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なぜ質保証なのか グローバリゼーション
私立大学連盟教育研究委員会の対応 平成23年度教育研究協議会 大学教育と我が国の人材力強化 平成15年3月『日本の高等教育の再構築へ向けて[I]---その課 題を問う』 教育の質向上の再確認と、 中等教育・産業界との 連携を考える 平成16年3月『日本の高等教育の再構築へ向けて[II]:16の 提言---大学生の質の保証---入学から卒業まで』 グローバリゼーションとユニバーサル化 私立大学連盟教育研究委員会 大学教育の質向上検討分科会 明治学院大学 天野史郎 平成18年3月『多様化する大学教育---高大対話の場の創設に 向けて』 平成20年3月『私立大学入学生の学力保障---大学入試の課題 と提言』 平成21年3月『学士課程教育の質向上を目指して---加盟大学 の教学改革への提言』 平成22年3月『学士課程教育の質向上と接続の改善―高校と 社会との円滑な接続を通して目指す学士課程教育の充実』 2012.12.14 文部科学省の最近の施策(1) なぜ質保証なのか *教育のグローバリゼーションに伴う質保証の要請 平成10(1998)年10月26日大学審議会答申 『21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の 中で輝く大学』。 競争とユニバーサル・アクセスのアイディア 「生産年齢人口が大幅に減少していくことに伴い,産業間移動 による労働力調整の必要性が増大していくほか,従来の終身 雇用の形態が大きく変化し,企業内教育の外部委託化や企業 間の労働力の流動化が進行していく。」 グローバリゼーションと ユニバーサル化が 教育に変化を求めている 平成12年11月大学審議会答申 『グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について』 文部科学省の最近の施策(2) *規制緩和と認証評価による質保証 平成13年12月総合規制改革会議『規制改革の推進に関す る第1次答申』 平成14年8月5日中教審答申『大学の質の保証に係る新た なシステムの構築について』 平成15年4月より事前審査から事後評価 平成16年認証評価の義務化。(自己点検、自己評価の努力 義務から第三者評価の義務化へ) 平成18年3月31日大学院設置基準改正(平成19年施行) 平成19年7月31日大学設置基準改正(平成20年施行) グローバリゼーション ヒト、モノ、カネが 自由に国境を越えて移動するボーダーレスな メガ・コンペティションの時代。 高等教育もボーダーレスな競争の時代 教育が国の、個人の将来を左右 <知識基盤社会> 平成11(1999)年ケルンサミット サミットとして初めて教育を取り上げ、知識基盤社 会、ユニバーサル・アクセスの必要性を説いた。 「来世紀は柔軟性と変化の世紀と定義されるであろ う。すなわち、流動性への要請がかつてないほどに高 まるだろう。今日、パスポートとチケットにより人々 は世界中どこへでも旅することができる。将来には、 流動性へのパスポートは、教育と生涯教育となるであ ろう。この流動性のためのパスポートは、すべての 人々に提供されなければならない。」 平成10年の「21世紀答申」に通じる 合衆国の主張 <高等教育は国際的なサービス産業> WTO/GATSの議題 合衆国には私立大学が多数存在(国庫助成わずか) vs. 欧州は国立大学のみ(国庫助成が主) USTRは、WTO加盟国の高等教育分野における貿易上の 不公正、参入障壁を除こうとした。 高等教育にも自由競争があってしかるべき 。 中教審答申とグローバリゼーション 高等教育はサービス産業 平成10年10月大学審議会答申『21世紀の大学像と今後 の改革方策についてー競争的環境の中で個性が輝く大学』 OECDによれば 高等教育はグローバルなサービス産業 平成12年11月大学審議会答申『グローバル化時代に求め られる高等教育の在り方について』 平成14年8月中教審答申『大学の質の保証に係る新たなシ ステムの構築について』 平成17年1月中教審答申『我が国の高等教育の将来像』 いずれの答申も国際的通用性を強調。知識基盤社会形成にむ けて高等教育の将来像を説く。 