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高活性二酸化チタン光触媒の焼成 高活性二酸化チタン光触媒の焼成
31005 高活性二酸化チタン光触媒の焼成 要旨 前回までの光触媒よりも効果の高いものを作ることを目標に制作した。作成方法は、前回同様ゾル ゲル法を使用した。チタンテトライソプロポキシドを硝酸水溶液中で加水分解し、そこで得られた物 質を焼成する。また、今までの結果から、焼成温度は600度が最適と判明。よって、この温度を焼 成温度として使用した。 光触媒活性を上げるため、今回は二酸化チタンに他元素をドーピングすることにした。化合物にほ かの元素を入れることによって、その分子が不安定になり、わずかなエネルギーによってでも光触媒 活性を起こすことが可能になる。また、ドーピングする元素は、被元素の周期よりも一周期下を使う ので、今回はチタンに、銀をドーピングした。 また今回も例によって、ローダミン B 水溶液の分解量によって反応量を測定する。 目的 現段階での工業的製法で製作可能な光触媒は、紫外線によってのみその効果を発揮し、可視光線下 においては光触媒活性を得られない。そのため、太陽光に含まれる光のうち紫外線しか使うことがで きなく効率が悪い。それならば可視光線下でも光触媒活性を得られるものを作ろう、と思い実験をし た。 使用した器具・薬品 薬品 器具 ・チタンテトライソプロポキシド ・ガラス棒 /[(CH3)2CHO]4Ti ・硝酸 /HNO3 ・硝酸銀 /AgNO3 ・メタノール ・ビーカー ・メスフラスコ ・ホールピペット ・ピペット ・ホットスターラー ・スタンド 05-1 研究・実験の手順 1、ゾルの生成 ・まず、チタンにドーピングする硝酸銀水溶 液を用意する。チタンテトライソプロポキ シドが 3.4×10^-3mol なので、 mol 比が 1:1 となるよう、硝酸銀も 3.4×10^-3mol 用に する。よって、まず 3.4mol/L の硝酸水溶液 を 10ml 用意した。 ・次にチタンテトライソプロポキシドと硝酸 銀水溶液を、硝酸中に滴下していく。この ときホットスターラーを使い、温度80度 を維持し、常に攪拌して行う。高温の理由 は、反応の促進であり、またこの時に攪拌 - を止めてしまうとゾルにむらができてしま うため、この時は絶対に攪拌を止めてはな らない。前回の実験では、チタンテトライ ソプロポキシドと、メタノールを混合させ ておいたが、かえってむらができてしまっ たため、今回は原液を直接滴下した。 ・半透明になるまで、この操作を続ける。そ の後、半透明になったら低温乾燥機に入れ 80 度で乾燥。乾燥が終わると、表面がぱり ぱりになりプラスチックのような見た目に なる。さらに外気に触れさせておくと、空 気中の水分を吸収し再び半液状になる。 2、ゾルの焼成 ・乾燥させたチタンと銀のゾルを電気炉に出 焼成する。このときの温度は前回の実験結 果から 600 度に設定。このまま 2 時間焼き 続ける。 05-2 3、水溶液の分解、濃度測定 ・完成した触媒を蒸発皿ごとビーカーに沈め、 ローダミン b 水溶液の分解させていく。触 媒は粉上になっており簡単にとれるが、は がれおちない部分もあるため、蒸発皿ごと 沈めることで同条件にする。 ・分解した後の溶液を分光光度計にかけ、そ の透過度を測ることで濃度を測定する。な お、このときの光の波長は 553.5nm で行っ た。 一連の流れ チタンテトライソプロポキシド 1.0mL 硝酸銀水溶液 1.0mL [(CH3)2CHO]4Ti AgNO3aq 3.4× 3.4×10-4mol/L(574.6g/L) 滴下 常に攪拌 80℃ 80℃ ゆっくりと滴下 硝酸水溶液 20mL HNO3 6.0× 6.0×10-1mol/L 加熱 Ti Agゾル完成 Agゾル完成 このときの加熱は、ゾルの体積が適度 になるまで行う。この後に一度低温乾 燥機にかけ乾燥させるのでこのとき は、濃度を気にする必要はない。 05-3 結果 ・乾燥後のゾルが、以前のような膜状にはならず、粉状にふきだしてしまった。 ・焼成後の触媒は、チタンだけの時の白色に対し、全体的に灰色がかり酸化銀の色が強かった。 分光光度計による測定結果 透過度(%) 相対透過度 原液 64.0 1 Ti 触媒 83.2 1.3 TiAg 触媒 89.4 1.4 ・Ag を加えても触媒としての性質を失うことはなく、また Ti のみの触媒と比較しても、それ以上 の結果が出た。 考察 乾燥後のゾルが膜状にならない原因として、低温乾燥機の温度が考えられる。今回は、いつも 80 度という高温で乾燥してしまったため、今後はさらに低温で乾燥させる。 また、結果としてチタンのみの触媒よりも混合触媒のほうが反応量が大きくなったが、銀それ自体 の効果も考えられる。 今後 今回は分解に使用した光源が蛍光灯であり、これには多くの紫外線が含まれている。そのため実際、 可視光によって反応しているのか確かめることが不可能。紫外線を一切含んでいない光源が必要とな る。よって、今後の実験には紫外線を含まない発光ダイオードを使用する。前記にもあるように、光 の中で最もエネルギーが大きいものが紫外線である。可視光ではエネルギーは赤色、橙色、黄色、緑 色、の順に大きくなっていくが、今後は黄色を中心に使用していく。 また、ゾル内の銀とチタンがすべて反応しきるわけではないため、その量、配合率、温度も細かく しながら、実験をしていく予定である。 参考文献・引用文献 図解雑学光触媒 株式会社光触媒研究所 京都大学研究論文 05-4