わす。
のものを表わす変数になっているとみられ,符
WS= WmkW fj ……………………i)
号条件も前述したフィネガンの説をそのままあ
Wm= WS1 / kW f− j / k ………………ii)
0<k<1,0<j<1
(注) 8)この点については前記したコメントの中
ここで女子比率と女子賃金に無意味の相
で指摘された。
- 10 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
しているが,ここで結論を出すことは保留し
て,さらに別のデーターによって検討を加える
こととする。
(2) 製造業都道府県別データーによる分析
1)変数の種類
被説明変数;月間所定内労働時間 HS
(男女計,男子計,男子年令別)
説明変数;
i)所定内1時間当り実質賃金WS´
( 男 女計,男子計,男子年令別)
実質化は総理府統計局「小売物価統計」
による消費者物価総合の都道府県別地域
差指数を用いて行なった。なお,物価の
地域差指数は男女,各年令層とも同じと
仮定する。
ii)女子比率 Lf
iii)男子に占める若年層(24才以下)比率
Ly
iv)消費時間の生産性 PCT
PCT はベッカーのいうProductivity
of Consumption Timeの代理変数とし
てとり入れた。具体的には,
「身の回り,
家事,レジャー等に関する時間節約的耐
久財普及率(商品別普及率の39年価格に
よる加重平均)を用いている。資料は,
総理府統計局「全国消費実態調査」
(昭44
年,耐久消費財編都道府県別集計)によ
る。
v)通勤時間 COT
NHK「国民生活時間調査」
(昭45年)
の男女計有職者の平日1日当り通勤時間
による。
ただし,世帯の居住地区分による調査
であって事業所所在地区分によっている
労働時間の調査との間にギャップが生じ
るため,通勤圏域に含まれる都府県につ
いては,圏内の平均通勤時問を使用す
る。
2)回帰計測結果
最小自乗法による回帰結果は第3表のとおり
で,地域別データーを用いた場合にも賃金率の
上昇によって労働時間の短縮がもたらされると
いうさきの所得効果に関する仮説が裏付けられ
ている。
賃金率だけで回帰したケース1の場合をみる
と労働時間の賃金に対する弾性eHWは,男女計
-0.12,男子計-0.19,男子20~24才-0.21,
男子40~49才-0.14と産業別データーによる場
合に比べて一般に低くなる。とくに産業別では
著るしく高い値を示した若年男子の弾性値が他
の労働者層に比べて僅かに高い程度に止まって
いるのが注目される。
女子比率Lfおよび男子のうちの若年比率Lyを
-
追加したケースのうち,t値, R ,D・Wから
みて比較的良い結果が得られているものを示す
と次のようになる。
昭45年 N=46
(男女計)
HS= 5e 203 ・ WS ´−0 075 ・ L f 0 030
(2 24)
eHW =-0.08
R⎛⎜自由度 ⎞⎟ =0.704
⎝ 調整済 ⎠
S
D・W
=0.016
=1.889
ベキ係数の下の( )の値はt-value
(男子年令計)
H S =5e 258・WS−´0 153・L f
関があれば
eHW =-0.15
Wf=P(Lf) …………………………iii)
Hm=αWm
β
(1 36)
R(
…………………………iv)
S
D・W
にii)式,iii)式を入れると
Hm=αWSβ/k〔P(Lf)
〕-j β/k………v)
〃
0 025
0 019
(1 19)
(1 11)
・L y
)=0.754
=0.018
=1.902
H S = 5e.374・WS−´0.193・L y 0.025
0<k<1より
( 7.72 )
|β/k|>|β|
eHW=-0.19
- 11 -
(1.57 )
R(
S
D・W
〃
)=0.751
=0.018
=1.820
H S =5e 274 WS−´0 139 ・L0f 033
(3 53)
(1 63)
eHW=-0.14
R(
S
D・W
〃
)=0.752
=0.018
=1.694
(男子20~24才)
H S = 5e 151
eHW=-0.14
S
D・W
〃
つぎに都道府県を女子比率の高いものと低い
ものとに区分して,労働時間と賃金との相関図
を画くと第2図のようになり,Lfの高い地域と
WS−´0 143 ・L0f 056
(3 45)
( 3 06 )
R(
められ,女子比率が高いと,男女計の賃金のみ
ならず,男子賃金も一般に低い。このように,
地域別データーでは女子比率と賃金のマイナス
の相関が高いことから,それが上記の労働時間
との正の相関をももたらしている面があると思
われる。
)=0.710
=0.021
=2.076
低い地域は,グラフの左上と右下に分離するが,
地域別データーではLfが全体として労働供給
曲線をシフトさせているという傾向は認められ
ない。Lfはむしろ賃金の代理変数の働きをし
ているのではないかと思われる。
一方若年比率Lyで有意な結果を得ている男
(男子40~49才)
H S = 5e 228・WS−´0 156 ・L0y 068
(7 47)
(3 82 )
eHW=-0.16
R(
〃
)=0.756
S
=0.020
D・W
=1.702
Lf,Lyのベキ係数はすべてプラスである。労
働時間の賃金に対する弾性は,男女計が-0.08
と低くなるがその他の労働者層は-0.14~
-0.19の間の値を示す。これは産業別データー
で計測したものに比べるとやや低目である。
Lf,Lyの符号条件は前述したフィネガンの仮
説や労働が協業的システムで行なわれるため
に,女子比率が高いと女子の時間選好が男子労
働時間にも影響するという仮説を前提にすれば
マイナスの値が想定されるが,さきの産業別分
析で検討したように,これらの変数の解釈はい
ろいろの場合があり得るので,アプリオリには
決定できない。
いま変数間の単相関係数を求めると第4表の
結果が得られる。男子若年比率Lyは労働時間HS
賃金WSのどちらとの間についても相関係数は
小さいが,女子比率Lfと労働時間HSとの間にお
いては0.6前後の正の相関係数,賃金WSとの間で
は男子若年が-0.56とやや低いのを除き,男女
計では-0.86,男子計では-0.78,男子40~49
才 で は - 0.76 の か な り 強 い 逆 相 関 が 認
子年令計と男子40~49才について同様のグラフ
を画いてみると,第3図のように男子年令計では
若年比率の高い地域は傾向線の下方に分布する
傾向があり,これは若年が多いほど労働時間が
短い方に引張られているか,もしくは平均賃金
が個別賃金水準に比べて相対的に過小評価され
ている可能性がある。なお40~49才層については,
年令計に比べてあまり明瞭ではないが,若年比
率が高いと労働時間が短い方向に偏る傾向が僅
かながら認められる。
つぎに通勤時間COTを追加してみると,男子
40~49才層についてはプラスのベキ係数が得ら
れているがダービン・ワトソン比が低く,その
他の各労働者グループについても何れもt-値
が低いなど有意の結果が得られていない。
オーエンによれば通勤はより良い賃金条件の
仕事に従事するためか,または住宅費その他の
生計価格を低くして実質賃金を有利にするため
の手段であり,通勤時間は賃金を増加させるも
のとみなされる。一方長距離通勤は,また労働
における規模の経済を増加させるとともにレ
ジャー時間を減少させる。その結果として通勤
時間が長いときには,1日のレジャーが少な
く,賃金が高い位置で均衡する。ただしそれ
は,通勤時間を含めた労働時間の増加をもたら
すが,支払いを受ける労働時間が必ずしも長い
- 12 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
第3表
ケ
1
都道府県別クロス・セクションによる賃金=余暇選好モデル(昭 45 年,製造業,所定内)
ー
a
b=eHW
-
ス
R
(自 由 度 調 整 済)
S
(標
準
偏
差)
D・W(ダービン・ワトソン比)
2
-
a
b=eHW
c
R
S
D・ W
3
-
a
b=eHW
c
d
R
S
D・ W
4
-
a
b=eHW
d
R
S
D・ W
5
-
a
b=eHW
e
R
S
D ・W
6
-
a
b=eHW
f
R
S
D ・W
7
-
R
S
D ・W
a
b=eHW
c
f
男
年
女
令
計
男
子
計
年 令 計
lnHS=a+blnWS′´
5.348
5.449
-0.115(6.60) -0.189(7.48)
0.697
0.741
0.016
0.018
1.704
1.498
男
20
~24
子
才
男
40
~49
子
才
5.410
-0.213(5.69)
0.641
0.023
1.797
5.425
-0.141(6.01)
0.662
0.023
1.128
5.203
5.274
5.151
-0.075(2.24) -0.139(3.53)
-0.143(3.45)
0.030(1.36)
0.033(1.63)
0.056(3.06)
0.704
0.752
0.710
0.016
0.018
0.021
1.889
1.694
2.076
lnHS=a+blnWS+clnLf+dlnLy
5.207
5.258
5.160
-0.082(2.11) -0.153(3.72)
-0.134(2.83)
0.025(0.99)
0.025(1.19)
0.059(2.95)
0.006(0.37)
0.019(1.11)
-0.008(0.38)
0.696
0.754
0.703
0.016
0.018
0.022
1.941
1.902
2.037
lnHS=a+blnWS´+dlnLy
5.305
5.374
5.366
-0.117(6.67) -0.193(7.72)
-0.222(5.59)
0.014(0.99)
0.025(1.57)
0.016(0.74)
0.696
0.751
0.636
0.016
0.018
0.023
1.890
1.820
1.869
lnHS=a+blnWS´+elnCOT
5.352
5.466
5.391
-0.119(5.00) -0.203(6.32)
-0.190(4.22)
0.005(0.26)
0.015(0.75)
-0.023(0.95)
0.689
0.738
0.640
0.016
0.018
0.023
1.691
1.482
1.872
lnHS=a+blnWS´+flnPCT
4.776
4.762
4.947
-0.143(6.79) -0.234(7.62)
-0.253(4.90)
0.130(2.21)
0.161(2.38)
0.108(1.11)
0.726
0.770
0.643
0.015
0.017
0.023
1.742
1.577
1.775
lnHS=a+blnWS´+clnLf+flnPCT
4.787
4.758
4.824
-0.131(2.83) -0.199(4.03)
-0.173(3.18)
0.008(0.30)
0.019(0.92)
0.054(2.94)
0.119(1.71)
0.138(1.91)
0.078(0.87)
0.719
0.769
0.708
0.016
0.018
0.021
1.783
1.672
2.043
5.273
-0.108(3.04)
0.030(1.22)
0.666
0.023
1.247
lnHS=a+blnWS+clnLf
- 13 -
5.247
-0.162(4.60)
-0.004(0.18)
0.070(3.53)
0.749
0.020
1.690
5.228
-0.156(7.47)
0.068(3.82)
0.756
0.020
1.702
5.482
-0.184(6.34)
0.058(2.33)
0.700
0.022
0.991
4.606
-0.177(6.60)
0.189(2.40)
0.702
0.022
1.136
4.559
-0.153(3.84)
0.020(0.84)
0.176(2.20)
0.700
0.022
1.212
ケ
ー
8
a
b=eHW
d
f
R
S
D ・W
9
a
b=eHW
e
f
R
S
D ・W
注
1)COT:通勤時間
2)(
ス
男
年
女
令
計
男
子
男
子
計
年 令 計
20 ~24 才
lnHS=a+blnWS´+clnLf+flnPCT
4.958
4.814
4.791
-0.256(4.89)
-0.143(6.67) -0.230(7.37)
0.012(0.54)
0.013(0.80)
0.004(0.30)
0.098(0.98)
0.139(1.91)
0.124(1.96)
0.635
0.768
0.719
0.023
0.018
0.016
1.836
1.755
