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中国都市部住宅建設投資
2009 年 6 月 26 日発行 中国都市部住宅建設投資 ~地域・住宅形態別に捉えた実態と 2009 年の見通し~ -1- 本誌に関する問合せ先 みずほ総合研究所㈱ 調査本部 アジア調査部中国室 研究員 劉 家敏 ℡ 03-3591-1384 E-mail [email protected] 目次 1.「従緊」から「松動」へシフトした住宅関連政策 ································ 1 2.都市部住宅建設投資 ····················································· 1 (1)都市部全体の動き ······················································ 1 (2)地域別投資実態 ························································ 3 (3)住宅形態別投資実態 ···················································· 5 (4)各地域の住宅形態別投資実態 ············································ 7 (5)住宅建設投資の全体像 ················································· 12 3. 2009 年の見通し ························································ 14 (1)不動産関連資金の動向 ················································· 14 (2)新築住宅の販売状況 ··················································· 17 (3)住宅関連梃入れ策 ····················································· 20 (4)今後の見通し ························································· 20 【付録】改革・開放以降の主な住宅関連政策と出来事(1980~2009 年 5 月末) ····· 22 図表目次 図表 1 都市部住宅建設投資の対固定資産投資・不動産投資比と年伸び率 ......... 2 図表 2 地域別 投資額・年伸び率の推移..................................... 3 図表 3 地域別 投資額・構成比・伸び率・寄与度の推移 ....................... 4 図表 4 住宅形態別 投資額・年伸び率の推移................................. 6 図表 5 住宅形態別 投資額・構成比・年伸び率・寄与度の推移 ................. 6 図表 6 各地域の住宅形態別投資額の推移..................................... 8 図表 7 各地域の住宅形態別投資額の構成比(99 年/08 年) ....................... 8 図表 8 各地域の住宅形態別投資額の年伸び率................................ 10 図表 9 各地域の住宅建設投資に対する住宅形態別寄与度 ...................... 11 図表 10 都市部住宅建設投資の全体像(2008 年)~その 1 ....................... 13 図表 11 都市部住宅建設投資の全体像(2008 年)~その 2 ....................... 13 図表 12 項目別 投資資金と構成比の推移................................... 15 図表 13 不動産関連資金の年伸び率(全体と項目別)........................... 16 図表 14 不動産関連資金の項目別寄与度..................................... 17 図表 15 新築住宅の年間販売面積と地域別伸び率・寄与度 ..................... 18 図表 16 新築住宅価格の前年同月比伸び率の推移............................. 19 図表 17 都市部住宅建設投資と年伸び率..................................... 21 1.「従緊」から「松動」へシフトした住宅関連政策 米国発金融危機に端を発した世界同時不況の影響を受けて、中国経済の減速が鮮明にな った 2008 年 10 月に、中国政府は、マイホーム需要(内需)を喚起する目的で住宅関連梃入 れ策を相次いで打ち出した。それにより、2003 年以降実施されてきた住宅関連政策は、「従 緊」(引き締める方向)から「松動」(緩和する方向)にシフトしたと見られる1。同年 11 月の 4 兆元の大型景気対策(~2010 年)では、「経済適用住宅」や「廉租房」等政策住宅2を対象とする 新規投資拡大が公表され、2009 年 3 月に開かれた「全人代」(日本の国会に相当)では、政策 住宅とその関連投資が 4 兆元の 1 割を占める 4,000 億元になると明言された3。こうした対 策による都市部住宅建設投資への押し上げ効果が注目されている。 本稿では、まず、住宅制度改革が始まった 1998 年以降の都市部住宅建設投資(以下、住 宅建設投資)を地域・住宅形態別に分析することで、その全体像を明らかにする。また、① 不動産関連資金の動向、②新築住宅の販売状況、③住宅関連梃入れ策、といった角度から、 2009 年の行方を検討する。 2.都市部住宅建設投資 (1)都市部全体の動き 1998 年 7 月に「内需拡大」と「居住環境の改善」を目的とする「住宅制度改革」4が始まってか ら、住宅建設投資は、急速な拡大を遂げてきた。都市部全体での住宅建設投資は、1998 年 の 2,082 億元から 2008 年にはその 10.6 倍の 2 兆 2,081 億元に増加、不動産投資の 62.7%、 固定資産投資の 14.9%を占めた(図表 1/上)5。 住宅建設投資は、1998 年から 2008 年にかけて、年平均 27.5%増加しており、物価変動 1 「2008 年楼市政策主基調:住房保障撑起“大旗”」上海証券報、2008 年 12 月 11 日。 中国では、政府の支援がある政策分譲住宅や政策賃貸住宅がある。中国語では、前者は、「経済適用住宅」、 後者は「廉租房」と呼ばれている。政策住宅に関しては、①住宅開発用土地を無償で提供すること、②手 数料を半減すること、③「経済適用住宅」の分譲価格(「廉租房」の家賃)を規制すること、等が定められて いる。 3 「両会聚焦:三大報告勾勒 4 万億投資“来龍去脈”」新華網、2009 年 3 月 8 日。 4 計画経済時代の中国は、住宅建設投資の約 9 割が国の財政資金で行われており、 その投資金額は国家機関、 政府事業部門、国有企業の「基本建設投資」として計上されていた。国営企業等は従業員のために社宅を 建設し、勤続年数等に応じて住宅を従業員に低い家賃で貸与していた。旧制度の下で、住宅建設投資は、 同期間の累計でも 374 億元に過ぎず、 都市部 1 人当たり居住面積は 1949 年の 4.5m2 から 1978 年には 3.6m2 に低下した。当時、結婚しても独自の部屋がない世帯数は、都市部世帯の 48%を占める 869 万世帯に達 した。1998 年 7 月に始まった「住宅制度改革」は、①国有企業等が従業員に低家賃で社宅を提供する制度 を廃止し、代わりに住宅補助金を支給する、②既存社宅の払い下げを促進する、③住宅金融制度の整備 を通じて個人のマイホーム取得を促進する、を中心に進められていった(劉家敏「中国都市部の新築住宅 市場~引き締め政策の効果とマイホーム需要の見通し~」みずほリポート、2005 年 8 月 3 日、「嬗変:従 単位購房到個人購房」21 世紀経済報道、2008 年 12 月 8 日、「中国住宅改革 30 年:居者有其屋的夢想与現 実」京華時報、2008 年 10 月 21 日)。 5 2008 年の実質 GDP 成長率(9%)に対し、固定資産形成がその 53.3%に相当する 4.8 ポイント寄与した。 2 -1- を除いた実質ベースでも年平均 26.7%増6となり、堅調な拡大を見せている。もっとも、住 宅関連引き締め政策が打ち出された 2003 年以降、名目伸び率は 2 回(2005 年、2008 年)鈍 化したことがある(図表 1/下)。2005 年は、2004 年 8 月の住宅開発用土地に対する管理強化 等により、高級住宅を対象とする投資が大幅に抑制され、同伸び率が前年より 8 ポイント 低下の 22.5%となった。2008 年は、年央まで続いた不動産関連融資に対する引き締め政策 の影響を受け新築住宅の販売が落ち込んだこと、同年 9 月に米国発世界金融危機に端を発 した世界同時不況が発生し、不動産関連の資金環境に変調が見られたことにより、同伸び 率が前年より 9 ポイント低下の 22.6%となった。 図表 1 都市部住宅建設投資の対固定資産投資・不動産投資比と年伸び率 (比率、%) 70 (年間投資額、億元) 25,000 62.7% 60 20,000 2兆2,081億元 53.5% 50 15,000 40 30 10,000 20 5,000 0 9.3% 14.9% 10 2,082億元 98 0 99 00 01 02 03 04 住宅建設投資 対固定資産投資比(右目盛) 05 06 07 08年 対不動産投資比(右目盛) (年伸び率、%) 40 35 30 26.1% 23.0% 25 22.5% 20 22.6% 17.0% 15 住宅建設投資 住宅建設投資(実質) 不動産投資 固定資産投資 10 5 0 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 (注)固定資産投資価格指数(Fixed Assets Investment Price Index)で 実質伸び率を算出した。 (資料)CEIC DATA より作成。 