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台湾知財ニュース(16年08月号)
台湾知財ニュース(16年08月号) ・米発明特許登録数 台湾は世界4位獲得 特許数からみる台湾、中国の産業競争力 ・著作権法改正案成立 コピーガード 立法化へ ・海賊版撲滅、違法コピー率 40%以下を目指す ・立体商標保護 裁判実務上起こる問題 ・ネットオークション コピー商品の新規販路 ❏米発明特許登録数 台湾は世界 4 位獲得 特許数からみる台湾、中国の産業競争力 経済部技術処が昨日に発表した報告では、昨年、台湾の米での発明特許取得状況は実 に見事なもので、特許取得数、百万人あたりの特許取得数及び特許技術の重要度(質) からみて、それぞれ世界 4 位、3 位、4 位となっており、特に半導体製造プロセス関連 技術、液晶ディスプレーの分野における分布状況が突出しているから、台湾産業界の技 術競争力が持続的に向上しつつあることがわかる。 同研究報告に示されているように、研究開発の投資面においては、2002 年の台湾にお ける研究開発投資額が世界で 11 位、産業部門のほうが 12 位。そして研究開発総投資額 が GDP に占める比重、また産業界による研究開発が産業付加価値に占める比重も急拡大 する様相を呈している。 経済日報 2004.08.09 ほか (解説) 特許技術の運用についていうときは、本国特許の海外への流出と外国特許に依存する 度合いを勘案しなければならない。外国への特許出願は国内の技術を外国へ流出させ、 逆に外国から特許供与を受け入れることは国内産業がどれほど外国の技術に依存してい るかを判断する材料となる。台湾においての外国人による特許出願が結果的に国内産業 の技術革新にプラスになることが多く、競争力や生産力のアップに大いに役立つことが 多くの研究でも実証されている。 世界各国の特許状況を分析するには、WIPO(世界知的所有権機関)のデータベースが 貴重な参考資料になるが、台湾は WIPO に加盟していないため、主務官庁の経済部知的 財産局の統計資料を判断材料にするしかない。2003 年の統計資料によると、台湾にお ける特許新規出願件数は 65,742 件で、出願人の国籍を問わず、発明、実用新案、意匠 登録出願の成長率は 7.07%、そして特許公告査定を受けた件数は 53,034 件、成長率が 17.74%。出願件数全体の 39.6%、特許査定件数の 41.6%は外国人による出願が占めてお り、国別にみれば日本とアメリカからの出願が比較的多く、それぞれ 17.6%、11.2%と なっている。 次に台湾と中国の特許出願状況を見てみよう。台湾のアメリカ特許取得件数は 5,298 件、米特許数に占める割合が 13.3%で、日本の 21%、ドイツの 6.7%に次いで第 4 位を獲 得している。中国の 2003 年の新規出願件数は国内外からの発明、実用新案、意匠登録 出願を含めて 30 万 8,487 件に達し、22.1%増加、そして特許査定件数は 18 万 2,208 件 にのぼり、37.6%のプラス成長となっている。そのうち、外国人による新規出願及び特 許取得はそれぞれ全体件数の 18.6%、17.9%を占めている。日本からの出願が 42.3%で一 番多く、アメリカはその半分の 21.2%にとどまっている。 次に台湾と中国の貿易統計資料と特許数を比較対照してみる。1998 年∼2003 年の 5 年間、台湾と中国の貿易総額は平均で年間 15.5%増の成長を遂げている。2003 年の対中 貿易総額は 463 億ドルに達し、わが国貿易総額の 17.1%を中国が占めることになり、ア メリカ、日本を抜いて台湾最大のパートナーに躍進した。同時に、台湾の中国における 特許出願も増加傾向を見せている。2003 年の中国における台湾人による特許出願は 10,112 件で、中国特許出願件数全体の 5.87%を占めている。同時期の年間成長率も 19.3%とやや高めの数字となっている。しかし、逆に中国の対台湾輸出総額は 110 億ド ルで、台湾の輸入総額に占める割合が僅か 8.6%。また、中国からの特許出願の出願件 数全体に占める割合が僅か 0.27%で、他国に比べてかなり少ない。