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ネットワーク分析用ソフトウェア UCINET ®の使い方

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ネットワーク分析用ソフトウェア UCINET ®の使い方
オンライン ISSN 1347-4448
印刷版 ISSN 1348-5504
赤門マネジメント・レビュー 4 巻 5 号 (2005 年 5 月)
〔解 説〕第 I 部
ネットワーク分析用ソフトウェア UCINET®の使い方
安田
雪
著
21 世紀 COE ものづくり経営研究センター
E-mail: [email protected]
金坂
秀雄
デザイン担当
UCINET For Windows ® (2002) は、ネットワーク分析を行うためのウィンドウズ用プログラムで
ある。 1 ネットワーク分析のためのソフトウェアは、STRUCTURE (Burt, 1990)、Negopy (Richards,
1995) など、世界で多数が開発されている。だが、UCINETは、使用が容易で機能的にも優れており、
おそらくネットワーク分析用ソフトウェアとしては世界的に普及しているものだろう。
UCINET は、ネットワーク分析の大家 Steve Borgatti、Martin Everett、Linton Freeman の三氏によ
って開発されている。2005 年 4 月の時点では、Analytic Technologies 社のサイトにおいて Version 6.85
が公表されており、英語マニュアルなどが付随した試用版が無料でダウンロードできる。試用版とは
いえ、ネットワークのノード数が最大で 256 まで分析できるので、初めての人でも十分楽しめる。
UCINET は主な機能として、(1) ネットワークデータの作成および変換機能、(2) ネットワーク分
析の様々な指標の算出機能、(3) ネットワーク仮説の検定機能、(4) 多次元尺度構成法、クラスター
分析などを含む分析機能を持っている。
また、大規模ネットワークの解析ソフトウェアPajek 2 (「パエック」と読む)と、ネットワーク描
画のソフトウェアであるNetDraw 3 などがUCINETの本体に組込まれており、クリックひとつで各ソ
フトを起動させることができる。UCINETで作成したデータは、それぞれのソフトで扱えるため、大
変に便利である。
本連載においては、第 I 部として「ネットワーク分析用ソフトウェア UCINET®の使い方」におい
て、UCINET の起動・データ作成・分析・保存までの一連の使い方と、分析機能の一部について使い
方と出力の解説を行う(執筆者:安田雪)。第 II 部の「ネットワーク可視化の技法―Pajek の使い方」
は、UCINET に組み込まれている大規模ネットワークの解析ソフトウェア、Pajek の描画機能につい
て解説を行う(執筆者:稲水伸行・竹嶋斎)
。最後の第 III 部「ネットワーク可視化の技法―NetDraw
の使い方」では、ネットワーク描画ソフトのための NetDraw についての解説をする(執筆者:竹嶋
斎・稲水伸行)。
読者のかたがたには、ぜひ三部をあわせてご活用いただき、ネットワーク分析のおもしろさ、関係
構造の可視化の説明力を楽しんでいただければ幸いである。なお、本連載で展開するソフトウェアの
解説は、各ソフトウェアが持つ機能のごく一部にすぎない。ご好評を賜れれば、続編の執筆も検討し
たいと思っている。
1
2
3
Borgatti, S. P., Everett, M. G. & Freeman, L. C. (2002). Ucinet for Windows: Software for social network
analysis. Harvard: Analytic Technologies.
Pajek (2002). Vlado; Andrej;
NetDraw 1.0 (2002). Borgatti, Steve.
227
©2005 Global Business Research Center
www.gbrc.jp
UCINET®の使い方
1-1
ExcelのデータをUCINETのSpreadsheetに
貼り付けるには
実施項目 ExcelのデータをUCINETのSpreadsheetに貼り付けます
Excelデータ
UCINETのSpeadsheet
貼り付け
1
Excelデータ
2
対象となる範囲をコピーする
228
UCINET®の使い方
3
UCINETを起動し、Spreadsheetに貼り付ける
①UCINETを起動する
②UCINETツールバーから
〔Spreadsheet〕をクリック
Spreadsheetが表示されます
③Spreadsheetの一番左端上の
セルにあわせ
④〔Edit〕から〔Paste〕を選択し
貼り付け
⑤貼り付けた後
右側にある〔OK〕のボタンをクリック
〔Confirm〕のダイアログボックスが
表示される
!