平成20年12月中教審答申『学士課程教育の構築に向け て』 「1998年の国際的な高等教育マーケットの規模 は約300億ドル、サービス貿易の合計の約3%に 相当」 「国境を越えた高等教育の提供に関するOECDの現状と課 題」OECD Tokyo Centre, 2004. Internationalisation of Higher Education, OECD, August, 2004の抄訳より。 平成20年3月25日付けの「審議のまとめ」と比較すると 国際的動向についての記述が大幅に削除され、それ以前の 答申と比較して国際的通用性についてトーンダウン。 高等教育のグローバリゼーションとは? グローバル化に伴い 高等教育分野もボーダーレス 合衆国の主張を受けて *大学設置を事前審査から事後評価へ。 *法科大学院制度の導入。 *米大分校を各種学校から大学に格上げ。 ヒト、モノ、カネが自由に国境を行き交う。 留学生が世界を移動する アメリカ合衆国 vs.ヨーロッパ連合 *アメリカン・スクール、インターナショナル・スクー ルに大学入試センター試験受験資格。 *国立大学の独立行政法人化。 *アジア諸国においても国立大学の独立行政法人化 *アジア諸国における私立大学の増加 EUの教育改革 UNESCO/OECDの質保証の要請 ボローニャ・プロセスとヨーロッパ高等教育圏 1999年 ボローニャ宣言 EU域内の大学制度統一、学位統一 2005年、OECD/UNESCOは「国境を越え た高等教育の質保証のガイドライン」公表 (Guidelines for Quality Provisions in Cross-border Higher Education, OECD/UNESCO, Paris, 2005) *単位制導入 *ヨーロッパ単位互換制度(European Credit Transfer System, ECTS) *EU共通仕様の成績証明書=Diploma supplement Degree mill 規制を訴え 同時に質保証の必要性を説く。 *カリキュラムおよび授業の平準化 *ベンチマークの将来的設定 ヨーロッパの認証評価制度の整備 UNESCO-CEPESー大学ランキング研究の開始 研究開始 2000年 ヨーロッパ高等教育質保証ネットワーク誕生 European Network for Quality Assurance in Higher Education(ENQA) この認証制度がヨーロッパを越えて広がった。 ENQAは ブラジル、チリ、ペルーなどの南米諸国、 南アフリカ、ロシアでも 機関認証評価を実施 ヨーロッパの教育統合の進展 2002年 ”Higher Education Ranking Systems and Methodologies: How They Work, What They Do ?” UNESCO-CEPES(UNESCO European Centre for Higher Education:ブカレスト)と合衆国のIHEP(Institute for Higher Education Policy、ワシントンDC)合同の会議。 原則提示 2006年UNESCO-CEPES, IHEP, Center for Higher Education Development[独]「高等教育機関のランキングに関する ベルリン原則」(Berlin Principles on Ranking of Higher Education Institutions) 大学ランキング上位を目指して 2001年 European University Association, EUA The Gourman Report ヨーロッパ大学協会創設 U.S. News and World Report EUAの標語: Strong Universities for (a Strong*) Europe (*Glasgow Declaration, 2005) 2010年 European Higher Education System ヨーロッパ高等教育圏完成 The Times Higher Education Supplement (THES) [仏] サルコジ政権、2012年までに2大学をTOP20、 10大学をTOP100に。 [独] Center for Higher Education Development (Centrum für Hochschulentwicklung)が国内の大学 ランキング。