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第7章 OJT の実施 道内産学官金一体となったロシア側への提案

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第7章 OJT の実施 道内産学官金一体となったロシア側への提案
第7章 OJT の実施 道内産学官金一体となったロシア側への提案、テスト輸出について
「自然環境」、「食・農業」、「寒冷地技術」、「エネルギー」の各分野について、ロシア側
の実際的なニーズが確認できた「寒冷地技術」、
「食・農業」についてはテスト輸出を行い、
今後、経済交流の拡大が期待される「自然環境」、「エネルギー」については、道内技術の
活用について提案を行った。
1.ロシア側へのテスト輸出
ビジネスミッションの受入の一環として招へいしたロマン・ファデエフ氏(ニッポン社
長)、オレグ・マルティノフ氏(フィネコ社 社長)、道内の産学官金関係者から成る「貢献
と参入」プロジェクトチームがミーティング、道内企業との商談等を経て、北海道産食品
と北海道寒冷地技術・製品のテスト輸出を行った。
(1)北海道寒冷地技術・製品のテスト輸出
北海道寒冷地技術・製品のテスト輸出についてはロシア極東地域進出に意欲的な、寒冷
地技術・製品を持つ道内企業が 10 月にロシアへ渡航した際、現地で商談を行い今後取引
の詳細を詰めていくことに合意したユジノサハリンスクの投資会社フィネ コ社へサンプル
を輸出することとした(フィネコ社概要については 第 6 章 56 ページ参照)。
1
輸出商品は、本事業の受託コンソーシアムの構成員 である(株)FEC マネージメントが
北海道側の輸出業者となり、フィネコ社傘下の建材の輸入、販売を行う貿易会社マテリッ
ク社が輸入することで納入契約書を交わした。
納入契約書(一部抜粋)
2
輸出商品の選定に関しては、商談会の際に配布したカタログを元にメールでのやり取り
の結果、フィネコ社が希望する、建物の外壁に使用する耐寒性の高いサイディング資材 9
種と凍結防止融雪ゴムマット 1 種が決定した。
融雪ゴムマットについては(株)北海道ゴム工業所、サイディング資材については(株)
北友、ネオトレーディング(株)を通して、メーカーである東邦シートフレーム(株) よ
り提供された。輸出が決まった商品は下記のとおりである。
商
品
名
会社名
数量
1 サイディング資材 (Slender Plus TK-6)
2
8
サイディング資材 (Slender Stone ASC ASC-
8
01)
3 サイディング資材 (Lapis V5ASC ASC-02)
4 サイディング資材 (7.5EX RP-05W)
8
12
(株)北友
5 サイディング資材 (455DX TN-21)
6 サイディング資材 (Lapis V5n Y-26B)
(株)ネオトレーディング
7 サイディング資材 (Lime Stone Y-36)
8
6
8
8
サイディング資材 (Sotokabekun Double SN-
8
30)
9 サイディング資材 (7.5GL TK-6)
12
10 凍結防止融雪ゴムマット
(株)北海道ゴム工業所
合
3
計
2
80
これらの商品の輸送に関しては、小樽~コルサコフ間を一部航行するカンボジア船籍の
貨物船 KINTEKIMARU を利用した。KINTEKIMARU は不定期船ではあるが 1 ヶ月に 1
回程度、小樽~コルサコフ間の航行があるため、日本通運(株)小樽支店を通して輸送の手
配を行った。輸送ルートについては下記のとおりである。
●コ ル サコ フ
小樽 ●
輸送ルート図(小樽→コルサコフ)
4
ロシア側で輸入する際の適合証明としてサイディング資材については特別の許可は必
要なかったが、凍結防止融雪ゴムマットについては「ユーラシア関税同盟申告書」が必要
であった。ユーラシア関税同盟申告書はロシア企業でなければ取得できないため、これに
ついては輸入先であるマテリック社の協力で取得することができた。また 、サイディング
資材については共用建物(アパート、ホテル、カフェ、事務所など)で使用する場合は耐
火証明書が必要になる。
ユーラシア関税同盟申告書
5
輸出の手続、また日本の通関で必要な書類としてインボイス、パッキングリストを作成
した。
インボイス
パッキングリスト
6
なお、商品を輸出する際は日本の税関から輸出許可通知書が発行された。
輸出許可通知書
※貨物を輸出するにあたり、輸出者名、品目、数量、価格などを記載して税関に提出す
る書類。税関が輸出を許可し、許可印を押して交付されると輸出許可通知書となる。
7
通関手続完了後、積み込みを行い、B/L が発行された。
梱包 前
梱包 後
積み 込 み①
積み 込 み②
積み 込 み③
積み 込 み④
積み 込 み⑤
積み 込 み⑥
B/L(船荷証券)
※船舶会社、運送業者が発行し、貨物の引き受けを証明し、当該貨物受け取りの際、依拠
とする書類。
8
サハリンに商品到着後、ロシア側の輸入通関に必要なものとしていくつかの書類の提出
を求められ、PDF で送信した。下記は求められた書類と実際に送った書類の一覧であ
る。
追加提出書類
ロシア側から求められた書類
実際に送付した書類
輸送の契約書
納入契約書(CONTRACT)
輸送の支払いを確認する書類
日本通運からの請求書
輸送インボイス
インボイス
保険証書
保険未加入の念書
輸出申告書
輸出許可通知書
メーカー(TOHO)の価格表
価格表(FEC 押印)
フィネコ社に到着した凍結防止融雪ゴムマット
フィネコ社に到着したサイディング
9
輸送スケジュールと輸送コストについては下記のとおり である。
2015/1/19
日本側通関輸出許可
2015/1/20
積込、小樽港出港
2015/1/20
コルサコフ入港
2015/1/28
ロシア側通関許可
2015/1/29
フィネコ社到着
輸送に関わるコストは下記のとおりである。
内
訳
ルーブル
入出庫作業料、保管料
日本側
ロシア側
円
11,645
梱包料
3,000
輸出通関料
4,200
取扱量
15,000
横持料
15,000
海上運賃
17,556
通関手数料
50,000
荷受人が寄託した担保金
50,000
合
計
(a)+(b)の合計 ※ 日 本円 換 算 、 1 ルー ブ ル 2.2 円 計 算
10
100,000(a)
66,401(b)
286,401 円
(2)北海道産食品のテスト輸出
