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デトロイトにおける財団を中心とした非営利セクターによる空き地利用転換

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デトロイトにおける財団を中心とした非営利セクターによる空き地利用転換
公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
デトロイトにおける財団を中心とした非営利セクターによる空き地利用転換の取組
-Detroit Future City Strategic Framework Plan 以降の地区単位の活動支援に着目して-
Transformation of vacant lots by foundations and third sector in Detroit, MI
-Activities in neighborhoods after Detroit Future City Strategic Framework Plan黒瀬武史*・矢吹剣一**・高梨遼太朗***
Takefumi KUROSE*・Kenichi YABUKI**・Ryotaro TAKANASHI***
Detroit, MI has lost its population more than 50% since 1950 and the city has been struggling with abandoned houses
and vacant lots. Detroit Future City (DFC) Strategic Framework Plan completed with support of foundations in
Detroit during the bankruptcy of the city in 2013. The plan proposed large-scale transformation of vacant lots into
productive open spaces with the power of non-profit sectors and community groups in neighborhoods. This study
focuses the change in its funding policy of Kresge foundation (the lead sponsor of DFC) after the completion of the
plan based on the interview and review of the new program, which require a clear alignment to the plan. Also
activities of DFC Implementation Office are reviewed based on their preparation of the tool-kit for transformation of
vacant lots and the case study in Osborn district.
Keywords:
Detroit, Vacant lot, Third sector, Depopulation
デトロイト、空き地、非営利セクター、人口減少
1. 研究の背景と目的
用実態、
4章では住民が大幅に減少した住宅地の連担した空き区
画を対象に地区単位の再生戦略に関する IO の取組を詳述する。
我が国でも人口減少に伴う都市縮退は都市計画の重要な課題
となりつつある。本研究は、自動車産業衰退と郊外化の結果、大
以上の分析を踏まえ、
5章は財団による非都市化を前提とした計
幅な人口減少を経た米国ミシガン州デトロイト市を対象とする。
画策定以降のデトロイトの空き区画利用転換の動向を総括する。
米国の人口減少都市における近年の都市計画の取組について
は、米国ラストベルト地域の 5 都市(Detroit, Flint, Rochester,
2. SFP 策定後の慈善財団の変化と実行組織の活動
Saginaw and Youngstown)の縮退型都市計画をレビューした
本節では Kresge 財団および IO へのインタビュー調査(2)(3)に基
Hackworth(2016)の研究 1)、Flint 市を中心に人口減少と非都市化を
づき、SFP 策定前後の Kresge 財団のデトロイトに対する支援の
前提とした総合計画の実態を明らかにした清水ら(2012, 2014,
変化と、SFP 策定後の IO の取組について整理する。
2015)の研究
2) 3) 4)
2-1. DFC Strategic Framework Plan の特徴
がある。デトロイトについては、財政破綻した
市役所に代わり慈善財団の Kresge 財団(1)主導で行われた都市計
SFP は、デトロイト市が財政破綻した 2013 年に Kresge 財団が
画であるDetroit Future City (以下DFC)及びその前身であるDetroit
資金の大半(2)を拠出して策定された非法定の都市計画である。同
Works に着目した Griffin(2014)5)や高梨ら(2015)による研究 6)、こ
計画は、経済発展に関する Downtown/Midtown の記述以外の大半
れまでの都市計画の変遷と財団の都市計画への参入に関する
を戸建住宅地の空き地への対応に割いており、
大幅な人口減少後
7)
Thomson(2012) が本研究との関係が深い。また、主な空き地の発
に発生した空き地の再生・利用に注力した計画であった 6)。具体
生源である差し押さえ不動産の対応を進める Landbank 事業につ
には、特に空き地率が高い戸建て住宅地(市面積の 29%)を、
いては藤井ら(2013, 2015)の研究 8),9)がある。
住宅系の土地利用から Innovation Productive 及び Innovation
既往研究の成果を踏まえ、本稿は 2013 年に策定された DFC
Ecological と呼ぶオープン・スペースを中心とする土地利用へ転
10)
Strategic Framework Plan (以下 SFP)以降の財団を中心とした非
換することを目指していた 10)。特に Innovation Productive は、当
営利セクターによる空き地利用転換に関する取組、
