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1
背景
(1)生物多様性の危機
地球には、未知のものも含めると 3,000 万種ともいわれる多様な生きものが存在
しています。これらの生きものどうしが複雑につながりあい、そのつながりによっ
て私たちが現在生活している地球の環境が支えられています。これが生物多様性で
あり、生物多様性条約には「生態系の多様性」、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」
の三つのレベルがあるとしています。
私たち人間も生きものの一員であり、他の生きものとのつながりの中で生きてい
ます。私たちは、呼吸している酸素から食料や木材、植物の成分を利用した医薬品
に至るまで、様々な自然の恵みを利用しており、生物多様性は人間活動を継続して
いくうえで必要不可欠な存在となっています。
一方で、近年の急速な人口増加に伴う多種多様な人間活動により、生物多様性は
世界各地で様々な危機に瀕しています。動植物など 4 万 7,677 万種のうち 36%に
あたる 1 万 7,291 種が絶滅のおそれがあり、生きものの絶滅速度はこの数百年で約
1,000 倍に加速して、1年に 4 万種、1 日に 100 種ずつが失われていると言われて
います。その主な原因として次の「4 つの危機」が指摘されています。
○第一の危機(人間による開発や乱獲による危機)
人間が工場や団地などを造成するために開発することによる生物多様性への影
響や、動植物の乱獲、盗掘等による動植物の生息・生育環境の悪化です。
世界の森林は、2000~2005 年の間では、1 年間で約 1,300 万 ha の森林が失われ、
また、世界の水産資源の 27%は過剰漁獲・枯渇の状況にあると言われています。
○第二の危機(人間活動の縮小による危機)
かつては、人の手による適度なかく乱があった里地、里山が、農村の生活様式の
変化により人手が入らなくなり、生態系の多様性が損なわれたことにより、多種多
様な動植物の生存が次第に失われてきています。
○第三の危機(移入種や化学物質による危機)
人の手により海外等から持ち込まれた移入種により、固有の生物種の生存が脅か
されています。また、化学物質による生態系の影響も懸念されています。
○第四の危機(地球温暖化の影響)
過去 100 年間に世界の平均気温は 0.74℃上昇しており、最近 50 年間の平均気温
の上昇傾向は、過去 100 年のほぼ 2 倍の速度となっています。このため、動植物の
生息・生育域の移動速度に比べ、地球温暖化が早いことなどが生物多様性に重大な
影響を及ぼしています。
1
(2)COP10 における愛知目標の採択
1992 年(平成 4 年)6 月にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連地球
開発会議において「生物多様性条約」が採択されました。この条約の目的は①生物
多様性の保全、②生物多様性の持続可能な利用、③遺伝子資源の利用から生ずる利
益の公正で均衡な配分で、2 年毎に生物多様性条約締約国会議が開催されています。
その生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)が、愛知県の名古屋市におい
て、平成 22 年 10 月 18 日から 29 日まで開催され、
「新戦略計画・愛知目標」や遺
伝資源の利用から生じる利益の公正・衡平な配分のための国際的な枠組みである
「名古屋議定書」など、合計で 47 の決定が採択されました。
「新戦略計画・愛知目標」は、2011 年以降の生物多様性保全に関する国際目標
で、2050 年までに「自然と共生する社会を実現する」という長期目標、2020 年ま
でに「生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急な行動を実施する」とした
短期目標
20 の個別目標が定められました。
20 の個別目標の中には、目標 1「人々が生物多様性の価値を認識する」、目標 2
「生物多様性の価値を国家会計や報告制度に組み込む」、目標 6「水産資源を持続
的に漁獲する」、目標 7「農業・林業を持続的に管理する」などが掲げられていま
す。
(3)生物多様性に対する愛知県の取組状況
愛知県は、温暖な気候のもと、山地、平地、湿地、海岸、河川及び湖沼など変化
に富んだ生態系を有しており、植物約 2,720 種(国内確認種の 31%)、動物約 9,200
種(国内確認種の 25%)が確認されるなど、多種多様な野生動植物が生息・生育
しています。
また、愛知県は自動車の製造など全国有数の工業県でもあり、今後も産業活動に
よる生物多様性への影響が予想されます。こうしたことから、生物多様性の保全と
持続可能な利用の両立を図り、COP10 開催地にふさわしい生物多様性に配慮した
地域づくりを進めるため、
「あいち自然環境保全戦略」を平成 21 年 3 月に策定して
います。
この戦略では、「恵み豊かな生物多様性を育む地域づくりを通して、人と自然と
の共生を実現する」ことを目標(目標期間:2025 年(平成 37 年))に掲げ、生態
系ネットワークの形成や生物多様性に対する県民意識の醸成などの取組を、県民、
企業、NPO 等の民間団体、行政など多様な主体により展開していくこととしてい
ます。
(4)グリーン購入におけるエコラベル商品普及の必要性
平成 12 年 5 月に「循環型社会形成推進基本法」が成立し、これを具体化するた
2
め方策の一つとして、
「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以下、
「グリーン購入法」という。)が制定され、平成 13 年 4 月から施行されました。
グリーン購入とは、製品やサービスを購入する際に、まず必要なものかどうかの
購入の必要性をよく考え、購入する場合には環境に配慮して環境への負荷ができる
だけ小さいものを選んで購入することです。これにより、消費生活など購入者自身
の活動を環境にやさしいものにするだけでなく、供給側の企業にも環境負荷の少な
い製品の開発を促すことで、経済活動全体を環境にやさしいものに変えていくこと
を目指しています。
このグリーン購入を推進していくためには、製品やサービスがどのような点で環
境に配慮されているかを消費者に適切に伝え、理解してもらう必要があります。そ
のために必要となるのが環境ラベルです。
環境ラベル(以下、
「エコラベル」という。)とは、製品の原料採取から製造、流
通、使用、リサイクル・廃棄の段階において、環境に配慮されている点や環境保全
効果等の特徴を、マークを用い商品に表示したものです。
エコラベルには、日ごろよく目にするエコマーク(日本環境協会)から家電に付
けられる省エネ性能の「☆印マーク」(経済産業省)など、多種多様なものがあり
ますが、こうしたラベルの中に木材製品や紙、水産物、農産物が生物多様性の保全
に配慮してつくられたことを示すエコラベルもみられるようになりました。この生
物多様性に配慮されたエコラベルは一般的にはまだ広く認知されていませんが、こ
うしたエコラベルが付いた商品を消費者が選択することは、COP10 で採択された
「愛知目標」に掲げられている「水産資源の持続的な漁獲」や「農業・林業の持続
可能な管理」の目標の達成に向けて、県民が日常生活の中で比較的簡単に取り組め
ることです。
今後、グリーン購入の一環としてエコラベル商品を推進していく中で、特に生物
多様性に配慮したエコラベル認証商品を普及していくことが重要です。
3
2
生物多様性に配慮したエコラベルの普及状況
(1)エコラベルの種類
エコラベルとは、環境に配慮した製品やサービスに付けられるマークやラベル
の総称であり、製品やその包装などに表示して、消費者への製品の購入を促す目
的があります。エコラベルには、ISO(国際標準化機構)が規定する次の 3 つの
タイプがあります。
①特定の基準を満たす製品を第三者認証機構が認証する「タイプⅠ」
②企業の自己宣言などによる「タイプⅡ」
③LCA(ライフサイクルアセスメント)に基づく環境負荷の定量データを示
す「タイプⅢ」
このうち、タイプⅠは、日本環境協会が運営する「エコマーク」のみとなって
います。
エコラベルには、それぞれのラベルに、それぞれ異なる基準がありますが、そ
の中で、現在、日本で流通している生物多様性に配慮されて生産された商品に付
けられているエコラベルしては、次表のような種類があります。一方、これらの
ラベルは、第三者認証を行われていますが、考慮されている環境側面が単一であ
ったり、ライフサイクルを考慮していないなど ISO タイプⅠの要件を満たして
いないため、上記の ISO の 3 タイプに該当していません。COP10 が、愛知県の
名古屋市で開催されたことを契機とし、生物多様性の重要性に対する認識が県民
の間に高まり、広く浸透しつつあります。
4
表
生物多様性に配慮されたエコラベルの概要
エコラベル
概
要
このラベルは、1993 年に環境・経済・社会に関わる世界の団体・
企業等が集まり設立された森林管理協会が、環境や地域社会に配慮
して、管理・伐採が行われている森林から生産された木材・木材製
森林管理協議会
品であることを認証するマークです。
各国の独立した森林認証制度を相互に承認することを目的に、
1999 年に設立された団体が、持続可能な森林管理のために国際的
に合意された要求事項に基づいて定められた各国認証制度を相互
