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基礎編 - 埼玉県

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基礎編 - 埼玉県
埼玉県のマスコット
コバトン
Private Finance Initiative
すべては「もっともっと満足してもらえる公共サービス」のために。
- 基礎編 -
埼玉県PFI活用指針
SAITAMA STADIUM 2002
6
基礎編 PFIとは
PFI
PFIとは何か
PFIとはPrivate Finance Initiativeの頭文字をとったものです。
直訳すれば「民間財務主導」。
一般には「民間が資金調達から設計・建設・運営までを一体して行う公共施設整備方法」
などと定義されます。
民間の資金や優れたサービス提供ノウハウを活用するとともに、設計から運営までを一体で
ゆだねることにより整備費用の軽減を図るために、公共施設の整備を思い切って民間に任
せる手法です。
もともとが英語であることからわかるように、日本独自の制度ではありません。
生まれは1990年代、先進国病に悩むイギリス。
PFI-歴史的背景
サッチャー政権
イギリス
70年代の終わりから公共財政が逼迫
公共事業の予算削減・効率化を目的に、規制緩和・
民営化・公共部門のアウトソーシング進展
PFIの基となるようなアイディア誕生
1979-1990
Margaret Hilda Thatcher
メイジャー政権
公共サービスの提供を民間にゆだね、政府はそれを
購入することを明確化
1992年11月 PFI正式導入
1990-1997
John Major
94年 大蔵省がPFIの適用が検討されていないものは
公共事業として認可しない方針をとりPFIが急速に拡大
95年末時点ですでに契約ベースで1兆円を超える事
業が実施済みに
ブレア政権
政権交代で誕生するもこの傾向は変化させず
公共と民間が協働して事業を実施していくという
1997Tony Blair
PPP(Public Private Partnership)
へ進展
例えばこんなものがPFIで・・・
高速道路
新型路面電車
スポーツ施設
刑務所
税務システム
ヘリコプター飛行訓練
シミュレーター
他にも
橋、地下鉄、病院、介護施設、国民保険システム、学校、大学、美術館、博物館、庁舎、宿舎、在外公館、警察署
裁判所、消防署、税務署、雇用相談所情報システム、郵便窓口の自由化、防衛通信施設、電子メールシステム、
ごみ処理、再開発、水道、街灯 などなど・・・
7
埼玉県PFI活用指針
日本
「民間資金等の活用による公共
施設等の整備等の促進に関す
る法律」 施行
1999
9月
2000
3月PFI法に基づく事業第1号として
「常陸那珂港北ふ頭公共コンテナターミナル施設」
実施方針公開
2001
12月 行政財産のPFI事業者への貸付を可能とすること等を
内容とする同法の改正法が成立
2005
8月 公共施設等と民間施設との合築建物の場合に、行政財
産の貸付を拡充する等を内容とする同法の改正法が成立
2008
3月末現在
全国のPFI実施方針公表済事業数:332事業
埼玉県
2001
10月 埼玉県PFI事業第1号
2002
12月 埼玉県PFI事業第2号
2003
10月 埼玉県PFI事業第3号
「彩の国資源循環工場」
実施方針を公開 「総合リハビリテーションセンターESCO事業」
実施方針を公開
「大久保浄水場排水処理施設等整備・運営事業」実施方針を公開
12月 埼玉県PFI事業第4号
「埼玉県浦和地方庁舎ESCO事業」実施方針を公開
2008
3月 埼玉県PFI事業第7号
「埼玉県環境科学国際センターESCO事業」
実施方針を公開
2004
4月 「総合リハビリテーションセンターESCO事業」
2005
4月 「埼玉県浦和地方庁舎ESCO事業」
2006
6月 「彩の国資源循環工場」
供用開始 2007
3月 埼玉県PFI事業第5号
供用開始
供用開始
3月 埼玉県PFI事業第8号
