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今後の防災・減災に気候変動予測は どのように活かされるか?

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今後の防災・減災に気候変動予測は どのように活かされるか?
創生プログラム平成28年度公開シンポジウム
於:国立オリンピック記念青少年総合センター ’ 16/9/30
今後の防災・減災に気候変動予測は
どのように活かされるか?
中北 英一
京都大学防災研究所 副所長 教授
創生プログラム 領域D代表
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
1
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
2
災害をもたらす豪雨のスケール
台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
気象庁HP
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
梅雨タイプの集中豪雨
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
南日本新聞 OFFICIAL SITE
都賀川モニタリング映像
共同通信
災害をもたらす豪雨
• 台風による豪雨は1000 km四方の広がりで1日~数日の継
続時間を持つので、数1000 km2より大きな流域をもつ河川
でも洪水をもたらす危険性があり、大規模水害の想定対象で
もある。大規模な土砂災害も生起する。
• 通常の集中豪雨は、100 km程度の長さで10~20 kmの幅
をもち、6時間~半日程度継続するので、流域面積が100
km2オーダーまでの流域面積をもつ中・小河川および内水氾
濫が問題となる。台風による豪雨と同様に深刻な土砂災害も
生起する。
• ゲリラ豪雨(局地的集中豪雨)は数km四方の広がりで時間的
には1時間以下の継続時間であるから10 km2程度の小河川
や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫が問題となる。
4
最近の特徴
• 台風:
– 遅い台風による長く続く豪雨(地形性、線状豪雨)
– 近畿では、木津川・宇治川・桂川上流同時での地形
性豪雨(3川同時出水、雨の降り方が違う)
– 東北・北海道への台風の影響
• 梅雨:線状豪雨
– 日本海側の豪雨
– 8月に入っての前線性の豪雨
• ゲリラ豪雨:短時間雨量の増加
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
6
日本の河川の特徴 (1)
• 短い⻑さと急な勾配
標⾼(m)
ライン川
常願寺川
信濃川
利根川
北上川
コロラド川
セーヌ川
メコン川
河⼝からの距離(km)
日本の河川の特徴 (2)
• ⼤きなピーク流量と短い洪⽔期間
利根川
信濃川
ミシシッピー川
ライン川
筑後川
洪水継続期間 (日)
テネシー川
地球シミュレーターが推測する2076年8月後半
台⾵を表現できるモデルで、
時間⾬量が出⼒できるようになって
、我が国の、極端現象としての災害
評価が可能となった
10
RCM5
RCM2
GCM20
気候変動影響評価が可能な豪雨は?台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
20/60km格子モデル(AGCM20/60)
気象庁HP
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
集中豪雨
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
5km格子モデル(NHRCM05)
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2km格子モデル(NHRCM02)
都賀川モニタリング映像
共同通信
温暖化による我が国への影響推測
• 台風:
– 日本への到来回数は減る
– スーパー台風の危険性は高まる
• 梅雨:
– 7月上旬と8月上旬の日100mm以上の割合や、集
中豪雨の生起回数が増える。
– 日本海側の豪雨
• ゲリラ豪雨:
– 8月に増えるだろう。
台風の存在頻度は東へシフト (前期モデル)
Murakami et al. (2011) J. Climate
1年の台風最盛期(7月〜10月)、東西2.5度x南北2.5度領域あたりの個数
将来気候実験(2075-2099年)と現在気候実験(1979-2003年)の差
減る
増える
マーシャル諸島付近から日本の南岸に沿って増加(赤の枠線)
フィリピンや台湾の東から韓国、西日本にわたる領域(青の枠線)で減少
地球シミュレーターによる台風のシミュレーション
関東・東北地方の主要な降水の
最大は500~800mm
スーパー台風
坪木ら(2009)
高潮偏差(東京)
d4PDF
将来だけでな
く過去のことも
評価可能に
最大クラス
キティ台風 1.4m
現在気候
将来気候
志村(京大)(2016)
再現年数
Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
台風の影響
• 温暖化で海面水温は上昇する。=>台風が生ま
れやすくなる。
• 温暖化で大気は安定化する。=>台風ができに
くくなる。
• 一旦できた台風は、大気の安定化に打ち勝つも
のになるので、スーパー台風になりやすい。
• スーパー台風とは、大型化というよりむしろ強
力化。
17
集中豪雨の頻度の変化を見る
集中豪雨の数え方
地域別の災害発生頻度の観点から見た「集中豪雨」の頻度
「集中豪雨」をもたらす気象擾乱の頻度
30分雨量を用いた場合
2回集中豪雨が発生している
1回集中豪雨が発生している
災害発生頻度の観点から集中豪雨は3回
集中豪雨をもたらす気象擾乱としてみて1回
中北・宮宅・キム・木島 (2011)
RCM5を用いた梅雨集中豪雨の発生回数(25年)の変化
1 6
5
5
3 8
増加量
24
10
17 27
100
76
28
20
30
10
44
22
60 5
21
16
38
16
現在気候
将来気候
中北・宮宅・キム・木島 (2011)
95%有意増加
90%有意増加
有意な増加なし
梅雨期集中豪雨発生の大気場特性の将来予測
集中豪⾬のきっかけとなる⼤気条件を判別
↓
⾃⼰組織化マップ (SOM)
d4PDFの⼤気場を⾃動的・客観的に判別
ユニット(1,1)が表す⼤気場
(カラー:SLP、⽮印:⽔蒸気フラックス)
⾰新後期RCM5km海⾯更正
気圧(SLP)と⽔蒸気フ
ラックス(WVFL)
アップスケール
60kmの
SLP,WVFL
SOMで10×10マップを作成
類似
2013年7/1〜8/25で平
均した ⽔蒸気フラッ
クスの平年差
※2013年夏はこの
⼤気場の影響で⽇
本海側で集中豪⾬
が多発した
中北・草野・峠・キム(2016)
d4PDFをマップ上に分類した結果
各ユニットにプロットされたアンサンブル数の過
去気候と将来気候の差.暖⾊のユニットは過去気
候と⽐較して将来気候でプロットされる数が増加
[個]
ユニット(1,1)〜(1,10)にプロットされ
たアンサンブル数.⻘棒が過去気候
の数、⾚棒が将来気候の数を表す
1000
800
HPB678
600
HFB678
400
200
0
11
12 13 14 15 16 17 18 19 110
ユニット(10,1)〜(10,10)にプロットさ
れたアンサンブル数.
