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Advanced Render R9
i Advanced Render R9 ii ADVANCED RENDER プログラミングチーム Christian Losch, Philip Losch, Richard Kurz, Tilo Kühn, Thomas Kunert, David O Reilly, Cathleen Poppe. プラグインプログラミング Sven Behne, Wilfried Behne, Michael Breitzke, Kiril Dinev, Per-Anders Edwards, David Farmer, Jamie Halmick, Richard Hintzenstern, Jan Eric Hoffmann, Eduardo Olivares, Nina Ivanova, Markus Jakubietz, Eric Sommerlade, Hendrik Steffen, Jens Uhlig, Michael Welter, Thomas Zeier. プロダクトマネージャ Marco Tillmann. 品質管理 Björn Marl. マニュアル執筆 Paul Babb, Rick Barrett, Oliver Becker, Jens Bosse, Chris Broeske, Chris Debski, Glenn Frey, Michael Giebel, Jason Goldsmith, Jörn Gollob, Sven Hauth, Josiah Hultgren, Arndt von Königsmarck, David Link, Arno Löwecke, Aaron Matthew, Josh Miller, Matthew Mash O Neill, Janine Pauke, Marcus Spranger, Luke Stacy, Perry Stacy, Marco Tillmann, Jeff Walker, Scot Wardlaw. SDK 執筆およびサポート David O Reilly, Mikael Sterner. レイアウト Oliver Becker, Harald Egel, Michael Giebel, David Link, Luke Stacy, Jeff Walker. 翻訳 Oliver Becker, Michael Giebel, Arno Löwecke, Björn Marl, Janine Pauke, Luke Stacy, Marco Tillmann, Scot Wardlaw, 冨士 俊雄 Copyright © 1989-2004 by MAXON Computer GmbH. All rights reserved. English translation Copyright © 2004 by MAXON Computer Ltd. All rights reserved. 本書とこれに対応するソフトウェアの著作権は保護されています。MAXON Computer GmbH の書面による明確な許可なく、 書類の一部もしくは全てを、翻訳、変更、複写すること、および形態や方法が電子的または機械的であるかを問わず、ま た目的を問わず、再配布することは禁じられています。 プログラムや本書の製作については万全を期していますが、MAXON Computer はその中に含まれるエラーや欠落に関して 一切の責任を負いません。プログラムの使用によって発生した損害や、本書に記載されている情報に起因して生じた損害に 関しても同様です。 このマニュアル、およびこれに対応するソフトウエアは、次に述べる使用許諾契約の元に供給され、この使用許諾契約の 定めにしたがってコンピュータにインストールされ、使用されるものとします。またこのマニュアルに記載されている内容は、 このソフトウエアを使うための単なる情報であり、予告なく変更される場合があり、これによって MAXON Computer が何 かを約束するものではありません。MAXON Computer は、このマニュアルに含まれるいかなる間違いや不正確な記述につ いても、それを保証せず、責任を持ちません。 MAXON Computer、MAXON の ロ ゴ、CINEMA 4D、HyperNURBS、C.O.F.F.E.E. は、MAXON Computer GmbH お よ び MAXON Computer Inc. の 登 録商標です。BodyPaint 3D、CINEMA 4D、C.O.F.F.E.E.、HyperNURBS および RayBrush は、 MAXON Computer GmbH ま た は MAXON Computer Inc. の 登 録 商 標 で す。Acrobat、Acrobat の ロ ゴ、PostScript、 Acrobat Reader、Photoshop、Illustrator は、米 国とその 他の国々で有 効なアドビ 社の 登 録商標です。Apple、Apple Script、Apple Talk、Color Sync、MacOS、Quick Time、Quick Time のロゴは、米国とその他の国々で有効な Apple コ ンピュータの登録商標です。Microsoft、Windows、WindowsNT は、米国とその他の国々で有効なマイクロソフト社の登 録商標です。UNIX は X/Open Company Ltd だけにライセンスされている登録商標です。また、このマニュアルに表示され ているその他すべての商標や製品名も、それを所有する会社の商標または登録商標であることをここに明記します。 iii マクソンコンピュータ エンドユーザ 使用許諾契約書 本製品を購入された皆様へ 本製品 Advanced Render(以下ソフトウエアと略します)をインストールすると、お客様(以下ユーザと略します)とドイツ・ フレードリヒスドルフ所在の法人 MAXON Computer GmbH(以下ライセンサと略します)との間に以下の契約が成立しま す。 このソフトウエアを使用するためにコンピュータにインストールした場合、ユーザはこの使用許諾契約書に記載されている全 ての条項に同意したことになります。もしこの使用許諾契約書に同意できない場合、ユーザはこのソフトウエアをインストー ルできません。 もし、この使用許諾契約書に同意しない場合は、このソフトウエアとマニュアル一式を、MAXON Computer 、またはこの 製品を購入された販売店にご返送ください。 1. 全般 この使用許諾契約書にしたがって、ライセンサは、このソフトウェアおよびマニュアルを使用するための非独占的なライセン スを、ユーザに付与します。ソフトウェア自身、およびその複製、および本契約にしたがって認められているその他の全て の複製は、ライセンサの資産であり続けます。 2. ソフトウェアの使用 (1)ユーザは、ソフトウェアを使うために必要とされる範囲内で、ソフトウェアをコピーすることが認められています。必 要とされる範囲とは、プログラムをオリジナルの CD-ROM から、コンピュータに搭載されている大容量ストレージデバイス (ハードディスクなど)にインストールすること、およびプログラムを RAM に読み込むことです。 (2)また、ユーザは CD-ROM のバックアップコピーを作成できます。ただし、作成、保管が認められるバックアップコピー は1部だけです。そしてバックアップコピーには、これがライセンスされたソフトウェアのバックアップコピーであることを明 示しておく必要があります。 (3)これ以上のコピーは一切認められません。この中には、プログラムコードをプリンタで印刷することや、あらゆる形 態でのマニュアルのコピーも含まれます。 3. 複数台のマシン、およびネットワーク上での使用 (1)ユーザはこのソフトウエアを任意のハードウェアにインストールして使用できます。ただしハードウェアを変更する場合、 それまでに使用していたハードウェアの大容量ストレージデバイスからソフトウェアを削除する義務があります。複数のハー ドウェアに同時にインストールすること、およびそれを使用することは認められません。 (2)同時に複数の人間がこのソフトウェアを使用する可能性が生じる場合、ネットワーク経由、または一般的なクライア ントサーバシステム上でこのソフトウェアを使用することはできません。ネットワーク経由、またはクライアントサーバシステ ム上でこのソフトウェアを使用する場合、一度に複数の人間が使用できないようなアクセス権を設定するか、あるいは特別 なネットワークライセンス料金(金額は同時に使用可能な人数によって決まります)をライセンサに支払う必要があります。 (3)このネットワークライセンス料金は、同時使用を希望するユーザの人数を書面にて提示後、直ちにライセンサからユー ザに通知されます。ライセンサの連絡先住所は、マニュアルおよび本契約書末尾に記載されています。ネットワーク上での 使用は、このネットワークライセンス料金を支払った後に開始できます。 iv 4. 譲渡 (1)ソフトウェアおよびマニュアルに関して、貸与、賃貸、サブライセンス、借用を禁じます。ただし、ユーザがこの契約書、 ソフトウエア、その全てのコピー、アップデートの権利、アップデート前の古いバージョンのパッケージ、マニュアルを含む 全てを他の個人や法人に引き渡し、同時にユーザのコンピュータにインストールされた全てのコピーを破棄し、また引き継 ぐ人間がこの使用許諾契約に同意し、その意志をライセンサに書面で通知するならば、このソフトウエアを使用するための 全ての権利を新しいユーザに譲渡できます。 (2)ユーザには使用許諾契約書の条項を厳重に保管する義務があります。ソフトウェアの譲渡に先立って、ユーザは使用 許諾契約書の条項を新しいユーザに知らせる必要があります。ソフトウェアを譲渡する時点で、新しいユーザが手元にこの 使用許諾契約書を所持していなかった場合、新しいユーザはライセンサに契約書の再発行を要請する義務があり、その経 費は新しいユーザが負担しなければなりません。 (3)このライセンスが新しいユーザに譲渡された後、古いユーザがこのソフトウエアを使うことはできません。 5. アップデート もしユーザの使用しているソフトウエアが、古いバージョンをアップデートしたものである場合、アップデートしたソフトウエ アを使うためには、古いバージョンに関してもライセンスを所有し続けなければなりません。この古いバージョンは、新し いバージョンに移行する際の補助として、またアップデータをインストールする目的にのみ使うことが可能です。そしてアッ プデータを受け取ってから 90 日後に、古いバージョンを使用するためのライセンスは失効し、それ以降アップデータをイン ストールする目的以外で古いバージョンを使用することはできません。 6. ソフトウェアの再コンパイルと変更 (1)ユーザが、供給されたプログラムのコードを再コンパイルしたり、ソフトウェアを改ざんしたり、ソフトウェア製作の さまざまな段階におけるリバースエンジニアリングを行うことは、その種類に関係なく一切認められていません。 (2)コピーに対するセキュリティを解除したり、同様の保護システムを削除することが許可されるのは、そのセキュリティ がソフトウェアの動作不良の原因となっていたり、正常な動作を妨害している場合に限ります。ただしこの場合、ユーザに はそのセキュリティーがプログラムの動作不良の原因となっている、という事実を証明する義務があります。 (3)著作権告知情報、シリアル番号、その他のソフトウェア識別情報を削除したり変更することは禁じられています。ソ フトウェアの所有権はライセンサにあり、その構造、構成、コードはライセンサにとって価値のある企業秘密です。またソ フトウェアは、米国著作権法および国際条約によって保護されています。前述したような事態を除き、この契約はユーザに 対して、このソフトウエアに関するいかなる知的財産権も付与しません。 7. 保証の制限 (1)両者は、現時点において、どのような環境でも問題なく動作するようソフトウェアを開発、製造することは不可能で あることに同意するものとします。ライセンサは、このソフトウェアがマニュアルの記述に基づいて実用的に動作することを 保証します。しかしライセンサは、このソフトウェアとマニュアルが、ある特定の条件、もしくは特定の使用目的に適合する ことや、ユーザが所有する他のソフトウェアを起動した状態で正常に動作することを保証しません。ユーザは、製品を受け 取った後直ちにソフトウェアとマニュアルを確認する義務があり、明確な欠陥がある場合は、受け取った後 14 日以内にその 旨を書面にてライセンサに報告する必要があります。潜在的な欠陥を発見した場合も、直ちに上記と同様の方法で連絡す る必要があります。それ以外の場合、ソフトウェアとマニュアルは欠陥がないものとみなします。欠陥の内容、特に発生し た現象はできる限り詳細に記述する必要があります。保証期間は、このソフトウェアがユーザの手元に配達された日(納品 書に記載された日付を配達日とします)から 6 か月間です。ライセンサは、報告された欠陥を無償で修理するか、または 欠陥のない製品と交換するか自由に選択できます。 v (2)ライセンサおよび販売代理店は、このソフトウェアまたはマニュアルの使用によってユーザが得る成果とその品質を 一切保証せず、また保証できません。ライセンサまたはその販売代理店による保証不履行に対する唯一の救済方法は、前 述の限定保証を除き、前述の対処に限定されます。ライセンサおよびその販売代理店は、明示、暗示に関係なく、第三 者の権利の不可侵、商品性、特定目的に対する適合性を一切保証しません。いかなる場合においても、派生的、偶発的、 特殊な損害に対して、収益または貯蓄資産の喪失も含め、かかる損害の可能性または第三者からの請求がライセンサの代 表者に予告されていた場合でも、ライセンサおよびその販売代理店は一切責任を持ちません。 (3)州または司法管轄区によっては、偶発的、派生的、特殊な損害を除外したり、暗黙の保証を除外したり、暗黙の保 証が継続する期間を限定することを認めない場合もあるため、上記の限定事項がユーザに適用されない可能性があります。 このような場合には、特殊な限定保証書が別紙として添付され、この契約書の一部となります。保証範囲が拡張された場 合でも、暗黙の保証の有効期間は 6 か月間に限定されます。この保証は、ユーザに該当する法的権利を与えます。ユーザ が居住する州または司法管轄区によっては、さらに他の権利が発生する可能性もあります。この場合、ユーザの使用許諾 契約書に特殊な保証条項は添付されませんので、保証内容の詳細についてはライセンサまでお問い合わせください。 8. 運送中の損傷 ライセンサは、ライセンサが出荷を手配した全ての輸送について保険を付けています。したがって、もしユーザが本製品に 関して輸送中に生じたと思われる損傷を発見した場合、ユーザは書面にて輸送業者に速やかに報告し、その報告書のコピー をライセンサに提出しなければなりません。 9. 秘密 ユーザには、プログラムやマニュアル、特にシリアル番号が第三者に渡ることのないように厳重に管理する義務があります。 ユーザはプログラムまたはマニュアルを複製または貸与することはできません。これらの義務は、ユーザが雇用している従 業員、およびユーザがプログラムを操作するために契約している他の人間にも同等に適用されます。ユーザはこれらの義務 を従業員や契約者に通知しなければなりません。これらの義務が遂行されない状況下で生じた損害の責任は、いかなる場 合においてもユーザが負うものとします。 10. 情報 ソフトウェアを新しいユーザに譲渡した場合、ユーザは、新しいユーザの氏名と住所をライセンサに書面で報告する義務が あります。ライセンサの住所はマニュアルやこの契約書の末尾に記載されています。 11. データの保護 ユーザを登録したり、プログラムが適正に使用されるようにコントロールするために、ライセンサはドイツのデータ保護法 (Bundesdatenschutzgesetz) に基づいてユーザの個人情報を保管します。このデータは上記の目的にのみ使用され、第三 者に利用されることはありません。ライセンサはユーザから要求があれば、いつでもそのユーザに関する個人情報を知らせ るものとします。 12. その他 (1)この使用許諾契約書には、両者の権利と義務が全て記述されています。他の契約書は存在しません。この契約書の 内容の変更または修正は、この契約に関する書面にて行われ、双方の署名が必要となるものとします。これは、書面形態 の廃止に関する同意についても適用されます。 (2)この使用許諾契約書の準拠法はドイツ国法です。管轄裁判所はドイツのフランクフルト市の所管裁判所になります。 この契約は、国際商品販 売に関する国連協定(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)には準拠せず、協定の適用外であることを明記します。 (3)この使用許諾契約のいずれかの部分が無効または行使不能であるとみなされた場合、この契約の他の部分の有効性 には影響せず、その条項に基づいて効果と効力を有し続けるものとします。 vi 13. 失効 この使用許諾契約は、ユーザが契約書の条項に違反した場合、たとえ有効期間が残っていても自動的に失効します。契約 が失効した場合、前述の理由によりユーザはプログラムと全てのマニュアルをライセンサに返却しなければなりません。さ らにライセンサから要求があった場合、ユーザはデータ記憶装置またはコンピュータ本体上にプログラムのコピーを一切保 持していない旨を示す宣誓書を提出する必要があります。 14. 問い合わせと通知 この使用許諾契約書に関する質問、またはその他の問い合わせ、および契約書に基づく MAXON Computer 社への通知は、 下記住所まで書面にてお願いします。 MAXON Computer GmbH Max-Planck-Str. 20 D-61381 Friedrichsdorf Germany 北米・南米地域: MAXON Computer Inc. 2640 Lavery Court Suite A Newbury Park, CA 91320 USA 英国 : MAXON Computer Ltd. The Old School, Greenfield Bedford, MK45 5DE UK 日本 : 〒 141-0021 東京都品川区上大崎 4-5-37 山京目黒ビル 409 号 マクソンコンピュータ東京オフィス ご連絡いただければ、お客様に最寄りの販売代理店をご案内します。 vii 目次 はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 ユーザ登録 . . . . . . . . 1 インストール . . . . . . . 1 Web から情報を得る . . 1 テクニカルサポート . . . 1 1 章 ラジオシティ. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 レンダリング設定のラジオシティパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 マテリアル編集や属性マネージャのラジオシティパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10 ラジオシティの計算を高速化する. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 ラジオシティパラメータの設定方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12 何が本当のラジオシティなのか . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 HDRI . . . . . . . . . . . 15 HDRI のタイプ . . . 16 HDRI の使い方 . . . 17 HDRCross を変換、HDR Probe を変換 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 2 章 コースティクス. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21 レンダリング設定のコースティクスパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21 マテリアル編集や属性マネージャのコースティクスパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24 ライト設定のコースティクスパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25 何が本当のコースティクスなのか . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27 トラブルシューティング 29 3 章 被写界深度フィルタ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 33 属性マネージャの設定. 33 基本属性 . . . . . . . 33 コンテクストメニュー . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 37 レンズの詳細 . . . . . . 38 色味 . . . . . . . . . . . . 38 グラデーションを使う. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38 被写界深度の仕様上の制限 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 39 4 章 ハイライトフィルタ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 43 レンダリング設定. . . . 