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8月号 - ジュンク堂書店

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8月号 - ジュンク堂書店
I S S N 0914−3157
2013 .
8月号
2013年8月5日発行
︵毎月1回5日発行︶
通巻 号
昭和 年7月 日第三種郵便物認可
417
ほんのしるべ
61
15
世界の本屋さん
vol.20
中国・北京図書大厦
本の種類十九万種である。兎に角広い。地
超 弩 級 の 書 店 で、 売 場 面 積 一 万 六 千 平 米、
生 し た。 そ の 書 店 が 北 京 図 書 大 厦 で あ る。
一九九九年十一月に世界最大の書店が誕
等である。照明は全体的に暗い。万引きが
人、見張りの人、棚詰めの人、フリーの人
アーに従業員は百人はいる。モップ掛けの
日中は雑踏また雑踏の書店である。各フロ
中 無 休、 朝 十 時 に は 千 人 は 入 店 し て い る。
営業時間は九時から夜八時半までで、年
ノセ事務所
能勢
仁
下一階、地上四階の売場である。建物は八
三〇〇坪で、本は参考書である。中国は一
二 階 の 本 売 場 は 六 〇 〇 坪、 音 像 売 場
で P O S レ ジ。 キ ャ ッ シ ャ ー は す べ て 女 性
大 量 陳 列 で 強 烈 で あ る。 各 階 レ ジ は 一 ヶ 所
かれているが、すべて満席だった。陳列は
国医学関係の本も多い。各階にベンチが置
書道の国なので書の本は豊富である。中
多いという。
階で五階以上は事務所になっている。
一階は中国共産党、革命思想書、軍事等
人っ子政策をとっているために、教育熱は
で、座って応対している。無愛想なこと甚
この書店の核である。
異常なほどだ。熱気ぷんぷんのフロアーで
うとしない。これが大陸風なのかな?
長蛇の列になってもいっこうに対応しよ
だしい。公務員だから仕方ないのかな?
ある。
三階は藝術と文学のフロアー、四階は実
用、中国医学、コンピュータ、理工学専門書
売場である。地階は洋書売場になっている。
(表紙題字・陳舜臣)
8月
顔を上げると、さっきは気づかなかった黒松林の
世界の本屋さん
﹁書標﹂歳時記
月
書標・書評
﹃世界地図の下書き﹄ほか
タ
書
1
著書を語る
○ ﹃ぶらりぶらこの恋﹄ 吉川 トリコ
2
で来た。蝉の声は、子供のころに住んだ矢場町や町
科
学
コ ン ピ ュ ー
学
学
医
はずれの雑木林を思い出させた。助左衛門は林の中
会
科
22
20
18
をゆっくりと馬をすすめ、砂丘の出口に来たところ
然
23
で、 一 度 馬 を と め た。 前 方 に、 時 刻 が 移 っ て も 少 し
も衰えない日射しと灼ける野が見えた。助左衛門は
社
自
特集
集合知
今月のおすすめ
蝉しぐれが、耳を聾するばかりに助左衛門をつつん
8 20
本屋うらばなし
﹁百名山﹂
※表示価格はすべて税込価格です。
インフォメーション
読者から
ビブリオバトル東海決戦2013の開催を終えて
人 文 科 学
文 学 ・ 文 芸
術
文 庫 ・ 新 書
芸
用
書
実
地 図 ・ 旅 行 書
童
書
語 学 ・ 辞 典
児
往復書簡をはじめませんか
25
28
笠の紐をきつく結び直した。
馬腹を蹴って、助左衛門は熱い光の中に走り出た。
藤沢周平著﹃蝉しぐれ﹄︵文藝春秋︶より
17
30
−1−
4
6
19
16
21
26
23
14
24
31
496
著書を語る
○
︱︱
﹃ぶらりぶらこの恋﹄
三十過ぎて独身で長いこと彼氏なし、将来のことを思う
吉川
トリコ
や合コンに参加してはいるけれどいつまで経っても芳しい
も の な ら、﹁ 相 手 が い る だ け い い じ ゃ な い か ! な に を 贅
に挙げたような崖っぷちな友人たちに愚痴など聞かせよう
たとえば、私には長くいっしょにいる相手がいるが、先
てるんじゃないか、と。
結果が得られないまますっかり婚活ずれしてしまい、同じ
とは目に見えている。その逆もそうで、私は彼女たちの自
沢なことを言ってるんだ ! ﹂と目くじら立てて怒られるこ
と不安で夜も眠れず、目を血走らせてお見合いパーティー
ような境遇の女友達と集まって傷を舐めあう崖っぷち女子
由を羨ましいと思うが、それに伴う孤独や不安には目をつ
会が唯一の慰めというような友人知人が、両手の指じゃ足
上から目線で﹁あんたも早く相手を見つけて結婚しなさい
長いあいだ崖っぷち仲間だった友人が結婚したとたんに
ぶっている。
て死にたくなるからと、
﹁いざとなったら出家するって手が
よ﹂と言い出す、なんて話もわりによく聞くし、どうして
真面目に自分の境遇を嘆いてしまったら惨めさがいや増し
りないぐらいいる。
あるからさー﹂などと冗談にして笑い飛ばす術を身につけて
力、浮気、借金もせずに真面目に働いてるんだからいいじゃ
も 夫 の あ る 部 分 が 許 せ な く て 離 婚 を 考 え て い る の に、﹁ 暴
ないか。ちょっとのことぐらい我慢しろ﹂と周囲の人間が
しまった彼女たち。おそらく今日もどこかのスペインバルで
いまや﹁崖っぷち女子﹂ものはひとつのジャンルとして
磨きあげた鋼の自虐トークを披露していることだろう。
確立し、ドラマや映画、エッセイやコミックなどあらゆる
止めにかかる、なんて話も聞いたことがある。
と に か く み ん な も う﹁ 結 婚 ﹂︵ も し く は、 そ れ に 準 ず る
メディアで才能豊かな女性たちがあの手この手で崖っぷち
もの︶にがんじがらめになってしまっているんだなあ。も
女子の現状を描いている。私はそのジャンルの熱心なファ
ンであるのだけれど、同時に居心地の悪さを感じていたり
ちろん私自身も含めてそうなんだけれど。
生きていくのに、すぐ隣にだれか男の人の存在がないこ
もする。彼女たちの声があまりに大きくなりすぎて、一人
の相手と長く連れ添っている女の嘆きがかき消えてしまっ
−2−
496
となんて私には考えられないし、相手が見つけられず困っ
恋ができるのに⋮⋮。
寝顔を見下ろしながら女は思う。この人が死ねば、新しい
も、その新しい男だって早晩古ぼけてしまうだろう。なら
て、ときめきを求めてだれか別の新しい男を求めたとして
執筆中ずっと考えていた。いま隣にいる男性に厭きたとし
一 人 の 相 手 と 死 ぬ ま で 添 い 遂 げ る 幸 福 と 倦 怠 に つ い て、
ている女の子たちのためにお見合いババアみたいな活動を
していたりもする︵結婚願望のある独身男性はご一報よろ
三十半ばに差しかかる私の愚妹なんかは、このごろでは
しくお願いします。自薦他薦問いません︶。
﹁結婚せずに一人で生きていく﹂などと言い出しているけ
げるのがベストではないか、という考え方は、吐き気を催
すほどロマンティックから程遠いが、俗物で計算高いこの
ば、なにもわざわざ波風立てずにいま隣にいる人と添い遂
世の大多数の﹁妻﹂たちが似たようなことを考えているん
れど、もし本当に彼女がその道を選んだとしたら、彼女の
一人で生活なんて。お金のことだって心配だし、一生独身
じゃないだろうか。でなかったらジャニーズや韓流や乙女
−3−
生 き 方 を 尊 重 し て や れ る 自 信 が な い。 だ っ て ど う す る の、
だなんて孤独との戦いじゃないのか。想像しただけでぞっ
ゲ ー ム が こ こ ま で 隆 盛 す る こ と も な か っ た だ ろ う。 ジ ャ
スクを承知の上で安住の地を飛び出し、獲物を食い散らか
と す る。 そ ん な 思 い を 妹 に さ せ た く な い と 思 っ て し ま う。
す。 そ の 肉 は、 め く る め く よ う な 快 楽 の 味 が す る だ ろ う。
つまり、気ままで悠々自適な独身生活を楽しむ可能性など
結婚が人生のすべてじゃないことぐらい知ってる。
﹁お姫
どちらが幸せか、なんて、私にはわからない。
ニーズや韓流や乙女ゲームじゃ満たされない女たちは、リ
様はお城でいつまでも幸せに暮らしました﹂なんてあるわけ
はなから排除して考えているのだ。
ないってことも知ってる。結婚したからってすべてが満たさ
れるわけではないことも、幸福じゃない結婚だってごまんと
あることも知ってる。だけれど、結婚できるものならするに
※8月9日発売予定
越したことはないと私は思っている。
﹁結婚するのがあたり
まえ﹂という呪縛から私が解き放たれることはおそらく一生
ないのだろう。近い将来、妹が最高に楽しそうな独身生活を
﹃ ぶ ら り ぶ ら こ の 恋 ﹄ で は、 そ の へ ん の と こ ろ を 私 な り
目の前でくりひろげてくれたらわからないけれど。
に書いてみた。主人公の女は愛する男との幸福な生活に倦
み、別の男に気をそそられるが、一歩を踏み外すところま
ではいかない。真夜中にふと目を覚まし、隣で眠る恋人の
『ぶらりぶらこの恋』
幻冬舎・1,470 円
﹃世界地図の下書き﹄
のは、ネコ本の不思議な魅力で、そして
う存分味わえるのが、日本全国で語られ
それはそのままネコという存在の魅力で
るネコにまつわる伝承を集めた本書であ
事情を彼らは共有しない。家族のようで
物語が進んでいくに従い、子どもたち
る。
﹁人語を話す猫﹂
﹁猫の踊り﹂
﹁猫の復
はあるが、家族ではない。そこには確か
が施設を出てどう暮らしていくかという
讐﹂などとテーマによって少しずつ内容
もある。気まぐれで人の思い通りには動
生まれの受賞者という大きな見出しで各
ことが焦点になっていく。ラストシーン
は違う。しかし、副題の﹁家を出ていっ
かないネコは、長くペットとして人と生
メディアに取り上げられ話題になった作
では、作中で描かれている様々な出来事
た猫は、なぜ、二度と帰ってこないのだ
に一線があり、皆それぞれが孤独なのだ。
家・朝井リョウ。彼の直木賞受賞後初の
を通して、太輔をはじめとする班の皆そ
ろうか?﹂の通り、事件の後、ネコはほ
活を共にしていながら、どこか謎めいた
作 品 の 舞 台 は﹁ 児 童 養 護 施 設 ﹂。 両 親 を
れぞれが、自分で考え決断したこれから
とんど帰ることがない。様々な場所で語
し か し、 孤 独 だ か ら こ そ の 強 さ が あ り、
亡くした子ども、両親に虐待を受けた子
先の未来を語る。子どもたちから語られ
印象が消えない。この﹁謎﹂の部分を思
ども、施設で暮らしていることでいじめ
る未来は希望に満ち、輝くような未来で
物語はたくさんの力に溢れていて暖かく
られている子ども、様々な事情を抱え施
り継がれた伝承であるのに、ネコがいな
優しい。
設で暮らす子どもたち。フィクションで
はない。頼りなく不安になるような未来、
と は と て も 興 味 深 い。 ネ コ を 可 愛 が り、
くなるというパターンで終わるというこ
集英社・一四七〇円
二〇一三年一月、直木賞史上初の平成
あってフィクションではないようなしっ
けれど何よりも力強く、そこには生きる
朝井リョウ著
かりとした現実味を帯びた苦しさが物語
︵峠︶
擬人化しつつも、いざ人に近い存在にな
力が溢れていた。
物語は、両親を亡くしたことにより施
りそうになると、怖がり、遠くの異世界
閉ざしていた太輔だが、施設の中で生活
ネコがいなくなって神経衰弱気味の文豪
の ネ コ、 島 の ネ コ、 コ ミ ッ ク エ ッ セ イ、
谷
梟社・二一〇〇円
真介著
猫に関する本は沢山ある。不細工な顔
について改めていろいろ考えてしまった。
象 も 含 め て、 可 愛 い だ け で な い﹁ ネ コ ﹂
手さが読めてこないだろうか。そんな印
れる話の中にずっと変わらない人の身勝
で元気に生きて欲しいと願う。語り継が
し て い く う ち に 徐 々 に 心 を 開 い て い く。
の本など、
まさに星の数ほどある。またか、
巻末にある小林一茶の猫句集より一句。
﹃猫の伝説116話﹄
の中に描かれていた。
設で暮らすことになった太輔を中心に進
次第に施設の班の子どもたちとまるで家
ど う せ う ち の 子 が 一 番 可 愛 い の だ か ら、
んでゆく。初めは施設に馴染めず、心を
族のように仲良く暮らせるようになるの
などと言いつつもつい手に取ってしまう
︵尚︶
だが、太輔の班の他の子どもたちも皆そ
よい猫が爪かくす也夏座敷
れぞれに事情を抱えており、けれどその
−4−
﹃決壊石奇譚 百年の記憶﹄
講談社・一四七〇円
を締め付けられるように瑞々しい。
ち︱︱時を経ても変わらない感情は、胸
数者には社会を変化させていくエネル