及びその取組
該地区の非営利セクターや住民団体の活動が活発な地区で指定
と SFP の関係の分析を目的とする。主に、SFP の実行組織であ
されており、
非営利セクターを担い手として積極的に空き地の利
る DFC Implementation Office(以下 IO)、Kresge 財団、デトロイト
用転換を推進する土地利用として設定された。
同計画は、
その前身である Detroit works が住民の反対によって
市役所への聞き取り調査と空き地利用を推進する各地区の非営
失敗した経緯を踏まえ、
約 2 年間にわたる計画策定プロセスにお
利団体の公表資料により情報を収集した。
2章では SFP の策定を支援した Kresge 財団の策定後の変化と
いて、十分な住民参加を行った 5) 6)とされる。ただし、計画内容
IO の取組を概観する。3章は IO が SFP 策定後に注力する The
は市全体の将来の方向性を示した「枠組」であり、土地利用転換
Field Guide to Working with Lots(以下 FG)の内容と空き地への適
も地区毎に意思決定されたものではなく、今後 50 年間の土地利
*正会員・九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門(Faculty of Human-Environment Studies, Kyushu University)
**正会員・東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻( Graduate School of Engineering, The University of Tokyo)
***非会員・民間企業勤務(Private enterprise)
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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
用シナリオ 10)として提示されたものであった。
Development Corp.-5区
Young Nation-6区
2-2. SFP 策定後の Kresge 財団の変化
Detroiters Working for
Environmental Justice-6区
2016 年 - 実施
Black Family Development
Inc.-3区
LifeBUILDERS-3区
Kresge 財団は、全米でもトップクラスの規模を誇るが、デト
ロイト都市圏に対して設立当初から継続的に支援してきた。
同財
Osborn 地区において DFC の FG を活用し、複数の空きロッ
トの用途転用を進める事業(15 実施)
健康のための安全コミュニティ空間の創出に向け、
Bringard-Boulder Park を修繕する事業
Mack Av. Community Church 空き商業ビル(14000sq.ft.)をコミュニティセンターとして
Development Corp.-5区
再生する事業
Michigan Community
Jefferson Chalmers 地区の空き地(8 区画)を花壇と集会のた
Resources-4区
めの空間に転用する事業
Michigan Environmental
Denby High School とともに、DFC SFP の要素を取り入れな
Council-4区
がら生徒が考えた活性化プロジェクトのカリキュラム(4 年
間)を実施(15 計画)
Ponyride-6区
高校生/大学生が共同しコンテナを企業化のための商店空間と
して活用し、Southwest 地区をダウンタウンやリバーフロン
トと連続させるプロジェクト
SWD Business Association/ SWDディーゼル廃棄排出に関する情報提供のための大気質監視シス
Community Benefits Coalition-6 テム導入の事業
区
Urban Neighborhoods
Southwest エリアの空き物件を住宅地と青少年育成プログラ
Initiative-6区
ムのために活用する事業
Young Nation-6 区
空き地と商業ビル(2,200sq.ft.)を集会空間に転用(15 計画)
2016 年 - 計画
Brightmoor Alliance/Sidewalk Eliza Howell Park における自然を活かしたプロジェクトや公
Festival for the Performing Arts-1 演の計画や実施ために地域住民とアーティストを引き合わせ
区
る事業
Detroit Hispanic Development Southwest エリアの住民向けに住宅確保と不安定な若者向け
Corp. -6区
の職業訓練のための地区センターの整備を行なう
Eastside Community
広大な市有遊休地を周辺住民と協働しながら、従来の管理に対
Network-4区
するオルタナティブとしてグリーンインフラとして捉える
プロジェクト
EcoWorks-7区
高校生が学校近くの空き地をコミュニティスペースと公園と
して活用する計画
Focus: HOPE-5区
W. Davison Ave.の荒廃した居住・商業地区を起業家のための住
職一体の組合スペースにする事業の可能性検討
Global Detroit-3区
Banglatown 地区における地区の計画作成、広報、ミーティン
グの開催等
MOSES -5区
Near east side 地区の住民と DFC SFP の目を通した地区ビジ
ョンと革新的なプロジェクトの計画作成
People for Palmer Park-2区 Lake Frances 地区と周辺(300ac.相当)の活性化策の検討
SER Metro-Detroit-6区
Southwest エリアの生活の質の向上にむけた Youth Build
Community を計画、Chadsey-Condon 地区において学生が
治安改善に向けた活動を予定
U SNAP BAC-4区
Morningside 地区において緑道やグリーンベンチャー、サイ
ドロットの活用がコミュニティの安定化に寄与するかどうか
検証する事業
Univ. of Detroit Mercy-2区 Fitzgerald 地区におけるオープンスペースの利活用
Woodbridge Neighborhood Woodbridge 地区及び周辺の沿道景観の改善可能性の検討