1.807
lnHS=a+blnWS´+elnCOT+flnPCT
4.750
4.776
4.754
-0.233(4.38)
-0.236(6.92)
-0.140(5.66)
-0.034(1.35)
0.003(0.14)
-0.005(0.27)
0.147(1.47)
0.158(2.22)
0.134(2.18)
0.652
0.764
0.719
0.023
0.018
0.016
1.863
1.576
1.752
PCT:消費時間の生産性(時間節約的耐久財普及率)
男
40
~49
子
才
4.751
-0.176(7.26)
0.059(3.23)
0.116(1.55)
0.765
0.020
1.658
4.837
-0.201(6.74)
0.044(1.71)
0.146(1.80)
0.718
0.021
1.042
)はt-value
3)WS´はCPIの地域差指数により実質化したもの
第2図
昭和 45 年都道府県別(製造業)男女計
わけではない。
もしそうであれば,出勤日数と通勤との関係
オーエンは,通勤者は1日の労働時間の短縮に
がむしろ問題になろうが,わが国では,アメリ
よってはレジャーを楽しむことはできないから,
カ等におけるような仮説がそのまま援用できな
通勤は総レジャー水準に対するよりも労働日数
い面がある。わが国では通勤手当が支給される
などのようなレジャー時間の配分に影響を与え
のが通例であり,他方企業間移動が少ないか
るものであるとする。
ら,住居からの通勤時間や通勤距離を前提にし
- 14 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
第3図
第4表
単相関係数
HrW´
HrLf
HrLy
HrCOT
HrPCT
W´rLf
W´rLy
W´rCOT
W´rPCT
Lf rLy
昭和 45 年都道府県別(製造業)男子年令計
変数間の単相関係数(都道府県別,
昭 45 年製造業計)
子
男
子
男
(男子年令計)
男女計
男
子
年令計
年令計
20~24 才
40~49 才
H S = e4.762・WS−´0.234 ・PCT 0.161
-0.7054
-0.7478
-0.6510
-0.6711
( 7.62 )
0.6800
0.6815
0.6295
0.5958
0.0
0.0760
-0.1286
0.2402
-0.4542
-0.4009
-0.4493
-0.2359
-0.2535
-0.2909
-0.3561
-0.1590
-0.8593
-0.7760
-0.5571
-0.7553
0.1477
0.1043
0.3209
0.1884
0.6730
0.6153
0.5500
0.6368
0.6124
0.6259
0.6884
0.5543
0.1202
0.1202
0.1202
0.1202
て仕事のほうを自由に選択するというわけには
いかないであろう。
つぎに消費時間の生産性の代理変数として
PCTを追加したケースのうち有意の結果を得た
ものを示すと次の通りである。
(男女計)
eHW=-0.23
( 4.03)
eHW=-0.20
( 0.92 )
)=0.770
=0.017
=1.577
R(
(1.91)
〃
S
D・W
)=0.769
=0.018
=1.672
H S = e4.947・WS−´0.253・PCT 0.108
( 4.90 )
eHW=-0.25
(1.11)
R(
〃
S
D・W
)=0.643
=0.023
=1.775
(男子40~49才)
H S = e4.751・WS−´0.176 ・PCT 0.116
( 7.26)
eHW=-0.18
(1.55)
)=0.765
=0.020
=1.658
PCTは,どの労働者グループについてもプラ
⎝ 調整済 ⎠
=0.015
=1.742
〃
(男子20~24才)
R ⎛⎜自由度 ⎞⎟ =0.726
S
D・W
R(
S
D・W
H S = e4.758・WS−´0.199 ・L0f.019 ・PCT 0.138
H S = e4.776・WS−´0.143・PCT 0.130
( 6.79 )
( 2.21)
eHW=-0.14
( 2.38)
R(
〃
S
D・W
スのベキ係数をもち,労働時間に対してプラス
- 15 -
にきいている。
さきの所得=余暇選好に関する仮説でのべた
ベッカーの説によれば,賃金上昇の所得効果が
消費時間の生産性向上に伴う所得効果によって
一部相殺されていることになり,したがって,
賃金上昇がもたらす所得効果(代替効果により
相殺された残余)は,このケースでは他のケー
スに比べて高く出る結果となっている。
労働時間の賃金に対する弾性は,PCTを加え
たケースでは,男女計でeHW=-0.14となり,さ
きのLf,Lyのみを追加したケースケース2~
4での男子の各労働者層について得られた弾性
値にかなり近い値になるが,さきの産業による
クロスセクションデーターで算出したものに比
べると低い値を示している。一方男子は,20~
24才層がeHW=-0.25,男子年令計で e HW =-
0.20~-0.23,男子40~49才で, eHW =-
0.18と概ね-0.2前後の値に近づいてくる。こ
れらの値は男子について,はさきの産業による
クロス・セクション・データーで得た値にかな
り近いものになっている。
もっともPCTは消費時間の生産性の代理変数
として身の回りの用事,家事,レジャーその他の
消費間の節約に役立つような耐久消費財の普及
率を用いたものであるが,その問題点としては
第1には,これらの耐久財は女子の時間節約に役
立つ品目の割合が大きく,男子,とくに中高年
層の労働時間に対する影響は,主婦の家事,育
児労働の軽減のための支出増加など,世帯員と
の間の時間のアロケーションを通した間接的な
影響とみられるものが多くなること,第2には,
以上のような問題点はなお残されているが産
業別,地域別の両データーからみると,大まか
にみて労働時間は実質賃金(1時間当り)の
1%の減少につき0.2%前後の割で減少するの
ではないかと思われる。
(3)他の回帰計測結果との比較
1)わが国での計測結果との比較
わが国の労働時間決定要因についての計量分
析はきわめて少ないが,わが国の産業別労働時
間を付加価値による労働生産性によって回帰し
たものとして,経済審議会労働専門委員会報
告10)がある。これによって,労働時間の労働者1
人当り付加価値額に対する弾性値を算出してみ
ると-0.11~-0.13となる。
つぎに,国別データーによって,労働時間と
国民1人当り所得との関係をみた計測例として
は,前記労働力専門委員会報告および労働省算
出結果11)とがある。同様にして,これらから
労働時間の所得に対する弾性を算出してみる
と,前者では-0.169,後者の労働省算出では
-0.078となる。内容は後掲参考資料-1,-2
を参照されたい。
いずれにおいても,所得ないし,その背景に
ある労働時間の生産性と労働時間との間には負
の相関があることが立証されるが,その弾性値
(絶対値)は,われわれの分析に比べてやや低
い。
2)アメリカにおける計量分析結果との比較
わが国における計量分析は少ないので,外国
における研究結果と比較してみよう。
このPCTは労働時間よりも,女子世帯員などの
労働時間の決定要因については,アメリカで
有業率の上昇に及ぼす効果のほうが大きいので
の研究が進んでおり,われわれが入手できた文
はないかとみられること,第3には耐久財購入に
献もすべてアメリカのものである。
先駆的な研究としては前述したダグラス12)の
伴う追加所得への需要を反映するものではない
かということ,第4には,PCTを表わすものと
して用いている耐久財普及率が従属変数になっ
(注)10) 経済審議会労働力専門委員会「新時代の
ているのではないかということなどがあげられ
能力開発と労働福祉」
(昭和47年4月)125頁お
よび206頁。
よう。この点については消費時間の生産性を示
11)労働省「労働白書」
(昭和47年度版)143頁。
すより適切な代理変数を得ることができなかっ
1 2 ) P a u l H . D o u g l a s: “ T h e T h e o r y o f
たため,十分な検討はつくし得なかった。
- 16 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
ものがあげられる。比較的最近の計量分析に
は,フィネガン(T. Aldrich Finegan)13),フ
ライシャー(B. M Fleisher)14),オーエン(前
記)15),ロング(Claren ce D. Long)16),ウイ
ンストン(Gordon C. Winston)17),のものな
どがある。
このうち,クロス・セクション・データーに
よるものには,ダグラスの産業別,州別デー
ターによる分析,フィネガンの産業別,職種別
データーによる分析,フライシャーの白人,非
白人別,所得階級別データーによる分析,ウイ
ンストンの国際比較データーによる分析などが
あげられる。
時系列データーによるものとしては,ダグラ
スおよびオーエンの研究があげられよう。ロン
グの場合は,回帰計測の手法は用いていない
が,アメリカ,イギリス,カナダ,ドイツの時
系列データーから,労働時間の実質賃金に対す
る弾性が,国別,期間別に算出されているので
参考になる。
これらの論文にあげられている計測結果は,
本章末尾の参考資料-2に掲げてある。
Wages” Chapter XII: 1957.(first published 1934.)
。
13)
T. Aldrich Finegan: “Hours of Work
in the United States: A Cross-Sectional
Analysis.” Journal of Political Econo
my, October 1962.
14) Belton M. Fleisher: “Labor Economics: Theory and Evidence”: PrenticeHall Inc, 1970.
15) John D. Owen: “The Price of Leisure”
Rotterdam Uni-versity Press. 1969.(斎
藤精一郎訳「レジャーの経済学」
)。
16)Clarence D. Lonng: “The Labor Force
クロス・セクション・データーによる計測結
果については,労働時間の賃金に対する弾性値
にはかなりの差がみられる。
(イ) 産業別によるクロス・セクション分析
まず,フィネガンは,産業別クロス・セク
ション・データーから次のような結果を得てい
る。
1950年144産業interviewデーターでは週当
り労働時間の1時間の短縮は,i)0.1$の賃金
引上げ,ii)年間労働週3.6週短縮,iii)就学年
数1.6年の短縮,iv)6ポイントの黒人雇用率増
加,v)24ポイントの婦人雇用率の上昇で引起さ
れる。労働時間の賃金に対する弾性は,-0.35
となる。
同じく製造業の59産業のinterviewデーター
では平均年令にかかる符号が負になるほか,全
般的に男子労働者と賃金の負の相関が支持され
ており,労働時間の賃金に対する弾性は-0.25
の値が算出される。このほか,産業別クロスセ
クション分析の例としてはダグラスが賃金のみ
を説明変数として回帰したものがある。この場
合の弾性値は,17産業クロスセクションでは
1914年,-0.20,1926年-0.17,1919年の産業
クロスセクションでは男子-0.13,女子-0.16
を得ている。
われわれの計測結果に近いのは,フィネガン
の59製造業,ダグラスの17産業の1914年および
1926年の結果である。
(ロ) 地域別によるクロス・セクション分析
ダグラスが1919年州別データーから算出した
ものが入手できた唯一の例である。ダグラスは
賃金だけを説明変数として回帰し,賃金に対す
る弾性としては男子-0.30,女子-0.20を得て
いる。
Under Changing Income and Employment”:
National
Burean
of
Research, Numbor 65. GeneraI Series:
Princeton University Press 1958. p272.
17) Gordon Chester Winston: “An International Comparison of Income and Hours
of
(ハ) 職種別によるクロス・セクション分析
Economic
Work” Review of Economics and
Statistics XLVIII. No.1 February, 1966.