食品については、(株)FEC マネージメントが北海道側の輸出者となり、昨年のモスクワ・
アンテナコーナーで販売をした際、取引契約を締結した日本食品店「ニッポン」へ輸出を
行った(ニッポンの会社概要は第 6 章51ページ参照)。
納入契約書
(一部抜粋)
11
輸出品については、「ニッポン」からのニーズ(第 2 章 11 ページ参照)を調査した結
果、4社6アイテムの商品を輸出することとした。
輸出商品一覧
商
品
名
内容量
1 ラーメンサラダ焙煎ごまだれ
215g
2 おろしりんご
225g
3 あおり辛醤
やきにくたれ
やきにくたれ
4 やきいかまめ
販売会社
数量
1,800
ベル食品(株)
180
230g
110g
180
池田食品(株)
200
5 北海道メロンキャラメル
88g
(株)札幌グルメフーズ
800
6 わさびふりかけ
30g
(株)北海大和
600
合計個数
3,760
これらの商品の輸出ルートはロシア側の通関の関係、コスト、効率的な輸送を考慮して
下記のルートで輸出した。
モス ク ワ●
ウラジオストク
●
●釜 山
石狩湾新港→釜山→ウラジオストク→モスクワ
海上輸送(ウラジオストクまで)とシベリア鉄道による輸送
12
●石 狩 湾新 港
(株)FEC マネージメントが輸出業者となり、日本通運が提供している「韓国 MCC
混載サービス」を利用して、石狩湾新港から釜山経由でウラジオストクへ輸送した。ロシ
ア国内では、ロシア側の輸入業者である「ニッポン」のウラジオストク現地代理人を通じ
て、シベリア鉄道で商品を輸送した。
「韓国 MCC 混載サービス」(日本通運)
※コンテナ1本に満たない小ロット貨物を石狩湾新港にある倉庫に集積、混載して釜山
まで運び、この後ロシアのみならず 35 ヶ国対象に一貫輸送サービスを提供している。
13
輸出については、下記の流れで商品を輸出した。
①北海道側企業・ロシア側企業
契約
【北海道側企業/(株)FEC マネージメント】⇔【ロシア側企業 /ニッポン】
↓
②適合証明書の取得のためのサンプル取り寄せ、及び必要書類の収集
【出品企業】⇒【(株)FEC マネージメント】
↓
③適合証明書(旧 GOST-R)取得
【ロシア側企業/ニッポン】が【ロシア適合証明書認証機関】を通じて取得
↓
④輸出用商品の発注、納品
【出品企業】⇒【(株)FEC マネージメント】
↓
⑤輸出書類の作成と送付
・日本側
【(株)FEC マネージメント】⇒【日本通運】
・ロシア側【(株)FEC マネージメント】⇒【ロシア側企業 /ニッポン】
↓
⑥商品輸出
↓
⑦商品到着・ロシア側通関
↓
⑧ロシア側企業/ニッポンへ納品
ロシアへ輸出する場合に必要な適合証明書の取得のための必要書類については、下記の
通りである。なお、ロシア向けに輸出をする場合には、輸入通関時にこの適合証明書の提
示が求められるため事前に取得しなければならない。
本年度事業での必要書類一覧
・適合証明取得を代行する旨の委任状(承諾書)
・商品詳細(成分分析表、原材料割合表)
・遺伝子組み換えでない証明書兼品質証明書
・ISO 証明書または営業許可書
・原産地証明書
14
適合 証 明取 得 を代 行 する 旨の 委任 状 (承 諾 書)
ISO 証明 書
遺伝 子 組み 換 えで な い証 明書 兼品 質 証明 書
商品 詳 細( 成 分分 析 表、 原材 料割 合 表)
原産 地 証明 書
15
輸出用の商品の発注、納品については、適合証明書を取得後、出品企業に対しては、メ
ール等で必要個数を注文した。また、注文の際には、
・パッキングリスト(貨物リスト)に記載する Net Weight(正味重量)、Gross
Weight
(総重量)、Measurement(容積)
・インボイス(貨物価格の明細書、納品書)
以上について出品企業に問い合わせた。納品先は下記のとおりである。
【納品先】
石狩湾新港
8VW29
保税蔵置所
輸出書類については、輸出の手続き及び日本の通関で必要な書類として、
・パッキングリスト(貨物リスト)
・インボイス(貨物価格の明細書、納品書)
以上の書類を作成し、日本の通関業者である日本通運小樽支店及びロシア側企業のニッ
ポンへメールで送信した。また、貨物の船積み後に運送業者が発行する B/L(船荷証券)に
ついては、別途、ニッポンへメールで送信した。
・原産地証明
昨年度のモスクワ・アンテナコーナーで販売するために道産食品を輸出した際、必要な
かった原産地証明の提出が今回求められ、札幌商工会議所から発行されたものをロシア側
企業/ニッポンのウラジオストクでの通関代理人へEMSで送った。
パッキングリスト
16
インボイス
原産地証明
※今回求められた原産地証明は、インボイス 1 通につき原産地証明が 1 通必要だっ
た。
17
今回は、日本通運石狩湾新港保税倉庫で税関検査が行われ、輸出許可通知書が発行され
た。商品はパレットごとに透明フィルムで梱包され、船積み後 B/L(船荷証券)が発行さ
れた。
輸出許可通知書
船積 み 後①
船積 み 後②
18
船積 み 後③
B/L(船荷証券)
※船舶会社、運送業者が発行し、貨物の引き受けを証明し、当該貨物受け取りの際、依
拠とする書類。
輸送スケジュールとコストについては下記のとおりである。
2014/12/22
出展企業各社
石狩湾新港へ商品を輸送
2015/1/9
日本側通関で輸出許可
2015/1/17
石狩湾新港から釜山港へ海上輸送
2015/1/18
釜山到着
2015/1/24
釜山港からウラジオスト ク港へ海上輸送
2015/1/26
ウラジオストク港到着
2015/1/27
保税倉庫へ商品を運搬
2015/2/3
ロシア側通関
2015/2/6
シベリア鉄道で商品を輸送開始
2015/2/20
モスクワへ到着、「ニッポン」に商品到着
テスト輸送した商品については、ロシア語の商品ラベル等に貼り直した後、 3 月下旬に
「ニッポン」でテスト販売する予定である。
19
輸出コストについては下記のとおりである。なお、適合証明取得のための商品検査費用
および認証料についてはロシア側が負担した。
内
訳
ルーブル
円
輸出通関料
日本側
ロシア側
5,900
取扱料
10,800
パレット積替作業料
21,600
税関検査に伴う作業料
10,000
海上運賃
58,669
ウラジオストク→モスクワ輸送費用
33,414
通関時付加価値税
22,000
通関手数料
18,000
通関ブローカーコミッション
16,500
輸送費用追加分(不凍車両料金、木枠梱包)
12,500
適合証明取得のための商品検査費用および認証料
34,000
