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特集南海トラフ巨大地震の 被害想定を 「正しく恐れる 」

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特集南海トラフ巨大地震の 被害想定を 「正しく恐れる 」
4
月号
2013 Vol.22
特集
南海トラフ巨大地震の
被害想定を
「正しく恐れる」
連載 役に立つ地域防災計画の作り方
防災訓練を有効に活用するために
全国の
死者数
32 万 3,000 人
27 万 5,000 人
22 万 6,000 人
22 万 9,000 人
全国の
負傷者数
62 万 3,000 人
61 万 5,000 人
61 万 2,000 人
61 万人
南海トラフ巨大地震
9.0(9.1)
1,015 平方キロ※3
約 163 万人※3
約 32 万 3,000 人※4
約 2,38 万 6,000 棟※5
約 1.8 倍
約 2.6 倍
約 17 倍
約 18 倍
担当大臣が公表時の記者会見で指摘している
約 13 万 400 棟※2
ように、ここで示されたのは「千年に一度、
約 1 万 8,800 人※2
あるいはそれより低い頻度で発生するような
約 62 万人
地震・津波」だ(平成 年3月 日「記者会
見発言要旨」
)。有効な防災対策を組み立て
るには被害を正確に見積もる必要がある。東
日本大震災のような「想定外」を繰り返さな
いためには、最大クラスの被害に向き合う覚
悟が不可避だった。
もちろん、より被害の小さい地震・津波の
ほうが発生する可能性は高い。だからといっ
て最大クラスが明日発生する可能性も否定で
きないから、今回の想定を軽視する態度も正
しくない。ではどうすればよいか。古屋大臣
は、最大クラスの地震・津波を「正しく恐れ
てもらう」ために、国民にありのままを示す
ことが重要と述べ、
「 厳しい数字を正面から
受け止め、被害想定を前提として、一歩一歩
着実に対策を進めるべきだ」と強調した。ま
た、行政のみならず、インフラ・ライフライ
ン等の施設管理者、企業、地域や個人が対応
できることを見極め、それに対して備えるこ
とが重要であるとも指摘した。こうした取り
組みは、発生確率の高い、より被害の小さい
地震・津波に対しても有効な防災・減災対策
であるからだ。
被害は減らせる
561 平方キロ
東日本大震災を大きく
上回る被害を想定
南海トラフ巨大地震の被害想定は、東日本
大震災を教訓に、あらゆる可能性を考慮した
最大クラスの地震・津波を対象にした。具体
的には、
「南海トラフの巨大地震モデル検討
会」が示した地震動モデルと津波モデルを組
み合わせて被害を見積もった。震源域が陸側
に寄った「陸側ケース」
(図1)では揺れに
よる被害が最大となり、駿河湾から九州沖に
いたる領域の破壊のされ方によって津波被害
の様相は異なる(図2)
。
揺れによる全壊や火災による焼失などで建
物被害が最大となるのは、九州地方が大きく
被災するケースの238万6000棟。東海
地方が大きく被災するケースで「冬の深夜、
風速8メートル、地震発生直後の避難者が2
割」の場合、全国の死者数が 万3000人
は東日本大震災時の1・8倍の1015平方
キロとなり、死者数は 倍、建物被害は 倍
にも上る(表2)
。
ライフライン(表3)や交通施設(表4)
の被害も甚大で、国民生活にもさまざまな影
響が及ぶ(表5)
。国家予算の2倍以上にあ
たる220兆3000億円もの経済的な被害
が見込まれるという(表6)
。
今回の被害想定の特徴のひとつは、減災効
果を具体的に示したことだ。 万人余の死者
が最悪ケースだとしても、対策を講じれば被
9.0
18
最大クラスの自然災害を
「正しく恐れる」
害は5分の1の約6万人にまで減らせると
東北地方太平洋沖地震
(図 2)
いう(表7)
。対策の具体的な内容を見れば、
建物被害(全壊棟数)
陸側ケースの震度分布
南海トラフ巨大地震の被害想定は桁外れに
大きく、衝撃的だった。だが、古屋圭司防災
死者・行方不明者
【ケース②「紀伊半島沖」に
「大すべり域+超大すべり域」を設定】
