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専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査

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専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査
平成 25 年度生涯学習施策に関する調査研究
「専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査」
調 査 研 究 報 告 書
平成26年3月
平成25年度生涯学習施策に関する調査研究
「専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査」調査研究報告書
骨子
・まえがき(坂田委員)
・調査研究委員会委員名簿
序 章 専修学校制度の概要と本調査の概要(小林委員、圓入室長)・・・・・・・・・・・・・・ 1
第1章 専門学校進学の社会的位置付け-マクロ統計からの考察-(朴澤委員)
・・・・・・・・23
第2章 専門学校進学率の規定要因分析-高卒・男子生徒に着目して-(島委員)・・・・・・・36
第3章 専修学校調査からみた学生に対する経済的支援の現状(浦田委員、吉田委員)・・・・・45
第4章 専門学校生調査からみた学生の経済的支援の現状(岩田委員)・・・・・・・・・・・・90
第5章 専門学校における学生に対する経済的支援の実態-大学昼間部との比較を中心に-(藤森委員)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124
第6章 私立専門学校生の家庭給付収入-出身地による差の分析-(朴澤委員)
・・・・・・・141
第7章 私立専門学校生の経済状況の変化-経済的ショックを挟んだH19年・H21年調査の比較-
(中野氏、日下田委員)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158
第8章 学校・学生ヒアリング調査からの知見-経済的に困難な学生、社会人学生の現状-(谷田川委
員)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 181
第9章 保護者調査から(専修学校に係るポイント)
(濱中委員)
・・・・・・・・・・・・・ 197
第10章 都道府県調査からみた専修学校生への経済的支援(圓入室長、船木)
・・・・・・・・ 217
終
章 調査のまとめと政策的インプリケーション(小林委員)
・・・・・・・・・・・・・・ 238
付
録 参考データ
※(○○委員)は、主な執筆担当者
はじめに
本研究は,平成 25 年度文部科学省委託事業「専修学校における生徒・学生支援等に
対する基礎調査」の成果の報告書である。
本研究の目的は,従来高等教育の中で、実証的な調査や分析が行われていなかった専
修学校について、初めて本格的な調査にもとづく検討を行い、今後の在り方を検討する
ことにある。このために、既存調査統計の分析、マクロ統計分析、都道府県調査、専門
学校調査、専門学校生調査、保護者調査と様々な調査と分析を実施し、多様な側面から
専修学校の実態と課題を明らかにすることに努めた。こうした作業を積み重ねる中では
じめて,専修学校の在り方について有益な示唆が得られるであろうというのが私たちの
基本的な考え方である。
本報告書は,我が国における高等教育研究者による実証的な共同研究の成果である。
この問題に関する多くの専門家に参加していただき,報告書を充実したものにできた。
我が国では初めての本格的な専修学校に関する研究であると自負している。しかし,高
等教育改革のテンポはかつてないほど急速で,思わぬミスや誤解があるかもしれない。
忌たんのない批判をいただければ幸いである。
本報告書の作成までには,文部科学省や調査検討委員会に参加していただいた委員な
どの関係者だけでなく,とりわけ都道府県調査や専修学校実地調査では,関係者の方に
多くのサポートをしていただいた。この他にも謝辞を述べなければならない方々は,い
ちいちあげることができないほど多い。改めて感謝を申し上げる。
本報告書が,我が国の奨学制度を考える方々に何らかのお役に立つことができれば,
私たちにとって望外の喜びである。
2014 年3月
東京大学政策ビジョン研究センター・教授
坂田一郎
専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査委員会
委員名簿
※敬称略、五十音順
赤林
英夫
慶応義塾大学経済学部教授
今後
経史
学校法人敬心学園法人本部総務部長兼法人本部長補佐
岩田
弘三
武蔵野大学人間科学部教授
浦田
広朗
名城大学大学学校づくり研究科教授
王
傑
日本学術振興会特別研究員
小林
雅之
東京大学大学総合教育研究センター教授
坂田
一郎
東京大学政策ビジョン研究センター教授
島
一則
広島大学高等教育研究開発センター准教授
白川
優治
千葉大学普遍教育センター准教授
谷江
徹司
独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業部奨学総務課長
濱中
義隆
国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官
日下田
岳史
日本学術振興会特別研究員
藤森
宏明
北海道教育大学旭川校准教授
朴澤
泰男
一橋大学大学教育研究開発センター講師
谷田川
ルミ
芝浦工業大学工学部准教授
吉田
香奈
広島大学教養教育本部准教授
劉
文君
東洋大学IR室准教授、
東京大学政策ビジョン研究センターシニアリサーチャー
(オブザーバ)
圓入
由美
文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室長
春田
鳩麿
文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室
専修学校第一係長
船木
茂人
文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課生涯学習推進係長
蒲原
耕平
独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業部奨学総務課専門員
堀崎
理恵子
独立行政法人日本学生支援機構奨学金事業部奨学総務課総務係長
菅野
国弘
一般財団法人職業教育・キャリア教育財団事務局次長補佐
序章 専修学校制度の概要と本調査の概要
1. 専修学校基礎調査の目的
専修学校は、昭和51年に新たな教育機関として制度化され、社会の変化に即応した実践的
な職業教育により中核的専門人材を輩出する教育機関として大きな役割を果たしている。社会
の変化に対応した実践的な職業教育を行い、専門的な人材の養成に寄与してきた。しかし、制
度発足から今日まで、専修学校に関する調査や統計は、その他の教育機関と比較して十分に整
備されているとは言い難い。一方で、経済的に厳しい専門学校生ほど授業料等への支出の大半
は貸与奨学金に依存しており、また、本調査の結果によると経済的な理由により中退する者の
存在や、親の年収が低いほど、大学より専門学校へ進学する傾向にあることが示されている。
このような状況の中で専修学校生に対し「第2期教育振興基本計画」(平成 25 年6月 14 日
閣議決定)においては、意欲と能力のある学生等が経済的理由により修学を断念することなく安
心して学べるよう、専門学校生を含め、授業料減免や奨学金などによる修学支援を推進するこ
となどについて提言されている。このように、専修学校の役割が増す中で、専修学校生の修学
や学生生活に関する様々な課題が指摘されているが、それらの状況については、十分に把握さ
れていないのが現状である。
このような現状に鑑み、本調査研究の目的は、高等教育システムの中での短期高等教育とり
わけ専修学校専門課程(以下、専門学校)の役割を実証的に把握することにより、専修学校制
度の在り方について、基本的な知見を提供することにある。これまで、短期高等教育とりわけ
専門学校については、実証的な研究は少なく、その実態についても十分な把握はなされていな
かった。本調査はこうした現状に鑑み、様々な角度から、専修学校の実態を明らかにすること
を目指すものである。
2. 専修学校基礎調査のアプローチと各調査の概略
このため、本調査では次のようなアプローチによって専修学校の実態を明らかにする。すな
わち、専門学校生及び高等専修学校生並びに専門学校への進学を希望する高校生・高等専修学
校生等を対象に、その生活費とこれを支える家計の状況、学習とアルバイトの状況等について
の実態調査を行うとともに都道府県と専修学校等を対象に、それぞれが実施している経済的支
援策等についての実態調査を行う。
調査に当たっては、既存調査を活用し分析するとともに新たに調査を行い得られたデータを
分析し、経済的支援策の企画及び立案等の参考とする。
これらの調査研究の知見に基づき、専門学校に対する国と地方の役割を明らかにし、専門学
校生に対する経済的支援の在り方を検討する基礎的なエビデンスを提供することによって、専
門学校に対する国の政策課題を提示することが本調査研究の最終的な目的である。
具体的には、本調査研究は次のような順で、以上の目的を達成しようとしている。
-1-
(1) 専門学校生に関する学生生活等に係る既存調査の分析
(2) 都道府県に対するヒアリング及びアンケート調査
(3) 専修学校に対するヒアリング及びアンケート調査
(4) 専門学校生に対するヒアリング及びアンケート調査
(5) 保護者に対するアンケート調査
以下、それぞれについて概略を述べる。
(1)既存調査統計分析
①都道府県レベル
都道府県別専修学校進学率・就職率・中退率・経済的支援とそれに関連する要因とし
て都道府県の財政力・県民所得・大学進学率・高校卒業者の地域間移動などを収集した
データベースを作成し、マクロ統計分析によって、マクロなレベルでの専修学校の現状
及び学生への経済的支援と、進学率・中退率などを規定する要因を明らかにする。これ
により、地域の高等教育機関の配置と進学状況の関連も明らかにするとともに、地域間
の差異の要因等の関係を明らかにする。
②教育機関レベル
文部科学省「専修学校の実態把握に関する調査」
「専修学校の生徒納付金等に関する調
査」「高等専修学校における高等学校等就学支援金制度の政策効果に係る調査」などの既
存の調査をデータベース化し分析する。この分析により、教育機関レベルで学生への経
済的支援(給付奨学金、授業料減免、貸与奨学金など)の効果と、学生納付金と専門分
野、中退などの関連を明らかにする。
日本学生支援機構「奨学事業に関する実態調査※1」及び「学内奨学金・授業料減免
制度・徴収猶予制度に関する調査」の平成 22 年度版の教育機関等のデータについて、
上記のデータベースに加える。なお、同調査には、教育機関以外に都道府県や企業等が
実施している学生への経済的支援も含まれている。
③個人レベル
日本学生支援機構「学生生活に関する基礎調査【専修学校(専門課程)
】※2」等の再
分析によって、学生生活と奨学金などの学生支援の関連を明らかにする。特に学生支援
によって家計の経済的負担の軽減や学修時間の増加あるいはアルバイトの減少などの効
果がどの程度あるかを計測する。また、
「高校卒業生保護者調査」によって、経済的理由
で進学を断念したり、
大学から専修学校などへ進路変更した学生数を推計する。
さらに、
給付奨学金があれば、進学する可能性のある学生数を推計する。また、日本学生支援機
構の「延滞者調査」などのデータに基づき、奨学金の未返還・猶予等の状況とその要因
(低所得、失業、多重債務など)を明らかにする。
-2-
(各調査の概要)
※1「平成 22 年度奨学事業に関する実態調査」
(独立行政法人日本学生支援機構)
→学校(専修学校を含む)
、都道府県・市区町村、公益法人、営利法人等約 4 千団体
が実施する奨学金事業の制度数、奨学生数及び奨学金事業額等を調査
※2「平成 21 年度学生生活に関する基礎調査【専修学校(専門課程)
】
」
(独立行政法人日本学生支援機構)
→専門学校生約 2.3 万人に対して、奨学金の受給状況、学生生活費、アルバイトの従
事状況、家庭の経済状況等を調査
(2)都道府県に対するヒアリング及びアンケート調査
上記の分析結果をふまえ、都道府県における学生への経済的支援の現状と課題につい
て、専修学校実地ヒアリング調査を実施する都道府県を対象にヒアリングを行う。その
際、検討委員会委員又は文部科学省担当官が同行する。ヒアリングの内容は、都道府県
の専修学校生に対する授業料免除など経済的支援策の現状と課題及び今後の対応につい
て、全般的状況や個別の専修学校に対する具体的なケースや経済的支援にかかわる情報
提供・相談の実施状況についても調査に含める。とりわけ、国の地方交付税措置が拡充
されたことなど国の支援と都道府県の高等専修学校生に対する支援の状況について調査
することにより、どのような効果があったかを明らかにする。これをふまえ、全都道府
県に対するアンケート調査を実施する。調査内容は、都道府県の専修学校生に対する授
業料免除など経済的支援策の現状と課題及び今後の対応や専修学校側の対応及び専修学
校生に対する経済的支援策に関する評価のほか、とりわけ、上記の国の地方交付税措置
が拡充されたことなど国の支援と都道府県の高等専修学校生に対する支援の状況につい
てと、経済的支援にかかわる情報提供・相談の実施状況について調査する。これらの調
査結果から、国と地方の専修学校に対する学生支援の役割を明らかにする。
(3)専修学校に対する実地ヒアリング調査及びアンケート調査
1.専修学校への実地ヒアリング調査
上記の分析結果をふまえ、
専修学校への実地ヒアリング調査を下記のように実施した。
対象校は、設置者、地域、規模、専門分野などにできるだけ多様性をもたせた。設置者
については、公立と私立。地域は、北海道、岩手、宮城、福島、新潟、東京、神奈川、
愛知、大阪、京都、兵庫、広島、岡山、福岡、鹿児島、沖縄、規模は、大規模、中規模、
小規模、専門分野については、医療保健系、工業系、家政系など、あわせて 27 校を選
定し、実地調査を行った。調査に当たっては、半構造化インタビューによって、学校の概
要、学生生活、経済支援の状況、中退への取組などについて、学校側からだけではなく、
学生のヒアリングも実施し、その際、検討委員会委員と文部科学省担当官が同行した。
-3-
調査期間 2013 年 10 月下旬から 11 月中旬
調査者 各2〜3名+文部科学省担当者
注:実地調査と文部科学省でのヒアリング調査を組み合わせる。
2.専修学校に対するアンケート調査
全専修学校に対するアンケート調査を文部科学省の協力を得て実施する。
調査内容は、
上記の既存調査ではデータがない項目や、ヒアリングで調査する必要があると認められ
た項目で、学生に対する経済的支援の状況とりわけ給付奨学金や貸与奨学金などの受給
状況や、経済的困難な者に対する取組、中退防止への取組、卒業後の状況、就職支援、
学生への情報提供・相談の実施状況などの支援体制について調査を実施する。
(4)専修学校生に対するヒアリング及びアンケート調査
文部科学省と専修学校の協力を得て、専修学校生に関するヒアリング調査及びアンケ
ート調査を実施することとし、ヒアリングの実施に当たっては、検討委員会委員又は文
部科学省担当官が同行する。
専修学校実地調査時に専修学校生に対する半構造化インタビューによるヒアリング調
査を実施し、これにもとづき、専修学校への進学の動機、学生生活、経済支援の状況、
将来の進路希望(退学の可能性などを含む)、情報提供、学校の支援体制の評価などの項
目についてアンケート調査する。
調査対象は、
学校調査と同じ調査対象校の学生として、
設置者については、公立と私立。地域は、北海道、岩手、宮城、福島、新潟、東京、神
奈川、愛知、大阪、京都、兵庫、広島、岡山、福岡、鹿児島、沖縄、規模は、大規模、
中規模、小規模、専門分野については、医療保健系、工業系、家政系など、あわせて 27
校を選定し、実地調査及びアンケート調査を行った。これによって、直接学生への経済的
支援の学生生活や進路選択に及ぼす効果、さらに、学生支援の情報提供が奨学金の返還
に及ぼす効果を分析し、課題を明らかにする。とりわけ既存調査では十分に把握されて
いない高等専修学校及び社会人学生に関する調査を実施する。また、中学生のときの進
路や経済的支援に関する学校などからの情報提供や、高校生のときの進路や経済的支援
に関する学校からの情報提供や日本学生支援機構奨学金の予約採用の状況なども合わせ
て調査することにより、中学校及び高等学校における進路や経済的支援に関する情報提
供の進路選択に及ぼす影響を分析する。
(5)専修学校生の保護者に対する調査
専修学校生を持つ保護者に対するウェブモニター調査を実施する。調査内容は、専修
学校への進路選択の評価、専修学校に対する評価、教育費の負担、子供の将来について
の希望など。とりわけ教育費の負担について、負担額、財源(保護者負担、奨学金等、
ローン、子供のアルバイトなど)
、負担感、学生への経済的支援の必要性などを調査する
ことにより、学生への経済的支援の在り方に関する知見を得る。また、子供が中学生の
-4-
ときの進路や経済的支援に関する学校などからの情報提供や、高校生のときの進路や経
済的支援に関する学校からの情報提供や日本学生支援機構奨学金の予約採用の状況など
も合わせて調査することにより、中学校及び高等学校における進路や経済的支援に関す
る情報提供の進路選択に及ぼす影響を分析する。
3. 調査結果の分析と考察及び調査報告書の構成
既存調査及び新規調査に対して分析を加え、専修学校生に対する経済支援策の今後の展望に
ついて、以下の「4.短期高等教育としての専門学校」に挙げるような観点から考察を行い、最
終成果報告書として本報告書にまとめた。
本報告書の構成は以下の通りである。
第1章 専門学校進学の社会的位置付け-マクロ統計からの考察-(朴澤委員)
第2章 専門学校進学率の規定要因分析-高卒・男子生徒に着目して-(島委員)
第3章 専修学校調査からみた学生に対する経済的支援の現状(浦田委員、吉田委員)
第4章 専門学校生調査からみた学生の経済的支援の現状(岩田委員)
第5章 専門学校における学生に対する経済的支援の実態-大学昼間部との比較を中心に-
(藤森委員)
第6章 私立専門学校生の家庭給付収入-出身地による差の分析-(朴澤委員)
第7章 私立専門学校生の経済状況の変化-経済的ショックを挟んだH19年・H21年調査
の比較-(中野氏、日下田委員)
第8章 学校・学生ヒアリング調査からの知見-経済的に困難な学生、社会人学生の現状-(谷
田川委員)
第9章 保護者調査から(専修学校に係るポイント)
(濱中委員)
第10章 都道府県調査からみた専修学校生への経済的支援(圓入室長、船木)
終 章 調査のまとめと政策的インプリケーション(小林委員)
以下、序章では専修学校の特徴を明らかにするために、システムレベルで歴史的な経緯も含
め、マクロに専修学校を検討する。
4. 短期高等教育としての専門学校
高等教育システムの分化と統合
専修学校の特性を検討するために、高等教育システムの中での短期高等教育とりわけ専門学
校の位置づけについて明らかにしておきたい。
おおまかにみれば、
高等教育システムは統合と分化を繰り返しながら発展してきたと言える。
すなわち統合したシステムに対して、多様性が求められ分化を繰り返してきた。例えば、アメ
リカ高等教育の特徴は、その多様性にあるが、3つに分化したカリフォルニアシステム(マスタ
-5-
ープラン)は、我が国でも広く紹介されてきた。また、イギリスにおいても 1992 年には 2 元シ
ステムを大学へと一元的に統合した。
我が国の場合にも統合から分化・機能別分化・多様性へ(高等教育機関の昇格)と歴史は繰
り返されてきた。短期高等教育に着目して高等教育システムの分化と高等教育システムの再編
統合の戦後の歴史を見ると以下のようなシステムの変動が重要である。
1962 年 高等専門学校制度の発足
1964 年 短期大学制度恒久化
1976 年 専修学校制度の発足
1998 年 大学審議会 21 世紀答申
2005 年 中教審将来像答申(機能別分化の提唱)
2011 年 中教審新しい短期高等教育機関の構想
短期高等教育の役割と特徴
短期高等教育は、全く異なる2つの役割を持っている。このことが短期高等教育の大きな特
徴であるが、短期高等教育の難しさの原因ともなっている。その2つの役割とは以下の通りで
ある。
(1) 職業教育、准専門職教育、職業資格取得
(2) 編入学
こうした2つの異なる役割を持つ短期高等教育は次のような特徴をもっている。
(1) 地域に密着した性格
(2) 相対的に低廉な学費(短期、自宅通学可能)
(3) 設置、新増設、改廃の容易さ
(4) 質保証の不十分さ
(5) 教員資格の曖昧さ
各国の短期高等教育
以上の短期高等教育の特徴はほぼ各国で共通であるが、国ごとに特徴と相違が見られる。ま
ず、アメリカの場合には短期高等教育の多くは公立のコミュニティ・カレッジによって担われ
ている。私立のジュニア・カレッジと呼ばれる短期高等教育機関は極めて少ない。ただし、プ
ロプラエタリースクールと呼ばれる営利高等教育機関も多く存在する。また、イギリスの場合
にも、公立の継続教育カレッジや高等教育カレッジの一部が高等教育機関となっている。
これに対して、我が国の場合には、ほとんどが公立の高等専門学校と、逆にほとんどが私立
の短期大学と専門学校の3種類の短期高等教育機関が並立している。英米と比較して我が国の
特徴は私立が多いこと、
編入学が少ないこと、
3種類の教育機関の並立という点があげられる。
-6-
5. 専修学校の概要
専修学校制度
先にふれたように短期高等教育は2つの異なる役割を持っている。我が国の専修学校につい
ていえば、
「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること(学校教
育法第 124 条)
」を目的とする教育施設と規定されている。この規定にもとづき、専門学校は、
実践的な職業教育を実施して、多岐にわたる分野の専門人材を養成している。
1976 年に専修学校制度ができる以前の学校制度は、小・中学校、高等学校、大学など、学校
教育法第1条に定める「学校」
(いわゆる1条校)の制度と、
「学校」の教育に類する教育を行
う各種学校の制度からなっていた。入学資格、修業年限、教育課程、教員資格などいろいろな
面で体系立った1条校の制度とは異なり、各種学校には、様々な目的・形態の教育施設が包含
され、それらがすべて一括の制度で取り扱われていた。このような状況は、各種の教育施設に
対する振興策や、卒業生の処遇などに適切な措置を講ずる上で障害となっていたため、各種学
校の制度はそのままに、さらに「専修学校」の制度を設け、学校教育法の1条に掲げる学校以
外の教育施設で一定の要件に当てはまるものをこれに位置付けたものである。
この学校教育法第 124 条に規定されている教育機関であり、その他の1条校とは異なるとい
う点が専修学校の大きな特徴であり、その性格や私学助成や学生支援についても、1 条校との
相違ということがしばしば問題とされてきた。
専修学校は、高等課程(高等専修学校)
・専門課程(専門学校)
・一般課程の 3 種類の課程か
らなり、専門課程を持つ学校を専門学校と称する。これに対して高等課程を置く専修学校は高
等専修学校と称する。
専修学校の学校設置基準では修業年限が1年以上、年間の授業時間が 800 時間以上を開設す
ることが求められており、専修学校の目的に応じた8分野の専攻ごとに基本組織を置き、多く
の学校が職業に関連した学科を中心とした教育活動を行っている。既にふれたように、私立が
9割以上で、学校数でみると国立が 0.3%、公立が 6.1%、私立が 93.6%、学生数では私立学校
に 96%の学生生徒が在籍している。
専修学校は、授業時数・教員数や施設・設備などについて一定の基準を満たしている場合に、
所轄庁である都道府県の認可を受けて設置される。専修学校の設置基準等は、学校教育法1条
に位置づけられる大学等に比べ緩やかなものとなっており、より柔軟な設置が可能となってい
る。このことは、時代の変化に対応した迅速な学科やコースの設置改廃やカリキュラム編成の
柔軟さを可能にする反面、質保証に課題を残している。
多様な入学者の受入れ
専修学校は、1976 年の創設以来、我が国における職業教育の中核的機関として発展してきて
おり、2013 年5月現在、その学校数は 33,216 校、生徒数は約 66 万人を数える。とりわけ、
専修学校の3つの課程のうち、最も多くを占める専門課程(専門学校)については、高等学校
卒業後の進学先として、大学に次ぎ約2割を占め、2番目に大きな進路の受皿となっている。
高等課程における生徒の状況は、分野ごとにも傾向は異なるが、全体として、高校中退者や
-7-
高校既卒者などの幅広い年齢層での受入れが進み、2009 年度の高等課程の入学者は、中学校卒
業直後に入学した者は全体の半数以下(45.8%)となっている。
また、分野別にみると、医療(主に准看護師)・衛生(主に理容・美容、調理・製菓)分野の入学生
は、高校既卒者が中心である。また、高校に比べ経済的に困窮者や、不登校経験者、発達障が
いのある生徒の割合が高いとも言われる。
専門課程における学生の状況は、少子化が進む中、長期的な減少傾向が続いており、最近
の入学者数(2010 年度は 31 万8千人)は、最も多かった時期(1992 年度の 47 万1千人)に
比べれば、約3分の2に減少している。専修学校制度の創設以降、18 歳人口がピークを迎えた
1992 年度までは、入学者数もほぼ一貫して増加してきたが、1993 年度以降は減少に転じた。
その後、経済状況が厳しさを増した 2000 年度から 2003 年度にかけては一時的にその数を伸ば
したが、高卒求人倍率が底を打った 2004 年度には再びマイナスに転じ、2009 年度まで毎年減
少を続け 29 万8千人にまで落ち込んだ(6年間で約 27%の減少)
。
高等学校卒業後の専門学校への進学率を見ても、2003 年度に 22.2%にまで達した現役進学
率はその後急激に低下し、2009 年度には 14.7%にまで下がったが(7.5 ポイントの低下)
、2010
年度には6年ぶりに入学者数が増加に転じ、
2013年度には約1万人増の19万人、
進学率は17%
となった。
今回の入学者増については、2000 年度から 2003 年度間の増加と同様、若年雇用状況の悪化
を背景に、就職機会に恵まれない若者が、実践的な職業技能を学ぶ機会を求めて専修学校に入
学してきている状況がうかがわれる。
-8-
図0− 1 高等教育進学者の推移
図10 高等学校の卒業者数,進学率,就職率の推移
( 千人)
(大学等進学率)平成25
2000
( %)
60
53.2%
大学等進学率
卒
1500
50
卒業者数( 女)
(就職率)平成25
17.0%
進
40
学
業
就職率
1000
30
者
専修学校(専門課程)進学率
数
20
職
率
500
(専修学校専門課程進学率)
卒業者数( 男)
0
率
・
就
平成25
10
17.0%
0
平元
4
7
10
13
16
19
22
25
25年3月卒業
(出典)文部科学省「学校基本調査」
なお、以上のような進学動向により、図0−1のように進学率も近年微増している。
図0− 2 分野別専門学校生徒数の推移
-9-
専門分野別に専修学校生徒数の推移を見ると、図0−2のように、医療系や衛生系は増加傾
向にあり、工業や商業実務や教育・社会福祉などは減少傾向にあるが、近年の推移は安定して
いる。これは、専修学校が学校学科の新増設や改廃が比較的容易で、産業構造の変化や労働市
場の変化に応じて、柔軟に対応してきたためと見られる。
図0− 3 就職率の推移
こうした専修学校の性格のため、専修学校卒業生の就職率は図0−3のように、大卒者などに
比べて高くなっている。
また、専修学校は資格に対応した教育を行っており、実際に資格を取得する学生が多いこと
は図0−4にも示されている。看護師の 64%、介護福祉士の 62%、自動車整備士の 88%、美
容師の 85%、理学療法士の 67%を専修学校出身者が占めている(詳細は巻末参考データを参
照)
。
- 10 -
図0− 4 資格取得者に占める専修学校生の割合
このように、産業構造の変化、労働力のミスマッチ、企業内教育訓練の縮小、終身雇用から
多様な雇用形態への移行など雇用慣行の変化などが進む中、高等学校卒業後の一つの選択肢と
して多様な学生生徒を受け入れる実践的かつ専門的な職業教育機関としての役割のみならず、
社会人の学び直しへのニーズに応える中核的な職業教育機関としてより一層の社会的役割を果
たすことが期待されている。
なお、高等専修学校入学者のうち中卒後直ちに入学した者は 46%となっている。
地域における職業人材養成の中核的な教育機関
全国の専門学校の学生のうち 32.0%(17.7 万人/55.3 万人)は首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・
神奈川県)の学校に、16.4%(9.1 万人/55.3 万人)が近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県)の学校に在学
しているが、大学では、この割合が首都圏で 40.6%(115.6 万人/284.6 万人)、近畿圏で 17.9%
(50.9 万人/284.6 万人)となっており(2009 年度「学校基本調査」
)
、大学に比較すれば、専門学
校はなお、地方の教育資源としての性格をより強く残している傾向がうかがえる。
6. 入学者の特性と卒業後の状況
専修学校が地域に密着した性格を持っていることは様々な角度からみることができる。ここ
では表0−1のように、進学率と卒業生の地元就職率をみることにする。専修学校進学率の高
い北海道と6県では、専修学校卒業生の県内就職率も高くなっている。大学の地元進学率、就
- 11 -
職率と比較しても専門学校に地元から進学し、就職する傾向は強いことがうかがえる。専門学
校の学生については、4年制大学等に比べ、両親の年収の低い家庭出身の学生が多いことから1、
経済的要因や地域における高等教育機関の数にもよるところが考えられるが、実践的な職業教
育の短期高等教育機関に対するニーズは、地方に所在する専門学校は、地元で進学したい(更
に可能なら、卒業後も地元で就職したい)と考える若者たちにとっての選択肢として重要な位
置を占めていると言える。このように、専修学校が地元に密着している教育機関であることが
示されている。
表0− 1 専修学校の進学率と卒業生の地元就職率
〈専修学校〉
就職者数(人)
都道府県
進学率
北海道
岩手
新潟
島根
高知
鹿児島
沖縄
22.1%
21.4%
25.6%
21.7%
22.0%
20.3%
24.9%
就職希望者数
(人)
うち都道府県内
就職者数
総数
8,506
2,209
4,537
588
1,064
1,825
3,342
就職率
7,768
911
4,231
558
941
1,642
2,862
6,601
544
3,233
380
775
1,255
2,388
うち都道府県外
就職者数
都道府県内就職構 都道府県外就職構
成比
成比
全体
1,167
367
998
178
166
387
474
91.3%
41.2%
93.3%
94.9%
88.4%
90.0%
85.6%
85.0%
59.7%
76.4%
68.1%
82.4%
76.4%
83.4%
15.0%
40.3%
23.6%
31.9%
17.6%
23.6%
16.6%
〈大学〉
就職者数(人)
都道府県
進学率
北海道
岩手
新潟
島根
高知
鹿児島
沖縄
34.5%
34.4%
41.4%
37.3%
36.5%
30.5%
32.6%
就職希望者数
(人)
12,221
1,632
3,483
655
1,093
1,996
2,565
総数
10,521
753
3,174
561
959
1,723
1,690
就職率
うち都道府県内
就職者数
6,914
233
1,818
168
291
833
1,241
うち都道府県外
就職者数
3,611
520
1,356
393
688
890
449
都道府県内就職構 都道府県外就職構
成比
成比
全体
86.1%
46.1%
91.1%
85.6%
87.7%
86.3%
65.9%
65.7%
30.9%
57.3%
29.9%
30.3%
48.3%
73.4%
34.3%
69.1%
42.7%
70.1%
71.7%
51.7%
26.6%
(出典:各道県労働局調査)
7. 中退の問題
以上のように教育機関として地域に貢献し様々な人材を育成している専修学校であるが、専
修学校の抱える課題も小さくない。そのひとつは中退問題である。表0−2 のように、中退者の
数はわずかではあるが、増加傾向にある。その大きな理由の一つは、経済的理由で全体の約 1
割を占めている。学生への経済的支援が十分になされれば、中退の防止に効果があると考えら
れる。
1高校生の進路と親の年収の関連を見た場合、4年制大学については、両親の年収が上がるほど進学率も上がるのに対し、専門学校
についてはその逆に、両親の年収が上がると進学率は下がる傾向となっている [東京大学大学経営・政策研究センター「高校生の進
路追跡調査 第1次報告」]。
(参考資料 p17)この点は、本報告書で詳細に検証する。
- 12 -
表0− 2 原因別専修学校生の中退状況
[単位: 人]
平成2 2 年度末
平成2 4 年度末
(
(
割
合
(
一
私般
立課
程
合
計
%
)
)
一
公般
立課
程
)
専
私門
立課
程
)
専
公門
立課
程
)
%
)
)
合
計
(
割
合
(
一
私般
立課
程
)
一
公般
立課
程
(
(
(
専
私門
立課
程
)
専
公門
立課
程
)
%
)
)
合
計
(
割
合
(
一
私般
立課
程
(
(
一
公般
立課
程
)
)
専
私門
立課
程
)
専
公門
立課
程
(
(
(
区 分
平成2 3 年度末
①学業不振
174
5,063
0
18
5,255
18.4
173
5,552
0
18
5,743
19.1
131
5,696
0
14
5,841
②学校生活不適応
145
3,527
1
73
3,746
13.1
145
3,565
0
49
3,759
12.5
111
3,747
1
50
3,909
12.8
進路変更( 合計)
353
9,383
2
147
9,885
34.5
357
10,030
1
176
10,564
35.1
453
10,645
3
113
11,214
36.7
(14.9)
19.1
(a)就職
122
3,654
1
21
3,798
(13.3)
106
3,919
1
23
4,049
(13.5)
135
4,402
0
17
4,554
(b)転学
36
1,471
0
10
1,517
(5.3)
44
1,613
0
14
1,671
(5.6)
47
1,791
0
25
1,863
(6.1)
195
4,258
1
116
4,570
(16.0)
207
4,498
0
139
4,844
(16.1)
271
4,452
3
71
4,797
(15.7)
(c )その他
⑥病気・ けが・ 死亡
112
3,179
1
35
3,327
11.6
104
3,308
1
42
3,455
11.5
98
3,443
0
36
3,577
11.7
30
3,309
0
22
3,361
11.8
23
3,421
0
24
3,468
11.6
35
3,273
0
27
3,335
11.0
⑧海外留学
2
67
0
1
70
0.3
0
85
0
1
86
0.3
1
70
0
1
72
0.3
⑨その他*
92
2,889
0
26
3,007
10.5
89
2,858
0
32
2,979
9.9
66
2,553
1
25
2,645
8.7
957
27,417
4
322
28,700
100
942
28,819
2
342
30,105
100
895
29,427
5
266
30,593
100
⑦経済的理由
⑩合計
*各年年度末の状況について記載している。
*割合は、小数点第2位切り上げ。そのため、各項目の割合の合計が100とならない場合がある。
専修学校教育振興室調べ(専修学校専門課程・一般課程の生徒納付金等に関する調査及び私立専修
学校における平成 26 年度以降実施予定の施設整備に係る調査)
8. 社会人学生
職業を有しながら専修学校に入学する者の数は、ここ数年横ばいとなっているが、大学等既
卒又は大学等の中退者等も含めた社会人の学生数は 2006 年度から 2012 年度に 2.3 倍増の 6.9
万人、そのうち、附帯事業として行う3~6か月の短期プログラムを受講する者は 1.9 万人か
ら 4.8 万人となるなど社会人学生の増加傾向が続いている。また、大学等を卒業した後に専門
学校に入学した学生も約2万人、在学生の年齢層も 20~29 歳が 53.2%、30~39 歳が 26.0%、
40〜49 歳が 8.3%を占めるなど年齢層も幅広く、就業やキャリアアップ等の明確な目的をもっ
た多様な学生が学ぶ教育機関の役割を担っているといえる。
社会人学生の中には、公共職業訓練の指定講座として専門学校で学ぶ者が、5万人(公共職
業訓練全体で専門学校が受託する割合 11%)
、在籍するなど、離職者や、働きながらキャリア
アップやキャリア転換等を目的とした学修を行う者を受け入れている。
今後は、
公共職業訓練、
求職者支援訓練や、教育訓練給付制度など非正規雇用労働者を含めた雇用保険制度に基づく支
援等が見直され2、雇用政策上の観点からも、専門学校において実践的かつ専門的な就労やキャ
リアアップに関するプログラムで学ぶ学生の受皿となることが期待されている。
このように、高等教育機関とりわけ大学学士課程における社会人学生については、
「社会人の
学び直し」
などの重要な政策の対象であるが、
その数はあまり大きく伸びているとは言えない。
これに対して、図0−5のように、専修学校における社会人学生は大幅に増加している。特に
専門課程の増加が著しい。
2
厚労省労働政策審議会の報告(平成 25 年 12 月)抜粋
- 13 -
図0− 5 社会人学生数の推移(専修学校)
140,000
H16
H17
120,000
H18
H19
H20
H21
100,000
H22
H23
H24
総数
一般課程 高等課程 専門課程 附帯事業
附帯事業
59,007
1,029
3,509
31,947
22,522
56,812
857
2,666
28,663
23,294
専門課程
51,364
780
3,340
25,716
19,365
77,250
1,702
4,755
42,402
28,391
高等課程
75,943
935
4,788
43,980
26,240
一般課程
81,816
3,203
5,961
51,024
21,628
101,362
1,268
7,638
58,661
33,795
107,854
1,595
7,570
60,509
38,180
120,572
968
8,703
62,275
48,626
80,000
60,000
59,007
22,522
40,000
20,000
31,947
0
3,509
1,029
H16
120,572 (内訳)
101,362
75943
107,854
公共職業訓練
8,821人
48,626
77,250
75,943
28,391
26,240
81,816
33,795
2,943人
38,180
企業からの委託
1,141人
21,628
56,812
23,294
51,364
25,716
2,666
857
H17
3,340
780
H18
その他
35,721人
19,365
28,663
求職者支援制度
51,024
42,402
43,980
4,755
1,702
4,788
935
H20
H19
5,961
3,203
H21
58,661
60,509
62,275
7,638
1,268
H22
7,570
1,595
H23
8,703
968
H24
※ 出典:文部科学省 専修学校教育振興室調べ (調査対象:私立の専修学校)
※ 「社会人」とは、当該年度の5月1日現在において、職に就いている者、すなわち給料、賃金、報酬、その他の経常的な収入を目的とする仕事に就い
ている者、又は企業等を退職した者、又は主婦をいう。
9. 専修学校制度の財政的側面
専修学校の財源の概要
(1) 専修学校教育における私費負担と公費負担
専修学校の多くは私立の学校として設置され、その運営に要する費用は、当該学校の設置者
たる準学校法人等の支弁するところとなっている。私立専修学校の収入源は、関係者からの寄
附金や、資産運用・売却益、他事業からの収益など多岐にわたるものの、その大部分は、学生
生徒からの納付金に依存しており、学校法人・準学校法人の専修学校部門における全消費収入
のうち、学生生徒等納付金が占める割合は、2007 年度において 84.2%(平成 23 年度:5,768
億円)に上っている(日本私立学校振興・共済事業団「今日の私学財政」
)
。
専修学校教育への公費助成をめぐる背景については以下のようになっている。
私立学校の収入については、国や地方公共団体からの補助金等によってもその一部が賄われ
ている。2007年度には、学校法人・準学校法人の専修学校部門における全消費収入のうちの1.7%
が、国又は地方公共団体からの補助金収入となっている。ただし、この割合は、高等学校部門
では35.1%、大学部門では10.5%、短期大学部門では11.7%となっており(学校法人の専修学校
部門の消費収入構造・消費収支規模(今日の私学財政より作成)
)、他校種と比較すると小さな
ものにとどまっている。
専修学校については、学校教育法第1条を対象に措置される私学助成を通じた支援はなく、
また、このような制度の特性ゆえに、従来から、学校教育法1条に位置づけられる学校と同様
の公費支援が充実されない状況がある。
なお、制度創設後、専修学校教育の振興の観点から次のような一定の公費投入は行われるも
- 14 -
のの、その対象・規模はより限定的な支援がなされてきた。
【参考:これまでの主な国の公財政支援】
昭和51年制度創設後、専修学校の振興方策の充実として、翌年、専修学校教育調査研
究会が設置され、2年間の審議を経て専修学校の振興方策に関する報告がまとめられた。
その後、公財政支援に関する施策が逐次、充実されてきた。
(予算)
・昭和 51 年:私学事業団(前身は日本私学振興財団)の貸付事業の対象拡大
・昭和 53 年:専修学校教員研修事業費補助
・昭和 55 年:専修学校生に対する日本育英会による奨学金貸与事業の開始
・昭和 57 年:国費外国人留学生制度
・昭和 58 年:専修学校教員国内派遣研修・研究事業
・昭和 58 年:専修学校専門課程大型教育装置整備費補助
・昭和 59 年:専修学校教育内容等改善研究協力校事業費補助
・平成7年:災害復旧費補助
・平成 18 年:勤労学生控除の対象拡大
・平成 22 年:高等専修学校生に対する高校生等修学支援金制度創設
・平成 23 年:被災児童生徒等授業料等減免制度
・平成 24 年:日本学生支援機構の貸与奨学金の2年未満の課程の対象拡大
(税制)
・昭和 41 年:各種学校を勤労学生控除の対象
・昭和 52 年:専修学校を勤労学生控除の対象とする
・平成元年:授業料・入学料に対する消費税非課税措置
⇔ 消費税導入
・平成4年:地価税について学校法人立は非課税とする
⇔ 地価税の導入
・平成5年:一定の要件を満たす準学校法人立専門学校が特定公益増進法人に
・平成6年:相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象に準学校法人を追加
(地方交付税)
・昭和 60 年度から地方交付税に専修学校補助が措置
・平成 25 年:高等専修学校生の授業料減免支援に関する地方特別交付税措置
(2)専修学校教育振興のための財政措置における国・地方関係の現状
ここでは、
都道府県による専修学校への補助と国による地方財政措置の現状について述べる。
専修学校に対する助成措置で現在中心となっているのは、都道府県による運営費補助、施設
設備補助等の補助金である。都道府県における専修学校補助に係る経費に対しては、国も地方
交付税の措置を行い、一定の税財源を確保している。ただし、国の地方財政措置額の規模(平成
- 15 -
21 年度;34 億円)は、都道府県における実際の支出額(平成 21 年度;124 億円)に比べれば僅少
となっている(国の財政措置額の規模は、標準団体(県;人口 170 万人)当たりの単位費用積
算額(45,312 千円)からの単純試算。都道府県の実支出額は、全国専修学校各種学校総連合会
調べ。共に、日本私立学校振興・共済事業団補助(共済掛金補助)を含む。
(参考資料 p40・41、
p43)
)
。
このように、国による助成と地方による助成の実質的すみ分けがなされているのが現状であ
ると言えよう。
このような状況の下、専修学校教育に対しては、国・地方(都道府県)のそれぞれが、私立
専修学校又はその生徒に対し直接的な助成を行っている。地方による助成措置の内容・規模等
については、各都道府県による違いも大きいが、全般的な概況として見れば、国と地方との間
では、以下のような事実上のすみ分けがなされている実態が見られる。これらの分担は、必ず
しも、国・地方の役割に関する一貫した理念に基づくものではないが、国と都道府県の双方が、
「国がやるなら県はやらない」、「県がやれないものを国がやる」との基本的スタンスにより
対応してきた結果として、実質的に生じている。
(ⅰ) 学校へ運営等支援(機関助成)
【資金の性質・配分方法】
*国は、企画競争によるプロジェクト事業の委託など、重点的経費・競争的資金を配
分。
*都道府県は、外形的指標(生徒数など)に基づく運営費補助など、基盤的経費を配分。
【補助対象規模(施設設備等)】
*国は、専門課程の施設設備整備のうち、IT関連を中心に事業規模の大きいものを
補助。
* 都道府県は、一部の都府県において、事業規模が中・小規模のものを中心に補助。
(ⅱ)学生生徒への経済的支援(個人助成)
【就学支援事業】
*国は、専門課程の生徒を対象に、貸与奨学金事業を実施。
高等学校等就学支援金に係る経費は国庫負担。
*都道府県は、高等課程の生徒を中心に貸与奨学金事業など、それぞれの実情に応じ
た就学支援措置を実施。高等学校就学支援金の支給に係る事務も法定受託。
【参考:最近の専修学校に対する公財政支援】
・高等専修学校生に対する「高等学校等修学支援金」
(公立高校授業料無償制及び高等学
校等就学支援金)の支給(22 年度~)
*平成 26 年度より、所得制限を設け、就学支援金の加算について、250 万円世
帯までは現在の 2 倍を 2.5 倍に、350 万円世帯までは 1.5 倍を 2 倍に、590 万
- 16 -
円世帯までは 1.5 倍に拡充。
・
「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金(高校生就学支援基金)
」を活用して、都道
府県が行う東日本大震災の被災専修学校生に対する授業料等免除事業を支援(23 年度
~)
・大学等奨学金事業の充実
*平成 26 年度より、奨学金(無利子・有利子)の貸与人員の大幅増、所得連動
返済型奨学金制度の創設 など
・
「奨学金」の専門学校(1 年制課程)への対象拡大(24 年度~)
・都道府県が行う私立高等専修学校における授業料等免除事業に対する特別交付税措置
(24 年度~)
*県単独予算で高等専修学校生に対する授業料等減免予算を措置している都道府
県数
20県(平成24年度文部科学省専修学校教育振興室調べ)
専修学校教育に対する公財政支出の考え方
以上の財政的状況を整理したのが図0−6である。図では、上部に学生や家計に対する個人
補助、下部に教育機関に対する補助を配置した。また、図の左から、地方公共団体、生徒・学
生(家計)
、寄付、国、その他の順で配置した。国費の合計は約 123 億円となっている。これに
対して家計負担である授業料収入は 5,768 億円で、家計負担の重さがわかる。逆に言えば、私
立専修学校の収入のほとんどは授業料収入によっている。
教育への投資が及ぼす公的効果、すなわち教育の外部経済性については、一般には、幼児教
育や義務教育等の初期段階の教育においてより大きく見られるものであり、学校段階が上がる
に従い、個人の選択財としての性格が強まり、その外部経済性も小さくなるとの指摘がある。
例えば、犯罪の減少、社会支出の減少などの外部効果も含めた教育投資の社会的収益率を学校
段階ごとに比較すると、初等教育の収益率は世界平均で 18.9%(日本では 9.6%)、中等教育では
13.1%(同 8.6%)
、高等教育では 10.8%(同 6.9%)となり、初等教育において高いとする研究報
告もある([Psacharopoulos, George and Harry Anthony Patrions (2002),“Returns to
Investment in Education:A Further Update”World Bank Policy Researh Working Paper,
No.2881.])
。特に、職業教育については、職業に直結した知識・技術を授けるものであって、
これへの投資は個人の将来所得となって回収されるものであること等に鑑みれば、選択財・私
的財としての側面がより強いのではないかという指摘もある。しかしながら、OECDによる
各国の統計からは、高等教育段階における教育への公的投資に対するリターンも大きいことが
示されており、学生1人が大学などの高等教育機関に投資する額に対して、それが社会にもた
らす経済的リターン(所得税の増加、社会保障費の低下に伴うものなど)は2倍以上に達する
などの報告がなされている。(OECD, Education at a Glance 2009:OECD Indicators,
Summary of key findings(Japan). 1.経済危機と教育 ○ (略) 教育投資に対する経済的
- 17 -
リターンは高等教育段階で大きい。例えば、(略) 男子学生一人が大学などの高等教育を修了す
るためには、政府はOECD平均で 27,936 ドル投資する必要があるが、それが社会にもたら
す経済的リターン(所得税の増加、社会保障費用の低下に伴うものなど)はその2倍以上の
79,890 ドルに達する。
)
図0− 6 専修学校に係る財政措置と費用負担の仕組み(概観図)
国民生活の基盤となる人的資本の形成や人材競争力の強化が、経済・社会の維持・発展を期
する上で不可欠の要素であることはまぎれもない事実であり、主要先進国等においても、この
ような観点から、職業教育に対する公費の投入が、一般的に行われている。主要先進国等では、
職業教育の学校を国公立で運営し、授業料を無料又は低廉にしているところが少なくない(ア
メリカ、イギリス、フランス、中国)
。また、私立の専門学校等が数多く設置されているところ
では、これへの機関補助が行われている。
人的資本の形成等における専修学校の役割
我が国においても、産業や国民生活の基盤を支える様々な分野の専門人材の養成では、専修
学校が中核的な役割を果たしている。専修学校は、各分野の人材需要の規模は小さくても、継
続的に必要とされる専門技術者等の養成に対応しており、地域・産業に必要とされる様々な分
野の人材の供給も、これにより維持されている面が大きい。
- 18 -
また、専修学校は、新規産業等からの新たな人材ニーズにも柔軟に対応し、成長分野等への労
働力移動を円滑に進める上でも重要な役割を担っている。学校教育自身の中での機能について
見れば、我が国では、学問体系が確立していない分野の職業教育には専ら専修学校が対応して
おり、ここでの教育実践が、我が国職業教育全体を先導し、その裾野を広げている等の側面も
大きい。
特に、カリキュラムの自由度も高く、施設設備等の設置基準も比較的緩い専修学校では、1
条校にはない多様な教育を展開可能であり、経済社会のニーズに即応した人材養成を行う上で
は強みを有していると言える。
以上を踏まえれば、学校教育については、学校教育法に位置づけられている大学等の1条校
だけでなく、専修学校の教育にも広い意味での公共財としての公益的な機能が備わっており、
人的資本形成等の外部効果に対する期待の下に、専修学校教育への公的投資を行うことは、十
分な合理性をもつものと考えられる。したがって、専修学校教育の質の維持・向上を図るとと
もに、その公共的な機能を奨励、又は専修学校で学ぶ学生生徒に対する一定の公財政支援行う
ことも必要であると考える。
10. 学生の経済状況
専修学校の学生に対する支援については、次章以降で詳しく検討されるので、ここでは、簡
単にふれておく。図0−7のように、学生の収入に占める家庭からの給付の割合は所得階層が
高くなるほど高くなっている。特に大学生ではその傾向は著しい。専門学校生は大学生ほどで
はないが、それでも家庭給付は最も低い所得層でも 42.3%で、最も高い所得層では 74.8%とな
っている。
学生の収入源は、図0−8のように、家庭からの給付と奨学金とアルバイトが主なものであ
る。家庭からの給付の割合が低い学生は、奨学金やアルバイトの収入が多いと考えられる。
- 19 -
図0− 7 学生の収入に占める家庭からの給付額と割合の推移
図0− 8 学生の収入源
- 20 -
図0−9のように、専修学校、大学ともに学生に対する公的な支援としては、日本学生支援
機構の奨学金が大きな割合を占めている。専修学校生約 65 万人のうち、奨学金貸与者は約 20
万人で、3 人に 1 人が貸与を受けている(平成 24 年度)
。
図0− 9 企業・団体等による奨学金の実施状況
これに対して、大学のような授業料減免制度は、表0−3のように1県を除いて設けられて
いない。
表0− 3 都道府県別専修学校授業料減免状況
【出典:平成 25 年度専修学校教育振興室調べ】
- 21 -
さらに、学校独自の授業料減免制度については、表0−4のように 46.9%が制度を有して
いる。補助要件についても表0−4のように、経済的に非常に厳しい状態にある家計に限られ
ている場合が多い。
表0− 4 学校独自の授業料・奨学金制度
① 学校独自の生徒の経済負担軽減策として、授業料減免、学校独自の給付型奨学金等を実施している学校
専門課程
(公立)
区分
専門課程
(私立)
126(4.4%)
専門課程
合計
1,208(42.4%)
[単位:校数]
一般課程
(公立)
1,334(46.9%)
一般課程
(私立)
3(1.6%)
一般課程
合計
75(39.4%)
合計
78(41.0%)
1,412(46.5%)
※ ( )内の数値については、平成24年度学校基本調査(平成24年5月1日現在)における専門課程・一般課程を置く学校数(2,847校・190校)に占める割合。
なお、専門課程(公立)を置く学校数は196校、専門課程(私立)を置く学校数は2,641校、一般課程(公立)を置く学校数は2校、一般課程(私立)を置く学校数は187校。
② 経済的負担軽減策を実施している学校における補助要件について
専門課程
(公立)
区分
[単位:校数]
専門課程
(私立)
専門課程
合計
一般課程
(公立)
一般課程
(私立)
一般課程
合計
合計
生活保護世帯
69
37
106
3
4
7
市町村民税非課税世帯
32
24
56
2
3
5
61
失業・倒産などによる家計急変
25
100
125
1
5
6
131
105
933
1,038
1
56
57
1,095
その他
113
※ ②の数字は複数の補助要件を定めている学校、または補助要件を定めていない学校があるため、上記①の学校数と必ずしも一致しない。
[平成24年度専修学校教育振興室調べ(専修学校専門課程・一般課程の生徒納付金等に関する調査及び平25年度以降実施予定の施設整備に係る調査)(平成24年4月1日現在)]
このように、専修学校専門課程は、私立が大部分であり、公的補助が少ないため、授業料が
相対的に高く、家計の教育費負担は重くなっている。これに対して、専修学校生徒に対する経
済的な支援は、
大学等に比べて不十分であることは否めない。
授業料が相対的に高いわりには、
低所得層の学生が多く、家庭からの給付には限界がある。このため、学生は、家計からの給付
だけでなく、奨学金やアルバイトにも大きく依存している。このことは、学修や学生生活にも
影響を及ぼしている。こうした状況については、以下の各章で学校調査及び専門学校生調査、
保護者調査で詳細に検討される。
- 22 -
第1章 専門学校進学の社会的位置付け
―マクロ統計からの考察―
朴澤泰男(一橋大学)
1. はじめに
高校生にとっての専門学校進学という進路は、どのような社会的位置づけにあるのか。本章
ではマクロ統計から、この問題を簡単に考察しておきたい。具体的には、専門学校進学と他の
進路の関係(第 2 節)
、専門学校卒業者の就業状況、つまり従業上の地位・雇用形態、従業者
規模、職業、就業異動、及び所得(第 3 節)に着目する(なお、専門学校進学率の規定要因に
ついては本報告書第 2 章を参照)。
以下では、公開された政府統計の再集計を行う。使用するデータは、文部科学省『学校基本
調査』
(各年度)と、総務省統計局『就業構造基本調査』
(2012 年度)であり、全て「政府統計
の総合窓口」ウェブサイト(http://www.e-stat.go.jp/)より集計表を入手した(最終アクセス
日 2014 年 3 月 6 日)
。
2. 専門学校進学と他の進路の関係
高等学校(全日制・定時制)卒業者の進路のうち主なものを、1990~2010 年について 5 年
おきに示したものが図 1-1(男子)
、図 1-2(女子)である。
51.4
50.0
44.0
40.6
40.0
34.0
27.7
30.0
22.2
20.6
27.6
19.7
20.0
14.9
10.0
1.4
0.0
(%)
就職率
0.8
1.0
1990
専門学校進学率
16.1
15.0
16.0
1.9
1.8
1.2
1995
2000
大学進学率
18.3
短大進学率
12.7
1.2 1.7
2005
1.2
1.1
2010年
公共職業能力開発施設入学率
図 1-1 高等学校(全日制・定時制)卒業者の進路(男子、1990~2010 年)
(注)『学校基本調査』
(卒業後の状況調査)より作成。就職率は、就職進学を除く就職者数を
元にしたもの。図 1-2 も同様。
- 23 -
50.0
40.0
44.2
34.8
34.5
29.2
30.0
20.0
10.0
25.4
23.4
16.7
19.6
13.5
22.0
19.3
22.1
17.9
17.4
15.8
14.6
19.2
12.9
13.5
11.0
0.2
0.3
0.3
0.2
0.2
1990
1995
2000
2005
2010年
0.0
(%)
就職率
専門学校進学率
大学進学率
短大進学率
公共職業能力開発施設入学率
図 1-2 高等学校(全日制・定時制)卒業者の進路(女子、1990~2010 年)
専門学校進学者の割合は、2010 年で男子が 12.7%、女子が 19.2%となっている。男女とも
90 年代以降は、概ね横ばいで推移してきたことを図は示す。一方、就職率(就職進学を除く。
以下同じ)は一貫して低下し、大学進学率は一貫して上昇している(図 1-1、図 1-2)。
このように、日本全体の高卒進路の推移だけを見ると、高校生は就職を選ばなくなってきた
代わりに、大学を選ぶようになってきたような印象を受ける。しかし、ある二時点間の就職率
の減少幅や、大学進学率の増加幅は県によって異なっている。また、専門学校進学率の変化が
全国では横ばいに見えても、増えている県もあれば減っている県もある。よって就職率の低下
が大きな県ほど、専門学校進学率や大学進学率の上昇が大きいといった関係はあるのかどうか
を検討する必要があるだろう。
本報告書第 2 章の島論文は、2011 年 3 月の高校卒業者(男子)について、大学等進学率が
高い県ほど専門学校進学率は低い傾向や、就職率の高い県ほど概ね専門学校進学率も高い傾向
にあることを、散布図から示している。ここでは時点間変化の視点を加味し、横軸に就職率の
2005~2010 年の差分を(2010 年の値から 2005 年の値を差し引いた値。百分率)、縦軸に専門
学校進学率の 2005~2010 年の差分をプロットした散布図を作成することにした。それが図 1-3
(男子)
、図 1-4(女子)である。
まず図 1-3 を見てみると、男子の場合、この 5 年の間に就職率が上昇したのは(すなわち、
差分が 0 より大きいのは)和歌山などの 8 県で、専門学校進学率が上昇したのは沖縄と石川の
2 県だけだったことがわかる。つまりほとんどの県で、どちらの指標も低下していた。ただし
減少幅の大きさは、県によって異なる。就職率(差分)と専門学校進学率(差分)の相関係数
を算出すると-.291 になるから、就職率の減少幅が大きい県ほど、専門学校進学率の増加幅が
大きい(減少幅が小さい)関係があることがわかる 1。図 1-3 には専門学校進学率(差分)を
就職率(差分)に線形回帰させた、回帰直線も示してある(回帰係数は-.309 となる)。
- 24 -
(Δ%)
4.0
専
門
学
校
進
学
率
の
差
分
沖縄
2.0
石川
0.0
岩手
秋田
-2.0
宮崎
山形
島根
熊本
新潟
鳥取
-4.0
栃木
福島
宮城
茨城
和歌山
鹿児島 愛媛 岡山
大分 徳島
北海道
長野
福岡
静岡
滋賀
高知
大阪 広島佐賀
福井
兵庫
愛知
千葉
岐阜
東京
京都
群馬
-6.0
神奈川
山口
富山
青森
三重
長崎
奈良
香川
埼玉
山梨
-8.0
-5.0
-4.0
-3.0
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
就職率の差分(2005~2010年)
3.0
(Δ%)
図 1-3 就職率(差分)と専門学校進学率(差分)の散布図(男子、2005~2010 年)
(注)
『学校基本調査』
(卒業後の状況調査)をもとに作成。就職率、専門学校進学率とも、2010
年の値から 2005 年の値を差し引いた値(百分率)をプロットした。図 1-4 も同様。
(Δ%)
6.0
石川
専
門
学
校
進
学
率
の
差
分
4.0
沖縄
2.0
大分
0.0
-2.0
山形
山口
北海道 山梨
茨城 鹿児島
岡山
福島 佐賀
徳島
秋田
宮崎 岐阜
新潟
-4.0
宮城
東京
神奈川
-6.0
-6.0
-5.0
-4.0
-3.0
高知
広島
大阪 三重
長野
長崎
福井
青森
千葉
滋賀
福岡
静岡
京都 岩手
奈良
愛媛
兵庫
愛知
島根
香川
栃木
熊本
鳥取
和歌山
-2.0
埼玉
群馬
-1.0
就職率の差分(2005~2010年)
0.0
富山
1.0
2.0
(Δ%)
図 1-4 就職率(差分)と専門学校進学率(差分)の散布図(女子、2005~2010 年)
- 25 -
女子の場合も男子と同様、就職率(差分)と専門学校進学率(差分)は負の相関関係にある
が、相関係数は更に小さい(-.138)。このことは図 1-4 からも視覚的に確認できる。なお、専
門学校進学率(差分)を就職率(差分)に回帰させると、回帰係数は-.251 であった。
以上と同様の考えに基づき、就職率の差分と、各学校種の進学率の差分を用いた相関係数を
算出し、表 1-1 に示した 2。すなわち(1)就職率と専門学校進学率、
(2)就職率と大学進学率、
(3)専門学校進学率と大学進学率のそれぞれの相関係数である。女子は、他に(4)就職率と
短大進学率、(5)専門学校進学率と短大進学率の相関係数も算出した。差分は 2005~2010 年
の値だけでなく、1990~1995 年、1995~2000 年、2000~2005 年の値も用いた。
表 1-1 就職率(差分)と各学校種の進学率(差分)を用いた相関係数の推移
男子
女子
(1)
就職率
と
専門学校
進学率
(2)
就職率
と
大学
進学率
(3)
専門学校
進学率と
大学
進学率
(1)
就職率
と
専門学校
進学率
(2)
就職率
と
大学
進学率
(3)
専門学校
進学率と
大学
進学率
(4)
就職率
と
短大
進学率
(5)
専門学校
進学率と
短大
進学率
1990~1995年
-.616
-.222
-.162
-.631
.084
-.264
-.347
-.236
1995~2000年
-.418
.169
-.630
-.137
.111
-.590
-.313
.039
2000~2005年
.031
-.398
-.407
-.143
.057
-.159
-.373
-.123
2005~2010年
-.291
-.212
-.431
-.138
-.079
-.422
-.264
-.089
表 1-1 を見ると、
(1)就職率(差分)と専門学校進学率(差分)が負の相関関係にあること
は、概ね時期を問わず(2000~2005 年の男子を除いて)成り立つようである。このマイナス
相関はむしろ、1990~1995 年において最も大きかった(男子-.616、女子-.631)。
男子の場合、
(2)就職率(差分)と大学進学率(差分)の関係についても同様のことが言え
そうだ。2005~2010 年の相関係数は-.212 となっている。女子の場合は、大学進学率でなく、
(4)就職率(差分)と短大進学率(差分)の相関係数がマイナスになっている(2005~2010
年で-.264)。なお、(3)専門学校進学率(差分)と大学進学率(差分)の相関係数も、全ての
期間で負であり、2005~2010 年で男子-.431、女子-.422 であった(表 1-1)
。
3. 専門学校卒業者の就業状況
3-1 従業上の地位・雇用形態と従業者規模
近年の専門学校卒業者の就業状況についてはこれまで、新規学卒入職者のうち大企業(同一
企業(会社)に属するすべての事業所分を含む、企業全体の常用労働者数が 1,000 人以上)に
入職する者の割合が比較的小さいこと(塚原 2005)、専門・技術職に就く者の割合が高いこと
- 26 -
(塚原 2005、濱中 2009)などが、主に『雇用動向調査』に依拠して指摘されている。
最近の『雇用動向調査』結果でも(2008 年)、専門学校卒業者が大企業(1,000 人以上)に
入職する割合は、22.4%となっている。これは高校卒(29.8%)よりも小さい値である(専修
学校教育の振興方策等に関する調査研究協力者会議 2011,参考データ集 58 頁、
「新規学卒者
の入職数[学歴別・企業規模別](平成 20 年)
」を参照)
。
また、文部科学省が、専門課程を設置する専修学校に行った調査の結果によれば(約 76%が
回答)、2008 年度の就職者全体のうち、67.4%が専門・技術職に就いている。次いで多いのが
サービス職であって、12.8%を占める 3(専修学校振興における財政措置の在り方等に関する
調査研究協力者会議 2010,参考データ集 26 頁、
「専門学校卒業者のうち就職した者の職業別
割合(平成 20 年度)」を参照)
。
以上のような指摘はあるものの、データの制約もあって、例えば従業上の地位・雇用形態や
所得など、専門学校卒業者の就業状況はまだ体系的に明らかになっているとは言い難いと思わ
れる。そこで『就業構造基本調査』の結果表の再集計を行う。まず学校卒業後、仕事に就いて
から日が浅い年齢層である若年者(20~24 歳)の男女について、従業上の地位・雇用形態と、
女子 (20~24歳)
男子 (20~24歳)
従業者規模を学歴(最終卒業学校の区分)別に集計した結果が図 1-5 である。
高校(946,000)
専門(164,600)
16.6
8.5
短大(66,800)
大学(527,000)
22.9
高校(854,200) 5.6 10.6
専門(253,000) 2.5 7.0
8.1 9.1
大学(502,800)
16.9
16.5
18.2
13.3
13.7 1.8 7.8
20.9
短大(284,500)
3.9 3.2
2.8 8.8
9.6
29.2
20.0
11.7
40.0
正規(100~999人)
非正規
19.0
8.7
24.7
9.7
14.3
0.6
10.9
0.6
10.0
18.5 0.6
1.1
10.9
22.7
27.4
0.7
10.5
28.6
0.6
10.3
17.9
20.7
60.0
正規(1~99人)
自営
1.8
24.1
36.5
6.0
11.6 2.5
15.0
23.2
4.4 12.0
15.0
19.7
正規(1,000人以上)
正規(団体・不詳)
20.5
16.3
27.2
0.0
図 1-5
16.0
80.0
正規(官公庁)
無業
0.7 7.2
100.0
(%)
20~24 歳男女の従業上の地位・雇用形態と従業者規模(学歴別、2012 年度)
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 2 表、第 12 表、
及び第 16 表より作成。図中の括弧内は人数。「専門」は修業年限「2 年以上 4 年未満」の専門
学校(1 年以上 2 年未満の専門学校は「高校」に、4 年以上は「大学」に含まれる)。
「短大」
は高専を含む。
「大学」には、大学院を含まない(以下の図において同様)
。会社などの役員、
従業上の地位不詳を除くため、合計は 100%にならない場合がある。
- 27 -
図 1-5 では、就業状態及び従業上の地位・雇用形態で 4 つの分類を設けた。すなわち正規の
職員・従業員(以下「正規雇用」と呼ぶ)、非正規の職員・従業員(以下「非正規雇用」
)、自営
業主・家族従業者(以下「自営」)、無業者の 4 分類である(会社などの役員、従業上の地位が
不詳である者は除いた)。さらに、正規雇用を従業者規模(企業全体の従業者数。本社・支店・
工場なども含めた従業者総数で、パートなども含む値)で 5 つに区分した。1,000 人以上、100
~1,000 人、1~99 人、官公庁など、その他の法人・団体の 5 区分である。正規雇用のうち、
従業者規模が不詳である者は、
「その他の法人・団体」と合算して示した 4。
まず男性を見ると、専門学校卒業者は大企業に勤める割合の少ない傾向が、改めて確認でき
る。ここでは正社員に限ったが、1,000 人以上の企業に勤める若年者は 8.5%にとどまり、他の
学歴よりも少ない(
『雇用動向調査』より、大企業に勤める割合が小さい値となる理由は、正規
雇用に限ったためだと考えられる)
。一方、他の学歴と比べると、その他の法人・団体(12.0%)
が多い点が特徴となっている。医療系の学校を出て、病院に就職したケースなどが考えられる。
非正規雇用は少なくないが(24.1%)、他の学歴(高校卒 23.2%、短大・高専卒 19.0%、大学
卒 18.5%)より、取り立てて多いわけではない(図 1-5)。
女性の場合も、1,000 人以上の企業の正規雇用が少ない傾向は男子と同様である(2.5%)。
もっとも、高卒(5.6%)や短大・高専卒(8.1%)でも、大企業に正規で勤める若年者はそれ
ほど多くはないようだ。また、その他の法人・団体に正規で勤める専門学校卒業者は、24.7%
である。この値は、短大・高専卒も多い(29.2%)。一方、非正規雇用(27.4%)の割合は高校
卒(36.5%)より小さく、短大・高専卒とほぼ同じ水準にある(図 1-5)
。
雇用者以外を見ると、自営は男女とも、どの学歴でも少ないことがわかる。無業は専門学校
卒の場合、男性 10.9%、女性 10.5%であった。これは短大・高専卒や大学卒と、ほぼ同水準と
言える。高校卒の無業率はこれより高く、男性 14.3%、女性 22.7%となっている(この年齢層
の高卒女性の中には、家事や育児に専念している場合もあるだろう)
。
3-2 職業
次に職業である。ここでは、やはり 20~24 歳の男女を対象に、正規雇用についてのみ職業
の内訳を集計することにした。その結果を図 1-5 と同様に示したものが、図 1-6 である。図 1-5
で「正規」とある部分を、従業者規模でなく職業によって区分した図に相当する。ただし非正
規雇用、自営、無業者については、既に図 1-5 に示したため割愛した(図 1-5 と同様、会社な
どの役員、従業上の地位不詳も含まれていない)
。
図 1-6 も、男性から見てみよう。正規雇用の若年者の職業として多いのは、専門学校卒業者
の場合、専門的・技術的職業従事者の 13.5%や、生産工程従事者(建設・採掘従事者、運搬・
清掃・包装等従事者を加えたもの)の 19.7%であった。一方、他の学歴と比べると、サービス
職業従事者(12.7%)が多いのが、一つの特徴となっている。生産工程のしめる割合も、高校
卒(38.2%)や短大・高専卒(33.1%)より小さい。
- 28 -
女子の職業は、やはり専門・技術が多い(27.7%)。他の学歴に比べ、サービス(15.1%)が