合
計
(a)+(b)の合計 ※ 日 本円 換 算 、 1 ルー ブ ル 2.2 円 計 算
136,414(a)
106,969(b)
407,080 円
2.ロシア側への提案
(1)産業廃棄物の再利用、リサイクル技術について
サハリン州ではリサイクル事業が進展していないため、廃棄物のほとんどは郊外に埋め
立てられ、処分されている。なお、資源が豊富なサハリン州では、廃棄物からエネルギー
を生み出す必要性がないのが現状である。
他方、廃棄物を捨てるための設備、政府支援によるリサイクル技術を研究する企業の設
立も検討され、ウラジオストクでは再生タイヤ工場があり、ユジノサハリンスクでもリサ
イクルタイヤの使用販売が始まったばかりである。
今回、ビジネスミッション受入の一環として、平成 27 年1月 14 日~17 日に、フィ
ネコ社のマルティノフ社長による、北清企業(株)、札幌市リサイクル団地等の視察を行い
(第 6 章 57 ページ参照)、道内における産業廃棄物の再利用、リサイクル技術について
説明を行った。
一連の視察を通じて、マルティノフ社長から以下の感想、提案があった。
・フィネコ社では、砕石事業を行っており、廃材を再生し路盤材へ再利用するとの発想に
大きな関心があると共に、廃材を再生することが事業として成り立ち、かつ販売すると
いう一連の事業に対して深く関心を持った。
・サハリン州内における自動車部品の部品のリビルド事業を検討し、リサイクルとエコロ
ジーの実現に向けて検討する方向である。
以上の提案等から、リサイクル事業が進展していないサハリン州においては、廃材や自
20
動車等の破損部品のリサイクル事業が将来的に有望な分野である 。
リサイクルの分野での循環の図式が今後検討できれば、サハリン州の社会的課題解決プ
ロジェクトを協働で対応することが実現可能となる。
(2)ガス化自動車の導入について
サハリン州においては、ガス化が着実に進んでおり、ガスプロム及び州政府主導で進め
られ、また、投資プロジェクトの一環として、州政府も熱心に取り組んで いる状況でいる。
特に、ユジノサハリンスク市内においては環状パイプラインの敷設が検討されており、今
後、家庭用を対象としたガス供給、ガス発電所の建設も期待されている。ガス化自動車の
導入プロジェクトについては、サハリン州においては、ガスプロム主導で充填所の建設予
定があり、自動車のガス化も目指しているところである。
沿海地方では、今年から、ハサン地区において大規模な天然ガスプラントの建設が予定
されている。今後、ガス化自動車の導入については、沿海地方政府に対しても提案は可能
であると思われる。
平成 26 年 12 月 18 日、沿海地方政府関係者等を対象に、ガス自動車関連企業より、
ガス化自動車の構造についてのプレゼンテーション、解説を行い、ガス化自動車のデモ走
行により、試乗しながらガス走行のエンジンの切り替えや仕組みについて確認した 。
北海道においては、主に市内循環バス、配送用のトラック、都市間トラックについては
ガス化が進んでいるため、今後導入を検討している、ロシア行政関係、企業に 対してはノ
ウハウの提供をはじめ、運用方法等について協力できる可能性が ある。
こうした協力は、道内の中小企業単体では到底できるものではないため、産学官金の協
力体制を整えた上で、ガス化に向けての積極的な意見交換、情報交換、企業間の技術交流
を図っていく必要がある。
LPG とガソリンのハイブリット車
機械系統の調査風景
21
第8章
OJT の実施
日ロ企業間の契約締結に向けたサポート
本事業を通じて、ロシア企業との関係が構築できたフィネコ社 (ユジノサハリンスク)
と、日本食品店「ニッポン」
(モスクワ)については、道内企業との新規契約締結に向けた
ビジネスサポートを行った。
1.「ニッポン」におけるビジネスサポート
平成 26 年 12 月10日~12日に、「ニッポン」社長のロマン・ファデエフ氏を招へい
し、道内企業4社を訪問し、個別商談や各企業からのプレゼンテーションを行った (第 6
章 53~55 ページ参照)。これらの企業の商品から、ファデエフ氏のニーズにあったもの
については、平成 27 年春をめどに契約締結、輸出を目指した。下記はファデエフ氏が興
味を示し、値段の引き合いがあった商品の一覧である。
メーカー名
商品名
1 ㈱北海大和
北海道えびクリームスープ3P
2 ㈱北海大和
北海道サーモンクリームスープ3P
3 ㈱北海大和
北海道コーンスープ
4 ㈱北海大和
とうきびスタンディングタイプ
5 ㈱北海大和
北海道ポテトフレーク
6 ベル食品㈱
ラーメンサラダ焙煎ごまだれ(新規 PB 商品)
7 ベル食品㈱
ラーメンサラダのたれごまだれ1L
8 ベル食品㈱
三栄キムチの素
9 カゴメ㈱
カゴメ野菜ジュース
3P
410g
10 カゴメ㈱
カゴメ野菜ジュース食塩無添加
11 カゴメ㈱
野菜一日これ一本
12 カゴメ㈱
オールベジ
13 カゴメ㈱
まろやかキャロット
14 カゴメ㈱
カゴメトマトジュース
15 カゴメ㈱
野菜生活100オリジナル
16 カゴメ㈱
トマトケチャップ
17 カゴメ㈱
トマトケチャップ
18 カゴメ㈱
基本のトマトソース
19 カゴメ㈱
パンのせ野菜サルサ
20 カゴメ㈱
パンのせ野菜ラタトゥイユ
21 カゴメ㈱
醸熟ソースウスター
22 カゴメ㈱
醸熟ソース中濃
23 カゴメ㈱
醸熟ソースとんかつ
22
メーカー名
商品名
24 カゴメ㈱
醸熟ソースこいくち
25 カゴメ㈱
醸熟ソース炒め香るソース
26 ㈱ソラチ
十勝豚丼のたれ
27 ㈱ソラチ
北海道焼肉のたれ
28 ㈱ソラチ
ステーキソース
29 ㈱ソラチ
生ラム専用たれ
30 ㈱ソラチ
カルビ焼きのたれ
31 ㈱ソラチ
お肉何でも生姜焼きのたれ
32 ㈱ソラチ
札幌さんか亭焼肉のたれ
2.フィネコ社におけるビジネスサポート
本事業の一環として、フィネコ本社内で道内企業が個別商談を行い、その場で契約基本
合意に至った3社の商品を中心にテスト輸出行った。今後、両社間での本契約に向けてサ
ポートを行う。下記はフィネコ社に提案した商品の一覧である。
メーカー名
商品名
1 ㈱青井商店
#1412
耐油極寒ソフト
2 重防寒
2 ㈱青井商店
#1413
耐油極寒ソフト
脱着防寒
3 ㈱青井商店
#1414
耐油極寒ソフト
ジャージ袖付
4 ㈱青井商店
#214W
ラバーホット
5 ㈱北海道ゴム工業所
電気式融雪ゴムマット
6 ネオトレーディング㈱
サイディング(Slender Plus TK-6)
7 ネオトレーディング㈱