PEFC 森林認証プ 認証するマークです。
ログラム
日本の多様な森林環境に配慮した基準による認証制度を設立す
るため、林業団体、NGO 等により 2003 年に設立され、認証基準
に基づき審査され、認証された丸太、木材製品等に付けられるマー
『緑の循環』認証 クです。
会議
減少傾向にある世界の水産資源の回復を目指して、1997 年にイ
ギリスに設立された団体の基準に則り、持続可能で環境に配慮して
いるとして認証された漁業で獲られた水産物に付けられるマーク
海洋管理協議会
です。
日本における水産資源の持続的利用や生態系の保全を図るため、
2007 年に設立され、(社)大日本水産会に事務局を置き、FAO ガ
イドラインに従い、ISO の原則により認定された第三者認証機関が
マリン・エコラベ 審査を行い、認証された漁業で獲られた水産物に付けられるマーク
ル・ジャパン
です。
公平な取引(貿易)、労働条件や生産地の環境保全を目的に、 不安
定な市場価格に対して、持続可能な生産と生活に必要な価格(フェ
アトレード最低価格)とプレミアム(奨励金)、長期で安定した取
国際フェアトレ
引などを保証する製品を認証するマークです。
ードラベル機構
生物多様性の保護と人々の持続可能な生活を目的に、生態系、野
生生物、土壌、水資源等の保護、農薬や廃棄物の管理、労働者や地
域住民の生活向上などの基準を満たす農園を認証するマークです。
レインフォレス
ト・アライアンス
5
(2)各エコラベル認証団体
1)FSC:森林管理協議会
①設置の経緯
WWF(世界自然保護基金)、木材関連企業、先住民団体などによって 1993 年
に設立され、国際本部はドイツのボンに置かれています。また、非営利の国際会
員制組織となっており、環境、社会、経済の 3 つの部会から構成されます。
日本においては、2007 年 9 月に FSC から正式に認められたナショナル・オフ
ィスである FSC ジャパンが設立されました。
②認証基準
森林管理を対象とした認証で、森林管理が環境的に適切で、社会利益にかない、
経済的にも持続可能であること、つまり森林が適切に管理されていることを、10
の原則と 56 の基準に基づき、第三者審査機関が認証します。環境、社会、経済
に関する 10 の原則は、次表のとおりです。
最近では、国や地域の状況にある程度適用させた国別基準や小規模経営者向け
の審査手順など、多様な森林や所有者をカバーできる仕組みが発展し、認証の効
率化がすすんでいます。
表
環境
10 の原則
社会
経済
原則 6:多くの生物がすむ 原則 1:すべての法律や国際 原則 5:豊かな収穫があり、
地域からも愛され利用さ
的な取り決め、及びFSC
豊かな森である。
れる森である。
原則を守っている。
原則 9:貴重な自然の森を
原則 2:森林を所有するある 原則 7:調査された基礎デー
守っている。
タに基づき、森林管理が計
いは利用する権利が明確
原則 10:人工林の形成が自
画的に実行されている。
になっている。
然の森に影響を及ぼして
原則 3:先住民の伝統的な権 原則 8:適切な森林管理を行
いない。
っているかどうか定期的
利を尊重している。
にチェックしている。
原則 4:地域社会や労働者と
良好な関係にある。
上記の原則・基準によりFM認証(森林管理認証=Forest Management)を受
けた森林からの木材、チップが、森林から生産・加工・流通過程を経て最終消費者
の手元に届くまでのすべての段階で、FSC 認証材料が使われていることを証明する
必要があります。森林から加工・流通工程での管理状況を第三者機関によって認証
するのが、CoC 認証(加工流通過程の管理認証=Chain of Custody)です。
6
③普及状況
2011 年 4 月時点で、世界 81 カ国、1,026 カ所、認証面積 1 億 4,097 万 9357
ヘクタールの森林が認証を受けています。また、日本では、33 カ所、認証面積
37 万 4,979 ヘクタールの森林が認証を受けています。
商品の例
丸太、製材、集成材、床材、家具、コピー用紙、鉛筆、割り箸、印刷物、ノー
ト、付箋、包装紙
2)PEFC:森林認証プログラム
①設置の経緯
1999 年に欧州を中心とした 11 カ国の森林認証制度を相互に認証し合うための枠
組みとして PEFC(汎ヨーロッパ森林認証制度)が設立され、その後、ヨーロッパ
圏以外の諸国からの多数の参加をみて PEFC 森林認証プログラムに変更されまし
た。本部である PEFC 評議会は、スイスのジュネーブにあります。
日本では、NPO 法人 PEFC アジアプロモーションズが、2004 年 9 月に設立さ
れています。
②認証基準
PEFC が根拠とする持続可能な森林管理とは、欧州森林保護閣僚会議(MCPFE)
が 1993 年に策定・合意し、その後、国連食糧農業機構(FAO)が採択した定義、政
府間プロセス基準をベースにしています。
7
環境上
・生物多様性
社会上
経済上
・地元住民への就労機会
・健康と安全
・価値ある生息地の保護 ・人権と労働権利の尊重
・ビジネスとしての実効性
・水質と土壌の保護
・森林の多元的使用
・森林所有者の収入
・伐採後の再生
・レクリエーション上の価 ・当該地域の住民の収入源
値
認証には、林業関係者のための「森林管理認証(FM)」と、加工・流通業者のため
の「生産物認証(CoC)」があり、製品の由来を森林から最終商品までに至るすべて
の段階をトレースされています。
また、PEFC の大きな特徴の一つは、個別の森林の認証の手続きは各国の認証制
度の下に行われ、PEFC はこの認証制度自体を承認するという、間接的な認証スタ
イルを採用している点です。このため、自国に森林認証制度が存在しない国や
PEFC に未加盟である場合には、その国に PEFC 認証森林が存在しないことなり、
森林管理のインフラが整っている国や地域が PEFC 認証の中心となっています。
PEFC 評議会への加盟は 36 カ国であり、そのうち PEFC 相互承認済みは 30 カ
国となっています(2011 年 7 月)。
各国の森林認証制度が PEFC 評議会の相互承認を受けるためには、300 を超える
様々な要素を含むチェック項目に基づき公開入札で選ばれた専門家が審査をしま
す。
③普及状況
2011 年 7 月現在、PEFC 評議会への加盟は 36 カ国(PEFC 相互認証済み
30
カ国、その他の PEFC 参加 6 カ国)となっており、全世界の認証林面積は、2 億
3,200 万ヘクタールとなっています。
また、日本独自の森林認証制度「SGEC」は、PEFC 評議会に加盟していないた
め、日本における PEFC の普及は、現状では輸入林産品の CoC 認証に限られてい
ます。
商品の例
丸太、製材、集成材、床材、家具、コピー用紙、鉛筆、割り箸、印刷物、ノー
ト、付箋、包装紙
3)SGEC:『緑の循環』認証会議
①設置の経緯
FSC の日本進出が刺激となり、植林された針葉樹林が多いという日本の特性に相
8
応しい認証を立ち上げようとする機運が林業・林産業の中に高まりました。日本で
は、「森林計画制度」や「保安林制度」が法制化されており、独自の日本型森林計
画制度を確立するため、日本国内の各種 NGO、市民団体などが加わり、平成 15
年 6 月に『緑の循環』認証会議(SGEC)が創設されました。
日本の森林の大部分は人工林であることから、この人工林の持続的管理に焦点を
置いています。
②認証基準
持続的な森林管理のための認証基準は、7 基準 35 指標からなっており、生物多
様性など森林の環境機能の維持及び森林の水土保全など多面的機能の増進を図る
こととしています。森林施業計画制度の趣旨を活かして認証業務を簡素化し、日本
の林業の実情にも合ったコストと手続きで認証が可能となっています。
また、認証取得の対象となる森林・経営形態は、規模の大小や組織の種類によら
ず、多様な森林事情に対応でき、市民参加型のボランティア活動や里山保全も認証
を取得することができます。
基準 1
認証対象森林の明示及びその管理方法の確定
基準 2
生物多様性の保全
基準 3
土壌及び水資源の保持と維持
基準 4
森林生態系の生産力及び健全性の維持
基準 5
持続的森林経営のための法的、制度的枠組み
基準 6
社会・経済的便益の維持及び増進
基準 7
モニタリングと情報公開
認証林産物を取り扱う加工、流通、販売、設計・建築に至る最終商品となる段階
までの業種を対象として、製造・加工、流通の各工程で認証林産物が他の林産物と
混在しないように分別・表示管理をする認定事業体(CoC 認証)があります。
SGEC は、国産材に特化した制度であることが、FSC 及び PEFC との違いです。
③普及状況
平成 23 年 4 月現在で、国内の認証森林面積は 116 件、86 万ヘクタールとなって
います。
商品の例
丸太、製材、集成材、床材
9
4)MSC(海洋管理協議会)
①設置の経緯
MSC(海洋管理協議会)は、1997 年(平成 9 年)に WWF(世界自然保護基金)
と世界最大級の消費財メーカーのユニリーバにより設立され、1999 年(平成 11 年)
に独立した組織となりました。本部は、イギリスのロンドンにあります。
世界の水産資源の 52%は、ほぼ満限(最大持続生産レベル)まで漁獲されてお
り、27%は過剰漁獲あるいは枯渇の状況にあるとされています(国連食糧農業機関
(FAO
2008))。これは、従来の漁業管理の行き詰まりや違法・無報告・無規制