「埼玉県障害者交流センターESCO事業」
実施方針を公開
4月 埼玉県PFI事業第9号
「埼玉県秩父農林振興センターほかエコオフィス化
改修事業」 実施方針を公開
4月
「大久保浄水場排水処理施設等整備・運営事業」
「埼玉県県民活動総合センターESCO事業」
「埼玉県県民総合活動総合センター事業」 実施方針を公開
11月 埼玉県PFI事業第6号
「西部地域振興ふれあい拠点施設整備事業」 実施方針を公開
供用開始
彩の国資源循環工場 PFI事業
8
埼玉県
完成後
施設譲渡
管理委託
(サービス料)
PFI事業者
設計・建設・管理
管理
負担金
他の借地施設事業者
サーマルリサイクル施設
廃棄物の焼却・溶融・固化から発電を行う施設
事業期間 20年
BOO方式
※ 資源循環工場のうち以下の事業をPFIで
整備
・ 事業基盤整備 ・ サーマルリサイクル施設
・ 公園緑地施設
事業基盤整備(用地造成)
公園・緑地施設
事業期間 25年
BTO方式
■ 埼玉県大里郡寄居町大字三ヶ山368
埼玉県環境整備センター内
■ わが国の環境分野をリードする先端技術産
業を誘導・集積した一大リサイクルセンター
■ 平成15年度着工、平成18年度より運営
事業期間 20年/25年
埼玉県
土地賃貸借
(定期借地権
設定)
借地料
(事業終了後
土地返還)
PFI事業者
設計・建設・運営
(事業終了後施設解体)
廃棄物
受け入れ
廃棄物処理業者
売電
基礎編 PFIとは
PFIの基本概念
PFIとは、公共施設等の整備に当たって、設計・建設・運営までを一括して民間部門にあずける
ことによって、民間の知恵を活かした効率的な施設整備と、低廉かつ質の良好な公共サービスの
提供を図ろうとするものです。
具体的には行政が施設の概略プランと目指すべきサービスの目標を示し、それに応じて民間企
業(群)が自ら資金を調達し、設計・建設から維持管理・運営までのサービスを提供する方法です。
事業形態は様々ですが、民間事業者が中心となって公共サービスの提供を行うという従来とは
違った方式なのです。
ただし、日本においてPFIというためには、PFI法に定める手続きを経る必要があります。
従来方式との違い
公共施設
の整備
従来方式
設計
建設
運営
設計事務所に委託
建設会社に請負
直営又は3セクなどに委託
単に民間の関与があるということだけではPFIであるということにはならない
PFI
トータルして民間事業者にゆだねる
+
民間事業者が施設整備に当たり自ら資金を準備する
+
施設やサービスの目標値=アウトカムのみが示され、
プロセスは事業者の創意工夫による
誤解をおそれずに言えば、イメージとして
PFIは、民間事業者が与えられた責任の範囲で公共施設を作って運営する
ということです。
行政はそこで提供される公共サービスを購入することにより、住民にサービスを行うことになるのです。
(PFIにも形態がありますので、詳細は若干異なる部分もあります。)
行政がサービスを購入するというと違和感があるかもしれません。
しかし、ここでサービスのコストを行政が負担しないとなれば、利用者である住民がすべて支払うことになるでしょう。
こうなれば単なる民間のサービス業と同じことになってしまいます。
民間事業者が提供するサービスが公共サービスであるならば、住民でなく行政がそのコストを負担することは、
むしろ当然といえるはずです。
事実、日本で事業化されているPFIのほとんどはこのようなサービス購入型です。
9
埼玉県PFI活用指針
第3セクター方式との違い
行政と民間が共同して事業を行うものとしては、いわゆる「第3セクター方式」が思い浮かびますが、PFIと第3セクター方
式では、以下の点で明確な違いがあります。
PFI
事業主体への
行政の関与
出
資
役員派遣
×
×
行政と民間の
関係
役割分担
リスク分担
◎
◎
選定過程
◎
第3セクター
直接運営に関与
せず契約に基づく
監視中心
ともに明確
事業の実施や事業者の選
定についての資料が公表
され、過程は透明で公正
出
資
役員派遣
〇
〇
直接的に経営に
関与
役割分担
リスク分担
?
?
