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保育における水遊び、の効果に関するー研究

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保育における水遊び、の効果に関するー研究
保育における水遊び、の効果に関するー研究
一投影樹木画法における成長指標
(
G
C
L
) とトラウマ指標 (
T
C
L
) からの検討-
大辻隆夫
塩川真理
(児童学科助教授)
(本学非常勤講師,臨床心理士)
田中野枝
(
平
成1
6
年度研修者,臨床心理士)
して表出することが極めて有効である場合を示
すものである。さらに彼は,水遊びが子どもの
問題
心を解放させ活気づける効果を示した 4歳男児
保育における水遊び、については,子どもにお
の観察例をあげている。そこでは親から極端に
ける成長的意義と治療的意義の 2つの視点から
禁止されている 4歳男児が,水遊び、をすること
その有用性が指摘できる。
によって刺激され,勇気づけられ,ますます自
たとえば平井ら(19
9
6
) が保育における水遊
由になり,社会的接触を積極的におこなうよう
びの成長的意義として,水を介して得られる
になるプロセスが示されている。そして,水遊
様々な刺激が心や身体の健全さを維持すると述
びが孤独 (
s
o
l
i
t
a
r
y
) で見捨てられ感(lo
s
t
)を
べている。また Kamiら(19
5
8
) は水自体に心
持つ子ども,
を和ませる性質があり,水の持つ特別な性質が
いて浄化的効果があることも明らかにしている。
子どもの快適感や精神的,感覚的な面に影響を
これについては,高野 (
1
9
8
8
) も同様に,水遊
及ぼすとしている。さらに水は可変的で、すぐれ
び、は臆病で、非社会的な子どもに対しては自信を
た遊具であり,子どもたちの心を裸にし,解放
強め,活発になることを誘発させ,落ち着きの
9
9
4
),水の中で全身を使って遊ぶこ
し(安江, 1
ない子どもに対しては一種の鎮痛剤的効果を発
とは皮膚への刺激にもなり,身体各部を調和的
揮すると述べている。
に発達させ,また感覚的快感を与える(岡田,
3歳半女児 Marionの観察例にお
このように水遊び、の治療的意義は,子どもの
2
0
0
1
) というように,水遊ぴが子どもの心身の
攻撃衝動の表出と解消,心の鎮静化と活性化,
健全な成長にとって極めて有用で、あることを示
さらに見捨てられ感の解消等多岐にわたってい
唆している。
る
。
一方,水遊び、の治療的意義については, H
a
r
t
-
本研究では保育における水遊び、の意義につい
l
e
y(
1
9
5
2
) が,水遊び、が子どもの攻撃衝動を解
て上記の問題意識にたって,つまり水遊び、に関
消するのに有用であると指摘している。この例
する成長的・治療的意義という視点から投影樹
として彼は,攻撃衝動が強い 3歳女児が玩具遊
p
r
o
j
e
c
t
i
v
et
r
e
edrawingt
e
c
h
n
i
q
u
e
)
木画法 (
びから水遊び、に転じたときに劇的に彼女の攻撃
を導入して実証的に検討することを目的とする。
衝動を鎮静化させ落ち着きを取り戻した観察例
投影樹木画法は描画者の伝記的状況,つまり
をあげている。彼女の水遊び、は①ボトルの水を
人生における過去の重大な経験にまつわる葛藤
ミニパスタブに注ぐ→②自分の顔にかける→③
やトラウマを反映するとされており,現在は児
床に滝のように流す→④床一面にまき散らすと
童虐待の早期発見の道具の 1つとして危機査定
いう局面を見せて展開した。これは子どもが怒
のためのツールとして用いられている(大辻,
りや反抗,敵意といった攻撃衝動を直接表出で
2
0
0
2
)。本研究では投影樹木画法に関する臨床的
査 定 ツ ー ル と し て の 成 長 指 標 で あ る GCL
きないときに通常の玩具遊ぴよりも水遊び、を通
←
51-
保育における水遊び、の効果に関するー研究
(GrowthCheckL
i
s
t,表 1)とトラウマ指標
である TCL(大辻, 2
0
0
2
) を用いて投影樹木画
ある。
実験 I