1000
800
HPB678
600
HFB678
400
200
中北・草野・峠・キム(2016)
0
梅⾬豪⾬をもたらす可能性のある⼤気場の出現頻度が増加
する
日本の梅雨への影響
• たとえば、温暖化でエルニーニョ傾向になれば。
• インドネシア域で活発だった赤道上の積乱雲の活
発化領域が西にずれる。
• インドネシア域で上昇した空気が下降して太平洋
高気圧を形成してきたが、赤道上の積乱雲の活発
化領域が西にずれることによって、太平洋高気圧
が弱まる。
• 梅雨前線を押し上げる力が弱まる。
• 8月にも梅雨タイプの豪雨(バック形成型豪雨)
が生起する
22
ゲリラ豪雨発生頻度の将来変化(RCM5による推測)
増加量(将来ー現在)
頻度(年数)
8月全体(30日間)
8月下旬(10日間)
青:現在気候
(1981‐2000)
赤:将来気候
(2077‐2096)
0 1‐
4‐
7‐ 10‐ 13‐ 16‐ 19‐
1年あたりの発生日数
0 1‐
中北・森元(2016)
4‐
7‐ 10‐ 13‐ 16‐ 19‐
0 1‐
4‐
7‐ 10‐ 13‐ 16‐ 19‐
1年あたりの発生日数
0 1‐
4‐
7‐ 10‐ 13‐ 16‐ 19‐
ゲリラ豪雨発生日数が増加
23
ゲリラ豪雨への影響
• 都市化を考慮していない場合、8月、特に8月
下旬に増加
• 水蒸気の増加が、大気の安定度の増加に勝る
ことが原因と推測
• しかし、都市キャノピーを考慮したRCM2の結
果を利用した解析に、今後期待される。
24
積雪への影響
• 積雪北海道は変化ないか増加。しかし、気温
上昇により融雪出水が早まり、融雪出水の
ピーク流量は増加か?
• 南東北以南の日本海側の、季節風に積雪は減
る。したがって、融雪出水は減少。農事暦の
変化。
• ただし、朝鮮半島からの一部の筋雲は強化さ
れる危険性有り。=>富山周辺で豪雪の危険
性は増大化?
25
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
26
災害をもたらす豪雨のスケール
台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
気象庁HP
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
梅雨タイプの集中豪雨
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
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都賀川モニタリング映像
共同通信
台湾での大斜面崩壊災害と浸水
小林村災害
深層崩壊
土石流
浸水
天然ダム
決壊→洪水
成功大学防災研究センター
台湾での大斜面崩壊災害(深層崩壊)
成功大学防災研究センター撮影
かつてここに400~600人が暮らした小林村があった。
集落の400~600名の遺体は今も土砂に埋まったまま。
撮影:群馬大学 及川康
30
2011年の近畿南部豪雨(1112)
(積算雨量と地形)
山岳域の風上斜面で
強雨が長時間停滞
⇒地形性降雨
72時間雨量:1652.5 mm(奈良県上北山村)
淀川・由良川豪雨(T1318)
撮影:国土交通省近畿地方整備局
撮影:国土交通省近畿地方整備局
国土交通省近畿地方整備局(2013)
由良川
桂川
地形性豪雨
宇治川
木津川
熊野川
那智川
山口・中北(2013)
淀川水系桂川・危機的状況にあった久我地点(平成25年台風18号)
国土交通省近畿地方整備局(2013)
淀川水系のダム群全体で洪水調整
木津川
宇治川
瀬田川洗堰
桂川
日吉ダム
三川合流地点
日吉ダム
21
国土交通省近畿地方整備局(2013)
天ヶ瀬ダム
天ヶ瀬ダム
宇治市内と天ヶ瀬ダム
写真提供:国土交通省近畿地方整備局
鬼怒川における平成27年9月関東・東北豪雨
○ 9月9日から9月10日にかけて、栃木県日光市五十里(いかり)観測所で、昭和50年の観測開始以
来最多の24時間雨量551mmを記録するなど、各観測所で観測史上最多雨量を記録した。
気象・降雨の概要
湯西川ダム
川俣ダム
川治ダム
五十里
ダム
9月10日 3:00
レーダ雨量図
等雨量線図(8日~10日累加雨量)
石井
※気象庁
※気象庁
9月9日
16:00
9月9日 20:00
×
:24時間雨量
9月10日 0:00
9月10日 3:00
(既往最多)
観測所名
河川名
観測開始年
湯西川
湯西川
昭和32年から観測
中三依
男鹿川
昭和26年から観測
高百
鬼怒川
昭和59年から観測
:24時間雨量
(今回洪水)
五十里
男鹿川
昭和50年から観測
:2日雨量
(既往最多)
宇都宮
鬼怒川
昭和24年から観測
:2日雨量
(今回洪水)
水海道
鬼怒川
昭和13年から観測
:3日雨量
(既往最多)
:3日雨量
(今回洪水)
国土交通省 (2015)
※平成27年9月洪水に関する数値は速報値であり、今後の精査により変更する可能性があります。
鬼怒川災害でもダム貯水池は満杯
 国土交通省管理の鬼怒川上流の4つのダムでは、雨や下流の河川水位の状況を見ながら、できる限り洪水を貯
める操作を行い、約1億m3の洪水を貯め込んだ。
湯西川ダム
五十里ダム
←五十里ダム貯水池
鬼怒川流域
湯西川ダム