Development Corp.-6区
団は、SFP 策定以前は、大規模な建築物やインフラ整備に対する
資金の拠出が中心であった再(3) (4)が、DFC 策定後は、大規模な社
会基盤や公共施設の整備だけはなく、
地区で活動する住民団体や
非営利団体に対する支援を拡大した。財団の Ariel Simon 氏は、
財団 CEO の Rip Rapson 氏も「デトロイト都市圏に支援を行う最
大の財団として、
SFP に沿った支援を行うこと」
を重視しており、
他の財団も、各々のポリシーに基づいて事業を行うが、それぞれ
の支援が SFP の考え方(特に空間計画)に沿った支援となるよ
う意識していると指摘した再(3)。
2016 年現在の Kresge 財団の Detroit Program は、SFP の目標と
勧告に沿ったものであることが明確に謳われており、
目標達成の
ために、同事業には、①グリーンで健康的かつ活動的な
Neighborhood、②活気がある Woodward 回廊(市のメイン・スト
リート)、③二十一世紀型地域公共交通、④質の高い幼児教育シ
ステム、⑤活発なアート・文化の生態系、⑥市民の能力向上が重
同事業は多様な支援があるが、
点分野として設定されている 12)。
中でもSFP とより具体的な連携を求めている事業が2014 年に開
始された Kresge Innovation Project: Detroit (以下 KIP:D)である再(3)。
表-1. KIP:D の交付一覧(KIP:D 交付記録 12)より作成)
交付先団体
2015 年 - 実施
Grandmont Rosedale
Development Corp. -1区
Focus: HOPE -2区
(2.7ac→30ac)及びその管理のための計画
Southwest 地区の空き地及び商業ビル(2,200sq.ft.)をアート
で満ちた公共広場とアーティストマーケットに転用
Delray 地区における空地を産業用途から居住用途(バッファ)に
転換する計画
活動内容
Grand River Avenue に緑化された駐車場、屋外公共空間とコ
ワーキングスペースを創出する事業
LaSalle boulevard にある2軒の廃墟化した集合住宅を改修し、
コミュニティスペースとして提供及びブラウンフィールドを
活用した太陽光発電に関する検討
the Arab American and
Penrose Village に位置する 0.5 エーカーの市場として使える
Chaldean Council -2区
広場、教育センター及び栄養プログラム
Black Family Development Inc. Osborn 地区における地区の 13 ヶ月間の地区の清掃、危険構造
-3区
物の安定化、空き地の緑化、ランドバンクが提供する隣地購入
プログラムの準備
Univ. of Michigan-3 区
Burnside 地区において、荒廃した空き家を通年の植物工場とし
て再生させるプログラム
LAND Inc.-4区
Mac Avenue の 3/4Mile の荒廃した沿道地区において歩道な
ど積極的に緑化(productive green byway)する事業
Central Detroit Christian
Woodward Avenueの7ロットの空き区画をポケットパーク
Community Development
化し(歩行帯で接続)、無料の屋外フィットネスジムを整備す
Corp.-5区
る事業
Coach Khali-5区
青少年を対象としたボクシング教室であり、学習の支援
(Academic Support)も同時に行っている点が特徴。近年より
大きな物件に移転し、活動を拡大している。
Southwest Housing Solutions 遊休化した旧St. Anthony Lithuanian 教会を、商業エリア(20
Corp.-6区
ブロック)を対象とした住民主体の開発のためのプログラム提
供と活動の拠点として活用
Heritage Works-6区
Martin Luther King Jr. Blvd と Rosa Parks Blvd の交差点の空
き地をポケットパーク化する事業。住民主体によるデザイン
や空間設計、管理計画の策定等に対して支援
Joy-Southfield Community Cody-Rouge地区に位置するJudge Stein Playfieldに歩道や太
Development Corp.-7区
陽光街路灯、グリーンインフラを設置する事業。
2015 年 - 計画
Michigan Community
Lower east side エリアにおける空き家率の高い地区での土地
Resources-5区
の利活用計画対する援助
LAND Inc.-4区
Mack Avenue の 4 エーカーのブラウンフィールドを再生可
能太陽電池用地として活用する実現可能性を検討
Michigan Environmental
Denby High School におけるプログラム(DFC SFP のカリ
Council-4区
キュラムへの統合、学生の Neighborhood 改善への努力への
支援)に対する 3 カ年の戦略計画の構築
Detroit Eastside Community East Side エリアにおける 1.5 マイルの廃線跡を利用して歩行
Collaborative-5区
者、自転車、都市農業のための空間整備の検討
Vanguard Community
North End 地区における Dolores Bennett Park の拡張
2-3. Kresge Innovation Project :Detroit の特徴
KIP:D は、デトロイト市域内を対象に市内に拠点を置く非営利
団体が行うプロジェクトに提供される支援である。
実施の準備が
完了している事業に対する支援と、
事業の計画段階に対する支援
の2種類の補助金があり、2014 年選定の 2015 年活動分から毎年
500 万ドル以上が提供されている 12)。
財団は、応募要項のなかで、KIP:D により支援されたプロジェ
クトによって DFC の目標が前進することを求めており、添付資
料として SFP の抜粋を掲載、
「空き地の利用転換」と「地区
(Neighborhood)の安定化」への貢献を特に重視している(5)。実際
に、支援対象の選考に、IO のスタッフが SFP との連携を判断す