44 ハイライト . . . . . . 44 viii グロー編集 . . . . . . . 45 グローのパラメータ 45 リングのパラメータ 46 ビームのパラメータ 46 ハイライトの仕様上の制限. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 47 5 章 グローフィルタ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 51 グロー . . . . . . . . . . 51 カラーによる変化 . . . 56 グラデーションを使う. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 57 距離による変化. . . . . 57 グラデーションを使う. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 58 面の法線による変化 . . 58 グラデーションを使う. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 59 ノイズ. . . . . . . . . . . 59 グローの仕様上の制限 63 6 章 ベクターモーションブラー. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 67 7 章 内部拡散反射(サブサーフェイススキャッタリング) . . . . . . . . . . . 73 マテリアルマネージャと属性マネージャの設定 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 74 8 章 サブポリゴン変位 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 79 マテリアル編集の設定 80 その他 . . . . . . . . 83 9 章 チュートリアル. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 87 索引 . 97 はじめに • 1 はじめに Advanced Render をお買い上げくださいまして、ありがと うございます。Advanced Render は、CINEMA 4D のレン ダリング機能を大きく拡張するモジュールです。ラジオシ ティ機能を使えば、簡単な設定で存在感のある画像を生成 できます。コースティクスを使えば、レンズによって集光さ れた光のパターンを表現できます。被写界深度フィルタを 使えば、空間の奥行きを自然に表現できます。ハイライト フィルタやグローフィルタを使えば、画像に適切なレンズフ レアやグローを追加し、オブジェクトの明るさを強烈に表 現できます。 このマニュアルは、リファレンスとチュートリアルによって 構 成 さ れて いま す。Advanced Render の 使 い方 を 効 率 よく理解するためには、まず CINEMA 4D フォルダの中の 「Features」フォルダに入っているサンプルファイルを開き、 いろいろとパラメータを変更してみてください。次に、チュー トリアルを読んで、シーンを作ってみてください。そして、 もしわからないことがあったら、リファレンスマニュアルを 読むといいでしょう。 Advanced Render には多くの機能があり、これを十分に使 いこなすためには、それなりに時間をかけて練習する必要 があります。しかし、これによってフォトリアルな静止画や ムービーを作れるようになるわけですから、価値のある練 習だと言えるでしょう。 ユーザ登録 購入した Advanced Render を MAXON に登録するのは非 常に重要なことです。ユーザ登録によって無償のテクニカ ルサポートや、アップデデートサービスを受けることができ ます。登録する内容や、登録の方法については、パッケー ジに同封されているユーザ登録用紙をご覧ください。 インストール Advanced Render をコンピュータにインストールするには、 インストーラを起動してください。そして画面に表示される 指示にしたがって、操作を続けてください。 Web から情報を得る インターネットには、CINEMA 4D を活用するための情報が たくさんあります。それは、オンラインチュートリアルや、 情報を交換したり議論するための掲示板や、テクスチャや オブジェクトの素材や、ギャラリーや、書籍の情報などです。 そして MAXON のホームページには、これらの情報への選 りすぐったリンクが用意されています。ぜひ一度ご覧になっ てください。 www.maxon.net テクニカルサポート もし Advanced Render を使っていて、自分一人では解決で きないような技術的な問題が生じた場合には、MAXON の 代理店に質問してください。その問題を解決するために喜 んでお手伝いします。もちろん直接 MAXON に質問しても 構いません。 もちろん、無償のテクニカルサポートを受けるには、あな たが Advanced Render の登録ユーザでなければなりません (ユーザ登録の項も参照してください)。地域によっては、 独自のテクニカルサポートを行っている場合もあります。詳 しくは最寄りの MAXON 代理店にお問い合わせください。 日本においては、マクソンコンピュータ東京オフィスが、 Advanced Render の登録ユーザを対象として、無償のテク ニカルサポートを行っています。問題点をわかりやすく整理 し、必要であればサンプルファイルを添付し、以下のアド レス宛に電子メールで質問をお送りください。 [email protected] ただし、テクニカルサポートは電子メールに限らせていただ きます。電話での受付はいたしておりません。また登録ユー ザであることを知らせるために、Advanced Render のシリ アル番号の、最初の 11 桁をお書き添えください。 1 章 ラジオシティ ラジオシティ • 5 1 章 ラジオシティ ラジオシティを使うと、簡単に画像のリアリティーを向上で きます。ラジオシティは、面の間で拡散反射する無数の光 線をシミュレートし、写真のようにリアルで自然な画像を生 成するのです。ラジオシティの一般的な解説や、専門的な 用語については、 この章の後にある 「何が本当のラジオシティ なのか」を参照してください。 製作 Andreas Calmbach ラジオシティは 2 つのダイアログを使って設定します。1 つ はレンダリング設定の中のラジオシティページで、強度など ラジオシティの全体的な設定を行います。もう 1 つはマテリ アル設定の中の照明ページで、個々のマテリアルが持つラ ジオシティの性質を細かく設定します。また、マテリアルマ ネージャでマテリアルを選択し、属性マネージャを使ってこ れらのパラメータを変更することもできます。→ ➔ ➔ オブジェクトが 動くアニメーションを 作 成 する 場 合 は、レンダリング設定のラジオシティページでストカス ティックティックモードを選択してください。そして、も し画像がざらざらする場合は、サンプル数の値を大きく してみてください。しかし、この値を大きくするとレン ダリング時間が大きく増加します。ざらざらを除くため に必要な最小の値を使うように心がけてください。 カメラだけが動くアニメーションの場合は、ストカス ティックモードを使っても使わなくてもいい結果を得ら れます。通常モードで画面のちらつきが気になる場合 は、計算精度の値を大きくしてみてください。計算精度 が低すぎると、ちらつきが目立つようになります。 レンダリング設定の ラジオシティパラメータ レンダリング設定のラジオシティページを使って、ラジオシ ティの計算に必要な、強度や計算精度といった基本的なパ ラメータを指定します。 ラジオシティを使う、ラジオシティのモード このオプションを選択すると、ラジオシティが働くようにな ります。 デフォルトでは選択されていません。 また、 右のドロッ プダウンリストを使ってラジオシティのモードを切り替えら れます。 標準モード 標準的なラジオシティモードです。このモードを選択すると、 各フレームごとにラジオシティが計算されます。また、最初 にシーンの間接照明を求めるためのプレパスレンダリングが 行われ、その結果を補間して最終レンダリングが実行され ます。このプレパスの計算結果を保存し、再利用すること もできます。計算を省略しないので、結果が正確で、どん なシーンにでも使えますが、その分アニメーションの計算が 遅く、ちらつきが発生します。 ストカスティックモード 「アーノルド」という名前で知られるレンダラーと同じ原理に したがってラジオシティーを計算します。 6•1章 しながら、オブジェクトアニメーションモードを使うと、こ のちらつきを低減できます。オブジェクトアニメーションモー ドはカメラアニメーションモードに似ていて、次のように働 きますが、レンダリング時間は通常モードより長くなります。 - 最初のフレームは「通常」と同様に計算されます。 Arnold スタイルでレンダリングしたい場合は、ストカスティックモー ドを選択してください。製作 Bernd Seeger ストカスティックモードを選択した場合、プレパスレンダリ ングなしに 1 回で画像をレンダリングします。したがって各 ピクセルごとに直接間接照明が計算され、ざらついた砂目 状の画像ができます。プレパスがないので、計算結果を保 存することも再利用することもできません。また、プレパス に関するパラメータは設定できません。パラメータが少いた め設定が簡単で、独特の質感を持った絵を作成できますが、 計算が遅く、アニメーションでもざらつきが生じます。 カメラアニメーション カメラだけが動くアニメーションを制作する場合、照明が 変化しないので、各フレームごとにラジオシティを計算し直 す必要はありません。そのような場合、このモードを選択 してください。カメラアニメーションモードでは、最初のプ レパスレンダリングの結果が全てのフレームで再利用される ため、レンダリング時間を数分の 1 に短縮できます。カメ ラが移動するにつれて新しいオブジェクトが見えてきた場合 は、その部分にだけプレパスが追加計算されます。この時 新しく計算されたサンプルポイントの色は赤、再利用され たサンプルポイントの色は緑になります。カメラアニメーショ ンモードはプレパスを再利用するため、レンダリングが速い だけでなく、アニメーションのちらつきもほとんど無くなり ます。 ➔ ただし、ライトやオブジェクトが変化するシーンでこの モードを使うと、間接照明の効果だけが変化せず、お かしな絵になります。 オブジェクトアニメーション 従来の CINEMA 4D では、オブジェクトが動くシーンでちら つきのないアニメーションを制作するのが困難でした。しか - 次のフレーム以降では、プレパスレンダリングの前に特殊な ラジオシティ(オブジェクト GI)が計算されます。この作業 では、前のフレームで作成されたサンプルポイントを基準と し、オブジェクト上の同じ位置に新しいサンプルポイントを 配置し、間接照明を再度計算します。オブジェクトが移動す ればサンプルポイントも移動しますが、オブジェクトに対す る位置は変わらず、ちらつきを低減できるわけです。ただし、 アニメーションの過程でポリゴン数が変化すると、サンプル ポイントの再配置がうまくできません。 - 次に、新しく見えてきたオブジェクトや明るさの変化が急な 部分に新しいサンプルポイントを追加し、そのポイントに対 してだけ通常モードでプレパスレンダリングします。 - オブジェクト GI とプレパスレンダリングの結果を合わせて補 間し、最終レンダリングします。 ➔ カメラアニメーションモードやオブジェクトアニメーショ ンモードは、前のフレームで計算されたプレパスを再利 用することを前提にしています。したがって、フレーム をばらばらに計算する NET では使わないでください。 拡散光の強度 この値は、ラジオシティ効果の強度をコントロールします。 この値が 0% である場合ラジオシティは働きません。値を 100% 以上にすることも可能ですが、大きすぎると画面が白 くとんでしまいます。50 ∼ 100% ぐらいが適切な値です。 左から、拡散光の強度が弱、中、強の場合 計算精度 この値は、ラジオシティ計算の全体的な精度を指定します。 まず計算精度を下げた状態で(20% 以下)、シーンに合わせ て他のパラメータのバランスを調整し、最後にレンダリング 時間と画質のバランスを見極めて、適切な値に上げてくださ い (50 ∼ 80%)。この値は 0% から100% まで指定できます。 ラジオシティ • 7 またこの値は、レンダリングタグを使ってオブジェクト単位 で変更することもできます。 プレパスサイズ ラジオシティ機能を使う場合、最初にプレパス画像がレン ダリングされ、サンプルポイントを表す白い点がたくさん表 示されます。このオプションを使うと、プレパス画像の大き さをレンダリング設定で指定した画像解像度に対する比で 指定できます。プレパスサイズを小さくすると、レンダリン グ速度が多少速くなりますが、画質は大きく低下します。で すから最終レンダリングでは 1/1 のプレパスサイズを使って ください。デフォルトの大きさは 1/1 です。 拡散反射回数 3% の精度で計算した粗い画像 この値は、カメラから放射された光線がオブジェクトの表 面で反射したり、透明な物体を透過可能な回数を指定しま す。この値は 1 から 100 まで指定できますが、ほとんどの シーンではデフォルトの 3 で十分な画質が得られるはずで す。この値を大きくするとレンダリング時間が長くなります。 特に閉じたシーン(周囲を完全に壁に囲まれたシーン)では、 拡散反射した光線が何回もオブジェクトにぶつかるため、 この効果が顕著になります。逆に開いたシーンでは、1 回か 2 回の拡散反射でほとんどの光線が無限遠に飛び去るため、 大きな問題にはなりません。 このような理由から、 閉じたシー ンでは拡散反射の値を 3 以上にしないでください。 70% の精度で計算した精細な画像 サンプル数 ➔ カメラから放射された光線がオブジェクトにぶつかると、そ こにサンプルポイントが生成されます。そして、そこで新し い光線(拡散光)が生成され、シーンに向かってドーム状に 放射されます。サンプル数の値は、この新しく生成される 光線の数を指定します。デフォルトの値は 300 で、ほとん どのシーンではこれで十分なはずです。この値を 50 以下に すると、ムラが目立つようになります。 計 算精度の値は、サンプル数や最低解像度、最高解像 度の値をまとめて変更します。また、ラジオシティに含 まれる統計計算の精度や、補間の精度にも影響します。 ストカスティックモードの場合、計算精度の値は通常と異な る働きをします。ストカスティックモードではプレパス計算 をしないので、プレパスに対する計算精度は指定できませ ん。しかし、サンプル数の値を必要に応じて変えることで、 より良い画質をより短時間で得ることができます。より多く のサンプル数を必要とするのは、たとえばきつく曲がった 曲面やオブジェクトが接する部分で、それほどサンプル数を 必要としないのは、広い空間に面した平らな部分です。こ こで、計算精度の値が 0 の場合、全てのピクセルは指定し たサンプル数で等しく計算されます。これに対して、計算精 度の値が 100% の場合、必要な部分には指定した値の約 2 倍のサンプル数が割り当てられ、必要でない部分には半分 のサンプル数が割り当てられるようになります。実際は、特 に問題がない限り計算精度の値は 70% にしておいてくださ い。 説明のためにサンプル数を 3 に設定した例。ムラやざらつきのない 画像をレンダリングするためには、もっと多くの光線(デフォルトは 300)を計算する必要があります。 8•1章 もし製作中のシーンに、机の下や回り込んだ壁の陰のよう な直接光が当たらない部分が多くある場合は、サンプル数 の値を大きくしてください。一般的に、光線がオブジェクト にぶつかると、生成された拡散光は全ての方向に均一に放 射されます。そして、放射された拡散光の密度は距離にし たがってどんどん粗くなります。したがって、もしある部分 を照明するために 2 回の拡散反射が必要だとすると、実際 にその部分に到達する光線の数は非常に少なくなってしまう のです。サンプル数の値を大きくすると、このような陰の部 分に到達する光線の数を増やすことができます。また、シー ンの中のごく狭い部分が輝いている場合や、明るい部分と 暗い部分の差が激しい場合にも、この値を大きくしてみてく ださい(600 ∼ 3000)。 最低解像度/最高解像度 この値は、サンプルポイントの密度を指定します。そして、 解像度を最低値と最高値に分けて指定することにより、サ ンプルポイントの密度を場所に応じて変化させることができ ます。この値が適切でないと、無駄なサンプルポイントや サンプルポイント間の無理な補間計算が生じます。その結 果レンダリング時間が増加し、画質も低下するので十分に 注意してください。Advanced Render は、自動的にサンプ ルポイントの密度を変えることができます。最低解像度の 値は重要でない部分の密度を、最高解像度は最も重要な部 分の密度を決定します(図 1 参照)。 図2 ここで「重要な部分」というのは、例えば面が向きあってい る部分や、明るさの変化が激しい部分などです(図 2 参照)。 図で、サンプルポイントの密度が球と床の接する部分で特 に高くなっていることに注目してください。細かくて正確な 陰影を表現するためには、解像度の大きさを十分に大きく する必要があります。 (図 3、図 4 参照)。しかし、解像度 を大きくするとレンダリング時間も長くなるので、不必要に 大きくしないように注意してください。 図 3: 低すぎる最高解像度を指定した例 図1 ラジオシティ • 9 - 最低解像度の値は、< 最高解像度 > ÷ <2 ∼ 4> に指定する。 ➔ ➔ も しレンダリングした画像を見て、ラジオシティによる 陰影がとんだりボケている場合は、サンプル数を小さく し、解像度と計算精度の値を大きくしてみてください。 も しラジオシティ計算の誤差によって明度ムラが生じて いる場合は、解像度を下げ、計算精度とサンプル数の 値を大きくしてみてください。 再計算 図 4: 十分な最高解像度を指定した例 最低解像度と最高解像度の最適値はシーンの構成によって 大きく変ります。そしてこの最適値を見つけられるかどうか が、高品質な画像を短時間でレンダリングするための鍵に なります。これらの値を見つけるための最も簡単な方法は、 シーン全体の大きさを調べることです(ただし、カメラ、ラ イト、床、空オブジェクトは除きます)。そしてそれを、ラ ジオシティで陰影を表現したい最も小さい形状(突起や段 差など)の大きさで割ります。 この指定によって、以前のレンダリングで作成、保存したラ ジオシティの計算結果を再利用し、レンダリングを高速化 できます。計算結果を再利用すれば、新規にラジオシティ の計算を行わなくてもすむからです。ただし、大きなオブジェ クトやライトを変更した結果、シーンの照明条件が大きく変 化した場合には、改めてラジオシティの計算を行う必要が あります。どのような場合にラジオシティを再計算させるか は、ポップアップメニューから指定できます。後述の「計算 結果を保存」オプションも参照してください。 例えば、あるシーンの大きさが 2,500 だとして、カメラが身 長 70 のキャラクタをズームアップしていると仮定しましょ う。そしてこのキャラクタを正確に表現するためには、0.5 ごとにサンプルポイントを置いて拡散光を計算する必要が あるとします。この場合、最低解像度と最高解像度の値は 5,000 になります(2,500/0.5)。これで正確なラジオシティ 効果を計算できるはずですが、レンダリング時間も非常に 長くなってしまいます。何とかして計算を省略しなければな りません。ここで、遠くの壁や床などを見ると、そこにも キャラクタと同じ密度でサンプルポイントが置かれているこ とに気がつくはずです。変化の少ない壁や床にこれほどたく さんのサンプルポイントは必要ありません。そこで、最低解 像度の値を、最高解像度の 1/2 から 1/4 の値に変更してみ てください。これによって、画質を保ったまま、レンダリン グ時間を数分の 1 に短縮できるはずです。 最初の 1 回だけ ただし、最小解像度の値を小さくし過ぎると、サンプルポイ ント間の補間計算が難しくなるため、かえってレンダリング 時間が増加し、しかも画質まで低下するので気をつけて下 さい。 しない まとめ : - 最高解像度の値は、< シーンの大きさ > ÷ < 最も小さい形 状の大きさ > に指定する。 このオプションを選択すると、レンダリング時に最初の 1 回 だけラジオシティを計算します。そしてその後は全てこの計 算結果が再利用されます。Advanced Render は、毎回レン ダリング前にシーンフォルダの中の 「Illum」フォルダをチェッ クし、その中に必要な計算結果がない場合に限り、ラジオ シティを計算し、計算結果をこの中に保存します。このオプ ションがデフォルトになっています。 常にする このオプションを選択すると、レンダリング時に毎回ラジオ シティを計算します。レンダリング時間は短縮できませんが、 常に正しい画像を得られます。 このオプションを選択すると、レンダリング時にラジオシ ティを計算しません。 そのかわり、Advanced Render は 「Illum」フォルダの中に入っている計算結果を使い、短時間 でレンダリングを終了します。もしこのフォルダの中に適切 な名前の計算結果が見つからなければ、警告ダイアログが 表示されます。この場合は、再計算の設定を最初の 1 回だ けか、常にするに変更してください。 10 • 1 章 計算結果を保存 このオプションを選択しておくと、レンダリング終了後にラ ジオシティの計算結果がシーンフォルダの「Illum」フォルダ の中に保存されます。