五十里ダム
川俣ダム
川俣ダム
川治ダム
川治ダム
利根川
国土交通省(2015)
※各ダムの写真は、ダム上流側から 9月11日に撮影
38
氾濫流による家屋の倒壊・流失
○ 堤防決壊箇所の周辺では、氾濫流により多くの家屋が倒壊・流失した。
常総市三坂町地区
被災状況(拡大写真)
被災状況(全景写真)
平成18年
:鬼怒川流域
平成27年9月11日
■平成27年9月10日 12時50分 堤防決壊
■決壊幅 約200m
国土交通省 (2015)
台風10号 平成28年8月28日12時~31日12時 レーダ雨量計 等総雨量線図
国土交通省
2016
地球シミュレーターによる台風のシミュレーション
関東・東北地方の主要な降水の
最大は500~800mm
坪木ら(2009)
災害をもたらす豪雨のスケール
台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
気象庁HP
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
梅雨タイプの集中豪雨
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
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都賀川モニタリング映像
共同通信
典型的な梅⾬集中豪⾬(線状対流系)
100 ~ 200 km
典型的な集中豪雨は、自己組織化
された積乱雲のファミリーによって
もたらされる。
このファミリーは100km以上の長
さを持ち、自己組織化されているゆ
え6時間以上の寿命を持つ。
京都市北部豪雨
(2012/7/15)
--赤ちゃん雲は六甲山地
西部から
--8/14の宇治豪雨も同じ
--1986年の宇治豪雨も
同じ
--2008年の都賀川ゲリラ
豪雨も同じ
2014年広島豪雨
降雨強度(国交省Cバンド)
山口・中北(2014)
降雨強度(国交省XRAIN)
被災状況
○土石流により多くの家屋等が被災。
国土交通省(2014)
八木3丁目
可部東6丁目
46
被災状況
○電力や鉄道、上下水道等のライフラインへの被害も甚大。
停電のため民家の明かりが消えたままの八木地区
(8月21日) 毎日新聞社提供
汚水管の流失
国土交通省 線路への土砂堆積状況(JR可部線)
給水車から水を汲む市の職員
広島市水道局提供
47
山口・中北(2014)
由良川 浸水状況
福知山市(福知山市民病院付近:左岸36.2k)
昨年の台風18号のような由良川の外水被害はなかったが、
支川からのはん濫、浸水、落雷によるポンプ停止。内水により昨
年を上回る、床上浸水1791戸、床下浸水1845戸の浸
水。土砂災害により全壊13戸、半壊2戸の被害が発生。
舞鶴市上東地先(右岸6.8k)
出典:朝日新聞社
福知山市私市(私市橋)地先(右岸43.0k)
福知山市(事務所付近:左岸37.4k)
福知山市(事務所付近:左岸37.4k)
国土交通省(2015)
49
災害をもたらす豪雨のスケール
台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
気象庁HP
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
梅雨タイプの集中豪雨
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
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都賀川モニタリング映像
共同通信
豪雨のタマゴの3次元動画(XRAINによる詳細観測事例)
豪雨のタマゴの探知事例 (2011年8月26日16:40~17:10、1コマ1分)
上空で先⾏して⾬雲(豪⾬のタマゴ)が発⽣し、
上空に形成された強⾬域(⾚や⻩で表⽰した領
域)が遅れて地上に落下してくる様⼦がわかる
北東方向を
見た場合
⼤阪湾
淡路島
10
30
50
(dBZ)
51
都賀川災害時の周辺の様子(7月28日14:20~24)
映像提供:神戸市
53
災害をもたらす豪雨のスケール
台風
範囲:1000km
継続時間:1日から数日
大河川での洪水、大規模水害、土砂災害
2009/08/08 in台湾
渇水について
気象庁HP
梅雨タイプの集中豪雨
台湾中央気象局、台湾国家災害防救科技中心
範囲:100km
継続時間:6時間から半日程度
ゲリラ豪雨(局地的豪雨)
範囲:数km
継続時間:1時間程度
中・小河川での洪水、内水氾濫、土砂災害
2010/10/20 in奄美
小河川や下水道内での鉄砲水、都市内水氾濫
2008/07/28 at都賀川 2008/08/05 at雑司ヶ谷
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共同通信
尾瀬沼の積雪深が観測史上最低を記録
平成27年度は、利根川上流域では記録的な少雪となり、昭和29年から観測している尾
瀬沼観測所(標高1,666m)の最大積雪深は、62ヶ年の観測史上で最低を記録しまし
た。
尾瀬沼地点の積雪深変化図
300(㎝)
最大積雪深の62ヶ年平均
289㎝
250
200
H27~28年最大
2月10日 172㎝
150
100