(以下,樹木画と呼ぶ)の査定をおこなう。
GCLは樹木画に表現されたトラウマからの
回復を示唆する描画特徴のことであり, RTCL
is
t,大辻・
(RecoveryfromTraumaCheckL
対象:短期水遊び、保育群;保育園年長児男女 2
3
上川, 2
0
0
2
) とも呼ばれるが,本研究では保育
方法:被験児全員に保育に入る前に集団実施法
における幼児の成長に主眼をおくため成長指標
によって投影樹木画法(教示「木を 1本
としての GCLをイ史用する。また TCLは C
a
n
t
-
描いてください。 J
) を実施した。 1回日
s
t
e
r
l
a
y(
1
9
9
6
) のトラウマ十旨標を中心として O
19
8
7
),O
s
t
e
r& Montgomery(
1
9
9
6
)
& Gould(
の 指 標 , さ ら に Hammer (
19
9
7
), J
o
l
l
e
s
(
1
9
7
1
),Ogdon(
19
7
7
)及び Wohl& Kaufman
0分間の水遊び、あるいは
の各群それぞれ 3
名。短期自由遊び保育群;保育園年長児
男女 2
4名
。
自由遊びをおこなし、その後 2回目の投
影樹木画法を実施した。なお,水遊び、の
内容は,穴を開けたペットボトルを利用
した水のシャワーや水の掛け合いやホー
(
19
8
5
) らが指摘する指標をすべて折り込み再
0
0
2
)。
構成したものである(大辻, 2
0分間の保
スを使った水のトンネル等, 3
したがってまず第 1に
, GCLを子どもたちの
育である。一方,自由遊びの内容は,室
水遊び、前後に実施した樹木画の査定に適用し,
内で、の絵本やブロック,ままごと等,特
水遊び、の成長的意義について検討する。次に水
に設定のない 3
0分間の保育である。
遊び、の治療的意義について, TCLを適用し検討
I
実験 I
をおこなう。
本研究では上記の GCLと TCLを用い, GCL
対象:長期水遊び、群;年中児および年長児 4
5名
。
の出現と TCLの減少から保育における水遊び、
9日間(土
方法: 7月 4日から 8月末日まで,計3
の効果を検討することを目的とし,以下の 2点
日と盆休みを除く毎日)の水遊び、保育の
の仮説をたてた。
前・中・後に投影樹木画法を実施した。
①
本研究ではそのうちの前・後の描画のみ
水遊び、により子どもにトラウマからの回
をマテリアルとして使用する。この長期
復,つまり心理的成長が見られる。
②
の水遊び、保育では,プール用滑り台や
水遊び、により子どものトラウマが減少す
ビーチボール,水鉄砲等の遊具を用いた
る
。
また,ここでいうトラウマは,狭義の心理的
水遊び、を保育園の屋外プールと近隣の市
トラウマはもちろん,子どもが日常生活上経験
民プールを利用して実施した。水遊び、時
する心理的ストレスや葛藤ないしは緊張なども
間は,毎回 1
5分 x2セッション(休憩 1
0
含む広義の概念として用いる。
分)と設定した。
分析方法
対象と方法
本研究では投影樹木画法の 4つの分析方法で
保育における水遊び、の効果を検討するために,
ある印象分析法,項目分析法,象徴解釈法及び
本研究では,以下に述べる 2つの実験をおこ
0
0
4
) のうち,項目分
関係年齢分析法(大辻, 2
なった。実験 Iでは短期の水遊び、と自由遊ぴと
析法を用いて被験児の樹木画をすべて GCLお
の比較における水遊び、効果を,また実験 I
Iでは,
よび TCLに照らして分析査定をおこなった。
7月初旬から 8月末まで約 2ヶ月間の継続プロ
グラムとして実施された長期の水遊び、の検討に
より,その効果を明らかにしようとするもので
52-
発達教育学部紀要
表 1 樹木画における成長指標 (GCL)
全
1
2
3
4
5
6
成長指標
大きすぎる木のサイズの縮小
小さすぎる木のサイズの拡大
弱い線から線の強化・木の枠組みの強化
2本線の幹と円冠で構成された木の解消
細かい破線の解消
8歳以降に見られる果実:多すぎる果実の減少
指標の解釈
攻撃的傾向,行動の誇示の緩和想念。もしくは神経質さの減少。
e
l
fe
s
t
e
e
mの向上。
劣等感,無価値感の緩和。 S
不適応感,優柔不断感の緩和。新たな役割への意欲,自我同一性。