フォルダが存在しない場合には自動 的に作成されます。この計算結果は、再計算の指定によっ て次のレンダリングに再利用可能で、これによってレンダリ ングを高速化できます。計算結果だけを作成したい場合に は、プレパスサイズをなしに指定してください。 ➔ この機能を働かせると、画面のあるピクセルから放射され た光線がオブジェクトにぶつかった際に、常に同じ方向に 分岐するようになります。この結果、ノイズが変動しなくな るわけです。 マテリアル編集や属性マネージャの ラジオシティパラメータ シーンの照明などを大きく変更した場合は、正確なラ ジオシティ効果を表現するために、ラジオシティを再計 算する必要があります。再計算の指定を常にするに変 更してください。 ノイズを画面に固定 ストカスティックモードでは、各ピクセル単位でシーンの明 るさを計算するため、サンプル数が少ないと 下図のように ざらついた砂目状の画像になります。このざらつきは 「ノイズ」 とも呼ばれ、特にアニメーションをレンダリングする時に致 命的な問題になっていました。 マテリアル編集の照明ページにあるラジオシティパネルを使 うと、ラジオシティの効果を各マテリアル単位で微調整でき ます。 ラジオシティ ここで、 「ノイズを画面に固定」機能を働かせると、ノイズ がフレーム間で変化しないようになります。このオプション を外した場合、ノイズは従来通りフレーム間でランダムに変 動します。ここで重要なのは、 「画面に生じるノイズの総量 自体はどちらのモードでも変らない」という点です。したがっ て、静止画をレンダリングした場合、二つのモードに違いは 生じません。またレンダリング時間も変わりません。しかし、 アニメーションの場合は、ノイズを画面に固定することで、 「人間の目が感じるノイズ」を大幅に減少できます。これは、 人間の目が時間変動するノイズに対して特に敏感だからで す。 拡散光を生成 このマテリアル が 拡 散 光を反 射、 発 光、 透 過する 場 合 は、このオプションを選択します。そして、拡散光を反射 する強度をフィールドに入力してください。ここには、0 か ら 10,000% までの値を入力できます。デフォルトの値は 100% です。 拡散光を受ける このマテリアルが拡散光による照明を受ける場合には、こ のオプションを選択します。そして、拡散光を受ける強度を フィールドに入力してください。 ラジオシティ • 11 サチュレーション のマテリアルに対して、拡散光を受けるオプションを停止す ることもできます。この他、鏡のようなオブジェクトや黒い オブジェクトも、透明なオブジェクトと同様にラジオシティ の効果を省略できます。 また、レンダリングタグを使うとラジオシティの計算精度を オブジェクト単位で指定できます。省略しないまでも、画面 の隅にある重要性の低いオブジェクトの計算精度を落とす ことで、計算を高速化できるはずです。 この他、オブジェクトの構成をきれいに保つというのも重要 なポイントです。重なったオブジェクトやポリゴンにはサン プルポイントが集中し、無意味に計算時間が増加します。 画像の中心だけサチュレーションの値を大きくしています。 この値を使って、このマテリアルが受ける拡散光のサチュ レーション(彩度)をコントロールします。ただしこの値は、 マテリアルが生成する拡散光の彩度には全く影響しないこ とに注意してください。 ラジオシティの計算を高速化する ラジオシティの計算を高速化する最も簡単な方法は、計算 精度やサンプル数、解像度の値を小さくすることです。した がって、画質を損なわずにどのパラメータをどこまで小さく できるのか、実験をくり返して調べる必要があります。その 他の、拡散反射回数やプレパスサイズなどのパラメータは、 レンダリング時間にそれ程影響しません。 まず、プレパスサイズは 1/1 のままにしておくことをお薦め します。レンダリング時間が短くならない割に、画質が大き く低下するからです。次に、計算精度の値を 80% 以上にす ると、レンダリング時間が無意味に長くなります。計算精度 を 50% 程度にしても、そこそこの画質が得られるように他 のパラメータを調整してください。 また、レンダリングタグを使ってレンダリング時間を短縮す る方法もあります。例えば、窓のような透明なオブジェクト に対してもラジオシティの計算は行われますが、透明なので 周囲に与える影響は非常に微小です。したがって、窓オブジェ クトにレンダリングタグを追加し、ラジオシティから見える オプションを停止しても、結果はほとんど変わらないでしょ う。このような方法によってレンダリング時間を短縮するの は、有効で賢い戦略だといえます。同じ理由から、ガラス 12 • 1 章 ラジオシティパラメータの設定方法 ラジオシティの計算は非常に複雑であるため、各パラメー タの最適値を求めるための簡単確実な方法はありません。 たとえば、解像度の値として 10 が適切な場合もあれば、 1000 が適切な場合もあるのです。そして困ったことに、ラ ジオシティの場合、設定のよしあしによって画質やレンダリ ング時間が何十倍にも変化します。ここでは、各パラメー タの違いによる画像の変化を並べて表示します。しかしなが ら、これは本当に簡単なサンプルにすぎず、あなたが作成し ているシーンにこのまま使えるわけではありません。あなた のシーンに対する最適値は、あなた自身がテストを繰り返し て、あなたの目で見て決定してください。 ラジオシティ • 13 このサンプルシーンには、色つきのライトと、マテリアルな しの空オブジェクトが置かれています。上の 3 段の画像は斜 めに二分割されていますが、下半分はストカスティックモー ドでレンダリングした画像です。そして、そのパラメータは カッコの中に表示されています。また、左端には使用したラ ジオシティのパラメータが表示されています。そして、一番 上のパラメータの値を 3 種類に変化させ、対応する画像を 横に並べて比較しています。 - 間接光とは、あるオブジェクトが他のオブジェクト上での拡 散反射を経て間接的に受け取る光を意味します。直接光と違 い、間接光は影に入っていても受けられます。現実世界では ほとんど全ての物質が光を反射します。少なくとも、人間の 目に見えるものは、全て光を反射しているといえます。リン ゴは赤い光を反射するから赤く見える、というわけです。 ラジオシティのパラメータについては、以下のページにも解 説があります。参考にしてください。 http://www.maxon.net/jp/jppage/tips/radiositysettings01.html 何が本当のラジオシティなのか ラジオシティは、フォトリアリスティックな画像を生成する ための強力な機能です。これは、より複雑で現実に近い照 明モデルを計算することによって達成されています。 このシーンのほとんどの部分は間接光によって照明されています。 下の図で、壁と床が接している部分に注目してください。図 1 では間接光が表現されていません。しかし図 2 では、色 の付いた面の色が向かい合う白い面に映っているのが判る はずです( Advanced Render CD-ROM の中に入っている PDF マニュアルにカラーの画像があります)。これは色の付 いた面で反射した色付きの光によって生じた効果です。もち ろん白い面も白い光を反射します。色の付いた面をよく見て ください。接している部分が少し明るくなっているのがわか ると思います。 製作 Carles Piles 従来のレイトレーシングでは直接光しか表現できませんで したが、ラジオシティは間接光を表現できます。したがって、 ラジオシティは間接光の影響がよくわかるシーンに使うべき だといえます。例えば宇宙空間や夏の浜辺のように、強い 光源によって全てが照らされているシーンでは、 ラジオシティ の効果がほとんどわかりません。 - 直接光とは、あるオブジェクトが直接ライトから受け取る光 を意味します。もし間に他のオブジェクトが入れば、このオ ブジェクトは影の中に入り、直接光を受けられなくなります。 図1:ラジオシティなし 図2:ラジオシティあり さて、もう一度上のサンプルを見てください。全体的に、図 2 は図 1 より明るく見えるはずです。これもラジオシティ独 特の効果で、直接光しか計算しない従来のレイトレーシン グに対して、ラジオシティが間接光の効果を追加するため に起こる現象です。ラジオシティを使うことにより、常に画 像は少し明るくなります。したがって、この効果を考慮した 上でライトなどの明るさを決定する必要があります。 14 • 1 章 次の画像にはファンタジックなクリーチャーが表現されてい ます。しかし図 3 のシーンにはライトが全くありません。こ こでは、発光するマテリアルを適用した床がシーン全体をラ イティングしているのです。また図 4 では、発光するマテリ アルを空オブジェクトに適用して、シーン全体をライティン グしています。 このサンプルでは、空に均一な明るさのマテリアルを適用し ていますが、この章の後ろで解説する HDRI を適用すれば、 より自然で存在感のあるクリーチャーを表現できるはずで す。 ➔ 空を表現する場合は、空オブジェクト(無限球)を使う ようにしてください。大きな球体オブジェクトを使うと いろいろな問題が生じるので、一般的にはお勧めでき ません。大きな球体オブジェクトを使うと、まずサンプ ルポイントが増えるため、レンダリング時間が増加しま。 次に、サンプルポイントの間隔が拡がるため、ラジオ シティの計算精度が悪くなります。詳しくは、 「最低 / 最 高解像度」の項を参照してください。 図 4: 発光する空によって、シーン全体がライティングされています。 製作 Andreas Calmbach ラジオシティのアルゴリズム ラジオシティを計算する原理は、レイトレーシングと非常に よく似ています。まずプレパス計算で、カメラからシーンに 向かって光線(レイ)が放射されます。そして、その光線が オブジェクトの表面にぶつかると、サンプルポイントが生成 されます(図 5)。次に指定されたサンプル数の光線がそこ で新たに生成され(Stochastic Sample と呼ばれています)、 各サンプルポイントから外に向かって再び放射されます。こ の光線はあらゆる方向に分岐し、ドーム状に拡散していき ます(図 6)。 図 3: 発光する床によって、シーン全体がライティングされています。 製作 Andreas Calmbach 図5 ラジオシティ • 15 HDRI HDRI( ハイ・ダイナミック・レンジ・イメージ。広い範囲の 明るさ情報を持った画像)とは、どのようなものなのでしょ うか。 図6 この放射された光線は、他のオブジェクトの表面にぶつか ると、そこでまた新しいサンプルポイントを生成し、同じプ ロセスをくり返します。この 2 世代目の光線の分岐はさらに 3 世代目の光線の分岐を誘発し、拡散反射回数で指定した 値に達するまでその連鎖反応がくり返されるのです。 光線の計算が全て終わったら、光線の経路をたどって光線 がぶつかった表面の色と明るさを調べて合計し、各サンプ ルポイントにおける間接光の色と明るさとします。 次の最終レンダリングでは、これらサンプリングポイント間 の色と明るさを補間し、各ピクセルの色と明るさを求めます。 そしてこの間接光を、レイトレーシングによって計算した直 接光の色と明るさに加算して、最終的な画像のピクセルの 色とするのです。 HDRI は、ラジオシティと組み合わせて自然でリアルな照明 効果を生成するために開発された画像フォーマットです。ま た HDRI を使うと、鏡面反射や透過の効果も劇的に変化し ます。なぜなら、HDRI には非常に明るい色が含まれている ため、鏡面反射率の小さいオブジェクトの上にも明るい反 射像が見えるからです。同様に、透過率の小さいオブジェ クトの奥にも明るい透過像が見えます。例えば従来の画像 を使った場合、明るさの最大値は 100% です。したがって、 鏡面反射率が 10% のオブジェクトの上に見える反射像の明 るさは最大でも 10% のグレーです。しかしながら、明るさ の最大値が 1,000% の HDRI を使った場合、反射像の明る さは最大で 100% の白になります。 一言でいうと、HDRI とは、明るさの範囲が 8 bit(256 階調) しかない通常の RGB 画像に比べて、非常に広い範囲の明る さを持った画像のことです。通常の RGB 画像に含まれる最 も明るい色は、RGB 値が(255、255、255)の白ですが、 自然界には遥に明るい (まぶしい)光が存在します。したがっ て、この画像を周囲に置き、ラジオシティを使ってシーンを 照明しても自然な結果は得られません。レンダリングされた 画像は、現実に見える世界に比べて平板で艶がなく、コン トラストが低くなってしまいます。なぜなら、現実の世界に おいて暗い部分(例えばロウソクに照らされた部屋)と明る い部分(例えば直射日光に照らされた屋外)の間には 255 倍よりも遥に大きい明るさの差が存在するからです。 ここで HDRI を使うと、例えば太陽の明るさの値を 6,000 に指定できます。そしてラジオシティや鏡面反射の計算にお いて、この明るさが正確に反映されます。その結果、レンダ リングされた画像は非常に美しく、シーンの照明をリアルに 反映します。 下図は、 通常の RGB 画像とHDRI 画像をオブジェ クトの周囲に置いて、ラジオシティによる照明と反射像がど のように異なるかを表したものです。 16 • 1 章 HDRI のタイプ 一般的に周囲の環境を表現する HDRI には、 「緯度 - 経度」、 「ライトプローブ」、 「クロス(水平、もしくは垂直)」の 3 種 類の展開方法があります。 HDRI 緯度 - 経度 周囲を通常のマテリアルで囲んだ画像。 この投影タイプの HDRI は、テクスチャタグの中の投影法を 「球」に指定することで、球体や空オブジェクトに正しく適 用できるように投影されています。CINEMA 4D で直接扱え るのはこの投影タイプだけ、他の投影法の HDRI は、この 章の最後に述べる方法でこの投影タイプに変換してから使 います。 HDRI ライトプローブ 周囲を HDRI マテリアルで囲んだ画像。 ✔ み なさんがラジオシティを使ってこれまでに作成した シーンを、HDRI を使って再レンダリングしてみて下さい。 その変化に驚くことでしょう。 この投影タイプは、空中にぶら下げた金属球をカメラで撮 影することによって得られます。撮影は簡単ですが、画像 の歪みが大きくなります。 ラジオシティ • 17 HDRI 水平 / 垂直クロス - HDRI を読み込んだマテリアルのカラーチャンネル、もしくは 発光チャンネルにおいて、混合モードを「乗算」に変更しま す。こうすると、カラーパネルで指定した色と HDRI テクスチャ の色が乗算されるようになります。つまり「明るさ」の値を 50% にすると、HDRI の明るさは半分になります。200% に すると 2 倍になります。明るさの値を 100% より大きくした い場合は、スライダを使わずにボックスに直接値を入力して 下さい。上で説明したラジオシティのパラメータを変える方 法では、ラジオシティの効果しか変化しません。もし、HDRI テクスチャを周囲に貼りつけていて、その見た目の明るさも 変えたい場合にはこの方法を使う必要があります。また、鏡 面反射して見える像の明るさを変えたい場合にもこの方法を 使う必要があります。反射像や透過像の明るさは、鏡面反射 率や透過率を変更して変えることもできます。 - フィルタシェーダやレイヤシェーダに HDRI を読み込むと、明 この投影タイプは、上下左右前後の 6 つの方向をカメラで るさだけでなく、コントラストやカラーバランスまで調整でき 撮影し、つなぎ合わせることによって得られます。各画像 ます。 は、ちょうどカメラの周囲を囲む正方形の一面に相当します。 また、テクスチャフィルタも HDRI の効果に影響を与えます。 CINEMA 4D でも、立方体オブジェクトにこの投影タイプを 「MIP」フィルタを使うと、オブジェクトの周辺部において 直接適用できますが、緯度 - 経度タイプに変換して使うこと HDRI の中に含まれる明るいピクセルの効果が強くなり、全 をお薦めします。 体が不自然に明るくなってしまいます。これに対して、 「なし」 や「円形」を使うと自然な明るさでレンダリングできます。 HDRI の使い方 Web サイト <www.debevec.org/Probes/ > で は、 多くの HDRI が公開されていて、テストに使うことができます。 HDRI は、通常の RGB 画像と同じようにマテリアルのカラー チャンネルや発光チャンネルに読み込むことができます。空 オブジェクトに適用する場合は、どちらのチャンネルに読み 込んでも発光チャンネルとして働きま。ただし、通常のオブ ジェクトに適用してシーンを照明させたい場合は、発光チャ ンネルに読み込んで下さい。 HDRI 画像だけを使ってシーンを照明する場合は(つまりラ イトオブジェクトを置かない場合は)、必ずレンダリング設 定で「オプション -> 自動照明」オプションを外して下さい。 また HDRI によって、シーンが明るくなりすぎたり、暗くな りすぎる場合もあるでしょう。このような場合は、三つの方 法で HDRI の明るさを調整できます。 - ラジオシティのパラメータを調整する。つまり、レンダリング 設定の「ラジオシティ -> 拡散光の強度」の値や、HDRI を読 み込んだマテリアルの「照明 -> 拡散光を生成」の値を増減 することで、シーンの明るさを調整できます。 ➔ HDRI の中に非常に明るくて小さな部分が存在すると、 画面に生じるノイズ(明るさのムラ)が大きくなります。 従来のラジオシティでも、シーンに極端に明るくて小さ なオブジェクトを置くと同じ問題が発生していました。 このノイズは、明るさの変化の少ない平たんな部分で 特に目立ちます。このような場合、HDRI テクスチャに MIP フィルタを適用し、 「量」の値を大きくしてみて下 さい。こうするとテクスチャが大きくぼけ、明るさの変 化が少なくなり、結果としてノイズが減ります。 ただし上記のような操作を加えた場合、テクスチャ自身が ボケてしまうので、テクスチャを直接見せたい場合には、ラ ジオシティ照明用のテクスチャと、表示用のテクスチャを分 ける必要があります。そのためには空オブジェクトを 2 個使 い、両方にレンダリングタグを追加します。そして、ラジオ シティ用のテクスチャを適用した空オブジェクトのレンダリ ングタグでは「カメラから見える」と「鏡面反射 / 屈折から 見える」オプションを外し、表示用のテクスチャを適用した 空オブジェクトでは、 「ラジオシティから見える」オプション を外して下さい。 18 • 1 章 HDRCross を変換、HDR Probe を変換 もし用意した HDRI がプローブやクロスタイプであった場 合、CINEMA 4D の中で適切に使うには緯度 - 経度タイプに 変換する必要があります。HDRI テクスチャを緯度 - 経度タ イプに変換すれば、球投影によって空オブジェクトに正確 に適用できます。この変換を行うために、 「HDR Cross を変 換」と「HDR Probe を変換」の 2 つのプラグインがありま す。これらのプラグインは、メインメニューの「プラグイン -> Advanced Render」から選択できます。これらのプラグ インを選択すると、システム標準のファイル選択ダイアログ が表示されます。ここで、プローブやクロスタイプの HDRI を選択して下さい。すると、HDRI のタイプが緯度 - 経度に 変換され、同じフォルダの中に保存されます。変換された HDRI には、 「_con.HDR」という拡張子が追加されます。そ して、変換された HDRI が画像表示ウインドウに表示されま す。 2 章 コースティクス コースティクス • 21 2 章 コースティクス レンダリング設定の コースティクスパラメータ 製作 Janine Pauke Advanced Render の強力なコースティクス機能を使うと、 ライトから放射された光線が、金属の表面で鏡面反射した りガラスの表面で屈折して、集光する様子を表現できます。 上の図を見ると、ウイスキーグラスの表面で屈折した光線 が、木のテーブルの上に独特のパターンを描いているのがわ かります。コースティクスの一般的な解説や、専門的な用語 については、この章の後にある「何が本当のコースティクス なのか」を参照してください。 コースティクスは 3 種類のダイアログを使って設定します。 1 つ目はレンダリング設定のコースティクスページで、強度 などコースティクスの全体的な設定を行います。2 つ目はラ イトオブジェクトのコースティクスページで、これは属性マ ネージャに表示されます。ここでは、各ライトごとにコース ティクスの性質を細かく設定します。3 つ目はマテリアル設 定の中の照明ページで、個々のマテリアルが持つコースティ クスの性質を細かく設定します。また、マテリアルマネージャ でマテリアルを選択し、属性マネージャを使ってこれらのパ ラメータを変更することもできます。 レンダリング設定のコースティクスページを使って、コース ティクスの計算に必要なパラメータを指定します。 サーフェイスコースティクス このオプションを選択すると、サーフェイスコースティクス が働くようになります。デフォルトでは選択されていません。 サーフェイスコースティクスの効果 - 小さい強度 サーフェイスコースティクスの効果 - 中ぐらいの強度 サーフェイスコースティクスの効果 - 大きな強度 22 • 2 章 ボリュームコースティクス このオプションを選択すると、ボリュームコースティクスが 働くようになります。デフォルトでは選択されていません。 に、この空間の刻みの値を 5m に指定すると、各フォトン が 20 回計算され、保存されることになります。 ➔ 空 間の刻みを小さくすると、より精細な画像を生成で きます。しかしレンダリング時間が長くなります。 ➔ 空間の刻みを小さくすると、一定の距離の中により多く のフォトンが保存されるため、コースティクスの効果が 明るくなります。 フォトンを調べる半径(ボリュームコースティクスだけ) ボリュームコースティクスの効果 - 普通の強度 空間内のある位置におけるボリュームコースティクス効果を 求める場合、Advanced Render はフォトンツリーの中から、 この距離よりも近くに存在するフォトンを選び出し、それら の値を補間します。この値を大きくすると、フォトンが少な い部分でもなめらかに表現できますが、その分レンダリン グ時間が長くなります。 ➔ もし画像の中に白い点やムラが見える場合は、このフォ トンを調べる半径の値を大きくしてください。 ボリュームコースティクスの効果 - 大きな強度 ➔ コースティクスを生成するライトの可視照明が、ボリュー ムになっていることを確認してください。 強度 この値は、コースティクス効果の強度(明るさ)をコントロー ルします。 空間の刻み(ボリュームコースティクスだけ) ボリュームコースティクスを使う場合、この値で指定した一 定の間隔ごとにフォトンの強度が計算され、フォトンツリー の中に保存されます。レンダリング時に、この値を補間して コースティクスの効果を計算します。例えば、ボリュームコー スティクスの効果が 100m の長さにわたって存在する場合 フォトンを調べる半径が小さすぎる例。フォトンの間が十分に補間さ れていないため、各フォトンが孤立した白い点に見えています。 調べるフォトンの数(ボリュームコースティクスだけ) この値は、ある位置のボリュームコースティクス効果を求め る場合に、Advanced Render が評価するフォトンの最大数 を指定します。ここで対象となるのは、上記のフォトンを調 べる半径よりも近くにあるフォトンだけです。一般的に、こ の値を大きくするとムラのない画像を生成できますが、そ の分レンダリング時間が長くなります。もしこの値が小さす ぎると、計算誤差が大きくなり、ボリュームコースティクス の中にムラができてしまいます。 コースティクス • 23 常にする このオプションを選択すると、レンダリング時に毎回コース ティクスを計算します。レンダリング時間は短縮できません が、常に正しい画像を得られます。 しない 調べるフォトンの数が 1 の例 このオプションを選択すると、レンダリング時にコースティ クスを計算しません。 そのかわり、Advanced Render は 「Illum」フォルダの中に入っている計算結果を使い、短時間 でレンダリングを終了します。もしこのフォルダの中に適切 な名前の計算結果が見つからなければ、警告ダイアログが 表示されます。この場合は、再計算の設定を最初の 1 回だ けか、常にするに変更してください。 計算結果を保存 調べるフォトンの数が 30 の例 再計算 この指定によって、以前のレンダリングで作成、保存したコー スティクスの計算結果(フォトンツリー)を再利用し、レン ダリングを高速化できます。計算結果を再利用すれば、新 規にコースティクスの計算を行わなくてもすむからです。た だし、大きなオブジェクトやライトを変更した結果、シーン の照明条件が大きく変化した場合には、改めてコースティ クスの計算を行う必要があります。どのような場合にコース ティクスを再計算させるかは、ポップアップメニューから指 定できます。下の「計算結果を保存」オプションも参照して ください。 最初の 1 回だけ このオプションを選択すると、レンダリング時に最初の 1 回 だけコースティクスを計算します。そしてその後は全てこの 計算結果が再利用されます。Advanced Render は、毎回 レンダリング前にシーンフォルダの中の「Illum」フォルダを チェックし、その中に必要な計算結果がない場合に限り、 コースティクスを計算し、計算結果をこの中に保存します。 このオプションがデフォルトになっています。 このオプションを選択しておくと、レンダリング終了後にコー スティクスの計算結果がシーンフォルダの「Illum」フォルダ の中に保存されます。フォルダが存在しない場合には自動 的に作成されます。この計算結果は、再計算の指定によっ て次のレンダリングに再利用可能で、これによってレンダリ ングを高速化できます。 ➔ シーンの照明などを大きく変更した場合は、正確なコー スティクス効果を表現するために、コースティクスを再 計算する必要があります。再計算の指定を常にするに 変更してください。 一つの計算結果を全てのフレームで使う カメラだけが動くアニメーションの場合は、各フレームごと にコースティクスを再計算する必要はありません。このオプ ションを選択し、一つの計算結果を全てのフレームでくり返 し使うように指定してください。これによってレンダリング 時間を半分以下に短縮できます。さらにこのオプションで は、一つの部分に対して同じ計算結果をくり返し使うため、 フレーム間でのちらつきが生じないという利点があります。 このオプションが選択されていない場合は、各フレームごと に新規にコースティクスを計算します。 ➔ このオプションは、カメラ移動アニメーションにだけ指 定してください。もし他のオブジェクトやライトが動くと、 コースティクスの効果だけが変化せずに残り、不自然な 結果になってしまいます。 24 • 2 章 マテリアル編集や属性マネージャの コースティクスパラメータ マテリアル編集の照明ページにあるコースティクスパネルを 使うと、コースティクスの効果を各マテリアル単位で微調整 できます。 調べる半径 面上のある位置におけるサーフェイスコースティクス効果を 求める場合、Advanced Render はこの距離よりも近くに存 在するフォトンを選び出し、それらの値を補間します。この 値を大きくすると、フォトンが少ない部分でもなめらかに表 現できますが、その分レンダリング時間が長くなります。 調べる半径が 1 の例 : 調べる半径が小さすぎて、フォトンを集めら れない部分が多いため、各フォトンが孤立した光の点として見えてい ます。 フォトンを生成、フォトンの強度 このマテリアルがコースティクス効果を生じる場合、つまり フォトンを鏡面反射、屈折する場合は、このオプションを選 択してください。そして、フォトンを鏡面反射、屈折する強 度をフィールドに入力してください。 ➔ フォトンを鏡面反射、屈折させるためには、当然のこと ですが、マテリアルの鏡面反射、透過チャンネルを働 かせ、適切な値を指定しておいてください。 フォトンを受ける、フォトンを受ける強度(サーフェ イスコースティクスのみ) このマテリアルがフォトンによる照明を受ける場合には、こ のオプションを選択します。そして、フォトンを受ける強度 をフィールドに入力してください。 調べる半径が 10 の例 : この値のまま画質をなめらかにするには、フォ トンの数を増やす必要があります。 コースティクス • 25 ライト設定の コースティクスパラメータ 調べる半径が 100 の例 : 画質はなめらかですが、調べるフォトンの 数が大きすぎるとボケるので注意が必要です。 調べる数 この値は、Advanced Render が評価するフォトンの最大数 を指定します。そしてこれらのフォトンの値が補間されて、 コースティクス効果の明るさになります。例えば 100 という 値を指定した場合、サンプル半径の中に入っているフォトン が 100 個まで評価されます。そしてそれ以降はもしフォトン が存在しても全て無視されます。一般的に、この値を大き くするとムラのない画像を生成できますが、その分レンダリ ング時間が長くなります。また、大きくしすぎると画像がボ ケる場合もあります。 ライトオブジェクトを選択して属性マネージャを開くと、そ のライトのパラメータが表示されます。コースティクスの効 果は、ここのコースティクスページから各ライトごとに細か く指定できます。 サーフェイスコースティクス このオプションを選択すると、このライトから放射される光 線に対してサーフェイスコースティクスが働きます。 エネルギー 調べる半径と調べる数は、両方ともコースティクスの品質に 大きな影響を与えます。まとめると、 - 最初に、調べる数を 500 程度の大きな値に指定します。こ の値は単なる上限なので、ある程度以上大きくしてもレンダ リング時間や画質には影響しません。 - 次に、調べる半径の値を画面がざらざらしない程度に小さく 設定します。この値は、ライトから放射するフォトンの数や、 シーンの構成によって大きく変ります。不必要にこの値を大 きくすると、レンダリング時間が長くなるだけでなく、コース ティクスの効果がボケてしまうので注意してください。 - 最後に、調べる数の値を画面がざらざらしない程度に小さく します。 この操作を行っても、十分に精細でなめらかなコースティク ス効果を得られない場合は、ライトから放射されるフォトン の数自体を増やしてください。 低いエネルギーによる(10,000)サーフェイスコースティクス 26 • 2 章 ➔ コ ースティクス効果を使った場合のレンダリング時間 は、フォトン数の値に大きく依存します。ですから、必 要最低限のフォトンを効率よく使うように心がけてくだ さい。一般的に全方向ライトは、あらゆる方向にフォト ンを放射します。コースティクス機能を使う場合は、コー スティクスを生じるオブジェクトだけを狙って照射でき るスポットライトを使った方がいいでしょう。 高いエネルギーによる(20,000)サーフェイスコースティクス ここで、ライトから放射されるフォトンが持っている初期エ ネルギーを合計した値を指定します。このエネルギーは、 主としてサーフェイスコースティクス効果の明るさを決定し ます。同時に、この値はフォトンがオブジェクトの上で鏡面 反射、屈折される回数にも影響します (エネルギーが低くなっ たフォトンは、自動的に計算が省略されるので)。 ➔ 1 個 1 個のフォトンが持つエネルギーの値は、フォトン の数を 2 倍にすると半分になります。したがって、次に 説明するフォトン数の値を変えてもコースティクス効果 の明るさは変化しません。 フォトン数 フォトン数の値は、サーフェイスコースティクス効果を計算 するためにライトから放射されるフォトンの数を意味してい ます。この値を大きくすると、コースティクスの基本的な計 算精度(画面の精細さ)が向上しますが、同時にコースティ クスの計算時間やレンダリング時間も長くなります。普通の シーンでは、10,000 から 1,000,000 個程度のフォトンを使っ てコースティクスを計算します。しかし最適値は、ライトが 光を放射する範囲や、オブジェクトまでの距離、オブジェ クトの形状などによって大きく変化します。フォトン数は、 100,000,000 個まで増やせます。 フォトンの数が少なすぎる例。各フォトンが孤立した光の点に見えて います。 ➔ コ ースティクス効果のシャープさやなめらかさは、マテ リアルの設定にも依存します。 ボリュームコースティクス このオプションを選択すると、このライトから放射される光 線に対してボリュームコースティクスが働きます。 ➔ ボ リュームコースティクスを働かせるためには、ライト にボリュームライトを適用しておく必要があります。属 性マネージャの一般ページで、可視照明メニューからボ リュームか逆ボリュームを選択してください。 ➔ ボリュームコースティクスは、ボリュームライトの中だけ に生じます。例えばスポットライトでオブジェクトを照ら した場合、その表面で反射した光線はボリュームライト の外に出られずに、そこで消えてしまいます。ボリュー ムコースティクスの効果を広い範囲に表現したい場合 は、ライトのタイプや形状を変更し、ボリュームライト がその範囲をカバーするように指定してください。ボ リュームライトの一部が不要な場合は、ライトマップや オブジェクトを使って隠すことができます。 エネルギー 適切なエネルギーを指定した例 コースティクス • 27 何が本当のコースティクスなのか コースティクスとは、ライトから放射された光線が曲げられ た結果発生する明暗のパターンを意味します。この現象は、 鏡面反射や屈折するマテリアルが適用されたオブジェクトに よって生じます。 エネルギーが強すぎる例(明るい部分が黄色く飛んでいます) ここで、ライトから放射されるフォトンが持っている初期エ ネルギーを合計した値を指定します。このエネルギーは、 主としてボリュームコースティクス効果の明るさを決定しま すが、同時に鏡面反射や屈折される回数にも影響します。 フォトン数 フォトン数の値は、ボリュームコースティクス効果を計算す るためにライトから放射されるフォトンの数を意味していま す。この値を大きくすると、コースティクスの基本的な計算 精度が向上しますが、同時にレンダリング時間も長くなり ます。特にボリュームコースティクスの場合、空間の刻みが 細かいと、計算されるフォトンの数がどんどん増えていき、 それらが全てフォトンツリーの中に保存されることになりま す。例えば、ライトが 1,000 個のフォトンを放射する場合を 考えます。もし空間の刻みがデフォルトの 2m で、フォトン が 100m 走ったとすると、計算されるフォトンの数は合計で 50,000 個にもなってしまいます。ですから可能なかぎりフォ トンの数を減らすように心がけてください。 一般的に全方向ライトは、あらゆる方向にフォトンを放射し ます。コースティクス機能を使う場合は、コースティクスを 生じるオブジェクトだけを狙って照射できるスポットライト を使った方がいいでしょう。 図 1: この透明な球体は光を屈折し、コースティクス効果を生じさせ ています。この場合は、床の上の明るい部分がそれです。 図 2: 金属のリングが鏡面反射によってサーフェイスコースティクス効 果を生じています。 減衰、減衰開始距離、減衰終了距離 ここでフォトンの持つエネルギーの減衰を指定します。減衰 関数は、なし、線形、反比例、2 乗に反比例、3 乗に反比例、 ステップの中から選択できます。 図 3: 透明な球体の右下に伸びている 「しっぽ」がボリュームコースティ クス効果です。 28 • 2 章 Advanced Render は、 サーフェイスコースティクスとボ リュームコースティクスと呼ばれる 2 種類のコースティクスを 表現できます。 - サーフェイスコースティクスは、照明されるオブジェクトの表 面にだけ現れます。例えば、上で説明した金属のリングや、 ガラスの球によって生成されているような効果です (両方とも、 効果は床の上にだけ現れています)。 - ボリュームコースティクスは、空間を通過する光(ボリューム ライト)の中にだけ現れます。これは照明されるオブジェク トを必要としません(図 3 参照)。 サーフェイスコースティクスのアルゴリズム サーフェイスコースティクスを生成するには、以下のオブジェ クトが必要です。 - フォトンを放射するライト。このフォトンによってサーフェイス コースティクスを計算します(属性マネージャ -> コースティク スページ)。 - コースティクスを生成するマテリアルを適用したオブジェクト。 マテリアルには必ず鏡面反射か透過チャンネルを設定してく ださい。また光線を集めるためには、オブジェクトをレンズ のように湾曲させる必要があります。 - サーフェイスコースティクスの効果を受けるオブジェクト。 コースティクスの計算は、レイトレーシングやラジオシティ の計算とは大きく異なっています。レイトレーシングやラジ オシティはカメラから光線をとばしますが、コースティクス はライトからシーンに向かってフォトン(光線)をとばします。 そして、それぞれのフォトンは初期エネルギーを持っていま す。このエネルギーは、空間を移動するにしたがって、また オブジェクトの表面にぶつかるたびに、減衰していきます(図 4)。 図 5: 2 つの重なったオブジェクトによるコースティクスの例 フォトンが鏡面反射、屈折する面にぶつかると、フォトンは 光線と同じように鏡面反射、屈折されます。そして、この過 程でフォトンはいくらかのエネルギーを失い、またマテリア ルからカラー情報を受け取ります。例えば、ある面が青い 光だけを鏡面反射、屈折する場合、その面にぶつかったフォ トンは青いカラーになります。そして、フォトンがその面を 離れた後まだ十分なエネルギーを持っていれば、そのフォト ンはさらにシーンを飛び続けることができます。 もしフォトンが鏡面反射も屈折もしない面にぶつかると、そ のフォトンは停止し、位置とエネルギー(カラー情報を含む) の値がフォトンツリーと呼ばれるデータ構造の中に記録され ます。 ➔ あ るマテリアルがコースティクスの影響を受けないよう に指定することもできます。この場合、このマテリアル にぶつかったフォトンはそこで消滅し、フォトンツリー の中に記録されることもありません。したがって、この マテリアルはコースティクスの影響を受けないのです。 そしてフォトンの計算が全て終わると最終レンダリングが始 まります。ここで、フォトンツリーの中に記録されているフォ トンの値を補間してサーフェイスコースティクスの明るさや色 を求め、レイトレーシングによって計算した直接光の値に加 算して最終的なピクセルの色とするのです。 ➔ コ ースティクスの効果を 2 重に重ねることも可能です。 これは、コースティクスを生じるオブジェクトが、別の コースティクスを生じるオブジェクトに向かってフォトン を放射した場合に起こります(図 5 参照)。 図 4: 球体によって屈折されたフォトン コースティクス • 29 ボリュームコースティクスのアルゴリズム ボリュームコースティクスは、サーフェイスコースティクスと 同様の方法によって計算されます。そしてこれを生成するに は以下のオブジェクトが必要です。 - フォトンを放射するボリュームライト付きのライト。ボリュー ムコースティクスを計算するにはこのフォトンが必要です(属 性マネージャ -> コースティクスページ)。 - コースティクスを生成するマテリアルを適用したオブジェクト。 マテリアルには必ず鏡面反射か透過チャンネルを設定してく ださい。また光線を集めるためには、オブジェクトをレンズ のように湾曲させる必要があります。 フォトンが鏡面反射、屈折する面にぶつかると、フォトンは 光線と同じように鏡面反射、屈折されます。そして、この過 程でフォトンはいくらかのエネルギーを失い、またマテリア ルからカラー情報を受け取ります。例えば、ある面が緑色 の光だけを鏡面反射、屈折する場合、その面にぶつかった フォトンは緑のカラーになります。そして、フォトンがその面 を離れた後まだ十分なエネルギーを持っていれば、そのフォ トンはさらにシーンを飛び続けることができます。 ボリュームコースティクスがサーフェイスコースティクスと違 うのは、フォトンが一定の距離を進むごとに、その場所での フォトンの値がフォトンツリーに記録されていく点です。し たがって 1 個のフォトンが何十回、何百回と記録されます。 もしフォトンが鏡面反射も屈折もしない面にぶつかると、そ のフォトンは停止し、位置とエネルギー(カラー情報を含む) の値がフォトンツリーと呼ばれるデータ構造の中に記録され ます。 そしてフォトンの計算が全て終わると最終レンダリングが始 まります。ここで、フォトンツリーの中に記録されているフォ トンの値を補間してボリュームコースティクスの明るさや色 を求め、レイトレーシングによって計算した直接光の値に加 算して最終的なピクセルの色とするのです。 トラブルシューティング サーフェイスコースティクス コースティクスの最適な設定値は、ライトとコースティクス を生じるオブジェクトまでの距離によって大きく変化します。 しかしながら、以下の手順を追って設定していけばいい結 果が得られるはずです。 - ライトを選択し、属性マネージャのコースティクスページで、 フォトンのエネルギーを大きくし(例えば 10,000%)、数を減 らして見てください(例えば 1,000)。これによって、1 個 1 個 のフォトンがはっきり見えるようになります。この状態は、フォ トンが正しく放射されているかどうかや、フォトンのおおまか な分布を確認するのにとても便利です。もしフォトンが放射 されていない場合は、以下の項目をチェックしてみてくださ い。 ・ライトはオブジェクトの方向を正しく向いていますか。 ・レンダリング設定のコースティクスページ、ライトのコース ティクスページ(属性マネージャ)、マテリアル編集の照明ペー ジでコースティクスが働くように設定されていますか。 ・コースティクスを生成するオブジェクトに、鏡面反射もしく は屈折するマテリアルを指定していますか。 - フォトンが正しく分布しているのを確認したら、コースティク スの効果が十分なめらかになるまでフォトンの数を増やして いってください(エネルギーは、適切な値に戻してください)。 コースティクスの効果をより精細に表現するためには、レンダ リング設定のコースティクスページや、マテリアル編集の照明 ページで、調べる半径を小さくします。同時に、調べる数は 余裕を持って大きくしてください(例えば 1,000)。そして、も しこの操作によって画面がざらついた場合には、フォトンの 数を増やしたり、空間の刻みの値を小さくしてみてください。 最後に、大体の設定が終わったら画質が低下しない程度に 調べる数の値を小さくします ボリュームコースティクス ボリュームコースティクスを使っている時に、もし内部に階 段状のパターンが生じた場合には、ライトオブジェクトの可 視照明タブにある、 「サンプル距離」の値を小さくしてみて ください。ただし、この値を小さくするとレンダリング時間 が長くなります。 30 • 2 章 この例では、サンプル距離の値が左は 25、右は 5 になっています。 3 章 被写界深度フィルタ 被写界深度 • 33 3 章 被写界深度フィルタ Advanced Render の被写界深度フィルタを使うと、画像 のシャープさやボケを細かく調整できます。例えば、注目し ている部分の手前だけをボカしたり、後ろ側だけをボカした り、また両方をボカすこともできます。シャープな画像から、 ボケた画像までの変化の様子は、グラデーションバーを使っ て簡単に指定できます。