フィネガンは,職種別についても前記(イ)の産
業別と同じような分析を加えている。説明変数
としては賃金など6つの変数を用いている。うち
賃金に対する時間の弾性は,1950年323職種で
-0.31,1940年128職種で-0.31とそれぞれ同じ
値の高い弾性を得ている。
- 17 -
(ニ) 収入階級別によるクロス・セクション
分析
収入階級別データーを用いたものとしては,
フライシャーが1965年の45~49才層について分
析したものがある。この分析では労働時間の賃
金に対する弾性は白人-0.11,非白人-0.09と
やや低い。
フライシャーは,フィネガンの前記の結果に
比べて弾性値が低くなった理由として,i)年令
が45~49才グループに限られていること,ii)説
明変数が1つしか用いられていないことが原因
であるとのべている。
なお,ベッカー18)は,所得階級別などクロ
ス・セクション分析での所得と労働時間との間
る分析結果では,データーの違い,用いた変数
の数,線型,対数型など用いた回帰式の型の違
いなどがあって結果にはかなりの幅があり賃金
に対する弾性も,-0.1%前後から-0.3%前後
までのものが得られている。うち弾性値として
-0.1%前後の低い値を得ているのは,フライ
シャーの所得階級別,ウインストンの国別,ダ
グラスの1919年産業別(性別)など,中間の-
0.2前後の値を得ているのは,ダグラスの191
4年および1926年の17産業別などである。-0.25
から-0.3前後の高い値を得ているのは,フィ
ネガンの1950年144産業,同製造業59産業,1950
年323職種,1940年128職種,ダグラスの1919年州
別などである。
のネガティブ・スロープがタイムシリーズによ
3 タイム・シリーズ・データーによる
所得=余暇選好の分析
る場合に比べて小さくなるのは,前者では,伝
統的代替効果が大きく出るためであるとのべて
いる。
(ホ) 国別データーによるクロス・セクショ
ン分析
ウインストンが,1953~60年の各国の労働時
間と1人当り国民所得から計測したものがあ
る。これでは,労働時間の所得弾性は-0.1前
後と計測されている。
これらのクロス・セクション・データーによ
注) 18) ベッカーの説によると,所得上昇による
代替効果は消費時間の生産性上昇による代
替効 果で 相殺 され る が ,所 得に よ るクロ
ス・セクションは,そもそもが労働時間の
生産性による区分であって,その格差は消
費時 間の 生産 性格 差よ り大 であ る。 した
が っ て,同じコモディティ生産に要する時
間の長さは所得階級間ではあまり格差がな
く,一方時間の価格(forgone-earnings)
の格差は大となり,このため同一コモディ
ティの価格は高所得層ほど高くかかること
になる。これに比べると,カレンダータイ
ムではデーターは消費時間と労働時間の両
生産性に対して元来局外中立的であり,一
方のみが強くきくことがない。(なお,前記
注1)論文P507参照)
。
(注)19)前掲フィネガン論文(注13)P456。
(1)時系列分析上の仮説と時系列モデル
時系列の計量分析はオーエン以外にはほとん
ど例がない。
産業別などのクロス・セクション・データー
では,賃金格差(=労働生産性格差)の違いな
どを背景として,長期間をかけて形成されてき
た労働時間格差を分析の対象としているのに対
して,時系列分析では時々刻々に変化する労働
時間を分析の対象とする。
このため,タイム・シリーズ・データーで
は,時間制度の硬直性や,企業側需要の標準労
働時間からの一時的な乖離への選好(Prefe
rences about temporary deviations from
the normal work-Week)19)が混在して働らく
ために分析を難かしくしている。
いわゆる所得=余暇選好の理論は,労働者の
賃金と労働時間との自由な選好を前提とする
が,労働時間には企業の定めた制度としての性
格があり,形成された習慣の影響も無視できな
い。
労働者は企業の提示する労働時間を受け容れ
るか,就職を断念するかの選択についてのみ完
- 18 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
全に自由であり得る20)。
休暇,早退,欠勤による時間の選択も,職場
でのきがね,昇進への影響,場合によっては失
業の危険を覚悟しなければならないなど,有
形,無形の制約があるからである。
しかし,その反面労働者の意思に反する長い
労働時間は,労働力確保の困難,欠勤増加,労
働意欲の低下,労働生産性への影響などをつう
じて企業活動に障害を起す原因となる。短かす
ぎる労働時間も所得への不満を増大させ,内職
やムーンライトニングの原因となる。その限り
では,長期的には労働者の自由意思も相当程度
反映するであろうとみられている21)。
ところで,労働時間の制度的な硬直性は所定
内労働時間に,一層強く反映しているとみてよ
いであろう。所定内労働時間は,法規の改正か
企業が時間制度を改訂するか,早退,遅刻,欠
勤,休暇などによってしか変化し得ないからで
ある。
しかし,このような時間制度の下において
も,労働時間への需要がより高いレベルにある
ときには,現実の労働時間は超勤の常態化に
よって事実上延長され,逆に長時間労働への労
働者の不満の高まりに対しては時間制度に手を
つける前に,まず所定外労働,休日出勤の減少
によって事実上の時短が行なわれよう。その意
味では,労働者の自由意思は総実労働時間のほ
うにより反映されやすいが,一方景気変動に伴
う仕事の繁閑によって,短期的,循環的変動を
くり反すことが分析を難かしくする。
そこで,われわれは,総実労働時間について
は好況期をとることにより条件をそろえ,制度
的側面を反映する所定内労働時間については全
期間(昭和30年~昭和47年)と好況期のそれぞれ
について分析を加えることとした。
対象は全産業および製造業である。
(2)変数の種類
(被説明変数)
i)年平均月間総実労働時間 HC
ii)年平均月間所定内労働時間 HS
iii)年平均月間労働日数 DW
ただし,潤年については日数調整による
修正を加えている。
労働時間数は基準年次(昭和45年)を基
準とし,抽出替え等による補正済の労働時
間指数から算出しているため,30~44年に
ついては,なまのデーターとは若干の差が
ある。
資料:労働省「毎月動労統計」
(説 明 変 数)
i)賃
金
イ)年平均1時間当り実質定期給与 WC´
ロ)年平均所定内労働1時間当り実質所定内
賃金 WS´
ただし,賃金は45年価格,抽出替え等に
伴うギャップ修正が必要であるため,基準
時賃金(45年)と補正済の賃金指数とから
算出した。したがって30~44年については原
データーの生の賃金額ではない。
なお,所定内賃金は,所定内外別労働時
間と,定期給与から次式により推計した。
WC ⋅ H S
WS =
H S + ( H C − H S ) × 1.25(割増率 )
⎛WC : 月間定期給与 ⎞
⎜W :月間所定内給与 ⎟
⎝ S
⎠
ハ)労働者構成変化に伴う賃金修正係数Lmix
ただし,労働者構成としては,性別,労
職別,年令別をとりあげ,昭和45年構成に
固定するための修正係数として作成した。
資料:労働省「毎月勤労統計」
総理府統計局「小売物価統計調査」
(人口5万以上都市消費者物価
(注) 20)小尾恵一郎氏「労働時間と賃金格差」
(東
数)
洋経済1959.
「賃金問題と賃金政策」
)
。
21)佐野陽子氏「アメリカにおける労働時間
なお,Lmixは性,労職別は毎勤を用
の計量的分析」(経済評論1972年11月「労働時
いたが,年令別については,労働省
間の決定要因は何か」)。
- 19 -
「賃金構造基本調査」の各年令階級別賃
定して,成人男子雇用者1人当り移動時
金および労働者数(各年ごと)を用い
間を求める。これから通学および雇用者
て算出
の通勤以外の移動時間を差引いて,雇用
Lf
iii)若年比率 Ly
iv)労務者比率 Lb
ii)女子比率
者の通勤時間を求める。
ロ)経済企画庁「消費者動向予測調査」の雇
用者の通勤時間(昭35~37年のみ調査)
v)臨時,日雇名儀比率
Ld
をデーターとして追加する。なおこの通
Lmo
vi)労働異動率
勤時間の35年の値は,前記イの35年の値に
(月の中途入離職の月間平均労働時間へ
ほぼ一致する。
の影響)
ハ)人事院の全国,国家公務員の1人当り
以上ii)~vi)は構成変化によりバイアス
通勤費支給実績を通勤費デフレーターで
がかった結果になっていることを予想して加
実質化し,40年前後,2カ年のデーター
えた。
を上記に追加する。
資料:労働省「毎日勤労統計」
「賃金構造基本
ニ)通勤時間を,通勤距離とスピードアッ
調査」
「雇用動向調査」
プの関数と考え,その代理変数として,
vii)教 育 機 会
全雇用量(ないし大産業都市就業者集中
イ)平均教育年数
E1
率)
,全人口,陸上交通資本ストック(港
学歴別雇用者数をウェイトとして算出
湾を除く国鉄および道路)を用いて,上
した最終学歴までの雇用者の平均教育年
記イ)~ハ)の通勤時間を最小自乗回帰
数,ただし新中卒=0年で算出。
し,その回帰式より他の年次(昭30~47年)
資料:労働省「賃金構造基本調査」
を推計する。
ロ)高等教育機関在学者比率
E2
資料:NHK「国民生活時間調査」(昭
35,40,45)
高校以上の教育機関に在学中の学生,
生徒数の全就業人口に対する比率(労働
経済企画庁
「消費者動向予測調査」
人口の教育負担)
(昭35,36,37)
資料:文部省「学校基本調査」
人事院「国家公務員給与実態調査」
総理府統計局「労働力調査」
viii)消費時間の生産性
労働省「毎月勤労統計」
PCT
総理府統計局「国勢調査」
「事業所
消費生活の時間節約耐久消費財の商品別
統計」
「就業構造基本調査」
普及率を単純平均したもの。なお新製品出
経済企画庁計画局算出「交通資本
現などで新らしい商品が追加され,品目数
ストック」
x)レクリエーションの相対価格 P´(R)
が変ったときは,
追加時点でそれぞれ新旧2
P´(R)=P(R)/CPI
ただしP(R)は商業的レクリエーション
の物価指数 CPIは総理府統計局「消費者
系列をリンクして接続している。
資料:経済企画庁「消費者動向予測調査」
ix)通勤時間
COT
平日1日当りの往復通勤時間推計値。
通勤時間の推計は次による。
イ)NHK「国民生活時間調査」
(昭35,40,
物価指数」
(人口5万以上都市,総合)
(3)
労働時間の回帰式と計測結果
45年)
の成人男子1人当りの平日の移動時
回帰方程式はクロス・セクション分析と同様
間から無職者,家族従業者,業主につい
両対数型を用い,最小自乗法を用いて回帰する。
総実労働時間については,昭和31年以降47年
ては通勤等の移動の必要がないものと仮
- 20 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
までのうちの好況年(N=10),所定内労働時間
については昭和30年以降47年までの各年(N=
18)を対象とする。
総実労働時間と所定内労働時間の分析は,そ
れぞれ回帰式に用いた変数の種類ごとに回帰結
果を対比しながら進めることとする。
なお,労働時間および賃金は何れも「毎月勤
労統計」を用いるから,規模30人以上計,性年
令計の平均値である。
1) 賃金率および労働者構成に関する変数に
よる回帰
総実労働時間HCの回帰式においては,時間
当り実質賃金率としては,1時間当り所定内賃
金Ws´および1時間当り定期給与WC´を用いた
場合とをそれぞれ計測してみたが,何れを用い
てもほとんど変りのない結果を得ている。以下
説明を節約するため,1時間当り所定内賃金を
用いたケースのみについて述べる。
(イ) 総実労働時間(昭31~45年好況期N=
10)
実質賃金率により回帰すると
(産業計T )
i) H C = 5e.852・WS−´0.109
合や,逆にその比率減少で平均賃金上昇が個別
賃金上昇よりも大きく表われている場合があ
る。そこで,性,年令,労職,常用・臨時日雇の
構成固定賃金への換算係数Lmixを加えてみる。
この場合,WS´・Lmixは構成固定賃金である。
これはまた賃金格差を銘柄別労働者の能力差
とみる場合には能率賃金に等しい。回帰すると,
(産業計T )
i) H C = e6.001・WS−´0.137
(13.04)
⎧R
= 0.974
⎨
⎩ D ⋅ W = 1.705
ただし( )はt値
所定内賃金の代りに定期給与(時間当り)を
用いても,結果はほとんど変らない。弾性値eHW
は-0.11~-0.14とクロス・セクションに比べ
て小さい。
平均賃金は個別賃金が上昇しているにもかか
わらず,女子,若年,臨時の増加で平均賃金と
してはほとんど上昇しない結果となっている場
・ (WS ′ ・ Lmix )
(8 63)
⎧R
= 0.944
⎨ D ⋅ W = 0.911
⎩
(製造業F )
−0 157
6 696
ii) H C = e
・ (WS ′ ・ Lmix )
(11 39 )
⎧R
= 0.967
⎨
⎩ D ⋅ W = 1.519
賃金については調整されているが,時間につい
ては調整されていないから,これを調整するも
のとして女子比率Lf,労働者比率Lb,若年比率
