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着床期胚の活性化機構に関する研究
マ ウ ス着 床 遅 延 モ デ ル を用 い た 着 床 期 胚 の活 性 化機 構 に関す る研 究 東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 動物育種繁殖学教室 平成12年 度博士課程 入学 松橋 指 導教 官 珠子 酒井仙 吉 Table of Contents 目次 要旨 2 序論 7 第一章 11 緒言 材料及び方法 結果 考察 21 図表 23 第二章 28 緒言 29 材料及び方法 結果 考察 32 図表 43 第三章 56 緒言 57 材料及 び方法 61 結果 63 考察 67 図表 72 第 四章 85 緒言 86 材料及び方法 90 結果 考察 92 図表 12 14 18 34 39 95 100 総括 105 引用文献 111 謝辞 125 1 Abstract 要旨 着 床 期 に な る と、胚 は そ れ ま で の内 在 的 に プ ログ ラム化 され た 遺伝 子 発 現 か ら、外 部 シ グナル に依 存 した遺 伝 子発 現 へ とそ の制 御 機構 を大 き く切 り替 え る。 着 床 前 の 胚 盤 胞 に 対 し、 卵 巣 の 除去 な ど に よ りエ ス トロジ ェ ン(E2)の 作用が な い 環 境 を作 る と、胚 は 着床 直 前 で 胚 発 生 を停 滞 し、 い わ ば休 眠 状 態 に至 る。 しか しそ の後 、母 体 にE2を これ は、 この時 期 のE2に 投 与す る と、休 眠状 態 の胚 は再 び胚 発 生 を 開始 す る。 由来 す る外 部 か らの シ グナ ル が 、 そ の 後 の胚 発 生 には 必須 で あ る こ とを意 味 す る。 しか し、何 故E2の 止 す る の か。 そ してE2の 作 用 が ない 状態 で は胚 発 生 が停 投 与 に よ り何 故 胚 発 生 が 再 開 し、E2は そ の後 の胚発 生 に対 して どの よ うに 関 与す るの か 、 そ の 詳 細 は全 くわ か って い な い。 そ こで 本 研 究 で は 、 着床 期 胚 の発 生調 節 機 構 を明 らか にす るた め に 、妊 娠 マ ウス の 卵 巣 除 去 とE2投 与 に よって 人 為 的 に胚 の休 眠 状 態 と活 性 化 状 態 を誘 導 で き る着床 遅 延 モ デ ル を用 い 、 特 に胚 の細 胞増 殖 能 と遺 伝 子 発 現 制 御 機 構 に着 目 した 実 験 を 行 っ た。 まず 、着 床 期 胚 の 胚発 生 にお け るE2の 作用 を調 べ た。卵 巣 除 去 に よ りE2の 作 用 を阻 害 して休 眠胚 を 作製 し、細 胞 増 殖 の 変 化 を調 べ た と ころ、交 配 後3.5日 頃 に卵 巣 除 去 を行 った場 合 、胚 は交 配 後5日 目 目まで ほ ぼ 等比 級 数 的 に細 胞数 を 増 加 させ 、 そ の 後 は細 胞 増 殖 を ほ とん ど停 止 した 状 態 で維 持 され る こ とが わ か った。 子 宮 内 に あ る休 眠胚 に対 し、 母 体 に投 与す る こ とでE2を のDNA合 作 用 させ て細 胞 成 活 性 を調 べ た とこ ろ、休 眠 胚 で は 活性 は ほ とん ど検 出 され な か っ た の に 対 し、E2投与後12時 E2投 与 後16時 間 に はDNA合 間 か ら20時 成 活性 を示 した細 胞 数 は明確 に増 加 し、 間 の 間 に胚 のお よそ30%の 出 され た。 一 方 、胚 の細 胞 数 や 細 胞周 期 がM期 細 胞 でDNAの 合成 が検 に あ る細 胞 の 割 合 は増 加 しなか 2 Abstract った こ とか ら、休 眠 胚 はG1期 で 細胞 周 期 を停 止 して い る こ とが わ か っ た。胚 の 総 転 写活 性 は 、休 眠胚 で は交 配 後4日 目の胚 と比 較 して 明確 に低 下 して い た。 活 性 化 胚 で は 、総 転 写活 性 は再 び 上 昇 し交配 後4日 目の胚 以 上 の レベ ル に達 し た。 これ らの こ とか ら、E2の 分泌 が 無 い 場合 、 着床 期 の胚 は着 床 や そ の 後 の 胚 発 生 を行 わず に細 胞 周 期 をG1期 で停 止 して 細 胞 増 殖 を抑 え 、総 転 写活 性 も低 下 した状 態 に移 行 す る こ と、 そ の一 方 で この胚 は 、E2の 刺 激 を受 けた 場 合 に急 速 に総 転 写 活 性 を 回 復 させ 、 細 胞 周 期 の進 行 を迅 速 に開 始 す る こ とが 明 らか とな っ た。 そ こで次 に、 胚 の細 胞 増 殖 お よび遺 伝 子 発 現 の制御 機 構 に対 す るE2の 作 用 を 明 らか にす るた め に、 この 時 の 細 胞 周 期 の制 御 に関 わ る因 子 と、 遺 伝 子 発 現 の変 化 を制 御 す るエ ピジ ェネ テ ィ ック な修 飾 を明 らか にす る こ とを試 み た。 初 期 胚 にお け る細 胞 周 期 の制 御 機構 は未 だ解 明 され て い な い 部 分 が 多 い。4 細 胞 期 以 降 の 胚発 生 で は、細 胞 は サ イ ク リンD-pRB系 とS期 を欠 い て お り、ほ ぼM期 のみ の繰 り返 しに よ る内在 的 にプ ログ ラ ム化 され た 遺伝 子 発 現 と細 胞 増 殖 を繰 り返 す。 これ に対 し着 床 期 以 降 の 胚 で は、 細胞 は外 部環 境 との コ ミュニ ケ ー シ ョン を開 始 し、 胚 の 中 の 細 胞 同士 あ るい は胚 と母 体組 織 間 で シ グナ ル を 交 換 しあ い 、 互 い の細 胞 増 殖 の速 度 や 時 期 を調 整 し合 い な が ら、 よ り複 雑 な 構 造 を形 成 して い く と考 え られ る。 しか し、 この よ うな一 般 の体 細胞 の持 つ 細 胞 増 殖 機 構 を胚 が い つ か ら獲 得 す る の か は 不 明 な 点 が 多い 。 そ こで本 研 究 で は 、 着 床 期 の 胚 盤 胞 に お け る細 胞 周 期 制 御 因 子 の発 現 の 変 化 を明 らか にす る と共 に 、 E2の 刺激 の 有 無 が これ らの 因 子 の発 現 に与 え る影 響 を調 べ た。休 眠 胚 はG1期 細 胞 周 期 を停 止 して い る こ と、E2由 来 の刺 激 はMAP-サ て細 胞 増 殖 に 関 与す る可 能性 が 高 い こ とか ら、G1期 イ ク リンD系 で を経 由 し の進 行 を制 御 す る 因子 の 変 化 に 着 目 した。 そ の結 果 着床 期 の 胚 で は 、 それ 以 前 か ら発 現 され て い るサ イ ク リンD3や サ イ ク リンEの 他 に 、サ イ ク リンD1の 発 現 の 開始 が観 察 され た。休 3 Abstract 眠胚 で は サ イ ク リンD及 び サイ ク リンEの p21の 発 現 の 上 昇 が 見 られ 、G1サ 発 現 は いず れ も低 下 して お り、一 方 イ ク リンの機 能 が抑 制 状 態 に あ る こ とが明 ら か とな っ た。 これ に対 し活性 化 胚 で は 、 サ イ ク リンDと も発 現 が急 増 し、p21の 発 現 量 は低 下 して 、G1サ サ イ ク リンEは いず れ イ ク リンの機 能 が活 発 な状 態 に移 行 して い た。 E2の 有 無 に よ って 生 じる休 眠胚 と活 性 化 胚 で は 、総 転 写 活性 の 変化 に代 表 さ れ る よ うに 、細 胞 周 期 制 御 因 子 だ け で な く複 数 の 遺伝 子 の発 現 が 大 き く変 化 し て い る こ とが 明 らか とな って い る。 しか しこの様 な 遺伝 子 の発 現 を制 御 す る主 要 な メ カニ ズ ム で あ る 、 エ ピ ジ ェネ テ ィ ック な修 飾 の 変 化 は 、 着床 期 の 胚 にお い て は ほ とん ど明 らか に な って い ない 。 そ こで本 研 究 で は 、 エ ピジ ェネ テ ィ ッ ク な 修 飾 の 中で も比 較 的研 究 が 盛 ん に行 われ 、遺 伝 子発 現 へ の 関 与 と機 能 の 多 様 性 が 明 らか に な りつ つ あ る、 ヒス トンH3及 びH4の アセ チル 化 修飾 とメチル 化 修 飾 、そ して ピス トン変 異 体 の 置 換 に着 目 して 、E2の 作 用 に関連 す る修 飾 の 探 索 を試 み た。 交 配 後4日 目の胚 お よび休 眠 胚 と活 性 化胚 で ヒス トン修 飾 を検 出 した とこ ろ、 そ れ ぞ れ の修 飾 は 胚 の 種 類 や 部 位 に よっ て様 々 な 量 で 存在 して い る こ とが 明 らか とな った 。 内部 細 胞 塊(ICM)と 栄 養 外 胚葉(TE)で は複 数 の修 飾 で修 飾 量 が 大 き く異 な る傾 向 が あ っ た。 多 くの修 飾 は活 性 化 に 伴 う胚 の 総 転 写活 性 の 変 化 に関 わ らず 、 明確 な修飾 量 の 変 化 を示 さな か っ た が 、 ヒス ト ンH3Lysine9(H3K9)の ジ メチ ル 化 修飾 とH3.1の 変 異 体 で あ るH3.3へ の置 換 量 は胚 の休 眠化 や 活 性化 に伴 う転 写活 性 の 変 化 に相 関 した変 化 を示 した。 す な わ ち、H3K9の は 交配 後4日 ジ メチ ル 化 修飾 は休 眠胚 のICMで 高 い 修飾 レベ ル を示 し、H3.3 目の胚 お よび活 性 化 胚 で核 小 体 に強 く検 出 され た。 休 眠胚 のICM で検 出 され たH3K9の ジ メチ ル 化 修飾 の 上 昇 は 、 この修 飾 が着 床 期胚 の発 生 進 行 に 関 わ る遺 伝 子 の発 現 を抑 制 して い る こ とを示 唆 してお り、 ピス トンH33の 4 Abstract 核 小 体 へ の 局在 は 、 この ピス トンがrRNA合 成 を促 進す る こ とで、 活性 化 胚 に お け る翻 訳 効 率 を増 加 させ て い る こ とを示 唆 して い る。 卵 巣 か ら分 泌 され るE2は 子 宮 か ら複 数 の シ グナ ル 因 子 の発 現 を誘 導 し、 これ らの 因 子 は胚 へ 作用 して胚 の着 床 能 獲 得 に寄 与 す る。EGFは 子 宮側 か ら発 現 す る シ グ ナル 因 子 で 、 胚 側 は受 容 体 を発 現 して この シ グナ ル 因子 を受 容 し、遺 伝 子発 現 を変化 させ る こ とが報 告 され てい る。 ま た 、卵 巣 か ら分 泌 され るE2は 子 宮 内膜 に お い て代 謝 型 の4-OH-E2と 、 な り、 これ が胚 に作 用 して胚 の着 床 能 獲 得 に 関 与す る こ とが 報 告 され て い る。 これ らの 外 因 性 シ グナ ル 因子 が存 在 しな いin vitroの 胚 培 養 系 で は胚 発 生 は胚 盤 胞 の 時 期 まで しか進 行 で き ない こ とか ら、 in vitro胚 で も着 床 期 以 降 の胚 発 生 に は母 体側 か ら分泌 され る これ らの様 な シ グ ナル 因 子 が 必 要 とな る と考 え られ る。 そ こで 次 に 、胚 培 養 系 にお い て もinvivo にお け る胚 の休 眠 化 と活 性 化 と同様 の状 態 が 再 現 され るか 調 べ た。 まず 、胚 培 養 系 で外 部 か ら着 床 能 獲 得 の指 標 と して頻 繁 に用 い られ るoutgrowth現 と して用 い 、KSOM培 象 を指 標 地 中 で胚 を培 養 し、 増 殖 因子 等 を何 も添加 しな い状 態 お よび これ らの 因子 を添加 した 時 の胚 の活 性 化 の 有 無 を調 べ た 。 同時 に細 胞 周 期 制 御 因 子 の 遺 伝 子 発 現 、 お よび ピス トン修 飾 の 変 化 を確 認 した。 そ の結 果 、培 養 液 中 に何 も添 加 しな い 場 合 、 胚 は胚 盤 胞 ま で は 正 常 に細 胞 分 裂 を繰 り返 し胚 発 生 を進 行 した が、受 精 後4日 目の透 明帯 か ら脱 出後 はoutgrowth現 象 を起 こ さ ず 、胚 発 生 を ほ とん ど停 止 した ま ま の状 態 を数 日間維 持 した。 