漁業の横行等、さまざまな要因が招いた結果であり、MSC では、認証制度とエコ
ラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業を認識・推奨し、消費者がそれ
ら漁業で獲られた水産物を選択することで、水産物市場を持続可能なものに転換し
ていく取り組みを行っています。
②認証基準
「MSC 漁業認証」は、国際連合食糧農業機関(FAO)の定める「責任ある漁業の
ための行動規範」等に則り策定した環境基準に基づき、対象となる魚種資源の持続
可能性、生態系への影響、漁業の管理システムについて、第三者機関によって審査
が行われ、審査に合格すれば認証(有効期間 5 年)となります。審査の対象となる
のは、天然魚を獲る海面・内水面漁業及び増殖漁業(MSC 指針に合致するものに
限る)となっており、養殖業は対象外となっています。
MSC 認証漁業で獲られた水産物が、消費者に届くまでの流通経路において他の
水産物と混じらないようにする仕組みとして、水産物の所有権を持つ加工、流通業
者を対象とした「MSC CoC 認証」
(有効期間 3 年)があります。製品に MSC エコ
ラベルを付けるためには、この「MSC CoC 認証」が必要となります。この CoC 認
証によって、MSC エコラベルの付いた製品は漁業者まで遡って製品履歴を追跡す
ることができます。
図
漁業者
漁業
認証コード
流通業者
食卓までの主な流れ
加工業者
小売店
消費者
加工の
CoC認証番号
卸の
CoC認証番号
③普及状況
世界では、136 の認証取得漁業、133 の認証中漁業があり(2011 年 11 月)、世
10
界の約 12%の食用向け天然漁獲漁業が認証制度に関与しています。また、MSC ラ
ベルの付いた製品数は急速に増えており、世界で 1 万品目を超えています。最近で
はヨーロッパのマクドナルドで販売されているフィレオフィッシュにも MSC エコ
ラベルが付けられています。
日本では、京都府機船底曳網漁業連合会のズワイガニ、アカガレイ漁や土佐鰹水
産グループの鰹一本釣り漁業が認証を取得しており、北海道のホタテガイ漁業が認
証取得に向け審査中です。MSC ラベル製品は、2006 年からイオン、西友、日本生
協連などで流通が始まり、現在では 50 を超える小売、百貨店で取り扱いがありま
す。
商品の例
さけ、たらこ、明太子、さば(以上、外国産)
、一本釣り藁焼き鰹たたき、あか
がれい(国内産)
5)MEL ジャパン
①設置の経緯
水産資源の持続的利用や生態系の保全を図るための資源管理活動を積極的に行
っている漁業者を支援しかつ、消費者をはじめとする関係者の水産資源の持続的利
用や海洋生態系保全活動への積極的参加を促進することを目的として 2007 年 12
月に発足し、事務局は社団法人
大日本水産会に置かれています。
②認証基準
国際連合食糧農業機関(FAO)の定めるエコラベルのガイドラインの考え方に沿っ
た制度であり、ISO の原則によりスキームオーナーである大日本水産会とは別個な
認定機関により認定された公益的立場から第三者認証機関が審査を行っています。
生産段階認証基準として、確立された管理制度の下で漁業が行われていること、対
象資源が持続的に利用される水準を維持していること及び生態系の保全に適切な
措置がとられていることが定められています。
流通加工段階の認証基準は、責任者の設置などの管理体制の整備や対象水産物以
外の水産物の混入や混在が生じないことの確保が定められています。
③普及状況
日本海かにかご漁業協会、愛知県しらす・いかなご船びき網連合会をはじめとし
て、13 漁業が認証されています。MEL 認証された魚介類を生産量でみると 14 万
トン余と日本の総生産量の 3%程度が認証された段階です。
MELラベル製品は、愛知県産のこうなごをはじめとして、生協やデパートなど
で販売され始めています。
11
商品の例(国内産のみ)
こうなご、大和しじみ、さくらえび、かつお
6)フェアトレード・ラベル・ジャパン
①設置の経緯
1997 年、当時各国独自に行われていたラベルの取り組みが、日本を含む 14 のラ
ベル推進機関による組織「国際フェアトレードラベル機構
Fairtrade Labelling
Organizations (FLO) International」に統一されました。その後、2002 年に
は、世界統一の国際フェアトレード認証ラベルが完成し、各国で順次、新ラベルへ
切り替えられてきました。
日本では、新ラベルの導入と組織の NPO 法人化にともない、2004 年 2 月、団体
名を現在の「フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)」に変更しています。
フェアトレードは、不利な立場に追いやられた生産者や労働者により良い取引の
機会を提供し、とりわけ開発途上国の生産者・労働者の権利を保護することを目指
しています。これにより、国際的な貿易制度と企業活動がより公正なものになり、
フェアトレードは持続的な発展にも貢献します。
②認証基準
フェアトレード認証と監査は、FLO の認証会社である FLO-CERT が統括して
行っています。
また、国際フェアトレード基準は、FLO 基準委員会により定められており、開
発途上国の小規模生産者組合・農園やトレーダーがフェアトレード認証を受けるた
めには、次表の「経済的基準」
、
「社会的基準」、
「環境的基準」を遵守しなければな
りません。
国際フェアトレード基準の原則
経済開発面
社会開発面
環境開発面
・フェアトレード最低価格の
保証
・フェアトレード・プレミア
ムの支払
・長期的な安定した取引
・前払い
・安全な労働環境
・民主的な運営
・労働者の人権
・地域の社会開発プロジェクト
・児童労働、強制労働の禁止
・農薬、薬品の使用に関す
る規定
・土壌、水源の保全
・生物多様性の保全
・有機栽培の奨励
・遺伝子組み換え作物
(GMO)の禁止
また、フェアトレード認証は、小規模生産者の社会的・経済的自立を目的に原料
(商品)のフェアトレード最低価格を保証しており、コーヒーでは次図のとおり、
市場価格がどんなに下がってもフェアトレード最低価格以上の支払いが義務付け
られています。それとは別に、生産者組織が地域や組織の発展のために民主的に運
12
用するフェアトレード・プレミアムに支払いも義務付けられています。
図
国際マーケットとフェアトレード価格の比較
アラビカコーヒー(1989~2010)
市場価格がどんなに下がっても
最低価格を保証する
③普及状況
フェアトレード認証生産者数は、世界 63 カ国で、905 組合・農園(2010 年)と
なっており、そのうち約 75%は小規模生産者組合となっています。また、生産者・
労働者数は 120 万人以上(家族を含めて推定 600 万人)となっています。
フェアトレード認証製品の世界の推定市場規模は、約 5,080 億円(2010 年)と
なっており、日本国内の推定市場規模は、約 16.7 億円(2010 年)となっています。
商品の例
コーヒー(トップバリュ、スターバックス、ゼンショー、小川珈琲店、KAL
DI)、紅茶(無印良品)、ブラックペッパー等スパイス類(S&B)
、チョコレ
ート(トップバリュ、キャドバリー)、衣類(千趣会)
7)レインフォレスト・アライアンス
①設置の経緯
アメリカのニューヨークに本部を置く世界的に活動する団体で、地球環境保全の
ために熱帯雨林を維持することを目的に、1987 年に設置された国際的な非営利環
境保護団体です。
土地の利用法、商取引の方法、消費者の行動を変えることにより、生物多様性を
維持し、人々の持続可能な生活を確保することを使命として、設立以降 20 年以上
にわたる活動で、70 カ国以上の国々で 64 万 ha の森林が FSC 認証を取得し、69
万 ha の小規模家族経営農園、組合、プランテーションがレインフォレスト・アラ
イアンス認証を取得しています。
②認証基準
認証については、第三者による認証プログラムを利用しており、環境保護や地域
13
開発を支援する主要な国際団体が共同で設立したサステナブル・アグリカルチャ
ー・ネットワーク(SAN)の約 100 項目(野生生物の保護、生態系の保護、土壌
の保護、水資源の保護、殺虫剤、廃棄物の一貫した管理、労働者に対する公正な待
遇とよりよい労働条件など)に上る社会・環境・経済面の基準に基づいて、農園の
認証を行っています。また、林業に関する認証は、FSC(森林管理協議会)の基準
を採用しています。
農園は認証後も基準を遵守しなければならず、年に1回以上の査察が行われてい
ます。
③普及状況
農業については、31 カ国で約 97 万 ha の農園が認証されており、世界全体の認
証農園生産物の市場占有率は、コーヒーは 2.5%、紅茶は 6.6%、バナナは 15%と
なっています。
また、日本市場では 1988 年に初めて認証農園商品が発売されたのを皮切りに、
2003 年にはコーヒーを、2009 年からは紅茶が販売されました。現在、レインフォ
レスト・アライアンス認証製品を扱う店舗は1万軒以上(コンビニエンスストア、
喫茶店、自動販売機を含む)となっています。
商品の例
コーヒー(UCC上島珈琲、honu 加藤珈琲、モスバーガー、サブウェイ、キー
コーヒー、新幹線の車内販売、JAL 機内サービス、森永乳業、ファミリーマー
ト)、紅茶(リプトン、ポッカ)、バナナ・パイナップル(ユニフルーティージ
ャパン)
トピックス
なぜ、レインフォレストのマークがカエルなのか?