6 固定資産投資価格指数(Fixed Assets Investment Price Index、FAIPI)で実質化した。 -2- (2)地域別投資実態 都市部住宅建設投資を地域別7に見ると(図表 2)、東部都市は、1998 年の 1,477 億元から 2008 年には 1 兆 1,408 億元に 10 年間で 7.7 倍となったのに対し、中部都市は 206 億元から 19.2 倍の 3,960 億元、西部都市は 265 億元から 16.2 倍の 4,295 億元、東北都市は 133 億元 から 18.2 倍の 2,418 億元となり、いずれも東部都市を上回る倍率で拡大した。 図表 2 地域別 投資額・年伸び率の推移 東部都市 億元 中部都市 億元 % % 75 15,000 15,000 住宅関連引き締め政 35 11,408億元 10,000 25 55 10,000 35 15 5,000 1,477億元 5,000 -5,000 名目年伸び率(右目盛) -25 99 00 01 02 03 04 -25 -15 -10,000 98 -5 -5 実質年伸び率(右目盛) -5,000 3,960億元 0 0 住宅建設投資 15 206億元 5 05 06 -10,000 -45 98 07 08年 99 00 01 西部都市 02 03 04 05 06 07 08年 東北都市 億元 % 75 15,000 55 10,000 億元 % 75 15,000 55 10,000 35 5,000 35 5,000 15 15 4,295億元 0 265億元 -25 -10,000 -45 99 133億元 -5 -5,000 98 2,418億元 0 00 01 02 03 04 05 06 -5 -5,000 -25 -10,000 07 08年 -45 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 (注)固定資産投資価格指数(Fixed Assets Investment Price Index)で実質年伸び率を算出した。 (資料)CEIC DATA より作成。 7 2006 年以降の中国統計年鑑では、都市部を、①東部都市(3 直轄市(北京、上海、天津)+広東省+浙江省 +江蘇省+山東省+河北省+福建省+海南省(3 市 7 省))、②中部都市(山西省+安徽省+江西省+河南省 +湖南省+湖北省(6 省))、③西部都市(重慶市(直轄市)+陜西省+四川省+貴州省+雲南省+甘粛省+青 海省+内蒙古自治区+寧夏自治区+広西壮族自治区+西蔵自治区+新疆自治区(1 直轄市 6 省 5 自治区))、 ④東北都市(遼寧省+黒竜江省+吉林省(3 省))に分けるようになったため、本稿はそれに基づいて地域関 連指標を算出した(「中国統計年鑑」中国統計出版社、2006 年 9 月)。 -3- 都市部全体の住宅建設投資は、前述の通り、住宅制度改革が始まった 1998 年以来、年平 均 27.5%増加している。地域別に同伸び率を見ると、東部都市 24.0%、中部都市 34.3%、 西部都市 34.2%、東北都市 31.9%であり8、中・西・東北都市は、東部都市を超えるスピー ドで投資が拡大している。 住宅建設投資の地域別構成比では、東部都市は、年平均伸び率が 4 地域の中で最も低い ことを反映して 1998 年の 71.0%から 2008 年には 51.7%に低下した。一方、中部都市は 9.9% から 17.9%、西部都市は 12.7%から 19.5%、東北都市は 6.4%から 10.9%とそれぞれ上昇 した(図表 3/右上)。住宅建設投資は、各地域の経済発展に伴い、「東部都市に依存する」構 成から「地域的にバランスの取れた」構成へ移行していく傾向が見て取れる。 図表 3 地域別 (年間投資額、億元) 25,000 投資額・構成比・伸び率・寄与度の推移 100 2兆2,081億元 20,000 10.9% 90 2,418億元 住宅関連引き締め政策が実施 (構成比、%) 80 4,295億元 19.5% 70 17.9% 60 15,000 3,960億元 50 10,000 40 5,000 30 11,408億元 20 51.7% 10 0 0 98 99 00 東部都市 01 02 中部都市 03 04 05 06 西部都市 07 98 08年 東北都市 東部都市 中部都市 西部都市 東北都市 (年伸び率、%) 60 50 99 00 01 東部都市 都市全体 02 03 中部都市 04 05 06 西部都市 07 08年 東北都市 (寄与度、%) 50 40 30 40 3.2% .35.3% 20 30 0 20 31.2% 10 4.8% 5.7% 25.1% 8.9% 0 16.4% -10 10 東部都市 東北都市 中部都市 都市全体 西部都市 -20 0 98 99 00 01 (資料)CEIC 02 03 04 05 06 07 98 08年 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 DATA より作成。 中・西・東北都市は 2005 年以降、東部都市を上回るスピードで投資が拡大し続けている (図表 3/左下)。都市部全体の伸び率に対する地域別寄与度は(図表 3/右下)、2008 年の伸び 率(22.6%)に対し、東部都市 8.9 ポイント、中部都市 5.7 ポイント、西部都市 4.8 ポイン ト、東北都市 3.2 ポイントである。東部都市の伸び率は、他地域を下回る水準まで鈍化し 8 固定資産投資価格指数(Fixed Assets Investment Price Index、FAIPI)で実質化してみても 20%を上回る 水準にある。 -4- たとは言え、投資額は、2008 年も過半を占めており、寄与度は 4 地域の中で最も高い。東 部都市はウエイトが下がりつつも、他地域を上回る投資が当面は続くであろう。 (3)住宅形態別投資実態 中国政府は、住宅建設投資について、「全物件」、「高級住宅」9、「経済適用住宅」(政策分譲 住宅)といった内訳で定期的に発表している。本稿では、「全物件」から(「高級住宅」+「経済 適用住宅」)を差し引いた部分を「一般住宅他」10と定義する。以下では、住宅建設投資を住宅 形態別(「一般住宅他」、「高級住宅」、「経済適用住宅」)に分けて投資実態を見てみよう。 前述のように、都市部全体の年間投資額は、1998 年の 2,082 億元から 2008 年には 2 兆 2,081 億元に 10 年間で 10.6 倍となった(図表 4/左上)。それを住宅形態別に見ると、「一般 住宅他」を対象とした投資は 1,629 億元から 11.7 倍の 1 兆 9,121 億元(図表 4/右上)、「高級 住宅」を対象とした投資は 182 億元から 10.9 倍の 1,977 億元(図表 4/左下)に大幅に増加し たのに対し、 「経済適用住宅」を対象とした投資は 271 億元から 3.6 倍の 983 億元となった(図 表 4/右下)。 「高級住宅」を対象とした投資は、1998 年から 2004 年まで拡大を続け、同年 69.6%の伸 び率となった後、2004 年 8 月に実施された住宅開発用土地に対する規制強化により、2005 年には▲2.3%に落ち込んだ。その後、伸び率は 2006 年に 37.7%まで上昇、2007 年に鈍化 に転じ、2008 年は、9.4%に低下した(図表 4/左下)。「経済適用住宅」を対象とした投資は、 住宅制度改革の実施により、都市部中低所得世帯への住宅供給が重要視されなかったこと もあり、2000 年以降、伸び率は鈍化、あるいは、マイナスとなったが、政策的な見直しに より、2006 年から拡大に転じ、2008 年には 19.7%となっている(図表 4/右下)。一方、「一 般住宅他」を対象とした投資は、1998 年以降、20%を上回る伸び率を続けており、2008 年 も 24.4%と底固く推移している(図表 4/右上)。 9 「高級住宅」は高級マンションと戸建てを合計したものを指す。 販売価格や 1 戸当たり専用面積が規制される「両限房」については、データが公表されておらず、本稿では、 「一般住宅他」に含む(「付録」の 2008 年 2 月 28 日を参照)。 10 -5- 図表 4 住宅形態別 投資額・年伸び率の推移 全物件 一般住宅他 億元 住宅制度改革 25,000 22,081億元 住宅関連引き締め政策 億元 % 42 % 25,000 44 19,121億元 20,000 20,000 32 15,000 34 15,000 22 24 10,000 10,000 12 14 5,000 5,000 2,082億元 1,629億元 2 0 -5,000 住宅建設投資 名目年伸び率(右目盛) -10,000 98 99 00 01 02 03 04 05 06 4 0 -8 -5,000 -18 -10,000 -6 -16 07 08年 98 99 00 01 高級住宅 02 03 04 05 06 07 08年 経済適用住宅 億元 億元 % 2,500 85 % 1,500 72 1,977億元 2,000 983億元 65 1,500 1,000 45 32 500 1,000 25 0 182億元 5 0 -8 -500 -15 -500 -1,000 -35 98 99 00 01 02 (資料)CEIC 図表 5 03 04 05 06 -28 -1,000 07 08年 -48 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 DATA より作成。 住宅形態別 投資額・構成比・年伸び率・寄与度の推移 (年間投資額、億元) (構成比、%) 100 経済適用住宅 住宅関連引き締め政策が実施 高級住宅 20,000 12 271億元 500 25,000 52 983億元 1,977億元 一般住宅他 4.5% 9.0% 90 80 70 60 15,000 50 10,000 19,121億元 86.5% 40 30 20 5,000 10 0 0 80 98 99 (年伸び率、%) 00 01 02 03 04 05 06 07 98 08年 99 00 01 02 一般住宅他 03 04 05 高級住宅 06 07 08年 経済適用住宅 (寄与度、%) 70 全物件 高級住宅 50 60 経済適用住宅 一般住宅他 40 50 住宅関連引き締め政策が実施 30 40 0.9% 0.9% 20 30 24.4% 22.6% 20 10 19.7% 9.4% 10 20.8% 0 0 経済適用住宅 高級住宅 一般住宅 都市部 -10 -10 -20 -20 98 99 00 (資料)CEIC 01 02 03 04 05 06 07 08年 98 DATA より作成。 -6- 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 住宅形態別構成比を見ると(図表 5/右上)、「一般住宅他」の割合は 1998 年の 78.3%から 2008 年には 86.5%に上昇したのに対し、「高級住宅」は 8.7%から 9.0%に小幅な上昇に止 まった。一方、「経済適用住宅」は、13.0%から 4.5%に低下した。2008 年の全物件の年伸 び率(22.6%)に対し、「一般住宅他」は 20.8 ポイント、「高級住宅」は 0.9 ポイント、「経済 適用住宅」は 0.9 ポイントそれぞれ寄与しており、「一般住宅他」のウエイトが高い(図表 5/ 右下)。 (4)各地域の住宅形態別投資実態 各地域の住宅形態別11の投資状況を見てみよう(図表 6)。「一般住宅他」を対象とした投資 では、東部都市は、1999 年の 1,496 億元から 2008 年には 6.5 倍の 9,663 億元、中部都市は 163 億元から 21.7 倍の 3,538 億元、西部都市は 220 億元から 17.2 倍の 3,788 億元、東北都 市は 144 億元から 14.8 倍の 2,132 億元に、それぞれ拡大したと見られる。また、「一般住 宅他」に占める東部都市の割合は、1999 年の 73.9%から 2008 年には 50.5%に低下したのに 対し、中部都市は 8.1%から 18.5%、西部都市は 10.9%から 19.8%、東北都市は 7.1%か ら 11.2%に上昇したと見られる。 「高級住宅」を対象とした投資では、東部都市は、1999 年の 140 億元から 2008 年には 9.3 倍の 1,307 億元、中部都市は 8 億元から 28.8 倍の 230 億元、西部都市は 19 億元から 13.7 倍の 260 億元、東北都市は 12 億元から 15.0 倍の 180 億元に増加したと試算される。「高級 住宅」を対象とした投資に占める東部都市の割合は、1999 年の 78.5%から 2008 年には 66.1%に低下したのに対し、中部都市は 4.3%から 11.6%、西部都市は 10.7%から 13.2%、 東北都市は 6.5%から 9.1%に、それぞれ上昇したと見られる。「高級住宅」に占める東部都 市の割合(66.1%)が都市部全体(「全物件」)に占める同割合(51.7%)を 14 ポイント上回った ことから、「高級住宅」を対象とした投資は、「東部頼み」の特徴がかなり強いと言える。も っとも、1999 年との比較では、東部都市より中・西部・東北都市の増加が大きく、「高級住 宅」を対象とした投資は、東部都市から他の地域に広がっていく傾向にある。 「経済適用住宅」を対象とした投資では、東部都市は、1999 年の 194 億元から 2008 年には、 2.3 倍の 438 億元、中部都市は 81 億元から 2.4 倍の 192 億元、西部都市は 110 億元から 2.2 倍の 247 億元、東北都市は 52 億元から 2.0 倍の 106 億元に増加した。「経済適用住宅」を対 象とした投資に占める割合は、東部都市は 44%台、西部都市は 25%台で横ばいとなってい るのに対し、中部都市は 18.6%から 19.5%に小幅な上昇、東北都市は 11.9%から 10.7% に小幅な低下となった。「経済適用住宅」に占める東部都市の割合(44.6%)は都市部全体 11 2008 年の地域別「高級住宅」の投資額は、現時点で発表されていないため、都市部全体の「高級住宅」の年 間投資額(1,977 億元)を用いて、地域別構成比や過去の伸び率等を参考した上で、東部 1,307 億元(2007 年は 1,212 億元)、中部 230 億元(同 192 億元)、西部 260 億元(同 245 億元)、東北部 180 億元(同 158 億 元)になると試算した。地域別「一般住宅他」については、各地域の「全物件」から、地域別「高級住宅」の試 算値及び公表された「経済適用住宅」の投資額を控除して求めた。 -7- (「全物件」に占める同割合(51.7%)より低い。東部都市の住宅建設投資は、「高級住宅」が選 好されていると言えよう。 図表 6 億元 12,000 各地域の住宅形態別投資額の推移 東部都市 4,000 10,000 億元 中部都市 3,538億元(予) 一般住宅他 高級住宅 3,500 9,663億元(予) 経済適用住宅 3,000 8,000 住宅関連引き締め政策が実施 2,500 6,000 2,000 1,500 4,000 1,000 2,000 1,496億元 1,307億元(予) 500 438億元 99 4,000 230億元(予) 192億元 163億元 0 0 00 01 02 億元 03 04 05 06 西部都市 07 08年 99 3,788億元(予) 2,500 00 01 02 03 億元 04 05 06 07 08年 東北都市 2,132億元(予) 3,500 2,000 3,000 2,500 1,500 2,000 1,000 1,500 1,000 500 500 180億元(予) 260億元(予) 247億元 220億元 144億元 106億元 0 0 99 00 01 02 03 04 05 06 07 99 08年 00 01 02 03 04 05 06 07 08年 (注)2008 年は「経済適用住宅」しか発表されていないため、試算値となっている。 (資料)CEIC DATA より作成。 図表 7 東部都市 各地域の住宅形態別投資額の構成比(99 年/08 年) 中部都市 一般住宅他 99年 08年 100 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 経済適用住宅 高級住宅 経済適用住宅 西部都市 高級住宅 一般住宅他 99年 08年 100 (資料)CEIC 99年 08年 東北都市 一般住宅他 経済適用住宅 一般住宅他 100 80 80 60 60 40 40 20 20 0 0 高級住宅 経済適用住宅 DATA より作成。 -8- 99年 08年 高級住宅 図表 7 は、1999 年と 2008 年の両時点で比較した各地域の住宅形態別投資の割合変化を示 したものである。それを見ると、東部都市は、「経済適用住宅」が割合低下、「高級住宅」が 割合上昇、中部都市は「経済適用住宅」が割合低下、「一般住宅他」や「高級住宅」が割合上昇、 西部都市は「経済適用住宅」が割合低下、「一般住宅他」が割合上昇、東北都市は「経済適用住 宅」が割合低下、「一般住宅他」が割合上昇となっている。各地域で見られた「経済適用住宅」 を対象とする投資の割合低下は、次のような要因によるものと考えられる。 まずは、1998 年の住宅制度改革の実施により、「住宅供給は市場に任せればいい」という 考え方が強まり、政策住宅である「経済適用住宅」を対象とする投資が抑えられてきたこと である。「住宅制度改革」は、①国有企業等が従業員に低家賃で社宅を提供する制度を廃止 し、代わりに住宅補助金を支給する、②既存社宅の払い下げを促進する、③住宅金融制度 の整備を通じて個人のマイホーム取得を促進する、を中心に進められ、上海市では、都市 部中低所得世帯にどのような住宅を提供するかについて議論が進まず、住宅価格が高騰し ていた 2002~2007 年には「経済適用住宅」を対象とする投資が中止されたこともある。 次に、地方政府にとって、「経済適用住宅」のような政策住宅を対象とする建設投資を拡 大させるメリットが少ないことも原因として考えられる。中国では、都市部土地は、すべ て国有地となっているが、地方政府による土地使用権の有償譲渡は認められる。国有地の 最大譲渡年限は、土地の使途によって異なり、住宅用土地の場合は、70 年までとなってい る12。地方政府は、入札で土地使用権を高い価格で不動産開発業者に譲渡すれば、より多く の「土地出譲金」(土地使用権の譲渡からの収入)を得ることができる。地方政府の第 2 財政 収入13と呼ばれる「土地出譲金」は、都市開発やインフラ整備等に使われてきた地方政府の重 要な財源となっている14。それに対し、「経済適用住宅」は国有地の無償提供で建設され、地 方政府の収入にならない。従って、地方政府は、メリットの少ない政策住宅を対象とする 建設投資に消極的である。 また、高所得世帯による「経済適用住宅」の不正取得が後を絶たず、政策住宅制度の有効 12 都市部の土地はすべて国有地である。80 年代後半から国有地の土地使用権を有償で譲渡できるようにな った。国有地の最大譲渡年限は、土地の使途によって異なっており、居住用地は 70 年、工業用地は 50 年、教育、科学、文化、衛生、体育用地は 50 年、商業、観光、娯楽用地は 40 年、綜合又はその他の用 地は 50 年と定められている(「中華人民共和国都市国有土地使用権出譲及び転譲暫定施行条例」1990 年 5 月)。 13 地方政府の税収には、不動産関連税目として、①不動産税(中国語では、「房産税」)、②都市土地使用税(同 「城鎮土地使用税」)、③土地付加価値税(同「土地増値税」)、④耕地占用税(同「耕地占用税」)、がある。直 轄市(北京市、上海市、天津市、重慶市)合計の上記 4 税目からの歳入は、1999 年の年間 70 億元(約 959 億円)から 2007 年にはその 4.9 倍の 344 億元(約 5,332 億円)に増加し、この金額は、直轄市合計歳入の 8.3%、国家財政収入の 7.6%に相当する。土地使用権の譲渡から得られた収入(「土地出譲金」)は、予算 外収入として計上される。2007 年 8 月に発表された 24 号文件によれば、その 1 割を下限に、政策住宅を 対象とする投資に使わなければならない(「破解保障性住房投資難題 力促房地産市場軟着陸」21 世紀経 済報道、2008 年 11 月 24 日)。 14 「土地出譲金」に関するデータは、明らかになっていない。公表されている土地使用権譲渡価格指数の前年 同月比伸び率は 1998~2002 年の年平均 2.3%から、2003~2008 年には年平均 11.2%と大幅に上昇してお り、地方政府の予算外収入にプラスの影響を与えてきたと見られる。 -9- 性が問われていることも「経済適用住宅」への投資拡大を阻害してきた要因として考えられ る。 各地域の住宅形態別投資の伸び率を見ると(図表 8)、「一般住宅他」を対象とした投資は、 2000 年以降、すべての地域において拡大傾向が続いている。それに対し、「高級住宅」を対 象とした投資は、住宅関連引き締め政策によって前年比マイナスとなった年もある。また、 「経済適用住宅」を対象とした投資は、2005 年に各地域ともにマイナスに転じ、西・東北都 市は、2002 年以降、4 年連続のマイナスが続いた。その後、2006 年に打ち出された政策住 宅を再重視する政策(付録(2006 年 5 月 29 日))により、「経済適用住宅」を対象とした投資に は、各地域とも持ち直しが見られた。 図表 8 各地域の住宅形態別投資額の年伸び率 % % 東部都市 80 70 中部都市 140 一般住宅他 高級住宅 経済適用住宅 一般住宅他 高級住宅 経済適用住宅 120 60 100 50 80 40 60 30 25.3% 20 17.3% 10 7.9% 40 37.9% 20 19.6% 13.2% 0 0 -20 -10 -40 -20 00 01 02 03 % 04 05 06 07 01 02 03 % 西部都市 80 00 08年 120 50 100 06 07 08年 一般住宅他 高級住宅 経済適用住宅 140 60 05 東北都市 160 一般住宅他 高級住宅 経済適用住宅 70 04 80 40 60 30 27.1% 20 19.6% 10 5.9% 0 40 34.1% 20 14.1% 10.7% 0 -20 -10 -40 -20 -60 00 01 02 (資料)CEIC 03 04 05 06 07 08年 00 DATA より作成。 -10- 01 02 03 04 05 06 07 08年 図表 9 各地域の住宅建設投資に対する住宅形態別寄与度 % % 80 80 東部都市 経済適用住宅 高級住宅 70 一般住宅他 全体の伸び率 60 中部都市 70 60 50 50 40 40 30 30 0.8% 1.3% 20 33.2% 20 16.4% 0.9% 1.0% 14.5% 10 35.3% 10 0 0 00 01 02 03 04 05 06 07 00 08年 01 02 03 04 05 06 07 08年 % % 80 80 西部都市 70 70 60 60 50 50 東北都市 40 40 31.2% 30 25.1% 1.2% 0.4% 20 10 23.5% 0.6% 1.2% 30 20 10 29.4% 0 0 00 01 02 (資料)CEIC 03 04 05 06 07 00 08年 01 02 03 04 05 06 07 08年 DATA より作成。 住宅建設投資の伸び率に対する住宅形態別寄与度を見ると(図表 9)、東部都市では、2008 年の伸び率(16.4%)に対し、「一般住宅他」が最も高い 14.5 ポイント、「高級住宅」1.0 ポイ ント、「経済適用住宅」0.9 ポイントとなっている。他の地域においても「一般住宅他」が住宅 建設投資のけん引役となっている。「一般住宅他」の寄与率(当該年度の伸び率に対する各寄 与度の割合)は、2000 年に東部都市 81%、中部都市 46%、西部都市 56%、東北都市 56%で あったが、2008 年にはそれぞれ 88%、94%、94%、94%に上昇した。住宅建設投資は、「一 般住宅他」を中心に行われていることが分かる。 もっとも、本稿での「一般住宅他」は、「全物件」から「高級住宅」と「経済適用住宅」を差し 引いたもので幅広い。「一般住宅他」と言っても、高級・大型化が進んでいる物件も含まれ ていると見られる。その平均販売価格は、都市部世帯のマイホーム取得能力を上回る水準 にあり、都市部中堅所得世帯にとっては、「高嶺の花」となっている15。 15 2007 年の新築住宅の 100m2 当たり販売価格(「価格」)は、「全物件」平均で見れば、都市部世帯の平均年間可 処分所得(「所得」)の約 9 倍である。それを住宅形態別に見ると、「高級住宅」の「価格」は、「所得」の 19 倍、 「経済適用住宅」は、「所得」の 4 倍となっている。さらに、所得階層別に見ると、「全物件」の平均「価格」 は、最下位所得世帯(下位 10%まで)の「所得」の 26 倍、最上位所得世帯(上位 10%まで)の 4 倍となり、「高 級住宅」の「価格」は、それぞれ 54 倍と 8 倍、「経済適用住宅」は、それぞれ 13 倍と 2 倍となっている。「国 連人間居住センター」(UN-HABITAT)のガイドラインに決められる「6 倍以下」という基準で見れば、大多数 の都市部世帯にとって「高級住宅」は、「高嶺の花」であり、「経済適用住宅」も中産階級以上(上位 60%まで) しか買えないものになっている。住宅建設投資の 87%を占める「一般住宅他」は、例え「全物件」の平均「価 格」で販売されても、都市部上位 20%所得層しか買えないのが現状である。大多数の都市部世帯が購入可 -11- (5)住宅建設投資の全体像 2008 年時点の地域・住宅形態別住宅建設投資は図表 10 のようにまとめられる。住宅建設 投資は、都市部全体で 2 兆 2,081 億元である。そのうち、東部都市は 1 兆 1,408 億元、中 部都市は 3,960 億元、西部都市は 4,295 億元、東北都市は 2,418 億元となっており、東部 都市が圧倒的に多い。 住宅形態別に見ると、「一般住宅他」の投資額は、都市部全体で 1 兆 9,121 億元であった が、地域別に見ると、東部都市 9,663 億元、中部都市 3,538 億元、西部都市 3,788 億元、 東北都市 2,132 億元であり、東部都市を中心に行われている。住宅建設投資に占める「高級 住宅」の構成比は 9%で、全体に占める割合は低く、投資額は、東部都市が多い。また、「経 済適用住宅」の投資総額は、都市部全体でも 983 億元に過ぎず、住宅形態別の中で最も少な い。地域別に見ると、東部都市 438 億元、中部都市 192 億元、西部都市 247 億元、東北都 市 106 億元となっている。 2008 年の住宅建設投資は、東部都市が全体の 51.7%、「一般住宅他」が全体の 86.5%を占 めており、同年伸び率(22.6%)に対し、「東部都市」はその 39%、「一般住宅他」はその 92% 寄与した。つまり、2008 年までの住宅建設投資は、地域別では、「東部都市」、住宅形態別 では、「一般住宅他」を中心に行われてきていることが分かる(図表 11)。 能な価格水準になるには、新築住宅価格のさらなる調整が必要であろう(劉家敏「中国都市部世帯の住宅 状況とマイホーム取得能力」みずほアジア・オセアニアインサイト、2009 年 1 月 20 日)。 -12- 図表 10 全体 年額 構成比 年伸び率 寄与度 東部都市 11,408億元 51.7% 16.4% 8.9% 年額 構成比 年伸び率 寄与度 一般住宅他 19,121億元 86.5% 24.4% 20.8% (都市部総世帯数、万世帯) 40,000 都市部住宅建設投資の全体像(2008 年)~その 1 2008年の住宅建設投資 22,081億元 年額 22.6% 年伸び率 地域別 中部都市 西部都市 東北都市 年額 3,960億元 4,295億元 2,418億元 構成比 17.9% 19.5% 10.9% 年伸び率 35.3% 25.1% 31.2% 寄与度 5.7% 4.8% 3.2% 住宅形態別 高級住宅 経済適用住宅 年額 1,977億元 983億元 構成比 9.0% 4.5% 年伸び率 9.4% 19.7% 寄与度 0.9% 0.9% 2007年 都市部世帯の地域別構成比(%) 東部都市 35,000 40 3億6,892万 30,000 30 25,000 20 10 20,000 1億3,400万 1億0,865万 15,000 10,000 東北都市 9.5% 29.5% 中部都市 - 9,108万 3,518万 5,000 年額 構成比 年伸び率 寄与度 24.7% 東北都市 西部都市 中部都市 東部都市 都市部 - 36.3% 年額 構成比 年伸び率 寄与度 西部都市 各地域の住宅形態別 東部都市 一般住宅他 高級住宅(※) 9,663億元 1,307億元 84.7% 11.5% 17.3% 7.9% 14.5% 1.0% 中部都市 一般住宅他 高級住宅(※) 3,538億元 230億元 89.4% 5.8% 37.9% 19.6% 33.2% 1.3% 西部都市 一般住宅他 高級住宅(※) 3,788億元 260億元 88.2% 6.1% 27.1% 5.9% 23.5% 0.4% 東北都市 一般住宅他 高級住宅(※) 2,132億元 180億元 88.2% 7.4% 34.1% 14.1% 29.4% 1.2% 経済適用住宅 438億元 3.8% 25.3% 0.9% 経済適用住宅 192億元 4.8% 13.2% 0.8% 経済適用住宅 247億元 5.7% 19.6% 1.2% 経済適用住宅 106億元 4.4% 10.7% 0.6% (注)1.「※」は現時点で未発表であるため、当総研の試算値となっている。「一般住宅他」もそれに基づ いて試算した。 2. 2007 年の世帯数の地域分布は家計調査の対象都市(地級以上、207 都市)の世帯数を地域別に合 計したものである。 (資料)CEIC DATA、国家統計局城市社会経済調査司「2008 年中国城市(鎮)生活与価格年鑑」中国統計出 版社、2008 年 11 月より作成。 図表 11 都市部住宅建設投資の全体像(2008 年)~その 2 一般住宅他 (19,122億元) 100 東部都市(11,408億元) 60 50 80 40 60 30 40 20 20 10 東北部都市 (2,418億元) 0 0 中部都市 (3,960億元) 経済適用住宅 (983億元) 西部都市(4,295億元) (資料)CEIC 構成比 伸び率 寄与度 DATA より作成。 -13- 高級住宅 (1,977億元) 構成比 伸び率 寄与度 3.2009 年の見通し 都市部住宅建設投資の伸び率は 2007 年の 32.0%から 2008 年には 22.6%に鈍化した。2008 年前半まで続いた不動産関連融資の引き締め政策や米国発世界金融危機を背景に、新築住 宅の販売低迷と不動産開発業の資金調達環境の悪化が原因として考えられる16。