また 、 受 精 後5 日 目にEGF、E2、4-OH-E2を EGFとE2や4-OH-E2を outgrowth現 添加 した 場 合 は 、 単独 で培 養 液 に添加 した場 合 も、 同 時 に 添 加 した 場 合 も 、 活 性 化 の 指 標 で あ る 胚 の 象 は見 い だせ なか った 。 そ こで 、 単一 の因 子 の み で は胚 の活 性 化 を 誘 導 で きな い 可 能 性 を考 慮 し、 次 に複 数 の シ グナ ル 因子 を含 有 して い る と考 え られ るFBSを 用 い た。受 精 後5日 目に培 養 液 中 にFBSを 添 加 した場 合 には胚 の 5 Abstract outgrowth現 し7日 象 が 観 察 さ れ た 。 ま た 、FBS無 添 加 下 で は 、 受 精 後5日 目 の 胚 の 遺 伝 子 発 現 は 、サ イ ク リ ンD1や サ イ ク リ ンE1の 発 現 が 低 下 し、 休 眠 胚 と 類 似 し た 遺 伝 子 発 現 の 変 化 を 示 し た 。 さ ら に 受 精 後7日 を 投 与 す る と 、 受 精 後8日 目 に は サ イ ク リ ンD1や が 確 認 さ れ 、 ま た 受 精 後10日 目 に はoutgrowth現 目の胚 に対 目 の 胚 にFBS サ イ ク リ ンE1の 発 現 の上 昇 象 が 確 認 さ れ 、in vivoで の 胚 の活 性 化 と類 似 した状 態 が 再 現 で きた。 そ の一 方 で、in vivoで は胚 の活 性 化 に 伴 っ て修 飾 量 の 変 化 が 見 られ たH3K9ジ FBSに メチ ル 化 修 飾 やH3.3の 置 換 はin vitroで よ り活 性 化 させ た胚 にお い て は 同様 の修 飾 パ ター ン は示 され な か った。 この様 に培 養 胚 にお い て も、in vivoに お け る休 眠胚 や 活 性化 胚 の 細胞 周 期 制御 因子 の 遺伝 子 発 現 の 多 く を再 現 で き る こ とが 明 らか とな った 。 しか し一 方 で 、 エ ピジ ェネ テ ィ ック な修飾 や 一 部 の遺 伝 子 発 現 が異 な って お り、outgrowthを 指 標 と して 再 現 した 今 回 のin vitroモ デル は 、in vivoの 遺伝 子発 現 制 御 機 構 や 細胞 周 期 制 御機 構 を完 全 には 再 現 して い な い こ とが 明 らか とな っ た。 以 上 の こ とか ら、胚 は着床 期 に遺 伝 子発 現 の メ カ ニズ ム を大 き く転 換 す るが 、 E2由 来 の外 因性 シ グナ ル は この転 換 期 以 降 の遺 伝 子 発 現 の 進 行 に不 可欠 で あ り、 サ イ ク リンD1や サ イ ク リンE等 のG1期 サ イ ク リン を介 して細 胞 周 期 の進 行 に 関 わ り、 ま た エ ピジ ェネ テ ィ ックな 修飾 を変 化 させ る こ とが示 され た。 活性 化 後 の 胚 で は 、 シ グナ ル 伝 達 や 代 謝 に 関 わ る遺伝 子 の発 現 が大 き く上 昇す る こ と が 報 告 され て お り、胚 はE2の 刺 激 に よる遺 伝 子発 現 調節 機 構 の転 換 に よ り、着 床 期 以 降 の急 激 な 細 胞 増 殖 を 可能 とす る新 た な遺 伝 子 発 現 パ タ ー ンを 生 み 出す もの と考 え られ る。 6 序論 General Introduction マ ウス胚 は受 精 後 急 激 な細 胞 増 殖 を開 始 し、わず か一 個 の 細 胞 は 交配 後7 .5日 目に は約15,000個 の細 胞 の集 団 に成 長 す る(Snow 1977)。 とこ ろが 受精 卵 を体 外 で培 養 す る と、 胚 は胚 盤 胞 期 で発 生 を停 止 し(Strefferet al.1980)、 以降 の発 生 を 継 続 させ る こ とが で きな い 。 この 現 象 は 、胚 盤 胞 期 胚 の発 生 が 内在 的 に プ ログ ラム 化 され た調 節 機 構 か ら、 外 部 シ グ ナル に依 存 した機 構 へ とそ の 制 御 機 構 を 大 き く切 り替 る こ とか ら生 じる と考 え られ る。 す なわ ち胚盤 胞 期 まで の胚 発 生 で は 胚 の 質 量 は ほ とん ど変 化 せ ず 、 外 部 か らの シ グナ ル 非 依 存 的 に、 ほ ぼ細 胞 分 裂 期(M期)とDNA複 Chisholm 1988; Moore 製 期(S期)の み の 細胞 分裂 を繰 り返 す(Aiken et al.2004; et al.1996; Smith and Johnson 1986; Whitten 1971)。 これ に対 し胚 盤 胞 期 以 降 の胚 は 、 まず 子 宮 に着 床 し、 そ の 後 も外 部 環 境 と相 互 作 用 しな が ら、細 胞 数 と質 量 を共 に爆 発 的 に増 大 させ る(Snow 1977)。 そ の た め、外 部 か らの シ グナ ル 因 子 の存 在 しな い 培 養 環 境 下 で は 、胚 は そ の 後 の 正 常 な胚 発 生 が 行 え ず 、 胚 盤 胞 期 で発 生 が停 滞 す る もの と推 測 され る。 しか し、 着 床 期 の 胚 盤 胞 にお け る胚 発 生 調節 機 構 の転 換 の詳 細 は 明 らかで は ない。 In vitroに お け る胚発 生 の停 止 と同様 の現 象 は、in vivoに お い て も着 床 遅 延 と い う現 象 にお い て 見 い だす こ とが で き る。 マ ウスや ラ ッ ト、 カ ンガ ル ー な どで は 、 吸乳 刺 激 や 季 節 的 な 条件 に よ っ て母 体 側 か らの ホル モ ン等 の 分 泌 が 変 化 す る と、 卵 巣 か らのエ ス トロ ジ ェ ン(E2)な どの 分 泌 が抑 え られ 、 そ の 結果 胚 は 子 宮 中 に移 行 した 後 も着床 を行 わず 、そ の 後 の 胚発 生 が停 滞 す る(McLaren l968; Renfree 1981)。 吸乳 刺 激 が な くな る と、あ るい は適 切 な季節 にな る と母 体 の ホ ル モ ンの 分 泌 が 妊 娠 時 の状 態 に戻 り、卵 巣 か らのE2な どの 分泌 が 引 き起 こ され て 、 胚 は 子 宮 へ の 着床 とそ の後 の胚 発 生 を 開始 す る(Lopes et al.2004; Mead 1993)。 こ の 様 に 、一 時 的 に着床 を行 わず 発 生 を停 止 し、 子 宮 内 に浮 遊 した状 態 にあ る胚 は 、 休 眠胚 と呼 ば れ る。 マ ウス の 場 合 、 着 床 直 前 の時 期 に卵 巣 除 去 を行 い 卵 巣 8 General か らのE2の る(Psychoyos Introduction 分 泌 を抑 え る こ とで 、 同様 の状 態 を人 工 的 に成 立 させ る こ とが で き 1973;Yoshinaga and Adams 1966)。 こ の 時 胚 で は 、子 宮 へ の 着 床 が 行 わ れ な くな るだ け で な く、 同 時 に 遺伝 子発 現 や タ ンパ ク質 合 成 の低 下 な ど、 細 胞 活 性 の 低 下 を 伴 う 胚 発 生 の 停 滞 が 認 め ら れ る(Giebelhaus al.1987;Weitlauf てE2を and Kiessling 1980)。 ま た 、 母 体 にE2を et al.1985;Nieder et 投 与 す る こ とで 胚 に 対 し 作 用 させ る と、休 眠状 態 の胚 は細 胞 活性 を上 昇 させ て活 性 化 状 態 とな り、 子 宮 内 に 着 床 し て 以 降 の 胚 発 生 を 正 常 に 進 行 す る(Psychoyos 1973)。 こ れ ら の こ とは 、E2由 来 の 外 因性 シ グナ ル が 着床 期 以 降 の胚 に正 常 な遺 伝 子 発 現 と細 胞 増 殖 を 引 き起 こ させ 、結 果 と して正 常 な胚 発 生 を継 続 させ るの に必 須 の 因子 で あ る こ とを意 味 す る。 しか し、 何 故E2の 停 止 す る の か。 そ してE2の 作用 が な い状 態 で は この 時 期 の胚 発 生 が 投 与 に よ り何 故胚 発 生 が再 開 し、E2は そ の後 の胚 発 生 に対 して どの よ うに関 与 す るの か 、 そ の メ カ ニ ズ ムは 全 くわ か っ てい ない 。 そ こで本 研 究 で は、 着床 遅延 モ デル を用 い着 床 期 胚 の胚 発 生 にお け るE2の 機 能 を、特 に胚の細胞増殖 調節機構 と遺伝子発現制御機構 に着 目して解析す る こ とで、 着 床 期 胚 の発 生 調節 機 構 を 明 らか にす る こ とを試 み た。 まず 第 一 章 で は 、 着 床 遅 延 モ デ ル にお い て 、 卵 巣 除 去 に よ り作 製 で き る休 眠 状 態 の胚 と、 この胚 にE2由 来 の シ グナル を与 え る こ とに よっ て生 じる胚 の 活性 化時 の細胞増殖 能や転写活性 を把握 す るこ とを試み た。 この結果 を基に第二章 で は胚 の細胞増 殖調節機構 に焦 点を絞 り、着床 期の胚 にお ける細胞周期制御 因 子の発 現 の 変化 を明 らか にす る と共 に、E2が 外 因性 シ グナル と して着 床 期 胚 の 細 胞 周 期 を制 御 す る機 構 を明 らか にす る こ とを試 み た 。 また 第 三章 で は、 休 眠 胚 及 び 活 性 化 胚 に お け るエ ピジ ェネ テ ィ ッ クな ピス トン修 飾 の状 態 を 明 らか に す る こ とで 、着 床 期 胚 にお け るエ ピジ ェネ テ ィ ッ クな遺 伝 子発 現 制 御 機 構 を 明 らか にす る こ とを試 み た。 第 四章 で は 、 これ らの情 報 を元 に、 胚 培養 系 にお い 9 General Introduction て も着 床 期 胚 の胚 発 生 停 止 が 引 き起 こ され る こ とを利 用 して 、in vitroで の 胚 の 休眠化お よび活性化系 を作製す ることを試み た。 10 第一章 着床遅延モデル の条件検討 と 休 眠 胚 、活 性 化 胚 の細 胞 増 殖 能 ・転 写 活性 の把 握 Chanter 1 緒言 自 然 条 件 下 の マ ウ ス で は 、 出 産 後 ま も な く 次 の 交 配 を 行 い 受 精 が 成 立 した 場 合 に 、 子 宮 中 の 胚 が 着 床 を 起 こ さ ず 数 日 間 子 宮 内 に 浮 遊 し続 け る 、 い わ ゆ る 着 床 遅 延 状 態 が 引 き 起 こ さ れ る(Whitten 乳 刺 激 に よ っ て 、 卵 巣 か ら のE2分 (Lopes et al.2004;McLaren l955)。 この 現 象 は 出 産 した 子 マ ウス の 吸 泌 が 抑 え られ る こ と に よ っ て 引 き 起 こ され る 1968;Renfree and Shaw 2000)。1966年 にYbshinagaら に よ っ て 、妊 娠 マ ウ ス の 卵 巣 を 除 去 し継 続 的 に プ ロ ジ ェ ス テ ロ ン(P4)を る こ と に よ っ て 人 為 的 に 着 床 の 遅 延 を 引 き 起 こ せ る こ と 、 さ ら にE2の 投与す 投与 によ っ て 任 意 の 時 期 に 着 床 を 成 立 さ せ ら れ る こ と が 報 告 さ れ た(Psychoyos Yoshinaga and Adams 1966)。 1973b; この 報 告 に よ り着 床 遅 延 モ デ ル は 、 着 床 研 究 の 格 好 の研 究材 料 と して 、胚 の着 床 能 獲 得 や 子 宮 の胚 受 容 能獲 得 の メカ ニ ズ ム、 胚 の 子 宮 へ の 接 着 ・浸 潤 の メ カ ニ ズ ム な ど 、 こ れ ま で 解 析 の 困 難 だ っ た 様 々 な 着 床 の 研 究 に 用 い ら れ る よ う に な っ た(Chavez et a1.1984;Deyetal.2004;Lopes et al. 2004)。 そ の 一 方 で こ の モ デ ル を 用 い た 研 究 で 、 胚 の 発 生 自体 に 着 目 した 研 究 は 数 少 な い 。