このマークのカエルは、南米の熱帯雨林や二次林に生息するアカメアマガエ
ルです。レインフォレスト・アライアンスの認証マークにアカメアマガエルが
選ばれたのは、彼らが皮膚から様々な物質を吸収するため、最も環境の変化に
敏感で、環境変化の目印ともいえる動物だからです。カエルの存在によって、
生態系の状態、切迫した脆弱性を知ることができるのです。
14
3
愛知県の取組
(1)愛知県庁の環境保全のための行動計画(あいちエコスタンダード)
愛知県では、県庁の事務・事業全般にわたり、その環境負荷を継続的に低減する
ため「愛知県庁の環境保全のための行動計画(あいちエコスタンダード)
(平成 10
年 3 月策定、平成 22 年 12 月改訂)」を定めています。
その概要は次表のとおりです。COP10 を契機として生物多様性の保全に配慮し
た物品の購入を促進するため、平成 23 年度からは「紙類」、「文具類」、「オフィス
家具等」のうち原料に木材を含むものについて、FSC 等の森林認証材やあいち認証
材等の間伐材を利用した物品を 5 年間で全体の 1%調達するチャレンジ目標を設定
しています。
表
あいちエコスタンダード(平成 22 年 12 月改訂)の概要
「第3次愛知県環境基本計画(平成 20 年 3 月策定)」において、本
県が担うべき役割として掲げた「事業者・消費者としての立場から、
目
的
事務・事業全般にわたる環境負荷の継続的低減活動の実施」に取り
組むため策定。
地球温暖化対策の推進に関する法律に規定する「地方公共団体実行
計画」の事務事業編としても位置づけ。
計画期間
取組機関
平成 22 年度から平成 26 年度までの 5 年間
知事部局、企業庁、病院事業庁、議会事務局、各種行政委員会事
務局、教育委員会、警察本部の地方機関を含む全ての機関を対象
エネルギー消費量、公用車燃料使用量、水道使用量、用紙購入量、
取組項目
廃棄物の排出量、温室効果ガス排出量、生物多様性の保全に配慮し
た物品の購入(チャレンジ目標)
また、愛知県では、物品を調達する際、環境負荷の少ない製品を選択するため、
「愛知県環境物品等調達方針(取組機関は、あいちエコスタンダードと同じ)」
を毎年度作成しています。
この「愛知県環境物品等調達方針」の中で、個別の品目(平成 23 年度は 265 品
目)ごとの判断の基準を示しています。生物多様性の保全に配慮した物品の購入
(チャレンジ目標)の基準は、FSC(森林管理協議会)、PEFC(森林認証プロ
グラム)及び SGEC(『緑の循環』認証会議)による認証材、あいち認証材(愛
知県産材認証機構)又は間伐材(間伐材マーク(全国森林組合連合会)が付され
15
たもの)が使用された物品をであることを調達方針としています。
(2)東海三県一市グリーン購入キャンペーン
愛知県では、グリーン購入の普及と定着を図り、身近な消費行動を通して持続的
発展が可能な社会経済システムの構築を目指すため、関係行政機関・団体・事業者
と協働して東海三県一市グリーン購入キャンペーンを平成 14 年度から実施してい
ます。
このキャンペーンの概要は、次表のとおりです。キャンペーンの対象商品は、詰
め替え商品、エコマーク、再生紙使用マーク、バイオマスマークが表示された商品
を対象にしていましたが、平成 22 年度には、生物多様性に配慮されたラベルとし
て新たに FSC 及び MSC のラベルが表示された商品を追加しでいます。
表
東海三県一市グリーン購入キャンペーンの概要
東海三県一市グリーン購入キャンペーン実行委員会(岐阜県、愛知
主
催
県、三重県、名古屋市、日本チェーンストア協会中部支部、グリー
ン購入ネットワーク、(財)日本環境協会エコマーク事務局)
実施時期
毎年度、1月中旬から2月中旬まで
・協力店舗内にポスター等を掲示し、環境に配慮商品(詰め替え商
品、環境ラベル商品、地産地消・季産季消)の購入が、地球にも
優しいことをPR
取組内容
・懸賞応募を実施し、グリーン購入の普及・啓発を行うとともに、
アンケート調査による意識調査と効果測定を実施
・子どもを対象とした参加型イベントの実施など、協力店舗で独自
企画を実施
実 績 等
平成 22 年度は、平成 23 年 1 月 15 日から 2 月 14 日まで、東海3
県の約 4,300 店舗で実施(アンケート応募者数
3,835 名)
(3)いきもの交流フェスタ(エコラベルパズル)
COP10 から一周年を迎える平成 23 年 10 月に記念行事として、本県では、次表
のとおり「いきもの交流フェスタ」を開催しました。
各会場でフォーラム等の諸行事が行われましたが、10 月 8 日(土)、9 日(日)
の両日においてオアシス 21 の中にブースを設け、生物多様性に配慮したエコラベ
ルの紹介や来場者がエコラベルのマークとキーワードを組み合わせる「いきものエ
コラベルパズルゲーム」を実施しました。また、合わせて生物多様性に関係するエ
コラベルの認知度等を把握するためのアンケート調査を実施しました。
16
さらに、ゲーム参加者やアンケート調査の回答者に対して、レインフォレスト・
アライアンスのバナナやフェアトレードのコーヒーを景品として配布するなど、エ
コラベルの周知を行いました。
表
いきもの交流フェスタの概要
COP10 開催の1年後にあたる時期に、記念イベントを開催し、生物多
目
的
実施時期
様性に対する県民意識の定着を改めて図る。
平成 23 年 10 月 7 日(金)~9 日(日)
愛知芸術文化センター12F アートスペース
場
所 オアシス 21 銀河の広場
NHK 名古屋放送センタービル 1F プラザウェーブ 21
各会場を生物多様性に関する「集いの広場(愛知芸術文化センター
12F)」、「発信の広場(オアシス 21)」、「体験の広場(NHK 名古屋放
内
容 送センタービル1F)」と設定し、会場ごとにテーマに沿ったフォーラ
ムやステージイベント、ブース展示を行い、来場者が楽しみながら
COP10 の成果や生物多様性を学び・体感できるプログラムを実施
4
県民への意識調査結果
(1)エコラベル認知度等アンケート調査結果
生物多様性に関係するエコラベルの認知度等を把握するため、10 月 8 日(土)
、
9 日(日)の両日に行ったアンケート調査の結果は、次のとおりでした。
1)回答者の性別、年代について
全回答者は、792 名であり、男性 49.5%、女性 50.5%とほぼ同数でした。
回答者の性別
男性, 392, 49.5%
女性, 400, 50.5%
17
また、回答者の年代は、40 代が最も多く 21.8%、続いて 30 代が 19.9%、70 台
以上が 16.5%、60 台 15.5%と 50 台 15.4%となっており、年代による大きな偏り
はみられませんでした。
回答者の年代
10代, 37, 4.7%
70代以上, 131, 16.5%
20代, 48, 6.1%
30代, 158, 19.9%
60代, 123, 15.5%
50代, 122, 15.4%
40代, 173, 21.8%
2)エコラベルの認知度について
【概要】
生物多様性に関する7団体のエコラベルのうち、約 8 割から 9 割の人が、エコ
ラベルを見たことがないと回答。また、ラベルを見たことがあり、その意味まで
認識している人は、1 割未満。
また、9 割以上の人がエコラベル商品を購入したことがないと回答。
今回、アンケートにより調査した7個のエコラベルのうち、ラベルにより認知度
の高低がみられるものの、約 8 割から 9 割の人が、エコラベルを見たことがないと
回答しており、ラベルの認知度自体がかなり低いことがわかりました。
また、認知度が高かったラベル(ラベルを見たことがある以上の回答を合計)は、
FSC が 23.0%、フェアトレードが 22.1%、レインフォレスト・アライアンスが 19.4%
となっており、最も低いのが SGEC の 8.7%でした。
ラベルの意味までよく知られているのは、フェアトレードが 8.2%、FSC が 5.8%
であり、それ以外は 3%未満となっており、ラベルの意味まで含めた認知度は極め
て低くなっていました。
18
環境エコラベルの認知度について
0%
20%
40%
60%
80%
100%
FSC
12.8
77.0
4.4 5.8
エコラベルの種類
PEFC
85.6
4.4
8.5
1.5
SGEC
91.3
6.6 2.1 0.0
フェアトレード
8.2
6.3
7.6
77.9
