Comments
Description
Transcript
60分でわかるフィンテック
リサーチ TODAY 2016 年 11 月 18 日 『60分でわかるフィンテック』 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 みずほ総合研究所は、『要点解説&図解 60分でわかるフィンテック』と題する書籍を出版している1。同 書はそでの「次の10単語、(①モバイルPOS、②ロボアドバイザー、③P2Pレンディング、④クラウドファンデ ィング、⑤銀行API、⑥ビットコイン、⑦ブロックチェーン、⑧ビッグデータ、⑨アカウント・アグリゲーション、 ⑩ユーザー・エクスペリエンス)のなかで、読者の皆さんはいくつ説明できますか?」という問い掛けで始ま る。フィンテックへの関心が急速に高まっている今日、我々としては断片的な知識を得るだけでなく、本質 をより客観的に理解することが必要と考えている。そこで本書は、図表での要点解説を行うことによって、時 間に限りがある方々が「60分でわかる」ことを目的とした。下記の図表は、日本の金融業界におけるIT活用 の動きとIT技術のトレンドを示したものだ。こうしたテクノロジーの発展を背景に、ITベンチャーが金融サー ビスに参入する動きが生じている。特に2000年代以降、その動きは勢いを増し、決済だけでなく、融資やリ テール資産運用等、既存金融サービスの一部をフィンテックが代替するに至っている。今後もこうした動き は一層拡大すると見込まれる。 ■図表:日本の金融業界におけるIT活用の動きとIT技術のトレンド 金融業務へのITの活用 1980 年代 1990 年代 ATM 銀行・証券・保険の 業務のオンライン化 (第1~3次オンラインシステム) ポスト 第3次オンラインシステム IT技術のトレンド キャッシュカード メインフレーム テレフォンバンキング インターネットバンキング モバイルバンキング クライアント サーバー コンビニATM インターネット専業証券 オンライントレード インターネット (Google: 1998年~) 携帯電話 インターネット専業銀行、 異業種からの参入 2000 年代 Pay-easy クレジット・スコアリング 貸出 でんさい 株券電子化 クラウド・ コンピューティング スマートフォン (iPhone3G:2008年~) 2010 年代 arrowhead稼働 (東証) ビッグデータ 人工知能(AI) (第3次AIブーム:2013年~) ユーザー エクスペリエンス (資料) みずほ総合研究所作成 1 リサーチTODAY 2016 年 11 月 18 日 下記の図表は、マッキンゼー社が試算したフィンテックによる金融機関への影響を示したものだ。これに よると、金融機関のリテール部門は、今後10年間で収入の10から40%、利益の20から60%(ともにグローバ ルベース)をフィンテックの影響により失うとしている。その一つの経路は、フィンテック企業が金融機関から 顧客を奪うことだ。もう一つのルートは、フィンテック企業による低手数料の金融サービスの登場が金融サー ビスの価格競争を促進させ、金融機関の収益を押し下げるものだ。 ■図表:フィンテックによる金融機関のリテール部門への影響 ▲ 40% 消費者 金融 ▲ 60% ▲ 30% ▲ 35% 決済 ▲ 25% 中小企業 貸出 ▲ 35% ▲ 15% 資産運用 ▲ 30% 収入 ▲ 10% 住宅 ローン 利益 ▲ 20% 0 ▲ 10 ▲ 20 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 ▲ 60 (%) (注)McKinsey & Company による試算値(グローバルベース) (資料)McKinsey & Company 「McKinsey Global Banking Annual Review 2015」よりみずほ総合研究所作成 一方で、既存の金融機関が自らフィンテックを活用することによってチャンスが生まれるという側面も忘れ てはなるまい。まず、金融サービス全体のパイの拡大に繋がることが期待される。また、競争ルールに大き な変化が引き起こされ、ゲームチェンジがもたらされる可能性もある。たとえば、営業エリアに制約がある地 域金融機関でもフィンテックを活用した金融サービスを提供することで、地域の枠にとらわれずにビジネス を展開することが可能となる。さらに、金融機関にとってフィンテックの登場は、画一的とも言われる金融機 関のビジネスモデルを多様化・高度化させる重要なターニングポイントとなる可能性をもつ。すなわち、フィ ンテックは既存の金融機関にとって大きな「リスク」であると同時に「チャンス」でもあり、金融機関がフィンテ ック企業と協働し、このイノベーションを取り込みながらサービス向上をはかることの重要性を示すことが本 書の目的と考えている。今後も当社はフィンテックに関する情報を積極的に発信していく所存である。 1 『要点解説&図解 60 分でわかるフィンテック』 (みずほ総合研究所 近代セールス社 2016 年) http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/book/161107.html 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2