Ly,臨時日雇比率Ld,労働異動率Lmoを追加して
みる。
ただし,
「毎勤」は定義上は常用を対象として
(10.15)
⎧R
= 0.959 (自由度調整済)
⎨
⎩ D ⋅ W = 0.998
ただし( )はt値
(製造業F )
− 0 126
6 531
ii) H C = e
いるから,Ldは常用であって臨時日雇名儀の
者(いわゆる臨時工,季節工,パートなど)の
比率である。異動率Lmoは,月の中途入職で月
間勤務日数が少い者についても,同じく1人と
して月間労働時間が算出されているという統計
上の理由から追加した。なお,賃金は時間当り
賃金であるから,中途入離職の影響は調整され
ている。
有意の結果を得たものを示すと次のとおりで
ある。なお産業計はどの結果もダービン・ワト
ソン比が低いので,比較的良い結果を得たもの
から選ぶと,
(産業計T )
6 573
iii) H C = e
⎧R
= 0.965
⎨
⎩ D ⋅ W = 1.444
- 21 -
−0 14
・ (WS ′・Lmix )
(10 76 )
・Lmo
0 057
( 2 36 )
5 801
iv) H C = e
− 0 09
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
( 2 86 )
⋅ Ly
ii) H S = e
(1 39 )
⎧R
= 0.950
⎨ D ⋅ W = 1.486
⎩
(製造業F )
iii) H C = e ⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
(8 57 )
⋅ Ld
が比較的良いものを掲げると,
(産業計T )
(1 65)
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
(11 16 )
⋅ Lmo
iii) DS = e
0 036
⋅ WS ′
( 3 96 )
−0 099
6 124
iv) H S = e
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
(19 19 )
0 021
⋅ Lmo
(1 78)
⎧R =
0.978
⎨ D ⋅ W = 1.069
⎩
(製造業F )
6 213
iii) H S = e
−0 108
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
( 22 00 )
⋅ Ld
0 015
( 2 06 )
−0 085
( 21 39 )
消費時間の生産性の代理変数PCTの内容は,
− 0 098
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
(17 94 )
⎧R
= 0.975
⎨ D ⋅ W = 0.687
⎩
(製造業F )
5 684
0 101
⎧R
= 0.987
⎨ D ⋅ W = 1.303
⎩
弾性値eHWは-0.1前後で,クロス・セクシヨン
および総実労働時間のタイムシリーズの何れに
比べても低い。
2 ) 教育および消費時間の生産性の効果
教育の変数としてはE1,E2を用いる。
E1は労働者の平均教育年数(義務教育卒=0
とした最終学歴までの教育年数)
,E2は労働者の
子弟教育負担(就業人口対高等教育在学者比率)
である。
6 151
i) H S = e
⋅ Ly
= 0.987
R
D ⋅ W = 1.617
(1 00 )
⎧R
= 0.982 (自由度調整済 )
⎨ D ⋅ W = 0.905
⎩
ii) H S = e
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
( 6 84 )
⎧R
= 0.967
⎨ D ⋅ W = 1.647
⎩
産業計のうち,Lyを加えた場合は賃金のパラメ
タのt値および重相関係数 R が他の場合より低
くなるから,これを除外すると,労働時間の賃
金に対する弾性は,どのケースでも-0.14~
-0.16の範囲に集まってくる。この値は,製造
業の賃金のみを説明変数とした場合の弾性値よ
りも僅かに高い程度で,製造業についてはあま
り変化がない。その他の結果は第5表その1参照。
なお,以上の分析では学歴構成が調整されて
いないが,学歴の意味する内容については,種
々の説があるので後に検討を加える。
(ロ) 所定内労働時間(昭30~47年N=18)
所定内労働時間について同様の回帰計算を行
なうと第6表その1のようになる。
賃金のみを用いて回帰すると,
(産業計T )
5 624
− 0 065
5 476
− 0 16
6 827
i) H S = e
( 22 68)
Lf……Lmoを加えた場合にもダービン・ワトソ
ン比は一般に低いが,うち,t値, R ,D・W
0 05
⎧R
= 0.973
⎨ D ⋅ W = 2.271
⎩
iv) H C = e
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
⎧R =
0.984
⎨ D ⋅ W = 0.960
⎩
− 0 14
6 557
−0 112
6 279
0 105
−0 098
⋅ WS ′( 25 14)
⎧R
= 0.987
⎨ D ⋅ W = 1.207
⎩
(1)参照,その意味および問題点については第一
章1のベツカーの説および都道府県別データー
によるクロス・セクション分析参照。
(イ) 総実労働時間(昭31~45年好況期,
N=10)
平均教育年数E1は,Lmixにより賃金が調整済
の場合は労働時間について調整するものとして
加えた。そのほか,LmixをLf,Lb,Ly,Ldの全
体を表わす独立変数として用い学歴構成変化を
表わす独立変数としてE1をそれぞれ用いる場合
- 22 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
所得効果とは逆方向となり,符号条件としては
プラスが想定される。
についても算出してみた。
(産業計T )
6 655
i) H C = e
⋅ WS ′
−0 276
( 3 98)
(産業計T )
0 253
⋅ E1
( 2 42)
4 091
ii) H C = e
⋅ WS ′
−0 173
( 4 10)
0 438
⋅ ( Lmix )
iv) H C = e
(3 58)
⎧R
= 0.993
⎨ D ⋅ W = 2.781
⎩
7 369
iii) H C = e
7 725
−0 214
0 113
(WS ′ ⋅ Lmix )
⋅ E1
4 563
vi) H C = e
(製造業F )
i) H C = e
⋅ WS ′
( 4 55)
⋅ E1
ii) H C = e
⋅ WS ′
−0 258
( 3 82 )
⋅ WS ′
−0 188
0 098
0 026
( 2 78)
( 0 83)
( 2 62 )
0 274
(1 67 )
− 0 265
( 2 36 )
⋅ PCT
( 4 06 )
0 185
0 351
⋅ E1
0 006
⋅ PCT
( 0 90)
(3 19)
( 2 50 )
− 0 181
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
⋅ E1
( 2 64 )
(5 81)
− 0 287
8 028
( 0 86 )
(WS ′ ⋅ Lmix )
( 2 44 )
0 149
⋅ E1
0 012
⋅ PCT
( 0 93)
( 0 84)
⎧R
= 0.965
⎨ D ⋅ W = 1.494
⎩
0 151
⋅ E1
4 129
( 0 96 )
vi) H C = e
−0 227
WS ′
0 495
⋅ Lmix
(3 43)
⎧R
= 0.967
⎨ D ⋅ W = 1.344
⎩
上記のうち,有意な結果を得ているのは,そ
れぞれii)のケースである。なお,i)について
は製造業では有意であるが,産業計では良い結
果が得られていない。
ii)ではeHWは,産業計-0.17,製造業-0.25
とクロスセクションの結果に近くなる。
なお,E1のパラメタの符号は各ケースともプ
ラスで,後に(ハ)で述べる理論的要請を満してい
る。
子弟教育の負担を示すE2を用いた場合には
有意の結果は得られていない。
つぎに,消費時間の生産性の代理変数PCTを
追加してみる。ベツカーのいう,消費時間の生
産性向上によって生ずるフルインカムの所得効
果が働くとすれば,それは,マネーインカムの
0 012
⋅ PCT
⎧R
= 0.966
⎨ D ⋅ W = 1.651
⎩
0 261
v) H C = e
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
⋅ E1
Lmix
7 033
iv) H C = e
⋅ ( Lmix )
7 853
− 0 259
(製造業F )
( 2 56 )
⎧R
= 0.988
⎨ D ⋅ W = 2.141
⎩
iii) H C = e
( 2 73)
⎧R
= 0.993
⎨ D ⋅ W = 2.773
⎩
0 281
⎧R
= 0.985
⎨ D ⋅ W = 1.796
⎩
5 279
0 027
⎧R
= 0.968
⎨ D ⋅ W = 1.251
⎩
( 0 71)
R
= 0.940
D ⋅ W = 0.775
−0 309
⋅ PCT
( 7 71)
v) H C = e (WS ′ ⋅ Lmix )
(1 72 )
6 809
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
⎧R
= 0.969
⎨ D ⋅ W = 1.431
⎩
0 197
⋅ E1
( 4 36)
−0 184
7 008
⎧R
= 0.974 (自由度調整済 )
⎨ D ⋅ W = 1.055
⎩
( 2 36)
0 299
⋅ E1
( 3 15)
− 0 015
⋅ PCT
(1 46 )
⎧R =
0.990
⎨ D ⋅ W = 2.947
⎩
製造業の最後の式を除けば他は何れもPCTが
プラスの効果を及ぼすという予期した結果を得
ているが製造業では,PCTを追加した場合のt
-値がやや低くなっている。PCTの指標には時
間節約的耐久消費財を用いており,これは製造
業の主導的産業の生産物であるため,製造業賃
金とPCTとの間に一定の関係があると思われる
こと,PCTが非農家全世帯についての普及率に
よっていること等に原因があると思われる。
なお,PCTを独立変数として用いるについて
の問題点は地域別分析ですでにふれたが,この
ほかとくにタイム・シリーズにおいてはPCTに
は消費者の,アメリカ的文化生活志向,デモン
- 23 -
ストレーション効果,依存効果などによるこれ
らの財への需要のドラスチックな高まりや,そ
の結果としての追加所得需要の発生などを示す
変数としての側面が強いことに留意する必要が
ある。
(ロ) 所定内労働時間
同様の計算を所定内労働時間について行なっ
てみると第6表その2の結果が得られる。主要な
ものを掲げると。
(産業計T )
−0 161
5 989
i) H S = e
WS ′
⋅ E1
( 5 19)
0 117
( 2 46 )
⎧R
= 0.986
⎨ D ⋅ W = 1.272
⎩
4 700
ii) H S = e
−0 107
WS ′
( 3 42 )
0 218
0 081
⋅ Lmix
⋅ E1
(1 99 )
( 2 92 )
⎧R
= 0.991
⎨ D ⋅ W = 1.857
⎩
6 310
iii) H S = e
(WS ′ Lmix )
− 0 118
0 011
PCT
( 3 10)
(15 11)
⎧R
= 0.984
⎨ D ⋅ W = 1.009
⎩
4 925
−0 098
0 158
0 044
( 2 73)
(1 70 )
( 0 79 )
iv) H S = e WS ′
(製造業F )
i)
⋅ Lmix
⋅ E1
0 005
⋅ PCT
(1 19 )
⎧R
= 0.989
⎨ D ⋅ W = 1.936
⎩
5 989
( −0 134)
⋅ WS ′
HS = e
( 3 58)
0 060
⋅ E1
iv)オーエンが,最も重視するものとして
( 0 97 )
⎧R
= 0.987
⎨ D ⋅ W = 1.230
⎩
4 913
ii) H S = e
−0 097
WS ′
( 2 30)
は,教育機会が労働時間に規模の経済をもたら
し,レジャー需要を弱めがちにする効果があげ
0 163
⋅ Lmix
0 034
られている24)。それによれば,高い教育を必要
⋅ E1
( 0 56)
(1 61)
(注) 22)前出注13)論文参照。
⎧R
= 0.988
⎨ D ⋅ W = 1.513
⎩
4 518
iii)H S = e
− 0 108
W ′S
( 2 69)
やや低いが比較的良い結果を得たのは両産業と
もii)のケースである。
なお,所定内労働時間の賃金に対する弾性
は,-0.1前後のところでほぼ安定している。
(ハ) 教育年数の意味する内容
教育機会の増加が労働時間に及ぼす影響につ
いては幾つもの側面が指摘されている。
i)フイネガン22)は,高い教育水準の平均当り
収入は,低学歴者との相対関係でその所得を過
大評価させる結果となるから,労働時間につい
ての所得効果は,本来は教育のコストを除いた