レインフォレスト
12.1
80.6
4.4 2.9
MSC
7.7 3.9 2.7
85.7
MELジャパン
83.7
10.1
4.2 2.0
ラベルを見たことがなかった
ラベルを見たことがあり、意味は知らなかった
ラベルを見たことがあり、意味をなんとなく知っていた
ラベルを見たことがあり、意味をよく知っていた
また、エコラベル商品の購入したことがあるか否かについては、フェアトレード
が 10.1%と最も高く、続いてレインフォレスト・アライアンスが 6.6%となってお
り、9 割以上の人が購入したことがないと回答していました。
エコラベル商品の購入について
0%
20%
40%
60%
80%
100%
FSC
5.3
94.7
エコラベルの種類
PEFC
98.7
1.3
99.4
0.6
SGEC
フェアトレード
89.9
10.1
レインフォレスト
93.4
6.6
MSC
97.9 2.1
MELジャパン
98.5 1.5
購入したことはない
購入したことがある
19
3)買い物において、商品に求めるもの
【概要】
品質がよく、安全な商品を企業に求めている。
普段の買い物において、商品に何を求めるのか複数の回答を可能として聞いたと
ころ、品質・安全性が 79.8%、価格が 65.5%、環境へのやさしさが 32.7%の順とな
り、品質がよく、安全な商品を求める傾向がみられました。
【買い物において商品に求めること】
0%
20%
40%
価格
60%
80%
65.5%
品質・安全性
79.8%
17.3%
デザイン・外観
32.7%
環境へのやさしさ
その他
100%
2.0%
4)エコラベル商品を普及するために必要な方策
【概要】
普及のための方策としては、テレビCM、新聞等による商品のアピールが必要
エコラベルを普及するために、今後、どのような方策が必要となるのか、複数の
回答を可能として聞いたところ、
「テレビの CM、新聞、雑誌等によりエコラベル
商品をアピールする。」が 71.8%と最も多く、続いて「販売されるエコラベルの商
品数を充実する。」が 29.6%、
「各小売事業が、エコラベル商品を店頭でアピールす
る。」が 28.4%「エコラベルができた背景(生物多様性の現状や問題点など)につ
いて広く啓発し、その理解を深める。
」が 27.3%でした。
商品の販売を普及していくには、テレビの CM、新聞、雑誌等の広報媒体を用い
た、企業によるエコラベル商品のアピールが最も効果的と考えている傾向がみられ
ました。
20
【エコラベル商品を普及するために必要な方策】
0%
20%
40%
60%
テレビのCM、新聞、雑誌等により
エコラベル商品をアピールする。
100%
71.8%
エコラベルができた背景について広く
啓発し、その理解を深める。
27.3%
販売されるエコラベルの商品数を
充実する。
29.6%
各小売業者が、エコラベル商品を
店頭でアピールする。
その他
80%
28.4%
2.2%
また、その他の回答(2%)の内訳は、次のとおりでした。
イベントを開催する。
1
インターネットを用いて、人づてに周知する。
1
エコマネーとセットで普及を図る。
1
ポイントをプレゼントする。
1
エコラベルをもっとアピールする。
1
エコラベルを統一する。
1
エコラベルの表示を大きくする。
1
エコラベルの意味を商品に表示する。
2
エコラベルのデザインを絞り、わかりやすくする。
2
エコラベルを買うとどういう効果があるかを伝える。
1
法や政策等の実効力のある手法を検討する。
2
学校教育を活用する。
1
学校や企業でアピールする。
1
中小企業で扱いが少ない点を改善する。
1
18
合計
(2)東海三県一市グリーン購入キャンペーンでのアンケート結果
平成 22 年度の東海三県一市グリーン購入キャンペーンで実施したアンケート調
査において、普段の買い物で実践しているグリーン購入(複数回答可)について聞
いたところ、次のグラフのとおりとなっており、「マイバックを持参する」(88%)
や「詰め替え商品を選ぶ」
(83%)に比べて、
「環境ラベル商品を選ぶ」という回答
21
は、17%と低い数字となっています(回答者数=3,835 件)。
56%
ものを購入する前に、本当に必要かどうかよく考えてから買う
83%
詰め替え商品を選ぶ
17%
環境ラベルのついた商品を選ぶ
24%
リサイクル商品を選ぶ
31%
省エネ商品を選ぶ
42%
地元・旬のものを選ぶ
43%
繰り返し使えるものを選ぶ
88%
マイバッグを持参する
1%
特に実践していない
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
また、環境ラベルに対して、次のような意見が出されています。
・環境ラベルの商品は、値段が少し高めだと思う。
・環境ラベルの表示をもっと大きくしてほしい。
・リサイクルマークなどは見たことがあっても、その名称や、何を意味しているのか
分かりにくい。
・環境ラベルは商品によって記載されている場所が違うので、各社統一した部分にマ
ークを付けたら分かりやすい。
・環境ラベルは種類が多すぎるので、ラベル(マーク)を統一した方が分かりやすい。
(3)平成 23 年度
県政世論調査(環境保全関係)
県民の関心や意向、要望等を調査し、今後の県政施策推進の基礎資料を得る目的
で行われた平成 23 年度県政世論調査の環境保全関係の結果は次のとおりでした。
環境保全のために心がけていること(複数回答可)について聞いたところ、次の
グラフのとおりとなっており「ごみの分別」と答えた人の割合が 85.3%で最も高く、
次いで「買い物袋を持参したり、過剰包装を断る」
(81.4%)、
「冷暖房を控えるなど
節電に心がける」(59.2%)の順でした。
また、「エコラベルのついた環境に配慮した製品を選ぶ」は 12.4%と低い数字に
なっていました(回答者数=1,679 件)。
22
【環境保全のために心がけていること】
0
20
40
60
80
100
85.3
ごみの分別
81.4
買い物袋を持参したり、過剰包装を断る
59.2
冷暖房を控えるなど節電に心がける
調理くずや油を排水と一緒に流さないなど
生活排水に気をつける
47.8
省エネ家電・エコカーやリサイクル製品を選ぶ
28.9
26.9
木を植えたりするなど、身近な自然に関心を持つ
自動車に頼りすぎず電車やバスを利用する
21.1
16.4
地域の清掃活動など環境保全活動に参加する
12.4
エコラベルのついた環境に配慮した製品を選ぶ
その他
2.3
特にない
2.0
無回答
5
0.2
生物多様性に配慮したエコラベル商品の普及に向けた現状と課題
生物多様性に配慮されて生産された商品に付けられているエコラベルの普及状
況や課題について、商品を紙・木製品、農産物及び水産物の分野に大別し、検討し
た内容は次のとおりです。
(1)紙・木製品(エコラベル運用団体:FSC、PEFC、SGEC)
1)世界及び日本におけるシェア
世界の森林総面積 39.5 億ヘクタールのうち、認証森林が占める割合は、9.5%
(FSC
1 億 4,097 万ヘクタール(2011.4)、PEFC 2 億 3,430 万ヘクタール
(2011.6))となっています。
また、日本の森林面積約 2,500 ヘクタールのうち、認証森林が占める割合は 4.9%
(FSC
37 万ヘクタール(2011.4)、SGEC
86 万ヘクタール(2011.4))となっ
ています。
2)ラベルが普及していない原因
流通・小売の段階
紙の卸業業者が CoC 認証を取得しても、印刷業者から認証
用紙を使用する要望が少ないことがあります。また、製紙メーカーでも、紙の
種類によって認証紙を製造していないケースがみられます。
23
このため、認証によって得られる販路の拡大等のメリットが、認証を取得する
ための手続・費用面の負担と比べて、小さい場合があります。
消費の段階
FSC、PEFC については、コピー用紙、菓子包装紙等に使用され、
国や県の物品調達方針の対象に位置づけられているものの、商品の普及がまだ
少ないことから、一般の消費者の認知度は低くなっています。
特に、SGEC は国内林業を対象とした認証制度であり、製品が国産の住宅建
材に限られているため、一般の消費者の認知度はかなり低くなっています。
(2)農産物(コーヒー、バナナ等)(エコラベル運用団体:フェアトレード、レイ
ンフォレスト・アライアンス)
1)世界及び日本におけるシェア