衝動性,回帰性の緩和。
顕在的不安の緩和。
自己を消耗させる依存欲求の緩和。
体
7
描
次
画
元
の
ス
枝
タ
か
イ
ル
ら
の
2次
相
元
違
の
の
幹
解
消
と
枝
:
へ
2の
次
変
元
化
の幹と 1
後年のトラウマによって阻害された発達の解消。
8
過度に濃い陰影もしくは強化された陰影の緩和
敵対的防衛もしくは攻撃的行動の緩和。
9
細部への過剰な描画の緩和
危
わ
険
る
葛
な
世
藤
界
の
緩
に
対
和
,
す
強
る
知
迫
覚
性
,
の
緩
自
我
和
統
。制の保持にまつ
I
I
1
0
1
1歳以降に見られる底辺縁への配置の解消
未成熟の徴候の改善。
置
配
1
1
用紙の偏りの緩和:均等な空間配置
切男性な的関係お性よ,び精女性神的的支発達配性の統の影合響。 を受容できる適
1
2
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
1
8
1
9
2
0
2
1
葉のない枝, 1次冗の枝,及ぴ扇形の枝の解消
1次冗 2次冗の枝への変化
枝の上部への自然な広がり,枝の成長
ヌじが開放している上向きの枝
枝の分岐
関係性が良好な枝の形態
折れ枝の解消
新しい枝
切り株から出た小枝
地面からはえた苗木,若い木
衝動性,倣慢,不安定傾向の緩和。
阻害された発達の改善。対人関係から満足を得る能力の増加。
成長の可能性や意欲,活動性。
努力や考え方が全体と有機的に関連している。自己一致。
個人の成長や感知力の成長。
はっきりとした指向性。対人関係から満足を得る能力。
トフウマによる損傷感の減少。
環境に対する信頼感の増加,新しい期待や活動。
情緒的成長。
未成熟感,退行傾向,再出発の意欲。
2
2
項
主上の切断,崩平な項上部の枝構造の改
社
な
会
い
的
し
孤
は
否
立
感
定
の
の
減
改
少
善
。
。 苦痛を伴う想念生活の拒否
冠
2
3
2
4
2
5
2
6
円環状の樹冠の解消
幹に覆い被さる樹冠の解消
閉じられた樹冠の解消
聞いた樹過と小枝を持つ樹話
衝動性,回帰性の改善。
自己内部の空虚感の減少。
包囲, 自己表出の禁止に関する改善。
内的エネルギーの良好な流れ。
/
2
7
はっきりとした数枚の葉を持つ茂み
対
を
生
人
関
か
係
そ
に
う
お
と
す
け
る
る
欲
交
流
求
の
の増
j
慮
過
加
作
。用
。 好奇心や感覚
葉
2
8
2
9
3
0
3
1
3
2
3
3
枝の先端に描かれたつぽみ
枝の先端の花
セラピ一過程で描かれる満聞の花をもっ樹冠
濃い陰影の減少
強調しすぎの幹の解消
幹の輪郭線の統合
将来開花するだろうという期待の態度。自己統制や想像力の統制。
喜ぴの表現。
適応、感,達成感,および将来や成長に対する楽観。
不安の減少。
情動の未熟性の緩和。
不安,不安定,衝動性の緩和。
V
3
4
幹の輪郭線のはっきりとした線
迫
人
格
っ
た
の
基
自
我
本
破
的
滅
な
感
強
の
さ
解
。
消
弱
。 い線からの変化:差し
3
5
平行で、歪曲のない幹,適度な幅
基
な
本
認
識
的
自
と
調
我
和
の
強
し
た
さ
昇
の
保
華
持
。。本能エネルギーの健全
3
6
3
7
3
8
3
9
4
0
4
1
4
2
4
3
4
4
4
5
幹の成長(長さ)
傷,穴,節穴の消失
細い根,透視される根の解消
強調しすぎの根の解消
地平線の出現
地平線がある根の出現
,
鳥
巣箱の近くにいる鳥
節穴における動物の出現
太陽
個性の成長。
トフウマによる損傷感の減少。
理解力および現実感の増加。
不全感の減少,過度な情動反応。
ストレスに対する傷つきやすさや不安の解消。
抑圧された情動の解消。良好な環境関係。
内的自由,自由を求める欲求。明るい気分や希望,安定性。
他者を情緒的に支持しようとする善意。
肯定的な意味の付加。
暖かさ,力の源:権威像,両親像。
4
6
太陽の位置
木
威
の
的
暖
な
環
か
境
さ
像
や
力
と
の
の
源
聞
の
と
の
関
係
関
係
を
。
象
徴
し
す
ば
る
し
。ばエスと権
4
7
太陽からの光線,スポットライト
権威像からの被支配的感情,あるいは支配されたい欲求。
N
o
.
