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特別支援学校 小学部(肢体不自由)での授業実践

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特別支援学校 小学部(肢体不自由)での授業実践
特別支援学校における ICT 活用と情報モラル教育に関する研究
2013 年度
特別支援学校 小学部(肢体不自由)での授業実践
和歌山県立紀北支援学校
教諭
上松 育代
2014 年 3 月
ことば・かずの授業
1.対象児童
小学部2年生の女子。脳性まひによる体幹機能障害。
気管切開しており、呼名や質問に対しては、舌打ちや表
情等で返事を返すことが出来るが、自分の思いが伝わら
ないとあきらめてしまう事が多い。身体面では、筋緊張
が強く、腕を動かそうと意識すると頭を後ろに反らして、
身体を弓なりにして更に筋緊張が高まってしまう。
(写真1参照)
2.指導目標
写真1
(1) 学校と家庭での機器利用のルールを話合い、適切な利用方法を身につける。
(2) 色々なアプリを経験する中で、ひらがなに興味を持つ。
(3) 色々なアプリを経験する中で、数の概念を育てる。
3.実際の授業での様子
立位姿勢で iPad のアプリを使用する時、手を動かすために身体を大きく動かす必
があるが、左右の肘あてが腕の動きを阻害してしまう恐れがあるので、肘あては外す方が
よいとのアドバイスがあったので外すようにした。外してすぐは左に身体が倒れてしまう
ので左手で身体を支えるようにとめる(自身が左手で肩を押さえるような動きをすること
もある)が、時間が経つと左手を離しても身体支えることができるようになる。
(写真2参照)
手の動かし方も、右手を出す場合、身体を左に倒し側屈を伴って大きく出すので、身体
をまっすぐに保つ感覚を感じてもらうためにも、はじめは左右両側の肩甲骨を開く(介助
者は本児童の後ろに立ち、肩甲骨を前に押すようなイメージ)介助を行うようにした。
(写真3参照)
実践研究
写真2
写真3
実際に取組中で、肘を曲げて作業ができることが本児の課題であると考え、肩を開くこ
とができると肘を曲げる動きが出やすくなるので、右手を使用する時は、左側に倒れるこ
とを防ぐように介助する。そして、右肩の動きを出すようにわきの下の手を引く動きの時
に後ろにねじり、動きが止まっている時はゆすって動きを出すようにした。右肩の内側の
筋肉を上から握ると肘がのびて緩むので、そのまま手を手前に引くような動きを介助した。
(写真4参照)
また、肘を曲げる動きを行う前に、肘の位置と曲げることを意識するために、肘を曲げ
る動きを練習した。練習の順序としては、まず空中で練習する。十分緩んで動きが出るよ
うになれば、次は机に沿わせて動かす練習をし、最後には、まっすぐ線を引くような肘の
曲げの練習をした。(写真5参照)
写真4
写真5
本児の手の動きでは、左斜め下に向かっての直線が最も動かしかしやすく、右斜め下へ
の直線が最も動かしにくいと考えられた。また、曲線の多い文字や形も複雑な肘の動きが
必要なるため難易度が高いと考えられるので、iPad などで肘を曲げて線を描く練習をする
ときには、数字の1、4、7などを繰り返し練習するのが良いとのアドバイスをもらった
ので「モジルート」に取り組んだ。
(写真6参照)
最初は、やりたい気持ちが先に立ち、身体全身に力が入ってしまったが、肘を曲げる練
習等を繰返し行っていく中で緩むようになり、数字が上手く書けるようになると共に、学
特別支援学校における ICT 活用と情報モラル教育に関する研究
2013 年度
習活動でも数字(1~3)の数を理解し選べるようになってきた。夏休みには宿題として
も取組ことが出来た。それ以外に、お絵描きアプリをして楽しみながら腕を動かす練習を
する事が出来た。
4.成果と課題
本児の障害の特性上立位を行う時には、一度に多くの指示を出すと混乱してしまうので、
肘の動きに焦点をあてて活動を行うように注意をした。自分の手先を見たり、左に倒れな
いように自分で支えたりといった声かけは初めから行わず、何度も同じ練習をする中で声
かけし、見ることと肘を曲げることや自分の身体を支えることと肘を曲げることなどを一
緒に練習するようにして行った後に、アプリを使っての活動に取り組んだ。本児は、最初
から iPad にとても興味を持っていたので、苦手な腕の動きにも意欲的に取組、腕のコント
ロールも徐々にだが上手になってきており、スムーズに動かせるようになってきている。
本児の腕の動きから考えて、パソコンを使っての活動にはなり難く、直接画面にタッチ
して、わずかなタッチでもアプリが動く iPad は、本児の活動には適していると考えた。ま
た、授業の流れを考える上で、長下肢装具をつけて立位台に立ち、活動をして立位台を片
付ける等限られた時間内での活動を考えると、ふたを開けてすぐに始められ、本児の活動
に合わせて位置を調整する等の手軽さも iPad を使う大きな利点だったと考える。そして、
大好きな友だちと iPad を使ってのメールのやり取りにも取り組んだ。大きな画面での写真
紹介やクイズの出し合いをしたりと実際にメールのやり取りを楽しんで行えていたので、
メールの返事をひらがなを覚えて打つまでには1年間では至らなかった。本児の意欲や活
動の幅を広げていくためには、教師自身が iPad を使いこなせないといけないと反省してい
る。もっと色々なアプリを知って使いこなせるように研修をしていきたい。また本児にと
っては、複雑な腕の動きが難しい面もあるので、ひらがなの習得に向けては、入力方法を
本児の動かしやすく確実な舌打ちや首の動き等を検討していってはどうかとも考える。
写真6
『モジルート』は、幼児向けの文字練習アプリ
で、文字の 1 画ごとに、ルート(道)と、乗り
物と、ゴール(旗)が表示される。乗り物に応
じて音が鳴り、なぞった道を乗り物が走る。乗
り物が旗に到着すると、次の道が表示される。
道をなぞり終わると、その文字が音声で読み上
げられる。子どもに合わせて難易度を設定する
ことができる。
『モジルート』
幼児向け知育アプリ「ワオっちシリーズ」
株式会社ワオ・コーポレーション
http://waochi.wao.ne.jp/appli/2146.html
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