浸水域内人口
【ケース⑤「四国沖〜九州沖」に
「大すべり域+超大すべり域」を設定】
浸水面積
132.0
と想定された(表1)
。津波による浸水面積
32
25
136.0
140.0
中央防災会議防災対策推進会議の下に設置された「南海
トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(主査=河田
恵昭・関西大教授)
」は3月 日、同地震による「施設等の
被害」
「経済的な被害」の想定結果を公表した。昨年8月に
は第1次報告として「建物等被害」
「人的被害」の想定結果
を示していた。今回の第2次報告で南海トラフ巨大地震に
関する国の被害想定が出そろい、同ワーキンググループは
最終報告のとりまとめを急ぐ。最終報告を踏まえ、国は「南
海トラフ巨大地震対策大綱」
「地震防災戦略」などを策定す
る方針だ。
238 万 6,000 棟
(表2)被害が最大となるケースと東北地方太平洋沖地震との比較
b2
b3
236 万 4,000 棟
【ケース①「駿河湾〜紀伊半島沖」に
「大すべり域+超大すべり域」を設定】
マグニチュード※1
倍率
18
237 万 1,000 棟
人的被害
36
(表1)建物被害・人的被害の想定(最悪クラス)
【ケース④「四国沖」に
「大すべり域+超大すべり域」を設定】
17
32
238 万 2,000 棟
34
建物の全壊と
焼失棟数
建物被害
18
32
東海地方が大きく 近畿地方が大きく 四国地方が大きく 九州地方が大きく
被災するケース
被災するケース
被災するケース
被災するケース
強振動生成域の設定の
検討ケース
(陸側ケース)
特集 南海トラフ巨大地震の
被害想定を「正しく恐れる」
(図1)
※1:
()内は津波のMw
※2:平成 24 年 6 月 26 日緊急災害対策本部発表
※3:堤防・水門が地震動に対して正常に機能する場合の想定浸水区域
※4:地震動(陸側)
、津波ケース(ケース①)、時間帯(冬・深夜)、風速(8m/s)の場合の被害
※5:地震動(陸側)
、津波ケース(ケース⑤)、時間帯(冬・夕方)、風速(8m/s)の場合の被害
【ケース③「紀伊半島沖〜四国沖」に
「大すべり域+超大すべり域」を設定】
(表3)ライフライン被害と復旧
特別なことは何もない。建物の耐震化や家具
等の転倒・落下防止対策、津波に対しては迅
速に避難し、火災に対しては消火機材の保有
率を高めるなど、従来の防災対策を粛々と進
めるだけのことだ。
。建物
経済的な被害も半減できる(表8)
の耐震化と火災対策を進めることで、建物な
どの資産等の被害は119兆円から 兆円に
まで減少する。津波からの早期避難などで死
者を減らして労働力低下を抑えれば、生産・
サービス低下による被害も3割近く減らせる。
実やサプライチェーンの多重性・代替性確保
その他、事業継続計画(BCP)の策定・充
といった対策に取り組めば、さらに経済的な
被害は減るという。
被害想定を巡っては昨年来、巨大な被害数
値を目の当たりにして、例えば津波避難をあ
きらめる「避難放棄者」が現れるのではない
かなどと取りざたされた。対策による減災効
果を具体的に数値で示した今回の被害想定の
意義は大きい。最大クラスの災害が発生した
際、被害をゼロにすることは現実的に極めて
困難だが、あきらめずに対策することによっ
て被害が減ることも間違いない。今回の被害
想定は、このことを具体的に示して見せた。
継続的な対策が必要
第2次報告では、施設等の被害が「被害の
様相」という形で示された。これはいわば、
最大クラスの災害が発生した場合の被災シナ
リオとして読むことができ、発災直後から生
起してくるさまざまな問題が時系列に列記さ
れている。ライフラインや交通施設、生活へ
51
被災直後
その後の復旧
※津波浸水により建物全壊した需要家数は復旧対象外として除外
上水道断水
3,440 万人
(東海3県の約6~8割、近畿3府県の約4~6割、山陽3
県の約2~5割、四国の約7~9割、九州2県の約9割)
発災約1か月後では、東海3県で約1~2割、近畿3府県で数%、山陽3県で数%、
四国で約1~2割、九州2県で約1割が断水したままだが、これら 15 府県全体