多いことも男子と同様である。なお専門学校卒に比べ、短大・高専卒や大学卒は、事務従事者
や販売従事者が多い傾向にあるようだ(図 1-6)。
女子 (20~24歳)
男子 (20~24歳)
2.6 4.8
高校(946,000) 1.9 3.3
専門(164,600)
13.5 4.6 5.9 12.7
短大(66,800)
15.1
2.8
4.9 5.1
大学(527,000)
15.0
12.9
高校(854,200)
9.3
38.2
2.512.2 4.7 9.9
19.7
7.8
33.1
18.6
9.3
4.0 12.6 6.4
7.4 2.8
専門(253,000)
27.7
9.9 2.8 15.1 3.7 2.1
短大(284,500)
28.5
13.8 5.2 8.2 2.7 2.0
大学(502,800)
23.9
22.8
0.0
20.0
40.0
11.8 6.2 2.6 3.9
60.0
80.0
100.0
(%)
専門・技術
図 1-6
事務
販売
サービス
生産工程等
その他・不詳
20~24 歳男女の正規雇用の職業(学歴別、2012 年度)
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 2 表、第 12 表、
及び第 15 表より作成。図中の括弧内は人数。「正規の職員・従業員」の職業の内訳を示した。
「生産工程等」は、生産工程従事者、建設・採掘従事者、運搬・清掃・包装等従事者の合計。
「その他・不詳」は、保安職業従事者、農林漁業従事者、輸送・機械運転従事者、分類不能の
職業の合計に、職業不詳を加えたもの。なお、管理的職業従事者は該当者がいない。
3-3 就業異動
今度は就業異動を検討する。主に、大企業のホワイトカラーを念頭に、しばしば、「転職は
35 歳まで」と語られることを参考にして 5、35~44 歳の男女を対象に、各学校区分の卒業者の
総数に占める「初職と現職等との関係」の構成比を集計した。その結果が図 1-7 である。
なお、ここでいう「現職等」には現在は無業者で、過去に仕事をしていたことがある場合が
含まれる。例えば、学校卒業後は働いていたが出産を機に辞め、再就職していないケースなど
である。なお、無業のうち、過去に仕事をしていたことがない場合は非該当扱いとなる。
図 1-7 の男性の欄を見ると、35~44 歳の時点で初職(最初についた仕事。通学の傍らにした
アルバイトなどは含まれない 6)を継続している人(現職が初職)の割合は、専門学校卒で 43.3%
となっている。これは高校卒(42.9%)と同水準で、短大・高専卒(52.2%)や大学卒(55.5%)
よりも 10 ポイント弱、少ない。一方、
「その他が初職」
(最も単純に解釈すれば、2 回以上転職
- 29 -
した人)の割合は 34.8%であり、やはり短大・高専卒(26.2%)や大学卒(22.7%)よりは、
高校卒(37.2%)の値に近いようだ。
女性については、初職継続者の割合は専門学校卒と大卒で多く、どちらも 27.8%であった。
この値は、高校卒(21.2%)、短大・高専卒(22.0%)では高くない。もっとも、35~44 歳の
場合、
「その他が初職」の割合が学歴を問わず大きい。特に高校卒で顕著だが(55.3%)、他の
学歴でも、専門学校卒 47.6%、短大・高専卒 48.8%、大学卒 42.8%となっている(図 1-7)
。
この背景には、
「現職」が無業であったり、パートなどの非正規雇用の職をいくつか経験して
いたりすることが推察される。実際、2012 年度『就業構造基本調査』では、35~44 歳女性の
うち無業者の割合は、高校卒 30.0%、専門学校卒 25.9%、短大・高専卒 33.9%、大学卒 31.0%
女子 (35~44歳)
男子 (35~44歳)
と少なくない 7(全国編「人口・就業に関する統計表」第 2 表より算出)
。
高校(4,285,200)
42.9
専門(810,700)
43.3
短大(335,700)
15.6
19.4
52.2
大学(2,901,700)
専門(1,024,100)
大学(1,561,200)
0.0
47.6
25.9
20.0
40.0
42.8
60.0
1.0
1.5
48.8
25.5
27.8
0.5
3.1
55.3
21.5
22.0
0.5
22.7
19.3
27.8
短大(2,156,500)
26.2
19.2
17.7
21.2
0.3
34.8
55.5
高校(3,951,800)
1.2
37.2
80.0
2.1
100.0
(%)
現職が初職
図 1-7
前職が初職
その他が初職
初職なし
35~44 歳男女の「初職と現職等との関係」
(学歴別、2012 年度)
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 122 表より作成。
図中の括弧内は人数。
「初職」には、通学の傍らにしたアルバイトなどは含まれない。
「現職等」
には、無業(過去に仕事をしていたことがある場合)が含まれる。無業のうち過去に仕事をし
ていたことがない場合を除くため、合計は 100%にならない。
3-4 所得
最後に所得についてである。専門学校卒業者の所得は、必ずしも高くないことがこれまでも
指摘されている。例えば、本報告書付録の参考データ集の図「高等教育機関(大学院除く)を
卒業した者の年齢別所得割合」によれば、有業者のうち所得 300 万円未満の者の割合は、40-44
歳層では、専門学校卒の正規雇用の 21.3%に達する。これは正規雇用の大卒や(5.4%)、正規
雇用全体(12.5%)より高い値である(2007 年『就業構造基本調査』による)
。
- 30 -
ここでは、2012 年の『就業構造基本調査』から、正規雇用について、平均的な税込み年収を
年齢階級別、学歴別に推計してみた。その結果が図 1-8、図 1-9、表 1-2 である。
800.0
700.0
567.9
600.0
500.0
551.2
548.4
493.5
400.0
381.1
426.0
334.5
363.2
300.0
309.0
200.0
250.5
196.3
100.0
0.0
(万円)
15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70歳
以上
高校・旧制中
専門学校
短大・高専
大学
図 1-8 正規雇用の男性の推計税込み年収(年齢階級別、学歴別、2012 年度)
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 40 表より作成。
図中の値は、専門学校卒業者の平均年収の推計値。図 1-9 も同様。
800.0
700.0
600.0
500.0
457.1
400.0
426.8 432.8
300.0
200.0
328.6
241.9
357.8
383.9
374.9
265.3
290.5
209.3
100.0
0.0
(万円)
15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70歳
以上
高校・旧制中
専門学校
短大・高専
大学
図 1-9 正規雇用の女性の推計税込み年収(年齢階級別、学歴別、2012 年度)
平均的な税込み年収は、次のように推計した。年齢階級別・学歴別に、所得階級(例えば、
- 31 -
「50~99 万円」
)ごとの有業者数がわかるから、正規の職員・従業員(正規雇用)について、
各所得階級の中間値(例えば 75 万円)と、有業者数とを全て乗じて合計する(
「50 万円未満」
の階級には 25 万円を、「1500 万円以上」には 1500 万円を割り当てた)。これを年齢階級別・
学歴別の正規雇用の総数(ただし、所得が不詳である者を除く総数)で除した値が、平均的な
税込み年収となる。
表 1-2 正規雇用の男女の税込み年収と人数(年齢階級別、学歴別、2012 年度)
男子
高校・
旧制中
専門
学校
女子
短大・
高専
高校・
旧制中
専門
学校
短大・
高専
大学
284.9
373.0
454.0
544.7
652.0
731.3
765.0
733.1
559.6
514.5
412.5
186.7
213.6
234.5
254.2
280.9
293.8
311.4
311.8
325.1
248.6
205.4
183.2
241.9
290.5
328.6
357.8
383.9
426.8
432.8
457.1
374.9
265.3
209.3
232.0
275.0
305.6
338.3
384.2
402.3
422.2
417.7
328.1
277.6
255.8
265.8
328.2
378.2
426.4
507.9
549.9
581.1
574.0
430.8
320.1
321.4
36.3
99.5
107.4
118.5
117.1
105.7
99.7
80.3
25.7
5.6
3.0
8.2
33.5
31.9
32.9
41.3
48.4
48.7
45.2
41.0
25.0
10.2
8.5
15.3
21.8
20.8
19.8
17.3
14.3
12.8
8.5
3.0
.8
.5
17.1
20.1
24.9
30.8
27.8
21.2
20.2
14.3
5.7
1.5
.8
35.4
71.4
44.7
34.0
25.7
18.9
15.9
11.6
3.4
1.1
.6
大学
税込み年収 (万円)
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~44歳
45~49歳
50~54歳
55~59歳
60~64歳
65~69歳
70歳以上
212.3
268.1
314.8
362.7
413.1
465.4
514.1
540.7
549.4
369.1
294.4
253.5
250.5
309.0
363.2
426.0
493.5
548.4
567.9
551.2
381.1
334.5
196.3
275.3
339.7
397.8
458.0
559.6
600.7
671.5
670.2
499.6
449.1
356.6
正規の職員・従業員 (万人)
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~44歳
45~49歳
50~54歳
55~59歳
60~64歳
65~69歳
70歳以上
13.4
55.9
78.5
106.3
145.5
151.9
131.7
115.0
106.2
47.5
10.1
6.2
10.5
22.6
26.1
32.6
26.1
15.2
9.9
5.4
1.7
.3
.3
4.6
7.2
8.8
12.7
13.4
9.4
8.7
6.9
2.5
.3
.3
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 40 表より作成。
税込み年収は推計値。正規の職員・従業員の人数は、所得が不詳の者を除く総数。
例えば、男性の場合、専門学校卒の正規雇用の税込み年収は 50~54 歳でピークを迎える
- 32 -
(567.9 万円)。同じ年齢階級の女性は、税込み年収の平均は 432.8 万円であった(図 1-8、図
1-9)。もっとも、専門学校の実質的な第一世代(専修学校が開校して 2 年目の 1977 年度に、
高卒直後に入学した者)は、2012 年の調査時点で 50 歳代前半に当たるから 8、
「55~59 歳」
以降の年齢階級の年収は、参考までの値と考えた方がよい(かつての各種学校を卒業した人が
専門学校卒と回答した可能性がある)。実際、正規雇用の専門学校卒業者の人数は、「55~59
歳」以上になると、非常に少なくなっている(表 1-2)
。
学歴間で比較してみると、専門学校卒業者の年収は、男性は高校卒、女性は短大・高専卒の
水準に近いことがうかがえる(図 1-8、図 1-9、表 1-2)。これは厚生労働省『賃金構造基本統
計調査』からでは、わからなかった事実である。というのも、
「平成 25 年賃金構造基本統計調
査
調査票記入要領」によれば、同調査の個人票では「専修学校(通常、専門学校や高等専修
学校と呼ばれている、◯◯情報処理経理専門学校や◯◯看護学校等)等の卒業者の最終学歴」
のうち、
「高校を卒業してから 2 年程度で卒業」する場合、
「高専・短大」と回答することにな
っているためである 9(10 頁)
。よって、男子の学歴別の賃金カーブを単年度の調査から描くと
10、短大・高専卒は、大学・大学院卒より高校卒に近いことの背景には、専門学校卒業者の賃
金が大きく反映されている可能性のあることが示唆されよう(表 1-2 を見ても、45~49 歳まで
の正規雇用の男性は、短大・高専卒より専門学校卒の方が人数は多い)
。
専門学校卒の男性の年収が、高校卒と似たようなカーブを描くのだとすると、専門学校進学
のメリットは、どこにあることになるのか。いまの結果は正規雇用に限った場合の話である。
専門学校を出た方が、独立したり、自律性の高い働き方ができたりするならば(濱中 2009)、
そちらの方が魅力的に映る人も少なくないだろう。
そこで試みに、50~54 歳男性の従業上の地位及び就業状態を、学歴別に集計してみた。専門
学校卒業者全体のうち、25.3%が自営業主又は「会社などの役員」に就いている(うち起業が
16.1%)。他は「会社などの役員を除く雇用者」が 69.0%、無業が 5.4%である(家族従業者、
従業上の地位が不詳の者を除くため、合計は 100%にならない。以下同じ)。これは高校卒の
17.8%(うち起業 10.4%)
、短大・高専卒の 16.2%(同 8.2%)、大学卒の 16.6%(同 8.5%)
よりも高い値である(雇用者はそれぞれ 73.8%、79.2%、78.6%で、無業はそれぞれ 7.8%、
4.2%、4.5%となっている)
。現在の高校生世代が専門学校を卒業し、将来、この年代になった
ときに同様の働き方を実現できている保証はないが、専門学校進学は、所得以外にも職業生活
上のメリットをもたらしてくれる可能性があることを示唆する事実と言えよう(従業上の地位
別・学歴別の所得にまで立ち入った検討は、今後の課題としたい)。
4. まとめにかえて
本章では、公開された政府統計を分析し、高校生にとって専門学校進学という進路は、どの
ような社会的位置づけにあるのかを考察した。
まず専門学校進学と他の進路の関係を、高校生の進路の都道府県別データから検討すると
(『学校基本調査』による)
、二時点間における就職率の減少幅が大きい県ほど、専門学校進学
- 33 -
率の増加幅が大きい(減少幅が小さい)関係が概ねみられることがわかった。同様に、二時点
間の大学進学率の減少幅が大きい県ほど、専門学校進学率の増加幅が大きい(減少幅が小さい)
関係もあるようだ。
次に、専門学校卒業者の就業状況を『就業構造基本調査』で検討した。若年者(20~24 歳)
の就業状態、従業上の地位・雇用形態、及び従業者規模については、正規雇用で 1,000 人以上
の大企業に勤める者の割合が少ないことや、非正規雇用の割合が大卒や短大・高専卒と同程度
であること、無業率が高卒者より低いことが明らかになった。若年者の職業(正規雇用のみ)
については、専門・技術職やサービス職が多かった。
35~44 歳層の就業異動を見ると、専門学校卒の男性は異動(転職)の回数が高卒者に次いで
多い(大卒や短大・高専卒の方が少ない)傾向が見られた。専門学校卒の女性の場合、初職を
継続している割合は、大卒女性と同じくらい大きかった。
年齢階級別の所得(税込み年収)を学歴別に推計すると、専門学校卒の男性の賃金カーブは
高卒男性に、専門学校卒の女性の場合は短大・高専卒女性に近いことがわかった。ただし男性
についてのみ、50~54 歳層の従業上の地位を学歴間で比較した結果、専門学校卒は、他の学歴
より自営業主又は会社役員に就いている割合が高いことも、同時に明らかになった。
<注>
1
喜多村(2004)らの共同研究でも、高校学科別の就職率や、専門学校進学率の 1999~2003 年の変化
を検討し、就職率の低下幅の大きな工業科(8.8 ポイント減)
、商業科(6.9 ポイント減)において、
専門学校進学率が上昇していることから(これらは、生徒数の多い専門学科でもある)
、
「就職状況の
。
厳しさも専門学校への進学率を押し上げている」と指摘されている(113-114 頁)
2
念のため、外れ値と思われる 1、2 ケースを除く散布図や、相関係数も確認したが、基本的には符号が
変わるほどの変化は生じなかった(2000~2005 年の女子の専門学校進学率と短大については、元の
-.123 から.012 へと、プラスに転じた)
。例えば、図 1-4 の秋田と石川を除く 45 都道府県で、相関係
数を算出すると-. 197 となる。元の 2005~2010 年の女子就職率(差分)と専門学校進学率(差分)
、やや関連が強くなる。
の相関係数が-. 138 だから(表 1-1)
3
分野別に見ると、サービス職への就職が多いのは衛生分野で、就職者の 38.6%を占めている(専門・
技術は 52.6%)
。
4
正規雇用のうち従業者規模不詳が、各学歴の卒業者総数に占める割合は多くとも 1%程度である。
5
例えば、
『週刊東洋経済』6506 号(2014 年 1 月 25 日号)は、
「崩れ始めた『35 歳限界説』
転職の
リアル」という特集を組んでいる。
6
ただし、「調査票の記入のしかた」によれば、「在学中から行っていたアルバイトを卒業後も継続した
場合は、その後、正規の職員・従業員として就職したとしても、そのアルバイトを『最初の仕事』と
します」とされている(11 頁)。
7
35~44 歳男性の場合、無業率は高校卒 7.4%、専門学校卒 5.0%、短大・高専卒 3.9%、大学卒 3.6%
であった。
- 34 -
8
2027 年の『就業構造基本調査』の結果が出る頃には、65~69 歳層までの専門学校卒の所得がわかる
から、専門学校への教育投資の内部収益率の計算もできることになる。
9
厚生労働省ウェブサイト「賃金構造基本統計調査のページ」による(最終アクセス日
2014 年 3 月 6
日)
。なお「中学を卒業してから 2 年又は 3 年で卒業」は「高校」
、
「高校を卒業してから 4 年以上で
卒業」は「大学・大学院」と回答することになっている。こうした、修業年限に応じて一条校に対応
させて回答する形式は、
『国勢調査』でも同様である(2000 年度調査では高校と短大に、2010 年度
調査では高校と短大と大学に対応)
。
10
例えば、厚生労働省が毎年公表する「賃金構造基本統計調査(全国)の概況」では、図「学歴、性、
年齢階級別賃金」に掲載されている。
<参考文献>
喜多村和之(主査)
,2004,
『平成 15 年度経済産業省委託調査
専門学校等における高度専門人材育成』
財団法人政策科学研究所。
専修学校教育の振興方策等に関する調査研究協力者会議,2011,「専修学校教育の振興方策等に関する調
査研究報告――多様な学習機会の充実と教育の質向上等に向けて」
。
専修学校振興における財政措置の在り方等に関する調査研究協力者会議,2010,
「専修学校教育に対する
財政措置の在り方等に関する論点整理――国と地方の財政上の役割分担等について」
。
塚原修一,2005,
「専門学校の新たな展開と役割」
『日本労働研究雑誌』No. 542,pp. 70-80.
濱中淳子,2009,「専修学校卒業者の就業実態――職業教育に期待できる効果の範囲を探る」『日本労働
研究雑誌』No. 588,pp. 34-43.
- 35 -
第2章 専門学校進学率の規定要因分析
―高卒・男子生徒に注目して―
島 一則(広島大学)
1. はじめに
専門学校制度の発足以降の高等教育のマス化に伴い、専門学校(本稿では専修学校(専門課程)
を指すこととする)への進学は、大学・短大への進学や就職などの伝統的な進路に匹敵する規模
となって久しい。しかしながら、学生支援方策の観点から専門学校への進学がどのような要因に
よって規定されているのかについて、マクロレベルのデータを用いて明らかにしようとする研究
は決して多くない。そこで、本章では大学進学行動の経済分析を行った矢野(1984)、島(1999)、
矢野・濱中(2006)などで用いられている変数を参考にしながら、専門学校進学の規定要因につ
いての検討を深めることとする。またその結果を踏まえて専門学校生に対する学生支援方策の今
後の方向性などについての含意を得ることする。
2. データ
本章で用いるデータについて説明する。まず分析の中心(規定要因分析においては従属変数)
となる都道府県別の専門学校進学率(高卒者に基づくもの)については、文部科学省『学校基本
調査』平成 23 年度版に記載されている前年度(すなわち 2010 年度高校卒業者)のデータを利
用する。また関係する進路先として、同データを用いて大学等進学率(短大を含む)と就職率も
併せて算出する。
一方で、専門学校進学率へ影響を与えるであろうと考えられる変数(規定要因分析においては
独立変数)に関しては、家計の経済状況を表す変数として、総務省統計局の『全国消費実態調査』
(平成 21 年度)に掲載されている都道府県別の年間収入データ、専門学校進学のコスト変数と
して文部科学省調査結果による都道府県別の私立・専門学校学生納付金(2011 年度)1、専門学
校進学によるベネフィット変数として厚生労働省による『賃金構造基本統計調査』(平成 22 年
度)に掲載されている都道府県別の「高専・短大卒」初任給2と「高校卒」初任給の比率を利用
する。この他に、労働市場に関わる指標として、職業安定局派遣・有期労働対策部企画課若年者
雇用対策室による「平成 22 年度高校・中学新卒者の求人・求職状況(平成 22 年 7 月末現在)
について」に基づいて高校卒業予定者に対する有効求人倍率の値を作成した(ただしこちらは男
女計の値)
。
3. 基礎分析
まず都道府県別の専門学校進学率の全体状況を捉えるために、大学等進学率を X 軸、専門学
校進学率を Y 軸にとった散布図を示す(図 2-1)
。この結果から大学進学率が高いほど、専門学
- 36 -
校進学率が低い傾向が見て取れる。ここからは、大学進学と専門学校進学がある種代替的な選択
肢となっていることが確認される。また大学等進学率が低い県において、専門学校進学率に関し
て相対的に大きなバラつきが見られることもわかる。
図2-1 大学等進学率と専門学校等進学率の関係
具体的な都道府県についてみていくと、大学等進学率の上位 10 県は京都、東京、広島、神奈
川、山梨、滋賀、岐阜、愛知、埼玉、大阪の順となっており、三大都市圏の中心をなす都道府県
とその周辺県で高い値となっていることがわかる。一方、専門学校進学率の上位 10 県は沖縄、
長野、新潟、高知、島根、岩手、北海道、鹿児島、熊本、愛媛となっており、三大都市圏の周辺
の県は1県もないことがわかる。
- 37 -
図2-2 就職率と専門学校等進学率の関係
次に、就職率を X 軸、専門学校進学率を Y 軸とした散布図(図 2-2)についてみると、沖縄、
長野、新潟、高知、北海道などを除けば、概ね就職率が高いほど専門学校進学率が高い傾向が見
て取れる。すなわち、ここからは、専門学校進学と就職がある種補完的な関係にあることが分か
る。また具体的な都道府県についてみると、就職率が低い 10 県は、東京、神奈川、京都、大阪、
埼玉、千葉、奈良、広島、沖縄となっており、先にみた大学進学率の高い県と重なる部分が多い。
ただし、ここでその例外として沖縄が挙げられる。すなわち、沖縄は大学等進学率が高くない一
方で、就職率が低く、専門学校進学率が高いことがここから見て取れる。そして、先にも言及し
たがこれに類する県として、長野、新潟、高知、北海道などがあげられる。
以上の動向からは、大学等進学と専門学校進学・就職がまずは二択で選ばれ、その上で専門学
校進学か、就職かが検討されるといった進路選択の構造が伺える。しかしながら、沖縄、長野、
新潟、高知、北海道などの県では、後者の選択の際に専門学校進学が選ばれる可能性が他の都道
府県と比較して高いことなどが、この図から見て取れる。
- 38 -
図2-3 家計年間収入と大学等進学率の関係
それでは、次に家計年間収入と進路選択の関係を見ていく(図 2-3)
。まず、大学等進学率と
の関係をみると、家計年間収入が高い県ほど、大学等進学率が高いという傾向が見られる。また
こうした観点からは、京都は家計年間収入に比して大学進学率が特に高くなっていることが見て
取れる。また、家計年間収入に関して具体的な都道府県についてみていくと、下位 10 県として
は、沖縄、鹿児島、高知、北海道、長崎、熊本、宮崎、和歌山、岩手、青森があげられ、北海道・
東北、九州・沖縄などで低くなっていることが見て取れる。
- 39 -
図2-4 家計年間収入と専門学校進学率の関係
一方で家計年間収入を X 軸にとり、Y 軸に専門学校進学率をとった散布図(図 2-4)からは、
概ね負の相関が見られることがわかる。すなわち、家計年間収入が低い県ほど専門学校進学率が
高いと言った傾向が見て取れるのである。しかしながら、この図からは、長野・新潟・島根など
が、その家計年間収入に比して専門学校進学率が高い値となっていることが明らかになる。また、
専門学校進学率上位 20 県(沖縄、長野、新潟、高知、島根、岩手、北海道、鹿児島、熊本、愛
媛、鳥取、大分、群馬、福島、和歌山、山形、宮城、宮崎、秋田、徳島)が、長野・新潟・島根
などの家計年間収入に比して専門学校進学率が高い形で上位に位置する県と家計年間収入が低
いことと対応した北海道・東北、四国・九州・沖縄などの県によって構成されていることが分か
る。
- 40 -
図2-5 家計年間収入と就職率の関係
一方で、家計年間収入と就職率の関係をみると(図 2-5)、大学等進学率や専門学校進学率ほ
どは明確な傾向が見て取れない。このことは、就職率の規定要因として、家計年間収入とともに
他の要因が同時に影響を与えていることを予想させる。また、この他の変数は就職率を媒介して
専門学校進学率にも影響を与えていることが予想される。そして、この就職率に影響を与える要
因として、高卒求人倍率や高専・短大初任給と高卒者の初任給の比率(以下ではこれを上述した
仮定に基づき「専門-高卒初任給比率」とする)などが考えられうる。
4. 専門学校進学率の規定要因分析
それでは以上の基礎分析を踏まえて、専門学校進学率の規定要因分析を進めていくこととする。
以下では、最初に家計年間収入と高卒有効求人倍率を用いた極めてシンプルな重回帰分析の結果
を示す(表 2-1)。ここからは、家計年間収入が低い県ほど専門学校進学率が高くなるという結
果が統計的に有意な水準(5%)で得られている。また高卒有効求人倍率についても、それが低
いほど専門学校進学率が高くなるという結果が統計的に有意な水準(5%)で得られた。ここか
らは、家計年間収入が低く、有効求人倍率が低い県では、専門学校進学率がより高くなるという
傾向が見て取れる。
- 41 -
表2-1 専門学校進学率の規定要因分析1
次に、以上に用いた 2 変数のみではなく、コスト変数(私立専門学校学生納付金)
・ベネフィ
ット変数(専門-高卒初任給比率)
・専門学校教育市場変数(専門学校収容率)を同時にコント
ロールした重回帰分析の結果を示す(
(表 2-2))
。こちらの分析結果から言えることは、コスト
変数である専門学校の学生納付金については統計的に有意な影響を及ぼしていない。またベネフ
ィット変数である専門-高卒初任給比率についても統計的に有意な関係(5%水準)を有してい
ないことが分かる。一方、専門学校収容率も正で統計的に有意(5%水準)な関係を有しており、
このことは高卒者に対して専門学校の進学機会(定員)が大きな県ほど専門学校進学率が高くな
ることが分かる。加えて家計年間収入と高卒求人倍率については、先にみた関係が維持される(た
だし、家計年間収入の有意水準は 10%となる)
。
- 42 -
表2-2 専門学校進学率の規定要因分析2
5. まとめと今後の課題
以上の結果からは、専門学校進学率は家計年間収入と高卒有効求人倍率の影響を強く受
けており、結果として家計年間収入が低く、高卒有効求人倍率の低い県においてより一層
高くなっていることが分かる。このことは、家計年間収入が低いことが大学進学の現実的
な可能性を低めるとともに、高卒者にとっての良好な就職先が相対的に少ないため専門学
校進学へと追いやられている可能性を示唆している。またこの他の要因として、専門学校
収容力と言った教育市場変数の影響も受けている。まず、家計年収と高卒有効求人倍率に
注目すれば、専門学校進学者への学生支援方策は高等教育政策上極めて重要な学生支援方
策に位置づけられなければならないと言える。すなわち、専門学校進学者は単に家計収入
に関わって相対的に不利な状況にあると言うだけでなく、地域的な労働市場の側面に関し
ても、相対的に不利な状況にあると言えるからである。このように彼らは二重に相対的に
- 43 -
不利な条件の中で専門学校への進学を決定している可能性を有しており、学生支援方策の
策定に当たってはこうした観点が必要になろう。また、教育市場変数に関する結果に関し
ては、上記のように家計年間収入が低く、高卒者に良好な就職機会が少ない県で専門学校
が多く設置されている県で専門学校収容率が高くなった結果、専門学校進学率がより高く
なるといったメカニズムも想定され、こうした点についても留意が必要である。
ただし、今回の分析は上述したようなデータ上の制約に基づくものであり、今後のデー
タの更なる蓄積やそれによって可能になる都道府県別のパネル分析などによってその結果
の頑強性を確認していくことや女子についての分析が今後の課題となる。
引用文献
島一則, 1999,「大学進学行動の経済分析-収益率研究の成果・現状・課題-」
『教育社会学研
究』,64, 101-121
矢野眞和 1984,「大学進学需要関数の計測と教育政策」
『教育社会学研究, 39, 216-228,
矢野眞和・濱中淳子 2006,「なぜ,大学に進学しないのか : 顕在的需要と潜在的需要の決
定要因」
『教育社会学研究』79, 85-104
注
1
こちらについては文部科学省によるデータ収集年度の制約上やむを得ず、この年度の値を用い
ることとする。
2 ここでは専門学校卒者の賃金はこれらの学歴に類似したものとして分析を行う。
- 44 -
第3章 専修学校調査からみた学生に対する経済的支援の現状
浦田広朗(名城大学)
吉田香奈(広島大学)
本章では、2013 年 12 月から 2014 年 2 月にかけて実施した「専修学校の生徒・学生支援調査」
により、専門学校及び専門学校学生の実態を把握した上で、そこでなされている経済的支援及び学
生指導の現状を明らかにし、専門学校生に対する支援の課題を検討する。
0. 調査の意図と概要
専修学校は、職業若しくは実際生活に必要な能力の育成、又は教養の向上を図ること目的として
設置された教育機関であり、入学資格に応じた課程(一般課程・高等課程・専門課程)が置かれて
いる。
「専修学校の生徒・学生支援調査」は、全国の専修学校のうち一般課程のみを置くもの(2013
年 5 月 1 日現在 107 校)を除く 3,109 校を対象として実施した。専修学校による後期中等教育機会
あるいは高等教育機会の提供とその課題を明らかにする意図からであるが、本章での分析は、短期
高等教育機関としての専修学校という観点から、専門課程を置く専修学校、すなわち専門学校を中
心に行う。高等専修学校については、高等学校とは異なる形で後期中等教育機会を提供する機関と
して貴重であるので、稿を改めて報告したい。
これらの点を含め、調査の概要を示すと次の通りである(調査票及び単純集計結果は本章末尾を
参照)。
①調査名称:専修学校の生徒・学生支援調査
②調査主体:専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査委員会(文部科学省委託事業)
③調査対象:高等課程又は専門課程を置く専修学校 3,109 校(専門課程は 8,128 学科)
④調査方法:2013 年 12 月下旬に各専修学校に対して郵送により調査への協力を依頼し、2014 年
2 月上旬までに専用ウェブサイトからの回答を得た(ウェブサイトからの回答が困難な
学校は紙媒体により回答)
。
⑤主な調査項目:設置学科数・在学者数・教職員数、入学・中退・卒業後の状況、学生指導・生活
支援・納付金減免・奨学金の状況
⑥回収数:1,845 校(専門課程は 4,402 学科)
⑦回収率:59.3%(専門課程学科レベルでは 54.2%)
調査対象や回収数にも示したように、今回の調査は、学科単位での回答も求めた詳細なものであ
る。この点も影響して、回収率がやや低くなった。学科レベルでの回収率が更に低いのは、多数の
学科を設置する学校が設置する学科全てについては回答しなかった場合があることによる。しかし、
多様性を示す専修学校における生徒・学生支援の実態を明らかにする上で十分な情報を得ることが
できたと考えている。
- 45 -
1. 専門学校及び専門学校生の現状
1-1 高等教育供給構造の中での専門学校
まず、文部科学省「学校基本調査」等のマクロデータも用いて、我が国の高等教育全体における
専門学校の位置をみておきたい。大学・短大と比べれば設置基準は緩やかであるとはいえ、専門学
校にも入学定員が定められており、都道府県教育委員会(市町村立の場合)又は都道府県知事によ
る認可ないし届出事項となっている。2013 年度の入学定員総計1)は 409,982 人であり、大学(学
士課程入学定員 583,518 人)には及ばないものの、短大(本科入学定員 69,719 人)を大きく上回
る教育機会を供給している。
それぞれの入学定員の 2013 年 3 月の高等学校及び中等教育学校(後期課程)卒業者数に対する
比率(本章ではこれを相対的供給量、あるいは単に供給量と呼ぶ)は、大学 53.5%、短大 6.4%、専
門学校 37.6%、計 97.4%である。すなわち専門学校を含めると、我が国では高卒者に対して十分な
量の高等教育機会が供給されているということができる。
ただし、相対的供給量は都道府県によって大きく異なる。専門学校の相対的供給量が最も大きい
のは東京(90.0%)であり、最も小さいのは山梨(10.0%)である。京都・東京・兵庫・山梨のよ
うに大学供給量が専門学校供給量を 30%ポイント以上上回っている都府県もあれば、新潟・沖縄の
ように専門学校供給量の方が大学供給量を 10%ポイント以上上回っている県もある。こうした違い
は各県の高校生の進路選択にも影響を及ぼしていると考えられるが、この点については第 2 章で詳
細に分析されている。
本章で注目しておきたいことは、専門学校の相対的供給量は上記の通り 37.6%であるのに対して、
高等学校・中等教育学校新卒者の専門学校進学率は、17.0%である点である。大学への進学率
(47.4%)を下回り、短大への進学率(5.4%)を上回っているが、相対的供給量に対する比率(進
学率/相対的供給量)をみると、0.45 であり、大学(0.89)、短大(0.84)を大きく下回っている2)。
すなわち、専門学校は、高卒者数に対比させた入学定員にもとづいて言えば大幅な供給過剰である。
供給量と並ぶ供給構造の指標は、教育の価格である。今回の調査から得られた専門学校の学生納
付金平均値は表 3-1 の通りである3)。設置者及び専門分野によって異なるが、入学金・授業料・施
設設備費という、学生納付金の主要項目については、表 3-2 に示した大学・短大よりも低めの値と
なっている。
しかし、今回の調査に先立って複数の専門学校で実施したインタビュー調査によれば、こうした
正規の学生納付金以外に、テキスト代、用具代、宿泊セミナー・研修会費用、専門に関係する検定
試験の受験料などが学生にとってはかなりの負担になっている。そこでこれらを「諸費用」として
調査した。調査では入学から卒業までに必要な「諸費用」を尋ねたが、表 3-1 には 1 年当たりの「諸
費用」すなわち調査での回答をそれぞれの学科の修業年限で除した値の平均を記入している。この
「諸費用」を加えると、専門学校教育を受けるための費用は、国立と私立では大学・短大と同等以
上になっていることが分かる。もちろん、大学・短大でも「諸費用」に相当する費用を学生が負担
しなければならない。しかし、それらは任意であることも多い。これに対して専門学校では、明確
に定められた専門分野に強く関連するものとして、こうした「諸費用」が必要とされるのである。
- 46 -
表 3-1 専門学校の学生納付金
単位:千円
設置形態
分野
入学金
国立
医療
183
386
公立
実習費
その他
計
諸費用
合計
5
7
51
631
193
825
農業
14
123
13
42
275
468
234
701
医療
38
181
7
43
152
421
153
574
教育・社会福祉
24
178
0
8
24
234
61
295
文化・教養
私立
授業料 施設設備費
149
338
0
0
0
487
149
636
全体
35
171
8
40
172
426
170
597
工業
158
598
176
140
59
1,132
171
1,303
農業
140
531
201
112
96
1,080
156
1,236
医療
261
682
148
121
59
1,271
243
1,514
衛生
141
570
155
224
121
1,210
249
1,460
教育・社会福祉
153
607
146
74
80
1,060
207
1,267
商業実務
133
572
171
62
46
984
199
1,183
服飾・家政
185
552
154
63
50
1,003
384
1,387
文化・教養
137
656
161
84
68
1,105
208
1,313
全体
172
617
160
113
67
1,129
223
1,353
注:実習費と「その他」は学校納付金。諸費用は、学校納付金以外に必要な費用(1年当り)。いずれも昼間部。
公立のうち2学科以下の分野は省略したが、全体には含まれている。国立は医療のみ。
表 3-2 大学・短大の学生納付金
単位:千円
入学金
授業料 施設設備費
実習費
その他
計
国立大学
標準額
282
536
0
0
0
818
私立大学
文科系学部
251
742
160
11
63
1,227
理科系学部
266
1,036
190
67
67
1,626
医歯系学部
1,035
2,803
883
182
2,077
6,980
その他学部
274
939
245
81
76
1,615
全平均
268
859
189
35
92
1,443
公立短大
全平均(域内)
137
375
11
29
56
522
私立短大
全平均
249
695
178
44
96
1,262
注:私立大学と私立短大は文部科学省「私立大学等の平成24年度入学者に係る学生納付金等調査」、
公立短大は旺文社『全国短大進学ガイド』2013年による。
以上をまとめると、専門学校教育は、高等教育市場において、かなり高い価格で、しかし、相対
的には多めに供給されているということになる。供給過剰であれば価格が下がるというのが経済原
則であるが、私立専門学校の場合、私立大学・短大以上に学生納付金依存度が高い4)こともあって、
学生納付金を下げることは困難という経営判断がなされていると思われる。また、特に職業的能力
の育成のために必要な「諸費用」を学生に負担させざるを得ないのである。
1-2 専門学校の教育条件:規模と ST 比
- 47 -
個々の専門学校に目を向けると、多様な条件の下に置かれている。既存調査や今回の調査から得
られる学生数・教員数データによって、専門学校の教育条件をみておきたい。
表 3-3 は、
「学校基本調査」から得られる大学・短大・専門学校の基本データである。このデータ
から得られる 1 校当たりの値から、同じ高等教育機関とはいえ、専門学校は大学の 15 分の 1 以下
の規模であり、短大と比較しても 6 割弱の規模であることが分かる5)。
表 3-3 高等教育機関の学校数・在学者数・教員数
1校当り
学校数
在学者数
教員数
在学者数
教員数
ST比
大学
782 2,562,068
178,669
3,276
228
14.3
短期大学
359
133,714
8,631
372
24
15.5
専門学校
2,811
587,330
36,322
209
13
16.2
注:文部科学省「学校基本調査」2013年より。
大学の在学者数は学士課程学生数、短大は本科学生数、専門学校は専門課程学生数。
校 600
500
400
300
200
専門学校
大学
100
100人未満
100~200
200~300
300~400
400~500
500~600
600~700
700~800
800~900
900~1000
1000~1100
1100~1200
1200~1300
1300~1400
1400~1500
1500~1600
1600~1700
1700~1800
1800~1900
1900~2000
2000人以上
0
在学者数
注:専門学校については「専修学校の生徒・学生支援調査」
(2013 年度)
、大学については
東京大学大学経営・政策研究センター作成データベース(2010 年度)より算出。
図 3-1 専門学校・大学の規模別分布
ただし、学校規模(在学者数)も多様であるのが専門学校の特徴である。図 3-1 は今回の調査か
ら得られたデータから、専門学校の規模別分布を示したものである。図 3-1 に示した区分では、在
学者数 100 人台の専門学校が最も多く、それ以上の規模の学校数は急速に減少する。しかし、1000
人台後半以上の規模の学校も少数ながら存在しており、最大規模の学校の学生数は 5000 人を超え
る。図 3-1 にはさらに、大学の規模別分布を示している。在学者数 1000 人未満の大学は、全体の
31.8%であり、これらの大学は、規模の上では専門学校との重なりをみせている。
- 48 -
他方、専門学校では、在学者数 100 人台の学校に次いで多いのは 100 人未満の学校である(508
校、全体の 29.6%)
。その中には、専門課程の学科を設置し、学生募集も行っていながら在学者数
ゼロと回答した学校も 5 校みられる。この 5 校を含めて、在学者数 10 人未満の専門学校は 37 校(全
体の 2.2%)
、20 人未満は 65 校(同 4.1%)
、30 人未満 108 校(同 6.3%)である6)。
こうした学校では濃密な少人数教育が行われていると考えられるが、教員数が多ければ、大規模
校であっても少人数教育は可能である。そこで、ST 比(在学者数/専任教員数)を算出してみると、
図 3-2 に示すように専門学校全体の 76.7%は ST 比が 20 未満である。したがって、比較的好条件の
下で教育が行われるとみることができる。しかし、少数ながら ST 比が 40 以上の専門学校もみられ
る。
図 3-3 には、在学者数と ST 比の関係を示した。在学者数が 130 人を超えるあたりから、ST 比
40 以上の学校がみられる。ただし、在学者数が 2,000 人を超える学校の ST 比は、いずれも 40 未
満である。
ST比 10未満
25.8%
10~20
50.9%
20~30
16.2%
30~40
4.2%
40~50
1.6%
50~60
0.6%
60以上
0.7%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
図 3-2 ST 比別にみた専門学校の分布
ST比
120
100
80
60
40
20
0
1
10
100
1,000
10,000
在学者数(人)
図 3-3 専門学校の規模と ST 比の関係
- 49 -
1-3 専門学校の入学状況と中退
こうした専門学校に学生はどのように入学し、学び、卒業しているのだろうか。まず、入学状況
をみてみよう。既に述べたように、専門学校全体の入学定員充足率は 65.8%だが、これは専門分野
別にみるとかなり異なる(図 3-4)。医療系が 90%近くであるのに対して 4 割を下回っている分野も
ある。
計
66%
工業
62%
農業
71%
88%
医療
衛生
63%
69%
教育・社会福祉
商業実務
54%
37%
服飾・家政
文化・教養
64%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
注:文部科学省「学校基本調査」2013 年より。
図 3-4 専門学校入学定員充足率(分野別)
12%
充足率20%未満
18%
20%以上40%未満
17%
40%以上60%未満
60%以上80%未満
15%
80%以上100%未満
14%
100%以上120%未満
19%
充足率120%以上
5%
0%
5%
10%
15%
20%
図 3-5 入学定員充足率別学科分布
今回の調査データによって学科単位でみると、定員以上の入学者を受け入れている学科が全体の
4 分の 1 ほどみられるが、定員充足率 40%前後の学科が全体の 3 分の 1 を超えている(図 3-5)。日
本私立学校振興・共済事業団(2013a)によれば、大学や短大の場合は、全体の入学定員充足率(大
学は 105.6%、短大は 92.2%)の近傍に多くが集中しているが、専門学校の入学定員充足率を学科単
位でみると、充足率 20%未満の学科から 120%程度の学科まで一様分布に近い状態で分布している。
入学定員充足率、あるいは新規高卒者を基準とする相対的供給量からみると、専門学校は供給過
- 50 -
剰ということになる。しかし、大学・短大、あるいは他の専門学校の卒業者をかなり受け入れてい
る。専門学校入学者に占める大学・短大卒業者の比率は、
「学校基本調査」からも得られるが、今回
の調査からも、ほぼ同様の値を得ている(表 3-4)。入学者に占める比率は、大卒が約 6%、短大卒
が約 1%である。さらに、
「学校基本調査」では調査されていない点として、他の専門学校の卒業者
が入学者の 6%を占めていることが今回の調査から明らかになった。これらを合わせると専門学校
入学者の 1 割以上は他の高等教育機関卒業者ということになる。加えて今回の調査では、こうした
高等教育機関を卒業して入学した人数だけでなく、中退して入学した人数も回答してもらった。回
答によれば、他の高等教育機関を中退して入学した人は、専門学校入学者の 2%近くを占める。
表 3-4 専門学校入学者に占める大学・短大・専門学校卒業者の比率(%)
単位:%
大学
短大 専門学校
学校基本調査
6.2
1.3
-
今回調査(卒業者)
5.6
1.4
6.0
今回調査(中退者)
1.3
0.1
0.4
表 3-5 在学者に占める社会人の比率(%)
単位:%
全体
国立
公立
私立
専門学校
8.5
9.0
10.0
8.4
短期大学
2.0
-
1.9
2.0
大学
0.2
0.4
0.5
0.1
大学院修士課程
10.7
6.2
19.1
16.6
大学院博士課程
36.4
33.7
45.0
40.9
注:専門学校は今回調査、大学院は学校基本調査による社会人在学者の比率、
短大と大学は文部科学省(2013a,2013b)による社会人入学者の比率である。
また、就業経験者(退職者や主婦も含む)、いわゆる社会人の比率は、設置形態によって異なるが、
国公立では 1 割近くとなっている(表 3-5)。短大と大学の値は社会人在学者の比率ではなく、文部
科学省(2013a,2013b)から得た社会人入試による入学者の入学者全体に占める比率であるので注
意が必要だが、これらと比較すると専門学校の社会人比率は高いといえる。大学院博士課程には及
ばないが、国立専門学校の社会人比率は、修士課程よりも高い。公立や私立でも修士課程の半分程
度に達している。このように専門学校は、高等教育を受けた者も含めた社会人の学び直しの場とも
なっている。
入学後の状況を示す指標として、中退率を検討しておきたい。中退率は、入学後の教育が学生に
適合的なものであるか否か、意図したような学習ができているか否か、学習を続ける条件が整って
いるか否かを示す総合的指標であるということができる。ここでは便宜上、中退率を、調査で回答
- 51 -
してもらった最近 3 年間の中退者数を 2013 年度の在学者数で除して算出した(表 3-6)。設置形態
によって異なるが、私立の場合は、毎年 7%程度の学生が中退している。したがって、修業年限が 2
年であれば 14%、3 年であれば 21%の学生が中退しているということになる。これは、表 3-7 に示
す四年制大学の中退率と比較するとかなり高い。
表 3-6 専門学校の中退率
単位:%
全体
国立
公立
私立
2010
6.8
4.1
4.0
6.9
2011
7.2
4.4
4.2
7.4
2012
6.7
4.1
5.3
6.8
注:各年度1年間の中退率である。
表 3-7 四年制大学の中退率(2003 年度入学者)
単位:%
男子
女子
全体 国立 公立 私立 全体 国立 公立 私立
4年以内中退率
10.8
4.1
6.5 12.4
6.1
2.0
3.8
7.0
8年以内中退率
13.7
7.5
8.9 15.2
6.9
2.7
4.7
7.8
注:朴澤(2012)65頁より。1年間の中退率は、表中の値を4で除す必要がある。
表 3-8 専門学校(昼間部)中退理由
単位:%
学業不振
学校生活
不適応
進路変更
進路変更
(就職) (転学・進学)
進路変更 病気・けが
(その他)
・死亡
経済的
海外留学
その他
理由
国立 医療
16.2
4.0
13.1
7.1
54.5
17.2
1.0
0.0
6.1
公立 全分野
17.2
11.5
24.8
10.0
26.7
13.4
4.2
0.2
10.0
私立 工業
22.2
14.1
19.3
9.3
7.4
14.3
12.5
0.4
10.2
農業
22.2
38.9
33.3
2.8
13.9
16.7
8.3
0.0
0.0
医療
39.2
8.7
14.2
8.4
17.8
9.9
6.9
0.0
8.1
衛生
16.2
22.9
21.1
7.2
19.5
12.8
10.2
0.3
9.3
教育・社会福祉
21.4
16.9
15.3
7.4
18.5
12.9
9.7
0.1
8.4
商業実務
13.6
15.5
33.4
8.2
15.0
12.6
12.9
0.1
11.1
服飾・家政
26.5
8.7
11.8
9.1
16.9
17.8
11.8
0.3
5.1
文化・教養
14.5
10.1
16.9
12.6
14.8
12.6
16.4
0.3
13.1
全分野
24.2
12.9
17.9
9.3
15.7
12.4
11.1
0.2
9.7
注:各設置形態・分野の中退者数合計を分母とする比率である。
表 3-8 には、中退の理由について、設置形態別に示し、私立については分野別にも示した。私立
の場合は学業不振による中退が多く、次いで進路変更(就職)
、進路変更(その他)
、学校生活不適
応となっている。これらと比べると経済的理由による中退はやや少ないが、就職など、他の理由に
よる中退の中には経済的理由によるものも含まれると思われる。
中退理由には分野による違いも認められる。学業不振による中退の比率が高いのは医療である。
- 52 -
医療は経済的理由による退学が際立って少ない。その原因として、この分野は学納金が高いため、
比較的豊かな層が入学していることにもよると考えられる。
経済的理由の中でも深刻なのは、学生納付金を支払うことができないというものである。多くの
場合、学納金が払えない学生は除籍となる。そこで、表 3-9 では、まず学納金の延納を申請した者
の比率、そして、延納期限までに納入することができず、滞納状態となった者の比率、さらに、最
終的に除籍となった者の比率を示した。国公立の場合は、学費未納で除籍となる者はほとんどいな
いが、私立の場合は、滞納者が 1.5%、除籍者が 0.2%いる。除籍者の比率は、学納金が高い医療よ
りも、学納金が相対的には高くない分野の方が高いことが分かる。こうした状況に対して、どのよ
うな支援がなされているかについては、後述する。
表 3-9 専門学校(昼間部)納付金延納申請者率・滞納者率・除籍者率
単位:%
延納申請者率
滞納者率
除籍者率
国立 医療
0.5
0.4
0.0
公立 全分野
0.9
0.6
0.0
私立 工業
2.6
2.0
0.3
農業
2.2
0.6
0.6
医療
3.0
0.9
0.1
衛生
3.9
1.1
0.2
教育・社会福祉
3.3
1.6
0.1
商業実務
3.4
1.8
0.3
服飾・家政
4.8
1.1
0.4
文化・教養
4.0
2.0
0.3
全分野
3.4
1.5
0.2
注:各学科の在学者数に対する比率の平均値である。
1-4 卒業後の状況
卒業後の状況については「学校基本調査」からも把握できるが、今回の調査でも最近 3 年間の就
職者数と進学数を調べた。2010 年度から 2012 年度までの変化をみると、就職状況がやや上向きと
なっているのに対して、卒業後に大学や他の専門学校に進学する者の比率は僅かに減少している(本
章末尾の集計結果参照)
。
2012 年度の就職者については、就職先の産業別人数も得た。それを用いて表 3-10 では、一部の
分野について、専門分野に関連する産業に就職した比率も示している。これらの比率も、表 3-11 に
示した大学・短大の値よりも高く、専門学校の就職状況は相対的には良好であるということができ
る7)。植上(2011)は、専門学校卒業者などへのインタビュー調査にもとづいて、専門学校で身に
つけた知識・技術が就職に直接役立つというわけではなく、専門学校で培った基礎能力や職業観が
役立っていると指摘しているが、その意味での教育の成果は、就職率という形でも上がっていると
いえよう。
- 53 -
表 3-10 専門学校(昼間部)卒業者の進路
単位:%
卒業者数 就職
進学
(人)
就職率 関連産業 一時的職
大学 専門学校
国立 医療
1,265
88.9
87.2
0.3
3.2
3.0
公立 農業
1,198
80.0
45.2
3.6
1.8
3.1
医療
4,135
92.7
92.4
1.2
1.8
2.0
教育・社会福祉
177
96.6
95.5
0.0
0.6
1.7
文化・教養
86
54.7
4.7
8.1
12.8
合計
5,768
89.3
1.7
1.8
2.4
私立 工業
16,926
79.9
36.0
2.3
1.6
7.4
農業
322
79.2
45.3
1.2
0.6
0.3
医療
26,720
89.2
86.0
1.3
0.4
2.0
衛生
20,724
87.5
2.4
0.2
1.7
教育・社会福祉
9,040
89.6
88.2
3.0
0.8
1.6
商業実務
13,071
75.8
2.9
3.2
5.8
服飾・家政
3,693
71.3
3.8
0.5
9.5
文化・教養
20,351
61.5
7.1
5.0
4.5
合計
111,191
80.1
3.2
1.7
3.9
左記以外
その他 および不詳
0.6
3.9
1.6
10.0
0.8
3.0
0.6
0.6
0.0
19.8
1.3
4.5
0.6
7.9
3.4
15.2
0.6
6.4
1.0
5.9
0.2
4.9
0.6
7.7
0.5
5.7
1.7
15.9
0.9
8.4
注:各設置形態・分野の卒業者数を分母とする比率である。一時的な職に就いた者は就職率に含めていない。
公立のうち2学科以下の分野は省略したが、合計には含まれている。
関連産業とは、医療は医療・福祉、農業は農業・林業、工業は鉱業・建設業・製造業・電気ガス・熱供給・水道・情報通信、
教育・社会福祉は教育・学習支援・医療・福祉。
表 3-11 大学・短大(昼間部及び夜間部)卒業者の進路
単位:%
学科分類
大学 人文科学
社会科学
理学
工学
農学
保健
家政
教育
芸術
その他
計
短大 人文
社会
教養
工業
農業
保健
家政
教育
芸術
その他
計
卒業者数 就職
(人)
就職率
84,785
68.4
191,407
74.4
17,745
43.2
85,307
53.0
17,330
60.7
50,718
85.7
16,084
80.7
39,749
74.9
15,937
48.2
33,661
68.8
552,723
68.9
6,494
48.1
6,775
70.0
818
71.7
1,602
57.8
608
39.2
3,983
84.8
12,503
76.2
22,605
85.0
2,475
36.9
4,512
70.9
62,375
73.5
関連産業
32.6
3.0
50.7
37.4
13.1
10.0
80.0
23.2
一時的職
4.8
2.8
1.5
1.0
2.1
0.5
3.1
5.3
8.9
3.8
3.0
6.1
3.2
4.6
1.4
6.4
1.5
3.8
2.1
7.3
4.7
3.4
進学
大学院
4.7
2.9
43.1
36.3
23.6
4.4
2.8
6.2
8.7
7.0
11.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
大学学部 大学短大 専修学校
短大本科 専攻科別科 外国学校等
0.4
0.1
2.5
0.2
0.0
1.8
0.3
0.1
1.3
0.1
0.1
1.2
0.4
0.3
1.2
0.2
0.6
0.7
0.1
0.1
1.4
0.3
0.3
1.6
0.4
1.1
3.4
0.3
0.1
2.3
0.2
0.2
1.7
20.9
1.7
6.0
11.8
1.0
2.0
6.0
2.0
2.9
20.7
5.5
1.4
38.3
0.2
3.6
2.0
4.6
0.6
4.7
1.4
2.3
2.5
4.0
0.7
13.1
10.5
4.7
6.9
1.8
2.2
7.4
3.0
2.1
左記以外
不詳・死亡
19.3
18.0
11.3
8.8
11.8
8.0
11.8
11.4
29.5
17.8
15.1
17.3
11.8
12.7
13.2
12.4
6.5
11.6
5.6
27.5
13.5
10.6
注:文部科学省「学校基本調査」より2013年3月卒業者について算出。就職率には非正規(1年以上契約)と研修医を含むが、一時的な仕事は含まない。
関連産業とは、工学・工業は鉱業・建設業・製造業・電気ガス・熱供給・水道・情報通信、農業は農業・林業、保健は医療・福祉、教育は教育・学習支援。
- 54 -
2.経済的支援と学生指導の現状
次に、経済的支援と学生指導の現状について見ていく。まず、日本学生支援機構奨学金の受給率、
推薦内示数・過不足感、返還延滞率・返還指導について検討する。次に、学校独自の経済的支援と
して給付奨学金と納付金減免の選考基準・範囲等について見ていく。最後に各学校における学生指
導の取り組みと中退防止策について検討を行う。
2-1 日本学生支援機構奨学金
2-1-1 受給率
今回のアンケートでは各種奨学金の学科別受給者数を尋ねている。全4,402学科のうち、奨学金受
給者数の具体的数字の記入があった学科、つまり最低1人以上の受給者がいる学科の数を示したのが
図3-6である。最も多かったのは日本学生支援機構第2種奨学金の受給者のいる学科で3,346学科
(76.0%)であった。
図3-6 奨学金受給者のいる学科数(平成25年度)
次に、奨学金受給率をみてみよう。奨学金受給者数を在学者数で除した奨学金受給率の平均値を
示したのが表3-12である。日本学生支援機構第1種奨学金受給率は6.5%、第2種奨学金24.1%、第
1種・2種併用3.8%となっており、第2種の受給率が高い。
なお、学校独自の納付金減免の平均受給率は29.4%と高く、納付金減免を行っている学校では手
厚い支援が行われていることがわかる。納付金減免には入学金の減免と入学金以外の納付金の減免
の2通りがある。詳しくは次節で取り上げる。
- 55 -
表3-12 奨学金受給率(学科在学者数に占める奨学金受給者の割合)
奨学金の種類
日本学生支援機構第1種
日本学生支援機構第2種
受給者の
奨学金受
いる学科
給率(%)
数
2,725
6.5
3,346
24.1
日本学生支援機構1・2種併用
他団体給付奨学金
1,871
317
3.8
10.9
他団体貸与奨学金
学校独自給付奨学金
635
520
11.1
11.4
学校独自納付金減免
学校独自貸与奨学金
1,671
393
29.4
14.6
※奨学金受給率は、学科在学者に占める受給者の割合
の平均値である。受給者のいる学科に限定して算出し
ている。
2-1-2 推薦内示数と過不足感
では、各学校は日本学生支援機構奨学金についてどのように感じているのだろうか。今回のアン
ケート調査では「推薦内示数」を第1種と第2種に分けて尋ね、更にその過不足感を尋ねた。推薦
内示数とは、毎年春に募集が行われる在学定期採用において各学校に対して通知される推薦人数の
ことであり、各学校はこの範囲内で奨学生の推薦を行う。
そこで、各学校の在学者数に占める推薦内示数の割合を図3-7に示した。第1種は5.0%以下が大
半を占めるが、第2種は5.1~10.0%の割合が最も多く、15%を超える学校も一部存在している。こ
のように学校間で内示率に差があるのは推薦内示数の計算方法と深い関係がある。日本学生支援機
構によれば、推薦内示数の算出は各学校の実態に応じた配分となるよう複数の算出要素(入学実員、
採用実績、返還延滞率)に基づいて計算が行われる。よって、これらの要素の差によって内示率に
違いが生じることになる。
図3-7 日本学生支援機構の推薦内示率(在学者数に占める割合)
- 56 -
図3-8 日本学生支援機構奨学金の推薦内示数の過不足感(設置形態別)
次に、各学校に割り当てられた内示数が十分であったかどうかを尋ねた結果が図3-8である。第1
種奨学金は全体では「やや足りない」(53.0%)が最も多く、
「とても足りない」(14.4%)と合わせると
約7割の学校が不足を感じている。設置形態別では特に国立で不足感が強い。一方、第2種奨学金
は「十分な人数である」(59.6%)が最も多く、約6割の学校が十分であると考えている。ただし国立
は「とても足りない」(14.8%)と感じている割合が他より高くなっている。
第1種奨学金は無利息であるため希望者が多いが、推薦内示数が小さいため推薦枠から外れる者
もまた多い。推薦基準を満たしながらも推薦内示数の関係により推薦から外される者(残存適格者)
をできるだけ少なくするために、今後は第1種の推薦内示数の拡大が検討されるべきであろう。日
本学生支援機構によれば、現在、残存適格者については予算状況に応じて追加採用が行われており、
実際には推薦基準を満たす者は全員採用となっているという。早期のサポートという点から内示数
の拡大が求められよう。
2-1-3 返還延滞率・返還指導
次に、日本学生支援機構奨学金の返還状況についてみていく。図3-9は日本学生支援機構から各学
校に対して通知されている卒業者の返還延滞率である。延滞率は「延滞者数÷要返還者数×100」
の計算式で算出される。例えば、平成25年度の延滞率は平成19年4月~平成24年3月の貸与終了債
権を平成25年3月末で集計したものである。つまり、過去5年間に貸与が終了した奨学金の延滞状
況を示している。延滞率は新規奨学生採用の内示割当数積算に係る指標の一つとなっており、その
改善状況が各学校への割当数の増減に影響する。そのため、各学校では延滞率を下げるため奨学生
の返還意識の徹底等が図られている。
なお、今回のアンケートでは、通知された第1種奨学金延滞率、第2種奨学金延滞率、合計延滞
率のそれぞれについて記載を求めた。図3-9はその平均値である。第1種延滞率は6.5%、第2種延
滞率は8.9%、全体延滞率は8.7%である。第2種の方が延滞率は高くなっている。設置形態別では国
立の延滞率が第1種・第2種、共に最も低くなっている。
- 57 -
この分布を示したのが図3-10である。第1種は0%の学校が最も多いが、第2種は5.1~10.0%の
学校の割合が最も多い。なお、20%を超える学校も少ないながら存在していることが確認できる。
では、各学校ではどのような返還指導が行われているのだろうか(図3-11)。最も多かったのは「申
請時の説明会で、返還について説明している」(84.6%)であり、次いで「卒業前に説明会を開催し、
返還について説明している」(78.7%)であった。しかし、これは裏を返せば申請時や返還時の説明会
で返還指導をしていない学校が一定数存在することを示している。無論、説明会という形ではなく
個別に指導している場合もあるだろう。しかしそうでない場合、貸与者に情報が伝わっていないこ
とになる。今後は、更に返還指導の徹底を求めていく必要があると考えられる。なお、在学中にク
ラス担任等が返還を呼びかけているのは約4分の1、卒業後に連絡を取って返還を呼びかけているの
は1割未満にとどまっている。
自由記述では「スカラネットパーソナル、モバイルサイトに全員加入するよう指導」
「適格認定時
に返還の重要性について説明」
「チェックシートを作成し、本人の確認サインを記入して貰う」とい
った指導が行われていることが報告されている。また、貸与者だけでなく「受給者の家族にも説明
を行う」
「保護者あて文書の発送」という方法をとる学校もある。さらに、卒業生に対しては「卒業
後Twitter等での呼びかけ」
「同窓会会報に返還の呼びかけ記事を掲載」
「卒業後も本人と連絡を取り
合う機会を設けている」といった努力がなされている。また、
「延滞者の情報(氏名)がもらえない
ため一般論として卒業生に文書を出している」という意見もあった。
図3-9 日本学生支援機構奨学金の返還延滞率(設置形態別)
図3-10 日本学生支援機構奨学金の延滞率の分布
- 58 -
図3-11 日本学生支援機構奨学金の返還指導の方法
2-2 学校独自の経済的支援
続いて、専門学校が独自に行う経済的支援について見ていく。今回のアンケート調査では給付型
奨学金、入学金減免、入学金以外の納付金減免の3つに分けて、それぞれ選考基準、金額、対象範
囲等について尋ねた。
2-2-1 学校独自の給付奨学金
まず、給付奨学金の現状について見ていく。図3-12及び表3-13は学校独自の給付奨学金の選考基
準を示したものである。最も多いのは「入学後の学業成績」(39.8%)であり、次いで「その他の人物・
学業の基準」(32.1%)、
「入学前の学業成績」(15.2%)、
「入学試験の成績」(10.2%)となっている。ま
た、表3-14はこれらを専攻分野別にみた割合である。「入学後の学業成績」は特に教育・社会福祉
(60.0%)で高い。
なお、その他の人物・学業の基準としては「高校生活での評価(クラブ活動)」
「医療系国家資格
所持者」「大学新卒者」「卒業生および在校生の親族」
「遠隔地出身者」「社会人入試区分で入学した
学生」
「留学生」「コンテストや大会の上位受賞者」「態度、身だしなみ」
「学業、品行ともに優秀で
他の模範となる学生」等の回答があった。
一方、経済的基準では「母子又は父子家庭」(7.1%)が最も高く、次いで「その他の経済的基準」
(9.0%)となっている。全体的に人物・学業重視よりも割合が低く、経済的基準、つまり機会均等の
観点からの給付は少ないことが指摘できよう。
- 59 -
※図3-6の「学校独自給付奨学金」520学科の集計
図3-12 給付奨学金の選考基準
表 3-13 給付型奨学金の選考基準
選考基準
1.入学前の学業成績
2.入学後の学業成績
3.スポーツの実績
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
6.入学試験の成績
7.入学前の学校での出席状況
8.その他の人物・学業の基準
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
経済的基
4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
※同上
- 60 -
学科数
割合(%)
79
207
21
25
18
53
47
167
9
5
16
37
16
34
47
15.2%
39.8%
4.0%
4.8%
3.5%
10.2%
9.0%
32.1%
1.7%
1.0%
3.1%
7.1%
3.1%
6.5%
9.0%
平成25年度
対象者数
9.5人
6.9人
1.4人
4.1人
7.8人
8.3人
5.6人
7.4人
0.6人
0.7人
1.0人
3.8人
4.0人
5.5人
8.2人
表3-14 給付型奨学金の選考基準(分野別)
専攻基準
1.入学前の学業成績
2.入学後の学業成績
3.スポーツの実績
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
6.入学試験の成績
7.入学前の学校での出席状況
8.その他の人物・学業の基準
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
経済的基
4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
工業
(N=113)
農業
(N=2)
14.2%
33.6%
3.5%
3.5%
.9%
12.4%
11.5%
48.7%
2.7%
1.8%
2.7%
8.8%
8.0%
9.7%
14.2%
.0%
50.0%
.0%
.0%
.0%
50.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
医療
衛生
(N=143) (N=38)
14.0%
32.9%
3.5%
2.8%
2.1%
9.8%
6.3%
27.3%
1.4%
.7%
2.1%
4.9%
.7%
4.9%
4.9%
21.1%
36.8%
2.6%
2.6%
5.3%
15.8%
7.9%
31.6%
.0%
.0%
2.6%
5.3%
.0%
5.3%
2.6%
教育・
商業実 服飾・ 文化・
社会福
務
家政
教養
祉
(N=65) (N=23) (N=77)
(N=55)
20.0%
15.4%
21.7%
11.7%
60.0%
33.8%
47.8%
51.9%
5.5%
9.2%
.0%
2.6%
5.5%
7.7%
.0%
10.4%
5.5%
4.6%
.0%
7.8%
18.2%
7.7%
.0%
2.6%
10.9%
6.2%
.0%
15.6%
36.4%
26.2%
21.7%
24.7%
.0%
4.6%
.0%
1.3%
.0%
1.5%
4.3%
.0%
.0%
9.2%
.0%
3.9%
10.9%
3.1%
.0%
10.4%
1.8%
.0%
.0%
5.2%
7.3%
.0%
4.3%
9.1%
5.5%
6.2%
39.1%
6.5%
※同上
2-2-2 入学金減免措置
図3-13及び表3-15は入学金減免の選考基準である。最も多いのは「入学前の学業成績」(24.0%)
であった。表3-15はその専攻分野別を示しており、特に教育・社会福祉で特に高くなっている。そ
の他の人物・学業の基準としては「推薦入学で入学した者」
「作品評価」
「高校在学中の資格取得状
況」
「面接試験の成績」
「入学者の兄弟姉妹が本校及び系列校の在校生又は卒業生である場合」
「内部
進学」「学校説明会への4回以上の参加者」等の回答が寄せられた。
一方、経済的基準による選考は非常に低調である。入学金の減免もまた育英的な観点からのもの
が中心であると言えよう。
なお、図3-14は入学金減免の範囲である。最も高いのは入学金の全額を免除する学校で35.4%、
次いで一部免除31.1%であった。入学金減免についても育英的な観点からの支援が多いことが分か
る。
- 61 -
※図3-6の「学校独自納付金減免」1,671学科の集計
図3-13入学金減免措置の選考基準
表3-15 入学金減免措置の選考基準
選考基準
1.入学前の学業成績
2.入学後の学業成績
3.スポーツの実績
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
6.入学試験の成績
7.入学前の学校での出席状況
8.その他の人物・学業の基準
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
経済的基
4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
※同上
- 62 -
学科数
割合(%)
401
10
145
131
72
250
261
435
1
2
5
25
0
6
101
24.0%
0.6%
8.7%
7.8%
4.3%
15.0%
15.6%
26.0%
0.1%
0.1%
0.3%
1.5%
0.0%
0.4%
6.0%
平成25年度
対象者数
11.8人
1.6人
8.1人
7.4人
8.8人
11.3人
11.3人
10.7人
0.2人
1.3人
2.6人
1.9人
0.0人
0.9人
4.4人
表3-16 入学金減免措置の選考基準(専攻別)
選考基準
1.入学前の学業成績
2.入学後の学業成績
3.スポーツの実績
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
6.入学試験の成績
7.入学前の学校での出席状況
8.その他の人物・学業の基準
