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死刑廃止について 議論をはじめましょう

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死刑廃止について 議論をはじめましょう
死刑廃止は
国際社会の大きな流れです
2013 年 6 月発行
加盟国(34 か国)の中で死刑制度を存置している国は,
日本・韓国・
死刑廃止について
議論をはじめましょう
アメリカの3か国のみです。しかし,韓国とアメリカの 18 州は
日本 弁 護士連合 会は 死刑 廃 止についての議 論を呼びかけています
2012 年現在,死刑を廃止又は停止している国は 140 か国,他
方,2012 年に死刑を執行した国は 21 か国にすぎません。
いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)
死刑を廃止又は停止しており,死刑を国家として統一して執行し
ているのは日本のみです。
国連は,死刑執行停止を求め続けています。
1948 ● 世界人権宣言「すべて人は生命に対する権利を有する」
1989 ● 国際人権(自由権)規約第二選択議定書〔いわゆる死刑廃止条約〕
(現在 76 か国締約,
日本は未締約)
1997 以降,毎年●国連人権委員会(2006 年国連人権理事会に改組)「死刑廃止に関する決議」
2007,2008,2010,2012 ● 国連総会本会議 死刑存置国に対し死刑執行停止を求める決議
日本は国連から,死刑廃止についての勧告を受け続けています。
1993,1998 ● 国際人権(自由権)規約委員会「死刑を法定刑とする犯罪を減少させるなど死刑廃止に向
けた措置を講ずること」「死刑確定者の処遇が自由権規約に反するとしてその改善」を求める勧告。
2007 ● 国連拷問禁止委員会 死刑を言い渡された人々に関する国内法における多くの条項が,拷問ある
いは虐待に相当し得るものであることに深刻な懸念を示す。
2008 ● 国際人権(自由権)規約委員会「締約国は,世論調査の結果にかかわらず,死刑の廃止を前向き
に検討し,必要に応じて,国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべき」と勧告。
日本弁護士連合会(日弁連)の基本的立場
2013 ● 国連拷問禁止委員会 死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告。
◆ 日弁連は,死刑のない社会が望ましいことを見据え,
死刑廃止についての全社会的議論を呼びかけます。
◆ 人権を尊重する民主主義社会にとって,
犯罪被害者の支援と死刑のない社会への取組は,
いずれも実現しなければならない重要な課題です。
■ 赤 :死 刑 存 置 国(但し,アメリカの
うち 18 州では死刑は廃止されて
いる(死刑を廃止したアラスカ州
は白色としている)
。
)
◆ 政府は,死刑制度についての情報を積極的に国民に開示し,
法務省に有識者会議を設置するなどして,死刑制度の廃止
について全社会的議論を開始するべきです。
■ 白 :法律上死刑を廃止した国
■薄黄:事実上の死刑廃止国
また,その議論の間は,死刑の執行を停止するべきです。
( 2012 年 10 月 31 日現在 アムネスティ・インターナショナルによる)
日本弁護士連合会◦〒 100-0013 東京都千代田区霞が関 1−1−3 tel 03-3580-9841㈹
http://www.nichibenren.or.jp/
4
1
死刑のない社会が望ましいわけ
~ 私たちの社会のあり方 ~
死刑はかけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え,罪を犯した人の更生と社
会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点を内包しています。
私たちが目指すべき社会は,すべての人々が尊厳をもって共生できる社会ではないでしょうか。
そこでは,罪を犯した人も最終的には社会が受けいれ
死刑の犯罪抑止力は
証明されていません
死刑を廃止すると凶悪・残忍な犯罪が増加するのでしょうか?
死刑に他の刑罰(例えば終身刑など)に比べて,とくに犯罪の抑止力があるという証拠はあり
ません。アメリカでは死刑廃止州よりも存置州の方が殺人事件の発生率が高いというデータがあ
る可能性を完全に排除してはならず,かつ犯罪被害者の
ります。日本では死刑になりたいという動機で
「無差別殺人」
を起こしたとされる事件もあります。
社会的・精神的・経済的支援を充実化させなければなり
犯罪の抑止は,犯罪原因の研究と予防対策を総合的・科学的に行うことによって進めていくべ
ません。ヨーロッパ諸国は,犯罪被害者を手厚く支援し,
きです。
かつ死刑を廃止しています。
すべての人々が尊厳をもって共生できる社会にとって,
被害者の支援と死刑のない社会への取組はいずれも実現
しなければならない重要な課題なのです。
死刑の残虐性
日本では,死刑の執行は絞首刑によって行われています。
死刑は取り返しのつかない
刑罰です
裁判は常に誤判の危険をはらんでおり,死刑判決が誤判であった場合にこれが執行されてしま
絞首刑の場合,落下する際に首が切断されるおそれがあると
指摘されています。
自らも死刑の求刑及び死刑執行への立会いの経験を有する
元最高検検事が,
「受刑者に不必要な肉体的,精神的苦痛を与
える」もので,憲法第 36 条が絶対に禁止する残虐な刑罰に
限りなく近いと裁判で証言しています。
うと取り返しがつきません。
とくに日本では,死刑事件について既に 4 件もの再審無罪判決が確定しています(免田・財田
川・松山・島田事件)
。また,死刑事件ではないものの,近時においても,足利事件・布川事件・
東電OL殺人事件について再審無罪判決が言い渡されています。
死刑事件である名張毒ぶどう酒事件や袴田事件は,えん罪である
疑いが強く,日弁連はその再審を支援しています。また,既に死刑
の執行された飯塚事件は,足利事件と同様に精度の低いDNA型鑑
定などに基づき死刑が言い渡され執行された事件であり,現在,遺
族が再審を請求しています。
このように,誤判による死刑執行の危険性は現実的なものであり,
死刑制度を維持し執行を継続する限り,常にその危険性があります。
2
死刑に代わる
最高刑の検討が必要です
死刑に代わる最高刑として,現行の仮釈放が可能である
無期刑とは別に,仮釈放のない終身刑(受刑者処遇の適正
化及び恩赦制度の抜本的な改善を含む)についても議論が
なされるべきです。
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