で 社 会 は 同 一 性 を 保 持 し て い く が、 少
ん や り と 灯 り が 点 っ て い る よ う だ っ た。
め た 展 示 室。 狭 く 薄 暗 い 部 屋 だ が、 ぼ
あ っ た。 日 本 各 地 で 採 ら れ た 鉱 石 を 集
旅行先で訪ねた博物館にその一角は
大事なのは約束を交わした自分達の気持
い。 変 わ ろ う と す る 事、 待 ち 続 け る 事。
﹁約束﹂にただとらわれ続けたのではな
いえる時間を知っている。百年にわたる
はない。ゆっくりと形作られ、永久とも
石は何も言わずただそこにあるだけで
た︿外部﹀虚構こそが、社会システムの
同体からはじき出される形で生み出され
が、やがて世界全体をも変えていく。共
当初社会の周縁で生息していた少数者
三木笙子著
ガ ラ ス の 向 こ う の 紫 水 晶、 瑪 瑙、 琥
稼働を可能にするのだ。イエス=キリス
個人なくして社会はない。
珀︱︱拳ほどの小さな石が、小さな光を
ち に あ る と 教 え ら れ る。 鉱 石 の よ う に、
ギーが潜む。
放っていた。
やはり周縁的な場所にある社会心理
ルクス、ネルソン=マンデラ⋮⋮。
マ
=
ト、 ガ リ レ オ = ガ リ レ イ、 カ ー ル
﹃社会心理学講義
それぞれが光を集め輝いている。 ︵ゆ︶
高校一年生の徹は親元を離れ、田舎で
祖父と暮らし始める。慣れない学校生活
で、不思議な同級生・大地に出会う。地
人が意志を持つ主体であり、その意志
社会なくして個人はない。
め、 そ れ ら の 相 補 性 を 見 据 え る こ と で、
て、 心 理 と 社 会 の 矛 盾 を 正 面 か ら 見 つ
衷的な態度を改めることができる。そし
係を分析の根本に置くことによって、折
学も、社会学と心理学の分裂状態を止揚
なる。石に触れると、前の所有者の記憶
に従って行動するというのは、神話にす
社会心理学を人文学の使命を担うべき
︿閉ざされた社会﹀と︿開かれた社会﹀
﹄
を読めるという﹁力﹂を。
ぎない。理性的精神が行為を司るという
ものへと引き上げる、小坂井が本書で展
し、精神活動を生み出す身体と社会の関
明治の東京を舞台にした﹁帝都探偵絵
近代的人間像は誤りであり、判断、行動
学部に属し、鉱石に詳しい大地と過ごす
図﹂シリーズが好評の三木笙子最新作は、
はもちろん、認識さえも他の人の影響を
筑摩書房・一九九五円
鉱石の不思議な力をモチーフにした青春
開するのは、そうしたスケールの大きな
小坂井敏晶著
奇譚。ファンタジー要素は過分に主張せ
大きく受けてしまうことが、社会心理学
構想である。
うち、徹は彼の持つ﹁力﹂を知ることに
ず、溢れるのは少年達の友情、家族の繋
の実験の数々、最近では脳科学の実験に
訓練を来たるべき世代に渡すこと、これ
容力を高め、世界の多様性を受けとめる
その使命とは、異質な生きざまへの包
がり、相手を思う心の強さだ。
そ の 際、 人 は 表 層 的 に は 多 数 者 の 影
である。
おいても、実証されている。
響 を 受 け る が、 深 層 的 に は む し ろ 少 数
石に込められた強い思いは徹と大地に
者 の 影 響 を 受 け や す い。 多 数 者 の 影 響
降りそそぎ、物語は一転、大地の祖父が
過ごした江戸時代へと遡る。祖父が友人
︵フ︶
と交わした約束、伝えられなかった気持
−5−
て入手するツールとしてではなく、個々
不可欠なものとなり、単に情報を検索し
生きる我々にとって情報通信技術は必要
あげ、四十年余りが経ちました。現代を
一九六九年にインターネットが産声を
だと言えます。
れに反応してしまったために起こる事例
ま情報発信をしてしまった、あるいはそ
た情報との接し方をきちんと心得ないま
書き込みによる﹁炎上﹂事例は、こうし
人が情報を発信してそれらの情報を共有
することがもはや当たり前のこととなり
ました。そして集積された情報をまた別
の 人 間 が 利 用 す る、 と い う 相 互 作 用 を
持ったネットワーク社会が構築されてき
このような社会の中で、私たちにはテ
かを自分で判断せねばならないという高
択し、またその情報が正しいものである
日膨大な量の情報を必要に応じて取捨選
︶
﹂という考え方を
︵ collective intelligence
キーワードに、これからの情報と私たち
社会に大きな影響を与えていく﹁集合知
識だと捉え、たくさんの知識が集合して
今回は、インターネット上の情報を知
唱された考え方で、具体例としてはグー
﹁集合知︵ collective intelligence
︶﹂
︵略
してCI︶は二十一世紀に入ってから提
−6−
ました。
度な能力が求められています。与えられ
レビ、パソコン、スマートフォンから毎
た情報を無批判に摂取している人も多い
の関わり方を考察してみたいと思います。
る情報、全くのでたらめである情報も少
なくありません。そういったものから自
分の身を守るにはどうすればよいか、自
分がどういう姿勢で情報に接すればよい
な い の で は な い で し ょ う か。 昨 今 ソ ー
のかをきちんと考えておかなければなら
シャルメディアなどで見られる不用意な
三 人 寄 れ ば 文 殊 の 知 恵、 で は
百万人集まれば∼集合知とは?
中で、そのような情報の中には悪意のあ
『ウェブ炎上―ネット
群集の暴走と可能性』
ワードが集計され、他のユーザーの検索
イトを利用したユーザーが入力した検索
挙げられます。検索エンジンは、そのサ
キペディアなどのオンライン百科事典が
グルやヤフーなどの検索エンジン、ウィ
円︶が言及しています。
ジェームズ・スロウィッキー著・七八〇
んなの意見﹂は案外正しい﹄︵角川文庫・
う な 集 合 知 の﹁ 正 し さ ﹂ に つ い て﹃﹁ み
ができるのかと感じられますが、そのよ
いう事例が紹介されています。
予測よりも正しさの点において上回ると
に対価を与えると、その予測は専門家の
市場原理にもとづいて不特定多数の意見
結果にフィードバックされます。ウィキ
ペディアでは、ある一つの項目に関して
その道のプロフェッショナルもアマチュ
アも同じ土俵に上がって記述の表現方法
や内容について議論を重ね、ページが作
られていきます。こうした不特定多数の
人間が提供した情報の集合体を様々な分
門家だけでなく一般の人々も知識の蓄積
に関しても、インターネットを活用し専
と思いますが、最近はより専門的な分野
なサービスを思い浮かべた方もおられる
でコメントを書き込んだりといった身近
料理を評価したり、面白い画像にみんな
んでいる地域の飲食店の情報を集約して
知識、情報の集合体というと自分の住
測市場﹂という新戦略﹄︵ダイヤモンド社・
﹃ 普 通 の 人 た ち を 予 言 者 に 変 え る﹁ 予
正しい可能性が高い、とも言えます。
種多様な意見を持っている集団の意見は
の人が全く他人の意見に左右されず、多
ということです。言い換えればそれぞれ
散性が確保されていなければならない﹂
ぞれの意見の多様性、判断の独立性、分
述べていますが﹁集合知の正しさはそれ
ことは、著者のスロウィッキーも文中で
ここで注意しておかなければならない
なアプローチの有効性が薄れてくること
められる問題については、逆に集合知的
わめて複雑な問題や、創造的な答えが求
はほとんどありません。このことは、き
そこから大きく外れた判断を下す可能性
性や価値観というものを持っている以上
い人間はそうそういませんし、人間が理
しかし、他人の意見に全く左右されな
場合が多いという性質を持っています。
を予測したり、解決をはかる方が正しい
するよりも、不特定多数の人たちで答え
れを専門家のような一部の人だけで解決
らかというと容易な問題については、そ
集合知は、あまり複雑ではない、どち
に貢献する仕組みが作られつつありま
ド ナ ル ド・ ト ン プ ソ ン 著・ 二 一 〇 〇 円 ︶
野に活用しようというのが、集合知とい
す。直感的に考えれば、多少の知識はあっ
では、より正しい集合知の運用例として、
う考え方です。
たとしてもはたして素人が物理や数学な
−7−
『普通の人たちを予言者に変える
「予測市場」という新戦略』
どの科学的な分野について有意義な貢献
『「みんなの意見」は
案外正しい』
を行う場所と、議論を行う人が必要にな
可欠になってきます。そのためには議論
れについて議論を深めることが必要不
な主張や知識を効率的に収集し、それぞ
ネットワーク上に散らばっている多様
す る こ と が で き る の か。 そ の た め に は
知識を、客観的なものとして正しく運用
では、どうすれば集団としての意見や
は必ずしも言えません。
集合知のもたらす答えがすべて正しいと
ば か り が 出 て き て し ま う で し ょ う か ら、
見とは全く逆の、ある方向に偏った意見
主義主張を持っていたとしたら多様な意
論もそこに集っている人々が似たような
ネット上の匿名掲示板などで行われる議
の原因にもなりえます。また、インター
ターネット上の意見を現実世界にいかに
要視されている民間企業などでは、イン
に関わる国の機関やマーケティングが重
うになってきました。特に行政サービス
るものであるかのように重要視されるよ
と同等か、場合によってはより価値のあ
で人間が顔を突き合わせて導き出すもの
ターネット上での意見は、今や現実空間
生まれています。こうして生まれたイン
れていくという集合知の形成システムが
という形で議論に参加し、世論が形成さ
をし、意見をツイート、リツイートする
についてたくさんのユーザーがコメント
においてある人間が問題提起をし、それ
こういったメディア上のコミュニティ
捉え方もできるようになってきました。
は社会のインフラの一つである、という
トされています。
産業の現状と今後の問題についてレポー
ではとりわけ北米におけるビッグデータ
談 社 現 代 新 書・ 海 部 美 知 著・ 七 九 八 円 ︶
ま た﹃ ビ ッ グ デ ー タ の 覇 者 た ち ﹄︵ 講
ているのかを知るのに好適です。
ンティストが実際にどのような仕事をし
ク・一八九〇円︶はそんなデータサイエ
エンティスト完全ガイド﹄︵日経BPムッ
る よ う に な っ て き ま し た。﹃ デ ー タ サ イ
といった新しい分野の仕事も重要視され
月 末 現 在 ︶、 情 報 を や り 取 り す る ツ ー ル
二億人もの人々が利用し︵二〇一三年四
イ ス ブ ッ ク は 十 一 億 人、 ツ イ ッ タ ー は
議論するという手法です。全世界でフェ
ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア 上 で 意 見 を 集 約 し、
はフェイスブックやツイッターといった
出 す よ う な﹁ デ ー タ サ イ エ ン テ ィ ス ト ﹂
ケティングやさらなる有益な情報を生み
のようなデータを効率よく処理し、マー
いわゆる﹁ビッグデータ﹂とみなしてそ
わる情報、あらゆるログの膨大な集積を
メディアやネットワーク上の個人にかか
りつつあります。最近では、ソーシャル
という組織全体としての能力が必要にな
合知の考え方は影響力を強めています。
ちろん純粋な学問分野でもそのような集
用する個人や企業が多くありますが、も
会システム、またそれらを営利目的で活
形成を前提としたネットワーク社会や社
すでに私たちの生活の中には集合知の
早 く、 事 細 か に フ ィ ー ド バ ッ ク す る か、
として巨大なネットワークを築いていま
現在もっとも頻繁に用いられているの
ります。
す。もはやこうしたソーシャルメディア
『ビッグデータの
覇者たち』
−8−
た根拠のない﹁科学技術賛美論﹂もっと
歩に向き合うことになりました。そして
たとえばロボット研究に伴って発展し
言えば﹁学問賛美論﹂を支持することに
研究者以外の一般市民は、研究成果のみ
てきた人工知能の研究は、人間の脳自体
なります。
は重要な変化が起こっていました。それ
を科学的に研究する認知科学や脳科学の
学問の成果を利用する我々の誤った認識
を利用することで盲目的になり、これま
に、二十世紀まではアカデミックな分野
分野とリンクをはじめ、人工知能に感情
は﹁学問領域の融合﹂が様々な分野で進
においてどのようにして知識が獲得さ
を 持 た せ る た め に は ど う す れ ば い い か、
は、たとえば日本の高度経済成長期の公
専門知と集合知のはざまで
∼学者の先生は信用できない?