ネットの賃金で計られるべきであり,
ii)しかも教育水準の向上によって生ずる時間
当り収入の増加は,所得の真の増大を一層過大
評価させ,所得=余暇選好の推定にバイアスを
与え,所得効果を過少評価させる(つまり,高
学歴者増加による学歴構成の変化が,学歴別の
賃金上昇以上に全学歴計の平均賃金上昇を大き
くする)とのべている。
iii)オーエン23)は高学歴者ほど嫌悪感の少い
快適な労働が与えられ,労働が望ましいもので
あることを教育されることが,長い労働時間へ
の抵抗を少なくすることになり,また,読書力
の向上による時間節約,消費財と消費時間との
使い方の向上も教育から派生する一つの効果と
してあげられるとしている。後者は,ベツカー
のいう消費時間の生産性向上の効果と同じであ
ろう。
23)
0 262
⋅ Lmix
( 2 45)
0 092
⋅ E1
(1 41)
注15)論文参照。
24)オーエンは教育のもたらす規模の経済に
− 0 008
⋅ PCT
ついて次のように説明している。
(1 83)
Y;年間消費ないし所得
⎧R
= 0.990
⎨ D ⋅ W = 1.934
⎩
H;年間労働ないし教育をうける時間
W;時間賃金率
S;教育をうける時間の総計
所定内労働時間については,PCTを追加した
ケースは有意でない,製造業ではE1のt-値が
P;生涯労働または教育期間(学令前と
- 24 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
とする労働に,教育期間を償う高率の時間当り
賃金が支払われる限り,高学歴者の労働時間を
より長くするという。
3) レクリエーション相対価格の効果
これまで計測してきた所得効果は価格効果
(代替効果)による相殺分が差し引かれた残余
である。このうちレジャー時間の価格効果は,時
間の価格が時間当り賃金に等しいという仮説に
よって賃金の所得効果と区別して計測すること
が事実上出来ない。しかしベツカーの説に立て
ば,この価格効果は時間と財の組合せによって
産出されたコモディティの選択に影響を及ぼす
ものであり,それはレジャー時間の価格のほか
に,レジャーのために投入される財,サービス
の価格の効果を含む。
オーエンは,レジャー時間の価格効果を算出
するために,消費者物価のほかに,さらに消費
時間の価格を追加した一般物価(P.I)を作成
し,これとレジャー時間の価格との比をとって
レジャーの相対価格を算出しているが,この一
退職後は無視した年数)
ここでWは,Sの関数である。
般物価については批判があり,かつ,われわれ
がこれによって計測してみたところでは,良い
結果が得られていないので採用しない。
ここでは,商業的レクリエーション相対価格
P´(R)を用いることとする。
商業的レクリエーション価格指数P(R)とし
ては,この「経済分析」掲載論文「レジャー消
費とレジャー活動の計量分析」のなかで算出し
たものを用いる。これは,レジャー関連の品目
分類による財・サービス価格を可能なかぎり網
羅的に拾いあげ,それに一部の用途別の推計で
採用した費目の価格を加えて作られている。相
対価格としては,人口5万以上都市消費者物価
(CPI)に対する相対比
P´(R)=P(R)/CPI
を用いる。
符号条件は,労働時間に対しては正である。
(イ) 総実労働時間(昭31~45年好況期N=
10)
回帰計測結果は第 5 表その 3 のとおりであ
る。
主要な計測結果を示すと
(産業計T )
いま,個人はHの各水準においてYを極大
− 0 174
5 174
0 031
⋅ (WS ′ Lmix )
i) H C = e
化するものとし, * でその最適を示すもと
⋅ PCT
( 3 57 )
(8 22 )
のする。
⎛ HP − S ⎞ ,
Y =W⎜
⎟
⎝ P ⎠
dY ⎛
S⎞
W
= ⎜ H − ⎟WS −
dS ⎝
P⎠
P
dY *
= 0 とおくと
dS
W*
S * = HP −
WS *
⎛ HP − S * ⎞ ⎛⎜ W *2 ⎞⎟
Y* = W * ⎜
⎟ =
P ⎠ ⎜⎝ WS * P ⎟⎠
⎝
dY *
dY * dS
= YH * +
= YH = W *
dH
dS dH
Y*
W *S *
=W *−
だから
H
PH
Y*
<W *
H
ここで労働に対する収穫逓増を生じること
⋅ P′(R)
0 376
(1 88)
⎧R
= 0.978
⎨
D
⋅
W
= 1.796
⎩
4 188
ii) H C = e
−0 176
WS ′
0 311
⋅ Lmix
( 3 55)
0 0087
⋅ PCT
(1 13)
0 1569
E1
(1 97 )
( 2 22 )
0 106
⋅ P′(R )
( 0 73)
⎧R
= 0.992
⎨ D ⋅ W = 2.831
⎩
(製造業F )
−0 165
3 923
i) H C = e ⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
( 6 90 )
になる。WはSの関数であり,高学歴者ほど規
0 633
⋅ P′(R)
模の経済が大となる(利子率を加えたケース
( 2 60 )
は省略)
- 25 -
0 019
⋅ PCT
(1 78)
また,わが国のように,終身雇用的な制度が
⎧R
= 0.981
⎨ D ⋅ W = 2.088
⎩
一般的である場合には,職場が主,通勤時間が従
−0 196
3 189
0 293
0 188
i) H C = e WS(′3 39) ⋅ Lmix( 2 36) ⋅ E(12 31)
ていること,都市における通勤者の大量輸送網
( 2 36 )
が整備されていること等によって,アメリカに
おける場合と同列には比較できない。
⎧R
= 0.993
⎨ D ⋅ W = 2.785
⎩
(4)
(ロ) 所定内労働時間(昭30~47年N=18)
回帰計測結果は第 6 表その 3 のとおりであ
る。
調査産業計の所定内労働時間については,
P´(R)を入れて満足すべき結果の得られたもの
がない。主要な結果を示すと,
(製造業F )
5 389
−0 093
(WS ′ ⋅ Lmix )
(17 21)
0 009
⋅ PCT
( 4 07 )
0 151
⋅ P′(R)
( 2 21)
⎧R
= 0.992
⎨ D ⋅ W = 1.906
⎩
4 193
−0 105
⋅ WS ′
ii) H S = e
いう側面があること,通勤手当の支給が普及し
0 367
⋅ P′(R)
i) H S = e
であり,通勤時間は独立変数とはなり得ないと
( 2 68)
0 169
⋅ Lmix
(1 82)
労働日数についての回帰結果
労働省「毎月勤労統計」の所定労働時間と出勤
日数の関係を比較してみると,所定内労働時間
短縮のほとんどの部分が出勤日数の減少による
ものである。
近年問題にされてきた労働時間問題,レジャ
ー問題も,週休2日制,夏期休暇制度など労働
日数の短縮として論ぜられている。
そこで,労働日数について,所定内労働時間
について行なったと同様の回帰式を計算してみ
ると第7表の結果を得る。
なお,DLは年平均月間出勤日数を用い閏年は
日数調整済である。
主なものを示すと,
0 056
(産業計T )
⋅ E1
( 0 98)
−0 148
3 903
i) DL = e ⋅ WS ′
0 157
⋅ P′(R)
( 5 25)
(1 95)
0 124
⋅ E1
( 2 89 )
⎧R
= 0.982
⎨ D ⋅ W = 1.998
⎩
⎧R
= 0.990
⎨ D ⋅ W = 1.890
⎩
−0 098
4 090
⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
ii) DL = e
製造業で比較すると総実労働時間に比べて,所
定内時間に対するP´(R)の影響は小さい。
4) 通勤時間COTの効果
通勤時間を変数に加えて回帰した結果は第5
表その4および第6表その3のとおりで,通勤時
間増加が労働時間短縮の効果をもたらすという
結果は得られない25)。
(14 95)
0 011
⋅ PCT
(3 80 )
⎧R
= 0.982
⎨ D ⋅ W = 1.526
⎩
2 931
iii) DL = e
−0 106
⋅ WS ′
( 3 19 )
0 164
⋅ Lmix
( 2 05)
0 095
⋅ E1
( 2 23)
問題になる。所得上昇は通勤のコスト上昇
をもたらし,時間のコストは実質賃金率に
(注) 25)オーエンは交通時間については教育と同
じような規模の経済が働くという。なお,
等しいから「住」への需要の弾性が1よりも
オーエンの説については,このほか,本論
小であれば,賃金上昇と通勤は負の相関と
文2-(2)の都道府県別クロセクション分析
なるが,ただし,ベッカーは,マーガレッ
参照。
ト・リード(Margaret Reid)の研究では
「住」への需要の弾性は1よりも大であると
ベッカーの説では,住居の単位スペース
のべている。
当りコストと通勤に要する時間のコストが
- 26 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
eHW =-0.26
⎧R
= 0.984
⎨ D ⋅ W = 2.496
⎩
全Pay-rollグループ
(製造業F )
となっている。
3 937
i) DL = e
eHW =-0.26
−0 157
⋅ WS ′
( 4 23)
〔ロングのタイムシリーズ分析〕
0 123
⋅ E1
ロングは,アメリカの1890~1950年,イギリ
( 2 02 )
⎧R
= 0.982
⎨ D ⋅ W = 2.060
⎩
スの1911~1951年,カナダの1921~1941年(ド
イツは異常な値がでているので省略)の間の幾
− 0 106
4 179
ii) DL = e ⋅ (WS ′ ⋅ Lmix )
(11 30 )
0 00 7
つかの期間ごとに,各10年当り労働時間変化率
(1 54 )
と同じく時間当り実質可処分所得変化率を求
⋅ PCT
⎧R
= 0.975
⎨ D ⋅ W = 1.359
⎩
2 860
−0 114
iii) DL = e ⋅ WS ′
め,これから所得1%の変化に対する労働時間
0 185
⋅ Lmix
( 2 74 )
(1 86 )
0 092
の変化率を算出している。この弾性値は,アメ
(1 54)
リカeHW=-0.20~-0.39,イギリスeHW=-
⋅ E1
⎧R
= 0.984
⎨ D ⋅ W = 2.547
⎩
0.21~-0.77,カナダeHW=-0.28~-0.46と
幅があるが,-0.3前後の値が最も多い。
計測期間における最新の10年間では
結果は所定内労働時間について得たもの((3)-
アメリカ eHW=-0.20
2)-(ロ))にほぼ近い。
(5) アメリカにおける時系列分析との比較
時系列分析にはダグラス,ロングおよびオー
=-0.24
カナダ
=-0.28 となっている。
〔オーエンのタイムシリーズ分析〕
エンが行なった結果がある。 ― 参考資料2参
照 ―
イギリス
オーエンは,主としてレジャー時間を説明す
る回帰式の計測を行なっている。
〔ダグラスのタイムシリーズ分析〕
労働時間を説明したものとしては,1900~
ダグラスの時系列分析は1890~1926年の建設
1961年のうち完全雇用年について,疲労モデル
業および14製造業についてUnion rateまたは
を取り入れて作られた労働需給連立モデルのう
Pay-rollの実質時間賃金と週労働時間との相
ちの労働供給関数がある。変数は週間労働時
関係数および弾性値を算出したものである。
時間の賃金に対する弾性値は,産業別に時系
列分析を行なった結果では,
eHW=-0.2~-0.3
の間の産業が最も多く,15産業算術平均では
eHW=-0.3となっている。なお,この分析に対
間,実質賃金率,レクリエーション価格であ
る。うち,オーエンが良い結果を得たとする疲
労条件の供給関数から労働時間の賃金に対する
弾性値を求めると,eHW=-0.23~-0.25と
なっている。
これらは,何れもわれわれが日本のタイム・
しては,Union rateとPay-rollを混在して使用
したことが弾性値を高くしているという批判が
あるが,これを区分した結果をみると,
製造業Unionグループ(6グループ)
シリーズデーターによって計測した結果に比べ
て高く,むしろわが国の産業別クロスセクショ
ンデーターから得た結果に近い。
- 27 -
第5表
総実労働時間による所得=余暇選好の推計(昭31~45年の好況年,N=10)
その1-労働者構成の影響
No. 産業
1
2
3
4
5
6
7
8
9
推計方程式
T . e aWC
H=
′b
a
b
5.858
-0.109
(9.89)
-0.138
(13.45)
-0.109
(10.15)
-0.137
(13.04)
-0.127
(8.43)
-0.159
(11.70)
-0.126
(8.63)
-0.157
(11.39)
-0.146
(4.22)
-0.157
(10.26)
-0.045
(0.58)
-0.021
(0.39)
-0.088
(2.86)
-0.129
(3.94)
-0.105
(5.11)
-0.140
(8.57)
-0.140
(10.76)
-0.162
(11.16)
F.
