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DVD 用ピックアップ

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DVD 用ピックアップ
DVD 用ピックアップ
DVD 用ピックアップ
Optical Pickup for DVD
山 口 毅 *1
Takeshi Yamaguchi
岡 田 訓 明 *2
Kuniaki Okada
上 山 徹 男 *2
Tetsuo Ueyama
要 旨
再生専用DVDプレーヤ及びドライブ用ピックアッ
プの小型・高信頼性を実現するホログラムレーザユ
ニット化開発を行った。
3分割ホログラムを用いた位
相差法によるトラッキングサーボ誤差信号特性の解
析,及び,2層ディスク再生における隣接層からの干
渉を低減するフォーカス誤差補正構造の創出を行っ
た。試作ユニットによるディスク再生評価を行い,再
生専用 DVD 用ホログラムピックアップの実用性が確
認された。
A holographic optical pickup for DVD-Video players
and DVD-ROM drives has been developed. The tracking
error signal utilizing a holographic optical element with
three grating sections is analyzed. Photodiode pattern is
designed to compensate the focusing error signal from the
interference between two recorded layers in dual layer disc.
Through these effort and experimental evaluation, the
practicability of the holographic optical pickup for DVD
has been confirmed.
まえがき
120mm のディスク径で 4.7GB の記録容量を有する
DVD では,光源の短波長化,対物レンズの高 NA(開
口数)化,変調方式における符号効率(Density Ratio)
改善及び誤り訂正符号化における冗長度の低減等の手
法を用いることでCDの約7倍の大容量化を達成して
いる。更に,CD では概念のなかった2層ディスク構
造による容量増大も図られている。
*1 生産技術開発推進本部 光ディスク開発センター
*2 AV システム事業本部 ビデオ事業部 第2技術部
平 島 廣 茂 *2
Hiroshige Hirajima
酒 井 啓 至 *2
Keiji Sakai
DVD ディスク再生に適応するピックアップ開発に
は,上記光源の短波長化および対物レンズの高NA 化
による高密度再生に加え,サーボ誤差検出方法,及
び,2層ディスク再生時の課題対応についての検討が
必要である。ここでは,ピックアップ小型化を実現す
る再生専用 DVD 用ホログラムピックアップに関する
我々の開発内容について記述する。
1 . トラッキング誤差信号生成
DVD では,高密度化を達成するために再生信号品
質を確保することを優先し,ピット深さをλ/4n(n:
ディスク基板屈折率)近傍に設定するとともに,ト
ラッキング誤差検出については位相差検出法(DPD
法)に基づいて規定されている。
1・1 位相差信号の検出原理
再生ビームがピット列を走査した場合,
図1に示す
ように,ピットとビームの位置関係により反射ビーム
の強度分布パターンが変化する。位相差検出法では,
反射ビームの強度分布を4分割したA,B,C及び
D,それぞれの光強度 Ia,Ib,Ic,Id に対して,
(Ia +
Ic)と(Ib + Id)の位相差を検出することによりトラッ
キング誤差信号を得る。
1・2 トラッキング誤差信号オフセットの解析
ピックアップ構成部品である半導体レーザ,フォト
ダイオード及びサーボ信号検出用光学素子を一体化す
るホログラムレーザユニット1)2) において,フォー
カシング誤差検出としてフーコー法を用いる場合,
フォトディテクターのセグメント数増大を抑えるため
には,3分割ホログラム2) を用いて図1に示す反射
ビームの強度パターンの半円部を2分割したA,B
(あるいはC,D)の光強度 Ia,Ib(あるいは Ic,Id)
の位相差を検出するトラッキング誤差信号生成が望ま
しい。この Ia と Ib の位相差を検出する方法(タイプ
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シャープ技報
第72号・1998年12月
に移動した場合のトラッキング誤差信号オフセットを
図3に示す。
図2,3より,トラッキング誤差感度に大きな差は
ないが,対物レンズ移動によるトラッキング誤差信号
へのオフセット発生については,タイプAの方がタイ
プBに比して発生量が少ないことが分かる。
図1 レンズ面での反射光強度分布
Fig. 1 Intensity distribution of reflected beam on the lens.
