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USAビジネス通信Vol.2 -ギフト・雑貨のアメリカ市場への販売

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USAビジネス通信Vol.2 -ギフト・雑貨のアメリカ市場への販売
USA ビジネス通信 Vol. 2(2008 年 9 月号)
・・・ギフト・雑貨のアメリカ市場への販売・・・
アメリカ市場に商品を販売する日本企業がますます増えてきたことを実感します。この「USA ビジネス
通信」は、アメリカ市場に関心の高い企業の皆様に、アメリカの現在のビジネス状況、マーケットの動き
やトピックスなどをまとめて、隔月にお届けするものです。皆様の USA ビジネスに役に立つような内容に
していきますので、是非ご愛読ください。
1. 本通信の内容
本通信 Vol-1 では、「展示会(Trade Show)」を中心の
特集としたが、Vol-2 では、「アメリカ市場への販売」と題
して、アメリカ市場へ商品をどう売っていくかについての
方法論を中心にお伝えする。 前回特集の「展示会」と
いうのも、販売方法の一つだが、展示会に出展すれば、
アメリカ全土に商品を売れるかというと、それだけでは難
しい。日本でも、展示会に出展さえすれば、日本全国に
商品が売れるかというと、そうではないのと同じだ。それ
では、どういう準備が必要なのか、すなわち「アメリカ戦
略の作り方」が今回のテーマである。そして、具体的に
アメリカでビジネスを行っている日本企業の例を紹介す
る。(写真はニューヨーク・インターナショナル・ギフト・ショー(NYIGF)入り口)
※本内容はニューヨーク・インターナショナル・ギフトショー開催時(2008 年 8 月 17 日∼21 日)の日本企業向けセミナーでも講演した
2. 米国市場戦略を作るために
「アメリカ市場へ販売=展示会出展」と考える日本企業が多いが、それは誤りである。展示会出展は、
単なる営業方法の一つであって、アメリカ市場開拓の核心ではない。展示会を目的化してしまうと、失敗
する。多くの日本企業が「展示会に出さえすれば・・・」という考えで、充分な準備もせずに展示会に出展
し、中途半端な結果に終わっている。ここで言う「準備」とは、展示会の準備ではない。海外の展示会に
出展することは、なかなかスムーズに行かず容易なことではないので、「展示会準備=アメリカ市場販売
の準備」と取り違えてしまっているのである。
ここで言う、「アメリカ市場販売の準備」をきちんとまとめて説明していきたい。
結論から述べると、重要なポイントは次の内容になる。
① 市場調査をきちんと行う。
② 「アメリカ市場に合う商品」であるかどうかを検討する。
③ アメリカ国内に販売エージェントを探す。
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この 3 項目をきちんと準備しないで、販売をスタートし、展示会に出展しても、おそらく 10 社中 9 社は
失敗する。商品が飛びぬけていて、商品が一人歩きしていく場合もあるが、それは本当に稀なケースで
ある。「展示会に出展して、商品の反応を見る」と言うと、もっともに聞こえるが、ここに「落とし穴」がある。
適切な準備をせずに展示会に出展しても、バイヤーたちは、自分の店舗にプラスにならない商品を扱っ
ているブースには入らないのである。普通展示会は、500 社-1000 社が出展していて、その中から、1020 社から仕入れを行う。したがって、バイヤーもどのブースから仕入れるか大いに悩むのである。そうい
う状況の中で、商品の色、デザイン、サイズパッケージが日本市場向きになっていたら、バイヤーたちは
「あえて」それを仕入れるだろうか?確かに「目新しいもの」を探してはいる。しかし、それは、商品がアメリ
カ市場にきちんとあっていた上での話である。
上記の 3 項目の重要ポイントを分りやすく説明する。
3. 市場調査をきちんと行う。
アメリカ市場へ販売する第一歩は、この「市場調査」である。マーケティング・リサーチといっても良い。
この点が、アメリカ市場販売のもっとも重要な点である。
ここで言う市場調査はきわめて緻密な市場調査であって、時間的には 2-3 ヶ月かけて行う緻密な市場
調査である。一言で言えば、「自社商品に関するあらゆる要素の調査」ということになる。市場が日本で
あれば、業界の動向、同業者の競合商品、過去に売れたもの、現在の商品動向、販売力のある店舗
など、多くの情報は長いビジネス経験で自然と身についているので、日本ではあえて市場調査を行わな
いでもビジネスは充分可能だろう。しかし、新しい市場では充分な情報を集めなければ、適正な企画方
針、営業方針は立てられない。
市場調査の具体的な内容は商品によって異なるであろうが、基本的には次のようなものになる。
① 商品に関する市場調査
アメリカに販売したい商品が果たして、アメリカ市場に合うのかという観点で市場調査する。その方法は、
おおよそ次のようになる。
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アメリカのライフスタイルの研究(どういう生活をしているか?)