フェアトレードとレインフォレスト・アライアンスで、農産物別で世界及び日本
におけるシェアで、統一した指標は明らかにされていません。
現在公表されている数字からみると、世界の認証農園生産物において、フェアト
レードの推定市場規模は、約 4,421 億円(2009 年)、レインフォレスト・アライア
ンスの市場占有率は、コーヒーは 2.5%、紅茶は 6.6%、バナナは 15%となってい
ます。
一方、日本での推定市場規模は、フェアトレードでは、約 16.7 億円(2010 年)、
コーヒー販売量
450.3 トン(2010 年)、レインフォレスト・アライアンスでは、
品目別のシェアは不明(2009 年でコーヒー輸入量約 8,300 トン)ですが、取扱店
舗 1 万軒以上(コンビニ、喫茶店等)で認証商品が販売されています。
2)ラベルが普及していない原因
流通・小売の段階
フェアトレードでは認証原料の売買をする(所有権を有する)
組織は全て、「輸入」や「製造」、「卸売」といった認証原料の売買という行為
を行う認証登録(CoC 認証と同等のもの)する必要があります。また、ラベル
を表示した最終商品に貼付してフェアトレード商品であることを示すため、最
終製品の販売者(ブランドオーナー)は、ラベルの使用のライセンス契約をフ
ェアトレード・ラベル・ジャパンと締結するルールになっており、売上高の 1%
のライセンス料がかかります。これらの認証登録、ライセンス契約の手続・費
用面の負担が、ラベルの表示によって得られる販路の拡大等のメリットと比べ
て重いと考えられている面があります。
消費の段階
フェアトレードについては、イオン、スターバックス、無印良品な
どの企業で取扱われ、レインフォレスト・アライアンスは UCC 上島珈琲など
で取扱われており、年々、販売する企業や商品数は増えてきていますが、普及
状況は限定的であり一般の消費者の認知度は、まだ低い状況です。
また、フェアトレード認証商品では、フェアトレード最低価格の保証やライ
24
センス料などから、販売価格が割高になる場合もみられます。
(3)水産物(エコラベル運用団体:MSC、MEL ジャパン)
1)世界及び日本におけるシェア
MSC の世界におけるシェアは、世界の食用向け天然漁獲漁業の約 12%となって
います。世界の認証取得漁業数は 127、認証審査中の漁業数は 136(2011.11)、MSC
ラベル付き製品数 10,718(2011.6)と 1 万件を超えています。
また、日本での認証漁業は、京都府機船底曳網漁業連合会のズワイガニ、アカガ
レイ漁業、土佐鰹水産グループのカツオ一本釣り漁業の 2 事例(認証審査中 1 事例)
のみであり、MSC の日本におけるシェアは、世界の 12%と比べてよりかなり低い
と想定されます。
一方、小売店による販売の状況は、2006 年からイオン、西友、日本協同組合連
合会などで流通が始まり、現在では 50 を超える小売、百貨店で取り扱っており、
販売する店舗数が徐々に増加してきています。
MEL ジャパンでは、日本海かにかご漁業協会、愛知県しらす・いかなご船びき
網連合会をはじめとして、国内の 13 漁業が認証され、14 万トン余りの魚介類が認
証された段階です。MEL ラベル製品が、生協、スーパー、デパートなどで徐々に
販売された段階で、普及シェアの拡大はこれからです。
2)ラベルが普及していない原因
流通・小売の段階
日本では、多種類の魚を店舗で加工しているところがあり、
こうした店舗が MSC の認証を受けた魚をさばく場合、CoC 認証を取得する必
要があります。こうした、CoC 認証の手続や費用面の負担が、認証によって得
られる販路拡大等のメリットと比べてと考えられる面があります。また、MSC
ラベルを最終製品に貼る事業者に年間商標利用料と売上高 0.5%が徴収される
ことも販売店の負担感の増に影響しているものと思われます。
消費の段階
MSC では、日本の漁業での取得が 2 例しかなく、日本で販売され
る MSC 商品の多くが、外国産のさけやたらこなどに限られています。また、
それらを扱っている店舗も限られていることから、一般の消費者の認知度はか
なり低くなっています。また、日本のスーパーは欧米に比べて店頭に並ぶ水産
物の種類が多く、ラベル付き商品でも埋没して目立ちにくい面もあります。さ
らに、認証商品の価格についても、他の特売商品と比べて若干、販売価格が割
高になる場合もみられます。
また、MEL ジャパンでは、生協、スーパー、デパートなどの小売店段階で
の経費負担をほとんど求めない工夫がされていますが、スタートしたばかりで
あり、販売はこれからという段階です。
25
(4)ラベルの普及に向けた課題
これまでの県民への意識調査結果や紙・木製品、農産物及び水産物の分野別で検討
してきた結果から、ラベルの普及に向けた課題を整理すると次表のとおりです。
表
エコラベルの普及に向けた課題
課題
エコラベル団体
1 エコラベルの認知度が低く、ラベルの意味が知られ 全て
ていない。
2 市販されているエコラベル商品の数が少ない。
特に MSC、MEL ジ
ャパンの水産物
3 CoC 認証の手続や費用面の負担が、国産材証明や合 FSC、PEFC、MSC
法木材の証明等の負担と比較して大きい。
4 エコラベル商品は、一般の商品と比べ価格が割高な フ ェ ア ト レ ー ド 、
MSC
面がある。
5 エコラベルの表示が小さい。また、商品によってエ 全て
コラベルの表示場所が異なる。
6
生物多様性に配慮したエコラベル商品の普及に向けた今後の取組にあたっての
考え方
○エコラベル商品を増やす
生物多様性に配慮されたエコラベル商品は、販売されている商品の種類も豊富で
ではなく、日常生活でスーパーやショッピングモールでみかけることは余りありま
せん。エコラベル商品を普及させていく上で、まずは、日ごろの買い物において、
比較・選択できるように、商品の種類と流通量を増加させる必要があります。
そのためには、生産者(農業・林業・漁業)への働きかけとともに、流通・小売
者に商品を取り扱うよう働きかけていく必要がある。
○エコラベル認証の負担を軽減する
次に、流通・販売業者が、エコラベル商品を取り扱う上で、認証登録(CoC 認証)
負担がネックになる場合があります。また、ライセンス契約を取得しても、取扱商
品の量が確保できないと、年々の費用面の負担が重くなっている面もみられます。
また、エコラベル団体によっては、全国展開しているチェーン店においも全ての店
舗で CoC 認証の取得が必要となる場合もあります。
全国展開しているチェーン店では、CoC 認証やライセンス契約の取得を促進する
ために、商品の品質を確保しつつ、認証登録(CoC 認証)の簡素化やライセンス契
26
約の負担軽減を検討することも必要です。
○消費者にアピールする
消費者アンケート調査結果では、約 8 割から 9 割の人が、今回、生物多様性に配
慮されたエコラベル自体を見たことがないと回答しており、消費者の認知度がかな
り低いことがわかりました。このため、多くの消費者に生物多様性に配慮されたエ
コラベルがあること知ってもらい、エコラベルの目的や意味を理解してもらうこと
が重要です。そのためには、生物多様性が我々の生活に密接にかかわっていること、
商品の購入に当たって生物多様性に配慮したエコラベル商品を選択することが、日
常生活の中で比較的簡単にできる生物多様性保全の取組であることを消費者に強
くアピールすることが必要です。
○エコラベル商品の新たな価値を創出する
エコラベル商品は、生産段階での環境への配慮、その他様々な基準を守ることに
手間や費用がかかることで、販売段階での価格が割高になるものもみられます。し
かし、その商品に込められた生物多様性の意味や価値を理解し、それを商品選択の
際の判断基準として消費者に受け入れてもらうことが重要です。このことが、地産
地消や無農薬野菜といったことと同様にエコラベル商品が安心・安全な商品であり、
プレミアといった新たな価値の獲得にもながる可能性もあります。
これにより、製造業がエコラベル商品の種類や流通量を増やし、それが小売店で
の販売促進につながり、さらに商品の種類や流通量が増加するような好循環につな
がっていくと考えられます。
以上を踏まえて、これまで整理したエコラベル普及に向けた個別課題と、それに
対する各主体が取り組むべき対応を検討・整理した結果は、次のとおりです。
