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SpaceWire
から感じる「将来性」と
JST-JAXA連携プロジェクトの提案
高橋忠幸(JAXA)、能町正治(阪大)、湯浅孝行(JAXA)
檜原 弘樹 (NTSpace/NEC)
JAXA内外における横断的SpaceWire研究グループを代表して
2013年3月16日
背景
SpaceWireによる高度分散処理システムの研究
SpaceWireによるネットワーク型アーキテクチャを用いて
宇宙機を開発するさいに要求される信頼性を確保するための研究
高橋忠幸、高島健、湯浅孝行 (JAXA/ISAS)、能町正治 (大阪大学)
SpaceWire (スペースワイヤー)の概要
• 宇宙機内で使用する高速ネットワーク (数10MHz-200MHz)。 ESA/JAXA/NASAで標準仕様書を策定
• 自在な接続トポロジー(幅広い冗長構成)。
(SpaceWire標準およびRMAPプロトコル)。
• ネットワーク中のコンポやコンポ内のレジスタを、全て一つの
メモリマップで管理してアクセス可能(RMAPプロトコル)。
JAXAではBepiColombo、ASTRO-H、小型科学衛星
• 機器間インタフェースの統一による試験の迅速化や分散試験、 などで採用(ヨーロッパ、米国でも新しい衛星
試験のフロントローディングを狙う。
の標準となっている)。
SpaceWireをより広範に展開するさいの課題
1. SpaceWireは最初、観測コンポ
Data Recorder 間のようなミッション機器間の高速データ伝送向けに開発・
利用されてきた (ヨーロッパ/アメリカではバス系のMIL-1553Bとの併用が目立った)。
2. 衛星バス系にもネットワークアーキテクチャを用いることで、衛星全体を「わかりやすく」作ることができ、
衛星製造のコスト低減、信頼化につなげることが可能と期待されている (ASTRO-Hが世界に先駆けてバス系で
採用し実践)。
3. 衛星バス系では、高い信頼性要求を満たすために輻輳の抑制や異常時の再送・冗長系切り替え方法を「標準」
として定義し、実現することが不可欠。しかしSpaceWire標準にはこれらの規定がない。
4. このためネットワーク全体に適用する通信規約(ガイドライン)とその設計・検証方法を確立するとともに、
それをソフトウエア機能として実装したリアルタイムOSが必要。
JAXA内の研究「SpaceWireによる高度分散処理システムの研究」(FY22-24)
【補足】共有バス型とネットワーク型の衛星アーキテクチャ
背景
バスコントローラ
電源系
+ 衛星制御計算機
コンポ
(RS422等;∼数10Mbps)
IRU
THR
観測系用高速インタフェース
STT
MW
【共有バスによる衛星設計】
観測系
観測系
... 姿勢系
レコーダ
計算機
【SpWネットワークを用いた設計】
...
★
観測データ
Router
3
◎必要な部分だけ冗長化することが可能(冗長ルータ、
姿勢系
STT
冗長リンク)
計算機
THR
観測系
観測系
冗 長 接 続 の 例 : ★ の リ ン ク を 用 意 して お く こ と で、
Router1-2間やRouter1-3間のリンクが不良(ケーブル破断等)
回して通信を行なうこ
とが可能(例:Router1-3のパスをRouter1-2-3と
回)。
◎FPGAのみで実装可能で、省リソース(部品、コスト)
MW
...
ダウンリンク
になった場合でも、不良リンクを
◎低速∼高速を柔軟にカバー(2∼200Mbps)
DH系と独立の
姿勢系サブNW
IRU
...
高速
Router
1
コンポ
Router
2
◎高信頼性(1マスタ、再送等)
◎長年の使用実績
△伝送速度∼1Mbps
△I/Fチップの価格高
△冗長系構成の自由度小
電源系
...