日本語をUCINETに貼り付けると
文字化けします
しかしこのまま進めていくと
最終的な結果は日本語でみることが
できます
⑥〔Yes〕をクリック
〔名前をつけて保存〕のダイアログ
ボックスが表示されるので UCINET
のファイルとして名前をつけ保存する
229
UCINET®の使い方
クリークを特定するには
1-2
実施項目 クリークを特定します。
【目的】
グラフ理論で言う「完全なサブグラフ」を抽出するコマンドである。
構成要素同士の関係が密な部分と疎な部分が含まれており、ネットワークで直接結合関係をもつ
サブグループを抽出する時に用いる。サブグループの最低構成者数を指定し、直接に結合している
ノードをクリークとして抽出する。
ネットワークデータ
クリーク算出結果
クリーク
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Subgroups] と進み
[Cliques]をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
!
②最初のオプション〔Input dataset〕には
用いるUCINETデータを指定する。(※1)
第二のオプション〔Minimum size〕で、最初いく
つ以上のノードを含むクリークを抽出するかを
特定する。デフォルト値は3であり、最大Nまで
指定できる。
第三のオプション〔Analyze pattern of
overlap〕では、共通所属クリークの行列を出
力するかを選ぶ。
第四のオプション〔Diagram type〕で、類似度
に基づいたクラスター図の出力方法を指定す
る。
※1 用いるデータについて
無向グラフの対称ネットワークデータを用いる。有向グラフの非対称データをインプットすると、矢印の方
向を無視して無向グラフとして扱いクリークを抽出する。
230
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6人の対称ネットワーク
①図1のネットワークについてクリークを抽出すると、以下のような出力が得られる。
②出力の解釈
内部には3つのクリークがある。第一のクリークは【ABCD】、第二は【ABE】、
第三は【AEF】である。いずれも構成要素同士に直接結合関係がある。なお
【ABC】【ABD】も直接結合関係にある三者関係だが、同じ直接結合関係を
持つノードが他にあるため(前者はD、後者はC)、それを除いた状態でク
リークとして抽出されることはない。
ラベル(ABCDEF)と行列番号が記される。行列はそれぞれのノード同士が
共通して所属しているクリークの数を示す。一行目では、AとBが共通して所
属しているクリークは2つ(上記の第一クリークと第二クリーク)、AとCが共通
して所属しているクリークは一つ(上記の第一クリークのみ)、AとDは一つ
(第1クリーク)、AとEは二つ(第2クリークと第3クリーク)。対角要素はノード
が属するクリークの数と1(自分自身)の和である。
231
UCINET®の使い方
N-クリークを特定するには
1-3
実施項目 N-クリークを特定します。
【目的】
Nステップ以内で到達するノードの集合をクリークとして抽出するコマンドである。
1-クリークは相互に直接結合関係のあるノードの集合、2-クリークは、2本以内の紐帯を経て到達しうる
ノードの集合である。3-クリークは自分から初めて、3ステップ以内で到達するノードの集合である。
ネットワークデータ
N-クリーク算出結果
N-クリーク
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Subgroups] と進み
[N-Cliques]をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
!