サイディング(Slender Stone ASC ASC-01)
8 ネオトレーディング㈱
サイディング(Lapis V5ASC ASC-02)
9 ネオトレーディング㈱
サイディング(7.5EX RP-05W)
10 ネオトレーディング㈱
サイディング(455DX TN-21)
11 ネオトレーディング㈱
サイディング(Lapis V5n Y-26B)
12 ネオトレーディング㈱
サイディング(Lime Stone Y-36)
13 ネオトレーディング㈱
サイディング(Sotokabekun Double SN-30)
14 ネオトレーディング㈱
サイディング(7.5GL TK-6)
23
2 重防寒
なお、(株)青井商店の商品については、TC(認証)取得に費用と時間がかかるためテ
スト輸出は見送りとなった。
また、2 月に再度、フィネコ社本社で道内企業が個別商談を行い、
(株)北友については、
住宅1棟分に相当する金属サイディングを輸出することで合意に達した。
(株)青井商店に
ついては、今後、フィネコ社が輸入したい商品をラインナップし、当社が TC 取得するこ
とで合意を得た。
(株)北海道ゴム工業所の電気式融雪ゴムマットについては、ロシアへ輸
出する際に必要な「ユーラシア関税同盟国家登録書」をフィネコ社が取得、今後、フィネ
コ社への輸出や、ロシア国内に商品を流通させることが可能となった。
24
第9章 OJTの実施 国内他地域のロシアとの経済交流動向の把握について
1.目的と手法
日本海側自治体を中心に、ロシアとの経済交流を試みる取組は国内各地に存在する。北
海道はサハリン州との交流においては旧ソ連時代からの実績があるが、ウラジオストク、
モスクワなどユーラシア大陸側ロシアについては経験が浅いのが実情である。そこで、大
陸側で先行する地域が持つ経験、知見を参考とするため、各地を訪ね、地元自治体の貿易
推進担当者などを中心に取組概要を聞き取った。国内諸地域への聞き取り調査の日時及び
訪問地は下記のとおりである。
日
時 :平成 26 年 12 月8日(月)~12 日(金)
訪 問 先 :島根県浜田市、松江市、鳥取市、京都市
日
時 :平成 27 年1月 12 日(月)~16 日(金)
訪 問 先 :富山県高岡市、富山市、新潟市、秋田市
①訪問先での質問内容
・経済交流に関する近年の取組概要
・交流の体制について(日本側の交流組織・団体等の概要/ロシア側との定期会合等、恒
常的な対話の枠組みはあるか/ロシア側窓口機関はどこで、恒例行事以外ではどのよう
に関係を維持しているか)
・地元からロシアまでの商流・物流の現状
・地元産品のロシアへの輸出促進にあたって、重点品目は何か。その理由は
・他地域産品の対ロ輸出に地元港を使ってもらうために、どんなことをしているか
・ポートセールス以外に、日本の他地域との連携について実績や今後の可能性は
・ロシアからのインバウンドの状況と地域の対応状況(どんな働きかけをしているか)
・対ロシア経済交流の課題として挙がっていることは
・来年度以降に構想していることは
※訪問先ごとの個別ヒアリング結果は、資料編 P134~P145 を参照
25
2.国内各地域ヒアリング調査
(1)島根県
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年)※
定期会合等
55.4 億円
なし
あり
(RORO)
在ロ拠点
あり
売り込み商材
中古車、建材、牡丹
等
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・輸出のメーン商材は浜田港の中古車、中古車部品
・浜田港にはウラジオストク商業港に直行する RORO 船が月2回運航
・浜田港を拠点とする民間商社がロシア貿易のけん引役
・島根県は浜田港を支援し、松江市は隣接する鳥取県境港も利用
・松江産の牡丹(ぼたん)輸出が順調だが、輸出物は県産品にこだわらない
②概況
・RORO 船の定期就航
国際貿易港である浜田港を有する島根県では、平成9年にロシアの貨客船が同港に初入
港して以来、中古車貿易を中心とした経済交流が本格化した。貿易の主たる担い手は浜田
港エリアに本社を置く商社、(株)エル・アイ・ビー(LIB、高橋克弘社長)である。ロシ
アの経済成長とともに中古車輸出が盛んになり、平成 20 年 7 月から FESCO 社による
RORO 船が頻繁に就航するようになる。RORO 船は平成 24 年末からは月2回の定期運
航となり現在に至る。
・日ロ双方にサポート窓口
平成 19 年2月から浜田港振興会や浜田市、島根県など官民で「ロシア貿易促進プロジ
ェクト」を始め、ロシア貿易助成金制度などを拡充。その後も平成 21 年から、24 年と連
続で 3 ヶ年プロジェクトを実施しており、その中で広島地域へのポートセールスなども実
施している。平成 21 年 9 月には、LIB 社が振興会から運営を受託する形でウラジオスト
ク市内に島根県ビジネスサポートセンターを設置した。平成 24 年 6 月には浜田市内にロ
シア貿易サポートデスクを設け、日本企業の相談にのる体制をつくった。
LIB 社の高橋社長は、今回のヒアリングに対し、北海道企業によるウラジオストク輸
出もサポートしたいと話した。同社が拠点とする浜田港からの出荷にはこだわらず、道内
港を使うルートを提案できるとのことだった。
26
・ウラジオストクでイベント、県東部は隣県の境港も利用
島根県産品の対ロ輸出には、隣県である鳥取県の境港市も使われている。特に松江、出
雲、安来といった県東部地域は境港が車で 1 時間圏内にあり、松江産の牡丹の出荷は浜田
港からも実績があるものの、回数は境港からの方が多い。松江市などは境港市、米子市な
ど鳥取県内自治体とともに「中海・宍道湖・大山圏域市長会」をつくっており、平成 26 年
9月にはウラジオストクにて合同見本市「2014 山陰ブランド展 in ロシア」を実施。
この他、同 9 月、モスクワでの花き見本市「フラワーエキスポ 2014」に島根県が牡丹
のブースを出し、やはりモスクワの国際食品見本市「PIR2014」に LIB 社が出展するな
ど、ロシア現地での PR 活動に積極的である。
・県内の人的ネットワークが機能
島根県の特徴として、関係機関の人的な連携が密である点が挙げられる。LIB 社、県の
貿易促進支援室、JA、松江市などの担当者がそれぞれ良好な関係を保っており、意思疎通
に支障がない。とりわけ県の担当主任はロシア語が堪能で 7 年異動しておらず、県内のロ
シア経済交流の主軸として機能していることがうかがえた。