では9割以上の断水が解消
下水道利用困難
3,210 万人
(東海3県の約9割、近畿3府県の約9割、山陽3県の約3
~7割、四国の約9割、九州2県の約9割)
発災約1か月後では、被災が大きい処理場を除きほとんどの処理場が運転を再
開。東海3県、近畿3府県、四国、山陽3県、九州2県の15府県全体で9割
以上の利用困難が解消
停電
2,710 万軒
(東海3県の約9割、近畿3県の約9割、山陽三県の約3~
7割、四国の約9割、九州 2 県の約9割で停電)
発災直後に需要側の被災と発電設備の被災により需給バランスが不安定になる
ことを主要因として広域的に停電が発生。電力供給の切り替え調整により、需
給バランス等に起因した停電は数日間で解消。電柱被害に基づく停電は、復旧
に約1~2週間を要する
固定電話不通
930 万回線
(東海3県で約9割、近畿3府県で約9割、山陽3県で約3
~6割、四国で約9割、九州2県で約9割)※通信規制によ
る通話支障は考慮せず
固定電話は、発災直後に電柱(電線)被害等の通信設備の被災や需要家側の
固定電話端末の停電等の理由から広域的に通話ができなくなるが、停電は数
日間で解消され、電柱(電線)被害等の通信設備の被災の影響も最大約4週
間で大部分が解消
携帯電話など
●携帯電話は、基地局の非常用電源による電力供給が停止
する1日後に停波基地局率が最大8割。被災直後は輻輳によ
り大部分の通話が困難
●インターネットへの接続は、固定電話回線の被災や基地
局の停波の影響により利用できないエリアが発生
携帯電話は、基地局の停電による広域的な不通は数日間で解消。伝送路であ
る固定回線の不通による地域的な影響は最大約4週間程度の復旧期間を要す
る
180 万戸
安全措置のために停止したエリアの安全点検やガス導管等の復旧により供給
ガス(都市ガス)
(東海3県の約2~6割、近畿3府県の最大約1割、山陽3 停止が徐々に解消され、供給停止が多い地域においても約6週間で供給支障
の供給停止
県の最大約1割、四国の約2~9割、九州2県の約3~4割) が解消
(表6)経済的被害(最悪クラスの場合)
特集 南海トラフ巨大地震の
被害想定を「正しく恐れる」
b5
※東海3県(静岡、愛知、三重)
、近畿3府県(和歌山、大阪、兵庫)
、山陽3県(岡山、広島、山口)
、四国(4県)
、九州2県(大分、宮崎)
○資産等の被害【被災地】
(合計)169.5 兆円
民間部門
148.4 兆円
準公共部門(電気・ガス・通信、鉄道)
0.9 兆円
公共部門
*公共部門に含むもの:ライフライン(上水道、下水道)、
公共土木施設(道路、港湾等)、農地・漁港、災害廃棄物
20.2 兆円
○経済活動への影響【全国】
(合計)50.8 兆円
生産・サービス低下に起因するもの
44.7 兆円
交通寸断に起因するもの(道路、鉄道の寸断)
6.1 兆円
被害要因
被害減少効果
対策の内容
建物被害
8万 2,000 人
→1万 5,000 人
建物の耐震化率 100%の達成
家具等の転倒・落下防止対策実施率 100%
の達成
津波
23 万人
→4万 6,000 人
全員が発災後すぐに避難
既存の津波避難ビルの有効活用
耐震化率 100%による津波被害を受ける自力
脱出困難者の減少
火災
600 人→ 0 人
1万人→ 300 人
ブロック塀等
30 人→0人
合計
32 万 3,000 人
→6万 1,000 人
道路
4万 1,000 か所
路面損傷、沈下、法面崩壊、橋梁損傷等の被害が津波浸水域で 3,700 か所、浸水域外で
3万 7,400 か所
鉄道
1万 9,000 か所
新幹線で 290 か所、在来線で1万 8,000 か所以上
港湾
5,000 か所
空港
港湾の係留施設約1万 7,000 か所のうち 5,000 か所に被害。防波堤約 417 キロのうち 126
~ 135 キロで被害
中部国際空港・関西国際空港・高知空港・大分空港・宮崎空港で津波浸水が発生。
このうち、高知空港と宮崎空港では空港の半分以上が浸水
(表5)生活への影響
(表7)防災対策の効果(人的被害)
急傾斜地崩壊
(表4)交通施設被害