②最初のオプション〔Input dataset〕は
用いるUCINETデータを指定する。(※1)
第二のオプション〔Value of N〕は、Nクリーク
のN値を指定する。
第三のオプション〔Minimum size〕は、クリーク
の構成要素の最低数を指定する。デフォルト
値は3であり、最大Nまで指定できる。
第四のオプション〔Analyze pattern of
overlap〕は、共通所属クリークの行列を出力
するかを選ぶ。
第五のオプション〔Diagram type〕は、類似度
に基づいたクラスター図の出力方法を指定す
る。
※1 用いるデータについて
無向グラフの対称ネットワークデータを用いる。有向グラフの非対称データをインプットすると、矢印の方
向を無視して無向グラフとして扱いクリークを抽出する。
232
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図2 6人の対称ネットワーク
①図2のネットワークについて、2-クリークを抽出すると、以下のような出力が得られる。
②出力の解釈
内部には2つの2-クリークがある。第一のクリークは【BCDEF】、第二は
【ABCDF】である。これらのクリーク内では、構成要素同士が2ステップ以内
で到達しうる結合関係を持つ。共通所属クリークでは、ラベル(ABCDEF)と
行列番号が記される。行列はそれぞれのノード同士が共通して所属している
クリークの数を示す。一行目では、AとBが共通して所属しているクリークは1
つ(上記の第二クリーク)、AとCが共通して所属しているクリークは一つ(第
二クリーク)、AとDは一つ(第二クリーク)、AとEは共通所属クリーク無し・・・
を示している。対角要素はノードが属するクリークの数と1(自分自身)の和
である。
233
UCINET®の使い方
構造的空隙の位置を知るには
1-4
実施項目 構造的空隙の位置を特定します。
【目的】
ノードのペアごとに相互の重複度(redundancy)、拘束度(constraint)を計算する。
また、個々のノードについて、構造的空隙に関わる、Effective Size(最適サイズ)、効率性(Efficiency)、
拘束度(Constraint)、階層性(Hierarchy)の4つの指標を算出する。
ネットワークデータ
構造的空隙算出結果
構造的空隙
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Ego Network] と進
み [Structural Holes]をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は
用いるUCINETデータを指定する。
第二のオプション〔Dichotomize the data〕は、
データを二値化するか否かを指定する。
第三のオプション〔Output dyadic redundancy〕
は、ノードのペアごとの重複関係を指定する。
第四のオプション〔Output dyadic constraint〕
は、拘束関係を指定する。
第五のオプション〔Output Dataset〕は、空隙
データを出力するファイル名を指定する。
234
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6つのノードの非対称ネットワーク
①図1のネットワークについてundirectedを指定し、双方向性を考慮させて、エゴネットワー
クの指標を算出させると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
バートが開発した、ノードのペアごとの関係の重複性、ノードのペアごとの拘
束関係、各ノードの構造的空隙に関する三種類の指標が出力される。
Effsizeは、バートの最適サイズの指標である。Efficiencyは、最適サイズをエ
ゴネットワークのノード数(エゴをのぞく)で除したものである。Constraintは、
バートの拘束度指標である。(※1)Hierarchyは、拘束度の指標の改良形で
あり、エゴに対する拘束度の集中性を示す。
!
※1 拘束関係の行列について
ノードのペアごとの拘束関係を示す行列では、行の要素に対して、列の要素がどの程度の拘束を課す
かが示されている。図1では、ノードAはノードBから0.08、ノードBはノードAから0.43の拘束度を課されて
いる
235
UCINET®の使い方
1-5
次数(Degree)による中心性を算出するには
実施項目 次数による中心性を計算します
隣接行列
次数による中心性の計算結果
中心性算出
ExcelからUCINET形式へのデータ変換は1-1「ExcelのデータをUCINETのSpreadsheetに貼り付けるには」を参照のこと
1
次数による中心性のコマンドを指定する
①UCINETの〔Network〕をクリック
〔Centrality〕から
〔Degree〕をクリック
③〔ファイルを開く〕ボタンより
〔Input dataset〕の欄に
UCINETのデータである
〔○○○.##h〕を選ぶ
②〔Degree〕のダイアログボックスが表示される
!