(2)鳥取県
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年)※
定期会合等
22.3 億円
あり
在ロ拠点
売り込み商材
あり
カレールー、お茶等
あり
(フェリ
ー)
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・韓国経由で境港とウラジオストク港を結ぶ通年フェリー航路を持つ
・ウラジオストクにビジネスサポート事務所を持つ
・毎年ウラジオストクで PR イベントを展開。島根東部地域とも連携する
・県産品にこだわらず、関西などから広く境港に集荷する考え
・知事会など複数の枠組みで、ロシアを含む数カ国との接点を確保中
・鳥取市が、ウラジオストク-鳥取空港のチャーター便を4年続けた
②概況
鳥取県は平成 21 年来、県の西端にある境港が定期フェリーでウラジオストクと結ばれ
ており(韓国・東海港を経由)、取組も多彩である。
・ロシアを含む北東アジア各都市と知事同士の会議
鳥取県とロシア極東地域政府との接点では、知事同士が会談する「北東アジア地域国際
27
交流・協力地方政府サミット」が代表的である。鳥取県のほかモンゴル中央県、韓国江原
道、中国吉林省、ロシア沿海地方の知事が一堂に会する会議で、平成 26 年 7 月には第 19
回会合をモンゴルで開いている。この際に平井伸治知事がロシア沿海地方知事と個別に会
談し、信頼関係を保っている。平井知事はこの他、平成 26 年 3 月の「第 6 回日露投資フ
ォーラム」(東京)、同 9 月の「日本・ロシアフォーラム 2014」(モスクワ)でも登壇し
て鳥取をアピールしており、積極性が際立っている。
・関西企業と連携したビジネスマッチング
他府県と連携したビジネスマッチングイベントにも特色がある。県は平成 22 年から大
阪府や兵庫県などと「関西広域連合」を構成しており、同連合との共催によるロシア商談
会を毎年催している。平成 26 年 3 月上旬の商談会では、ロシア側から食品、建設資材な
ど各業界の 8 社(うちウラル山脈以西は 5 社)が参加し、日本側 21 社と面談した。2 日
間の日程のうち 1 日を米子会場、1 日を大阪会場とし、大阪では日本側 16 社が参加した。
フェリー航路を使う輸送ニーズの発掘を狙うもので、鳥取県内だけでは商談参加企業が限
られるところ、大阪など大都市圏の企業も組み入れることで、ロシア側から見たときの魅
力を確保している。
商談会の日程も工夫した。大阪会場は敢えて、大阪で雑貨の大型見本市「インターナシ
ョナルギフトショー」が始まる翌日に設定した。ロシア人バイヤーにとってはギフトショ
ーにも行けるため、来日の動機が増すこととなった。鳥取県は希望するロシア企業に通訳
を用意し、ギフトショーにも同行させた。
・島根県内自治体と連携した「山陰ブランド展 in ロシア」
平成 26 年9月 26 日(金)・27 日(土)の2日間、ウラジオストクの大学内ホールで
展示即売・商談会「山陰ブランド展 in ロシア」を開催した。県と、境港市・米子市・松江
市(島根県)・出雲市(島根県)・安来市(島根県)でつくる「中海・宍道湖・大山圏域市
長会」との共催である。前年に開いた「鳥取ブランド展 in ロシア 2013」も同市長会主催
物産展と同じ場所・日時での合同開催であり、平成 26 年は名実ともに協力体制を築いた。
出品したのはカレールー、シチュー、化粧品、清涼飲料、お茶、花など。2 日間で 2,600
人を集めた。
・ロシア沿海地方輸出促進センターとの協力、GTI(大図們江開発計画)など
平成 26 年 11 月に、沿海地方の輸出促進組織である「沿海地方輸出促進センター」所
長が鳥取を訪れた際、官民の意見交換会を開いた。同 12 月には、同センターの招きによ
り県内企業数社が沿海地方に渡航し、ビジネス視察を実施した。同センターと県の接点は、
平成 26 年3月に東京で開かれた日露投資フォーラムの会場でできたといい、その後も連
絡を取り合って経済交流に結びつけている。他にも、主に北東アジアの交通・開発問題を
扱う政府間協力機構「GTI(Greater Tumen Initiative=大図們江開発計画)」の地方協力
委員会に県が参加しており、平成 26 年 8 月に米子市で会合を開催。ロシアからも識者が
来県した。
28
29
・前ウラジオストク日本センター所長が県マネージャーに就任
平成 26 年 3 月までウラジオストク日本センター所長を 3 年間務めていた大石莊平氏
(元三菱商事勤務)が、同センター退任後の同 6 月、県商工労働部経済産業総室のロシア
担当マネージャー職に就いた。人脈を生かしたビジネスマッチングや、内外への情報発信
が見込まれている。
・鳥取市は独自に航空チャーター便
鳥取市は県の取り組みとは別に、平成 23 年夏から毎年、鳥取空港とウラジオストク空
港を結ぶチャーター便を就航してきた。地域間交流全般を主眼とし、市内官民 20~30 人
規模の視察・交流団を組織した。だが1シーズン 2 往復(計 4 便)の運航に対し、利用者
は平成 23 年度で計 93 人、24 年度 78 人、25 年度 111 人、26 年度 92 人と十分で
はなく、26 年度をもっていったん終了となる模様である。
(3)京都府
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年)※
定期会合等
115.1 億円
なし
在ロ拠点
あり(コンテ
ナ、釜山港で
なし
積み替え)
売り込み商材
調味料、コーヒ
ー、お茶等
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・舞鶴港がロシア貿易拠点で、同港振興会が PR 等の事業予算を持つ
・ウラジオストクでの見本市に3年連続で出品した
・平成 26 年は上記見本市で北海道と共同ブースを設けた
・府内企業のロシアへの関心が低く、周知が課題
②概況
経済交流の取組で主体となるのが、京都府知事を会長、舞鶴市長を理事長とする一般社
団法人京都舞鶴港振興会である。同会と、京都府の商工労働観光部海外経済課が協力し、
連携している。
・「沿海地方食品展示会」へ北海道と共同出展
極東における舞鶴港の知名度アップと貿易品の掘り起こしを狙い、ウラジオストク市で
毎年秋に開かれる「沿海地方食品展示会」に平成 24 年から 3 年連続で出展した。商品は
調味料やお茶、菓子など。商品提供は平成 24 年が4社、25 年は 6 社、26 年は6社だっ