れ、世界に発信されてきたかを少し考え
害問題や世界的な地球温暖化、オゾン層
行していたことです。
てみることにします。
という視点から倫理学などの人間のここ
破壊などの環境問題や、いわゆる﹁トン
集合知が専門的な学問の知識形成にど
インターネットが普及する以前、大学
ろの内面を研究する分野との連携も必要
正誤を判定するのは同じ研究を日夜続け
てきました。つまり、その学説を検証し
う方法で研究成果が世の中に取り込まれ
の民衆の暮らしの中に還元していくとい
究者が異を唱えない学説については一般
認を行い、学会で議論を重ね、多くの研
論文をほかの研究者が読み検証実験や確
た人材を育成するための学問体系が整備
なってくるわけですが、これまでそうし
数の分野についての深い知識が必要に
う仕組みであったのです。そうすると複
が同じプロの研究成果を評価する﹂とい
従来の評価システムでは﹁その道のプロ
が 頻 繁 に 起 こ る よ う に な っ て き ま し た。
の仕組みがうまく機能しないということ
なってくると、研究成果を検証するため
と こ ろ が、 学 問 領 域 の 境 界 が 曖 昧 に
指摘が数多く述べられています。
ることへの危険性について示唆に富んだ
学問︵特に科学技術︶のひずみ、盲信す
垣裕子著・三五七〇円︶には、こうした
た。﹃ 専 門 知 と 公 共 性
科学技術社会論
の 構 築 へ 向 け て ﹄︵ 東 京 大 学 出 版 会・ 藤
術を生み出すことになってしまいまし
デモ科学﹂と呼ばれる根拠のない科学技
のような影響を与えているかを考える前
や企業で働く研究者たちは自分の研究の
になってきました。
ている学者たちでした。普段研究活動を
されてきませんでした。その道を究めた
こうしたひずみのある評価システムと
成果を論文という形でまとめ、学会誌な
していない一般市民は、研究者たちが身
プロであれ、という学者、研究者のあり
−9−
どのアナログ媒体でそれを公表し、その
を削り成し遂げた成果のみを享受する立
横断的に学問を考えることができる人
方自体が変化してきていたのです。
間がいないまま、世界は技術の爆発的進
場にあったわけです。情報技術がめざま
も、こうした状況はさして変わらないと
しく進歩を始めた二十世紀末にあって
考えられていました。しかし、水面下で
『専門知と公共性』
そして日常生活に大きな実害が現れて
して、専門家だけでなく一般市民も知識
く こ と に な り ま す。 そ の 最 た る 例 が
正しい知識を身に付けることが必要なの
りよく活用するためには私たちが個々に
たが、筆者が言いたいことは集合知をよ
われている研究内容について、広く門戸
学、分子生物学といった現在進行形で行
うものではなく、情報処理、数学、物理
それはいわゆる生活の雑学の収集とい
の編纂に加わる科学という意味です。
二〇一一年三月十一日に発生した東日本
だ、ということです。
話が少し集合知からそれてしまいまし
です。
大震災と、人災としての福島第一原子力
はじめて、私たちは学問への盲信に気付
発電所事故であると言えるのではないで
して専門知と社会とのかかわりを考えて
に悲しい気持ちになりましたが、今こう
策に活かされていなかったと知り、本当
は、あの当時のたくさんの教訓が防災対
紹 介 し た い の は、﹃ オ ー プ ン サ イ エ ン ス
野を例にご紹介したいと思います。まず
ように使われているかを、科学技術の分
デミックな分野﹂において集合知がどの
今度はインターネットの世界で﹁アカ
オープンサイエンスと集合知の
可能性∼私の考えが論文に !
トウェアは、大企業によって秘密主義的
ティングシステムのような大規模なソフ
レーティングシステム。通常、オペレー
を開いて研究目的を達成しようという性
みると、技術的な防災対策だけでなく学
に開発され、またその成果物もプロプラ
例をあげてみます。
︵リナックス︶﹂
Linux
オープンソースのコンピュータのオペ
も こ の Linux
が
Android
ベースとなっていますが、開発に参加し
の基本ソフト
す。 現 在 の い わ ゆ る﹁ ス マ ー ト フ ォ ン ﹂
ログラマーたちの手で開発されていま
は、二〇一二年現在一五〇〇万行
Linux
ものソースコードがプロ、アマチュアプ
で し た が、 一 九 九 一 年 に 公 開 さ れ た
イエタリーなものであるというのが常識
﹁
であると言えます。
格のもので、集合知の最先端の利用方法
問というもののあり方も問われていたの
革 命 ﹄︵ 紀 伊 國 屋 書 店・ マ イ ケ ル・ ニ ー
しょうか。一九九五年一月十七日の阪神
だと痛感しています。先の原発事故では、
ルセン著・二三一〇円︶です。
﹁オープンサイエンス﹂とは、従来の﹁閉
た い と 考 え て い る 人 は Linux Kernel
︵L K M L ︶ と 呼 ば れ る 開
Mailing List
− 10 −
淡路大震災を経験している筆者として
専門家である原子力の研究者や電力会社
が誠実とは言えない説明を連日放送され
ていたテレビやラジオなどのメディアを
通じて行い、一般市民が危険にさらされ
てしまうという事態が発生しました。私
たちはこの一連の出来事に直面し何を教
訓として心に刻まねばならないのか。地
震の被害について正しい知識を持つ、と
加えて大切なことは、学問や技術に対し
じた︵クローズド︶サイエンス﹂と対比
いうことは言わずもがなですが、それに
て一人一人が考え、判断するということ
『オープンサイエンス
革命』
タンパク質の立体構造を利用したパズル
知の方も多いかもしれません。 Foldit
と
は、日本語で﹁たため ! ﹂という意味。
﹁ Foldit
︵フォールドイット︶﹂
少し前にニュースになったので、ご存
者が個人のブログで選挙公約やマニ
です。
議員選挙のネットによる選挙活動の解禁
く 知 ら れ る こ と に な っ た 出 来 事 が、
ログラムコードを送ります。そうすると
また、最近集合知の持つ可能性が大き
他の開発者がそのコードについて有効性
ゲームで、ユーザーはチームに分かれて
フェストを発信することが可能になり
発者向けの情報交換のためのメーリング
やシステムに及ぼす影響を議論し、認め
課題となるタンパク質の構造モデルを作
DNAの二重らせん構造をはじめとして
投票を呼び掛けることもできるように
NSを使って、有権者が特定の候補者に
ました。また、フェイスブックなどのS
ネットを使った選挙活動、つまり候補
二〇一三年七月四日に公示された参議院
られれば晴れてソースコードの仲間入り
り 上 げ ま す。 た ん ぱ く 質 の 立 体 構 造 は、
リストに登録し、そこに自分の書いたプ
を果たすことになります。
とても複雑なもので、現在はコンピュー
プ ロ グ ラ マ ー が も つ 新 し い 倫 理 観 と、
において考察されているように、現代の
所・エリック・レイモンド著・二七三〇円︶
する論文﹃伽藍とバザール﹄
︵USP研究
年に書かれた、オープンソース開発に関
るこのような開発手法ですが、一九九八
近年では当たり前のように行われてい
覧できる環境に公開することで解決の糸
す。インターネットという多くの人が閲
は導き出せなかったものだったそうで
ています。しかもコンピュータの計算で
変異の原因が解明されることが期待され
体の中で活性をもつタンパク質の働きや
た。構造解析が可能になったことで、人
が三週間で正確なモデルを作り上げまし
ころ、インターネット上のユーザーたち
質酵素の立体構造のモデルを投稿したと
ズルゲームの問題として、あるタンパク
あるエイズウイルスの研究者がこのパ
る選挙活動が解禁され、同年十二月の大
では一足先の二〇一二年にネットによ
行われてきませんでしたが、お隣の韓国
て、我が国では公職選挙法の規制があり
交換や啓蒙活動が行われることに関し
ソーシャルなメディア上で選挙の情報
に行われていることでしょう。こうした
論がまさにソーシャルメディアを中心
初めての﹁ネット選挙﹂をふりかえる議
の原稿が﹁書標﹂に掲載されるころには、
アドレスの表示義務があります︶が、こ
た選挙活動を行うためには電子メール
なりました︵ただし、SNS上でこうし
タの高度なシミュレーションによって解
集合知を前提とした開発体制から大成
− 11 −
析が進められています。
功したプロジェクトの一つであると言
ディアやブログといった媒体での情報
統領選挙では、各陣営ともソーシャルメ
えます。
口が得られたよい例でしょう。
『伽藍とバザール』
ウェアの開発に関わるとき、たくさんの
こ と で は な く、 オ ー プ ン ソ ー ス ソ フ ト
たトピックスに関して親和性が高く、社
者の選挙離れによる投票率の低下は、大
人の意見を集約して仕事に活かそうと
会との関係性を論じるのにふさわしい好
きな社会問題となっていましたので、今
するとき、その他多くの場面で重要なこ
会になればなるほど、集合知というもの
回のネットによる選挙活動の解禁によ
とであり、そこで求められる﹁他の人の
もう一冊、﹃情報の呼吸法﹄︵朝日出版社・
は決して﹁閉じた場﹂で作られるような
り有権者が政治に興味を持ち、自分なり
話を聞く﹂ということはバーチャル空間
津田大介著・九八七円︶
。読みやすく、自
発信を行いました。その結果、二十、
三十
に考えて行動を起こすきっかけとなる
で相手が目の前にいなくても、実際に面
分自身が情報とどのように向き合ってい
代の若い年齢層の投票率が大幅に上昇
ことを期待しています。
と向かって意見を交換している時のよ
著です。
少し話題が集合知自体の事からずれて
うな誠実さが求められているのではな
けばよいかを考えさせてくれる本です。
限定的なものになってしまってはいけな
しまいました。ここで考えていきたいの
いでしょうか。そういう意味では、仮想
し、﹁ 自 分 の 代 表 を 自 分 で 選 ぶ ﹂ と い う
がインターネット上で議論され、集約さ
現実がどんどん拡張していく現在に
これは例に挙げた選挙活動に限った
れた意見や主張がそれを見た人にどのよ
あって、私たちはより一層、現実空間で
いと思われます。
う な 影 響 を 与 え る か、 と い う こ と で す。
も求められる人間性を問われていると
意識が韓国の有権者に少なからず芽生
これまでのように、情報ネットワークに
田 亮 介 著・ 一 五 七 五 円 ︶。 若 い 新 進 気 鋭
日 本 社 会 の 変 容 ﹄︵ 東 洋 経 済 新 報 社・ 西
ら に 参 加 す る 人 々 は 無 報 酬 の﹁ ボ ラ ン
具体例を少しあげてきましたが、これ
集合知のこれから
− 12 −
えているようです。日本でも、昨今は若
接する時間が私たちの一日の中であまり
言えます。
をいえば、ある有権者が自分以外の誰と
の社会学者たちは情報革新とともに育っ
も 含 め て ︶﹂ に つ い て の 本 を 挙 げ て み ま
話したり、実際に候補者の街頭演説を聴
も直接の面会や交流をもたないまま、政
てきた世代なので、集合知をはじめとし
す。 ま ず﹃ ネ ッ ト 選 挙 解 禁 が も た ら す
治にかかわる意思表示をとることができ
きに出かけたりしていましたが、これか
るようになってきました。そのような社
らの時代の選挙においては、極端なこと
ここでは﹁ネット選挙︵電子投票など
多くない場合は、家族や近所に住む人と
『ネット選挙 解禁がも
たらす日本社会の変容』
『情報の呼吸法』
す。また、こうした仕組みを作ることで
モチベーションが保たれるのだと思いま
組みを作ったほうが参加する側としても
に対価は求めるでしょうし、そういう仕
せん。だれだって自分の成し遂げたこと
テムがうまく構築できるとは到底思えま
人々の活動だけで集合知を利用したシス
ティア﹂です。しかしながら、無報酬の
の手法について論じられています。
関 係 性 の 再 考 に も つ な が る﹁ 共 同 規 制 ﹂
極める現代において、伝統的な公と私の
に展開するインターネット企業が隆盛を
生貝直人著・三七八〇円︶はグローバル
せん。
﹃情報社会と共同規制﹄
︵勁草書房・
りかたについても考えていかねばなりま
重要です。またそのため必要な規制のあ
る情報のコントロールをおこなうことが
て、直接新しい﹁統治﹂を創造していか
に、私たち一人一人が情報技術を利用し
編著・一八九〇円︶に書かれているよう
ク 社 会 ﹄︵ 春 秋 社・ 西 田 亮 介・ 塚 越 健 司
新しい公共/オープンガバメント/リー