エリート大学を選定。 [中国]「上海ランキング」(2003∼) [日本] 大学ポートレート(仮称)導入。大学の情報開示。 グローバルCOE、リーディング大学院 大学ランキングは消費者サービス グローバル化した高等教育 大学ランキングは 高等教育の国際的マーケットを視野に 消費者=学生、受験生に対するサービス 国際的な高等教育の競争の指標 教育の質向上のための指標 我が国の大学のランキング The World University Rankings 2011-2012, —The Times Higher Education Supplement (THES) 226-250位 首都大学東京 251-275位 九州大学、筑波大学 そのために 国際的大学ランキングに 真正面から取り組む必要 ユニバーサル化 M. TROWの著名な大学進学率の3段階。 「エリート段階」(進学率15%未満) 「マス段階」(15%以上∼50%未満) 「ユニバーサル段階」(50%以上) 276-300位 北海道大学、東京医科歯科大学 301-350位 慶應義塾大学 平成23年度大学進学率56.7%(速報値) 351-400位 早稲田大学、広島大学、神戸大学、東京農工大学 私立大学に不利な結果 ユニバーサル化をめぐる言説 私立大学在学生、卒業生にとって 大きな不利益 大学の大衆化 臨時定員増の後の恒常定員増 18歳人口の激減 大学全入 入難出易から入易出易 日本の高等教育にとって 大きな損失 大学入試の選抜機能の喪失 ユニバーサル化は諸悪の根源なのか 知識基盤社会を目指すには進学率向上は必須 しかし学力低下、学習意欲の低下 入試の選抜機能が低下したのは確か。 大学進学率 ユニバーサル段階ではどの国でも高大接続システムに よる選抜機能低下は避けられないはず 日本において学生の学力低下、学習意欲の低下が とりわけ著しい 別の要因は? 諸外国はいずれも進学率向上を目指している アジアにおける高等教育総就学率の増加 ̶UNESCO Institute for Statistics 2009 1999年から2007年にかけての変化 100 90 80 年齢主義と課程主義 年齢により入学・進級・卒業を決めるのが「年齢主義」 教育課程を修得したか否かで決めるのが「課程主義」 「履修主義」対「修得主義」とも言う 1999 2007 70 60 6歳で小学校入学 12歳で中学校入学 15歳で中学校卒業、15歳で義務教育課程終了 50 40 30 20 15歳の小学生はまず存在しない 10 0 日本 韓国 中国 タイ マレーシア ブルネイ ラオス カンボジア 必要なのはさらなるユニバーサル化 15歳の小学生もあり得る 学校教育法第17条 「保護者は、子の満六歳に達した日 の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に 進学率をさらに高め、 達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は 特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただ 学力の向上、知識レヴェルの向上を図ることは 知識基盤社会実現の要件 ̶̶ケルンサミット し、子が、満十二歳に達した日の属する学年の終わりま でに小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了しな いときは、満十五歳に達した日の属する学年の終わり (それまでの間において当該課程を修了したときは、そ の修了した日の属する学年の終わり)までとする。 落第もあり得る 学校教育法施行規則第五十七条 「小学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認め るに当たつては、児童の平素の成績を評価して、これ を定めなければならない。」 この条文は中学校、高等学校においても準用される。 年齢主義、履修主義と質保証 「修得」とあるが、その程度は高校によりさまざ ま。「修得」の客観的基準が無い。 小学校、中学校、高等学校を通して質保証は存在 しない。 外国でも、初等・中等教育の質保証はないのか。 高校においても年齢主義 欧米の質保証 学校教育法施行規則第五十七条は 小学校のみならず、 中学校、高等学校においても準用されるはず。 