た。初めの 2 回について、企業は商品提供のみでロシアには行かなかったが、 26 年は 4
社が同行し、現地企業との商談も実施した。
30
平成 26 年は北海道と共同ブースを設けたのが大きな特徴である。府と道とは事前に東
京でのロシア関係会合等を通して担当者間の面識ができており、同年春・ 秋のウラジオス
トク共同出展という具体案を交換し、実現に至った。京都府の担当部内では、舞鶴港と小
樽港が定期フェリーで繋がっているなど北海道とは連携の素地があること、互いに PR し
たい商品が重複していないことなどが理由となり、決裁はスムーズだった。本番ではブー
スの集客力が他と比べて高く、連携の効果が感じられたという。
・ナホトカ便は休止中
一般的には府内企業のロシアへの関心は低い様子である。平成 26 年には計量機器の(株)
イシダがロシアに販売拠点を設けたことが報道されているが、舞鶴市や府によるビジネス
支援と直接の関係はない。ロシアビジネスに特化した企業向けセミナーのような催しは滅
多にないという。平成 27 年 1 月に日本貿易振興機構(ジェトロ)が京都に事務所を開設
するのを機に、ロシア貿易について同機構と連携した PR も模索したいとのことである。
もともと舞鶴はロシアから製材を輸入し、中古自動車を輸出する構図で、ロシア貿易の
盛んな港だった。富山港や門司港などにも寄る定期コンテナ船のナホトカ航路があったが、
今は貨物が少ないため舞鶴港には寄らなくなっている。現在は釜山を中継港とするコンテ
ナ航路(釜山で貨物積み換えあり)があるほか、RORO 船が不定期で寄港している。
(4)富山県
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年)※
定期会合等
814.3 億円
なし
在ロ拠点
あり
(RORO、
なし
コンテナ)
売り込み商材
中古車、中古部
品
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・伏木富山港を起点にしたシベリアランドブリッジ利用に助成金
・ウラジオストクの富山県事務所は事実上廃止の模様
・地元企業の関心が低いとの声
②概況
伏木富山港からは毎月 2 便、ウラジオストク港・ボストーチヌィ港に向かうコンテナ船
が出ている。コンテナ航路としてはほかにも釜山港経由のウラジオストク便が平成 25 年
度まで運航していたが、今年度はなくなった。この他 RORO 船が月 5 便の頻度でウラジ
オストクとの間を往き来している。
31
・ロシア極東地域→シベリア鉄道→モスクワの輸送サポート
伏木富山港を使った試験輸送に対して最大 100 万円を補助してきたが、平成 26 年度
は「シベリアランドブリッジ特別枠」を設け、補助額を最大 150 万円とした。東京の医薬
企業、イスクラ産業(株)がこれを利用し、高分子凝集剤( 20 フィートコンテナ 4 本)
を輸送した。富山新港を出港したあと、目的のベレズニキ駅(ウラル山脈付近のペルニ地
方)まで 29 日間だった。海上輸送でサンクトペテルブルクを経由する場合 50 日以上か
かると見られ、輸送時間の短縮が確認できた。
・ウラジオストクのサポートデスク
平成 22 年にウラジオストクに開設した「富山県ビジネスサポートデスク」
(運営業務受
託は伏木海陸運送、相談窓口は主に富山市内の県庁)に寄せられた貿易相談は平成 23 年
度には 191 件、24 年度は 184 件、25 年度になると 91 件だった。平成 24 年秋のウ
ラジオストク APEC が終わってからはトーンダウンしている様子がうかがえた。平成 26
年度はウラジオストクのサポートデスク事務所は閉まっており看板もないが、理由や経緯
については県のヒアリングでは明確な答えはなかった。
(5)新潟県
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年)※
定期会合等
749.4 億円
あり
あり(コン
テナ、釜山港
で積み替え)
在ロ拠点
現地エージェ
ントあり
売り込み商材
米菓、調理器具等
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・ハバロフスク、ウラジオストクに県産品展示販売コーナーを持つ一方、PR イベントは
開催しない方針
・元ウラジオストク日本センター長(商社 OB)が県の参与職に就いており、ビジネスマ
ッチングを積極的に行っている
・夏季にロシア極東地域とのチャーター便が就航
②概況
旧ソ連時代からロシア極東との地域間交流があった新潟は、長く 、日本海側におけるロ
シア交流の中心的な存在だった。長くハバロフスク、ウラジオストクとの航空便もあった
が、平成 23 年 8 月で休止となり、現在は空路・海路ともに定期直行便はない(釜山で積
み替えてウラジオストク方面に向かうコンテナ航路は存在する)。しかしハバロフスク、ウ
ラジオストクと新潟市が姉妹都市協定を結んでいる他、県はハバロフスク、ウラジオスト
ク両地方政府と毎年の定期協議を続けてきた。
32
・ロシア極東地域政府との定期協議
毎年 3 月に、新潟県・ハバロフスク地方政府・沿海地方政府が集まって、次年度の地
域間交流事業についての説明と協力依頼を行っている。平成 26 年 3 月には新潟側が 2
地域を訪ね、翌年度予定の青年交流などについて説明した。平成 27 年 3 月には両政府
幹部が新潟を訪れる予定である。
・平成 25 年から夏季チャーター便が就航
定期便が休止した約 2 年後の平成 25 年7~8月、県や新潟市などの働きかけによっ
てヤクーツク航空がウラジオストク―新潟及びハバロフスク―新潟のチャーター便を就
航した。計9便で搭乗率は 70%を超えるなど好調だったことを受けて、翌 26 年も7
~9月に 30 便が飛んだ(搭乗率は 50%以上)。平成 27 年も 7~8月の 24 便就航が
発表されている。県も市も運航補助金等は出しておらず、旅行会社(東京)と航空会社
の判断での就航である。乗客は一般観光客やビジネスマン、行政関係者のほか、新潟県
内でロシア語を学ぶ学生の集団短期留学の交通手段としても使われた。
・元ハバロフスク日本センター所長を招へい
平成 19 年 5 月、同年 3 月までハバロフスク日本センター所長を務めていた前田奉司
氏(住友商事 OB)を県の知事政策局国際ビジネス推進担当参与として迎え入れた。同
氏がビジネスマッチングの担い手として活躍しており、新潟とロシア極東を往き来しな
がら県内企業とロシア企業との商談を仲介している。