Weitlaufら のE2投 は 、 着 床 遅 延 モ デ ル で 生 じ る着 床 遅 延 状 態 の 休 眠 胚 と、 母 体 へ 与 に よ っ て 着 床 能 を獲 得 した 活 性 化 胚 に つ い て 詳 細 に 調 べ 、 休 眠 胚 で は 細 胞 分 裂 、RNAや タ ン パ ク 質 の 合 成 、 代 謝 活 性 が 抑 え られ て い る こ と 、 活 性 化 時 に は こ れ ら の 活 性 が 上 昇 す る こ と を 示 し た(Bitton-Casimiri and Weitlauf Kiessling 1981;Nieder 1980)。 et al.1987;Weitlauf 1974;Weitlauf et al.1976;Given et al.1979;Weitlauf and しか し これ ら の 研 究 で は 、 用 い た 胚 の 数 が 少 な い 、 あ る い は 胚 の 一 部 の 細 胞 だ け しか シ グ ナ ル を 確 認 して い な い な ど不 備 が 見 られ る 。 ま た 、 休 眠 胚 や 活 性 化 胚 を長 時 間 培 養 して 活 性 の 変 化 を 計 測 して お り、 そ の 間 に休 眠 胚 が 活 性 化 し始 め た 可 能 性 も あ る こ と か ら 、 本 研 究 の 基 盤 と な る デ ー タ と し て 12 Chapter 1 扱 い に くい 。 そ こで本 章 で は 、 まず 着 床 遅延 モ デル を利 用 す る にあ た り、E2の 作用 を考 慮 した 適 切 な卵 巣 除 去 手 術 時 期 の選 定 を行 い 、 次 に研 究 の基 盤 と して 、作 製 した 休 眠胚 や 活 性 化 胚 に お け る細 胞 数 の 変 化 、DNA合 成 能 、 転 写活 性 の変 化 につ い て よ り詳 細 に調 べ 、E2と 着床 期 胚 の 細 胞増 殖 や遺 伝 子発 現 との 関連 を明 らか に す る こ とを試 み た。 13 Chapter 1 材料 と方法 (1)マ ウス 実 験 に は 、6週 る 雄ICRマ か ら10週 ウ ス(日 本SLC、 齢 の 成 熟 し た 雌ICRと6ヶ 浜 松 、 日 本)を 月 齢 以 降 の 繁殖 能力 の あ 用 い た 。 これ らの 動 物 は 、 ク リー ン ル ー ム に お い て 自 由 摂 餌 ・摂 水 、照 明 コ ン ト ロ ー ル 下(14時 間 明:10:00-24:00) で飼 育 した。 (2)卵 巣 除 去 手 術 ・ホル モ ン処 理 ・胚 採 取 本 研 究 で は 、 着床 遅 延 モ デ ル の構 築 方 法 につ い て 様 々 な条 件 検 討 を行 った。 そ の結 果 、図1-1Aに 示 す 方 法 で安 定 した休 眠 胚 の採 取 が 可能 とな った の で 、 こ の 条件 を採 用 し、休 眠胚 と活 性 化 胚 を作 製 した。 雄 と 自然 交 配 した雌 マ ウス は、 膣 栓 が確 認 され た 日を交 配 後0日 交配 後0.5日 目)と して3日 目に卵 巣 除 去 手 術 を行 った(図1-1A)。 た 時 間 は 、後 述 の 実 験 結果 か ら9:00-11:00と る。 ネ ンブ ター ル(ペ 目(正 午= 手 術 を行 っ した。手術 の方 法 は以 下 の 通 りで あ ン トバ ル ビタ ール ナ トリウム;大 日本 製 薬 、 大 阪 、 日本) で麻 酔 した 妊 娠 マ ウス の 背 筋 をニ カ所 切 開 し、 子 宮 角 に近 い 卵 管 を一 カ所 糸 で 縛 って 卵 巣 を切 除 した の ち、 子 宮 を元 の位 置 に戻 して 筋 肉 ・皮 膚 を縫 合 した 。 手 術 し た マ ウ ス は 、 処 置 日 の 翌 日 か ら ゴ マ 油 に 溶 解 し た2mgの ロ ン(4-Pregnene-3 日24時 配 後5日 ,20-dione(P4);Sigma-Aldrich Co.,Saint プ ロジ ェス テ Louis,Missouri)を 毎 間 毎 に 背 部 皮 下 に 投 与 し て 胚 の 着 床 遅 延 状 態 を 維 持 し た 。P4の 投 与 は 交 目 か ら8日 目ま で 、 あ る い は 胚 採 取 日の 前 日 ま で 継 続 して 行 っ た 。 エ ス ト ロ ジ ェ ン(β-estradiol(E2);Sigma-Aldrich に 従 っ て 胚 採 取 の16時 Co .)の 投 与 は 、後 述 の 実 験 結果 間 前 、 あ る い は 適 当 な 時 間 にP4の 投 与 に 合 わ せ て25ng 14 Chaoter 1 を背 部 に皮 下 注射 した。 交 配 後3.5日 目 か ら4.25日 のHEPES-buffered 目 の 正 常 発 生 胚 、休 眠 胚 お よ び 活 性 化 胚 は 、約1m1 Whitten's medium (WM)(Whitten 1971)を よ り 採 取 し た 。 得 ら れ た 胚 の 実 体 顕 微 鏡 像 を 図1-1Bに (3)細 用 い た 子宮 貫 流 に 示 した 。 胞 数 の計 測 子 宮 よ り採 取 し た 胚 は0.9%ク (PVP, Sigma-Aldrich エ ン 酸 ナ ト リ ウ ム/0.3%ポ Co.)で20分 リ ビ ニ ル ピ ロ リ ドン 低 張 処 理 し た の ち 、メ タ ノ ー ル/酢 酸/H2O(5:1:4) に1-2分 間 浸 し て 固 定 し 、 ス ラ イ ドガ ラ ス 上 で メ タ ノ ー ル/酢 酸(3:1)の 滴下に よ っ て 固 定 ・展 開 し て 、 風 乾 に よ り 固 着 さ せ た 。 メ タ ノ ー ル/酢 酸(3:1)で30分 定 、 メ タ ノ ー ル/酢 酸/H2O(3:3:1)で1分 固 間 処 理 し た の ち 、0.1μg/ml 4'6'-Diamidino-3-phenylindole(DAPI)/PBSで 核 を 染 色 し、 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 し て胚 あ た りの核 の数 を計 測 した。 (4)DNA合 成 活 性 とM期 細胞 数 E2を 投 与 し た 着 床 遅 延 マ ウ ス の 子 宮 か ら胚 を 採 取 し、10μM deoxyuridine (BrdU, Roche 5%CO2/95%air、37℃ ド(PFA)/PBSで4℃ で3回 mg/m1 Diagnostics の 条 件 下 で4時 Corp., Indianapolis, IN)を 間 培 養 し た 後 、3.7%パ 5-Bromo-2'含 むWM中 ラ ホ ル ム アル デ ヒ に て 一 晩 固 定 し た 。 胚 は0.3%BSA(Sigma-Aldrich 洗 浄 後 、2NHCIで37℃ 、1時 Na2B4O7-10H2O,9.92mg/mlH3BO3, 間DNA変 Co .)/PBS 性 処 理 し 、 ホ ウ 酸 バ ッ フ ァ ー(3.82 2.34mg/m1NaCl, 洗 浄 し 、2μg/mlの Indianapolis, 間 処 理 し た 。 一 次 抗 体 処 理 後 、0.3%BSA/PBSで 室 温1時 し 、 続 い て30μg/mlのFITC標 識 二 次 抗 体(モ 抗BrdU抗 pH8.5)で10分 和 処 理 後 、0.3%BSA/PBSで IN)で で 体(Roche Diagnostics 間 の 中 Co., 洗浄 ノ ク ロ ー ナ ル 抗 マ ウ ス 抗 体 、Jackson 15 Chapter Immuno Research, West iodide(Sigma-Aldrich 理 し てDNAを Burlingame, 顕 微 鏡(Carl Grove,PA)で 室 温45分 Co.)/50μg/ml 染 色 後 、0.3%BSA1PBSで CA)で 間 処 理 し 、0.5mg/ml propidium (Roche)/PBSで37℃ 、30分 Rnase A 洗 浄 し てVectaShield 封 入 し た 。 蛍 光 はCarl Zeiss LSM510共 Zeiss Co.,Ltd., Oberkochen, Germany)で 1 間処 (Vector Laboratodes, 焦 点 レー ザ ー ス キ ャ ン 検 出 し た 。Z軸 方 向 に 複 数 枚 の 画 像 を 得 る こ と で 、 胚 内 の す べ て の 細 胞 に つ い て 蛍 光 の 有 無 を 確 認 し、 胚 の 総 細 胞 数 に 対 す る シ グ ナ ル の 検 出 さ れ た 細 胞 の 数 と 、M期 に あ る 細 胞 の 数 を 算 出 し た 。 得 られ た デ ー タ は 、 分 散 分 析 お よ び 最 小 有 意 差 法 に よ り 、 時 間 経 過 に 伴 う 変 化 の 有 意 性 と 条 件 区 間 の 有 意 差 の 有 無 を 検 定 し た 。 危 険 率P<0.05を もっ て 有 意 で あ る と した 。 (6)総 転 写活 性 の 測 定 In vitro transcriptional (Kim et a1.2002)。 交 配 後4.0日 時 間 の 交 配 後9.5日 (PB:1mM mM activity assay法 Na2ATP, 10mM 30mMKC1, 1mMDTT, 与 後16 Buffer 0.2mM PMSF,1 Na2HPO4, 50units/ml RNasin(ribonuclease inhibitor:Promega で 洗 浄 後 、0.05%Triton MnC12,50mM 目 の 休 眠 胚 、E2投 目 の 活 性 化 胚 は 、 採 取 直 後 に.3%PVP/Physiological Corporation,Madison, WI))(Ferreira mM の 方 法 を 一 部 変 更 して 行 っ た 目 の 胚 盤 胞 、 交 配 後9.5日 MgC12, 100mMCH3COOK, を 含 むtranscription はKimら X-100/PBで1.5分 mixture(TM:2mM (NH4)2SO4)/PB中 反 応 を 行 っ た 。PBで3回 and Carmo-Fonseca 1995;Jackson et al.1993) 間 透 過 処 理 し 、PBで3回 洗 浄 後 、BrUTP ATP,各0.4mMのGTP,CTP,BrUTP,1 で33℃ 下15分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト して 転 写 洗 浄 後 、 反 応 を 停 止 す る た め0.2%Tdton を 移 し て4℃ で3分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、PBで3回 X-100/PBに 洗 浄 し て3.7%PFA/PBで 時 間 固定 し、 免 疫 染 色 に供 した。 免 疫 染 色 は抗BrdU抗 胚 室 温1 体 を用 い て(4)DNA合 16 Chaoter 成 活1生 の 検 出 時 と 同 様 の 方 法 で 行 い 、 蛍 光 はCarl Zeiss LSM 1 510共 焦 点 レ ー ザ ー ス キ ャ ン 顕 微 鏡 で 検 出 し た 。 胚 は そ の 上 端 か ら 下 端 ま で をZ軸 方 向 に2 .5μm厚 の 複 数 枚 の 画 像 に 撮 影 し、 胚 全 体 の シ グ ナ ル を 画 像 と して 得 た 。 次 に 、 こ の 複 数 枚 の 画 像 を 重 ね 合 わ せ 、 シ グ ナ ル を 加 算 して 一 枚 の 画 像 を 作 製 した 。 画 像 の シ グ ナ ル 量 はNIH-Image(National Institutes of Health, Bethesda, MD)を 用 い て計 測 した 。 得 られ た 胚 全 体 の 蛍 光 量 か ら細 胞 質 部 分 の 蛍 光 量 を 差 し 引 い て 核 の 総 蛍 光 量 を得 た。 この値 を各 ス テ ー ジの 胚 にお け る平均 細 胞 数 で除 す る こ とに よっ て 、 核1個 あ た り の 平 均 蛍 光 量 を 算 出 し た 。 得 ら れ た デ ー タ は 、Student's に よ り 、 条 件 区 間 の 有 意 差 の 有 無 を 検 定 し た 。 危 険 率P<0.05を t-test もって 有意 差 が あ る と した 。 