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
経済的基
4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
教育・
商業実 服飾・ 文化・
工業
農業
医療
衛生
社会福
務
家政
教養
(N=345) (N=20) (N=316) (N=174)
祉
(N=280) (N=72) (N=307)
(N=143)
25.8%
.0%
17.1%
27.0%
38.5%
26.8%
27.8%
19.5%
.0%
.0%
.3%
.6%
1.4%
1.1%
1.4%
.7%
8.7%
.0%
.9%
2.3%
7.7%
14.6%
9.7%
15.6%
9.0%
.0%
.9%
2.3%
6.3%
10.4%
15.3%
14.0%
8.1%
.0%
.9%
1.1%
5.6%
5.4%
12.5%
2.0%
20.3%
.0%
13.6%
11.5%
28.7%
12.9%
16.7%
8.5%
22.3%
.0%
5.7%
17.8%
21.0%
14.6%
19.4%
15.6%
20.9%
.0%
15.8%
23.6%
28.0%
31.1%
41.7%
35.2%
.0%
.0%
.3%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.6%
.0%
.0%
.0%
.3%
.6%
.0%
.3%
.6%
.0%
.0%
.0%
.3%
1.7%
.0%
.0%
1.1%
3.5%
2.5%
1.4%
1.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
.0%
2.3%
.7%
.0%
1.4%
.0%
1.7%
20.0%
4.4%
4.6%
2.1%
12.5%
.0%
10.1%
※同上
※同上
図3-14 入学金減免措置の範囲
表3-17
入学金減免措置の範囲
範囲
人物・学
業重視
経済的基
準重視
学科数
591
519
106
39
1.入学金の全額
2.入学金の一部
1.入学金の全額
2.入学金の一部
割合(%)
35.4%
31.1%
6.3%
2.3%
※同上
2-2-3 入学金以外の納付金の減免措置
図3-15と表3-18は入学金以外の納付金の減免措置の選考基準である。
「入学前の学業成績」(33.9%)
が最も高く、次いで「その他の人物・学業の基準」(31.4%)、
「入学試験の成績」(29.1%)となってい
る。経済的基準を用いる学科は全体的に少ないが、
「その他の経済的基準」(10.2%)、
「上記以外で所
得が基準額以下の世帯」(7.4%)が多い。その他の基準には「資格取得学生」
「特別奨学生試験の成績」
「留学生納付金減免措置」
「AO特待生入学減免」
「グループ職員家族割引・グループ校割引・兄弟割
引」などの回答があった。なお、表3-19は専攻分野別の割合である。特に工業系の学科では入学前
や入学試験の成績が重視されており、農業系の学科では市町村民税非課税世帯や生活保護世帯など
- 63 -
の経済的基準重視が多い。
また、図3-16は入学金以外の納付金の減免措置の費目である。人物・学業重視、経済的基準重視
ともに「授業料の一部」(65.9%、16.0%)が最も多い。
※同上
図3-15 入学金以外の納付金の減免措置の選考基準
表3-18 入学金以外の納付金の減免措置の選考基準
選考基準
1.入学前の学業成績
2.入学後の学業成績
3.スポーツの実績
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
6.入学試験の成績
7.入学前の学校での出席状況
8.その他の人物・学業の基準
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
経済的基
4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
※同上
- 64 -
学科数
割合(%)
567
273
244
198
105
487
314
524
54
42
49
80
27
124
171
33.9%
16.3%
14.6%
11.8%
6.3%
29.1%
18.8%
31.4%
3.2%
2.5%
2.9%
4.8%
1.6%
7.4%
10.2%
平成25年度
対象者数
11.1人
5.4人
6.6人
6.0人
7.3人
10.4人
11.4人
10.3人
3.0人
2.6人
2.1人
4.9人
2.9人
4.7人
8.0人
表3-19 入学金以外の納付金の減免措置の選考基準(専攻別)
工業
(N=345)
選考基準
農業
(N=20)
医療
(N=316)
衛生
(N=174)
教育・社
文化・教
商業実務 服飾・家
会福祉
養
(N=280) 政(N=72)
(N=143)
(N=307)
1.入学前の学業成績
42.9%
.0%
21.8%
38.5%
28.7%
40.0%
43.1%
2.入学後の学業成績
18.6%
10.0%
26.3%
14.9%
14.0%
9.3%
9.7%
14.3%
3.スポーツの実績
15.7%
.0%
7.6%
9.2%
12.6%
21.8%
11.1%
20.2%
14.8%
.0%
4.7%
8.6%
12.6%
16.4%
11.1%
14.3%
7.8%
.0%
3.8%
6.3%
7.7%
5.7%
9.7%
6.5%
6.入学試験の成績
36.2%
5.0%
21.2%
29.9%
30.8%
34.6%
27.8%
25.4%
7.入学前の学校での出席状況
21.7%
.0%
10.1%
21.3%
18.9%
22.5%
27.8%
18.9%
8.その他の人物・学業の基準
28.1%
10.0%
17.1%
23.6%
24.5%
45.7%
12.5%
50.5%
1.生活保護世帯
4.3%
45.0%
5.7%
.0%
.0%
1.1%
5.6%
1.3%
2.市町村民税非課税世帯
2.3%
65.0%
3.2%
.6%
.0%
.4%
5.6%
1.6%
3.失業・倒産などによる家計急変
4.1%
.0%
4.1%
1.1%
.0%
1.4%
5.6%
3.6%
9.9%
25.0%
3.8%
.6%
2.1%
5.7%
5.6%
1.3%
2.9%
10.0%
1.3%
.0%
.7%
1.8%
5.6%
.3%
15.4%
30.0%
8.2%
7.5%
4.2%
3.9%
5.6%
1.3%
6.1%
10.0%
8.2%
9.2%
6.3%
18.6%
1.4%
13.7%
人物・学 4.文化活動の実績
業重視 5.ボランティア活動の実績
経済的基 4.母子家庭又は父子家庭
準重視
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
※同上
※同上
図3-16 入学金以外の納付金の減免措置の費目
- 65 -
31.3%
表3-20 入学金以外の納付金の減免措置の費目(人物・学業基準重視)
人物・学
業重視
経済的基
準重視
費目
1.授業料の全額
2.授業料の一部
3.実習費の全額
4.実習費の一部
5.施設設備費の全額
6.施設設備費の一部
7.入学検定料の全額
8.入学検定料の一部
9.その他
1.授業料の全額
2.授業料の一部
3.実習費の全額
4.実習費の一部
5.施設設備費の全額
6.施設設備費の一部
7.入学検定料の全額
8.入学検定料の一部
9.その他
学科数
255
1101
29
71
70
99
189
8
52
80
168
33
48
34
43
40
8
9
割合(%)
15.3%
65.9%
1.7%
4.2%
4.2%
5.9%
11.3%
0.5%
3.1%
4.8%
16.0%
2.0%
2.9%
2.0%
2.6%
2.4%
0.5%
0.5%
※同上
2-3 納付困難者への対応
表3-21は納付金の納入困難者に対してどのような対応を行っているのかを尋ねたものである。最
も多かったのは「納付金納入が困難である者と相談した上で、分納回数を個別に設定している」
(65.5%)であり、次いで「納付金納入が困難である者と相談した上で、延納期限を個別に設定してい
る」(62.8%)であった。募集要項や学生便覧には掲載せず、個別に保護者や学生と相談して延納期限
や分納回数を設定するパターンが多いことが分かる。
表3-21 納付金納入困難者への対応
納付金納入困難者への対応
1.募集要項や学生便覧など学校の公的文書
に明記した上で、納付金納入が困難である
者の納付金延納を認めている
2.募集要項や学生便覧など学校の公的文書
に明記した上で、納付金納入が困難である
者の納付金分納を認めている
3. 納付金納入が困難である者と相談した上
で、延納期限を個別に設定している
4. 納付金納入が困難である者と相談した上
で、分納回数を個別に設定している
学科数
割合(%)
930
21.1%
1,730
39.3%
2,765
62.8%
2,882
65.5%
2-4 学生の生活支援
以上、専門学校独自の奨学金、納付金減免、納付方法の工夫についてみてきたが、学生に対する
経済的支援は直接補助だけでなく、安い学寮の提供や食堂の整備などの間接的な補助もある。図3-17
は各専門学校が学生の居住環境の支援として実施している取り組みを尋ねたものである。
最も多かったのは「学校が不動産業者等と提携し、通常の価格によるアパート等の斡旋・紹介」
- 66 -
(34.8%)であり、次いで「学校が不動産業者等と提携し、通常の価格よりも安価なアパート等の斡旋・
紹介」(29.5%)であった。学校が直接学生寮等を運営しているのは4分の1にとどまっており、今後充
実が望まれるところである。
図3-17 学生の居住環境の支援
2-5 学生指導
最後に、学生指導の状況について見ていく。図3-18はその具体的取り組みについて尋ねた結果で
ある。専門課程で最も多かったのは「必要に応じて生徒・学生との個人面談を実施している」
(80.5%)
であった。また、全員との個人面談を実施している学校も77.2%あり、きめ細かな指導が行われて
いる。
図3-18 学生指導の具体的取り組み
また、図3-19は中途退学防止の取り組みである。
「欠席者についての教職員間での情報共有」や「欠
席しがちな生徒・学生に対する担当教員からの連絡・相談」はほとんどの学校で取り組まれている。
一方、「納付金納入困難者への一時的な資金貸付」は9.1%しかない。これまで見てきたように、納
- 67 -
付金納入困難者には分納や延納を認める学校が相当数あるが、直接的な貸付は1割以下である。
図3-19 中途退学防止の取り組み
3.専門学校生支援の課題
以上、
専門学校生に対する教育機会の提供と経済的支援について見てきた。専門学校教育は、
高等教育市場においてかなり高い価格で、しかし、相対的に多めに供給されている。ただし、
1 校あたりの在学者数は少なく、全体の 76.7%の学校が ST 比 20 人未満である。また、大きな
特徴として大学・短大、他の専門学校の卒業者を一定程度受けて入れており、学び直しの場として
機能していることも指摘できる。今回の調査からは、専門学校入学者の1割以上が他の高等教育機
関の卒業者であること、入学者の 2%近くが他の高等教育機関の中退者であること、さらには、在
学者の 1 割近くの社会人を受け入れていることが明らかとなった。
では、入学した学生は順調に学業を継続し、卒業できているのだろうか。専門学校の中退率は
6.7%(平成 24 年度)であり、これは四年制大学の中退率と比較するとかなり高い水準である。中退の
理由を見てみると、私立の場合は「学業不振」が最も多く、次いで進路変更(就職他)や学校生活不
適応が多い。
「経済的理由」はこれらよりも少なく 1 割程度にとどまっている。しかし、進路変更な
ど他の理由の中には経済的理由を含むものがあると考えられるため、実際の数字はもっと多いと予
想される。
このような専門学校生に対し、日本学生支援機構はどのような支援を行っていくべきなのか。ま
た、各専門学校はどこまで自力で学生支援をなしており、どのような施策が求められるのだろうか。
前者について、日本学生支援機構奨学金の推薦内示数の過不足感を尋ねたところ、第1種奨学金
は「やや足りない」
「とても足りない」を合わせて約7割の学校が不足と感じている。推薦内示枠に
収まりきれない適格者をできるだけ多く支援するために、今後は第1種の内示枠の拡大が求められ
るであろう。
また、学校独自の経済的支援で最も多かったのは納付金減免である。全体の約 4 割の学校が独自
の減免制度を有しており、受給率は 29.4%と高い。しかし、私立専門学校の場合、私立大学・短大
以上に学生納付金依存度が高いため、減免制度を更に拡大することは容易ではないだろう。
- 68 -
なお、奨学生の選考基準をみると給付奨学金、納付金減免、貸与奨学金のいずれも「人物・学業
重視」に基づくものが多い。経済的状況重視の奨学金は相対的に低調である。育英的な観点だけで
なく奨学の観点からの奨学金の充実が望まれる。ただし、納付困難者に対しては分納や延納を認め
る学校が全体の 3 分の 2 を占めており、家計負担を和らげる努力はなされている。
最後に、アンケート調査に先立ち行われた訪問調査では、専門学校生から「授業料納入が一括の
ため日本学生支援機構奨学金も一括で配分してほしい」という意見が多く聞かれた。今後は、奨学
金の配分方法の改善についても検討を行うことが望まれる。
<注>
1)専修学校の入学定員は、高等学校と同様、文部科学省「学校基本調査」で調査されており、都道府県別、学
科別などの集計がなされている。しかし、大学・短大については同調査で調査されておらず、文教協会『全
国大学一覧』
『全国短期大学高等専門学校一覧』などから個別機関データを収集し、改めて集計せざるを得な
い(これらの資料には入学定員全国計の値は掲載されているが、都道府県別などの集計は掲載されていない)
。
教育の供給量の重要な変数である入学定員について、大学・短大についても「学校基本調査」で調査・集計
されることが望まれる。
2)この比率は、入学定員充足率に相当するが、それぞれの機関には高等学校・中等教育学校新卒者以外の入学
者がいるので、実際の入学定員充足率は、この比率よりも高い。2013 年度の実際の入学定員充足率は、大学
105.3%、短大 92.7%、専門学校 65.8%である。
3)一つの学科の中でコース区分等によって授業料等が 2 つ以上に分かれている場合、調査では、全てのコー
ス区分等についての回答を求めた。しかし、表 3-1 では、各学科の最初に回答されたものが学科を代表する
ものと判断し、最初のものについてのみ集計している。
4)日本私立学校振興・共済事業団(2013b)によれば、2011 年度の専修学校の学生生徒等納付金比率(学生
生徒等納付金/帰属収入)は 84.7%である(
「学校法人等基礎調査」に回答した 1,821 校の集計値)。この値
は、同年度の私立大学(76.2%)
、私立短大(71.3%)と比べるとかなり高い。
5)1 校当たり在学者数と教員数の母数である大学数には、学生募集を停止している大学及び大学院のみの大学
を含めているので、学士課程学生を募集している大学のみを分母とすれば、1 校当たり在学者数は表 3-3 に
示したものより多くなる。母数に学生募集を停止しているものを含めている点は、短大も同様である。
6)ただし、これらの学校は、在学者数 0 名と回答した国立 1 校を除いて、いずれも私立である。こうした小
規模校では、校内での多様な教育は望み難く、狭い専門に特化した教育とならざるを得ないだろう。国公立
は、こうした極めて小規模の学校がない代わりに、極めて大規模の学校もない。国立の在学者数の最大値は
300 人台、公立は 500 人台である。
7)農業・工業卒業者の関連産業への就職率が低いが、表 3-10 の集計対象となった専門学校(昼間部)卒業者
全体の農業・林業就職率は 0.7%、工業就職率は 8.7%であることに注意。また、例えば情報技術などは工業
に限らずあらゆる産業で活用できるものであるから、専門学校でこのような技術を身につけた卒業者は広く
活躍していると考えられる。したがって、関連産業への就職率は、教育の効果をみる上での大まかな指標の
一つにすぎない。
- 69 -
<文献>
植上一希(2011)
『専門学校の教育とキャリア形成』大月書店
「
『奨学金制度に関する学長調査』結果報告」
『カレッジマネジメント』
小林雅之・吉田香奈・劉文君(2012)
第 177 号
日本私立学校振興・共済事業団(2013a)
『私立大学・短期大学等入学志願動向』
(http://www.shigaku.go.jp/
files/shigandoukou25.pdf)
『今日の私学財政(専修学校・各種学校編)
』学校経理研究会
日本私立学校振興・共済事業団(2013b)
朴澤泰男(2012)
「学校基本調査にみる中退と留年」
『IDE』第 546 号
文部科学省(2013a)
「公私立短期大学入学者選抜実施状況」
(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/
25/10/1340441.htm)
文部科学省(2013b)
「国公私立大学入学者選抜実施状況」
(同上)
- 70 -
<補論:設置形態別・地域別・分野別にみた経済的支援>
本章では専門学校生に対する経済的支援について概観したが、こうした経済的支援を支援する施
策を検討する上では、学校の設置形態による違い、学校が立地する地域による違いなどを把握して
おくことも必要である。経済的支援の選考基準が分野によって異なることは本章でも指摘したが、
設置形態を考慮すると、現状の別の側面が示される可能性もある。そこでここでは、こうした点に
関係する集計表を掲載して、補論としたい。
なお、設置形態のうち「国立」の専修学校は、文部科学省「学校基本調査」では10校とされてい
る(2013年度)
。これに対して今回の調査では、独立行政法人国立病院機構の病院付属学校や独立
行政法人労働者健康福祉機構の下に置かれる専修学校も国立とみなして集計した。これらを含め、
本調査に回答のあった専修学校1,845校のうち、専門課程を置く学校は1,757校であった。そのうち1
40校は学科調査票の回答が無かったので、1,617校の経済的支援の実施状況について集計すると、表
3-22と表3-23の通りである(設置形態無回答が12校であったので、表3の集計対象は1,605校;いず
れの表も上段は学校数である)
。
表3-22 経済的支援の実施状況(学校単位・設置形態別)
国立
公立
私立
計
国立
公立
私立
計
人物・学業の基準による
経済的基準による
給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免 給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免
0
0
0
2
0
2
3
0
6
2
5
29
193
388
537
63
52
120
196
388
543
67
57
151
実施率(Nに対する比率)
実施率(Nに対する比率)
0%
0%
0%
7%
0%
7%
2%
0%
5%
2%
4%
23%
13%
27%
37%
4%
4%
8%
12%
24%
34%
4%
4%
9%
N
29
124
1,452
1,605
100%
100%
100%
100%
まず表3-22に、は経済的支援の実施状況を選考基準別・設置形態別に示した。大学における同様
の制度の実施状況と比較する目的もあって、ここでは学科調査票を学校単位に集約したデータを用
いて集計した。ここに示されているように、人物・学業の基準による経済的支援は、国公立ではほ
とんど実施されていない。他方、経済的基準による経済的支援は、国公立も私立と同等以上に実施
されている。専門学校においては、私立の比率が圧倒的に大きいので、全体的傾向には私立の傾向
が反映され、経済的基準によるものよりも人物・学業の基準によるものが多い。また、給付型奨学
金よりも納付金減免が多く、減免対象としては入学金よりも入学金以外が多い。小林・吉田・劉
(2012)が大学について調査しているが、それによると、大学独自の給付型奨学金の実施率は79.7%
であり、専門学校よりもかなり高い。ただし、国立(実施率74.1%)や公立(同35.3%)よりも私
立(同87.4%)の実施率が高いという点は、専門学校と共通している。
表3-23によって地域別にみると、人物・学業の基準による奨学金は四国でほとんど実施されてお
らず、人物・学業の基準による入学金以外の減免は北海道・四国・九州で実施率が高い。経済的基
準による入学金減免は東北で実施率が高く、経済的基準による入学学金以外の納付金減免は北海
道・東北・中国で実施率が高い。総じて、北海道の専門学校は経済的支援の実施率が高いというこ
- 71 -
とができる。
表3-23 経済的支援の実施状況(学校単位・地域別)
北海道
東北
北関東信越
南関東
中部
近畿
中国
四国
九州
計
北海道
東北
北関東信越
南関東
中部
近畿
中国
四国
九州
計
人物・学業の基準による
経済的基準による
給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免 給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免
7
16
33
4
4
11
9
28
28
7
11
20
18
45
43
8
8
13
52
94
120
20
16
38
37
65
78
8
6
13
27
49
78
9
4
20
15
31
47
3
3
18
2
17
35
2
1
6
32
44
87
6
4
13
199
389
549
67
57
152
実施率(Nに対する比率)
実施率(Nに対する比率)
10%
23%
47%
6%
6%
16%
8%
26%
26%
7%
10%
19%
11%
26%
25%
5%
5%
8%
14%
25%
31%
5%
4%
10%
16%
28%
33%
3%
3%
6%
11%
20%
32%
4%
2%
8%
13%
26%
40%
3%
3%
15%
3%
22%
46%
3%
1%
8%
15%
20%
40%
3%
2%
6%
12%
24%
34%
4%
4%
9%
N
70
106
170
381
234
245
117
76
218
1,617
N
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%
注:地域区分は次の通り。北海道:北海道、東北:青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島、北関東信越:栃木・群馬・茨城・長野・新潟、南
関東:埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨、中部:富山・石川・福井・岐阜・静岡・愛知・三重、近畿:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山、
中国:鳥取・島根・岡山・広島・山口、四国:徳島・香川・愛媛・高知、九州:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄。
なお、今回の集計において、地域は全国専修学校各種学校総連合会による「ブロック区分」を利
用したが、学生とりわけ社会人学生の通学を考えた場合、少なくとも都道府県単位(可能であれば
都市圏・通学圏単位)で考える必要がある。大学・短大を含めて、都道府県単位の高等教育供給構
造を把握した上で、専門学校・学生への経済的支援を検討することは今後の課題である。
設置形態別・地域別については学校単位のデータから集計したが、分野別については学科調査票
から直接集計し、表3-24に結果を示した。さらに、表3-25は、設置形態も考慮したものである。人
物・学業の基準による経済的支援については、給付型奨学金、入学金減免、入学金以外の納付金減
免のいずれについても工業の実施率が高いが、これは私立の工業分野の実施率の高さによるもので
ある。同じく人物・学業の基準による経済的支援のうち入学金と入学金以外の納付金減免について
は、衛生、教育・社会福祉、商業実務、文化・教養の実施率が高めである(教育・社会福祉は給付
型奨学金の実施率も高い)が、これらも私立の実施率が高いことによる。
他方、農業については、経済的基準による入学金と入学金以外の納付金減免の実施率が高いが、
これは公立の実施率が高いことによる。医療は全体としては実施率は高くないが、国立に限ると経
済的基準による給付型奨学金の実施率が高く、公立では経済的基準による入学金以外の納付金減免
の実施率が高い。
- 72 -
表3-24 経済的支援の実施率(分野別)
人物・学業の基準による
経済的基準による
給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免 給付型奨学金
工業
14.6%
30.6%
46.3%
4.6%
農業
3.0%
4.5%
14.9%
0.0%
医療
9.6%
14.2%
22.2%
1.6%
衛生
7.9%
25.3%
33.6%
2.0%
教育・社会福祉
14.1%
29.0%
27.3%
4.1%
商業実務
8.9%
32.6%
44.6%
1.9%
服飾・家政
7.4%
23.7%
16.3%
3.7%
文化・教養
9.0%
27.1%
44.5%
3.8%
計
10.2%
24.5%
34.3%
2.9%
N
入学金減免 入学金以外減免
2.4%
11.2%
712
10.4%
35.8%
67
1.3%
5.4% 1,133
3.1%
5.2%
458
3.6%
5.8%
362
3.4%
7.4%
619
1.5%
1.9%
270
2.0%
5.7%
743
2.4%
6.9% 4,364
表3-25 経済的支援の実施率(設置形態別・分野別)
国立
公立
私立
人物・学業の基準による
経済的基準による
給付型奨学金
入学金減免 入学金以外減免 給付型奨学金
医療
0.0%
0.0%
0.0%
6.9%
農業
2.1%
0.0%
12.8%
0.0%
医療
1.5%
0.0%
1.5%
1.5%
衛生
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
教育・社会福祉
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
商業実務
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
文化・教養
0.0%
0.0%
66.7%
0.0%
計
1.6%
0.0%
6.3%
1.0%
工業
14.8%
30.6%
46.8%
4.7%
農業
5.0%
15.0%
20.0%
0.0%
医療
11.1%
16.6%
25.3%
1.5%
衛生
8.0%
25.2%
34.1%
2.0%
教育・社会福祉
14.3%
29.4%
27.7%
4.2%
商業実務
8.8%
32.8%
44.8%
1.9%
服飾・家政
7.4%
23.7%
16.3%
3.7%
文化・教養
9.1%
27.3%
44.4%
3.8%
計
10.7%
25.9%
35.9%
3.0%
入学金減免 入学金以外減免
0.0%
6.9%
14.9%
48.9%
1.5%
16.8%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
66.7%
4.7%
25.5%
2.3%
11.2%
0.0%
5.0%
1.4%
3.9%
3.1%
5.3%
3.6%
5.9%
3.4%
7.5%
1.5%
1.9%
2.0%
5.2%
2.3%
6.1%
N
29
47
131
2
5
1
6
192
705
20
961
452
357
616
270
737
4,120
最後に、経済的基準を重視した経済的支援について、選考基準や対象者数の分布を示すと、表326~表3-28の通りである。表3-26の下段には、調査で示した給付金額区分別に、推定給付金額(各
給付金額区分の中央値に相当する金額)を示した。上段・下段とも、該当する給付を実施している
場合の平均対象者数と非実施学科も含めた平均対象者数の双方を示している。非実施学科を含めた
平均給付額は5.7万円であるが、対象者に給付される金額の平均値は26.9万円である。
同様に、経済的基準を重視した入学金減免(表3-27)については、非実施学科を含めた平均減免
金額は2.2万円であるが、対象者が減免される金額の平均値は13.8万円である。経済的基準を重視し
た入学金以外の納付金減免の平均減免金額(表3-28)については、非実施学科を含めた平均減免金
額は11.9万円であるが、対象者が減免される金額の平均値は21.3万円である。
なお、こうした経済的支援の効果を調べるために、経済的支援策の規模(対象者率)と、納付金
滞納による除籍者の規模(除籍者率)との相関係数を算出したが、いずれの場合も相関関係はみら
れなかった。その理由として、一方の変数である除籍者率が極めて低いことに加え、因果関係の上
- 73 -
で、経済的支援が充実しているから除籍者率が低いという側面と、除籍者率が高いから(その対策
として)経済的支援を充実させるという相異なる方向性が存在することが考えられる。経済的支援
の効果検証のためには、新たなデータ(例えばタイムラグを伴うデータなど)や分析上の工夫が必
要であり、この点も今後の課題である。
表3-26 経済的基準を重視した給付型奨学金の実施率・対象者数・給付金額
実施率
選考基準
実施している場合 非実施学科も含めた
(%)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
1.生活保護世帯
0.3
0.89
0.003
2.市町村民税非課税世帯
0.1
1.33
0.001
3.失業・倒産などによる家計急変
0.7
0.97
0.007
4.母子家庭又は父子家庭
1.4
3.56
0.050
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
0.5
4.13
0.021
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
1.2
4.68
0.056
7.その他の経済的基準
1.5
6.32
0.095
推定給付金額
給付金額(年額)
実施している場合 非実施学科も含めた
(万円)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
5
1.38
0.040
2.10万円以上20万円未満
15
1.72
0.050
3.20万円以上30万円未満
25
1.38
0.040
4.30万円以上40万円未満
35
1.03
0.030
5.40万円以上50万円未満
45
0.34
0.010
6.50万円以上
55
1.38
0.040
1.10万円未満
表3-27 経済的基準を重視した入学金減免の実施率・対象者数・減免金額
実施率
選考基準
実施している場合 非実施学科も含めた
(%)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
1.生活保護世帯
0.7
0.05
0.000
2.市町村民税非課税世帯
0.2
0.75
0.002
3.失業・倒産などによる家計急変
0.3
1.75
0.005
4.母子家庭又は父子家庭
0.9
2.38
0.021
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
0.1
0.08
0.000
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
0.8
1.63
0.013
7.その他の経済的基準
3.7
3.86
0.143
推定給付金額
給付金額(年額)
実施している場合 非実施学科も含めた
(万円)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
1.5万円未満
2.5
0.83
0.020
2.5万円以上10万円未満
7.5
0.42
0.010
3.10万円以上15万円未満
12.5
2.92
0.070
4.15万円以上20万円未満
17.5
1.25
0.030
5.20万円以上25万円未満
22.5
1.25
0.030
6.25万円以上
27.5
0.00
0.000
- 74 -
表3-28 経済的基準を重視した入学金以外の納付金減免の実施率・対象者数・減免金額
実施率
選考基準
実施している場合 非実施学科も含めた
(%)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
1.生活保護世帯
4.5
1.41
0.063
2.市町村民税非課税世帯
3.4
0.85
0.029
3.失業・倒産などによる家計急変
3.7
1.23
0.046
4.母子家庭又は父子家庭
4.6
2.89
0.133
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
3.0
1.28
0.038
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
6.3
2.72
0.171
7.その他の経済的基準
5.5
5.64
0.310
推定給付金額
給付金額(年額)
実施している場合 非実施学科も含めた
(万円)
の対象者数(人)
平均対象者数(人)
5
1.45
0.100
2.10万円以上20万円未満
15
3.19
0.220
3.20万円以上30万円未満
25
1.88
0.130
4.30万円以上40万円未満
35
0.72
0.050
5.40万円以上50万円未満
45
0.29
0.020
6.50万円以上
55
0.58
0.040
1.10万円未満
- 75 -
専修学校の生徒・学生支援調査(学校用)
平成25年度 文部科学省委託事業専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査委員会
代表:小林雅之(東京大学・大学総合教育研究センター・教授)
学校名
都道府県番号
←送付した封筒に貼り付けたラベル右下の記載を参照の上、都道府県番号(上2桁)
を記入してください。
学校調査番号
←送付した封筒に貼り付けたラベル右下の記載を参照の上、4桁の学校調査番号
(下4桁)を記入してください。
設置形態)
設置している
学科の数及び
在学者数
(1校当たり)
①国立 1.7%
②公立 7.5%
③学校法人立 45.7%
④準学校法人立 22.8%
⑤財団法人立 3.0%
⑥社団法人立 6.8%
⑦その他の法人立 8.3%
⑧個人立 3.4%
⑨無回答 0.7%
課程
専門課程
高等課程
一般課程
計
教員数
職員数
課程
専門課程
高等課程
一般課程
計
計
(うち募集停止中)
学科数
3.2学科
0.2学科
0.2学科
0.0学科
0.1学科
0.0学科
3.4学科
0.2学科
専任
13.0人
1.0人
0.2人
兼任
34.5人
2.1人
0.3人
14.1人
7.8人
36.3人
課程
専門課程
高等課程
一般課程
計
在学者数
214.0人
13.1人
4.0人
229.3人
(注)
・ 教員数は専任・兼任別に分けて記入してください。専任とは、貴校に籍のある常勤教員(本務教員)
、兼任とは、貴校以外に本務
がある方又は本務を持たない方で貴校からは本務以外の教員として発令のある方です。
・ 2以上の課程を担当している教員については、辞令面により、いずれか1つの課程の教員として数えてください。辞令面ではっ
きりしない場合は、担当する授業時間数が多い課程、あるいは担当する生徒・学生数が多い課程の教員として数えてください。
<連絡先>
回答者氏名
所属部署・役職
電話番号
E-mailアドレス
- 76 -
【1】生徒・学生指導について
(1)専任教員による生徒・学生指導として実施しているものについて、貴校が実施している課程の欄にチェッ
クを付けてください。専門課程と高等課程の両方を設置している場合は、それぞれについてお答えくださ
い(チェックはいくつでも可)
。
専門課程
高等課程
生徒・学生指導の取組
(N=1757)
(N=231)
1.毎日、ホームルームを設定している
41.2%
70.6%
2.毎週、ホームルームを設定している
33.1%
30.3%
3.生徒・学生全員との個人面談を実施している
77.2%
69.7%
4.必要に応じて生徒・学生との個人面談を実施している
80.5%
70.6%
5.生徒・学生と保護者との面談を実施している
61.7%
68.8%
6.その他
11.0%
8.7%
→具体的な内容を記入してください
クラス担任制、チューター制、保護者会の開催、保護者への連
絡文送付、ポートフォリオを使っての学生指導、3日以上の無
断欠席者に対し自宅訪問、等)
※以下、専門課程を有する学校についてのみ集計
(2)中途退学防止の取組として貴校で取り組んでいるものにチェックを付けてください(チェックはいくつで
も可)
。
中途退学防止の取組
チェック
1.欠席者についての教職員間での情報共有
95.5%
2.欠席しがちな生徒・学生に対する担当教員からの連絡・相談
96.5%
3.欠席しがちな生徒・学生の保護者に対する担当教員からの連絡・
88.2%
相談
4.相談室やカウンセラーなど専門部署・担当者による個別相談
52.4%
5.学業不振者に対する補習や個別指導などの学習支援
87.9%
6.学科内容の理解を深めてもらうための入学前の十分な説明
64.0%
7.納付金納入困難者への一時的な資金貸付
9.1%
8.その他
8.4%
→具体的な内容を記入してください
家計急変家庭等への学納金免除、納付金納入困難者の相談支援並
びに延納・分割納入などの対応、在学中学費ゼロ制度:提携ロー
ン会社による学費サポートローン、通信制コースへの転籍、等
【2】奨学金について
(3)日本学生支援機構奨学金について、同機構より貴校へ通知された平成25年度の推薦内示数(第1種・第2
種それぞれの採用枠)を記入してください。
・第1種奨学金推薦内示数
4.3人
・第2種奨学金推薦内示数
16.1人
(4)
(3)でお答えいただいた推薦内示数は、貴校にとって十分な人数でしょうか。第1種、第2種それぞれに
ついてお答えください。
区分
本校への第1種奨学金の推薦内示数は
本校への第2種奨学金の推薦内示数は
- 77 -
□
□
□
□
□
□
いずれかを選択
1.十分な人数である 32.7%
2.やや足りない
53.3%
3.とても足りない 14.0%
1.十分な人数である 59.8%
2.やや足りない
34.6%
3.とても足りない
5.6%
(5)日本学生支援機構奨学金について、平成25年7月頃に同機構から送付された「奨学金の返還延滞の防止に
ついて」などにより、貴校卒業者の返還延滞率が分かるようでしたら、記入してください。
第1種奨学金延滞率
6.6%
第2種奨学金延滞率
8.9%
合計延滞率
8.7%
(6)日本学生支援機構奨学金受給者に対して、貴校ではどのような返還指導を行っていますか。実施している
ものにチェックを付けてください(チェックはいくつでも可)
。
返還指導の内容
チェック
1.申請時の説明会で、返還について説明している
84.6%
2.卒業前に説明会を開催し、返還について説明している
78.7%
3.在学中にクラス担任などが卒業後の返還を呼びかけている
24.8%
4.卒業後に連絡をとり、返還を呼びかけている
7.6%
5.その他
8.8%
→具体的な内容を記入してください
個別に指導、スカラネットパーソナル、モバイルサイトに
全員加入するよう指導、適格認定時に返還の重要性につい
て説明、延滞者の情報(氏名)がもらえないため一般論と
して卒業性に文書を出している、チェックシートを作成し、
本人の確認サインを記入して貰う、卒業後も本人と連絡を
取り合う機会を設けている、本校独自の資料配布、受給者
の家族にも説明を行う、保護者あて文書の発送、卒業後Twi
tter等での呼びかけ、同窓会会報に返還の呼びかけ記事を
掲載、等
【3】生徒・学生の生活支援について
(7)生徒・学生の居住環境の支援として貴校で実施しているものにチェックを付けてください。
(チェックはい
くつでも可)
居住環境支援の内容
チェック
1.学校が不動産業者等と提携し、通常の価格よりも安価なアパ
29.5%
ート等の斡旋・紹介
2.学校が不動産業者等と提携し、通常の価格によるアパート等
34.8%
の斡旋・紹介
3.地方自治体や民間団体の運営する学生寮等の斡旋・紹介
15.2%
4.学校が直接運営する学生寮等の提供
24.8%
5.奨学金の支給による学生寮費の補助
3.5%
6.その他
11.0%
(8)
(7)において4.又は5.に該当する場合は、それぞれの入寮者数を課程別に記入してください。
専門課程
高等課程
居住環境支援の内容
入寮者数
入寮者数
(7)において「4.学校が直接運営する学生寮等の提供」に該当
39.8人
19.0人
(7)において「5.奨学金の支給による学生寮費の補助」に該当
42.2人
51.2人
(9)
(7)において4.又は5.に該当する場合は、学生寮の収容力に対する貴校の認識をお答えください。
認識
いずれかにチェック
1.十分な人数である
60.6%
2.やや足りない
32.9%
3.とても足りない
6.5%
- 78 -
【4】社会人の受入れについて
(10)貴校への委託による社会人受入れがありましたら、平成25年度の受入れ人数とコース数を種類別に記入し
てください。
*委託による社会人受入れがない学校も含めた平均値;受入れが有る学校は15.0%。
委託訓練の受入れ
企業や業界団体等
からの委託
公共職業訓練
求職者支援制度
受入れ人数 コース数
受入れ人数 コース数
受入れ人数 コース数
5.8人
0.3コース
1.8人
0.2コース
1.0人
0.1コース
その他の社会人受入れがありましたら、下の欄に具体的に記入してください。
(注)
・ 「社会人」とは、これまでに経常的な収入を目的とする仕事に就いた経験がある者をいい、企業等の退職者及び主婦なども含み
ます。
・ 「公共職業訓練」は、職業能力開発促進法第15条の6第3項に基づき、国及び都道府県が行う公共職業訓練について、緊急の雇用
対策の展開に当たり機動的に訓練を行う等の必要が生じた場合に、その一部を専修学校等の民間教育訓練機関に委託して実施する
ものをいいます。
・ 「求職者支援制度」の欄には、求職者支援法に基づき認定された求職者職業訓練の受入れ人数とコース数を記入してください。
・ 業界団体等には、経済団体、職能団体、医療福祉施設などを含みます。
・ 「その他」の欄には、附帯事業として行っている具体的なプログラム名、コース数、受入れ人数などを記入してください。
(11)貴校の社会人に対する支援((10)における委託による社会人受入れ(附帯事業)を除く)について、お答
えください。実施している場合は、実施している内容にもチェックを付けてください。
項目
1.社会人に対する特別な支援は実施していない
2.社会人に対する特別な支援を実施している
チェック
82.9%
→2.を選択した場合、以下から社会人支援として実施しているものを選択して
17.1%
ください(チェックはいくつでも可)
。
a.社会人向けの学科やプログラムを設けている
b.社会人向けの学習相談体制を設けている
c.社会人に対する納付金減免など経済的支援を行っている
d.その他
→具体的な内容を記入してください
社会人入試で合格した方の中から成績優秀者5名に入学
金15万円を免除、入学検定料を無償としている、入学金
の一部を免除、等
4.0%
2.7%
8.0%
2.5%
【5】国への要望について
(12)専修学校に対する国からの支援、あるいは専修学校の生徒・学生に対する国からの支援に対する御要望が
ありましたら、自由に記入してください。
学費支援・授業料無償化、奨学金(給付、貸与、対象者拡大)
、父子・母子家庭向け支援、勤労学生の支
援、私学助成、雇用の拡大等について、実質411校が記入。
- 79 -
専門課程の学科調査票
【1】学科の概要について
(1)貴学科に関する以下の項目について記入又は選択してください。
学科名称
分野
①工業 16.2%
②農業 1.5%
③医療 25.7%
④衛生 10.4%
⑤教育・社会福祉 8.2%
⑥商業実務 14.1%
⑦服飾・家政 6.1%
⑧文化・教養 16.9%
⑨無回答 0.9%
←注)別表「学科コード表」を参照してください。
学科コード
昼夜の別
①昼間 92.1%
②夜間 7.3%
③その他 0.6%
修業年限
1年:11.2%
1年1カ月~1年11カ月:2.1%
2年~2年11カ月:51.8%
3年~3年11カ月:27.6%
4年以上: 6.3%
無回答:1.1%
(2)貴学科の平成25年5月1日現在の入学定員・在学者数(学年別)
・休学者数(在学者の内数)を記入してく
ださい。平成25年度の募集を停止している学科は、入学定員を0(ゼロ)として下さい。
*25年度に学生を募集した学科のみ。
在学者数
休学者
(内数)
1年生
2年生
3年生
4年生
63.2人
39.7人
32.2人
12.1人
1.6人
1.9人
(3)貴学科の平成25年度入学者について、大学、短大・高専、専門学校からの入学者があれば、それぞれの人
数を記入してください。また、可能な範囲でそれぞれの入学者のうち、学校を中退し入学した者の内数を
記入してください。
*在学者に対する比率の平均値。
四年制大学からの
短大・高専からの
専門学校からの
入学者
入学者
入学者
入学定員
入学者数
入学者数
入学者数
うち大学を中退し
うち短大・高専を中退し
うち専門学校を中退し
入学した者の数
入学した者の数
入学した者の数
5.6%
1.3%
1.4%
0.1%
6.0%
0.4%
(4)貴学科の平成25年度の社会人受入れ状況について、記入してください。可能であれば、年齢別内訳を記入
してください。
*社会人受入れがない学校も含めた平均値;受入れが有る学科は53.6%。
年齢別内訳
合計
20歳未満
20~29歳
30~39歳
40~49歳
50~59歳
60歳以上
0.9人
3.0人
1.4人
0.5人
0.1人
0.1人
5.7人
(注)
・ 「社会人」とは、これまでに経常的な収入を目的とする仕事に就いた経験がある者をいい、企業等の退職者及び主婦なども
含みます。
・ 私立高等学校等の実態調査(文部科学省高等教育局私学部)を参考に、平成25年5月1日現在の状況を記入してください。
(5)貴学科の1年次生の納付金額を記入してください。
*2つ以上に分かれている場合は最初の例のみ集計。
(単位:円)
国立
公立
私立
入学金
182,960
35,061
171,922
授業料
385,872
171,106
617,329
実習費
4,800
39,646
112,676
施設設備費
4,800
7,982
160,164
その他
50,788
172,261
67,071
納付金合計
631,220
426,057
1,129,162
(注)
・ お答えいただいている学科で、コース区分などにより、授業料等が2つ以上に分かれている場合は、2行以上に分けて記
入してください。
・ 専修学校の生徒納付金等に関する調査(文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室、平成25年6月6
日事務連絡により依頼)を参考に、平成25年4月入学者の1年次の生徒納付金額(年額)を学科別に記入してください。
・ 入学金、授業料については、学則に定めがある場合は、学則上の金額を記入してください。実習費・施設設備費について
学則に定めが無い場合は、実態に応じた金額を記入してください。その他には、預り金、積立金は含みません。
・ 年次によって授業料が変化する場合は、1年次の授業料を記入してください。
- 80 -
(6)貴学科を卒業するまでに必要な諸費用の標準的な合計額を概算で記入してください。諸費用とは、テキス
ト代、宿泊セミナー・研修会、資格検定受験料、用具代、保険料など、
(5)でお答えいただいた納付金以
外に学生が負担する教育関連費用で、預り金、積立金を含みます。
諸費用合計
262,058 円
【2】学生への経済的支援について
本設問については、以下の定義を参考に回答をお願いします。
奨 学 金:学生や保護者に直接給付され、使途が限定されないもの
納付金減免:学生や保護者には給付されず、入学金や授業料等納付金の特定の項目に対して、一定額の支払
いを免除するもの
(7)次の奨学金等について、貴学科の学生の最近3年間の受給者数(延べ数)を記入してください。
奨学金等の区分
平成23年度
平成24年度
平成25年度
1.日本学生支援機構奨学金(第1種(無利子)のみ)
3.9人
4.4人
5.1人
2.日本学生支援機構奨学金(第2種(有利子)のみ)
20.8人
22.4人
22.6人
3.日本学生支援機構奨学金
1.5人
2.0人
2.7人
(第1種(無利子)と第2種(有利子)の併用)
4.日本学生支援機構以外の団体の給付型(返還不要)
1.9人
1.9人
1.9人
奨学金
5.日本学生支援機構以外の団体の貸与型奨学金
6.4人
6.1人
5.7人
6.貴校独自の給付型(返還不要)奨学金
3.2人
3.4人
3.3人
7.貴校独自の納付金減免措置
12.4人
13.0人
12.7人
8.貴校独自の貸与型奨学金
5.2人
5.3人
5.0人
(無利子・有利子・一部返還免除含む)
設問(7)の6.や7.に挙げる貴校独自の奨学金や納付金減免を有する場合、以下の表を参考の上、
該当する設問を回答してください。
重視する視点
奨学金等の種類
減免の対象
回答を要する設問
実施率*
人物・学業の基準 給付型奨学金
-
(8)
、
(9)
10.2%
納付金減免
入学金
(10)
、
(11)
、
(12)
24.6%
入学金以外の納付金 (13)
、
(14)
、
(15)
34.2%
経済的基準
給付型奨学金
-
(16)
、
(17)
2.9%
納付金減免
入学金
(18)
、
(19)
、
(20)
2.4%
入学金以外の納付金 (21)
、
(22)
、
(23)
6.9%
*実施率は、平成 25 年度に対象者が居る学科の比率。
- 81 -
(8)貴校独自の給付型奨学金のうち、人物・学業の基準を重視して対象者を選考しているものがありましたら、
該当する選考基準にチェックを付け、平成25年度の貴学科の対象者数を記入してください(チェックはい
くつでも可)
。
平成25年度
実施している
比率
選考基準
対象者数
学科数
1.入学前の学業成績
79
15.2%
9.5人
2.入学後の学業成績
207
39.8%
6.9人
3.スポーツの実績
21
4.0%
1.4人
4.文化活動の実績
25
4.8%
4.1人
5.ボランティア活動の実績
18
3.5%
7.8人
6.入学試験の成績
53
10.2%
8.3人
47
7.入学前の学校での出席状況
9.0%
5.6人
8.その他の人物・学業の基準
167
32.1%
7.4人
→基準を具体的に記入してください
「高校生活での評価(クラブ活動)
」
「医
療系国家資格所持者」
「大学新卒者」
「卒
業生及び在校生の親族」「
「遠隔地出身
者」「社会人入試区分で入学した学生」
「留学生」
「コンテストや大会の上位受
賞者」
「態度、身だしなみ」
「学業、品行
共に優秀で他の模範となる学生」等
※(7)で「6.貴校独自の給付型(返還不要)奨学金」の平成25年度受給者がいる520学科のみを集計。
(9)
(8)でお答えいただいた人物・学業の基準を重視して対象者を選考している貴校独自の給付型奨学金につ
いて、平成25年度の貴学科の対象者数を給付金額(年額)別に記入してください。
平成25年度
給付金額(年額)
対象者数
1.10万円未満
7.7人
2.10万円以上20万円未満
4.7人
3.20万円以上30万円未満
4.6人
4.30万円以上40万円未満
1.9人
5.40万円以上50万円未満
3.1人
6.50万円以上
6.6人
※(7)で「6.貴校独自の給付型(返還不要)奨学金」の平成25年度受給者がいる520学科のみを集計。
- 82 -
10)貴校独自の入学金を対象とした減免措置のうち、人物・学業の基準を重視して対象者を選考しているものが
ありましたら、該当する選考基準にチェックを付け、平成 25 年度の貴学科の対象者数を記入してください(チェ
ックはいくつでも可)
。
平成25年度
実施している
比率
選考基準
対象者数
学科数
1.入学前の学業成績
401
24.0%
11.8人
2.入学後の学業成績
10
0.6%
1.6人
3.スポーツの実績
145
8.7%
8.1人
4.文化活動の実績
131
7.8%
7.4人
5.ボランティア活動の実績
72
4.3%
8.8人
6.入学試験の成績
250
15.0%
11.3人
261
7.入学前の学校での出席状況
15.6%
11.3人
8.その他の人物・学業の基準
435
26.0%
10.7人
→基準を具体的に記入してください
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(11)
(10)でお答えいただいた人物・学業の基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金を対象とし
た減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者数を減免金額(年額)別に記入してください。
平成25年度
減免金額(年額)
対象者数
1.5万円未満
7.1人
2.5万円以上10万円未満
7.3人
3.10万円以上15万円未満
8.9人
4.15万円以上20万円未満
7.0人
5.20万円以上25万円未満
7.7人
6.25万円以上
4.4人
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(12)
(10)と(11)でお答えいただいた人物・学業の基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金を
対象とした減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者における入学金減免の範囲をお答えください
(チェックはいくつでも可)
。
範囲
該当する学科数
比率
1.入学金の全額
591
35.4%
2.入学金の一部
519
64.6%
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
- 83 -
(13)貴校独自の入学金以外の納付金を対象とした減免措置のうち、人物・学業の基準を重視して対象者を選考
しているものがありましたら、該当する選考基準にチェックを付け、平成25年度の貴学科の対象者数を記
入してください(チェックはいくつでも可)
。
平成25年度
実施している
比率
選考基準
対象者数
学科数
1.入学前の学業成績
567
33.9%
11.1人
2.入学後の学業成績
273
16.3%
5.4人
3.スポーツの実績
244
14.6%
6.6人
4.文化活動の実績
198
11.8%
6.0人
5.ボランティア活動の実績
105
6.3%
7.3人
6.入学試験の成績
487
29.1%
10.4人
314
7.入学前の学校での出席状況
18.8%
11.4人
8.その他の人物・学業の基準
524
31.4%
10.3人
→基準を具体的に記入してください
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(14)
(13)でお答えいただいた人物・学業の基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金以外の納付
金を対象とした減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者数を減免金額(年額)別に記入してくだ
さい。
平成25年度対象
減免金額(年額)
者数
1.10万円未満
10.3人
2.10万円以上20万円未満
7.8人
3.20万円以上30万円未満
4.5人
4.30万円以上40万円未満
3.2人
5.40万円以上50万円未満
1.7人
6.50万円以上
2.7人
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(15)
(13)と(14)でお答えいただいた人物・学業の基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金以
外の納付金を対象とした減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者は、納付金のどの費目を対象と
したものであるかお答えください(チェックはいくつでも可)
。
費目
該当する学科数
比率
1.授業料の全額
255
15.3%
2.授業料の一部
1101
65.9%
3.実習費の全額
29
1.7%
4.実習費の一部
71
4.2%
5.施設設備費の全額
70
4.2%
6.施設設備費の一部
99
5.9%
7.入学検定料の全額
189
11.3%
8
8.入学検定料の一部
0.5%
9.その他
52
3.1%
→費目を具体的に記入してください
※(
(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
- 84 -
(16)貴校独自の給付型奨学金のうち、経済的基準を重視して対象者を選考しているもの(経済的基準と人物・
学業の基準を同程度に重視しているものを含む)がありましたら、該当する選考基準にチェックを付け、
平成25年度の貴学科の対象者数を記入してください(チェックはいくつでも可)
。
平成25年度
実施している
比率
選考基準
対象者数
学科数
1.生活保護世帯
9
1.7%
0.6人
2.市町村民税非課税世帯
5
1.0%
0.7人
3.失業・倒産などによる家計急変
16
3.1%
1.0人
4.母子家庭又は父子家庭
37
7.1%
3.8人
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
16
3.1%
4.0人
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
34
6.5%
5.5人
7.その他の経済的基準
47
9.0%
8.2人
→基準を具体的に記入してください
※(7)で「6.貴校独自の給付型(返還不要)奨学金」の平成25年度受給者がいる520学科のみを集計。
(17)
(16)でお答えいただいた経済的基準を重視して対象者を選考している貴校独自の給付型奨学金について、
平成25年度の貴学科の対象者数を給付金額(年額)別に記入してください。
*この制度が無い学科も含めた平均値;この制度を有している(対象者が居る)学科は2.9%。
平成25年度
対象者数
5.9人
4.0人
4.6人
4.9人
2.7人
1.7人
給付金額(年額)
1.10万円未満
2.10万円以上20万円未満
3.20万円以上30万円未満
4.30万円以上40万円未満
5.40万円以上50万円未満
6.50万円以上
- 85 -
(18)貴校独自の入学金を対象とした減免措置のうち、経済的基準を重視して対象者を選考しているもの(経済
的基準と人物・学業の基準を同程度に重視しているものを含む)がありましたら、該当する選考基準にチ
ェックを付け、平成25年度の貴学科の対象者数を記入してください(チェックはいくつでも可)
。
平成25年度
実施している
比率
選考基準
対象者数
学科数
1.生活保護世帯
1
0.1%
0.2人
2.市町村民税非課税世帯
2
0.1%
1.3人
3.失業・倒産などによる家計急変
5
0.3%
2.6人
4.母子家庭又は父子家庭
25
1.5%
1.9人
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
0
0.0%
0.0人
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
6
0.4%
0.9人
7.その他の経済的基準
101
6.0%
4.4人
→基準を具体的に記入してください
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(19)
(18)でお答えいただいた経済的基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金を対象とした減免
措置について、平成25年度の貴学科の対象者数を減免金額(年額)別に記入してください。
平成25年度
減免金額(年額)
対象者数
1.5万円未満
0.2人
2.5万円以上10万円未満
0.7人
3.10万円以上15万円未満
4.3人
4.15万円以上20万円未満
0.9人
5.20万円以上25万円未満
2.5人
6.25万円以上
0.1人
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(20)
(18)と(19)でお答えいただいた経済的基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金を対象と
した減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者における入学金減免の範囲をお答えください(チェ
ックはいくつでも可)
。
範囲
該当する学科数
比率
1.入学金の全額
106
6.3%
2.入学金の一部
39
2.3%
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
- 86 -
(21)貴校独自の入学金以外の納付金を対象とした減免措置のうち、経済的基準を重視して対象者を選考してい
るもの(経済的基準と人物・学業の基準を同程度に重視しているものを含む)がありましたら、該当する
選考基準にチェックを付け、平成25年度の貴学科の対象者数を記入してください(チェックはいくつでも
可)
。
実施している
平成25年度
比率
選考基準
学科数
対象者数
1.生活保護世帯
2.市町村民税非課税世帯
3.失業・倒産などによる家計急変
4.母子家庭又は父子家庭
5.長期療養者又は身体障がい者を含む世帯
6.上記以外で所得が基準額以下の世帯
7.その他の経済的基準
→基準を具体的に記入してください
54
42
49
80
27
124
171
3.2&
2.5%
2.9%
4.8%
1.6%
7.4%
10.2%
3.0人
2.6人
2.1人
4.9人
2.9人
4.7人
8.0人
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(22)
(21)でお答えいただいた経済的基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金以外の納付金を対
象とした減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者数を減免金額(年額)別に記入してください。
平成25年度
減免金額(年額)
対象者数
1.10万円未満
2.8人
2.10万円以上20万円未満
4.9人
3.20万円以上30万円未満
5.4人
4.30万円以上40万円未満
2.7人
5.40万円以上50万円未満
1.5人
6.50万円以上
2.1人
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
(23)
(21)と(22)でお答えいただいた経済的基準を重視して対象者を選考している貴校独自の入学金以外の納
付金を対象とした減免措置について、平成25年度の貴学科の対象者は、納付金のどの費目を対象としたも
のであるかお答えください(チェックはいくつでも可)
。
費目
該当する学科数
比率
1.授業料の全額
80
4.8%
2.授業料の一部
168
16.0%
3.実習費の全額
33
2.0%
4.実習費の一部
48
2.9%
5.施設設備費の全額
34
2.0%
6.施設設備費の一部
43
2.6%
7.入学検定料の全額
40
2.4%
8
8.入学検定料の一部
0.5%
9.その他
9
0.5%
→費目を具体的に記入してください
※(7)で「7.貴校独自の納付金減免措置」の平成25年度受給者がいる1,671学科のみを集計。
- 87 -
設問(24)~(26)は、以下の整理により回答ください。
分納:納付金を分割して納付する場合
分納の結果として生じる延納は「分納」として扱う
延納:分納の設定がなされず、単に納付金納入の延長期限を設定している場合
滞納:分納や延納の設定がなされず、納付金を納入していない状態が続いている場合
(24)所定の時期に納付金納入が困難である者への対応として実施しているものにチェックをつけてください。
(チェックはいくつでも可)
納付金納入困難者への対応
実施の有無(チェック)
1.募集要項や学生便覧など学校の公的文書に明記した上で、
21.1%
納付金納入が困難である者の納付金延納を認めている
2.募集要項や学生便覧など学校の公的文書に明記した上で、
39.3%
納付金納入が困難である者の納付金分納を認めている
3. 納付金納入が困難である者と相談した上で、延納期限を
62.8%
個別に設定している
4. 納付金納入が困難である者と相談した上で、分納回数を
65.5
個別に設定している
(25)納付金の延納・分納について、貴学科学生の平成25年度の申請者数と許可人数を記入してください。
納付金延納申請者数
3.4人
納付金分納申請者数
13.7人
うち納付金延納許可人数
3.4人
うち納付金分納許可人数
13.9人
(26)貴学科の平成25年度の納付金滞納者数を記入してください。どのような場合を滞納と見なすかは貴校の判
断で結構ですが、納付期限を過ぎ督促をしても応じない場合を目安としてください。
*在学者に対する比率の平均値。
納付金滞納者数
1.5%
(納付金滞納に伴う)
除籍者数
0.3%
【3】学生の中途退学について
(27)貴学科の最近3年間の中途退学者の人数を最もあてはまる理由別に記入してください。
*平成25年度在学者全体に対する比率。
中退理由
平成22年度
平成23年度
平成24年度
1.学業不振
0.95%
1.02%
1.03%
2.学校生活不適応
0.48%
0.52%
0.54%
3.進路変更(就職)
0.66%
0.72%
0.76%
4.進路変更(転学・進学)
0.33%
0.35%
0.39%
5.進路変更(その他)
0.64%
0.70%
0.69%
6.病気・けが・死亡
0.49%
0.52%
0.54%
7.経済的理由
0.48%
0.51%
0.49%
8.海外留学
0.01%
0.01%
0.01%
9.その他
0.40%
0.47%
0.44%
合計
3.91%
4.30%
4.33%
→その他に該当がある場合は、具体的な理由を記入してください。
(注)
・ 専修学校の生徒納付金等に関する調査(文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)を参考に記入して
ください。
・ 外国人留学生、科目等履修生は除いた人数を記入してください。
- 88 -
【4】卒業後の状況について
(28)貴学科の最近3年間の卒業後の状況を記入してください。
卒業後の状況
平成22年度
卒業者数
100.0%
うち就職者
就職者数
76.2%
一時的な職に就いた者
3.0%
うち進学者
大学
2.1%
短期大学
0.1%
専門学校
4.5%
大学院
0.1%
その他
0.8%
うち上記以外の者
10.5%
*各年度卒業者数全体に対する比率。
平成23年度
100.0%
78.4%
3.4%
1.9%
0.1%
4.0%
0.1%
0.7%
9.6%
平成24年度
100.0%
80.5%
3.3%
1.7%
0.1%
3.8%
0.1%
0.7%
8.5%
(注)
・ 私立高等学校等の実態調査(文部科学省高等教育局私学部)を参考に、卒業年度の翌年度5月1日現在の状況を記入してくださ
い。
・ 就職者とは、給料、賃金、利潤、報酬その他経常的収入を得る仕事において就いている者で、派遣会社の正社員として就職した
者、自家・自営業に就いた者は含めますが、家事手伝い、臨時的な仕事に就いた者は除きます。
・ 一時的な職とは、臨時的な収入を目的とする仕事(アルバイト、パート等)をいいます。ただし、試用期間に限り雇用形態がア
ルバイトである場合は、就職者に計上してください。
・ その他とは、専門課程(専門学校)以外の専修学校、職業教育訓練校、各種学校などです。
・ 「上記以外の者」は、家事手伝いをしている者、進路が未定であることが明らかな者(就職でも進学でもないことが明らかな者)
、
死亡・不詳をいいます。
(29)貴学科の平成24年度卒業者の就職状況について、就職先の産業別の人数を記入してください。
*平成24年度卒業者数全体に対する比率。
分類
A.農業・林業
B.漁業
C.鉱業、採石業、砂利採取業
D.建設業
E.製造業
F.電気・ガス・熱供給・水道業
G.情報通信業
H.運輸業、郵便業
I.卸売業、小売業
J.金融業・保険業
K.不動産業、物品賃貸業
L.学術研究、専門・技術サービス業
M.宿泊業、飲食サービス業
N.生活関連サービス業、娯楽業
O.教育、学習支援業
P.医療、福祉
Q.複合サービス事業
R.上記に分類されないサービス業
S.公務(A~Rに分類されるものは除く)
T.分類不能の産業
合計
人数
0.8%
0.0%
0.0%
1.7%
3.2%
0.3%
3.3%
0.8%
5.3%
0.1%
0.2%
4.9%
6.6%
7.9%
1.4%
34.9%
1.0%
4.9%
1.9%
0.9%
55.4%
(注)
・専修学校の実態把握に係る調査(文部科学省生涯学習政策局、平成20年度実施)を参考に、平成25年5月1日現在の状況を記
入してください。
・産業分類については、必要に応じて別紙「日本標準産業分類(抄)
」を参照してください。
- 89 -
第4章 専門学校学生調査からみた学生の経済的支援の現状
岩田 弘三(武蔵野大学)
1. はじめに
専修学校学生に対しては、いかなる経済的支援策を考えていかなければならないのか。それを検
討する上での基礎資料とする目的で、これら学生の経済状況・生活時間の実状や、学生たち自身が
どのような支援を要望しているのかといった意識などを把握するため、アンケート調査を行った。
なお、専修学校の中でも、高等教育機関に位置づけられる専門学校(専修学校専門課程)と、中
等教育機関である高等専修学校とでは、大きく性格を異にする。高等専修学校生徒に対する調査も
重要性をもつことは、もちろんいうまでもない。しかし、それは別の機会に待つとして、今回は専
門学校学生を対象とした調査を実施することにした。
この調査についての本格的な解析は次回以降に譲るとして、本章では、主に基礎集計結果をもと
に、主要な知見のみを報告していくことにする。なお、アンケート調査票のデザイン、及び全体の
基礎集計結果は、本報告書の付録の参考データを参照されたい。
2. 調査の概要
調査の概要は、以下に列記したとおりである。
①調査時期:2013 年 12 月中旬~2014 年 1 月下旬。
②実施方法:学校をとおして授業・クラスルームなどの時間中に配布。
③対象校:55 校(うちヒアリング実施校:25 校)
。
うち回収校:52 校(ヒアリング実施校からはすべて回収)
。
④対象学生:9,206 人。
回収率:77.0%(回収数:7,090 票)
。
⑤調査非実施校3校を除く対象学生:9,046 人
回収率:78.4%。
⑥有効回答数 6,662 票。
有効回答率:94.0%。
3. 主要な調査結果
今回の質問調査項目については、いくつかの例外を除いて、性別、居住形態、専門分野別の集計
では、差がみられる項目はそれほど多くなかった。多くの質問項目で差がみられたのは、家計の経
済状況であった。そこで今回は、家計の経済状況に絞って集計結果をみていくことにする。家計の
経済状況の指標として用いるのは、以下の2つである。(1)現在の学校への進学を決めるときの要素
として、家庭の経済事情をどの程度重視したか(以下、
「進学時における家庭の経済事情重視度」と
呼ぶ)
、(2)家計の年間所得(家族全体での年間所得)
、である。なお、以下の集計はすべて、無回答
者、及び選択肢で「分からない」と回答した学生を除いた集計となっている。
- 90 -
まず、図 4-1 で、以上の2変数間の関係をみておこう。当然のことながら、家計の年間所得が低
くなるほど、進学時における家庭の経済事情重視度は高くなっている。進学時に家庭の経済事情を
「とても重視した」+「重視した」の合計でみれば、家計所得が 1000 万円を超える学生では、そ
の比率は、さすがに半数を切るものの、それでもほぼ半数の学生は、これを重視したと答えている。
家計所得が 900 万円未満の学生については、その比率は半数を超えている。特に、家計所得が 300
万円未満の学生では、7割を超えている1。