60%
4月28日
消雪
S29~H27年
(62ヶ年)平均
1ヶ月
50
国土交通省(2016)
0
10/1 11/1 12/1 1/1
2/1 3/1
4/1
5/1
6/1
2
平成28年春の水源地域の状況(奈良俣ダム)
平成27年度は、記録的な少雪に加えて暖冬もあり、みなかみ町の藤原(アメダス)では、
平成27年12月から本年3月までの毎月の平均気温が、平年以上を記録しました。
気温 +1.2℃~+1.9℃
平均的な年の4月の様子
平成28年4月中旬(撮影18日)
武尊山
武尊山
国土交通省(2016)
ならまた湖
3
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
57
極端現象に伴う災害発生変動評価
斜面系
領域C
GCM・RCM
出力
領域気候モデル (気象研5km, 2km-RCM, 独自ラン with WARF等)(物理的ダウンスケール)
陸面過程モデル
台風モデル
主要物理量の確率時空間モデル・極値確率分布モデル (確率的ダウンスケール)
河道の水流モデル
高潮 ・
高波モデル
河道の土砂体積・輸送モデル
強 風による建物被害モデル
ダム操作ルールモデル
洪水 氾濫浸水モデル
土砂流出モデル
雨水流出モデル
災害発生
変動評価
沿岸域
地下 街浸水モデル
(長期計算も
含む)
都市・低平地
(領域C:GCM60, GCM20, RC5, RCM2 (アンサンブル実験結果を含む), やCMIP5)
土砂生産モデル
Hazard
モデル
河道
降雨・気温・水蒸気・風速・放射・気圧系列 (現在気候、近未来、世紀末 各25~30年)
降水
温暖化出力
翻訳
山岳系
斜面崩壊、土石流、洪水流出、洪水氾濫(都市域氾濫・地下街浸水など)、高潮・高
波氾濫、強風・突風により、発生頻度に応じた各ハザードの巨大化や災害としての
治水施設(ダムオペレーションも),堤防、防波堤護岸の安全率の低下や建物被害
率の増大 =>新たな気候変動評価指標の創出
斜面崩壊のリスクの増大
Top 20 data of total rainfall and
maximum hourly rainfall from
Takeda City, Oita, Japan
表層崩壊のリスク
表層崩壊と深層崩壊
Rainfall intensity [mm/hr]
100
1976-1980
1981-1985
1986-1990
1991-1995
1996-2000
2001-2005
2006
2007
2008
80
60
40
surface soil layer
rock
Schematic from PWRI
Report No.4129 (2009)
20
深層崩壊のリスク
0
0
200
400
600
Total rainfall [mm]
Oku et al (2011)
800
1000
総雨量
cluster3
SST
cluster2
cluster1
em
YS
2.6 4.5 6.0 8.5
表層崩壊リスク
半減期1.5時間の実効⾬量*の将来変化
AS
%
深層崩壊リスク
半減期72時間の実効⾬量*の将来変化
KF
CP
RCP8.5
……有意差あり**
RCP6.0
RCP4.5
SST将来変化の不確実性は⽐較的⼩さい
⾼排出量シナリオでは有意な変化
RCP2.6
*99.5パーセンタイル値,**有意⽔準5%
奥(兵庫県⽴⼤)
洪水流出モデルによる河川流量推定
洪水流出モデル
ダム操作モデル
両方を考慮した洪水流出計算
Sayama et al (2008)
流量シミュレーションの一例
再現期間100年に対応する年最⼤流量
の変化⽐率(台⾵到来が⼤きな影響)
近未来気候の100
年確率年最⼤流量
の変化⽐率
世紀末気候の100
年確率年最⼤流量
の変化⽐率
立川ら 2011
●東北南部と北陸東部以外、ほとんどの地域で最⼤流量は増加。30-40%増
も。
●もともと⼤⾬の少ない東北では、クリティカルになる危険性が⼤きい。
●ただし、九州〜近畿以外では、台⾵到来頻度が元々相対的に少なく、GCMによる25年間
の計算では、たまたまという影響が⼤きいと考えられる。洪⽔危険度は東⽇本も要注意。
1 はじめに
気候変動予測
 国土技術政策総合研究所の研究によると、今世紀末には、全国一級水系の計画降雨継続時間での降雨
量が1.1~1.3倍※1に、基本高水を超える洪水の発生頻度※2が1.8~4.4倍※1に増加する恐れがある。
留萌川
計画降雨継続時間
での降雨量
天塩川
渚滑川
湧別川
常呂川
留萌川
基本高水を超える
洪水の発生頻度
網走川
十勝川
石狩川
釧路川
尻別川
後志利別川
沙流川
鵡川
1.1~1.3倍
常呂川
尻別川
後志利別川
1.8~4.4倍
高瀬川
岩木川
雄物川
北上川
赤川
鳴瀬川
最上川
荒川
荒川
阿武隈川
小矢部川
常願寺川
利根川
那珂川
木曽川
天竜川
斐伊川
高津川
太田川
芦田川
高梁川
江の川
淀川
揖保川 加古川
旭川
吉井川
鈴鹿川
大和川紀の川
土器川
吉野川
小瀬川
佐波川
遠賀川
重信川
仁淀川
山国川 大分川
肱川
筑後川
大野川
渡川
松浦川
矢部川
番匠川
六角川 菊池川
白川
嘉瀬川
雲出川
豊川
荒川
高津川
菊川
太田川
芦田川
高梁川
江の川
揖保川 加古川
旭川
吉井川
土器川
吉野川
新川