ともに不明確
(第3セクター経
営悪化の一因)
△
多くの事業で、どう行われ、
誰がそれに参加するのかと
いうことが不明瞭
PFIは、第3セクター方式が持っていた問題点を踏まえた上で、制度化されているのです。
PFIの特徴とその効果
PFIの特徴を明らかにするために、再度PFIの事業方式を考えてみます。
① 公共施設の整備を設計・建設・運営まで一括して民間にゆだねる
② 施設の建設資金は民間が自ら準備する
③ 施設やサービスの最低限度の目標値のみが示される
① 公共施設の整備を設計・建設・運営まで一括して民間にゆだねる
施設に関するコストはどうなるか?
a. 設計・建設・運営が一つの過程であれば、手続き的なコストということだけでも、減ることが予想される
b. 民間事業者側からいえば、コスト算定はトータルで考えた方が少なくなるはずだし、ディスカウントの余
地も大きくなる可能性が高い
c. 設計や建設の際にも運営コストや維持管理費の削減を考慮することが期待できる
d. 民間事業者による効率的な運営方法の導入によるコスト削減効果がある
e. サービスの質を向上させるためのコストも、民間の得意分野での知恵を生かすことにより減らすことが
できる
f. リスクを行政と民間が分担することになり、これまで公共が負っていたリスクの一部を民間が負うことに
なることからもコストは減る
PFIでは従来方式よりLCCを削減する可能性が高い
VFM
LCC = ライフサイクルコスト:事業の開始から終了までのトータルのコスト
Value For Money
※ PSC:従来方式に
税収その他
PFIではコスト削減に関してVFM(Value For Money)という概念を用います。
よる場合の
行政側の収入
を減ずるなどの
全事業期間
必要な調整
右図のように従来方式とPFI方式でのライフサイクルコストの差がVFMです。
での行政の
負担額
事業により想定される事業期間中のすべての事業コストを積算し、
リスク
VFM
そこにリスクを金銭的価値に換算したものを加え、
支払利息
支払利息
など
など
適切な調整を行った上で比較することによりVFMは算定されます。
PSC
このVFMを最大化することがPFIの大きな目的です。
(Public
Sector
管理
PFI
日本 におけるPFIでは、PFI法第6条により「特定事業の選定」という過程を経ますが、
Comparator)
PFI
運営費
サービス
この時VFMを算定し、VFMが出る(すなわち従来方式のLCCからPFI方式でのLCCを
料
引いたものがプラスになる)ことが「選定」の条件とされています。(PFI法第8条・「民
建設費
間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針」)
従来方式によるLCC
PFI方式によるLCC
つまり、日本でPFIを実施する場合は、従来方式による整備よりPFIによる整備の方が
必ずコストが小さくなければなりません。
(注) 以上の議論はサービス水準がPSCとPFIで同一であるという前提に基づきます。VFMには「サービスの価値」を評価する側面もあり、PSCとPFIと
のコスト差がない場合、サービスの質を評価した結果に差があるとき、質の高い方にVFMがあるとも言います。特定事業の選定においては、コストとサ
ービスの質の両方を評価して、PFIにVFMがあるとき、その選定を行うことができるということになります。
参照
10
P29 参考 VFMの算定方法は?
基礎編 PFIとは
② 施設の建設資金は民間が自ら準備する
行政側の負担が減るようになる?
施設に関するコストはどうなるか?
a. 事業期間中はサービス購入費や施設整備費を行政側が支払う
b. 初期費用として支払うべき額がいわば分割になるのと同じ
c. トータルでいえば行政の負担が減るというわけではない
Project
Finance
PFIは民間資金を活用できる手法である
プロジェクト・ファイナンス
PFIでは「プロジェクトファイナンス」による資金調達が行われることが多くなっています。
「プロジェクトファイナンス」とはある事業の資金調達において、事業から生まれる現金の収支(キャッシュフロー)だけを返済のための原資にあてる
融資方法のこと。担保もその事業に関連する資産(契約上の権利を含む)のみに限定され、事業者の親会社の保証や担保提供は原則として行わ
れない形態です。
PFIでは事業会社(これをSPC(Special Purpose Company)といいます。)が設立され、そのSPCの収入はPFI事業からのキャッシュフローだけであり、
リスク分担が明確で事業者だけがリスクを負うわけでないことからプロジェクトファイナンスになじみやすいといわれています。
資金調達でもPFIは特異な面を持っているのです。
③ 施設やサービスの最低限度の目標値のみが示される
従来方式との違いは?
施設に関するコストはどうなるか?