2009 年の住 宅建設投資の行方を見極めるために、①不動産関連資金の動向(資金面)、②新築住宅の販 売状況(需要面)、③政府の梃入れ策と投資拡大効果(政策面)、を検証する必要がある。 (1)不動産関連資金の動向 まず、資金面から見てみよう。不動産関連資金は、①不動産開発企業の自己資金(「企業 自己資金」)、②不動産開発企業の商業銀行等からの借入金(「企業国内借入」)、③住宅購入 者の頭金や前払い金等(「頭金や前払い金等」)、④外国からの直接投資等(「外資」)、⑤住宅 購入者が借り入れた住宅ローンやその他の資金(「個人住宅ローン等その他」)、に分けられ る。 不動産関連資金は、1999 年の年間 4,509 億元から 2008 年には 8.5 倍の 3 兆 8,146 億元に 増加した(図表 12/左)。項目別に見ると、「企業自己資金」は、599 億元から 14.5 倍の 8,689 億元、「企業国内借入」は 1,032 億元から 7.0 倍の 7,257 億元、「頭金や前払い金等」は、1,488 億元から 6.2 倍の 9,286 億元、「外資」は、241 億元から 3.0 倍の 726 億元、「個人住宅ロー ン等その他」は 1,149 億元からその 10.6 倍の 1 兆 2,188 億元となり、そのうち、「企業自己 資金」と「個人住宅ローン等その他」の倍率が比較的に大きいことが分かる。 構成比を見ると(図表 12/右)、年間資金総額に占める「企業自己資金」の割合は 2000 年の 13.3%から 2008 年には 22.8%、「個人住宅ローン等その他」は 25.5%から 32.0%に上昇し たのに対し、「頭金や前払い金等」は、33.0%から 24.3%、「企業国内借入」は 22.9%から 19.0%、「外資」は 5.3%から 1.9%に、それぞれ低下した。 16 梁爽「2008 年房地産市場分析与 2009 年展望」『経済藍皮書』中国社会科学院、社会科学文献出版社、2009 年 3 月。 -14- 図表 12 項目別 投資資金と構成比の推移 % 億元 100 45,000 「個人住宅ローンなどその他」 40,000 38,146億元 30,000 32.6% 80 企業国内借入 35,000 90 32.0% 外資 「頭金や前払い金等」 70 企業自己資金 60 25,000 17,523億元 20,000 1.9% 1.3% 19.0% 22.6% 50 40 24.3% 15,000 30 10,000 20 5,000 10 0 0 99 00 01 02 03 (資料)CEIC 04 05 06 07 08 23.7% 22.8% 99 09年 1~5月期 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09年 1~5月期 DATA より作成。 不動産関連資金は、1999 年から 2007 年まで、年平均 30.3%増で拡大していたが、2008 年には前年比 2.4%増にとどまり、2007 年の 38.6%増から急減速した(図表 13/上)。項目 別に伸び率の変化を見ると(図表 13/下)、「企業国内借入」は 2004 年、2008 年に、「頭金や 前払い金等」は 2005 年、2008 年に、「個人住宅ローン等その他」は 2008 年に、伸び率の大幅 な低下があった。2004~2006 年において、「企業国内借入」と「頭金や前払い金等」は、伸び 率が大幅に落ち込んだ年もある一方で、「企業自己資金」や「個人住宅ローン等その他」は 堅調に拡大していたため、年間投資資金全体ではプラスの伸びが維持された。2008 年には、 新築住宅の販売不振を背景とした「頭金や前払い金等」の大幅な減少(▲12.6%)に加え、他 の資金項目の前年比伸び率も低下した。もっとも、「企業自己資金」は、伸び率は前年を下 回ったものの、24.3%増と堅調な拡大が続き、年間投資資金は、前年比 2.4%増とプラスを 維持した。 伸び率の鈍化は、主に、①2004 年に、不動産開発企業向けの融資規制が強まったこと、 ②2005 年に、住宅ローンに対する管理が強化されたことや転売を目的とする住宅取得が規 制されるようになったこと、③2008 年は、前半まで続いた不動産関連融資の引き締め政策 に、米国発世界金融危機の押し下げ効果が重なり、不動産投資関連の資金調達環境が悪化 したこと、等によってもたらされたと考えられる。 -15- 19.8% 図表 13 80 不動産関連資金の年伸び率(全体と項目別) % 全体 住宅関連引き締め政策が実施 70 60 50 38.6% 37.6% 40 30 16.1% 20 2.4% 10 0 00 01 02 03 04 05 06 % 07 08 項目別 64.8% 70 60 09年1~5月期 45.4% 50 40 30 21.4% 17.2% 15.8% 9.2% 20 10 0 -10 -8.7% -20 -12.6% -30 -40 00 01 全体 企業国内借入 02 03 04 05 企業自己資金 頭金や前払い金等 06 07 08 09年1~5月期 外資 個人住宅ローンなどその他 (注)1.不動産関連資金には、住宅以外の不動産を対象とする資金も含まれているが、2008 年の不動 産投資に占める住宅建設投資の割合は 63%であり、不動産関連資金の多くは住宅建設投資に 利用されると推測できる。 2.2009 年 1~5 月期は前年同期比伸び率である。 (資料)CEIC DATA より作成。 -16- 図表 14 不動産関連資金の項目別寄与度 % 50 38.6% 40 30 20 16.1% 10 2.4% 0 0.4% 0.2% 0.8% 4.6% -3.6% 個人住宅ローンなどその他 外資 頭金や前払い金等 企業国内借入 企業自己資金 全体の年伸び率 -10 6.7% 4.0% 3.6% 1.9% -0.1% -20 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09年 1~5月期 (注)2009 年 1~5 月期は前年同期比伸び率、寄与度である。 (資料)CEIC DATA より作成。 2008 年の項目別寄与度を見ると(図表 14)、不動産開発企業の商業銀行等からの借入金 (「企業国内借入」)は 2007 年の 6.3 ポイントから 2008 年には 0.8 ポイント、住宅購入者が 借り入れた住宅ローン他(「個人住宅ローン等その他」)は 14.7 ポイントから 0.4 ポイント、 住宅購入者の頭金や前払い金等(「頭金や前払い金等」)は 9.3 ポイントから▲3.6 ポイントに 急低下した。また、不動産開発企業の自己資金(「企業自己資金」)や外国からの直接投資等 (「外資」)も小幅ながら低下している。こうした不動産関連資金の変調は、①不動産関連業 務に対する商業銀行の貸出抑制、②新築住宅の販売不振に伴う頭金や前払い金等の伸び悩 み、③外資企業や国内企業の不動産投資意欲の低下、によるものと見られる。 (2)新築住宅の販売状況 次に、新築住宅の販売状況を見てみよう。新築住宅の年間販売面積は 1998 年の 1 億 827 万 m2(108 万戸)から拡大傾向が続き、2007 年には約 6.5 倍の 7 億 136 万 m2 となった。しか し、2008 年は、前年比 20.3%減の 5 億 5,886m2 となり(図表 15/1 段)、1998 年以来初の前 年割れとなった(図表 15/2 段)。2008 年の販売面積を地域別に見ると(図表 15/3 段、4 段)、 各地域とも前年比マイナスに転じている。こうした新築住宅の販売低迷は、住宅建設投資 (図表 1)を抑制する要因となっていると言えよう。 -17- 図表 15 新築住宅の年間販売面積と地域別伸び率・寄与度 万戸 70,136万m 2 800 (701万戸) 55,886万m 2 700 (559万戸) 600 500 400 300 200 22,704万m 2 100 (227万戸) 0 06 07 08 09年 1~5月期 (年間販売面積、万m2) 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 住宅関連引き締め政策が実施 10,827万m 2 (108万戸) 98 99 00 01 02 03 04 05 年間販売面積 (年間販売面積の伸び率、%) 45 年間販売戸数(右目盛) 都市部全体 35 26.7% 26.5% 25 15 5 -5 -15 -25 98 99 00 01 02 03 04 05 -20.3% 07 08 06 09年 1~5月期 (年間販売面積の伸び率、%) 70 50 35.4% 28.1% 30 21.4% 8.0% 10 東部都市 中部都市 西部都市 東北都市 -10 -30 -1.2% -18.7% -19.2% -25.5% -50 -70 -90 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09年 1~5月期 (寄与度、%) 45 35 1.4% 25 7.1% 1.7% 15 5 16.5% -5 東部都市 -15 中部都市 西部都市 東北都市 都市部 -25 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 -11.6% -3.9% -4.8% -0.1% 09年 1~5月期 (注)1.2009 年 1~5 月期は前年同期比伸び率、寄与度である。 2.1 戸当たり専有面積=100m2 と仮定し、年間販売戸数を算出した。 (資料)CEIC DATA より作成。 都市部新築住宅の販売価格を見ると、2007 年までは右肩上がりが続いていたが、2007 年 9 月に打ち出された追加的な住宅関連引き締め政策や世界同時不況の影響を受けて、2008 年下半期から、深圳市や上海市を始めとして調整段階を迎えている。 新築住宅価格の前年同月比伸び率を見ると、全体では、2008 年 1 月の 12.2%から 2009 年 5 月には▲1.3%となり、2008 年 12 月以降、下落傾向が続いている。住宅形態別に同期 間の伸び率の変化を見ると、「一般住宅」は 13.5%から▲0.9%となり、2008 年 11 月以降、 -18- マイナスの伸びが続いており、「高級住宅」は 11.5%から▲3.6%となり、2008 年 12 月から 6 か月連続で下落している。それに対し、「経済適用住宅」は 5.1%から 0.4%への鈍化に止 まった(図表 16/上)。