I
I
I
I
枝
W
樹
幹
V
I
艮
キ
v
n
付
要
的
加
素
-5
3
保育における水遊び、の効果に関する一研究
2. TCLによる水遊び群と自由遊び群の比較
TCL該当項目においては両群に有意な差は
。
)
認められなかった(表 5
結果
各群の園児における特徴的な樹木画例を図 1
表 4 保育後の短期自由遊び群における成長指
~3 に示す。
標 (GCL) の出現項目
1
. GCLによる水遊び群と自由遊び群の比較
水遊び、群の園児の樹木画は,自由遊ぴ群の園
児と比較して, GCLにおける成長指標が有意に
多く出現した(表 2)。また,成長的変化項目と
i
陰影の緩和 Ji
平行で歪曲のない幹,適
度な幅 Ji
幹の成長(長さ )
J等が該当項目とし
して,
て検出された(表 3
。
)
表 2 保育後の短期水遊び群及び短期自由遊び
群の成長指標 (GCL) の出現度
出現度
水遊び群 (
n
=
2
3
)
成長指標
自由遊び群 (
n2
4
)
成長指標
有
無
有
盤
2
2
1
1
2
1
2
二
ヱz
7.69*
人
成長指標
頻
出
願
N
o
.
3
6
)
1 幹の成長(長さ) (
6 2
5
N
o
.
3
)
2 弱い線から線の強化・木の枠組みの強化 (
2
8
N
o
.
3
5
)
2 平行で歪曲のない幹,適度な幅 (
2
8
N
o
.
3
7
)
2 傷,穴,節穴の消失 (
2
8
N
o
.
2
)
5 小きすぎる木の拡大 (
l 4
N
.
o8
)
5 過度に濃い陰影もしくは強化された陰影の緩和 (
1 4
N
o
.
1
7
)
5 関係性が良好な枝の状態 (
I 4
N
o
.
1
9
)
5 新しい枝 (
I 4
N
o
.
2
2
)
5 頂上の切断,肩平な項上部の枝構造の改善 (
1 4
N
o
.
2
7
)
5 はっきりとした数枚の葉を持つ茂み (
1 4
N
o
.3
1
)
5 濃い陰影の減少 (
1 4
N
o
.
3
4
)
5 幹の輪郭線のはっきりとした線 (
1 4
N
o
.
4
3
)
5 巣箱の近くにいる鳥 (
1 4
表 5 保育前後の水遊び群と自由遊び群トラウ
マ指標 (TCし)の変化比較
* p<.
0
1
増加変化なし減少
表 3 保育後の短期水遊び群における成長指標
(GCL) の出現項目
額
出
願
%
成長指標
人
%
水遊び、群
(n=23)
4
9
自由遊び、群 (n=24)
4
1
3
1
0
が
n
.s
.
7 n
.s
.
3.長期水遊び群の GCLによる検討結果
実験 I
Iでは約 2ヶ月にわたる継続的な水遊び、
N
o
.
3
)
1 弱い線から線の強化・木の枠組みの強化 (
8I35
N
o
.
3
5
)
2 平行で、歪曲のない幹,適度な幅 (
5I2
2
N
o
.3
6
)
2 幹の成長(長さ) (
5I2
2
N
.
o8
)
4 過度に濃い陰影もしくは強化された陰影の緩和 (
4I1
7
N
o
.
3
4
)
5 幹の輪郭線のはっきりとした線 (
3I1
3
N
o
.
4
5
)
5 太陽 (
3I1
3
N
o
.3
1
)
7 濃い陰影の減少 (
2
9
N
o
.
4
0
)
7 地平線の出現 (
2
9
紙の偏りの緩和 Ji
小さすぎる木の拡大」など成
N
o
.
4
2
)
7 鳥 (
2
9
長指標が検出された。
N
o
.
1
1
)
1
0 用紙の偏りの緩和 (
1 4
N
o
.