る目的で参加しており、選考に深く関与している。なお、地理的
な偏りを減らすため、
各区に最低1つは実施支援を採択している。
KIP:D の支援を受けたプロジェクトを表 1 に整理した。2015
年の計画から 2016 年の実施へ展開した事業も複数あり、地区を
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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
対象とした草の根の地区再生活動を計画段階から支援している。
人々に伝わりやすい短期の都市デザインプロジェクトに力点を
2-4. Detroit Future City Implementation Office の活動
置いている」という声もある再(6)。また、SFP 策定当時(2010-2012)
SFP 策定後、地区レベルでの計画の実行機関とされた IO が積
と比べて、人口動態や経済状況などが既に変化しており、大枠は
同じでも部分的は既に古い計画であるとの指摘再(3)もある。
極的に取り組んでいる点は、地区(Neighborhood)スケールの空き
地・空き家の利用転換や再利用の模索に対する支援である。
3. Implementation Office による Field Guide 策定と取組事例
2013 年から、IO が特に力点を置いた事業は、The Field Guide to
13)
(6)
Working with Lots(FG) の作成と周知である 。FG は、概ね 1-3
FG は、2 章で概述した通り、住民や地域コミュニティ、NPO
つの空き区画を対象に具体的な再利用法を示した事例集であり、
等による空き地の利用転換(Transformation)を促すためのノウハ
初期費用・維持管理・必要な人手・実施に必要な経験・雨水流出
ウを整理した事例集である。本章では、FG の策定経緯と実際の
抑制・日当りなど多岐に亘る観点で選択可能なウェブサイトが提
都市空間における適用実態について述べる。
供されている。3 章で FG の内容と適用内容について詳述する。
3-1. Field Guide 策定の背景
Brick+Beam Detroit (B+B)は、DFC とは別の活動ではある(7)が、
SFP は、空き地の割合が高い住宅地を積極的に非都市化する
FG の空き家版と言える事業である。具体的には、空き家の所有
土地利用の目標像を提示した点で注目されたが、その実行は、各
者や購入者、地区住民などを主な対象として、具体的な空き家改
地区の草の根の活動によるところが大きい。膨大な数の空き家・
修の方法を伝えるノウハウ集と、
空き家や改修の現場を体験でき
空き地が存在するため、IO は実際の再生事業に直接関わること
るイベント、Q&A フォーラム、デトロイト市内の改修事例集(地
はなく、各地区で具体の活動を展開する住民組織や NPO に対す
図)により構成されている。ノウハウ集は、FG と同様に DIY、
る技術支援が IO の主な活動である再(6)。FG の主な目的も、造園
空き家の購入、工事業者、屋根、窓など様々なキーワードで空き
の専門知識がない市民や非営利団体による、
空き地の利用転換を
家改修のノウハウを事例集として共有している。イベントでは、
技術的に支援することを目的に開発された。
実際に具体的な改修を体験することができる 12)。
FG には 34 の空き地デザイン事例を示されているが、それら
市内全域に存在する膨大な空き地・空き家に IO が直接対応す
はデトロイト都市圏(一部は他の人口減少都市)で既に実施され
(再 6)
。IO は、地区の住民団体や NPO
た空き地転用事例に基づくものであり 13)、2 章で整理した KIP :D
が、地区内の空き地・空き家へ自主的に対応することを促すため
交付先の団体も多い。各地区の団体の現場の経験を共有・再編成
に、FG や B+B を Tool Kit(道具箱)として提供している。空き区
して FG を作成し、再び各団体が活用することを目指していると
画が多数発生している住宅地は、
同時代に大量に供給された画一
言える。FG は、Kresge 財団と同様にデトロイト都市圏に本拠地
的な設計の地区で区画の形状も類似しているため、
標準化された
を置く Erb Family 財団から 8 万ドルの支援を得て策定された 15)。
手順や設計案が適用しやすい。この状況を活かし、IO は、Tool Kit
同財団は、FG の実現化に対しても補助金を支出している。
によって、造園の専門家以外も空き地・空き家の利用転換に参入
3-2. Field Guide が想定する空き地利用転換とその課題
ることは事実上不可能である
住宅地内の空き家や空き地が荒廃することで、同じ街区のさ
可能な状況を生み出そうとしているのである。
2-5. 市役所による SFP の公的計画への位置づけ らなる居住者の減少と空き地
・空き家の増加につながる負の連鎖
2013 年の策定直後は、破綻したデトロイト市が SFP を反映し
が発生する恐れがある。FG は、そのような状況に陥る前に、空
た新たなComprehensive Planを策定する可能性が指摘されていた
き地を適切に利用転換し、
(主として)近隣住民によって持続的
4)
に管理される状態を生み出すことを目指している(9)。そのため、
。しかし、2016 年 5 月の市都市計画課への聞き取り調査では、
新たな Comprehensive Plan の策定は検討されているが、具体的な
FGは1-3区画程度の比較的小規模な空き区画を対象としている。
(8)
チームの組成の段階には至っていない ことがわかった。従って
これは FG の特徴であり限界でもある。すなわち、FG は、近
非都市化を推進する Innovation Productive 等の新たな用途も市の
隣住民が多数存在する1街区あたり数区画の連担していない空
法定のゾーニングには反映されていない。2016 年現在、SFP を
き区画には対応できるが、
街区の大半が空き地となった状態の場
反映した新たなComprehensive Planの策定時期は、
明確ではない。
合、そもそも近隣の住民が極端に少く、FG による対応が難しい
再(6)
。そのため、IO は一部の地区に対して FG の適応だけではな
この背景には、SFP 策定後の政治的な変化が存在する。在任
中に SFP 策定が行われた D. Bing 市長から 2014 年 1 月から M.
