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教育の生産関数の推計――中高一貫校の場合

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教育の生産関数の推計――中高一貫校の場合
教育の生産関数の推計――中高一貫校の場合
小塩
隆士/神戸大学大学院経済学研究科
佐野
晋平/神戸大学大学院経済学研究科
末冨
芳/福岡教育大学学校教育講座 [要
旨] 本稿は、いわゆる教育の生産関数を、首都圏・近畿圏における主要な中高一貫校を対象
にして行ったものである。具体的には、中高一貫校の大学合格実績を、中学入試時点の偏
差値や各学校における教育の質や工夫、学校の属性等に注目して分析した。実証分析の結
果明らかになった事実は、次のようにまとめられる。
第 1 に、教育成果としての大学合格実績は、首都圏・近畿圏いずれの中高一貫校におい
ても、その学校に入学する生徒たちの平均的な学力(偏差値)によってかなりの程度決定
される。これは、教育成果を評価する上で、教育を受ける前の学力をコントロールするこ
との重要性を示唆するものである。
第 2 に、その学校に入学する生徒の平均的な学力や、学校そのものの属性などをコント
ロールすると、学校の取り組みの中で大学合格実績を統計的に明確な形で向上させること
ができるのは、総授業時間の引き上げだけである。教員/生徒比率やクラス当たり生徒数
など教育の質、あるいは様々な教育の工夫の効果は統計的に有意でない、または有意であ
っても地域や分析対象となる大学の入試難易度によって一様でない場合がほとんどである。
第 3 に、入学する生徒の平均的な学力に注目して学校を 3 つの階層に分けて分析すると、
学校階層によって教育の質や工夫が有意な形で効果を生む場合も出てくるが、その傾向は
首都圏と近畿圏とでは大きく異なり、一様な傾向は確認できない。
キーワード:
教育の生産関数
JEL classification number 中高一貫校
偏差値 I21 ―――――
連絡先:小塩
隆士 〒657­8501 神戸市灘区六甲台町 2­1 [email protected]­u.ac.jp。本稿
の執筆に当たり、神戸大学からの財政的な支援を受けた。深く感謝する。
教育の生産関数の推計――中高一貫校の場合
1. はじめに
学校教育がどのような成果をもたらすかは、教育への公的支援のあり方を考える上も極
めて重要な問題である。日本ではここ数年、学級規模や学期編成、授業時間の設定などの
面で学校の裁量がこれまでより広く認められるようになり、各地でさまざまな取り組みが
行われている。学校教育におけるこうした取り組みの効果を正確に評価するためには、児
童生徒が学校教育を受ける前後で学力にどのような変化があったかを把握する必要がある
ほか、児童生徒の家庭・社会環境もコントロールしておかなければならない。しかし、デ
ータ面の制約もあり、そうした適切な統計的処理をした上での分析はわれわれの知る限り
日本ではほとんど見当たらない。
そこで、本稿では日本における教育の生産関数の推計を試みる。その分析対象としては、
首都圏・近畿圏における私立・国立の中高一貫校を選んでいるが、その理由は次の 2 つで
ある。第 1 に、いわゆる教育の生産関数を推計するという形で学校教育の効果を把握する
場合、中高一貫校は比較的分析しやすい対象だからである。中高一貫校の場合、その学校
で教育を受ける生徒たちの入学(中学入試)時点での平均的な学力と、その 6 年後の卒業
(大学入試)時点における平均的な学力がともにある程度客観的に見ることができるので、
その学校が行っている教育の「付加価値」を把握しやすい。第 2 に、中高一貫校では、公
立校と違って学級規模やカリキュラム編成などの面で多様な取り組みが昔から行われてお
り、教育成果を左右する要因を特定化しやすいという特徴を持っている。
これに対して公立校の場合は、中学校では入試がないこともあって入学時点の学力が把
握しにくいし、高校入学段階でも中高一貫校に通う生徒は入試に参加しないし、公立校の
通学地域は何らかの形で制限されているので、生徒の学力の比較が難しい。また、公立高
校の場合、都道府県によって選択の仕組みが大きく異なり、それらを分析対象に含めると
学校における教育の成果がかえって把握しにくくなる。
もちろん、教育の生産関数を厳密に推計するためには、本来なら生徒一人ひとりの学力
の変化や家庭・社会環境などの属性を詳細に把握する必要がある。しかし、本稿で扱うの
はあくまでも各学校に通う生徒たちの平均的な学力であり、教育の生産関数の推計として
は不十分な面がかなりある。しかし、分析対象の学校はいずれも首都圏・近畿圏という大
都市圏に位置し、通学する子供の家庭の地域属性はある程度共通している。また、中高一
貫校に子供を通わせる家庭は親の所得水準や学歴・社会的地位も高めであると思われる。
したがって、分析対象を個人にした分析を試みても本稿と大きく異なる結果が出てくると
は考えにくい。
1
本稿の分析は、これまで日本ではほとんど試みられてこなかった、教育の生産関数の推
計作業として一定の意味を持っていると考えられるが、2 つの留意点を指摘しておく。第 1 に、本稿では教育成果として大学の合格実績に注目しているが、当然ながらそれ以外の教
育成果も存在する。その意味で、本稿の分析は教育が生み出しうるすべての成果を対象と
するものではない。しかし、従来、教育の生産関数の実証分析においては、定量的に把握
しやすい学力テストの結果やその後の賃金などを教育成果あるいはその代理変数として用
いるのが通常であり、本稿でもそうした分析手法を踏襲する。実際、学力テストの点数や
賃金以外の教育成果を定量的に分析するのはデータ面の制約もあってきわめて難しい。
第 2 に、本稿は中高一貫校を分析対象とするものの、中高一貫校の教育の質を包括的に
評価したり、それ以外の学校のそれと比較したりするものではない。実際、本稿が教育の
質の変数として代表させる様々な変数(後述)は、中高一貫校だけでなくそれ以外の学校
でも(データ面の制約がなければ)把握できる性格のものであり、中高一貫校独自の特徴
を示すものではない。また、中高一貫校は多様であり、本稿に登場する教育の質の変数以
外のところでその特徴を発揮している面もあるはずである。
むしろ、本稿の狙いは、様々な場面で議論されている、学校教育における工夫や改革が
どの程度の効果を生むのかを、①教育成果を大学の合格実績として捉えられるものに限定
し、②分析対象を中高一貫校に絞る、という条件の下で定量的に示すことにより、学校教
育に関する何らかの政策的含意を得ることにある。
以下の構成は、次の通りである。まず、第 2 節で、学校教育の質の効果を捉えるための
基本的なモデルを設定するとともに、関連する内外の先行研究をいくつか紹介する。第 3 節では本稿の研究対象となる中高一貫校の特徴を簡単に紹介するとともに、実証分析に用
いる各データを説明する。第 4 節では、実証分析の主要な結果を紹介する。最後に、第 5 節では全体の議論をまとめるとともに、将来の検討課題を指摘する。
2.理論的枠組みと先行研究 2.1 理論的枠組み
まず、学校単位で教育成果を分析する理論的枠組みを考えよう。ここでは、Hanushek and Taylor (1990)、 Hanushek (1992), Ladd and Walsh (1992)、 Taylor and Nguyen (2006)などに従い、
第 i 学校に通う生徒が、ある教育過程の終了時点において平均的に挙げた教育成果を Ai と
して、 Ai =αA0i+ Si β+Pi γ+εi という、教育の生産関数を議論の出発点とする。Ai としては、全国共通の学力試験におい
て当該学校に通う生徒の得た成績の平均値などが採用される。