も ち ろ ん で す が、﹃﹁ 統 治 ﹂ を 創 造 す る
ちもそれを後押しすることが必要なのは
主導して動きをおこしていくこと、私た
に取り入れていくためには、やはり国が
が、その手法にはもちろん批判も多くあ
するといったサービスを行ってきました
るであろうという広告や検索候補を表示
ジの情報から、それぞれの人に適してい
気付いており、検索履歴や閲覧したペー
上のライフログ﹂そのものの利用価値に
く収集・集約し、よりよいサービスの実
に、利用者である市民の声を分け隔てな
な制度運用が必要不可欠であるのと同時
いくためには、行政側からのきめ細やか
す。公共サービスをよりよいものにして
極的に取り入れていくべき時期にありま
公共機関も集合知を用いた仕組みを積
私たち一人一人だということを忘れずに
やすい世界を作っていくのは他ならない
くの人が幸せになれるように、より住み
しい﹁知のかたち﹂を糧に、一人でも多
あらためて発見した﹁集合知﹂という新
現代を生きる私たちが情報社会の中で
なければいけません。
集合知のシステムが洗練されて体系化さ
りました。私たちはまずこの情報社会に
いたいと思います。
れ、より一層働きが強まる、という好循
あって自分自身が単なる﹁ビッグデータ
現へと昇華させていくことが求められま
個々がきちんと評価されるためにはどう
したらよいのでしょうか。グーグルやフェ
イスブックなどは、早くから﹁たくさん
の人が検索したデータ﹂や﹁オンライン
︵池袋本店
山中︶
− 13 −
で は 集 合 知 を 用 い た シ ス テ ム の 中 で、
のいち構成要素﹂とならないように、摂
す。公的機関がこうした仕組みを積極的
『「統治」を創造する』
環が生まれてくるはずです。
取する情報の取捨選択とともに、発信す
『情報社会と共同規制』
社 会 科 学
フライターなどを務め、アメリカ連邦最
﹁ ニ ュ ー ヨ ー カ ー﹂ の 法 曹 関 係 の ス タ ッ
とより、地域活性化に携わる全ての方々
は全国の経営難で悩む鉄道会社の方はも
部長で、大の鉄道ファンだった。本書に
募で採用された社長。元航空会社の運航
特に印象的なのは、よそ者の力を借り
高裁をテーマにした多くの著書がある。
なさいという発想。田舎の人は突然やっ
にとって、目からウロコのアイデアが満
政 治、 宗 教、 妊 娠 中 絶、 人 種、 同 性 愛、
てきたよそ者にはとかく慎重で、結局今
本書は、レーガン大統領就任前後から
判事たち自身の思惑と思想、哲学、人事、
までの地元流を捨てられず、じり貧にな
載されている。
判例、判決を巡り、外部の人間も入り乱れ、
ブッシュ・ジュニア大統領までの最高裁
十九世紀に至るまで、人口の九割は絶
ドラマ以上の政治的駆け引きが描かれて
りがちだ。外部の人間のそれまでと違っ
を 舞 台 に し た ノ ン フ ィ ク シ ョ ン で あ る。
望的な貧困の中で、心身をすり減らすよ
た見方・考え方こそが、新しい時代を切
大いなる探求
上・下
シルヴィア・ナサー著
うな重労働に従事することを運命づけら
いる。アメリカ連邦最高裁をテーマにし
くれる。
晶文社
生活保護リアル
みわよしこ著
生活保護受給者の数は年々増加し、既
一五七五円
り開くヒントだと、いすみ鉄道は教えて
れていた。すべては神の定めで、ここか
三三六〇円
た書籍が少ないため、新鮮さを感じる。
河出書房新社
ら 抜 け 出 せ る と 考 え る こ と は な か っ た。
しかし、貧困層がこの惨めな運命から解
放 さ れ る 可 能 性 が あ る と い う 考 え 方 が、
ヴィクトリア朝のロンドンにおいて芽生
えた。それを新しい経済学という。
本書は、一八四〇年代から二十一世紀
に二百万人を突破している。これほど規
初頭にかけての経済学と歴史と経済学者
の伝記を織り合わせて、ひとつの物語に
ん収められている。いったん生活保護の
本書には当事者たちの生の声がたくさ
的な部分しか知らないことが多い。
水際作戦﹂といった報道等の、案外断片
たちは﹁不正受給事件﹂や﹁福祉窓口の
模の大きい社会問題にもかかわらず、私
各二三一〇円
したものである。天才経済学者たちの素
ローカル線で
地域を元気にする方法
著者は廃止寸前の赤字ローカル線に公
鳥塚
亮著
顔が見える好著。
新潮社
ザ・ナイン
著者はCNNの法律アナリストや雑誌
ジェフリー・トゥービン著
− 14 −
社会科学
この問題を解決するためには、一人でも
し ひ し と 伝 わ っ て き て、 衝 撃 的 な 内 容。
るのがいかに困難なのかという現実がひ
暮らしに転落すると、そこから這い上が
ただきたい一冊。男がこの問題を深く知
多い。これは是非男性にも手にとってい
の崩壊した中で﹁孤育て﹂に苦しむ母も
に批判。出産後も、地域コミュニティー
も垣間見えて面白い。
いる。見慣れている池上氏とは別の印象
やすくメディアの役割と仕組みを伝えて
ろに光を当てて、様々な観点からわかり
し、消費者からは普段触れられないとこ
一五七五円
り 行 動 し な け れ ば と 強 く 思 わ な い 限 り、
小倉昌男さんのマーケティング力
夜間飛行
多くの人が実態を知ることがまず先決だ
一六八〇円
正直何も変わらない気がするからだ。
河出書房新社
顧客目線に立った様々な新サービスを
一四七〇円
と思わされる。
日本評論社
中田信哉著
著者はマーケティング分
野の研究者。クロネコヤマトの宅急便や
小倉昌男氏に関する本は既に多数存在す
導入することができ、繁栄を築いたと論
ネット時代の寵児として、またジャーナ
既 存 の メ デ ィ ア で 著 名 な 池 上 氏 と、
像が最終章で描かれていて、こちらも興
で語る著者ならではの、素顔の小倉昌男
容。親交があったゆえ小倉氏をさん付け
− 15 −
るが、マーケティングにこだわった書き
方をしたのは本書が初めてではないだろ
うか。著者は、宅急便はサービスマーケ
小倉氏が事業を﹁トラック業﹂や﹁運
ティングそのものだと明言している。
池上
彰・津田大介著
夜間飛行とい
うメルマガを発行している企業が、ネッ
送業﹂ではなく、﹁第三次産業﹂や﹁サー
トを積極的に活用した﹁一歩先﹂の紙の
メディアの仕組み
赤ん坊は希望の象徴だ。皆から祝福さ
じていて、なるほどと納得させられる内
今の日本社会において、女性が安心して
リストとして知られる津田氏の対談をま
ビ ス 業 ﹂ と し て と ら え て い た か ら こ そ、
れ、そこにいるだけで周りがぱっと明る
書籍として発行された本である。
ルポ
産ませない社会
小林美希著
くなるような、そんな存在である。ただ、
出産できる環境が整っているかという
一八〇〇円
と、残念ながら答えはノーだ。
白桃書房
味深い。
ディアについて収益構造などにも言及
とめてある。テレビ、新聞などの既存メ
本書では、労働現場や医療現場に詳し
い著者が、産ませない社会の実態を痛烈
社会科学
ファミコンとその時代
黒のスプレーにブラックライトの組み合
る。 し か し 本 書 で は 蛍 光 塗 料 と 洗 濯 糊、
と膨大なレンダリング時間が必要とな
古賀信明著
たとえば溶岩を描こうと
したとき、CGだと強力な物理エンジン
ことができた、設計の視点から論じた開
ドウェア開発責任者だったからこそ語る
だった。著者のひとり上村が当時のハー
された理由はなんと、安全への配慮から
ない。今ではおなじみの十字キーが採用
踏んだ場合、折れて怪我をするかもしれ
上村雅之・細井浩一・中村彰憲著
わせで生み出してしまう。アナログ特有
発史。ファミコン誕生三十周年の今年に
柏木餅子・風薬著
ジョイスティックは、子どもが誤って
の有機的な質感もすばらしい。
VFX︵視
撮影・VFX/CG
アナログ基礎講座
応用編
元々はコミックマーケットの技術書ブ
覚効果︶三十年、著者の知恵がギッシリ
コンピュータ
ロックで販売され、たった一時間で完売
きつねさんでもわかるLLVM
した実績をもつ同人誌。反響を受けて電
ふさわしい一冊。
二七三○円
詰まった人気シリーズの第三弾。
NTT出版
Beyond Interaction
改訂第2版
クリエイティブ・コーディングのための
実践ガイド
openFrameworks
田所
淳著
齋藤あきこ編著
は C++
をベースに
openFrameworks
プログラミング初心者でも容易に扱える
、サーバ/インフラなどのエン
Linux
ジニア養成読本シリーズの、今回はデー
データベースエンジニア養成読本
︵取扱店舗は池袋本店 M
・ &J 梅田店︶
スペシャルエフエックススタジオ
三五〇〇円
子書籍化、今回さらに紙の書籍として出
版されることとなった。LLVMは言語
非依存のコンパイラ基盤として注目され
ているが、解説書は本書が初となる。か
わいい表紙と読み応えある中身のギャッ
二五二○円
プ が 人 気 の 秘 密? き つ ね さ ん と 一 緒
に、LLVMの世界へ。
インプレスジャパン
タ ベ ー ス。 ビ ッ グ デ ー タ 活 用 が 叫 ば れ
が速いのも特徴で、外部からの働きかけ
に即応し変化していくようなインタラク
よう設計されたツールキット。実行速度
が 関 心 を 集 め て い る が、 実 際 に
NoSQL
は一長一短を見極め適材適所で運用する
必 要 が あ る。
ビー・エヌ・エヌ新社 三一五○円
テ ィ ブ コ ン テ ン ツ の 制 作 に 最 適 だ。 メ
ディアアーティストたちによる実際の作
といっ
MongoDB
例も、多数紹介されている。
や
Redis
た NoSQL
と MySQL
な ど の RDBMS
の
それぞれの基礎を網羅的に学ぶことがで
二〇七九円
きる。
技術評論社
− 16 −
コンピュータ
自 然 科 学
ている人間は、実は言語以外の生物学的
言語を話すことで他者との関係を築い
基盤を持つ行動シグナルからその行動が
ジェやミースと並ぶ建築界の巨匠。
ライトが七十歳で完成させた﹁落水荘﹂
大部分予測可能だという。著者のペント
る﹁ソシオメーター﹂で影響力・ミミク
は、スキャンダルも抱えた不遇時代から
お馴染みだろう。その︵コルビュジェへ
リ︵ 模 倣 ︶・ 活 動 レ ベ ル・ 一 貫 性 と い っ
の復活を告げることになった世界で最も
の対抗心からバルコニーを空中に浮かば
た﹁正直シグナル﹂を計測した結果、人
ランドはMITメディアラボでヒューマ
せ た の で あ ろ う ︶ 外 観 の デ ザ イ ン か ら、
は打診・傾聴・協調・主導などの社会的
有名な現代住宅である。小川の滝の上に
マルハナバチは獲物や天敵を麻痺させ
木野田君公・高見澤今朝雄・伊藤誠夫著
インテリアの見所、また施工・管理につ
役割を果たすことがわかってきた。コン
マイクや赤外線モジュールなどから成
たり殺したりする狩りバチの体のつくり
いて、さらに工事中のもめごとまで、本
ンダイナミクスを研究している。
を土台としながら、狩りを行わず、生涯
書にはまさに﹁落水荘﹂のすべてが丁寧
張り出したバルコニーはテレビCMでも
の食事を花蜜と花粉でまかなうハナバチ
− 17 −
日本産
マルハナバチ図鑑
の仲間である。牧草や野菜の受粉をする
ピュータを利用した計算社会科学が目指
すのはこの役割を適切に分担し、効果的
にまとめられている。
ンス﹂によってより賢い組織、賢い社会
な意思決定﹁ネットワーク・インテリジェ
を組織するというものだ。興味深い研究
一八九〇円
本書は、日本産のマルハナバチの全種・
は 早 川 書 房﹃ M I T メ デ ィ ア ラ ボ ﹄
王国社
ことから、ヨーロッパでは身近なハチで、
ユーラシアと北米・南米が主な分布域と
全亜種を約五五〇枚の生態写真と新鮮
なっている。
な ! 標本写真で紹介したマルハナバチ
革新に惹きつけられる。
︵二一〇〇円︶を読むとその近未来的な
意思決定が非論理・非合理的というの
図鑑の決定版。カラフルな被毛がマルハ
は興味深い。無意識なネットワークから
ナバチの特色らしく、ページをめくると
様々な色のハチが目に飛び込んでくる。
様だ。単純なマーケティングを超えた社
二七三〇円
非言語コミュニケーションの科学
が前提だ。
みすず書房
正直シグナル
アレックス︵サンディ︶
・ペントランド著
会的知性はしかしネットワークの健全化
最良の解を導き出すのは個人の脳でも同
一八九〇円
北海道大学出版会
三沢
浩著
フランク・ロイド・ライトはコルビュ
﹁落水荘﹂のすべて
自然科学
全身に張り巡らされたネットワークとし
神 経 内 科 領 域 の 医 師 で あ る 著 者 は 言 う。
岩田
誠著
神経内科とはどのような科だろうか?