さらに、水平線のかなたに見える 物体に対して色を加えることもできます。空気遠近法と呼ば れる効果によって、青みがかった部分はより遠くにあるよう に見えるのです。 特殊効果ページのリストで被写界深度を選択すると、さら に、基本属性、レンズ、色味の 3 枚の設定ページが表示さ れます。これらのページにあるパラメータについてこれから 説明します。 属性マネージャの設定 基本属性 ➔ 特 殊効果ページで、名前の左に小さな円がついている パラメータは全てアニメート可能です。アニメーション を指定する方法については、CINEMA 4D のリファレンス マニュアルを参照してください。 ぼけの強度 被写界深度効果によって重要性の低い背景をボカすことにより、中央のカタ ツムリに見る人の目を引きつけることができます。 ➔ Advanced Render の被写界深度効果は、ポストイフェ クト(後処理)です。つまり、速く計算できる代わりに、 ポストイフェクトに付き物の制約があります。例えば、 ボケたオブジェクトが鏡の中に見える場合や、透明なオ ブジェクトの奥に見える場合、正しくレンダリングされ ません。 被写界深度効果はポストイフェクトで、レンダリング設定の 特殊効果ページから選択できます。この特殊効果ページを 使うための一般的な方法については、CINEMA 4D のリファ レンスマニュアルを参照してください。 このパラメータは、ボケの全体的な強度を指定します。他の、 距離でぼかすや、放射状にぼかすパラメータは、この強度 を部分的に変更する働きをします。したがって、もしこのぼ けの強度を 0% に指定すると、他のパラメータをいくら大き な値にしても、ボケは全く生じません。 距離でぼかす 距 離 で ぼかすの 値 は、 ボケの 強 度 をさらに 細 かく調 整 し ま す。 例 え ば、 ぼ け の 強 度 を 80% に 指 定し、 距 離 で ぼ か す の 値 を 50% に 指 定し た 場 合、 結 果 として生 じ る ボ ケ の 強 さ は 40% に な り ま す( 50% × 80% )。 34 • 3 章 距離でぼかす機能を使うためには、シーンにカメラオブジェ クトを追加する必要があります(オブジェクト -> シーン -> カメラ)。また、レンダリングするビューをこのカメラに合わ せておく必要もあります(ビュー -> カメラ -> シーンカメラ)。 次に、オブジェクトマネージャでカメラを選択し、属性マネー ジャで被写界深度タブをクリックし、次の設定を表示させて ください。 図 1: 後側だけのボケ。製作:Stephan Oberlaender こここで特に重要なのは : - ターゲット距離 : カメラから焦点の合う位置までの距離を意 味します。いい換えると、カメラから画像が完全にシャープ に見える位置までの距離です。 - ターゲットを使う : ターゲットの距離設定の代わりに、ター ゲットオブジェクトをつかって焦点を指定できます。いい換え ると、ターゲットとして選択したオブジェクトが完全にシャー プに見えます。 焦点位置の後ろ側だけをボカしたい場合には、ターゲット 距離を指定し、後ろ側をぼかすだけをチェックしてください。 もしくは、ターゲットオブジェクトを指定してください(その ためには、まずカメラにターゲットエクスプレッションを適 用します。詳細については、CINEMA 4D のリファレンスマ ニュアルのターゲットエクスプレッションの節を参照してくだ さい)。 図 2: 弱いボケ(後側と手前)。 被写界深度 • 35 オートフォーカス このオプションを使うと、実際のカメラのオートフォーカス 機能を再現できます。つまり、画像の中心にあるオブジェク トに自動的に焦点が合うのです。いい換えると、画像の中 心にあるオブジェクトが完全にシャープになります。 しかし、許容値を指定できるので、必ずしもオブジェクトが 正確な中心位置にある必要はありません。許容値の最大値 は 100% で、この場合はオブジェクトがビューの中のどこ にあっても自動的にそこに焦点が合います。しかしこの値を 小さくしていくと、ビューの中心にあるオブジェクトにしか 焦点が合わなくなります。 図 3: 強いボケ(後側と手前)。 グラデーションを使う ➔ ぼけた部分とシャープな部分の間に不自然な境界線が できてしまった場合には、このオプションを選択してく ださい。 1. このオプションが選択されていない場合。ボケはカメラの焦 点位置(ターゲット距離)を基準とするアルゴリズムによって 計算されます。そして、手前のぼけと後側のぼけの設定は無 視されます。 2. このオプションが選択されていて、さらに、手前のぼけと後 側のぼけがチェックされている場合、グラデーションバーを 使ってボケの変化を自由にコントロールできます。グラデー ションバーにおいては、黒がシャープな部分、白が完全にボ ケた部分を表します(この時、距離でぼかすで指定した値に 一致します)。グレーは中間的なボケの強度を表し、明るい グレーはより強いボケを意味します。 図 4: 背景のボケ。 背景をぼかす このパラメータは、CINEMA 4D の背景オブジェクトに適用し た画像をボカすために使います(オブジェクト -> シーン -> 背景)。その他の全てのオブジェクトは、この背景をぼかす 機能の影響を受けません。図 4 参照。 放射状にぼかす 放射状にぼかす機能は、画像を中心から外側に向かってボ カします。ボケの強度をフィールドに入力してください。 グラデーションバーを使う グラデーションバーを使うと、2 つの状態の間の変化を簡単 にコントロールできます。例えば、完全にシャープな部分か ら完全にボケた部分までの変化の様子を正確に指定できま す。 被写界深度フィルタの中には、グラデーションを利用できる パラメータがいくつかあります。そのほとんどはグレースケー ルですが、いくつかはカラーです。そして、グローフィルタな どを含めて、全てのグラデーションは同じ方法で編集できま す。グラデーションバーが持っている全てのパラメータを表 示させるには、グラデーションの左にある小さな三角形を クリックしてください。 36 • 3 章 スムーズ スムーズステップ関数を使って、左右のノット間の値を補間 します。バイアスハンドルを使って値を偏らせることもでき ます。 グラデーションの全てのパラメータにアクセスするには、左側の小さ な三角形をクリックします。 ここで説明するグラデーションは、他のソフトで一般的に使 われているグラデーションと同じです。グラデーションバー の下に表示されている小さな鉛筆のようなアイコンはノット と呼ばれ、これを使ってグラデーションの色とその位置を指 定します。 - ノットを追加するには、グラデーションバー下の空いている 場所をクリックしてください。すると、その位置の色を含ん だノットが新しく生成されます。 - ノットを消去するには、ノットをクリックし、それをグラデー ションの外にドラッグしてください。 - ノットの色を変更するには、ノットをダブルクリックしてくだ さい。すると、システム標準のカラーピッカが表示されます。 - グラデーションバーの中に表示されているのはバイアスハン ドルです。このハンドルを使って、ノット間の色の変化を偏ら せることができます。 補間 このポップアップメニューから、ノットの間の補間法を指定 します。 3 次で固く カットマル - ロムスプラインを使ってノットの間を補間しま す。バイアスハンドルを使って補間値を偏らせることもでき ます(ノット数が少ない場合に有効です)。 3 次でゆるく ベジエスプラインを使ってノットの間を補間します。バイア スハンドルを使って補間値を偏らせることもできます(ノッ ト数が少なく、値を正確にコントロールしたい場合に有効 です)。 線形で固く ボックスステップ関数を使って、左右のノット間の値を補間 します。バイアスハンドルを使って値を偏らせることもでき ます。 線形 左右のノット間の値を線形に補間します。バイアスハンドル はありません。 指数増加、指数減衰 左右のノット間の値を指数関数で増加、もしくは減衰させ ます。 なし 値を補間せず、左側のノットの値をそのまま使います。 位置 グラデーションバーの中で、現在選択されているノットやバ イアスハンドルの位置を表します。ノットやバイアスハンド ルは、数値入力ボックスを使って直接指定したり、右側に ある矢印をクリック、ドラッグして動かすこともできます。 強度 現在選択されているノットやバイアスハンドルの強度をパー セントで表します。 被写界深度 • 37 アルファを編集 / 結果を表示 - 2 つのグラデーションを合成した結果を表示させたい場合に は、結果を表示オプションを選択してください。この場合、 グラデーションバーの背後にチェックパターンが表示され、こ れによって濃度を知ることができます。アルファを編集オプ ションが選択されたままであれば、グラデーションバーに合 成した結果を表示したまま、アルファの値を編集できます(つ まり、ノットやハンドルは表示されたままで、編集可能です)。 コンテクストメニュー グラデーションバーでは、コンテクストメニューから 3 種類 のコマンドを実行できます。コンテクストメニューを開くに は、グラデーションバーを右クリックするか(Windows)、 cmd+ クリックします(Macintosh)。 ノットを反転 グラデーションの向きを反転します。 色味などいくつかのグラデーションバーには、さらにアル ファを編集と結果を表示の 2 つのオプションがあります。こ のオプションを使って、一つのグラデーションバーで 2 種類 のグラデーションを指定するのです。一つのグラデーション はカラーを、もう一つのグラデーション(アルファ)はその 濃度を指定します。 ノットを 2 倍 例えば、遠くのオブジェクトに追加されている青い色味を、 距離にしたがってより濃く鮮やかにしたい場合には、まずカ ラーグラデーションに指定している青の彩度を上げます。次 に、距離にしたがって黒(透明)から白(不透明)に変化す るアルファグラデーションについて、中間位置でより白くな るように変更します。この二つのグラデーションを合成した 値を使って、ある距離での効果を計算するわけです。 ノットを全て消去し、均一な白のグラデーションにリセット します。 結局、一度に表示できるのは 1 本のグラデーションバーで あるにもかかわらず、そこにはカラー、アルファ、合成の 3 種類のグラデーションが同居していることになります。そこ で、アルファを編集と結果を表示の 2 つのオプションを使っ て、どのグラデーションを表示させるかを選択するのです。 - カラーグラデーションだけを表示させ、編集したい場合には、 両方のオプションを切ってください。 - アルファグラデーションだけを表示させ、編集したい場合に は、アルファを編集オプションを選択し、結果を表示オプショ ンを切ってください。 グラデーションを構成するノットの数を 2 倍にし、現在のグ ラデーションが 2 回くり返されるようにします。 ノットをリセット 38 • 3 章 レンズの詳細 色味 レンズの詳細ページにある設定を使って、オブジェクト上 の明るく照らされた部分が焦点からずれた時に生じる光の にじみをシミュレートできます。このにじみは、明るさが 100% を大きく上回る部分に顕著で、その形状や角度は、 現実のレンズの中に組み込まれている絞りの形状や大きさ に依存します。 この機能を使うと、カメラからの距離にしたがってシーンに 色味を追加することができます。例えば、レンダリングし た画像の中の遠くにある物体に対して青い色を追加すると、 空気遠近法によって遠近感を表現できます。また、砂漠の 砂によって生じる黄色を追加したり、暗い青を追加して深海 や月明かりを表現するすることもできます。この他、室内の 照明 (色温度)を基準に屋外を撮影するとそれが青味がかっ て見える現象や、逆に屋外を基準に室内を撮影するとオレ ンジ色に偏る現象をシミュレートすることもできます。 プロの写真家は、色温度の差やレンズ効果といった現象を なるべく抑えようとするものですが、逆に 3DCG の場合には、 こういった現象を適切にシミュレートすることによって、画 像のリアリティを増すことができるのです。 レンズの形状を 3 角形に指定した例 レンズのシャープさ レンズ効果のシャープさを指定します。 レンズの強度 レンズ効果の明るさを指定します レンズの形状 レンズ効果の形状を指定します。これは現実のカメラにお ける絞りの形状に相当します。 グラデーションを使う 3 種類の方法で色味を追加できます。どの方法を選択した 場合でも、カメラで指定した焦点(ターゲット距離)が基準 となります。 1. 範囲を指定オプションを選択しない場合。 自然に減衰する色味をつけます。 2. 範囲を指定オプションと、カメラに従うオプションを選択 した場合。 レンズの角度 レンズ効果は画面上で回転させられますが、その角度を指 定します。 ここでは、カメラのパラメータが色をつける範囲を指定します。 被写界深度 • 39 この場合は、距離によるボケと同じ手順で色味を計算しま す。したがって、カメラのパラメータを使って色味をつける 範囲を指定してください。 3. 範囲を指定オプションを選択し、カメラに従うオプション を選択しない場合。 被写界深度の仕様上の制限 • 鏡面反射するオブジェクトの中に映って見えるオブジェクト や、透明なオブジェクトの中に透けて見えるオブジェクトに対 して、適切な被写界深度効果がかからない場合があります。 • 被写界深度フィルタの前にグローフィルタを適用すると、その 効果が被写界深度効果によって上書きされてしまいます。ま た、後にグローフィルタを適用すると、効果が不正確になり ます。 • 被写界深度フィルタは、PyroCluster モジュールや、ハイライ トフィルタとは併用できません。 ここでは、フィルタのパラメータが範囲を指定します。カメラのパラ メータと混同しないように注意してください。 この場合は、カメラで指定したパラメータとは関係なく、フィ ルタで指定した手前の開始や手前の終了、後側の開始、後 側の終了パラメータによって色味をつける範囲を計算しま す。したがって、被写界深度効果によるボケとは関係なく色 味を追加できます。 ・ グローフィルタは、オブジェクトグロー、レンズ効果、ミディ アム、シャープ、ソフト、オブジェクトモーションブラー、セ ルシェーダ、色補正等のフィルタとは併用できません。 40 • 3 章 4 章 ハイライトフィルタ ハイライト • 43 4 章 ハイライトフィルタ Advanced Render を使うと、レンダリングした画像に自由 にレンズフレアやグローを追加できます。このレンズフレア やグローの色や明るさ、大きさや形状などは、多くのパラメー タを使って自由に変更可能で、どんなイメージでも表現で きます。さらにこの効果は、オブジェクト表面に生じるハイ ライトの明るさや位置に合わせて自動的に生成されるので、 簡単な設定で複雑な効果を得られます。例えば、きらきら 輝く宝石や、光を受けて瞬くメタリックなフライングロゴや、 晴れた日の水面などを表現するのに最適でしょう。 ハイライトフィルタあり。製作 Thomas Andreasen マテリアルのハイライトチャンネルと、ここで説明するハイ ライトフィルタを混同しないように注意してください。マテ リアルのハイライトは、3D オブジェクトを直接レンダリング した結果生じる効果ですが、ハイライトフィルタは、レンダ リングされた画像のピクセルを元にして計算します。誤解の ないように、 「ハイライト」という言葉はこの章において、全 てハイライトフィルタと、 それに含まれるグローやリング、 ビー ムを指すものとします。 ここでは、説明のためにハイライトを構成する各パラメータを誇張し ています。 ハイライト効果はポストイフェクト(後処理)で、レンダリ ング設定の特殊効果ページから選択できます。この特殊効 果ページを使うための一般的な方法については、CINEMA 4D のリファレンスマニュアルを参照してください。 特殊効果ページのリストでハイライトを選択すると、下にハ イライトの効果を指定するためのパラメータが表示されま す。このパラメータについてこれから説明します。 ハイライトフィルタなし。製作 Thomas Andreasen 44 • 4 章 レンダリング設定 ハイライト 普通の白に飽和させられてしまう」という点に注意してくだ さい。しかしながら、ハイライト効果を白より明るいピクセ ルに適用しておくことで、 「その部分が白よりも明るい」とい うことを表現できるのです。 ただし、しきい値を大きくしすぎると、どのピクセルもその 値に達することができず、結果としてハイライト効果が生じ なくなってしまうので注意してください。 フレアの最少強度、最大強度 これらの値は、ハイライト効果の最大強度と最小強度を指 定します。実際の強度は、レンダリングした画像のピクセル の明るさとしきい値から自動的に計算されます。最小強度 を大きくすると強度が大きくなりますが、最大強度を超える ことはありません。強度は、ハイライトの明るさと大きさを 同時に変更します。最適な効果を得るために、値をいろい ろと変更してみてください。 フレアサイズ ➔ 特 殊効果ページで、名前の左に小さな円がついている この値は、ハイライトの大きさを指定します。 パラメータは全てアニメート可能です。アニメーション を指定する方法については、CINEMA 4D のリファレンス マニュアルを参照してください。 ➔ ハ イライトフィルタは、レンダリングされたピクセルの 明るさを元にして計算するポストイフェクトです。した がって、全く関係ないパラメータの変更によって、その 効果が変わる場合があります。例えば、アンチエイリア スをかけた結果あるピクセルが暗くなれば、そこに生じ るハイライトは弱くなります。 ➔ ハイライトは「レンズ効果」のエンジンを使っています。 したがってハイライトを使う時は、必ずレンズ効果を働 かせておいてください。 しきい値 ハイライト効果は、レンダリングされた画像の中に含まれる、 しきい値よりも明るいピクセルに対して生成されます。ここ で、100% は普通の白( RGB 255/255/255)を表します。そ して、しきい値を 100% よりも大きくすると、ハイライト効 果は白よりも明るいピクセル(ノンクランプドカラー、RGB 255/255/255 以上)にだけ生じるようになります。ここで、 「あるピクセルがレンダリング時に白より明るく計算されたと しても、ファイルに保存したり画面に表示する時には、結局 一つのオブジェクトに対して、大きさの違う 2 個のフレアが生じてい ます。 プリセット このポップアップメニューにはハイライトのプリセットが入っ ていて、典型的なハイライトをレンダリングした画像に簡単 に追加できます。選択したプリセットハイライトを編集する ためには、プレビューの下にある編集ボタンをクリックして ください。 ハイライト • 45 グロー編集 左上から右下に向かって順に、レギュラー、ランダム、広角、ズーム、 カムコーダ、サーチライト、輝線 1、輝線 2、星 1、星 2、フラッシュ ライト、太陽、壊れた星、黄色い星、柔らかい輝線 1、柔らかい輝線 2、 青のプレビュ画像。 オブジェクト ID を使う このオブジェクト ID は、レンダリングタグの中で指定するオ ブジェクトバッファに対応しています。例えばシーンの中に オブジェクト A と B が存在し、それぞれに違うハイライト効 果を適用したいとします。この場合、レンダリング設定の特 殊効果ページでハイライトフィルタを 2 回選択し、オブジェ クト ID を使って切り分ければ、一つのハイライト効果をオ ブジェクト A だけに、もう一つをオブジェクト B だけに適用 できるのです。 まず 2 個のオブジェクトにレンダリングタグを適用し、オブ ジェクト A にバッファ 1 を、オブジェクト B にバッファ 2 を 指定してください。そして、ハイライトフィルタのオブジェク ト ID を使うオプションを選択し、値をそれぞれ 1 と 2 に指 定します。 グロー編集を使うと、リングやビームなどハイライトを構成 する部分の色や大きさなどを細かくを編集できます。グロー 編集ダイアログの中には、大きく分けて 4 つの部分があり ます。一つは左上にあるグロー本体を指定する部分、一つ は左中央にあるリングを指定する部分、一つは左下にある、 ビームの全体を指定する部分、一つは右上にあるビームの 詳細を指定する部分です。 グローのパラメータ グロー グローは、独立して編集可能な 5 個のエレメントから構成 されています。このポップアップメニューから編集したいエ レメントを選択してください。 タイプ このポップアップメニューから、選択したエレメントに対す るグローのタイプを指定してください。タイプを変更すると、 明るさの減衰(周辺のボケかた)が変わります。 46 • 4 章 サイズ カラー ここで、グローの大きさを指定します。単位は画像サイズに 対するパーセントで、100% は画面の中心から端までの距 離に相当します。 ここからリングのカラーを指定します。サイズの右にあるカ ラープレビューをクリックすると、システム標準のカラーピッ カが表示されるので、好きな色を選択してください。 R(縦横比) ビームのパラメータ この値は、グロー成分の縦横比を指定します。値が 1 の場合、 その形状は正円になります。値が 1 より大きいと、縦が伸 びた楕円になります。値が 1 より小さいと、縦が縮んだ楕 円になります。 カラー ここからグローのカラーを指定します。サイズの右にあるカ ラープレビューをクリックすると、システム標準のカラーピッ カが表示されるので、好きな色を選択してください。 ビーム ビームは、独立して編集可能な 5 個のエレメントから構成さ れています。このポップアップメニューから編集したいエレ メントを選択してください。 タイプ リングのパラメータ このポップアップメニューから、選択したエレメントに対す るビームのタイプを指定してください。タイプを変更すると、 ビームの性質が変わります。