説明変数について見ると、A0i は、いま問題にしている教育過程の開始時点において平均
的に挙げていた教育成果である。前節で述べたように、その学校に入学してくる生徒たち
が元々優秀であれば、卒業時点の成績がよいのはある程度当たり前であり、その点を考慮
2
しなければその学校の教育の質を正確に評価できない。一方、Si は学校の教育の質や学校
そのものの属性を示す変数群であり、以下では「学校要因」と呼ぶ。クラス規模や教員/
生徒比率、男子校か女子校かなどがこの学校要因の代表例である。Pi は、その学校に通う
生徒(あるいはその親)の全体的・平均的な変数群であり、
「子供・家庭要因」と呼ぶ。欧
米での先行研究を見ると、特別な財政支援を得ている生徒の比率、人種構成、親の平均的
な所得水準や社会的地位などが同要因として採用されている。α、 β、γ は推計される係数
ベクトルであり、εi は誤差項である。
なお、先行研究を見ると、教育成果をその教育期間に得られた付加価値として捉えるも
のもかなりある。その場合、(1)の両辺から Ai,t­1 を差し引いて、 Ai −A0i=(α−1) A0i+Si β+Pi γ+εi (1)’ が推計すべきモデルとなる(α−1 はマイナスになることも多い)。ただし、このように教育
の付加価値を分析するためには、教育過程の開始及び終了時点における教育成果が比較可
能でなければならない。日本では、それはほとんど不可能である。
しかし、(1)式ないし(1)’式による分析には、各変数が教育成果に及ぼす平均的な効果に
過ぎないという問題がある。例えば、 (1)式を最小二乗法等によって推計した結果、クラ
ス規模が教育成果に及ぼす効果が有意でなかったとしても、それはサンプル全体の平均に
ついて指摘できる結果にすぎず、低学力校ではクラス規模を小さくすると教育効果が有意
に高まるかもしれない。そのため、例えば入学時点の平均的な学力に注目し、学校を下位
校、中位校、上位校と分けて回帰式を推計し、結果を比較するといった作業も必要になる。
本稿では、実際にそうした作業も試みる。 2.2 先行研究
日本以外の国、とりわけ英米両国では、教育成果に関する実証研究が夥しい数に上って
いる。実際、同一の生徒の学力の変遷を把握するパネル・データが容易に利用できる米国
では、個人レベルにおける教育成果の分析が盛んに行われているほか、学校レベルの分析
も少なくない。米国では、有名な Coleman 報告(1966)が、教育成果において生徒の家庭・
社会環境が教育成果に大きな影響を及ぼすことを示して以降、教員/生徒比率や教員の質、
クラス規模など学校教育の様々な質の教育成果に関する効果の程度が注目されるようにな
った。しかし、Hanushek (2002)や Haveman and Wolfe (1995)などによる実証分析の包括的な
サーベイによると、学校教育の質の効果についての分析結果は一様ではない。
学校教育の質をめぐる実証分析は、英国でも盛んに行われている。1990 年代初頭以降、
英国では教育にも市場原理が積極的に導入され、生徒や親による学校選択の自由をそれま
で以上に広く認めるとともに、各学校を競争させてその成果たる入学生徒数にもとづいて
予算や教員スタッフの配分を決定するという教育改革が進められてきたからである。その
ため、各学校の教育成果が何によって決定されるかが重要なテーマとなり、実証分析も進
んでいる。しかも、英国では学校教育の各段階における成果が School Performance Tables として毎年公表されているため、(1)’式のような形で教育の付加価値を直接分析すること
3
が容易となっている。Bradley et al. (2000)や Bradley and Taylor (2004)、Taylor and Nguyen (2006)などが、その最近の例である。
英米におけるこうした研究とは対照的に、日本においては教育の生産関数という形で学
校教育の質が教育効果に及ぼす影響を分析した研究はほとんど見当たらない(Oshio and Senoh (2007)のサーベイ参照)。唯一の例外は、妹尾(2007)である。妹尾は、大学医学部の
教育環境(教員/学生比率、学生1人当たり校舎面積や蔵書数など)が、医学部教育の成
果である医師国家試験合格率にどの得程度影響を及ぼしているかを分析し、教育環境は総
じて有意な影響を及ぼさない一方、入学した学生の質(入学時偏差値)が強い説明力を持
つことを確認している。
一方、教育学の分野では、学級規模が教育成果に及ぼす影響がこれまでしばしば注目さ
れてきた。しかし、これまで行われてきた研究は、学級経営に関する教員の主観的な意見、
あるいは学生・児童生徒の意見を尋ねる意識調査がほとんどとなっている。近年では、山
崎他(2001)が、教員の意識調査をベースにして、児童生徒の学習や学校生活、教員の学
習指導や生徒指導のうまくいきやすさを「順調度」という指標で表し、それを学級規模や
学校規模、教員の属性(性別、年齢、教職経験年数)、ティーム・ティーチング実施の有無
を説明変数とする回帰式を推計している。一方、山崎他(2002)は、生徒児童の意識調査
をベースにして、学級規模が生徒指導や学習指導に対する生徒児童の意識にどのような影
響を及ぼすかを調べている。
学級規模が教育成果そのものに及ぼす影響については、国立教育政策研究所(2002)の
調査が注目される。そこでは、全国の小中学校約 150 校をサンプルとし、学級規模と数学
(算数)および理科の学力テストの結果との相関関係を調べている。しかし、残念ながら、
この分析は学級規模以外の要因を制御していないので、その結果の解釈は難しい。最近で
は、各地方自治体の教育委員会が学級規模の縮小や習熟度別学習の導入等の効果をウェブ
サイト上で公表するケースも増えている。しかし、同研究所の分析結果と同様、統計的な
処理が十分に行われているとはいえず、制度変更の効果を正確に分析できない。
一方、教育社会学の分野では、苅谷(2001)、苅谷他(2002)、苅谷・志水(2004)など、
低学力(低意欲)の児童生徒に社会経済階層変数が及ぼしている影響を検討する実証研究
が進んでいる。しかし、これらの研究は学校教育の役割の重要性を強調するものの、学校
教育が児童生徒の学力をどの程度向上させたかという点に関しては十分な検討を行ってい
ない。本研究では、まさしくその問題を検討している。
3.実証分析の方針 3.1 分析対象
以下で行う実証分析の対象は、首都圏・近畿圏の中高一貫校である。中高一貫校は現在、
全国で国私立合わせて 800 校近くあるが、首都圏に約 300 校、近畿圏に約 150 校あり、半
数以上が両大都市圏に位置している。
4
表1は、文部科学省『学校基本調査』
(各年度)より、国私立中学校に通う生徒の全体に
占める比率を 1990 年度以降についてまとめたものである。これらの中学生がすべて併設す
る高校にそのまま進学するわけではないが、中学・高校教育における中高一貫校の比重を
大まかに捉えるためにはこれで十分であろう。この図からも明らかなように、国私立中学
校に通う生徒の比率は上昇傾向にあり、1990 年度には全国 4.4%、首都圏 8.4%、近畿圏 5.7%であったのに対して、2007 年度にはそれぞれ 7.9%、14.9%、10.0%に達している。
男女別に見ると、女子のほうが国私立中学校に通う比率が全国、首都圏、近畿圏いずれに
おいても幾分高めになっている。
このように、中高一貫校は日本の教育において無視できない比重を占めるようになって
いるが、費用面では公立校と大きな違いがある。2006 年度について見ると、中学校段階の
学校教育費(学校給食費を除く)が、授業料が無償である公立が 1 人当たり 13.3 万円であ
るのに対して、私立は 95.8 万円と 7.2 倍に達している。高校段階では、公立が 34.4 万円で