那賀川
木曽川
淀川
小瀬川
佐波川
遠賀川
重信川
嘉瀬川
仁淀川
山国川 大分川
筑後川
肱川
大野川
松浦川
矢部川
渡川
番匠川
六角川 菊池川
白川
緑川
矢作川
庄内川
鈴鹿川
大和川紀の川
櫛田川
宮川
物部川
由良川
天竜川
斐伊川
富士川狩野川
大井川
安倍川
五ヶ瀬川
球磨川
利根川
信濃川
北川
円山川
日野川 天神川千代川
多摩川
相模川 鶴見川
本明川
緑川
本明川
矢作川
庄内川
常願寺川
那珂川
手取川
庄川 神通川
九頭竜川
信濃川
由良川
阿武隈川
久慈川
梯川
手取川
庄川 神通川
九頭竜川
北川
円山川
日野川 天神川千代川
阿賀野川
関川
黒部川 姫川
久慈川
梯川
鳴瀬川
名取川
黒部川 姫川
小矢部川
北上川
子吉川
名取川
阿賀野川
馬淵川
米代川
雄物川
関川
釧路川
沙流川
鵡川
馬淵川
米代川
最上川
雲出川
豊川
荒川
多摩川
相模川 鶴見川
富士川 狩野川
大井川
安倍川
菊川
櫛田川
宮川
新川
那賀川
物部川
五ヶ瀬川
球磨川
小丸川
川内川
-0 .5
0 .5- 0.7
0 .7- 0.9
0 .9- 1.0
1 .0- 1.1
1 .1- 1.5
1 .5- 2.0
2 .0- 3.0
3 .0- 5.0
5.0- 10 .0
10.0-
小丸川
川内川
網走川
十勝川
岩木川
赤川
渚滑川
湧別川
石狩川
高瀬川
子吉川
天塩川
大淀川
大淀川
肝属川
肝属川
降雨量倍率の予測結果
洪水の発生頻度の予測結果
※1:SRES A1Bシナリオを適用した4つの気候モデル現在(前期RCM5は1990~1999、後期RCM5は1979~2003)、将来(前期RCM5は2086~2095、後
期RCM5は2075~2099)の予測値(中位値)の幅を示したもの
※2:基本高水ピーク流量以上の洪水が発生する年超過確率の変化率の中央値
※:図はともに気候モデル(後期RCM)によるもの
【出典】国土技術政策総合研究所資料No.749.
64
将来の年平均河川流量の変化
RCP8.5シナリオ
Future/Present
CMIP mean
45
40
1.2
Temp.:+4.26℃
Prec.:0.99
Q:0.932
(0.758-1.192)
増加
1.15
1.1
1.05
1
0.95
0.9
35
0.85
0.8
130
135
140
145
0.75
減少
佐藤ら(2015)
将来の年平均河川流量の変化
Future/Present
Cluster1
CMIP mean
45
40
1.2
Temp.:+4.26℃
Prec.:0.99
Q:0.932
(0.758-1.192)
1.15
1.1
1.05
45
40
135
140
Cluster2
145
135
0.85
0.8
0.8
0.75
130
45
40
135
140
Cluster3
145
Temp.:+4.52℃
Prec.:1.03
Q:0.986
(0.807-1.229)
0.75
化パターンが異なる
1.15
1.1
1.05
1
0.95
0.95
0.9
35
0.85
0.85
0.8
0.8
130
135
予測の不確実性
1.2
1
0.75
将来の気候条件により変
0.9
0.85
1.05
145
1.05
35
1.1
140
1.1
0.95
0.9
130
1.15
0.95
1.15
35
1.2
1
1.2
Temp.:+4.31℃
Prec.:1.04
Q:1.002
(0.814-1.211)
40
Temp.:+4.04℃
Prec.:1.02
Q:0.969
(0.761-1.227)
1
0.9
35
130
45
140
145
確度の⾼い将来変化の把
握と不確実性の要因分析
0.75
佐藤ら(2015)
ダム操作回数の算定結果(淀川流域)
気象庁気候統一シナリオ第2版,RCM20を入力とした予備的検討
(各気候30年間の長期計算結果)
70
Number of floods with
dam operation
Number of floods
60
Number of floods with
emergency dam release
50
40
30
20
10
0
1981-2000
2031-2050
2081-2100
は日雨量系列を与えるので、確率モデル
RCM20
により時間雨量系列を発生させた確率評価
80
By 佐山ら, 2007
再現期間10年に対応する渇⽔流量の
変化⽐率(台⾵が来ない事が⼤きな影響)
渇⽔流量:1年で約10番⽬に少ない、河川の⼀⽇の流
量
近未来気候の10
年確率渇水流量
の変化比率
21世紀末気候の10
年確率渇水流量の
変化比率
立川ら 2011
●北⽇本と中部⼭地以外では、渇⽔時の流量減少。渇⽔が深刻に。
●⻄⽇本では、洪⽔危険も増すし、渇⽔危険度も増す。
●ただし、九州〜近畿以外では、台⾵到来頻度が元々相対的に少なく、GCMによる2
5年間の計算では、たまたまという影響が⼤きいと考えられる。
革新
降雪・融雪への影響(最上川)
現在気候
•融雪が融雪出水や水田への
灌漑用水を供給
積雪期
世紀末気候
季節の移動は流域の農業だけで
はなく、生活・文化に大きな影響を
及ぼすだろう。
By 立川ら, 2008
利根川ダム群は今世紀末の少雨に
No Dams
対応できるか?