17 Chapter 1 結果 (1)着 床 遅延 モ デ ル の 条 件 検 討 とE2の 影 響 が 生 じる時期 の確 認 着床遅延モ デルの利用 にあたって、適切な卵巣除去手術 の処置 時刻 を決 定す るた め に、 交配 後3日 目の様 々 な時 刻 に卵 巣 除 去 手 術 を行 い 、得 られ た休 眠胚 の 個 数 と、 着 床 が成 立 した 場 合 に 子 宮 角 に確 認 され た着 床 斑 の数 を調 べ た。In vivoで は 、胚 は 交配 後3日 目 ご く初 期 に な って よ うや く卵 管 か ら子 宮 角 内 に移 動 す る。 そ の 後 、 交配 後3.5日 目頃 に は卵巣 か ら分 泌 され る内 因性 のE2の 影 響を 受 け て着 床 能 を獲 得 す る。 そ こで 、 胚 が 子 宮 内 に移 動 した後 、E2の 影 響 を受 け る前 に卵 巣 除去 を行 う為 に、 胚 が 子 宮 角 内 に移 行 した交 配 後3日 目の 午前 中 か ら午 後 にか け て卵 巣 除 去 手 術 を行 い最 適 な 処 置 時 刻 を調 べ た 。 そ の結 果 、休 眠 胚 の作 製 に は午 前9時 か ら11時 の 問 で の 卵 巣 除 去 手術 が最 適 で あ る こ とが わ か っ た。 得 られ た 休 眠 胚 の 一 腹 あた りの個 数 は 、午 前9時 か ら11時 が もっ とも多 く、時 刻 が遅 くな る につ れ て採 取 され る胚 数 は減 少 した(図1-2)。 を除 去 した に もか かわ らず 子 宮 角 内 に着床 が成 立 した胚 は11時 一方、卵巣 以 降 か ら観 察 さ れ は じめ、 そ の 数 は時 間 経 過 と とも に増 加 した。 これ よ り、 卵 巣 か らのE2の 泌 は交 配 後3日 目の11時 分 以 降 に上 昇 す る こ とが示 唆 され た。 着床 斑 の確 認 され た個 体 で は卵 巣 除 去 時 には す で に卵 巣 か らのE2分 泌 が開 始 され て お り、子 宮 角 内 の胚 に作 用 して 着床 を誘 導 した と考 え られ る。 (2)休 眠胚 の細胞数 の変化 次 に、 着床 期 胚 の 細胞 増 殖 に対 す るE2の 作 用 を明 らか にす るた め に、 まず休 眠 胚 の 細胞 増 殖 能 を調 べ た。 卵 巣 除 去 後P4を 経 日的 に投 与 した個 体 の子 宮 か ら 様 々 な 日数 後 に休 眠胚 を採 取 し、 細 胞 数 の変 化 を調 べ た 。 そ の結 果 を 、 図1-3 18 Chapter に 示 す 。 胚 あ た り の 細 胞 数 は4細 (Barlow et al.1972;Graham 後5.0日 1 胞 期 か ら胚 盤 胞 期 ま で 等 比 級 数 的 に 増 加 す る 1973)。 そ の 勢 い は 卵 巣 除 去 後 も ほ と ん ど 衰 え ず 交 配 目 に は 胚 あ た り の 細 胞 数 は160(162±6cells)に 達 し た 。 し か し 、5.0 日 目以 降 は 細 胞 増 殖 速 度 は 急 速 に 低 下 し 、 交 配 後9.0日 日 目(169±10cells)で 目(169±7cells)、13.0 も細 胞 数 の 増 加 は ほ と ん ど 見 られ な か っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 休 眠 胚 で は5.0日 目 以 降 は 細 胞 増 殖 が ほ と ん ど行 わ れ な い こ と が 示 さ れ た 。 こ れ は 同 時 に 本 来 な ら ば 着 床 期 に 受 け る は ず のE2の 刺 激 を受 け ない 場合 に は、 胚 は そ の 後 の 細 胞 増 殖 を 正 常 に 進 行 で き な くな る こ と を 示 して い る。 (3)E2投 与時 のDNA合 次 に 、実 際 にE2か 成 活 性 の変 化 らの刺 激 が休 眠 胚 の 細胞 増 殖 を促 す こ とが で き るか を調 べ た。活 性 化 した胚 はE2投 与 後24時 間 程 で 子 宮 内 に着床 して しま うた め、そ の 細 胞 数 が 増加 した か否 か を 正確 に把 握 す る こ とは 困難 で あ る。 そ こで 、 細 胞 増 殖 の指 標 と して 、 胚 のDNA合 成活 性 の変 化 お よびM期 べ た 。 まず 、 着床 遅延 中の個 体 にE2を 時 間 後 の 胚 のDNA合 期(M期)の に あ る割 球 数 の変 化 を調 投 与 して 、0時 間 、8時 間 、12時 間、16 成 活 性 を調 べ た。ま たそ れ ぞ れ の 時期 の胚 に含 まれ る分 裂 形 態 を示 す 割 球 の割 合 を求 め た。 そ の結 果 を 図1-4に 示 す 。DNA 合成 が検 出 され た割 球 の割 合 は時 間 経 過 に伴 い 有意 な 上昇 を示 した(P<0.001、 図1-4A)。E2投 与後8時 8時 間後 に比 べ12時 間 で は休 眠胚(0時 間)と 間 後 で は有 意 に 上昇 した。 そ して さ らに この割 合 は12-16 時 間後 に か け て 有意 に増 加 した。E2投 与 後0時 BrdUの シ グナ ル を図1-4Bに は 、E2投 与後16時 の 間 に有 意 差 は なか った が 、 間 後 の胚 にお け る 示 す 。 同 じ時期 の胚 に観 察 され たM期 間 まで 常 に0.06-0.2%と 認 め られ な か っ た(図1-4C)。 間 お よび16時 細胞 の割 合 低 く、時 間経 過 に伴 う有意 な変 化 は 以 上 の 結 果 か ら、E2の 刺激 の効 果 は投 与 後12時 19 Chapter 間 に はS期 へ の進 行 を示 すBrdU陽 1 性 の割 球数 の 上 昇 とい う形 で 現 れ 、投 与後 16時 間 には この よ うな割 球 の割 合 が顕 著 に上 昇 した こ とが明 らか とな っ た。 ま た 、E2の 投 与 に よ ってS期 に入 った割 球 の割 合 が増 加 した に もか か わ らず 、M 期 に あ る割 球 の割 合 は増 加 しなか った こ とか ら、休 眠 胚 はG2期 期 に お い て 細胞 周期 を停 止(G0/G1期)し か ら、E2投 与 後16時 で はな く、G1 て い た と考 え られ る。 これ らの 結 果 間 に は休 眠 胚 は活性 化 され た状 態 に あ る と判 断 し、以 降 の 実 験 で は これ を活 性 化 胚 と して 用 い る こ と と した。 (4)胚 の休眠化 お よび活性化 にお ける総転写活性 休 眠胚 では細胞増殖 の停滞 だ けで な くタンパ ク合成活 性や様 々な生理活性 も 低 下 して い る こ とが 報 告 され て お り(Weitlauf 1974; Weitlauf and Greenwald 着 床 期 にE2の 1968)、 刺 激 が ない 胚 で は そ の 後 の胚 発 生 に必 要 な様 々 な遺 伝 子 の発 現 が 行 われ ず 、 結果 と して細 胞 周 期 進 行 や 着 床 等 の現 象 を 引 き起 こす こ とが で きな い とい うこ とが 考 え られ る。 そ こで 次 に、E2の お よびE2刺 激 後16時 シ グナ ル を受 けて い な い休 眠 胚 間 の活 性 化 胚 にお け る総 転 写 活性 の レベ ル を調 べ た。そ の 結果 を示 した の が 図1-5で あ る。細 胞 あた りの 総転 写活 性 は、交 配 後4.0日 目の 正 常発 生胚 に 比 べ休 眠胚 で は 有 意 に低 くな って い た。 ま た 、E2投 与 に よ り活性 化 され た胚 で は 、総 転 写活 性 は休 眠 胚 か ら有 意 に上昇 し交 配 後4.0日 目 よ りも高 くな って い た。 20 Chapter 1 考察 本 実 験 で は、 着 床 遅延 状 態 の 成 立お よび維 持 の た めの 条 件 検 討 を行 い 、着 床 遅延 モ デ ル か ら休 眠胚 と活性 化 胚 を安 定 的 に採 取 す る こ とを可 能 に した。 妊 娠 マ ウス で は交 配 後3日 目に卵 巣 か らのE2の 昇 す る こ とが 報 告 され て い る (Lim et 分 泌 が増加 し、 子 宮 の胚 受 容 能 が 上 al. 2002;Paria et al. 1993; Psychoyos 1973a) 。 本 研 究 結 果 か ら、E2の 分 泌 が 起 こ るの は 交 配後3日 目の 午 後 で あ る こ とが示 唆 され た 。 卵 巣 か らのE2刺 交 配 後3.5日 激 を受 け なか っ た休 眠 胚 で は 、胚 発 生 に伴 う細胞 数 の増 加 は、 目の 卵 巣 除 去 手術 後 も5.0日 目頃 ま で は ほ ぼ等 比 級数 的 な増 加 速 度 を維 持 す る こ とが 明 らか とな った。さ らに5.0日 目以 降 は細 胞 増殖 速 度 が急 激 に 低 下す る こ とが 明 らか とな った 。 こ の結 果 か ら、胚 の 細 胞増 殖 を制 御 す る メ カ ニ ズ ム の転 換 は交 配 後5 .0日 目頃 に あ り、胚 は交 配 後5.0日 目ま で はそ れ まで の プ ロ グ ラム 化 され た機 構 に よ って 等 比 級 数 的 に 細胞 数 を 増加 させ続 け るが 、 交 配 後5.0日 次 にE2か 目以 降 は 胚 の 細胞 増 殖 にE2か ら刺激 を必 要 とす る こ とが示 唆 され た。 らの 刺 激 が 、休 眠 胚 の 細胞 増 殖 を促 す こ とを確 認 した。 細 胞 増 殖 の 指 標 と して は 、胚 のDNA合 そ の 結果 、休 眠 胚 はE2投 成 の変 化 お よびM期 与後12時 を上 昇 させ た。 一方 で 、M期 に あ る割 球数 の変 化 を調 べ た 。 間 頃 か らE2の 刺激 に反 応 してDNA合 に あ る割 球 の割 合 はE2投 与後16時 成活性 間 まで 、 調 べ た い ず れ の 時 間 で も変 わ らず に低 か った 。 以 上 の結 果 か ら、 卵 巣 よ り分泌 され るE2由 来 の シ グナル は 、交 配 後5.0日 目以 降 の胚 で 細胞 増 殖 の継 続 的 な進 行 を 維 持 す る の に 必 須 の 外 因性 シ グ ナル で あ る こ とが 明 らか とな っ た。 す な わ ち、 この刺 激 を受 容 で き な か っ た胚 は、 交 配 後5.0日 とん ど停 止 す る こ と、そ して 、そ の 後E2の 目以 降 、G1期 で 細 胞周 期 を ほ 刺 激 を受 けた胚 は16時 間 後 頃 に は活 21 ChaDter 性 化 して 、多 くの細 胞 がG1期 1 か らS期 へ と細胞 周 期 を移 行 す る こ とが示 され た。 で は 、 休 眠 状 態 に 入 った 場 合 、 胚 の転 写活 性 は維 持 され るの だ ろ うか 。 交 配 後4.0日 目の胚 を指 標 に して 、休 眠 胚 お よび活 性 化 胚 の総 転 写 活 性 を調 べ た結 果 、 予 想 され た とお り休 眠胚 の総 転 写活 性 は 交配 後40日 い た。 さ らに 、母 体 にE2を 目の胚 に比 べ て 低 下 して 投 与 す る と細胞 あた りの 総転 写活 性 は交 配 後4.0日 目の胚 以 上 に ま で 回復 した。 以 上 の結 果 か ら、 着 床 期 に母 体 の 卵 巣 か ら分 泌 され るE2は 確 か に胚 の細 胞 増 殖 を制 御 す る こ とが 明 らか とな っ た。 ま た 、総 転 写 活性 も低 下 して い る こ とか ら、E2は 胚 の様 々 な 遺伝 子発 現 に も関 与す る こ とが示 唆 され た。 これ よ り休 眠 胚 にお け る細 胞 増 殖 のG1期 子 の発 現 がE2の で の停 滞 は、特 にG1期 の 細胞 周 期 進 行 に必 要 な 因 刺 激 の欠 如 に よ り低 下 す るた め で は ない か と推 測 され た。 そ こ で 、第 二 章 で は 、胚 の細 胞 増 殖 調 節 機 構 に焦 点 を絞 り、E2の 刺 激 が な い 場合 に 休 眠 胚 の細 胞 増 殖 が 抑 制 され る メカ ニ ズ ム と、母 体 か らのE2の 刺 激 に よっ て細 胞 周 期 の 進 行 が 回復 す る メカ ニ ズ ム を明 らか にす る こ とで 、 着 床 期 胚 の 細 胞 増 殖 にお け るE2の 役 割 を 同定 す る こ とを試 み た。 特 にG1期 の 進行 に 関 わ る細 胞 周 期 制 御 因 子 に注 目 して そ の発 現 量 の変 化 を調 べ る こ と と した。 