あるのに対して、私立は 78.5 万円とその倍率は 2.3 倍に縮小するがそれでも 2 倍を上回る
(以上、文部科学省『子どもの学習費調査』(2006 年度)より)。
なお、中高一貫校はその大学合格実績がしばしば注目される。東大・京大を始めとする
難関大学の合格者数における中高一貫校卒業者の比率が公立校のそれに比べて顕著に高く、
それが中高一貫校の根強い人気の原因の一つとなっている。公立校でカリキュラムのスリ
ム化などが進む一方、手厚い受験指導や特徴のあるカリキュラム編成、しつけなどの面で
私立校を義務教育の段階においても選択する保護者は大都市圏を中心にかなりいる。
ただし、本稿は首都圏・近畿圏の中高一貫校をすべて分析対象にしているわけではない。
まず、中学校を有していてもその規模が小さく、高校の段階でかなりの生徒を募集する学
校は中高一貫校とは呼びにくい。そこで、高校における一学年の定員が中学校におけるそ
れの 1.5 倍を超える学校は対象から排除した。また、後述するような形で教育成果(大学
合格実績)に関するデータが長期間にわたって入手しにくい低学力校――こうした学校の
場合、中学入試の偏差値は通常 30 台前半であり、実質的に「全入」状態にある――は分析
対象から排除した。
こうした処理によって、分析対象にサンプル・セレクション・バイアスが掛かかること
は否定できない。しかし、入学時点で一定程度の学力ランクに達している生徒に対して、
中高段階において一貫した教育を行い、大学合格実績も追跡可能である学校に分析対象を
限定することで、大学合格実績が学校教育の質のインパクトを受けるのか、それとも学力
(偏差値)に応じて選別された生徒の質に影響されているのかが検討しやすくなる。 3.2 データ 3.2.1 卒業段階における教育成果
中高一貫校の卒業段階における教育成果を示す指標 Ai を作成する基礎材料は、次の 2 つ
である。第 1 は、毎日新聞社『サンデー毎日特別増刊・大学入試全記録「高校の実力」』各
年号から収集できる大学合格者数である。この資料は、各年度において大学合格者の出身
5
高校と合格大学をマトリックスの形で示しており、合格実績に関する最も包括的な情報を
提供している。ただし、この統計は、各高校の合格実績をすべて網羅しているわけではな
い。しかし、後述するような方法でこの資料のデータを加工すると、同調査から得られる
情報が合格実績の完全な姿から大きく外れているとは考えにくい。また、浪人生の扱いが
問題となるが、大学合格実績や中学入試の偏差値は単年度では大きく変化しないし、現役
生に絞って合格実績を見ると教育成果がむしろ過小評価されやすい、という理由から特段
の処理は行わなかった。
第 2 は、各大学の偏差値である。本稿では、大学入試の大手予備校の一つである駿台予
備学校が、同予備校が複数実施している公開模試の結果と合格実績をつき合わせ、その大
学の合格率が 80%になる水準として算出している偏差値――平均 50、標準偏差 10 の分布
で素点を正規化した値――を採用する 1 。ただし、ここでは、次のような調整を行う。まず、
偏差値は学部学科や入試形態(前・後期など)によって同じ大学でも異なるので、ここで
は、各学部の入試形態の中で最も高くなる偏差値を選び、その偏差値を各学部の入学定員
によって加重平均し、当該大学の全体としての偏差値とする 2 。次に、進学率の変化を反映
した調整を行う。偏差値が観測されるグループの分布は、
(学力が高い層だけが大学に進学
すると想定する限り)大学進学率によって切断されるので、大学進学率が異なる異時点間
では偏差値を正確に比較できない。そのため、本稿では、2003 年の進学率を基準にして、
各年の大学進学率の変化を考慮して偏差値の調整を行っている 3 。
もちろん、偏差値を教育成果として捉えることには本質的な問題がある。個人が偏差値
を最大化することを目指して行動しているわけでは必ずしもないからである。例えば、医
学部は一般的に偏差値が最も高いが、医学以外の学問を習得したいと思って大学受験に臨
む生徒もいるかもしれない。しかし、高校卒業時点の学力を統一的に比較できるデータは
利用可能にはなっていないため、本稿では合格大学の偏差値に注目する。
さらに本稿では、大学合格者数と大学偏差値を利用することにより、以下で説明する 3 つの変数を各学校の教育成果を示す指標としている。第 1 に、国公立大全体の合格実績に
注目する。具体的には、卒業生数が合格した各国公立大の偏差値を、その大学の合格者の
卒業生数に対する比率でウェイト付けした値の合計をその学校の合格実績とみなす。例え 1 駿台予備学校が偏差値算出の材料としている「駿台全国合格判定模試」の受験者数は、毎回 3 万数千
人である。駿台のほか河合塾や代々木ゼミナールなど、全国展開している予備校でも同様の偏差値を
公表しているが、長期にわたって統一的な偏差値を用いている点、利用可能性の観点から、ここでは
駿台の数値を採用した。 2 最近では、地方国立大学や私立大学でも医学部の偏差値がかなり高くなっており、こうした処理によ
って、大学合格実績で見た教育の成果が過小評価されている可能性があることに注意する必要がある。 3 具体的には以下の方法である。まず、大学進学者の能力分布は正規分布に従い、時間を通じて一定だ
とする。さらに、大学へは能力分布の上位層が進学すると仮定すると、観測される偏差値の分布は切断
正規分布に従う。切断正規分布の平均、分散はそれぞれ μ+λ(α)と σ 2 {1­λ(α)(λ(α)­α)} である。ただし、こ
こで、α は各時点の進学率 1­φt(α)で決定される(φt は正規分布のハザード関数)。切断正規分布の平均が 50、分散が 100 となり、α が基準年である 2003 年の大学進学率と一致するように μ と σ 2 を決定する。
得られた μ と σ 2 をもとに、ほかの年の大学入試偏差値に対して調整を行う。偏差値調整の方法の詳細は、
安部(1997)、浦坂(1998)を参照。
6
ば、その学校の卒業生 200 名のうち偏差値 70、 65、 60 の国公立大にそれぞれ 10 名、 20 名、 30 名合格していれば、19 (=(70×10+65×20+60×30)/200)という値をその学校の合格実績
とする。
国公立大の合格実績に注目する場合、2 つ以上の大学に同時に合格することができない
ことが卒業生の学力を把握する上での最大の利点となる。もちろん、その一方で、私立大
の合格実績や国公立大を始めから受験しない層の存在を無視してしまう点が問題となる。
しかし、私立大を受験する場合も国公立を併願するケースが少なくなく、また、高校の進
路指導でも学力の低い生徒には国立大を始めから受けさせないことが一般的だと考えられ
るので、国公立大の合格実績に限定しても大学入試時点での教育成果はある程度正確に把
握できるものと思われる。
第 2 は、国公立大の中でもとりわけ合格のために高い学力を必要とする旧帝大(東大、
京大、北大、東北大、名大、阪大、九大)を選び、そこへの合格実績に注目する 4 。これら
旧帝大の偏差値は、他大学の医学部を別とすると相対的に高く、そこへの合格率が高いほ
どその学校の教育成果が高いものと判断される。ただし、ここでの注目点はむしろ、そう
した難関大学への合格実績に分析対象を限定した場合に、推計結果が国公立大全体の場合
に比べてどのように異なるかという点である。
第 3 は、国公立・私立大を合わせた総合的な合格実績である。ここでは、卒業生が合格
したすべての国公立・私立大の偏差値を、その大学の合格者数の合格者数全体(卒業生数
ではなく)における比率でウェイト付けした値を合格実績とする 2 。これは、同じ卒業生
が複数の大学(あるいは同じ大学でも複数の学部)に合格していることも少なくないこと
を考慮するためである。合格実績の把握の仕方としてはこれが最もカバレッジが広い。