A)について,
(Ia + Ic)と(Ib + Id)の位相差を検出
する従来方法(タイプB)との比較検討を行った。
位相差信号の解析においては,
スカラ回折理論を用
いてディスク反射ビームの強度分布を求め,更に,レ
ンズ後方に仮想配置された4分割フォトディテクター
面上での光強度分布をそれぞれ積分して各フォトディ
テクター出力とし,
集光ビームがピットを走査する時
の各出力の時間変化から位相差信号を模擬した3)。こ
こで,レーザ波長λ= 650nm,ディスク基板屈折率n
=1.55,ディスク基板厚みt=0.6mm及び対物レンズ
開口数 0.6 とした。
λ/ 4n のピット深さの場合には反射ビームの強度
分布は点対称となり,タイプAとBでトラッキング誤
差検出に大きな差は生じないが,ピット深さがλ/
4n と異なる場合には強度分布が点対称からずれるた
めに両者に差を生ずる。図2にピット深さλ/ 5n の
場合のトラック中心位置からのビームのずれに対する
トラッキング誤差検出感度(Ia と Ib の位相差,あるい
は(Ia + Ic)と(Ib + Id)の位相差)についての解析
結果を示す。また,対物レンズがトラックの半径方向
図3 対物レンズシフトによるトラッキング誤差信号
オフセット
Fig. 3 Tracking offset caused by moving of objective lens.
反射ビームの強度分布においてピット深さがλ/
4n と異なる場合にはトラック接線方向に位相差を生
じるとともに,対物レンズの半径方向移動に伴う反射
ビーム自体の移動によって,
両者のオフセット発生に
差が生じる。
対物レンズを半径方向に移動させた状態
でのピット深さとトラッキング信号オフセットの関係
を図4に示す。
図4 トラッキング誤差信号オフセットのピット深さ依存性
Fig. 4
図2 トラッキング誤差検出感度
Fig. 2 The sensitivity on tracking error detection.
Relation between the depth of pits and tracking
offset.
更に,ディスク傾き(半径方向,トラック方向)が
ある場合等のトラッキング信号オフセット発生に関す
る解析,及び,実際のピックアップによるタイプAと
タイプBでのトラッキング信号検出性能を比較し,タ
イプAによっても良好なトラッキング誤差信号が得ら
れることを確認した。
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DVD 用ピックアップ
2 . フォーカス誤差信号
2・1 2層ディスク再生時の課題
DVD では 40μm ∼ 70μm の間隔で2つの記録面を
有する2層構造ディスクが規定されている。信号再生
については,
各記録層に対するディスク基板厚みの違
いに起因する球面収差は十分小さく,
収差補償器を特
に必要としない。しかし,ホログラムレーザユニット
で用いているフォーカス誤差検出では,
一方の記録層
に対するS字カーブが完全に0に収束しない状態で次
の層が現れるために,フォーカス誤差信号にオフセッ
トが発生する。
また,
(b)に示すように,反射ビームがフォトディ
テクターD2或いはD3上で収まっている範囲(フォー
カスダイナミック範囲)では,補助フォトダイオード
D1 及び D4 はフォーカス誤差信号に影響を与えない。
図6にフォーカス誤差信号シミュレーション結果の
一例を示す。2層記録面の層間厚み 40μm(大気中換
算厚み=約 26μm;屈折率= 1.55)でのフォーカス誤
差信号は十分収束し,2層ディスク再生時のオフセッ
ト抑制がなされることが分かる。
実際のフォトディテクター形状設計においては,
使
用する光学系に対するオフセット低減効果と各種取付
け誤差を考慮した最適設計が必要である。
2・2 フォトディテクター形状による改善
上記オフセットを抑制するために,
フォーカス誤差
信号検出用2分割フォトダイオードの両隣接に新たに
フォトダイオードを設けて補正する4分割構造とし
た4)。図5にオフセット補正方法の説明図を示す。
図5 フォーカス誤差信号補正方法
Fig. 5
Principle of the compensation for focusing error
signal.