UCINETのデータ
〔○○○.##h〕は、
正方行列でないと
中心性の計算ができません
④〔Treat data as symmetric〕において
有向グラフか無向グラフかの判断をし
〔Include diagonal values〕において
対角線上のデータを使うかを決め
最後に〔OK〕をクリックする
236
UCINET®の使い方
2
次数による中心性の出力
①〔Output Log〕として
〔Degree〕による〔Centrality〕が出力される
!
UCINETの〔Output Log〕には
日本語は表示されません
これをテキスト形式で保存し
開くと日本語が表示されます
②〔File〕から〔Save As...〕を選び
名前をつけて
テキストとして保存する
③メモ帳で②で保存した
テキストファイルを開くと
日本語も表示される
④〔Outdegree〕は出次数
〔Indegree〕は入次数
〔NrmOutDeg〕は標準化出次数
〔NrmIndeg〕は標準化入次数
をあらわす
237
UCINET®の使い方
推移性を計るには
1-6
実施項目 推移性を計ります。
【目的】
ネットワーク全体のうち、推移性のあるトライアドの数とその割合を算出する。
ネットワークデータ
推移性算出結果
推移性
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Network Properties] と
進み [Transitivity]をクリック
オプションが表示される
オプションの指定
2
!
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
第二のオプション〔Type of Transitivity〕は、
推移性の定義を指定する。(※1)
第三のオプション〔Min value of Strong tie〕、
第四のオプション〔Min value of Weak tie〕は
第二のオプションで〔Strong〕もしくは〔Weak〕
を選択したとき使用する。
第五のオプション〔Output dataset〕は、
結果を保存するファイル名を指定する。
※1 推移性の定義〔Type of Transitivity〕について
Adjacencyは、有向グラフでは、Aから発してBに向かう矢印があり、なおかつBからCに向かう矢印があ
る時に、CからAへ向かう矢印があれば、ABCに推移性があるとする。無向グラフでは、ABとACに紐帯
があり、なおかつBCに紐帯がある時にABCに推移性があるとする。値つきの紐帯の場合は、Strong、
Weak、Euclidean、Stochasticのいずれかを選ぶ。Strongは、ACの値がABとBCの小さいほうの値以上
の時に、ABCに推移性があるとする。Weakでは、ABとBCのうち小さい方の値がS以上、かつACがW以
上の場合に、ABCに推移性があるとする。Sは強い紐帯の値、Wは弱い紐帯の値であり、それぞれ3番
目と4番目のオプションでユーザーが指定する。Euclideanは、ACがAB + BC以下の場合に推移性があ
るとする。Stochasticは、 ACがAB×BC以上の場合に、推移性があるとする。
238
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 4つのノードの対称ネットワーク
①図1のネットワークについて推移性を算出すると、以下のような出力が得られる。
②出力の解釈
デフォルトで推移性をみると、推移性のあるトライアドは6個ある。論理的に
最大可能なトライアド数は24である。第一者から第二者への関係、第二者か
ら第三者への関係があるトライアドは10個である。この数(10)は、第三者か
ら第一者への関係、つまり推移性の有無を考慮せずに計算していることに
注意せよ。最大可能なトライアド数のうち、推移性のあるトライアドが占める
割合は25%、第一者から第二者、第二者から第三者への関係があるトライア
ドのうち、推移性のあるトライアドの占める割合は60%である。推移性分析の
結果は、データというフォルダに保存された。
239
UCINET®の使い方
最短距離(測地線)を計るには
1-7
実施項目 ノード間の最短距離(測地線)を計算する
【目的】
あるノードから別のノードに到達するためには、最低、何本の紐帯を渡る必要があるかを、ノードのペアごと
算出する。すべてのノードのペアごとに距離を算出。
ネットワークデータ
測地線算出結果
測地線算出
1
最短距離を計るコマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Cohesion] と進み
[Distance]をクリック
オプションが表示される
!