ビームの性質をさらに細かく編 集するためには、下で説明するパラメータを使います。 リング サイズ このポップアップメニューから、リングの種類を選択してく ださい。それぞれの働きは、使わない (リングは生じません)、 リング(カラーでリングの色を指定できます)、レインボーリ ング(虹色のリングです。カラーで明るさを指定できます)。 ここで、ビームの大きさを指定します。単位は画像サイズに 対するパーセントで、100% は画面の中心から端までの距 離に相当します。 サイズ R(縦横比) ここで、リングの大きさを指定します。単位は画像サイズに 対するパーセントで、100% は画面の中心から端までの距 離に相当します。 この値は、ビーム成分の縦横比を指定します。値が 1 の場合、 その形状は正円になります。値が 1 より大きいと、縦が伸 びた楕円になります。値が 1 より小さいと、縦が縮んだ楕 円になります。 R(縦横比) カラー この値は、リング成分の縦横比を指定します。値が 1 の場合、 その形状は正円になります。値が 1 より大きいと、縦が伸 びた楕円になります。値が 1 より小さいと、縦が縮んだ楕 円になります。 ここからビームのカラーを指定します。サイズの右にあるカ ラープレビューをクリックすると、システム標準のカラーピッ カが表示されるので、好きな色を選択してください。 角度 ビームは画面上で回転させられますが、その角度を指定し ます。 ハイライト • 47 ビームの太さ 1 本 1 本のビームの太さをパーセントで指定します。値を小 さくするとビームが細くなります。 ビームの数 ビームの数を指定します。一つのライトに対して 200 本まで のビームを指定できます。 すき間の数 すき間の数を指定します。すき間とは、ビームの間に存在 する何もない部分のことです。下のすき間の幅も参照してく ださい。 すき間の幅 すき間の幅を合計した値をパーセントで指定します。1 周が 100% に相当します。上のすき間の数も参照してください。 間隔のばらつき ビームの間隔にばらつきを与えたい場合は、このオプション を選択します。 長さのばらつき ビームの長さにばらつきを与えたい場合は、このオプション を選択します。 星状 ビームの形状を星状にしたい場合はこのオプションを選択し ます。すると、ビームの太さが中心で太く、先端で細くなり ます。このオプションを使う場合には、ビームの本数を少な くしたほうが効果的でしょう。 ハイライトの仕様上の制限 • 鏡面反射するオブジェクトの中に映って見えるオブジェクト や、透明なオブジェクトの中に透けて見えるオブジェクトに対 して、適切なハイライト効果がかからない場合があります。 • ハイライトフィルタは、PyroCluster モジュールや、被写界深 度フィルタと併用できません。 48 • 4 章 5 章 グローフィルタ グロー • 51 5 章 グローフィルタ Advanced Render には、レンダリングした画像にグローを かけるための強力なフィルタがあります。これを使えば、白 熱電灯や電極の間の放電、ぼんやりと光る LED やネオンサ イン、CRT モニタなどをリアルに表現できるはずです。また、 磨き上げた自動車のボディーに反射する太陽のまぶしさを 強調するためにも使えます。グローフィルタには、この他に も次のような機能があります。 てこれから説明します。 ➔ ・ グローの透明度をコントロールできます。 ・ レンダリングした画像の明るい部分にだけグローを追加でき ます。 ・ グローを加算する程度を調整し、白飛びを抑えられます。 ・ エッジやキーカラーの範囲にグローを限定できます。 マテリアルのグローチャンネルと、ここで説明するグロー フィルタを混同しないように注意してください。マテリ アルのグローは、そのマテリアルを適用したオブジェク トの上にだけ表れますが、グローフィルタは、レンダリ ングされた画像のピクセルを元にして計算します。例え ばライトのない真っ暗なシーンがあったとします。この ような状況でも、マテリアルグローならオブジェクトの 周囲に生成できますが、グローフィルタは何も生成でき ません。 グロー ・ 面の法線の向きにしたがって、グローのタイプやカラーを変 えられます ・ グローの中にフラクタルノイズを追加できます。 ➔ 製作 Thomas Andreasen。 グローフィルタはポストイフェクトで、レンダリング設定の特 殊効果ページから選択できます。この特殊効果ページを使 うための一般的な方法については、CINEMA 4D のリファレ ンスマニュアルを参照してください。 特殊効果ページのリストでグローを選択すると、さらに、グ ロー、カラー、距離、面の法線、ノイズの5枚の設定ペー ジが表示されます。これらのページにあるパラメータについ 特殊効果ページで、名前の左に小さな円がついている パラメータは全てアニメート可能です。アニメーション を指定する方法については、CINEMA 4D のリファレンス マニュアルを参照してください。 ➔ オ ブジェクトのグローを均一にするためには、カラーを 選択し、バランスの値を大きくしてください。 52 • 5 章 オブジェクト ID このオブジェクト ID は、レンダリングタグの中で指定するオ ブジェクトバッファに対応しています。例えばシーンの中に 多数のオブジェクトが存在し、その一つだけにグロー効果 を適用したいとします。この場合、レンダリング設定の特殊 効果ページでグローフィルタを選択し、オブジェクト ID を 1 に指定してください。そして、グローを適用したいオブジェ クトにレンダリングタグを適用し、バッファ 1 を指定します。 これでグロー効果はこのオブジェクトの上にだけ生じるよう になります。 サイズの値は、グローの明るさにも関係しています。なぜな ら、あるグローの強度 (次に説明する強度の値で指定された) がグロー全体に分散するからです。したがって、グローのサ イズを大きくすると、その分暗くなります。 強度 この値はグローの透明度を指定します。この値が 0 の場合、 グローは完全に透明になります(つまりグローは生じない)。 値を大きくするにつれて濃度があがり、明るいグローが生 成されます。 サイズ ここで、グローの大きさを指定します。単位は画像サイズに 対するパーセントで、100% は画面の中心から端までの距 離に相当します。もし、オブジェクトの拡大とともにグロー の大きさを拡大したい場合には、ズームでスケールと距離で スケールのオプションを選択してください。 強度の値を大きくした場合。 サイズの値を大きくした場合。 強度の値を小さくした場合。 サイズの値を小さくした場合。 グロー • 53 暗部の強度 このパラメータは、暗い部分に生じるグローの強度をコント ロールします。これによって、明るい部分から暗い部分にか けてのグローの変化を微調整できます。暗い部分に生じる グローを減らしたい場合には、暗部の強度の値を大きくして ください。 暗部の強度の値を小さくすると、グローの逆の効果(暗いグロー)を 表現できます。 発光 暗部の強度の値を大きくした場合。 グロー効果は一般的に加算的な効果で、ピクセルを一方的 に明るくします。しかしこの発光の値を使うと、グローの加 算的な働きを調整し、暗くすることが可能です。この値を 0% にすると、オブジェクトの周りに埃が集まったような効 果が得られます。 暗部の強度の値を小さくした場合。 この暗部の強度を使うと、暗い(黒い)グローを表現する こともできます。これは黒いチリや煙を表現したい場合に 有効でしょう。暗いグローを生成するためには、暗部の強 度の値を小さくしてください。 発光の値を小さくした場合。 54 • 5 章 カラーを指定 カラーを指定オプションが選択されていない場合、グロー はピクセルの色(マテリアルの色)を元にして計算されます。 もし、グローを特定の色に変えたい場合は、カラーを指定 オプションを選択してください。そして右のカラープレビュ をクリックし、好きな色を指定してください。ここで、プレビュ の左にある小さな三角をクリックすると、RGB スライダが表 示され、直接カラーを変更できます。 発光の値を大きくした場合。 暗部の発光 このパラメータを使うと、レンダリングされたピクセルの明 るさを元にして、発光の度合いをより細かくコントロールで きます。グロー効果は一般的に加算的な効果で、ピクセル を一方的に明るくします。しかしこの値を使うと、グロー の加算的な働きを調整し、暗くすることが可能です。特に、 グローの効果が強すぎて画面が白く飛んでしまう場合は、 このパラメータの値を下げてみてください。 暗部の発光の値が大きい場合(左下)と、小さくした場合(右上)。 このオプションは、オブジェクトの陰影に関係なく、全体に 均一なグローを生成したい場合にも有効です。カラープレ ビュをクリックして好きな色を指定し、下にあるバランスの 値を大きくしてください。さらにオブジェクト ID オプション を使うと、特定のオブジェクトだけにグローを生成できます。 まずオブジェクトにレンダリングタグを適用し、その中で対 応するバッファ ID を指定してください。 グロー • 55 エッジグロー このオプションを使うと、グローの範囲をオブジェクトの周 囲だけに限定できます。オブジェクトの陰影に関係なく、エッ ジグローの明るさや色を均一にしたい場合には、カラーを 指定のオプションを選択し、バランスの値を 100% にしてく ださい。 ズームでスケールを切った場合。グローの厚みは、オブジェクトを拡 大しても変りません。 均一なエッジグローを得るために、エッジグローオプションを選択し、 バランスの値を 100% にしています。 ズームでスケール 一般的に、画面に表示されたオブジェクトを拡大するには 2 つの方法があります。 1. カメラの焦点距離の値を大きくする(ズームアップする)。 ズームでスケールを選択した場合。オブジェクトを拡大すると、グロー の厚みも拡大されます。 2. カメラをオブジェクトに近づけるか、逆にオブジェクトをカメ ラに近づける(この場合は、距離でスケールを参照してくだ さい)。 距離でスケール そして、ズームでスケールオプションを選択した場合、カメ ラの焦点距離を変えてオブジェクトを拡大すると、グローの 厚みもオブジェクトにしたがって拡大されます。 距離でスケールオプションを選択した場合、カメラを移動し てオブジェクトを拡大すると、グローの厚みもオブジェクト にしたがって拡大されます。ただし、ズームアップしてもグ ローは変化しません。ズームでスケールオプションも参照し てください。 56 • 5 章 バランス バランスの値は、レンダリングされたピクセルと、生成され るグローの強度との関係を指定します。この値が 0% の場 合、明るい部分は強いグローを生成しますが、暗い部分は グローを生成しません。この値を 100% にすると、全ての 部分が、同じ強度の強いグローを生成するようになります。 しかしながら、グローに使われるカラー自体は対応するピク セルのカラーに依存します。つまり暗い部分にも強いグロー が生じるが、色は暗いままだ、という点に注意してください。 オブジェクト全体に均一な強度とカラーのグローを生成した い場合には、カラーを指定オプションを選択してください。 また、特定のオブジェクトにだけグローを生成したい場合に は、オブジェクト ID オプションを選択してください。 カラーによる変化 このページにあるパラメータを使うと、明るさが指定した 値の範囲にあるピクセルにだけグローを生成できます。こ の明るさの範囲を、明るさの最小値と最 大値のフィール ドに入力してください。ここで、100% は普通の白( RGB 255/255/255)を表します。そして、ここに 100% よりも大 きな値を入力すると、グロー効果は白よりも明るいピクセル (ノンクランプドカラー、RGB 255/255/255 以上)にだけ生 じるようになります。ここで、 「あるピクセルがレンダリング 時に白より明るく計算されたとしても、ファイルに保存した り画面に表示する時には、結局普通の白に飽和させられて しまう」という点に注意してください。しかしながら、グロー 効果を白より明るいピクセルに適用しておくことで、 「その部 分が白よりも明るい」ということを表現できるのです。 バランスの値を大きくした場合。 明るさの最小値 / 明るさの最大値 これらの値はピクセルの明るさの範囲を指定します。この範 囲にあるピクセルだけがグローを生成できるのです。そして、 これらの値を 100% 以上に指定しておくと、白よりも明るい 色だけにグローを適用できます(上の解説を参照)。 カラーによる変化のオプションを正しく働かせるためには、 下にあるカラーなどのグラデーションを選択し、適切に設 定してください。 均一なカラーのグロー(カラーオプションを選択)。 グロー • 57 キーカラーを使う さい。そして黒いキーは値が 0 であることを表し、白いキー はグローページで指定した値がそのまま使われることを表 します。 距離による変化 緑のキーカラーにグローを限定した場合。 キーカラーオプションを使うと、明るさではなく指定した色 の範囲にグローを限定できます。多くの場合、オブジェクト は色によって適切に分離されているので、色によってグロー の範囲を限定するというのも有効なオプションです。また 同時に、オブジェクトの色は面の向きなどによって微妙に変 化します。したがって、適切な色の範囲にグローが生成する ように、下にあるフィールドに色の範囲をパーセントで入力 してください。もしこの値が小さすぎると、グローが生じな かったり、非常に狭い範囲にしか生じないことになるので、 注意してください。 グラデーションを使う 指定した明るさの範囲で、サイズ、強度、発光、カラーの 性質がどのように変化するか、グラデーションバーを使っ て細かく指定できます(それぞれの性質の働きについては、 前の節を参照してください)。 これらのグラデーションは、明るさの最小値と最大値の間、 もしくはキーカラーの色の範囲の間に収まる、と考えてくだ このページにあるパラメータを使うと、Z バッファ(カメラか らオブジェクトまでの距離を表す)や、オブジェクト中心か らの距離によってグローの性質を変化させられます。 開始距離 / 終了距離 この開始距離と終了距離の値を使って、グローが変化する 範囲を指定します。 58 • 5 章 変化モード 2 種類の方法で、グローの変化を指定できます。。 面の法線による変化 カメラからの距離 Z バッファの値に対して、開始距離と終了距離を指定します。 つまり、カメラからの距離に応じてグローを変化させます。 オブジェクト中心からの距離 3D 空間におけるオブジェクトのローカル座標に対して、開 始距離と終了距離を指定します。つまり、オブジェクト中心 からの距離に応じてグローを変化させます。 グラデーションを使う 指定した距離の範囲で、サイズ、強度、発光、カラーの性 質がどのように変化するか、グラデーションバーを使って細 かく指定できます(それぞれの性質の働きについては、前 の節を参照してください)。 このページにあるパラメータを使うと、オブジェクトを構 成する面の法 線の向きによって、グローの性質を変化さ せられます。 「面の法 線」という言葉の意味については、 CINEMA 4D のリファレンスマニュアルを参照してください。 これらのグラデーションは、開始距離と終了距離の間に収 まると考えてください。そして黒いキーは値が 0 であること を表し、白いキーはグローページで指定した値がそのまま 使われることを表します。 面の法線とカメラからの視線とのなす角度にしたがってカラーが変 化するグロー。 ハイライト このパラメータはグローのハイライトをコントロールします。 グロー • 59 グラデーションを使う ノイズ 法線の向きにしたがって、サイズ、強度、発光、カラーの 性質がどのように変化するか、グラデーションバーを使っ て細かく指定できます(それぞれの性質の働きについては、 前の節を参照してください)。 吹きだす炎、空中を走る雷、揺らめくガスといった複雑な 現象も、ここで説明するノイズを使って表現できる効果の 一例に過ぎません。また、特にノイズが必要ない場合でも、 わずかなノイズをグローに乗せることで、リアリティを向上 させることができます。 これらのグラデーションは、カメラからの視線と面の法線と のなす角度が、0°から 90°の間に収まると考えてください。 そして黒いキーは値が 0 であることを表し、白いキーはグ ローページで指定した値がそのまま使われることを表しま す。 カラーにノイズを追加した例。このカラーは、面の法線とカメラか らの視線とのなす角度にしたがって変化します。 このノイズページには多くのパラメータがあるため、最初は 少し引いてしまうかもしれません。しかし、数分間の間各 パラメータを適当にいじってみれば、簡単な操作で非常に 複雑な効果を得られるということがわかるはずです。 60 • 5 章 ノイズタイプ ここから、ガス、炎、放電の 3 種類のノイズタイプを選択 できます。ガスは薄い雲や煙のような質感を表現します。 炎は炎の揺らめきを表現します。放電は、雷やプラズマに ともなって生じる放電現象を表現します。 強度の値を大きくした場合。 強度の値を小さくした場合。 ノイズの強度は、グローページにある強度や発光といった 基本的なパラメータにも依存します(グローの節を参照)。 濃度 濃度の値は、グローの透明度を指定します。値が 0 の場合、 完全に透明になり、その結果グローは見えなくなります。 ガスノイズ。 炎ノイズ。 濃度の値を大きくした場合。 濃度の値を小さくした場合。 明るさ 放電ノイズ。 上のサンプルは一つの例として考えてください。各種のパラ メータを変更すれば、上のサンプルとは全く違ったノイズで も生成できます。ノイズタイプを選択した後で、ノイズペー ジにあるその他のパラメータを使って、必要なイメージを表 現できるようにノイズ効果を細かく調整してください。 強度 この値は、ノイズの強度をコントロールします。ノイズを明 るくするためには、この値を大きくしてください。値を 0 に すると、グローは生じなくなります。 この値は、ノイズ効果の明るさを指定します。グローが明る すぎる場合には、この値を小さくしてください。 グロー • 61 発光 スケール 発光の値は、カラーを使うとグランドグローの 2 個の成分 に影響します。この値は、これらの成分をオリジナルの画 像に合成する際に、加算する程度を決定するのです。 この値は、ノイズの元になるフラクタルノイズのスケールを 変更します。 発光の値を小さくした場合と(左下)、大きくした場合(右上)。 上から下に向かって順に、スケールの値を小さくした場合、中ぐらい にした場合、大きくした場合。 カラーを指定 ピークブレンド ここでノイズのカラーを指定できます。 カラーを指定オプショ ンを選択し、右にあるカラープレビュをクリックして、好き な色を選択してください。もしカラーを指定しなかった場合 には、グローページで指定されたカラーがそのまま使われ ます。 オリジナル画像に含まれる暗い部分を残したい場合には、 この値を大きくしてください。ノイズの中の明るい部分だけ が残るようになります。また、ノイズの効果を反転させたい 場合には、このフィールドに負の値を入力してください。 上から下に向かって順に、ピークブレンドの値を負にした場合、小さ くした場合、大きくした場合。 62 • 5 章 詳細 位置を固定 詳細の項にあるパラメータは、フラクタルノイズの複雑さを 指定します。この値を最小の 1 に指定すると、最も単純な パターンが生成され、計算時間も短くなります。そして、こ の値を大きくしていくと、ノイズのパターンが複雑になりま す。しかしこの値を 10 以上にすると、パターンが複雑にな りすぎて事実上見えなくなり、また計算時間も非常に長くな るので、注意してください。 グローの中のフラクタルノイズを、ワールド座標に対して固 定したい場合には、このオプションを選択してください。こ の場合、オブジェクトが動いてもノイズパターンは動きませ ん。 基本グロー 設定によっては、ノイズが基本となるグローを変えてしまう 場合があります。この基本グローオプションが選択されてい る場合、基本となるグローは全く変更されず、その上にグロー が加算されるようになります。 上から下に向かって順に、詳細の値を小さくした場合、中ぐらいにし た場合、大きくした場合。 位相 ノイズをアニメートしたい場合には、この位相の値をアニ メートしてください。一般的に、位相の時間変化が小さけ ればノイズはゆっくりと変化し、これはガスの表現に適して います。また、位相の時間変化が大きければノイズは激し く変化し、これは炎や放電の表現に適しているでしょう。イ メージにあったノイズアニメーションを得られるように、位 相の変化速度をいろいろと変えてみてください。 方向 / 流れ 方向と流れの値は、主として雲の動きを表現するためにあ り、アニメーションを作成する場合にだけ意味を持ちます。 方向は、グローの中のフラクタルノイズが流れる方向を指定 し、流れの値はノイズが流れる速度を指定します。 上から下に向かって順に、基本グローを切った場合、働かせた場合、 ノイズを切った場合。 グロー • 63 伸び ノイズを特定の方向に引き伸ばしたい場合には、この値を 変更してください。引き伸ばされる方向は、上の「方向」で 指定した方向になります。この値を大きくすると、ノイズパ ターンが伸びます。 上から下に向かって順に、伸びの値を小さくした場合、中ぐらいにし た場合、大きくした場合。 グローの仕様上の制限 ・ 鏡面反射するオブジェクトの中に映って見えるオブジェクト や、透明なオブジェクトの中に透けて見えるオブジェクトに対 して、適切なグロー効果がかからない場合があります。 ・ 被写界深度フィルタの前にグローフィルタを適用すると、その 効果が被写界深度効果によって上書きされてしまいます。ま た、後にグローフィルタを適用すると、効果が不正確になり ます。 ・ グローフィルタは、PyroCluster モジュールとは併用できませ ん。 ・ グローフィルタは、ハイライトフィルタとは併用できません(レ ンズ効果にまでグローがかかります)。 ・ グローフィルタは、 オブジェクトモーションブラーとは併用 できません(ブラーに関係なく、静止したオブジェクトにグロー がかかります)。 6 章 ベクターモーションブラー ベクターモーションブラー • 67 6 章 ベクターモーションブラー ➔ VMB(ベクターモーションブラー)を独立したパス(レ イヤ)として出力するには、 「レンダリング設定 -> マル チパス」タブで右上のチャンネルリストから「特殊効果」 を選択して下さい。 シーンモーションブラーに対する利点は、計算時間が圧倒 的に短いのと、なめらかなブレが得られる点です。シーンモー ションブラーはい一番汎用性が高く、正確なブレを計算で きますが、多くのフレームを計算するために長い時間が必 要で、フレーム数が足りないと静止画が重なったようなブレ になってしまいます(ストロボ効果と呼ばれます)。オブジェ クトモーションブラーと比較した場合は、ベクターモーショ ンブラーの方が全面的に優れています。ベクターモーション ブラーは、曲線に沿って移動したり、回転するオブジェクト をブレさせることができ、またボーンのようなデフォーマに よる変形にも対応しているからです(しかしながら、カメラ によるブレや、影や鏡面反射像のブレを表現するにはシー ンモーションブラーが必要です)。 ベクターモーションブラーの使い方 従来のシーンモーションブラーやオブジェクトモーションブ ラーに加えて、 「ベクターモーションブラー」という新しい 機能が追加されました。ベクターモーションブラーはオブ ジェクトモーションブラーを拡張した機能で、他のモーショ ンブラー同様オブジェクトの動きとカメラのシャッター開度 によってブレの大きさが変化します。 「シャッター開度」と いう言葉は現実のムービーカメラで使われている回転する シャッターから来た言葉です。この角度によってシャッター が開いている時間が決まり、それによってブレの大きさも決 まるわけです。 例えば、シャッター開度の値が 100% であれば、1フレー ムに相当する時間のすべてに渡ってシャッターが開いている ことになります。この結果オブジェクトのブレは最大となり、 ブレの終わりは次のフレームでのブレの始めとぴったり重な ります。 また、CINEMA 4D ではより大きなブレを得るために、現実 のカメラでは得られない 360 度以上のシャッター開度を指 定することもできます。オブジェクトモーションブラーと異な り、ベクターモーションブラーはブレの最初の点と最後の点 の間の移動経路を考慮します。つまり、移動経路に沿って 途中の点をいくつかサンプリングし、正確なブレを表現でき るのです。これによって回転運動でもブレさせることができ ます。 まず、オブジェクトマネージャでベクターモーションブラー をかけたいオブジェクトに「モーションブラー」タグを適用 してください。このタグで指定する「強度」の値は、後で説 明する「シャッター開度」の値を増減させる働きを持ってい ます。次に、 「レンダリング設定 -> 特殊効果」タブで右上 の特殊効果ドロップダウンリストから「ベクターモーションブ ラー」を選択してください。そして、以下のパラメータを適 切に指定してください。 68 • 6 章 特殊効果の設定 シャッター角度 「偏り」の値は、オブジェクト本体に対するブレの位置を指 定します。値とブレとの関係は以下のようになります。 -100%: オブジェクトの後ろ側にブレる。 0%: オブジェクトの前後に均等にブレる。 100%: オブジェクトの前側にブレる。 また「濃度」の値はブレの濃さを指定します。 サンプル数、サンプル半径 左はシャッター開度が小さい場合。右は大きい場合 シャッター開度の値はブレの大きさを決定します。現実のカ メラとは異なり、CINEMA 4D ではここに非常に大きな値を 指定することも可能です。これによって、ブレとは異なった 「残像」のような特殊な効果を得ることができます。ただし、 自然なブレを表現したい場合にはデフォルトの 180°に近い 値を指定し、オブジェクトを適切な速度で動かして下さい。 これによって、オブジェクトの1フレームの移動量に収まる ブレが得られるはずです。この値を 360°にすると、オブジェ クトの移動量と同じ大きさのブレが得られます。現実のカ メラではフィルムを送る必要があるので、通常この値は 180 度程度です。CINEMA 4D では 1,080°まで指定できます。 偏り、濃度 ベクターモーションブラー • 69 「サンプル数」の値は、ブレ計算の精度を指定します。この 値を小さくするとざらざらした画質になります。この値を大 きくするとなめらかな画質になりますが、その分計算時間も 長くなります。 「サンプル半径」の値は、ブレ計算の細かさ を指定します。 この値を小さくするとブレの中に見えるパター ンがシャープになり、大きくするとボケます。 周辺部を薄く 上は周辺部を薄くオプションを外した場合。下は選択した場合。 「周辺部を薄く」オプションを選択すると、ブレの周囲が徐々 に薄くなるようにベクターモーションブラーが計算されます。 その結果、感覚的にリアルなブレを表現できます。 デフォーマを考慮 このオプションを選択すると、デフォーマの変形による動き に対してもブレを計算できます。ボーンや FFD によって動く オブジェクトのブレを表現したい場合にはこのオプションを 選択してください。 70 • 6 章 7 章 内部拡散反射 内部拡散反射 • 73 7 章 内部拡散反射(サブサーフェイススキャッタリング) 現実の世界には、光を内部拡散反射する数多くのマテリア ルが存在します。例えば、磁器、大理石、生物の体、プラ スティック、ミルクなどです。これらのマテリアルに共通す るのは、完全に透明なマテリアルの中に異なったマテリアル の粒子が分散している、 という点です。 この粒子の密度によっ て内部拡散反射の度合いが決まります。水や空気のように 完全に透明なマテリアルや、金属のように完全に不透明な マテリアルの内部で内部拡散反射は起こりません。 内部拡散反射シェーダは、発光チャンネルの中で使うよう に考えられています。しかしながら、独立したシェーダです から他のチャンネルで使うのも自由です。例えば透過チャン ネルにこのシェーダを適用すると、内部に進入した光の量 に応じて不透明になるマテリアルを表現できます。 内部拡散反射を使う 内部拡散反射機能を使うのは簡単です。 次の手順にしたがっ て下さい。 - 新規マテリアルを作成し、発光チャンネルに内部拡散反射 シェーダを適用してください。そして、 「 浸透距離」の値を 適切に指定してください。一般的に、この値はオブジェクト の大きさより小さめにします。 内部拡散反射(SSS)機能の働きは、その地味な名前に比 べてとても強力です。一般的に、半透明なマテリアルの内 部に浸透した光線は拡散され進行方向がランダムに変化し ます。また、一部の光線は吸収されて暗くなり、吸収の度 合いが光の波長ごとに異なる場合は色が付きます。この結 果、半透明なマテリアルが適用されたオブジェクトでは普通 に表面で反射される光が減って暗くなるかわりに(この光の 量はカラーチャンネルで指定します)、オブジェクト全体が ぼんやりと発光しているように見えます。CINEMA 4D にお ける内部拡散反射は、オブジェクト内部に生じる一種のボ リュームライトであり、上右図のように閉じたオブジェクトで 自然な結果が得られます。 ➔ CINEMA 4D の拡散反射はマテリアル内部で光線を 1 回しか拡散できません。その結果、上右図のように光 線の入射した部分以外は不自然に暗くなってしまいま す。このような場合、細かいバンプを追加すると内部 拡散の効果を表面全体に分散できます。 - 次に、 「浸透する光の強度」の値を適切な明るさになるよう に調節して下さい。 - 次に、必要があれば「カラーフィルタ」でグラデーションを指 定し、 「フィルタが働く距離」や「フィルタの明るさ」を指定 して下さい。フィルタが働く距離の値は、指定したカラーグ ラデーションに従って光線の色が変化する距離に相当します。 - 最後に、画質を見ながら「サンプル数」の値を調整します。 74 • 7 章 マテリアルマネージャと属性マネー ジャの設定 できます。例えば、赤いプラスティックを何年間も屋外にさ らしておくと、表面が退色して白っぽくなってきます。カラー フィルタの左側を白、右側を赤に指定すると、このような風 化したプラスチックでも表現できます。 浸透する光の強度 左は浸透する光の強度が小さい場合。右は大きい場合。 カラーフィルタ ➔ ただし、入射する光線に含まれていない色をカラーフィ ルタで指定すると、内部に光が浸透しなくなるので注 意して下さい(例えば緑のフィルタに赤い光を通した場 合、光は透過できません)。この問題が生じた場合は、 白い光を入射させると解決できます。白い光にはすべて の色が含まれているからです。 このパラメータは、内部拡散反射効果の全体的な明るさを 決定します。効果がよくわかるように、最初は大きめの値を 指定し、最後に適切な値に抑えるようにして下さい。 フィルタが働く距離、フィルタの明るさ このカラーグラデーションを使うと、内部に浸透する光の 色を浸透した距離にしたがって変化させられます。 - カラーグラデーションの左端は、光線が入射する位置での色 を表します。 - カラーグラデーションの右端は、光線が入射した位置から 「フィルタが働く距離」まで浸透した時の色を表します。 右下にあるような 2 色に変化するカラーフィルタを使った場合。 このフィルタを使うと、内部が均一でないマテリアルを表現 左はフィルタが働く距離の値が小さい場合。右は大きい場合(左側 の青い色がより多くの部分で使われています)。 「フィルタが働く距離」の値は、指定したカラーグラデーショ ンに従って光線の色が変化する距離に相当します。つまり カラーグラデーションの右端が、光線が入射した位置から この距離だけ移動した位置に相当します。一般的には、浸 透距離と同じ値に固定して構いません。 「フィルタの明るさ」 の値は、単純にフィルタの色に乗算されます。もしこの値 が 0% なら、カラーグラデーションの色は全て黒として使わ れます。またもしこの値が 1,000% なら、カラーグラデーショ ンの色はほとんどの場合真っ白として使われます。 内部拡散反射 • 75 サンプル数 サンプル数の値が小さい場合。 このパラメータの働きは、CINEMA 4D の他の機能で使われ ている 「サンプル数」の働きと同様です。一般的にコンピュー タが物理的な現象をシミュレートする場合、全てを計算する ことはできません。例えば内部拡散反射の計算では、オブ ジェクトに入射した光の色や明るさをある一定の距離ごとに 計算していきます。つまり、この一定の距離の間で生じた小 さな変化は見逃されてしまうのです。ここでサンプル数の値 を大きくすると、この距離が小さくなり浸透する光をより正 確に計算できます。そのかわり計算量が増えるので、レンダ リング時間も増加します。テストレンダリングを素早く終わ らせるために、最初は小さめの値を指定し、最後に適切な 値に上げるようにして下さい。 最小距離 このパラメータは、オブジェクトに入射した光が減衰せずに 浸透できる距離を決定します。これによって、ナイフの刃の ような非常に薄い部分に生じる、急激な明るさの変化を回 避できます。ただし、現在の仕様ではこの値を変える必要 はありません。 浸透距離 このパラメータは、入射した光がオブジェクトの内部を浸透 可能な距離を決定します。生物の体や柔らかいプラスチッ クを表現する場合は、この値をオブジェクトの大きさよりも 小さく設定して下さい。オブジェクトの内部で光は指数関数 的に減衰し、この値は光の強度が半分になる距離を定義し ます。したがって、実際にはこの値の 4 から 6 倍ぐらいま で光が浸透して見えます。この値をオブジェクトより大きく した場合、オブジェクトはガスのように非常に明るくなりま す。また、この値を非常に小さくした場合、オブジェクトは 大理石のように不透明に近くなります。 法線の向きで内部と外部を区別 内部拡散反射は、オブジェクト内部に生成される特殊なボ リュームライトであるため、どこがオブジェクトの内部であ るかを厳密にシェーダに伝えなければなりません。 オブジェクトの内部は二つの方法で指定できます。 - 「法線の向きで内部と外部を区別」オプションが外れている 場合、シェーダは光線が最初にぶつかった面と 2 番目にぶつ かった面の間にオブジェクトが存在すると考えます。ところ が、この方法だと二つのオブジェクトが重なっている場合に、 重なった部分を「空洞」と誤解してしまいます。例えば二つ の球体が重なっている場合、光線が最初にぶつかった面の後 ろはオブジェクトが存在すると正しく認識されますが、2 番目 にぶつかった面の後ろは 「空洞 (もしくはオブジェクトの外部)」 だと認識されてしまうのです。しかしながら、常識的に考え てこの部分はまだオブジェクトの内部です。したがって、レン ダリングされた画像は不自然に見えます。 このモードでは、法線の向きが考慮されません。したがって、 重なった部分を持たないきれいなオブジェクトを扱っている 場合には、このオプションを外しておくことをお勧めします。 なぜなら、法線の向きを正しくそろえる必要がないからです。 - 次に、 「法線の向きで内部と外部を区別」が選択されている 場合、法線の向きにしたがってオブジェクトの内部と外部が 区別されます(面の法線は、ポリゴンモードでポリゴンを選 択した時に黄色い線で表示され、法線が飛び出している面 が表面となります)。このモードを使うと重なったオブジェク トでも正しくレンダリングできますが、あらかじめ全ての法線 をきちんと外側にそろえて置く必要があります。 76 • 7 章 8 章 サブポリゴン変位 サブポリゴン変位 • 79 8 章 サブポリゴン変位 グする方が速いので、 SPD は速度的にも有利です。ここで、 「仮想的なポリゴン」というのは、メモリに読み込まれず、 必要に応じて生成されたり、HD から呼び出されるポリゴン を意味します。 ✔ ➔ もしバンプチャンネルを使ってオブジェクトの凹凸を表 現している場合は、そのテクスチャを変異チャンネルに 移し、SPD を働かせてみてください。ほとんどの場合、 SPD の方がよりリアルで自然な結果をもたらします。 SPD はレンダリング時にポリゴンを変形させる機能であ るため、 「現在の状態をオブジェクト化」機能を使って その形状を固定することはできません。この点も従来 の変位と同じです。 SPD には次のような利点があります。 ドイツ、フリードリッヒドルフの日食(黒い点になっている)。この絵 では、下のグレースケール画像を SPD に適用し、地球上の凹凸を表 現しています。 サブポリゴン変位(以下の文章では SPD と省略します)は、 原理的には従来の「変位」チャンネルと同じです。つまり、 適用されたグレースケール画像の値を元に、レンダリング 時にオブジェクトを変形させます(いくつかのモードではカ ラー画像も使えます)。従来の変位に対する SPD の利点は、 レンダリング時にオブジェクトを細分化できる、という点に あります。これによって、荒いポリゴンに対してでも非常に 精細でスムーズな変位を表現できます。元になるオブジェク トをモデリング時に十分に細分化しておけば、従来の変位 でも同じ結果が得られますが、非常に多くのメモリと長いレ ンダリング時間が必要になるため、現実的ではありません。 SPD を使うと、たとえば数ポリゴンしかないオブジェクトに 対して、テクスチャの明暗を元にして細かな凹凸をつけられ るのです。このテクスチャには 16bit 画像も使えます。 SPD によって非常に細かく分割されたポリゴンを全てメモリ に読み込んでレンダリングするために、CINEMA 4D は特殊 なメモリ管理システムを使います。一般的に、仮想的なポ リゴンをレンダリングするよりも、実ポリゴンをレンダリン - ポリゴン数を増やさずに細かい形状を表現できます。エディ タでポリゴン数を増やすと、エディタビューの表示が遅くなる、 編集が困難になる、ファイルサイズが大きくなるなどの問題 点があります。 - オブジェクト表面の凹凸に関しては、ほとんどの場合、モデ リングツールで形状を作るよりも、2D テクスチャで表現した ほうが簡単です。 - 従来この目的にはバンプチャンネルが使われてきましたが、 実際にオブジェクトが変形しないバンプよりも、オブジェクト が変形する SPD の方が自然な結果が得られます。 ✔ CINEMA 4D には、アニメーション可能なシェーダがた くさんあります。これらのシェーダと SPD を組み合わせ ると、たとえば実際に波打つリアルな海などを表現で きます。 80 • 8 章 マテリアル編集の設定 SPD(サブポリゴン変位) このオプションをチェックすると、SPD 機能が働くようにな ります。このチェックを外した場合は、従来の「変位」機 能が働きます。従来の変位は、オブジェクトを細分化せず、 始めから存在するポイントだけを変異させます。 分割数 SPD の設定は、属性マネージャかマテリアル編集の「変異」 ページにあります。また、一般設定にも「SPD(サブポリゴ ン変位)に割り当てるメモリ量(MB)」というオプションが あります。これは、SPD に割り当てるメモリ量を制限するた めにあります。 タイプ ここで変位のタイプを指定します。 強度、強度(中心) グレースケール画像の明度に応じて、ポイントを法線方向に 変異させます。強度(中心)を選択した場合、50% より暗 い部分が逆方向に変異します。 R/G カラー画像に含まれる R、G 成分の明度に応じて、ポイント を法線方向に変異させます。緑の部分が法線方向に、赤の 部分が逆方向に変異し、黒の部分は変異しません。 RGB(ローカルの XYZ)、RGB(グローバルの XYZ) カラー画像の RGB 値に応じて、ポイントの座標をローカル、 もしくはグローバルのの XYZ 方向に変異させます。 2 個のスライムボール。これらのオブジェクトは「ポリゴン化せずにレ ンダリング」オプションを外した球体オブジェクトでできていて、分 割数が下から上に 2、4、8 となっています。 ここで、レンダリング時に SPD がオブジェクトを分割する数 を指定します。SPD が指定されたマテリアルを適用された オブジェクトは、その全体がこの分割数で細分化されます。 したがって、カメラから見えないとわかっているポリゴンは あらかじめ消去しておいたほうがいいでしょう。なぜなら、 カメラから見えないとしても、そのポリゴンから多くのポリ ゴンが生成されるからです。一般的に、分割数を大きくす ればよりスムーズな形状が得られますが、その分メモリを消 費し、レンダリング時間も長くなります。 したがって、分割数の値はオブジェクトごとに適切な値とな るように慎重に設定する必要があります。たとえば、正 8 面体プリミティブと平面プリミティブを、SPD を使って同じ 分割数で細分化した場合、レンダリングされた結果は大き く異なります。なぜなら、正 8 面体の元のポリゴン数が 8 個であったのに対し、平面には 400 個ものポリゴンが含ま れていたからです。キャラクターのように部品ごとの分割数 が大きく異なるオブジェクトにも同じことが言えます。普通 キャラクターの顔は細かく分割されているものですが、腕や 脚の分割はそれほど細かくありません。このようなオブジェ サブポリゴン変位 • 81 クトの各部分を同じ分割数で細分化すれば、必ず余分なと ころと足りないところができます。 ただし、次の図のように意図的にエッジを残したい場合に は、このオプションを外してください。 オブジェクトが含んでいる全てのポリゴンは、次のような規 則によってレンダリング時に三角ポリゴンに分割されます。 - 三角ポリゴンの場合 ( : 2 の n 乗)*(2 の n 乗) - 四角ポリゴンの場合 ( : 2 の n 乗)*(2 の n 乗)* 2 ここで、n = 分割数 計算の例 たとえば分割数の値を 8 に指定した場合、レンダリング時 に生成されるポリゴン数は次のようになります。 正 8 面体の場合:8*256*256 = 524,288 ポリゴン 平面の場合:400*256*256*2 = 52,428,800 ポリゴン 形状を丸める 左は形状を丸めるオプションを適用した場合、右は外した場合。 上で述べたように、このオプションは HyperNURBS と同じ アルゴリズムでオブジェクトを丸めます。したがって場合に よっては、従 来 HyperNURBS を使って表現していた形 状 を、HyperNURBS なしに SPD だけで表現できるでしょう。 SPD で丸めた方が効率よくレンダリングできます。また、 HyperNURBS を適用したオブジェクトにさらに SPD を適用 することもできます。ただし、この場合は HyperNURBS で 細分化したオブジェクトを、さらに SPD で細分化すること になります。ポリゴン数が多くなりすぎないように気をつけ てください。 角を丸める 左は形状を丸めるオプションを外した場合、右は適用した場合。 SPD を適用するとポリゴンが細分化されるため、通常のフォ ンシェーディングによるスムージングができなくなります。 そこで、SPD を適用する段階で、HyperNURBS と同様のア ルゴリズムを使ってオブジェクトの形状を丸めることができ ます。 その効果は、細かい凹凸がある部分ではわかりませんが、 変位のない平らな部分でよくわかります(上図の太平洋の部 分)。ただし、HyperNURBS と違って、このオプションを選 択した場合でもポリゴンの縁は丸くなりません。 このオプションを選択すると、開いたポリゴンの角(隣り合 うポリゴンがないエッジ)が丸められます。角を丸めたくな い場合には、このオプションを外してください。たとえば下 の図で、正方形の角を残したまま凹凸をつけたい場合など は、このオプションを外します。 左は角を丸めるオプションを適用した場合、右は外した場合。 82 • 8 章 丸めた後でマップする シャープエッジを維持 このオプションは、SPD の元となるテクスチャを丸めたオブ ジェクトに投影するかどうかを指定します。