く、地区内の空き地を網羅的に把握し、より戦略的な空き地の利
Duggan 市長に交代しており、それに伴って都市計画局長も建築
用転換戦略を策定を試験的に実施している(4 章詳述)
。
家出身の Maurice Cox 氏が指名された。Duggan 市長は、”Every
3-3. Field Guide が提供する空き地利用転換のカタログ
Neighborhood has a future.”を合言葉に選挙活動を進めた際に、低
2 章で概述した通り、FG はウェブサイトを基本としており、
密度の住宅地の大胆な土地利用転換を想定する SFP との不整合
初期費用・維持管理・実施に必要な人手・実施に必要な経験・雨
を指摘する意見もあった。
市は低密度地区から高密度地区への移
水貯留・日当たり等から選択できる 34 の区画デザインカタログ
住を促すなど実際は SFP の考え方に近い政策を進めようとして
と、市内の既存の 25 の転用事例集から構成される。また、11 種
再(3)
いるが、表立って SFP を推進することが難しい状況がある
。
類の区画の現況(樹木の有無、土地の被覆植物など)や、区画数、
Duggan 市長は「策定に時間がかかる割に、目に見える成果が短
角地、商業・業務用区画など特性に応じた区画デザインの選択も
期間で現れない都市計画やゾーニング改訂よりも、
空間の変化が
可能である。表-2 に FG の空き地デザイン例の一覧を整理した。
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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
表-2. Field Guide 空き地デザイン例(参考文献13 より作成)
(人材: V はボランティア、P は専門家を表す)
写真-1. Hickory St. (Osborn)のMix
写真-2. Bradford Av. (Osborn)の
and Match Meadow 適用例(筆者撮影)Fours Seasons 適用例(筆者撮影)
Alley
Contour
Refer to the
Construction
Package for more
details - located
at DFC-lots.com.
+0.5’
Downspout
Disconnect
Individual
Plant
Individual
Tree
House
Sidewalk
Property Line
-0.5’
-0.5’
-0.5’
-0.5’
4
3
2
1
+1.0’
5
+1.0’
6
+1.0’
+1.0’
-0.5’
-0.5’
-0.5’
-0.5’
7
Downspout
Disconnect
Property Line
Setback Line
Downspout
Disconnect
Garage
House
V
V
V+P
V
V
V
V
V+P
V
V+P
V+P
V
V
V
V+P
V+P
V+P
V
V+P
V
V+P
V
V
V
V+P
V+P
V
P
V
P
V
V
V
V
16’
50-1000
50-1000
550050-1000
50-1000
1000-2500
1000-2500
50-1000
2500-5500
2500-5500
550050-1000
2500-5500
2500-5500
550055001000-2500
2500-5500
2500-5500
2500-5500
550050-1000
1000-2500
1000-2500
2500-5500
55002500-5500
550050-1000
550050-1000
1000-2500
2500-5500
1000-2500
施工に必 雨水流出 日射状況
要な経験 抑制
初心者
中
全て
中級
最大
全て
上級
最大 日向/一部日影
初心者
中 日向/一部日影
初心者
中
全て
初心者
中 日向/一部日影
初心者
中
全て
中級
最大
全て
中級
最大 日向/一部日影
中級
最大 日向/一部日影
上級
大 日向/一部日影
初心者
中 日向/一部日影
中級
大 日向/一部日影
初心者
大 日向/一部日影
上級
大 日向/一部日影
中級
最大
全て
上級
最大 日向/一部日影
初心者
中 日向/一部日影
初心者
中 日向/一部日影
初心者
中 日向/一部日影
上級
最大 日向/一部日影
初心者
中
全て
中級
中 日向/一部日影
中級
大 日向/一部日影
上級
大 日向/一部日影
上級
大 日向/一部日影
初心者
大 日向/一部日影
N/A
最大 日向/一部日影
初心者
大
全て
N/A
最大
全て
初心者
大 日向/一部日影
中級
大
全て
中級
大
全て
初心者
中 日向/一部日影
8’
3 for 1 Groundcover
8 Mile Rain Garden
Basement Raingarden
Clay Soil Meadow
Clean+Green
Commercial Curtain
Dumping Preventer
Forest Patcher
Four Seasons
Friendly Fence
Front Parking Partner
Grassland Habitat Maker
Gravel Garden
Hedge Fund
Holland Maze
Infilltrator
Laundry to Landscape
Mix N Match Meadow
Mounds of Fun
Native Butterfly Meadow
Organic Bowl
Paisley Patch
Party Lot
Quiet Remediator
Rear Parking Partner
Ring Around the Garden
Shade Maker
Snowmelter
Soil Builder
Stormwater Cistern