3-1 現在の学校へ進学するときに重視した要因
専門学校学生たちは、現在修学している学校へ進学するときに、どのような要因を重視したのだ
ろうか。まず、
「とても重視した」+「重視した」の合計でみれば、
「(4)自分の就きたい職業への就
職の有利さ」91.0%と、ほぼすべての学生が重視している。次いで、家庭の経済事情 61.8%、
「(2)
自宅から通学できること」60.0%と、半数以上の学生が重視する重要な進路選択要因になっている。
以下、
「(3)自分の学力・成績」49.6%、
「(1)4年より短い年数で卒業できること」41.3%、の順にな
る。
次に、図 4-2 で、進路選択における家庭の経済事情以外の要素と、家庭の経済事情との関係を確
認しておこう。
家計の年間所得
1000万円以上
13.4
35.4
900~1000万円未満
16.2
38.2
41.5
13.0
33.1
9.2
とても重視した
14.4
700~900万円未満
43.6
35.9
6.1
重視した
あまり重視しなかった
18.9
500~700万円未満
44.6
25.6
300~500万円未満
43.6
30.2
300万円未満
0%
20%
30.4
41.8
40%
60%
6.1
26.6
4.3
21.8
6.1
80%
まったく重視しなかった
100%
図 4-1 家計年収と、進学時における家庭の経済事情重視度
- 91 -
(1) 4年より短い年数で卒業できること
進学時における家庭
の経済事情重視度
まったく重視しなかった
9.6
13.8
12.0
64.7
とても重視した
あまり重視しなかった
8.4
23.6
15.5
重視した
30.9
28.9
とても重視した
0%
35.6
22.2
20%
あまり重視しな
かった
18.0
まったく重視しな
かった
17.3
31.6
40%
重視した
26.5
41.6
60%
80%
100%
(2) 自宅から通学できること
進学時における家庭
の経済事情重視度
24.3
まったく重視しなかった
21.2
14.7
39.9
とても重視した
20.7
あまり重視しなかった
35.2
26.9
重視した
23.9
35.5
42.2
とても重視した
0%
20.0
24.0
20%
40%
20.2
あまり重視しな
かった
まったく重視しな
かった
17.6
15.9
60%
重視した
17.8
80%
100%
(3) 自分の学力・成績
進学時における家庭
の経済事情重視度
まったく重視しなかった
9.0
あまり重視しなかった
7.8
18.4
27.4
32.4
45.3
とても重視した
重視した
48.1
11.7
あまり重視しな
かった
重視した
10.3
46.0
24.5
とても重視した
0%
33.2
20%
40%
60%
34.9
8.8
30.0
12.3
80%
まったく重視しな
かった
100%
図 4-2 進学時における家庭の経済事情重視度とその他の要素重視度
- 92 -
(4) 自分の就きたい職業への就職の有利さ
進学時における家庭
の経済事情重視度
53.7
まったく重視しなかった
27.2
9.4
9.8
とても重視した
50.8
あまり重視しなかった
38.6
52.5
重視した
40.7
65.4
とても重視した
0%
20%
9.3 1.3
6.00.8
27.0
40%
60%
80%
重視した
あまり重視しな
かった
まったく重視しな
かった
6.2 1.4
100%
図 4-2 進学時における家庭の経済事情重視度とその他の要素重視度(つづき)
「(1)4年より短い年数で卒業できること」及び「(2)自宅から通学できること」については、そ
れらの要素を重視する度合いは、家庭の経済事情を重視した学生ほど高まっている。これらの進路
選択要素が、家庭の経済事情と密接に結びついていることは明らかである。
「(3)自分の学力・成績」についても、その重視度は、家庭の経済事情を考慮せざるをえなかった
学生ほど高くなっている。経済的に恵まれない家庭出身の子供ほど、その経済的制約のゆえに、様々
な学習機会から阻害される結果、学力が低い傾向のみられる点に関しては、多くの研究によって明
らかにされてきたことである。さらに、専門学校に対しては、大学へ学力的に進学できなかった生
徒の代替進路になっているとの、昔ながらのイメージを、いまだいだいている人も多い。しかし、
図 4-2 の結果を、そのように解釈するのは誤りである。
図 4-3 は、進学時における家庭の経済事情重視度と、高校成績(評定平均値)との関係を示した
ものである。ここでの成績区分は、JASSO 奨学金の受給基準に対応したカテゴリーとなっている。
それゆえ、高校成績が極めて高かったかどうかまでは判別できない2。だとしても、進学時において
家庭の経済事情を重視せざるをえなかった学生ほど、高校成績の高いことは明らかである。さらに、
家庭の経済事情を「とても重視した」若しくは「重視した」学生の9割以上が、JASSO 奨学金受給
に対する高校成績基準を満たしている。こうして考えると、図 4-2 の(3)の結果は、次のように解釈
した方がよいと考えられる。経済的に恵まれない家庭出身の生徒は、その経済的制約のゆえに、当
初は、今の進路(専門学校進学)以外の進路選択を考えていた。しかし、この高校成績なら、奨学
金受給も可能だから、といった助言などをもとに現在の進路を選択した。しかし、奨学金を確保す
るためには、高校成績基準を考慮せざるをえない。その意味で「(3)自分の学力・成績」を重視した、
という解釈である。
- 93 -
進学時における家庭
の経済事情重視度
14.6
まったく重視しなかった
29.5
55.8
3.2 未満
12.1
あまり重視しなかった
9.8
重視した
とても重視した
7.2
0%
30.8
57.0
29.1
3.5 以上~
5.0 以下
61.1
27.2
20%
3.2 以上~
3.5 未満
65.5
40%
60%
80%
100%
図 4-3 進学時における家庭の経済事情重視度と、高校成績(評定平均値)
この解釈については、特に、JASSO 奨学金受給者については、いわゆる「予約奨学金制度」を利
用して、高校時代に奨学金受給を確保した学生が、今回のサンプル全員でみれば、65%を超えると
いう状況を勘案すれば、より説得性をもつ。なぜなら、奨学金受給の可否が高等教育機関進学後に
しか分からない状況の場合は、その不安ゆえに進学を躊躇する可能性がある。しかし、そういった
危惧なしに、安心して進路選択ができるからである。
図 4-2 に話を戻そう。進路選択要素としての「(4)自分の就きたい職業への就職の有利さ」につい
ては、この要素を重視する度合いは、全体的傾向としては、家庭の経済事情を重視した学生ほど高
まっている。しかし、その傾向は、(1)~(3)の要素ほど明確ではない。ただし、家庭の経済事情を「ま
ったく重視しなかった」学生での(4)の重視度の低さが目を引く。
図 4-4 の(1)から明らかなように、家庭の経済事情を重視する必要のなかった学生ほど、四年制大
学に進学を希望していた比率が低くなっている。のみならず、図 4-3 をもとにすれば、高校成績も
悪い傾向がみられる。以上の結果と図 4-2 の(4)の結果を併せて考えれば、次のような可能性が示唆
される。つまり、経済的制約が少ない家庭出身の学生には、高校時代あるいはもっと早い時期から、
学力的に大学への進学を諦めた生徒の代替進路になっている、との昔ながらの専門学校進学イメー
ジに近い色合いを強くもつ学生が、多数含まれている。そのような不本意進路選択学生の場合は、
「(4)自分就きたい職業への就職の有利さ」といった目的意識も薄い、といった可能性である。
これに対し、家庭の経済事情を重視せざるをえなかった学生の場合は、高校成績の良さから考え
ても、図 4-4 の(1)に表れた、四年制大学への進学断念は、その経済的制約が理由になっている可能
性が高い。それは、以下の2点から補強される。
- 94 -
(1) 一番希望していた進路
進学を決める時の
家庭の経済事情
66.3
まったく重視しなかった
19.8 0.5
7.7
5.7
専門学校
68.8
あまり重視しなかった
四年制大学
21.6 1.8
5.7 2.0
短期大学
就 職
58.1
重視した
33.6
49.0
とても重視した
0%
20%
2.6
41.6
40%
2.2
60%
80%
4.31.3
その他
4.6 2.6
100%
(2) 地元から離れた学校への進学
進学時における家庭
の経済事情重視度
41.1
まったく重視しなかった
16.2
18.0
24.7
まったく考え
なかった
25.8
あまり重視しなかった
28.5
27.4
18.2
あまり考えな
かった
少し考えた
19.2
重視した
25.3
33.8
21.7
とても考えた
19.0
とても重視した
0%
17.6
20%
27.8
40%
60%
35.6
80%
100%
図 4-4 進学時における家庭の経済事情重視度と、経済的制約がなかった場合の希望進路
第1に、家庭の経済事情を重視する必要のある学生ほど、経済的制約さえなければ、四年制大学
への進学を希望していた比率が高くなっている。第2に、先述したように、進路選択要因としては、
自宅通学重視は、家庭の経済事情と密接に結びついていた。この点を前提にすれば、図 4-4 の(2)に
示したように、家庭の経済事情を重視する必要のある学生ほど、経済的制約さえなければ、地元か
ら離れた学校への進学を、希望する度合いが強くなる傾向がみられるからである。
こうしてみると、専門学校が大学へ進学できなかった生徒の代替進路になっているとしても、そ
れには2つのルートが存在することになる。一つが、特に経済的制約の少ない家庭出身者を中心と
する、学力的代替進路としての専門学校である。もう一つが、経済的に恵まれない家庭出身の学生
- 95 -
にとっての、経済的代替進路としての専門学校である。そして、後者についていえば、本来なら専
門学校進学とは異なる進路を取らざるをえなかった学生が、現在の学生支援策によって、現在の進
路に進むことができた、という恩恵を受けている。しかし、進路選択に当たって家庭の経済事情を、
「とても重視した」学生の4割以上、
「重視した」学生の3分の1以上の学生が、四年制大学への進
学希望をもっていた。この点を考慮すれば、それら学生たちの本来の希望をかなえるための、今以
上の学生支援が求められていることを示唆している。
ただし、語弊のないように申し添えておけば、専門学校が、大学へ進学できなかった生徒の代替
進路としての機能しか果たしていない、と主張したいわけではない。経済的制約がなかった場合に
も専門学校を希望進路とした学生は、今回の調査サンプル全体で 60.3%に達する。四年制大学及び
短期大学進学を希望していた学生は、それぞれ 30.4 %、2.1%にすぎない(これら以外の希望進路と
しては、就職が 5.1%、その他進路が 2.1%)
。つまり、
「(4)自分の就きたい職業への就職の有利さ」
などを重視し、大学の代替進路としてではなく、専門学校を第1志望にした人が、専門学校学生の
中で主流をしめることは、明らかだからである3。それゆえ、上述の指摘は、代替進路としての専門
学校選択者に限った話にすぎない。
ここでさらに、高所得家庭出身者の専門学校利用について、1点だけ指摘しておきたい。図 4-5
は、今回の調査サンプルについて、現在の学校に入学する前に、通っていたことがある学校(中退
した学校を含む)を、家計所得別に示したものである。回答は、受けた教育についてすべて回答す
る、複数回答形式になっている。ここでは、
「高校」と「その他」教育機関を割愛し、
「専門学校」
、
「短大」
、
「四年制大学」の3つについてみていくことにした。
家計所得が 900 万円を超える家庭出身者層での四年制大学経験者がとびぬけて多い。
有職学生
(定
職をもっている学生)がその比率を押し上げている可能性が考えられるため、有職学生とそうでな
い学生別にも集計を行ってみた。しかし、定職をもっていない学生に限っても、その比率にはほと
んど変化がみられなかった。一方、短大教育経験者については、有職学生と非有有職学生を区別す
ると、家計所得との関係は、まったく観察されなかった。また、専門学校教育経験者については、
有職学生の影響を除けば、家計所得が 1000 万円を超える家庭出身者層で、図 4-5 より比率が低くな
り、家計所得 300 万円以上の家庭出身者に関しては、所得が高くなるほど、その教育経験者の比率
は低下する傾向がみられた。だから、これらと対比すれば、四年制大学経験者についてみられる傾
向は特徴的である。
中退を含めた回答になっているため、これら四年制大学経験者が、その卒業者なのか中退者なの
かは判別できない。だとしても、大学卒業後の進路としてであれ、大学中退後の進路としてであれ、
データからみる限り、その種の専門学校利用が高額所得家庭出身者だけに許される特権になってい
る可能性が示唆される。かりに、そこまでの家計所得に達しない階層では、経済的理由でそれが困
難になっているとすれば、この面に関する学生支援も考える必要があるといえる。
なお、図 4-5 からは、留学生については、四年制大学、短大、専門学校いずれについても、それ
らの経験者が、日本人学生に比べて極めて高いことも分かる。
- 96 -
%
25.0
21.8
20.0
10.0
専門学校
14.9
15.0
13.6
9.9
7.0
5.6
5.0
5.3
2.3
5.4
1.0
0.0
4.8
5.2
4.2
2.1
1.4
1.0
9
0
0
5
0
0
万
円
未
満
7
0
0
万
円
未
満
9
0
0
万
円
未
満
1
0
0
0
万
円
未
満
~
7
0
0
~
5
0
0
~
3
0
0
~
3
0
0
万
円
未
満
6.0
四年制大学
7.2
7.0
短 大
4.5
2.1
1
0
0
0
万
円
以
上
留
学
生
家計の年間所得
図 4-5 家計年収とこれまでの教育歴
3-2 学生生活費の主な支出者
次に、学生生活費の出所が、家計の経済状況によってどのように変わるのかを、図 4-6 でみてみ
よう。まず、今回のサンプル全体でみれば、
「(1)授業料・実習費・施設設備費などの経費」につい
ては、
「保護者に出してもらっている」65.6%、
「奨学金をあてている」28.1%、
「アルバイト収入で
自分で払っている」3.6%、
「その他」2.7%となる。同様に、
「(2)授業料や学校への納付金以外にか
かる生活費」については、以上の順で 59.8%、10.7%、 27.0%、 2.5%となる。(1)・(2)とも主に
保護者が支出してケースが半数以上に達している。次いで多いのは、(1)については主に奨学金で充
当している学生であり、その比率は約3割にも達している。一方、(2)については、同じく約3割の
学生はアルバイト収入で賄っている。
そして、(1)・(2)のいずれについても、進学時に家庭の経済事情を重視しなければならかった家庭
出身者ほど、当然の結果ながら、保護者が主に支出しているケースは少なくなっている。そして、
(1)については奨学金で、(2)についてはアルバイト収入で賄う、といった傾向も顕著になる。アルバ
イトに関しては、家計の経済状況とのあいだに、それほどきれいな関係は認められない。しかし、
奨学金への依存度は、進学時に家庭の経済事情を重視しなければならかった家庭出身者ほど、顕著
に増加する傾向が明らかにみられる。特に、家庭の経済事情を「とても重視」しなければならなか
った学生については、(1)を、主に保護者が支出しているケースは、5割を切っている。さらに、そ
れを奨学金で充当している学生は、4割を超えてさえいることは特筆に値する。
- 97 -
(1) 授業料・実習費・施設設備費などの経費
進学時における家庭
の経済事情重視度
75.7
まったく重視しなかった
15.0
73.9
あまり重視しなかった
22.3
65.5
重視した
28.2
49.3
とても重視した
0%
41.3
20%
40%
4.6
60%
2.2
3.6
保護者に出してもらっ
ている
奨学金をあてている
アルバイト収入で自分
で払っている
その他
5.6
80%
100%
(2) 授業料や学校への納付金以外にかかる生活費
進学時における家庭
の経済事情重視度
64.0
まったく重視しなかった
3.8
63.2
あまり重視しなかった
60.6
重視した
50.9
とても重視した
0%
20%
14.4
40%
60%
28.1
4.0
8.8
26.7
1.3
11.6
25.4
2.4
31.0
3.8
80%
100%
保護者に出してもらっ
ている
奨学金をあてている
アルバイト収入で自分
で払っている
その他
図 4-6 進学時における家庭の経済事情重視度と、学生生活費の主な支出者
3-3. 日本学生支援機構奨学金
このように、家計の経済状況が苦しい学生にとっては、学生生活を送るに当たって、特に奨学金
が重要な役割を果たしていることが分かる。そこで、次に奨学金の中でも、受給者規模を考えると、
もっとも影響力の大きい、日本学生支援機構(JASSO)奨学金についてみていこう。ちなみに今回
の調査では、図 4-7 に示したように、全学生の 56.3%と、半数以上の学生が JASSO 奨学金を受給
している4。以下、図 4-8~4-13 は、その受給者に限った集計結果になっている。
まず、この奨学金が、学生にとってどれほどの重要性をもっているかは、図 4-8 から明らかであ
る。つまり、JASSO 奨学金が利用できなかった場合の修学困難度をみると、
「修学は困難」な学生
の比率だけをみても、それに「修学がやや困難」までを含めても、当然のことながら、家計の経済
状況が悪化するほど上昇している。
- 98 -
家計の年間所得
11.7
全体
3.9
1000万円以上
39.8
27.2
40.1
3.4
44.8
16.7
300万円未満
第一種・第二種
の両方を受けて
いる
44.6
14.7
300~500万円未満
0.0
3.1
10.3
500~700万円未満
第二種奨学金を
受けている
45.5
7.7
700~900万円未満
第一種奨学金を
受けている
1.0
6.3
900~1000万円未満
4.8
8.0
42.4
0.0
20.0
9.6
40.0
60.0 %
図 4-7 家計年収と JASSO 奨学金の受給率
家計の年間所得
1000万円以上
39.4
48.8
7.1 4.7
900~1000万円未満
40.4
47.4
8.8 3.5
48.7
700~900万円未満
42.9
58.8
500~700万円未満
32.8
66.6
300~500万円未満
0%
20%
7.3 1.1
26.3
73.6
300万円未満
6.3 2.1
22.2
40%
60%
80%
修学は困難
修学はやや困難
修学はそれほど
困難ではない
修学はまったく困
難ではない
5.41.7
2.8
1.3
100%
図 4-8 家計年収と JASSO 奨学金が利用できなかった場合の修学困難度
- 99 -
しかも、家計所得 1000 万円以上の家庭出身者でさえ、
「修学は困難」な学生は 39.4%、それに「修
学がやや困難」を含めると 88.2%の学生が、その必要性を感じている。家計所得 300 万円未満の家
庭出身者の場合にいたっては、これらの比率は、それぞれ 73.6%と 95.8%にまではね上がり、家計
の経済状況にかかわらず、ほぼすべての学生にとって JASSO 奨学金は、かかせない経済支援策に
なっている。
それでは、学生たちは受け取った JASSO 奨学金を、主にどのような学生生活費支出に充ててい
るのだろうか。図 4-9 から明らかなように、それを「授業料など学校への納付金」に充当するため
に利用している学生が極めて多い。家計所得 1000 万円以上の家庭出身者でさえ、その約6割が
JASSO 奨学金を、主に「授業料など学校への納付金」支払のために利用している。このような傾向
は、家計所得が低くなるにつれ上昇し、家計所得 300 万円未満の家庭出身者にいたっては、約8割
にも達している。
先に図 4-6 でみてきたように、特に進学時に家庭の経済事情を「とても重視」しなければならか
った学生については、
「授業料・実習費・施設設備費などの経費」を、奨学金から充当している傾向
がみられた。そのような傾向は、図 4-9 でも再確認でき、
「授業料など学校への納付金」の財源とし
て、奨学金が重要な役割を果たしていることは明らかである。
JASSO 奨学金の主な使い道として、
「授業料など学校への納付金」に次いで多いのが、
「住居費」
、
3番目が「修学費」となっている。これら2費目については、家計所得が低くなるにつれ、それら
への充当は少なくなる傾向がみられる。家計が苦しいほど、保護者からの資金援助が減少し、JASSO
奨学金を「授業料など学校への納付金」支払に充てるのが精一杯になるため、と考えられる。
家計の年間所得
60.2
1000万円以上
10.2
66.7
900~1000万円未満
21.9
10.5
3.9
12.3
授業料など学校
への納付金
修学費
1.8
住居費
66.9
700~900万円未満
11.3
70.6
500~700万円未満
9.5
16.7
2.9
14.7
1.7
資格取得のため
の費用
娯楽費、趣味に
関する費用
貯 金
74.9
300~500万円未満
5.7
15.5
1.5
その他
79.4
300万円未満
0%
20%
40%
7.6
60%
9.1 1.3
80%
図 4-9 家計年収と JASSO 奨学金の主な使い道
- 100 -
100%
なお、大学生に関する奨学金受給者の奨学金の使途については、全国大学生活協同組合連合会『学
生の消費生活に関する実態調査』で知ることができる。それをもとに、2012 年についてみれば、い
くつでも選択可といった質問形式で、
「大学納付金」18.5%、
「毎月の食費や住居費などの生活費」
19.1%となっている5。今回の調査サンプル全体では、専門学校学生の場合は、
「授業料など学校へ
の納付金」72.1 %、
「住居費」15.0%となる。つまり、奨学金を「授業料など学校への納付金」に
充てる傾向は、大学生に比べて専門学校学生で圧倒的に高いことが分かる6。
いずれにせよ、JASSO 奨学金の主な使い道は、
「授業料など学校への納付金」
、
「住居費」といっ
た学生生活を送る上で不可欠な費用、さらには「修学費」といった勉学関係の費用の充足に、ほぼ
限られていることは事実である7。この点については、JASSO 以外の奨学金に関しても当てはまる。
JASSO からのものであるか、そうでないかを問わず、奨学金が勉学を継続する上で、重要な役割を
果たしていることだけは確実である。
このような状況の中で、JASSO 奨学金の支給金額の増額を希望している学生は、どの程度存在す
るのだろうか。図 4-10 をみれば、4分の3以上の学生が、現在の支給金額で十分だと考えているこ
とが分かる。しかし、家計所得 300 万円未満の家庭出身者では、他の所得階層出身者に比べて、特
に増額を望む学生が多くなっていることは、明記しておく必要がある。
それでは、JASSO 奨学金の増額を希望する学生は、どの程度の増額を要望しているのだろうか。
図 4-11 をもとにすれば、第1種奨学金については、家計所得 900 万円未満の家庭出身者では、所得
階層の高低にかかわらず、月当たり平均して 3.5 万円前後の増額を希望していることが分かる。第
2種奨学金については、家計年収にかかわらずほぼ一律に、やはり、月当たり平均して約3万円の
増額を希望している。
家計の年間所得
16.0
84.0
1000万円以上
12.5
87.5
900~1000万円未満
15.8
84.2
700~900万円未満
500~700万円未満
83.1
16.9
300~500万円未満
84.9
15.1
23.3
76.7
300万円未満
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図 4-10 家計年収と JASSO 奨学金の支給金額の不足度
- 101 -
今の金額で
十分である
今の金額で
十分でない
家計の年間所得
1.75
1000万円以上
1.00
900~1000万円未満
3.19
700~900万円未満
3.58
500~700万円未満
3.71
300~500万円未満
3.34
300万円未満
0
1
2
3
4 万円
図 4-11 家計年収と JASSO 第1種奨学金の増額希望平均額
両種奨学金の合計で、月当たり約 6.5 万円の増額を希望している、と解釈することもできる。し
かし、第1種奨学金と、第2種奨学金との増額希望額には、0.691 とかなり高い相関がみられる。
この点も勘案すると、利息が免除される第1種奨学金の増額が無理なら、利息免除は付かないとし
ても、せめて第2種奨学金で構わないから、月当たり3万円程度の増額を実現してほしい。そうい
った希望であると解釈した方がよいと思われる。
ところで、このような奨学金貸与について、増額の要望が存在する一方で、卒業後の返還に対す
る不安感を、学生たちはどの程度抱いているのだろうか。図 4-12 で確認しておこう。どの所得階層
出身者についてみても、
「十分返還できると思う」と「なんとか返還できると思う」の合計で、卒業
後の JASSO 奨学金の返還について、それほどの不安を感じていない学生は、64.0%と半数以上に
のぼる。しかし、その返還に対して不安を抱いている学生は、家計所得 900 万円以上の家庭出身者
の動向を例外視すれば、それ未満の所得階層出身者については、少なくとも所得階層が低くなるほ
ど不安感が増加している。奨学金貸与金額の多さが影響した結果だと考えられる。
なお、返還への不安感が少ない学生の方が、奨学金増額を求めているのではないか、と常識的に
は考えられる。しかし、図 4-13 から明らかなように、その逆に、JASSO 奨学金の支給額は、
「今の
金額で十分でない」
、つまり増額を希望している学生の方が、返還への不安感が高い。ほぼ同様の傾
向は、
「卒業後の返還が不安だから、なるべく貸与奨学金は借りたくない」という考えとのクロスで
も確かめられる。以上の結果は、返還への不安感を抱えながらも、やむにやまれず奨学金増額を希
望せざるをえない学生が、多数存在することを示唆している8。
- 102 -
家計の年間所得
20.8
1000万円以上
44.0
28.1
900~1000万円未満
40.4
22.9
700~900万円未満
500~700万円未満
20.3
300~500万円未満
19.4
0%
22.9
46.7
24.2
45.9
25.3
44.0
20%
32.8
40%
11.2
28.1
47.1
12.5
300万円未満
24.0
60%
十分返還できると
思う
3.5
なんとか返還できる
と思う
7.1
8.8
返還できるか少し
不安である
9.4
返還できるかとても
不安である
10.7
80%
100%
図 4-12 家計年収と、卒業後の JASSO 奨学金に対する返還見通し
JASSO奨学金
支給額
今の金額で十分でない
13.7%
43.4%
29.0%
13.9%
十分返還できると思う
なんとか返還できると
思う
返還できるか少し不安
である
20.1%
今の金額で十分である
0%
45.4%
20%
40%
26.3%
60%
80%
8.2%
返還できるかとても不
安である
100%
図 4-13 JASSO 奨学金の増額希望と、卒業後の JASSO 奨学金に対する返還見通し
このように、卒業後の奨学金返還に対して不安を抱く学生が、JASSO 奨学金貸与者のなかにも、
3~4割存在している。だとすれば、その将来的な不安ゆえに、この奨学金貸与を、諦める学生も
存在すると考えられる。そこで、図 4-14 で、JASSO 奨学金不申請理由を確認しておこう。
家計所得が高く、進学時に家庭の経済事情を重視せざるをえない学生ほど、
「収入基準が合わなか
ったから」といった理由は、当然のことながら少なくなっている。それに対し、
「日本学生支援機構
以外の奨学金を受けることができたから」といった理由は、増加している。
- 103 -
進学時における家庭
の経済事情重視度
33.8
まったく重視しなかった
7.6 3.2 13.4 1.9
卒業後の返還が大
変そうだったから
40.1
申請手続きが複雑
だったから
43.4
あまり重視しなかった
8.1 2.5 12.8 4.1
52.7
重視した
29.1
7.8 3.1 8.1 6.8
成績基準が合わな
かったから
収入基準が合わな
かったから
21.4
支援機構以外で受
けることができた
48.8
とても重視した
0%
20%
8.6 2.7 7.2 7.9
40%
60%
24.7
80%
その他
100%
図 4-14 進学時における家庭の経済事情重視度と、JASSO 奨学金不申請理由
しかし、ここで特に問題になるは、
「卒業後の返還が大変そうだったから」
・
「申請手続きが複雑だ
ったから」
、といった理由による申請見合せである。
卒業後の返還への危惧といった理由をもとにした不申請は、進学時において家庭の経済事情を「重
視した」学生層の動向が、多少変則的に現れている点を例外視すれば、家庭の経済事情を重視せざ
るをえない学生ほど、基本的には増加している。しかも、そのような理由で申請をしなかった学生
は、家庭の経済事情を「とても重視した」若しくは「重視した」と答えた学生層の5割前後と、不
申請の最大の理由になっている。
小林雅之によれば、低所得者層ほど、貸与(ローン)にまつわる「将来の負担増を恐れ」るがゆ
えに、
「奨学金に応募しない可能性がある」
、とされる9。図 4-14 の結果は、このような「ローン回
避問題」が、少なくとも JASSO 奨学金不申請者については、存在することを示唆している。ただ
し、JASSO 奨学金不申請者に限ることなく、今回のサンプル学生全体の傾向をもとにすれば、貸与
奨学金に対する見方としては、図 4-15 の(1)をみる限り、
「ローン回避」が、低所得者層に顕著だと
いう傾向は確認できない。この矛盾については、今後の課題としてより緻密な分析が必要である。
それはさておき、図 4-15 の(1)に関していえば、今回のサンプル学生全体で、
「とてもそう思う」
+「そう思う」の合計をとると、76.6%の学生が「卒業後の返還が不安だから、なるべく貸与(返
還が必要)奨学金は借りたくない」と思っていることは、重要性をもつと考えられる。
いずれにせよ、図 4-14 に立ち返っていえば、
「ローン回避問題」は、ある意味では学生本人の将
来観にかかわる、個人的問題ともみなせる。しかし、申請手続の複雑さが原因となって、申請を取
りやめた学生も、今回のサンプル全体で 8.0%と、1割程度存在することは、制度上の問題になると
いう意味では、より大きな課題になると考えられる。
- 104 -
(1) 卒業後の返還が不安だから、なるべく
貸与(返還が必要)奨学金は借りたくない
進学時における家庭
の経済事情重視度
43.2
まったく重視しなかった
27.5
35.2
あまり重視しなかった
13.2
42.2
31.1
重視した
16.2
45.4
とてもそう思う
19.4
3.2
20.4
3.1
そう思う
あまりそうは
思わない
まったくそうは
思わない
41.7
とても重視した
0%
20%
36.3
40%
60%
17.0
5.0
80%
100%
(2) 現在の学校に進学する前には、専門学校や大学へ進学
するときに利用できる奨学金の情報提供が少なかった
進学時における家庭
の経済事情重視度
11.9
まったく重視しなかった
あまり重視しなかった
6.8
16.6
46.4
25.1
25.1
55.1
とてもそう思う
13.1
そう思う
あまりそうは
思わない
重視した
6.8
26.9
12.7
とても重視した
0%
55.3
25.8
20%
10.9
46.1
40%
60%
まったくそうは
思わない
15.4
80%
100%
(3) 現在の学校に進学した後、奨学金
についての情報提供が少なかった
進学時における家庭
の経済事情重視度
まったく重視しなかった
7.7
15.0
49.1
28.3
とてもそう思う
あまり重視しなかった 4.9
重視した 4.4
9.9
とても重視した
0%
18.8
62.2
19.8
62.6
19.0
20%
14.1
13.2
52.4
40%
60%
そう思う
あまりそうは
思わない
まったくそうは
思わない
18.7
80%
100%
図 4-15 進学時における家庭の経済事情重視度と、奨学金に対する意見
- 105 -
以上に加えて、奨学金については、情報提供に関する問題も存在している。図 4-15 の(2)・(3)に
示したように、現在の学校に進学する前にも、現在の学校に進学した後からも、奨学金についての
情報提供が少なかった、という不満は、
「とてもそう思う」+「そう思う」の合計でみれば、サンプ
ル学生全体では、それぞれ 33.8%と 24.9%といった具合に、際立って多いわけではない。しかし、
そういった不満を持つ学生の比率は、進学時に家庭の経済事情を重視せざるをえない学生ほど、多
くなっている。このことは、相対的に奨学金の必要度がもっとも高い人たちに、その十分な情報が
行きわっていない可能性の存在を示唆している。
3-4 学校への納付金の減免状況
次に、奨学金とならぶ、経済的な学生支援策である、入学金、授業料、実習費・施設設備費など
の、学校への納付金の減免状況について、図 4-16 でみていこう。
減免を受けている学生のみを抽出して、
減免費目を確認すれば、
入学金に対する減免が 59.3%と、
もっとも多い。しかし、その対象となった学生の比率をみれば、進学時における家庭の経済事情重
視度をもとにした差はみられない。それは、入試や高校時代の成績を基準に、この減免を行う専門
学校が多数存在するためと考えられる。次いで 40.5%と、多くの学生が恩恵を受けているのは、授
業料である。実習費については 4.5%、施設設備費は 2.7%の学生が、減免を受けている(
「その他」
、
つまりこれら以外の経費の減免を受けた学生が 4.0%)
。授業料、実習費、施設設備費に関しては、
進学時における家庭の経済事情重視度が大きかった学生ほど、減免を受けている。
授業料・実習費・施設設備費などで減免を受けた額は、減免対象学生全体の平均、つまり、有額
平均で 22 万円となる。ただし、家計所得が低いほど減額金額が大きい傾向はみられない。
進学時における家庭
の経済事情重視度
15.0 3.1
まったく重視しなかった
71.1
10.8
受けている
18.7 2.9
あまり重視しなかった
22.0
重視した
3.0
26.8
とても重視した
0%
20%
68.6
9.8
63.4
11.6
53.7
3.3
40%
60%
申し込んだが認められな
かった
減免を申し込んでいない
学校には減免制度がない
16.1
80%
100%
図 4-16 進学時における家庭の経済事情重視度と、学校への納付金の減免状況
- 106 -
なお、減免を受けていない学生を含めた、全学生の平均でみれば、学校への納付金などの負担は、
80 万円くらいに抑えることができる程度まで、軽減してほしいと思っている。進学を決めるときに
経済事情を「とても重視した」学生については、更に5万円くらい多くの減額を求めている。しか
し、その点を除けば、進学時における家庭の経済事情重視度とのあいだに、差異はみられない。
3-5 アルバイトの勉学に対する負担
今回の調査をもとに、専門学校学生の授業期間中のアルバイト状況についてみれば、定期的なア
ルバイト従事者の比率は 53.4%になる。それに、不定期のアルバイト従事者を加えたアルバイト従
事率は、60.8%であった。一方、日本学生支援機構による 2012 年度『学生生活調査』をもとに、四
年制大学についての状況をみれば、それぞれ 62.7%、71.6%となる。授業出席時間は、大学生が週
当たり 18.4 時間であるのに比べて、専門学校学生では 26.7 時間になる。つまり専門学校の方が、
大学より授業がタイトに組まれていることになる。さらには授業で出される課題も多い。加えて、
一部の学校では、アルバイトを禁止しているところも存在する。それゆえ、アルバイト従事率は、
大学生より低くなっていると考えられる。
しかし、アルバイト従事者に限った平均労働時間、つまり有額平均でみれば、大学生の場合は週
当たり 15.5 時間なのに対し、専門学校学生は 18.6 時間となる。つまり、専門学校学生の場合は大
学生と比較して、その授業負担の大きさが原因となって、アルバイトをしない学生が多数存在する
一方で、長時間アルバイトに精を出している学生がいるといった具合に、二極分化していることが
示唆される。ただし、家計の経済状況別にみても、アルバイト従事率、その労働時間の平均に差は
認められなかった。
それでは、専門学校学生たちは、アルバイトで得た収入を、主に何の支出に廻しているのだろう
か。これについては、主要な支出先を3つまで選択する形での調査になっている。図 4-17 をみれば、
以下の点が明らかになる。
(1) アルバイト収入の最大の使い道は、進学時における家庭の経済事情重視度にかかわらず基本
的には、
「娯楽費、趣味に関する費用」
、次いで「貯金」となっている。ただし、これら2つの使い
道については、進学時に家庭の経済事情を「まったく重視しなかった」学生の動向を例外視すれば、
その重視度が高くなるほど、それら支出へ振り向ける比率は、基本的には低くなっている。
(2) 第3番目の使い道は、
「修学費(学校への納付金を除く勉学関係の費用[通学費・教科書代・
図書代など]
)
」であり、これへの支出傾向は、進学時における家庭の経済事情重視度が高くなるに
つれ、顕著に高くなっている。
(3) 第4の使い道は「住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費」
、第5番目が「授業料など
の学校への納付金」となる。これら2つの支出先についても、進学時に家庭の経済事情を「まった
く重視しなかった」学生の動向は変則的である。しかし、それを例外視すれば、その重視度が高く
なるほど、これら支出へ振り向ける度合いは、基本的には高くなっている。特に、進学を決めると
きに家庭の経済事情を「とても重視した」学生については、その4分の1が、
「授業料などの学校へ
の納付金」のためにアルバイトをしていることは、注目に値する。
- 107 -
%
100.0
90.0
80.0
85.6
87.9
82.8
76.2
修学費
70.0
住居費
60.0
50.0
40.0
49.9
57.2
47.7
40.1
資格取得のため
の費用
57.6
34.4
51.6
娯楽費、趣味に
関する費用
31.6
貯 金
30.0
20.0
その他
24.7
22.0
17.9
14.1
10.0
0.0
授業料などの学
校への納付金
18.4
13.9
16.4
9.4
7.8
6.2
5.4
7.0
と
て
も
重
視
し
た
重
視
し
た
あ
ま
り
重
視
し
な
か
っ
た
ま
っ
た
く
重
視
し
な
か
っ
た
進学時における家庭の経済事情重視度
図 4-17 進学時における家庭の経済事情重視度と、アルバイト収入の主な使い道
それでは、授業期間中のアルバイト形態は、学校外学習時間にどの程度影響を与えているのだろ
うか。
「定期的なアルバイト」をしている学生、
「不定期のアルバイトをしている」学生、
「アルバイ
トはしていない」学生の順で、学校外学習時間が減少していることは、図 4-18 から明らかである。
そのような状況の中で、図 4-19 からみてとれるように、進学を決めるときに家庭の経済事情を「ま
ったく重視しなかった」学生の動向が変則的である点を除けば、進学時における家庭の経済事情重
視度が高くなるほど、アルバイトによる勉学への犠牲感は基本的には高くなっている。
しかし、図 4-20 から分かるように、進学時における家庭の経済事情重視度が高くなるほど、学校
外学習時間が増加している。先述したように、家計の経済状況別にみても、アルバイト従事率、そ
の平均労働時間(有額平均)に差は認められなかった。だとすれば、同程度の時間をアルバイトに
割いていても、進学時における家庭の経済事情重視度が高い学生ほど、勉学意欲が強く、学習時間
を確保していることが示唆される。そして、その勉学意欲の高さゆえ、アルバイトによる勉学への
犠牲感が高くなっているものと考えられる。
- 108 -
受業期間中における
アルバイト状況
6.1
アルバイトはしていない
4.9
5.7
不定期のアルバイトをしている
4.3
4.5
定期的なアルバイトをしている
学校の授業に対する準備
(指示された課題のための
勉強や予習・復習など)
学校の授業以外の勉強(資
格取得のための勉強など)
3.4
0.0
5.0
10.0
図 4-18 受業期間中のアルバイト形態と、学校外学習時間
進学時における家庭
の経済事情重視度
40.8
まったく重視しなかった
26.0
23.2
10.0
全く妨げになっていない
31.9
あまり重視しなかった
35.2
29.5
3.5
あまり妨げになっていない
少し妨げになっている
28.0
重視した
35.3
24.7
とても重視した
0%
32.6
29.6
20%
37.3
40%
60%
4.1
とても妨げになっている
8.4
80%
100%
図 4-19 進学時における家庭の経済事情重視度と、アルバイトによる勉学犠牲感
進学を決める時の
家庭の経済事情
まったく重視しなかった
4.2
3.6
あまり重視しなかった
4.5
重視した
5.6
とても重視した
5.8
0.0
学校の授業に対する準備
(指示された課題のための
勉強や予習・復習など)
3.9
4.1
学校の授業以外の勉強(資
格取得のための勉強など)
4.6
5.0
10.0
- 109 -
図 4-20 進学時における家庭の経済事情重視度と、学校外学習時間
4. 本章のまとめ
最後に、専門学校学生への経済的支援への示唆を含めて、本章で得られた知見のまとめを行うと
ともに、今後の課題について触れておこう。
(1) 家計状況と進路選択
①進学時において家庭の経済事情を重視せざるをえなかった学生ほど、
高校成績は高い
(図 4-3)
。
さらに、四年制大学に進学を希望していた度合い、及び地元から離れた学校への進学を希望する度
合いが強い(図 4-4)
。これらの事実から分かるように、
「4年より短い年数で卒業できること」と
「自宅から通学できること」
、といった進路選択要素が、家庭の経済事情と密接に結びついている点
は明らかである。
特に、進路選択に当たって家庭の経済事情を「とても重視した」学生の4割以上、
「重視した」学
生の3分の1以上の学生が、四年制大学への進学希望をもっていた。この点を考慮すれば、それら
学生たちの本来の希望をかなえるために、今以上の経済支援が求められていることが示唆される。
②家計所得が 900 万円を超える家庭出身者層での、
四年制大学経験者がとびぬけて多い
(図 4-5)
。
中退を含めた回答になっているため、これら四年制大学経験者が、その卒業者なのか中退者なのか
は判別できない。しかし、大学卒業後の進路としてであれ、大学中退後の進路としてであれ、デー
タからみる限り、それが高額所得家庭出身者だけに許される特権になっている可能性が示唆される。
かりに、そこまでの家計所得に達しない階層では、経済的理由でそれが困難になっているとすれば、
この面に関する学生支援も考える必要があるといえる。
(2) 学生生活費の収入源
「授業料・実習費・施設設備費などの経費」
、
「授業料や学校への納付金以外にかかる生活費」の
いずれについても、進学に当たって家庭の経済事情を重視しなければならかった家庭出身者ほど、
当然の結果ながら、保護者が主に支出しているケースは少なくなっている。そして、
「授業料・実習
費・施設設備費などの経費」については奨学金で、
「授業料や学校への納付金以外にかかる生活費」
についてはアルバイト収入で賄う、といった傾向が顕著である(図 4-6)
。特に、奨学金に関しては、
収入源としてのその依存度が、進学の際に家庭の経済事情を重視しなければならかった家庭出身者
ほど、顕著に増加する傾向がみられる。中でも、進学時に家庭の経済事情を「とても重視」しなけ
ればならなかった学生については、
「授業料・実習費・施設設備費などの経費」を、奨学金で充当し
ている学生は、4割を超えてさえいる。
このように、
「授業料など学校への納付金」の財源として、奨学金が重要な役割を果たしているこ
とは明らかである。この点は、JASSO 奨学金受給者が、その収入を主にどのような学生生活費支出
に充てているのか、といったデータでも裏付けられる(図 4-9)。家計所得 1000 万円以上の家庭出
身者でさえ、その約6割が、JASSO 奨学金を主に「授業料など学校への納付金」支払のために利用
- 110 -
している。このような傾向は、家計所得が低くなるにつれ上昇し、家計所得 300 万円未満の家庭出
身者にいたっては、約8割にも達している。
そのため、家計所得 1000 万円以上の家庭出身者でさえ、JASSO 奨学金がなければ、
「修学は困
難」な学生は 39.4%、それに「修学がやや困難」な学生を含めると、88.2%にも達している(図 4-8)
。
家計所得 300 万円未満の家庭出身者の場合にいたっては、
これらの比率は、
それぞれ 73.6%と 95.8%
にまではね上がり、ほぼすべての学生にとって JASSO 奨学金は、家計の経済状況にかかわらず、
かかせない経済援助になっている。
(3) JASSO 奨学金への返還への不安感と要望
①どの所得階層出身者についてみても、
「十分返還できると思う」と「なんとか返還できると思う」
の合計で、卒業後の JASSO 奨学金の返還について、それほどの不安を感じていない学生は、半数
以上にのぼる(図 4-12)
。しかし、その返還に対して不安を抱いている学生は、少なくとも所得階
層が低くなるほど、基本的には増加している。
しかも、JASSO 奨学金の増額を希望している学生の方が、返還への不安感が高い(図 4-13)
。つ
まり、返還への危惧を抱きながらも、やむにやまれず奨学金増額を希望せざるをえない学生が、多
数存在することを示唆している。
②「卒業後の返還が大変そうだったから」といった理由による JASSO 奨学金申請見合せ(不申
請)
は、
基本的には、
進学時に家庭の経済事情を重視せざるをえない学生ほど増加している
(図 4-14)
。
しかも、そのような理由で申請をしなかった学生は、進学に際して家庭の経済事情を「とても重視
した」若しくは「重視した」学生層の5割前後と、不申請の最大の理由になっている。
③さらに、
「申請手続きが複雑だったから」といった理由で申請を取りやめた学生も、1割程度存
在することは、制度上のより大きな課題になると考えられる。
④現在の学校に進学する前にも、現在の学校に進学した後からも、奨学金についての情報提供が
少なかったという不満は、
「とてもそう思う」+「そう思う」の合計でみると、進学時に家庭の経済
事情を重視せざるをえなかった学生ほど、強くなっている(図 4-15)
。これは、奨学金の必要度が
もっとも高い人たちに、その十分な情報行きわっていない可能性があることを示唆している。
(4) アルバイト
①アルバイト収入の最大の使い道は、進学時における家庭の経済事情重視度にかかわらず、
「娯楽
費、趣味に関する費用」
、次いで「貯金」となっている(図 4-17)
。ただし、これら2つの使い道に
ついては、進学時における家庭の経済事情重視度が高くなるほど、それら支出へ振り向ける比率が
基本的には低くなっている。
②第3番目の使い道は「修学費(学校への納付金を除く勉学関係の費用[通学費・教科書代・図
書代など]
)
」
、第4番目が「住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費」
、第5番目が「授業料な
どの学校への納付金」となる。これら勉学必要経費を確保するためにアルバイトをする傾向は、進
学時における家庭の経済事情重視度が高くなるにつれ、顕著に強くなっている。特に、進学を決め
- 111 -
るときに家庭の経済事情を「とても重視した」学生については、その4分の1が、
「授業料などの学
校への納付金」のためにアルバイトをしていることは、注目に値する。
③「定期的なアルバイト」をしている学生、
「不定期のアルバイトをしている」学生、
「アルバイ
トはしていない」学生の順で、学校外学習時間が減少している(図 4-18)
。
そのような状況の中で、進学時における家庭の経済事情重視度が高くなるほど、アルバイトによ
る勉学への犠牲感は、基本的には高くなっている(図 4-19)
。しかし、学校外学習時間はかえって
増加していく傾向がみられる(図 4-20)
。家計の経済状況別にみても、アルバイト従事率、その労
働時間の平均に差は認められなかった。だとすれば、同じ時間をアルバイトに割いていても、進学
時における家庭の経済事情重視度が高かった学生ほど、勉学意欲が強く、学習時間を確保している
ことが示唆される。そして、その勉学意欲の高さゆえ、アルバイトによる勉学への犠牲感が高くな
っているものと考えられる。
ここで、今後の課題について記しておこう。
今回は基本的には、家計の経済状況を中心にすえて分析を行い、その結果について報告すること
にした。ただし、特に学生生活費の支出状況、及びそれと密接な関連性を持つ質問項目については、
居住形態や専門分野の別によって、これらをもとにした傾向に当然のことながら相違がみられた。
居住形態については、親元を離れて暮らしている学生、つまり一人暮らしの学生は、自宅通学生に
比べて、住居費・食費の負担が大きい。また、例えば学校納付金に関して授業料納入額だけについ
てみても、専門分野別の平均値をもとにすると、最低は農業系の 43.3 万円から、最高は服飾・家政
系の 90.9 万円まで、45 万円以上の差がみられるからである。しかし、後者についていえば、今回
の調査サンプルに含まれる農業系専門学校は2校にとどまる。しかも、1校は公立、もう1校は私
立であり、前者の平均授業料納付額は 15.5 万円、後者は 94.1 万円であった。この1例だけからで
も分かるように、専門分野別の分析を行う場合には、更に設置者別にも分類した解析を行う必要が
ある。本章は、あくまで基礎分析結果の報告にとどまり、その意味で第1次報告にすぎない。それ
ゆえ、紙幅の制約もあり、煩雑になる可能性がある分析は割愛せざるをえなかった。
また、居住形態別の解析を行う場合には、もう少しデータの精査が必要と考えられ10、これにつ
いても、今回は時間の制約もあり、割愛せざるをえなかった。
もちろん、居住形態別、専門分野別の解析は、基本的な属性別の分析として重要性をもつことは
いうまでもない。地域別の解析についても同様である。これらの点については、本文中に記した重
要な論点に関する分析課題とあわせて、第2次報告以降でさらなる解析を進めていかなければなら
ない、今後の課題としたい。
<注>
1
この結果を反映して、他の質問項目との関係については、進学時における家庭の経済事情重視度と家計の年
間所得とで、微妙な違いが観察される項目も多少存在するものの、ほぼ似たような傾向が観察された。
- 112 -
2
特に高校成績表記が、相対評価から絶対評価に変化してからは、例えばほとんどの生徒に 4.0 以上の評点を
与える高校なども確かに存在することを考えれば、なおさらである。
3 ただし、高校時代以前の早い時期に、大学は高嶺の花と早々に諦め、進学するとすれば専門学校しか考えな
くなった学生も多数存在するものと推測される。だから、経済的制約がなかった場合にも専門学校を希望進
路とした学生についての 60.3%という数値は、進学機会の問題としてとらえる場合には、割り引いて考える
必要があると思われる。
4 JASSO 奨学金の貸与条件として、専修学校専門課程に関しては、年収・所得の上限額が存在する。給与所得
世帯で4人世帯の目安を示しておけば、2013 年度では、第 1 種奨学金については、国公立専門学校進学者で
は 857 万円、私立専門学校進学者では 929 万円である。第2種奨学金については、国公立専門学校進学者で
は 1,115 万円、私立専門学校進学者では 1,181 万円である。
今回の調査では、これらの基準を上回る家計所得をもつ家庭出身者についても、第 1 種奨・第2種とも
JASSO 奨学金受給者が多数みられた。上に示した所得上限基準は、世帯の人数・事情により増減するので、
家計所得 1000 万円以上の家庭出身者からも、JASSO 奨学金受給者が存在することについては、問題はない。
ただし、以上の点と関連して、今回のアンケート調査に関しては、次のような問題が存在することを指摘し
ておきたい。
第1に、家族全体での年間所得についても、過大申告になる方向での桁間違いをしていると推測される記入
が多数みられた。この点に関しては、その他の質問への回答などから、明らかに桁間違いと判断した少数のケ
ースについては、桁の修正を行った。しかし、グレーゾーンの回答については、その回答を尊重した。それゆ
え、1000 万円以上の所得階層のなかには、本来ならそれより低い所得階層に属する学生が残存している可能
性がある。
第2に、世帯人数・家族構成についての質問も行っているので、正確を期すためにそれを加味して、JASSO
奨学金受給資格の確認を行うことも考えた。しかし、例えば、一人暮らしの学生のなかには、自身を含めた家
族全員の人数を 1 人と記入した回答者がかなり存在した。さらに、
「家族のなかで専門学校・大学・短期大学・
高等専門学校・各種学校・大学院などに通っている人」
(自身を含む)の数+「家族のなかで中学校・中等教
育学校・高等学校・高等専修学校・特別支援学校等に通っている人」の数+「父親+母親」の数(母子家庭・
父子家庭の場合は、1人とカウント)が、自身を含めた家族全員の人数より大きくなる場合も多数存在した。
これらの例から分かるように、今回の調査における世帯人数・家族構成については、信頼性の面で幾分問題が
残る。このため、特に家計所得 1000 万円以上の家庭出身の学生の動向に関しては、注意が必要である点を付
記しておきたい。
5 全国大学生活協同組合連合会
『CAMPUS LIFE DATA 2012』
(第 48 回 学生の消費生活に関する実態調査)
、
2013 年、P.38。
6 なお、大学生を対象とする、日本学生支援機構『学生生活調査』では、
(JASSO)奨学金の使途についての
質問項目が含まれていない。この質問項目を付け加えることは、
『学生生活調査』における今後の一つの検討
課題になると思われる。
7 ただし、JASSO 奨学金を主に「娯楽費、趣味に関する費用」に充当している学生も、ごく少数とはいえ存在
している。そして、そのような学生は、家計所得が高くなるほど、基本的には多くなる傾向がみられる。この
事実は、特に高額所得階層への JASSO 奨学金貸与の在り方に対して、若干の問題を提起する事柄になるかも
しれない。だとしても、それは、極めて少数者にのみ当てはまる問題であることだけは、はっきりと認識して
おく必要がある。
8 奨学金増額希望者は、現在でもかなりの額にのぼる奨学金貸与を受けているがゆえに、卒業後の返還への不
安が強い可能性も考えられる。増額を希望する学生を、そうでない学生と比較すると、第 1 種及び第2種のみ
受給者については、いずれも月額で、2万円ほど多く貸与を受けていた。しかし、第 1 種・第2種併用貸与者
については、併用貸与月額は 1.3 万円ほど、かえって少なかった。さらに、第 1 種・第2種併用貸与者の比率
に、まったく差はみられなかった。
9 小林雅之『進学格差――深刻化する教育費負担』ちくま新書、2008 年、PP.90-92。
10 具体的な1例をあげておけば、有職者学生(社会人学生)を除いても、自宅通学生でありながら、住居費(ア
パート代・下宿代・寮費)
・光熱費に経費を計上している学生が多数みられた。家庭の事情で、自宅の住居費
を払っている学生も、もちろん存在すると思われる。しかし、すべてがそのような学生とみなすには、数が
余りにも多すぎる。
- 113 -
【専門学校生への経済的支援のための調査】
平成25年度 文部科学省委託事業「専修学校における生徒・学生支援等に対する基礎調査」委員会
(代表:小林雅之[東京大学・大学総合教育研究センター・教授]
)
本調査は、専門学校の学生に対して、経済的支援を中心とした学生支援を促進していくための基礎データを収
集するために行うものです。回答結果は、その目的のためだけに使用されるものであり、回答いただいた人や学
校が特定されたり、回答内容が別の目的で使用されることはありませんので、ありのままにお答えいただけまし
たら幸いです。
(1) まず、あなた自身のことについて、おうかがいいたします。
(a) あなたが在籍している学科・コース[
(
(
)学科(
(b) 在籍している課程と学年 [
(
(
)内に具体的な名称を記入してください]
)コース
)内に具体的な数字を記入してください]
)年制課程の第(
)学年
(c) 在籍している課程の昼間部と夜間部の別 [あてはまる番号に○を付けてください]
1.8 夜間部
97.4 昼間部
(d) 性別[あてはまる番号に○を付けてください]
46.4 男性
(e) 現在の年齢 [
(
53.2 女性
)内に具体的な数字を記入してください]
( 平均 20.4 )歳
(f) 留学生の別 [あてはまる番号に○を付けてください]
1.8 留学生である
96.8 留学生ではない
(g) 今、住んでいるところ [あてはまる番号に○を付けてください]
68.1 自宅
10.4 学生寮(寮宿舎)
1.3 その他(具体的に:
19.8 下宿・アパート
)
(2)あなたが今、学校で学んでいる分野(学科)は、つぎのうちどれですか。最もあてはまる番号を 1 つだけ
選んで○を付けてください。
12.2
15.9
8.3
4.7
工業系
3.2 農業系
衛生系(栄養・調理・理容・美容分野など)
商業実務系
4.5 服飾・家政系
その他(具体的に:
- 114 -
34.8 医療系(看護分野を含む)
4.6 教育・社会福祉系
10.5 文化・教養系(芸術・外国語分野など)
)
(3)あなたは、現在の学校への進学を決めるときに、つぎのような要素をどの程度重視しましたか。(a)~(e)
それぞれについて、あてはまる番号に○を付けてください。
とても
重視した
重視した
あまり重視
しなかった
まったく重視
しなかった
(a) 家庭の経済的事情
19.1
41.2
30.8
6.9
(b) 4年より短い年数で卒業できること
14.9
25.4
34.6
23.1
(c) 自宅から通学できること
27.0
31.9
19.7
19.4
(d) 自分の学力・成績
12.1
36.4
36.7
12.7
(e) 自分の就きたい職業への就職の有利さ
53.0
35.9
7.5
1.8
(4)もし家庭の経済事情を考える必要がまったくなければ、あなたが一番希望していた進路はどこでしたか。
最もあてはまる番号を 1 つだけ選んで○を付けてください。
59.1 専門学校
29.1 四年制大学
2.1 短期大学
5.1 就職
2.1 その他(具体的
)
(5)もし家庭の経済事情を考える必要がまったくなければ、あなたは、自宅から通学できないような場所にあ
る、つまり地元から離れた学校への進学も考えましたか。あてはまる番号に○を付けてください。
22.6 まったく考えなかった
22.7 とても考えた
23.9 あまり考えなかった
28.6 少し考えた
(6)あなたのふだんの学習時間について、(a)~(c)の活動項目ごとに、1 週間に費やした時間の合計を記入して
ください。
(a) 学校の授業への出席 …………………………………………………………………
平均 27.0 時間
(b) 学校の授業に対する準備(指示された課題のための勉強や予習・復習など)… 平均
(c) 学校の授業以外の勉強(資格取得のための勉強など)…………………………
5.2 時間
平均 4.2 時間
(7)あなたのふだんの支出状況について、(a)~(e)の各支出ごとに、平均的な 1 ヶ月間における具体的な金額を
千円単位(千円未満は四捨五入)で記入してください。ここでは、授業料や実習費・施設設備費などの学
校への納付金の支払いは、
「修学費」には含めないでください。
(a) 修学費 ………………………………………………………
(学校への納付金を除く勉学関係の費用
[通学費・通学費・教科書代・図書代など]
)
(b) 食費 …………………………………………………………
(家族で一緒に食べている場合の食費は除く)
(c) 住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費 ………
(d) 娯楽費、趣味に関する費用 ………………………………
(携帯電話料金を含む)
(e) 貯金への繰り入れ …………………………………………
(1 カ月に入金する貯金額)
- 115 -
平均
3.12
万円
平均
1.52
万円
平均
3.04
万円
平均
2.25
万円
平均
1.56
万円
(8)以上のような支出に対して平均してみると、あなたは1ヶ月間に、家族からいくらくらい援助を受けてい
ますか。千円単位(千円未満は四捨五入)で記入してください。携帯電話料金の支払いなどを家族がし
ている場合は、その金額も含めてお答えください。
3.67
万円
(9)(7)でお答えていただいた日常的な費用以外で、1学年の学生は今年度(4月~12月)、2学年以降の学
生は、前年度の一年間(4月~3月)に、パソコン購入、研修費、資格検定料、就職活動費などのような、
勉学に関連する費用として一時的に大きな支出がどのくらいありましたか。それらへ支出した金額の合計
を具体的に万円単位(万円未満は四捨五入)で記入してください。
そのような大きな一時的支出がなかった場合は、右端の万の位に「0」とご記入ください。
9.0
万円
(10)あなたは現在、授業期間中にアルバイトをしていますか。あてはまる番号に○を付けてください。また、
定期的にアルバイトをしている方は、週に何日・何時間くらいのアルバイトかも、具体的な数字でお答え
ください。
48.7 定期的なアルバイト
をしている
週に
3.5
日間
合計
21.7
時間 ⇒質問(11)へ
(時間単位で記入。
30 分以上は繰り上げ。
30 分未満は繰り下げ。
)
6.5 不定期のアルバイトをしている ⇒質問(11)へ
34.5 アルバイトはしていない ⇒質問(15)へ
(11)あなたが授業期間中に行っているアルバイトは、学校で学んでいる専門分野と、どの程度関係がある仕事
ですか。あてはまる番号に○を付けてください。
41.2 まったく関係のない仕事
19.7 少し関係のある仕事
18.4 あまり関係のない仕事
16.7 とても関係のある仕事
(12)あなたは、1 カ月間に、おおよそどれくらいのアルバイト収入がありますか。具体的な金額を千円単位(千
円未満は四捨五入)で記入してください。月ごとに収入が大きく異なる場合には 、その中間のおおよその
額をお答えください。
5.51 万円
さまた
(13)あなたにとってアルバイトはどの程度、勉学の 妨 げになっていますか。あてはまる番号に○を付けてく
ださい。
28.7 まったく妨げになっていない ⇒質問(15)へ
32.8 あまり妨げになっていない
31.6 少し妨げになっている
5.2 とても妨げになっている
質問(13)で、2~4に○を付けた方、つまりアルバイトが勉学の妨げになっていると感じている方は、
(14)にお答えください。
- 116 -
さまたげ
(14)あなたは、勉学の妨げにならない程度の適度なアルバイトをつづけながら、十分な学修時間を確保するた
めに、給付奨学金(返還が不要)制度や、授業料減免制度などで、学校への納付金の負担などを1年間にど
の程度、軽減して欲しいですか。軽減して欲しい金額を具体的に万円単位(万円未満は四捨五入)で記入し
てください。
43.4
1年間に
万円
(15)あなたは、授業のない長期休暇期間中には、どのくらいアルバイトをしていますか。あてはまる番号に○
を付けてください。また、定期的なアルバイトをなさっている方は、週に何日・何時間くらいのアルバイ
トかも、具体的な数字でお答えください。
45.0 定期的なアルバイト
をしている
週に
4.2
日間
合計
28.7
時間 ⇒質問(16)へ
(時間単位で記入。
30 分以上は繰り上げ。
30 分未満は繰り下げ。
)
9.0 不定期のアルバイトをしている ⇒質問(16)へ
32.4 アルバイトはしていない ⇒質問(17)へ
(16)あなたが長期休暇期間中に行っているアルバイトは、学校で学んでいる専門分野とどの程度関係がある仕
事ですか。あてはまる番号に○を付けてください。
42.5 まったく関係のない仕事
20.5 少し関係のある仕事
18.5 あまり関係のない仕事
16.0 とても関係のある仕事
質問(17)には、
「授業期間中」もしくは「長期休暇期間中」にアルバイトをしている方のみお答えください。
そうでない方は、(17)を飛ばして、(18)にお進みください。
(17)それらのアルバイト収入の主な使い道は、つぎのうちのどれですか。あてはまるものを3つまで選び、そ
の番号に○を付けてください。
13.2
35.7
16.4
75.9
授業料などの学校への納付金
修学費(学校への納付金を除く勉学関係の費用[通学費・教科書代・図書代など]
)
住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費
12.1 資格取得のための費用
娯楽費、趣味に関する費用
49.6 貯金
5.8 その他(具体的に:
)
(18)あなたの学科やコースの今年度1年間の、学校への納付金の総額(入学金[1年生のみ]+授業料+実習
費+施設設備費など)は、いくらですか。また、そのうちの授業料の額についても、具体的な数字を万円
単位(万円未満は四捨五入)で記入してください。わからない方は、
「X」に○を付けてください。
総額
122.2
万円
(そのうち授業料は
42.8 わからない
- 117 -
78.0
万円)
(19)あなたは今年度に、入学金、授業料、実習費・施設設備費などの減免を受けていますか。受けている場合
は、どの経費の減免を受けているか、あてはまる費目の番号すべてに○を付けてください。
18.0 受けている ⇒ 58.9 入学金
2.7 施設設備費
40.3 授業料
4.4 実習費
4.1 その他(具体的に:
9.8 学校には減免制度がない
2.5 減免を申し込んだが認められなかった
52.4 減免を申し込んでいない
) ⇒質問 (20)へ
⇒質問 (21)へ
(20)あなたが今年度に、授業料・実習費・施設設備費などで減免を受けた額はいくらですか。具体的な数字を
万円単位(万円未満は四捨五入)で記して入ください。わからない方は「X」に○を付けてください。
22.4
万円
42.0 わからない
(21)あなたの授業料・実習費・施設設備費などの経費は、主にどこから出していますか。最も多く出している
方法を1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
60.9 保護者に出してもらっている
25.9 奨学金をあてている
3.4 アルバイト収入などをもとに、自分で払っている 2.6 その他(具体的に:
)
(22)授業料や学校への納付金以外にかかる生活費は、主にどこから出していますか。最も多く出している方法
を1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
56.1 保護者に出してもらっている
25.3 アルバイト収入などをもとに、自分で払っている
10.1 奨学金をあてている
2.4 その他(具体的に:
)
(23)あなたの日本学生支援機構の奨学金の受給・申請について、あてはまるものを1つだけ選んで、その番号
に○を付けてください。また、この奨学金を現在受けている方は、その月額を千円単位(千円未満は四捨
五入)で記入してください。
7.8 第一種奨学金(無利子)を受けている ⇒ 月額
4.95
万円 ⇒質問(24)へ
26.6 第二種奨学金(有利子)を受けている ⇒ 月額
7.66
万円 ⇒質問(24)へ
12.29
万円 ⇒質問(24)へ
3.3 第一種・第二種の両方を受けている ⇒合計で月額
1.1
7.7
20.1
20.7
申請したが採用にならなかった
検討したが申請は断念した
申請する必要がなかった
よく知らない・わからない
⇒7ページの質問(30)へ
⇒7ページの質問(29)へ
⇒7ページの質問(29)へ
⇒7ページの質問(30)へ
- 118 -
(24)
【第一種・第二種奨学金を受けている方に】 あなたは日本学生支援機構の奨学金を、いつ申し込みました
か。また、今の学校に入学してから申し込んだ方は、申請した学年を具体的な数字でお答えください。
63.7 高校または高等専修学校の在学中に申し込んだ
33.7 今の学校に入学してから
(
1
) 年生のときに申し込んだ
0.6 その他(具体的に:
)
1 年生 90.0
(25)
【第一種・第二種奨学金を受けている方に】 日本学生支援機構の奨学金収入の主な使い道は、つぎのうち
のどれですか。最もあてはまるものを1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
70.2
7.6
14.7
1.8
授業料など学校への納付金
修学費(学校への納付金を除く勉学関係の費用[通学費・教科書代・図書代など]
)
住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費
0.4 資格取得のための費用
娯楽費、趣味に関する費用
1.6 貯金
1.3 その他(具体的に:
)
(26)
【第一種・第二種奨学金を受けている方に】 日本学生支援機構の奨学金が受けられなかったとしたら、あ
なたの修学(卒業まで学校で学習をつづけること)はどの程度困難ですか。あてはまるものを1つだけ選
んで、その番号に○を付けてください。
57.9 修学は困難
6.5 修学はそれほど困難ではない
30.9 修学はやや困難
1.9 修学はまったく困難ではない
(27)
【第一種・第二種奨学金を受けている方に】 あなたにとって、日本学生支援機構が支給する奨学金は、今
の金額で十分ですか。あてはまる番号に○を付けてください。十分でない場合は、返還しなければならな
いことも考慮した上で、月にいくらくらい増やしてほしいか、増やしてほしい金額を、第一種、第二種そ
れぞれについて、千円単位(千円未満は四捨五入)で記入してください。
79.1 今の金額で十分である
16.6 今の金額で十分でない ⇒
第一種を、月に
3.33
万円くらい増やしてほしい
第二種を、月に
2.87
万円くらい増やしてほしい
(28)
【第一種・第二種奨学金を受けている方に】あなたは、卒業後の日本学生支援機構奨学金の返還に関して、
どのように感じていらっしゃいますか。あてはまる番号に○を付けてください。
18.7 十分返還できると思う
26.3 返還できるか少し不安である
43.9 なんとか返還できると思う
8.9 返還できるかとても不安である
質問(28)にお答えの方は(29)を飛ばして、(30)にお進みください。
- 119 -
(29)
【
(23)で奨学金について「5.検討したが申請を断念した」
、
「6.申請する必要がなかった」と答えた人
に】 あなたが日本学生支援機構の奨学金に申請しなかったのはなぜですか。最もあてはまるものを1つだ
け選んで、その番号に○を付けてください。
43.2
2.6
5.2
23.7
卒業後の返還が大変そうだったから
7.3 申請手続きが複雑だったから
成績基準が合わなかったから
9.1 収入基準が合わなかったから
日本学生支援機構以外の奨学金を受けることができたから
その他(具体的に:
)
質問(30)からは全員お答えください。
(30)あなたは現在、日本学生支援機構以外から、どのような種類の奨学金を受けていますか。あてはまるもの
すべての番号に○を付けてください。
また、受けている方は、それが貸与(返還が必要)奨学金であるか、給付(返還が不要)奨学金である
かを区別して、1年間にいくら受けているか、具体的な金額を万円単位(万円未満は四捨五入)で記入し
てください。
75.0 受けていない
⇒質問(32)へ
3.9 学校独自の奨学金
⇒ 61.6 貸与(返還が必要)奨学金
6.26
万円
39.8 給付(返還が不要)奨学金
3.92
万円
3.8 地方公共団体の奨学金
⇒ 82.2 貸与(返還が必要)奨学金
8.02
万円
19.3 給付(返還が不要)奨学金
5.57
万円
2.9 民間企業や団体等の奨学金
⇒ 61.2 貸与(返還が必要)奨学金
11.31
万円
41.3 給付(返還が不要)奨学金
5.96
万円
⇒質問(31)へ
(31)
【日本学生支援機構以外の奨学金を受けている方に】 その奨学金収入の主な使い道は、つぎのうちのどれ
ですか。最もあてはまるものを1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
59.0
7.7
10.1
3.6
授業料など学校への納付金