急傾斜地崩壊危険箇所整備率 100%の達成
電気器具等からの出荷を防止する感震ブ
レーカー等の設置の実施率 100%の達成
耐震化率 100%による延焼火災被害を受け
る自力脱出困難者の減少
家庭用消火器等の消火資機材保有率の向上
等による初期消火成功率の向上
ブロック塀・自動販売機の転倒防止および
屋外落下物対策の実施率 100%の達成
避難者
950 万人
避難者は断水の影響を受けて1週間後に最大 950 万人発生。このうち避難所への避難者
は1週間後に最大 500 万人
帰宅困難者
380 万人
平日正午に地震が発生したときの外出者は中京都市圏 400 万人、京阪神都市圏 660 万人。
そのうち当日中に帰宅が困難となる人が中京都市圏で 110 万人、京阪神都市圏で 270 万人
食料不足
3,200 万食(発災後3日間の合計)
避難所避難者を中心とする膨大な需要に対して、家庭内備蓄や被災都府県・市町村の公的
備蓄だけでは食料が不足する地域が発生
飲料水不足
4,800 万リットル(発災後3日間の合計)
断水世帯の膨大な飲料水需要に対して、家庭内備蓄や被災都府県・市町村の公的備蓄及び
応急給水だけでは不足する地域が発生
毛布の不足
520 万枚
住宅を失った世帯の膨大な需要に対して、被災都府県・市町村の公的備蓄だけでは生活
必需品が不足する地域が発生
医療の不足
入院 15 万人、外来 14 万人
被災都府県内の医療機関においては建物被害やライフライン機能支障等により対応力が
低下
エレベータ内
閉じ込め
2 万 3,000 人
避難所の
災害時要援護者
65 歳以上の高齢単身者 22 万人
5 歳未満乳幼児 19 万 7,000 人
避難所避難者の中には特別なケアを必要とする災害時要援護者が多数存在。このほか身
体障害者 14 万 2,000 人、知的障害者2万 1,000 人、精神障害者 12 万 6,000 人、要介護
認定者 17 万 6,000 人、難病患者2万 7,000 人、妊産婦8万人、外国人6万 2,000 人
コンビナート施設
流出 60 施設、破損等 890 施設
約2万 9,200 の対象施設のうち、静岡県から大分県の臨海部にかけて発生。火災発生は
5施設未満と想定
文化財
250 施設
津波浸水や揺れ、火災により国宝・重要文化財が被災する可能性
孤立集落
2300 集落
道路や漁港等の被災によって外部からのアクセスが困難となり、最大で農業集落が 1,900
集落、漁業集落が 400 集落孤立する可能性
住宅、オフィスの被災や停電により、エレベータ内における閉じ込め事故が多数発生
b4
(表8)防災・減災対策の効果の試算
の影響はもちろんのこと、数値をもって定量
的に示すことが難しい震災関連死、地盤沈下
による長期湛水、治安の問題など、被災地で
実際に起こりうる問題を取り上げて、対応の
ポイントなどを紹介している。東日本大震災
や阪神・淡路大震災の経験が具体的な成果と
して盛り込まれた部分だろう。これらをコン
パクトにまとめて参考資料として掲示された
のが「行政の対応シナリオ」だ(表9)
。
10
最終報告における防災・
被害想定の結果は、
減災対策に生かされることになる。現時点で
示された対策骨子を示した(表 )
。
「人命を
救う」
「被害を最小化する」
「回復をできるだ
け早くする」という3目標に対して、
「行政」
「個人」
「企業」といったそれぞれの主体が取
り組むべき対策を示している。
「対策を講じる上
古屋大臣は記者会見で、
で重要なことは、ハード対策に過度に依存す
ることなく、東日本大震災の教訓から学んだ
ように、日ごろからの避難訓練、防災教育、
災害教訓の伝承などのソフト対策を充実させ
ることである」と述べた。ソフト対策による
具体的な効果は算定しにくいが、継続的に実
施すれば確実に効果は現れるとし、
「行政を
はじめ、地域や一人ひとりが努力を積み重ね
ていただきたい」と呼びかけた。
各人がそれぞれの立場で、できる範囲の減
災対策を少しずつ積み重ねていく。そのこと
。
「正しく恐れる」
とは、
によって東日本大震災の経験を将来に生かそ
うと努力していく
そういうことなのだろう
—
—
●資産等の被害(被災地)