Water Resources at
Tone-Ozeki (6058.8 km2)
With Dams
•
Water Demand
•
•
•
Living water: 37.43 m3/s
Industrial water: 2.08 m3/s
Agricultural water:
Apr~May 39.51 ~ 60.99 m3/s
May~Sep 111.62~186.71 m3/s
Kimら, 2010
•
ダム群から離れた下流の地点である利根大堰(流域
面積6058.8km2)に対する計算結果からは、ダム群の
操作影響が少なくなることがわかる。
利根大堰地点では、ダム群操作にもかかわらず年最
小流量が必要な水利用量に対して満足できない時
期が現れる。そのため、新たな操作ルールの開発が
必要とされる。
淀川⽔系
(降⽔・降⾬・降雪(融雪)・蒸発散・⽔収⽀)
降⽔量
現在
1645mm
+3%
降⾬量
1544mm
+8%
降雪量
蒸発散量
101mm
707mm
-67%
⽔収⽀(⽔資源賦存量)
(=降⽔量-蒸発散量)
+14%
938mm
-5%
将来
1697mm
佐藤ら (2011)
1664mm
33mm
889mm
889mm
MRI-AGCM3.1S/3.2S(A1Bシナリオ)
特定主要河川流域を対象とした将来流況変動予測。
さらに植生分布と河川水温分布の変化の推定
❷
❸
石狩川
❶
最上川
阿賀野川
利根川
淀川
筑後川
吉野川
❹
木曽川
長良川
人口分布
❻
❺
土地利用
■森林
■草地
■水田
■都市
■水域
❼
現在植生分布
熱帯雨林
亜熱帯雨林
照葉樹林
落葉広葉樹林
常緑針葉樹林
ツンドラ
将来植生分布
熱帯雨林
亜熱帯雨林
照葉樹林
落葉広葉樹林
常緑針葉樹林
ツンドラ
現在水温分布
❽
将来水温分布
最適水温
(アユ)
佐藤ら(2011)
水資源量変動及び水需給
バランスへの影響評価
近未来
田中ら 2013
21世紀末
現在気候の月流量を基準としたナッシュ係数
River discharge
近未来
21世紀末
Demand
Stress
withdrawn
time
季節性を考慮した水ストレス計算
気候変動による水ストレス変化
水域環境への影響評価(京都の地下水への影響)
気候変動による地下水への影響を定量的に評価する手法の検討
空間的影響の定量的評価+確率的評価
平面二次元地下水流動モデル+移流分散水質モデル
MRI‐AGCM3.2s(現在気候、近未来気候)出力降水量
周辺グリッド降水量を用いたアンサンブル予測評価
確率情報を付加した定量的評価結果
城戸ら 2013
2.0
1.0
0.0
-2.0
[m]
発生確率%
-1.0
超 40
過
面
積 20
率
% 0
80
60
40
20
00
0.0 ‐0.4 ‐0.8 ‐1.2 超過水位[m]
0 10 20 30 超過面積率[%]
74
水災害・水資源に関し、我が国で
おおよそ何が推測されているか?
• 100年に一度起こる規模の河川最大流量が九州・四国・近
畿・東海地方の太平洋側で増大すること
• 10年に一度の少ない規模で起こる河川流量が北日本と中部山
岳地帯を除く多くの流域で悪化し、融雪水を利用している地
域では、融雪ピークの減少やそれが早期化すること
• ダム操作の有効性が変化すること
• 西日本太平洋側を中心に、表層崩壊や、深層崩壊という数
10mの深さでかつ水平規模の大きい斜面崩壊の危険性が増大
すること
• 100年に一度の規模で起こる高潮・高波が一部の主要湾で悪
化すること
• 降雪、積雪助教の変化により、水ストレスが増加する
モウソウチクとマダケの潜在生息適地である確率の時間変化
中靜・高野・日比野・高藪ほか(2015)
76/23
創生C高薮グループ 日比野氏と共同で制作
変化しつつある海洋生物
▲ 増加 or 新たに出現
(南方種の増加、分布拡大など)
● 変化なし or 過去データなし
▼ 減少 or 見られなくなった
(在来種の減少、分布縮小など)
気候変化に対する生物多様性や
生態系サービスの将来予測を行う
文献調査・
モニタリング継続中
生態系への影響評価
• 高山植物は、北上よりより高山地帯へ
• 竹などの温暖地域の植物は北上
• 台風の強雨風などでドラスティックな影響を
受けた後は、生態系の変化があり得る。
• 海洋生物は、海水温度の上昇と、酸性化の影
響を受ける。
78
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. ハザードへの影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
79
Sousei (創生) Program D (2012-2016)
適応策創出の哲学・考え方の
構築
より精度の高い確率の推定
Ultimate Goal
大きな不確定性下での意思決定法
の構築
最悪シナリオなどの確率のわから
ない状況下での意思決定法の
構築
生態系の経済指標など新しい価値
観の創出
Post Sousei
粗いモデルによるアンサンブ
ル情報により確率密度関
数を推定する。
GCM20やRCMを用いて、粗
い時・空間解像度での値
を、領域スケールでの値
にコンバート
Sousei (2012-2016)
Kakushin(2007-2011)
対象:
自然災害, 水資源、
生態系・生物多様性
For adaptation decision making
Deterministic, Probabilistic and Beyond
中北 (2012, 2015)
最大クラス外力の
想定-生存の縁
最大クラス台風
複合災害
社会シナリオ
の想定
適応策の役割
緩和策
災害外力
適応策
影響
リスク
適応能力
過去
現在
将来
三村(茨城大)、2104
温暖化に対する順応的適応策の考え方
災害
温暖化トレンド
適応策の時間スケール 適応策
災害
完了
災害
許容範囲
自然変動
適応策
開始
ハザード強度
温暖化によるハザード強度の変化に加えて,
・自然変動の幅
・温暖化影響の時間スケール
・適応策の時間スケール
・費用対効果
作図:森信人(2015)
を知ることが重要
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. 災害としての影響将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