もちろん、この第 3 の方法にも幾つかの重要な問題がある。まず、国公立大と私立大の
間、あるいは私立大どうしの間でも、受験科目数の違い等のために偏差値が比較しにくい
し、複数の大学に合格した者に過剰なウェイトがかかる 5 。また、併設大学に推薦で内部進
学する生徒が卒業生のかなりの比率を占める学校をどう扱うかという問題がある。ここで
は、単純化のために、内部進学者はその併設大学に受験して合格したとみなしている。内
部進学者は、大学受験がないために学習インセンティブが低いというのが一般的な見方で
あり、本稿での処理は大学を併設している学校の教育成果を過大評価しているかもしれな
い。しかし、後述するように、本稿では併設大学ありダミーを説明変数に加えることでこ
の問題に対処している。 3.2.2 入学段階における教育成果
次に、中高一貫校に通う生徒たちが、それぞれの学校の教育を受ける前、つまり入学時
点の教育成果 A0i を把握しておく必要がある。本稿では、中学入試における各校の偏差値
4
5 実際には、旧 7 帝大のうち、首都圏では東大、近畿圏では京大・東大・阪大に進学先が集中する。 実際、一部の高学力の生徒に数多くの私立大学を受験させ、合格実績を水増ししている学校が近畿圏
を中心に少なからずあり、2007 年に大きな問題になった(『日本経済新聞』2007 年 7 月 21 日朝刊)。
7
(合格率 80%または合格者の平均)をその代理変数とした。例えば、2006 年春に高校を卒
業し、大学を受験した生徒たちの場合、6 年前の 2000 年春に経験した中学入試時点の学校
の偏差値に注目する。中学入試における偏差値としては、首都圏については四谷大塚進学
教室と首都圏模試センターが、近畿圏については五ツ木・駸々堂中学進学学力テスト会と
全国入試センター模試が公表している偏差値を用いる 6 。このうち、五ツ木・駸々堂は合格
率 80%の偏差値だけでなく合格者の平均偏差値を公表しているのでそれを用いるが、それ
以外は合格率 80%の値を用いる。首都圏と近畿圏の学校を併願する例もないではないが、
両地域は母集団として互いに独立していると考えてよいだろう。したがって、大学入試の
場合とは異なり、中学入試時点の偏差値は両地域をまたがって比較できない。そのため、
教育成果に関する推計は首都圏・近畿圏それぞれについて行う。
なお、偏差値については次のような追加的処理を行う。第 1 に、最近では、一部の名門
校を除き複数の入試日・タイプを設定して受験生数を確保しているところが多くなってい
る。それぞれの入試日・タイプごとに偏差値が計算されているが、ここでは合格者数でそ
れらを加重平均し、学校ごとに一本化する。また、共学校の場合は男女別に偏差値が計算
されているが、ここでも男女の合格者数で加重平均した。第 2 に、大学の偏差値と同様に
進学率の変化を踏まえた調整が必要となる。そのため、私立・国立中学進学者数の中学進
学者数に対する比率の時系列的な変化を踏まえて中学入試の偏差値を調整する。
さらに、同じ学校でも 2 社の間で偏差値に無視できない差がある場合がある。これは、
偏差値を計算する母集団に地域差や学力差、志望校の差があるためだと思われる。このと
き、偏差値は測定誤差が含まれて観測される。測定誤差と観測される偏差値が相関を持つ
とき、係数がバイアスを持つことが知られている。しかし、測定誤差を持つが互いに異な
る 2 つの指標が入手できれば、互いの測定誤差が相関していない場合、操作変数法を用い
ることでこのバイアスは回避できる(Wooldridge, 2001)。そこで本稿では、首都圏・近畿
圏それぞれにおいて、一方の会社の偏差値を他方の会社の偏差値で推計し、その推計値を
各学校の偏差値として説明変数に加えるという操作変数法を行っている(同様の操作変数
法は、Abe (2002)が用いている)。 3.2.3 学校要因
各学校における教育の質を示す学校要因 Si としては、できるだけ多くの要因を用意した。 6 首都圏では、四谷大塚の合不合判定テスト、首都圏模試センターの統一模試の受験者数は 2006 年 11 月実施回でそれぞれ約 20,900 人、 16,600 人だった。 2007 年春における首都圏の中学入試者数は約 52,000 人(小学校 6 年生の児童数は約 307,000 人)であり、首都圏の中学入試生の 3 割以上の子供たちがどち
らかの会社の模試を受験していることになる。近畿圏では、五ツ木・駸々堂中学進学学力テスト会が 2006 年 10 月実施回で約 7,300 人だった。全国入試センター模試は全国展開している進学塾・日能研の通学生
による受験が主体であり、2006 年 11 月実施回で約 16,000 人だったが、受験生は首都圏が中心であり、
近畿圏の受験生はそれほど多くない。2007 年春における近畿圏の中学入試者数は約 21,000 人(小学校 6 年生の児童数は約 200,000 人)であり、近畿圏の中学入試生の 3 割以上の子供たちが五ツ木・駸々堂の
模試を受験していることになる。
8
データの出所は、首都圏については朝日新聞社『カンペキ中学入試』、みくに出版『中高一
貫校スーパーガイド』及び市進出版『中学入試ガイド』各年号で、近畿圏については五ツ
木書房『中学入試案内(西日本版)』及び日能研『学校案内(近畿・中国・四国・九州版)』
各年号で掲載されている学校案内である。いずれも、中学校段階のデータが中心であるが、
ここでは、そこで紹介されている学校要因が高校段階でもかなりの程度見られると想定す
る。これらの学校属性の中には、教員/生徒比率や 1 クラスあたりの生徒数など、年によ
って変化するものもある。しかし、分析を単純にするため、当該校に通う生徒たちが直面
する学校属性は彼らの中学入学時点で固定されるものとみなす。
学校要因は、(1)教育の質を示す量的変数、(2)教育の工夫を示す質的変数、(3)学校その
ものの属性、の 3 つに分類される。このうち、(1)は時点によって幾分変化するが、(2)や(3) の変数は固定的であったり、変化するとしても頻繁でなかったりするものがほとんどであ
る。ただし、この分類はあくまでも便宜的なものであり、完全に区別できるものではない。
また、(3)は、男子校・女子校の違いなど、入学する生徒の属性を左右する機能も一部にも
っている。
教育の質を示す量的変数としては、次の 3 つに注目する。第 1 は、教員/生徒比率であ
る。ここでは、当該学年の生徒が中学 1 年生時点における総教員数(中高計)を総生徒数
(同)で割った値を基本としたが、中学専任の教員数しか得られない場合は、それを中学
校の生徒数で割る 7 。なお、欧米では、教員の経験や学歴、給与など教員の質も説明変数に
入れている実証研究も少なくないが、ここではデータの制約上それは断念した。第 2 は、
クラス当たり生徒数である 8 。当該学年の生徒数が中学 1 年生時点における学年総生徒数を
その学年のクラス数で割って、平均的なクラス規模とした。第 3 は、主要 5 教科の週当た
り総授業時間数の中学 3 年間における合計である。私立の中高一貫校の場合、大学入試を
狙って中学校の段階でも主要 5 教科のコマ数を公立校より多めにしているところが多い。
さらに、1 コマ当たりの授業時間も、50 分のところが大半だが、45 分授業のところも少な
くなく、60 分その他を設定している学校もある。なお、土曜日に授業を行っている学校も
かなりあるが、土曜日開講の有無は総授業時間数の差に反映される。ただし、この総授業
時間数は学校教育の「質」とは呼びにくい面もある。総授業時間は教育生産の投入「量」
であり、その値が大きいほど学力が伸長するのはほぼ当然のことだからである。