22 Chanter 図1-1休 (A)休 眠 胚 お よ び活 性 化 胚 の 作 成 法 眠 胚 ・活 性 化 胚 作 成 の た め に行 った 手 術 お よび ホ ル モ ン投 与 の 処置 過 程 を示 す。 自然 交 配 した 時刻 を0日 交 配 後0.5日 目)と し 、3日 ロ ジ ェス テ ロ ン(P4)を P4と 同 時 に25ngの た。(B)実 1 目の 午 前0時(膣 栓 を確 認 した 日の 正午 は 目 に 卵 巣 除 去 手 術 を 行 い 、 翌 日 か ら 毎 日2mgの プ 背 部 皮 下 に注射 して胚 の休 眠 状 態 を維 持 した 。 ま た、 エ ス ト ロ ジ ェ ン(E2)を 投 与 して 休 眠 胚 の 活 性 化 を 誘 導 し 験 で用 い た各 胚 の実 体 顕 微鏡 像 を 示す 。 交配 後4,0日 目の胚 は正 常 な妊 娠 マ ウス か ら採 取 した。休 眠 胚 と活 性化 胚 は どち ら も交 配 後9.5日 した。E2は 活性 化胚 の採 取 時 間 の16時 目に採 取 間 前 に投 与 した。 23 Chapter 図1-2卵 1 巣 除 去 手 術 時 刻 と着 床 遅 延 との 関係 卵 巣 除 去 手 術 の 処 置 時刻 と交配 後9.5日 の 個 体 か ら採 取 され た休 眠 胚 の 数 、あ る い は胚 が 着床 した 結 果 生 じる着 床 斑 の 数 の 関 係 を示 す 。 斜 線 の グ ラ フは 一腹 か ら得 られ た休 眠 胚数 、 黒 い グ ラ フ は 一 個 体 の 両子 宮 角 に 観 察 され た着 床 斑 数 を 示 して い る。 グ ラ フに は平 均 値 ±標 準誤 差 を示 す。 各 時 刻 に用 い た個 体 数 は以 下 の 通 り 。9-11時;n=3、11-13時;n=20、13-15時;n=14、15-17時;n=19、17-19 時;n=7。 24 Chapter1 図1-3 休 眠 胚 の 細 胞増 殖 の 変 化 交 配 後3日 目の 午 前 中に卵 巣 除去 を行 い 、母 体 に毎 日P4を 投 与 して胚 の休 眠状 態 を 維 持 し た 子 宮 か ら 交 配 後3.5日 =14) 、5.0日 目(n=28)、9.0日 目(n=6)、4.0日 目(n=29)、13.0日 目(n=27)、4.25日 目(n=7)の 目(n 胚 を 採 取 し、 胚 あた りの細 胞 数 を計 測 した 。 グラ フ は各 日 目の 細 胞数 の 平 均 値 ±標 準 誤 差 を示 す 。 25 Chapter 図1-4 E2投 与後 の胚 のDNA合 成 活 性 とM期 卵 巣 除 去 手 術 を 施 し た 交 配 後9.5日 細 胞 数 の変 化 目 の マ ウ ス に25ngのE2を 12,16時 間 後 に 子 宮 か ら 胚 を 回 収 し た(n=27,46,29,15)。 WM培 地 で4時 間 培 養 後3.7%PFA/PBSで 染 色 に よ りBrdUを 投 与後 胚 のDNA合 (B)E2投 与 後0時 固 定 し 、 抗BrdU抗 取 り 込 ん だ 細 胞 を 検 出 し た 。 同 時 にPIで た りの細 胞 数 お よびM期 1 皮 下注 射 し 、0,8, 胚 はBrdUを 含 む 体 を用 い た免 疫 核 を 染色 し、胚 あ の細 胞 数 を求 め 、胚 あ た りの 割 合 を算 出 した。(A)E2 成 の変 化 。 グラ フは3回 間 後 お よ び16時 の シ グナ ル を示 す 。 緑 色 はBrdUを の実 験 の平 均 値 ±標 準 誤 差 を示す 。 間 後 の 胚 に お い てBrdUを 取 り込 ん だ 細 胞 取 り込 ん だ細 胞 の シ グナル 、赤 色 はDNAを PIで 染 色 した シ グナ ル を示 す 。(C)E2投 与 後 の胚 に存 在 す るM期 細 胞 の割 合 を示 した。 値 は平 均値 ±標準 誤 差 を示 す 。 26 Chapter 図1-5 1 胚 の 細 胞 あ た りの総 転 写 活性 の 変化 交 配 後4.0日 目 の 正 常 発 生 胚(n=85)と 成 し た 交 配 後9.5日 、 卵 巣 除 去 手 術 お よ びP4投 目 の 休 眠 胚(n=39)、 日 目 の 活 性 化 胚(n=37)に お よ びE2投 お け る 総 転 写 活 性 をBrU取 め た 。 取 り込 ま れ たBrUは 抗BrU抗 蛍 光 量 を 測 定 し た 。(A)グ ラ フ は 休 眠 胚 の 値 を1と 与16時 与 に よ り作 間 後 の 交 配 後9.5 り込み 量 を指標 に して求 体 を 用 い た 免 疫 染 色 に よ り検 出 しFITCの した 時 の そ れ ぞ れ の 胚 で の 細 胞 あ た り の 蛍 光 量 の 平 均 値 ± 標 準 誤 差 を 示 す 。**,P<0,01;***,P<0.001。 (B)各 胚 に 取 り込 ま れ たBrUを 免 疫 染 色 に よ り検 出 し た シ グ ナ ル を 示 す 。 27 第 二章 着床期 胚 にお け る細胞周期 制御 因子 の発現量 の変化 Chanter2 緒言 体 細 胞 の 細 胞 増 殖 は 、 細 胞 分 裂 期(M期)と 進 行 す る 。 間 期 は さ ら に 前DNA複 お よ び 後DNA複 製 期 のGap2 的 な サ イ ク リ ン-CDKが 製 期 のGap1 (G2期)に (G1期)、DNA複 製 期(S期)、 分 け られ る。 そ れ ぞ れ の 時 期 に は 特 異 周 期 的 に 発 現 し て 細 胞 周 期 を 調 節 す る 。細 胞 周 期 に 直 接 関 わ る サ イ ク リ ン-CDK複 A/B-CDK1、G1期 間 期 を 周 期 的 に 繰 り返 す こ と で 合 体 と し て は 、M期 サ イ ク リン で あ る サ イ ク リン サ イ ク リ ン で あ る サ イ ク リ ンC-CDK3、 サ イ ク リ ンE-CDK2、S期 サ イ ク リ ンD-CDK4/6、 サ イ ク リ ン で あ る サ イ ク リ ンA-CDK2な どが あ る。外 部 環 境 に 合 わ せ て 細 胞 増 殖 を コ ン トロ ー ル し て い る 体 細 胞 で は 、 外 因 性 の シ グ ナ ル を 受 容 し て 細 胞 周 期 の 進 行 を 制 御 す るG1期 子 で あ る サ イ ク リ ンD-CDK4/6-pRBの と 、そ の 時 期 の 細 胞 周 期 制 御 因 機 能 が 重 要 と な る(Matsushime et al.1992)。 体 細 胞 が 細 胞 増 殖 因 子 等 の 外 因 性 シ グ ナ ル を 受 容 す る と 、JAK/STAT系 Ras/Mapキ ナ ー ゼ 系 、PI3K/AKTキ ク リ ンDの Marshall ナ ー ゼ 系 等 の シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 介 して サ イ 発 現 や 機 能 が 活 性 化 さ れ 、G1期 1999; Olson et al. 1998; Shaulian ら の シ グ ナ ル 伝 達 系 は サ イ ク リ ンDの pRBを リ ン 酸 化 す る こ と で 、E2Fの Sherr and Roberts 1999)。pRBと が 進 行 す る(Kerkhoff and Rapp and Karin 2002; Squires et al 2002)。 転 写 活 性 やCDK4/6と 、 サ イ ク リ ンA等 な 因 子 の 転 写 活 性 を 高 め 、 こ の 結 果G1期 のS期 1997; これ の 結 合 を 上 昇 させ 、 機 能 抑 制 状 態 を 解 除 す る(Nevins の 結 合 か ら解 放 さ れ たE2Fは ー タ ー 部 分 で 機 能 し て サ イ ク リ ンE に 発 現 し た サ イ ク リ ンEや や et al.1991; 、 遺 伝 子 の プ ロモ 移 行 に 関 わ る様 々 が 進 行 し細 胞 増 殖 が 促 進 され る。 新 た サ イ ク リ ンAはpRBの 別 の 残 基 を リン 酸 化 して 細 胞 周 期 を さ ら に 進 行 させ る。 これ に 対 し、 マ ウス初 期 胚 に お け る細 胞 増 殖 調 節 機 構 は 、通 常 の体 細 胞 と大 29 き く 異 な っ て い る 。初 期 胚 の 細 胞 周 期 はG1期 S期 Chapter 2 を ほ と ん ど 欠 失 し て お り、M期 と を 迅 速 に 繰 り返 す こ と で 、 急 速 な 細 胞 数 の 増 加 を 可 能 に し て い る(Chisholm 1988; Molls et al. 1983; Moore 1980)。4細 胞 期 以 降 の 初 期 胚 で は 、 サ イ ク リ ンD1やpRBの (Fuchimoto et al. 1994; Iwamori et al.1996; Smith and Johnson et al. 2002)、 こ の こ と が 、G1期 1986; Streffer et al. 発 現 が 見 られ ず 短 縮 に よ るM期 と S期 の 迅 速 な 繰 り返 し を 可 能 に し 、外 因 性 シ グ ナ ル 非 依 存 的 で 分 裂 周 期 の 短 い 細 胞 増 殖 の 進 行 を 可 能 に して い る と考 え られ て い る。 しか し胚 は この外 因性 シ グナ ル 非依 存 的 な 細 胞 増 殖 をい つ ま で も維 持 し続 け るわ け で は な い。 未 分 化 な細 胞 の集 塊 で あ った 初 期 胚 が分 化 し、母 体 と協 調 し 合 い な が ら着 床 を成 立 させ て 妊 娠 を維 持 し、組 織 や 器 官 とい っ た複 雑 な構 造 を 形 成 す る よ うに な るに は、 細 胞 が外 因性 の シ グナ ル を認 識 し、 周 囲 の環 境 に合 わせ て 細 胞 増 殖 を調 節 で き る よ うに な らな けれ ば な らない 。 こ の た め 、初 期 胚 は 細胞 の 分 化 が 開始 され る とい わ れ る胚 盤 胞 期 か ら、 初 めて 外 部 環 境 との コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン を 開始 す る着 床 期 に か け て 、 内在 的 にプ ロ グ ラ ム化 され た 細 胞 増 殖 か ら外 因性 シ グ ナル 依存 的 な体 細 胞 型 の細 胞 増 殖調 節 機 構 へ と転 換 す る も の と考 え られ る。 そ こで 本 章 で は 、 この よ うな細 胞 増 殖 機 構 の 転 換期 に あ る胚 に対 して 、母 体 か らのE2の シ グナ ル が 胚 の 細胞 増 殖 に果 たす 役 割 を明 らか にす るた め に、E2由 来 の シ グナル が そ の遺 伝 子発 現 に 関与 し、 そ の 結果 細 胞 増 殖 の進 行 を変化 させ る原 因 とな っ て い る細 胞 周 期 制 御 因 子 を同 定す る こ とを試 み た。休 眠胚 はG1期 にお い て細 胞 周 期 を停 滞 させ て い る こ と、 ま た 同時 に総 転 写 活 性 も低 下 させ て い る こ とか ら、E2か らの刺 激 は外 因性 シ グナル と してG1期 E2の 刺 激 が な い 状態 で は 、胚 はG1期 の進 行 を制御 し、 の進 行 に必 要 な細 胞 周 期 制御 因 子 の発 現 量 が不 足 す る こ とでそ の機 能 を失 った の で は ない か と予 測 され る。 そ の一 方 で 、 30 Chapter 初 期 胚 の細 胞 周 期 制 御 機 構 で はG1期 2 の 進 行 に関 わ る制御 因子 群 は機 能 して お らず 、別 の メ カ ニ ズ ム に よって休 眠胚 のS期 考 え られ る。そ こで 、本研 究 で はG1期 前 で の停 止 が 引 き起 こ され た と も の進 行 を制 御 す る細 胞 周期 制 御 因子 に着 目 し、 まず 、 着 床 直 前 期 か ら着 床 期 に あ る胚 盤 胞 にお け る発 現 を調 べ た。 次 に 休 眠 胚 及 び 活 性 化 胚 で の 遺伝 子発 現 の変 化 を調 べ る こ とで 、休 眠胚 がG1期 で細 胞 周 期 を停 止 させ る メカ ニ ズ ム 、お よび活 性 化 時 に細胞 周 期 を再 開 させ る メカ ニ ズ ム を推 定 した 。 