②最初のオプション〔Input dataset〕には
用いるUCINETデータを指定する
次に、第二のオプション〔Type of Data〕でネッ
トワークデータの種類を指定する。(※1)
そして、第三のオプション〔Nearness
Transformation〕では、距離データの変換オプ
ションを指定する(※2)
(Attenuation Factorは、〔Nearness
Transformation〕で[Exponential]で指定)
最後のオプション〔Output dataset〕で測地線
の距離データを保存するファイル名を指定す
る
※1 第二のオプション〔Type of Data〕について
最も頻繁に使われる、関係の有無を示す二値データの場合は、[Adjacency]を指定する。関係の強弱を
示すデータの場合は、[Strengths]または[Costs]を指定する。Strength は値が大きいほど関係が強くな
るデータに用いる。取引金額、会話の回数などが例である。反対に到達時間、到達コストなど、値が小さ
いほど関係が強いデータの場合には、Cost を指定する。紐帯の存在確率がデータの場合には、
Probabilityを指定する。この場合、最小値0、最大値が1とする。
240
UCINET®の使い方
!
※2 第三のオプション〔Nearness Transformation〕について
デフォルト[None] は元データに変換を加えない。[Multiplicative] Yij = (N-1)/Dij., [Additive] Yij = N Dij., [Linear] Yij = 1- (Dij-1)/(N-1), [Exponential] Yij = bDij.(attenuation factor b は、[Exponential]で
指定、0<b<1)の変換を加える。なお、バート(1976)のfrequency decay function. 行為者i と行為者j の
近さ(親密さ)は、i にj と同じ程度に親しい人の割合である。
2
出力と出力の解釈
図1 6人の非対称ネットワーク
①図1のネットワークのノード間距離を算出させると、以下の出力が得られる
②出力の解釈
AからB、C、D、E、Fそれぞれへの最短距離は1である。BからA及びCへの
最短距離は1、BからD、E、Fそれぞれへの距離は2である。FからEへの距
離は3である。ノードごとの測地線の距離は、〔GeodesicDistance〕というファ
イルに保存される。対角要素は自分自身への距離であるため、ゼロと出力さ
れる。到達できないノード同士の距離は空白で出力される。
241
UCINET®の使い方
最短距離(測地線)の本数を計るには
1-8
実施項目 ノード間の最短距離(測地線)の本数を計算します。
【目的】
ノード間の測地線の本数を算出する。あるノードから別のノードに到達するための最短距離をもつ
ルートが何本あるのかをノードのペアごとに算出する。
ネットワークデータ
測地線の本数算出結果
測地線の本数
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Cohesion] と進み
[No of geodesics]をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
第二のオプション〔Output Filename〕 に
測地線の本数データが保存される。保存先の
デフォルトはGeodesicsCountである。
242
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6人の非対称ネットワーク
①図1のネットワークのノード間の測地線の本数を算出させると、以下の出力が得られる
②出力の解釈
AからB、C、D、E、Fそれぞれへの測地線は1本ずつである。BからA、C、Dへ
の測地線は一本、BからE、Fへの測地線は2本ある。対角要素の出力は1と
なる。
243
UCINET®の使い方
到達可能性を調べるには
1-9
実施項目 到達可能性を調べます。
【目的】
あるノードから他のノードへ、到達できるか否かを調べる。あるノードから別のノードに到達できる場合は1
できない場合は0となる。測地線の距離とは異なり、到達できない場合に0となることに留意して欲しい。
ネットワークデータ
N-クリーク算出結果
N-クリーク
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Cohesion] と進み
[Reachability]をクリック
オプションが表示される
オプションの指定
2
②最初のオプション〔Input dataset〕は
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔Type of data〕は、ネット
ワークデータの種類を指定する。(※1)
3番目のオプション〔Output dataset〕は、ノード
のペアごとの到達可能データを保存するファイ
ル名を指定する。
!