また、個別都市に目を転じると、北京は同期間に 17.2%から▲0.6% となり、2009 年 3 月からマイナスに転じ、上海は 10.1%から▲2.3%となり、2008 年 10 月 から下落、深圳は 12.9%から▲6.9%となり、2008 年 7 月から最も早く前年同月比マイナ スとなっている(図表 16/下)。 図表 16 新築住宅価格の前年同月比伸び率の推移 (前年同月比伸び率、%) 20 15 10 5 0.4% 0 -0.9% -1.3% -5 -3.6% -10 -15 新築住宅(全体) 一般住宅 高級住宅 経済適用住宅 -20 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 05年 06年 07年 08年 09年 (前年同月比伸び率、%) 20 15 10 5 -0.6% 0 -1.3% -5 -2.3% -10 -6.9% -15 新築住宅(全体) 北京市 上海市 深圳市 -20 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 7月 9月 11月1月 3月 5月 05年 06年 07年 08年 09年 (注)「一般住宅」(普通商品房)は専用面積や販売価格等が規制されている新築住宅(「両限房」)を含 む新築住宅である。その規制内容は都市によって異なっている。 (資料)CEIC DATA 等より作成。 2008 年の住宅販売不振は、①住宅転売に対する規制強化や不動産関連資金の減少等を背 景に、投資目的の住宅需要が減少したこと、②住宅価格の調整は十分とは言えず、依然と して都市部世帯の住宅取得能力を超える水準にあり、マイホーム需要の喚起に繋がらなか ったこと、等によってもたらされたと考えられる17。 17 劉 家敏「中国都市部世帯の住宅状況とマイホーム取得能力」みずほアジア・オセアニアインサイト、2009 年 1 月 20 日。 -19- (3)住宅関連梃入れ策 不動産関連資金の伸び悩みや新築住宅の販売不振等による住宅建設投資への影響を緩和 するために、中国政府は、2008 年 10 月から、需給両面で一連の住宅関連梃入れ策を打ち出 した。需要サイドの取り組みとして、①個人の住宅取引にかかる印紙税を免除すること、 ②初めてマイホーム(建築面積が 90m2 以下の物件)を購入する個人に対し、契約税を 1.5%か ら 1%に引き下げること、③購入後 2 年以上保有した非高級住宅に対する取引税を免除する こと、④マイホーム取得者に対する住宅ローンに関しては、下限金利を基準金利の 85%か ら 70%に引き下げ、借入可能な金額を購入価格の 7 割から 8 割に引き上げること、等が挙 げられる。供給サイドの取り組みとして、①中低所得世帯に対し、政策賃貸住宅(「廉租房」、 日本の都営・県営住宅に相当する住宅)を大量に提供すること、②中堅所得世帯に対し、政 策分譲住宅(「経済適用住宅」、日本の都市公団の分譲マンションに相当する住宅)の供給拡 大を図りながら、専有面積や販売価格に規制のある「両限房」18の供給拡大を促進していくこ と、③財政資金投入19で低価格住宅への建設投資を進める一方で、比較的信用力のある不動 産開発企業に対する融資規制を緩和すること、④不動産開発プロジェクトの資本金割合を 35%から、政策住宅や一般住宅を対象とする投資は 20%に、その他は 30%に引き下げるこ と20、等が挙げられる。中国の住房和城郷建設部は、2008 年 11 月に「2011 年までの 3 年間 で廉租房 200 万戸、経済適用住宅 400 万戸、その他の低価格住宅 220 万戸を建設する」とい う投資計画を発表した。この計画では、年間 3,000 億元21(累計 9,000 億元)の新規投資が予 定されている22。 (4)今後の見通し 2009 年 1~5 月期の住宅建設投資は、前年同期比 4.4%増の 7,105 億元となり(図表 17)、 伸び率鈍化傾向が続いているが、不動産関連資金及び新築住宅販売には回復の兆しが見え てきた。まず、不動産関連資金は、2008 年後半からの金融緩和政策を背景に、「企業国内借 入」、「頭金や前払い金」、「個人ローン等その他」といった資金項目が改善に向かいつつあり、 18 中国政府は、2006 年 5 月に「住宅供給構造の調整と住宅価格安定に関する意見」(「9 部委新政」、又は「国 15 条」)を発表した。「9 部委新政」には、1 戸当たり建築面積が 90m2(専有面積は約 60 m2)以下の新築物件 を「両限房」とした。「両限房」は、住宅開発プロジェクトの全戸数の 7 割以上としなければならないと規 定された(劉 家敏「中国都市部の新築住宅市場~「調和の取れた社会」への取り組みに注目~」みずほリ ポート、2007 年 6 月 15 日)。 19 中国政府は 2008 年に政策住宅を対象とする住宅建設投資に 75 億元の中央財政資金を投入したが、2009 年にはさらに 300 億元を投入すると見られる(「建設部:中央住宅投資偏向西南」中国経営報、2008 年 12 月 1 日)。 20 「固定資産投資プロジェクトの資本金割合の調整に関する通知」国務院、2009 年 5 月 27 日。 21 その 1 割を占める 300 億元は、 中央政府の財政支出であり、中西部都市が優先的に配分されることになる。 地方政府からは、その 3~4 倍相当の資金を投入することになると見られる(「建設部:中央住房投資偏向 西南」中国経営報、2008 年 12 月 1 日、「2008 年楼市政策主基調:住房保障撑起“大旗”」上海証券報、2008 年 12 月 11 日。)。 22 「2008 年楼市政策主基調:住房保障撑起“大旗”」上海証券報、2008 年 12 月 11 日。 -20- 2009 年 1~5 月期は、前年同期比 16.1%増の 1 兆 7,523 億元となった(図表 13)。また、新 築住宅の販売面積は、住宅関連梃入れ策の下支えで、前年同期比 26.7%増の 2 億 2,704 万 m2 となり、好転が見られた(図表 15)。こうした資金環境の改善と需要の底入れにより、2009 年の都市部住宅建設投資は、前年比プラスの伸びが期待されよう23。 図表 17 都市部住宅建設投資と年伸び率 億元 25,000 2兆2,081億元 20,000 % 50 40 32.0% 22.6% 15,000 7,105億元 10,000 5,000 2,082億元 30 20 10 4.4% 0 0 98 99 00 01 02 03 04 05 06 -5,000 住宅建設投資 07 08年 09年 1~5月期 -10 年伸び率 -10,000 -20 (注)2009 年 1~5 月期は前年同期比伸び率である。 (資料)CEIC DATA 等より作成。 以上 当リポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものでは ありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、 その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに 変更されることもあります。 23 中国国内では、「2009 年の住宅建設投資は前年比 10%増になるだろう」という予測もある(「国内房地産投 資増速 09 年或降至 10%左右」世華財訊、2008 年 12 月 15 日)。 -21- 【付録】改革・開放以降の主な住宅関連政策と出来事(1980~2009 年 5 月末) 1980 年 1981 年 1982 年 1 月 16 日 1983 年 1984 年 1985 年 1986 年 1987 年 1988 年 1990 年 1991 年 5 月 19 日 1992 年 1993 年 1994 年 1995 年 1996 年 1997 年 1998 年 3 月 21 日 1999 年 2001 年 2002 年 11 月 21 日 6月 2月 3 月 11 日 5月9日 7月 9月1日 11 月 6 月 13 日 2003 年 2004年 8 月 31 日 9 月 21 日 3月 4 月 25 日 8 月 31 日 住宅の賃貸や売買の可能性が議論された。鄧小平が建築業と不動産業に関するスピーチを発表 初の不動産開発企業である「中国房屋建設開発公司」(「中房」)が設立された 一部の大都市において、土地の有料使用を試行、「住宅制度改革」は四平、常州、鄭州、沙市で 試験的に実施された。 南部沿海都市で住宅市場の整備を開始 土地の有料使用や住宅の商品化が正式に認められた 「住宅制度改革」の対象都市は 1,604 に達し、個人向けの販売面積も累計で 1,095.8 万 m2 となっ た。 試験段階の成果を踏まえ、煙台、唐山、蚌埠で総合的な改革が実施された。 一部の都市において土地使用権の譲渡が試行的に行われた。初の住宅貯蓄専業銀行(地方) が設立された(煙台住宅貯蓄銀行と蚌埠住宅貯蓄銀行)。 「土地管理法」、「住宅制度改革の実施方法」が試行され、国有銀行に住宅融資部が設けられた。 「都市部における国有土地使用権の譲渡及び流通に関する条款」が試行された。 上海で住宅積立金制度が始まった。同制度の下で、月給の 5%に相当するお金をマイホーム購入 時しか使えない「住宅積立金」として特定口座に積み立てることが義務付けられている。 住宅市場を社会主義市場経済の一部分として位置づけ、政策的に促進されるようになった 中国建設銀行は上海で個人向け住宅ローンを開始、分譲住宅を対象とした投資額は前年比 143% 増で急拡大。不動産開発企業数も 19,000 社に達した。 インフレ率が高まっている中で、引き締め政策が実施され、「都市部不動産投資に対する管理弁 法」の実施を受けて住宅投資の過熱が抑制された。 引き締め政策が続けられ、不動産投資の年伸び率は 23%まで鈍化。「土地増値税の実施に関する 規定」等が実施され、個人向け住宅ローンも政策ローンと商業ローンに分けて管理されるように なった。 「住宅積立金制度」は全国的に普及し、法整備も始まった。96 年末に「住宅積立金」による政策住 宅ローンの残高は 42 億元に達した。一方、計画経済時代から住み続けてきた福祉賃貸住宅(国 有企業等の社宅)の家賃も 92 年の 0.3 元/㎡から 96 年には 0.95 元/㎡に引き上げられた。 企業と従業員はそれぞれ給与の 6%相当を「住宅積立金」に強制的に積み立てられるようになっ た。