サ イ ク リンは転 写 量 の 変 化 に よ り機 能 調 節 を受 け る こ とか ら、G1期 サ イ ク リン-CDKの ンD、 及 び サイ ク リンEの 活 性 の指 標 と してG1期 転 写 量 を調 べ た。 同 時 に 、G1期 合 体 の機 能 阻 害 因 子 と して知 られ るp21お よびp27の 1999; Jackson et al. 1995)。 また 、休 眠胚 はG1期 行 して い る と考 え られ る こ とか ら、G0期 とい われ るサ イ ク リンCの サ イ ク リンで あ るサイ ク リ サ イ ク リン-CDK複 発 現 も調 べ た(Cheng et al. で 細胞 周期 を停 止 し、G0期 か らG1期 に移 へ の 脱 出 時 に機 能 して い る 発 現 も調 べ た(Ren and Rollins 2004)。 31 Chapter 2 材 料 と方法 (1)胚 の採 取 とRNA抽 交 配 後3.5日 交 配 後9.5日 WMを 出 目 、4.0日 目 、4.25日 目 休 眠 胚 、 お よ びE2投 目 の 正 常 発 生 胚 と、 着 床 遅 延 モ デ ル か らの 与 後16時 間 の 交 配 後9.5日 用 い た 子 宮 貫 流 に よ り採 取 し た 。 採 取 し た 胚 はRNA抽 迅 速 に 約30胚 ず つ を400μlのISOGEN(Wako, 目活 性 化 胚 を 出 に用 い る た め 、 Osaka, Japan)に 回 収 し 、-80℃ に て 凍 結 保 存 した 。 RNA抽 出 法 はISOGENの プ ロ ト コ ー ル に 若 干 の 修 正 を 加 え て 行 っ た 。-80℃ か ら 出 し た サ ン プ ル は 室 温 に て 融 解 し 、50pgの ン トロ ー ル と し て 添 加 し た 。 撹 拌 し て4℃ ム を 添 加 し て 撹 拌 し 、4℃ で5分 ウ サ ギ α グ ロ ビ ンmRNAを で5分 間 静 置 後 、100μlの 間 静 置 後 に15 ,000rpm、4℃ に て15分 外来 コ ク ロ ロホル 間遠 心 し た 。 遠 心 後 、 中 間 層 を 混 入 させ な い よ うに 注 意 しな が ら上 層 を 新 しい チ ュ ー ブ に 移 し 、2μlの で30分 グ リ コ ー ゲ ン と400μlの 間 放 置 し た 後 、15,000rpm、4℃ イ ソ プ ロ パ ノ ー ル を 加 え 、 混 和 し て4℃ に て15分 間 遠 心 し た 。RNAの 沈 殿 は70% エ タ ノ ー ル で リ ン ス し た 後 余 分 な 溶 液 を 風 乾 除 去 し 、20μlのDEPC-H2Oに 溶 か して 、 全 量 を 逆 転 写 反 応 に 用 い た 。 (2)RT-PCR RNAサ ン プ ル に2μl と2μlの10mM dNTP Oligo(dT)12-18 mix(Takara 間 反 応 さ せ た 。 そ の 後 、4μlの10×RT のReverScript で 総 量40μlに II(Wako)、 し て 、42℃ primer(Invitrogen Bio Inc., Kyoto, reaction Corp., Japan)を 加 え 、70℃ CA) で5分 buffer、4μlのdithiothreitol、0.5μl お よ び0.5μlのRNasin(Promega)を で60分-51℃ Carlsbad, で30分-70℃ 加 え 、DEPC水 で15分 の反 応 時 間 で 逆 32 Chapter 転 写 反 応 を 行 っ た 。 反 応 液 は0.5μl RNase ー ト し てRNAを 分 解 した 後 、3倍 Hを 加 え 、37℃ で40分 量 の エ タ ノ ー ル と0.1倍 ウ ム を 加 え て エ タ ノ ー ル 沈 殿 を 行 い 、 ペ レ ッ トは70%エ 風 乾 に よ り 余 分 な 水 分 を 除 去 し た 後 、DDWに 作 製 し たcDNAサ USA. and TaKaRa, Shiga, Japan)を た 。1μlのcDNAサ Rockland, ン プ ル に つ い てSmart Inc., Rockland, mix、0.3μlの250mM Green 酸 ナ トリ タ ノー ル で 洗 浄 して 、 用 い た。 (Cephied, 用 い た リ ア ル タ イ ムPCR法 ン プ ル に2.5μlの3×SYBR 間 イ ン キ ュベ 量 の3M酢 溶 解 し てPCRに Cycler System Sunnyvale, に よ り定 量 を 行 っ (Cambrex Bio Science ME)、2.5μlの10×PCRbuffer、0.75μlの10mM MgCl2、0.25μlのEx Taq HS dNTP (Takara Bio Inc.)、1μlの10μM 各 遺 伝 子 プ ラ イ マ ー の セ ン ス 側 、 ア ン チ セ ン ス 側 を 加 え 、 全 量 が25μlに う にDDWを 加 え 、PCR反 タ イ ムPCR反 イ ムPCR反 ー リ ン グ ー72℃20秒 なる よ 応 液 を 作 製 した 。 用 い た プ ラ イ マ ー の 配 列 と リア ル 応 の ア ニ ー リ ン グ 温 度 、 検 出 温 度 条 件 を 表2-1に 応 は 、95℃30秒 2 の 変性 の 後 、95℃15秒 の 伸 長 反 応-82∼91℃6秒 示 す 。 リア ル タ の 変 性-56∼63℃15秒 のアニ 検 出 の サ イ ク ル を40サ イ クル 繰 り返 し て 増 幅 ・測 定 を 行 い 、 あ ら か じ め 希 釈 列 を 用 い て 作 製 し た 検 量 線 に よ り cDNA量 を 測 定 した 。 求 め た 値 は 、 外 来 コ ン トロー ル と して 添 加 した ウサ ギ α グ ロ ビ ン のcDNA量 を 元 に 補 正 し、 各 ス テ ー ジ の 胚 の 平 均 細 胞 数 で 割 っ て 細 胞 あ た りの 値 を 求 め た 。 (3)統 計処理 交 配 後3.5日 目 か ら4.25日 目 の 着 床 期 胚 に お け る 遺 伝 子 発 現 で は 、 得 ら れ た デ ー タ はStudent's t-testに よ り条 件 区 間 の 有 意 差 の 有 無 を 検 定 し た 。 危 険 率P<0.05 を も っ て 有 意 差 が あ る と した 。 33 Chapter 2 結果 (1)着 床 直前期 か ら着床期 の胚 にお け る遺伝子発現の変化 まず 、着 床 前 の 交配 後3.5日 交 配 後4.25日 目の胚盤 胞 、着 床 期 に あた る交配 後4.0日 目及 び 目の 胚盤 胞 にお け る、G1期 細 胞 周 期 制 御 因 子 お よび そ の他 の 遺伝 子 の発 現 を調 べ た。 交 配 後3.5日 目は 、母 体 か らのE2の 刺激 を受 け てい ない と 考 え られ る時期 であ り、胚 は透 明帯 に包 まれ、胞胚腔 の比較 的大 きな 中期胚盤 胞 か ら後 期 拡 張 胚盤 胞 の 状態 にあ る。 交 配 後4.0日 目はE2の 刺 激 を受 けて い る と考 え られ 、 胚 は透 明 帯脱 出 前 後 の 時 期 に あ た る。 一部 の 子 宮 で は脱 落膜 化 が 起 きて お り、 外側 か ら着 床 部位 を確 認 で き た。 交 配 後4.25日 目の胚 は透 明 帯 が な く、一 部 の 子宮 で は脱 落 膜 化 が 起 きて お り、外 側 か ら着床 部 位 を確 認 で きた。 G3PDH,β G3PDHお ア クチ ン よび βア クチ ン は、通 常 の 体 細 胞 で は 細胞 あ た りの発 現 量 の 変化 が 少 な く 、 し ば し ば コ ン ト ロ ー ル と し て 用 い ら れ る 遺 伝 子 で あ る 。そ こ で 当 初 は 、 これ らの遺 伝 子 を内 因 性 の コ ン トロール と して 用 い る可 能 性 も考 慮 して 、そ れ それ の 時期 に お け る発 現 量 を調 べ た。 そ の結 果 、G3PDHと ら も 交 配 後3.5日 見 ら れ た(図2-1)。 目 胚 に 比 べ て4.0日 目 、4.25日 βア クチ ンは、 どち 目の 胚 で 発 現 量 の 有 意 な 増 加 が こ の 結 果 は 当 初 の 予 測 に 反 し た も の で あ り 、お そ ら くG3PDH お よび βアクチ ンは着床 後の急激 な細胞数 の増加 に対応 す るた めに、転写量 が 増 大 してい る の で は ない か と考 え られ る。 この 結果 か ら、G3PDHお よび βア ク チ ンの 両 遺 伝 子 は 内 因性 の コ ン トロー ル と して は適 切 で は な い と判 断 し、 以 降 の実 験 で は、 外 来 の コ ン トロ ール と して添 加 した ウサ ギ α グ ロ ビン のみ を コ ン トロ ー ル と し て 、 実 験 間 の ば ら つ き の 補 正 に 用 い る こ と と し た 。 34 Chapter 2 サイ ク リンD D型 の サ イ ク リ ン に は 、サ イ ク リ ンD1、D2、D3の 三 種 類 が 報 告 され て い る 。 こ れ ら の サ イ ク リ ン は 組 織 に よ っ て 発 現 す る 種 類 が 異 な る(Tan Wianny et al. 1998)。4細 et al. 2002; 胞 期 以 降 胚 盤 胞 期 ま で の 初 期 胚 で も 、 こ れ らの 発 現 は 大 き く 異 な っ て い る こ と が 報 告 さ れ て い る 。す な わ ち サ イ ク リ ンD1は で そ の 発 現 が 見 ら れ な い 。 こ れ に 対 し 、 サ イ ク リ ンD3は4細 胞 期 で は発 現 が 低 い も の の 以 降 胚 盤 胞 期 ま で 常 に 発 現 が 検 出 さ れ て い る(Fuchimoto 期 胚 に お け る サ イ ク リ ンD2の 胚盤 胞 期 ま et al. 1994)。 初 発 現 は これ ま で の ところ報 告 が ない 。 今 回 、 着床 前 か ら着 床 期 に あ た る時 期 の胚 盤 胞 に お い て これ らの サ イ ク リン の発 現 を調 べ た 結 果 、 交配 後3.5日 配 後4.0日 目で はサ イ ク リンD1の 発 現 が 見 られ ず 、交 目で初 めて発 現 が確 認 され 、4.25日 目に か け て有 意 な増 加 が見 られ た (図2-2)。 サ イ ク リンD2は4.0日 目か ら4.25日 目にか けて 増加 す る傾 向が 見 ら れ た が 、値 に ば らつ きが 大 き く有意 な 変化 は 見 られ なか った。サ イ ク リンD3は 交 配 後3.5日 目か ら4.25日 目に か けて 際 立 った 変 化 は 見 られ な か った 。 サ イ ク リンE サ イ ク リ ンEに (Lauper は サ イ ク リ ンE1とE2の et al. 1998)。D型 二 種 類 の サ ブ タ イ プ が 知 られ て い る サ イ ク リン と は 対 照 的 に こ の 二 種 類 の サ イ ク リ ン は 発 現 の パ タ ー ン が 類 似 し て お り、 ア ミ ノ 酸 配 列 の 相 同 性 が 高 く 、 細 胞 増 殖 を し て い る ほ と ん ど い ず れ の 細 胞 も 発 現 し て い る(Geng Lauper et al. 1998; Zariwala et al. 2001;Gudas et al. 1999; et al. 1998)。 着 床 期 の胚 に お い て もサ イ ク リンE1と 的似 通 っ て お り、 どち ら も交 配 後3.5日 サ イ ク リンE2の 発 現 パ ター ンは 比較 目に比 べ交 配 後4.0日 目には発 現 量 が低 35 Chapter 下 し 、 交 配 後4.25日 CDK阻 2 目 に は 再 び 発 現 量 が 増 加 す る 傾 向 が 認 め ら れ た(図2-3)。 害 因子 次 に 、G1サ イ ク リ ン の 阻 害 因 子 で あ るp21お ら の 因 子 はin vitroで は す べ て のCDKに に お い て は サ イ ク リ ンE-CDK2の よ びp27の 発 現 を調 べ た 。 こ れ 結 合 し て そ の 作 用 を 阻 害 す る が 、in vivo 機 能 を 阻 害 す る 一 方 で 、サ イ ク リ ンD-CDK4/6 の 機 能 は 阻 害 せ ず 、 む しろ 複 合 体 の 安 定 化 に 寄 与 し て い る とい わ れ て い る 。 