対策による効
建物
119.1 兆円→ 51.1 兆円
資産
29.2 兆円→ 12.4 兆円
電気、ガス、通信、鉄道等
0.9 兆円→ 0.6 兆円
上水道、下水道
3.7 兆円→ 3.7 兆円
交通
4.3 兆円→ 4.3 兆円
その他
12.2 兆円→ 8.3 兆円
民間
準公共
公共
被害額合計
169.5 兆円→ 80.4 兆円
被害額減少率
52.6%
(表 10)南海トラフ巨大地震に対する防災・減災対策(骨子)
1.防災・減災対策の目標
特集 南海トラフ巨大地震の
被害想定を「正しく恐れる」
(1)人命を救う
(2)被害を最小化する
(3)回復を出来るだけ早くする
生産・サービス低下
による被害
44.7 兆円
→ 31.8 兆円
被害額減少率
28.7%
●その他の防災・減災対策
試算の仮定(対策の内容)
【資産の喪失の軽減】
・建物の耐震化率 100%と火災対策等
【労働力低下(人的被害)の軽減】
・津波からの早期避難(全員が発災後すぐ
に避難を開始)
・家具等 の転 倒・落 下 防止 対 策 実 施 率
100%
・ブロック塀の転倒防止等実施率 100%
・事業継続計画(BCP)の策定・充実
・サプライチェーンの多重性・代替性の確保
・施設・設備の耐震化
・火災対策
・労働力の確保(人的被害の軽減)
・インフラ・ライフラインの早期復旧等
・二次的な影響の拡大防止
2.主な防災・減災対策
目標
主体
(1)人命を救う
【行政】
【個人】
・防災教育の徹底、災害教訓の伝承等
・津波避難対策(実践的な避難訓練)
・建築物の耐震化、家具等の転倒防止対策
・火災対策
【行政】
【個人】
・建物等の耐震化
・出火対策、延焼防止対策(感震ブレーカー、密集市街地の解消 等)
・海外への的確な情報発信
(2)被害を最小化する
【企業】
【インフラ・
ライフライン】
(3)回復を出来るだけ
早くする
具体的な対策
・新幹線 :脱線防止ガードの設置
・主要交通施設の耐震化(点検、維持、更新)
・ライフラインの耐震化
【行政】
【企業】
・油槽所の緊急電源の配備
・燃料補給の優先順位設定
・全国から被災地へのタンクローリーの配備の備え
【インフラ・
ライフライン】
【個人】
(表9)行政の対応シナリオ
・事業継続計画(BCP)の策定・充実
・サプライチェーンの複数化
・物流拠点の複数化
・短期間で道路啓開する体制の整備(救急・救命を含む応急活動
の大前提)
・発災時の建設機材・要員の確保
・インフラ・ライフラインの復旧の優先順位の設定、災害時協定の
実運用の検討
・早期復旧技術の開発
【地域】
b7
建物の耐震化率 100%
家庭用消火器等の消火資機材保有率の向上等による初期
消火成功率の向上
電熱器具等からの出火を防止する感震ブレーカー等の設
置率 100%
急傾斜地崩壊危険箇所の対策整備率 100%
●生産・サービス低下による影響(全国)
対策による効
※現時点の骨子であり、今後、最終報告において整理する予定である。
試算の仮定(対策の内容)
・通信の伝送路ネットワークの強化・冗長化
・携帯電話の基地局のバックアップ電源の強化
・全国的な復旧支援体制の再構築(電力、上水道、下水道)
・早期復旧技術の開発
・行政と自主防災組織の協力体制の整備
・災害ボランティアとの連携
・企業による地域団体との連携体制の強化
・地域が一体となった防災訓練の実施
地震直後の対応
○防災体制
・政府緊急参集チーム参集、緊急災害対策本部の設置
・被災した都府県庁等にリエゾンを派遣
緊急災害現地対策本部の設置
○情報収集・伝達及び広報
・J-ALERT で津波警報発信
・DIS による被害推計結果を伝達
・国内外への情報発信
・マスコミ等に国民への適切な情報提供を要請
・情報通信手段の確保支援(国所有の通信機器の貸与、
事業者への確保要請)
○捜索・救助
・緊急消防援助隊、広域緊急援助隊(警察)
、自衛隊・海
上保安庁の部隊の派遣
・捜索救助のため各機関ヘリコプター等の派遣
○救急・医療活動
・DMAT 派遣要請
○交通・土木インフラ等の被害状況の把握、復旧対応
・道路・橋梁・空港・港湾の被害状況把握
道路啓開(応急復旧作業の開始)
○ライフライン対応