D2 及び D3 はフォーカス誤差信号を生成するため
の主要2分割フォトダイオードを示し,D1及びD4は
2層ディスクにおけるオフセット発生を抑制するため
の補助フォトダイオードを示す。フォトダイオード
D1 ∼ D4 の出力をW1 ∼W4 とすると,フォーカス誤差
信号 FES は,
FES =(W2 − W1)−(W3 − W4)
=(W2 + W4)−(W3 + W1)
によって演算される。
合焦時(a)では,2分割フォトディテクター D2
及び D3 の分割線上に反射ビームが集光される。合焦
点から大きくずれた(c)では,反射ビームはフォト
ダイオード D2 或いは D3 からはみ出し,更に,D1 或
いは D4 にまで広がる。D1 或いは D4 に入射した光量
により,フォーカス誤差信号は補正され,急速に0に
収束していく。
図6 フォーカス誤差信号(シミュレーション)
Fig. 6
Focus error signal (simulation).
3. ピックアップ評価
上記検討結果に基づいたホログラムレーザユニット
を図7に示す。
ホログラムは格子周期が異なる3つの
領域(A,B,C)に分かれており,回折光は3分割
される。A領域からの回折光はフォーカス誤差信号検
出用4分割フォトディタクターに導かれる。B及びC
領域からの回折光は,それぞれフォトディテクターに
導かれ,上記タイプA方式の位相差法によるトラッキ
ング誤差信号検出に用いられる。
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シャープ技報
第72号・1998年12月
図7 ホログラムレーザユニット構成
Fig. 7 Construction of holographic optical element.
図 10 再生 RF 信号アイパターン
本ホログラムレーザユニットを用いたピックアップ
により DVD ディスク再生評価を行った。評価結果を
図8,9及び 10 に示す。図8は2層ディスク再生時
のフォーカス誤差信号(S字カーブ)を示す。シミュ
レーション結果とよく一致しており,
各層のS字カー
ブが良く分離され,干渉が少ないことが分かる。
図 10 はトラッキングサーボオフ時のトラッキング
誤差信号観測波形を示す。
トラッキングオフセットの
少ない良好な誤差信号が得られている。
図 11 は再生 RF 信号アイパターンを示す。
Fig. 10 Eye diagram of the reproducing RF signal.
むすび
以上,DVD 用ホログラムピックアップについての
開発検討内容を述べた。ピックアップの商品化にあ
たっては,CD ディスク再生互換の取り方により,
DVD プレーヤ用と DVD-ROM 用でピックアップ構成
が変るが,共通のホログラムレーザユニットを用いる
ことができる。
大容量性を有するパッケージメディアである DVD
は,画像圧縮技術の進展とあいまって,情報配信ツー
ルとして CD 以上の市場展開が期待される。ピック
アップとしても,一層の小型化,低コスト化,更に,
高速化が望まれる。
図8 2 層ディスク再生時のフォーカス誤差信号
Fig. 8 Focus error signal at Dual Layer Disc (experimental).
謝辞
本開発にあたり,
日頃よりご協力頂いているオプト
デバイス事業部,オーディオ事業部,ビデオ事業部お
よび精密技術開発センターの関係各位に深く感謝致し
ます。
参考文献
1) Y. Kurata et al.,“CD Optical Pickup Using a Computer Generated Holographic Optical Element”, Proc. Optical Storage and
Scanning Technology, SPIE 1139, 161 (1989).
2) 佐藤他,
“3.
5インチ光磁気ディスク用ピックアップ”
,
シャープ技
報,
第50号,pp20-24(1991)
.
3) 岡田他,
“2PDを用いたDPDトラッキング制御法の解析”
,
第58回
応用物理学会学術講演会予稿4p-ZE-7(1997)
.
4) 上山他,
“DVD用ホログラムレーザユニットの開発”
,
第58回応用
物理学会学術講演会予稿4p-ZE-8(1997)
.
図9 トラッキング誤差信号観測波形
(上段:TES 下段:再生 RF 信号)
(1
99
8年1
0月1日受理)
Fig. 9 Waveform of tracking error signal (upper)
and reproducing RF signal (lower).
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