着 床 期 に お け るp21の (図2-4)。p27の 4.25日 発 現 は 、交 配 後3.5日 発 現 は 交 配 後3.5日 目か ら発 生 が 進 む ほ ど有 意 に 減 少 した 目 か ら4.0日 目ま で 一 過 的 に 増 加 した 後 、 目で 減 少 す る傾 向 が 見 られ た 。 サ イ ク リンC サ イ ク リンCはCDK3と 複 合 体 を形 成 し、細胞 内 に 蓄積 してG0期 か らG1期 細 胞 周 期 へ と復 帰 す る 際 に 機 能 す る こ と が 報 告 され た 因 子 で あ る(Ren Rollins 2004)。 しか し、 この 因 子 に関す る研 究 は未 だ少 な く、G0期 の and 脱 出 以外 の 機 能 や 初 期 胚 にお け る発 現 に つ い て は不 明 な点 が 多 い。 本 結 果 で は 、 サ イ ク リ ンCの 発 現 は 交配 後3.5日 目か ら検 出 され 、そ の後 減 少 す る傾 向 を示 した が そ の 変 化 は顕 著 で は なか った(図2-5)。 (2)休 眠胚お よび活性化胚 にお ける遺伝子発現の変化 次 に、 同 じG1期 細 胞 周 期 制御 因 子 の発 現 に対 す るE2の 作 用 を調 べ た。 卵 巣 除 去 に よ りE2の 作 用 を阻 害 した結 果 生 じる休 眠 胚 と、休 眠 胚 にE2を 作 用 させ た 結 果 生 じた 活 性 化 胚 にお け る、 これ らの 因子 の発 現 を調 べ た。 36 Chanter G3PDH,β 2 ア クチン まず 、一 般 的 な遺 伝 子 の代 表 と して 、ハ ウス キー ピ ン グ遺 伝 子 で あ る、G3PDH お よび β ア クチ ンの発 現 を調 べ た。 そ の 結 果 、G3PDH、 眠 胚 にお け るmRNA量 は、 交 配 後4.0日 な っ て い た(図2-6)。E2に βア ク チ ン どち らも休 目の正 常 発 生 胚 と比 較 して顕 著 に低 く よ り活 性 化 さ れ た 胚 で は 、 こ れ ら の 遺 伝 子 の 転 写 量 は再 び 増 大 し、 細 胞 あた りのmRNA量 は 交配 後4.0日 目の胚 と同 レベ ル に達 し てい た。 これ らの遺伝子 の発 現量が休眠胚 で低 く活性化胚 で上昇す る とい う結 果 は 、一 章 で述 べ た 休 眠 胚 お よび 活性 化 胚 の総 転 写活 性 の 変化 と一 致 す る もの で あ る。 さ らにそ れ ぞ れ の遺 伝 子 の 転 写 量 の変 化 は 、総 転 写活 性 の 変 化 に比 べ て 顕 著 だ った。 サ イ ク リンD サ イ ク リ ンD1、D2、D3の い ず れ も 、 休 眠 胚 で のmRNA量 胚 に比 べ て低 く、活 性 化 胚 にお い て再 び交 配 後4.0日 し て い た(図2-7)。 の約40分 の1と 目 目胚 と同 レベ ル にま で 上昇 特 に 休 眠 胚 に お け る サ イ ク リ ンD1のmRNA量 は活 性 化 胚 きわ めて低 くな っ て い た。休 眠胚 に お け るサ イ ク リンD2、D3 の発 現 量 の低 下 は サ イ ク リンD1程 D1、D2、D3の は 交 配 後4.0日 発 現 はE2の 顕 著 で は な か っ た。 これ よ り、 サ イ ク リン 刺 激 に よ り促 進 さ れ る こ と が 示 さ れ た 。 サイ ク リンE サ イ ク リ ンE1、E2の ど ち ら も 、休 眠 胚 に お け るmRNA量 に比 べ 顕 著 に低 く、活性 化 胚 で は 交配 後4.0日 も 活 性 化 胚 のmRNA量 サ イ ク リ ンE1、E2の は 休 眠 胚 の 約40倍 発 現 はE2の は 交 配 後4.0日 目胚 目胚 以 上 に上 昇 してい た。 どち ら に 増 加 し て い た(図2-8)。 これ よ り、 刺 激 に よ り促 進 さ れ る こ と が 示 さ れ た 。 37 Chapter CDK阻 2 害 因子 G1期 サ イ ク リンやG3PDHな は交 配 後4.0日 ど とは 対 照 的 に 、p21のmRNA量 目胚 よ りや や 高 く、活 性化 す る と休 眠 胚 の約2分 と い う 変 化 を 示 し た 。一 方 、同 じCIP/KIPフ の 転 写 量 の 変化 は 、p21と 日 目胚 の約4分 の1に ァ ミ リ ー のCDK阻 は傾 向 が 異 な り、休 眠 胚 で のmRNA量 は休 眠胚 で の1に 減少 す る 害 因 子 で あ るp27 は交 配 後4.0 低 下 して い た。 休 眠 胚 にお け る転 写 量 の レベ ル は活性 化 後 も ほ と ん ど増 加 し な か っ た 。 こ れ よ り、p21の 発 現 はE2の 刺 激 に よ り抑 制 さ れ る こ と、p27の 発 現 はE2の 刺 激 に 明確 な影 響 を受 けな い こ とが示 唆 され た。 サ イ ク リンC 休 眠胚 はE2の GO期 か らG1期 刺激 に よ り迅 速 に活 性 化 し細 胞 周 期 の進 行 を 回復 す る こ とか ら、 へ の移 行 に関 与 す るサ イ ク リンCの 発 現 が 、休 眠 胚 にお い て維 持 され て い る こ とを予 測 してい た。 しか し、休 眠胚 で の サイ ク リンCのmRNA 量 は 顕 著 に低 く、逆 に活 性 化 後 に交 配 後4.0日 た。 これ よ り、 サ イ ク リンCの 発 現 もま たE2の 目胚 と同 レベ ル に ま で上 昇 して い 刺激 に よ って促 進 され る こ とが 示 され た。 38 Chapter 2 考察 第 一 章 で は、休 眠 胚 は総 転 写 活性 が低 下 し、細 胞 周 期 はG1期 で停 滞 して細 胞 増 殖 が 行 わ れ て い な い こ と、E2を 投 与す る と細 胞 周 期 の 進 行 が 再 開す る こ とを 報 告 した。 そ こで 本 章 で は 、母 体 か らのE2の 役 割 を 明 らか にす る た め に、E2由 シ グナ ル が 胚 の 細胞 増 殖 に果 たす 来 の シ グナ ル に よって 遺 伝 子発 現 が 変化 す る 細 胞 周 期 制御 因 子 の 同 定 を試 み た。 まず 、 着 床 直 前期 か ら着 床 期 に あ る胚 盤 胞 にお け るG1期 細 胞 周 期 制御 因 子 の発 現 を明 らか に し、次 に、E2の 刺 激 の 遮 断 に よって 細 胞 増 殖 が停 止 して い る休 眠 胚 、及 びE2の た活 性 化 胚 で のG1期 細 胞 周 期 制御 因 子 の遺 伝 子 発 現 の変 化 を調 べ た。 そ の 結果 、 まず 通 常 の胚 発 生 にお い て は、G1期 のサ イ ク リンの うち二種 類(D1、D2)と も交 配 後4.0日 配 後3.5日 刺 激 に よ り細胞 周 期 が 再 開 し 目か ら4.25日 、E型 サイ ク リンは 、D型 の 三種 類 の 二 種類 の サ イ ク リンの いず れ 目にか けて発 現量 が 増加 す る傾 向 が見 られ た。 交 目ま で発 現 が認 め られ なか った サ イ ク リンD1は 、着床 直前 の交 配 後 4.0日 目に な って発 現 が 開始 され 、E2の 刺 激 に よ って発 現 量 が 上昇 す る こ とが示 唆 され た。 ま た 、 サ イ ク リンD-CDK4/6に 制 因 子pRBも よ って 活性 を調 節 され てい る転 写抑 胚 盤 胞 期 前期 ま で発 現 が な く、 胚盤 胞 期 後期 に な って発 現 が 開始 す る こ とが報 告 され て い る こ とか ら(Iwamori et al.2002)、 この 時期 にG1期 行 に関 わ るサ イ ク リンD-pRB系 の進 が確 立 され る こ とが推 測 され た。 一方 、CDK阻 害 因 子 で あ るp21の 発 現 は交 配 後3.5日 目か ら4.25日 目に か けて 大 き く低 下 し て お り、 このp21の 発 現 の 低 下 に もE2の 刺 激 が関 わ って い る可能 性 が示 唆 され た。 次 に 、E2分 泌 の人 為 的 な制 御 に よ って 作製 した休 眠胚 及 び 活 性 化 胚 にお け る 遺 伝 子発 現 の結 果 か ら、着 床 期 胚 にお い て 、母 体 へ のE2投 与 はG3PDH、 βア ク 39 Chapter 2 チ ン、サ イ ク リンC、 サ イ ク リンD、 サ イ ク リンE、 の いず れ の遺 伝 子 発 現 も促 進 す る こ とが 明 らか とな った。 交配 後3.5日 目か ら4.25日 発 現 を調 べ た結 果 で は、 サ イ ク リンC、 サ イ ク リンD2やD3、 目ま で の胚 の遺 伝 子 サ イ ク リンEは 発 現 の一 時 的 な低 下や 、 一 時 的 な発 現 量 の維 持 状 態 が 見 られ た こ とか ら、E2の 刺 激 が ない 状 態 で は これ らの遺 伝 子 の発 現 は低 下す るが 、 交 配 後3.5日 目か ら 4.0日 目に か けて 加 わ るE2由 来 の 刺激 が 、そ の発 現 を上 昇 す る方 向 に誘 導 してい る もの と考 え られ る。休 眠 胚 で は、G1期 D3)お よび サ イ ク リンE(E1,E2)、 イ ク リンCの の進 行 に 関 わ るサ イ ク リンD(D1,D2, そ してG0期 か らG1期 へ の進 行 に 関 わ るサ い ず れ も、顕 著 に減 少 して い た。これ に対 し、G1サ イ ク リン-CDK の阻 害 因子 でサ イ ク リンE-CDK2の 機 能 抑 制 に働 くp21の 発 現 量 は 、サイ ク リ ン とは 対 照 的 に休 眠胚 で 上 昇 し活 性 化 胚 で減 少 す る とい う、 特 徴 的 な変 化 を示 した。 これ よ りE2の 刺 激 はp21の 発 現 を抑 制 す る方 向 に働 き 、交 配 後3.5日 目 か ら4.25日 目に か け て のp21の 発 現 の減 少 もE2の 作用 に よる もの と考 え られ た。 p21と 同 じCip/Kipフ ァ ミ リー に属 す るp27の 発 現 量 は 、休 眠胚 で は減 少 した も の の 、活 性化 後 もそ の発 現 量 は低 い ま ま ほ とん ど変 化 せ ず 、E2の とは 出来 な か った 。 これ らの 結 果 か ら、休 眠胚 で はサ イ ク リンDお リンEの どち ら も減 少 す る こ とで 細 胞 周 期 がG1期 関与 を示 す こ よび サイ ク にお い て停 滞 し、 さ らにp21 の発 現 が 高 ま る こ とで この 状 態 を維 持 して い る もの と推 察 され た。 ま たサ イ ク リンCの G1期 発 現 も低 下 して お り、休 眠胚 は必 ず しもE2の 刺 激 に合 わせ てす ぐに に 回 復 で き る状態 に あ るわ け で は ない と考 え られ た。 以 上 の 結 果 か ら、 着 床 期 の胚 にお け る細 胞 周 期 制 御 機 構 に関 して 以 下 の よ う な考 察 を行 っ た(図2-11)。4細 pRBが 胞 期 か ら胚盤 胞 期 まで の着床 期 前 の初 期 胚 で は 存在 せ ず(Iwamori et al.2002)、 内在 性 の プ ログ ラ ム され た遺 伝 子 発 現 制 御 機 構 に基 づ く、外 因性 シ グ ナル 非 依 存 的 な細 胞 周期 制 御 機 構 が働 き、そ の結 果 、 40 Chapter M期 とS期 (Chisholm 2 の 迅 速 な 繰 り返 しか ら な る 等 比 級 数 的 な 細 胞 増 殖 が 行 わ れ る 1988; Moore et al. 1996; Smith and Johnson 1986)。 し か し交 配 後3.5日 目 以 降 の 着 床 期 に な る と 、 胚 は 外 因 性 シ グ ナ ル 依 存 的 な サ イ ク リ ンD-pRB-E2F系 の 細 胞 増 殖 機 構 を 新 た に 獲 得 す る 。す な わ ち 、胚 は 胚 盤 胞 期 に な っ て 初 め てpRB の 発 現 を 開 始 し(Iwamori et al. 2002)、 こ の 結 果pRBはE2Fの 転 写 活 性化 機 能 を 抑 制 す る よ う に な る。 