83
適応策のアプローチと科学的支援
世界
気候予測
予測のダウン
スケール
影響予測
適応政策
立案
<科学アプローチ>
<地域アプローチ>
地域・企業の取り組み
防災・農業・水・健康
地域計画
研究コミュニティの
役割
適応計画
立案
住民の理解
既存の政策の
検証
影響の現れ
影響把握
気候変動適応研究推進プログラム
By 茨城大学 三村先生
84
適応から見たトップダウンとボトムアップ
• トップダウン
– 国や県の治水計画、環境計画、適応計画などの基本計
画(マスタープランへ)の変更・策定に資する情報や考え
方の提供
– 全国どこでも影響評価や適応策評価ができる手法の開発
• ボトムアップ
– 市・町・村がそれぞれの特徴に合せて、基本計画の具体
実現方策を構築する。独自の方策もあり。
• 注意点
– 高時空間分解の影響評価を必要とするのはボトムアップ
だけではない。
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. ハザードへの将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
86
設計値Design value(確率値)
減災(Mitigation)
河川流量、
高潮・高波高
設計値(Design value)
(平均何年に一度
(Return period))
防ぐ・防災(Prevention)
革新
適応に向けて
最悪シナリオ
サバイバビリティ・クリティカル(⽣(最⼤外⼒)
存の淵、⼟俵際)から、しなやかによ
り戻せる⾜(社会システム)が、より
減災の対象となる範囲
重要となる
将来気候下での推測デザイン
値には不確定性がある
現気候下で
のデザイン
値
中北 (2010, 2011)
河川の流量
⾼潮の⽔位
= ⼤規模災害の場合もふくむ
世紀末のデザイン値
気候変動による影響評価では
=同じ頻度に対応するデザイン値
は上昇する。
=でも、どこまで上昇するかにはあ
いまいさがある。
防災の対象となる範囲
= 堤防から⽔は溢れさせない。
防波堤から⽔は越えさせな
い。
地球シミュレーターによる台風のシミュレーション
関東・東北地方の主要な降水の
最大は500~800mm
スーパー台風
坪木ら(2009)
高潮偏差(東京)
d4PDF
将来だけでな
く過去のことも
評価可能に
最大クラス
キティ台風 1.4m
現在気候
将来気候
志村(京大)(2016)
再現年数
Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
「最⼤クラスシナリオ」の設計と評価
台⾵の渦を保存させて中⼼位置を移動さ
せる。
RCM-5km
(台⾵のスタートを移動させる)
GCM20
領域気象モデルで移動後の数値シミュ
レーションを実施。
(任意の位置から台⾵を⾛らせる)
領域気候モデルによって
同⼀台⾵の異なる経路の計算
影響評価
• 陸: 強⾵・河川流量・浸⽔
• 海: 波浪・⾼潮
石川ら (2009)
河川流量(ton/sec)
将来気候の極端台⾵を進路変更させたときの
最⼤クラスの河川流量の変化
現在気候のデザイン流
量の2倍の流量の可能
性
現在気候下の
デザイン流量
GCMで算定された将来
気候の極端台⾵の進路
日時
最悪の河川流量をもた
らす台⾵経路
奥ら (2009)
最大クラス複合災害の影響評価
建物被害額
擬似温暖化実験
経路アンサンブル
Annual Exceedance Probability
極端台⾵の再現
Risk Curve
最悪シナリオ
Estimated Loss
リスク評価
経済影響
複合氾濫
降⾬・河川氾濫
⾼潮氾濫
伊勢湾台⾵の例
最⼤⽔位
分布型流出モデル (淀川流域; 7,281km2)
Nagoya
Kyoto
Kobe
Osaka
伊勢湾台風の擬似温暖化実験を用いた
淀川流域の洪水流量推定
枚方上流流域平均雨量(mm)
枚方地点流量(m3/sec)
Observed Typhoon Track CASE211: Cluster 1
CASE311: Cluster 2
CASE411: Cluster 3
擬似温暖化実験によって推定された河川流量は、
そうでない場合よりも、2割から3割、増加する。
立川ら(2016)
95
澁谷・金(2015)
D-i-c
沿岸災害
最⼤クラス⾼潮と氾濫範囲
伊勢湾台風再現
伊勢湾台風を疑似温暖化させた場合
疑似温暖化+最悪経路を辿った場合
氾濫面積
高潮偏差 [m]
15 hPa↑ 約1m ↑
15 hPa+最悪経路↑ 約2m ↑
名古屋港における潮位偏差の時系列
伊勢湾台風再現疑似温暖化 疑似温暖化
浸水面積 +最悪経路
破堤から17時間後
高潮ピークから17時間後
武田・川池(2016)
破堤箇所
桜通線
洪水氾濫
分かりやすさのた
め、地下鉄は実際よ
りも大きく表現してい
る。
名城線
条件:平成23年台風15号による洪水、河口から
19km左岸地点がピーク時に100mの幅で破堤。
解析モデルの大阪地域へ
の適用(洪水破堤の場合)
破堤箇所
地下鉄有り
高潮氾濫(堤防無しの場合)
条件:伊勢湾台風の再現計算
●地下鉄を有する名古屋市の洪水氾濫と高潮氾濫による浸水
を解析し、外力の違いによる地上と地下空間(地下街・地下鉄
駅と地下鉄線路)の浸水の様子を示した。
●解析モデルを大阪地域へ適用し、洪水破堤を想定した氾濫
解析を行った。現在、解析結果の妥当性について検証中。
●今後の課題
⇒地下街・地下鉄駅の水理現象の精緻化
⇒解析モデルの東京地域への適用(準備中)
⇒将来予測を考慮した「洪水解析」、「高潮解析」との連携
ハザードデータからリスクデータへ
• 伊勢湾台風クラス(最悪シナリオ)
• 高潮災害による浸水深
• 浸水深別被害率
治水経済調査マニュアル
被害分布
Annual Exceedance Probability
+資産分布
+4つの
シナリオ
名古屋湾への進入角を
±15°,±30°変化
Risk Curve
最悪のシナリオ
Estimated Loss
伊勢湾沿岸の高潮被害分布
シミュレーション領域
家屋被害
家庭用品被害
多々納ら(2015)
事業所償却資産被害
農家償却資産被害
事業所在庫資産被害
農家在庫資産被害
内 容
1. 災害をもたらす豪雨
① 台風豪雨・梅雨豪雨・ゲリラ豪雨
② どのような将来推測がされているか?