修学費(学校への納付金を除く勉学関係の費用[通学費・教科書代・図書代など]
)
住居費(アパート代・下宿代・寮費)
・光熱費
0.3 資格取得のための費用
娯楽費、趣味に関する費用
4.7 貯金
1.0 その他(具体的に:
質問(32)からは全員お答えください。
- 120 -
)
(32) 奨学金についてのつぎのようなことに対して、あなたはどうお考えですか。(a)~(c)のそれぞれについて、
あてはまる番号に1つだけ○をつけてください。
とても
そう思う
そう思う
あまりそうは
思わない
まったくそうは
思わない
(a) 卒業後の返還が不安だから、なるべく貸
与(返還が必要)奨学金は借りたくない
33.0
38.4
17.9
4.0
(b) 現在の学校に進学する前には、専門学校
や大学へ進学するときに利用できる奨学
金の情報提供が少なかった
7.8
23.6
48.7
12.4
(c) 現在の学校に進学した後、奨学金につい
ての情報提供が少なかった
5.6
17.7
54.7
14.3
(33)あなたは、高等学校や高等専修学校(以下「高校」とします)のときに奨学金を受けていましたか。
86.9 受けていない
1.5 給付(返還が不要)を受けていた
6.0
0.4
貸与(返還が必要)奨学金を受けていた
貸与奨学金と給付奨学金の両方を受けていた
(34)あなたが今の学校に入学するときや、入学してから、あなたもしくはあなたの保護者の方は、教育ローン
を借りたことがありますか。あるとすれば、どこが提供するローンですか。
42.8
3.4
2.5
0.4
43.6
教育ローンを借りたことはない
日本政策金融公庫の教育ローンを借りたことがある
民間の教育ローンを借りたことがある
日本政策金融公庫のローンと、民間の教育ローンの両方を借りたことがある
わからない
(35)この学校に入学する前に、あなたが通っていたことがある学校(中退した学校を含む)の番号にすべて○
を付けてください。
90.7 高校
5.2 専門学校
1.5 その他(具体的に:
1.3 短大
6.1 四年制大学
)
(36)あなたの高校の成績(評定平均値)はどのくらいですか。あてはまる番号に1つだけ○を付けてください。
8.5 3.2 未満
23.3 3.2 以上~3.5 未満
47.0 3.5 以上~5.0 以下
16.3 わからない
(37)あなた自身を含めて、現在のあなたの家族の人数は、あなた自身を含めて何人ですか。また、そのうち現
在、学校に通っている人は何人いますか。(a)~(c)それぞれについて、
(
)内に具体的な数字で記入
してください。該当者がいない場合は、
「0」人とご記入ください。
(a) 家族全員の人数(あなた自身を含めてください)…………………………… (
そのうち (b) あなた自身を含めて、家族のなかで専門学校・大学・
短期大学・高等専門学校・各種学校・大学院などに
通っている人(あなた自身を含めるため、ここの数字は
必ず1人以上になります)……………………………………(
(c) 家族のなかで中学校・中等教育学校・高等学校・
高等専修学校・特別支援学校等に通っている人 …………(
- 121 -
4.6
)人
1.4
)人
0.6
)人
(38)あなたのご家族全体での年間所得は、いくらくらいですか。おおよその金額を百万円単位(百万円未満は
四捨五入)で記入してください。
50 万円未満の方は右端の百万の位に「0」と記入してください。
働いている方は、自身の収入も含めて記入してください。
1,700
万円くらい
1 位 500 万円 8.8
2 位 400 万円 7.7
3 位 300 万円 7.6
※上記平均は、2,000 万円以上の高額所得者および、異常高額値が持ち上げていると思われます。
(39)あなたの父母の年齢はおいくつですか。それぞれあてはまるものの番号に○を付けてください。
39 歳以下
40~44 歳
45~49 歳
50~54 歳
55 歳以上
いない
父の年齢
0.8
8.4
21.9
30.6
22.6
8.2
母の年齢
1.4
16.0
34.7
28.2
11.9
1.8
質問(40)には、平成 26 年3月に卒業予定の方だけお答えください。
そうでない方は、(40)を飛ばして、(41)にお進みください。
(40)あなたの卒業後の進路は、どこに決まっていますか。就職が決まっている場合はその雇用形態、進学予定
の場合はその進学先についても、
最もあてはまるものを1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
44.4 就職する
86.6 正社員・正職員
2.0 独立・自営
2.9 臨時の社員や職員・派遣社員
2.7 その他(具体的に:
)
0.8 アルバイトで働く
2.4 進学する
17.3 四年制大学に編入学
70.8 専門学校専攻科・研究科
10.1 その他(具体的に:
14.0 まだ決まっていない
0.4 その他(具体的に:
)
)
(41)あなたは定職をお持ちですか。定職をお持ちの方は、その雇用形態・職種について、最もあてはまるもの
を1つだけ選んで、その番号に○を付けてください。
78.6 定職は持っていない ⇒質問(45)へ
2.4 正社員・正職員
0.4 臨時の社員や職員・派遣社員
0.1 農業・林業・漁業 0.1 法人経営
0.2 自由業
0.6 個人経営
0.4 その他(具体的
質問(41)で2~8に○を付けた方、つまり定職をお持ちの方は、(42)~(45)にお答えください。
(42)あなたには配偶者がいらっしゃいますか。
76.0 いない
19.3 いる
- 122 -
)
(43)あなたの家の生計を主に支えている方はどなたですか。最もあてはまるものを1つだけ選んで、その番号
に○を付けてください。
18.6 あなた本人
71.3 親
5.1 配偶者
1.7 その他(具体的に:
)
(44)あなたの年間所得は、いくらですか。具体的な金額を百万円単位(百万円未満は四捨五入)で記入してく
ださい。50 万円未満の方は右端の百万の位に「0」とご記入ください。
710
万円
1 位 50 万円未満
2 位 100 万円
3 位 200 万円
4 位 600 万円以上
32.8
17.9
8.8
8.1
(45)専門学校の学生に対する支援、とくに経済的支援について、希望・意見などがあれば、なんでもご自由に
記入してください。
調査項目はこれでおわりです。ご協力ありがとうございました。
- 123 -
第5章 専門学校における学生に対する経済的支援の実態
―大学昼間部との比較を中心に―
藤森
宏明(北海道教育大学)
1. 課題設定
本章の目的は、専門学校(専修学校専門課程)における学費援助の実態を、既存調査データ
を用いて大学昼間部と比較することで専門学校特有の課題を発見することにある。
我が国において高卒の進路は概ね「就職」
「短期大学」
「大学」
「専門学校」に分類される。そ
して「平成 24 年度学校基本調査」
(文部科学省)によると、新規高卒者の 16.8%が専門学校に
進学している。この数字は微増の状況にあり、大学(同 47.6%)及び短期大学(5.5%)への
進学が停滞しつつ今日において、専門学校への進学の評価が高まってきていることを意味する。
もともと専門学校は、大学に比べ社会のニーズに即応した柔軟なカリキュラム編成が可能であ
り、その結果大学や短期大学に比べ、就職率が高いという特徴をもつ。しかしその一方で、例
えば CRUMP2006 年調査1や 2012 年高卒者保護者調査2においても、低所得層ほど専門学校
へ、高所得層ほど大学への進路行動をとることも明らかになっている。つまり、専門学校進学
者の家計は決して裕福ではないことが示唆されるのである。
このような状況にあるにも関わらず専門学校における学費援助の実態は大学に比べると明ら
かになっていない部分は多い。また学費援助といっても JASSO(日本学生支援機構)の奨学
金、それ以外の奨学金、そして授業料減免と多様に存在し、これらのうち単独のみの援助なの
か、複数の援助なのかも定かではない。こういった事態は、適切な学費援助政策を専門学校生
に対して行えないという結果をもたらすことになる。これは、専門学校生個々人にとっても問
題であるし、専門学校の社会的機能の効率化という側面からしても問題がある。
そこで本章では、専門学校における学費援助の実態を大学昼間部との比較を中心に行うこと
で明らかにしていく。ここで大学昼間部と比較するのは、学費援助の実態の相対的な価値判断
が必要と考えられるためである。一般論として、専門学校は学納金自体は大学に比べそれほど
高額ではないとされている。そして上記にも示したように在学生の家計年収は決して高くはな
いし、機関援助にも大学に比べ明らかに恵まれていないとされている。このような実態は大学
と比べ何らかの違った傾向を導くと考えられる。
以上の関心のもと、本章では以下のアプローチをとる。まず学生生活の収支構造から学生生
活の概要を示す。次に、それぞれの学費援助の種類ごとに、その支援状況を示す。その上で、
学費援助の支援・非支援に着目し、新たな変数を作成し、その実態を示していく。最後にこれ
らの分析結果をもとに、今後の専門学校に対しての学費援助の在り方を検討していく。
- 124 -
2. 基礎調査の概要
2-1 使用データ
分析に当たり、本章で使用した既存調査データは以下のとおりである。
(1)専門学校:JASSO『学生生活に関する基礎調査』
(平成 21 年 11 月実施)のうち、22 歳
以下の公立・私立学校に通う学生(サンプル数 15,494)
(2)大学昼間部:JASSO『平成 22 年度学生生活調査』(平成 22 年 11 月実施)のうち、大
学昼間部に通う学生(サンプル数 15,422)
2-2 基礎データによる概要
2-2-1 学生生活費総計からみた傾向
本項ではこれらのデータから基本的な部分を確認しておく。最初に学生生活費における「収
入合計」
「家庭から給付」
「奨学金収入」及び「支出(学費)」
「支出(生活費)」に着目した。な
お、これらの値に影響を及ぼす変数として「自宅生割合」「家計年収総額」も示した3。
表 5-1
学校種×設置者別学生生活費基本情報
(収入合計・家庭から給付・奨学金収入・(支出)学費・(支出)生活費、自宅生割合、家計年収総額)
収入合計
(家庭から給付)
(奨学金収入)
支出(学費)
支出(生活費)
自宅生の割合
家計の年収総額
専門学校
公立
私立
901,300
1,665,000
363,700
901,600
277,100
360,000
383,700
1,112,200
397,900
454,800
58.1%
62.2%
562.6
581.8
国立
1,593,300
947,900
290,300
651,700
802,600
31.3%
746.6
大学昼間部
公立
私立
1,539,300 2,014,500
828,000
1,225,600
336,400
367,000
671,700
1,256,200
713,100
581,200
39.2%
62.4%
674.6
740.2
注1:学生生活費は100の位を四捨五入した。
注2:金額の算出方法として5%トリム平均を用いた。
注3:サンプル数:専門(公立:485、私立:4,370)大学(国立:4,057、公立:3,451、私立:7,914)
表 5-1はそれぞれの学校種/設置者ごとの費用の格差の概略をみるために作成したもので
ある4。ここから傾向をつかんでいく。まず「収入合計」に着目する。すると専門(公)が最
も低額であり、専門(私)
・大学(国公立)がこれに続く。そして最も高いのが大学(私)とな
っている。この傾向は、
「家庭から給付」においてもほぼ同じ傾向を示している。特に「家庭か
ら給付」について比率に着目すると、専門(公)と専門(私)・大学(国公立)で 2 倍以上、
大学(私)とでは 3 倍以上である。このことから家計負担は、公立の専門学校が明らかに最も
軽いことがわかる。この原因は主に「学費」にある。特に大学(私)と比較すると約 30%しか
ない。生活費も専門学校がおおむね低額である。これは自宅生の割合が高いことと関係がある。
- 125 -
ただ、大学(私)と専門学校は自宅生の割合は比較的近い値であるにもかかわらず 10 万円以
上の開きがある。これは家計年収の影響と考えられる。専門学校と大学(公)とでは 100~110
万円、大学(国立・私立)とは約 160~170 万円の差がある。
2-2-2 学校種間における所得階層の概要
次に、所得階層別に傾向をみることで、特徴をみていく。まず、学校種ごとの設置者別の所
大学昼間部
専門学校
得階層(家計年収 300 万円ごと)を見たのが次の図 5-1 である。
公立
19.9%
私立
33.9%
15.7%
国立
9.2%
公立
10.5%
私立
8.5%
0%
29.3%
36.4%
30.4%
23.4%
35.5%
27.8%
10%
20%
~300
図 5-1
300~600
40%
50%
600~900
11.9%
5.5%
12.9%
15.3%
38.0%
30%
6.6%
19.0%
37.9%
24.5%
10.4%
17.2%
60%
70%
900~1200
80%
8.5%
11.8%
90%
100%
1200~
学校種×設置者別家計年収総額(300 万円単位)
まず学校種間の比較を行う。すると専門学校が設置者に関係なく家計年収 600 万円未満で全
体の半数を超えており、専門学校生は低所得層に多いことがより明瞭となる。次に、各学校種
内での設置者間の違いを見ていく。専門学校は公立の方が若干低所得になっているが統計的に
は5ではこの差は有意ではない。大学は国立と私立が類似した傾向を示し、公立がこれらに比
べ若干低所得である。
このような状況において、家計年収と家計からの給付額の関係を確認しておく。この点を確
認する理由は、表 5-1ではそれぞれの家庭からの給付額の平均値を示したが、こういった金額
は家計年収による負担能力の差も考慮すべきと考えるからである。
図 5-2 から同じ家計年収総額のカテゴリであっても、学校種及び設置者によって家庭からの
給付額には差があることがわかる。全体として、どの所得階層においても大学(私)が最も高
く、専門(公)が最も低い。これらは表 5-1 でも示したように主に学費の違いが原因と考えら
- 126 -
れる。次にこれらのカテゴリ以外について所得階層別に見ていく。すると家計年収 900 万以下
では、専門(私)
・大学(国公立)が類似した値を示している。若干専門(私)が高い。そして
家計年収が高くなるにつれ、この差は縮まり、1200 万円以上では逆転する。また勾配に着目し
ても、一般的に大学は所得が上がるに従い勾配も急、すなわち家計の給付も大きくなっている
が、専門(私)はむしろ緩やかになっている。
図 5-2
学校種×設置者別家計年収別家庭からの給付の平均額(300 万円刻み)
以上、基本的な状況について確認したが専門学校に関する特徴はおおむね次の通りといえる。
すなわち、専門学校は大学に比べ低所得層が多い。そして家計の負担額は、専門(公)は大学
よりも明らかに低額である。また専門(私)は、所得と家庭の負担額との関係が大学ほど密接
ではない可能性があることが推測される。低所得ほど家計が無理をしているのか、高所得ほど
自立しているのかはこれだけではわからない。
3. 学費援助の概要
本節では、制度単位における学費援助の状況を学校種ごとに設置者別に見ていく。なお(1)
JASSO 奨学金(2)JASSO 以外の奨学金(3)授業料減免
- 127 -
の順に見ていく。
3-1 JASSO 奨学金について
まず、JASSO 奨学金の受給率を見ていく。図 5-3 は、学校種ごとに設置者別の JASSO 奨学
大学昼間部
専門学校
金の受給状況である。
公立
10.3%
1.4%
26.0%
60.6%
1.7%
私立
7.8%
1.2%
33.6%
国立
15.7%
公立
16.2%
54.7%
2.7%
2.0%
25.6%
53.6%
3.2%
1.6%
30.5%
47.7%
4.1%
私立
10.5%
0%
1.8%
32.5%
10%
20%
第1種(A)
30%
51.6%
3.7%
40%
第2種(B)
50%
併用(C)
60%
70%
申請不採用
80%
90%
100%
不申請
注:(A+B+C)の値は、専門(公):38.0、専門(私):44.1、
大学(国)
:44.5、大学(公):50.8、大学(私):46.7
図 5-3
である。
学校種×設置者別 JASSO 奨学金受給状況
全体の傾向を見るため、種類に関わらない受給率の合計、すなわち「A+B+C」に着目する。
すると、専門(公)が明らかに低い。次いで専門(私)
・大学(国)大学(私)が同程度である。
そして最も高いのが大学(公)である。専門(公)は家計年収が低いものの、負担すべき費用
も低額であるため、受給率が低いと考えられる。また専門(私)は家計年収や負担すべき費用
の割には、受給率は高いとはいえない。
次に受給の内訳に着目して、その特徴を見る。すると第 1 種については大学(国公立)がぬ
きんでて高く次いで大学(私)と専門(公)が同程度で、専門(私)が低い値になっている。
恐らく学力基準の影響と考えられる。これらを補うかのように第 2 種があり、専門(私)と大
学(私)が同程度である。
3-2 JASSO 以外の奨学金について
次に、JASSO 以外の奨学金の受給状況も確認しておこう。すると、専門学校の方が受給率
が高く、JASSO とは異なり専門学校の方が制度が普及していることがうかがえる。特に専門
(公)は約 2 割の学生が受給している。これは専門(公)は、看護系及び農業系の影響を受け
ていることが考えられる6。
- 128 -
専門学校
大学昼間部
20.7%
公立
79.3%
11.0%
私立
89.0%
国立
5.9%
94.1%
公立
5.9%
94.1%
9.0%
私立
0%
91.0%
10%
図 5-4
20%
30%
40%
50%
60%
受給
不受給
70%
80%
90%
100%
学校種×設置者別 JASSO 以外の奨学金受給状況
3-3 授業料減免について
図 5-5 は学校種ごとの授業料減免の状況
続いて授業料減免についても確認をしておく。
専門学校
を設置者別に示したものである。
公立 4.0%
私立
大学昼間部
私立
60.0%
4.3%
10.6%
34.1%
61.1%
4.7%
国立
公立
1.9%
3.7%
84.6%
3.0%
85.5%
6.0%
2.5%
10%
5.5%
76.2%
5.6%
0%
29.9%
20%
受けている
図 5-5
30%
40%
申請不採用
50%
不申請
15.8%
60%
70%
80%
90%
100%
学校に減免制度がない
学校種×設置者別授業料減免の状況
全体的には大学の方が授業料減免を受けている割合が高く、大学(国)と専門学校では約 2
倍の差がある。また、
「受けている」と「申請不採用」の比率をみると、専門(私)は不採用に
なる比率が高く、他のカテゴリに比べ狭き門であることがわかる。さらには「減免制度がない」
について明らかに専修学校の割合が高い。このことから専修学校の方が整備されていないこと
は明らかであるが、別の見方をすれば、授業料減免制度は学校の財務状況の影響を受けやすい
制度といえるのかもしれない7。
- 129 -
4. 統合モデルを用いた学費援助の実態
4-1 統合モデルの作成
前節の実態から、単純に総和を取ると、何らかの学費援助を受けている者が全体の 6 割程度
存在することになる。しかし特に近年においては、複数の学費援助を受けている者も散見され
ることから、実際はもっと低い。そこで前節で用いた変数を
①複数支援(少なくとも二つ以上の学費援助を受けているもの):「複数」
②第1種のみ(JASSO 奨学金の第 1 種のみ学費援助を受けているもの):「第1種」
③第2種のみ(JASSO 奨学金の第 2 種のみ学費援助を受けているもの):「第2種」
④JASSO 以外のみ(JASSO 以外の奨学金や授業料減免のみ等のもの):「JASSO 以外」
⑤非援助(学費援助を受けていないもの):「非援助」
と統合モデルを作成し分析を行った。次項以降に結果を示す。
4-2 統合モデルを用いた比較分析
4-2-1 全体の概要(%に着目して)
図 5-6 は、前項で定義した学費援助の類型をもとに、学校種×設置者別で学費援助の割合を
大学昼間部
専門学校
見たものである。
公立
9.8%
私立
9.5%
国立
11.9%
10.9%
公立
10.5%
13.0%
私立
10.4%
0%
7.6%
20.3%
6.3%
28.3%
8.4%
10%
複数支援
14.5%
22.5%
20%
7.3%
48.6%
5.1%
49.7%
27.6%
28.6%
30%
第1種のみ
47.8%
3.5%
45.3%
5.8%
40%
50%
第2種のみ
46.8%
60%
70%
JASSO以外何らか
80%
90%
100%
非援助
注:「援助」
(つまり「100%-「非援助」)の値(%)は
専門(公)
:52.2、専門(私):51.4、大学(国):50.3、大学(公)
:54.7、大学(私):53.2
図 5-6
学校種×設置者別学費援助の実態
まず全体(「援助」の値)に着目する。すると、どのカテゴリもほぼ 50%前半の値となって
いる。最も値の低い大学(国)と最も値の高い大学(公)の間は 4.4 ポイントであり、この間
- 130 -
にすべてのカテゴリが入っており、カテゴリ間にそれほど大きな差が見られないといえる。そ
こで内訳に着目し学校種間の違いを見ていく。すると、大学の方が専門学校に比べ「複数」
「第
1 種」が若干値が高い。そしてその分「JASSO 以外」は専門学校の方が高めである。次に、学
校種内部の設置者間に着目していく。専門学校は「第 2 種」は私立が、
「JASSO 以外」は公立
がそれぞれ高めであり、明確な違いがみられる。また大学については、「第 1 種」が公立で若
干高く、「第 2 種」では公立及び私立で高めとなっている。この違いが学費援助全体の違いに
影響を及ぼしている。
以上のように、学校種や設置者が異なることで、援助率全体はあまり差はないが、内訳には
特徴がみられることがわかる。この結果をより明らかにするには学費援助の種類によってどの
ような所得階層が、どのくらいの金額を受給しているのかも見ていく必要もある。
4-2-2 学費援助と関わりの大きな学生生活費項目(家計年収総額・奨学金収入)に着目した比較
本項では、分析の根拠をより明瞭にするため、学生生活費の中の関連の強いと考えられる費
用項目(家計年収総額含む)に着目した比較を行う。特に着目したのは「家計年収総額」及び
「奨学金収入」である。これらに着目する理由は以下の通りである。まず「家計年収総額」だ
が、基本的に学費援助の規定要因には、育英(学力)及び奨学(家計年収)がある。しかし、
同じ学費援助のカテゴリでも設置者間や学校種ごとで家計年収には差があるかもしれない点に
留意するためである。
「奨学金収入」はそもそもそれぞれのカテゴリにおいて、どの程度の援助
額が平均的に支給されているかを見ることで、学生生活費への援助の意味(効果)を考慮する
ためである8。
(1)家計年収総額と学費援助カテゴリとの関連性
まず、家計年収総額に着目する(表 5-2)。まず「全体」は統計的には専門学校は公立・私立
間には有意差はない。また大学については、国立と私立が同等で、これらより公立が低い。続
いて学費援助の中身に着目する。まず設置者間だが、専門学校は「複数」には有意差が存在す
るものの、それ以外については設置者間の有意差はない。大学については、「複数」「JASSO
以外」は国公立が同レベルで、私立が高めである。
「第 1 種」は明確な差はあまり見られない。
「第 2 種」は公立と私立が同レベルで、国立がこれに対し高めである。「非援助」については
明らかに公立が低い値となっている。次に学費援助の種別の格差をみていく。専門(公)は「複
数」「第 1 種」「第 2 種」<「JASSO 以外」「非援助」というくくりに、専門(私)は「複数」
「第 1 種」<「第 2 種」
「JASSO 以外」<「非援助」なっており、若干関係性が異なる。大学
は、
「JASSO 以外」の位置づけが国立と公立で異なる。国立は「第 1 種」
「JASSO 以外」が近
いが公立は「第 2 種」「JASSO 以外」が近い関係である。私立においては「複数」「第 2 種」
がほぼ同じくくりとなっている。
- 131 -
表 5-2
学校種×設置者別学費援助カテゴリ単位における家計年収総額
専門学校
大学昼間部
公立
私立
国立
公立
私立
複数支援
390.2
439.2
426.6
412.5
514.5
第1種のみ
439.1
420.7
566.2
523.7
546.3
第2種のみ
464.1
524.3
726.3
651.8
669.5
JASSO以外何らか
579.6
571.2
608.4
650.5
735.1
非援助
657.6
688.4
897.3
809.5
885.1
579.8
746.6
674.6
740.2
全体
558.1
注1:値は5%トリム平均を用いた。
注2:単位は万円である。
(1)設置者間の格差
(2)学費援助の種別の格差
専門学校
複数支援
第1種のみ
第2種のみ
JASSO以外何か
非援助
全体
公×私
**
-
大学昼間部
国×公
+
***
***
***
国×私
***
***
**
-
専門学校
公×私
***
+
***
***
公立
*
***
***
+
***
*
***
-
複数×第1種
複数×第2種
複数×JASSO以外
複数×非援助
第1種×第2種
第1種×JASSO以外
第1種×非援助
第2種×JASSO以外
第2種×非援助
JASSO以外×非援助
私立
**
***
***
***
***
***
***
***
大学昼間部
国立
***
***
***
***
***
***
**
***
***
公立
***
***
***
***
***
**
***
***
***
私立
***
***
***
***
***
***
**
***
***
注:有意水準:***;0.1%、**;1%、*;5%、+;10%
(2) 奨学金収入と学費援助カテゴリの関連
次に、奨学金収入の金額で、それぞれのカテゴリの違いを見ていく。分析の意味上、「授業
料減免」は除外している。
表 5-3
学校種×設置者別における学費援助カテゴリにおける奨学金収入
専門学校
公立
大学昼間部
私立
国立
複数支援
902,000
996,700
869,500
第1種のみ
507,500
571,700
557,700
第2種のみ
623,600
770,200
674,300
JASSO以外何らか
345,800
501,500
620,400
援助者平均
575,700
745,400
675,000
注1:値は5%トリム平均を用いた。
注2:単位は円である。
注3:分析意図から「授業料減免」は除外して計算した。
(1)設置者間の格差
私立
954,500
563,200
675,300
550,100
678,800
1,115,600
638,600
789,700
512,500
790,200
(2)学費援助の種別の格差
大学昼間部
専門学校
複数支援
第1種のみ
第2種のみ
JASSO以外何か
全体
公立
専門学校
公×私
国×公
国×私
公×私
***
***
***
***
*
-
***
***
***
-
***
***
***
-
複数×第1種
複数×第2種
複数×JASSO以外
第1種×第2種
第1種×JASSO以外
第2種×JASSO以外
注1:ノンパラメトリック検定による
注2:有意水準:***;0.1%、**;1%、*;5%、+;10%
注3:分析意図上、授業料減免関連は除外して計算している。
- 132 -
大学昼間部
公立
私立
国立
公立
私立
***
***
***
**
***
***
***
***
***
**
***
***
***
***
***
**
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
まず全体を見ていく。すると専門学校は援助額平均において設置者間の有意差があるが、大
学においてはない。次に同一学費援助カテゴリにおける設置者間の違いを見ていく。最初に専
門学校に着目する。すると、
「複数」以外はすべて設置者間において有意差があり、どの場合も
私立の方が金額が多い。次に大学に着目すると、
「複数」は設置者間格差が存在し、国立<公立
<私立となっている。だが「JASSO 以外」
「全体」は設置者間における有意差はなかった。
「第
1 種」「第 2 種」については国公立が同程度である。
続いて学費援助カテゴリ間の格差に着目する。するとどの場合も「複数」が最も高額である。
そして学校種に限らず私立の「第 2 種」が多い。また金額の有意差に着目すると、ほとんどの
場合有意差が存在する。有意でないのは、専門(公)での「第 1 種」×「第 2 種」、大学(国
公立)での「第 1 種」×「JASSO 以外」程度である。
4-2-3 所得階層別における学費援助の実態とは
本項では家計年収で統制した場合の学校種間及び設置者間の格差を分析する。なお分析の幅
はサンプルの都合上、
「家計年収 400 万円未満」
「同 400 万円以上 800 万円未満」
「同 800 万円
以上」とした。また、分析の手順としては最初に学校種単位で分析をし、その上でそれぞれの
家計年収ごとに専門学校が大学と比べどのように異なるのかその傾向を見ていく。
(1) 専門学校における所得階層別の分析
最初に、専門学校の傾向を見ていく。当然所得階層が高くなるほど援助の割合は低くなる。
ただ学費援助の種類に着目すると、所得階層が高くなるに従い「複数」「第 1 種」の受給の減
り幅が大きくなる。
公立
400未満
400以上800未満
800以上
17.7%
7.7%
3.2%
私立
20.5%
12.6%
15.3%
400以上800未満
9.6%
2.2%
4.2%
0%
複数支援
図 5-7
7.7%
30.0%
13.3%
17.7%
27.3%
46.4%
11.5%
70.4%
2.4%
400未満
800以上
11.7%
11.3%
6.2%
33.8%
32.2%
19.2%
20%
第1種のみ
8.1%
31.4%
7.4%
44.6%
7.1%
67.3%
40%
第2種のみ
60%
JASSO以外何らか
80%
非援助
所得階層別×設置者別学費援助の状況(専門学校)
- 133 -
100%
また、私立だけに着目すると、低所得層の 400 万円未満も、低~中所得層の 400 万円以上~
800 万円未満のカテゴリにおいても、
「第 2 種」の割合があまり変わらない。「第 2 種」は所得
基準が緩やかで金額にも幅があるため、受給の割合が高いのかもしれない。
次に、設置者間での費用の格差を考慮すると、同一所得階層であっても学費が高い分私立の
方が学費援助の割合が高くなるはずである。しかし、低所得層である 400 万円未満においては
援助の割合は公立の方が高い。そして「JASSO 以外」は公立は低~中所得層の 400 万円以上
~800 万円未満のところが最も高くなっている。そして私立は所得階層に関わらず 7~8%の受
給者がいる。
「JASSO 以外」は選考基準が多様であるので選考基準の中身が異なっている(例
えば低所得層は奨学型、高所得層は育英型)ことがこういった傾向をしめすのかもしれない。
(2) 大学昼間部における所得階層別の分析
続いて大学昼間部における傾向を見ていく。まず、全体の傾向に着目する。すると設置者間
というよりは所得階層間の影響力が強いことは明らかである。特に「複数」「第 1 種」の割合
は所得と受給に明らかな関係を見いだせる。次に設置者ごとの傾向を見ていく。国立は、400
万円未満の「複数」が非常に多い。そして「JASSO 以外」は家計年収の上昇とともに減少し
ており、国立においてこのカテゴリは奨学型の可能性が高い。次に公立に関しては低~中所得
層(400 万円以上 800 万円未満)において「第 2 種」が最も高い。私立は低所得層(400 万円
未満)と低~中所得層(400 万円以上 800 万円未満)の「第 2 種」が同じ程度になっている。
そして「JASSO 以外」がどの所得階層においても同程度存在する。
国立
400未満
36.1%
400万以上800万未満
12.2%
公立
22.2%
2.2%
400未満
24.7%
400万以上800万未満
9.0%
5.3%
24.3%
400未満
24.5%
400万以上800万未満
11.2%
4.1%
800万以上
5.1%
0%
複数支援
図 5-8
10%
5.2%
23.2%
31.6%
第1種のみ
41.0%
32.4%
33.8%
40%
第2種のみ
6.6%
5.4%
6.0%
30%
21.0%
64.9%
16.4%
20%
4.6%
3.4%
3.2%
23.2%
18.5%
43.9%
21.6%
10.4%
9.4%
67.6%
15.1%
2.3%
17.0%
3.3%
29.7%
800万以上
私立
14.0%
4.7%
800万以上
19.0%
39.2%
61.6%
50%
60%
JASSO以外の学費援助
70%
80%
非援助
所得階層別×設置者別学費援助の状況(大学昼間部)
- 134 -
20.1%
90%
100%
(3) 所得階層単位ごとの比較(400 万円未満、400 万円以上 800 万円未満、800 万円以上~)
ここでは家計年収単位ごとで、主に学校種間での学費援助の傾向を見ていく。なお本章の趣
旨が専門学校における学費援助であるため、大きな特徴がある以外は、大学の設置者間の分析
は、できるだけ簡潔にとどめておく。
(A)低所得階層(家計年収 400 万円未満)の傾向
専門学校
最初に、低所得層ともいえる家計年収 400 万円未満の分析を行う。
公立
17.7%
私立
11.7%
15.3%
11.3%
国立
大学昼間部
30.0%
33.8%
36.1%
公立
21.6%
24.5%
0%
10%
複数支援
30%
第1種のみ
31.4%
17.0%
9.4%
23.2%
16.4%
20%
32.4%
40%
27.3%
8.1%
19.0%
29.7%
私立
13.3%
50%
第2種のみ
60%
18.5%
4.6%
21.0%
6.6%
20.1%
70%
JASSO以外何らか
80%
90%
100%
非援助
注:「援助」
(つまり「100%-「非援助」)の値(%)は
専門(公)
:72.7、専門(私):68.6、大学(国):81.5、大学(公)
:79.0、大学(私):79.9
図 5-9
学校種×設置者別学費援助の状況(家計年収 400 万円未満)
まず全体の傾向(「援助」)に着目する。すると、専門学校は設置者に関わらず大学に比べ 10
ポイント以上低い。特に、専門(私)はかかる費用がとりわけ学費は大学(私)程度かかるに
もかかわらず、図 5-9 のカテゴリの中で最も低い値を示している。このことから、低所得層に
おける学費援助は専門学校よりも大学の方が整備されているといえる。次に、内訳についてみ
ていく。すると、専門学校は学校種に限らず「複数支援」「第 1 種」の割合が大学より明らか
に低い。その一方で「第 2 種」が大学(国公立)よりも多く、大学(私)並みである。恐らく
専門学校生は、選考基準が緩やかで、金額に幅が利くという理由で「第 2 種」を選択している
のかもしれない。
- 135 -
(B) 低~中所得層(家計年収 400 万円以上~800 万円未満)の傾向
次に、低~中所得層ともいえる、家計年収 400 万円以上~800 万円未満を見ていく。
まず全体に着目する。すると、この所得階層でも若干専門学校の方が援助を受けている割合
が低い。ただ、400 万円以下よりは縮まっている。次に、内訳の特徴を見ていく。すると、明
らかに大学の方が「第 1 種」の割合が高い。ただ専門(公)は、
「JASSO 以外」の割合が非常
に高く、2 割弱であり、大学に比べ 3 倍以上の値になっている。その一方で専門(公)は「第
2 種」が大学に比べ低い。そして専門(私)は大学(公)及び大学(私)と同程度になってい
大学昼間部
専門学校
る。
公立
7.7%
7.7%
私立
9.6%
国立
12.2%
20.5%
6.2%
32.2%
14.0%
公立
9.0%
15.1%
私立
11.2%
10.4%
0%
17.7%
10%
複数支援
46.4%
7.4%
24.7%
5.2%
31.6%
30%
第1種のみ
40%
43.9%
3.4%
33.8%
20%
44.6%
41.0%
5.4%
50%
第2種のみ
60%
39.2%
70%
80%
JASSO以外何らか
90%
100%
非援助
注:「援助」
(つまり「100%-「非援助」)の値(%)は
専門(公)
:53.6、専門(私):55.4、大学(国):56.1、大学(公)
:59.0、大学(私):60.8
図 5-10
学校種×設置者別学費援助の状況(家計年収 400 万円以上 800 万円未満)
(C) 中~高所得階層(家計年収 800 万円以上)の傾向
最後に家計年収 800 万円以上における学費援助の状況を見ていく。
まず全体に着目すると専門(公)がほかに比べ多少低い。これは学費が低いため申請者がそ
の分少ないと考えられる。そして、専門(私)
・大学(国公立)が同程度で、大学(私)が最も
高い。これは在学にかかる学生生活費を考えると、おおむね妥当な設置者間関係になっている。
次に、学校種間の傾向を見ると、専門学校の方が「第 1 種」「第 2 種」の割合が低く、他の
所得階層と同様「JASSO 以外」の割合は高い。中~高所得層では専門学校の「第 1 種」「第 2
種」のみの値が低い傾向にあり、一方で JASSO 以外が高い。前述同様 JASSO と異なる選考
基準の存在が示唆される。
- 136 -
専門学校
3.2%
公立
12.6%
11.5%
70.4%
2.4%
2.2%
私立
19.2%
7.1%
67.3%
4.2%
大学昼間部
国立
4.7%
2.2%
22.2%
3.3%
67.6%
5.3%
公立
私立
24.3%
2.3%
3.2%
64.9%
4.1%
23.2%
5.1%
0%
10%
20%
複数支援
6.0%
30%
第1種のみ
61.6%
40%
50%
第2種のみ
60%
70%
JASSO以外何らか
80%
90%
100%
非援助(A)
注:「援助」
(つまり「100%-「非援助」)の値(%)は
専門(公)
:29.6、専門(私):32.7、大学(国):32.4、大学(公)
:35.1、大学(私):38.4
図 5-11
学校種×設置者別学費援助の状況(家計年収 800 万円以上)
5. まとめ
本章では、既存調査データを用い専門学校と大学昼間部の学費援助の実態を比較することで、
専門学校の学費援助の特徴を見いだすことを試みた。分析の結果、概ね明らかになったことは
以下のようにまとめられる。
家計所得総額は、専門学校の方が明らかに低額である。そして学生生活費は基本的には専門
学校の方が低いものの、専門(私)は大学(国公立)とそれほど変わらない。だが学費援助の
実態を見ると特に低所得層(400 万円未満)において、専門学校の学費援助は大学に比べその
受給率は 10%ほど低い。また、その内訳も大学とは異なり、「複数支援」や「第 1 種」の割合
が明らかに低く、主となる奨学金は「第 2 種」である。これは貸与費用に幅があり、選考基準
も緩やかであるためとも考えられる。
専門学校はその財務状況を考慮すると、学校独自の奨学金や、授業料減免が難しい状況にあ
る。また、低所得層が多いということは、返済が大変であろう有利子型の奨学金の拡充にも限
度がある。これらのことを考えると、無利子貸与型や給付型の奨学金の拡充やもっと別の形の
学費援助が少なくとも現在以上は整備されるべきと考えられる。
最後に本分析から、今後に必要であろう分析課題を提案しておく。第一に、奨学金の根本概
念(育英と奨学)をふまえると学力も加味した分析が必要である。低所得層の中には学力が高
くても経済的事情で専門学校への進学をしているものもいるだろう。こういった学生がどのよ
うな学生支援を受けているのかはもっと明らかにされる必要がある。第二に、奨学金の効果に
- 137 -
着目した分析の必要性である。今回の分析は入り口(受給)中心であるが、学生生活費の収支
構造や生活時間、卒業後の進路にも着目することで、もっと奨学金制度の効果や課題も見えて
くるだろう。今後の課題としておきたい。
<注>
1 学術創成科研(金子元久研究代表)
「高校生の進路についての調査」
(2005 年 11 月及び 2006 年 3 月調
査)参照。
2 文部科学省科学研究基盤(B)
「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究」
(小
林雅之研究代表)参照。
3 なお、平均額の算出に関しては専門学校(公立)のサンプル数がほかのカテゴリに比べ著しく少ない
ため、トリム平均(5%)を用いた。
4 この表は設置者間の比較をするため作成したものである。そのため奨学金受給者・非受給者及び自宅・
自宅外を統合した統計となっており、金額そのものが実態を直接反映したものではないので、読み取るに
は注意が必要である。
5 表 5-2 参照。
6 詳細は本報告書の第2章(浦田・吉田担当分)を参照のこと。
7大学(国)に「学校に減免制度がない」の回答が 1%存在したがこれは国立大学には必ず授業料減免制
度があるので事実誤認である。
8 なお、
「家庭からの給付」の比較は、それぞれの学費援助の種類によって、所得階層が異なり単純な比
較が難しいため脚注の附表に記した。
附表 5-1
収入合計
居住形態×学校種×設置者別学生生活費基本情報
自宅生
自宅外(下宿・アパート・寮)生
専門学校
大学昼間部
専門学校
大学昼間部
公立
私立
国立
公立
私立
公立
私立
国立
公立
私立
767,200 1,513,800 1,193,900 1,198,600 1,794,800 1,100,100 1,905,600 1,795,900 1,774,800 2,386,200
(家庭から給付)
285,000
782,600
600,100
561,700
1,005,300
485,700
(奨学金収入)
216,100
316,700
195,500
238,400
336,700
363,500
1,102,700 1,132,400 1,025,400 1,605,200
430,600
338,200
404,600
416,300
支出(学費)
396,200
1,152,000
710,700
725,300
1,281,200
368,900
1,050,700
623,700
636,300
1,216,800
支出(生活費)
272,300
258,000
347,800
332,700
350,000
590,100
802,900
1,039,400
987,300
994,800
家計の年収総額
581.0
592.4
722.0
663.2
728.7
536.6
564.9
758.8
682.4
758.7
注1:学生生活費は100の位を四捨五入した。
注2:金額の算出方法として5%トリム平均を用いた。
注3:サンプル数:自宅:専門(公立:278、私立:2,664)大学(国立:1,345、公立:1,391、私立:4,839)
自宅外:専門(公立:207、私立1,706)大学(国立:2,712、公立:2,060、私立:3,075)
附表 5-2
奨学生・非奨学生間における「収入合計」「家庭からの給付」「奨学金収入」
「家計年収総額」「自宅生の割合」
収入合計
家庭からの給付
奨学金収入
家計年収総額
自宅生の割合(%)
非奨学
721,100
462,600
0
641.6
69.6
専門学校
公立
奨学
その差
1,028,200 -307,100
260,400
202,200
575,700
-575,700
481.4
160.3
51.9
17.7
非奨学
1,481,000
1,132,700
0
681.4
70.6
私立
奨学
1,744,900
642,700
745,400
495.5
60.3
その差
-263,900
490,000
-745,400
185.9
10.3
大学昼間部
非奨学
収入合計
1,542,820
家庭からの給付 1,222,400
奨学金収入
0
家計年収総額
880.5
自宅生の割合(%)
39.5
国立
奨学
1,647,510
651,700
675,000
611.4
26.3
その差
-104,690
570,700
-675,000
269.1
13.2
非奨学
1,458,500
1,123,700
0
804.9
47.4
- 138 -
公立
奨学
1,608,600
580,000
678,800
575.1
34.2
その差
-150,100
543,700
-678,800
229.8
13.2
非奨学
1,945,200
1,574,800
0
880.7
65.0
私立
奨学
2,079,900
888,600
790,200
620.9
57.5
その差
-134,700
686,200
-790,200
259.8
7.5
附表 5-3
学費援助カテゴリ別「収入合計」
専門学校
大学昼間部
公立
私立
国立
公立
私立
1,219,400
1,816,600
1,520,200
1,624,800
2,113,700
第1種のみ
944,700
1,683,200
1,583,400
1,539,200
2,030,100
第2種のみ
1,053,500
1,775,300
1,723,000
1,635,600
2,081,700
JASSO以外何らか
918,200
1,437,500
1,456,300
1,513,600
1,867,800
非援助
716,800
1,497,400
1,565,200
1,464,500
1,963,300
全体
906,400
1,666,200
注1:値は5%トリム平均を用いた。
注2:単位は万円である。
1,593,300
1,539,300
2,014,500
複数支援
(1)設置者間の格差
(2)学費援助の種別の格差
大学昼間部
専門学校
専門学校
公×私
国×公
国×私
公×私
複数支援
***
+
***
***
第1種のみ
***
-
***
第2種のみ
***
**
JASSO以外何か
***
非援助
全体
***
***
大学昼間部
公立
私立
国立
公立
私立
複数×第1種
*
-
-
-
-
***
複数×第2種
-
-
***
-
-
***
***
複数×JASSO以外
**
***
-
-
***
-
***
***
複数×非援助
***
***
-
***
***
***
***
***
***
***
***
第1種×第2種
第1種×JASSO以外
第1種×非援助
第2種×JASSO以外
第2種×非援助
JASSO以外×非援助
*
***
**
***
***
***
***
-
***
+
***
***
+
*
*
*
***
-
**
+
***
***
-
注1:ノンパラメトリック検定による
注2:有意水準:***;0.1%、**;1%、*;5%、+;10%
附表 5-4
学費援助カテゴリ別「家庭から給付額」
専門学校
公立
大学昼間部
私立
国立
公立
私立
複数支援
156,100
505,500
324,800
316,800
600,900
第1種のみ
326,100
765,800
748,300
647,900
1,037,100
第2種のみ
225,200
681,500
755,200
639,900
917,000
JASSO以外何らか
379,200
722,100
810,300
652,200
1,100,400
非援助
463,600
1,153,900
1,245,100
1,132,700
1,593,000
893,600
947,900
828,000
1,225,600
全体
361,100
注1:値は5%トリム平均を用いた。
注2:単位は万円である。
(1)設置者間の格差
専門学校
公×私
複数支援
***
第1種のみ
***
第2種のみ
***
JASSO以外何か
***
非援助
***
全体
***
(2)学費援助の種別の格差
大学昼間部
国×公 国×私 公×私
***
***
**
***
***
***
***
***
+
***
***
***
***
***
***
***
***
注1:ノンパラメトリック検定による
注2:有意水準:***;0.1%、**;1%、*;5%、+;10%
複数×第1種
複数×第2種
複数×JASSO以外
複数×非援助
第1種×第2種
第1種×JASSO以外
第1種×非援助
第2種×JASSO以外
第2種×非援助
JASSO以外×非援助
- 139 -
専門学校
公立
私立
+
***
***
***
***
***
***
*
***
**
***
***
***
国立
***
***
***
***
***
***
***
大学昼間部
公立
私立
***
***
***
***
***
***
***
***
*
***
***
***
***
***
***
***
附表 5-5
学校種ごと設置者別家庭からの給付と修学の関係
(1)専門学校
0%
公立
複数支援
20%
3.7%
40%
18.5%
第1種のみ
13.2%
第2種のみ
11.9%
私立
第2種のみ
30.2%
36.5%
9.4%
26.2%
49.0%
25.4%
27.9%
15.4%
21.5%
24.8%
JASSO以外のみ
20.2%
11.1%
49.6%
39.9%
11.7%
27.3%
25.4%
75.5%
非援助
23.0%
修学可能
修学不自由
7.4%
14.2%
38.7%
全体
12.8%
53.1%
31.6%
7.0%
17.0%
49.4%
31.6%
4.2%
5.0%
3.3%
48.6%
5.6%
7.7%
9.3%
82.3%
全体
100%
30.9%
47.2%
非援助
第1種のみ
80%
46.9%
JASSO以外のみ
複数支援
60%
29.4%
修学困難
3.6%
6.7%
8.8%
給付なし
(2)大学昼間部
0%
国立
複数支援
10%
7.1%
第1種のみ
10.4%
第2種のみ
11.3%
20%
30%
40%
23.0%
公立
私立
JASSO以外のみ
8.8%
38.3%
42.2%
9.4%
35.2%
33.6%
34.4%
10.1%
14.8%
17.2%
2.7%
85.3%
10.8%
44.7%
8.2%
26.3%
25.2%
20.3%
43.0%
11.6%
4.7%
44.5%
40.7%
41.6%
51.5%
23.8%
17.1%
11.8%
47.2%
24.4%
修学不自由
7.6%
7.6%
3.3%
84.2%
修学可能
1.2%
8.8%
23.6%
39.2%
10.2%
7.0%
34.1%
45.2%
12.5%
0.9%
3.5%
19.0%
36.0%
非援助
全体
7.1%
20.0%
25.7%
25.3%
7.1%
全体
第2種のみ
6.8%
12.1%
48.3%
4.7%
100%
35.8%
25.4%
非援助
第1種のみ
90%
83.5%
JASSO以外のみ
複数支援
80%
33.4%
45.9%
全体
第2種のみ
70%
31.7%
45.8%
非援助
第1種のみ
60%
49.4%
JASSO以外のみ
複数支援
50%
38.2%
修学困難
- 140 -
給付なし
22.6%
0.7%
5.8%
第6章 私立専門学校生の家庭給付収入
―出身地による差の分析―
朴澤泰男(一橋大学)
1. はじめに
1-1 本章のねらい
本章では既存の調査データを用いて、私立専門学校生(専修学校専門課程の在学者)の年間
収入、中でも家庭給付収入の出身地(高校卒業時の住所)による差を分析する。それを通して
いかに高等職業教育の投資費用を社会的に分かち合うか、という問題に関する示唆を得たい。
専門学校における教育が高等教育段階における、広い意味での職業教育であることは、この
分野の研究者の間で、概ね合意がなされていると思われる(寺田 2009、吉本 2009)。ただし
それは、卒業者は皆「即戦力」になるといったことを必ずしも意味しない。成熟した就業意識
をもった一人前の社会人(大人)として、社会に送り出すという「しつけ」機能(吉本 2003)
も含む広義の職業人養成教育である 1。
もう一段、立ち入って専門学校教育の内容や成果を考える場合、資格との結びつきの強弱を
区別する必要がある。先行研究では例えば、資格教育と非資格教育(植上 2011)、要資格職と
非資格職(濱中 2009)といった対比が行われている。植上(2011)は「養成施設指定制度に
基づいてなされる教育」を「資格教育」と定義し、具体的な分野としては医療、衛生、教育・
社会福祉、工業の一部(測量、土木・建築、電気・電子、無線・通信、自動車整備)を挙げて
いる(34-35 頁)
。
専門学校の分野別在学者数の推移を見ると、医療や衛生など資格に結びつく分野は、学生数
を着実に伸ばしてきた一方、工業や商業の分野は 1990 年代以降、大きく減少している(工業
でも資格に結びつく学科は進学需要が堅調である)ことを見ても(濱中 2008、植上 2011)、
専門学校の教育の少なくとも一部には、大学教育と代替的な部分があるとも考えられる。資格
教育はもちろん、そうした部分も含めた考察が必要とされよう。
いまの考察を一歩進めると、専門学校教育には、分野によっては少なくとも一部は、かつて
なら高卒で就職した者が、企業内教育の一環で受けられたような教育訓練を、入職前に、企業
外で、費用自己負担のもと受講するような性格があるのかもしれない。実際、雇用政策研究会
(2014)は、民間企業における、労働費用(現金給与を除く)に占める教育訓練費の割合が
90 年代以降、低下・横ばい傾向にあると指摘する(本報告書付録の参考データ集「企業内教育
訓練の縮小」も参照)
。
また、正規はともかく、非正規雇用の従業員への教育訓練費は増えていない(大企業以外は
減少又は横ばい)という(原田 2012)。小杉(2012)も、
「近年、企業による若者の職業能力
開発の総量が減少しているとすれば、まず、もともと小規模企業ほど能力開発の実施率は低か
ったところに中小規模企業への就職者が増えたこと、さらに、新卒採用が厳選化する中でその
- 141 -
枠から外れて非正規雇用者として就業する若者が増えたこと、などの要因によるところが大き
いのではないか」と指摘する(159 頁)
。実際、厚生労働省の 2009 年『能力開発基本調査』に
よれば、OFF-JT を受けた正社員の割合は 38.5%である一方、非正社員は 16.9%にとどまる。
1,000 人以上の企業では差が更に大きく、それぞれ 48.8%、19.6%だったという(専修学校教
育の振興方策等に関する調査研究協力者会議 2011,参考データ集 41 頁、「職業教育訓練
(OFF-JT)を受講した労働者の比率(雇用形態別)
」を参照)
。
もともと企業内教育に関しては、企業にとって、自社で教育訓練投資を行った従業員に離職
される恐れがある以上、他の会社や職業でも使うことのできる知識や技能(一般的人的資本)
の育成には、一定の自己負担を求めざるを得ない(入社後、何年かの給与が抑制される)
。だが
自己負担分が多すぎれば、社会全体の訓練投資量が過少になるのではないか。よって投資費用
の確保や協同化が、産業・業界を単位に企業・事業者間でプールする(それに政府が介入する)
などの形で考えられてよいし、既にそうした実践も行われていると思われる 2。
専門学校教育に対する投資は、特に私立の場合、現状では親による費用の支弁が主流である
ことは、後に見る調査結果(家庭給付額)からも明らかである。その場合、地域によっては親
の費用支弁に一定の合理性がある可能性もある。地方から県外進学しても、地元に戻って就職
する場合が多ければ、老後の不安が少ないなどのケースである(専門学校への県外進学の実態
を示すデータは限られているが、その規模は、出身県への U ターン就職も含めて、小さくない
可能性がある 3)
。そうした地域ほど、親が教育投資に意欲的であっても不思議ではない。
そこで本章では、専門学校進学者を送り出す地域(出身地)に着目して、専門学校生の年間
収入、特に家庭給付額が出身地によって異なるか、という問題に接近を試みる。
大学生の学生生活費の場合は、家庭からの給付額は出身家庭の所得が多いほど大きいことが
(また、家庭給付額が大きいほど、学生の収入総額も大きいことが)指摘されている。しかし
2004 年の日本学生支援機構「学生生活調査」を分析すると、
「家計所得と家庭給付の相関は、
国立・私立とも約 0.2 と低」く(居住形態別の相関係数も同程度)、
「同じ所得でも家庭給付の
額に差がある」ことから、家庭給付額の差は「所得階層による影響」に加え、
「家計の教育費の
負担観などの差による」可能性が示唆される 4(小林 2009,182 頁,187 頁)。家庭給付額の
差を説明する他の要因の一つとして、本章は出身地に焦点を当てるものである。
1-2 データと考察対象
以下で行うのは、質問紙調査の計量分析である。日本学生支援機構の行った「学生生活に関
する基礎調査(専修学校専門課程)
」
(2009 年 11 月)を使用する。また大学生との比較を行う
ため、
「学生生活調査」
(2010 年 11 月)も使用する。学校設置者によってサンプリングの際の
抽出率が異なるため、以下では、いずれも対象を私立に限定する。
本稿が主たる考察対象とするのは、高校の卒業直後や、卒業して間がない若年の学生(成人
学生以外)である。専門学校の在学者には、成人学生が少なくないことはよく知られている。
実際、2012 年度『就業構造基本調査』から、専門学校在学者のうち、25 歳以上の者が占める
- 142 -
割合を算出すると、図 6-1 のように男子で 16.8%、女子で 12.9%に達する 5(この値は、短大・
高専の場合は男子 1.9%、女子 3.6%、大学の場合は男子 4.9%、女子 4.0%にとどまる)
。成人
か否かをどう区別するかは慎重な検討が必要だが(詳しくは、本報告書第 7 章を参照)
、本章
では便宜的に、25 歳未満を「成人学生以外」と見なすことにした。
本章では「東京圏」、
「京阪神」、
「外縁部」、
「中間部」という地域区分を用いる。東京圏は、
埼玉、千葉、東京、神奈川の 4 都県、京阪神は京都、大阪、兵庫の 3 府県のことである。以上
は日本学生支援機構が、学生生活調査の集計で用いるものと同じだが、今回は「その他」地域
を更に二つに分けることにした。高校卒業者の高等教育機関(大学、短大、専門学校)への進
学率が低い「外縁部」
(北海道、東北、九州・沖縄の 15 道県)と、外縁部よりやや高い「中間
部」
(北関東、甲信越静、北陸、東海、東近畿、中国、四国の 25 県)の二つである 6。地域ブ
男子 (在学者)
専門学校(147,900)
女子 (在学者)
ロックの区分も一案だが 7、データ分析の際、標本サイズを確保するため単純に二分した。
専門学校(222,600)
43.3
39.9
短大・高専(99,600)
30.5
67.6
大学(1,600,400)
66.5
28.6
38.2
短大・高専(154,400)
32.8
1.3
0.6
3.2 1.7
48.9
63.3
大学(1,219,400)
8.9 7.9
5.7 7.2
33.1
63.2
1.5
1.8
2.1
2.2
(%)
0.0
20.0
15~19歳
20~24歳
40.0
25~29歳
60.0
80.0
100.0
30歳以上
図 6-1 在学者の年齢構成(男女別、2012 年)
(注)2012 年『就業構造基本調査』全国編「人口・就業に関する統計表」第 2 表より作成。
図中の括弧内は人数。
「専門学校」は、修業年限「2 年以上 4 年未満」の学校。
「4 年以上」は
大学に(「1 年以上 2 年未満」は高校に)含まれる。
「大学」には、大学院を含まない。
2. 私立専門学校生の家庭給付収入
2-1 年間収入の地域間比較
この節ではまず、25 歳未満の私立専門学校生の年間収入について、地域間比較を行う。男子
(海外在住又は出身を除く。昼間と夜間は区別できない)の年間収入の平均値を通学形態別・
出身地別に集計した結果が、図 6-2 である。東京圏出身の自宅外通学と、京阪神出身の自宅外
通学はケース数が少ないため割愛した。以下、図の作成方法を説明する。
年間収入は、各収入項目を合算し、
「家庭給付」
(家庭からの給付)、
「奨学金」
(日本学生支援
- 143 -
機構の奨学金、日本学生支援機構以外の奨学金の合計)、
「他の収入」
(アルバイト、定まった仕
事からの収入、その他の合計)の三区分に整理した。三区分それぞれについて、平均値を算出
し、通学形態別・出身地別に積み上げた。中央値でなく平均値を用いる理由は、後に、平均値
(実測値)と、回帰分析結果に基づく予測値を比較するためである。なお各収入項目の無回答
については、いま括弧内に示した計 6 項目のうち、
「6 項目全てが無回答」の場合のみを欠損値
として扱うことにし、それ以外は一律「0 円」を割り当てた。
通学形態のうち、「自宅外」は、学生寮(寮宿舎)と下宿・アパート・その他の合計である。
出身地は、高校卒業時の住所(都道府県名)を指す(郡名による回答など、都道府県名が判明
するものは修正した)
。
なお、年間収入の額がどれくらい大きいかは、年間支出の規模にも依存することから、図 6-2
には年間支出の平均値も示した。やはり三区分にまとめ直し、
「授業料・学納金」
(授業料、学
校への納付金の合計)、
「他の学費」
(修学費、課外活動費、通学費の合計)
、「生活費」(食費、
住居・光熱費、保健衛生費、娯楽費・趣味に関する支出、その他の日常的経費の合計)として
示した。各支出項目の無回答は、収入と同様に、括弧内の 10 項目全てが無回答の場合のみを
欠損値とし、それ以外の場合は「0 円」を割り当てている。
250.0
200.0
27.8 36.1
150.0
100.0
50.0
73.1 75.4
32.8 25.1
49.2 37.7
26.7
38.0
29.3
19.1 23.2 22.5
26.9 51.5
18.5 21.3 11.6 13.1
39.2 33.2
44.7
45.2
90.8 76.0
73.5 79.0
111.3 119.1 111.1 109.3 94.4 97.8 101.1 101.6
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(779) (259) (727) (1007) (648) (719) (807) (265) (766) (1052) (660) (754)
自宅
自宅外
自宅
年間収入
家庭給付
奨学金
自宅外
年間支出
他の収入
授業料・学納金
他の学費
生活費
図 6-2 私立専門学校生の年間収支の平均値(男子、通学形態別・出身地別)
(注)2009 年「学生生活に関する基礎調査(専修学校専門課程)」より作成。図中の括弧内は
ケース数。25 歳未満のみ。海外在住又は出身を除く。東京圏出身の自宅外通学と、京阪神出身
の自宅外通学は省略した。図 6-3 も同様。
図 6-2 からは年間収入総額や、年間支出総額が、通学形態や出身地によって多様であること
- 144 -
が読み取れる。通学形態・出身地ごとに見てみると、概ね支出総額の規模に収入総額の規模が
対応しており、家庭給付の多さも収入総額の多さにほぼ比例している関係があるように見える
(ただし統計的検定は実行していない)。これは女子の場合も同様である(図 6-3)。
250.0
200.0
150.0
100.0
50.0
28.1 28.7
32.0
74.9 77.7
32.9 28.6 34.5 55.5 42.9
27.2 23.9 26.6
22.9
28.9
21.7 21.5 20.5
44.2
32.7
39.5
12.9 15.5
41.2
89.3
71.2 72.5 74.9
94.0 108.9 102.7 87.8 86.4 84.0 83.1 86.2
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(1203) (517) (1399) (1477) (1164) (952) (1260) (536) (1444) (1527) (1170) (970)
自宅
自宅外
自宅
年間収入
家庭給付
奨学金
自宅外
年間支出
他の収入
授業料・学納金
他の学費
生活費
図 6-3 私立専門学校生の年間収支の平均値(女子、通学形態別・出身地別)
2-2 家庭給付額の比較――回帰分析結果による予測値を用いて
いま検討した二つの図からは、家庭給付の多さが、出身地によって異なる可能性がうかがえ
る。しかし、これはそもそも修学に必要な費用(支出総額)が、出身地ごとに異なっており、
そのため収入総額も異なるにすぎない、という解釈がありうるだろう。というのも出身地によ
って在学地域が異なりうるし、在学地域によって必要な学費・生活費に差があると考えられる
ためである(島 1999)。実際、1996 年と 2004 年の「学生生活調査」を分析した藤森(2008)
によれば、私立大学生の家庭給付収入は東京圏在学者より、
「その他」地方在学者の方が(様々
な変数を統制しても)有意に少ないという(59 頁)。
また、もともと世帯所得の多い家庭(の多く集まる地域)から進学した者ほど、多くの家庭
給付を受けているはずである。実際、本章と同じデータを分析すると、出身家庭の家計年収の
総額が多い専門学校生ほど、家庭給付収入額が多い傾向がある(本報告書第 5 章を参照)
。私
立大学生についても、家計の年収総額が多いほど、家庭給付額は多い(藤森 2008)。さらに、
私立専門学校生、私立大学生の両方とも、概ね家庭の収入が高いほど、学生生活費に占める家
庭給付額の割合も大きい傾向がある(本報告書序章及び本報告書付録の参考データ集「家庭の
年間収入別学生生活費に占める家庭からの給付の割合」を参照)
。
よって、在学地や世帯所得をコントロールした上で、家庭給付の平均値を地域間で比較する
- 145 -
必要がある。そこで家庭給付の金額を被説明変数とした線型回帰分析を行い、その結果による
予測値を算出して、通学形態別・出身地別の比較を行うことにした。なお、家庭給付額を世帯
収入で除した値、すなわち「家計負担度」
(小林 2009)を分析する選択肢もあるが、極端な値
の扱いが難しいなどの理由から今回は見送った。
回帰分析に使用する変数の記述統計は、表 6-1 に示す通りである。平均値と SD(標準偏差)
は、
「N」欄のケース数(回帰分析に使用する変数全てについて、欠損値のないケース数)から
算出したものである。「N(参考)」は各変数について、分析対象者全体(私立専門学校に在学
する 25 歳未満の学生。外国在住又は出身を除く)のケース数を参考までに併記した(次節の
私立大学生についても同様)。
各変数の詳細は、表 6-1 の備考欄に記載した。このうち世帯所得は、3,000 万円以上を外れ
値と見なして除外した上で、自然対数に変換した(
「0 円」には「1 円」を加えて対数変換)。
また在学地の情報は入手できなかったため、代わりに現住地、すなわち現在の住所(都道府県
名)を東京圏、京阪神、外縁部、中間部に区分して用いた。先行研究を参考にして(小林 2009、
藤森 2008)、学年や学科(分野、専攻)も統制する。
表 6-1 私立専門学校生の家庭給付の回帰分析に用いる変数
男子
家庭給付
ln世帯所得
自宅外通学
学年
工業
農業
衛生
教育・社会福祉
商業実務
服飾・家政
文化・教養
その他の学科
東京圏在住
京阪神在住
外縁部在住
東京圏出身
京阪神出身
外縁部出身
女子
備考
平均値
SD
N
N(参考)
平均値
SD
N
N(参考)
.923
6.180
.352
1.714
.350
.011
.084
.043
.082
.031
.077
.043
.286
.105
.280
.202
.074
.321
.830
.831
.478
.769
.477
.104
.277
.203
.275
.174
.266
.202
.452
.307
.449
.401
.261
.467
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,280
4,932
4,677
5,713
5,717
5,649
5,649
5,649
5,649
5,649
5,649
5,649
5,649
5,723
5,723
5,723
5,723
5,723
5,723
.854
6.164
.334
1.739
.043
.010
.125
.085
.099
.058
.103
.033
.253
.110
.328
.186
.091
.372
.845
.825
.472
.758
.203
.099
.331
.279
.299
.234
.304
.178
.435
.313
.470
.389
.287
.483
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
6,899
8,065
7,440
9,278
9,295
9,203
9,203
9,203
9,203
9,203
9,203
9,203
9,203
9,299
9,299
9,299
9,299
9,299
9,299
単位は百万円
「0円」には1を割り当て対数変換
1=寮又はアパート等, 0=自宅
1=工業, 0=それ以外
1=農業, 0=それ以外
1=衛生, 0=それ以外
1=教育・社会福祉, 0=それ以外
1=商業実務, 0=それ以外
1=服飾・家政, 0=それ以外
1=文化・教養, 0=それ以外
1=その他の学科, 0=それ以外
1=東京圏在住, 0=それ以外
1=京阪神在住, 0=それ以外
1=外縁部在住, 0=それ以外
1=東京圏出身, 0=それ以外
1=京阪神出身, 0=それ以外
1=外縁部出身, 0=それ以外
(注)私立専門学校に在学する 25 歳未満の学生のみ(外国在住又は出身を除く)。
表 6-2 が回帰分析の結果である。多くの変数はダミー変数として投入している。それらは、
通学形態(基準カテゴリは「自宅通学」
)、学科(同「医療(看護を含む)
」)、現住地(同「中間
部在住」
)、出身地(同「中間部出身」
)が該当する。在学地や世帯所得など、様々な変数を統制
しても、
「外縁部出身」が、男女とも有意なマイナス効果を持つことが確認できる。すなわち、
- 146 -
中間部出身者より外縁部出身者の方が、家庭給付の金額は少ない傾向がある。なお、現住地と
出身地の変数は都道府県名に基づくため(県ごとに値が異なる)、それら以外の変数(個人ごと
に値が異なる)とは測定の水準が異なっている。第一種の誤りを犯すことを避けるため、係数
の推定に cluster-robust standard errors(ロバスト標準誤差。表 6-2 中の SE)を用いた。
表 6-2 私立専門学校生の家庭給付の回帰分析
男子
係数
***
.179
.318 ***
.012
-.017
-.022
.111
-.206 **
-.166 **
-.145 +
-.041
-.214 **
.109 +
.134
.140 *
-.049
-.174
-.133 *
-.299 **
ln世帯所得
自宅外通学
学年
工業
農業
衛生
教育・社会福祉
商業実務
服飾・家政
文化・教養
その他の学科
東京圏在住
京阪神在住
外縁部在住
東京圏出身
京阪神出身
外縁部出身
定数
F値
自由度
有意確率
決定係数
ケース数
+
*
p < .10 p < .05
SE
**
p < .01
***
.016
.033
.015
.058
.106
.078
.063
.062
.079
.083
.071
.056
.100
.069
.058
.104
.066
.095
女子
t値
11.430
9.769
.831
-.296
-.207
1.422
-3.247
-2.692
-1.831
-.495
-3.004
1.945
1.342
2.020
-.834
-1.673
-2.019
-3.158
係数
SE
***
.200
.234 ***
-.029
.102 +
.233 **
.204 **
-.009
-.019
.105 +
.110 *
.092
.282 ***
.187 *
.176 **
-.189 **
-.196 *
-.148 **
-.502 ***
.011
.030
.017
.055
.084
.062
.045
.034
.056
.042
.067
.066
.079
.056
.056
.082
.044
.069
41.4
44.9
17, 46
< .001
17, 46
< .001
.084
4,280
.080
6,899
t値
18.290
7.773
-1.651
1.870
2.766
3.298
-.196
-.562
1.899
2.629
1.380
4.286
2.359
3.138
-3.363
-2.382
-3.381
-7.235
p < .001.