P
F
I=「性能発注」 : ある目的にある条件で使える建物というような発注方法
例 県民の10%が週2回以上使えるトレーニング施設
※ 実際には公共サービスというものの性質上、条件はもっと詳細になる
従来方式=「仕様発注」 : 建物をつくるに当たって、どういう構造で、どういう材質の材料を使って、
どういう仕上げをして、ということを事細かに決める発注方法
PFIでは目標値に至るプロセスを問わない
=
Monitoring
事業者が持つ独創的なアイディアや質の高いサービスの提供を期待できる
モニタリング
目標値が達成されているかどうかはサービス提供の責任者として、行政が監視しなければなりません。
これを「モニタリング」といい、PFIにおいては、非常に重要な行政の役割の一つになります。
モニタリングの方法は事業者との協議により定められますが、その結果として目標値が達成されない場合は、協定の定めるところによりサービス
購入費の減額などを行います。
モニタリングをもって公共サービスの質は担保されるのです。
このように、PFIでは行政と民間は適切に役割分担を行って事業を進めます。
また、事業者のアイディアを生かす余地があることは民間の事業機会の創出につながります。
また、法律で規定されているように、事業の過程の多くを公表することにより、手続の公正と行政の説明責任を確保します。
まとめ
PFIの特徴をまとめると以下のとおりです。
■
■
■
■
■
■
「VFM」を最大にするように事業が構成され、トータルコストが削減される
「プロジェクトファイナンス」などの方式により、事業者が自ら資金を調達する
「性能発注」などにより民間の優れたアイディアや質の高いサービスが提供される
サービスの質は「モニタリング」により担保する
「リスク分担」に代表されるように行政と民間が適切に役割を分担して事業が進められる
事業者の決定などの手続きが透明である
※ 「 」 内の言葉はPFIを知る上でキーワードになります
11
埼玉県PFI活用指針
PFIの法体系
日本においてはPFIに関し法律が制定されており、一般的にこの法律に基づく事業を「PFI事業」と呼びます。
法律による手続に基づかずにPFI方式によって整備することも可能ですが、
その場合は、「PFI的手法」などと呼ばれることが多いようです。
ex.
= PFI
SKIPシティは
PFI法施行以前にPFIを念頭に置いた整備方法をとりましたが、
PFI法を適用していないという意味で
SKIPシティは純粋な「PFI事業」ではありません。
ただし、PFIは認定制度でも許可制でもなく、法の定める手続を遵守する必要があるだけです。
PFI =
認定
許認可
法定
手続
いずれにせよ、特別融資や補助金、さらにPFIを前提として受けられる他の法令上の特例などから、
PFI方式に基づく事業のほとんどは法にのっとって行われています。
民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 [PFI法]
平成11年7月30日法律第117号。(施行は政令により同年9月24日。)
通例「PFI法」と呼ばれています。(この活用指針の中で「PFI法」という記載はすべてこの法律を指します。)
この法律は国及び地方公共団体がPFI事業を進めていく上で必要な規定とPFI方式で公共施設を整備
する場合の最低限の義務を定めたものです。
日本でPFI事業を導入する上での基本法です。
施行令・施行規則・通達
民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針 [基本方針]
平成12年3月13日総理府告示第11号。PFI法第4条に基づき定められたもので、
事業を進める上でのいわゆる〝基準〟となるものです。
PFIを進める上での手続と留意事項を示しています。
事業実施プロセスに関するガイドライン
リスク分担等に関するガイドライン
VFMに関するガイドライン
契約に関するガイドライン
モニタリングに関するガイドライン
国がPFIを実施する上での実務上の指針として示されたもの。
国はこれに基づいて事業を実施しますが、地方公共団体は〝参考〟とすればよいとされています。
しかし、実際にはほぼこのガイドラインに基づいています。
法的規定から要請されるPFIにおける必須なプロセスは以下のようになります
事業の発案
民間事業者の募集・評価・選定とその公表
実施方針の策定とその公表
協定等の締結