アメリカの同種の商品研究 (競争相手になるアメリカ企業の商品を調査)
アメリカの業界の調査
価格調査
デザイン、色傾向の調査
パッケージの調査
② 販売先に関する調査
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商品の対象になる店舗の調査
主要店舗訪問調査
見込み客一覧表の作成
取引条件に関する調査
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③ 販売戦略作成のための調査
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販売組織構築のための調査
展示会に関する調査
流通、回収方法に関する調査
4. アメリカ市場にあう商品かどうかを検討する。
基本的に「日本の商品」はアメリカ市場で売れる。しかし、多少工夫が必要である。商品自体が大変良
いとしても、アメリカ市場に合わなければ市場性はない。日本市場でよく売れているといって、アメリカで
売れるとは限らない。ライフスタイルやトレンドが違うからである。
前項の市場調査をしっかり行えば、現在の商品をそのまま売っていくのか、改良の必要があるのかが
明確になる。改良が必要であれば、アメリカ市場に向けて改良したサンプルを展示会に出展する。
改良する要素は大体次の要素である。
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カラー (アメリカ市場の色と日本とはある程度違う)
サイズ (アメリカのライフスタイルにあったサイズにする)
パッケージ (アメリカの店頭にあったパッケージにしないと、消費者の手に渡らない)
価格 (アメリカの市場価格とのバランスを考える)
英文説明書 (商品によっては、英文の説明書が必要である)
日本の商品が、そのまま」アメリカ市場で販売できるということは稀である。この問題を軽視すると、商品
は思ったようには売れない。大きな売上げを作るためには、アメリカ市場にぴったり合った商品にすべき
である。
5 アメリカ国内に販売エージェントを探す。
① 国内仕入れ
市場調査を行うとわかることだが、一般の商品において、アメリカの店舗はアメリカ国内の取引を希望
する。仕入れ価格は「国内仕入れ価格」になっていなければならないし、流通、回収もアメリカ国内が前
提である。
したがって、実際アメリカに、自社の組織(現地法人)かまたは、エージェントを確保していないと、アメ
リカでのビジネスは困難である。「バイヤーが商品を非常に気に入ってくれれば、日本から輸入するので
は?」という意見もあるだろうが、それは国際的に知名度の高いブランド、特殊な商品に限られる。一般の
商品では、アメリカの国内取引でなければ難しいのである。
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② 販売組織
アメリカでビジネスをする際に、最も重要な要素は「販売組織をどうするか?」という問題である。ベスト
な方法は、現地法人を設立し、日本から人を派遣することである。しかし、大企業以外は、ビジネス初期
の段階でいきなりこの方針は難しいし、リスキーである。最初の 2-3 年はエージェントと市場開拓してい
くほうが安全でかつ、経済的である。
アメリカには、セールスレップという販売代行業者が存在する。しかし、彼らは通常、店舗からの受注を
得ることが主要なビジネスで、流通、回収ということは行わない。むしろ、セールスレップを管理するビジ
ネスの軸になる組織(または個人)が必要なのである。
③ エージェントに委託する業務
信頼のできるエージェントと契約して主に次ぎの業務を委託する。
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販売業務
展示会準備、受注業務
日本からの商品の輸入・保管
商品の発送業務
商品管理
商品流通業務
信用調査業務
回収業務
会計業務
④ エージェントの探し方
これは難しい課題ではある。エージェントといっても、おおよそ、次の条件を満たしているべきであろう。
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同じカテゴリーの商品を現在扱っている。
できればショールームを持っている。
配送機能を持っている。
回収業務機能を持っている。(ファクタリング、クレジットカード)
エージェントを探すには次の方法が考えられる。
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同じカテゴリーの商品を扱っているアメリカ企業に提案する。
日系のエージェント業務を行っている会社に提案する。
取引銀行、会計事務所を通して探す。
ジェトロに相談する。
日系の新聞を通して、募集する。
展示会でエージェント募集をアピールする。
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6 アメリカ市場戦略の作成
これまでに述べてきた内容を実際に実践していく過程で、アメリカ市場戦略は出来上がってくるはずで