この回帰分析の結果と、各変数の記述統計とを使用して、家庭給付額の予測値を算出する。
すなわち表 6-2 の係数の値に、表 6-1 の平均値を掛け合わせ、全変数について合計し、定数を
足す。ただし通学形態と出身地を区別するため、この二つの変数だけは、場合によって 1 又は
0 を割り当てる。この方法で算出した家庭給付額(予測値)を示したものが図 6-4 である。
図 6-4 には予測値のほか、家庭給付の実測値、すなわち図 6-2~図 6-3 に掲げてあった単純
平均も併記した。自宅通学者については男女でも異なるが、実測値に比べ予測値の方が、概ね
金額が地域間で平準化するようだ(特に女子)
。また予測値では、中間部出身者で最も家庭給付
が最も多くなる(男子 87.6 万円、女子 88.3 万円)
。いっぽう自宅外通学の場合、様々な変数を
- 147 -
統制しても、外縁部出身者(男子 106.1 万円、女子 96.9 万円)より中間部出身者(男子 119.4
万円、女子 111.8 万円)の方が、家庭給付額の予測値が 10 万円超、大きいことが読み取れる。
なお、県によって物価が異なることから、家庭給付と世帯所得の金額について、
(出身県ごと
の)物価の地域差を調整した値を用いて分析することもできる。例えば、2007 年の『全国物価
統計調査』による全国物価地域差指数(都道府県別の総合指数・全世帯)によって、東京を 100
とする値に調整した場合、東京都出身者以外の多くは、いずれの金額も高い値となる。つまり
地方では、その地域の物価の相対的な低さを考慮すると、家庭給付と世帯所得の実質的な額は
もう少し多い計算になる。
、図 6-4 と同様の図
これらの物価調整後の値を用いて、同様の回帰分析を行い(結果は省略)
を作成すると、自宅通学の場合に家計給付額の地域差が平準化する(東京圏で実測値より予測
値が小さくなり、外縁部や中間部で大きくなる)傾向が、より顕著となることが概ね認められ
る。また家庭給付額の予測値は中間部で最も高くなり、東京圏をしのぐほどの水準となるよう
だ。自宅外通学者は、外縁部出身、中間部出身とも、実測値より予測値の方が大きくなるが、
両者の相対的関係は、実測値の場合とあまり変わらないようである(これらの傾向は、次節で
検討する私立大学生についても、ほぼ同様に見られた)。
180.0
160.0
140.0
119.4
120.0
100.0
82.7
80.0
88.3
87.6
70.1 74.3
90.8
76.0
73.5
96.9
69.5 68.8 73.5
111.3 119.1
60.0
40.0
111.8
106.1
89.3
79.0
71.2
72.5
74.9
94.0
108.9
20.0
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(779) (259) (727) (1007) (648) (719) (1203) (517) (1399) (1477) (1164) (952)
自宅
自宅外
自宅
男子
自宅外
女子
家庭給付(実測値)
家庭給付(予測値)
図 6-4 私立専門学校生の家庭給付の実測値と予測値(男女別・通学形態別・出身地別)
(注)実測値は図 6-2~図 6-3 の再掲。予測値は表 6-1~表 6-2 の分析結果を用いて推計。
3. 私立大学生との比較
前節の私立専門学校生の年間収入や、家庭給付についての以上の分析結果を、私立大学生と
比較してみよう。今度は、
「学生生活調査」の分析結果により、25 歳未満の私立大学生の年間
収入、特に家庭給付を地域間で比較する。ただし、対象は 4 年制大学の昼間部在学者のみで、
- 148 -
医・歯系を除く。また、海外在住又は出身も除いた。
図 6-2、図 6-3 と同様に、年間収支について平均値を通学形態別・出身地別に集計したもの
が図 6-5、図 6-6 である。収入の各項目は、
「家庭給付」
(家庭からの給付)
、
「奨学金」
(日本学
生支援機構の奨学金、大学からの給付奨学金、大学以外の機関による給付奨学金、その他の貸
与制の奨学金などの合計)、
「他の収入」
(アルバイト、定職収入、その他の合計)の三区分にま
とめ直した。支出は「授業料・学納金」
(授業料、その他の学校納付金の合計)、
「他の学費」
(修
学費、課外活動費、通学費の合計)
、
「生活費」
(食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好
費、その他の日常費の合計)の三区分である。
250.0
28.2
200.0
150.0
43.9 41.2
37.2
100.0
37.3
42.6
55.3
42.3
49.7 39.7 38.2
138.2
50.0
32.6
94.0 99.7
38.8 36.5
35.0
34.1
17.5 17.9
18.3
11.2 9.5
19.8
158.7
110.8 107.8 98.3 108.2 102.6 108.2
101.6 86.0 88.6 97.3
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(997) (408) (310) (571) (438) (850) (997) (408) (310) (571) (438) (850)
自宅
自宅外
自宅
年間収入
家庭給付
奨学金
自宅外
年間支出
他の収入
授業料・学納金
他の学費
生活費
図 6-5 私立大学生の年間収支の平均値(男子、通学形態別・出身地別)
(注)2010 年「学生生活調査」より作成。図中の括弧内はケース数。25 歳未満のみ。4 年制
昼間部のみ。医・歯系を除く。海外在住又は出身を除く。図 6-6 も同様。
図 6-5、図 6-6 から、私立大学生の年間収入及び年間支出の平均値が、私立専門学校生より
全体として多いことがうかがえる。私立大学生も、自宅外通学者において中間部出身者の家庭
給付の平均額が、特に男子で多いように見える(ただし、地域差の検定は実行していない)
。
次に、専門学校生の場合と同様に、回帰分析結果から家庭給付の平均額の予測値を算出して
みたい。回帰分析に用いた変数の記述統計が表 6-3、回帰分析結果が表 6-4 である。用いた変
数は専門学校生の分析と同様だが、学科は大学についてのものである(基準カテゴリは「文・
法・政・経・商系」)。やはり、他の変数をコントロールしても、男女とも「外縁部出身」が有
意なマイナス効果を持っていることがわかる(ただし、女子の場合は 10%水準)
。
- 149 -
250.0
29.7 32.4
200.0
150.0
40.3 37.0
32.1
43.5
100.0
55.9 45.2
37.7
37.9
37.5
41.2
102.5 104.4
39.0 34.3
35.2 36.4
20.4 18.9
18.7 20.0 11.7 11.7
155.2 166.3
50.0
116.2 101.1
92.5 105.4
113.6 112.0 102.3 107.9 109.0 110.7
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(999) (440) (324) (665) (422) (748) (999) (440) (324) (665) (422) (748)
自宅
自宅外
自宅
年間収入
家庭給付
奨学金
自宅外
年間支出
他の収入
授業料・学納金
他の学費
生活費
図 6-6 私立大学生の年間収支の平均値(女子、通学形態別・出身地別)
表 6-3 私立大学生の家庭給付の回帰分析に用いる変数
男子
家庭給付
ln世帯所得
自宅外通学
学年
理工
農学
薬学
教員養成
その他の学科
東京圏在住
京阪神在住
外縁部在住
東京圏出身
京阪神出身
外縁部出身
女子
備考
平均値
SD
N
N(参考)
平均値
SD
N
N(参考)
1.183
6.447
.404
2.513
.269
.023
.023
.024
.146
.435
.175
.147
.300
.135
.195
.742
.597
.491
1.127
.444
.148
.151
.154
.353
.496
.380
.354
.458
.342
.396
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,820
3,844
3,820
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
3,844
1.272
6.510
.356
2.458
.061
.017
.037
.056
.318
.416
.185
.144
.291
.136
.198
.762
.592
.479
1.110
.239
.128
.189
.229
.466
.493
.389
.351
.454
.342
.399
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,734
3,765
3,734
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
3,765
単位は百万円
「0円」には1を割り当て対数変換
1=寮又はアパート等, 0=自宅
1=理・工系, 0=それ以外
1=農系, 0=それ以外
1=薬系, 0=それ以外
1=教員養成系, 0=それ以外
1=その他の学科, 0=それ以外
1=東京圏在住, 0=それ以外
1=京阪神在住, 0=それ以外
1=外縁部在住, 0=それ以外
1=東京圏出身, 0=それ以外
1=京阪神出身, 0=それ以外
1=外縁部出身, 0=それ以外
(注)4 年制私立大学(医・歯系を除く)昼間部に在学する、25 歳未満の学生のみ(外国在住
又は出身を除く)
。
専門学校生の場合と同様の方法で、回帰分析による予測値を推計し(表 6-3~表 6-4 の結果
から推計)、実測値(図 6-5~図 6-6 の再掲)と比較してみよう(図 6-7)。やはり自宅通学者の
家庭給付額は地域間で平準化し、自宅外通学の場合はあまり変わらない傾向があるようだ。
- 150 -
表 6-4 私立大学生の家庭給付の回帰分析
男子
SE
係数
.311 ***
女子
SE
係数
t値
t値
16.250
.360 ***
.018
20.490
.028
.013
17.520
***
.037
.010
13.490
.021
.094
13.090
3.506
.284 ***
.536 ***
.042
.122
6.743
農学
.278 ***
.329 **
薬学
.846 ***
.083
10.190
.876 ***
.085
10.280
教員養成
.053
.190 ***
.074
.029
.714
6.496
.016
.248 ***
.051
.025
9.877
.053
.050
2.684
.209 ***
.089
.049
.060
4.238
京阪神在住
.141 *
.094 +
外縁部在住
.023
.048
.471
.052
-.964
.044
.060
-2.452
ln世帯所得
自宅外通学
.488
-.011
学年
理工
その他の学科
東京圏在住
***
**
東京圏出身
-.141
-.147 **
京阪神出身
-.126
-1.118 ***
定数
F値
自由度
有意確率
決定係数
ケース数
*
.050
.055
*
外縁部出身
+
.019
p < .10 p < .05
**
p < .01
***
.049
.117
-.897
.502
-.007
1.885
-2.820
-2.687
-2.574
-9.563
-.050
-.108
-.090
*
+
-.078
-1.407 ***
-.711
4.403
.309
1.482
-1.491
.043
.124
142.1
150.0
14, 46
< .001
14, 46
< .001
.264
3,820
.297
3,734
-1.798
-11.360
p < .001.
180.0
157.8
156.1
160.0
165.5
143.5
140.0
120.0
100.0
104.5 106.4 107.6
107.3
93.2 92.6 94.7
80.0
158.7
155.2
138.2
60.0
101.6
40.0
115.3
86.0
88.6
116.2
97.3
101.1
92.5
166.3
105.4
20.0
0.0
(万円)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(997) (408) (310) (571) (438) (850) (999) (440) (324) (665) (422) (748)
自宅
自宅外
自宅
男子
自宅外
女子
家庭給付(実測値)
家庭給付(予測値)
図 6-7 私立大学生の家庭給付の実測値と予測値(男女別・通学形態別・出身地別)
(注)実測値は図 6-5~図 6-6 の再掲。予測値は表 6-3~表 6-4 の分析結果を用いて推計。
- 151 -
4. まとめにかえて
本章では日本学生支援機構「学生生活に関する基礎調査(専修学校専門課程)
」
(2009 年)の
個票を分析し、25 歳未満の私立専門学校生の年間収入、特に家庭給付収入について検討した。
その結果、
「家庭からの給付」額は男女とも、(世帯所得や通学形態などの要因の影響を一定
にしても)在学地だけでなく、出身地(高校卒業時に住んでいた都道府県)によっても異なる
ことが明らかになった。具体的には、高校卒業者の高等教育機関(大学、短大、専門学校)へ
の進学率が低い「外縁部」
(北海道、東北、九州・沖縄の 15 道県)の出身者よりも、
「中間部」
(外縁部より進学率がやや高い北関東、甲信越静、北陸、東海、東近畿、中国、四国の 25 県)
の出身者の方が、家庭給付収入は多かった。日本学生支援機構「学生生活調査」
(2010 年)も
分析した結果、同様の傾向は私立大学生(4 年制昼間部に在学する 25 歳未満の学生。医・歯系
を除く)についても見られた 8。
なぜ、
「中間部」の出身者は家庭給付収入が多いのだろうか。考えられる背景の一つは、これ
らの地域で、出身県内就職が多いことである。次の図 6-8 の「就職者の出身県内就職率」は、
男子の短大・高専・専門学校卒の新規学卒入職者について、就職先地域(出身県内の割合)を
出身地(15 ブロック)別に示したものである(東京圏は、「南関東」と「東京」に二分した。
就職先は事業所の所在県を、出身地は義務教育修了地、つまり 15 歳時居住県を指す)。大井
(2007)の報告する『雇用動向調査』の特別集計結果に基づく 9。
図 6-8 によれば、
「中間部」に属するブロックで、概ね「出身県内就職率」
(これは進学時に
一度、県外流出した者も含む値である)が高いことがうかがえる。例えば、北関東(80.7%)
、
甲信越静(85.1%)、北陸(92.2%)、四国(88.3%)である。甲信越静、北陸、四国は「入職
者の県内出身者占有率」
(ある県に入職した新規学卒者に占める、その県出身者の割合)も高い
から(それぞれ 90.5%、93.1%、96.9%)、短期高等教育機関の新卒者(中でも男子は専門学
校卒が大半のはずである)の労働市場が、その地域内で閉じている(他の地域からの流入者も、
他の地域への流出者も少ない)ことが示唆される 10。
「中間部」出身者において、短期高等教育機関(とりわけ専門学校)卒業者の出身県内就職
の割合が高い事実を、
「家庭給付」を支出する側(多くは親)から見ればどうだろうか。将来も
子供が近く(県内)にとどまることが予想され、いずれ(又は過去に)子供に頼らざるを得な
い状況があるなら、
「出し惜しみ」することが難しいのかもしれない。あるいは、積極的に近く
にとどまってほしいと考え、多めに支出する場合もあるだろう
11。出身地による差がなぜ生じ
うるのかについての考察は、今後の課題としたい。
以上のように、本章での検討を経てみると、専門学校教育が、多くの私的負担(家庭からの
給付)に支えられていることにも一定の合理性がある可能性が示唆されることから、高等職業
教育の投資費用をいかに社会的に分かち合うかという議論は、問題を立てること自体が難しい
ようにも見える。実際、正規雇用の男性だけを見ると、専門学校卒業者の賃金カーブが高卒者
に近いことから(本報告書第 1 章を参照)
、専門学校教育の一部は事実上、高校の専門学科の
- 152 -
代替として機能している可能性がある。専門学校への社会的な投資の増加に合意が得られるか
は難しく、政策的にはむしろ、高校の専門学科に投資すべきだという見解も重要である 12。
しかし、例えば美容師のように社会的に不可欠で、かつほとんどが専修学校卒業者から輩出
している職業も少なくない(2008 年の資格取得者総数のうち、94.5%を専修学校卒が占める。
専修学校教育の振興方策等に関する調査研究協力者会議 2011,参考データ集 19 頁、「主な資
格の取得要件、学校種別養成施設数等」を参照)
。専門学校の卒業者は、「いわゆる日本型雇用
慣行からやや外れた位置にある」
(大企業より中堅以下の企業に就職する傾向が強い、職業資格
の取得を通して企業横断的な専門性を形成する教育内容である)
ことから(塚原 2005,80 頁)、
所得などの基本的事実でも、まだ明らかになっていないことの方が多いと思われる。
例えば、調理師の世界では(2008 年の入学定員のうち、79.0%を専修学校が、18.1%を高校
が占める。前掲・専修学校教育の振興方策等に関する調査研究協力者会議 2011,参考データ
集による)、高校を出てすぐ働いた方が、腕のよい職人になりやすいのか、それとも普通科高校
を出た後、専門学校を経て免許を取る方が長期的には成功するのだろうか。職業別の労働市場
の研究や、教育効果の分析が必要である。この点も今後の課題としたい。
100.0
92.4 92.2
90.0
88.3
85.1
84.1
80.7
79.5
80.0
75.4
72.3
66.9
70.0
61.3
59.0
60.0
50.0
76.0
99.6
57.8
46.9
90.5
92.8
93.1
96.9
92.0
40.0
68.6
30.0
68.8
68.2
67.0
95.3
86.6
60.5
54.0
43.8
20.0
10.0
南九州
北九州
四国
中国
京阪神
東近畿
東海
就職者の出身県内就職率(%)
北陸
東京
南関東
甲信越静
北関東
南東北
北東北
北海道
0.0
入職者の県内出身者占有率(%)
図 6-8 短大・高専・専門学校新卒者の就職の地域的構造(男子、15 ブロック別)
(注)大井(2007)が厚生労働省「雇用動向調査」の特別集計に基づいて、従業員 5 人以上の
事業所への新規学卒入職者(一般労働者とパートタイム労働者の区別はしていない)の出身地
と就職先を県別に集計し、移動表(行列)の形で報告する集計表から作成。1999~2001 年度
の移動平均。
- 153 -
<注>
1
「特定の職業に向けての知識・技術の教育」(狭義の職業教育)だけでなく、「職業生活一般に通じる
社会化」
(キャリア教育)も合わせて、広義の「職業教育」と呼べるとする見解がある(吉本 2009,
208 頁)
。小方(2009)は、専門学校卒業生の調査を分析し、現在の職業能力のうち専門学校卒業時
までに形成されたのは 5 割ほどであること、教育効果としてはむしろ、職業人として学習を継続して
いく姿勢の獲得が重要であることを指摘する。植上(2009)も、資格教育分野でも技能形成は一定
程度までにならざるを得ない(就業後にこそ身に付く)部分がある事例を紹介している。
2
例えば、ある県の職業訓練法人の設置する美容師養成施設(美容業の職業訓練施設)は、自己負担額
が 2 年間で 100 万円ほどである。
3
非大都市圏のうち 13 道県のほとんどで、県内の専門学校を卒業し就職した者のうち、県内企業等へ就
職した者の割合が 7 割以上となっている。ただし宮城は 54.6%にとどまっている(本報告書付録の
参考データ集「専門学校・大学卒業者における地元就職の状況」を参照)。これは、出身県(多くは
東北地方の他の県)へ戻っての就職が多いためだと推察される。1997 年の調査では、東北地方に所
在する専門学校の生徒のうち、94.1%は同一ブロック内出身(同一都道府県内出身は 40.1%)であっ
た。ちなみに関東は 79.3%が同一ブロック内出身(同一都道府県内出身は 37.8%)
、近畿は 72.3%が
同一ブロック内出身(同一都道府県内出身は 42.2%)となっている(専修学校振興における財政措
置の在り方等に関する調査研究協力者会議 2010,参考データ集 46 頁、
「専修学校入学前に卒業した
学校の所在地(平成 9 年度)
」を参照。文部科学省『平成 9 年度
専修学校に関する実態調査報告書』
による)
。なお、本報告書第 4 章によれば、進学時における家庭の経済事情を「とても重視した」生
徒のうち、34%弱が「自宅から通学できること」を「あまり重視しなかった」又は「まったく重視し
なかった」と回答している一方、進学時における家庭の経済事情を「とても重視した」生徒のうち、
経済的制約がなかった場合の希望進路として「地元から離れた学校への進学」は、36.6%が「あまり
考えなかった」又は「まったく考えなかった」と回答している。
4
同じデータでは、学生の出身家庭の家計所得が、250 万円以下(ただし「家庭からの給付」額を差し
引いた後の値)でも、学生(子)への給付を行っている家庭は、4 年制大学昼間部の場合、全体の 4.0%
存在し、家庭給付額の中央値は 110 万円であったという(岩田 2008,75 頁)
。
5
データは「政府統計の総合窓口」ウェブサイト(http://www.e-stat.go.jp/)より入手した(最終アク
セス日 2014 年 3 月 6 日)
。
6
高校(中等教育学校後期課程修了者を含む)新卒者の高等教育機関への進学率は、本報告書付録の参
考データ集「都道府県別高校新卒者の進学率(専門学校含む)
」に県別の値が掲載されている。2013
年度は、京都が最も高く(79%)
、青森が最も低い(55%)
。
7
例えば、全国専修学校各種学校総連合会を組織する都道府県協会等は、北海道、東北、北関東信越、
南関東、中部、近畿、中国、四国、九州の 9 ブロックごとに協議会を行っている。
8
「中間部」出身者の家庭給付額はまた、男子の専門学校生、男子の大学生、女子の大学生の場合は、
「東京圏」
(埼玉、千葉、東京、神奈川の 4 都県)出身者よりも多かった。
- 154 -
9
元の大井(2007)の報告する移動表は「99-01 年」などの形で、数年分をまとめた集計結果を掲載し
たものである。これは恐らく、1999~2001 の 3 年移動平均を取ったものだと思われる。そのため、
移動表の中にはケース数「0」のセルが発生している。これは移動平均を取った後、小数点以下を切
り捨てたために生じた値だと推察されるが、本章の集計では、これらはそのまま「0」として集計に
使用した。なお、雇用動向調査はあくまで事業所を対象とした標本調査であるから、出身地別の集計
を行う場合にはランダム性が確保できていない可能性がある。
10 こうした解釈の仕方は、新規高卒労働市場に関する小杉(2010)の指摘を参考にした(235 頁)
。
11
いずれにしても、家庭給付額が多いことは、一種の「甘やかし」と見ることもできるかもしれない。
家庭からの給付の多さが、学生本人の学習にポジティブに働くのか、そうでないのかの本格的な分析
も始まっている。藤森(2009)は「学生生活調査」によって、私立大学生は家庭給付額が多いほど、
授業関連の学習時間が長くなる一方、授業外の学習時間には無関連であることを明らかにした。一方、
荒木(2012)は全国大学生活協同組合連合会「学生生活実態調査」から、親と同居する文系学生の
場合、両親の所得に占める仕送りや小遣いの割合と、子の学習時間(平日の平均)に正の相関が確認
できる(しかし別居の学生には、同様の効果を見いだせない)ことを指摘する。なお 4 年制大学昼間
部の学生の通学形態と学習時間の関係については、「学生生活調査」から、自宅生より下宿・アパー
トの方が、授業と関係のない学習(
「授業外の学習」
)の時間が長い(授業関連の学習時間は有意な差
がない)ことや(浦田 2009)、学習時間(大学の授業、授業関連の学習、授業と関係のない学習)
のばらつき自体も大きいことが明らかにされている(岩田 2009)
。
12 教育政策として、中等教育段階までは普通教育を中心とし、職業教育は中等教育以後に重点を置くの
が望ましいのか、それとも、(先進国でも)中等教育段階の職業教育に(見直しを行いつつ)投資を
。
増やすべきかについては、論争が続いているという(金子 2001)
<参考文献>
荒木宏子,2012,
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いての計量分析」慶應義塾大学大学院経済学研究科・商学研究科/京都大学経済研究所連携グローバ
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岩田弘三,2008,
経済効果に関する実証研究(大総センターものぐらふ
No.9)』東京大学大学総合教育研究センター,
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――――,2009,
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『専門学校の教育とキャリア形成――進学・学び・卒業後』大月書店。
浦田広朗,2009,
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「地域移動:雇用ポテンシャルと学歴別新卒移動」雇用能力開発機構・統計研究会『就
- 155 -
業環境と労働市場の持続的改善に向けた政策課題に関する調査研究報告書』
,pp. 136-218.
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「専門学校教育に対する卒業生の評価」小方直幸編『専門学校教育と卒業生のキャリア
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』広島大学高等教育研究開発センター,pp. 48-58.
「発展と職業教育――問題点の整理」米村明夫編『教育開発――政策と現実』アジア経
金子元久,2001,
済研究所。
『若者と初期キャリア――「非典型」からの出発のために』勁草書房。
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――――,2012,
「グローバル化の下でのわが国の人材育成の課題――非グローバル人材に着目して」樋
口美雄・財務省財務総合政策研究所編著『国際比較から見た日本の人材育成――グローバル化に対応
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雇用政策研究会,2014,
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の好循環を目指して』厚生労働省。
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査研究報告――多様な学習機会の充実と教育の質向上等に向けて」
。
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「専修学校教育に対する
財政措置の在り方等に関する論点整理――国と地方の財政上の役割分担等について」
。
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『日本労働研究雑誌』No. 542,pp. 70-80.
寺田盛紀,2009,
『日本の職業教育――比較と移行の視点に基づく職業教育学』晃洋書房。
濱中淳子,2009,「専修学校卒業者の就業実態――職業教育に期待できる効果の範囲を探る」『日本労働
研究雑誌』No. 588,pp. 34-43.
濱中義隆,2008,
「高等教育拡大過程における『非大学型』高等教育機会の役割と変容――専門学校の制
度化と定着に着目して」中村高康編『2005 年 SSM 調査シリーズ 6 階層社会の中の教育現象』2005
年 SSM 調査研究会,pp. 49-67.
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「企業における人材育成」樋口美雄・財務省財務総合政策研究所編著『グローバル社会の
人材育成・活用――就学から就業への移行課題』勁草書房,pp. 121-142.
「奨学金が学生生活に与える影響」小林雅之編著『奨学金の社会・経済効果に関する実
藤森宏明,2008,
証研究(大総センターものぐらふ
No.9)
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――――,2009,
「奨学金が生活時間におよぼす影響――アルバイトと学習時間に着目して」
『平成 21 年
度先導的大学改革推進委託事業
高等教育段階における学生への経済的支援の在り方に関する調査
研究報告書』東京大学,pp. 278-296.
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「専門学校の発展と高等教育の多様化」
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――――,2009,
「専門学校と高等職業教育の体系化」
『大学論集』第 40 集,pp. 199-215.
<付図> 日本学生支援機構奨学金の受給率
出身地を区別して、日本学生支援機構奨学金の受給率(第一種、第二種のいずれか又は両方
- 156 -
を受けている割合)を算出した。図 6A-1 は 2009 年「学生生活に関する基礎調査(専修学校専
門課程)
」より作成した(図中の括弧内はケース数。25 歳未満のみ。海外在住又は出身を除く)。
日本学生支援機構の奨学金について知っているかを尋ねた設問と、受給状況を尋ねた設問との
両方(問 16、問 19)から作成した変数に基づく。
図 6A-2 は、2010 年「学生生活調査」より作成(図中の括弧内はケース数。25 歳未満のみ。
4 年制昼間部のみ。医・歯系を除く。海外在住又は出身を除く)
。受給率は問 14 に基づく。
100.0
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
53.8
47.5
32.3
53.4
41.9
37.6
46.8 52.8
33.1
61.7
49.7
38.7
10.0
0.0
(%)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(843) (273) (772) (1077) (682) (762) (1291) (558) (1476) (1568) (1186) (992)
自宅
自宅外
自宅
男子
自宅外
女子
図 6A-1 私立専門学校生の JASSO 奨学金受給率(男女別・通学形態別・出身地別)
100.0
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
53.4 48.4
45.0
40.3
64.4
47.5
37.1
48.4 50.3 45.7
59.2
51.3
10.0
0.0
(%)
東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部 東京圏 京阪神 外縁部 中間部 外縁部 中間部
(997) (408) (310) (571) (438) (850) (999) (440) (324) (665) (422) (748)
自宅
自宅外
男子
自宅
自宅外
女子
図 6A-2 私立大学生の JASSO 奨学金受給率(男女別・通学形態別・出身地別)
- 157 -
第7章 私立専門学校生の経済状況の変化
—経済的ショックを挟んだ H19 年・H21 年調査の比較—
中野
日下田
啓太(東京大学大学院)
岳史(日本学術振興会特別研究員)
1. 本報告の目的
本報告の目的は、大きく 2 つに分けられる。第一に、平成 20 年に生じた経済的ショックによ
る専修学校専門課程(以下、専門学校)の生徒の家計(家庭からの給付額やアルバイト収入等)
の変化・奨学金受給状況の変化の有無を把握することである(2 節)
。第二に、それらの基礎的
事実に基づき、専門学校生徒の本分であるところの学修状況と奨学金との関係を明らかにする
ことである(3 節)。
本報告では、世代効果はないとの仮定に基づき、時代効果を取り出そうと試みる。時代効果
をもたらした主な要因として、本報告では平成 20 年に発生した世界的な経済的ショックを想定
する。その他の要因も想定されるが、ここでは捨象して考えることとしたい。
本報告で用いるデータは、
「日本学生支援機構(JASSO)による専門学校生を対象とする調査」
の平成 19 年実施分(以下、H19 年調査)及び平成 21 年実施分(以下、H21 年調査)である。
分析に当たり、我々は特に次の 4 点に留意した。
第一に、本報告が分析の対象とする専門学校は私立に限定した。これは、使用データのサン
プリングの方法が学校設置者別に異なることに加え、国公立専門学校に所属する生徒のサンプ
ルサイズが小さいことによる措置である。
第二に、本報告の一部の分析では、特に 22 歳以下の生徒を対象に分析を行った。専門学校は、
高校卒業者が直ちに進学する短期高等教育機関としての側面と、いわゆる社会人が就労等に役
立つ教育を求めて進学する生涯学習機関としての側面を併せ持っている。専門学校生徒に対す
る経済的支援策の在り方を検討しようとするとき、保護者が積極的に教育費を負担しようとす
る志向が強い我が国の特徴1を踏まえて、専門学校生徒の家計の現状は、生徒の属性(社会人か
否か)別に把握される必要がある。本報告では、22 歳以下の生徒を高校卒業後直ちに進学した
生徒として操作的に定義し、分析を行った。いわゆる社会人学生については、データの特性上、
主たる対象とはしない。社会人学生の家計等の実態については、第8章の谷田川報告を参照さ
れたい。
第三に、本来、専門学校は学科及び学校規模が多様であることに留意する必要がある。だが、
学科等の多様性を踏まえた分析に入る前に、本報告では基礎的事項を概観することにより、専
門学校生徒の家計の平均的な姿を、生徒の属性別に明らかにすることを目指した。例えば看護
- 158 -
学科では病院奨学金が充実しているため、ある特定の機関への就職が義務付けられる代わりに
授業料が実質的に免除されることもしばしばである。他方で、学科によっては業界の特性等か
ら就職自体が必ずしも容易ではなかったり、学校によってはいわゆる社会人学生がほとんどい
ないこと、さらには貸金業者と提携して民間ローンの情報提供を(積極的かどうかは別として)
行っているなどという事例もある。換言すれば、専門学校の生徒の家計の現状を捉えようとす
る作業は、学科等の多様性のため、各論に迷い込みやすい。
第四に、H19 年調査と H21 年調査の各データ間で、JASSO による欠損値処理の方法が異なっ
ている。H19 年はすべての設問に回答した生徒のみが集計対象とされているが、H21 年では一
部の設問に無回答の生徒も集計対象に含まれている2。
なお、専門学校では「学生」という用語も一般に使われているが、ここでは法律用語に準拠
して「生徒」という用語を用いる。
2. 生徒の家計の変化・奨学金受給の変化
分析に際し、家計の状況をわかりやすく表現するために、生徒を所得階層別に 5 つのグルー
プに分類した。それぞれのグループには、所得が少ない方から並べて 20%ずつが割り当てられ
ている。つまり、第Ⅰ五分位は最も低所得の家庭の生徒で、第Ⅴ五分位が最も高所得の家庭の
生徒である。「世帯の所得合計額」を順序尺度変数化したところ、以下の結果が得られた。
表 7-1 【H19 年・私立】
「家庭の年間所得総額」
(年額、万円)の五分位
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
0~400 未満
400~500 未満
500~700 未満
700~900 未満
900~
(29.6%)
(14.2%)
(22.2%)
(16.9%)
(17.2%)
※H19 年調査では、
「世帯の所得合計額」がカテゴリカルな変数であり、同一の回答値をとるケー
スが多数みられる。ゆえに、正確に 20%ずつ分類できている訳ではない点に留意されたい。
表 7-2 【H21 年・私立】
「世帯の所得合計額」
(年額、万円)の五分位
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
0~300
301~480
481~600
601~830
831~
(22.5%)
(17.8%)
(20.5%)
(19.3%)
(19.9%)
- 159 -
2-1 生計維持者
97%
22歳以下(n=5588)
3%
88%
23~29歳(n=745)
12%
64%
30~39歳(n=265)
36%
47%
40歳以上(n=60)
53%
6%
94%
合計(n=6658)
0%
20%
40%
本人以外
60%
80%
100%
本人
図 7-1 【H19 年・私立】年齢コーホート×生計維持者
=856.248, V=.359, p=.000)
分布の差の検定(
97%
22歳以下(n=14025)
1%
2%
83%
23~29歳(n=2124)
11% 6%
47%
30~39歳(n=953)
30%
14%
40歳以上(n=218)
41%
23%
45%
92%
合計(n=17320)
0%
20%
40%
父または母
本人
4%4%
60%
80%
100%
その他
図 7-2 【H21 年・私立】年齢コーホート×生計維持者
分布の差の検定(
=5089.738, V=.383, p=.000)
まず生計維持者について確認する。22 歳以下の生徒の生計維持者は、本人以外が極めて高い
値を示している。このことに経年変化はみられない。30 歳以上の生徒において、生計維持者が
本人である割合が減少していることが読み取れる。ただし、ケース数が限定されているため、
断定することは難しい。
2-2 年齢コーホート別・世帯所得の分布(生計維持者が本人以外の場合)
続いて、世帯所得(合計額)の検討に移る。ただし、世帯所得合計額の意味合いは、本人の
年齢及び生計維持者により異なってくると予想される。そこでまず、生計維持者が父又は母(本
- 160 -
人以外)の場合に限定して、生徒の家計を確認する。
28%
22歳以下(n=5428)
15%
23%
23~29歳(n=654)
12%
0%
第Ⅰ五分位
11%
4%
28%
合計(n=6279)
26%
16%
39%
40歳以上(n=28)
第Ⅱ五分位
18%
14%
15%
20%
16%
19%
34%
30~39歳(n=169)
18%
25%
18%
40%
第Ⅲ五分位
60%
18%
80%
第Ⅳ五分位
100%
第Ⅴ五分位
図 7-3 【H19・私立】年齢コーホート×世帯所得五分位(生計維持者が本人以外の場合)
分布の差の検定(
22歳以下(n=11128)
19%
23~29歳(n=1509)
18%
13%
22%
14%
69%
0%
20%
第Ⅱ五分位
40%
第Ⅲ五分位
60%
14%
7% 7%
21%
21%
18%
19%
合計(n=13070)
第Ⅰ五分位
32%
17%
14%
40歳以上(n=29)
20%
21%
18%
30%
30~39歳(n=404)
=57.127, V=.055, p=.000)
80%
第Ⅳ五分位
100%
第Ⅴ五分位
図 7-4 【H21・私立】年齢コーホート×世帯所得五分位(生計維持者が父又は母の場合)
分布の差の検定(
=221.709, V=.075, p=.000)
H19 年調査・H21 年調査を通じて以下のことが読み取れる。すなわち、生徒の年齢が 30 代
を超えると、親が定年を迎えようとするのに伴い、低所得層(第Ⅰ~Ⅱ五分位)が増加する傾
向が顕著である。他方で、23~29 歳の生徒に注目すると、親の所得水準の高さを反映してのこ
とだと推測されるが、高所得層(第Ⅴ五分位)の生徒が統計的に有意に多い(調整残差の検定
p<.05)。
2-3 年齢コーホート別・世帯所得の分布(生計維持者が本人の場合)
ここでは、生計維持者が本人の場合に限定して分析した。どの年代も過半数が、第Ⅰ五分位
となっている。ただし、H19 年調査の 22 歳以下の生徒に着目した場合、第Ⅰ五分位の生徒は
- 161 -
44%にとどまっている。データの信頼性に課題があるのかもしれない。
22歳以下(n=160)
23~29歳(n=91)
30~39歳(n=96)
40歳以上(n=32)
合計(n=379)
44%
14%
10%
17%
8%
6%
13%
7%
4% 2%
3%
9% 6%
10%
7%
11%
70%
81%
72%
62%
0%
第Ⅰ五分位
20%
第Ⅱ五分位
40%
第Ⅲ五分位
60%
80%
第Ⅳ五分位
100%
第Ⅴ五分位
図 7-5 【H19 年・私立】年齢コーホート×世帯所得五分位(生計維持者が本人の場合)
分布の差の検定(
22歳以下(n=105)
23~29歳(n=197)
30~39歳(n=251)
40歳以上(n=81)
合計(n=634)
=47.188, V=.204, p=.000)
81%
83%
77%
57%
16%
77%
0%
第Ⅰ五分位
20%
第Ⅱ五分位
40%
第Ⅲ五分位
60%
4%
2% 6%
10% 2%2%
15%
2%1%
5% 14%
12%
2% 4%
80%
第Ⅳ五分位
100%
第Ⅴ五分位
図 7-6 【H21 年・私立】年齢コーホート×世帯所得五分位(生計維持者が本人の場合)
分布の差の検定(
=51.139, V=.164, p=.000)
2-4 収支(サンプルサイズの問題で、22 歳以下かつ定職を持たない生徒について集計)
ここから、所得分位別に、生徒の収入及び支出額を費目別に検討していく。
①
収入
すべての所得分位において、家庭給付額が 30〜40 万円程度減少している。私立大学生の家庭
給付額の変化を参考のために確認しておきたい(ただし、調査年が異なるので厳密性を欠く)。
日本学生支援機構『学生生活調査』によれば、およそ 25 万円減少している(1,559,900 円(H20
年)→1,308,700 円(H22 年))
。
専門学校の生徒の話に戻す。JASSO 奨学金受給額はどの所得分位でもおおむね増加しており、
JASSO 以外の奨学金受給額もおおむね増加している。他方で、アルバイト収入額に所得分位差
- 162 -
がほとんどみられないことは、注目に値する。もしアルバイトに割くことができる時間に制約
がない場合、低所得分位の生徒は必要に迫られてアルバイト収入額が高くなると予想される。
しかし、実際にはアルバイトに割ける時間には上限があるため、結果としてアルバイト収入の
平均値に所得分位別格差がみられなくなっているものと推測される。
表 7-3 【H19 年・私立】所得分位別
1 年間の収入(5%トリム平均値、千円)
301
0
22
1,900
第Ⅱ五分位(n=808)
1,128
356
1
302
0
22
1,895
第Ⅲ五分位(n=1277)
1,252
282
0
302
0
25
1,996
第Ⅳ五分位(n=946)
1,352
197
0
283
0
24
1,990
第Ⅴ五分位(n=904)
1,506
86
0
333
0
22
2,088
合計(n=5460)
1,213
287
0
304
0
23
1,979
表 7-4 【H21 年・私立】所得分位別
合計
8
その他
以外の奨学金
433
定まった仕事
の収入
奨学金
969
J
A
S
S
O
アルバイト
家庭給付
第Ⅰ五分位(n=1525)
J
A
S
S
O
1 年間の収入(5%トリム平均値、千円)
アルバイト
27
184
0
23
1503
第Ⅱ五分位(n=1049)
767
446
15
214
0
31
1673
第Ⅲ五分位(n=1160)
927
315
6
204
0
19
1640
第Ⅳ五分位(n=1209)
935
279
8
195
0
19
1603
第Ⅴ五分位(n=1067)
1109
130
3
226
0
27
1658
合計(n=6027)
857
318
11
204
0
22
1597
合計
以外の奨学金
476
その他
奨学金
586
J
A
S
S
O
定まった仕事
の収入
家庭給付
第Ⅰ五分位(n=1055)
J
A
S
S
O
※集計対象には、JASSO 奨学金を受けていない生徒や、アルバイトをしていない生徒も含まれ
ている。
アルバイト収入額について H19 年と H21 年を比較すると、その収入額には減少がみられる。
- 163 -
他方、アルバイト時間数にはほとんど変化がみられなかった(図表は省略)。アルバイト収入額
が減少した要因としては、アルバイト従事者比率の減少やアルバイト時給単価の減少等が想定
される。しかし、ここでその要因をつまびらかにすることは難しいため、アルバイト収入額の
減少に対する解釈には慎重を期する必要がある。
収入額の合計値の経年変化をみてみると、すべての所得分位において合計収入額が減少して
いることがわかる。収入の合計額には、いずれも所得分位別に実質的な差があまりみられない。
H21 年については、第Ⅰ五分位の生徒は、他の生徒に比して年収が 10 万円程度少ない。第Ⅰ~
Ⅱ五分位の生徒は家庭給付額が少ないが、その穴を埋める役割を JASSO 奨学金が果たしている
様子がうかがわれる。
②
支出
支出合計額に目を移す。すると、すべての所得分位で減少していることがわかる。特に減少
している支出費目は、授業料、食費及び娯楽費である。授業料支出の減少をもたらした要因と
して想定されるのは、授業料の規定額自体は変化していないと仮定すると、授業料の減免又は
滞納であろう。一方で住居・光熱費は増加しているが、集計対象には自宅居住者とアパート居
住者等の双方が含まれているため、住居・光熱費の解釈は慎重に行う必要がある。
- 164 -
表 7-5 【H19 年・私立】所得分位別
合
計
( n=546 0)
714
210
85
1
65
105
92
26
78
95
1,593
731
232
78
1
65
113
108
26
91
91
1,661
733
247
84
1
73
106
103
29
93
97
1,697
744
254
85
1
73
111
116
32
98
98
1,742
787
222
86
2
66
137
114
33
110
106
1,803
738
232
84
1
68
113
104
29
92
97
1,687
表 7-6 【H21 年・私立】所得分位別
合
計
(n=5427)
637
216
88
4
59
86
95
24
67
78
1484
658
236
94
6
60
99
141
26
78
83
1610
686
225
90
4
57
96
138
27
86
80
1618
670
241
90
5
66
98
118
28
89
84
1616
684
238
91
7
67
108
126
31
107
88
1679
668
229
90
5
62
98
122
27
85
82
1599
- 165 -
合計
(n=978)
その他
第Ⅴ五分位
娯 楽 費
等
(n=1094)
保健
衛生費
第Ⅳ五分位
住居・
光熱費
(n=1066)
食費
第Ⅲ五分位
1 年間の支出(5%トリム平均値、千円)
通学費
(n=937)
課外
活動費
第Ⅱ五分位
修学費
(n=930)
学校
納付金
授業料
第Ⅰ五分位
合計
(n=904)
その他
第Ⅴ五分位
娯 楽 費
等
(n=946)
保健
衛生費
第Ⅳ五分位
住居・
光熱費
( n=127 7)
食費
第Ⅲ五分位
通学費
(n=808)
課外
活動費
第Ⅱ五分位
修学費
( n=152 5)
学校
納付金
授業料
第Ⅰ五分位
1 年間の支出(5%トリム平均値、千円)
2-5 JASSO 奨学金受給率
①
JASSO 奨学金を「知らない」人の比率
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
52%
第Ⅴ五分位
71%
50%
50%
45%
45%
41%41%
41%
40%
36%
35%
35%
37%
31%
29%
30%
33%
26%
20%
30%
29%
27%
25% 23%
20%
39%
36%
38%
23%
18%
15%
10%
5%
0%
0%
22歳以下
23~29歳
30~39歳
40歳以上
合計
図 7-7 【H19 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
JASSO 奨学金を「知らない」人の比率
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
50%
45%
38%
40%
35%
30%
25%
20%
30%
26%
21% 19%
36%
33%
30% 32% 32%
24%
23%
18%
18% 17%
15%
20%
19%
19%
15%
29%
25%
26%
15%
19%
19%
10%
5%
0%
22歳以下
23~29歳
30~39歳
40歳以上
図 7-8 【H21 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
JASSO 奨学金を「知らない」人の比率
- 166 -
合計
すべての所得分位において、JASSO 奨学金の認知度が高まっていた。
②
JASSO 奨学金を知っている生徒に占める、第 1 種奨学金のみ受給者の比率
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
60%
50%
40%
30%
20%
20%
18%
12%
9%
7%
4%
10%
9%8%8%
4%4%
11%
13%
0%0% 0%
0%0%0%0%0%
11%
9%
6%
4%
0%
22歳以下
23~29歳
30~39歳
40歳以上
図 7-9 【H19 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
合計
第 1 種奨学金のみ受給者
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
60%
50%
40%
30%
20%
18%
15%
10%
10%
7%
4%
11%
10%
8%
4%
1%
9%
6%6%6%
23~29歳
30~39歳
0%
6%
2%3%0%0%
15%
14%
9%
6%
3%
0%
22歳以下
図 7-10
40歳以上
【H21 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
合計
第 1 種奨学金のみ受給者
すべての所得分位において、JASSO 奨学金を知っている生徒に占める第 1 種奨学金受給者の
- 167 -
比率は、ほとんど変化していなかった。
③
JASSO 奨学金を知っている生徒に占める、第 2 種奨学金のみ受給者の比率
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
54%
52%
57%
53%
51%
51%
60%
50%
46%
45%
40%
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
53%
48%
46%
45%
47%
52%
45%
40%
35%
33%
31%
30%
21%
19%
20%
10%
0%0%0%0%
0%
22歳以下
図 7-11
23~29歳
30~39歳
【H19 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
60%
50%
49%51%51%
49%
40%
40歳以上
46%
30%
34%
24%
20%
32%
第Ⅴ五分位
54%
48%49% 48%
44%45%
39%
38%
33%
第 2 種奨学金のみ受給者
第Ⅳ五分位
52%
合計
46%
36%
31%
23%
20%
13%
12%
10%
0%
22歳以下
図 7-12
23~29歳
30~39歳
40歳以上
【H21 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
合計
第 2 種奨学金のみ受給者
JASSO 奨学金を知っている生徒に占める第 2 種奨学金受給者比率はほとんど変化していない。
- 168 -
④
JASSO 奨学金受給率(第 1 種のみ)
奨学金を知る生徒の人数
受給率=
生徒数
受給者数
×
奨学金を知る生徒の人数
(年齢コーホート別・所得分位別に計算)
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
50%
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
15%
14%
8%
6%
10%
5%
4%
2%
7%6%
5%
3%2%
0%0% 0% 0%0%0%0% 0%
0%
22歳以下
図 7-13
23~29歳
9%
9%
30~39歳
40歳以上
【H19 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
8%
6%
4%
2%
合計
奨学金受給率(第 1 種のみ)
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
50%
45%
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
14%
12%
8%9%
7%
5%
2%
12% 11%
7%
3%1%
8%
5%5%4%
2%2%
0%0%
0%
0%
22歳以下
図 7-14
23~29歳
30~39歳
40歳以上
【H21 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
- 169 -
4%
7%
4%
2%
合計
奨学金受給率(第 1 種のみ)
22 歳以下の生徒について、第Ⅰ五分位の受給率(第1種のみ)はほとんど変化していないが、
第Ⅱ〜Ⅳ五分位の受給率は微増していることが読み取れる。これは、
JASSO 奨学金の認知度が、
後者において上昇したことによると考えられる。
⑤
JASSO 奨学金受給率(第 2 種のみ)
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
41%
37%36%
38%
40%
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
50%
45%
40%
35%
30%
37%
35%
33%
32%
29%
27%
27%
24%
25%
17%
17%
20%
36% 37%
33%
16%
14%
13%
15%
10%
5%
0%0%0% 0%
0%
22歳以下
図 7-15
23~29歳
30~39歳
【H19 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
第Ⅰ五分位
第Ⅱ五分位
第Ⅲ五分位
50%
45%
40%
35%
40歳以上
奨学金受給率(第 2 種のみ)
第Ⅳ五分位
第Ⅴ五分位
44% 44%
41%
39% 38%
38%
34%
30%
39% 40%
36%
37%36%
32%32%
33%
26%
25%
合計
24%
24%
20%
20%
20%
16%
14%
16%
15%
10%9%
10%
5%
0%
22歳以下
図 7-16
23~29歳
30~39歳
40歳以上
【H21 年・私立】年齢コーホート別・所得分位別
- 170 -
合計
奨学金受給率(第 2 種のみ)
22 歳以下の生徒について、第 2 種奨学金受給率は、第 1 種奨学金受給率と類似の傾向がみら
れるが、第Ⅰ五分位の受給率も微増している点が異なる。
3. 奨学金と授業外の学修状況との関連
学生・生徒に対する経済的支援制度には、(1)高等教育機会の均等、(2)学生生活の充実
に資することにより学業の達成を支援することという、二つの役割が期待されている(小林編
2012, p.3)。本節では後者を念頭に置いて、専門学校生徒が受給する奨学金の役割について実証
的に検討する。経済的な厳しさのためアルバイトに多くの時間を割くことを余儀なくされ、そ
の結果として学修の質を確保できないとすれば、このような流れを断ち切るのが奨学金に課せ
られた役割である。奨学金がこのような役割を果たしているか実証的に明らかにすることは、
重要な課題である。問題は学修の質をどのように計測するかにある。試みに授業外の学修時間
からアプローチすることとしたい。学修の質と授業外の学修時間との関係は、3-4 で述べる。
まず、1 週間当たりの授業外の学修時間を五分位に分割する。ここでいう「授業外の学修時間」
とは、H19 年調査では「授業関連の学習時間」と「授業外の学習時間」を合成した変数を指す。
H21 年調査では「学校の授業以外の勉強時間」を指す。
3-1 授業外の学修時間
授業外の学修時間を五分位に分割したところ、以下の結果が得られた。授業外の学修時間の
五分位は、前節で用いた所得五分位との混同が生じないよう、かつ、順序が直ちに分かるよう、
表現を工夫した3。
表 7-7 【H19 年・私立】授業外の学修時間(最近 1 週間、時間)
とても短い
やや短い
ふつう
やや長い
長い
0~1
2~5
6~9
10~16
17~
表 7-8 【H21 年・私立】授業外の学修時間(最近 1 週間、時間)
とても短い
やや短い
ふつう
やや長い
長い
0~1
2~5
6~10
11~15
16~
- 171 -
3-2 奨学金受給と授業外の学修時間(サンプルサイズの問題で、22 歳以下の生徒について集計)
第1種のみ(n=241)
22%
21%
第2種のみ(n=561)
18%
26%
両方(n=101)
14%
27%
申請中または申請予定(n=5) 0%
40%
申請したが不採用(n=22)
18%
14%
希望するが申請しなかった(n=71) 9%
32%
必要なかった(n=218)
29%
18%
合計(n=1219)
20%
24%
0%
とても短い
図 7-17
20%
やや短い
22%
18%
17%
60%
23%
24%
23%
21%
40%
ふつう
23%
22%
35%
60%
やや長い
0%
23%
18%
14%
21%
80%
100%
長い
【H19 年・私立】
《22 歳以下かつ世帯所得が第Ⅰ五分位の生徒》
奨学金受給×授業外の学修時間
※JASSO 奨学金を知らなかった生徒は、集計に含まれていない。
分布の差の検定(
16%
第1種のみ(n=270)
23%
18%
第2種のみ(n=704)
15%
30%
検討したが未申請(n=91)
15%
31%