※1 ネットワークの種類について
最も頻繁に使われる、関係の有無を示す二値データの場合には、Adjacencyを指定する。関係の強弱を
示すデータの場合は、 StrengthあるいはCostを指定する。取引金額、会話の回数など、値が大きいほ
ど関係が強いデータはStrengthを選ぶ。反対に、到達時間、到達コストなど、値が小さいほど関係が強
いデータの場合には、Costを指定する。データが紐帯の存在確率を示す場合は、probabilityオプション
を指定する。この場合、最小値0、最大値は1である。
244
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 4人の非対称ネットワーク
①図1のネットワークのノード間の到達度を算出させると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
AからB、D、へは到達可能なので、行列の要素は1になる。AからCへは到達
不可能なので0が入力される。対角要素は自分自身への到達可能性だが、0
となる。なお、到達できないノード間は、空白でなく0となる。
245
UCINET®の使い方
1-10
最大流通量を計るには
実施項目 最大流通量を計ります。
【目的】
値付きのネットワークでは、それぞれの紐帯の値は、その紐帯に流通可能な容量を示すものと解釈することが
できる。二値データの場合は、流通可能なら1、不可能なら0が流通量となる。Max Flowは二つのノード間の
流通量の最大値を計るコマンドである。最大流通量は、グラフ理論では最大フローあるいは最大流と呼ばれる。
なお、最大流通量は、最少切断集合(Minimum cut)と同義である。二つのノードAB間の切断集合(Cut)は、
AB間の紐帯を含むエッジの集合である。切断集合の最大容量とは、切断集合に含まれるすべての紐帯の
最大流通可能量の合計値である。二値データのネットワークの場合、それぞれの紐帯の最大流通量は、
局所線連結性(local edge connectivity)と呼ぶ。
ネットワークデータ
最大流通量算出結果
最大流通量
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Cohesion] →
[Maximum Flow]を選択
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。(※注)
2番目のオプション〔Output dataset〕は、分析
結果を出力するファイル名を指定する。
!
※注:対称データのみを用いること。重みつきデータの場合、重みは正の整数でなければならない。
246
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 5つのノードの重みつきネットワーク
①図1のネットワークについて紐帯の最大流通量を計ると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
AからBへの最大流通量は、ABの1、ACBの1、ADBの1の総和の3である。
ACについても、Aを起点とする切断集合を考える。これはABの切断集合と
同一である。AからCへの流れの最大流通量は、ACの2、ABCの1、ABDCの
1、ADCの1の総和であり5となる。
ノードAを入口、ノードBを出口と考えると、Aを起点として成立する切断集合
が含むのは、ノードABCDとABCD間に存在する紐帯だけである。Aを起点と
する切断集合には、ノードEは含まれず、ノードEと他のノードとの紐帯も含ま
れないことに注意して欲しい。ノードEとAが直接連結していないからである。
切断集合を最初に特定するのは、出発点に流通プロセスに関与しない直接
連結していないノードをのぞくためである。切断集合に含まれるノード相互
の紐帯の容量のみを総和して、最大流通量を決定する。なお、対角要素は
ネットワークのノード数であり流通量とは無関係である。孤立点と他の点と
の流通量は0である。
247
UCINET®の使い方
局所点連結度を計るには
1-11
実施項目 局所点連結度を計ります。
【目的】
隣接していない2つのノードの局地点連結度とは、その2つのノードを非連結にするために、
消去しなければならないノード数である。注:点連結度はノードのペアごとに算出される。
これは、グラフ全体の連結度は別概念なので、局所点連結度と訳している。
ネットワークデータ
局所点連結度算出結果
局所点連結度
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Cohesion] →
[Point Connectivity] をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔Output dataset〕は、出力
ファイル名を指定する。
248
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6つのノードの非対称ネットワーク
①図1のネットワークについて局所点連結度を計ると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
BからEへの経路を切断するために、消去しなければいけない最少のノード数
は2である(AとC)。隣接しているノードの場合と、対角要素の算出法は不明。