ある。それを、商品戦略、組織戦略、販売戦略という 3 つの戦略を構築すれば、アメリカ市場進出の準
備は完了する。ここまで、きちっと行っていけば、商品は売れる。中途半端なまま行動すると、無用な遠
回りをすることになる。これまでにも多くの日本企業が、日本でのビジネスは充分な実績を持っているの
にもかかわらず、アメリカ市場では、安易な準備のまま「とりあえずやってみよう」と行動を起こして失敗し、
撤退してしまうという結果になってしまった。
「市場調査→アメリカ市場戦略構築→商品企画の見直し、エージェントとの契約→販売活動開始」とい
う流れで行けば、アメリカの市場は切り拓かれていく。
ただし、商品によっては、市場浸透までに時間がかかることも少なくない。1-2 度の展示会出展では手
ごたえを感じない場合もある。原因は様々であるが、商品がアメリカ市場向けにしっかり企画されていれ
ば、市場には入っていく。時間がかかる場合もあるということを知っておくべきである。
7 アメリカ市場に販売する日本企業
2008 年8月 17 日より 21 日までニューヨーク・インターナショナル・ギフトフェア(NYIGF)が行われた。
この展示会にジェトロが主催するジャパン・パビリオンがある。もうすでに 3 年以上継続的にこのパビリオ
ンにて、日本企業が出展している。
同展示会は、毎年2月と8月にジャビッツ・センターなどで開催されるが、新規の企業がすぐに出展す
るのは非常に難しいのが現実である。申し込んでも主催者から6年待ち、8年待ちと言われる。ジェトロで
は、現在 6 ブースを確保しており、さらなる拡大を主催者に対し要望しているところである。
今回の展示会は、アメリカの景気減速が懸念される中での開催であったため、厳しい状況の中で行わ
れた。しかし、ジャパン・パビリオンは、多くのバイヤーでにぎわい、出展各社もコンスタントに注文を得る
ことができた。展示会後の総括ミーティングでは、「新規よりもリピーターからの注文が多かった」という声
が 3 社から聞かれた。これは、日本パビリオンの各社がアメリカ市場でしっかり認知され、店舗に納品さ
れた商品が売れていることを示す。
それでは、ジャパン・パビリオンに参加し、アメリカ市場で商品の販売をしている日本企業はどのように
ビジネスを展開しているのだろうか。いくつかの会社から、貴重な話を聞くことができた。
○ コラゾン社
すでに 4 回参加しました。現在の取引先は 450 社程度です
が、70%以上はこのジャパン・パビリオンで獲得した顧客です。
今回は、前回並みの受注額ですが、不景気の中、善戦したと
思います。リピーターが多く、「よく売れています」という声を聴
き安心しています。店舗とのコミュニケーションを良くして、固
定客を確保するよう努力しています。アンソロポロジー、フリー
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ピープル、ピア 1 などの大手チェーン店の注文も今回は行けそうなので大変楽しみです。」(米国エー
ジェント久保田さん)
○ 江戸川物産社
不景気を反映して、来場者が減ったな・・・と感じました。しかし、
今回の目標は 80%程度達成しましたし、展示会後に FAX や E
メールで、注文がかなり来ますので、おおよそ目標どおりに行くと
思います。今回は、リピーターのお客が 70%くらいを占めました。
このジャパン・パビリオンは、非常に良く準備されていると思いま
す。ただ、もう少し広いスペースがいただければ、売上げを2倍以
上にすることは可能と思っています。(朝倉社長)
○ アーティミス社
今回は思い切って、ミニマムの条件を高く設定して、力のある店
舗との取引を求めました。件数はその分伸びませんでしたが、良
い店舗としっかりコミュニケーションが取れて、良い注文が取れま
した。かつ、今回の大きな目標だったディストリビューターも、数社
からオファーが入りました。今回は、当社の重要商品である手帳も
多いに評価してもらえました。(KOKO さん)
○ プレイリードッグ社
今回はバイヤーの購買意欲は低い感じがしましたね。それでも、120 社からの注文を得ることができま
した。リピーターも多かったと思います。これで、合計 500 社以
上の取引ができています。80%がこのジャパン・パビリオンでお
会いした顧客です。ヨーロッパもがんばっていますが、アメリカは
答えがすばやいので大変面白い市場と思います。ロサンジェル
スやアトランタの展示会も出てみましたが、ニューヨークほどの集
客はありませんでした。これからは、追加注文を促すような販売
戦略を工夫して、各店の売上げを増やしていきたいと考えてい
ます。(松岡社長)
これらの日本企業は、商品、価格の工夫(商品戦略)をしっかり行い、現地エージェントまたは現地法
人(組織戦略)を設け、ギフトアイテムでは最大の集客を誇る NYIGF 展に出展(販売戦略)して、確実に
前進している。
在ニューヨーク ジェトロ・コーディネーター
三浦治義 [email protected]
本通信に関して、ご質問があれば遠慮なくお問い合わせください。
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