こ の た め 、 そ の 抑 制 作 用 を 解 除 す る の に 外 因 性 の 細 胞 増 殖 調 節 シ グ ナ ル が 必 要 と な る 。 卵 巣 か ら 分 泌 さ れ るE2由 Dの 発 現 を 促 し 、pRBを て 、 サ イ ク リ ンEな リ ン 酸 化 し てE2Fの ど のS期 来 の刺 激 はサ イ ク リン 機 能 抑 制 を解 除 す る 。 これ に よ っ の 開 始 に必 要 な細 胞 周 期制 御 因子 の発 現 が誘 導 さ れ 、細 胞 周 期 が 進 行 す る 。こ の よ う に 、胚 で は 交 配 後3.5日 目 か ら4.0日 目 にpRB 依 存 的 な 外 因 性 シ グ ナ ル 依 存 的 細 胞 増 殖 機 構 が 確 立 し 、 そ の 調 節 にE2の 必 要 と さ れ る と 考 え られ る 。 卵 巣 か ら のE2刺 が 、 こ の 時 サ イ ク リ ンDの 激 が な い 場 合 、 胚 は 休 眠 胚 とな る 発 現 は 迅 速 に 低 下 し 、 そ の 結 果 と してpRBとE2Fと の 結 合 が 維 持 さ れ 、 サ イ ク リ ンEの 発 現 量 も低 下 す る 。 そ れ と 同 時 にp21の 現 量 が 上 昇 し て 、 サ イ ク リ ンE-CDK2の 1995)。 ま た 、p21の 刺激 が リ ン 酸 化 活 性 を 阻 害 す る(Jackson 発 et al. 抗 ア ポ トー シ ス 作 用 やDNA複 製 阻 害 作 用 に よ っ て 、細 胞 の 休 眠 状 態 が 安 定 的 に 維 持 さ れ る 。 休 眠 胚 にE2由 来 の 刺 激 が 与 え られ た 場 合 は 、 ま ず サ イ ク リ ンDの 発 現 が 上 昇 し 、pRBの リ ン 酸 化 に よ っ てG0期 複 製 の ラ イ セ ン ス 化 に 必 要 な サ イ ク リ ンEの 2002; Geng はE3ユ か ら のDNA 発 現 を 上 昇 さ せ(Coverley et al. et al. 2003)、 細 胞 周 期 の 進 行 を 回 復 す る 。 ま た 、 サ イ ク リ ンE-CDK2 ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ で あ るSCFskip2と 解 を 促 進 す る こ と でp21の 共 同 し てp21を ユ ビ キ チ ン化 し、 分 発 現 量 を 抑 え る と 考 え られ る(Wang et al. 2005)。 子宮の胚受容能獲得 にはE2の 刺激 に由来す る様 々な遺伝 子の発現 を必要 とす る。 ま た胚 側 も、 着床 能 獲 得 の た め の様 々 な遺 伝 子発 現 にE2の 刺激が必要であ 41 Chapter る。 この た めE2の 2 刺 激 が ない 、 す な わ ち子 宮 と胚 の双 方 の 準備 が整 わ ない 状態 で 胚 の細 胞 増 殖 ば か りが進 行 して しま わ ない よ うに 、 この よ うな 巧妙 な メカ ニ ズ ム が働 い て い るの で は な い だ ろ うか。 42 Chapter 表2-1 リ ア ル タ イ ムPCRに 2 用い たプ ライマー 43 Chapter 図2-1 着 床 期 胚 にお け るG3PDHと RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 目(n=5)の 用 い て 交 配 後3.5日 胚 に お け るmRNA量 の 平 均 値 を1と βア クチ ンのmRNA量 目(n=5)、4.0日 の変 化 目(n=14)、4.25日 を 求 め 、 そ の 平 均 値 お よ び 標 準 誤 差 を4.0日 し た 相 対 値 で 示 し た 。*印 は 交 配 後3.5日 2 目 と4.25日 目 目の 間 で 有 意 差 が あ る こ と を 示 す(P<0.05)。 44 Chapter 図2-2 RT-リ 着 床 期 胚 に お け る サ イ ク リ ンD(D1、D2、D3)のmRNA量 ア ル タ イ ムPCRを 用 い て 交 配 後3.5日 ぞ れn=3、n=5、n=4)、4.0日 n=5)の 胚 に お け るmRNA量 均 値 を1と 目(サ の 変 化 イ ク リ ンD1、D2、D3は 目(同n=12、n=14、n=13)、4.25日 は 交 配 後3.5日 そ れ 目(同n=3、n=5、 を 求 め 、 そ の 平 均 値 お よ び 標 準 誤 差 を4.0日 し た 相 対 値 で 示 し た 。***印 2 目 と4.25日 目の 平 目の 間 で 有 意 差 が あ る こ と を 示 す(P<0.001)。 45 Chanter 図2-3 着 床 期 胚 に お け る サ イ ク リ ンE RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 目(サ イ ク リ ンE1n=5、 用 い て 交 配 後3.5日 サ イ ク リ ンE2n=4)の の 平 均 値 お よ び 標 準 誤 差 を4.0日 (E1、E2)のRNA量 目(n=5)、4.0日 の変 化 目(n=14)、4.25日 胚 に お け るmRNA量 目 の 平 均 値 を1と 2 を求 め 、そ した 相 対 値 で 示 した 。 46 Chapter 図2-4 着 床 期 胚 に お け るCDK阻 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを p27はn=8)、4.25日 用 い て 交 配 後3.5日 日(p21はn=3、p27はn=2)の そ の 平 均 値 お よ び 標 準 誤 差 を4.0日 印 は 交 配 後3.5日 害 因 子(p21、p27)のRNA量 目 と4.25日 目(n=3)、4.0日 の変 化 目(p21はn=12、 胚 に お け るmRNA量 目 の 平 均 値 を1と 2 を求 め、 し た 相 対 値 で 示 し た 。** 目 の 間 で 有 意 差 が あ る こ と を 示 す(P<0.05)。 47 Chapter 図2-5 着 床 期 胚 に お け るサ イ ク リンCのRNA量 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 目(n=5)の 用 い て 交 配 後3.5日 胚 に お け るmRNA量 の 平 均 値 を1と 2 の変化 目(n=5)、4.0日 目(n=9)、4.25日 を 求 め 、 そ の 平 均 値 お よ び 標 準 誤 差 を4.0日 目 し た 相 対 値 で 示 した 。 48 Chapter 図2-6 mRNA量 交 配 後4.0日 目 胚 、 休 眠 胚 、 活 性 化 胚 に お け るG3PDHと 2 βア ク チ ン の の変 化 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 化 胚(n=10)のmRNA量 用 い て 交 配 後4.0日 目 胚(n=12)、 を 求 め 、 活 性 化 胚 の 値 を1と 休 眠 胚(n=6)、 活性 した 相 対 値 で 示 した 。 グ ラ フ は 平 均 値 ±標 準 誤 差 を 示 す 。 49 Chanter 図2-7交 D3)のmRNA量 配 後4.0日 2 目 胚 、休 眠 胚 、 活 性 化 胚 に お け る サ イ ク リ ンD(D1、D2、 の変化 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを サ イ ク リ ンD3はn=11)、 活 性 化 胚 の 値 を1と 用 い て 交 配 後4.0目 休 眠 胚(n=6)、 目 胚(サ イ ク リ ンD1、D2はn=12、 活 性 化 胚(n=10)のmRNA量 を求 め、 し た 相 対 値 で 示 し た 。 グ ラ フ は 平 均 値 ±標 準 誤 差 を 示 す 。 50 Chapter 図2-8 のmRNA量 交 配 後4.0日 2 目 胚 、 休 眠 胚 、 活 性 化 胚 に お け る サ イ ク リ ンE(E1、E2) の変化 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 化 胚(n=10)のmRNA量 用 い て 交 配 後4.0日 目 胚(n=12)、 を 求 め 、 活 性 化 胚 の 値 を1と 休 眠 胚(n=6)、 活性 した 相 対 値 で 示 した 。 グ ラ フ は 、 平 均 値 ±標 準 誤 差 を 示 す 。 51 Chanter 図2-9 交 配 後4.0日 p27)のmRNA量 目 胚 、 休 眠 胚 、 活 性 化 胚 に お け るCDK阻 害 因 子(p21、 の 変化 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 眠 胚(p21はn=8、p27はn=4)、 胚 の 値 を1と 2 用 い て 交 配 後4.0日 目 胚(p21はn=12、p27はn=8)、 活 性 化 胚(n=10)のmRNA量 休 を求 め 、活 性 化 し た 相 対 値 で 示 し た 。 グ ラ フ は 、 平 均 値 ±標 準 誤 差 を 示 す 。 52 Chapter 図2-10 交 配 後4.0日 2 目 胚 、休 眠 胚 、 活 性 化 胚 に お け る サ イ ク リ ンCのmRNA 量の変化 RT-リ ア ル タ イ ムPCRを 胚(n=9)のmRNA量 用 い て 交 配 後4.0日 目 胚(n=8)、 を 求 め 、 活 性 化 胚 の 値 を1と 休 眠 胚(n=4)、 活性 化 した 相 対 値 で 示 し た。 グ ラ フは 、 平均値 士標 準 誤 差 を示 す。 53 Chapter A 着床 期 以前:外 因性 シグナル 非依存 的 B 着 床期 以降:外 因性 シグナル依 存 的 2 図2-11 54 Chanter 図2-11 (A)着 着床 前 後 期 の 胚 にお け るG1期 2 の 細 胞周 期 制御 機 構 の変 化 床 期 以前 の初 期 胚 は、外 因性 シ グ ナ ル 非依 存 的 な細 胞 周 期 を持 ち、内在 的 に プ ログ ラ ム化 され た 遺 伝 子発 現 に制 御 され た、迅 速 な細 胞 増殖 を進 行 す る。 この 時期 の細 胞 は転 写 抑 制 因 子 で あ るpRBを ンD-pRb非 持 たず 、転 写 因 子E2Fは サイ ク リ 依存 的 に遺 伝 子 の転 写 を活性 化 す る。 この結 果 、 細 胞 はG1期 とん ど持 た ない 、M期 とS期 をほ の繰 り返 しか らな る細 胞 周 期 を進 行 す る。(B)胚 盤 胞 期 後 期 の 着 床 期 胚 に な る と、 体 細 胞 型 す な わ ち外 因性 シ グナ ル 依 存 的 な細 胞 周 期 制 御 機 構 を 獲得 す る。 す な わ ちま ずpRBの はE2Fの 発 現 が 開始 され るが 、pRB 転 写 活性 化 機 能 を抑制 す る こ とか ら、pRBの の発 現 が必 要 とな る。卵 巣 由来 のE2は リンDはpRBを サ イ ク リンDの 機 能 抑 制 にサ イ ク リンD 発 現 を上 昇 させ 、サ イ ク リン酸 化 す る こ とで す る こ とで 、E2Fか の結 果 、E2Fの 転 写活 性 が機 能 し、サ イ ク リンEな 周 期 調 節 因 子 の発 現 が 上 昇 して 、細 胞 周 期 がG1期 らpRBを どのS期 除 去 す る。 こ 開始 に必 要 な細胞 か らS期 へ と進 行 す る。 こ う して 着 床 後 の 胚 にお け る細胞 増 殖 が促 進 され る。 卵 巣 由来 のE2の 刺激が遮断 さ れ た 場 合 、胚 で はサ イ ク リンDの 発 現 が 低 下 し、そ の 結果pRBが 不 活化 され ず E2Fへ 転 写 活性 を抑制 す る。 このた めサ イ ク リンE の 結合 を維 持 して 、E2Fの な ど下 流 の遺 伝 子 の発 現 も低 下 し、細 胞 周 期 がG1期 現 は 上 昇 し、 サイ ク リンEの をG1/G0期 で停 滞 す る。一 方p21の 機 能 を抑 制 す る と共 に 、DNA複 発 製 を阻 害 し、細 胞 に安 定 的 に維 持 す る。E2投 与 に よる休 眠 状 態 か らの活 性 化 時 には 、 サ イ ク リンDの 発 現 が 上 昇す る こ とで 下流 の サイ ク リンEの 期 か ら細胞 周 期 を 回復 した場 合 のDNA複 発 現 も上昇 し、G0 製 の ライセ ン ス化 を 引 き起 こす 。 55