特定事業の評価・選定とその公表
事業の実施と監視等
各プロセスについては実践編において詳述します
12
基礎編 PFIとは
PFI5つの原則と3つの主義
「基本方針」にはPFIを実施するに当たっての5つの原則と3つの主義が示されています。
やや抽象的ではありますが、PFIの実施に当たっての基本的な考え方を示したものです。
地方公共団体・事業者はこれを参考に事業を実施することが必要とされています。
この原則と主義に基づいて事業の枠組みなどを検討、事業を実施していくことになります。
5-1 公共性原則
5つの原則その1
PFIは公共性のある事業において実施するとされています。PFIは基本的には公共施設の整備において実施するもの
ですから、これは確認です。
5-2 民間経営資源活用原則
5つの原則その2
民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することです。PFI事業は民間事業者の能力がフルに発揮できるよう
にすべきであるということです。
5-3 効率性原則
5つの原則その3
民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより効率的かつ効果的に実施することです。
PFI事業では民間に任せられることはできる限り任せるべきであり、そのアイディアをなるべく活かすことにより、効率的
な事業実施を行うべきということです。
5-4 公平性原則
5つの原則その4
PFI事業の選定及び民間事業者の選定において公平性を確保することです。
5-5 透明性原則
5つの原則その5
PFI事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されることです。PFIにおいては事業の資料は原則とし
て公表されると考えるべきです。
Ⅲ-ⅰ 客観主義
Ⅲつの主義そのⅰ
事業の実施に当たっては、各段階での評価と決定について客観性を持たなければならないということです。
したがって、評価基準などはできる限り定量的に定めます。
Ⅲ-ⅱ 契約主義
Ⅲつの主義そのⅱ
公共団体と選定事業者との間の合意について、当事者の役割及び責任分担等を明文の契約にしなければならないと
いうことです。PFIでは事業のほとんどが契約によって動きます。事業者と公共団体は基本的に同格であり、指揮命令関
係ではありません。業務改善なども契約に基づいて行います。
Ⅲ-ⅲ 独立主義
Ⅲつの主義そのⅲ
事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されていなければならないという
ことです。PFI事業は民間事業者が行う公共施設の整備事業であるので、その事業者が行う純粋な民間事業とは明確
に区分されている必要があります。形式上の区分だけでなく、事業者の他の事業の経営状況からの影響もないようにす
べきです。
以上の原則と主義は、PFI事業を進めるに当たって〝至極当然〟の内容といえるでしょう。
事業を進行するに当たっては必ず遵守しなければなりません。
13
埼玉県PFI活用指針
標準的なPFI手法図
ここで、PFIの標準的な手法を図にして表してみましょう。
※ 直接協定
事業の破綻時に
おいて事業・資
産の処理に関し
公共と融資金
融機関が直接
交渉できること
の取り決め
直接協定
金融
機関
¥
融資
県
PFI事業契約
PFIサービス料
モニタリング
親会社 (コンソーシアム)
関与
出資
SPC
設計 建設 運営
プロジェクト事業会社
設計依頼
設計会社
公共サービス
建設依頼
県
建設会社
運営依頼
民
運営会社
※ SPC(Special Purpose Company)
PFI事業を実施するに当たってつくられる法人で、通常株式会社です。SPCはその事業だけを行う会社組織であり、通例、事業者に決定をした
企業群が出資してつくられます。SPCは公共団体とのPFI契約の相手方であり、設計・建設・運営を事業者に委託する当事者でもあります。
PFI法ではSPCを必置としているわけではありませんが、ファイナンスや実際の事業実施のやりやすさから、ほとんどの事業で置かれています。
PFI事業方式の分類
PFIは事業の性質により様々な形態をとりますが、一般には以下のように分類できます。
a. 行政の関与の方法による分類
民間事業者が公共サービスを提供し、行政がその対価=サービス購入費を支払うものです。
日本のPFIはほとんどがこの型です。