1
5
)
1
0 枝の上部への自然な広がり,枝の成長 (
1 4
N
o
.1
6
)
1
0 枝の分岐 (
1 4
N
o
.1
9
)
1
0 新しい枝 (
1 4
N
.
o2
2
)
1
0 項上の切断,肩平な項上部の枝構造の改善 (
1
N
o
.
3
3
)
1
0 幹の輪郭線の統合 (
1 4
出現度(人)
N
o3
7
)
1
0 傷,穴,節穴の消失 (
1 4
** p<.
0
0
1
目
保育の効果について調査した。このプログラム
に参加した園児 4
5名の水遊び保育開始前と終了
後の樹木画を GCLに照らして項目分析をおこ
なった結果, 4
5名中 3
9名に GCL該 当 項 目 が 出
現した(表 6)。また,該当項目「幹の成長 Ji
用
表 6 保育後の長期水遊び群における成長指標
(GCL) の出現度
成長指標
有 無
4
-54-
3
9
6
x2
10.42**
(n=45)
発達教育学部紀要
表 7 保育後の長期水遊び群における成長指標
遊びについて実証的にその効果を検討すること
a
r
t
l
e
y
を試みた。これは,水遊び、については H
(GCL) 出現項目
人 %
の観察例を見るまでもなく遊戯療法における治
N
o
.
3
6
)
1 幹の成長(長さ) (
2
8 6
2
療効果が実証されているにもかかわらず,いわ
N
o
.
1
1
)
2 用紙の偏りの緩和 (
4
2
0 4
ゆる保育における水遊び、についてはあまり実証
N
o
.
2
)
3 小さすぎる木の拡大 (
1
8 4
0
的研究がすすんでないことに端を発する。
成長指標
頻
出
願
N
o
.
4
0
)
4 地平線の出現 (
9I2
0
本研究の目的は,保育における水遊び、の意義
N
o
.
3
5
)
5 平行で、歪曲のない幹,適度な幅 (
8I1
7
について実証的に検討することにあり,保育園
N
I
l8
)
6 過度に濃い陰影もしくは強化された陰影の緩和 (
6I1
3
の年中児・年長児を対象として投影樹木画法を
N
o
.
3
1
)
7 濃い陰影の減少 (
5111
実施し, 自由遊びとの比較において,また水遊
N
o
.
3
4
)
7 幹の輪郭線のはっきりとした線 (
5111
び期間の長短の比較において,その効果を調査
N
o
.
1
9
)
9 新しい枝 (
4
9
した。そこで,水遊び、の効果については,①子
N
o
.
3
7
)
9 傷,穴,節穴の消失 (
4 9
N
o
.
3
)
1
1 弱い線から線の強化・木の枠組みの強化 (
2
4
N
o
.4
2
)
1
1 鳥 (
2
4
N
o
.
1
4
)
1
3 枝の上部への自然な広がり,枝の成長 (
1 2
N
o
.1
6
)
1
3 枝の分岐 (
1 2
N
o
.
2
2
)
1
3 項上の切断,扇平な項上部の枝構造の改善 (
1 2
N
o
.
2
7
)
1
3 はっきりとした数枚の葉を持つ茂み (
1 2
N
o
.
2
9
)
1
3 枝の先端の花 (
1 2
N
o
.
4
4
)
1
3 節穴における動物の出現 (
1 2
0分間の自由遊びをした園児(自由遊ぴ
同じく 3
N
o
.
4
5
)
1
3 太陽 (
I 2
群)の樹木画について比較したところ, GCLの
どもの心理的成長を予想するものとしての成長
効果と②子どもの心理的ストレスや緊張,葛藤
など広義の意味でのトラウマ体験の減少を予想
する治療効果の 2点を検討の主眼とした。
1.水遊びの心理的成長効果について
3
0分間の水遊び、をした園児(水遊び、群)と,
2
3名中 2
2名に,自由遊ぴ
成長指標が水遊び、群で"
4.長期水遊びの TCLによる検討結果
同じく, TCLに照らして項目分析をおこなっ
5名のうち 1
7名に TCL該当項目の減
た結果, 4
少が見られた(表 8)が,有意な差は認められ
4名中 1
2名に出現し,水遊び、群で、有意に
群では 2
なかった。
なった。さらに, GCL出現項目を見てみると,
多く出現した(表 2)。このことから本調査結果
を見る限り水遊び、が自由遊ぴと比較して有意に
園児の心理的成長に寄与することが明らかと
水遊び、群で、は,不適応、感,優柔不断感の緩和,
表 8 保育前後の長期水遊び群におけるトラウ
い線から線の強化・枠組みの強化J(35%),基
マ指標 (TCL) の出現度
1
6
1
7
ワ-
1
1
Z
増加変化なし減少
出現度(人)
への意欲,自我同一性を示唆する「弱
新たな役割l
n
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.
