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スラブ調整の一考察
土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅳ-299 スラブ調整の一考察 仙建工業(株) 正会員 ○佐々木 健介 仙建工業(株) 正会員 小野寺 孝行 1 はじめに 東北新幹線八戸∼新青森間新設工事(約 81.2km)において当軌道作業所では八戸工区(約 13km)を施工してい る。軌道構造は、八戸方の一部分を除いて、スラブ軌道となっており、 高品質の軌道を敷設するには、スラブ調整作業の管理が重要であ る。本稿では、筆者らがスラブ調整作業に従事した際に発生した課 C C B A 題と、その対策について報告する。 A − B≦ 5mm 2 スラブ調整作業の作業手順 D D 水糸 スラブ調整作業とは、現場に仮敷設したスラブを所定のカント、勾 駒 配、高さに設置していく作業である。スラブ敷設ゲージに合わせ、門 駒 軌道スラブ 突起 型調整器と木製クサビ、保持ボルトを使用して調整するが、最終的 突起 図−1 スラブの据付略図 な位置を決定する際には、据付精度内(図−1、表−1)に収める必 表-1 スラブの据付精度 要があるだけでなく、スラブと路盤コンクリート間のセメントアスファル トモルタル(以下 CAM)の注入厚と、スラブと突起間の CAM 等の注 入厚を範囲内(表−2)に確保しなければならない。 前後方向 左右方向 上下方向 許容誤差 ±5mm ±2mm ±1mm 表記 A,B C D 3 スラブ敷設に伴う課題、及び対策・考察 ①スラブの製作許容誤差と土木構造物 の規格値の競合により、 表-2 CAM 等の注入厚の範囲 てん充層 CAM CAM・突起部の注入厚の確保できないことがあること。 土木構造物については、構造物出来形管理に準ずるため土木の 規格値は+10 ㎜である。また、スラブについては、スラブ製作許容 40∼ 100mm 突起部 樹脂 (明り区間) 20∼ 60mm CAM (トンネル) 30∼ 100mm 誤差は+3 ㎜となっている。このため、てん充層の最低注入厚 40mm に対して、設計平均注入厚 は、これらの数値が 最大値となった場合を考慮し 53mm としているの で、理論上は、スラブの製作許容誤差と土木構 カネコの測量(事前注入厚調査) 基準ピン 造物の規格値の競合(最大 13mm)があっても注 500 ㎜ 入厚を確保できるようになっている。ところが、注 基準ピン データを基に糸を張り、抵触箇所 がないか調査する。 500 ㎜ 仮想スラブ下面 入厚が確保できない場合に土木側が路盤コンク リートのハツリ作業を行なう基準が、最低注入厚 の 40 ㎜となっており、スラブの製作誤差の3mm 注入厚の測定箇所 1,412.5 ㎜ 1,412.5 ㎜ 分が考慮されていないので、スラブ製作誤差分 スラブ については、軌道側(当社)がハツリ作業を行うこ CA モルタル とになっている。このため、基準よりも少しでも厚 CAM の注入厚 40 ㎜∼100 ㎜内に厚さを確保 いスラブが敷設されると最低注入厚 が確保でき 図-2 注入厚の測定方法 なくなり、軌道側でのハツリ作業が必要となる。 キーワード スラブ軌道、スラブ調整、CA モルタル、 連絡先 〒039-2123 青森県上北郡おいらせ町西下谷地 33-2 仙建工業(株)八戸作業所 TEL 0178-50-6075 -595- 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅳ-299 スラブを現地に運搬してからハツリ作業を行なうと大きな手戻り作業となることから、事前にハツリ作業の要不要を的 確に判断する必要があった。 そこで、事前注入厚の測定結果を基に、最低注入厚 40 ㎜、スラブの製作誤差+3 ㎜の誤差が出ると考え、43 ㎜以 下を対象に事前注入厚の調査を行なうこととした。調査は、事前注入厚を測定した位置での仮想スラブ下面の位置を 計算し、予想される注入厚を推定し、前後の調査地点の注入厚の位置に糸を張って路盤コンクリート面からの注入厚 を測定した。 また、スラブ敷設前の事前注入厚測定については、路盤面のある一点で測定するが、CAM 完了時の注入厚の測 定は、1m ごとに線で検測していることや、検測道具も異なることから、これらによる誤差が考えられるが、注入厚の基 準が 40∼100mm と厚い側には、相当な余裕があることから、ハツリ作業時に厚く削ることにより対応した。 ②曲線区間で CAM 注入時スラブが浮き上がる事象 てん充層への CAM のてん充は、事前に設置してあ るポリエステル製不織布のロングチュープ内に CAM CA モルタル 注入時内軌側(低い方)へ を注入して行なう。注入作業は、ロングチューブの開 流れスラフ ゙が浮上る 口部から、自然流下により行っているが、曲線区間で 軌道スラブ CA モルタル カントが大きい区間では、注入を開始すると、ロング チューブ内の内軌側(低い方)へ CAM が流れ込み、 内軌側 スラブ下面のみ先に、てん充されてしまうこと から、スラブが浮き上がり、諸元の位置に調整したスラブがずれ 図-3 スラブが浮き上がるイメージ てしまう事象が発生した(図-3)。 そこで、その対策として、カントが 120mm 以上の箇所につい ては、スラブ 1 枚に対して 4 箇所、路盤コンクリートにアンカーボ ルトを打ち込み、全ネジと保持ボルト受金具を溶接してスラブの 浮き上がりを防止した(図−4)。 4 まとめ 今回のスラブ調整作業において、最低注入厚の確保とス ラブの浮き上がりが課題となったが、特に最低注入厚の確保 図-4 浮き上がり防止金具 については、工程管理上重要な要素である。今回の工事では、工事工程に支障するほどの遅れは発生しなかった が、今後スラブ敷設をする際には、ある程度の割合で、ハツリ作業が発生することを前提に工事計画を策定するこ とが必要であると思われる。特に、工期が短く、スラブ調整直後に CAM 注入が必要となる場合には重要である。 なお、注入厚を数ミリ厚くすれば、ハツリ作業がなくなり効率的なように思われるが、十分な検討が必要である。 例えば、最低注入厚 40mm を 43mm とした場合には、厚さは 3mm しか変化しないが、てん充に必要な CAM の量は、 7∼8パーセント増加することになる。使用材料が増加すると、材料費のコストはもちろんのこと、CAM を注入する際 に使用するプラント車は最大積載荷重が決まっているので、1 日当たりの施工量が減ってしまうなど労務費のコスト もアップしてしまう。ハツリ作業のロスと材料が増加することによるロスをしっかり検討する必要がある。 -596-