教育の工夫を示す質的変数としては、(1)科目によってクラス分割を行っているか、(2) 習熟度別授業を行っているか、(3)補習授業を行っているか、(4)通常の 3 学期制ではなく 2 学期制(セメスター制)を採用しているか、という 4 点に注目する。これらの取り組みは
中高一貫校だけでなく、公立校でも進められているところが少なくないが、その教育成果
に対する効果は必ずしも明らかではない。
7
8
こうした扱いの違いによって推計結果にバイアスが掛かる危険性を考慮して、中高合計の教員数を公
表しているか否かをダミー変数(公表=1)で示して説明変数に加えた。
ただし、クラス規模については、生徒の学力に応じてその最適規模が内生的に決定されるとする理論
モデルも存在する。Lazear (2001)、小塩(2002)参照。
9
最後に、学校そのものの属性としては、(1)国立か私立か、(2)共学・男子校・女子校のい
ずれか、(3) 大学・短大を併設しているか、(4)高校での新規募集はあるか、(5)一貫教育か
どうか(中学からの内部進学者を、高校から編入した生徒と少なくとも高校1年までは一
緒にしないで教育しているか)、(6)無宗教、カトリック、プロテスタント、仏教のいずれ
か、 (7)制服があるか、 (8)奨学金制度があるか、 (9)創立時点からの操業年数、 (10)学校規模、
の 10 点に注目する。その他、回帰分析に際しては学校の所在地の違いをダミー変数で処理
している。なお、学校によっては、複数の中学校を高校段階で一校にまとまるところもあ
る(東京学芸大大学附属校、慶應義塾系列校など)。これらの学校については、中学校段階
の数字を加重平均する。
残念ながら、その学校に通う生徒(あるいはその親)の平均的な属性 Pi については、直
接的な情報が入手できない。しかし、上述の学校属性に注目してその学校を選択する行動
――例えば女子校ではなく共学を選好したり、大学が併設されているために大学入試の必
要がない学校を選んだりするといった親子の行動――もかなりあると考えられる。その意
味では、学校属性はその学校を選んだ生徒・家庭の属性を間接的に反映している面もある
と考えられる。もちろん、生徒(あるいはその親)の属性を明示的に推計に反映させてい
ない点は本稿の大きな限界である。
4.実証分析の結果 4.1 中学入試時点の学力と大学合格実績
本稿が分析対象としている中高一貫校は、中学入試・大学入試の各偏差値及び学校属性
のデータが長期的に入手できる首都圏 161 校、近畿圏 89 校であり、いずれも 50%以上の
学校をカバーしている。分析対象に含めなかった学校は、大学入試の結果が十分に把握で
きない学校がほとんどであり、その点では本稿の分析にサンプル・セレクション・バイア
スがかかっていることは否めない。対象となる学年は、首都圏・近畿圏ともに 1996 年春に
中学校に入学(2002 年春に大学に入学)した学年から、2000 年春に中学校に入学(2006 年春に大学に入学)した学年の合計 5 学年(コーホート)である。なお、コーホート効果
の存在は、卒業年ダミーを説明変数に加えることで処理している。なお,本稿ではパネル・
データを使っているものの,推計は基本的にクロスセクション分析であり,各変数の変動
は時系列的な変動としてではなく,クロスセクション的な変動として扱っている。
最初に、この 5 学年のデータをプールし、中学入試時点の偏差値と 6 年後の大学合格実
績との関係をグラフで概観してみよう。図 1 は、首都圏・近畿圏それぞれにおいて、大学
合格実績を縦軸に、中学入試の偏差値を横軸にして、その相関関係を見たものである 9 。こ
の図から次の 3 点が確認できる。 9 ここでは、中学入試の偏差値として、首都圏では四谷大塚進学教室、近畿圏では全国入試センター模
試の値を用いている。それぞれ、もう一方の会社の値を使ってもほとんど同じようなグラフが描けた。
10
第 1 に、大学の範囲をどのようにとっても、中学入試の偏差値と大学合格実績との間に
明確な正の相関があることが分かる。これは、常識的な状況といえよう。ただし、決定係
数は国公立・旧帝大の場合、それほど高いとはいえない。これは、中学入試の偏差値が低
く、これらの大学に合格する生徒がかなり少ない学校が厚い層を形成し、中学入試の偏差
値と大学合格実績との間に線形の相関関係が必ずしも成立していないからである。
第 2 に、大学の範囲を旧帝大に狭めると、旧帝大への合格率が、中学入試時点での偏差
値が首都圏では 60、近畿圏では 50 を下回ると極端に落ち込み、ほとんどゼロとなること
も注目される。これは、旧帝大に合格できる程度の学力は、中学入試の時点でかなりの程
度識別されてしまうわけである。この傾向は国公立大全体でもある程度認められ、中高一
貫校が総体として学力識別機能を発揮していることが確認される。
第 3 に、大学の範囲を国公私立大全体に広げると、全体としてレンズ形の分布が形成さ
れ、中学入試偏差値と大学合格実績との間の正の相関がより明確に読み取れる。国公立大
と私立大の偏差値を同等に扱っている点に留意する必要があるが、この事実は、中学入試
段階の偏差値が低くても、学力に応じてそれなりに入学できる私立大が数多く存在してい
ることを物語るものである。 4.2 回帰分析 4.2.1 全体的な傾向
次に、大学合格実績を被説明変数とし、中学入学段階の教育成果である、中学入試の偏
差値を含む様々な要因を説明変数とする回帰式を推計することにしよう。ここでは、前述
のように、首都圏・近畿圏それぞれにおいて、中学入学時点が 1996 年春から 2000 年春ま
での 5 学年を対象とするプールド・データを用いた推計を行う。被説明変数・説明変数は 3 節で説明した通りであり、各変数の記述統計量は表 1 にまとめてある。
首都圏・近畿圏それぞれにおいて、大学合格実績に関する全体的な傾向をまとめたもの
が表 2 である。前述したように偏差値には測定誤差がある可能性があるため、それぞれ別
の媒体で調査された偏差値を操作変数として用い推計を行っている。具体的には、首都圏
では四谷大塚進学教室の偏差値の操作変数として首都圏首都圏模試センターの偏差値を用
い、近畿圏では全国入試センター模試の偏差値の操作変数として五ツ木・駸々堂中学進学
学力テストの偏差値を用いている。なお操作変数をそれぞれ逆にしても結果は大きく異な
らなかった。数量的な評価を可能にするため、中学入試偏差値と教育の質を示す量的変数
については、平均値回りの弾性値を示した。
これらの表からは、まず、中学入試の偏差値がどのケースでも1%水準で有意であり、プ
ラスの値をとっていることが注目される。中学入学時点の学力が大学入試時点の学力をか
なり左右していることがここで改めて確認される。
次に、教育の質を示す量的変数を見てみよう。まず、教員/生徒比率は、国公立大や旧
帝大の場合、国公立大・近畿圏を除くと有意でない。しかし、大学の範囲に私立大を含め
ると 5%水準で有意になる。私立大の中には入試科目が少なく、入試問題も比較的容易な
11
大学も少なくないが、そうした大学の合格実績を挙げるためには教員の拡充は効果的だと
いうことかもしれない。
一方、クラス当たり生徒数は、旧帝大・首都圏ではマイナスで有意となっているが、国
公私立大で首都圏・近畿圏ともにはむしろプラスで有意となっており、それ以外は有意で
ない。つまり、効果の方向性は一様でない。これに対して、総授業時間は国公私立大・近
畿圏を除くとすべてのケースにおいてプラスで有意になっている。主要 5 教科のコマ数引
き上げや土曜日開講など、授業時間の増加は大学合格実績の改善に効果的であることが分
かる。生徒により長い時間、授業を受けさせれば、大学合格実績という意味での教育成果
も向上するという、素朴だが重要な知見が確認されたことになる。ただし、弾性値の大き
さを見ると、とりわけ国公立大、旧帝大の合格実績を教育成果とみなした場合、中学入試
の偏差値の弾性値は教育の質を示す各変数のそれを大幅に上回る。大学合格実績にとって