249
UCINET®の使い方
1-12
コンポーネントを探すには
実施項目 コンポーネントを探します。
【目的】
無向グラフのコンポーネント、有向グラフについては、強連結のコンポーネントあるいは
弱連結のコンポーネントを特定する。
ネットワークデータ
コンポーネント算出結果
コンポーネント
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Regions] →
[Components] → [Simple Graphs]
を選択
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔Minimum size to save〕
は、コンポーネントとみなす最少のノード数を
指定する。デフォルトは3である。
3番目のオプション〔Kind of componets〕は、有
向グラフについて、弱連結、強連結いずれのコ
ンポーネントを抽出するかを指定する。
4、5、6番目のオプションである、〔Output
sets〕〔Output partition matrix〕〔Output Main
Comp.Vec〕はそれぞれ、ノードとコンポーネン
トの行列、コンポーネントのパーティション・ベ
クトル、主要コンポーネントのベクトルを出力す
るファイル名を指定する。
250
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6つのノードの非対称ネットワーク
①図1のネットワークについてweak component、最少コンポーネントサイズ3を指定する
と、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
指定したネットワークには二つの弱連結コンポーネントがある。第一のコン
ポーネントは、ノードABCDから形成されており、第二のコンポーネントはEFG
から形成されている。コンポーネントの大きさの、多様性尺度は0.490であ
る。(注:ブラウの多様性尺度が用いられている。この尺度は、内部のコン
ポーネントの数が多いほど1に近づき、内部がすべて一つのコンポーネント
の場合には0となる。)標準化コンポーネントが算出される。内部の分割度は
(4÷7)で0.571である。
注:エントロピーに関する指標は算出方法が不明である。
251
UCINET®の使い方
1-13
バイコンポーネントを探すには
実施項目 バイコンポーネントを探します。
【目的】
グラフからバイコンポーネントを探す。
ネットワークデータ
バイコンポーネント算出結果
バイコンポーネント
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Regions] →
[BiComponents]を選択
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔[output] block by actor
matrix〕は、ブロックと行為者の行列を保存する
ファイルを指定する。
3番目のオプション〔[output] cutpoint
dataset〕は、切断点を保存するファイルを指定
する。
252
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 7つのノードの対称ネットワーク
①図1のネットワークについてバイコンポーネントを特定させると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
このネットワークには3つのブロックがある。B・Dで1つ、A・B・Cで1つ、E・Gで
1つである。このネットワーク内の切断点は、第1ブロックと第2ブロックに共通
して所属しているBだけである。他のノードは、切断点ではない。
出力でいうブロックは、バイコンポーネントと同義語であり、内部に切断点を
持たない最大サブグラフである。ブロックモデルの「ブロック」は別概念なの
で注意が必要。
!
注:非対称データを指定すると、自動的に大きい方の値が選択されデータは対称化される。
253
UCINET®の使い方
1-14
K-コアを特定するには
実施項目 K-コアを特定します。
【目的】
無向グラフの中のK-コアを特定する。
ネットワークデータ
K-コア算出結果
K-コア
算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Regions] →
[K-Core]を選択
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔Output dataset〕は、分析
結果を出力するファイル名を指定する。
254
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 4つのノードの対称ネットワーク
①図1のネットワークについてK-コア分析を実行すると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
degree数がKの値を示している。k=1すなわち1-コアは、ノードA、B、C、Dに
よって形成されるサブグラフである。K=2、すなわち2-コアは、ノードA、B、C
が形成するサブグラフである。Kが3以上の最大サブグラフは存在しない。
!
