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域外の企業に遅れをとるEU企業の研究開発投資(EU)(20KB)

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域外の企業に遅れをとるEU企業の研究開発投資(EU)(20KB)
NEDO海外レポート
NO.1013,
2007.12.12
【産業技術】研究開発政策
域外の企業に遅れをとる EU 企業の研究開発投資
欧州委員会は毎年、企業の研究開発投資に関するスコアボード 1(EU Industrial R&D
Investment Scoreboard)を発表しているが、
同委員会が 2007 年 10 月 5 日に発表した 2007
年版のスコアボードによると、2006 年度の欧州連合(EU)における企業の研究開発投資
は、前年に比べ 7.4%の伸びを示している(2006 年版のスコアボードでは、同 5.3%)
。
スコアボードは、
研究開発投資額の多い EU 域内の企業 1,000 社と EU 域外の企業 1,000
社を対象とするもので、2,000 社の 2006 年度の研究開発投資の総額は 3,716 億ユーロだっ
た(このうち EU 域内の 100 社の投資総額は 1,211 億ユーロ)
。これは、全世界の研究開
発投資の 85%以上に相当する。
スコアボードによると、EU 域外のトップ 1,000 社の 2006 年度の研究開発投資は、前
年に比べ 11.1%(2006 年版では、同 7.7%)の伸びを示しており、EU 域内の企業の研究
開発投資の伸びは、域外のトップ企業に比べ低いという傾向が続いている。これは、コン
ピュータやソフト開発といった研究開発集約度の高い部門での投資の伸び率が、EU 域内
企業は域外企業に比べ低いことが大きく影響している。また、2006 年度に研究開発投資を
増額した企業の数は、域外の方が域内に比べ 10%以上多かった。なお、純売上に占める研
究開発投資の割合は、EU1000 社が 2.3%だったのに対し、非 EU1000 社は 3.9%だった。
2,000 社のうち研究開発投資額の多いトップ 10 にランクされている企業の内、EU 域内
企業は、ダイムラークライスラー(現ダイムラー、52 億ユーロ)
、グラクソスミスクライ
ン(51 億ユーロ)
、シーメンス(50 億ユーロ)の 3 社に留まった。第 1 位は、米国のファ
イザー(58 億ユーロ)で、これにフォード(55 億ユーロ)
、ジョンソン&ジョンソン(54
億ユーロ)
、マイクロソフト(54 億ユーロ)が続く。
トップ 50 のうち EU 企業は 18 社で、前年と同じだった。米国企業は 20 社で、前年に
比べ 2 社増えている。一方、日本企業は 9 社で、トヨタ自動車が 6 位にランクされている
ほか、松下電器が 19 位、ソニーが 21 位、本田自動車が 22 位に食い込んでいる。
部門別に見ると、医薬品・バイオテクノロジー部門での研究開発投資が最も多く、2006
年度の投資額は 705 億 2,350 万ユーロで、前年に比べ 15.7%増加した。研究開発投資全体
に占める割合は 19.3%。これにハードウエア技術・設備部門(645 億 3,150 万ユーロ、研
究開発投資全体に占める割合:17.6%)
、自動車・部品部門(608 億 710 万ユーロ、同 16.6%)
を加えた 3 部門で、研究開発投資の 50%以上を占めている。
医薬品部門の企業の 2006 年度の研究開発投資は、メルク(+24.3%)
、アストラゼネカ
(+15.5%)
、ロッシュ(+15.5%)
、ジョンソン&ジョンソン(+12.9%)、グラクソスミ
スクライン(+10%)と、前年に比べ軒並み 10%以上の伸びを示している。
1
日本語では「得点表示板」。
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NEDO海外レポート
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2007.12.12
一方、2005 年度には前年に比べ研究開発投資が減少した化学部門は、2006 年度には前
年に比べ 9.8%の伸びを示した。特に EU 域内の化学部門の企業の研究開発投資が大きな
伸びを示している:バイエル(+30.3%)
、ソルベイ(+20.3%)
、BASF(+19.8%)
。こ
れは化学部門での企業の集中が進んだことが大きく影響している。また EU が、化学物質
の登録・評価・認可のための新システム REACH(Registration、Evaluation、Authorization
of Chemicals)を導入、化学部門の企業がこれに対処するため、研究開発への投資増を余
儀なくされた面も否定できない。
2007 年 6 月 11 日に発表された「科学・テクノロジー・イノベーションに関する主要な
数字:欧州知識領域に向けて」と題されたレポートでは、2005 度の EU の域内総生産に
占める研究開発支出の割合が 1.84%に留まったことや、この数字が 1990 年代半ばから横
ばい状態にあることが指摘されている。EU は、日本(3.17%)
、韓国(2.99%)、米国(2.67%)
の後塵を拝しているだけでなく、EU の目標である「域内総生産の 3%」を達成することも
難しい状況にある。このままでゆくと 2009 年には、中国にも追い越されかねない。欧州
委員会のポトチュニック委員(科学・研究政策)は、
「知識は競争力の鍵となる」ことを強
調しているが、EU 企業の研究開発投資は、競合国のレベルに比べ非常に低く、懸念事項
となっている。
EU の研究開発の構造的な問題点として、産学の連携の弱さがよく指摘される。欧州委
員会は 2006 年 10 月、こうした問題に対処するためリスボン戦略の枠内で、企業、大学、
研究機関間の協力の拠点となる「欧州工科大学(EIT:European Institute of Technology)」
の創設を提案した。現在、EIT 設立のための規則案の審議が続けられているが、年内には
採択され、2008 年には始動する予定となっている。
EIT の目玉となるのは、「知識・イノベーション共同体(KICs:Knowledge and
Innovation Communities)」の設置で、企業、大学、研究機関の協力の場となる。2007
年 6 月 25 日の EU 閣僚理事会(競争力理事会)で採択された EIT に関するガイドライン
によると、まず 2∼3 の KICs が設置される。これらの KICs の選定に当たっては、EU の
優先課題である「再生可能エネルギー」や「気候変動」の問題が考慮される。EU 予算か
らは、EIT に 2008 年からの 6 年間で 3 億 870 万ユーロが充当される見込みである。
欧州委員会のバローゾ委員長は、「EIT は、イノベーションでの主要なライバルとの差
を縮め、持続可能な方法で雇用創出や経済成長を促す助けとなる」と強調している。
<参考>
欧州委員会:
http://iri.jrc.ec.europa.eu/research/scoreboard_2007.htm
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/1448&format=HTML&aged=0&language
=FR&guiLanguage=ja
http://ec.europa.eu/education/policies/educ/eit/index_en.html
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/882&format=HTML&aged=1&language=
EN&guiLanguage=ja
http://ec.europa.eu/invest-in-research/monitoring/statistical01_en.htm
http://ec.europa.eu/invest-in-research/pdf/kf_2007_prepub_en.pdf
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