は、教育の質そのものより、優秀な生徒がどれだけ多く入学してくるかのほうがはるかに
重要といえる。
一方、教育の工夫を示す質的変数はどうか。全体として見ると、効果は一様でない。例
えば、クラス分割は国公立大や旧帝大では効果的な面もあるが、それほど明確ではない。
習熟度別授業の実施は、むしろマイナスで有意になっているところがある。これは、入学
してくる生徒の学力のばらつきが大きい学校ほど、習熟度別授業を実施せざるを得ないと
いう、逆の因果関係が存在するのかもしれない。補習の実施は首都圏ではプラスで有意だ
が、近畿圏では旧帝大以外では有意でない。さらに、2 学期制の導入は近畿圏で有意でな
く、首都圏でも符号が一様でない。
以上をまとめると、次のようになろう。まず、大学合格実績で示される中高一貫校の教
育成果は、中学入試の偏差値で示される中学入学時点での学力でかなりの程度決定される。
そして、その学校に入学する生徒たちの平均的な学力や、学校そのものの属性などをコン
トロールすると、各学校における教育の質や工夫のなかで大学合格実績に比較的明確な効
果をもたらしているのは総授業時間だけであり、それ以外の要因の効果は不明確であるか、
あったとしても一様でない 10 。 4.2.2 学校階層別に見た状況
以上の実証分析の結果は、首都圏・近畿圏における中高一貫校の教育成果に関してその
平均的な姿を見たものにすぎない。中高一貫校も、ほとんどの生徒が難関大学を狙う学校
から、多くの卒業生が、偏差値が中程度以下の私立大に進学する学校まで様々である。上
述の回帰分析の結果は、中高一貫校における教育の質や工夫がもたらす効果の不確定性を
10
なお,以上の分析は,男子校のみ,女子校のみ,私立校のみのケースでもそれぞれ行った。結果に大
きな違いは見られなかったが,中学入試の偏差値の大学合格実績に対する偏差値は,表3で示される
中高一貫校全体の結果と比べて,女子校のみでは大きめとなる一方,男子校のみでは同じかやや低め
となった。また,授業時間の有意性は,男子校のみ,女子校のみではいずれも全体と比べてやや低下
する傾向が見られた。さらに,国立校の全体に占める比率が低いためか,私立校のみの結果は全体の
結果と大きく変わらなかった。
12
示しているが、入学する生徒の平均的な学力の高い学校と低い学校の間では状況が異なっ
ているかもしれない。
そこで以下では、中学入試の偏差値に注目して、首都圏・近畿圏にそれぞれにおいて下
位校・中位校、上位校という 3 つの階層に分割し、表1と同様の回帰分析(操作変数法)
を行い、各変数に掛かる係数の値を比較してみよう。その結果をまとめたものが表 3 であ
る。次のような点が確認できる。
第 1 に、中学入試の偏差値の係数を見ると、首都圏・近畿圏ともにどの層でもプラスで
ほぼ有意であるが、下位校より上位校のほうが係数の値が高めになる傾向がある(ただし、
旧帝大・近畿圏の上位校では係数が大きく落ち込む)。これは、これら大学に合格するため
には、中学入試時点である程度以上の学力が必要であることを意味し、図 1 の結果とも整
合的である。また、個人の教育成果が級友の影響を受けるという、いわゆる「ピア効果」
の存在が反映されている面もあろう。
第 2 に、教育の質や工夫の効果は学校の層や地域によってかなり異なる形を見せている。
例えば、教員/生徒比率は、首都圏では下位校ほど効果があるものの、近畿圏では中位・
上位校で効果が挙がっている。クラス当たり生徒数は、全体的に明確な傾向は見られない
ものの、首都圏・下位校ではその値が大きいほど効果が有意になるケースが幾つか見られ
る。また、総授業時間は全体的には効果があるものの、首都圏・国公立大を除くと、上位
校より下位校・中位校で効果が挙がっている。一方、教育の工夫の効果については地域差
が大きく、一様な傾向は見られない 11 。
5.結
論
本稿では、教育の生産関数を、首都圏・近畿圏における主要な中高一貫校を分析対象と
して推計した。実証分析の結果明らかになった事実は、次のようにまとめられる。
第 1 に、中学・高校教育の重要な教育成果としばしば受け止められる大学合格実績は、
首都圏・近畿圏いずれの中高一貫校においても、その学校に入学する生徒たちの平均的な
学力(偏差値)によってかなりの程度決定される。
第 2 に、その学校に入学する生徒の平均的な学力や、学校そのものの属性などをコント
ロールすると、学校の取り組みの中で大学合格実績を統計的に明確な形で向上できるのは、
総授業時間の引き上げだけである。教員/生徒比率やクラス当たり生徒数といった教育の
質、あるいは様々な教育の工夫の効果は統計的に有意でない、または有意であっても地域
や分析対象となる大学の入試難易度によって一様でない場合がほとんどである。
第 3 に、入学する生徒の平均的な学力に注目して学校を 3 つの階層に分けて分析すると、
学校階層によって教育の質や工夫が有意な形で効果を生む場合も出てくるが、その傾向は
11
なお、中学入試の偏差値ではなく大学合格実績に注目した分位回帰(quantile regression)も試みたが、
結果の傾向に大きな違いは認められなかった。
13
首都圏と近畿圏とでは大きく異なり、一様な傾向は確認できない。
本稿の分析は、中高一貫校の教育成果を直接分析したものではないし、その分析結果を
日本の中学校・高校全体の教育に対する評価にそのままつなげることもできない。しかし、
①教育成果は教育を受ける前の学力にかなり大きく左右される、②教育成果に有意かつ一
様な形で影響を及ぼす要因が総授業時間にほぼ限定される、という 2 点が統計的に確認さ
れたことは、教育政策の在り方を考える上で一定の意味を持っている。
もちろん、本稿の分析はデータ面の制約もあり、推計結果の解釈には慎重でなければな
らない。そして、上述のような見方の妥当性の検討も含め、教育成果をより精緻に分析す
るためにはクリアすべき多くの研究課題が残されている。第 1 は、言うまでもなく、より
整備されたデータによる分析である。本稿の分析対象は学校であるが、教育成果の分析は
本来、個人・家族属性も詳細にコントロールした上で、個人ベースで行う必要がある。そ
のためには、同一個人の教育経歴や親の所得・社会的地位などを把握できるパネル・デー
タを整備する必要がある。
第 2 に、中高一貫校だけでなく、公立校も含めた学校教育全体に分析対象を広げる必要
がある。本稿が中高一貫校に分析対象を絞った最大の理由は、とりわけ教育を受ける入り
口の学力が比較的把握しやすく、その影響をコントロールしやすかったからである。しか
し、学校横断的な学力テストの実施などにより、教育の各段階ですべての生徒の学力が把
握できるようになれば、教育の生産関数の推計は学校教育全体に広げることができる。実
際、教育の質や工夫を示すものとして本稿が採用した変数のほとんどは、中高一貫校だけ
でなくその他の学校でも入手できる性格のものである。
第 3 に、中高一貫校の教育成果そのものの分析も興味深い。例えば、動学的な枠組みに
よる分析もあり得る。本稿では、同一学年の中学入試の偏差値と大学合格実績に注目して
いるが、分析の枠組みは基本的に静学的である。優秀な生徒やその保護者が、将来の有名
大学への合格可能性を判断する材料として、過去の大学合格実績に注目しているとすれば、
教育のアウトプットである合格実績が教育のアウトプットである合格実績がインプットで
ある、入学してくる子供たちの平均的学力を左右するという経路の存在も予想できる。
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14
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国立教育政策研究所「児童生徒の学習性と学習状況及び学力形成とクラスでの生活意識に