多くの場合は、 このオプションを選択した方が自然な結果となり、問題が生 じません。 ただし、このオプションを適用すると計算が 10% 程遅くな ります。また、SPD に使うテクスチャの全てをオブジェクト 上に表示させたい場合もあります。そのような場合は、こ のオプションを外してください。 左から右へ順に、元のエッジを保存オプションを適用した場合、外 した場合、そのまま分割数を下げた場合。 このオプションが選択されている場合、スムーズタグで指定 したスムージング角度以上に折れているエッジや、シャープ エッジが、SPD を適用した後でも同じようにシャープに描画 されます。このオプションを外した場合、全てのエッジはス ムーズに表示されます。 左下は変形させる前のオブジェクト。左は丸めた後でマップするオプ ションを適用した場合。右は外した場合。 この例では、1 個の四角ポリゴンに SPD が適用されていて、 形状を丸めると角を丸めるの両方のオプションが選択され ています。上図の左はより自然な結果で、ノイズの密度は角 の部分で変化していません。これは模様のついた紙の角を 切り取った状態に似ています。これに対して、上図の右では 形状を丸める前にテクスチャが適用されているため、角の 部分でノイズの密度が高くなっています。これは模様のつい たビニールの角を熱っし、収縮させたのに似ています。 このオプションは、形状を丸めるオプションに関係なく働 きますが、形状を丸めるオプションを外した場合にはっき りとわかります。なぜなら、形状を丸めた場合全てのエッ ジが平面に近く開いてしまい、シャープにしてもスムージン グしても変わらなくなってしまうからです。 法線方向に押し出す 左は法線方向に押し出すオプションを働かせた場合、右は外した場 合。 サブポリゴン変位 • 83 上の例からわかるように、法線方向に押し出すオプション を選択すると、ポイントを押し出す方向がスムージングされ た法線方向になります。つまり、ポリゴンの中央部では面 に垂直に押し出されますが、エッジに近い部分では、隣の ポリゴンの影響を受けた結果傾いて押し出されます。これ は、スムージングによって法線が傾いているためです。 このオプションを外した場合、ポイントは常にポリゴンに垂 直な方向に押し出されるようになります。ただし、変位のタ イプが「強度」か「強度(中心)」でない場合は、外さない ことをお勧めします。このオプションを外した場合の問題点 は、上図の右からわかるようにエッジ周辺のポイントが二つ の方向に押し出され、結果的に先端が拡がってしまうこと です。ボーグの宇宙船を作りたい場合にはこのオプションを 入れておいた方がいいでしょう。 形状を丸めている場合、法線は常に面に垂直になるので、 このオプションは選択できません。 その他 - 球体プリミティブに SPD を適用する場合は、必ず「ポリゴン 化せずにレンダリング」のオプションを外してください。 - もし一つのオブジェクトに SPD が設定されたマテリアルを複 数個適用した場合、常に 「最大の値」が使われます。たとえば、 分割数が 4 のマテリアルと分割数が 6 のマテリアルを、一つ のオブジェクト上に作成した異なるポリゴン選択範囲にそれ ぞれ適用したとしましょう。この場合、SPD の効果が現れる のはポリゴン選択範囲の中だけですが、オブジェクト全体が 分割数 6 で分割されます。 - もし、変位のタイプを「RGB(ローカルの XYZ)」に設定して いる時に、変位しないなどの問題が生じた場合は、テクスチャ タグの中の 「バンプに UVW マップを使う」オプションをチェッ クしてみてください。 ✔ シ ェ ア ウ エ ア ソ フト の Terragen(www.Planetside. co.uk/terragen 参照)を使うと、16bit のグレースケー ル画像を生成でき、これと SPD を組み合わせると非常 に高品質な景観を表現できます。 Terragen と SPD を使うと、1 枚の平面オブジェクトからこのような 景観を作り出せます。 84 • 8 章 9 章 チュートリアル チュートリアル • 87 9 章 チュートリアル ラジオシティー このチュートリアルでは、Advanced Render のラジオシティ機能を使って、 オフィスのロビーを自然な光で照明し ます。 ラジオシティを使ってレンダリングする場合、シーンをモデリングする段階で注意すべき点が 2 つあります。 1. ラジオシティを使う場合、影のタイプはハードかエリアが適しているのですが、正しく モデリングして影を設定しても、陰にあるポリゴンの境界部分にわずかな光が生じる場 合があります。これは「光漏れ」と呼ばれ、浮動小数点演算の誤差によって生じます。 この現象は、実はレイトレーシングでも発生するのですが、その大きさは 1 ピクセル以 下なので、アンチエイリアス機能によって隠すことができます。しかしラジオシティの 場合、サンプルポイントに光漏れが発生すると広い範囲にその影響が及び、隠すことが できません。したがって発生させないことが肝心です。光漏れを発生させないための最 も効果的な方法は、オブジェクトに厚みをつけることです。オブジェクトに厚みがなく、 ポリゴンのすぐ裏までライトからの光が到達している場合、1 回の計算間違いによって光 漏れが発生します。しかしオブジェクトに厚みがある場合、光漏れを起こすには計算間 違いが 2 回重なる必要があり、その可能性は非常に低くなります。 2. シーン全体をなるべくコンパクトにまとめてください。遠くに見えるものは、オブジェクト ではなく、空オブジェクトや床オブジェクトに適用したテクスチャで代用します。球体オ ブジェクトで空を表現するのは避けてください。ラジオシティの計算で使うサンプルポイ ントの密度は、シーンの拡がりによって変化しますが、オブジェクトを広い範囲に配置す ると設定が難しくなったり、アニメーションの過程でラジオシティの精度が変わってしま うなどの不都合が生じます。 このチュートリアルでは、 「スカイドーム」と呼ばれる特殊なテクニックを使って間接照明を 表現します。CINEMA 4D の場合、スカイドームには空オブジェクト(無限球)を使います。 シーン全体をこのスカイドームで覆ってラジオシティを計算することにより、空全体からの自 然な間接照明を表現できるのです(太陽による直接照明は、従来のレイトレーシングによっ て表現されます)。 88 • 9 章 CINEMA 4D フォル ダの 中 の Tutorial フォル ダから、 「Radiosity_Scene.c4d」 という名 前のファイルを開いてください(見つからない場合は、Advanced Render CD-ROM から Features と Tutorial をインストールしてください)。 空オブジェクトを作成し(オブジェクト -> シーン -> 空)、名前を「Skydome」に変更し てください。 このスカイドームは無限の大きさを持っていて、ロビー全体を覆っています。次のステップで は、発光するマテリアルを作成し、このスカイドームに適用します。実はこのスカイドーム自 身はカメラから見えないように設定するのですが、ラジオシティの計算には含められ、ロビー の内部を自然に照らします。 新規マテリアルを作成し、名前を「Sky」に変更してください。 マテリアルマネージャで、新しく作成したマテリアルのプレビュ(中心部分)をダブルクリッ クし、マテリアル編集を開いてください。 マテリアル編集で、カラーチャンネルのチェックを外し、働きを停止させます。 発光チャンネルの設定ページを開きます。 訳者注 . 各チャンネルのチェックボックスか名前をクリックすると、その設定ページが開きます。また チェックを外すと、そのチャンネルの働きを停止できます。 空の色をシミュレートするために 空のマテリアルに対して ほんのわずかに青を追加します そしてこのチャンネルに対して、明るい空をシミュレートするために、ほんの少し青味がかっ た白を指定します(R=90%、G=100%、B=100%、明るさ =100%)。 このマテリアルを Skydome オブジェクトに適用してください。投影法は何でも構いません。 チュートリアル • 89 ライトを追加する 次に、太陽を表現するためのライトをシーンに 1 個追加します。このライトによって照明され たオブジェクトからも拡散光が発生しますが、Advanced Render のラジオシティはその効果 を含めてシーンを正しく計算します。 ターゲットライトを作成し(オブジェクト -> シーン -> ターゲットライト)、名前を「Sun」 に変更してください。 オブジェクトマネージャで Sun を選択し、そのパラメータを属性マネージャに表示させます。 ライトの一般ページで、放射タイプを平行にし、太陽の感じを出すためにカラーを少し黄色く します(R=90%、G=100%、B=100%、明るさ =100%、または RGB = 255,155,244)。 影のタイプをハードにします。 現実の太陽は 正確にはエリアライトですが 非常に遠くにあるため 地球に届く光は平行だと見なせます ライトを部屋の外に出し、上の方に移動してください。 訳者注 . ライトの位置が部屋に近いと、光の当たらない部分が生じる場合があります。これは平行ライ トがライトの背後にあるオブジェクトを照明しないためです。必要であれば、無限遠ライトに 切り替えてください。 Sunをロビーの外の適切な位置に 移動します 作例では、ライトの位置が X= -1100m, Y= 700m, Z= -400m になりました。ライトの位置は、 座標マネージャや属性マネージャの座標ページを使って、直接数値で入力することもできま す。 90 • 9 章 ターゲットライトを作成すると、ライトと同時に、ターゲットが X= 0m, Y= 0m, Z= 0m の位 置に自動的に生成されます。このターゲットは動かす必要がありません。さて、これでシー ンに必要なライティングは全て終わりました。この後、ラジオシティの効果が適切に計算さ れるように、いくつかの特殊なオブジェクトに対してレンダリングタグを追加します。 シーンを レンダリングする それでは、Skydome オブジェクトにレンダリングタグを適用します。 オブジェクトマネージャで Skydome オブジェクトを選択し、ファイルメニューから新規タグ -> レンダリングタグを選択します。 属性マネージャで、ラジオシティから見えるオプションを除く、全てのオプションのチェック を外します。 このオブジェクトに必要な働きは拡散光を放射することだけで、その他の働きは必要ないから です。 ラジオシティから見えるを除いて 全てのオプションのチェックを 外します このシーンでは、他にもう一つのオブジェクトにレンダリングタグを付ける必要があります。 それは、Lobby -> Outside -> Cylinder オブジェクトです。 訳者注 . ここでもし、Outside オブジェクトにレンダリングタグが付いていた場合には、それは間違いで すから削除してください。 そして、Skydome と同様の手順でレンダリングタグを適用し、影を落とす、および影を受 けるオプションのオプションのチェックを外します。 このオブジェクトは、ロビーから見える風景を撮影した画像を発光チャンネルに貼りつけた 円柱ですが、実際にその風景が円柱状になっているわけではありません。したがって、影 をかかせると不自然な結果になってしまうのです。 レンダリング設定を開きます(レンダリング -> レンダリング設定 ... )。 チュートリアル • 91 CINEMA 4D は、通常レイトレーシング法を使ってシーンをレンダリングします。これによって、 鏡面反射や屈折を含むリアルな画像を得ることができます。 アンチエイリアスをベストに、フィルタを静止画に指定します。 一般的に最初のページでは、この他のオプションを全て一番下に設定しておいてください。 これによってレイトレーシングが働き、その分レンダリング時間が長くなります。しかし、レ イトレーシング計算が必要でない部分のレンダリング時間は変わりません。このシーンでは、 窓ガラスなどいくつかのオブジェクトに、鏡面反射や屈折するマテリアルが使われています。 出力ページを開きます。 このページで、出力する画像の大きさや出力するフレームの範囲を指定します。 出力解像度(画像の大きさ)を 1024x576 ピクセルに指定します。 ラジオシティページを開き、ラジオシティを使うオプションを選択します。ラジオシティモー ドは標準のままにしておいてください。 限られた時間で 最良の結果を得るためには ラジオシティのパラメータを シーンに合わせて適切に 設定する必要があります 一般的にラジオシティの計算は 非常に難しく計算量も膨大になります したがってその大半を 省略する必要があります もしこの省略の指定が不適切だと 計算時間が何十倍にも長くなり しかも画質は悪くなります すると、各パラメータを変更できるようになります。 拡散光の強度を 200% に指定します。 これによって、ラジオシティが計算する拡散光の明るさが 2 倍になります。 計算精度を 70% に、拡散反射回数を 3 に設定してください(デフォルトのままです)。 拡散反射回数を 3 にすることで、太陽から来た光が部屋の隅にまで十分ゆきわたります。 サンプル数を 200 に、解像度をそれぞれ 100 と 200 に設定してください。 このシーンは比較的大きく、また部屋の角の部分を細かく計算するために、大きめの解像 度を指定します。 92 • 9 章 保存ページを開いてください。 フォーマットを TIFF に指定します。 パスボタンをクリックし、これからレンダリングする画像が保存される場所を指定します。 マルチパスページを開いてください。 マルチパスレンダリングを使うオプションを選択します。 マルチパスを使うと、レンダリング時に画像を構成する成分(チャンネル)をそれぞれ別のレ イヤに保存できます。画像を構成する成分というのは、例えば照明、影、ラジオシティなど で、どの成分を分けるかは、マルチパスページで細かく指定できます。マルチパスレンダリ ングがその効果を発揮するのは、例えばレンダリング後に拡散光の明るさを暗くしたくなっ た場合です。このような場合、普通はシーンを再レンダリングする必要がありますが、ラジオ シティの成分を分けて保存しておけば、Photoshop などの画像編集ソフトでラジオシティチャ ンネルの明るさ暗くするだけで、再レンダリングしたのと同じ結果を得ることができるのです。 ここで、マルチパスレンダリングする画像が保存される場所を指定します。保存ページで指 定したパスとは分けてください。マルチパス画像は非常に複雑な構造を持っているので、一 つのファイルのレイヤに分けて保存できるのは B3D か PSD フォーマットだけです。他のフォー マットを選択した場合、選択したチャンネルに相当する数のファイルが生成されます。使用 目的に応じて適切なフォーマットを選択してください。 訳者注 . Photoshop 7 以降を使っている場合は、右にあるオプションボタンを押して Photoshop 7 オプ ションを選択してください。これによってレイヤの混合モードがスクリーンから覆い焼き (リニア) に変更されます。覆い焼き(リニア)は、加算と同じ働きを持っています。 マルチパスレンダリングを使うと 後から静止画やアニメーションを 簡単に修正でき しかも加工の自由度が 大きく拡がります チュートリアル • 93 右上にあるポップアップメニューから、RGB 画像、アンビエント、拡散、ハイライト、鏡面反射、 屈折、影、照明、ラジオシティチャンネルを選択してください。 これらのチャンネルを、独立したレイヤに書きだします。 レンダリング後に保存ボタンを押します。 するとシーンのレンダリングがスタートします。しかし最初の数秒間(設定によっては数分間) は何も起こらないでしょう。ラジオシティの計算を始める前には、いろいろと準備が必要な のです。そして、最初にプレパス計算が実行され、それが終わってから最終レンダリングが 実行されます。プレパス計算時には、画面にサンプリングポイントが表示されるので、その 密度が十分であるかどうか直接確認できます。 このチュートリアルで使ったラジオシティの設定は、妥当な時間で標準的な品質の画像を得 るためのものです。より高い画質が必要であったり、より短時間でレンダリングしたい場合 には、計算精度の値を中心として各パラメータを変更してみてください。 索引 索引 • 97 索引 H HDR Cross を変換 18 HDRI 変換タイプ 18 はじめに 15 ∼のタイプ 16 HDR Probe を変換 18 W Web から情報を得る 1 Z Z バッファ 58 あ 明るさの最小値 / 最大値 (カラーによる変化) 56 暗部の強度 53 位相 62 色味 38 インストール 1 エッジグロー 55 オートフォーカス 35 オブジェクト中心からの距離 58 オブジェクト ID(グロー) 52 オブジェクト ID(ハイライト) 45 か 開始距離(距離による減衰) 57 ガス 60 ガスのような動き 62 カメラ 34 カメラ移動アニメーション 5, 6 カメラからの距離でスケール 58 カラーによる変化 56 カラーフィルタ 74 間接光 13 キーカラーを使う 57 基本グロー 62 強度(ハイライト) 44 距離でスケール 63 距離による変化 57 均一なカラーのグロー 54 雲 60 グラデーション 38 3 次で固く 36 3 次でゆるく 36 アルファを編集 37 位置 36 強度 36 グラデーションバーを使う スムーズ 36 線形 36 線形で固く 36 なし 36 ノットを 2 倍 37 ノットを反転 37 ノットをリセット 37 補間 36 グラデーションを使う 35 グロー 51 暗部の強度 53 暗部の発光 54 エッジグロー 55 オブジェクト ID 52 カラー 54 距離でスケール 55 暗いグロー 53 サイズ 52 ズームでスケール 55 発光 53 バランス 56 グロー編集 45 オブジェクト ID 45 35 角度(ビーム) 46 カラー(グロー) 46 カラー(ビーム) 46 カラー(リング) 46 間隔のばらつき 47 サイズ(ビーム) 46 サイズ(グロー) 46 サイズ(リング) 46 すき間の数 47 すき間の幅 47 タイプ(グロー) 45 タイプ(ビーム) 46 縦横比(グロー) 46 縦横比(ビーム) 46 縦横比(リング) 46 長さのばらつき 47 ビームの数 47 ビームの太さ 47 リング 46 煙 60 コースティクス 21 エネルギー 25, 26 強度 22 鏡面 27 空間の刻み (ボリュームコースティクス) 22 計算結果を保存 23 減衰 27 再計算、最初の 1 回だけ 23 再計算、しない 23 再計算、常にする 23 実例 28 調べるフォトンの数(マテリアル) 25 調べるフォトンの数 (ボリュームコースティクス) 22 設定 24 トラブルシューティング 29 何が本当のコースティクスなのか 27 パラメータ 25 98 • 索引 フォトン 26, 27 フォトンを受ける 24 フォトンを調べる半径 22 フォトンを調べる半径(マテリアル) 24 フォトンを生成(マテリアル) 24 ボリューム 27 ボリュームコースティクス 22, 26 ボリュームライト 26 ライトの設定 25 コースティクスの効果を 2 重に重ねる 28 さ サーフェイスコースティクス 27 サブポリゴン変位 はじめに 79 設定 80 サンプル数 14, 75 しきい値 44 シャッター角度 68 周辺部を薄く 69 終了距離(距離による変化) 65 仕様上の制限 グロー 63 ハイライト 47 被写界深度 39 浸透距離 75 スカイドーム 87 ズームでスケール 63 スケール(ノイズ) 61 ストカスティックモード 5 た ターゲットオブジェクト (カメラパラメータ) 34 チュートリアル 87 ターゲット距離(カメラパラメータ) 34 テクニカルサポート 1 デフォーマを考慮 69 な 内部拡散反射 (サブサーフェイススキャッタリング) 73 何が本当のコースティクスなのか 27 ネットワークでの使用 iii ノイズ 59 明るさ 60 位相 62 位置を固定 62 カラー 61 基本グロー 70 強度 60 詳細 62 スケール 61 ノイズタイプ 60 濃度 60 伸び 63 発光 61 ピークブレンド 61 方向 / 流れ 62 は 背景をぼかす 35 ハイライトの強度 44 ハイライト ハイライト 58 しきい値 44 ハイライトの設定 43 プリセット 44 フレア(サイズ) 44 フレアの最小 / 最大強度 44 はじめに 1 バランス 56 ピークブレンド 61 光のにじみ(レンズ) 38 被写界深度 21, 33, 43 オートフォーカス 35 カメラ 34 距離でぼかす 33 グラデーションバーを使う 35 仕様上の制限 39 背景をぼかす 35 ぼけの強度 33 フィルタが働く距離 74 フォトンツリー 22, 27, 28 複数のマシンでの使用 iii プリセット 44 フレアの最小 / 最大強度 44 フレアサイズ 44 プログラムの譲渡 iv 変化モード 58 ベクターモーションブラー 67 放射状にぼかす 35 放電 60 ぼけの強度 33 炎 60 ボリュームコースティクス 27 ま マテリアル編集 10, 24 面の法線による変化 58 や ユーザ登録 1 ら ラジオシティ 5, 13 拡散反射回数 7 拡散光を生成 10 拡散光を受ける 10 強度 6 計算精度 6 計算結果を保存 10 再計算、最初の 1 回だけ 9 再計算、しない 9 再計算、常にする 9 最低解像度、最高解像度 8 サチュレーション 11 サンプル数 7 ストカスティックモード 5 設定 5 索引 • 99 何が本当のラジオシティなのか 13 はじめに 5 プレパスサイズ 7 ラジオシティのアルゴリズム 14 レンズの強度 38 レンズの形状 38 レンズのシャープさ 38