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無国籍者の人権

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無国籍者の人権
国際条約のなかにみる国籍と個人
無国籍者の人権
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無国籍ネットワーク・国立民族学博物館
陳 天 璽
国籍とは
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「個人を特定の国家に所属せしめる法的紐帯」
黒木、細川(1988)
木棚(2003)
「個人が特定の国家の構成員である資格」
奥田(2004)
という実情
無国籍者とは?
法的な無国籍者
de jure stateless person
・生後どの国からも国
籍を与えられていな
い人
・国籍を喪失し、新た
な国籍を取得できな
い人
自由権規約(1966年)
すべての児童は、国籍を取得する権利を有する
児童の権利に関する条約(1989年)
児童は、出世の後直ちに登録される
無国籍に関する国際条約
⇒誰に国籍を与えるかは国家に裁量下にある
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世界人権宣言(1948年)
すべての者は、国籍をもつ権利を有する
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「無国籍者の地位に関する条約」(1954年採択、
1960年発効、締約国65(2009年12月現在)
「無国籍の削減に関する条約」(1961年採択、
1975年発効、締約国37(2009年12月現在)
cf.「難民の地位に関する条約」
締約国144(2009年12月現在)
無国籍の推定人数
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事実上の無国籍者
de facto stateless person
・法的には国籍を有す
るが、当該国籍国より
国民として享受しうる
はずの保護、援助を
受けられない状況に
いる人
実効的な国籍がない
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世界には 1200万人以上 国連難民高等弁務官
(2006年の統計報告)
日本には 身分証明(外国人登録)に「無国籍」
と記されている人が1500人いる
実際、無国籍状態にある人はもっと多い
例:「○○籍」だがその本国に国籍のない人も
国籍法の抵触による 無国籍児
「存在しないこどもたち」(未届児)
1
無国籍者となる原因
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領土の所有権や主権の変動による
国家の任意によって国籍を奪われる
政府による差別的な政策・慣行
国籍法の抵触によって法の狭間に落ちる
行政手続きなどの不備
出生届の未提出
婚姻による国籍の喪失
国籍の離脱
出所:Refugee,2008,UNHCR
日本にいる無国籍の人びと
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外国人登録に「無国籍」と明記され、かつ在留資
格のある人
外国人登録に「無国籍」と書かれ、また、「在留資
格なし」と明記されている人
外国人登録に「○○国籍」と書かれるが、当該国
との繋がりを証明する書類がないor受けたくない
人で、在留資格のある人
外国人登録に「○○国籍」と書かれるが、当該国
との繋がりを証明する書類がない人or受けたくな
い人で、かつ在留資格のない人
どこにも登録されていない人
被収容者
無国籍+在留資格あり
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白系ロシア人、台湾(中華民国パス保持者)、脱
北者、日本が承認していない国の人
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日常生活において、特に問題なし
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パスポートは再入国許可書or各国の渡航証明
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「無国籍」への認知不足から来る差別
2
「○○国籍」+在留資格あり
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朝鮮籍、ベトナム籍、出生地主義の国の国籍を有
する親から日本に生まれるが、本国に届出をして
いないなどの理由により当該国国籍を取得してい
ない人、など
日常生活において支障なし
海外渡航の際のパスポート問題
二世などは、アイデンティティに苦悩
婚姻の際の書類不備の問題
「無国籍」+在留資格なし
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紛争などのもと他国に移住し、国籍を与えられな
いままでいた人
偽造パスポートで来日、不法滞在
きびしい日常生活、医療保険、銀行口座、住居の
確保など、すべての面において苦境にある
強制送還先がない
精神的ストレス
「○○国籍」+在留資格なし
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どこにも登録されていない人
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非正規滞在者から生まれた子
行政手続きの不備、見落とし、出生登録などへの
知識不足
出生費用の未払い
書類作成への抵抗感など
予防接種、教育、医療など、いろいろな面に支障
身分証明すらない
紛争などのもと他国に移住し、国籍を与えられな
いままでいた人
偽造パスポートで来日、不法滞在
きびしい日常生活、医療保険、銀行口座、住居の
確保など、すべての面において苦境にある
精神的ストレス
強制送還命令が出るが、受け入れ国側との齟齬
無国籍の人々
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不可視的な存在
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複雑→理解困難
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当事者自身にも(問題発生まで)自覚なし
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社会問題として浮上しない
3
無国籍者支援の現状
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難民を支援する組織団体は多いが、「無国籍」の
人びとを対象とした支援組織はあまり見られない
難民、移民を支援する団体における特例的な問
題として扱われる
緊急度が高くない
ケースが複雑かつ多岐、理解困難
無国籍ネットワーク
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「無国籍者から見た世界ー現代社会における国
籍の再検討」フォーラムを受け、当事者、支援者、
弁護士、研究者など発起人30数名により2009年
1月発足
「無国籍」を団体名に掲げ、「無国籍」者を主な支
援対象とする
現在、ML参加者は100余名、うち無国籍者30余
名
無国籍者支援は、後回し、放置されがち
活動内容

法律相談、自立支援
入管収容者の支援、面談、精神的サポート
仮放免の人々の法律相談、在留資格取得支援
「すてねとゼミ」
専門家によるセミナー開催、より多くの人に無国
籍問題に関する認知を広める
「すてねとカフェ」
交流会の開催、交友の場、悩み相談
HPで無国籍者に関連した情報の提供
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人類学者のフィールドでの経験から国籍を再考
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異分野(法学、精神医療、ビジネス界)との対話
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NGOなど支援機関との連携
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当事者をまじえたワークショップ
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グローバル時代における人権
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無国籍支援の課題
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各国政府間の法の抵触
無国籍に関する国際条約
日本は二つとの締約国となっていない
→国内法を優先、無国籍問題はないというスタンス
政府機関からのサポートなし
無国籍への認知不足
専門独立機関の整備
研究者が実態を伝える
活動資金の調達
多分野との連携
4
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