を尊重するのではなく﹁患者の人権を擁
魔化されるなとと糾弾する。患者の人権
があるとし、日本医師会の〝誤訳〟に誤
の倫理の患者の人権に関する部分に誤訳
会︵WMA︶の文書の日本語訳、特に医
ホームページに掲載されている世界医師
い け な い の か? 著 者 は 日 本 医 師 会 の
もしれない。患者の人権を尊重して何が
平岡
諦著
タイトルを見て、おや?と思われるか
医師が﹁患者の人権を尊重する﹂
のは時代遅れで世界の非常識
SCICUS
く学習できる。
様を織り交ぜたストーリー仕立てで楽し
クチャーを受ける設定で、四人の恋愛模
う。男女四人の医療従事者が心機能のレ
数値の意味を理解することが重要だとい
大事にして描き出した画像や計測された
方を身につける。なによりも日常臨床を
基本的知識や心疾患の診断、治療の考え
得 が 必 要 で あ る。 本 書 は、﹁ 心 機 能 は 四
様々な問題が消えることはない。日本の
い っ た よ う な、 現 在 の 日 本 を と り ま く
一方で子どもが欲しくても授からず、不
に 産 む 子 ど も の 数 は 一・四 一 人 で あ る。
山王病院
不妊診療メソッド
堤
治監修
藤原敏博編
少子化が進む日本。一人の女性が一生
二六二五円
本 の 線 だ け で 捉 え ら れ る ﹂ を テ ー マ に、
きる心エコーには、より専門的知識の習
て の 神 経 系 す べ て を 診 療 の 対 象 と す る。
護︵最優先︶する﹂という観点から日本
ヒトの鰓孔︵エラアナ︶とは? 片頭
医 療 界 が 抱 え る 根 源 的 な 問 題 と は 何 か。
妊治療を受ける夫婦は増えている。本書
書
即 ち〝 鼻 の 先 か ら 尻 尾 ま で 診 療 す る 科 〟
の医の倫理を見つめ直さなければ、医療
学
だと︵頭の天辺から足の裏まで、という
医
表現ではない理由は、本書の序盤の文と
不信や医療崩壊、医師自身が苦しむ、と
痛 は 脳 の 病 気? 顔 面 神 経 膝 交 叉、〝 む
は、著者の病院で実践している不妊治療
鼻の先から尻尾まで
図をご覧いただきたい︶。
せ 〟 れ ば 安 全、 肩 と は ど こ か、 丼 を 出
医の本来なすべきこと、あるべき姿とは。
金原出版
八九二五円
高く、最先端の不妊治療である。
療︵ART︶などは信頼性及び安全性が
査、診断、一般的不妊治療、生殖補助医
積み重ねられてきた経験を融合させた検
の内容をまとめたものである。EBMと
す 手 ⋮⋮ 決 し て 堅 苦 し く は な い が、 豆
一日約十万回収縮と拡張を繰り返し動
福田大和・足立太一著
恋する心エコー︿メルクマール編﹀
ロハス・メディア
一五七五円
知 識、 雑 話 で は 終 わ ら な い 専 門 的 な 話
が 繰 り 広 げ ら れ る。 正 に 人 体 の 鼻 の 先
二九四〇円
か ら 尻 尾 ま で を、 興 味 深 く 楽 し め る 全
三十話。
中山書店
き続ける心臓を動いたままの状態で、大
きさ、形、弁の位置、血流などが確認で
− 18 −
医学書
他力の思想
学級崩壊立て直し請負人
力思想、ひいては人が人として生きてい
読み解くことで、その下を流れている他
して清沢満之らそれぞれの思想について
﹁叢書
魂の脱植民地化﹂シリーズの
四作目である。釈尊から龍樹、親鸞、そ
ターの吉崎氏のインタビューをもとに構
最新刊。本書はかつての教え子で、ライ
演や勉強会に引っ張りだこの菊池先生の
には見違えるようなものにする。今や講
底指導することで、荒れた学級を一年後
ション能力を高めることを段階的かつ徹
菊池省三著
吉崎エイジーニョ構成
言葉によって子どものコミュニケー
くために不可欠な立脚点とは何かを明か
成。失敗も含む具体例が多く述べられて
山本伸裕著
日本で一番大きい歴史の辞典﹃国史大
そ う と す る 著 者 の 語 り 口 は、﹁ 私 ﹂ と い
おり、家庭教育への言及もなされて、読
人 文 科 学
辞典﹄が明治末期に発刊された時、初任
う主語を多用しているからかどこか身近
佐滝剛弘著
国史大辞典を予約した人々
給一か月分もするその辞典を予約した
みごたえあり。
一一五五円
なものに感じられる。自己と社会との関
新潮社
わりについて考えさせられる一冊。
二三一〇円
人々の名簿が作られた。ほんのわずかし
青灯社
クレイジー・ライク・アメリカ
本書は英国出身の社会人類学者を中心
も﹁アメリカ流﹂が広がっているのでは
ているが、人の心に対する見方について
今やアメリカ文化は世界各地に浸透し
− 19 −
か現存しない貴重なその名簿に接した著
者は、錚々たる面々をその中に発見して
ゆく。そもそもそんな名簿が何故一般に
として書かれた、日本の若者問題を扱っ
な い か。 ア メ リ カ 流 が 悪 い の で は な く、
イーサン・ウォッターズ著
た 本 で あ る。﹁ 援 助 交 際 ﹂ や﹁ ニ ー ト ﹂
精神が狂気に至る道筋は文化圏によって
若者問題の社会学
など、若者を取り巻く問題一つ一つを各
異なり得るため、均質化してしまうこと
ロジャー・グッドマン他編著
章で調査しており、通読することで若者
が危険なのであると本書は指摘している。
流通したのか。時代背景と相まって、明
二五二〇円
問題を多角的に捉えることができる。ま
アメリカ文化の広がりについて精神疾患
二一〇〇円
た、﹁ 帰 国 子 女 ﹂ や﹁ 児 童 虐 待 ﹂ な ど、
紀伊國屋書店
若者問題として注目されていなかったも
二七三〇円
の観点以外からも考えさせられる一冊。
明石書店
のについて述べているのも興味深い。
治の世を切り拓こうとした人々の気概が
透けて見えるのである。
勁草書房
人文科学
女子と作文
近代ナリコ著
文学・文芸
﹁おんなこども﹂というレッテルを貼
られ、忘れ去られやすい私たち女の日々
の営みを丁寧にすくい上げてきた近代ナ
みつきしだいにたよりをくださいませ
まつております私はさけですこのよは
さけばかりですよね﹂という文面、一体
誰が馬鹿にできようか。滑稽なほどの切
者やそれを支援する人々の視点ではな
一五七五円
実さについて、時を超えて彼女と話し合
いたい。
本の雑誌社
想像ラジオ
いとうせいこう著
こちらも3・ を
背景にした物語である。生き残った被災
彼女の新刊﹃女子と作文﹄もまた、有
リコさん。
不尽にも命を奪われていった人々の視点
く、目の前で起こった突然の出来事に理
だ⋮⋮︶していたという話﹁舌足らずの
于強氏。混乱の中で多数の日本人と中国
市で東日本大震災に遭遇した中国人作家
于 強著
二〇一一年三月十一日、千葉県習志野
像するのは、自分がその時を迎えるその
ても、決して忘れず、愛する人の声を想
え日常に紛れ想い出す回数が少なくなっ
なのか。著者は読者に突きつける。たと
たのかを。これは生きている人間の驕り
想い、何を語り、何を残していきたかっ
ラブレター﹂は必読。たおやかで洒落た
人が互いに助け合い、命を救われた経験
日まですべきなことの様に思える。耳を
人間は想像することしか出来ない。何を
びた側、傍観するしかできなかった側の
で物語は進行する。残された側、生き延
名無名、﹁書く﹂﹁書かねばならなかった﹂
どの女性のはなしも素敵だが、大正時
ている。
切実さを持った女性たちについて語られ
津波、命がけの絆
女 た ち の 文 面 も 素 敵 だ が、︿ 君 子 さ ん ﹀
から書き下ろした作品である。日中両国
代、とあるプレイボーイが自分宛に届い
による、ひらがなばかり、素敵な言い回
をつなぐ愛と絆の物語。あの体験を風化
た ラ ブ レ タ ー を ス ク ラ ッ プ︵ な ん て 男
しもない、かけひきゼロのラブレターは、
一四七〇円
哀切極り無いなんて言葉では足らない大
河出書房新社
澄ませば聞こえるはずだ。
一四七〇円
させないためにもぜひ。
泰文堂
迫力の切なさがある。
孤独を酒で紛らわす彼女の﹁このてが
− 20 −
11
文学 ・ 文芸
文庫・新書
イスラーム化する世界
アレグリアとは仕事はできない
津村記久子著
アレグリアとは、主人公ミノベの会社
となりの蔵のつくも神
近 所 に 住 む お ば あ さ ん の 家 の 土 蔵 は、
伊藤
遊著
兄ちゃんは不良の仲間入りをしてなかな
マンションではボヤ騒ぎが起こり、お
何かがおかしい?