サービス
購入型
サービスの提供
PFIサービス料
行政
事業者
独立
採算型
県民
利用料等
(利用料等)
民間事業者が公共サービスを提供し、その対価を住民から直接受けるものです。行政は許認可等を与えるだけ
で民間事業者にはサービスの対価としては支払いをしません。独立採算でできる事業で、しかも公共性がある
というの
は実際に
はあまり
サービスの提供
許認可等
なく、例
は多くな
いようです。
行政
事業者
県民
利用料等
ジョイント
ベンチャー型
民間・行政双方が資金を提供して施設を建設、民間事業者が主導的に事業を運営するものです。行政が運営する・
補助する・事業費を一部負担するといったケースがありえます。いわば、サービス購入型と独立採算制の中間形態
です。
サービスの提供
補助金等
行政
事業者
県民
利用料等
14
基礎編 PFIとは
b. 施設の所有形態による分類
BOT
BTO
BOO
Build Operate Transfer
つくって
運営して
(終わったら)所有権を移転する
施設を建設して一定の事業期間運営し、事業終了ののちは施設を行政に譲渡する方式です。事業期間後も
ある程度維持しなければならない施設で、事業期間内に民間のノウハウを行政が習得するようなもので行わ
れます。財政資金不足だが公共サービスはすぐ始めなければならないような場合にも有効でしょう。
Build Transfer Operate
つくって
所有権を移転して
運営する
施設完成後その所有権を行政に移転、その後運営委託などの方法により一定の事業期間運営する方式です。
事業期間後もある程度は維持しなければならない施設で、民間のノウハウを行政が習得したり、法的な要請で
公共施設の所有権を公共団体がもたなければならない場合などにとられます。省庁によっては、この方式でな
ければ国庫補助金を支出しないこともあります。日本ではこの方式が多いといわれています。
Build OWN Operate
つくって
所有したまま
運営する
施設を建設して一定の事業期間運営するが、事業終了ののちは施設を撤去するなど行政に所有権を移転し
ない方式です。事業期間内で事業目的が完結したり、事業期間経過後では技術が古くなってしまう場合など
に用いられます。
PFIの事業化に当たっては、事業の目的・施設の種類などによりいずれかの適切な事業形態を選択する必要があります。
これらの方式の別は実施方針において具体的に明らかにする必要があります。事業の枠組みを考える上では
どの方式をとるかという選択が非常に重要になってきますので、十二分に検討しなければなりません。
リスク分担
難しい定義
天変地異のように、起きるか否かが不確実な事象で、それが起きた時追加費用が発生したり、損失
を被ったり、期待した収益をあげることができなかったりする、好ましくない事態が生じる可能性。
リスク もう少しやさしい定義
例えば、震災が起きる可能性は予見できませんが、もし起きてしまった場合、かなりの確率で損害が
起きてしまうでしょう。これが「リスク」です。
PFIでは比較的長期にわたって事業を実施していくため、様々なリスクが生じる
施設に関するコストはどうなるか?
=
あらかじめリスクを想定し、どのリスクを誰が負担するかを明確に定めておく必要がある
リスク分担 → PFI
従来の
公共事業では
リスク
スク
リスク
リス
民間
行政
リスクすべて
行政
が
負担
15
埼玉県PFI活用指針
この割れ目をどこにいれるか、すなわち、
リスクをどちらが負担するかを、国の「ガイドライン」を参考に、
事業の性質などにより、適切に定める
リスク
スク
リスク
リス
行政
民間
具体的には
原則 そのリスクを最もよく管理することができる者がこれを分担する
※ すべてのリスクを民間事業者に転嫁するべきではありません。
方法 ① 事業実施に当たってのリスクとその原因をできる限り把握する
② そのリスクが起きてしまった時に見込まれる追加費用を算定するなどにより、できるだけ定量的に評価
(算出)する(定量化が困難な場合は定性的、つまり〝こうなることが予想される〟という評価)
③ 事業者と公共のどちらが、そのリスクが起きた時または起きてしまうおそれのある時に、より小さな費用で
それを防ぐことができるか、また、リスクが起きる時の責任の有無や度合い、によりリスクを分担する者を
検討する
④ リスクを双方かどちらか一方で負担するかを決定する
参照
P29 参考 VFMの算定方法は?