③ どういうことが起こっているか?
2. ハザードへの将来推測
3. 適応には何を考えないといけないか?
① ボトムアプトとトップダウン
② 設計外力対応と最大クラス対応
③ 適応に向けて
100
影響評価と適応
• 気候変動モデルによる時間毎の出力値により、我が国の気
候変動影響評価が可能となっている。
• 世紀末にかけて、極端現象はよりシリアスになると推測さ
れている。
• 「どれくらい?」が不確定だからといって適応を遅らせていると
将来の適応が不可能あるいは困難になる危険性がある。
• 実践を通しての適応:「はっきりとはわからないけど進める」
–
–
–
–
専門家はまずこの認識を持つことが大事。
「現在の進行も適応になる」以上の認識が必要。後悔しない対応。
温暖化の影響らしきものの事例を国民と共有して行く。
「具体的な実行があって助かった」を蓄積してゆく。
• 最悪の事態も推測した適応
– 気候変動下の最悪の状況をどう適応に組み込んで行くかがが重要。
– 新たな価値観の創出
(中北、2010~)
宇治市内と天ヶ瀬ダム
写真提供:国土交通省近畿地方整備局
適応に向けての大切なこと
1.
2.
3.
4.
対象とする河川流量などの設計値を見直す。
気候変動下での最悪ケース群を想定する。
高い不確実性の中で後悔しない意志決定。
普段の「しんどい管理」の「じわじわ」とした高頻
度化、これが今後、現場のしんどさ・疲労増大に
結びついてリアルタイム防御システムの安全度
を低下させる、そのようなことがないように対応
して行く。
5. 普段の場の変化への適応
気候研究コミュニティ,防災減災研究コミュニティ,実務機関
気候研究コミュニティ
・気象・気候の将来変化の気
候学的科学根拠
影響評価
実務機関
・将来影響評価
・計画論の見直し
・適応策の構築・評価・実施
適応策
防災・減災研究コミュニティ
・ハザードの将来変化や社会影響の科学的根拠
・計画論も含めた適応策の基本的考え方の創出
・適応策の評価手法の構築(後悔しない適応も)
・新たな設計外力に対応した耐力の科学的根拠
中北 (2015)
たとえば
• 河川流況が変化したとき、河道内の砂州や樹林化などはどう
変わるのだろうか? そして、変わるのを受け入れるのか、変
えないとするならばどういう技術が必要か?
• 堤防は、今より長時間の高水位状況に耐えられるだろうか?
より高い水位に耐える堤防を設計できるだろうか?設計方法
は?あるいは、耐える必要があるのだろうか?
• 水門を高くする必要があるが、今の学問範囲で耐力を推定し
たり設計する理論はあるだろうか?マニュアルは作れるだろう
か?
• あらたな計画論は必要ないのだろうか?温暖化と国力。
• 最大規模外力への適応で考えないといけないことはなんだろ
うか?
国交省に関連した3つの大きな動き
【新たなステージに対応した防災・減災のあり方】
○最悪の事態が発生しても「命を守り」、「壊滅的被害を回避」
【気候変動への適応策】
「水災害分野における気候変動適応策のあり方について ~災害リスク情報と危機感を共
有し、減災に取り組む社会へ~」
○比較的発生頻度の高い外力に対し、施設により災害の発生を防止
○施設の能力を上回る外力に対し、施策を総動員してできる限り被害を軽減
- 施設の運用、構造、整備手順等の工夫
- まちづくり・地域づくりとの連携 等
【水防法等の改正】
○洪水に係る浸水想定区域を、想定し得る最大規模の降雨を前提とした区
域に拡充
○新たに、内水及び高潮に係る浸水想定区域制度を設け、想定し得る最大
規模の降雨・高潮を前提とした区域を公表
○地下街等の避難確保・浸水防止に係る制度の拡充 等
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水災害分野における気候変動による
影響と適応に関するシンポジウム
2015年5月29日 国立オリンピック記念青少年総合センター
主催 文部科学省 気候変動リスク情報創生プログラム/国土交通省 水管理国土保全局
後援 土木学会 水工学委員会/地球環境委員会
気候変動リスクに関連する要因
インパクト
脆弱性
社会・経済
気候
自然変動
将来の社会・経済シナリオ
ハザード
リスク
適応と緩和
人為的気候変化
温暖化ガス放出と
土地利用変化
ガバナンス
暴露
(IPCC WGII SPM,2014)
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ご静聴ありがとうございました
影響評価・
適応策創出
の仲間で
す。
写真:宇治川、塔の島
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