・ライフライン被害状況を把握
○物資・燃料等の輸送、供給対策
・業界団体等に物資・燃料等の調達・輸送手段の確保依
頼
○海外からの支援申し入れの受け入れ
・救助部隊の受け入れ調整
・支援物資の受け入れ調整
・義援金の受け入れ調整
1日後の対応
○広域派遣
・応援要員の広域派遣(国、都道府県)
・ヘリコプター等による広域医療搬送
・被災地への医師・保健師等の派遣
・TEC-FORCE 派遣(土砂崩れや落橋、防潮堤の破損の把
握等)
○物資等の調達
・建設業協会、土木工業会等と復旧工事に係る人員や資
機材等を調整
・医薬品や発電所の燃料等の調達
・広域の停電に対応するため、病院、ライフライン機関等
への燃料の供給
○避難所生活、特別な配慮が必要な人等への対策
・食料、生活物資を輸送
・配慮が必要な避難者のホテル・旅館等での受け入れ協力
の要請
・税減免措置、金融機関への被災者の負債返済猶予等に
ついて要請
3日後の対応
・応急危険度判定士の派遣(都道府県)
・被災者向けの情報発信手段としての臨時災害放送局(災
害 FM)の設置申請を許可
・業界団体等に仮設住宅の大量供給を要請
・児童福祉関係職員を派遣する等の対応について調整
・女性や子育てに関するニーズへの配慮を県等に依頼
・被災地外に対し、被災市町村の災害廃棄物の処理の協
力要請
1週間後の対応
・被害認定調査、罹災証明の発行、復旧活動の本格化
・広域避難の受け入れ先における費用の取り扱い等につい
て周知
・みなし仮設の適用
・被災者向けの賃貸住宅等の情報提供
・避難生活時の医療・健康上の留意点を周知
・避難所の生活環境調査
・廃棄物処理のガイドライン等の発信、自動車や船舶の処
理方法の情報提供等
1か月後の対応
・復興計画の策定等のノウハウを持つ職員の派遣調整・復
興計画の検討
・災害関連死の認定基準等に係る助言
・広域応援に基づく災害廃棄物処理等の調整
・一人ひとりの家庭内備蓄の実施
(食料・飲料水、乾電池、携帯電話の電池充電器、カセットコンロ、
簡易トイレ等)
b6
井野盛夫
常葉大学客員教授
務局を務める遠野市が報告してい
は、防災訓練の効果であったと事
模事故対応訓練、国民保護訓練な
富士山噴火災害の対処訓練、大規
訓練、伊豆東部火山群の対応訓練、
かれて行うものもある。近年盛ん
者と訓練を管理する統制部門に分
者が綿密なシナリオを作り、参加
訓 練 を 行 う た め に は、 実 施 担 当
し、問題点があれば直ちに修正を
動マニュアルや運用規則等を理解
となる。担当者は災害発生時の行
緊急時に冷静に素早い対応が可能
まで幾多の津波災害を経験し、近
行 っ て い る。 岩 手 県 沿 岸 は こ れ
単位や組織全体で訓練を定期的に
各種の訓練想定に基づいて、部門
である。そのために防災責任者は
し、訓練についても災害発生後に
ため、予防計画を立て対策を実施
地震災害を含む一般災害に備える
あ る。 災 害 対 策 基 本 法 に よ れ ば、
を理解して行動することが重要で
訓 練 を 実 施 す る に 当 た っ て は、
目的を設定し、参加者がその内容
域住民が参加する大規模な訓練も
実施するもの、そして国、県、地
も連携し企業を含めた地域全体で
加する中規模から、自主防災組織
県防災指名職員と全市町職員が参
は対処できないこともある。また、
の 状 況 は 変 化 し、 一 律 の 対 応 で
どによって人口の集中や火気使用
同じ種類と規模の災害であって
も、発生する季節、時間、曜日な
施している。
行い、その目的、方法、機材の操
生活の訓練等、個々の項目ごとに
において情報の収集・伝達、避難
ひとつである。また、職場や地域
DIG(災害想像ゲーム)もその
ある。自主防災組織で行っている
役割分担を図上で確認するもので
で、防災地図等を利用して相互の
による被害などを想定したうえ
機 関 が 一 堂 に 会 し て、 災 害 発 生
におこなわれる図上訓練は、関係
応急対応できる人材を養成するの
起こらない。当事者が事に臨んで、
である。災害は想定した通りには
自主的に機能を高めることが理想
う。①から④までをサイクルとし、
い、④反省点を踏まえて改善を行