コマンド、
制御情報等
(SpaceCube2等)
レコーダ
ダウンリンク
制御用低速バス
(MIL-1553B等)
コマンド、
制御情報等
衛星制御計算機
観測系専用
◎専用線接続であり、他機器
との干渉等がない
◎各社それぞれで実績
△プロトコルが標準でない
△∼Gbps級伝送は発展課題
高
信
頼
の
衛
星
バ
ス
利系
用で
にの
む
け
て
△遅延時間の最悪値保証の手法が標準で定義されない
△標準では再送制御なし
△ルータ内でのパケット衝突による遅延(ブロッキング)
本研究(FY22-24)
・リアルタイム性保証の
設計ガイドライン
・設計ツール
・SpaceWire対応RTOS
・試験装置
高速化の研究
(FY25∼, 利用本部と連携)
・次世代のノンブロック
ルータの開発
・SpaceFibreによるGbps
伝送の技術開発
高
速
化
に
よ
る
高
信
頼
化
背景
※下記の他、研開本部の複数の研究でSpaceWireが利用されている。
1.2 SpaceWire研究開発の全体像と時系列
2010
2005 ~ 2009
科
研
費
補
助
金
J
J
J
A
A
A
X
X
X
A
A
A
内
内
内
研
研
研
究
究
究
2011
2012
2013
信頼性研究(2010.11∼2013.03)
衛
星
JAXA(OS、 検証技術、 ミドルウエア)
MHI(H/W、 デバイスドライバ)
新
コ
ン
セ
重
点
プ
ト
研
究
研
究
高信頼化のガイドライン、開発用デバイス、検証装置
JAXA内研究
SpaceWireベースの宇宙用高信頼性計算機
SpaceWire設計標準
Gbpsを目指した高速化
分散処理衛星のモデル
日本SpaceWire
SDS-1でRMAP及び
国際SpaceWire
ユーザー会発足
SpaceCube2/
HR5000の宇宙実証
(2009)
標準委員会で日本の (2010)
規格が採用される
(2010)
(2005)
宇科連OS
宇科連OS
SpaceWire勉強会
@つくば
SpaceWire/SpaceCube2を利用した宇宙機プロジェクト
SDS-1
MMO
SPRINT-A ASNARO/USEF
ASTRO-H
はやぶさ2
ERG
2014
JAXA研究の位置づけと成果
背景
SpaceWireを高信頼の衛星バス系ネットワークとして展開する仕組みづくり
FY22-24
ISASの
施策
SpaceWireが設計に与える「制約条件」= 解くべき課題
フライト用HWの整備
1. パケットロスに対する再送機能がない。
1. 小型∼大型衛星に適用可能
な統合型計算機の開発
2. 通信遅延の最悪値が不定 (検証性の低下)。
2. ソフトウエアの再利用性向
上へむけた分析・改善
3. 異常発生時のFDIR動作 (冗長ネットワークへの切替方法)の規定なし。
4. ノードが任意のタイミングでパケット送信するとルーター内で輻輳する
リスクがある(輻輳抑制の機構なし)。
5. 伝送レートは最大200Mbps。ケーブルが重く堅い。伝送距離<10m。
今
後
の
課
題
SpW高信頼性宇宙用計算機
「リアルタイム性制約」を解決する高信頼化技術の開発
• 世界に先駆けてSpaceWireベースの高信頼アーキテクチャをガイド
ライン・設計ツールと共に確立。現世代のSpW衛星においては本
枠組みで十分な高信頼化が可能。
FY22-24のISASでの研究の成果物
1. 機器が従うべき通信規約ガイドラインの制定
送り出すパケット量やタイミングの規定、再送、
異常の検知・通知、冗長切替の方法(FDIRの規定)。
例: 通信規約ガイドライン文書、負荷試験装置、開発用HW
2. SpaceWireネイティブ対応のOSの開発
OS + ガイドライン遵守のSpW通信ミドルウエア。
3. ガイドラインに従った設計を支援するツール
• 一方で、将来の、または地球観測等のより高速かつ高信頼度が要
求される衛星に向け、さらに取り組みが必要な課題を識別。
4. 検証用試験装置 (負荷試験装置等)
5. 開発・試験用標準HWプラットホーム
今後の取り組み課題
1. 次世代高信頼性ルーター
SpWルーターでの「ブロッキング」遅延を本質的に排除する技術等。
2. Gbps級SpaceFibre技術の開発(SpaceWire2にむけて)
よりDependableで高速・高信頼なバックボーンの開発。
3. 通信規約ガイドラインのJAXA設計標準化と普及
SpW高速化,
次世代規格
成果物の展開
フライトHW高信頼化
SpaceWireの
高速化の研究
SpaceWireの
高信頼化 STEP2
ISAS/利用本部連携
FY25∼
JAXA/名大他
FY25∼
背景
SpaceWire高速化において取り組むべき課題
【1】SpaceWireレイヤー
◎既存の全てのSpaceWireルータは、標準仕様で規定された「ワームホールルーティング」をシンプル(素直)に実
装している。この方式では、多量のトラフィックがネットワークを流れる際に、一つのパケットがルータ内部
やルータ間のリンクを占有し、他のパケットを待たせる「ブロッキング」という事象が発生しうる(左下図)。
◎個々のノードのリンクレートが高速でも、ネットワークの基幹であるルータでブロッキングが発生すると、ネ
ットワーク全体としてのスループットが低下してしまう。とくに、4-8ポート程度の小型ルータを結合して16-20
ポート規模のルータとして構成している系では、ルータ間接続の部分でにブロッキングの影響が大きくなる (現
行のNEC製ルータも該当)。
◎これに対し、パケットを細切れのフレームに分割して送信することでブロッキングを抑制する手法が大阪大能
町教授によってSpaceWire国際標準化委員会に提案されている(右下図)。この手法では、既存のSpaceWireノー
ドはそのまま使用可能であり、SpaceWire標準仕様にも抵触する事なくSpaceWireの基幹装置であるルータを
高速化できると期待されている。
現行のSpaceWireルータの場合
SpaceWire
Router
SpaceWire
Router
Blue is blocked
until destination
水色のパケットは、緑色のパケットが通り
port becomes free.