・県産品を極東で常設展示
数年来、ウラジオストク、ハバロフスクに県産品展示販売コーナーを確保している。
品目は米菓、乾麺、調味料、調理器具等。ハバロフスクはスーパーとレストラン、ウラ
ジオストクは輸入食品店に展示販売を委託しており、売り上げは良好とのこ とである。
こうした常設コーナーや前述のビジネス推進担当参与の存在も背景に、新潟県はここ数
年、物産フェア等のイベントよりも個別のビジネスサポートを重視している模様である。
33
(6)秋田県
ロシアとの
県内港のロシア貿易高
ロシア側との
定期航路
(平成 26 年) ※
定期会合等
157.5 億円
あり
あり(コンテナ、釜
山港で積み替え)
在ロ拠点
売り込み商材
なし
タイヤ、中古部品等
※財 務 省貿 易 統計
①ポイント
・商工会議所と県などで経済交流組織をつくっている
・民間主導で秋田港からの東洋ゴムのタイヤ輸出を仕掛けた
・ロシア、中国、日本で「3 カ国経済交流サミット」を開始
・知事が毎年ウラジオストクを訪問。前職の秋田市長時代からロシアを毎年訪れており、
人脈がある
②概況
平成 4 年に秋田市とウラジオストク市が姉妹都市提携を結び、県と沿海地方行政府は
平成 22 年3月に友好交流協定を締結するなど、ロシア極東とのつながりの深い地域であ
る。近年では、東日本大震災の被災地支援のお礼として佐竹 敬久知事が平成 24 年にプー
チン大統領に秋田犬を贈り、その返礼として翌年に大統領からシベリア猫が届く、といっ
た交流が知られている。
県内の秋田港がウラジオストク港から 800km を切る位置関係にあり、港活性化策の一
つとして官民でロシア貿易促進に取り組んでいる。ロシアに直行する定期航路はないが、
平成 26 年 10 月までは釜山経由でウラジオストク港に入る定期コンテナ便が就航してお
り、ロシア極東地域の港と秋田港の間では一定量のコンテナの行き来があった。その量は、
平成 21 年の 302TEU(twenty-foot・equivalent・unit、20 フィートコンテナ換算)
から毎年増え続け、25 年には 757TEU と 4 年で約 2.5 倍になった。
・官民で「環日本海交流推進協議会」
特徴的なのは、ロシアを含む日本海貿易を振興するために官民の協議会が存在すること
である。金融、運輸、建設など民間企業・団体や県、秋田市など 26 団体が会員となり、
国や隣県自治体などもオブザーバーとして参加する。各種の助成制度や、経済セミナー、
交流会、外国へのミッション派遣などを実施している。事務局は県である。ビジネス分野
については秋田商工会議所の求心力がうかがえる。
・「シーアンドレール構想」/東洋ゴムが秋田港から試験輸出
秋田港は平成 19 年から「秋田港シーアンドレール構想」を掲げている。鉄道で秋田港
に荷物を集めて輸出することを指し、ロシア方面に関しても、首都圏の港から出荷するよ
りも所要時間が短い点を売りとしている。この構想に基づき、平成 26 年はタイヤメーカ
ーの東洋ゴム工業が荷主となり、2 度にわたってタイヤの試験輸送を実施した。1 度目は
34
釜山経由のコンテナ便を使ったところ釜山での積み替えに時間がかかりリードタイム短縮
にならなかったが、2 度目は直行便を用い、秋田港からウラジオストク港まで 3 日で到着
した。タイヤは同社の宮城県岩沼市の工場から出荷しており、横浜港に陸送してウラジオ
ストクに運ぶ場合と比べて所要時間は 5 分の1になったという。秋田―ウラジオストクの
直行便は、通常は本州を太平洋側から時計回りに一周して富山港を最後にウラジオストク
に向かう船を、特別に秋田港にも寄ってもらったもの。船会社や荷主との交渉に当たって
は商工会議所が尽力したという。
・北東アジアとの交流
ロシアとの経済交流を深化するにあたって、 ロシアを、中国などを含む「北東アジア」
の中に位置づけている。秋田商工会議所は平成 26 年 11 月、中国・吉林省の「中国国際
貿易促進委員会延辺支会」代表団と、沿海地方商工会議所代表団を秋田市に招へいして国
際会議を催した。3 カ国それぞれがプレゼンテーションするセミナーには 100 人強が参
加し、ビジネス交流会や貿易施設・商業施設視察などが行われた。これは、平成 24 年に
同商議所が上記2団体と交わした経済交流に関する覚え書きに基づいたイベントである。
この国際会議を定期化し、3 地域持ち回りで毎年開催することで合意した。次回開催地は
中国の予定である。商議所はこの他、平成 25 年7月には中ロ国境貿易エリアに視察ミッ
ションを派遣している。
35
第 10 章
まとめ
本事業は、ロシア極東から欧露部を視野に、地域が主体となった経済交流の拡大と、現
地の社会的課題解決を通じた道内事業者の参入促進の取組(「貢献と参入」プロジェクトの
推進)を通じて、産学官金連携による経済交流の環境づくりと、課題分野別の専門的知識
を有する「人づくり」を推進するものであった。
1.本事業を通じての人材育成について
本事業を通じての人材育成については、Off-JT として、主として語学及び課題分野別
(食・農業、寒冷地技術、自然環境、エネルギー)専門知識習得のための研修実施、また、
OJT として、課題分野別のロシアビジネスに関する企画 力、交渉力を培うための実務研修
を実施した。
特に、ロシア人のビジネスミッションの受入れ、現地での商談会の開催、テスト輸出に
ついては、ロシア企業とロシア語による連絡が必須であり、ロシアに対する専門知識、ロ
シア語の知識がない研修生が実務を行うことは現実的には不可能ではあった。しかし、既
に、ロシアに対する専門知識を有しており、ロシア語をある程度、習得している研修生に
対しては、ロシア側企業や行政等との交渉を通じて、語学の知識だけではなく、ロシアと
のビジネスの手順、手法、ノウハウを習得し、今後、ロシアビジネスを推進できる担い手
を短期間ではあるが育成することができた。
他方、ロシア語に初めて触れる研修生については、基礎的なロシア語、ロシアの専門知
識を学び、OJT を通じてのロシアビジネスの実務を行うことで、ロシアビジネスの取組方
法、その一連のプロセスを学んだ。
なお、ロシア語の専門的な用語を知らなくても、日本語による実務を行うことで、既に
ロシア語を習得している研修生と協力しながら本事業を円滑に推進したととも に、ロシア
語の習得レベルの有無に関わらず、本事業を通じて、雇用者に対しては企画力、交渉力を
培うことができた。また、ロシアビジネスに取り組む道内企業との交渉を通じ、その事業