6.012
T . e aWC ′b
5.852
F.
6.001
T . e a (WC ′ ⋅ Lmix )b
6.541
F.
6.864
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b
6.531
F.
6.842
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b L f c
6.357
F.
6.696
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b Lb c
3.625
F.
3.712
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b L y c
5.801
F.
6.367
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b Ld c
6.251
F.
6.577
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b ⋅ Lmo c
6.573
F.
6.827
(注) 1)パラメータ値の下の(
c
d
e
f
R
-
-
-
0.957
0.008
0.971
-
-
-
-
0.976
0.008
1.679
-
-
-
-
0.959
0.008
0.998
-
-
-
-
0.974
0.008
1.705
-
-
-
-
0.941
0.009
0.891
-
-
-
-
0.969
0.009
1.490
-
-
-
-
0.944
0.009
0.911
-
-
-
-
0.967
0.010
1.519
-
-
-
0.939
0.010
1.072
-
-
-
0.962
0.010
1.512
-
-
-
0.945
0.009
0.710
-
-
-
0.980
0.007
1.451
-
-
-
0.950
0.009
1.486
-
-
-
0.966
0.010
1.793
-
-
-
0.949
0.009
0.877
-
-
-
0.973
0.009
2.271
-
-
-
0.965
0.007
1.444
-
-
-
0.967
0.010
1.647
0.111
(0.64)
0.040
(0.13)
0.492
(1.06)
0.909
(2.52)
0.105
(1.39)
0.057
(0.96)
0.045
(1.37)
0.050
(1.65)
0.057
(2.36)
0.036
(1.00)
2)H:総実労働時間
WS´:1時間当り実質所定内給与
4)eHW:労働時間の賃金に対する弾性
5)Lf:女子比率
Lb:ブルーカラー比率
Ld:日雇,臨時名儀比率
D・ W
-
)はT - value
3)WC´:1時間当り実質定期給与
S
Ly:若年比率(24才以下)
Lmo:労働異動率
- 28 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
第5表
No.
10
11
12
13
14
15
16
17
産業
推計方程式
H=
そ の 2- 消 費 時 間 の 生 産 性 と 教 育 の 効 果
a
T . e aW S ′b E1c
6.655
F.
6.809
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b E1c
7.369
F.
7.853
T . e aWC ′b Lmix c E1d
3.955
F.
5.580
T . e aWS ′b Lmix c E1d
4.091
F.
5.279
T . e aWS ′b Lmix c E 2 d
3.037
F.
4.291
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b E 2 c
6.489
F.
6.630
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b PCT c
7.008
F.
7.033
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b E1c ⋅
7.725
PCT d
18
19
F.
8.028
T . e aWS ′b Lmix c E1d PCT f
4.563
F.
4.129
T . e a (WS ′ ⋅ Lmix ) b E1c
6.847
F.
7.664
ΔPCT d
(注) 1)T:調査産業計
b
c
d
f
R
S
D・ W
-
0.974
0.006
1.055
-
0.985
0.006
1.796
-
0.940
0.010
0.775
-
0.967
0.010
1.344
-
0.993
0.003
2.718
-
0.992
0.005
2.023
-
0.993
0.003
2.781
-
0.998
0.006
2.141
-
0.979
0.006
1.986
-
0.979
0.008
1.996
-
0.936
0.010
0.847
-
0.970
0.009
1.264
-
0.969
0.007
1.431
-
0.966
0.010
1.651
-
0.968
0.007
1.251
-
0.965
0.010
1.494
-
0.993
0.001
2.773
-
0.990
0.002
2.947
-
0.983
0.005
2.325
-
0.977
0.008
1.904
g
-0.276 0.253
-
-
(3.98) (2.42)
-0.309 0.281
-
-
(4.55) (2.56)
-0.214 0.113
-
-
(1.72) (0.71)
-0.265 0.151
-
-
(2.36) (0.96)
-0.171
0.466 0.199
-
(3.92) (4.77) (3.46)
-0.287 0.239 0.295
-
(5.14) (1.80) (3.66)
-0.173 0.438 0.197
-
(4.10) (4.36) (3.58)
-0.258 0.274 0.261
-
(3.82) (1.67) (2.64)
-0.031 0.516 0.001
-
(1.05) (3.04) (0.04)
-0.071 0.311 -0.035
-
(2.05) (1.46) (1.28)
-0.120 -0.008
-
-
(1.72) (0.21)
-0.126 -0.043
-
-
(4.60) (1.32)
-0.184 0.027
-
-
(7.71) (2.73)
-0.181 0.012
-
-
(5.81) (0.86)
-0.259 0.098 0.026
-
(2.78) (0.83) (2.62)
-0.287 0.149 0.012
-
(2.44) (0.93) (0.84)
-0.188 0.351 0.185 0.006
(4.06) (2.50) (3.19) (0.90)
-0.227 0.495 0.299 -0.015
(3.43) (2.36) (3.15) (1.46)
-0.253 0.095 0.017
-
(2.40) (1.11) (4.26)
-0.247 0.161 0.013
-
(2.63) (1.23) (2.01)
F:製造業
2)WC´:1時間当り実質定期給与
WS´:1時間当り実質所定内給与
3)Lmix:労働者構成変化修正係数
4)E1:雇用者平均教育年数(新中卒=0)
E2:就業者対高等教育機関在学者比率
5)PCT:消費時間の生産性(時間節約的耐久消費財普及率)
6)パラメタ値の下段(
)はT - value
- 29 -
第5表
No. 産業
20
T.
推 計 方 程 式 H=
a
e a (W s・
' Lmix ) b・( P' ( L)) d
4.524
F.
21
T.
5.348
e a (W s・
' Lmix ) b ( P ' ( R)) d
5.534
F.
22
T.
4.171
e a (W s・
' Lmix ) b ( P ' ( RL)) d
6.467
F.
23
T.
6.945
5.151
e a (Ws・
' Lmix ) b ( PCT )c ( P ' ( R )) d
F.
24
T.
F.
25
T.
3.923
e a (Ws・
' Lmix ) b (ΔPCT ) c
( P' ( RL)) d
6.141
6.588
3.970
e aWs 'b Lmix cE1dP ' ( R ) ƒ
F.
3.189
第5表
No. 産業
26
T.
推計方程式
H=
e a (Ws・
' Lmix ) b・
( P' ( R)) d (COT )g
F.
27
T.
e a (Ws・
' Lmix ) b・
( P' (L )) d (COT )g
F.
28
T.
F.
29
T.
a
b
(b<0)
0.330
(1.76)
0.235
(1.61)
-0.116
(5.19)
-0.132
(7.57)
0.130
(0.59)
-0.020
(0.10)
-0.174
(8.22)
-0.165
(6.90)
-0.036
(0.25)
-0.137
(0.74)
-0.170
(3.24)
-0.196
(3.39)
c
(c>0)
-
-
-
-
-
-
0.031
(3.57)
0.019
(1.78)
0.017
(3.56)
0.012
(1.56)
0.440
(4.09)
0.293
(2.36)
d
(d>0)
-0.581
(2.43)
-0.548
(2.70)
0.194
(0.62)
0.525
(1.95)
-0.557
(1.16)
-0.328
(0.74)
0.376
(1.88)
0.633
(2.60)
-0.117
(0.36)
0.010
(0.02)
0.194
(2.97)
0.188
(2.31)
ƒ
R
S
D・W
-
0.966
0.007 1.208
-
0.981
0.007 2.022
-
0.939
0.010 0.788
-
0.976
0.008 1.344
-
0.946
0.009 1.336
-
0.965
0.010 1.673
-
0.978
0.006 1.796
-
0.981
0.007 2.088
-
0.980
0.006 2.513
-
0.971
0.009 2.061
0.020
(0.16)
0.367
(2.36)
0.992
0.002 2.768
0.993
0.002 2.785
R
S
その 4-通勤時間の効果
b
(b<0)
c
d
g
ƒ
D・W
4.483 -0.175
(6.62)
-
0.473
(1.93)
-
0.086
(2.80)
0.970
0.007 1.616
3.537 -0.165
(6.04)
-
0.686
(2.52)
-
0.051
(1.48)
0.979
0.008 1.936
4.859
0.263
(1.92)
- -0.560
(3.24)
-
0.058
(2.78)
0.983
0.005 2.054
5.393
0.225
(1.39)
- -0.542
(2.48)
-
0.008
(0.25)
0.979
0.008 2.032
e a (Ws・
' Lmix ) b
( PCT ) c ( P ' ( R ))d・
E1ƒ (COT ) g
7.159 -0.203
(2.28)
0.085
(1.86)
0.105
(0.35)
0.056
(0.50)
-0.168
(1.22)
0.976
0.006 1.909
5.799 -0.194
(1.84)
0.069
(1.14)
0.381
(0.98)
0.058
(0.41)
-0.154
(0.85)
0.977
0.008 2.142
eaWSb・Lmixc E1 f COT f
4.389 -0.188
(4.03)
0.379
(3.10)
-
0.191
(3.34)
0.014
(0.87)
0.993
0.001 2.784
4.527 -0.224
(3.32)
0.428
(2.32)
-
0.281
(3.01)
-0.036
(1.41)
0.990
0.002 2.934
F.
(注)1)
そ の 3- 価 格 効 果
パラメタの下の(
)は T・valae
- 30 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
第6表
所定労働時間による推計(昭 30~47 年,N=18)
その 1-労働者構成の影響
No. 産業
1
T.
推計方程式
HS =
e a WS ' b
F.
2
T.
e a WC ' b
F.
3
T.
e a (Ws・
' L mix ) b
F.
4
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b・Lcƒ
F.
5
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b Lb c
F.
6
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b L y c
F.
7
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b Ld c
F.
8
T.