て 実 施 し、 ③ 終 了 後 に 反 省 を 行
①訓練を計画し、②それに基づい
くことも訓練の一部である。まず
点が見つかれば直ちに改善してお
して緊急時の備え、訓練時に問題
応急対策行動が取れることが理想
年「宮城県沖地震」の発生確率が
おける災害応急対策の実施や避難
年に9市町村
が訓練の目的といえる。
行動訓練を行わなければならない。
たことから、平成
作などを習熟することを目的にす
加して、約2万人規模の後方支援
警察、消防、自衛隊等の組織が参
設立した。翌年から地域の自治体、
支援拠点施設整備推進協議会」を
は、東海地震災害を想定した全職
強化地域に指定されている静岡県
害応急対策訓練も実施義務がある。
災応急対策訓練、地震発生後の災
体では、警戒宣言発令時の地震防
の地震防災対策強化地域指定自治
防災訓練を大別すると、屋外に
置いて多数の関係機関が実施する
項目を加えて取り組んでいる。
難・誘導、救出・救護などの訓練
降実施日を変更して情報伝達、避
市町で実施してきたが、大震災以
静岡県は突発型避難訓練を沿岸
中部地震の津波災害を教訓として
は効果的である。
など個別訓練を連続して行うこと
レー、火点への消火、鎮火の確認
保、可搬ポンプの操作、バケツリ
因、初期消火の考え方、水源の確
る個別訓練もある。緊急対応行動
を目標に訓練をしてきた。東日本
員の参集訓練、緊急物資輸送や医
劇 場 型 と、 室 内 で 行 う 図 上 オ ペ
自動体外式除細動器 AED-2100
〈製造販売〉
臨機応変に対応でき
る人材を養成する
TEL:03-5977-0350 FAX:03-5977-0340
年に発生した日本海
大 震 災 が 発 生 し た 際 に、 岩 手 県
療救護の特化型実践訓練、津波避
レーションや特化実践型などの訓
*資料請求・見積りのご依頼は東京法規出版ライフサイエンス事業部まで。
ある。昭和
遠野市の遠野運動公園を後方支援
難 訓 練、 大 規 模 図 上 訓 練、 総 合
日本 CU メディカルシステム株式会社
また、大規模地震対策特別措置法
活動拠点として、津波に襲われな
防災訓練、地域防災訓練などを実
医療機器承認番号 22300BZI00017000
医療機器承認番号 22100BZX00362000
AED は救命処置のための医療機器です。AED を設置したら、いつでも使
用できるように AED のインジケータや消耗品の有効期限等を日頃から点検
する事が重要です。
医療機器承認番号:22100BZ100022000
日常点検を忘れずに!
●簡単操作、 お手軽 AED
●リファレンスガイド機能(救命工程がひと目でわかる)
●わかりやすい心肺蘇生コーチング機能
●フタを開けると電源自動 ON。
●除細動パッドの貼り位置は左右どちらでも OK。
●状況に合わせ、 自動ガイド。
●セルフチェックが見やすい。
●バッテリ残量も一目でわかる。
●毎日のセルフテストで、AED 本体・バッテリ・電極パッドに
異常がないかを確認。
●心肺蘇生後、8 秒以内で解析・充電完了。より早期の除細動
が可能に。
●防塵・防水機能を強化。
※添付文書を必ずお読みください。
※電極パッドは 1 回限りの使い捨てです。
※ AED の設置管理者は、AED に不測の事態が発生した時及び譲渡時(高
度管理医療機器販売業の許可業者に限る)、廃棄時には連絡してください。
21
自動体外式除細動器
アイパッド NF1200
自動体外式除細動器 AED
● 1 台で小児から成人まで対応。
訓練は繰り返し行うことにより、
高度管理医療機器・特定保守管理医療機器
からなる「三陸地域地震災害後方
かった内陸の市町村が被害状況の
練がある。短時間で実効性のある
自動体外式除細動器 /
を理解するために、火災発生の原
把握、医療救護、救援物資輸送な
施している。さらに風水害の対処
自動体外式除細動機 AED
HDF-3000
●日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会が推奨する文言の
音声で操作をガイド!
どの業務を素早く展開できたこと
小さくて、
軽くて、
携帯が容易!