及ぼす学級規模の影響に関する調査結果」
『国立教育政策研究所紀要』, 2002, 第 131 号. 妹尾
渉「高等教育機関の効率性分析~日本の医学部における実証分析~」
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恒信・金子之史・田中春彦「学級規模の教育上の効果-教員調
査を中心に-」『教科教育学研究』2001, 第 19 集, pp.255­273. ________・________・________・________・________,「学級規模の教育上の効果-児童生
徒調査を中心に-」『教科教育学研究』2002, 第 20 集, pp.107­124.
15 表1.国私立中学校に通学する生徒の比率
年
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2007 男女計
4.4 5.0 5.7 6.0 6.2 6.5 6.9 7.4 7.8 7.9 全国
男子
3.9 4.3 5.0 5.3 5.6 5.9 6.3 6.8 7.2 7.3 女子
5.1 5.8 6.4 6.7 6.9 7.2 7.5 7.9 8.4 8.6 男女計
8.4 9.8 11.4 12.0 12.4 12.8 13.3 14.2 14.7 14.9 (出所)文部科学省『学校基本調査』(各年度)
16
首都圏
男子
6.8 7.7 9.3 10.1 10.8 11.3 11.9 12.9 13.3 13.4 女子
10.0 12.0 13.5 13.9 14.0 14.4 14.8 15.5 16.2 16.4 男女計
5.7 6.5 7.3 7.8 8.3 8.7 8.9 9.4 9.8 10.0 近畿圏
男子
5.2 6.0 6.7 7.2 7.7 8.1 8.5 8.9 9.3 9.5 女子 6.2 7.0 7.9 8.4 8.9 9.2 9.3 9.9 10.3 10.5 表2. 記述統計
変 数
大学偏差値加重平均
国公立大 旧帝大 国公私立大 中学入試偏差値 四谷大塚 首都圏模試 全国入試センター模試 五ツ木・駸々堂 教員・生徒比率 クラス当たり生徒数 総授業時間 クラス分割 習熟度授業 補習 2学期制 国立校 男子校 女子校 併設大学あり 高校募集 一貫教育 カトリック プロテスタント 仏教 制服あり 奨学金制度 操業年数 学校規模(学年平均)1­99人 100­199人 200­299人 300人以上 平均
首都圏 (サンプル数 760)
標準偏差 最小値
最大値
7.36 2.65 54.70 10.01 6.33 4.10 0.00 0.00 45.86 60.93 51.09 68.13 50.66 55.98 8.76 8.65 16.66 36.76 74.00
76.38
0.05 40.16 57.68 0.82 0.85 0.99 0.31 0.03 0.27 0.39 0.37 0.61 0.77 0.12 0.15 0.03 0.97 0.81 45.09 1­299 0.06 0.46 300­599 0.40 600­899 900 0.08 0.01 5.23 6.62 0.38 0.35 0.08 0.46 0.18 0.44 0.49 0.48 0.49 0.42 0.32 0.35 0.17 0.17 0.39 17.77 0.24 0.50 0.49 0.27 0.02 15.67 39.58 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5.00 0 0 0 0 0.11 51.95 84.17 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 65.00 1 1 1 1 平均
近畿圏 (サンプル数 416)
標準偏差 最小値
最大値
14.10 6.39 55.01 16.25 10.98 3.91 0.00 0.00 43.82 62.72
54.85
65.65 47.22 54.10 0.05 37.33 59.35 0.62 0.54 0.93 0.15 0.05 0.24 0.35 0.50 0.84 0.53 0.17 0.13 0.19 0.88 0.04 44.61 0.21 0.46 0.25 0.08 8.13 8.76 0.01 7.70 9.69 0.49 0.50 0.26 0.36 0.21 0.43 0.48 0.50 0.36 0.50 0.38 0.34 0.39 0.32 0.19 17.33 0.41 0.50 0.43 0.27 32.47 35.42 0.03 16.38 36.67 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6.00 0 0 0 0 72.36
76.00
0.13 54.78 100.33 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 59.00 1
1
1
1 (注)大学偏差値加重平均は、各大学の偏差値を、国公立大・旧帝大の場合は各大学合格者数/卒業生数でウェイト付けし、
国公私立大の場合は、各大学合格者数/合格者総数でウェイト付けした値。
17
60
70
70
図1.中学入試偏差値と合格実績
決定係数 0.630
0
0
10
10
国公立大偏差値加重平均
20
30
40
50
国公 立 大偏 差 値加 重 平 均
20
30
40
50
60
決定係数 0.432
40
50
60
中学入試偏差値(首都圏)
70
30
40
50
60
中学入試偏差値(近畿圏)
70
60
旧帝大偏差値加重平均
20
30
40
50
旧帝 大偏差 値加重 平均
20
30
40
50
60
70
70
30
決定係数 0.638
0
0
10
10
決定係数 0.335
40
30
40
50
60
中学入試偏差値(首都圏)
30
70
40
50
60
中学入試偏差値(近畿圏)
70
40
全 大学偏差 値加重 平均
50
60
全大 学 偏 差 値 加重 平 均
50
60
70
70
30
50
60
中学入試偏差値(首都圏)
決定係数 0.703
40
決定係数 0.735
70
30
40
50
60
中学入試偏差値(近畿圏)
70
(注)横軸は中学入試偏差値、縦軸は偏差値の加重平均を示す。上段は国公立大学、中段は旧帝国大学、下段は全大学を示す。首都圏は四谷大塚の、
近畿圏は全国入試センターの中学入試偏差値を示している。図中の決定係数の値は、合格 実績を被説明変数とし、中学入試偏差値を説明変数とし
単回帰を行ったときの決定係数を示す。
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表3.大学合格実績の推計結果(全体)
説明変数
(入学時点における教育成果)
中学入試偏差値 (教育の質を示す量的変数)
教員/生徒比率 クラス当たり生徒数 総授業時間 (教育の工夫を示す質的変数)
クラス分割 習熟度授業 補習 2学期制 (学校属性)
国立校 男子校 (共学=0) 女子校 (同上) 併設大学あり 高校募集 一貫教育 カトリック(無宗教=0) プロテスタント(同上) 仏教(同上) 制服あり 奨学金制度 操業年数 学校規模(学年平均, 300人以上=0)
1­99人 100­199人 200­299人 2 R (第1段階の回帰分析)
中学入試偏差値 観測数 国公立大 首都圏
近畿圏
旧帝大 首都圏
近畿圏
国公私立大
首都圏
近畿圏