(n=45)
本的自我の強さの保持及び本能エネルギーの健
全な認識と調和した昇華を示唆する「平行で、歪
曲のない幹,適度な幅 J(22%),個性の成長を
示唆する「幹の成長(長さ )
J (22%),敵対的防
衛もしくは攻撃的行動の緩和を示唆する「過度
に濃い陰影もしくは強化された陰影の緩和 J
考察
(
17%)などの指標が多く出現した(表 3)。一
方
, 自由遊び群においてもほぼ半分の園児に成
遊びが子どもにとってかけがえのない経験で
長指標が見られたが,その最も示唆するところ
あり,それ自体が子どもの心身の成長を促し,
としては「幹の成長 J(25%)があげられる。両
子どもを活性化させることについては論を待た
群いずれにおいても水遊び、効果として個性の成
ないであろう。今回は中でも,保育における水
長を促す効果があることが裏付けられる結果を
55-
保育における水遊び、の効果に関するー研究
得た。このことから,短期水遊び、保育は,個性
いては,自由遊びとの比較においても,また短
の成長を促進し,とくに攻撃性を緩和する機能
期水遊び,長期水遊び、のいずれの形態において
を持ち,本能エネルギーを適切な形で園児に自
も有意差は認められず,本調査結果に見る限り
覚させ,それを遊ぴによって昇華するプロセス
水遊び、保育が治療機能としては有用といえない
の展開が予想できると考えられる。これは Har-
ことが示唆された。しかし, Hartleyの観察例に
19
5
2
)の攻撃衝動の強い 3歳女児の水遊び、
t
l
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y(
おいて指摘された攻撃衝動の緩和はすでに考察
による浄化的効果の見解とも一致するものであ
1で述べたように,長期水遊び、において観察さ
り,集団保育によってもこうした効果がもたら
れており,本稿で使用した TCL水準における
されることが確認できたことは意義深いことと
指標の減少変化を示し得るにはさらに長期の期
いえよう。
間を必要とするのか,あるいは遊戯療法 (
p
l
a
y
短期の水遊び、に心理的成長効果が認められた
therapy) における心理療法としての水遊び、に
ことを受けて,長期の水遊び、による効果につい
求められるような特質を所有する必要があるの
ても検討したが,これについては両者に GCL
か,さらに綿密な計画のもとに実施した調査や
を用いての項目分析結果において有意な差は認
詳細な事例研究による検討の余地があるものと
められなかった。したがって本調査結果に見る
いえよう。
限り,水遊び、効果は期間の長短に依存しないと
言える。しかしながら,長期水遊び、群の GCL項
3.今後の課題
目を見てみると,個性の成長を示唆する「幹の
今回の研究で各群に見られた成長指標の特徴
成長 J(62%),男性的および女性的支配性の影
は,勿論今回の研究の方法論から導き出された
響を受容できる適切な関係性,精神的発達の統
結果であるが,それはいわば描画上の指標に基
合を示唆する「用紙の偏りの緩和 J(44%),劣
づく判断であり,実際の園児一人一人の行動と
等感,無価値感の緩和, s
e
l
f-esteemの向上を示
照合して検討したものではなし E。今後の筆者ら
唆する「小さすぎる木の拡大 J(40%),ストレ
の研究課題と関心は,今回得られた結果をあら
スに対する傷つきやすさや不安の解消を示唆す
たな仮説として,園児の実際の行動上の成長的
る「地平線の出現 J(20%),また,基本的自我
変化について保護者や保育士など日ごろ園児を
の強さの保持,本能エネルギーの健全な認識と
身近に観察する機会のある c
a
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e
g
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v
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rからの詳
調和した昇華を示唆する「平行で歪曲のない幹,
細な観察報告と照合し再検討することにある。
適度な幅 J(17%)などが頻出し,短期の水遊び、
また,さらに長期の水遊び、を行った園児の行動
効果と比較して,個性の成長はもとより,関係
の変化と遊戯療法における水遊び、に見られる変
性の改善,自我の統合性や寛容性, s
e
l
f-esteem
化との質的検討である。
の向上といった,社会化 (
s
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)を促進
し,適応水準 (
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b
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l
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t
y
)を向上させること
を示唆する項目が検出されたものと指摘できる。
この意味で,長期水遊び、で、は短期水遊び、効果と
異なる次元において,いわば長期水遊び、ならで
はの保育効果があることが予想される。
2.水遊びの治療効果について
TCLから見たトラウマからの回復,つまり
TCLにおける項目分析で検出されたトラウマ
指標の数が減じることで表現される変化を本稿
で、は水遊ぴによる治療効果と呼ぶが,これにつ
文献
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GCL:
TCL:
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. 3 弱い線から線の強化・木の枠組みの強化
N
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.