展開や取り扱っている製品についての理解を深めることもできた。
しかしながら、本事業期間中では、語学そのものを習得させるには十分な時間を取るこ
とができなかったのも現実であり、また、既に語学を習得している研修生については、ロ
シア企業等と一歩踏み込んだ交渉や提案等も含め、よりレベルの高い実務能力を身につけ
るにはまだ時間を要する。
今後、より一層ロシアビジネスを推進する上では、語学の習得は勿論ではあるが、対ロ
シア市場におけるマーケティング、事業戦略、交渉力をはじめとするコミュニケーション
能力の向上、更には、ロシアビジネスを推進するマネジメントスキル を習得した人材が求
められる。それは、ロシアビジネスだけではなく、海外ビジネス、グローバルビジネスを
展開する上で求められるスキルでもある。当然、一朝一夕で身に付くスキルではないため、
引き続き、本事業と同様な事業を通じて人材育成を行う必要がある。
36
2.ロシアの社会的課題解決を通じた道内事業者の参入促進の取組について
ロシア連邦政府のアジア・太平洋重視政策により、APEC 開催のためのインフラ整備に
巨額の費用がロシア極東に投じられ、2012 年には、極東発展省が設立されたことにより、
今後、ロシア極東への投資がより一層加速し、交通インフラ整備や公共工事、天然ガスを
はじめとするエネルギー関連施設等の建設のニーズが高まるなど、市場としての大きさが
期待できる。
また、富裕層を中心に、戸建て住宅需要も急速に増大しており、快適なライフスタイル
を求める傾向があると共に、食に対する安全性や健康への意識も高まっており、健康や安
心、安全を基準に製品を選択することは、特に子供がいる家庭においてはなおさらである。
自然環境の面においても、住民生活や経済活動に大きく影響を与えるアムール川、日本
海、オホーツク海の環境保全のため環境モニタリングの必要性、また、ロシアで大きな問
題となっている廃棄物処理、それに伴うリサイクルの技術向上は喫緊の課題 である。
上記課題に対して、海外から新しい技術、製品を導入するにしても発展途上であり、ま
た、製造業の未発達、インフラ整備等をはじめ自国の技術は未成熟である等の課題もある。
北海道にはロシア極東地域の社会的ニーズを満たす技術、製品、サービスが多数存在し
ていることから、ロシア極東の社会的課題解決を通じた道内事業者の参入促進、それをサ
ポートする産学官金連携による経済交流の環境づくりが必要である。
3.今後の取組について
過去の事業を通じて、北海道の技術・製品・サービスのニーズ、関心の高さが高まりつ
つある一方で、ロシア極東においては、道内企業単体が展開するにはまだま だハードルが
高く、個別での結果が出ていなかったのが実情である。
そのため、本事業においては、個別企業だけで取り組むのではなく、道内の産学官金連
携といった地域ネットワークが下支えした道内企業の共同グループが一体となって事業を
推進した。また、事業を展開する上で、ロシア側のビジネスパートナーと提携しながら事
業を進めたことにより、現地でのフォローアップはもとより 、迅速な対応が可能となり、
今後の展開の促進に期待が持てるものとなった。
今後の取組として、以下の点を提案する。
①対ロシアビジネス
道内企業間連携の構築
ロシア極東のニーズに対して個別に対応するのみならず、道内企業の有する技術の強み
や特性を活かして、共通する技術、製品、サービスを輸出する際、コンテナに混載するな
ど、ワンパッケージ化して、ロシア極東地域での展開を推進することを検討しなければな
らない。ネックとなっていた物流の効率化、価格面でのギャップを解消する一つの方策で
もある。そのためには、現にロシアビジネスを行っている企業間同士が連携するほか 、今
後ロシアビジネスを展開したい道内企業の発掘、連携を行い、これらの取組を道内の産学
官金連携といった地域ネットワークが下支えをして、対ロシアビジネスの輪を拡げていく。
37
②対ロシアビジネス
地域間連携の構築
対ロシア向けの輸出商材候補が豊富な北海道の強みを活かし、輸送コスト高、商材不足
を解消するために対ロシア貿易を国内各地域と連携して、今後、 地域間連携のテスト輸送
などを通じて、北海道がオールジャパン体制を確立する軸として、自ら が主体となって推
進する。
③北海道技術・製品・サービスの認知度の向上
ロシアにおける北海道の技術・製品・サービスの認知度がまだ低いため、道内企業が連
携して、技術、製品等を紹介するロシア語のホームページを構築し、ロシア国内、企業に
対して発信するとともに、例えば、テレビ局をはじめとする現地メディア等を招聘して、
実際に製造工程の現場等を取材、番組の一環として紹介してもらうことで、安心、安全な
北海道の技術・製品・サービスの認知度の向上を図る。
④北海道の技術・製品・サービスの理解度の向上
本事業で行ったロシアビジネスマンの招聘を継続して行うとともに、今後、ロシア企業
の現場担当者、幹部候補生を対象に、一定期間、道内企業で研修を行うことも検討する。
技術や製品に対する理解を深める一方、製造工程、管理体制を学ぶことによって、品質の
良さ、安心、安全な品質を肌で感じてもらい、北海道の技術・製品・サービスに対する理
解度の向上を図る。
こうした取組により、研修を受けたロシア人が、現地のニーズに基づき、ロシア国内で
展開できる道内の技術・製品・サービスを提案することが可能となり、需要に対するギャ
ップを解消できるとともに、対ロシアビジネスの促進が期待できる。これは、他国と競合
の際にも、理解の深い国、地域の製品であることにより、他国との差別化が図られること
にもつながる。
⑤常設展示販売の検討
物産展、テスト販売など、一時的な展示販売を行う一方で、ロシア企業と連携して常設
展示販売も行うことを検討する。また、販売を行うロシア企業と、製品を提供する道内企
業への個別ビジネスサポートを展開して、販路拡大に努める必要がある。このことにより、
B to C のみならず、常設展示販売に参画する日ロ企業間の B to B を進めることで、販路
拡大は勿論のこと、企業同士の相互理解を深める。
以上のように、道内企業の連携、地域間連携を推し進めつつ、ロシア企業 等に対しては
きめ細やかな対応の実施、確実に対ロシアビジネスプロジェクトを実現させるための工夫
を継続的に行うことで、道内企業への理解促進はもとより、両者の信頼関係が培われ、今
後、道内企業のロシアビジネスへの参入促進が期待できる。
38
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