中国人民銀行(中央銀行)は「商業銀行による住宅ローンに対する暫定管理弁法」、「個人住宅 ローンの管理弁法」等を発表。 年内に従来の福祉住宅制度を廃止し、政策住宅ローンと商業住宅ローンで構成された個人向け 住宅金融制度をスタート(「住宅制度改革」が本格的に始まった)。中国人民銀行は「住宅関連貸出 の拡大に関する通知」、「金融サービスの改善による経済発展の促進に関する指導意見」、「個人 向け住宅ローンに関する管理弁法」等を発表。 預金準備率引き下げ(13.0%から 8.0%へ) 中国人民銀行は「個人向け消費ローンに関する指導意見」を発表し、住宅ローンの最長貸出期間 を 20 年から 30 年へ緩和した。 預金準備率引き下げ(8.0%から 6.0%へ) 中国人民銀行は「住宅金融業務を規範化する通知」(195 号文件)を発表。 建設部部長が「住宅の実物配分は全国的に中止した」と発言した。 中国人民銀行は利下げを発表。住宅ローンの貸出金利も引き下げ(5 年以上は 5.58%から 5.04% へ) 国土資源部は「入札や競売方式による国有地使用権の譲渡に関する規定」を発表。 入札や競売方式による国有地使用権の譲渡を実施。 居住者向け(「内銷房」)と非居住者向け(「外銷房」)の販売価格を一本化した。 中国人民銀行は住宅関連融資(住宅建設投資を対象とする貸出+住宅ローン)に関する全国的な 調査を実施。 中国人民銀行は「住宅関連融資業務の管理強化に関する通知」(「121 号文件」または「房貸新政」) を発表。 国務院は「不動産市場の持続的な発展を促進する通知」を発表。 預金準備率引き上げ(6.0%から 7.0%へ) 国土資源部、監察部が共同で「営利を目的とする土地使用権の入札や転売に対する監督に関する 通知」(「8・31 大限」または「陽光地政」、同年 8 月 31 日から事業用土地使用権の両者協議による 譲渡を中止する)を発表。 預金準備率引き上げ(7.0%から 7.5%へ) 商業銀行の健全性に応じて「差別的預金準備率」を適用。 国土資源部が「営利を目的とする土地使用権の入札や転売に関する監督」(「8・31 大限」)を実施 -22- 9月1日 9月2日 10 月 29 日 3 月 16 日 4 月 27 日 2005年 5 月 11 日 5 月 30 日 6月1日 8月5日 10 月 1 日 1月5日 4 月 28 日 5 月 17 日 5 月 29 日 2006年 6月1日 6月5日 7月5日 7月6月 7 月 11 日 8月1日 8 月 15 日 8 月 16 日 8 月 19 日 2007年 10 月 11 月 15 日 12 月 28 日 1 月 15 日 1 月下旬 2月1日 2 月 25 日 3 月 16 日 3 月 18 日 3 月 22 日 3 月 29 日 4 月 16 日 5 月 15 日 事業用地の両者協議による使用権譲渡を禁止 銀行業監督管理委員会(銀監会)は「不動産関連貸出のリスク管理の手引き」を実施。 中国人民銀行は利上げを発表。住宅ローンの貸出金利も引き上げ(5 年以上は 5.04%から 5.31% へ) 中国人民銀行は「住宅ローンに対する優遇金利の見直し」を発表(5 年以上は 6.12%へ)。商業銀 行はその 90%(5 年以上は 5.51%へ)まで自主調整可能(注 1)。 温家宝首相は「不動産市場」をテーマとした国務院常務会議を召集し、「住宅価格を安定させる 8 大措置」(「国 8 条」)を発表。 建設部、国家発展改革委員会(発改委)、財政部、国土資源部、中国人民銀行、国家税務総局、 銀行業監督管理委員会(銀監会)は共同で「住宅価格安定への取り組みに関する意見」(「7部委新 政」)(2 年未満売却した場合、転売益を対象に営業税(5%)が徴収されることや高級住宅(戸建て や高級マンション)を対象とする土地供給を規制すること等)を発表。 国家税務総局、財政部、建設部が共同で「不動産税収管理の強化に関する通知」を発表。 「7 部委新政」を実施。 中国人民銀行は「2004 年房地産金融報告」を発表、固定金利住宅ローンを解禁。 中国人民銀行は「個人信用情報データベースの管理に関する暫定方法」を実施。 光大銀行が固定金利住宅ローンを提供(5 年固定は 6.14%)。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 6.39%へ)。商業銀行は住宅ローンの貸出 金利をその 90%(5 年以上は 5.75%へ)まで自主調整可能となった。 温家宝首相は「不動産市場」をテーマとした国務院常務会議を召集し、「住宅価格を安定させる 6 大措置」(「国 6 条」)を発表。 建設部、発改委、監察部、財政部、国土資源部、中国人民銀行、国家税務総局、統計局、銀監 会は共同で「住宅供給構造の調整と住宅価格安定に関する意見」(「9 部委新政」、又は「国 15 条」 (注 2) )を発表(5 年未満売却した場合、転売益を対象に営業税(5.5%)が徴収される)。建築面積が 90m2 以下の物件(「経済適用住宅」を含む)が開発プロジェクトの総建築面積の 70%以上でなけれ ばならないと規定されるようになった(「90/70 政策」とも呼ばれる)。 「9 部委新政」(「国 15 条」)を実施。 中国人民銀行は「住宅関連貸出政策の調整に通知」を発表(管理強化と頭金の引き上げ(専用面積 90m2 以下の物件を対象に 20%から 30%へ))。 預金準備率引き上げ(7.5%から 8.0%へ) 建設部は「165 号文件」を発表し、「90・70 規定」の実施に対する監督を強化した。 建設部、商務部、発改委、中国人民銀行、工商総局、外国為替管理局は共同で「不動産市場の外 資参入と管理のルール化に関する意見」(「171 号文件」)を発表。 住宅売却時の所得税(純収入の 20%、或いは、販売価格の 1%)の課税制度が整備された。 預金準備率引き上げ(8.0%から 8.5%へ) 銀監会は「不動産向け貸出の管理強化に関する通知」を発表。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 6.84%へ)。商業銀行は住宅ローンの貸出 金利をその 85%(5 年以上は 5.81%へ)まで自主調整可能。 返済金額と返済方式が選択できる住宅ローンの提供開始 預金準備率引き上げ(8.5%から 9.0%へ) 国家税務総局は「不動産開発業者の土地増値税の精算・管理に関する通知」を発表。 預金準備率引き上げ(9.0%から 9.5%へ) 銀監会が「不動産関連融資に対する管理強化の実施に関する通知」を発表。 不動産開発業者に対する土地増値税(税率 30~60%)の精算・徴収開始 預金準備率引き上げ(9.5%から 10%へ) 中国の全人代が私有財産の保護を明記した物権法案を可決・承認した。同法は 2007 年 10 月 1 日から施行した。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 6.84%から 7.11%へ)。但し、商業銀行は 住宅ローンの貸出金利をその 85%(5 年以上は 6.04%へ)まで自主調整可能。 商務部が「2007 年全国における外資投資に関する指導意見」を発表。外資の不動産投資はより厳 しく規制されるようになった。 建設部、国土資源部、財政部、監査署、監察部、国税総局、発改委、工商総局は共同で、「今後 1年間で不動産市場に対する管理・監督を強化し、法律に基づいて不動産開発業者等による不 動産開発、取引、仲介における違法行為を罰する」と発表した。 預金準備率引き上げ(10.0%から 10.5%へ) 預金準備率引き上げ(10.5%から 11%へ) -23- 5 月 19 日 6月5日 7 月 20 日 7 月 26 日 8 月 13 日 8 月 15 日 8 月 22 日 9 月 15 日 9 月 25 日 9 月 27 日 10 月 25 日 11 月 11 月 19 日 11 月 26 日 12 月 1 日 12 月 11 日 12 月 21 日 12 月 25 日 1 月 18 日 1 月 25 日 2 月 28 日 2008年 3 月 25 日 4 月 25 日 5 月 20 日 6 月 15 日 9 月 16 日 10 月 9 日 10 月 15 日 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 7.11%から 7.2%へ)。商業銀行が住宅ロー ンの貸出金利をその 85%(5 年以上は 6.12%へ)まで自主調整可能。預金金利も引き上げ(5 年以 上は 4.41%から 4.95%へ) 預金準備率引き上げ(11%から 11.5%へ) 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 7.38%へ)。商業銀行が住宅ローンの貸出 金利をその 85%(5 年以上は 6.27%へ)まで自主調整可能。預金金利も引き上げ(5 年以上は 4.95%から 5.22%へ) 銀行間預金口座を有する者の本人確認情報システムが運行 国務院は「都市部低所得世帯の「住宅難」の解決に関する若干意見」(24 号文件)を発表し、廉租房 を中心とする都市部低所得者層向けの政策住宅制度の整備を加速した。同文件には、「「土地出 譲金」(地方政府が土地使用権を譲渡して得られた収入)の 1 割を下限に、政策住宅を対象とする 住宅建設投資に使わなければならない」と規定される。 銀行預金の利子税を引き下げ(20%から 5%へ)。預金準備率引き上げ(11.5%から 12%へ) 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 7.56%へ)。商業銀行が住宅ローンの貸出 金利をその 85%(5 年以上は 6.426%へ)まで自主調整可能。公的積立金による住宅ローン(政策 住宅ローン)の貸出金利も引き上げ(5 年以上は 4.95%から 5.04%へ)。一方、預金金利も引き上 げられた(5 年以上は 5.22%から 5.49%へ)。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 7.83%へ)。商業銀行が住宅ローンの貸出 金利をその 85%(5 年以上は 6.6555%へ)まで自主調整可能。預金金利も引き上げ(5 年以上は 5.49%から 5.76%へ) 預金準備率引き上げ(12%から 12.5%へ) 中国人民銀行と銀監会が共同で「商業性不動産関連貸出に関する管理強化」を発表。