機能を持つ大型複合機のこと。しかしこ
か家に帰ってこない。お母さんはいつも
のプリンタ・スキャナ・コピーの三つの
れがまるで使えない。怠惰で、人を見て
わせられない。そんな主人公ほのかの周
怒っているし、学校ではうまく友達に合
り で 不 思 議 な 出 来 事 が 起 こ り 始 め る が、
態度を変える。まるで﹁男に媚びる性悪
ミノベは道具や機械をこれまでは手な
自分の想いはきっと伝えてもわかっても
女﹂のようなのだ。
者でもない方が英語でクルアーン︵コー
づけ、使いこなしてきた。しかしアレグ
らえない、伝わらない、と、一抹のさみ
本書は、アラブ圏の居住者でも宗教学
大川玲子著
ラン︶を解釈することが、今日のグロー
リアはまるでミノベの言うことをきかな
しさを感じながら日々を過ごしていた。
い。ミノベはアレグリアを機械に対して
とは思えないほど過剰に憎んでいる。周
あんなに大切だった時間も、大きくなる
現状を伝える本である。
思想ならず生活様式を一変させるほど
りの人は﹁たかが機械のことじゃないか﹂
につれて新しい思い出に追われ、すっか
ミノベとアレグリアの戦いはある日突
もしれない。この物語には長く使われて
いかけて、助けてくれることがあるのか
以前より大人になってしまった自分を追
六〇九円
− 21 −
バル化によって広く見出されてきている
のクルアーンを新しい時代に即して新し
が、それはすべてアレグリアのせいなの
﹁お前の仕事の効率が悪いのだ﹂と言う
幼いころあんなに大好きだったものも、
ム社会の中では容易ではない中、非アラ
く解釈しなおすことは、伝統的なムスリ
然終結する。アレグリアや周りの社員に
きた古道具に魂が宿ったとされる﹁つく
り離れてしまう。けれどそんな思い出が、
翻弄される生真面目なミノベ。読み進め
も神﹂が登場する。
﹁直せば使えるものを
である。ミノベはそう信じている。
るうちに、ミノベの応援に回ってしまう
ブ圏の人間による国際語での解釈という
イスラームの人々は世界を理解しよう
ほ ど ミ ノ ベ は が ん ば っ て い る の で あ る。
捨てるのは、気持ちが悪くないのか?﹂
ものが大きな影響を持つであろうことが
と努めている、非イスラームの人々がど
併録﹁地下鉄の叙事詩﹂と共に、日常感
この本からくみ取れる。
れだけ理解しようとしているか、能動的
じるじりじりしたどこにも持って行きよ
ポプラ文庫
く、そしてひとをはっとさせるだろう。
彼らのまっすぐな善意は少しまぶし
に読み進めて考えられる一冊。そして平
六〇九円
凡社新書ならではの客観的な言葉に満ち
ちくま文庫
うのない思いが精密に描かれている。
七九八円
た一冊。
平凡社新書
文庫・新書
芸
術
ラッセンとは何だったのか?
消費とアートを越えた﹁先﹂
原田裕規編著
も我々がラッセンから目が離せない訳を、
違いなくラッセンがある。哀しいながら
パートにおいて発達したその背景には間
テクニックが田舎のフードコートやデ
い。しかしその笑顔の断片はこんな日本
どのような人生を送ったのか私は知らな
あ る。 彼 女 た ち の レ コ ー ド が 何 枚 売 れ、
何でも笑顔で微笑む女性歌手たちの姿で
二一〇〇円
おつかれっ ! 毎日パンダ
DUBOOKS
て眺めてほしい書籍である。
さとにすむ/あなたに送る
と心もよう
では歌う。多くの人に長い時間、手にとっ
さみしさだけを/手紙につめて/ふる
の書店の片隅まで届く。
二三一〇円
痛いほど訴えかけてくる一冊。
フィルムアート社
アジアのレコードデザイン集
常盤
響・馬場正道著
黒いインクがきれいでしょう/青いび
本書は美術家や批評家ら十五人が
﹁ラッ
セン﹂を論じた画期的評論集である。日
んせんが悲しいでしょう
キー文化、パチンコ機種﹁CRラッセン
れる対象となったのか? 日本人のヤン
そこまで彼の作品は軽視され、忌み嫌わ
られる機会が少なかったラッセン。なぜ
を風靡しながらも、美術界では取り上げ
リアリズム﹂と呼ばれる絵画作品で一世
的なアジアの色彩がそこにはあった。本
インクや青いびんせんに匹敵する、圧倒
打ちのめされた。日本の七〇年代の黒い
ぬ 気 持 ち で、 新 刊 の 本 書 を 開 い た 途 端、
いるのではないか。そう思いながら浮か
ら比べると現在は、かなり希薄になって
訴えかけてくる色彩の姿は陽水の時代か
井上陽水はそう歌った。心理に痛いほど
ず笑ってしまう。見ているとリーリー♂
なパンダズや、著者のコメントにも思わ
毎日通っているからこそ撮れる表情豊か
姿 や ち ょ っ と 怖 か っ た り す る 変 顔 な ど、
ログを書籍化した写真集。表紙のお疲れ
ダを見ることになった人によるパンダブ
まったばかりに、毎日上野動物園でパン
手紙をしたためる女性の姿を、過去に
本のバブル期において、イルカやクジラ
ワールドMJ ﹂が導く、宇宙でのイルカ
書 で は イ ン ド ネ シ ア や タ イ、 ベ ト ナ ム、
をモチーフにした﹁イリュージョナル・
やクジラの﹁激アツ﹂な上昇的移行、印
中国、韓国などアジア諸国のレコードや
精神分析のエキスパート達が論じるラッ
ラー写真で紹介する。胸をかきむしられ
CDのジャケット約三〇〇点を美しいカ
と合わせて見れば楽しさ倍増。
﹃毎日パンダ 365日上野動物園に
通っているよ日記﹄︵平凡社・一一五五円︶
とシンシン♀の区別がついてくるかも
うっかり年間パスポートを買ってし
象派から続く、大衆の欲望の最終地点と
高氏貴博著
な っ た こ と ⋮⋮ 社 会 学 や 美 術 市 場 批 評、
セン論は近年なかなか見られなかった程
るような気分になるのは、ピンクやエメ
一一〇〇円
エキサイティングであり、どこか哀しい。
ラルドグリーン等、マットな背景に何が
飛鳥新社
狭い敷地面積を広く見せるパノラマ感の
!?
− 22 −
芸術
まで、遊び方だけではなく、いざという
ク、火の起こし方やシェルターの使い方
ナイフの正しい使い方から、ロープワー
ない。本書を、子ども向けと侮るなかれ。
してみると良い気分転換になるかもしれ
見え、バスへの愛情をどうにも感じずに
それは、バスの行き先表示板のようにも
おり、表紙が長方形にくり抜かれている。
と口元がゆるむ。装丁もひと工夫されて
い合う﹁バス﹂も遊び心があってクスッ
お気づきとは思うが、タイトルの向か
実
用
書
地図・旅行書
時に役立つ知恵も載っている。鉛筆で描
はいられない。
選
かれた著者独特のタッチがつむぎ出すイ
日本人なら知っておきたい花
ラストも心地良い。本書のような自然と
すべてがわかる !﹁発酵食品﹂事典
二三一〇円
江尻光一著
遊ぶアイデアを子どもたちに伝えていけ
幻戯書房
﹁ 園 芸 と は、 技 術 で は な く、 植 物 と 出
る、そんな大人になりたいものだ。
小泉武夫・金内
誠・舘野真知子監修
塩麹ブーム以来、発酵食品は急速に見
直され、再評価の動きが絶えないようだ。
終わった後に、不思議とバスに肩入れし
カフェではなくバスに乗ろうかな。読み
ゆっくり読書をするために、この次は
いるはずである。
卓には毎日何かしらの発酵食品が並んで
け物、チーズ、ヨーグルト等、我々の食
ジャー食品を軸にして、納豆、味噌、漬
考えてみれば、醤油、お酒、パン等のメ
桜・椿・芍薬・バラ・朝顔など、普段
たくなっている自分に気づいた。平田さ
説はもちろん、レシピからお取り寄せ先
一二六〇円
会い、植物を通して生きかたを知ったり
スバらしきバス
日東書院
教わったりするもの﹂という思いで花の
魅力を伝え続けてきた江尻光一氏。NH
K趣味の園芸での洋ランの先生として記
憶している方も多いだろう。江尻氏の四
見慣れている花々の歴史や江尻氏の思い
んの文章によるバスエピソードが、読む
平田俊子著
出の交じる文章を読むと花々への親しみ
相手にそんな効き目を与えてくれるの
まで網羅した、ありそうでなかった食材
年にわたる雑誌﹁いきいき﹂での連載が
がさらに湧いてくる。育て方のポイント
ガイドだ。体への効能を理解して日々の
一冊の本になった。
も記載され、すぐに育てたくなる一冊。
だ。そうだ、バスでこの本を読むのが一
本書は平田さんが目にしたバスの日常
食品でアテを作り地酒で一杯、なんての
食事を健康的にするも良し、取り寄せた
一六八〇円
を、エッセイとして綴った一冊となって
世界文化社
もオツなものだ。
る日のバス﹂が楽しめる。
いる。全て書き下ろしで、二十三種の﹁あ
本著はそんな発酵食品の基礎知識や解
一八九〇円
いきいき
ぼくらの大冒険ハンドブック
かざまりんぺい著
大 自 然 と 遊 ぶ 事 が 少 な く な っ て い る。
大人だってたまには外に出て大冒険を
− 23 −
48
番オススメかもしれない。
実用書/地図・旅行書
語学・辞典
な ん だ、﹁a ﹂ と﹁t he ﹂ は そ ん な
一九四三円
情報を伝えてくれていたのか ! とまさ
に実感する一冊である。
学研教育出版
英語スピーキング徹底トレーニング
ガチトレ
﹁ 英 語 が で き れ ば、 他 人 が 知 ら な い 技
藤井拓哉著
術や知識を得ることができる﹂ことを英
テルキ
デイブ著
﹁a ﹂ と﹁t he ﹂ の 違 い を 説 明 し て
英語を勉強し始めたころ、英語には主語
今 回 は 省 略 と 倒 置 に 焦 点 を あ て て い る。
﹃謎解きの英文法﹄シリーズの第五弾。
久野暲・高見健一著
常 会 話 が で き る よ う に な り た い ﹂﹁ 英 語
る 人 に は 難 し い。 た と え ば、﹁ 英 語 で 日
﹁英語ができるようになりたい﹂と考え
収めた一冊。そのため、この本は漠然と
ング力をアップさせるためのノウハウを
語習得の目標と考える著者が、スピーキ
みてと言われて、すぐに答えられる人は
で自分の意見を言えるようになりたい﹂
省略と倒置
どれくらいいるだろうか。この二つは冠
ず、主語を省略するケースがある。本書
が必要だと習ったが、それにもかかわら
謎解きの英文法
詞と呼ばれ、世の英文法書には冠詞の使
a とt he のココロ
い方のルールが沢山書いてあるが、ネイ
識語を用いて、個体情報について必要な
あると著者は言う。ネイティブはこの標
ミュニケーションを助ける﹁標識語﹂で
ているものの個体情報を相手に伝えてコ
﹁a ﹂ と﹁t he ﹂ と は 話 の 中 で 指 し
どのようにして使っているのだろうか。
雑な英文に接しても案外普通の文だと気
置について理解を深めておくことで、複
所もあるかもしれないが、この省略と倒
に接する経験が少ないとわかりにくい個
た、ということも減るはずである。英文
れを掴めば、読めたつもりが実は誤読だっ
たりするわけではないことがわかる。そ
ちゃんときまりがあって闇雲に省略され
文章もとても面白い。これなら続けられ
フ ト で、 章 ご と に コ ラ ム を 入 れ て お り、
躍的に上がるだろう。著者の語り口がソ
していくことで、スピーキング能力が飛
ングを行っていく。くりかえし量をこな
から英語へ素早く変換していくトレーニ
文と徐々に難易度を上げながら、日本語
語 数 を 増 や し て い き、 フ レ ー ズ、 短 文、
本書では、単語レベルからどんどん単
の十八時間以上もの音源が活かされる。
い﹂など、明確な目標があってこそ、こ
﹁英語で現在のニュースについて知りた
情報を伝え合い、話がきちんと相手に通
付いたりするので、わからないところが
また、英語の省略や接続詞の反復には
はそこから始まる。
ティブは﹁a ﹂と﹁t he ﹂を使う時はルー
じ て い る か 確 認 し な が ら 話 を し て い る。
あっても気にせず、読み進めていってほ
ルなど考えずに使っているという。では
相手が想像するモノと話し手が伝えたい
三四六五円
モノは一致しているか。それを頭に置き
ベレ出版
そうだ。
一六八〇円
しい。いつか氷解する日が来るだろう。