【課題1】エコラベルの認知度が低く、ラベルの意味が知られていない。
【各主体が取り組むべき行動例】
■共通事項(エコラベル運用団体、製造業、流通・小売業、行政、消費者団体)
○東海三県一市グリーン購入キャンペーンの開催・協力
東海三県一市グリーン購入キャンペーン(毎年度、1 月中旬から 2 月中旬まで実
施)では、今年度 PEFC、MSC、フェアトレード・ラベル・ジャパンは、エコラ
ベル団体として協賛をしていただいていますが、それぞれの商品を扱う企業にも幅
広く協賛を依頼します。それぞれが連携・協力してキャンペーン企画の内容の充実
を図ります。
27
○EXPOエコマネーの対象メニューにエコラベル商品を追加
2005 年日本国際博覧会(愛・地球博)で実施され、NPO 法人(エコデザイン市
民社会フォーラム)が引き継いで事業を行っている地球にやさしい環境通貨である
EXPO エコマネーでは、ポイントを貯めるエコ行動として、レジ袋を断る、公共交
通機関を利用する等が定められています。今後、このエコ行動のメニューに、エコ
ラベル商品の購入を追加します。
■エコラベル運用団体
○書籍・パンフレットの作成
エコラベル認知度等アンケート調査結果で認知度が比較的高かったフェアトレ
ードについては、それに関する書籍が多数発刊されています。しかし、その他のラ
ベルについては、関連する書籍がほとんど発刊されていないため、一般の人が目に
できる形にするように、翻訳も含めて、エコラベルの歴史、意義、その効果を一般
に認知できるような書籍やパンフレットを積極的に発行していくことが必要です。
○企業向け・消費者向けセミナーの開催
企業向け・消費者向けセミナーを開催し、生物多様性に配慮されたエコラベルが
できた背景、現場で実践されている環境保全の概要を啓発し、その理解を深めるな
ど、積極的に情報発信していく必要があります。
■製造業、流通・小売業
○エコラベル商品の宣伝(CM放送、新聞広告)
テレビ CM、新聞広告、インターネット等のあらゆる媒体を用いて商品の宣伝を
拡大するとともに、商品に付けられているエコラベルの成り立ちや意味の解説を加
えて、エコラベルという新たな環境価値を消費者にアピールする必要があります。
(製造業)
○販売コーナーを設置し、パンフレットを配布
時期を定めて、エコラベル商品を集めたキャンペーンを実施し、販売の促進を図
ります。また、商品の販売コーナーに、POP 掲示や商品パンフレットを設置する
など、エコラベルの意味の周知を図ります。(流通・小売業)
■行政
○セミナー、ホームページ、会報誌等で紹介
消費者向けセミナー、子供向け環境教室などにおいて、生物多様性に配慮された
エコラベルができた背景、現場で実践されている環境保全の概要を啓発し、その理
解を深めるなど、積極的に情報発信していく必要があります。
東海三県一市グリーン購入キャンペーンに参加する小売業者を対象に、毎年 11
28
月頃にグリーン購入説明会を開催していますが、エコラベルについて啓発し、小売
業者への浸透・導入拡大を図ります。
○環境副読本に記載
本県が毎年作成する小学生を対象にした環境副読本について、エコラベルの記載
を追加するなど、学校教育の場で、エコラベルの啓発を検討します。
■消費者団体
○セミナー、ホームページ、会報誌等で紹介
生物多様性に配慮したエコラベルの種類、その意義について勉強会を開催して、
団体の会員の中でエコラベルを理解を深めます。
【課題2】市販されているエコラベル商品の数が少ない。
【各主体が取り組むべき行動例】
■製造業、小売・流通業
○率先調達<特に紙製品・木製品の分野>
各企業において、CSR 調達(企業が原材料などの資材調達に際して、取引先の
法令遵守・環境への配慮・社会への配慮等を確認して行う調達)の一環として、購
入する商品についても FSC 等の森林認証材を始めとした生物多様性に配慮したエ
コラベル商品の種類や数を増やしていくことも必要です。
○社内の食堂・販売店への働きかけ<コーヒー、チョコレート等の農産物や水産物
>
農産物(フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス)について、社内の
売店等での販売、水産物(MSC、MEL ジャパン)については、社内の食堂のメニ
ューに認証商品を追加するなど消費の拡大を検討していきます。
○製造業、流通業、小売業が一体となった認証製品の開発・提供
<製材メーカー、工務店、家具店等>、<製紙メーカー、印刷業者、出版会社等>
紙・木製品(FSC、PEFC、SGEC)について、製造業、流通業、小売業が一体
となり、消費者の需要にあった認証商品を開発し、これまで取扱いがなかった店舗
でも取り扱いを増やしていく必要があります。
○販売コーナーの設置、折込広告
エコラベル商品を集めた販売コーナーの設置や新聞の折込広告にエコラベル商
品を加えるなどで、エコラベル商品の販売促進を図ります。(流通・小売業)
■行政
29
○率先調達<特に紙製品・木製品の分野>
「愛知県庁の環境保全のための行動計画(あいちエコスタンダード)」では、COP10
を契機として生物多様性の保全に配慮した物品購入を促進するため、「紙類」、「文
具類」、
「オフィス家具等」のうち原料に木材を含むものについて、FSC 等の森林認
証材を 5 年間で全体の 1%調達するチャレンジ目標を設定していますが、その調達
状況を踏まえて、目標値の向上を図ります。
さらに、中部経済連合会や名古屋商工会議所等の業界団体をとおして、流通・小
売業者へのエコラベル商品の購入拡大を依頼します。
○県庁内の食堂・販売店への働きかけ<コーヒー、チョコレート等の農産物や水産
物>
農産物(フェアトレード、レインフォレスト・アライアンス)については、県庁
生協の売店で既にコーヒーやチョコレート(フェアトレード)、紅茶(レインフォ
レスト・アライアンス)の取扱いがありますが、さらなる商品数の拡大を図ります。
水産物(MSC、MEL ジャパン)については、県庁内の食堂のメニューに認証商
品を追加するなど消費の拡大を検討していきます。
○フェアトレード・タウンの推進
フェアトレードについては、地元で活動をしている「名古屋をフェアトレード・
タウンにしよう会」と連携をしながら、消費者への浸透・消費拡大に努め、取扱店
舗の増加を図っていきます。
○エコラベル商品の紹介
エコラベル商品にはどのような品目があり、どこの企業や店舗で販売されている
かホームページなどでの紹介し、消費者への情報提供をすすめ、認知度や購入意欲
の向上を図ります。
■消費者団体
○エコラベル商品・取扱店舗の会報誌等での紹介
エコラベル商品にはどのような品目があり、どこの店舗で販売されているかを会
報誌などでの紹介し、消費者への情報提供をすすめ、認知度や購入意欲の向上を
図ります。
【課題3】CoC 認証の手続や費用面の負担が、国産材証明や合法木材の証明等の負担
と比較して大きい。
【各主体が取り組むべき行動例】
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■エコラベル運用団体
○運用方法の改善<チェーン店舗に対する一括認証の検討等>
紙・木製品では、加工・流通段階での CoC 認証の取得・費用面の負担が、国産材
証明や合法木材の証明等の負担と比較して大きいという意見もみられます。
一方、水産物では、日本では販売される魚の種類が多く、鮮度が必要とされるこ
とから各店舗での調理を基本としている小売業者があり、すべての店舗で CoC 認
証の取得が難しい点もあります。チェーン店舗に対する一括認証の検討など CoC
認証の手続や費用負担について、日本の業態に対応したものにするよう手続きの簡
素化を検討します。
【課題4】エコラベル商品は、一般の商品と比べ価格が割高な面がある。
【各主体が取り組むべき行動例】
■エコラベル団体、行政、消費者団体
○エコラベル商品の意義をセミナー・会報誌等で説明
消費者は、新鮮でおいしい魚介類や、安全で安心な農産物を少しでも低価格で購
入することを望んでいますが、店頭に並ぶ魚介類、農産物がどのような過程で捕
獲・生産されているかといった環境の対するエコラベルといった価値観を認識する
ことも重要です。
海外の MSC 認証では、価格プレミアムを獲得している漁業もあるため、日本で
も消費者がエコラベルによる環境への価値を支持することで価格プレレミアムを
獲得できるように、消費者がラベルの意味をもっと理解する必要があります。