F.
e a (WS ・
' Lmix ) b Lmo c
a
b
c
d
g
ƒ
R
S
D・W
5.624 -0.085
(21.39)
-
-
-
-
0.982
0.004
0.905
5.684 -0.098
(25.14)
-
-
-
-
0.987
0.005
1.207
5.628 -0.085
(20.55)
-
-
-
-
0.981
0.005
0.876
5.691 -0.099
(25.44)
-
-
-
-
0.987
0.005
1.167
6.151 -0.098
(17.94)
-
-
-
-
0.975
0.005
0.687
6.279 -0.112
(22.68)
-
-
-
-
0.984
0.005
0.960
5.962 -0.120
(10.85)
0.119
(2.16)
-
-
-
0.979
0.005
1.017
6.166 -0.112
(20.18)
0.031
(0.27)
-
-
-
0.983
0.005
0.967
6.203 -0.100 -0.009
(0.07)
(5.07)
-
-
-
0.973
0.005
0.688
4.965 -0.081
(5.03)
0.235
(2.06)
-
-
-
0.987
0.005
1.222
5.476 -0.065
(6.84)
0.101
(3.96)
-
-
-
0.987
0.004
1.617
6.033 -0.098
(7.75)
0.030
(1.25)
-
-
-
0.984
0.005
1.040
6.121 -0.097
(16.25)
0.008
(0.84)
-
-
-
0.974
0.005
0.692
6.213 -0.108
(22.00)
0.015
(2.06)
-
-
-
0.987
0.005
1.303
6.124 -0.099
(19.19)
0.021
(1.78)
-
-
-
0.978
0.005
1.069
6.272 -0.112
(22.06)
0.005
(0.40)
-
-
-
0.983
0.005
0.976
- 31 -
第6表
No 産業
9
T.
推計方程式
Hs=
e aWS 'b・E1c
F.
10
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b E1c
F.
11
T.
e aWC 'b・Lmix c E1d
F.
12
T.
e aWS 'b・Lmix c・E1d
F.
13
T.
e aWS 'b・Lmix c・E2 d
F.
14
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b PCT c
F.
15
T. e u (WS ・
' Lmix ) b PCT c
(好況期)
F.
16
T.
e a (WS ・
' Lmix ) b
ΔPCT c
F.
17
18
19
T.
d
a
b
c
d
g
ƒ
R
S
D・W
5.989 -0.161
(5.19)
0.117
(2.46)
-
-
-
0.986
0.004
1.272
5.854 -0.134
(3.58)
0.060
(0.97)
-
-
-
0.987
0.005
1.230
6.594 -0.145
(2.81)
0.061
(0.91)
-
-
-
0.974
0.005
0.732
6.350 -0.120
(2.39)
0.011
(0.15)
-
-
-
0.983
0.005
0.955
4.585 -0.103
(3.26)
0.239
(3.24)
0.078
(1.87)
-
-
0.990
0.003
1.918
4.910 -0.099
(2.37)
0.165
(1.68)
0.035
(0.60)
-
-
0.988
0.004
1.461
4.700 -0.107
(3.42)
0.218
(2.92)
0.081
(1.99)
-
-
0.991
0.003
1.857
4.913 -0.097
(2.30)
0.163
(1.61)
0.034
(0.56)
-
-
0.988
0.005
1.513
4.132 -0.052
(4.79)
0.278
(3.76)
0.011
(1.72)
-
-
0.990
0.003
2.307
4.803 -0.071
(5.49)
0.165 -0.012
(1.77)
(1.39)
0.011
-
(3.10)
-
-
0.989
0.004
1.793
-
-
0.984
0.004
1.009
6.298 -0.115
(12.45)
6.536 -0.143
(14.96)
0.001
(0.31)
-
-
-
0.983
0.005
0.963
0.015
(3.90)
-
-
-
0.993
0.003
2.332
6.540 -0.141
(10.58)
0.006
(1.04)
-
-
-
0.990
0.004
2.249
5.955 -0.080
(19.86)
0.012
(6.55)
-
-
-
0.993
0.003
2.277
6.144 -0.099
(18.77)
0.009
(3.46)
-
-
-
0.990
0.004
1.376
6.161 -0.103 -0.022
(2.28)
(0.35)
0.012
(2.82)
-
-
0.983
0.004
1.059
-
-
0.982
0.006
0.961
-
0.989
0.002
1.936
-
0.990
0.002
1.934
-
0.992
0.003
2.283
6.310 -0.118
(15.11)
F.
6.316 -0.116
(2.19)
0.003
(0.04)
0.001
(0.27)
T. e aW 'b・L i c d
S
m x E1
PCT f
F.
4.925 -0.098
(2.73)
0.158
(1.70)
0.044
(0.79)
4.518 -0.108
(2.69)
0.262
(2.45)
T. e a (W S ・
' L mix ) b
6.684 -0.158
(4.09)
6.854 -0.174
(3.37)
0.020
(0.41)
0.005
(1.19)
0.092 -0.008
(1.41)
(1.83)
0.015
-
(3.64)
0.047
(0.68)
0.006
(1.02)
-
-
0.990
0.004
2.202
6.217 -0.107
(3.89)
0.036
(1.00)
0.011
(6.40)
-
-
0.993
0.003
2.270
F.
20
e a (W S ・
' L mix ) b
E1c PCT
その 2-消費時間の生産性と教育の効果
(好況期 )
E1c PCT
b
T. e a (W ・
S ' Lmix )
F.
d
E1c ΔPCT d
- 32 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
第6表
No. 産業
21
22
23
24
T.
推計方程式
Hs=
g
ƒ
R
S
D ・W
-
-
0.977
0.005
0.833
F.
5.613
0.076 -0.274
(1.44) (3.56)
-
-
-
0.991
0.004
1.825
T. e a (WS ・
' Lmix ) b P ' ( R ) c
6.538 -0.101 -0.076
(14.91) (0.75)
-
-
-
0.974
0.005
0.746
F.
5.658 -0.108
(18.22)
0.125
(1.29)
-
-
-
0.985
0.005
0.996
T. e a (WS ・
' Lmix ) b
6.157
0.055 -0.345
(0.64) (1.77)
-
-
-
0.978
0.005
1.245
F.
6.425
0.032 -0.353
(0.43) (1.93)
-
-
-
0.986
0.005
1.583
6.193 -0.082
(17.44)
0.011 -0.047
(6.42)
(0.89)
-
-
0.993
0.003
2.274
5.389 -0.093
(17.21)
0.009
(4.07)
0.151
(2.21)
-
-
0.992
0.004
1.906
4.859 -0.103
(3.14)
0.221
(2.89)
0.072 -0.042
(1.67) (0.66)
-
0.991
0.003
1.922
4.193 -0.105
(2.68)
0.169
(1.82)
0.056
(0.98)
0.157
(1.95)
-
0.990
0.002
1.890
4.825 -0.097
(2.91)
0.174
(1.93)
0.046
(0.89)
0.004
(0.99)
0.004
(0.05)
0.991
0.003
1.975
4.255 -0.112
(2.82)
0.213
(1.88)
0.085 -0.004
(1.29) (0.81)
0.109
(1.08)
0.990
0.004
1.971
6.554 -0.171
(2.02)
0.016
(3.42)
0.057
(0.33)
-
-
0.992
0.003
2.218
6.535 -0.161
(1.64)
0.007
(0.97)
0.045
(0.20)
-
-
0.989
0.004
2.206
5.439 -0.097
(2.92)
0.095
(0.80)
0.031
(0.59)
0.023 -0.050
(1.22) (1.01)
5.006 -0.106
(2.66)
0.114
(0.78)
0.057
(0.80)
0.020 -0.066
(0.84) (1.05)
0.991
0.003
2.012
0.990
0.004
2.074
P' ( RL) c
T. e a (W ・
b
S ' Lmix )
T.
e aWS 'b Lmix c E 1d
P' ( R) f
T. e aW 'b L c E 1d
S
mix
PCT f P ' ( R)g
F.
a
' Lmix ) b
T. e (WS ・
PCT c P' ( RL) d
(好況期)
F.
28
d
果
-
F.
27
c
効
0.011 -0.146
(0.16) (1.52)
F.
26
B
格
5.698
e a (WS ・
' Lmix ) b・
P' ( L) c
PCT c P ' ( R ) d
25
a
その 3-価
T. e aW 'b L c E 1d
S
mix
PCT f COT g p' ( R ) h
F.
h
-0.020
(0.24)
0.078
(0.75)
- 33 -
第7表
No.