Summer Soil Booster
Syrup Maker
Turbo Till
Urban Edge
維持
管理
高
中
高
中
低
低
低
中
中
中
中
中
低
高
高
中
低
中
中
中
高
低
中
中
中
高
低
高
中
中
低
低
低
低
4’
人材
0’
初期費用($)
Road
空き地転用名称
13)
図-1. 写真2 に適用されたFG デザイン例のFour Seasons
4. Osborn 地区における地区単位の空き地利用転換戦略
IO は、空地への具体的な対応を支援するためにデトロイト市
内の Osborn 地区において、
計画支援を実施している。
本章では、
IO 担当者へのインタビュー再(6)と Osborn 地区空き地転換戦略 17)
3-4. Field Guide の適用例と KIP:D の活用
に基づき、IO による同地区の取組の特徴を明らかにする。
FG は、実際に市内の空き地の再生において、複数の地区で利
4-1. Osborn 地区における空き地・空き家の現況
用されている。例えば、市北部の Osborn 地区では、FG を用いた
Osborn 地区は、デトロイトの一般的な市街地と同様に 1 階建
空き地転用を進めており、FG のデザイン事例をそのまま施工し
の家族向け戸建てによって形作られており、建物の質は、良好で
た事例も複数存在する(写真-1, 2 及び図-1)
。同地区のコミュニ
居住されているものから、
構造的な問題があり解体されるべきも
ティの再生を目指す Black Family Development(以下 BFDI)は、
のまで多岐にわたる。
(10)
DFC との関係も深く 、KIP: D から 2016 年に事業実施への支援
2014 年に行われた調査では、同地区の空き地率は 17%、空き
を得て、FG を適用した空き地利用を 2016 年中に 9 ヶ所予定し
家が存在する区画は全体の 24%という状況であった。連邦政府
ている他、FG の適用に留まらない空き地転用戦略を検討してい
の補助金 Hardest Hit Fund(11)によって、地区内の空き家撤去が進
る(4 章詳述)
。
められ、2016 年 4 月までに 2000 区画弱が、空き家から空き地へ
また、FG の直接の適用例ではないが、市東部の Jefferson
と変化した。廃屋撤去の進行によって、空き地の規模も拡大し、
Chalmers 地区では、2015 年に KIP: D 計画、2016 年に実施の支援
約 260 ヶ所程度で3区画以上の空き地が連担した状態となった。
が採択された Michigan Community Resources によって、8 区画の
住宅地内部に単独で発生した空き地の再利用を促してきた FG
空き地をラベンダーを中心とした切り花の生産を行う畑に転用
だけでは対応が難しい、
複数区画が連担した大規模な空き地の発
する事業が進行している 12), 16)。BFDI 同様に慈善財団からの資金
生が、IO が Osborn 地区で新たに取り組んでいる課題と言える。
を得て、
住宅地内の空き区画の積極的に転用している事例である。
4-2. Implementation Office による空き地利用戦略の特徴
なお、SFP の将来土地利用シナリオでは Osborn 地区は Green
本節はIO策定のOsborn空き地利用戦略17)の特徴を整理する。
Residential、Jefferson Chalmers 地区は Traditional Medium Density
まず、IO は同地区の空き地を規模と立地に応じて4種類に分
に分類されており、Innovation Productive のように面的に非都市化
類している(表-3, 図-2)。隣地や街区内の住民による空き区画の維
を推進する土地利用類型ではなく、
密度の差はあるが戸建て住宅
持管理を狙った FG では対応困難な状況(街区の大半が空き区
地として安定的に維持することを目標としていた地区である 10)。
画)への対応を検討している点が特徴である。
IO は Osborn 地区戦略のなかで、類型 2 については、街区内の
住民が半数以下に減少しており、
経済的な支援に加えて地区全体
の組織が維持管理の実施を手助けするなどの支援も必要である
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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
と指摘している。類型 3 では、FG が想定した近隣住民による空
5. まとめにかえて き区画の利用転換は困難であり、
「地域に望まれるオープン・ス
Kresge 財団の支援による SFP は、住宅地の大半が荒廃したデ
ペースとして適切なあり方を検討するために活発な計画プロセ
トロイトにおいて、空き地の再利用を支援し、積極的に非都市化
スが必要である」としている。類型 4 については、店舗等に隣接
を進める都市像を行政・市民・他の非営利セクターに提示した。
するため FG のなかでも花が咲く高木を敷地境界に植え
SFP 策定以降、同財団は、従来の中心部のハコモノ中心の支
る”Commercial Curtain”など店舗に隣接することに適した利用を
援から、SFP を前提とした地区単位の非都市化を推進する支援へ
選択すること、
土壌汚染の可能性が住宅地よりも高いため土壌調
変化した。Erb Family 財団(FG 策定)や Knight 財団(B+B 発足)
査を行うことを推奨している。
など他の財団も、SFP に沿った支援を実施している。財団の支援
図 3 は、類型別の空き地分析に基づき、幹線道路沿いの商業・
を受ける非営利団体も含め、非営利セクターでは SFP は一定程
業務回廊以外に住宅地を、FG 実行可能エリア(空き区画が少な
度共有され、事業に影響を与えている可能性が高い。一方で、法