31%
希望したが不採用(n=21)
19%
合計(n=1453)
20%
0%
とても短い
図 7-18
13%
27%
両方(n=109)
未申請(n=258)
=56.724, V=.108, p=.000)
11%
12%
23%
23%
9%
14%
26%
やや短い
17%
13%
24%
20%
19%
11%
40%
ふつう
60%
やや長い
10%
19%
14%
18%
80%
100%
長い
【H21 年・私立】
《22 歳以下かつ世帯所得が第Ⅰ五分位の生徒》
奨学金受給×授業外の学修時間
※JASSO 奨学金を知らなかった生徒は、集計に含まれていない。
分布の差の検定(
=46.638, V=.090, p=.001)
22 歳以下かつ世帯所得が第Ⅰ五分位の生徒について、JASSO 奨学金の未申請の生徒(必要な
かった生徒)は、他の生徒と比較して、授業外の学修時間が「とても短い」生徒が統計的に有
意に多い(調整残差の検定
p<.05)。
- 172 -
第1種のみ(n=70)
16%
20%
第2種のみ(n=308)
20%
28%
両方(n=28)
25%
14%
申請中または申請予定(n=2) 0%
50%
申請したが不採用(n=14)
29%
29%
希望するが申請しなかった(n=41)
20%
34%
必要なかった(n=110)
28%
26%
合計(n=573)
22%
27%
0%
とても短い
図 7-19
20%
やや短い
33%
20%
19%
18%
7%
21%
50%
0%
21%
14%
10%
27%
20%
14%
20%
18%
40%
ふつう
60%
やや長い
80%
100%
長い
【H19 年・私立】
《22 歳以下かつ世帯所得が第Ⅱ五分位の生徒》
奨学金受給×授業外の学修時間
※JASSO 奨学金を知らなかった生徒は、集計に含まれていない。
分布の差の検定(
15%
10%
18%
12%
11%
10%
11%
25%
17%
27%
20%
24%
9%
26%
22%
26%
28%
14%
29%
26%
21%
第1種のみ(n=218)
第2種のみ(n=693)
両方(n=78)
検討したが未申請(n=96)
未申請(n=265)
希望したが不採用(n=21)
合計(n=1371)
0%
とても短い
図 7-20
=32.746, V=.120, p=.110)
20%
やや短い
40%
ふつう
60%
やや長い
20%
19%
18%
20%
14%
14%
18%
80%
100%
長い
【H21 年・私立】
《22 歳以下かつ世帯所得が第Ⅱ五分位の生徒》
奨学金受給×授業外の学修時間
※JASSO 奨学金を知らなかった生徒は、集計に含まれていない。
分布の差の検定(
=30.441, V=.075, p=.063)
世帯所得が第Ⅱ五分位以上の生徒の場合(図は一部省略)、JASSO 奨学金の受給状況と授業
外の学修時間との間に統計的に有意な関連は見られなかった(有意水準 5%)
。
3-3 授業外の学修時間とアルバイト
- 173 -
表 7-9 【H19 年・私立】アルバイトの年間収入額
(年齢コーホート別・授業外の学修時間分位別、千円、5%トリム平均値)
とても短い
やや短い
ふつう
やや長い
長い
22 歳以下
336
334
297
291
210
23~29 歳
559
620
498
552
422
30~39 歳
358
437
422
553
465
40 歳以上
—
315
506
349
273
344
353
318
336
247
合計
※集計対象には、アルバイトをしていない生徒も含まれている。
表 7-10
【H21 年・私立】アルバイトの年間収入額
(年齢コーホート別・授業外の学修時間分位別、千円、5%トリム平均値)
とても短い
やや短い
ふつう
やや長い
長い
22 歳以下
306
284
253
211
173
23~29 歳
486
484
395
404
328
30~39 歳
373
459
390
452
265
40 歳以上
412
401
321
359
279
合計
317
308
278
252
205
※集計対象には、アルバイトをしていない生徒も含まれている。
全体として、授業外の学修時間が短い生徒ほどアルバイトの年間収入額が高いという傾向が
みられる。
3-4 JASSO 奨学金受給と学修の質との関連に対する間接的アプローチ
学修時間が「とても短い」生徒とは、授業外の学修時間が最近 1 週間で 1 時間以下の生徒を
指す。もちろん、学修時間と学修の質は同じものではない。しかし、授業外の学修時間が 1 週
間で 1 時間以下の生徒の学修の質には問題があると仮定しても、不自然ではないだろう。この
ような仮定を認めるとき、これまでの分析をふまえて次のような仮説を提起することができる。
すなわち、「JASSO 奨学金には学修の質を底上げする効果がある。ただし、次の二点に注意す
る必要がある。第一に、ここでいう『効果』は厳密な意味での効果ではなく、疑似相関の影響
が完全に排除されたものではない。第二に、当該効果は家計水準が厳しい生徒について顕著に
- 174 -
生じる(世帯の所得合計額との交互作用がある)
」と予測される。
結論を先取りすれば、H21 年では仮説が部分的に支持されたが、H19 年では仮説は支持され
なかった。以下では、H21 年の分析結果を示す。続いて、仮説の検証結果が H19 年と H21 年
との間で異なる理由について考察する。
仮説
授業外の学修時間が 1 週間で 1 時間以下の生徒の学修の質には問題があるとの仮定のもと、
次の仮説を検証する。
「JASSO 奨学金には学修の質を底上げする効果がある。ただし、次の二点に注意する必
要がある。第一に、ここでいう『効果』は必ずしも厳密な意味での効果ではない。第二に、
当該効果は家計水準が厳しい生徒について顕著に生じる(家計水準との交互作用がある)
」
従属変数
授業外の学修時間が「とても短い」ダミー(基準は、
「とても短い」以外)
。
独立変数
世帯の所得合計額
家庭からの給付額
JASSO 奨学金受給(基準は、
「JASSO 奨学金は非受給」
)
第 1 種受給ダミー
第 2 種受給ダミー
第 1 種・第 2 種受給ダミー
世帯の所得合計額×第 1 種受給ダミー(モデル 1)
世帯の所得合計額×第 2 種受給ダミー(モデル 2)
世帯の所得合計額×第 1 種・第 2 種受給ダミー(モデル 3)
学校の授業料減免ダミー(基準は、
「学校の授業料減免を受けていない」)
推計方法
- 175 -
二項ロジスティック回帰分析を行う。ここでは、連続変数であるところの授業外の学修時間
を従属変数として回帰分析(OLS)を行うというアプローチを、あえてとらないものとする。
本来検討したい変数は学修の質であって、授業外の学修時間はその代理変数である。ところが、
授業外の学修時間をそのまま連続量として用いると、学修の質を測るための代理変数として妥
当性を欠くおそれが生じる。授業外の学修時間が長ければ長いほどほど学修の質が高いという、
不自然な仮定を置かざるをえないためである。この問題を回避するため、より適切だと思われ
る仮定(
「授業外の学修時間が 1 週間で 1 時間以下の生徒の学修の質には問題がある」
との仮定)
を設定の上、二項ロジスティック回帰分析を行うことが妥当だと判断した。
分析対象となるサンプル
23 歳未満、かつ、世帯の所得合計額が 2000 万円未満、家庭からの給付額が 2000 千円未満、
かつ、週当たりアルバイト時間が 40 時間未満、かつ、JASSO 奨学金について知っている生徒
に限定した。これは、いわゆる社会人学生を分析対象外とし、かつ、外れ値を除外することを
意図するものである。
H21 年のサンプルに基づく推計結果
表 7-11
【H21 年・私立】
《モデル 1》授業外の学修時間が「とても短い」こととの関連
(二項ロジスティック回帰分析)
B
標準誤差
Exp(B)
有意確率
世帯の所得合計額(0-1937万円)
.000
.000
1.000
.402
家庭からの給付額(0-1999千円)
.000
.000
1.000
.481
第1種受給ダミー
-.708
.241
.493
.003
第2種受給ダミー
-.287
.077
.751
.000
第1種・第2種受給ダミー
-.737
.219
.478
.001
.001
.000
1.001
.115
.081
.150
1.084
.590
-1.016
.111
.362
.000
JASSO奨学金受給(基準は「非受給」)
世帯の所得合計額×第1種受給ダミー
学校の授業料減免ダミー
定数
n=5093, NagelkerkeR = .008
- 176 -
JASSO 奨学金の効果は家計水準が厳しい生徒について顕著に生じるという仮説は、支持され
なかった。他方、JASSO 奨学金の受給者は、非受給者と比べて、授業外の学修時間が「とても
短い」になりづらい傾向があることが分かった。JASSO 奨学金の受給は、学修の質を底上げす
る可能性があるのかもしれない。ただし、このことはあくまでも試論的に提示できるに過ぎず、
厳密な推計結果に裏付けられたものではない。
モデル 2 及びモデル 3 の推定値の表示は省略するが、その結果はモデル 1 と同様であったこ
とを付言しておく(交互作用項は統計的に有意ではなかった)
。
H19 年と H21 年の推計結果の比較―奨学金を受給するということの意味の変化?―
上で行ったものと同様の推計を、H19 年のデータを用いて行ったところ、仮説は支持されな
かった。H19 年と H21 年との間で、JASSO 奨学金受給と学修の質との関連の仕方が異なって
いるという可能性を指摘することができる4。その理由について試論的に考察すれば、次のよう
に言えるかもしれない。鍵となるのは、奨学金を受給することの意味合いが、経済的ショック
を経て変化したという可能性である。
経済的にそれほど厳しくない生徒の場合は、かなり複雑な行動をとる場合がある。すなわち、
「奨学金は修学のために絶対不可欠とは言えないまでも、家計の急変等に備えて取りあえず奨
学金を借りておこう」という選択肢が出てくる。この生徒にとって奨学金の役割は、所期の政
策的な期待と完全に合致するとは言えず、当該仮説が必ずしも当てはまるとは予想されない5。
H19 年は経済的ショックの前に当たることから、複雑な行動をとる生徒がいたのではないか。
他方、経済的ショック後の H21 年は、
「取りあえず」借りるのではなく修学に不可欠であるがゆ
えに奨学金を借りる生徒が、より多かったのではないか。つまり、経済的ショックの前後にお
いて、奨学金を受給することの意味合いが変化したのかもしれない。H19 年から H21 年にかけ
て生徒に対する家庭からの給付額が 30~40 万円減少した(表 7-3、表 7-4)ことを踏まえれば、
そのような可能性を指摘することができよう。
このような指摘は推論の域を出ないが、その推論を裏付けるために以下のデータを補足して
おく。JASSO 奨学金を受給しないと仮定した場合の修学状況(JASSO 奨学金受給者のみ)に
関する設問である。
この設問は、奨学金受給の意味するところを生徒の意識から抽出することをねらったものだ
と考えてよいだろう。しかし、H19 年の調査と H21 年の調査で、質問文の表現が大きく変化し
ているため、2 時点間比較を厳密に行うことは難しい。そこで参考のため、各年の回答の選択肢
には緩やかな対応関係があるものと仮定して、JASSO 奨学金を受給することの意味の変化につ
いて検討したい。
- 177 -
修学不可能
修学継続困難
0%
図 7-21
45%
28%
41%
26%
計(n=2783)
36%
30%
10%
33%
38%
18%
第Ⅳ五分位(n=377)
25%
41%
22%
第Ⅲ五分位(n=622)
20%
40%
60%
80%
100%
【H19 年・私立(JASSO 奨学金受給者のみ)
】世帯所得五分位×修学状況
分布の差の検定(
難しい
やや難しい
それほど難しくない
=190.185, V=.151, p=.000)
まったく難しくない
80%
第Ⅰ五分位(n=1824)
17%
75%
第Ⅱ五分位(n=1434)
21%
63%
第Ⅲ五分位(n=1366)
31%
57%
第Ⅳ五分位(n=1096)
36%
68%
計(n=6408)
0%
20%
40%
3%
7%
11%
26%
60%
3%
5%
35%
47%
第Ⅴ五分位(n=688)
図 7-22
20%
44%
25%
第Ⅱ五分位(n=464)
特に問題ない
43%
34%
第Ⅰ五分位(n=1094)
第Ⅴ五分位(n=226)
修学不自由
80%
5%
100%
【H21 年・私立(JASSO 奨学金受給者のみ)
】世帯所得五分位×修学状況
分布の差の検定(
=450.002, V=.153, p=.000)
JASSO が配付している調査票において、奨学金を借りていながらも「(奨学金がなくても)
- 178 -
特に問題ない」
、
「(奨学金がなくても修学継続は)難しくない」と答えるのに躊躇する生徒がい
るであろうことは、想像に難くない。回答分布にはバイアスがかかっているという前提で読み
取れることには限りがあるが、次のような様子をうかがうことができる。
JASSO 奨学金がない場合、
「修学不可能」だ(修学継続困難の程度がもっとも著しい)と答
えた生徒は 26%であったのに対して(H19 年)
、「
(修学継続が)難しい」(就学継続困難の程度
がもっとも著しい)と答えた生徒は 68%にのぼる(H21 年)。経済的ショックを挟んだ 2 か年に
おいて、奨学金を受給することの意味がより切実なものに変化したということが、データに表
れているのかもしれない。もちろん、両年の調査間で質問文が全く同一という訳ではないこと
から、このような解釈は現実を過大評価しているおそれがある。しかし、生徒に対する家庭給
付額の大幅な減少がみられたことを踏まえれば、その解釈が完全に妥当性を欠くとまでは言え
ないだろう。
厳密な推計を目的とするときに解決すべき課題
最後に、奨学金受給の効果をより厳密に推計するための課題を挙げておきたい。JASSO 奨学
金の受給が学修の質の底上げに寄与しているという因果関係を検証しようとするとき、奨学金
の受給に影響を与える変数を適切に考慮しなくてはならない。主な課題は二つある。第一に、
「日
本学生支援機構(JASSO)による専門学校生を対象とする調査」には学力に関する変数が欠け
ていることが挙げられる。奨学生の採用決定基準には学力が含まれている。本節の推計に用い
たモデルから重要な変数が欠落していると言わざるを得ない。第二に、各学校に割り当てられ
た採用可能な奨学生数である。学力や家庭の経済水準等が同等の生徒でも、A 校に進学した場合
と B 校に進学した場合で奨学金受給の可否が異なることが考えられる。
この問題は深刻である。
なぜなら、観察可能なのは A 校に進学した事実のみであり、
「仮に B 校に進学した場合は奨学金
を受給できたかどうか」は観察できない。
以上の課題を乗り越える方法で、技術的には可能だという意味で現実的なものは、JASSO に
提出する奨学金申込書の記載事項を全て、調査票の質問項目として盛り込むことである。そし
て、奨学金申込書の記載内容が同等の生徒群を抽出し、当該群を奨学金受給者と非受給者に二
分する。すると、当該生徒群の奨学金受給の可否を分けたものは、偶然的な要因だと仮定する
ことができる。この仮定を前提に、奨学金受給者と非受給者との間で学修の質に差異があるか
を調べる。この差異がまさに、JASSO 奨学金の受給が学修の質を底上げする効果に相当するも
のと言える。
- 179 -
<注>
1
この特徴は、大学生の授業料を親が負担するのを当然視する「親負担主義」
(矢野
2
2 か年のサンプルを比較するために条件をそろえることは、重要である。そこで、H21 年のサンプルの
2011)と同義である。
欠損値処理方法を、H19 年のそれと合わせるという方法が一案として考えられる。しかしそのような方法
を採ったとしても、H21 年のサンプルに予期せぬバイアスが生じるかもしれない。つまり、H21 年のサン
プルを H19 年のサンプルと比較するための条件が、望ましい方向に改善されると強く期待できるわけでは
ない。そこで、JASSO から提供を受けたサンプルについて特段の欠損値処理を行わないことが次善の策で
あると判断した。
3
「長い」、
「ふつう」等の表現は相対的な関係を示すものである点に留意されたい。
4
サンプルに生じた偏りが推計に影響を与えている可能性を排除することはできない。本文で述べたこと
は、可能性の領域を出るものではない。厳密な推計を行うときに乗り越えるべき課題は、本文の最後で検
討している。
5
政策的に期待されることと生徒の行動が不一致となる理由を多角的に考察するに当たり、荒木(2012)
の研究が参考になる。荒木(2012)は大学生のサンプルを用いて、
「親の利他性と子どもの利己性」
(p.24)
という仮定に基づき、子供の生活費に対する親の経済的負担(利他心の大きさの代理指標)と子供の勉強
時間や求職意識との関連について検討している。荒木(2012)の指摘で興味深いのは、親と同居している
大学生においては親子間で情報対称性が確保されているため、子供の行動を親本人が期待する方向に誘導
することができる(p.24)という点である。学生・生徒の居住形態は、生活費に影響を与える重要な変数
であるばかりでなく、親子の情報の(非)対称性の代理指標として捉えることもできるという考え方は、
参考になる。後者の視点は、期待と現実との(不)一致を説明するために重要な考え方かもしれない。た
だし、荒木(2012)自身も言及しているように、
「親の利他性と子どもの利己性」
(p.24)という仮定が常
に妥当である訳ではないことに留意する必要がある。
<参考文献>
荒木宏子 (2012) 「家庭内所得分配(仕送り・小遣い)が大学生の勉強時間・求職意識に及ぼす影響につ
いての計量分析」, 慶應/京大連携 GCOE プログラム『市場の高質化と市場インフラの総合的設計』
Discussion Paper DP2012-011。
日本学生支援機構
『学生生活調査』各年度。
小林雅之編著(2012) 『教育機会均等への挑戦
授業料と奨学金の 8 カ国比較』東信堂。
矢野眞和(2011) 『「習慣病」になったニッポンの大学―18 歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放』
日本図書センター。
- 180 -
第8章 学校・学生ヒアリング調査からの知見
-経済的に困難な学生、社会人学生の現状-
谷田川
ルミ(芝浦工業大学)
1. はじめに
本章においては、全国の専修学校関係者と学生の双方に対するヒアリング調査の結果か
ら、専修学校に在籍する学生の学生生活の現状を明らかにしていく。とりわけ経済的に困
難な学生や時間的・経済的に負担のかかる社会人学生を中心に調査・分析を行う。
専修学校の学校関係者、学生へのヒアリング調査の先行研究としては植上(2011)があ
るが、主に学校における学びと成長、キャリア形成が論点となっており、学生の生活面、
経済的側面といった視点からの分析は行われていない。本稿においては専修学校生の生活
面に焦点を絞り、同時に行われた質問紙調査の数字の裏側にある「生の声」を拾い上げる
ことで、より実態に即した学生支援策を講じるための基礎的な知見を提示し、今後の学生
支援の方向性を探るための一助となる知見を提示することを目的とする。
表8-1
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
学校
A校
B校
C校
D校
E校
F校
G校
H校
I校
J校
K校
L校
M校
N校
O校
P校
Q校
R校
S校
T校
U校
V校
W校
X校
Y校
ヒアリング調査対象校
立地
北海道
東北
東北
東北
東北
東北
関東
関東
関東
関東
信越
信越
信越
中部
中部
関西
関西
関西
中国
中国
九州
九州
九州
沖縄
沖縄
専門分野
情報
美術、デザイン
ビジネス
動物(ペット)
農業
福祉、医療
工業、情報、デザイン
美術、情報、被服など
医療
美容
ビジネス
農業
服飾、デザイン
電気、情報
調理、服飾
商業、工業
化学
工業
ビジネス
看護
看護、医療
調理、観光
語学、調理
工業、情報
観光
- 181 -
調査は2013年10月~12月にかけて、全国の専修学校25校に対し、学校に対する調査と学
生に対する調査を別々に行った。学校に対しては、事前に筆記形式のアンケート用紙を送
付し記入してもらったものを参考にして、担当の教職員に補足的な質問を行う形式でヒア
リングを行った。学生調査に関しては、事前に学校に対して経済的に困難な学生や社会人
学生数名の選定を依頼した。その結果、1校につき1~5名の学生を対象にヒアリング調査を
実施することができた。具体的な調査対象校の内訳については表8-1に示したとおりである。
なお、本章の調査はヒアリング調査であるため、各学校の学費や就職率、中退率などの
客観的なデータからの知見も挙げられているが、調査協力者である学校の教職員や学生の
視点からの主観的な意見が中心となっている。ヒアリング調査の結果と並行して、適宜、
質問紙調査のデータにも触れているが、質問紙調査の対象者は専修学校の生徒・学生全体
であるのに対して、今回のヒアリング調査は困難をかかえた学生を対象としているため、
質問紙調査から明らかになった実態とは幾分異なった知見も散見されることについてはあ
らかじめ留意いただきたい。
2. 学校調査からの知見
まず、学校関係者(教職員)に対するヒアリング調査の結果を項目別に概観する。
2-1 修学上の必要経費と学生指導の現状
2-1-1 必要経費
専修学校に入学する際にはどのくらいの費用がかかるのだろうか。学校のパンフレット、
事前アンケートをもとに学校関係者にヒアリングを行ったところ、専門分野や学科構成に
もよるが、多くの私立の学校において入学時に100万円以上必要な学校が多くみられた。
中でも、理・工・医系、一部のファッション・デザイン系の学校の学費は130~150万円
近くかかるところもある。学費として納入する以外にも、教材や制作物、資格検定料、実
習費、海外研修の費用などが別途かかるケースも多くみられている。一般的に、専修学校
の学費は四年制大学や短期大学と比べて低額というイメージがあるが、実際は大学や短大
と同等の学費がかかっており、決して安くはないという実態がある。
2-1-2
生徒・学生への指導状況
専修学校の学生指導については、40~50人程度のクラス編成で担任制をとっている学
校が多い。担任の教員は学生の学習、進路、生活指導を行って学生生活全般にわたってき
め細かくサポートし、保護者とも密な連携をとっているとのことであった。特に学生の出
欠については多くの学校において、担任教員が毎日チェックしており、長期欠席者を出さ
- 182 -
ない配慮をしているとの回答が多く得られている。このように、専修学校においては担任
教員の役割が非常に重要なものとなっており、学生にとっては生活、学習両面において一
番身近な支援の担い手となっている。
また、一部の学校ではこうした「面倒見の良さ」を学校の広報戦略として、外部にアピ
ールしているケースもみられる。
2-2 学生生活と就学状況について
2-2-1 学生の特徴
次に、最近の自校の学生の特徴について、各学校の教職員からは以下のような回答が得
られた。まず、ほとんどの学生が卒業後の進路として就職を希望しており、そのために資
格を取りたいと強く希望しているということである。学校側としても、こうした学生のニ
ーズに応えるために、複数の資格取得を目的としたカリキュラムとなっている学校が多く
みられている。そのため、学生たちは「この資格を取りたい」という明確な目的意識と「こ
の専門学校に入りたい」という積極的な進学理由を持って入学してくる学生が多いという。
このように高い目的意識を持って進学してくる学生たちであるが、前述のとおり高額な
学費に加え、資格取得にかかわる学納金以外の教材費や受験料などによって、経済的な負
担を感じているケースも多くみられている。とりわけ、ひとり親世帯の経済的に困難な家
庭の学生は大きな負担を感じているようである。こうした学生たちは「保護者に経済的な
負担をかけたくない」というように教職員に相談してくるケースも増えてきているといい、
奨学金や学費免除などの制度の利用を強く希望しているという。
近年の学生の特徴としては地元志向の強さについても言及されている。特に首都圏以外
の地域の専修学校においては県内から通学し、卒業後も地元の企業に就職する学生が多く
なっているという。質問紙調査の結果においても「自宅」からの通学者が67.8%となって
いる 1 。また、進学する学校を選ぶ際に「地元から離れた学校への進学」について「全く
考えなかった」「あまり考えなかった」学生の割合は46.3%となっており、半数近くの学
生は進学する際にも近隣の学校への進学以外は視野に入れていなかったものと思われる。
その他には、傷つきやすく精神的にもろい学生が増えているという意見も複数みられて
おり、ちょっとした学習面や人間関係でのつまずきや家庭の悩みなどが、長期欠席や休学、
退学に結びつきやすいことから、学習、生活両面からの支援が必要であるとのことであっ
た。
2-2-2 中退、休学の状況
学生の中退、休学の状況は学校によって異なっている。担任や教職員によるケアが行き
届いている学校は中退や休学が少ない傾向がある。中退や休学の兆候として、学校側は欠
席が続くことであると認識しているようである。その対応策として、多くの学校では担任
- 183 -
の教員が学生本人や保護者に連絡するなどして状況の把握に努めているとのことであっ
た。
中退や休学の主な理由としては、別の専修学校や短大、四年制大学への進学や就職とい
った進路変更によるもの、学習困難、通学意欲の減退、心の病などが挙げられている。し
かし、これらの理由の背後には経済的な困難や家庭の不安定な状況などが隠れているケー
スが少なからず存在しているのではないかというのが教職員たちからの見解であった。例
えば、親の離婚や死別によって家庭の経済状況が悪化し、学生はアルバイトを増やさざる
を得なくなる。それが学習時間を圧迫し、結果として学校の勉強についていけず学習意欲
が減退し、長期欠席、休学、退学となってしまうというパターンである。
学校側の支援策としては、担任による面談、保護者との連携、専門の心理カウンセラー
の設置などが挙げられている。中でも担任によるフォローアップが最も重視されており、
担任制度の利点を最大限に生かし、まずは長期欠席を防ぐことに力点を置いているという
学校が多くみられている。
2-3 学生の経済状況について
2-3-1 家庭、家計の状況
専修学校へのヒアリング全体の結果としては、経済的に困難な家庭からJASSO奨学金
が借りられないくらいの収入がある家庭まで様々ではあったが、教職員たちの印象とし
ては、経済的に困難な家庭出身の学生が増加しており、年々格差が広がってきていると
感じているようである。特に、ひとり親世帯、生活保護世帯出身の学生も多く、そうい
った家庭の経済状況はかなり厳しく、こうした家庭が増えているような気がするという。
それに伴い、最近の入学説明会での質問内容が学納金等、経済的な内容であるケースが
増えてきているということである。
また、親の経済的な意識が低く、子供の奨学金を生活費として使ってしまっているケ
ースも見られている。加えて、子供の学校生活に無関心な親が多くなってきていると感
じているとのことであった。
2-3-2 学生の経済状況とアルバイト状況
ほとんどの専修学校において、学生のアルバイトを許可しており、大半の学生がアル
バイトに従事している状況であるとの回答が得られた。一部、看護系、福祉系の学校な
どは許可制やアルバイトに従事する時間帯の制限や学校によってはアルバイトを禁止し
ている学校もあるとのことであった。アルバイトをしている学生は、主に学校の授業後
の夜間や週末にアルバイトを入れているということであり、教職員もこうした状況を認
識しているとのことである。質問紙調査によると、49.4%の学生が授業期間中定期的に、
- 184 -
6.8%が不定期のアルバイトをしており、半数以上の学生が何らかのアルバイトをしてい
る状況となっている。
アルバイト代の使い道としては、収入の一部を学費や生活費に充てている学生が少な
からず存在しており、アルバイトをしないと現在の学校生活を維持できないと言ってい
る学生もいるという。学校や資格取得のための勉強とアルバイトの両立に悩んでいる学
生もおり、アルバイト時間が学習時間を圧迫することから学業に支障を来たしかけてい
る学生もいるとのことである。学校側としても、こうした現状は認識しているものの、
奨学金だけでは学費と生活費を賄いきれない学生の経済状況があるだけに、生活指導に
おいてのジレンマがあるということであった。質問紙調査の結果からも、アルバイトが
学校の勉強に対して「少し妨げになっている」「とても妨げになっている」と回答して
いる学生の割合は36.5%となっており、アルバイトが時間的にも体力的にも学校での学
習を圧迫している様子がうかがわれる結果となっている。
一方、学費が高めの設定で入学時点から経済的困難者が少ない学校では「小遣い稼ぎ」
のアルバイトをしている学生も多く、家庭の経済状況によって、アルバイトの位置づけ
が異なっているようである。
2-4 JASSO奨学金利用状況について
2-4-1 利用状況
JASSO(日本学生支援機構)の奨学金制度については、3割~6割の新入生が利用して
いる。中でも、沖縄県では88%の新入生が利用している学校もある。奨学金担当の教職
員によると、全体的に年々奨学金利用者は増えているとのことであった。質問紙調査に
よると、第1種、第2種、1種2種併用を合わせると39.6%の学生がJASSOの奨学金を受給
しており、専修学校の学生の4割近くがJASSO奨学金を利用しているという結果となっ
ている。奨学金を申し込んだにもかかわらず、不採用になる理由としては、親の収入が
基準額を超えているというケースがほとんどであるとのことである。
こうした奨学金の使い道としては、入学金、学納金に充てている家庭が多いとのこと
であった。質問紙調査からも、JASSO奨学金受給学生の70.6%が奨学金を学校への納付
金に充てているという結果が得られている。
奨学金の受給、返還については、独自に学校主催の説明会を開催している学校が多く
みられている。しかし、担当者によると、JASSO奨学金の制度はパンフレットの内容が
複雑であり、学生が理解していないようにも見受けられるという。返還については「学
生自身が返すものである」という指導をしている学校が多くみられている。質問紙調査
においては、JASSO奨学金受給者である学生の62.8%が「十分返還できると思う」「な
んとか返還できると思う」と回答している。しかし「奨学金を検討したが断念した」と
いう学生も8.2%存在し、そのうちの43.2%は「返還が大変そうだから」という理由で奨
- 185 -
学金受給を断念しているという結果が得られている。学校側は、学生本人や保護者への
返還のプランの相談に奨学金担当の職員を配置して対応するなどして、奨学金受給、返
還に対する不安が軽減するように支援しているとのことである。また、出席不足や成績
不振によって奨学金停止にならないよう指導している学校もみられている。
一方で、進学前の高校における奨学金に関する情報伝達不足について、多くの学校の
教職員から指摘があった。JASSO奨学金は、高校在学中に予約採用を受け付けているが、
それを知らずに入学時の学納金の支払が困難であることを理由に進学を断念する学生も
いるという。質問紙調査の結果からは、JASSO奨学金受給者である学生の63.7%が高校
在学時に申し込んでいるが、情報伝達不足により、十分に経済的な支援を受けられてい
ない学生も存在している。また、1種と2種の併用での需給の制度を知らない学生もおり、
恒常的に経済的な不安を抱えながら学校生活を送っているケースもあるとのことである。
ただし、高校時の奨学金の情報提供には地域差もあり、例えば沖縄県などでは、全国
水準からみても収入が低い家庭が多いため、高校における奨学金に関する情報提供が行
きわたっており、予約採用を利用して進学してくる学生が多いとのことであった。
また、奨学金の返済に関して、女子学生の場合、就職後に妊娠・出産等によって自分
自身が離職した際、返済が将来の配偶者の負担になって心苦しいという声があるとの指
摘があった。学校側も、女子学生は将来的に産休・育休を取得する可能性もあるので、
奨学金の返済の方法については、ボーナスでまとめて返済したりすることがないように
説明しているとのことであった。
奨学金を受給する学生の増加に伴い、学校側の事務負担が増しており、奨学金制度の
分かりやすさや事務手続の簡素化などを望む声も多く聞かれた。
2-4-2 JASSO奨学金に対する要望
学校関係者のJASSO奨学金に対する要望としては、主に以下の五点が挙げられた。
第一に、現在の奨学金制度の継続である。「JASSOの奨学金があったから進学できた」
という学生が少なからず存在しているということと、奨学金の利用者も年々増えているこ
とがその理由となっている。質問紙調査の結果を見てみても、JASSO奨学金を利用して
いる学生のうち、88.9%が「(奨学金がなかったら)修学は困難」「修学はやや困難」と
回答しており、専修学校への進学と学業継続において、JASSO奨学金は必要不可欠であ
るものと思われる。
第二に、第1種奨学金の採用枠の拡大である。第1種奨学金を希望者する学生の数は、
多くの学校において採用枠を上回っているとのことであった。大学進学者に比べると経済
的に困難な層が多い専修学校においては、第1種奨学金を受給できる人数の枠を増やして
ほしいという学校側からの強い希望が寄せられている。
- 186 -
第三に、奨学金に関する情報を分かりやすく提示してほしいということである。現在の
パンフレットは学生たちもさることながら、教職員にとっても理解しやすいとは言い難い
という声が多く聞かれている。奨学金について全く予備知識のない者にも分かりやすいよ
うに、図やイラストを使用したパンフレットの改善の希望が多く聞かれた。
第四に、柔軟な貸与・返済の方法である。学校関係者の意見から例を挙げると、学校の
学費納入のタイミングに合わせて振込時期を選択できるようにしてほしいといった希望
や、学生の延滞を防止するという観点から、返済期間を個人の事情に合わせて設定できる
ようにしてほしいという意見が寄せられている。また、中には貸与の金額を途中から増や
せないとなると最初から多めに借りてしまう学生がおり、後々の返還が厳しくなるので以
前のように4月から遡って増額できるようにしてほしいといった声もあった。
第五に、高校に対して、奨学金の予約採用の情報提供の徹底を呼びかけてほしいという
ことである。前述のとおり、予約採用の制度を知らずに入学時の学納金の高さから入学を
躊躇するケースがある。専修学校側もオープンキャンパス時に奨学金のアドバイスを行っ
たりしているとのことであったが、JASSOからも高校への周知をしてほしいとのことで
あった。
奨学金の存在は専修学校にとって、進学・修学継続に重要な役割を果たしている。それ
だけに今後の継続と奨学金受給、返済の仕組みに工夫をしてほしいという要望が多くみら
れている。
2-5 学校における生徒への経済支援について
2-5-1 支援策について
それぞれの専修学校で独自に行っている学生への経済的な支援についてであるが、多
くの学校において学校独自の学費減免制度や給付奨学金制度を設けているという回答が
得られた。こちらについては、希望者に対して成績、面談による審査を設けているケー
スがほとんどである。また、独自に貸与奨学金制度を設けている学校もある。家族に卒
業生がいた場合の学費の割引制度を設けている学校も多い。質問紙調査の結果を見てみ
ると、学校による学費の減免を受けている学生は18.8%、平均で22.4万円の減免を受け
ている。
また、JASSO奨学金を受けられなかったときには、国の教育ローンや民間の学費ロー
ンなどを紹介しているという学校も複数みられた。金利が高いことなどから利用者は少
数であるが、中には公共料金の未払や保証人がいなかったなどの理由でJASSO奨学金の
申込みを断念した家庭の学生が仕方なく利用するケースもあるとのことである。さらに、
奨学金を受けてもなお、経済的に厳しい学生に対しては、学業に支障がない程度のアル
バイトの斡旋をしているという学校もある。
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奨学金以外の支援としては、学生寮を用意しているという学校がある。自分でアパー
トやマンションを借りて生活するよりも安価で安全面からも保護者も安心できるという
ことで大変人気があるとのことであった。しかし、入寮できる学生数としては十分では
なく、希望者の一部しか入寮できていないという現状があるとのことである。
2-5-2 授業料滞納の状況と学費納入困難者への対応
授業料の滞納など学費納入が困難な学生はほとんどの学校に存在しており、滞納の理
由としては、失業や親の離婚、死別などによる家計の急変が多いとのことである。中に
は、JASSO奨学金を学費に充てるため、奨学金の振り込みのタイミングと学費の納入の
タイミングが合わず、学校の納入期限に間に合わないといった滞納のケースもあるとい
う。
授業料の滞納者に対しては、多くの学校で支払期限の延期を認めたり、保護者との面
談を行ったりしている。必要単位を全て取り終えているにもかかわらず、どうしても在
学中に授業料を納入できなかった場合には、保護者と学生本人の合意の下、卒業を半年
延期したりすることもある。学費納入が困難であることが事前に分かっている場合には、
入学時より、JASSOの奨学金の利用を前提とした学費納入シミュレーションを作成して
保護者と学生本人に説明する場を設けている学校もある。奨学金が学生本人の口座に振
り込まれるため、学費に必要な奨学金を学生自身が他のことに使ってしまうケースもよ
くみられるため、予防策として事前に指導を徹底している学校もある。
また、入学金、学費の分納制度を設け、一度に大きな支出をしなくて済むようにして
いる学校も多い。
上記と併せて、JASSO以外の奨学金や民間の教育ローンなども紹介している。しかし、
返還が必要な奨学金の場合、「これ以上の借金は…」ということで親が渋る場合もある
ということである。
2-6 社会人学生への支援について
2-6-1 社会人学生の現状について
ほとんどの学校において、社会人学生を受入れの制度は整っているが、実際に入学し
ている学生が全くいないという学校が多くみられている。社会人学生の在学者は少ない
学校では数名程度、多い学校だと30~50名程度となっている。医療・看護系の学校では
50名程度の社会人学生が在籍しており、若い学生たちを率いてリーダーシップを発揮す
る存在になっているとのことである。
とはいえ、昼間コースの学校が圧倒的に多いため、在職中の学生は少なく、企業から
の委託(社員の身分のまま研修という形で在職)や退職後の進路変更での入学者が多い
とのことである。既卒者(大学、短大、他の専修学校の卒業者)として入学してくる学
- 188 -
生もいる。質問紙調査では「職業を持っている」と回答した学生の割合は4.2%となって
おり、職業を持ちつつ学校に通っている社会人学生は少ない現状である。
少ない社会人学生の現状を質問紙調査からみてみると、配偶者を持っている学生は全
体の19.3%となっており、フルタイムで学生生活を送っている学生が多いとはいえ、家
庭と学校を両立している学生も2割程度存在しているという結果となっている。
制度は整っていても社会人学生の入学は進んでいないのが現状であるが、今後の展望
として、18歳人口減時代の到来を見据え、社会人学生の受入れの拡大を広報戦略と位置
づけているという学校もみられた。
2-6-2 社会人学生への支援策について
少数ではあるが、リカレント(学び直し)の学生が多いため、リカレントコースを設
けて独自の支援をしている学校がみられた。また、学校での支援はないが、学生本人が
労働保険加盟者であり、教育訓練給付金を受けているケースはあるとのことであった。
しかし、前述のとおり、社会人学生が少数であること、また、ほとんどが昼間部のコー
スのみの学校であるため、退職してフリーの状態で入学してくる学生が多く、他の新卒
の学生と生活そのものはあまり変わらないという理由から、社会人学生に対する特別な
支援策を設けている学校は非常に少ないのが現状である。
こうした社会人学生への支援が進まない背景には、単に対象となる学生が少ないとい
うこと以外にも、社会人を担当する事務職員などのマンパワーの少なさや社会人学生の
ニーズがくみ取れていないことなども支援不足に拍車をかけているとのことである。
2-7 卒業後の進路
多くの学生は、卒業後の進路として就職を希望している。学んだ専門を生かした職に
就く学生も多いとのことである。また、就職率はおおむね良好であり、多くの学生が正
社員として就職できているとのことであった。質問紙調査でも、就職決定者の86.6%が
「正社員・正職員」で就職しているとの結果が得られており、新卒の就職が困難な時勢
において、専修学校の就職状況は良好のようである。
就職以外の進路としては、専門性の高い資格を必要とする学科・コースに在籍する学
生の中には、3年制、4年制コースへと進学する者もいるとのことである。
3. 生徒・学生調査からの知見
続いて、経済的に困難な生徒・学生、社会人学生に対するヒアリング調査の結果を項目
別に概観していく。
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3-1 現在の生活の状況
3-1-1 生活について
専修学校の学生たちの進学動機としては、資格を取得し、専門を生かした仕事につき
たいという理由が多くみられた。学校に関する情報は、各学校で催されているオープン
キャンパスに参加したり、高校に届いたパンフレットなどを読んで検討したりして、「こ
の資格が取りたい」、「この学校に行きたい」と思ったところに進学したという声が聞
かれた。専修学校で資格やスキルを身に付けたいという高い目的意識をもって進学して
いる様子がうかがわれた。
経済的な面については、学費は親からの仕送りと奨学金でまかなっているという回答
が多かった。奨学金受給者の場合、奨学金はほとんど学費で消えてしまうため、足りな
い分は親からの仕送りと学生自身のアルバイト代等で補填しているとのことであった。
また、ひとり親家庭など、経済的に厳しい家庭環境にある学生は、親にはなるべく経済
的な迷惑をかけたくないと考え、自分でアルバイトをして学費や生活費の足りない部分
を補っているという学生の声もあった。
学生たちによると、専修学校の生活は忙しく、授業と課題の時間を確保した上で、アル
バイトもしなくてはならないため、時間のやりくりに追われており、睡眠時間を削るし
かない状況になることもあるとのことであった。
3-1-2 アルバイトについて
今回、ヒアリングを行った学生のほとんどがアルバイトをしているとの回答であった。
アルバイトの収入は、月5~10万円程度とのことである。質問紙調査からは、授業期間中
に定期、不定期にアルバイトをしている学生は合わせて56.2%、そのうち、定期的にア
ルバイトをしている学生(49.4%)については週に平均3.5日、18.6時間働いているとい
う結果が得られている。
アルバイト代は、自分の小遣いのほか、学費の不足分に充てたり、家賃や食費などの
生活費、友人との交際費などに使ったりしているとの回答が多くみられた。質問紙調査
の結果からも、アルバイト代の使い道では「授業料などの学校への納付金」が13.6%、
「修学費」が36.7%、「住居・光熱費」が16.8%となっており、アルバイトによって学
校生活を維持している学生が少なからず存在している。専門学校の場合、平日の昼間は
授業が隙間なく入っているため、夜間のアルバイトをしているという学生も多くみられ
た。一方、授業や課題、資格のための勉強が忙しく、アルバイトをする時間がないとい
う学生も存在している。
生活費や学費をアルバイトでまかなっている学生の中には、アルバイトの時間を確保
するために学業との両立が厳しくなってしまっている学生もみられている。質問紙調査
- 190 -
によると、アルバイトをしている学生で「学業の妨げになっている」と回答した学生は
36.5%となっており、アルバイトのために本業である学業に支障を来たしかねない状況
となっている学生も一定数いるようである。
一方で、接客や語学系の専門領域を専攻している学生は、アルバイトも勉強の一部に
なっていると回答しており、実地研修のような捉え方をしているようであった。質問紙
調査の結果からは、アルバイトの内容が学校で学んでいる専門と「とても関係がある」
「少し関係がある」と回答している割合は36.6%となっている。
3-1-3 経済面の問題
経済面の問題については、JASSOからの奨学金では足りないという学生の声が多く聞
かれた。しかし、奨学金の額が少ないからといって、1種と2種を併用するのは将来の返
還が心配なので躊躇しているという。「あと数万円あれば…」という学生の声も多く、
経済的に困難を抱えている学生にとっては、奨学金だけでは十分に勉学に打ち込むこと
ができないという状況となっているものと思われる。質問紙調査においても、JASSO奨
学金受給者のうち「今の金額では十分ではない」と回答した学生は16.4%となっている。
具体的には、第1種だと平均3.4万円、第2種だと平均2.9万円くらい増やしてほしいと回
答している。
学校や勉強にかかる費用としては、学納金以外にも、教材費や実習費、検定費等、大
学に納める学費以外にも相当額が必要となっているのではないかとのことである。しか
し、忙しくてアルバイトも増やせず、生活費(特に食費)を切り詰めているケースもあ
るようで、家庭の経済状況の厳しさは、学生のアルバイト負担(=自分で稼がなくては
ならないというプレッシャー)となり、学生の時間的体力的な負担となっているとのこ
とである。
3-2 奨学金の状況
3-2-1
利用状況
奨学金の利用状況としては、JASSO奨学金の場合、1種、2種とも満額を借りていると
回答した学生が多かった。奨学金の使い道としては、前述のとおり、多くの学生が学費
(学納金)に充てているということである。質問紙調査の結果を見てみると、JASSO奨
学金受給者の70.6%が奨学金の使い道を「授業料など学校への納付金」と回答している。
とりわけ、今回、ヒアリング調査の対象となっている経済的に困難な家庭の学生におい
ては、奨学金で学費を賄っている状況であり、奨学金がなければ修学が不可能であると
回答した学生も少なからず存在している。
また、奨学金だけでは授業料以外の学修費や生活費をカバーできず、アルバイト代で
補っている学生も複数存在している。
- 191 -
奨学金の返還については、全く心配していない学生と漠然とした不安を持っている学
生がいる。前者の場合は、以前から奨学金の返済方法の仕組みなどを十分に理解してい
るという学生であり、後者の学生の多くは奨学金の返済について、事前に十分な情報を
得ていないと答えている。返還の不安から、奨学金の需給を躊躇したり、金額を少なく
抑えたりしているケースもみられており、奨学金の仕組みについての周知の徹底は重要
であると思われる。
3-2-2
奨学金についていつ頃知ったか
奨学金についての知識を得た時期については、高校のときから知っていたという学生、
専門学校のオープンキャンパスで学費の相談をした際に知った学生、入学する段になっ
てから学校に紹介されて知ったという学生が混在している。
高校の進路指導において、奨学金についての情報提供がなかったと回答している学生
も多くみられており、JASSO奨学金の予約採用についての情報もほとんど得られなかっ
たという学生もいる。一方、家族に奨学金利用者がいたり、高校で奨学金についての情
報提供が行き届いていた学生は、予約採用を利用したりして奨学金を適切に使って進学
しているという印象が得られた。質問紙調査によると、JASSO奨学金受給者の63.9%が
「高校または高等専修学校の在学中」に、33.7%が「今の学校に入学してから」奨学金
を申し込んでいるという結果が得られており、半数以上の奨学金利用者は入学前の予約
採用を利用しているという結果となっている。しかし、入学前に奨学金についての十分
な知識がなかったため、入学をあきらめることを考えたり、入学時に経済的な苦労をし
たりしたという学生の声も聞かれており、奨学金については、高校在学時からの情報提
供が進学時の経済的な不安を取り除く一助となるものと思われる。
3-2-3 返還について
今回のヒアリング調査の対象となった学生たちの奨学金の返還についての意識は非常
に高く、自分自身が借金をしているという意識を強く持っている様子がうかがわれた。学
生の中には、貸与ではなく、給付奨学金の充実を望む声もあったが、基本的に「借りたも
のは返す」という意識を持っている。それゆえに、学生自身も保護者も奨学金の借り過ぎ
に対して躊躇したという意見もみられており、結局、奨学金で賄いきれない分は、親が無
理をするか、本人がアルバイトで補填するということになっているようである。質問紙調
査においても、JASSO奨学金受給者の16.4%が「今の金額では十分でない」と回答して
おり、もう少し奨学金の額を増やしたいと思っている学生も一定数見られている。今回の
ヒアリング調査の対象となった経済的に厳しい家庭出身の学生たちからは「できればもう
少し借りたい」という声が聞かれている。しかし、返還に対する意識の高さゆえに、借り
る額を増やせないというジレンマに陥っている様子がうかがわれた。このような学生の場
- 192 -
合、返還猶予等の制度について、あまり知らないというケースが非常に多かった。こうし
たことからも、返還を含む奨学金の制度についての予備知識を持っているかどうかが、適
切な奨学金利用と将来の返還に対する不安軽減につながるものと考えられる。
3-3 学校や学生支援機構、国などに対しての要望
3-3-1 JASSO奨学金についての要望
JASSOに対しての学生からの要望としては、もう少し借りられる金額の限度額を上げ
てほしいという要望が多く寄せられている。また、奨学金採用の際の所得制限のライン
の見直し、兄弟数の考慮をしてほしいという声もあった。
3-3-2 学校に対しての要望
次に、現在通っている学校に対する要望としては、学費が高すぎるのでもう少し安く
してほしい、入学時にお金がかかりすぎる、学費以外の修学費(資格のためのセミナー、
留学など)が結構かかるので補助が欲しいといった経済面での要望が多く聞かれた。特
に、学費以外に任意参加の講習などがあるが、意欲はあっても結局お金のない学生は参
加したくてもできないというのは余りに悲しいという切実な意見も寄せられている。関
連して、学校の奨学金は学業成績が優秀な人のみが対象となっているが、経済的に厳し
くてアルバイトをせざるを得ず、良い成績をとるために十分に勉強したくてもできない
人もいるということを分かってほしいという意見もあった。学校に対する質問紙調査で
も学校独自の給付奨学金の選考基準は「入学後の学業成績」(39.8%)、「その他の人
物・学業の基準」(32.1%)、「入学前の学業成績」(15.2%)の順となっており、学
業成績が学費減免の際の選考のポイントとなっていることがうかがわれる結果となって
いる 2。このように、経済的に困難な状況にある学生からは、学費減免に際しては経済状
況も考慮した選考を望む声が上がっている。
また、学校によっては留学生を多く受け入れている学校もあるため、経済的な面もさ
ることながら生活面や修学面でも留学生への支援を充実させてほしいという声も聞かれ
ている。
3-4 社会人学生の現状
現在の専修学校においては、社会人学生の受け入れ態勢は整っているが、実際に入学
するものは少数であるということから、今回のヒアリング調査では、社会人学生は4名の
みが対象となったため、一般化することは難しいがケースとして挙げておきたい。
まず、看護系の学校に通う女子学生は、離婚して子供がいるため、将来的な仕事を考
えて資格取得を目指し、一番学費の安い学校を選び、国家試験に向けて子供が寝た後に
- 193 -
勉強している状況であり、学費については市に補助を申請して何とかやりくりしている
とのことであった。
建築系の学校に通う男子学生は元フリーターであったが、現在は仕事を辞めて、2級建
築士の資格取得を目指しているという。学校の勉強が忙しく、アルバイトをする時間が
取れないため、奨学金を学費に充てながら勉強しているとのことであった。
また、ビジネス系の学校に通う男子学生は、家庭のことを考えて大学進学せずに就職、
公務員として4年間勤務した後に進学したという。奨学金は受けずに自分の貯金とアルバ
イトで学費と生活費を賄っている。来年からは経理の仕事で就職が決まっているとのこ
とであった。
コンピュータ系の学校の男子学生は民間企業で2年間働いたのちに進学、奨学金は受け
ずに貯金のみで学費と生活費を支払いつつ勉学に励んでいるとのことである。
社会人学生の中には、家族を養いながら修学している学生もおり、社会人学生は経済
的にかなり厳しい状況の中、学習時間やアルバイト時間を確保しながら通学している。
学校へのヒアリング調査からは、社会人学生への支援策は手薄な状態であることが明ら
かになっているが、上記のような現状を詳細に把握し、彼らの実態に即した支援策を早
急に構築することが望まれる。
3-5 その他
その他の実例としては新聞奨学生の存在がある。今回のヒアリング対象者の中にも数
名の新聞奨学生がいたが、家庭環境や経済状況が厳しいものが多く、収入はほとんど学
費で消えているとのことであった。また、生活面では自己負担となる部分もあり、経済
的には非常に厳しい状況となっているようである。また、仕事も忙しいため、学校の授
業や課題をする時間に支障を来たしそうになることもあり、学校側も新聞奨学生の厳し
い状況を認識してはいるようだが、そもそも様々な理由でJASSOの奨学金受給をあきら
めた学生が多いため、仕事を辞めるわけにもいかず、厳しい状況の中、卒業を目指して
いるという現状となっている。
3-6 まとめ
これまで、専修学校の学生の現状について、学校関係者と学生の双方に対して行った
ヒアリング調査の結果を概観してきた。ここから専修学校の学生の生活の実態をまとめ、
今後の支援策について検討したい。
まず、専修学校への進学動機としては、資格取得と資格を生かした職業への就職が挙
げられており、目的意識を明確に持って入学してくる学生が多くみられている。こうし
た目標達成のためにかかる学費についてであるが、多くの学校で100万円前後となってお
り、大学や短大といった他の進学先と比べても決して安くはない金額となっている。そ
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の他にも教材や資格取得のためのセミナーの参加費、受験料、実習費などがかかるとい
う。今回の聞き取り調査の対象である経済的に困難を抱えている学生にとって、学費や
修学費が大きな負担となっていることは、学校、学生の双方の聞き取り調査から明らか
となったことである。このような経済的な負担を軽減し、修学を継続するためには奨学
金の需給は必要不可欠なものとなっている。実際、全体で4割近い学生が日本学生支援機
構の奨学金を利用していることが、質問紙調査からも明らかとなっている。学校関係者
からも学生からも奨学金制度の継続とさらなる充実を願う声が上げられている。
しかし、奨学金だけでは学費、修学費(学費以外の学習費)、生活費までカバーでき
ない場合には、学生自身がアルバイトで補填しているというケースが多くみられている。
専門学校は授業が朝から夕方まで一日中入っていることが多いため、授業終了後の夜間
と休日をアルバイトに充てることとなり、一部の学生からは、課題や資格取得のための
自習をする時間がなくなってしまう等、学習に支障を来たしているという声も聞かれた。
このように、経済的な問題の解決と目標達成のために必要な勉強時間のやりくりは、特
に経済的に困難な学生を苦しめている現状が明らかとなった。
学校側の生活面、学習面での支援としては、学級担任制を多くの学校で取り入れてい
る点が専修学校の特徴として挙げられる。30人程度を1名ないし2名の教員が担当するこ
とで、学生個人に対してのケアが行き届き、中退や休学の予兆となる欠席や怠学といっ
たサインにも早い段階で対応できている。
卒業後の進路としては、8割以上の学生が正社員・正職員として就職している。若年層
の就職が難しい時代にあって、学校から職業世界への橋渡しとしての専修学校の役割は
社会からも認められているということの裏付けでもあり、その存在意義は非常に重要な
ものとなっている。
こうした専修学校の機能を十分に生かし、継続していくために必要な支援としては以
下の四点が挙げられる。
一点目は、高い目的意識を持って入学してくる学生のニーズに応えるカリキュラムの
整備である。二点目は、担任制や少人数制のクラス制度を継続し、不安定になりがちな
学生の生活面、学習面を支援することである。三点目は、学校生活すべての基盤となる
経済面での支援である。日本学生支援機構の奨学金の継続と充実もさることながら、学
校独自の奨学金や学費減免制度を充実させ、利用できる学生の範囲を広げていくことが
重要である。今回の調査からは、学費減免制度を利用する際の選考基準が学業成績を重
視したものになっているために、学費稼ぎのためのアルバイトが忙しく、学業に十分に
専念できない経済的に困難な学生が成績優秀者となれず、学費の減免を受けられないと
いう事態が発生していることが明らかとなった。こうした経済支援の対象者の選考基準
を成績だけではなく、学生の経済的側面も重視するように変えていく必要性があるもの
と思われる。また、このように学校が十分な学生支援を継続するためには、学校の財源
- 195 -
だけでは厳しいため、国や地方自治体からの補助金等の支援も必要となってくるものと
思われる。また、金銭面での直接の支援に加えて、学生寮の充実なども学生の経済、生
活両面に対する支援策として有効であると考えらえるため、寮の完備、入寮者数の拡大
なども望まれる。
これら三つの支援策は既にほとんどの学校で行われていることではあるが、学生の生
活実態とニーズの的確な把握を通してさらなる見直しと強化が必要であろう。特に、将
来の職業生活に対する目的意識を高く持ち、一日の多くの時間を勉学に費やしている専
修学校の学生が、経済面や生活面での不安からその道をあきらめてしまうことのないよ
う、十分な経済支援を可能にする仕組みを構築することが最も重要な課題であると思わ
れる。
最後に、社会人学生に対する支援がほぼ手つかずになっている点については、今後、
各学校で社会人学生の受入れ方針の策定と並行して、彼らの現状とニーズを把握し、経
済面、生活面からの支援策について検討することが必要であると思われる。
〈注〉
1 ここで使用している質問紙調査の数値は「無回答」を含んだ集計値となっている。そのため「無
回答」を除いて分析している2章(岩田)とは数値が異なっていることには留意されたい。
2 本報告書1章(浦田、吉田)参照。
〈参考文献〉
植上和希 2011 『専門学校の教育とキャリア形成 進学・学び・卒業後』大月書店.