推計方程式
HS =
a
労働日数についての推計(昭 30~47 年-N=18)
b
c
d
g
ƒ
R
S
D ・W
(調査産業計)
1
D L = e aW S ′b
3.515 -0.067
(17.57)
-
-
-
-
0.974
0.004 1.130
2
= e aW S ′b E1d
3.903 -0.148
(5.25)
-
0.124
(2.89)
-
-
0.982
0.004 1.998
3
= e a (W S ・
′ L mix ) b
3.928 -0.077
(15.45)
-
-
-
-
0.966
0.005 0.893
4
= e a (W S ・
′ L mix ) b・L f c
3.791 -0.093
(8.72)
0.086
(1.63)
-
-
-
0.969
0.005 1.307
5
= e a (W S ・
′ L mix ) b・E1 d
4.496 -0.137
(3.00)
-
0.079
(1.31)
-
-
0.968
0.005 1.095
6
= e a (W S ・
′ L mix ) b・PCT
4.090 -0.098
(14.95)
-
-
0.011
(3.80)
-
0.982
0.004 1.526
2.931 -0.106
(3.19)
0.164
(2.05)
0.095
(2.23)
-
-
0.984 0.0015 2.496
3.120 -0.092
(2.84)
0.106
(1.27)
0.049
(0.98)
0.006
(1.62)
-
0.985 0.0014 2.656
2.991 -0.105
(2.97)
0.164
(1.99)
0.093
(1.99)
- -0.015
(0.22)
0.982 0.0015 2.502
2.922 -0.094
(2.86)
0.079
(0.88)
0.044
(0.87)
0.008
(1.82)
0.070
(0.88)
0.985 0.0014 2.789
3.587 -0.083
(19.54)
-
-
-
-
0.978
0.005 1.533
7
f
D L f = e aW S ′ b L mix cE1 d
8
= e aW S ′ b L mix cE1 d PCT
9
= e aW S ′ b L mix cE1 d P ′ g
(R)
10
= e aW S ′ b L mix cE1 d
PCT f P ′ ( R ) g
(製
1
造
f
業)
D L = e aW S ′ b
2
= e a・W S ′ b・E 1d
3.937 -0.157
(4.23)
-
0.123
(2.02)
-
-
0.982
0.005 2.060
3
= e a (W S ・
′ L mix ) b
4.087 -0.094
(17.36)
-
-
-
-
0.973
0.006 1.211
4
= e a (W S ・
′ L mix ) b L f c
3.682 -0.092
(15.48)
0.109
(0.91)
-
-
-
0.973
0.006 1.324
5
= e a (W S ・
′ L mix ) b E1 d
4.482 -0.136
(2.52)
-
0.060
(0.78)
-
-
0.972
0.006 1.283
6
= e a (W S ・
′ L mix ) b・PCT
4.179 -0.106
(11.30)
-
-
0.007
(1.54)
-
0.975
0.005 1.359
2.860 -0.114
(2.74)
0.185
(1.86)
0.092
(1.54)
-
-
0.984 0.0019 2.547
f
2.763 -0.118
(2.69)
0.211
(1.80)
0.109 -0.002
(1.52) (0.45)
-
0.983
9
= e aW S ′ b L mix c
E1 d P ′( R ) g
2.259 -0.123
(3.10)
0.187
(1.99)
0.113
(1.97)
-
0.137
(1.68)
0.986 0.0018 2.999
10
= e aW S ′ b L mix cE1d
PCT f P ′(R ) g
2.245 -0.120
(2.92)
0.145
(1.24)
0.092
(1.37)
0.004
(0.64)
0.177
(1.70)
0.985 0.0018 2.983
7
8
f
D L f = e aW S ′ b L mix cE1 d
= e aW S ′ b L mix cE1 d
PCT
- 34 -
0.002 2.662
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
参考資料-1
〔労働力専門委員会の計測例〕―クロス・セクション―
(わが国の産業別データーによる計測)
昭35年
H = 251.653 − 24.3222 log V
R = 0.7636 D・W = 1.9705 N = 20
eHV = −0.134
昭45年
H = 233.104 − 18.9298 log V
R = 0.7442 D・W = 1. 6425 N = 20
eHV = − 0.112
ただし H :製造業中分類別所定内労働時間(毎月勤労統計)
V :製造業中分類別1人当り付加価値額(工業統計)
資料出所:経済審議会労働力専門委員会「新時代の能力開発と労働福祉」(昭和47年4
月)206頁
(国別データーによる計測)
1969年
H = 65.2850 − 7.39177 log Y
R = 0.7063 D・W = 1. 7628 N = 31
eHY = − 0.169
ただし H :各国の週当り労働時間
Y :各国,国民1人当り所得
eHY :算出に用いる平均労働時間 H としては各国の中位にある日本の週当り労働時間
で代用して算出した。
資料出所:前記に同じ125頁
〔労働省の国別データーによる計測例〕―クロス・セクション―
1970年
log H = − 0 . 077892 log Y + 1 . 86500
(3.58)
R = 0.6632 D・W = 1. 7 953
eHY = − 0. . 078
ただし変数は上記に同じ
資料出所:労働省「昭和46年労働経済の分析」143頁
- 35 -
参考資料-2
〔ダグラスの分析結果〕―クロス・セクションおよびタイム・シリーズ―
(17産業クロス・セクション)
(標準週当り労働時間)(時間当り平均賃金)
γ(相関係数)
e(弾性値)
1914年
X = 63 . 61 − 0.033 Y
-0.80
-0.20
1926年
X = 57 . 0 1 − 0 . 0 11Y
-0.84
-0.17
(産業別の変化率のクロス・セクションN=17)
e
γ
1914年/1890年
X = 116 . 32 − 0. 172 Y
-0.72
-0.28
1926年/1890年
X = 98 . 14 − 0 . 0 4 1 Y
-0.67
-0.17
(1919年産業および州別クロスセクション)
γ
e
男(N=43)
-0.55
-0.30
女(N=33)
-0.36
-0.20
男(N=29)
-0.31
-0.13
女(N=21)
-0.41
-0.16
州別クロスセクション
産業別クロスセクション
(1890~1926年時系列分析)
建設業および14製造業
賃金は,Union rates または Pays roll の実質時間賃金・労働時
間は週労働時間
賃金と労働時間の相関係数
γ=-0.5以下
3産業
γ=-0.5~-0.88
8産業
γ=-0.88をこえるもの
4産業
賃金に対する労働時間の弾性値
e=-0.2以下
e=-0.2~-0.3
e=-0.3~-0.37
e=-0.40~
Pay roll 産業全体の γ=-0.97
15産業算術平均の値
14製造業加重平均
製造業6 Unionグループ
全 Pay-roll グループ
2産業
5産業
5産業
3産業
e=-0.3
e=-0.47
e=-0.26
e=-0.26
〔フイネガンの分析結果〕―クロス・セクション―
(産業別クロスセクションデーター)
1950年国勢調査144産業(労働者回答の interview データー)
(
H = − 0. 10 E + 0.28W + 0.61 S + 0. 005 A − 0. 18 N − 0 . 04 F + 40 . 39
(14.44) (4.05) (5.16) (0.10)
(5.72) (5.36)
R 2 = 0.63
γ HE (単相関)=-0.51
γ HE (偏相関)=-0.77
e HE = − 0 . 35
ただしH:週労働時間,E:平均時間当り賃金,W:年平均の労働週
(
S :男子平均就学年数,A:平均年令,N:黒人比率,F:女子比率
製造業
59産業(同上)
(
H = − 0 . 07 E + 0 . 47 W + 0 . 93 S − 0. 04 A − 0 . 07 N − 0 . 03 F + 23 . 77
(4.83) (3.76)
(1.85) (0.39) (1.80) (2.92)
- 36 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
γ HE(単 )= − 0.17
R 2 = 0.43
e HE = − 0. 25
(職種別 クロス・セクション・データー)
1950年国勢調査 323職種
γ HE( 偏 )= − 0.53
H = − 0 . 085 E + 0 . 173 M + 1. 041 S + 0. 066 A − 0. 056 N − 0. 023 F + 29. 8
(15.2)
(7.54)
(10.39)
(1.93)
(2.85)
(2.83)
γ HE (単) = −0.14
γ HE (偏) = −0.65
⎧R 2 = 0.54
dy
x
⎨
(e =
・ )
⎩ eHE = −0.31
dx
y
なお,1940年128職種では
R2 = 0.58
γ HE ( 単 ) = − 0.20
γ HE ( 偏 ) = − 0 . 65
eHE=-0.31
〔フライシャーの分析結果〕―クロス・セクション―
Ohio 州立大学,アメリカ統計局の1965年5,000人男子労働者の特別調査
収入階級別クロス・セクション・データー
年令45~49才
白人
Y= 49.8- 1.6X
( Y:週労働時間 ,X:時間賃金率)
eYX(弾性値 )=- 0.11
非白人
Y= 48.3- 1.3X
eYX=- 0.09
〔ウインストンの計測結果〕―クロス・セクション―
労働時間と1人当り国民所得または時間賃金率の国際クロス・セクション・データー
1953~1960年のデーターによる。
E as = aY β
自由度
N
16
Eam = aY β
16
Ea s = aya β
13
Eam = aya β
13
Ems = aym β
27
Emm = ay m β
27
推定方程式
β = e EY (弾性)
(
)は t 値
-0.1074
(2.982)
-0.0530
(2.978)
-0.1075
(2.432)
-0.0940
(4.688)
-0.0718
(2.134)
-0.0823
(4.387)
信頼度
相関係数
γ
所得需要の弾性
eD
-0.9030
99.5
-0.5977
99.5
-0.5972
-0.9497
97.5
-0.5593
-0.8925
99.9
-0.7927
-0.9060
97.5
-0.3799
-0.9282
99.9
-0.6451
-0.9177
ただしY:1人当り国民所得,ya:産業計時間賃金率,ym:製造業時間賃金率,E:所得
に要する社会的努力(Social effort=労働時間)Eの最初の添字aは全体,mは製造
業,Eのあとの添字sは労働時間データーと標準化した労働力率を用いて得た週当り
労働時間でSocial effort を計ったもの,あとの添字mは同じく全人口に占める働き
(年令20~64才)を用いて
盛り年令男子労働力率(males of prime working age)
得た週当り労働時間指数で計ったものであることを示す。
eD(所得需要の弾性)はYについては1/(β-1)によりyについては-(β+1)により
求めたもの。
なお,本論第1章-1でのべたライオネル・ロビンス説をも参照せよ。
- 37 -
〔オーエンの分析結果〕―タイム・シリーズ―
1900~1961年タイム・シリーズ・データーによる完全雇用モデル(N=10および16)労働者側
からの労働時間の選好(労働供給モデル)と使用者からの需要モデルの単一モデルと,需給連立モ
デルからの2階最小自乗回帰とを計測。なお疲労により,週間労働所得が或る点(H≦z)をこえると
時間に比べて上昇率が逓減する(逓減条件をxであらわす)という疲労モデルをとり入れ,種
々の疲労条件を設定して計測している。((注)第
2章参照)うち期待する条件に合うのは,z=40,
1
<x<2 の間にある。この間の回帰結果のみを示す。モデルはコブ・ダグラス型
2
(供給モデル)
H
P( R )
R2
フオンノ
イマン値
eHW
単一モデル
-4.020
(0.307)
0.289
(0.387)
0.957
0.86
-0.249
2 階最小自乗法
-4.343
(0.113)
0.594
(0.140)
0.995
1.09
-0.230
-3.956
(0.311)
0.307
(0.392)
0.944
0.86
-0.253
-4.281
(0.109)
0.615
(0.134)
0.995
1.09
-0.234
-3.838
(0.315)
0.321
(0.397)
0.951
0.85
-0.261
-4.169
(0.124)
0.635
(0.124)
0.995
1.09
-0.240
1
x = ,z = 40
2
x = 1,z = 40
単一モデル
2 階最小自乗法
x = 2 ,z = 40
単一モデル
2 階最小自乗法
P(R)は商業的レクリエーション相対価格,(
)は標準誤差
労働時間の賃金に対する弾性eHWはHのパラメタから計算したもの
(需要モデル)
W = a H aF β S r
1
x = ,z = 40
2
単一モデル
2 階最小自乗法
x = 1,z = 40
単一モデル
2 階最小自乗法
x = 2,z = 40
単一方程式
2 階最小自乗法
ここでF=K/NQ
F
S
R2
フオン・ノ
イマン値
-5.49
(0.307)
-0.378
(0.77)
0.311
(0.115)
0.326
(0.131)
1.407
(0.128)
1.478
(0.346)
0.996
2.11
0.995
2.13
-0.418
(0.309)
-0.181
(0.817)
0.298
(0.116)
0.318
(0.140)
1.429
(0.129)
1.525
(0.334)
0.996
2.13
0.995
2.14
-0.234
(0.299)
0.287
(0.112)
1.451
(0.125)
0.996
2.13
0.311
(0.129)
1.565
(0.310)
0.995
2.14
H
0.044
(0.757)
S=TR
- 38 -
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
K:資本量,
N:雇用量,
F
Q:労働力の質,
P
S
従属変数:W
(誘導型)
T:成長の残差
R2
0.383
-0.085
1.643
0.996
0.357
-0.057
1.617
0.996
x = 1,z = 40
0.328
0.028
1.592
0.996
x = 2,z = 40
0.308
0.006
1.549
0.996
x=0
1
x = ,z = 40
2
従属変数:H
0.153
-0.370
0.963
-0.058
〔ロングの分析結果〕―タイム・シリーズ―
ロングはアメリカ,イギリス,カナダ,ドイツについて,週当り標準労働時間の変化と実質可
処分所得の変化との関係を分析している。期間は,各国によって若干異なるが,ほぼ1890-1951
年を対象にしている。
2度にわたる敗戦とそれに伴うハイパーインフレーションという異常な経済状態を分析期間内
に含んでいるドイツを除いて,アメリカ,イギリス,カナダに関するロングの分析結果をいくつ
カの期間について次に表示する。
国
期
名
間
ア
リ
カ
イ
10 年当り平均変化
1890
|
1930
週当り標準労働時間変
化率
(%)
メ
1930
|
1950
-5.8 -11.0
1890
|
1950
-7.5
ギ
リ
ス
カ
10 年当り平均変化
1950
-4.7
1911
|
1931
-8.3
1931
|
1951
-4.6
1911
|
1951
-6.5
ナ
ダ
10 年当り平均変化
1951
-8.2
1921
|
1931
-4.8
1931
|
1941
-6.7
1921
|
1941
-5.8
1941
-6.7
時間当り実質可処分所
+27.7 +28.5 +27.9 +23.6 +10.8 +22.2 +16.5 +34.4 +10.5 +24.1 +17.3 +24.1
得変化率
(%)
所得 1%の変化に対す
る労働時間の変化率 -0.21 -0.39 -0.27 -0.20 -0.77 -0.21 -0.39 -0.24 -0.46 -0.28 -0.34 -0.28
(%)
- 39 -
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