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トサカフトメイガ
さくら・くるみ・果樹・街路樹の不快害虫 1 アメリカシロヒトリ Hyphantria cunea Drury アメリカより昭和20年代に侵入したヒトリガ科の蛾で、多くの植物を加害する多犯性の害虫である。 <県内発生状況> 長野県では昭和39年に初発生を確認して以来、県内全域に分布が拡大している。以降、市町村、 地元住民、防除組織により防除が進められ被害は抑制されてきたが、近年発生が目立つようになった。 <生 態> 前翅長1.4∼1.6cm、色は普通白色であるが、5∼6月にかけて発生するオス(越冬世代)には黒色 か褐色の斑点が見られる。卵は極めて小さく、ほぼ球形で薄い緑色をしている。通常数百個がまとめ て卵塊で産卵され、卵塊の表面は薄い紙をあてたように白い毛で覆われている。 幼虫は6回脱皮を行い7齢後、蛹となる。1∼5齢幼虫は糸を吐いて巣網を張り、その中で集団と なって生息する。6∼7齢幼虫は巣網を張らず分散する。幼虫の刺毛に毒はなく、手で触れても刺さ れることはない。 幼虫の発生は、長野県では年2回(第1世代:6月下旬∼7月下旬、第2世代:8月下旬∼9月下 旬)である。ただし、第1世代は発生量が少ないので被害は目立ちにくいが、第2世代は発生量が増 加するので被害は大きくなり、目立ちやすい。幼虫の加害範囲は広く、果樹類(クルミ・くり・かき 等)、樹木・庭木(さくら・みずき・ニセ アカシア・ポプラ等)の他、豆類(大豆・ササゲ等)、 野菜類、草花・雑草なども加害する。 写真1 「若齢幼虫」 写真2 「蛹」 写真3 「被害の状況 :クルミ」 <防 除> (1) 初期段階(ふ化10∼15日) 時期が来たら樹園内を巡回し、見つけたら早めに処理する。集団で巣を作っているので、巣のある 枝を切り落として踏み潰すか焼却する。また、棒の先に油を浸み込ませ、火をつけて焼く(焼却の際 は火災等に十分注意して行う)。 (2) 薬剤による防除 すでに幼虫が分散している場合に行う。ただし、幼齢が進むと効果が低減される場合がある。農薬 取締法、その他の規制を遵守し散布を行う。 2 クスサン Caligula japonica Moore 5∼7月にかけて、クリ、クヌギ、コナラ、サクラなどの広葉樹に幼虫が発生し葉を食害する。若 齢幼虫の頃の食害は少ないが、老齢幼虫になると葉を食いつくし、他の樹木へ移動する。食害を受け た樹木が枯れることは少ないが、草上や道路上を移動する。成虫は大型の蛾であり、夜間灯火に集ま って住宅に侵入するため不快害虫である。 <県内発生状況> 主に山林のクリ・クヌギ等に発生が見られる。平成13年∼14年にかけ、山間部を中心に発生量 が多く、話題となった。増加した要因は明確になっていない。 <生 態> 前翅長10∼13cmの大型の蛾。黄白色で後翅の中央に円形の模様がある。卵は俵状で、直径2 ∼3mm。外側の殻は硬く、灰白色または灰褐色で、先端に黒く丸い斑点がある。幼虫は2齢までは 黒色で、白色の長い毛と黒色の短い毛が生えている。3∼4齢時の体色は黒色で毛は黄色となる。5 齢以上になると体色は緑黄色となり、背中に白く長い毛を密生させる。老齢虫では体長が8cm程度 にもなる。若齢虫は集団で群生し、大きくなると分散する。成虫はゆるやかに飛行し、夜間灯火に飛 来するため、自動販売機等で群れているのがよく観察される。 本県での発生は年1回である。卵で越冬し、ふ化は5月頃、6月中下旬に蛹化し、羽化(成虫) は8∼9月である。多発生年と少発生年の波があり、毎年、多量に発生することはない。加害植物は、 主にクリ、クルミ、クヌギ、バラ科の木本植物である。 <防 除> (1) 越冬卵段階(9月∼翌年4月)は幹の低い部分に生息するので、見つけて打ち潰すか、削ぎ落と す。初期若齢幼虫段階(ふ化∼3齢)は集団で巣を作っているので、巣がある枝を切り落として踏 み潰す。蛹段階では、食害を受けた木の周辺で蛹を見つけ処分する。 (2) 農薬による防除 使用できる作物、薬剤は現在登録農薬は1剤のみ。卵、蛹、若齢幼虫(巣から分散してしまう前) 段階で駆除する。 表 クスサンに登録のある農薬 作物名 使 用 農 薬 名 倍 率 樹 木 ディプテレックス乳剤(劇物) 1000 倍 (注)幼虫が大きくなると効果が低下することもある。 ※ ① ② ③ ④ 農薬の使用に当たっては、使用方法を守る(ラベル等に表示)。 登録農薬を使用し、適用がある農作物・樹種及び場所に散布する。 使用する時期・濃度・量・回数等を守る。 周辺(河川含む)に農薬を飛散させない。風向き・風の強さに注意し、無理な散布は行わない。 劇物であり急性毒性が強いため、保管には特に注意する。 写真4 「樹木に産み付けられた卵塊」 写真6 3 (平成17年1月現在) 使用時期 使用回数 − − 「終齢幼虫とクルミの被害」 トサカフトメイガ 写真5 「若 齢 幼 虫」 写真7 「成 虫」 Locastra muscosalis Walker 幼虫は集団で糸を張り巣網を作るので、アメリカシロヒトリの被害と間違えやすい。しかし、本種 はアメリカシロヒトリのように多くの植物には寄生しない。特に発生が目立つのは、野生のクルミ、 ニセアカシア、ヌルデ等である。 <県内発生状況> 平成14、15年に、河川敷などのクルミに多発生した。増加要因は温暖化傾向、少雨等が考えら れるが、明確な要因は分かっていない。 <生 態> メイガ科の蛾で、幼虫は大きくなると36mm程度になる。メイガの中では大型種である。幼虫(写 真8)の胴部は赤みがかった燈色で、亜背部と気門下に幅の広い暗褐色の帯があり、帯の中に白斑が 点在する。頭部は黒色で光沢がある。背盾は黒色で背中によった部分に白色の斑点が若干ある。 幼虫の発生は、長野県では年1回である。繭(蛹)の状態で越冬する。羽化(成虫)は6月以降見られ る。幼虫の発生は、7∼9月。繭(蛹)になるのは9月以降である。9月以降、地表に降りて地中に浅 く潜り(1cm程度)、褐色の繭を作って蛹で越冬する。 加害植物の種類は主にクルミ、ヌルデ等の木本植物である。網巣は葉をつづり、団子状。アメリカ シロヒトリの巣網に比べて円筒状となり、しっかりしている。老熟幼虫は、アメリカシロヒトリのよ うに分散せず集団で群生する。 写真8 表 幼虫の形態 写真9 被害の様子:クルミ 主な加害植物 樹 木・庭 木・街路樹 クルミ (オニグルミ) ニセアカシア ヌルデ ハゼノキ ニワウルシ <防 除> (1) 適用のある農薬はない。 (2) 集団で巣を作っているので、巣のある枝を切り落とし処分する。(アメリカシロヒトリと同じ) (3) 食害を受けた木の周辺を観察し、蛹を見つけたら処分する。