0.639 *** [4.40] 1.724 *** [5.77] 0.292 *** [5.58] 0.398 *** [0.37] 0.312 *** [0.27] 0.624 [0.00] 0.024 [0.13] 0.207 *** [1.62] 104.15 *** [0.39] ­0.075 ­[0.20] 0.249 *** [1.05] ­17.58 [­0.33] ­0.087 ** [­1.32] 0.083 *** [1.80] 21.54 *** [0.02] 0.046 ** [0.03] 0.047 *** [0.05] 25.57 ** [0.02]
0.078 ** [0.05]
0.022 [0.02] 0.901 ­2.923 6.676 ­0.459 5.927 1.595 ­2.454 ­4.647 0.619 1.341 2.546 0.564 ­0.341 ­7.419 ­3.844 0.024 *** *** ** ** *** *** ** *** *** *** 0.278 ­1.844 * ­0.398 0.68 0.961 *** 758 2.404 ­1.243 ­0.925 0.283 *** 18.975 0.489 3.663 ­6.658 ­0.587 1.288 2.455 ­2.426 2.001 2.996 6.533 0.035 *** *** *** ** * * * *** 1.330 2.358 * 1.504 0.84 0.818 *** 416 1.356 ­3.007 4.215 ­1.279 *** 5.656 2.122 ­0.485 ­1.649 0.926 0.366 2.178 0.147 ­0.304 ­8.671 ­2.570 0.032 *** *** *** *** *** *** ** *** *** *** *** 1.115 *** [8.25] 28.52 [0.24] ­0.033 [­0.19] 0.128 ** [1.19] 1.154 ­0.932 4.037 0.884 11.411 2.566 3.041 ­3.258 ­0.051 ­0.848 0.225 ­3.162 1.510 ­3.866 4.155 0.077 * * ** *** ** *** *** *** *** *** *** ­0.142 0.023 2.605 0.823 ­0.467 0.452 ­1.162 ­0.282 ­0.542 ­0.962 0.279 ­0.132 ­0.541 ­0.453 ­0.326 0.022 *** *** ** *** * *** *** * * *** ­1.348 ­2.897 *** ­1.930 ** 0.62 6.749 *** 5.878 *** 2.845 *** 0.8 ­0.759 ­0.663 ** ­0.958 *** 0.81 0.961 *** 758 0.818 *** 416 0.961 *** 758 ­0.076
­0.642 ­0.054
0.007 2.758 0.040
­0.987 0.396
0.149
0.052
0.934 1.447 ­0.229
­2.997 ­0.482
­0.032 ***
***
***
***
***
***
***
­0.510
­0.645 **
­0.176 0.84 0.818 *** 416 (注)被説明変数は、各大学の偏差値をその大学の合格者数の各校卒業生数に対する比率(国公立大、旧帝大の場合)、
または各校合格者総数に対する比率(国公私立大の場合)でウェイト付けした値。推計の第1段階として、首都圏では四
谷大塚進学教室の偏差値を首都圏首都圏模試センターの偏差値と全ての外生変数で、近畿圏では全国入試センター模試の
偏差値を五ツ木・駸々堂中学進学学力テストの偏差値と全ての外生変数で推計し、第2段階では、その推計値をその他の
要因とともに説明変数として用いて大学合格実績を推計している。スペースを節約するため1段階目の推計結果は偏差値
の部分のみ掲載している。***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%で有意であることを示す。 [ ]の値は、平均値回りの
弾性値。
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表4.大学合格実績の推計結果(学校階層別)
首都圏
下位校
近畿圏
中位校
上位校
下位校
中位校
上位校
(1)国公立大
中学入試偏差値 0.127 ** 0.768 *** 1.246 *** 1.642 ** 2.628 53.800 *** ­13.102 ­110.767 ­28.581 371.435 クラス当たり生徒数 0.132 *** 0.053 0.081 ­0.141 ­0.016 総授業時間 0.095 *** 0.134 クラス分割 0.846 * 習熟度授業 ­1.417 ** 教員/生徒比率 補習 2学期制 ** *** 2.177 ** 51.362
***
0.017
0.292 *** 0.044 0.417 *** ­0.062
­0.263 3.413 *** ­0.076 4.629 *** ­0.269
­0.217 0.216 ­0.794 1.586 ­ 3.121 ­0.676 ­3.291 ­9.758 0.030 2.229 *** 0.798 ­1.008 3.862 0.135 *** 1.103 *** ­155.548 *** ­2.007 ** **
­
­1.082 (2)旧帝大
中学入試偏差値 教員/生徒比率 0.030 16.512 *** ­3.652 クラス当たり生徒数 0.026 * 総授業時間 0.032 *** 0.045 クラス分割 0.280 *** 習熟度授業 ­0.505 *** 補習 2学期制 0.024 ­0.166 0.235 ­62.228 2.184 ** 241.598 *** 0.408 ** 16.020 ­0.007 0.032 0.127 * ­0.030 0.164 * ­0.027
­0.329 3.276 *** ­0.054 2.558 ** ­0.097
0.563 ­1.152 ­0.012 0.441 ** ***
**
0.008
­0.329 0.000 0.360 1.328 ­1.684 ­1.910 ­0.011 0.281 ** ­0.788 ­0.467 4.850 ** ­0.285 0.475 *** 0.478 0.379 *** 0.523 52.681 *** 70.693 0.165 *** 0.037
*** *
­
(3)国公私立大
0.313 *** 36.795 *** 6.771 クラス当たり生徒数 0.088 ** 0.091 総授業時間 0.085 *** クラス分割 0.566 習熟度授業 1.464 中学入試偏差値 教員/生徒比率 補習 2学期制 *** ­ 0.523 *** 0.301 ­5.664 ­10.573 ­0.032 0.137 ** ** 0.021 ­0.037 ­0.034 0.083 ­0.567 ­0.600 0.128 0.190 0.502 0.041 ­0.112 0.133 ­0.202 * *** 0.745 *** 6.625 *** ­0.352 ­1.358 1.197 ** ­0.243 0.080 *
***
0.029
­0.223
­1.426 *** ***
­
0.709 253 254 251 140 138 138 サンプル数 (注)表1と同様の分析(操作変数法)を首都圏、近畿圏の下位校、中位校、上位校についてそれぞれ行った結果のうち、主要な
変数に掛かる係数をまとめたもの。***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%で有意。 "­"は、その変数がその層内で変動がなく、
推計に用いられなかったことを示す。
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