- 196 -
第 9 章 保護者調査からみた専門学校生の学費負担
濱中義隆(国立教育政策研究所)
1. はじめに
本章では、2013 年 3 月に高等学校を卒業した子供をもつ保護者に対するアンケート調査のデ
ータを利用して、専門学校への進学者の学費負担の特徴について、主として大学進学者との比較
を行いながら明らかにしていくことを目的とする。既に本報告書の各章において、専門学校生を
対象にした大規模アンケート調査の分析(第 4 章 岩田論文)
、日本学生支援機構が実施する「学
生生活調査」及び専修学校生への「基礎調査」の比較(第 5 章 藤森論文)が行われており、本
章と内容的に重複する部分が少なくない。専門学校生の経済状況、生活実態を明らかにするとい
う目的においては、むしろ学生を直接の対象としたそれらのデータを用いた方が適切であるとも
いえる。それでもあえて高卒者の保護者を対象にした調査のデータを用いた分析を行うのは、単
に多面的なデータを利用して検証すること以外に、以下のような理由が挙げられる。第一に、学
生を対象とした調査と比較して、家庭背景に関する情報(家計所得、親の職業・学歴など)を得
る際の正確性、自由度が高いと考えられることである。無論家庭の背景情報だけでなく、家計に
よる学費の負担状況については学生本人よりも保護者の方が正確に把握しているとみてよいだ
ろう。第二に、既に「大学生」あるいは「専門学校生」になった学生を対象とした調査と違い、
進路が異なる者に対して同一の標本抽出方法、同一の質問項目を用いた調査を行うことにより、
進路間での比較が容易になることである。また、大学、専門学校等への進学者以外の進路をとっ
た者との比較も可能となる。本章ではこうしたデータ特性を反映して、まず専門学校への進学が
高卒者の進路の機会構造の中で相対的にどのような位置を占めているのかを検討した後、専門学
校進学者の学費負担の実態を大学進学者との比較を通じて明らかにし、さらに、高卒時の非進学
者にとって専門学校進学という選択肢がもつ意味を検証する。
2. 保護者調査の概要
今回の保護者調査は、NTT コムオンライン・マーケティング・ソリューション社のサービス
「NTT コムリサーチ」を通じて実施した。同サービスに登録しているアンケートモニタから、
まずプレ調査により「2013 年 3 月に高校を卒業した子供をもつ」者を抽出した後、それらの者
に対して、2014 年 3 月に本調査を実施した。これにより、1414 名から回答を得ることができた。
ただし、調査回収後にデータを精査した結果、明らかに上記の条件に合致しないとみなされる者
を除いた 1375 名を、暫定的な有効回答として本章の報告では用いることにする。
ウェブモニタ調査の性格上、全国の高校卒業生の保護者を母集団とする無作為抽出によるサン
プリング調査とはいえない。今回の保護者調査における高卒者の進路と、学校基本調査による
- 197 -
2013 年 3 月高校卒業者(通信制は除く)の進路を比較してみると(表 9-1)
、今回の調査は明ら
かに就職者及び専門学校進学者の比率が低いといえる。就職者については男女ともに母集団にお
ける比率の約半分程度でしかなく、本章の問題関心の対象である専門学校進学者についても、母
集団と比較すると3分の2程度の比率にとどまる。一方で、大学進学者の比率は母集団の約 47%
(男女計)に対して、今回調査では 63%とかなり高い1。進路の違いは、当然、家庭背景等の違
いを反映していると考えられるので、低所得者層など特定の社会的属性をもつ家族層が有意に少
なく(あるいは多く)サンプルに含まれているとみなさざるを得ないだろう。以下、本章におけ
る分析結果の妥当性並びに結果の解釈においては、この点に最大限の配慮をする必要があること
を強調しておきたい。
表 9-1 調査データと母集団との比較
学校基本調査(H.25)
今回調査
男子
女子
男子
女子
就職
11.1
5.9
20.2
13.5
大学
62.8
63.9
49.7
44.9
短大
1.4
7.3
1.0
9.8
専門学校
9.3
14.0
13.7
20.5
その他の学校
0.4
0.6
0.2
0.7
その他
15.0
8.3
15.2
10.6
合計
100
100
100
100
(713)
(662)
(547355)
(540769)
(N)
3. 家庭の年間収入等による高卒後進路への影響
専門学校への進学を進路として選択する者はどのような家庭背景を持つ者に多いのか、この点
をまず確認しておきたい。
図 9-1 は、家庭の年間収入(父・母の収入の合計値)階層別の進路を示したものである。図か
ら明らかなように、浪人生を含めた大学進学(志望)者は、家庭の年間収入が増加するにつれそ
の比率が高くなる。大学進学者の 6 割以上を占める私立大学への進学者においてその傾向が顕
著である2。一方、就職者は収入が高くなるにつれ、その比率は少なくなる。
専門学校への進学者については、家庭年収が 1050 万円以上の高収入層においては 5%と少な
く、400 万円以下で 17%とやや高いものの、その他の収入階層については、425-600 万円では
11%、625-800 万円では 14%、825-1025 万円では 11%と収入階層との関連は必ずしも明確に
はならなかった。ここでの結果からは、専門学校が大学への進学が経済的に困難な層の代替的な
進学機会になっているわけではなく、様々な収入階層に「開かれた」進学機会となっているとい
うことになる。
- 198 -
100%
90%
80%
70%
就職 60%
専門学校 50%
国公立大学 私立大学 40%
短大 30%
大学計(浪人含む) 20%
10%
0%
-400万 425-600万 625-800万 825-1025万 1050万-
図 9-1 収入階層別の高卒後進路状況
もっともこの結果は、既存調査の結果とはかなり異なる。2006 年 3 月高卒者を対象に東京大
学大学経営・政策センターが実施した全国調査(CRUMP2006)の結果と 2012 年 3 月高卒者に
対して今回と同様のウェブモニタによる調査の結果を比較した小林・濱中・劉(2013)では両
年度ともに、専門学校進学者の比率は家計の収入階層と明確な関連が見られた。
後者の調査から 1 年しか経過していないことを考慮すれば、進路の機会構造が大きく変化し
たとは考えにくいので、今回調査の結果(変化)は先に指摘したサンプリング(正確にいえば回
答者)のバイアスによるものであることが疑われる3。この点についてはさらなる調査と検証が
必要である。家庭の年間収入と専門学校進学との間には明確な関連が確認できなかったが、親の
職業や学歴と専門学校への進学の間には明らかに関連がみられた。ここでは父親の学歴と進路の
関係について結果を示す(図 9-2)。図 9-2 より、父親の最終学歴が大学卒である場合、73.2%
は四年制大学に進学している(浪人を含めれば 82.8%が大学志望)のに対して、専門学校への
進学者は 5.7%にとどまる。父親が大学院卒の場合、この傾向は更に顕著になる。
これに対して、父親が専門学校卒では、専門学校への進学者は 21.6%、中卒又は高卒の場合
も 20.4%が専門学校に進学しており、大学への進学率は低くなる。
- 199 -
24.4%
大学院 53.3%
父
19.6%
大学 親
専門学校 10.8%
学
歴
短大・高専 11.8%
中学校・高校 12.0%
53.6%
0%
9.6%
41.4%
8.1%
35.3%
3.9%
37.2%
14.3%
離別・死別 10%
11.1%
31.0%
20%
0.0%
30%
40%
5.7%
10.8%
15.7%
20.4%
15.9%
21.4%
50%
4.3%
21.6%
17.6%
3.9%
3.3% 2.2%
19.0%
60%
70%
80%
90%
100%
高卒後の進路 国公立大学 私立大学 浪人 専門学校 短大 就職 その他 図 9-2 父親の学歴別、高卒後の進路状況
父親の学歴と家庭の年間収入の間には関連があるので、さらに、年間収入をコントロールした
上で、父親の学歴と専門学校進学の間に関連がみられるかについても確認してみた(図 9-3)。
図 9-3 の縦軸には専門学校への進学率を、横軸には父親の学歴をとり、グラフの各線は収入階層
ごとの専門学校進学率の違いを表している。図 9-3 より、年収 825-1025 万円、1050 万円以上
の高収入層では、父親の学歴が中学・高校卒である場合に専門学校進学率は最も高い。すなわち
高収入であることが父親よりも高い学歴を獲得することに寄与している。これに対して、年間収
入 625-800 万円以下の中低所得層では、父親の学歴が高卒(以下)である場合よりも、短期高
等教育卒である方が専門学校への進学率は高い。収入の水準が同じであれば、父親と少なくとも
同じレベルの学歴を獲得しようとする行動が存在していることを意味している。
以上のように専門学校への進学に対しては家計収入の影響は今回調査では必ずしも明確では
なかったものの、他の家庭の社会的背景家族に関する社会的要因も大きな影響を及ぼしている。
35%
30%
専 25%
門
学
校 20%
-400万 425-600万 15%
625-800万 率
進
学
10%
825-1025万 1050万-
5%
0%
短大・高専・専門学校 父
中学・高校 大学・大学院 親の学歴 図 9-3 年収階層別父親の学歴別、専門学校進学率
- 200 -
4. 専門学校進学者の学費と学費負担の構造
次に、専門学校進学者の学費(授業料、生活費を共に含む)とその家計による負担構造につい
て、大学進学者との比較を中心にしてその特徴を検討する。
4-1 学校種による授業料・生活費の実態
表 9-2 には、進路別に授業料、生活費の年額の平均値を示した。なお、特に生活費については
自宅通学であるか、自宅外通学であるかによって大きく異なると考えられるため、いずれの進学
先学校種においても自宅、自宅外に分けて平均値を算出した4。
表 9-2 進学先の学校種別、学費の平均値(単位:円)
国公立大学
私立大学
短大
授業料
生活費
学費計
自宅
725,568
544,800
1,270,368
自宅外
709,731
951,923
1,661,654
計
718,376
729,694
1,448,070
自宅
1,257,352
610,547
1,867,898
自宅外
1,202,862
1,107,692
2,310,554
計
1,246,318
711,215
1,957,533
自宅
1,065,652
495,652
1,561,304
931,000
850,000
1,781,000
計
1,037,793
568,966
1,606,759
自宅
1,115,368
584,211
1,699,579
自宅外
1,043,538
738,462
1,782,000
計
1,103,623
609,434
1,713,057
自宅外
専門学校
表 9-2 から読み取れる専門学校生の学費の特徴とは以下のようなものである。まず専門学校の
授業料平均値は、自宅生 112 万円、自宅外生 104 万円(自宅/自宅外を区別しなければ平均 110
万円)となった。私立大学の授業料の平均は 125 万円程度であり、それと比べれば専門学校の
授業料はやや低いようにみえるけれども、これは専門学校の場合、一部の学校(公立の専門学校
など)において授業料が「60 万円未満」に設定されていること5、一方私立大学では、医学部な
ど高額な授業料を設定している場合があることによるものであろう。そのため専門学校と私立大
学の間では授業料の平均値に 15 万円程度の差が生じているが、専門学校進学者の大部分を占め
る私立の学校に在籍する者に限れば、授業料の額については一般的な私立大学とほぼ変わらない
とみてよいだろう6。ただし国公立大学の授業料(72 万円は実態よりも明らかに高すぎであるが)
と比べるとかなり高額であることはいうまでもない。
なお、専門学校生については自宅と自宅外で授業料の平均がやや異なっているようにみえる。
- 201 -
授業料の低い学校を選択することによって、自宅外からの通学を可能にしているとも考えられる
が、専門学校の自宅外通学者はケース数が少なく、今回の調査では自宅/自宅外の間で統計的に
有意な差があるとはいえない(p=.307)7。
生活費に関しては、自宅生では専門学校生 58 万円、国公立大学 54 万円、私立大学 61 万円で
あまり大きな差があるとはいえない。
ところが自宅外生については、
専門学校 74 万円に対して、
国公立大学 95 万円、私立大学 111 万円となり、専門学校と私立大学の間では年間 37 万円程度
の差が存在している。専門学校の自宅外通学者のケース数が 26 とかなり少ないので確定的なこ
とはいえないけれども、私立大学の場合、生活費が高い首都圏に立地する学校への進学者がある
程度存在するのに対して、専門学校の場合、自宅外通学であっても大都市圏ではない地域の学校
に進学する者が相対的に多いことが影響しているのではないかと考えられる8。
4-2 学費負担の構造
年間の授業料、生活費の特徴について確認したところで、これらの金額を家計でどのように負
担しているのかを見ていこう。今回の調査では、学費の負担方法として、授業料について表 9-3
に示した 9 項目、生活費について表 9-4 に示した 5 項目のそれぞれの手段により、授業料、生
活費のどれくらいの割合を負担しているかについて「利用していない(0%)
」から「100%」ま
での 11 段階で尋ねた。表 9-3、表 9-4 の数値は各項目による負担割合の平均を求めたものであ
り、授業料、生活費共に各項目による負担割合を合計すれば 100%となるように設計してある。
表 9-3 学校種別、授業料の負担割合(平均値:単位は%)
国公立大学
私立大学
短大
専門学校
授業料減免、給付奨学金
5.2
4.2
5.2
3.3
家計からの支出、仕送り*
56.6
47.0
41.0
34.8
預貯金の取り崩し、学資保険
22.1
25.1
26.7
31.1
親族からの援助
2.3
5.1
3.3
3.3
お子さんのアルバイト
1.8
2.0
1.6
3.8
日本学生支援機構の奨学金*
8.7
13.1
16.4
15.8
その他の貸与奨学金
0.8
1.1
0.9
0.2
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
1.1
1.0
2.1
2.1
民間教育ローン*
1.4
1.5
2.9
5.5
100
100
100
100
(229)
(642)
(58)
(159)
合計
ケース数(N)
表 9-3 より、授業料の負担割合について、進学した学校の種類によって統計的に有意な差が見
られたのは、
「家計からの支出、仕送り」、
「日本学生支援機構の奨学金」
、「民間教育ローン」の
3 項目である。「家計からの支出、仕送り」は、国公立大学が平均 56.6%と最も高く、私立大学
- 202 -
では 47.0%、専門学校は最も低く 34.8%であった。授業料が低い国公立大学との差はともかく
として、年間の授業料の水準がほとんど変わらない私立大学と比べても専門学校では「家計から
の支出、仕送り」の割合は低い。これに対して、「預貯金の取り崩し、学資保険」による負担割
合の平均が専門学校では 29.9%と国公立大学、私立大学に比べて高くなっている。もっとも「家
計からの支出、仕送り」も「預貯金の取り崩し、学資保険」も家計(保護者)による負担には変
わりなく、両者を併せれば、学校種による家計(保護者)負担の差異は小さくなる。更にいえば、
「国の教育ローン」、
「民間教育ローン」もローンの利用者は保護者であるから、これらも家計(保
護者)負担に含めると、授業料の保護者による負担割合は、国公立大学で 81.1%とやや高くな
るものの、私立大学 74.6%、専門学校 72.8%となり、私立大学と専門学校の間の差異はほとん
どない。私立大学と専門学校では年間の授業料水準が同程度であるので、家計(保護者)が負担
している金額も同程度であるとみなせる。ただしここで留意しなければならないのは、専門学校
進学者と私立大学進学者の間では、家計の年間収入に差異があるため(専門学校:平均 671 万
円、私立大学:平均 828 万円)
、専門学校進学者の家計の方が収入に占める学費の負担が大きい
ことである。専門学校進学者の家計においては、日常的な収入からの学費への支出(=「家計か
らの支出、仕送り」
)で不足する分を、
「預貯金の取り崩し、学資保険」
、さらには「民間教育ロ
ーン」(民間教育ローンによる負担割合は、専門学校のみ 5.5%と有意に高い)によって補塡し
ているケースが多いことを、表 9-3 の結果は示しているといえよう。
家計(保護者)負担の残り 20〜25%がその他の手段によるわけであるが、ここで最も大きな
役割を果たしているのは日本学生支援機構の奨学金である。授業料が相対的に低い国公立大学で
は奨学金による負担割合が他の学校種に比べて低いのに対して(授業料が低いので家計負担が他
の学校種よりも高くなるためと考えられる)、授業料水準が高い専門学校、私立大学、短大にお
いて、奨学金への依存度が高いことを意味している。
表 9-4 学校種別、生活費の負担割合(平均値:単位は%)
国公立大学
私立大学
短大
専門学校
76.1
76.8
69.0
73.5
1.6
1.9
2.2
2.7
お子さんのアルバイト*
10.9
16.7
14.3
17.6
日本学生支援機構の奨学金*
10.4
3.9
14.1
5.2
1.1
0.7
0.3
1.0
100
100
100
100
(229)
(642)
(58)
(159)
家計からの支出、仕送り、小遣い
給付奨学金
その他の奨学金
合計
ケース数(N)
一方、生活費(表 9-4)については、「家計からの支出、仕送り、小遣い」による負担割合は
短大でやや低いものの9、国公立大学、私立大学、専門学校の間ではほとんど差がなく、いずれ
も 75%前後である。残りの約 25%の大部分は学生本人の「アルバイト」と「日本学生支援機構
- 203 -
の奨学金によって賄われている。授業料に対しては学生本人の「アルバイト」による負担は 2~3%
程度と大きくなかったが、生活費に対しては「アルバイト」が 10~15%程度を占めている。な
お生活費の負担に関しても国公立大学と他の学校種との間に相違がみられた。国公立大学では学
生本人のアルバイトによる負担割合がやや低く、そのぶん日本学生支援機構の奨学金による負担
割合が高い。次節で詳しく報告するが、日本学生支援機構の奨学金受給率は学校種によってほと
んど差はない。したがって国公立大学では、授業料が低い→家計(保護者)による負担が相対的
に容易→奨学金は授業料ではなく生活費に充当可→学生本人のアルバイト負担の低下、という構
図をみてとれる。反対に授業料に対する家計(保護者)の負担が重ければ、奨学金が授業料に優
先的に充当されるので、生活費は学生本人のアルバイトで賄わざるを得ないということになる。
5. 日本学生支援機構の奨学金受給状況
前節で指摘したように学費の負担方法として家計(保護者)による負担に次いで大きな役割を
果たしているのは日本学生支援機構の奨学金であった。表 9-5 には日本学生支援機構の奨学金の
受給状況を進学先の学校種別に示した。第一種奨学金、第二種奨学金のいずれか(併用を含む)
の貸与を受けている学生の比率は、専門学校 37.9%、短大 35.1%、私立大学 35.3%、国公立大
学 36.2%であり、学校種による差はほとんどない。ただし、利用している奨学金の種類に関し
ては、専門学校において受給基準の緩い第二種奨学金の比率がやや高いことがわかる。
表 9-5 学校種別、日本学生支援機構の奨学金受給状況(%)
国公立大学
私立大学
短大
専門学校
併用
4.0
2.6
5.3
1.3
一種
11.6
8.5
8.8
6.5
二種
20.5
24.2
21.1
30.1
2.2
2.7
3.5
0.7
応募せず
61.6
62.0
61.4
61.4
合計
100
100
100
100
(217)
(606)
(55)
(142)
不採用
(N)
学校種によって奨学金の受給率が異ならないことから、奨学金の受給に関して学校種による格
差は存在していないようにみえる。しかし、そもそも家計の収入分布が大学進学者と専門学校進
学者の間では大きく異なっているにもかかわらず(専門学校:平均 691 万円、私立大学:平均
842 万円、国公立大学:平均 823 万円)、相対的に低所得者層が多い専門学校進学者の受給率が
大学進学者のそれとほとんど変わらないのである。もちろん日本学生支援機構の奨学金は貸与で
あるから、将来の返還のことを不安視して利用を回避する行動(ローン回避)をとる者が一定の
割合で存在しうるし、奨学金の受給に当たっては学力基準も影響を及ぼす。とはいえ、前節で明
- 204 -
らかにしたように「預貯金の取り崩し、学資保険」
、民間の教育ローンを利用して学費を負担し
ている家計が、大学進学者の家計よりも専門学校進学者の家計において多いことを考えれば、専
門学校進学者に対する奨学金の受給水準が十分ではないことをこれらの結果は示唆している。
また、今回の調査では第二種奨学金を受給している者に対して、その貸与月額を尋ねている(第
二種奨学金は貸与月額を選択可能)
。図表は省略するが貸与月額の平均値をみると、国公立大学
では平均 5.71 万円であるのに対して、専門学校では 7.21 万円と高くなっていた。専門学校生の
場合、35.4%の者が月額 10 万円以上を選択しているのに対して、国公立大学では 11.7%、私立
大学でも 17.4%しか月額 10 万円以上を選択している者はいない。四年制大学よりも修業年限が
短いので貸与総額は少なくて済むため、高い貸与月額を選択しやすいという事情はあるにしても、
専門学校の方が学費の負担において奨学金への依存度が高いことは明らかであろう。
6. 非進学者の潜在的進学希望
今回の調査では高卒時に就職した子供のいる保護者に対して、「できれば大学に進学して欲し
かった」か、「できれば専門学校に進学して欲しかった」か、を尋ねている。ここではさらに、
「経済的に進学が難しかった」という質問への回答によって、大学あるいは専門学校への潜在的
進学希望がどの程度あったのかを集計した(表 9-6)。ここで「経済的に進学が難しかった」か
どうかを考慮するのは、仮に潜在的な進学希望があったとしても、主として学力面で進学を断念
するケースも想定されるためである。すなわち経済的理由による進学断念者を抽出したいという
意図による。
表 9-6 高卒時非進学者の潜在的進学需要(%)
できれば大学に進学
して欲しかった
できれば専門学校に
進学して欲しかった
(N)
今回の調査
2012 年調査
経済的に進学が難しかった
経済的に進学が難しかった
あてはまる
あてはまらない
あてはまる
あてはまらない
22.2
28.8
28.4
22.5
26.7
19.2
41.8
22.5
(45)
(73)
(67)
(102)
今回の調査では、
「経済的に進学が難しかった」とした者のうち、
「できれば大学へ進学して欲
しかった」とする保護者は 22.2%、
「できれば専門学校に進学して欲しかった」とする保護者は
26.7%であり、大学よりも専門学校に進学して欲しかったとする者がやや多いという結果になっ
た(表 9-6 の左側)
。
今回の調査の1年前に、2012 年 3 月に高校を卒業した子供をもつ保護者を対象にした実施し
- 205 -
た調査(調査方法は全く同じウェブモニタ調査)では、表 9-6 の右側のような結果を得た10。
これによれば「経済的に進学が難しかった」者のうち、「できれば大学に進学して欲しかった」
者は 28.4%、
「できれば専門学校に進学して欲しかった」者は 41.8%であり、潜在的な進学希望
は大学よりも専門学校の方が明らかに大きかった。また、大学への進学を希望するかに対して、
経済的に進学が難しかったか否かによって生じる差は 6%ポイント程度であったのに対して、専
門学校への潜在的進学希望は「経済的に進学が難しかった」者では 41.8%、経済的理由以外で
進学しなかった者では 25.5%と大きな乖離が見られた。これらの結果から、学力面での進学障
壁が小さい専門学校の方が、経済的理由による進学断念者はむしろ多いのではないかという仮説
を立てていた。今回の調査ではその追試を試みたわけであるが、前年度の調査ほど明確な結果は
得られなかった。
「2. 保護者調査の概要」で示したとおり、今回調査では就職者が母集団から想
定される比率の半分程度に過ぎず、かなりのバイアスを生じていることが否めない。サンプリン
グによるバイアスの影響によるものであるかを含めて、上記の仮説については更に検証を進めて
いきたい。
7. おわりに
本章では、2014 年 3 月に実施した高校卒業後1年を経過した子供をもつ保護者に対する高卒
後の進路並びに進学した子供に対する教育費(学費)の負担状況に関するアンケート調査の結果
を報告した。実際のところ、調査を完了した直後ということもあり、本章における報告は一次集
計のレベルであり、さらなる検討課題も多い。ここでは現時点までに明らかになった知見及び今
後の検討課題を整理しておこう。
(1) 今回の調査は、標本の代表性という面で極めて問題が大きい。特に就職者並びに専門学校進
学者については明らかに母集団における比率よりも本調査に含まれるケースの比率がかなり少
ない。低所得者層の行動・意識の把握が十分になされていないことが推測され、進路分化の規定
要因を分析するためのデータとしては問題がある。ウェブモニタ調査という調査方法に固有の問
題点とも考えられるが、1年前に同じ方法を用いて実施した調査と比較しても、結果に大きなズ
レが生じている。したがって調査方法以外にも問題点がなかったかを検証する必要がある。また、
今回の調査を分析するに当たっては適切なウェイト付けによりサンプルを補正する方法を検討
する必要がある。
(2) 今回の調査では家計の収入水準と専門学校への進学との関係については、
「1050 万円以上」
の高所得層を除いて明確な関連を見出すことができなかった。この結果は先行研究における調査
結果とは大きく異なるものであり、(1)で指摘した標本抽出上の問題点との関連を含めて更に検
証する必要がある。一方で、保護者の学歴など社会的属性と専門学校進学との関係については従
前の調査結果と同様の傾向が確認された。多変量解析等の方法を用いて、経済的要因と社会的属
性との相互作用についてさらなる検証を要する。
(3) 家計による学費の負担状況については、専門学校進学者と大学進学者の間には差異があるこ
- 206 -
とが確認され、専門学校進学者においてより家計負担が厳しい状況にあることが示唆された。た
だし今回の報告で示した解釈は、マクロレベルでの集計結果(主として学校種間での平均値の差
異)から導かれる推論あるいは仮説の域を出ていない。とりわけ学費の負担構造に関しては個々
の家計によって分散がかなり大きいことが予測されるため、費用負担のパターンを類型化し、そ
れらが社会・経済的要因とどのように関連しているのかなどミクロレベルでの分析を行う必要あ
る。
我々の研究グループでは、昨年度にも 2012 年 3 月高校卒業者の保護者を対象として、同一
の方法(ウェブモニタ調査)によるアンケート調査を実施している。その際もたしかに、大学進
学者の比率が高く、専門学校進学者の比率が低いという傾向が確認された。今回調査よりも母集
団における比率との差は小さく、また就職者の比率については母集団における比率とあまり差が
なかった。したがって、単にウェブモニタ調査という手法による問題だけではなく、アンケート
調査の内容が、例えば低所得者層にとって回答しにくいものであった点も影響したかもしれない。
2 実をいうと、今回の調査では就職者、専門学校進学者の比率が低いだけでなく、大学進学者
に関してもバイアスが大きい。学校基本調査によれば、2013 年 3 月高校を卒業して大学に進学
した者(いわゆる現役進学者)のうち、国公立大学への入学者は 19.3%であるのに対して、今
回の調査では 26.2%に及ぶ。すなわち大学進学者に関しても、国公立大学に偏っているといわ
ざるをえない。
3 単に低所得者層の回答率が過去の調査に比べて低いだけならば、収入階層による進路の状況
に大きな変化は生じないはずである。したがって、今回の調査では低所得層の回答率が一律に低
いのではなく、低所得層の中でも、就職者や専門学校進学者の回答率が低いとみるべきであろう。
その結果、低所得層の大学進学率が高くなってしまっていることにも留意しなくてはならない。
4 アンケート調査では、授業料、生活費ともに直接、その金額を記入してもらうのではなく、
あらかじめ金額に一定の範囲を選択肢と設けて、いずれかの選択肢を選んでもらう方式で調べて
いる。したがって、実態とはある程度のズレが生じることは避けられない。例えば国公立大学の
授業料年額は 54 万円程度であるが、今回の調査では自宅生、自宅外生ともにその平均値は 72
万円程度となった(調査票では入学金を除く値を記入してもらうことは指示してある)。なお、
授業料、生活費それぞれの調査票上の選択肢と集計用に割り当てた値は以下のとおりである。
授業料・・・
「60 万円未満」=50 万、
「60-100 万円未満」=80 万円、
「100-150 万円未満」=125
万円、「150-200 万円未満」=175 万円、
「200-300 万円未満」=250 万円、「300 万円以上」=
400 万円。
生活費(月額)
・・・
「5 万円未満」=2.5 万円、
「5-10 万円未満」=7.5 万円、
「10-15 万円未満」
=12.5 万円、
「15-20 万円未満」=17.5 万円、
「20-25 万円未満」=22.5 万円、
「25 万円以上」
=27.5 万円。なお生活費は以上の各値を 12 倍して「年額」とした。
5 専門学校では授業料が「60 万円未満」とした回答が 10.8%であるのに対して、私立大学での
「60 万円未満」は 2.8%にとどまる。なお、公立の専門学校への進学者数は今回の調査では少な
いため、専門学校については設置者別の集計は提示しない。
6 ただし専門学校は2年課程が大半であるのに対して、私立大学は無論4年課程(以上)であ
る。したがって年間の授業料額はほぼ同じだとしても、課程修了までのトータルの授業料は大き
く異なることに留意されたい。
7 短大についても自宅外通学者の方が、授業料が低い傾向がみられるが、これについてもケー
ス数が専門学校進学者よりも更に少ないので統計的に有意な差があるとはいえない。
8 私立大学の場合、自宅外通学者の 39.4%が首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の大学に集
中しているのに対して、専門学校の自宅外通学者のうち首都圏の学校に在籍する者は 18.5%に
とどまる。なお、自宅外通学者の比率は、国公立大学 45.0%、私立大学 20.3%、専門学校 16.3%
1
- 207 -
であり、私立大学と専門学校の間ではそれほど大きな差があるとはいえない。自宅外通学者の比
率が高い国公立大学では、自宅外通学者に占める首都圏の大学への在籍者の比率は 11.5%であ
り私立大学に比べてかなり低く、各地域にまんべんなく広がっているといえる。私立大学と国公
立大学との間の生活費の違いも進学先の地域の違いによって説明できるであろう。
9 ただし、ここでも短大進学者のケース数が少ないので、学校種によって家計による負担割合
に統計的に有意な差があるとはいえない。
10 ただし、2012 年の調査では「できれば短大・専門学校に進学して欲しかった」として、短
大と専門学校を区別していない。今回の調査でも「できれば短大に進学して欲しかった」
、
「でき
れば専門学校に進学して欲しかった」のいずれかに「あてはまる」とした者をまとめて集計して
みたが、結果は表 9-6 ほとんど変わらなかった。
<文献>
小林雅之・濱中義隆・劉文君(2013)「大学進学と学費負担の構造に関する研究−高校生保護者
調査 2012 から」日本高等教育学会第 16 回大会 自由研究発表要旨
- 208 -
第9章
補論
潜在的進学可能者数の推計
小林雅之
意欲と学力がある者が経済的理由で進学できないことは、教育機会の均等という観点から大き
な問題である。憲法と教育基本法は、この点について触れ、公の学生への経済的支援を義務付け
ている。すなわち、教育機会の均等(equality of educational opportunity)は,日本国憲法第 26
条及び教育基本法第4条に規定されている,教育政策の最も主要な理念のひとつである1。これ
は本人にとっても機会が奪われているという点で問題だが、社会全体でも人材の浪費につながる
という問題である。ここでは、経済的理由で進学できなかった者がどのくらいいるのか、3つの
調査結果を用いて推計する。3つの調査を用いるのは、推計の基礎となる数字がアンケート調査
の結果、すなわち学生や保護者の意識レベルであるため、より多くの調査結果を用いて推計結果
を検討することが望ましいということと、3つの調査の質問項目が異なり、単に進学できなかっ
た者から、大学や短大や専門学校という学校種までの推計をしているためである。
1. CRUMP2006 から
高等教育機会の格差を信頼に足る実証的データに基づき示したのが、東京大学大学経営・政策
研究センターが実施した「全国高校生・保護者調査」(以下、CRUMP2006)による一連の研究
である2(小林(2008)など)図9補-1は、CRUMP2006 の調査結果から、経済的理由で進学でき
なかった者の数を、平成 23 年度の学生数をあてはめて推計を行ったものである。この推計によ
れば、経済的理由で進学できなかった者は約6万人であるが、そのうち、特に専門学校に進学し
たであろう者は 1.2 から 2.3 万人となっている。これは、毎年度のことであるから、決して小さい
数字とは言えない。
1 憲法第 26 条 すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。
教育基本法第4条第1項 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、
人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。第3項 国及び地方公共団体は、
能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。
この他に,高等教育における教育機会の均等を考える場合に重要な規定として,国際連合の 1946 年の世界人権宣言
(Universal Declaration of Human Rights)第 26 条 高等教育は,能力に応じ,すべての者に等しく開放されていな
ければならない。と 1966 年の「国際人権規約」(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights)
第 13 条第2項 C「高等教育は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,能力に応じ,すべ
ての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」があげられる。
2 この調査は、「高等教育グランドデザイン策定のための基礎的調査(文科省学術創成科学研究費)」(金子元久研究
代表)の一環として、全国 4,000 人(男女各 2,000 人)の高校生と保護者を対象に 2005 年 11 月に実施した調査である。
さらに 2006 年3月に、高校生の進路について追跡調査を行っている。ただし、保護者調査は 2005 年 11 月のみ実施し
た。
- 209 -
図9補- 1 経済的理由で進学できなかった者の推計
2. 高卒者保護者調査 2012 から
CRUMP2006 以降、その後の経済的状況の変化による教育機会の変化を調査するために、2012
年 3 月高卒者の保護者を対象に実施した調査3(以下、保護者調査 2012)が実施された。その結
果を用いて経済的理由で進学できなかった者の数を推計する。また、CRUMP2006 では、一般に
高等教育についての進学希望を尋ねているが、保護者調査 2012 では、大学と短大・専門学校と
分けて尋ねているため、より詳細な推計ができる。また、「給付型奨学金がもらえれば進学して
ほしかった」と学生への経済的支援についても尋ねているため、給付奨学金によって、どの程度
の人数が進学を選択する効果があるかも検討できる。
保護者調査 2012 では、就職者への質問として、「今春高校を卒業したお子さんが高校のとき
の生活や進路選択を振り返って、現在どのように感じていますか。」として、以下のような点に
ついてたずねている。その結果は、以下のとおりである(「とてもあてはまる」と「あてはまる」
と答えた者の回答者総数(進学者等も含む)に対する比率(就職者に占める比率))。なお、就
職者は全体の 15.9%。
3
この調査は、文部科学省科学研究費(基盤B)「教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究」
(研究代表小林雅之)による調査である。
- 210 -
・
できれば 4 年制大学に進学してほしかった
・
できれば短期大学・専門学校に進学してほしかった 5.1%(32.0%)
・
経済的に進学が難しかった
・
給付型奨学金(返済不要)がもらえれば進学してほしかった
3.9%(24.8%)
6.3%(39.6%)
5.1%(32.6%)
就職者の場合には、4年制大学の方が学力、学費負担力どちらも高くなるので、よりハードル
の低い短大・専門学校への進学希望が多くなっていると思われる。就職状況も関係ある可能性も
あるが、このデータではその点は確認できない。また、これらは重複していることにも注意する
必要がある。
図9補- 2 就職者の進学希望(全体に占める割合)
この数字をもとに平成 24 年度高卒者 105.3 万人にあてはめると以下のような推計となる。
・できれば4年制大学に進学してほしかった 3.9%
潜在的進学可能性のある者
105.3 万人*3.9%=4.1 万人
・できれば短大・専門学校に進学してほしかった 5.1%
潜在的進学可能性のある者
105.3 万人*5.1%=5.4 万人
・経済的に進学が困難だった 6.3%
潜在的進学可能性のある者
105.3 万人*6.3%=6.6 万人
・給付型奨学金をもらえれば進学してほしかった
- 211 -
105.3 万人*5.1%=5.4 万人
ただし、両者には重複がある点に注意する必要がある。また、学力など経済的要因以外の理由
で進学していない者もあり、こうした点については、次に検討する。その意味では、この推計値
は過大である可能性に注意しなければならない。
そこで、次に経済的理由で、4年制大学に進学することが難しかった者の数の推計を行う。表
9補-1のように、就職者について、「経済的に進学が難しかった」に「とてもあてはまる」と
回答し、かつ「できれば4年制大学に進学してほしかった」に「あてはまる」という回答の割合
は 3.0%である。「経済的に進学が難しかった」に「あてはまる」と回答し、かつ「できれば4
年制大学に進学してほしかった」に「とてもあてはまる」という回答の割合は 2.4%である。さ
らに「あてはまる」が 5.9%となっている。これらの合計が「経済的に4年制大学に進学が難し
かった」者ということになる。つまり、「経済的に進学が難しかった」と回答し、かつ「4年制
大学に進学してほしかった」と回答した者の割合は、表9補-1のハイライトした部分で、合わ
せて就職者の 11.3%である。
高卒後の進路が就職は 15.9%(2012 年度学校基本調査では 16.8%)だから、高卒者 105.3 万
人*16%*11%で給付奨学金がもらえれば 4 年制大学に進学してほしかった者の数は約 1.9 万
人と推計できる。
なお、ここで学校基本調査の就職者割合より保護者 2012 の数値を用いたのは、
過大推計の恐れがあるため、低く見ていることによる。
表9補- 1 「経済的に進学が難しかった」と「4年制大学に進学してほしかった」(就職
者に占める割合)
(出典)保護者調査 2012 年
同様に、経済的理由で、短大・専門学校に進学することが難しかった者の数の推計を行う。
「経
済的に進学が難しかった」と回答し、かつ「短大・専門学校に進学してほしかった」と回答した
者の割合は、表9補-2のハイライトした部分で、合わせて就職者の 16.5%である。
高卒者 105.3 万人*16%*16%で給付奨学金がもらえれば短大・専門学校に進学してほしか
った者の数は約 2.7 万人と推計できる。
- 212 -
表9補- 2 「経済的に進学が難しかった」と「短大・専門学校に進学してほしかった」(就
職者に占める割合)
(出典)保護者調査 2012 年
また、給付型奨学金がもらえれば4年制大学に進学する可能性のある者が、就職者全体に占め
る比率は、表9補-9補-3のハイライトの合計で 13.1%となる。
高卒者 105.3 万人*16%*13%で給付奨学金がもらえれば 4 年制大学に進学する可能性のあ
る者の数は約 2.2 万人と推計できる。
表9補-9補- 3 給付型奨学金がもらえれば進学してほしかった*できれば4年制大学に
進学してほしかった(回答者数を分母)
(出典)保護者調査 2012 年
表9補-9補- 4 給付型奨学金をもらえれば進学してほしかった*短大・専門学校に進学し
てほしかった
(出典)保護者調査 2012 年
短期大学・専門学校についても、同様に推計すると、「給付型奨学金がもらえれば進学してほ
しかった」と「できれば短大・専門学校に進学してほしかった」から推計すると、4のように、
- 213 -
18.9%となる。就職者は、高卒後の進路
就職 15.9%(2012 年度学校基本調査では 16.8%)だ
から、高卒者 105.3 万人*16%*19%で約 3.2 万人と推計できる。
3. 保護者調査 2013 年からの推計
保護者調査 2013 は、保護者調査 2012 と質問はほぼ同じであるが、「できれば短期大学に進学
してほしかった」(回答者総数に対して「とてもあてはまる」0.3%、「あてはまる」0.8%、合
わせて 1.1%)と「できれば専門学校に進学してほしかった」(「とてもあてはまる」0.5%、「あ
てはまる」1.6%、合わせて 2.1%)を分けて尋ねている。また、「4年制大学に進学してほしか
った」(「とてもあてはまる」1.1%、「あてはまる」1.8%、合わせて 2.6%「経済的に進学が難
しかった」(「とてもあてはまる」1.3%、あてはまる 2.2%、合わせて 3.5%)、「給付奨学金
がもらえれば進学してほしかった」(「とてもあてはまる」1.1%、「あてはまる」、1.0%、合
わせて 2.1%)となっている。保護者調査 2012 に比べていずれの比率も低いが、これは就職が全
体の 8.5%しかないためである。
就職者のみの比率で比較すると以下のようになる。括弧内は 2012 年度。
・
できれば 4 年制大学に進学してほしかった
・
できれば短期大学・専門学校に進学してほしかった
31.3%(24.8%)
短期大学 11.5%、専門学校 22.9%
(32.0%)
・
経済的に進学が難しかった
・
給付型奨学金(返済不要)がもらえれば進学してほしかった
38.2%(39.6%)
22.9%(32.6%)
このように、項目によってやや差はあるが、全体に占める割合より、就職者に占める割合の方
が保護者 2012 に近いため、以下の推計は 2013 年度高卒就職者数 18.4 万人をもとに、保護者調
査 2013 の就職者に占める比率を乗じて推計する。
まず、以上の数字から単純に潜在的高等教育進学可能者数を推計すると以下のとおりになる。
・4年制大学進学可能性のある者
5.8 万人
・短期大学進学可能性のある者
2.1 万人
・専門学校進学可能性のある者
4.2 万人
・経済的に進学が困難な者
7.0 万人
・給付奨学金がもらえれば進学可能な者
4.2 万人
これらは重複しているので、保護者調査 2012 と同じように推計を行う。いずれも推計の方法
は保護者調査 2012 と同じため、結果のみ示す。
- 214 -
経済的理由で進学が困難な者でかつ
・4年制大学進学可能性のある者
2.1 万人
・短期大学進学可能性のある者
1.0 万人
・専門学校進学可能性のある者
2.1 万人
・給付奨学金がもらえればいずれかの高等教育機関へ進学可能性のある者
3.2 万人
先に述べたように、保護者調査 2013 は就職者の比率が低いため、学校基本調査の数字を用
いてもなお低い推計値となっている。
同様に、給付奨学金がもらえれば進学可能性のある者
・4年制大学進学可能性のある者
2.5 万人
・短期大学進学可能性のある者
1.1 万人
・専門学校進学可能性のある者
2.1 万人
4. 保護者調査 2012 と保護者調査 2013 の推計の比較
最後に保護者調査 2012 と保護者調査 2013 の推計結果を比較する(括弧内は保護者調査 2012
の推計値)
・4年制大学進学可能性のある者
5.8 万人(4.1 万人)
・短期大学進学可能性のある者
2.1 万人(短大・専門学校 5.4 万人)
・専門学校進学可能性のある者
4.2 万人
・経済的に進学が困難な者
7.0 万人(6.6 万人)
・給付奨学金がもらえれば進学可能な者
4.2 万人(5.4 万人)
各推計値には若干の相違があるが、ほぼ同じ推計値となっているものもある。
次に、経済的理由で進学が困難な者でかつ
・4年制大学進学可能性のある者
2.1 万人(1.9 万人)
・短期大学進学可能性のある者
1.0 万人(短大・専門学校 2.7 万人)
・専門学校進学可能性のある者
2.1 万人
・給付奨学金がもらえれば進学可能性のある者
3.2 万人(4.2 万人)
同様に、給付奨学金がもらえれば進学可能性のある者
・4年制大学進学可能性のある者
2.5 万人(2.2 万人)
・短期大学進学可能性のある者
1.1 万人(短大・専門学校 3.2 万人)
・専門学校進学可能性のある者
2.1 万人
- 215 -
このように、両者の推計値はかなり近く、誤差は見込む必要があるが、現在のところでは、最
も現実に近いものではないかと思われる。しかし、これらはかなり荒い推計であることは否めな
い。しかし、こうした潜在的な進学可能性をアンケート調査で得た数値によって、推計を重ねる
ことで現実により近づくことができるのではないかと思われる。そのためにも、こうした調査研
究を積み重ねていく必要があろう。
- 216 -
第10章 都道府県調査からみた専修学校生への経済的支援
圓入 由美、船木 茂人
(文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室)
10.1 はじめに
教育基本法第4条3号では、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理
由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない」とされているが、経
済的な理由により専修学校への進学や入学後の修学の継続を断念する専修学校生の存在に対し、
学生への経済的支援の在り方をどのように考えていくのか。本調査では、専修学校生への経済的
支援の在り方を検討する中で、専修学校生に対する国及び地方公共団体の役割を検討するに当た
り、都道府県における支援の現状及びそれらに対する認識を中心に把握するため、13 県へのヒ
アリングと全県に対するアンケート調査を行った。
今回の調査では、各都道府県における高等専修学校及び専門学校を中心に行い、それらの役
割に対する認識や公財政支援の現状を中心に報告をまとめる。専修学校制度創設以降、学校の
役割や社会的背景などを踏まえた専修学校生に対する経済的支援の在り方に関する調査研究
は行われておらず、特に違いがみられる地域間や他の学校種との違いを踏まえた分析等につい
ては、今後の方向性を検討するに当たり十分ではないため、引き続き調査研究を行う必要があ
る。なお、各都道府県別の調査結果等については、本報告書の付録の参考資料を参照されたい。
10.2 調査の概要
調査方法は次のとおりである。
① ヒアリング調査
平成25年11月:13都道府県の専修学校所管課を訪問し、私立専修学校(専門学校24、高等
専修学校1校)及び公立専門学校(看護1、農業大学校1)調査票を基に実施。
②
アンケート調査
平成26年1月30日~3月7日:47都道府県。私立専修学校所管課及び公立専修学校所管課を
対象に実施。
(参考)専修学校数
出典:25 年度学校基本調査
- 217 -
10.3
調査結果の概要
本調査では、都道府県の専修学校所管部局において、専修学校の役割に対してどのような認
識が持たれているか、また、その傾向と各県の専修学校及び専修学校生に対する支援の現状と
の関係はどのような状況にあるのかをまとめている。
都道府県の専修学校担当部局に対するアンケート調査において、専修学校に関する認識をみ
ると、各所管部局においては、半数以上が後期中等教育以降の進路の選択肢としての職業教育
機関であるとともに、地域の産業、医療や介護等を支える専門人材を育成する教育機関として
の役割を果たしているとの認識を有している。
一方で、各県の学校に対する助成も含めた公財政支援の現状は大きな差がみられた。高等専
修学校においては高等学校と同様に位置づけを行い、学校助成だけでなく授業料減免などの生
徒への経済的支援を行う県は約20県にのぼる。
専門学校においては学校数・学生数の多少に関わらず学校助成がなされている県と、学校助
成及び学生への支援もほぼ対応されていない県もみられる。これら地域間の公財政支援の違い
は、各地域の専修学校に対する役割に対する認識が専修学校に学ぶ生徒・学生への経済的支援
の在り方にも大きく影響を与えていると推察される。以下、各調査項目の結果及びヒアリング
から導かれる結果をとりまとめる。なお、以下の集計は、無回答の項目を除いた集計を行った。
10.3.1 専修学校における現状及び認識
(1) 専修学校の現状
①最近の動向
高等専修学校は、序章で述べられているように学校数・生徒数は小規模ながらも、中学卒
業時点で、実践的な職業教育の機会を提供するなど、特色ある教育を展開している。また、
不登校や中途退学を経験した生徒も積極的に受入れ、これら生徒の自立を支援する機能を果
たしてきており、高等専修学校の入学者の半数以上が、中学校卒業直後の入学ではなく、そ
れ以後に入学した者となっている。
専門学校は、社会の変化に即応した実践的な職業教育により中核的人材を輩出し、経済の
動向にかかわらずi一定の就職率を誇る教育機関として大きな役割を果たしており、全国平均
で高等学校から約17%が進学している(図10-1)。大学よりも地元から進学し地元へ就職
する傾向があることや、地域によっては、3人に1人は専門学校へ進学する1など、地域にお
ける高等教育段階における実践的な職業機関として、その役割を果たしている。
1
大都市を除く地方において専門学校進学の割合が高い地域がみられる。参考資料を参照。
- 218 -
図10-1
県別学校数と進学率
専修学校の課題は、序章で指摘されたように、専修学校における質保証が十分でないと
いう指摘がある。平成19年度に学校教育法が改正される際、他の学校と同様、自己評価は
義務化、学校関係者評価は努力義務化となったが、専修学校においてこれらの取組の実施
率は高くはない。このため、文部科学省の有識者会議において「専修学校における学校評
価ガイドライン」が検討され、平成25年3月に策定された。さらに、平成25年8月には、
企業・業界団体等と密接な連携により、最新の実務の知識等を身につけられるよう教育課
程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専門課程を都道府県の
推薦を通じて文部科学大臣が認定し、奨励する「職業実践専門課程」が創設された2。専修
学校における質保証・向上の取組を促進する取組が行われている。その他、我が国におけ
る産業構造の変化やグローバル化へ対応するため、社会人の学び直しの機会を提供する実
践的な職業教育機関として、国の雇用施策等においても、専門学校が果たす役割が期待さ
れている。
2
中央教育審議会の平成23年1月答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方につい
て」において提言された高等教育段階における実践的な職業教育の充実を図るための新たな枠組みの趣
旨を踏まえた取組として開始。企業・業界団体等との連携による教育課程編成、実習・演習、研修、学
校関係者評価及び情報提供等を要件として文部科学大臣の認定を行うものである。
- 219 -
② 都道府県における現状把握(アンケート及びヒアリングより)
都道府県所轄部局においては、専修学校への進学状況、及び県内外の就職状況や、学校の設
置認可・届出、補助金交付、経営の指導等の観点から専修学校の運営状況などについて把握し
ているが、「私立学校の自主性の尊重」を前提に、その教育の内容・方法等の実態についてま
では必ずしも具体的に把握し、指導が行われているわけではない。
一方で、国により平成22年度から開始された高等専修学校生に対する高校生等修学支援金や、
平成23年度補正予算から措置されている被災児童生徒等授業料減免事業等の業務を通じ、制度
開始以前に比べ専修学校の生徒・学生の経済的な状況及び就学の状況などの状況把握が行われ
ている。また、平成25年3月に国により「専修学校における学校評価ガイドライン」が策定さ
れたことを受け、今後は専修学校教育の質保証・向上に対する何らかの取組を行う、又は検討
するとの回答があり、専修学校の質保証・向上の必要性が半数以上の県で認識されていた3。さ
らに、平成25年8月に創設された職業実践専門課程を通じ、今後は都道府県所管部局と専修学
校教育との関わり方等について、これまでとは異なる対応の在り方について検討されていると
いう回答もあった。
(2)
専修学校の役割に係る認識
専修学校を所管する都道府県の担当部署の高等専修学校に対する認識について、どのような
傾向があるかをみる。図10―2は私立高等専修学校、図10-3は私立専門学校、図10-4は公
立専門学校の役割に係る認識を聞いたものである。私立高等専修学校4、私立及び公立の専門学
校ともに、「中学校卒業、高校卒業段階で特定の職業に関心をもった生徒の進学先としての役
割を果たしている」、「地域の産業、医療や介護等を支える専門人材を育成する教育機関とし
ての役割を果たしている」が多く、専修学校は地域における重要な職業教育機関であると認識
されている。また、高等専修学校に対する認識として、「不登校や高校中退を経験している生
徒等を受入れ、特色ある独自の教育を通じ後期中等教育における多様な学習機会の提供を行っ
ている」を多くが選択しており、専門学校と異なる高等専修学校教育の特色の一つとして意識
されていることがうかがえる。
3
4
平成 25 年2月「専修学校教育の質保証・向上に関する調査研究協力者会議(文部科学省)」における検
討に当たり、都道府県所管部局における専修学校教育の質保証・向上に係る意識調査を行った結果
公立の高等専修学校については、アンケート回答数が 3 件のみであっため、ここでは付記していない。
- 220 -
図10-2
図10-3
専修学校(高等課程)の役割に係る認識
私立専修学校(専門課程)の役割に係る認識
- 221 -
図10-4
(参考)
公立専修学校(専門課程)の役割に係る認識
都道府県アンケート自由記述より
専修学校の役割として、アンケート等からも同様の意見が多かった。
○ 専修学校は、社会・経済の変化を的確にとらえ、時代や地域のニーズに柔軟に対応できる
実践的な職業教育機関として、有為な人材を多数輩出し、地域の産業や教育文化の振興に貢
献しており、重要な役割を果たしていると認識。
また、専修学校を卒業し就職した者のうち、自治体内就職者割合をみると他の学校種に比
べ高く、地元の産業経済の発展に寄与。
○ 大学入学資格付与校である高等専修学校は高校と同様に考え対応してきたが、専門学校は
、昭和51年の専修学校制度創設時の資格取得、カルチャー・スクール的なイメージのまま
で対応しており、現在は、地元の職業人を育成する機関であると認識しながら踏み込んだ支
援ができていない。
○
私立専修学校は、高等学校や中学校の進学先として、また、産業県である本県において、
専門職業人を育てる重要な教育機関であると認識。
また、高等課程を有する専修学校は、不登校や家庭の事情などで、高等学校に進学できな
かった生徒の受皿として、重要な役割を果たしていると認識。
○
地元産業を支える重要な人材養成の一翼を担う地域密着型の教育機関。
- 222 -
10.3.2 専修学校に対する国及び地方公共団体の財政支援の現状・課題
(1) 国と地方公共団体の行政上の役割と財政支援
専修学校行政においては、国と地方の役割の違いを踏まえた施策を行ってきた。専修学校
制度は、国が定める法令に基づき運用されており、国は、専修学校が、その教育の質を確保
しつつ、それぞれの時代の社会的要請に合った教育活動を展開していけるよう既存の制度の
見直しを行ってきた。また、全国の専修学校教育の水準の維持向上に資するよう、現状把握・
分析、モデルカリキュラム等の開発・実証など先進的な取組への支援を行うとともに、地方
交付税の措置が行われている。さらに、経済的に修学が困難な者の教育機会の確保の観点か
らは、高等専修学校生の修学支援金や、専門学校生への(独)日本学生支援機構の奨学金な
どの経済的支援が行われている。
一方、専修学校制度においては、都道府県が専修学校を所轄することとされ、設置等の認
可や届出の受理、法令遵守等に関する指導などは、都道府県所管部局が担っている。また、
各学校に対する学校助成(運営費、共済掛金等への補助)、学生生徒への助成(奨学金、授
業料減免等)の補助も、都道府県により実施されてきた経緯がある。
このような経緯及び制度上の観点を踏まえると、専修学校行政における国及び地方の役割
としては、都道府県間の格差の是正や、実践的な職業教育の質保証・向上や国際通用性の維
持等に係るものは国が行い、地域内の格差の是正や、地域の職業教育機関としての専修学校
教育の機能強化に係るものは地方が担うこと等が概ね想定されていると考える。
さらに、教育水準の維持・向上や、教育機会の確保に係る各種支援策については、全国的
な観点から必要となる施策を国が、地域の観点から必要となる施策を地方が担うこととなる
が、具体的に経済的支援策を検討する場合、どのような全国的な観点から国が行うのか、ま
た地方の観点から行うのかは、別途個別の検証が必要となる。
図10-5
専修学校行政における国と都道府県の役割の概念
国の役割
都道府県の役割
●専修学校制度の制定・改廃
●専修学校に係る制度の執行(設置等の認
可・廃止、届出受理、経営指導、法令遵守
等の指導など)
●専修学校教育の振興
●全国的視野からの専修学校教育の水準の
維持・向上
●我が国の産業、生活を担う専門人材育成を
行う専修学校教育の機能強化
●域内における専修学校教育の水準の維
持・向上
●地域における中核的な職業教育機関の機
能強化
- 223 -
●全国的視野からの専修学校教育へのアク
セスの支援
●域内における住民の専修学校へのアクセ
ス支援
(2) 専修学校に対する国及び地方公共団体における財政支援の現状
私立専修学校全体に対する都道府県の助成額は、学校助成では最小800万円から最大400億
円まで、また、生徒学生助成は、措置していない県から最大15億円までと、その総額につい
て大きな開きがある。学校助成は生徒・学生1人当たりの外形的な計数で算出される場合が
多く、生徒・学生数が多いほど学校に対する財政支援が多いという傾向はみられるが、中に
は学生数に関係なく専門学校に対する助成を行っていない県もある(図10-6)。
これらの違いは一概に言えないが、ヒアリング等によると、高等専修学校生に対する学校
助成、授業料減免事業などは、高等学校に類する高等専修学校への支援として、高等学校と
同様の支援を行う必要があると考えるケースが多かった。一方で、高等専修学校に対し、同
様の支援の必要性が整理されていないケースもあった。また、専門学校においては、大学と
同様に全国的な観点から国が行うべきであると考え専門学校に対する支援がなされていな
いケースと、地域の職業教育を担う中核機関として積極的に捉え、教育機能の強化につなが
る支援策を講じるケースも少なからずあった。
図10-6
都道府県別財政支援の状況(一部のみ掲載)
- 224 -
図10-7
項目別の専修学校への助成状況と生徒・学生数
学校助成、学生・
生徒助成、団体助成(
千円)
※学生・生徒助成のうち、助成対象に高校生を含むものは在学者数で額を補正している。
出典:平成 25 年度専修学校各種学校都道府県別助成状況(全国専修学校各種学校総連合会)
10.3.3 専修学校生に対する授業料減免等への支援の現状
(1)授業料減免事業の実施状況等
序章で指摘されているように、高校卒業生保護者調査によると、将来の返済に対する不安か
ら進学を断念した層が認められる。これらの者に対し、経済的な基準による授業料等減免など
の支援は、貸与の奨学金と比べ、授業料等の負担軽減とともに貸与奨学金の返済への負担感を
軽減することが考えられる。
私立高等専修学校については、地域の職業教育を担い、不登校・中退の経験がある生徒など
を含めた多様な生徒の受入れ、特色ある教育を行う後期中等教育段階の一つの進路としてその
役割を重視し、学校助成を行うとともに国の高等専修学校生に対する就学支援金以外に県の単
独事業などを活用し授業料減免事業を行う県が21県(平成25年)となっている。これらの支援の
あるところは、一人当たりの補助額の差はあっても、高等学校生と同様の支援を行う県が多い。
一方で高等専修学校生への就学支援金以外の支援策がない県もあり、一人当たり単価、総額と
も地域間の支援の差は大きく開いている(図10-6)。
- 225 -
私立専門学校については、地域の高等教育段階における実践的な職業教育機関として認識は
あるものの、学校助成を行う県と行っていない県の差は大きい。また、平成25年度において
は、学生への授業料等減免事業を県単独の事業で支援を行っているのは1県のみであるなど専
門学校生に対する経済的支援はほぼ行われていない。また、都道府県において、専門学校生に
対する経済的支援の詳細については把握されていないのが現状である。一方で公立の看護、農
業関係の専門学校においては、その役割を踏まえた学校助成及び授業料等減免事業など学生に
対する支援が行われている。
私立専修学校に対し生徒・学生に対する経済的支援を行っていない県は、県の財政状況が厳
しい中で、新たに生徒・学生への授業料減免等の給付的な支援を行うことについて相当難しい
という意見が多数であった。
(2)授業料減免事業に係る具体的な要件等
都道府県事業として行われている高等専修学校及び公立の専門学校における授業料等減
免の補助要件は、主に生活保護世帯等の経済的困窮者を対象としているものが多かった(図
10-8、10-9)。一方で、3章で指摘されているように私立専門学校における授業料等減
免事業では、学力等の要件が多く、公的な経済的支援の観点の違いが明確に見られた。これ
ら傾向の違いについては、ヒアリング等によると、私立学校において限られた財政状況の中
で、特に経営上の観点から学力等に着目した事業としていることが考えられる。
なお、授業料等減免の対象は、主に授業料となっており、学生生活費の中で教育費負担軽
減の対象を授業料に優先して支援が行われている(図10-9)。
図10-8
授業料等減免事業の要件(私立高等課程)
- 226 -
図10-9
授業料等減免事業の対象経費(私立高等課程)
高等課程における授業料等減免事業の補助率については、家計水準に応じて全額、1/2、
その他基準を設けている(図10-10)。また、減免の対象となる設置者は学校法人以外の設置
者も対象となるものがみられた(図10-11)。修業年限は2年以上3年未満、3年以上4年未満が
多いが、1年未満から4年まで対象としニーズに応じた柔軟な対応がなされていることが考え
られる(図10-12)。
図10-10
図10-11
授業料等減免事業の補助率(私立高等課程)
授業料等減免事業の対象となる設置者(私立高等課程)
- 227 -
図10-12
授業料等減免事業の対象となる修業年限(私立高等課程)
公立の専門課程における授業料等減免事業の補助率についても、家計水準に応じて全額、
1/2その他基準を設けている。授業料等減免の対象は、主に授業料となっており、学生生
活費の中で教育費負担軽減の対象を授業料に優先して支援が行われているほか、寄宿舎使用
料なども対象とするものもあった(図10-14)。
修業年限は1年以上2年未満が多いが、1年未満から4年まで対象としニーズに応じた柔軟
な対応がなされていることが考えられる。
図10-13
授業料等減免事業の要件(公立専門課程)
- 228 -
図10-14
図10-15
授業料等減免事業の対象経費(公立専門課程)
授業料等減免事業の対象経費(公立専門課程)
都道府県等が行う私立高等専修学校及び公立専門学校に対する授業料等減免支援の要件等
は総括すると次のようなパターンが整理できる。
- 229 -
(3)都道府県担当部局における授業料等減免制度の効果・影響・課題に関する意識
私立学校所管部署と、公立学校所管部署における授業料等減免制度創設に対する効果・影
響など認識について、どのような傾向があるかをみる。私立学校所管部署においては、私立
高等専修学校及び私立専門学校ともに「父母負担が軽減される」「低所得者への支援は、生
徒の多様な進路を選択する上においても必要である」が多く選択されており、授業料等減免
制度の効果や必要性が認識されている(図 10-16,図 10-17)。
一方で、授業料等減免制度の制度化については、私立高等専修学校に比べ、私立専門学校
生に対する「現在の予算をスクラップしてまで導入することは困難である」、「基金などの
特定財源が措置されない限り制度化は困難である」を選択した県が多かった。既に高校生等
修学支援金等で支援がなされている私立高等専修学校や授業料等減免支援がなされている
公立専門学校よりも、私立専門学校の授業料等減免制度の実現に困難さを感じていることが
伺える。
一方で、「他の都道府県を参考に前向きに検討したい」について「とてもそう思う」「や
やそう思う」の選択が合わせて3割あることを踏まえると、財源等の課題を含め制度創設に
向けた検討の必要性が認められる。
- 230 -
図10-16
授業料等減免制度の効果・影響・課題(私立高等課程)
図10-17
授業料等減免制度の効果・影響・課題(私立専門課程)
- 231 -
図10-18
授業料等減免制度の効果・影響・課題(公立専門課程)
(参考)都道府県ヒアリングより
○ 仮に、専門学校生に対し、新たな授業料減免等事業創設を検討するとしても、他県から
の学生の受入れ、高等教育段階の私立学校への必要性への認識の低さなどから自治体が単
独で事業創設することに対し、理解を得ることは困難(被災児童生徒等授業料減免のよう
な国の特別補助がない限り自治体内での要求も不可能)。
○ 地域のニーズが高い医療・福祉、工業、観光等の分野における専門的な職業教育機関の
重要性を認識し、それらに在籍する学生で、経済困窮度の高い学生への何らかの支援の必
要性は感じているものの、国の特定財源がない限り、自治体の中で要求しても実現可能性
がない。
○ 専修学校は、他の学校種と違い、事務の体制・規模も小さく就学支援金や奨学金、学び
直しへの支援等の拡充が行われることによる新たな事務負担の軽減が課題。
○ 震災後の厳しい状況が続いているため、被災児童生徒等授業料減免事業の継続をお願い
したい。
(4)地域間の支援の違い
各都道府県及び国の支援の現状を整理すると、生徒・学生に対する支援の厚い場合とそ
うではない場合のイメージをまとめてみる。
私立高等専修学校生については、高校生等就学支援金に加え、都道府県の単独事業によ
る授業料等減免と貸与奨学金の支援を受けている生徒がいる一方で、高校生等修学支援金
- 232 -
の支援のみということも想定される。また、公立及び私立専門学校生については、(独)
日本学生支援機構の奨学金に加え、都道府県の単独事業による授業料等減免の支援を受け
ている学生がいる一方で、(独)日本学生支援機構の奨学金の支援のみということも想定
される。
このように、生徒・学生に対する経済的支援については、国による高校生等修学支援金
や(独)日本学生支援機構の奨学金などの国の支援のほかに、都道府県事業による支援が
比較的薄い場合、支援が厚い場合との差が大きい。経済的な理由によって修学が困難な生
徒・学生のうち、地域間の公的な支援の違いにより、特に専門学校生が厳しい状況にある
と推察される。地域間の公的な支援において大きな差が専修学校生の修学に影響すること
が認められるのであれば、教育基本法第4条3号に定められているように、能力があるに
もかかわらず、経済的理由によって修学が困難な専修学校生に対し、都道府県との間で適
切に役割を分担しつつ、全国的な視点に立って国が果たすべき役割として奨学の観点から
必要な経済的支援を講じなければならない。
図10-19
専修学校生への経済的支援のイメージ
- 233 -
10.3.4 所轄庁の事務体制
専修学校は、都道府県が所轄庁となっており、各学校の設置運営に係る認可や処分、届出の
受理などの専修学校に対する指導監督は都道府県が行っている。
その中で、私立専修学校は知事、公立専修学校は教育委員会が所管となっている。これらの
公立専門学校で多くを占める看護及び農業等の公立専修学校は、その専門的な教育活動に係る
指導及び財政支援を含む運営支援については、関係する国の行政庁からの指導及び支援を受け
ながら、私立専修学校担当部局及び教育委員会以外の部署が日常的に行っている。
都道府県における専修学校行政の事務体制は、それぞれ実情は異なるが、多くの場合、必ず
しも充実した体制が備えられているわけではない。私立専修学校の担当部局の事務体制をみる
と、平成25年11月現在、専修学校に関する業務を担当している職員数が一人から二人に満たな
い都道府県は公立及び私立専修学校所管課とも半数を超えている。生徒・学生数等を勘案すれ
ばいずれの都道府県においても専修学校を担当する職員の事務体制は、都道府県ごとにも実情
は異なるが、多くの場合、必ずしも充実した事務体制が備えられているわけではない。高校生
等修学支援金制度を含め生徒・学生への経済的支援の在り方を検討するに当たり、適切な事務
体制及びそれらの支援に留意して検討を行う必要がある。
(参考)各都道府県における私立専修学校・各種学校事務担当職員の数
〔平成25年11月現在〕
- 234 -
参考
【教育基本法(平成十八年十二月二十二日法律第百二十号)(抄)】
(教育の機会均等)
第四条
すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければな
らず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2
国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられ
るよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3
国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者
に対して、奨学の措置を講じなければならない。
【学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)(抄)】
第一条
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支
援学校、大学及び高等専門学校とする。
第二条
学校は、国(国立大学法人法 (平成十五年法律第百十二号)第二条第一項 に規定す
る国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む。以下同じ。)、地方公共団体
(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項 に規定する公立大学
法人を含む。次項において同じ。)及び私立学校法第三条 に規定する学校法人(以下学校法
人と称する。)のみが、これを設置することができる。
2
この法律で、国立学校とは、国の設置する学校を、公立学校とは、地方公共団体の設置す
る学校を、私立学校とは、学校法人の設置する学校をいう。
【独立行政法人日本学生支援機構法(平成十五年六月十八日法律第九十四号)(抄)】
(機構の目的)
第三条
独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)は、教育の機会均等に寄与
するために学資の貸与その他学生等(大学及び高等専門学校の学生並びに 専修学校の専門課
程の生徒をいう。以下同じ。)の修学の援助を行い、大学等(大学、高等専門学校及び専門課
程を置く専修学校をいう。以下同じ。)が学生等 に対して行う修学、進路選択その他の事項
に関する相談及び指導について支援を行うとともに、留学生交流(外国人留学生の受入れ及び
外国への留学生の派遣を いう。以下同じ。)の推進を図るための事業を行うことにより、我
が国の大学等において学ぶ学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担
う豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に資するとともに、国際相互理解の増進に寄与す
ることを目的とする。
【私立学校振興助成法(昭和五十年七月十一日法律第六十一号)(抄)
】
(目的)
第一条
この法律は、学校教育における私立学校の果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方
公共団体が行う私立学校に対する助成の措置について規定することにより、私立学校の教育条
件の維持及び向上並びに私立学校に在学する幼児、児童、生徒又は学生に係る修学上の経済的
負担の軽減を図るとともに私立学校の経営の 健全性を高め、もつて私立学校の健全な発達に
資することを目的とする。
- 235 -
(私立大学及び私立高等専門学校の経常的経費についての補助)
第四条
国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は
研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。
2 前項の規定により補助することができる経常的経費の範囲、算定方法その他必要な事項は、
政令で定める。
(学校法人に対する都道府県の補助に対する国の補助)
第九条
都道府県が、その区域内にある幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校又
は特別支援学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育に係る 経常的経費につい
て補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助す
ることができる。
(その他の助成)
第十条
国又は地方公共団体は、学校法人に対し、第四条、第八条及び前条に規定するものの
ほか、補助金を支出し、又は通常の条件よりも有利な条件で、貸付金をし、その他の財産を譲
渡し、若しくは貸し付けることができる。ただし、国有財産法 (昭和二十三年法律第七十三
号)並びに地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第九十六条 及び第二百三十七条 か
ら第二百三十八条の五 までの規定の適用を妨げない。
(準学校法人への準用)
第十六条
第三条、第十条及び第十二条から第十三条までの規定は、私立学校法第六十四条第
四項の法人に準用する。
【私立学校法(昭和二十四年十二月十五日法律第二百七十号)
(抄)】
(私立専修学校等)
第六十四条 (略)
2,3 (略)
4
専修学校又は各種学校を設置しようとする者は、専修学校又は各種学校の設置のみを目的
とする法人を設立することができる。
5~7
(参考)国と地方の役割分担について
【地方分権改革推進法】
(地方分権改革の推進に関する国の施策)
第5条 国は、国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定める
ことが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全
国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施そ
の他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団
体にゆだねることを基本として、行政の各分野において地方公共団体との間で適切に役割を
分担することとなるよう、地方公共団体への権限の移譲を推進するとともに、地方公共団体
に対する事務の処理又はその方法の義務付け及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七
- 236 -
号)第二百四十五条に規定する普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与の整理及び
合理化その他所要の措置を講ずるものとする。
【地方自治法】
第一条の二
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行
政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
2
国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての
存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自
治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて
行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担
い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団
体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実
施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければなら
ない。
i
- 237 -
終章 調査のまとめと政策的インプリケーション
小林雅之(東京大学)
ここでは、これまでの調査の結果をまとめて、政策的インプリケーションを提示する。なお、
専修学校の高等課程、専門課程、一般課程の3つの課程では、学生への支援も異なっている。
このうち、本調査研究では、主に専門課程を中心に学生支援の現状を明らかにしてきた。ここ
での政策的インプリケーションも主として専門学校を念頭に置いていることをお断りしておく。
1.
専門学校生への支援を考える視座
本調査研究では、専門学校生への支援を検討するためには、短期高等教育というより広い視
座から検討することが重要であるということを強調した。短期高等教育はどのような性格を持
つのか。大きく分ければ、編入学と職業資格、準専門職教育という全く異なる2つの役割を持
っている。このことは短期高等教育を検討する際には重要であるが、問題を複雑化し、難しく
している要因でもある。このうち専門学校については、大学への編入学は制度的には認められ
ているものの、量的にはそれほど大きくなく、専門学校は準専門職教育に特化しているといっ
てもいいであろう。
第2に、短期高等教育は、地域に密着した性格をもっている。この点は、専門学校についても
極めてあてはまる。特に、大学に比べて相対的に低廉な教育費(短期、自宅通学可能)により
地域に高等教育機会を提供している。もっとも専門学校には 1 年制から 4 年制まであり、数は
少ないものの大学との相違が明確でなくなっているものもある。しかし、大部分を占める2年
制では大学に比べ短期であることから相対的に学費が安くなっている。2年間の放棄所得を考
慮すればその差は更に大きくなる。ただし、私立専門学校の場合には、授業料は大学に比べて、
それほど安価なわけではない。この点は、本調査研究の専門学校調査でも確認された通りであ
る。学生支援を検討する際には、こうした短期高等教育としての専門学校の特徴を押さえてお
く必要がある。本調査研究でも、設置者間や自宅と自宅外での教育費負担に差があること、し
かも地域による差があることが示された。都道府県により専門学校に対する支援にも大きな相
違がある。このような点も今後の学生支援の在り方を検討する上で重要な論点である。
2.
専修学校制度の発足と発展
第二に重要なことは、専修学校制度は昭和51年(1976 年)に発足した、短期高等教育とし
ても最も新しい制度であるということである。このため、同年度から5次にわたる高等教育計
画の中でも、計画の対象とはされず、市場の自由な発展に任せるという政策がとられてきた。
このことは、大学のように設置基準が厳格ではなく、自由度が高く、労働市場の動向や生徒の需
要に応じた教育を提供するというメリットがある反面、
質保証に課題を残しているとも言える。
このことは、専門学校生への公的補助を充実させるためにも、専門学校の質保証が重要な課題
- 238 -
となることを示唆している。
3.
日本の専門学校の独自性
専門学校は生徒数で女子が約 57%、私立が9割5分(学校数で 94%・学生数で 96%(文部
科学省「学校基本調査」平成 25 年度)
)である。短期大学に比べると私立の割合はほぼ同等で
あるが、短大は女子が約8割となっている。また、編入学は両者とも少ないが、専門学校は社
会人の再入学が多く、
「学び直し」の教育機関となっている。
さらに、地域に高等教育機会を提供しているという特徴は、短期大学とも共通している。本調
査研究で明らかにしたように、専門学校進学率についても都道府県別に大きな相違がある。そ
れは、専門学校が地域と密接に関連した教育機関であるという性格と裏表の関係にある。上に
も述べたように、専門学校の特性の多くは地域と関連しているが、それだけに地域間の相違が
大きいということでもある。
問題はこうした専門学校の特徴を今後どのように生かしていくかである。それによって学生
への支援の在り方も変わってくるであろう。
4.
専門学校の学生支援の特徴と支援の在り方
専門学校の学生への経済的支援について、これまでの分析から明らかになったことは、機関
レベルで見ると、公的な授業料減免などの制度が整っていないことである。都道府県別の差異
も大きい。他方、専門学校独自の授業料減免制度や奨学金制度は比較的多くの学校が取り入れ
ている。しかし、受給基準としては、経済的条件(ニードベース)より業績的条件(メリット
ベース)が多く、経済的な負担の軽減という点では、十分とは言えない。また、日本学生支援
機構奨学金の利用者は多いが、第1種奨学金の割当てが少ないことが多くの専門学校関係者か
ら聞かれた。この問題は専門学校に限ったことではなく、他の学校種でも同様の問題であるが、
本調査研究でも示されたように、経済的負担が多いわりに低所得層の多い専門学校生にとって
はより切実な問題である。日本学生支援機構奨学金だけでなく、様々な種類の経済的支援を受
けて学生生活が成り立っている学生もそれほど大きな割合ではないが、確実に存在している。
こうした様々に多様化した専門学校生への経済的支援の充実が今後の大きな政策課題であろう。
また、特に本調査研究で示されたように、2008 年の経済ショックの影響が学生生活にも現れて
おり、今後もこのような状況が続くとすれば、早急な対応が求められよう。
多くの学生が、日本学生支援機構奨学金で授業料を賄い、生活費については更にアルバイト
で賄っていることが明らかにされた。大学に比べ、必修カリキュラムが多く、朝から夕方まで
授業のある専門学校にとって、夜間や休日のアルバイトで生活費を賄っているという現実は、
学修時間の確保という点で大きな問題を残している。
この点からも、学生への経済的支援の充実
が求められている。
現在英米などで大きな問題となっている情報ギャップについても、専門学校生には問題があ
ることが明らかにされた。日本学生支援機構奨学金についてよく知らず、専門学校入学後に知
ったという学生が少なくない。同じく専門学校入学後も情報提供を十分に受けていない学生が
少なくないことが調査結果から明らかにされた。専門学校だけに限ったことではないが、情報
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ギャップを縮小する政策が求められている。
また、中退についても、専門学校側では比較的体制を整えて対応していることが明らかにさ
れた。このことは大学などと比較して、小規模で、クラス担任制が多く、高校に近い性格を持
つ専門学校の特徴にもよる。しかし、中退は増加の傾向にあり、今後より一層の中退防止の取
組が求められよう。もっとも必ずしもすべての中退に問題があるわけではなく、積極的な転学
などもあるが、経済的理由による中退が約1割という現状は、経済的支援の必要性を示してい
る。その際に、学校の中退防止の取り組みを支援するような公的な支援をどのように充実して
いくかが、今後の政策課題である。さらに、社会人については、ほとんどの専門学校が特別な支
援を行っていないことが明らかになった。この点についても、「社会人の学び直し」の政策課題
から、早急に対応が求められよう。
5.
今後の課題
上記のように専門学校生への経済的支援は、
単に学生支援の問題ではなく、より大きな専門学
校制度そのものあるいは短期高等教育制度そのものの問題である。更にいえば、大学とも共通
する高等教育全体の問題といってもいい点も多い。ある意味では、専門学校は、こうした問題
をより明確に、それだけに深刻にあらわしているとも言える。また、公的な学生への経済的支援
の問題としては、機関補助か個人補助かという問題、古典的ではあるが、いまだ十分に検討さ
れていない問題や、
国と地方の役割分担という大きな問題とも関わっている。
後者については、
都道府県によって学生への経済的支援に大きな差があることが明らかにされたが、このような
現状に対して、そもそも都道府県認可である専門学校に対して、国がどのように関わっていく
べきかという重要な問題がある。
本調査研究では、こうした点には十分に答えることはできなかった。また、専門学校、専門
学校生、専門学校生の保護者など、様々な大規模な調査を実施したが、時間の制約もあり、そ
れらの調査結果は十分分析されていない。直接政策課題に結びつくようなエビデンスを提供す
るためには、今後の課題として、これらの調査結果を更に再分析して、上記のような問題に取
り組んでいくことが求められる。また、専門学校と同じような制度を有して短期高等教育が成
功している諸外国の事例を参考に我が国の学生支援の在り方を検討することも必要であろう。
最後に、専門学校の学生支援は、それだけ単独の問題ではなく、多くの広がりを持つ問題であ
ることは本調査研究で示すことができたと思われるが、その点に関連して、現在文部科学省で
検討している大学などの学生への経済的支援の問題と合わせて総合的に検討する必要があるこ
とを強調しておきたい。それは様々な学生への支援策や、公的補助をばらばらではなく総合的
に捉え直し、整合性のある政策を策定するという非常に大きな課題をも長期的な課題として念
頭に置く必要があるということでもある。
本調査研究は、専修学校に対する大規模な調査としては、平成9年の文部科学省調査以来の
ものである。文部科学省では、今後もこのような調査を継続して実施することによって、専門
学校の振興と専門学校生への経済的支援を一層充実することを期待したい。
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