くろしお出版
ながら英語を話せばきっと自然に使い分
けられるようになるだろう。
− 24 −
語学・辞典
児
童
書
ガラパゴス
ジェイソン・チン作
福岡伸一訳
ガラパゴス諸島には、地球上でそこに
しか存在しない固有種も多く、めずらし
二五二〇円
られる発掘現場をたっぷり感じることが
できる写真絵本です。
西村書店
から、そこに暮らす生き物の進化の過程
確立されました。ガラパゴス諸島の誕生
えていくという自然淘汰による進化論が
の調査で、生き物は環境に応じて形を変
学者チャールズ・ダーウィンのこの島で
していた毎日が、このユニークな先生の
校にも先生にも期待せず淡々とやり過ご
描かれていく新学期。これまでずっと学
五年生の生徒七人、それぞれの視点から
アメリカ コ
・ ネティカット州のスノウ
ヒ ル 小 学 校 へ 新 米 先 生 が や っ て き ま す。
ロブ・ブイエー作
西田佳子訳
テラプト先生がいるから
毎 日 ウ ン チ は 出 る け れ ど、 い つ か ち
が美しい絵で描かれています。生き物の
い生物がたくさん生息しています。生物
きゅういっぱいになってしまわないだろ
形、その一つ一つに理由があることを改
ちきゅうがウンチだらけに
ならないわけ
うか?と子どもの頃疑問に思ったことは
巨大生物の化石など未知の物への探求を
には住めなくなる。ぼくの苦悩が始まり
がありました。修学旅行でバレたらここ
しかし、主人公には誰にも言えない秘密
− 25 −
松岡たつひで作
ないでしょうか。
一六八〇円
の抱えていた問題にも光が射しこんでい
存在で少しずつ確かに変化し、一人一人
一五七五円
きます。
静山社
夜はライオン
続ける考古学は読んでいるだけで心が躍
ます。見守る母親、辛口のお姉さんなど
主 人 公 は 成 績 優 秀、 野 球 部 の エ ー ス。
長薗安浩著
ります。地球の中にまだ見たこともない
一四七〇円
ものが隠れているのか、発見されてほし
偕成社
もいいバランスを感じます。
い気もします。そんなロマンもかきたて
いようでこのまま見つからずにいてほし
古代文明の遺跡、地中から発見された
野中夏実訳
ステファヌ・コンポワン文・写真
世界の発掘現場と冒険家たち
考古学ふしぎ図鑑
講談社
めて考えさせられました。
ウンチは一体どこへいくのか、この絵
本がその答えをやさしく教えてくれま
一四七〇円
す。ウンチの見方がちょっと変わるかも
しれません。
福音館書店
児童書
シーズになります。
し ま す。 そ こ で の 発 見 が 未 来 の 展 示 の
ですが、関心あるテーマについて研究も
ん。そして、なかなか時間がとれないの
それが博物館で働く面白さかもしれませ
ます。種々雑多な仕事がたくさんですが、
波新書︶でも重要な位置を占めるように、
コマ漫画︱︱北斎から﹁萌え﹂まで﹄
︵岩
た作家となりましたが、清水勲さんの﹃四
漫画家麻生豊について。現在は忘れられ
めています。たとえば埼玉県に居住した
最近は、埼玉の地域の歴史を調べはじ
日本漫画史のキーパーソンです。日本初
の本格的四コマ﹁ノンキナトーサン﹂や
私は日本近現代史を専門にしています。
戦後の銀座を描いた﹁銀座復興絵巻﹂な
沢 敬 三 の 没 後 五 十 年 の 記 念 の 年 で す。
これまで建築家の文化活動の歴史を研究
様々なイベントが予定され、埼玉県立歴
どの作品があります。知られていない部
もいくつか論文を書いていますが、そう
史と民俗の博物館でも特別展﹁屋根裏部
テーマに選び研究してきました。関東大
した建築家たちの七〇年代以後の活動を
屋の博物館﹂が来年の三月から開催予定
震災後の東京で多くの建築家たちがサー
実際に知る、建築学の研究者本多昭一さ
です。渋沢敬三については彼が支援した
また今年は経済人にして民俗学者の渋
こんにちは。これまで震災のことや大
んが書かれた﹃近代日本建築運動史﹄
︵ド
民俗学者宮本常一との交流を描いた、佐
分も多く調査を進めたいと思っています。
学時代のことなど、鈴木君とはあまり話
メス出版︶がまとまった一冊です。二十
クルをつくり理想の建築や都市のイメー
してこなかったことも書くことができま
世紀を生きた市井の建築家たちの熱い思
『近代日本建築運動史』
(ドメス出版・2,310 円)
こうして自分自身の関心から本を探索
し、理解を深めることがありますし、ま
たふと目にとまった本から新たな関心が
芽生えることもあります。これからもい
ろいろな本のお世話になることでしょ
− 26 −
ジを世に提示しました。これに関して私
した。手紙という形式でこそ書けること
野眞一さんの﹃旅する巨人
宮本常一と
渋 沢 敬 三 ﹄︵ 文 春 文 庫 ︶ な ど で そ の 人 間
鈴木健司様
もあるのかもしれませんね。さて今月は
いと行動の跡を知ることができます。
書いてみたいと思います。
博物館での仕事とひとくちに言っても
本 当 に 様 々 で す。 日 々 の 展 示 室 の 点 検、
資料保存のための毎月の展示替え、年に
四回ある企画展や特別展の準備を行いま
す。そのほか年間を通していろいろ開催
されるイベントの企画や運営なども行い
像を知ることができます。
最近の仕事や関心のあるテーマについて
最終回
う。また近いうちに、ゆっくり本につい
佐藤君のように進学を機に上京する人
そこで営まれる日常へのわずかな違和感
説 は 地 方 都 市 を 舞 台 と す る こ と が 多 く、
がいます。絲山秋子さんです。彼女の小
この本を読んでいて思い出した小説家
は今でも多いと思います。一方で﹁地元
というのも不思議な縁ですね。
志向﹂を持つ人もかなりいて、そこに焦
やコミュニケーションのズレなどをさり
て語り合いましょう !
点を絞り社会調査の方法を用いて分析し
気なく描き出します。
が、地方都市が舞台です。この作品がと
も具体的な場所は明らかにされません
佐藤美弥様
に か く 面 白 い。﹁ ふ つ う と は 何 か?﹂ と
◀復・鈴 木 ◀◀
た﹃地方にこもる若者たち﹄︵朝日新書・
山ですが、秋田にも共通する部分が多数
いうとてつもなく大きなテーマを扱った
阿部真大著︶という本が、六月に出版さ
▶▶往・佐藤▶
私がずっと気になっているテーマは
れました。調査対象となっているのは岡
た後も住居を転々としていたので、思い
あり、秋田店でも週間売上ベストに入る
最新作﹃忘れられたワルツ﹄︵新潮社︶
勤の多い家で育ち、大人になって就職し
﹁ 故 郷 と は 何 か?﹂ と い う こ と で す。 転
入れや愛着のある場所がずっとありませ
短篇集です。今のところ、今年の個人的
ほど売れていました。
帯の惹句が気になり、私も読んでみま
んでした。﹁故郷はどこ?﹂と問われると、
になってからもうすぐ五年。幼なじみは
る若者の幸福と不幸の両面を、アンケー
内容はそうではありません。地方に生き
ア ン ス を 含 ん で い る よ う に 思 え ま す が、
ナンバーワン小説です。
いないけれど、飲み友達は何人かできま
ト結果から具体的に提示していきます。
− 27 −
答えに窮することたびたびでした。父母
した。
﹁地方都市はほどほどパラダイス
満員電車、高い家賃、ハードな仕事⋮⋮
の故郷が秋田なので盆正月に帰省してお
り、私自身の出生の地でもあることから、
した。濃密な人間関係は築いていません
まだまだ紹介したい本はたくさんあっ
タイトルの﹁こもる﹂が否定的なニュ
もう東京には憧れない﹂
が、 そ れ な り に 楽 し く 暮 ら し て い ま す。
特 に 面 白 く 読 ん だ の は、 第 四 章﹁ 地
て、手紙では書ききれませんでした。今
この﹁一応の故郷﹂で、住み働くよう
﹁一応、秋田です﹂と答えていました。
お気に入りの店も年々増えていき、雪道
元 が 若 者 に 愛 さ れ る ま で ﹂。J ポ ッ プ の
にありがとうございました。
う ! 半年間のお手紙のやりとり、本当
度は直接会って色々な本の話をしましょ
では転ばなくなりました︵泥酔時を除け
︶を通して、地元に対する
CAN CREW
若者の態度の変遷を論じています。
・ ミ ス チ ル・ KICK THE
B'z
歌 詞 分 析︵ 取 り 上 げ ら れ る の は 主 に
と 言 っ て も い い か も し れ ま せ ん︵ い や、
こ の 程 度 じ ゃ 無 理 か?︶。 そ し て こ の 秋
田で、佐藤君が十八歳まで暮らしていた
・
BO WY
ば︶。そろそろ﹁一応﹂を外して﹁故郷﹂
『忘れられたワルツ』
(新潮社・1,365 円)
ビブリオバトル東海決戦
ビ ブ リ オ バ ト ル と 呼 ば れ る ゲ ー ム は、
冒頭で紹介した谷口氏が、京都大学で特
別研究員をしていた二〇〇七年当時に開
ますが、それをテーマに取り上げた初め
いう書評ゲームが急速に話題となってい
二∼三年ほどの間に、ビブリオバトルと
書・八〇九円︶が出版されました。ここ
本 を 知 り 人 を 知 る 書 評 ゲ ー ム ﹄︵ 文 春 新
館大学准教授︶の新著﹃ビブリオバトル︱
二〇一三年四月に、谷口忠大氏︵立命
岡野裕行
ビブリオバトル普及委員会東海地区代表
委員会が発足し、それぞれの地域で継続
各地の有志によってビブリオバトル普及
ようになりました。二〇一〇年には全国
さまざまな場所での開催事例が見られる
書店、小中高等学校、企業、カフェなど、
して評価が高まり、現在までに図書館や
らも、効果的で優れた場づくりの手法と
ち寄るというシンプルな設計でありなが
たゲームですが、それぞれが本一冊を持
室という小さなコミュニティ内で誕生し
に話題性が高まっており、二〇一三年の
年を追うごとに規模が大きくなるととも
毎年実施されています。このイベントは
とに、二〇一二年までに第三回大会まで
都と文字・活字文化推進機構の主催のも
バトル首都決戦﹂が始まりました。東京
学院生たちの全国大会である﹁ビブリオ
また、二〇一〇年の秋から大学生・大
発したものです。もともとは大学の研究
て の 本 に な り ま す。﹁ 人 を 通 し て 本 を 知
的 な 普 及 活 動 が 行 わ れ て い ま す。
の開催を終えて る/本を通して人を知る﹂というコンセ
二〇一二年十一月には図書館業界の大き
本が一番読みたくなったか?﹂を基準と
を行う、④すべての発表終了後に﹁どの
者全員で二∼三分間のディスカッション
介する、③それぞれの発表について参加
報科学技術協会・一二〇〇円︶が出版さ
して人を知る・人を通して本を知る﹄︵情
集による﹃ビブリオバトル入門︱本を通
六月にはビブリオバトル普及委員会の編
りました。谷口氏の本に続き、二〇一三年
﹂の大賞を受賞したこともあり、この
2012
ゲームにますます注目が集まるようにな
いと考えた結果、かねてから筆者と個人
べく東海地区という地方色を押し出した
い﹂という話が持ち上がりました。なる
地区を対象とした地方大会をつくりた
決 戦 以 外 に も 用 意 し た い ﹂﹁ 春 先 に 東 海
根を越えて学生が集まる機会を秋の首都
東 海 四 県 の 普 及 委 員 の 間 で、﹁ 大 学 の 垣
さて、二〇一二年の首都決戦の終了後、
定となっています。
した投票を参加者全員で行って最多票を
れるなど、二〇一三年に入ってからます
秋には、四回目の首都決戦が行われる予
プトを掲げたビブリオバトルは、①参加
な催しの一つである﹁ Library of the Year
集めたものを﹁チャンプ本﹂とする、と
ます普及活動が活発化してきています。
る、②一人につき五分間で順番に本を紹
者が自分のオススメの本を持って集ま
『ビブリオバトル』
(文春新書・809 円)
いうとてもシンプルなルールに基づいた
ゲームです。
− 28 −
2013
たちが顔を揃えるようにイベントの設計
を二名分設けることで、多様なバトラー
海決戦では学生枠四名に加えて社会人枠