注:非対称データを指定すると、UCINETは自動的に対称データに変換し、K-コア分析を行う。
クラスターダイヤグラムが表示される
255
UCINET®の使い方
エゴネットワークの指標を計るには
1-15
実施項目 エゴネットワークの指標を計ります。
【目的】
個々のノードが形成するネットワークを、エゴネットワークと呼ぶ。
各ノードが形成するエゴネットワークについて、密度など14種類の指標を算出する。
ネットワークデータ
エゴネットワークの指標算出結果
エゴネットワーク
の指標算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [Ego Network] と進み
[Density]をクリック
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
第二のオプション〔Ego Network〕は、
特定のノード(エゴ)との結合関係を、双方向
(Undirected)、そのノードに入ってくる矢印のみ
(in-neighborhood)、そのノードから発する紐
帯のみ(out-neighborhood)のいずれかでとら
えるかを指定する。
第三のオプション〔Output data〕は、
出力するァイル名を指定する。
256
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 6つのノードの非対称ネットワーク
①図1のネットワークについてundirectedを指定し、双方向性を考慮させて、エゴネッ
トワークの指標を算出させると、以下の出力が得られる。
②出力の解釈
各ノードを中心としたエゴネットワークについて、14種類の指標が算出され
る。Sizeは、特定のノードが持つネットワークの大きさを示す。Tiesは、出次
数と入次数の和を示す。オプションの指定により異なる。Pairsは、エゴネット
ワークにあるペア数を示す。Densityはエゴネットワークの密度である。
AVgDisは、エゴネットワーク内の測地線の平均値を示す。Diameterは、エゴ
ネットワークにおける最も長い測地線の距離である。nWeakCompはエゴネッ
トワークに存在する弱連結コンポーネントの数を示す。pWeakCompは、弱連
結コンポーネントの数を、ネットワークの大きさで除したものである。
2StepReachは、エゴから2ステップ以内で到達するノード数である。
ReachEfficは、エゴから2ステップ以内で到達するノード数を、エゴネットワー
クの大きさで除したものである。Brokerは、直接に連結していないペアの数
である。Normalized Brokerは、ブローカー数をペアの数で除したものであ
る。Ego Betweenness エゴネットワークにおけるエゴの媒介性である。
Normalized Ego Betweenness 標準化した媒介性である。
!
※注意
有向グラフの場合には、オプションの指定によって、まったく異なる結果が出るので、どのオプションを選
ぶかに注意すること。
257
UCINET®の使い方
1-16
2-modeデータのブロックを作るには
実施項目 2-modeデータのブロックを作ります。
【目的】
2モードデータから、行為者とイベントのブロックを作り、中心と周辺を特定する。
ネットワークデータ
2-modeデータのブロック算出結果
2-modeデータ
のブロック算出
1
コマンドの指定
①コマンドはUCINETメニューから
[Network] → [2-mode] →
[Categorical Core/Periphery]を選択
オプションが表示される
2
オプションの指定
②最初のオプション〔Input dataset〕は、
用いるUCINETデータを指定する。
2番目のオプション〔Row Partition〕は、列の要
素が中心、周辺いずれに所属するかを出力す
るファイル名を指定する。
3番目のオプション〔Column Partition〕は、行の
要素が中心、周辺いずれに所属するかを出力
するファイル名を指定する。どちらも1が中心で
あり、2が周辺である。
258
UCINET®の使い方
3
出力と出力の解釈
図1 行為者5人、イベント4つの二部グラフ
①図1の二部グラフを分析させると、以下の出力が得られる
②出力の解釈
4つのブロックに分割された行列が出力される。行為者1、2が中心部に属し、
行為者3、4、5は周辺部分に属している。一方、イベント1と2が中心部に属
し、イベント3、4は周辺部分に属す。Fitは、元データと、中心部がすべて1、
周辺部がすべて0だとした場合の行列との相関を示している。密度表は、ブ
ロックごとに元行列の対角要素をのぞいて算出した密度が記されている。
259
UCINET®の使い方
260
赤門マネジメント・レビュー編集委員会
編集長
編集委員
編集担当
新宅 純二郎
阿部 誠 粕谷 誠
片平 秀貴
高橋 伸夫
西田 麻希
赤門マネジメント・レビュー 4 巻 5 号 2005 年 5 月 25 日発行
編集
東京大学大学院経済学研究科 ABAS/AMR 編集委員会
発行
特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター
理事長 高橋 伸夫
東京都文京区本郷
http://www.gbrc.jp
藤本 隆宏
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