P73 リスク分担等に関するガイドライン
PFI事業においては、事業ごとにリスクを必ず評価し、その分担を決め、これを実施方針において公表しなければなりません。
実施方針においては、考えられるリスクと負担する者を表などで示すことが一般的ですが、契約時にはより詳細にリスクの分
担を協議する必要が出てきます。
行政財産の貸付け
PFI事業を実施するに当たっては、事業者等に対して事業に供するために行政財産である土地・建物を貸し付けること
ができます。(PFI法11条の2、11条の3、12条)
■ 合築建物に係る行政財産である土地を、PFI事業者及びPFI事
業者から民間施設部分を譲渡された第三者にも貸付可能
(PFI法11条の2⑦、⑨)
■ 特定施設の設置事業でPFI事業の実施に資するものについては、
行政財産をPFI事業者及びPFI事業者から特定施設の譲渡等を
受けた第三者に貸付可能(PFI法11条の3⑤、⑦)
■ 事業に供する間は無償又は低い対価で公有財産を事業者に
使用させることも可能(PFI法12条②)
■ 事業終了後も引き続き建物を民間が所有する場合でも、必要
があると認められればなお貸付けは可能
(PFI法11条の2⑧、PFI法11条の3⑥)
16
基礎編 考え方
PFI
埼玉県におけるPFI活用の考え方
埼玉県では公共施設整備において、以下の5項目を基本的な考え方としてPFIを有効に
活用し、その適切な施行を図ります。
PFIは行政改革のための手法である
PFIによる施設整備にはいくつかの側面があり、それを活用するに当たっての考え方は一つではありません。
単に整備費・運営費が圧縮できるからということもあるし、民間によるサービスの質の高さに重点を置く考えもあります。
埼玉県では、これを行政改革の一助であるという視点からとらえようと考えました。
国地方ともに財政逼迫が声高になる昨今、行政改革の必要性は他言を待ちません。
埼玉県でも厳しい財政状況が続く中、県に対する県民の行政サービスの需要は多様化、複雑化しており、サービ
スの質を求める声も高くなる一方です。
PFIはこうした状況を施設整備を通して解決するためのツールにほかなりません。
行政と民間の適正な役割分担に基づく公共サービスの提供へと行政を〝改革〟していく先導手法として、積極的な
活用を図ります。
新たな施設整備に当たってはPFI導入の検討を行う
埼玉県では、今後PFIを施設整備にできる限り導入していくことになりますが、PFIを適用をするかどうかの一次的な
判断を事業担当課で行います。
まず施設そのものの必要性を十分に検討し、必要であるという結論に至ったら、その整備手法としてPFIがふさわしい
かどうか検討します。
施設の性質や規模・費用などを考慮して、PFIに適している事業かどうか、民間事業者が参加するメリットを最大限に
発揮できるような整備のあり方を検討し、これを事業計画にまとめます。
17
埼玉県PFI活用指針
県有資産マネジメント検討委員会においてPFI方式による整備について検討する
事業担当課は、整備する施設費用が一定金額以上の場合には、事業計画策定後、PFI手法を取り入れた計画
を具体的に進めるにあたり、基本構想又は工事計画策定の着手前に県有資産マネジメント検討委員会に検討を
依頼します。
この委員会は、埼玉県県有資産マネジメント会議設置要綱に基づき、会議から指示された事項及び施設整備に
あたっての経済合理性の確保等について専門的かつ集中的に検討するための機関として設置されたものです。
埼玉県県有資産マネジメント会議
県有資産を経営的視点から総合的かつ一元的に統括し、施設整備の効率化及び徹底した維持管理経費
の合理化と縮減を図る
検討の指示
県有資産マネジメント検討委員会
取得する用地及び建物工事の予定総額が、新築または改築の場合には5億円以上、改修の場合には
1億円以上の計画について、経済合理性の確保等について検討を行う。
構成
総務部副部長(管財課を所掌する副部長) 総務部管財課長 企画財政部改革推進課長
企画財政部財政課長 県土整備部技術管理課長 都市整備部営繕課長 都市整備部設備課長 教育局教育総務部財務課長 警察本部総務部施設課長
業務要求水準書・モニタリングの充実により施設運営の適正化を図る
PFIによって公共施設を整備・運営していくと、何よりも行政サービスの質が問題になります。PFIを採用する目的
に、従来方式による整備より質の高いサービスを提供することがあります。
しかし、何の考えもなく単にPFIをやったというだけで、サービスの質を担保できるでしょうか。逆に質が落ちることは
ありえないのでしょうか。直接サービスを提供しないからこそ、行政はそのことに大きな責任をもたなければなりません。
それに、事業者は民間企業ですから、経営破綻のおそれという大問題もあります。公共サービスである以上、事業者
が破綻したからといってサービスの提供をやめるわけにはいきません。
そこで、PFIのいわば〝入口〟と〝出口〟をおさえることで、これらの問題に対処します。
PFI施設の運営
業務要求水準書
■ 業務要求水準書は、公共サービスを提供する際の水
準を明示するものです。これをできる限り具体的に定
めます。
■ あまりに詳細すぎて「性能発注」の考え方を覆さない
よう注意が必要です。民間事業者の創意工夫の余