過ぎるまでブロックされる(ブロッキング)。
(新)ノンブロッキングSpaceWireルータの場合
Non-blocking
SpaceWire Router
Non-blocking
SpaceWire Router
パケットを細切れに(セグメント化)して送信し、ル
ータ内/ルータ間でのブロッキングを抑制。
【2】Gbps級の「標準オンボードデータ伝送インタフェース」の開発
JST-JAXA連携研究提案:実施項目の設定
【1】SpaceWireネットワークの高速化
◎ 研究課題 1-1 『SpaceWireルータの高速化』
SpaceWireルータはネットワーク全体の最終的なスループットを
決める基幹部品である。現行のSpaceWire仕様で大量のトラフィ
ックを扱うさいの課題となりうる「ブロッキング」問題を解決す
るため、京大および高知工科大VLSIグループと協力して『ポート
数および通信トラフィックが増加してもパケット転送のレイテン
シが低下しないnon-blocking型のSpaceWireルータIPコア』を開
発する。
◎ 研究課題 1-2 『高速SpaceWire codec/RMAP IPコアの検証と整備』
【2】Gbpsクラスの衛星内データ伝送を目指すSpaceFibreの研究開発
◎ 研究課題 2-1 『SpaceFibre codec IPコアの実装』
◎ 研究課題 2-2 『SpaceFibreの適用可能性の検証』
JST-JAXA連携研究提案 :我々が感じる小野寺チームの「将来性」
ひょっとすると、我々は次世代のコンピュータのアーキテクチャを模索するための
ツールを手に入れたのではないか。。。。 小野寺チームの成果
演算
ユニット
1)ノイマン型プロセッサが不得意な多入力・
メモリ
多出力システムを実装できるツールに纏めること
ができた
2)設計結果を評価できるツールが用意できる
I/O
現在
この2点により、アーキテクチャ探索が可能にな
っている
>研究フェーズではなく、通常の製品開発の設計プロセスに取り入れることができる
ようになった点が画期的
>各要素が体系化されており、高級言語による動作合成ツールに無理なく適合できて
いる。これが、理想論ではなく実際の製品開発に役立つ。 JST-JAXA連携研究提案 :今後めざす方向
現代は、大面積のチップでも比較的容易に作れる時代。
小野寺チームの成果をつかえば
多入力、多出力、チップ内各所で勝手に演算、適宜協調
というような、新しいアーキテクチャの
「計算機チップ」を模索可能なのではないか
SpaceWireは、VLSIの中にデータを自在に、高
い信頼度で配信するための手段になるのでは?
JST-JAXA連携研究提案 : 実施体制
- 研究課題1-1「ノブロッキング型ルータによる高速化」については、JST Dependable LSIプロジェクトチ
ーム(京大小野寺教授グループ)と協力し、高信頼LSI開発の知見を取り込みながら実施。
- 研究課題1-2「SpaceWire/RMAP IPコアの検証・整備」は、本IPコアおよびこれまで日本の地上用
SpaceWire試験装置のほぼ全てを手がけているシマフジ電機等と協力を予定。
- 研究課題2-1「SpaceFibre IPコア実装」ではメーカーと協力して接続試験等を実施。
- 研究課題2-2「SpaceFibreの適用可能性検証」では、すでにSpaceWireベースの高速ストレージ(データ
レコーダ)開発を実施してきた研開本部、メーカーと連携。
JST Dependable VLSI研究
京大小野寺グループ
共同研究
高速化の
標準仕様へのフィードバック
要求仕様
JAXA
利用本部
研開本部
自由に利用
JAXA/ISAS
高橋、湯浅
ESA
SpW国際
能町(阪大)
標準化委員会
可能な実装
共同開発
検証試験
宇宙機メーカー
Fly UP