欧米では初等・中等教育の質保証は存在する。 しかし 残りは 滅多に適用されず落第はわずか。 卒業資格を取得できない。 欧米の高等学校のおおよその卒業率は5、6割 大学進学資格を取得できない。 日本の初・中等教育の質保証とは? 欧米の高大接続 <ヨーロッパ> 単位認定、卒業認定はそれぞれの学校(長)によ る判断 学校教育法施行規則 第九十六条 校長は、生徒の高等学校の全課程の修 了を認めるに当たつては、高等学校学習指導要領の定 めるところにより、七十四単位以上を修得した者につ いて行わなければならない。 バカロレア(仏)アビトゥア(独)等、高校卒業資格= 大学入学資格は全国統一試験による。 おおよそ5、6割の合格率。 <合衆国> それぞれの自治体が高校卒業資格を定める。ニューヨー ク市のブルームバーグ市長は、高校卒業資格取得者の増 加を公約に掲げ、2005年に46.5%であった卒業率 を、2011年6月段階で61%にまで引き上げた。 高校卒業資格を獲得する生徒は5、6割。 日本の大学と年齢主義 18歳で入学、22歳で卒業 世界的にみて類例のない高い卒業率 文科省の指導もあり落とせない 大学がエリート段階にあった時代の名残 中等教育における質保証も定かでなく 大学においても卒業率は90%以上 若年層失業者の増加と年齢主義 この3月卒業の大学新卒者(大学約55万人、短 大約7万)の7万8千人超が無業者。 終身雇用により労働者が守られるが、他方不況に より労働市場が縮小。 若年層に仕事は回らない。 終身雇用の日本社会では雇用が新卒採用に偏り、 中途採用はわずか。 学位の国際的通用性 日本の中退者の悲劇 ユニバーサル段階にあっては、学位の国際的通用 性を守るために大学での出口管理は必要。 日本では数の少ない高校中退者、大学中退者には ましてやグローバリゼーションの時代 新卒で就職できなければ、その後が無い 採用の道が閉ざされている フランスでは大学中退者も 文部科学省、大学審議会、中央教育審議会は学位 の国際的通用性を求めるのは当然 バカロレア、バカロレア+1、+2などの有資格者 大学を卒業する学生より、卒業できない学生が 高等学校卒業資格にも国際的通用性は必要。 日本社会の特殊性 *企業における終身雇用、年功序列 圧倒的に多いのがヨーロッパ 日本社会の流動性の低さ ユニバーサル段階には達したが、ユニバーサ ル・アクセスは未達 *教育界の年齢主義、履修主義 *企業は家、社員は家族。in house の企業教育 終身雇用を美風とする日本の社会は流動性が低 く、スキルアップ、ステップアップのための転 職も学び直しも出来ない。 *人事院は国家公務員総合職の経験者採用試験、 院卒者採用試験を平成24年度から創設。 ヨーロッパでは何度でも大学に入学できる。ス テップアップのため何度でも学び直しが可能。 大学入学者に占める25歳以上の割合 25歳以上の大学入学者は日本では2%。 OECD諸国平均は21%(日本を含む) 大学は何をなすべきか̶1 日本の大学を世界に開く。 - 優秀な学生を世界からリクルートする。 中国、東南アジアは人口からして無尽蔵ともいえる高 等教育マーケット - 優秀な教員を世界からリクルートし、教育、研 究の質を高める。 - 世界に向けて情報発信 OECD教育データベース2008年(日本の数値は「学校基本調査」と文部 科学省調べによる社会人入学生数) - 国際連携プログラムの推進・強化、多言語化 ー平成23年8月24日中央教育審議会大学分科会資料より ユニバーサル・アクセスの実現を 大学は何をなすべきか̶2 大学の出口管理。 社会制度における年齢主義を改める 年齢主義、履修主義から課程主義、修得主義へ。 日本の大学は世界で最も卒業率が高い(出易) 生涯の如何なる時点でも 学び直しの出来る社会を 文部科学省は 学士号の国際的通用性確立のため出口管理をする。 落第生の発生を前提に、学年ごとでなく、学部、 学科の学生総数による定員制。 学生の大学間トランスファーを推進する。 大学は何をなすべきか̶3 不断の教育改革 質保証の制度面は文科省。大学は質向上に努める 大学にまつわる諸制度を、 教育の本質を目指して 上からする教育ではなく、学生の学びを促す教育 EU、合衆国に合わせ、 不断のFD、質向上 日本の学位に国際的通用性を付与する 制度設計を。 経営側からするFDではなく、教員の主体的なFDを支 援する仕組みづくり あらゆる年齢層に開かれた大学、学び直し支援