いまたは類型 1 が多い)とオープン・スペース・オポチュニティ・
定の計画策定プロセスを経ていない SFP は、市長交代など政治
エリア(類型 2 や類型 3 が多い)に分類した。特に後者では、よ
的変化があり、
行政計画への反映は必ずしも順調に進んでいない。
SFP は、様々な草の根の活動に着目し、活動が活発な地区に
り大規模な空き地の利用転換を検討できると指摘している。
戦略の実行にあたっては、やや規模の大きな空き地利用に向
おいて、積極的に空き地利用転換を推進する姿勢を打ち出し、
けた空き地を保留すること、
及び既存の地区の資源に基づいて戦
Innovation Productive 等の土地利用シナリオを設定した。しかし、
略的に空き地の利用転換を進めることの必要性が指摘されてい
現在の IO の取組は、住民が一定程度残る地区を主な対象とした
る。後者の具体例としては、①既存公園・緑道の拡張②学校の拡
近隣住民や地区組織による空き地の整備・維持管理の推進が中心
張③安全な通学路の創出④既存の林の拡張⑤工業地区への緩衝
であり、Innovation Productive 指定地区に注力している状況にはな
地帯が挙げられている。また、土地所有の主体や利用転換の資金
い。但し、非営利団体の活動が活発な地区へ手厚い支援を行う
源に関する情報も掲載されている。
SFP 方針は維持されており、本稿で取り上げた事例も、住民組織
や長期的に地区に関わる非営利団体の存在が特徴であった。
表-3. Osborn 地区で検討中の空き地類型(参考文献17 より作成)
類型
1
2
3
4
空き地の類型
FG に適している
FG が適用可能(要支援)
オープン・スペース
商業・業務向け
住宅地の空き地利用転換の取組は、隣地や周辺の居住者の協
類型の説明
1-3 の連担した空き区画で、1 街区内に4 以下
1-3 の連担した空き区画で、1 街区内に5 以上
4 以上の連担した空き区画
商業業務利用が多い幹線道路沿道の空き区画
力に左右されるため、
必ずしも地区全体における位置づけや戦略
が存在する訳ではない。
取組が散在するため地区住民に対するイ
ンパクトが小さくなるリスクもある再(6)。IO が支援する Osborn
地区の取組は、従来の区画毎の取組の限界を見据えて、空き区画
の分布を地区全体で捉え、
公共施設や工場跡地との関係も踏まえ
た空き地利用転換戦略の策定であった。SFP で達成できなかった
地区スケールの空き地対応計画として注目される。
SFP 策定以降の財団を中心とした非営利セクターによる空き
地利用転換の取組は、SFP が提示した大規模な土地利用転換地区
とは必ずしも一致しないが、
地区に根ざした非営利団体の活動に
よって少しずつ地区に実装されており、
政治に左右されない独自
の資金源と方針で運営されている財団の強みが発揮されている
と言えるだろう。
一方で財団と非営利団体の人的ネットワークに
よって事業が進行している側面が大きく、
透明性や平等性の観点
図-2. 類型別Osborn 地区の空き地分布(参考文献17 P.7 より引用)
から考えると、同様の支援を行政が行うことは困難であろう。
今後は各地区で空き区画への対応を進める非営利団体への聞
き取りと現地踏査を拡大し、
財団や非営利団体による空き利用転
換の課題と限界について調査を進めたい。
謝辞:本研究は、JSPS 科研費 16K18205 と第一生命財団平成 27
年度研究助成の助成を受けたものです。
図-3. 類型別分析に基づく空き地利用の戦略的手法
(参考文献17 P.12 より引用)
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公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集 No.15, 2016 年 5 月
Reports of the City Planning Institute of Japan, No.15, May, 2016
Planning Project: Engagement Strategies for Bleanding Community and
補注
Technical Expertise." Buildings, 4 (4). pp.711-736
(1) Kresge 財団は、
全米ディスカウントチェーンKmart の創始者であるS.S.
6) 高梨遼太朗, 黒瀬武史, 窪田亜矢, 中島伸, 西村幸夫(2015)「デトロイ
Kresge が1924 年に設立した慈善財団である。
デトロイト都市圏のTroy
トにおける地区単位の積極的非都市化に関する研究 -都市計画の地と
に本拠地を置く。
(2) Kresge 財団に加えてFord 財団、W.K. Kellogg 財団、John S. and James L.
図を反転させた多元的非営利セクターの相互作用-」都市計画論文集
50(3), pp1266-1272
Knight 財団、Hudson Webber 財団、Erb Family 財団、Community
(10)
Foundation for Southeast Michigan がSFP 策定に資金を拠出している 。
7) Thomson, D. E. (2012)"Targeting neighborhoods, stimulating markets: The
(3) Ariel H. Simon, Vice President, Chief Program and Strategy Officer, Executive
role of political, institutional and technical factors in three cities."The city after
abandonment , University of Pennsylvania Press, Philadelphia, 104-132.