3
4 幹の輪郭のはっきりとした線
N
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.
3
5 並行で歪曲のない幹,適度な幅
N.
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N
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.
4
0 細い幹
N
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.
4
7 根も地平線もない
TCL:
N
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.
4
7 根も地平線もない
後
目J
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TCL:
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3
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.
3
8 傷
N
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.
4
6 地平線はあるが根がない
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平行で歪曲のない幹,適度な幅
幹の成長(長さ)
TCL:
N
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.
3
8 傷
N
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.
4
7 根も地平線もない
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事例 3
後
GCL:
TCL:
N
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.
3
1 濃い陰影の減少
N
o
.
3
6 幹の成長(長さ)
N
o
.
2
2 下向きの枝
N
o
.
3
8 傷
N
o
.
4
7 根も地平線もない
TCL:
N
o
.
2
2 下向きの枝
N
o
.
3
8 傷
N
o
.
4
7 根も地平線もない
図 1 短期水遊び群樹木画例
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事例 2
事例 4
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後
GCL:
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3
4 幹の輪郭のはっきりとした線
N
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.
3
6 幹の成長(長さ)
N
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.
4
7 根も地平線もない
TCL:
N
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.
4
7 根も地平線もない
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後
目J
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7
TCL:
N
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.
4
5 地平線がない
仁二
GCL:
N
o
.
1
7 関係性が良好な枝の形態
N
O
.
1
9 新しい枝
N
o
.
3
6 幹の成長(長さ)
TCL:
N
O
.
4
7 根も地平線もない
事例 6
後
目J
I
﹁
N
O
.
4
7 根も地平線もない
L
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TCL:
図 2 短期自由遊び群樹木画例
GCL:
TCL:
N
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.
1
0 木と認識できない木
N
o
.
4
7 根も地平線もない
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跡
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事例 5
事例 7
後
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GCL:
TCL:
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3
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N
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3
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N
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3
8 傷
N
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.
4
7 根も地平線もない
小さすぎる木の拡大
用紙の偏りの緩和:均等な空間配置
幹の輪郭のはっきりした線
平行で‘歪曲のない幹,適度な幅
TCL:
N
o
.
3
8 傷
N
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.
4
7 根も地平線もない
後
目
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。
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GCL:
TCL:
お
N
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. 2 小さすぎる木の拡大
N
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.1
1 用紙の偏りの緩和:均等な空間配置
N
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.
3
5 平行で、歪曲のない幹,適度な幅
N
o
. 2 小さな木
N
o
.
1
6 用紙右側への偏り
世
帯
N.
o1
8 用紙上方への偏り
N
o
.
3
1 項上の切断,肩平な項上部の枝構造
N
o
.
4
5 地平線がない
TCL:
N
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.2
N
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.
1
8
N
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3
1
N
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事例 9
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.
.
畠畠副a
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TCL:
N
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1
0 木と認識できない木
hII白色ι
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N
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.
1
7 用紙左側への偏り
や¥
N
o
.
4
6 地平線はあるが根がない
t
M
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図 3 長期水遊び群樹木画例
小さな木
用紙上方への偏り
項上の切断,扇平な項上部の枝構造
根も地平線もない
後
GCL:
N
o
.2
N
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.1
1
N
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.
3
4
N
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.
3
5
小さすぎる木の拡大
用紙の偏りの緩和:均等な空間配置
幹の輪郭のはっきりした線
平行で、歪曲のない幹,適度な幅
TCL:
N
o
. 1 大きな木
N
o
.
3
5 強調しすぎの幹
N
o
.
4
6 地平線はあるが
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融
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事例 8
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