地がなくなるような設定をすることは本意ではありま
せん。
■ 実施方針を公表する時にあわせて業務要求水準書
は公表することを原則として、求めるサービスの水準
を事業者だけでなく住民の方々にも理解してもらい
ます。
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出口
=
=
入口
モニタリング
■ モニタリングは、適切な運営がなされているかを監視する機能
のことです。このため、モニタリング方法の手順を定めたモニタ
リング・フローの作成を必ず行い、適切な実施に努めます。
■ モニタリング・フローは公表し、事業者だけでなく住民の方々
にも理解してもらいます。
■ 事業者が破綻した時の措置を契約で詳細に定めるとともに、
事業に融資する金融機関と県が「直接協定」を締結することが
原則です。そこに事業実施時における金融機関との連絡体制
を密にするような規定を盛り込んで、金融面からも運営の適
正化を図ります。直接協定も支障がない限り金融機関の同意
を得て公表します。
基礎編 考え方
民間からの発案の受け入れ手段を明確化する
PFI法第4条第3項第2号を受け、「基本方針」では、民間の優れた技術・発案力をより積極的に活かすため発案を
積極的に受け入れることとされています。そのため、この活用指針でその受け入れのための手続きを定めます。
発案はまったく新たに事業そのものを発案する場合と実施方針などが公表されている事業で行われる発案があり、
意味合いや発案の時期が異なりますので、別々の定めをします。
SAI-NO-KUNI RECYCLING COMPLEX
19
埼玉県PFI活用指針
PFI
PFI活用指針の取り扱い
この活用指針を埼玉県において、以下のように取り扱うものとします。
◎ 対象施設・対象範囲
対象となる施設整備はPFI法第2条にいう「公共施設等」の整備とします。
PFI法
第2条に
掲げる
公共施設等
空港
河川
公園
水道
下水道
工業用水道
教育文化施設 廃棄物処理施設
医療施設
社会福祉施設
更生保護施設
駐車場
地下街
熱供給施設 エネルギー施設 リサイクル施設
観光施設
研究施設
道路
庁舎・宿舎
情報通信施設
鉄道
公営住宅
港湾
◎ 例外的にPFI事業の検討を義務付けない公共施設等
上述の規定にかかわらず、つぎの施設には、事業規模に関係なく、PFI事業の検討の義務付けは行いません。
道路法が
適用される
道路
河川法が
適用される
河川
理由
現状においては、行政でないと管理できない、事業が画一的で民間
の創意の余地が少ない、補助金が多く資金的にもPFIになじまない、
などによります。
道路・河川であっても、事業担当課がPFIの導入を検討する
ことを妨げるものではありません。
その結果PFI方式を導入する場合は、この活用指針に沿って
行うものとします。
◎ 趣旨の徹底について
PFI法の施行以来、PFI事例は平成20年3月末現在300件を超え、PFIは〝普通〟の方式になりつつあります。
埼玉県においても「埼玉県新行財政改革プログラム」などでその活用を積極的に推進しています。
この活用指針は、埼玉県における施設整備においてPFIを適切かつ有効に活用するために策定しています。
埼玉県においては、この活用指針を最大限に〝活用〟するため、施設整備に当たり、この指針に沿って行うもの
とします。
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基礎編 役割分担
PFI
県の組織・機関の間の役割分担
埼玉県ではPFIをこのように役割を分担して進めていきます。
すべての手続き
PFI施設
事業担当課
■ PFIに係る手続きの事務はその
施設整備を担当する事業担当課
が原則としてすべてを行います。
■ PFI事業の事務に関する最終的
な責任は事業担当課が負います。
設計・建設・運営
事業者の選定
協議
PFI契約
サービス料の支払い
etc.
サポート
企業コンソーシアム
SPC
各職員
■ PFIの普及に当たっては、施設整備に係る問題・行政と民間の役割分担
などについての職員の問題意識の向上にも資することを目標とします。
■ 各職員は、できるかぎり情報へのアクセスを行ってこの問題に関する意識
の向上に努めてください。
あわせて、県の施設整備の方向性、公共サービスの提供に関する行政と
民間の役割分担などについてもぜひ考えてください。
改革推進課
■ PFI事業を支援します。
■ この指針の趣旨の徹底を図るた
め、事業担当課へ協力と啓発を
行います。
改革推進課の業務 (例)
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PFIに関する相談・啓発・研修への参加
PFIに関する事例の収集
本県のPFI事業ノウハウの蓄積
埼玉県PFIアドバイザー事業によるPFIアドバイスの依頼
埼玉県PFIホームページの運営
活用指針の定期的な見直し
民間からの新規発案を受付け、事業担当課へ事務を引き継ぐ
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埼玉県PFI活用指針
SAITAMA RAILWAY
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