19
初めてでも正しく使える簡単な操作性に加え、 高度な心電解
析技術を搭載した AED。
必要なとき正しく作動するように高度なセルフチェック機能
や、 管理しやすいバッテリの採用、 高い堅牢性にもこだわり
ました。
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非常に高くなっていると指摘され
さまざまな訓練の
種類
ど毎年災害発生に備え計画的に実
井野盛夫(いの・もりお)
1937 年静岡市に生まれる。61 年
東京教育大学卒業後、静岡県職員に採
用される。工業用水道課、水資源課、
地震対策課長を経て 92 年より防災局
長。96 年より静岡県防災情報研究所
長。2000 年より富士常葉大学環境防
災学部長、07 年度退職。理学博士。
中央防災会議専門委員、地震調査研
究推進本部専門委員、静岡県立大学客
員教授、兵庫教育大学講師、静岡大学
講師などを歴任。97 年国土庁長官防
災功績者表彰。
著書に『21 世紀東海地震』(羽衣出
版)
『こうすれば東海地震はこわくない』
『抗震—東海地震へのアプローチ』『抗
震(改版)』(静岡新聞社)『今だから知
りたい東海地震』
(共著、静岡新聞社)
『名水を科学する』(共著、技報堂)『地
震予知がわかる本』
(共著、オーム社)
『地域防災計画の実務』
(共著、鹿島出
版)『東海地震いつ来るなぜ来るどう備
える』
(共著、清文社)など。
る。
防災訓練を有効に
活用するために
21
どのような災害でも被害状況を
早く知り、状況の変化に合わせて
東日本大震災で
実証された防災訓練
の効果
役 に 立 つ
地 域 防 災
計 画 の
作 り 方
パワーハート G3
HDF-3000
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連載
Editor's Voice
南海トラフ巨大地震の被害想定は、
千年に1度起こるかどうかという最悪クラス
の地震・津波を対象に含めた。甚大な被害想定結果が公表されたことにより、防
災対策の効果に対して否定的な反応が一部に現れたようだ。津波からの「避難放
棄者」という言葉がメディアに登場した(2012年8月23日付毎日新聞「記者の目」な
「b side」の名称には、
「防災パビリオンの B 面」
「防災(bosai)」
「B to G(Business to Government、
民間企業と政府官公庁との取り引き)の
橋渡しをビジネスの側(B side)から促進する」
という意味を込めています
ど)。巨大な津波が来襲すれば、
どこに逃げても助からないと諦める人がいるとい
うのだ。
津波から避難しない人が存在するのはこれまでも防災対策上の課題だった。総
務省消防庁の消防団員アンケートによると、東日本大震災で「避難を呼びかけても
住民が避難してくれなかった」と消防団員の36%が証言した。多くは油断して逃げ
遅れるのだろうが、高齢者などの一部に避難そのものを諦める人がいる。
個人の死生観とは別に、地域の防災対策は進む。避難場所・避難ビルなど具体
的な避難施設を増やし、地域で避難訓練を繰り返す。これらの地道な取り組みの
積み重ねが避難放棄者を減らすことにもつながると信じて。
(大浜)
b side編集部
STAFF
表紙の写真
東日本大震災から2年。復興の
状況は必ずしも芳しいとは言えない。
政府の発表によると、今年1月末時
点で被災3県のがれきの処理率は
約46%にとどまっている。南三陸町
の志津川湾を望む(昨年11月撮影)。
editorial b side 編集部 ティダヌファ design THS デザイン室 ライラック
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アンケート回答方法
ご記入いただけましたら、ファクスにてご返送いただきますようお願いいたします。
Q1
Q3
今後特集などで取り上げてほしいテーマがありましたらご回答ください。
その他、貴職として、本誌への提言や注文があれば自由にお書きください。
①災害時要援護者対策
②自主防災組織の活性化対策
③効果的な防災訓練の実施方法
④災害ボランティアについて
⑤国民保護対策
⑥その他
ご協力まことにありがとうございました。皆さまのご意見をもとに、今後とも
誌面の充実につとめてまいります。
都道府県名
Q2
民間の防災ビジネスについてお知りになりたいことはありますか。
貴団体名
①住民用防災グッズについて知りたい
ご担当部署名
②団体用防災資機材について知りたい
ご担当者様名
③防災サービスについて知りたい
④他団体の民間利用の実態を知りたい
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