それにより、 2 軒目を購入する個人に対する住宅ローンは購入価格の 6 割まで、住宅ローンの金利は基準貸出 金利の 1.1 倍(5 年以上は 8.613%へ)に引き上げる政策(「房貸新政」)が実施された。 預金準備率引き上げ(12.5%から 13%へ) 温家宝首相がシンガポールの政策住宅(「租屋」)を考察し、政策住宅を重視する姿勢を示した。 中国人民銀行、国土資源部、財政部が共同で「土地貯備管理弁法」を発表。 預金準備率引き上げ(13%から 13.5%へ) 外資の対中投資に対するガイドライン(新)を実施(外資の不動産投資に対する規制強化) 「廉租房」(地元低所得世帯向けの政策賃貸住宅)の保障方法」を実施。 「経済適用住宅」(地元低所得世帯向けの政策分譲住宅)の管理方法」を実施。 中国人民銀行と銀監会が共同で「商業住宅ローンの管理強化に関する補足通知」を発表(「2 軒目」 の定義を明確した)。 中国人民銀行は 5 年以下の貸出基準金利を引き上げ(5 年以上は 7.83%を維持)。預金金利も引 き上げ(5 年以上は 5.76%から 5.85%へ)。住宅ローン貸出金利も現状維持。 預金準備率引き上げ(13.5%から 14.5%へ)(07 年の 10 回目) 中国人民銀行と銀監会が共同で「経済適用住宅を開発するための貸出に関する管理弁法」を発 表。2007 年末現在、経済適用住宅を開発するための貸出残高は 508.92 億元に達した。 預金準備率引き上げ(14.5%から 15%へ)(2008 年の 1 回目) 建設部が「住宅建設企画及び住宅建設の年度計画の制定に関する指導意見」を発表。住宅建設投 資に占める「政策住宅」(廉租房、経済適用住宅)や両限房、小型の「一般住宅」の割合を明確化し た。 預金準備率引き上げ(15%から 15.5%へ)(2008 年の 2 回目) 預金準備率引き上げ(15.5%から 16%へ)(2008 年の 3 回目) 預金準備率引き上げ(16%から 16.5%へ)(2008 年の 4 回目) 預金準備率引き上げ(16.5%から 17.5%へ)(2008 年の 5 回目) 中国人民銀行は貸出基準金利を引き下げ(5 年以上は 7.83%から 7.74%へ)。商業銀行が住宅ロ ーンの貸出金利をその 85%(5 年以上は 6.579%へ)まで自主調整可能。中小金融機関の預金準備 率を 1%引き下げた(17.5%から 16.5%へ)。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き下げ(5 年以上は 7.74%から 7.47%へ)。商業銀行が住宅ロ ーンの貸出金利をその 85%(5 年以上は 6.3495%へ)まで自主調整可能。 中国人民銀行は全金融機関の預金準備率と貸出基準金利の引き下げを発表。大手金融機関の預 金準備率は 17.5%から 17%に、中小金融機関の同準備率は 16.5%から 16%へ。5 年以上の貸出 金利は 7.74%から 7.47%に引き下げられた。商業銀行が住宅ローンの貸出金利をその 85%(5 年以上は 6.3495%へ)まで自主調整可能。 -24- 10 月 22 日 10 月 27 日 10 月 30 日 11 月 12 日 11 月 27 日 12 月 3 日 12 月 5 日 12 月 17 日 12 月 21 日 12 月 23 日 12 月 25 日 12 月 29 日 1 月 12 日 2 月 21 日 2009年 3月6日 3 月 18 日 5 月 25 日 5 月 27 日 財政部国家税務総局が「不動産取引における税収政策の見直し」を発表。11 月 1 日から①個人の 住宅取引にかかる印紙税を免除する、②初めてマイホーム(建築面積が 90m2 以下の物件)を購入 する個人に対し、契約税を 1.5%から 1%に引き下げる、③購入後 2 年以上保有した非高級住宅 に対する取引税を免除する、④マイホーム取得者に対する住宅ローンに関しては、下限金利を 基準金利の 85%から 70%に引き下げ、借入可能な金額を購入価格の 7 割から 8 割に引き上げる、 等が内容として織り込まれた。 商業銀行が提供する住宅ローンの貸出金利の下限を基準金利の 0.85 倍から 0.7 倍に引き下げた (5 年以上は 6.3495%から 5.229%へ)。マイホーム購入者に対し、借入可能な金額を購入価格の 7 割から 8 割に引き上げた。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き下げ(5 年以上は 7.47%から 7.2%へ)。商業銀行が住宅ロー ンの貸出金利をその 70%(5 年以上は 5.04%へ)まで自主調整可能。 住房和城郷建設部は、「2011 年までの 3 年間で廉租房 200 万戸、経済適用住宅 400 万戸、その他 の低価格住宅 220 万戸を建設する」と発表した。 中国人民銀行は貸出及び預金基準金利を引き下げ(5 年以上の貸出金利は 7.2%から 6.12%へ)。 商業銀行が住宅ローンの貸出金利をその 70%(5 年以上は 4.284%へ)まで自主調整可能(住宅積 立金を原資とした政策住宅ローンの貸出金利は 5 年以上の場合、4.59%から 4.05%へ)。 中国人民銀行と銀監会は「廉租房建設向けの貸出に対する管理弁法」を発表。2009 年 1 月から 廉租房を対象とする住宅建設投資への貸出金利は、貸出基準金利の 9 割まで自由調整可能。 預金準備率引き下げ(大手金融機関は 17%から 16%へ、中小金融機関は 16%から 14%へ) 国務院常務会議で「不動産市場の不振とマクロ経済の減速を回避するための不動産市場の健全 発展に関する取り組み」(「国 3 条」)を発表。 国務院が「不動産市場の健全発展を促進することに関する若干意見」を発表し、「3 年間で都市部 中低所得世帯向けの政策住宅制度を整備すること」を目標とした。2009~2011 年において年間 130 万戸新築経済適用住宅を供給すると明言した。 中国人民銀行は貸出基準金利を引き下げ(5 年以上は 6.12%から 5.94%へ)。商業銀行が住宅ロ ーンの貸出金利をその 70%(5 年以上は 4.158%へ)まで自主調整可能。9 月 16 日以来の 5 回目 の利下げとなった。 預金準備率引き下げ(大手金融機関の同準備率は 16%から 15.5%へ、中小金融機関は 14%から 13.5%へ) 建設部と国家税務総局は 2006 年 5 月から実施されてきた個人による住宅転売に対する規制を見 直した。それにより、2009 年 1 月 1 日からの 1 年間に、購入後 2 年未満で売却した「一般住宅」、 購入後 2 年以降売却した「高級住宅」に対し、転売益を対象に営業税が徴収される。購入後 2 年 未満で売却した「高級住宅」に対し、売却額を対象に営業税が徴収される。 財政部と国家税務総局は「外資系企業及び外国人が保有する住宅に対する不動産税の徴収に関 する通知」を発表 住房和城郷建設部は、2009 年における住宅建設投資に対する管理強化についての重要ポイント を発表、①不動産開発における腐敗を防ぐこと、②政策住宅向けの投資資金の運営を監督する こと、等が目的であると見られる。 国家税務総局は「不動産開発業者の所得税に関する処理弁法」を発表。 中国人民銀行と銀監会は「融資構造をさらに調整し、国民経済の穏健な発展を促進することに関 する指導意見」を発表。不動産融資は、政策住宅、低価格住宅、信頼性の高い不動産開発企業に、 住宅ローンはマイホーム需要、住み替え需要にシフトする方針を示した。 国家税務総局は「個人所有不動産の贈与税に関する通知」を発表。 国務院が「固定資産投資プロジェクトの資本金比率の調整に関する通知」を発表した。それによ り、2004 年 9 月に実施された不動産開発プロジェクトの資本金比率(35%)は、政策住宅や一般 住宅を対象とする投資は 20%、その他は 30%に引き下げられた。金融機関は新たな資本金比率 に基づいて不動産関連融資を行うことになる。 (注)1.基準金利を下回る優遇金利が適用されていたが、見直しによって住宅ローンの貸出金利は 0.2 ポイ ント引き上げられただけでなく、実質的に基準金利に連動する金利下限規制の対象となった。 2.綱掛け部分は、政策的な転換が見られる時点を指す。 (資料)中国人民銀行、銀監会のホームページ、各種の資料・報道よりみずほ総研が作成。 -25- 【参考資料】 1.梁爽「2008 年房地産市場分析与 2009 年展望」『経済藍皮書』中国社会科学院、社会科学文 献出版社、2009 年 3 月。 2.「建設部通報 2006 年城鎮廉租房制度建設情況」住房和城郷建設部、2007 年 2 月 14 日。 3.「2008 年楼市政策主基調:住房保障撑起“大旗”」上海証券報、2008 年 12 月 11 日。 4.「建設部:中央住房投資偏向西南」中国経営報、2008 年 12 月 1 日。 5.「国内房地産投資増速 09 年或降至 10%左右」世華財訊、2008 年 12 月 15 日。 6.「劉洪玉:房地産開発資金半数来自銀行」深圳商報、2003 年 11 月 24 日。 7.「房地産開発資金 55%来自銀行」『2004 年中国不動産金融報告』2005 年 8 月 15 日。 8.「中華人民共和国都市国有土地使用権出譲及び転譲暫定施行条例」1990 年 5 月。 9.「嬗変:従単位購房到個人購房」21 世紀経済報道、2008 年 12 月 8 日。 10.「中国住宅改革 30 年:居者有其屋的夢想与現実」京華時報、2008 年 10 月 21 日。 11.「破解保障性住房投資難題,力促房地産市場軟着陸」21 世紀経済報道、2008 年 11 月 24 日。 12.「両会聚焦:三大報告勾勒 4 万億投資“来龍去脈”」新華網、2009 年 3 月 8 日。 13.国家統計局城市社会経済調査司「2008 年中国城市(鎮)生活与価格年鑑」中国統計出版 社、2008 年 11 月。 14.国家統計局「2006 年中国統計年鑑」中国統計出版社、2006 年 9 月。 15.国家統計局、中国指数研究院「中国房地産統計年鑑 2005~2006」経済管理出版社、2006 年 10 月。 16.劉家敏「中国都市部の新築住宅市場~引き締め政策の効果とマイホーム需要の見通し ~」みずほリポート、2005 年 8 月 3 日。 17.劉家敏「中国都市部の新築住宅市場~「調和の取れた社会」への取り組みに注目~」みず ほリポート、2007 年 6 月 15 日。 18.劉家敏「中国都市部世帯の住宅状況とマイホーム取得能力」みずほアジア・オセアニアイ ンサイト、2009 年 1 月 20 日。 -26-