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都 市 環 境 問 題 の 解 決 を 目 指 し て 新 環 境 素 材
ビルの屋上防水層の保護 4. 「保水セラミックス」の特長 断熱性が高く、加えて紫外線も防ぐことから、 リラ豪雨などによる都市型水害が大きな問題 「保水セラミックス」 は窯業廃土を主原料とし、 耐 ビルの屋上防水層の劣化を軽減する効果が となっています。ヒートアイランド現象の原因 久性・耐候性に優れ、 保水率 60% 以上の高い 期待されます。防水層表面温度の 1日の変 のひとつとして、都市化に伴いコンクリートや 保水性能と蒸発性能を持つ新素材です〈1〉。ビ 「保 化量は、敷設なしの場合、22 ℃に対して、 アスファルトで地表面が覆われ、都市の温熱 ルの屋上などに設置することによって、雨の日 水セラミックス」 を敷設した場合、4 ℃に低減 環境をコントロールするはずの雨水を貯める は雨水を吸収し、晴天時は蒸発してビルと都 することを確認しました〈5〉。 機能が著しく低下し、自然に行われていた蒸 市の温度上昇を緩和します〈2〉。 ─ 発散量が減少して都市部で熱が蓄えられるよ 都市の雨水の流出を抑制 1. 新技術の適正な普及に向けて うになったことが挙げられます。また、 このヒート 雨水を一時的に貯留するため、 ビルの屋上や 都市型水害とヒートアイランド現象の問題解 アイランド現象と局地風によって積乱雲が著 道路脇・公園などに可能な限り敷設すること 決に向けた産官学の取り組みとして、 「雨水 しく発達することによりゲリラ豪雨が引き起こ によって、局地的な大雨が下水道や河川に 流出抑制・ヒートアイランド緩和に係る研究の されている可能性が指摘されています。そこ 一気に流出することを抑制する効果が期待さ 有識者委員会(代表者:中央大学理工学部 都市 で、雨水と土壌が果たしていた水循環を本来 れます。 環境学科教授・山田正) 」 が 2009 年 10月に発足 のあるべき姿に戻すことで、 これらの都市環境 都市のヒートアイランドの緩和 2. が委員となっ しました。14 名(2010 年 10月現在) 問題の解決につながると考え、新環境素材 優れた蒸発性能が持続するために、 広範囲に て、災害防止や環境対策に役立つ新しい環 敷設すれば、 ヒートアイランドを緩和する効果 境技術の普及促進を図り、世界のメガシティ ─ 保水セ が期待されます。また屋上緑化に対し、 への情報発信を目指して活動しています。 INAX の気孔制御技術を活かす ラミックスは敷設工事や日常的なメンテナンス ─ 「保水セラミックス」の開発を進めています。 INAXは、これまでにミリオーダー(1m の 1,000 (水やりや刈込み等) などが大幅に軽減され、屋 2010 年 8月から東京都内のビルの屋上で 分の 1)の気孔を持つ透水性舗装用ブロック 上機器の移設や取り替えにもフレキシブルに 「保水セラミックス」 を用いた本格的な実証試 │ (1m の 10 億分の 「サンドロック」 や、 ナノオーダー 1) の気孔を持ち空気中の湿気の吸放湿性能 験を行っています〈3〉。今後、都市問題解決に ビルの省エネ、CO2 削減 3. 対する効果と社会的価値を評価しつつ、材料 とこれに および製品の性能評価方法(標準化) に優れた健康建材「エコカラット」 を開発してき 優れた蒸発性能により、夏季のビルへの熱負 ました。これらのセラミックスの気孔を制御する 荷を減らし、 ビルの使用電力量を減らす効果 基づいた新しい環境技術の適正な面的普及 (1m の 技術を活かして、 今回、 マイクロオーダー が期待されます。雨水の保水・蒸発により、 コ を促す仕組み(制度設計)が必要と考えていま 100 万分の 1) の連通気孔を有する 「保水セラミ ンクリートスラブ下の温度を下げ、最大 19 ℃ す。 ックス」の素材開発に成功しました。 の温度低下を確認しました〈4〉。 〈1〉 雨の日 晴れの日 室外機 保水セラミックス 雨水吸収 蒸発 〈3〉 〈2〉 50 45 敷設なし/芝生/保水セラミックス 断 熱 材 防水層 コンクリートスラブ 断 熱 材 断熱材 試験体断面図 ※ビル屋上を 25m 2 で再現し、 点を測定 20 40 温度 (℃) 新環境素材 ﹁保水セラミックス﹂ を開発中 | 前浪洋輝| 対応できるなどのメリットがあります。 19℃ 35 15 30 10 25 50 保水セラミックス:0.20 ALC :0.15 土 :0.63 断 熱 材 防水層 コンクリートスラブ 断 熱 材 断熱材 15 8/1 8/11 Hiroki Maenami 降雨量 観測日 敷設なし 8/21 芝生 8/31 保水セラミックス 0 40 22℃ 35 芝生 30 4℃ 25 試験体断面図 〈4〉 なし 45 敷設なし/芝生/保水セラミックス 5 20 55 【熱伝導率 (W/ m・K)】 温度 (℃) 都市環境問題の解決を目指して 都市部においては、 ヒートアイランド現象や、 ゲ 降雨量 (mm /日) TOPICS ─ 開発の背景 ※ビル屋上を 25m 2 で再現し、 点を測定 20 6:00 12:00 時間 保水セラミックス 18:00 0:00 〈5〉 〈1〉 ─保水セラミックス|〈2〉 ─保水セラミックスの作用|〈3〉 ─実証試験の様子 [協力:森ビル株式会社] ─コンクリートスラブ下の温度変化 (2009 年 8月の 18 時) 〈4〉 ─防水層表面温度の変化 (2009 年 8月15日) 〈5〉 60 INAX REPORT/185 まえなみ・ひろき─ INAXサステナブル・イノベーション部エコシステム開発課