Office, Kresge Foundation, 電話インタビュー, 2016/5/2
(4) デトロイトのメイン・ストリートであるWoodward Av.に建設中のLRT
8) 藤井康幸・大方潤一郎・小泉秀樹(2013),「米国ミシガン州ジェネシー
事業M-1 Rail にKresge 財団は、4960 万ドル(2014 年現在最大の出資者)
郡におけるランドバンクの担う差押不動産、空き家・空き地対策の
出資している 9)。LRT は SFP に於いて重要な公共交通機関に位置づけ
研究」, 都市計画論文集 48(3), pp.993-998
9) 藤井康幸(2015)「米国デトロイト市におけるランドバンクによる
られており、この出資もSFP に沿った都市圏への支援とも言える。
地区を選別した空き家・空き地問題への対処」,都市計画論文集 50
(5) 2014 年募集要項は「①空き地を革新的なオープン・スペース・ネット
(3),pp1032-1038
ワークへ転換 ②戦略的かつ革新的な都市システムの更新 ③政策・行
政改革の推進 ④地区の安定化」の4点を掲げたが、2015 年は①④に絞
10) Detroit Future City(2013), Detroit Future City 2012 Detroit Strategic
Framework Plan, Inland Press
った要項に変化した。採択された活動の大半は①④であり、②③は地
11) M-1 Rail , http://m-1rail.com/complex-funding-puts-m-1-rail-right-track/,
区で活動するNPO の提案は難しかったことが推測される。
(6) Victoria Olivier, Deputy Director for Neighborhoods, DFC, 2016/5/2
2016/05/25 参照
(7) B+B はKnight 財団の支援を受けて発足しており、州歴史的保存ネット
12) Kresge 財団ウェブサイト http://kresge.org/, 2016/05/25 参照
ワーク、DFC、Preservation Detroit と協働している。なお、IO のVictoria
13) Detroit Future City, A Field Guide to Working with Lots, http://dfc-lots.com/,
Oliver 氏も共同設立者として参画している。
2016/05/25 参照
(8)Bruce Evans, Planning and Development Department, City of Detroit, 2016/5/2
14) Brick+Beam Detroit, http://www.brickandbeamdetroit.com/, 2016/05/25 参照
(9)デトロイト市では、近年 Landbank が事業を大きく拡大しており 9)、住
15) Erb Family 財団ウェブサイト, http://www.erbff.org/, 2016/05/25 参照
16) Michigan Community Resources|Planning & Technical Team(2016), Greenfill
民が自宅に隣接する空き地を取得する機会も増加している。
Development – Aguide to Repurposing Vacant Lots for Flower Farming
(10)BFDI のCEO であるAlice G. Thompson はIO の取締役会メンバーでも
Enterprises, Michigan Community Resources
あり、IO の取組に対する理解も深い。Osborn 地区で IO が先行的な取
組を行える背景にはBFDI の積極的な協力がある再(6)。
17) Detroit Future City(2016), Vacant Land Transformation Strategy for the
Osborn Neighborhood Draft
(11) Hardest Hit Fund は、サブプライム住宅ローン危機以降の住宅安定化イ
18) U.S. Department of the Treasury, Hardest Hit Fund,
ニシアチブの一環として2010年に実施された連邦財務省から州の住宅
金融支援局(Housing Finance Authority)への財政支援である。2016 年5 月
https://www.treasury.gov/initiatives/financial-stability/TARP-Programs/housin
現在総額96 億ドルが交付されており、
ミシガン州は約4.99 億ドルが交
g/hhf/Pages/Program-Purpose-and-Overview.aspx, 2016/05/25 参照
18)
19) Michigan State Housing Development Authority, Hardest Hit U.S. Treasury
付された 。住宅ローン支払いの支援に加えて、廃墟撤去プログラム
Reports- Quarter End 03/31/2016, 2016/05/25 参照
が存在する。同プログラムに基づき、デトロイト市内では2016 年第一
19)
四半期までに5382 棟が解体された 。
参考文献
1) Jason Hackworth(2016)「Right-sizing as spatial austerity in the American Rust
Belt」Environment and Planning A 2015, vol.47, pp766–782
2) 清水陽子, 中山徹, 前根美穂(2012)「アメリカ LandBank の取り組みと
滞納空家物件の活用 −ミシガン州・オハイオ州の事例-」
、日本建築学
会、日本建築学会技術報告集 40 号 pp1051-1056
3) 清水陽子, 中山徹(2014)「アメリカの人口減少都市における非営利組織
CDC の地域改善活動とその役割−ミシガン州フリント市 Salem
Housing を事例として-」,都市計画論文集 49(3),pp777-782
4) 清水陽子, 中山徹(2015)「アメリカ・ミシガン州フリント市におけ
る人口減少下での総合計画“Master Plan for a Sustainable Flint”の策定
と新たなゾーニングの導入」,都市計画論文集 50(3),pp1258-1265
5) Griffin, T.L., Cramer, D., & Powers, M. (2014) "Detroit Works Long-Term
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