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男女の化粧意識・行動の違いとアンチエイジング意識との関係
日心第70回大会(2006) 男女の化粧意識・行動の違いとアンチエイジング意識との関係 ○ 平尾直靖 1 ・矢作美佳奈 2(非会員)・八木昭宏 2 ( (株)資生堂 ビューティーソリューション開発センター*・2 関西学院大学文学部**) Key words: 化粧・アンチエイジング意識 1 はじめに 異性から好かれるため、外見を整えることは、女性のみならず 男性にとっても有効な手段である。しかし、化粧という手段につい ては、一般に男女の意識・行動には大きな差がある。例えば、大 多数の女性はメークアップをするが、大多数の男性はメークアッ プをしない。 本研究では、男女の化粧意識・行動の違いと、アンチエイジン グ意識、つまり「若さに価値を認め、若さを保つための努力を肯定 する意識」の違いとの関連について検討した。 ①化粧はアンチエイジングの道具である、②男性にはアンチエ イジングの必要がない、③だから女性と違い男性は化粧をしない、 という一般的な意識が、化粧行動の男女差の背景にあると仮定し、 アンチエイジング意識の違いが、化粧行動の男女差の要因と考 えられるか否か考察するため、質問紙調査を実施した。 方法 【調査日時・場所・被調査者】 本調査は 2005/10/26~11/18 に、関西学院大学生・神戸女学院 大学生の男女 300 名を対象に実施した。200 名より調査用紙を回 収し、欠損のなかった 195 名(女性 104 名、男性 91 名)のデータ を解析対象とした。平均年齢は 20.2 歳、範囲は 19-32 歳だった。 【調査手続き】 調査用紙は、大学の授業の場を利用し、趣旨を説明した上で 配布し、翌週以降に同様に回収した。 【調査用紙】 「ファンデーション」「口紅」「アイシャドー」「マスカラ」「化粧水」 「乳液」「美容液」「クリーム」「パック/マスク」「ヘアスタイリング剤」 「育毛剤」の 11 アイテム別に、「化粧品に関する知識」「使用頻度」 「興味」「異性への使用の希望」の 4 項目の質問には度合いを示 す 4 件法で、「所持数」については個数で、回答を求めた。 アンチエイジング意識については、「年をとって体型が崩れる のは嫌だ」「年相応の見た目でありたい」など、独自に作成した 16 項目について、度合いを示す 4 件法で回答を求めた。 なお、調査用紙には Rosenberg の自尊感情尺度を含めたほか、 年齢、家族構成、1 ヶ月あたりの化粧品・洋服代の金額の概算、1 年以内に購入した最も高価な化粧品単価の質問も含めた。 「化粧品に関する知識」「使用頻度」「興味」「異性への使用の 希望」に関する 4 項目×11 アイテムの質問への回答および、アン チエイジング意識に関する 16 項目の質問への回答については、 4 件法の回答に 0-3 点を割り当てて以下の解析を行った。 結果・考察 まず、アンチエイジング意識の男女差を検討した。逆転項目を 考慮し、16 項目の得点の平均値を算出し、独立 2 標本の t 検定を 行った結果、男女間の有意差が認められた(t(193)=9.7, p<.01)。 次に、アンチエイジング意識が、化粧意識・行動に及ぼす影響 について検討した。アンチエイジング意識に関する 16 項目の平 均値と、化粧意識・行動に関する 4 項目それぞれとの相関係数を 算出した。相関分析を行うにあたっては、同性内、個人間の値の ばらつきを考慮し、男性は「スタイリング剤」、女性では「口紅」「美 容液」についての回答のみを対象に分析した。その結果、男性の 「スタイリング剤」についての化粧意識・行動と、アンチエイジング 意識との関連については、「化粧品に関する知識」「興味」におい て有意な相関が認められた。女性の「口紅」では「使用頻度」「興 味」で、「美容液」では「化粧品に関する知識」「興味」について同 様に有意な相関が認められた。(Table 1) さらに、男性のアンチエイジング意識と、女性に期待する 化粧品使用の度合いとの関係を検討するため、アンチエイジ ング意識の 16 項目の平均値と、 化粧品 11 アイテムごとの「異 性への使用の希望」の度合いとの相関分析を行った。その結 果、 「アイシャドー」を除く 10 のアイテムについて有意な相 関が認められた。同様の分析を女性の回答についても実施し たが、 女性の年齢意識と男性への化粧品の使用希望の間には、 「育毛剤」と「ヘアスタイリング剤」で若干の相関が見られ た以外、有意な相関は見られなかった。(Table 2) 以上の結果より、アンチエイジング意識が、化粧意識・行動に 影響している可能性が示された。もちろん、本調査の結果のみか ら、アンチエイジング意識の男女差が、化粧行動の男女差を生じ る決定因とは言い切れないが、化粧意識・行動に影響する要因 の一つとしての関与は示唆されたと考える。 Table 1. アンチエイジング意識と化粧意識・行動との対応 被調査者 アイテム 知識 使用頻度 所有数 興味 知識 使用頻度 所有数 興味 男性(n=91) ヘアスタイリング剤 r 0.34 0.18 0.09 0.32 女性(n=104) 口紅 p p<.01 p<.10 n.s. p<.01 r 0.09 0.29 0.07 0.25 女性(n=104) 美容液 p n.s. p<.01 n.s. p<.01 r 0.20 0.16 0.13 0.26 p p<.05 n.s. n.s. p<.01 : 使用する目的・形状・選び方・使用方法などを知っていますか? : 普段どのくらい使用していますか? : いくつ持っていますか? : どのくらい興味がありますか? Table 2. アンチエイジング意識と異性に期待する化粧行動との対応 アイテム ファンデーション 口紅 アイシャドー マスカラ 化粧水 乳液 美容液 クリーム パック/マスク ヘアスタイリング 育毛剤 男性(n=91) r 0.43 0.37 0.20 0.25 0.38 0.47 0.43 0.40 0.42 0.30 0.25 p p<.01 p<.01 p<.10 p<.05 p<.01 p<.01 p<.01 p<.01 p<.01 p<.01 p<.05 女性(n=104) r p -0.04 -0.07 -0.01 0.03 0.16 0.13 0.08 0.10 -0.07 0.18 0.23 n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. n.s. p<.10 p<.05 異性への使用の希望: 異性の友人に使用してほしいと思いますか? (HIRAO Naoyasu, YAHAGI Mikana, YAGI Akihiro)