生のみを対象としていますが、春季の東
した。秋季の首都決戦は大学生・大学院
フト名古屋店さんにご提供をいただきま
︵ 日 ︶ と 決 め、 会 場 も ジ ュ ン ク 堂 書 店 ロ
決戦の開催日は二〇一三年六月二十三日
向けて本格的に準備を始めました。最終
リオバトル東海決戦2013﹂の開催に
頃から計画を立て始め、三月には﹁ビブ
協力をお願いしました。二〇一三年二月
界隈の書店さんにもイベント開催へのご
会︵NSK︶に相談を持ちかけ、名古屋
的に付き合いのあった名古屋書店員懇親
した。
本に選ばれま
回のチャンプ
を 獲 得 し、 今
中の二十四票
が全九十五票
一〇五〇円︶
生 新 聞 社・
学 ﹄︵ 朝 日 学
ての動物行動
た﹃動物に心はあるだろうか? ︱初め
の結果は、静岡大学の川原さんが紹介し
六名となりました。熱戦となったバトル
武長脩行先生︵椙山女学園大学教授︶の
書 店 店 長 ︶、 ⑥ 大 学・ 図 書 館 関 係 者 枠 の
⑤NSK枠代表の熊谷隆章さん︵七十五
継続的に﹁ビブリオバトル東海決戦﹂を
反省点はございましたが、来年度からも
まうなど、運営の仕方や空間設計などに
となり、立ち見での観戦が多くなってし
かじめ用意した席があっという間に満席
イベントとなったように思います。
話題性のある
的にも珍しい
お 陰 で、 全 国
のお力添えの
懇親会の方々
名古屋書店員
た だ く な ど、
て販売してい
の店頭に並べ
三重代表の奥野実希さん︵皇學館大学︶、
表 の 橋 谷 光 喜 さ ん︵ 中 部 学 院 大 学 ︶、 ③
の 井 上 浩 輔 さ ん︵ 南 山 大 学 ︶、 ② 岐 阜 代
2013﹂の本戦出場者は、①愛知代表
二名を加えた﹁ビブリオバトル東海決戦
ラー四名に、推薦による社会人バトラー
きました。予選会を勝ち抜いた学生バト
月上旬にかけて各県での予選会を進めて
東海決戦の本戦に先立ち、五月から六
れたすべての本を特別フェアとして書店
東海決戦では、各県の予選会から紹介さ
はないかと思っています。また、今回の
会としてはまずまずの成果となったので
皆さまにお越しいただき、第一回目の大
スタッフも含め、約一〇〇名もの観客の
していただきました。最終的には当日の
終了後に講演会と新著のサイン会を実施
氏にもお越しいただき、東海決戦の本戦
イベント当日は特別ゲストとして谷口
︶
http://www.bibliobattle.jp/
︵ビブリオバトル公式ウェブサイト
して嬉しく思います。
ブリオバトル普及委員会の委員の一人と
だけると、今回のイベントを企画したビ
でもぜひビブリオバトルを実施していた
力をいただき、皆さまの日常生活のなか
き続きビブリオバトルへのご関心とご協
実施していきたいと思っております。引
事前の予想を上回る集客のため、あら
を行いました。
④静岡代表の川原弘子さん︵静岡大学︶、
− 29 −
﹁感動した本﹂
小川
寿臣
﹁ヘイエルダールの伝記﹂
二川
忠
年時代に胸をときめかせて読んだ﹃コンチキ号漂流記﹄の著者、
その中に、翻訳が出たら読みたいなと思った本があった。少
印刷博物館に併設されているギャラリーで装丁、造本、印刷
リーズ・プリーズ・ミー﹂から﹁レット・イット・ビー﹂まで
トール・ヘイエルダールの伝記である。ドイツで出版され、原
などがすぐれた本を集めた﹁世界のブックデザイン﹂展が開催
全十四枚のオリジナルアルバムの解説がメーンとなっていて、
二〇一二年十月、ビートルズレコードデビュー五十周年に合
中学・高校とリアルタイムでビートルズを聴き、人生に大きな
されていた。
影響を受けた著者が当時の実体験を踏まえて語っているところ
題の日本語訳が﹃ヘイエルダール
。
研究者の名声への筏の上で﹄
ヘイエルダールといえば、今年のアカデミー賞で外国語映画
わせて、元ロック歌手でビートルズなどの音楽評論の書き手・
が本書の最大の魅力である。特に、ビートルズ解散間際の作品
賞にノミネートされていた﹃コンティキ︵原題︶﹄の主人公で
文章家としても定評のある著者が満を持して上梓した一冊。﹁プ
の解説でポール・マッカートニーのジョン・レノンへの思いな
映画の公開にあわせて日本語訳が出版されるのではないかと
希望をもっているが、はたしてどうだろうか。来年はヘイエル
もある。おしくも受賞はのがしたが、なかなかの力作のようだ。
ダール生誕百年にあたるので、おおいに期待しているところで
どを推し量って書かれているところは、解散後の一時期、ポー
であった著者ならではの思いが込められていて、ポールファン
ある。
ルのソロ作品が酷評を受けていたときにもポールの良き聞き手
には感慨深い。もう一つの読みどころは、アルバム解説の合間
︵六十三歳・会社員︶
に挿入されているビートルズにまつわるエッセーで、父の想い
出、高校時代のことなど著者自身についても語られていて、著
者の瑞々しい自伝的青春小説﹃苺畑の午前五時﹄︵小学館文庫︶
︵五十四歳・会社員︶
を読んで気に入った方にも、本書を合わせて読まれることを是
*
﹃ウィズ・ザ・ビートルズ﹄
︵小学館・松村雄策著・一五七五円︶
非おすすめしたい。
− 30 −
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N FF O
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A TT II O
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営業時間は変更する場合がございます。ご了承ください。
定休日については、お手数をおかけしますが弊社 HP または直接各店までお問い合わせ下さい。
− 31 −
本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも
☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、
しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。
四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、
掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお
い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て
ありがとうございます。本誌定期購読料は
以下の通りです。
定期購読料
年間一二〇〇円︵送料込︶
現金書留もしくは八十円切手十五枚で
お申し込み先
│
ジュンク堂書店ジュンク特急便係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
五九五六 六一〇〇
五九五六 六一二〇
〇三
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編集後記
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住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。
〒
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〇三
FAX TEL
返しいたしませんのでご了承下さい。
│
ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係
東京都豊島区南池袋二 一五 五
│
│
│
http://www.junkudo.co.jp/
パソコンから
携帯・MOBILE から
mobile QR コード
て紹介したい。
については、来月号にて改め
いのがとても残念だ。この本
記念トークがあるが、行けな
ちょうど今日、西荻窪で刊行
︵一七八五円︶が発売された。
夏 葉 社 さ ん の﹃ 本 屋 図 鑑 ﹄
http://www.junkudo.co.jp/
mobile/
︵茉︶
− 32 −
☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。
〒
1710022
ᛩ
Ⓜ
൐
㓸
1710022
入れチームのバイブルです。
ます。そして行った店はハズレなし。棚
でお店の雰囲気や料理の味が伝わってき
十一巻まで刊行中︶のように漫画でも面
学 館 ビ ッ グ コ ミ ッ ク ス ペ シ ャ ル・ 現 在
書かれたグルメエッセイ。﹃深夜食堂﹄︵小
書も欲のひとつに入れて四大欲になれ
なにとりあげられるのか。だったら、読
﹁百名山﹂
屋百名山のことを忘れていましたが、文
ば、もっと本は売れるのでは⋮⋮と、と
食は人の三大欲のひとつ、だからこん
白いものがたくさん出版されています。
昨年まで新規出店等で全国各地へ出張
庫︵新潮文庫・六六二円︶になり携帯用
今年、転勤により出張がなくなり居酒
の日々が続いていました。約一週間、朝
フェアの醍醐味は普段一緒に並んでい
りとめもない事を考えつつ、選書中です。
な い 本 た ち が 一 堂 に 会 し、 こ ん な 本 も
に購入しました。久しぶりに読み返すと
スタッフと食に関する本について話
あったのかと新しい発見が出来ることで
やっぱり面白い。
ます。時間との戦いです。毎回、間に合
していると、たくさんの面白そうな本が
す。 お 客 様 に よ り 楽 し ん で い た だ け る
から晩まで段ボール箱から書籍を取り出
わないかもという不安に怯えつつ、毎日
出 て き ま す。 そ れ な ら ば、 と 言 う 事 で
頼 っ て み た り し ま し た が、 な か で も 良
め の お 店 を 聞 い た り、 ガ イ ド ブ ッ ク に
にストーリーも気になるけれど出てくる
ルキ文庫・現在八巻まで刊行中︶のよう
目移りします。﹃みをつくし料理帖﹄︵ハ
選書を開始するとたくさんの食の本に
くてはいけなくなりそうです。
そろそろダイエットと健康本を購入しな
そ れ に 合 わ せ て 食 欲・ 飲 酒 量 も 増 加 中。
ち な み に 私 の 本 棚 は 食 の 本 が 増 加 中。
かから何を選ぶのか、苦渋の決断をしな
フェアになるように、数ある食の本のな
フェア開催決定しました。題して﹁食読
出張中のひそかな楽しみはその地方の
郷土料理を食べることと美味しいお酒を
かったのは太田和彦さん著の﹃居酒屋百
料理が美味しそうな小説。料理研究家の
ければいけません。
名 山 ﹄︵ 新 潮 社・ 一 五 七 五 円 ︶ で す。 日
食エッセイ。全国各地の飲食店について
653- 6500013 0021
│
│
︵万︶
本全国の居酒屋を選りすぐった一〇〇店
一〇〇一
五二一二
のグルメエッセイ。写真無し、文章のみ
飲むことです。現地のスタッフにおすす
の秋︵仮︶﹂。
体力と知力の限界まで作業します。
しては分類し、棚入れ作業が延々と続き
TEL TEL
二〇一三年八月五日発行
﹁書
﹂ 第 号
ほんのしるべ
頒価五十円︵本体四十八円︶
標
編集・発行人
工
藤
恭
孝
神戸市中央区三宮町一の六の十八
︵〇七八︶三九二
発 行 所
㈱ジュンク堂書店 〒
印 刷 所
︵〇七八︶五七五
㈱七
旺
社
〒 神戸市長田区一番町二丁目一
417
ほんのしるべ﹂ 昭和 年7月 日第三種郵便物認可
2013年8月5日
毎月1回
5日発行
通巻第 号
﹁書標 61
15
417
頒 価 五十円︵本体
四十八円︶
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e-mail:info @ junkudo.co.jp
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