このため、エコラベルの種類やそれを購入することの意義について、消費者向け
のセミナー・会報誌等の発行により周知を図ります。
■製造業、流通・小売業
○エコラベル商品の意義をテレビCMやカタログで PR
消費者は、普段の買い物において、限られたお金の中で沢山のものを購入する傾
向があります。この消費者の願いを叶えるために、小売業は価格を徐々に下げてお
り、それが現在のデフレ傾向を助長している一面もみられます。
その一方で、製品の原料がどこで、どのように栽培され、誰によって製造された
のかということに消費者は関心を寄せるようにあり、それが製品のイメージに影響
を与えています。
31
消費者がその製品の製造過程に良い印象を持つことが重要になってきており、ラ
ベルに凝縮された意義や情報をテレビCMやカタログで PR することが必要です。
リプトンの紅茶のテレビ CM では、レインフォレスト・アライアンスの認証茶葉
を使用していることを宣伝しています。(製造業)
○エコラベル商品の意義を店頭でPR
MSC では最終製品にラベルを貼る事業者を対象に年間商標使用料として売上高
0.5%、フェアトレードでも同様な年間商標使用料として売上高 1%が必要となりま
す。MSC やフェアトレードの他、紙・木製品に関するエコラベルおいても加工や
流通業者を対象にした CoC 認証のコストかかります。
このため、エコラベル商品の価格が割高にみられる面もありますが、一方で、米
国の小売最大手のスーパー「ウォルマート」では、取扱う全ての水産物を MSC 認
証商品とすることを表明しており、総合スーパー最大手のイオンでも MSC 認証商
品を導入するなど、小売業の強いメーセージがみられます。
小売業においては、一般の商品との価格差をなくす努力や一般より多少高価であ
っても、持続可能な農林水産資源の利用を目指したラベルの購入の意義を消費者に
アピールしていくことが必要です。(流通・小売業)
【課題5】エコラベルの表示が小さい。また、商品によってエコラベルの表示場所が
異なる。
【各主体が取り組むべき行動例】
■製造業、流通・小売業
○エコラベルの表示位置の検討
製造するエコラベル商品について、出来る限りラベルを大きくした商品デザイン
とすることや、そのラベル意味についても、消費者に分かりやすく説明した概要を
商品に表示することを検討し、エコラベルの周知に努める必要があります。
○エコラベル商品の店頭でのPRの工夫<販売コーナーの設置、POP掲示>
POP 掲示やエコラベル商品のコーナーを設置するなど、エコラベルが消費者の
目に付きやすいように工夫し、店頭でのエコラベルをアピール機会が増えるように
工夫する必要があります。(流通・小売業)
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トピックス
フェアトレード・タウンとは?
フェアトレード・ラベル運動をサポートすることを宣言した地方自治体を「フ
ェアトレード・タウン」と呼びます。フェアトレード・タウンの学校、企業、市
民は、フェアトレード認証製品を積極的に購入・販売し、フェアトレード啓発イ
ベントを開催するなど、フェアトレードの意義と認証ラベルを広める活動を積極
的に行っています。
ここ数年フェアトレード・タウン運動は全世界で急速な広がりをみせており、
世界 20 カ国、950 以上の地方自治体がフェアトレード・タウンを宣言しています。
その中にはロンドン、ダブリン、ローマ、サンフランシスコといった大都市も含
まれ、日本では、2011 年 6 月には、熊本市がアジアで初めて認定されています。
また、フェアトレード・タウンに認められるためには、次の 5 つの基準を満た
す必要があります。
○自治体の議会がフェアトレードを促進するための議決案を可決し、議会、職場、
地方庁舎などでフェトレード認証製品(コーヒー・紅茶等)を使用する。
○様々なフェアトレード認証製品が地域のショップ(スーパー、コンビニ、雑貨
店等)や飲食店で購入できる。
○地域の企業や商店、教会や学校といった地域組織へフェアトレード認証製品を
浸透させる。
○メディアの報道やイベントを通して、フェアトレードに対する地域住民の理解
を広めサポートを獲得する。
○議員や企業、学校や教会、地域住民などから委員を選出してフェアトレード推
進運営委員を設置し、フェアトレード推進活動を継続して行う。
33
7
各主体における当面の取組と推進体制
(1)当面の取組
商品が小売店の店頭に並び販売されるまでには、生産者→流通・加工業者→小
売店→消費者のルートを経ますが、エコラベル商品の流通量を増やしていくため
には、それぞれの主体で取組を進めていくことが必要です。
生物多様性に配慮したエコラベル商品が普及していない理由として、その認知
度の低さが大きな要因と考えられます。
これまでのエコラベル商品普及に向けた個別課題と、それに対する取組をまと
めると次表のようになります。この取組をとおして、商品の価格や品質・安全性
といった商品を選択する上でのポイントに加えて、商品に込められた環境配慮と
いった新たな環境の価値を消費者が認識し、エコラベル商品が広く普及していく
ことが望まれます。
取組主体
取組方針
エ コ ラ ベ ル 運 用 団 ・書籍、啓発用パンフレットの作成、配布
体
・製造業、流通・小売業への働きかけ
企 業 ( 製 造 メ ー カ ・テレビ CM、カタログ等による商品の宣伝
ー)
・エコラベルの大きさ、デザイン等の検討
・社内食堂等での取扱いの開始
流通・小売業
・各会員への情報提供
・取り扱うエコラベル商品の種類の拡大の検討
・店頭でのエコラベル商品アピールの工夫
消費者団体
・会員への情報提供、セミナーや情報誌等で紹介
行政
・東海三県一市グリーン購入キャンペーンの中で、普及の促進
・セミナーや情報誌等で紹介
・県庁生協売店での取扱い品目の拡大、食堂での取扱いの開始
・エコマネー発行のメニュー、環境副読本への追加
・フェアトレード・タウンへの推進
(2)推進体制
それぞれが主体となって進める取組の進捗状況の確認や課題の検討に当たっ
ては、流通・小売業団体、消費者団体、行政機関等による連絡議会を開催し、具
体的な対応策や改善案を話し合っていきます。
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その後、エコラベル運用団体から商品の状況を確認し、さらに、消費者アンケ
ートを実施し、現状把握を確認するなどし、その結果を基にさらなる対応策や改
善案を検討していきます。
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これまでの検討の経緯等
検討の経緯
年月日
平成 23 年 8 月 23 日
検討内容
○生物多様性に配慮したエコラベルの事例発表(4 団体)
・PEFC:森林認証プログラム
・MSC:海洋管理協議会
・フェアトレード・ラベル・ジャパン
・レインフォレスト・アライアンス
○エコラベル普及促進のための愛知県の取り組みについ
て
○消費者アンケートの作成
平成 23 年 9 月 30 日
○生物多様性に配慮したエコラベルの事例発表(3 団体)
・FSC:森林管理協議会
・SGEC:『緑の循環』認証会議
・MEL ジャパン
○生物多様性に配慮したエコラベル商品の普及に向けた
課題等の検討
○消費者アンケートの作成
平成 23 年 12 月 12 日
○アンケート結果の取りまとめ
○検討会報告書の検討
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生物多様性に配慮したエコラベル商品普及促進検討会委員
大藪
千穂
岐阜大学教育学部教授
小田
奈緒美
椙山人間学研究センター研究員
滝川
律夫
名古屋洋紙同業会理事長
松井
淳
日本チェーンストア協会中部支部事務局
大西
隆信
中部百貨店協会事務局長
山本
泰正
東海地区スーパーマーケット協会連合会事務局長(平成
23 年 9 月 29 日まで)
小笠原
孝
東海地区スーパーマーケット協会連合会事務局長(平成
23 年 9 月 30 日から)
杉山
和良
愛知県生活協同組合連合会専務理事
須田
翠子
愛知消費者協会常任理事
深津
学治
グリーン購入ネットワーク(GPN)事務局次長
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