以上の資料から、台 湾と中国間の貿易額も特許数も量的なアンバランスを抱えていることが分かる。 ❏著作権法改正案成立、コピーガード 立法化へ 著作権法の一部を改正する案は昨日の立法院本会議で可決された。今まで違法コピー に頭を悩まされてきたレコード会社や映画会社、デジタルコンテンツ製作者のために法 案に盛り込まれたコピーガード関連規定は昨年の法改正で国会を通らなかったが、今回 の改正で技術的保護手段に関する規定の新設が認められたため、今後言語や音楽の著作 物に施されたコピーガード装置やネット映画の暗号化などのコピー防止技術につき、合 法的な許諾がない限り、これを解除することができない。違反者に対しては、一年以下 の懲役、拘留に処するほか、2 万元以上 25 万元以下の罰金を併科することもできる。 米側は前々から著作権法改正の進捗状況や法案の内容に強く関心を示している。米国 商会もついこの間、立法院議長の王金平氏と会見した際、とりわけ著作権法改正案につ いて審議ペースを速めるよう促した。今回の改正案でポイントとされている、税関にお ける知的財産権侵害疑義物品に対する通関の一時的差止め、「営利を目的とする」と 「営利を目的としない」の区別、コピーガード装置、最低刑罰への制限等規定はすべて 米側が望んだとおりに国会を通過したため、台米間の自由貿易協定締結交渉にプラス材 料になるだろうと見られている。 改正案で、複製行為を「営利を目的とする(営利を意図する)」と、「営利を目的と しない(五点以下の著作物又は時価 3 万元を超えない範囲内での頒布は罰しない)」と に分けて定める現行規定が改められ、他人の著作財産権を無断で複製して侵害したもの は、三年以下の懲役、また販売若しくは貸与を目的としてこれを行った場合は六ヶ月以 上五年以下の懲役に処する、となっている。 また、学生たちがインターネット上の著作物を利用したり資料をコピーしたりするこ とが営利的行為なくても罪に問われかねないことを回避するため、特別に法案の中で 「たとえ合理的利用の範囲を超えて侵害を構成した場合でも、検挙するか処罰するかは 検察官と裁判官が侵害された物品の金額と数量を考慮して法により裁量をする」という 補充説明を付け加えている。言い換えれば、検察官と裁判官には、「微罪を摘発しない、 罰しない」という裁量の余地が与えられているということである。 このほか、改正案にも「参考に供するための著作物の合理的利用は、著作権侵害を構 成しない」ということが明確に定められている。ただ、立法院は付帯決議をもって、 「図書館でのコピーや教学用のコピー、教育機関による遠距離教学のための利用などを 含めて著作物の合理的利用の範囲をどう限定するかについて、利用者と権利者団体との 協議に所管機関が協力し、また年内に協議を終わらせるように努めなければならな い。」と要求している。 一方、「税関における(知的財産権侵害疑義物品の)通関の一時的差止め」について、 現行規定により、まず著作権者が税関に対して差押えの申立てをしてから、税関がその 申立てにより著作権侵害疑義物品を差押えることになっているが、改正後の規定による と、税関は職務の執行にあたって、輸出入貨物で外観から明らかに著作権侵害の疑いが あるとみられるものを発見した場合、権利者と輸出入業者にその旨を通知したうえで、 権利侵害疑義物品と認められたものに対して、税関は一時的な通関差止め措置をとるこ とができる。 知的財産局ニュースリリース 2004.08.24 ほか (解説) 去年に続く今年の著作権法改正が国会を通過したことは、欧、米商会による台湾立法 院や行政当局へのロビー活動が奏功したといえなくもない。なにしろ、貿易経済交渉に 絡めて知的財産権保護を問題に取り上げて、相手国に屈服させるのは米側の常套手段で あって、最初は著作権法の更なる改正に反対していた立法委員(国会議員)も台米間の 貿易経済関係の修復にわざと邪魔をしていると非を責められるのを恐れ、さらに立法院 選挙を 12 月に控えることもあって、水面下では文句を言いながらも、臨時会にて改正 案を可決し、米の著作権法よりやや厳しいものにしてしまった。米側に大きく譲歩した 形になったが、違法コピーを防ぐためのコピーガードを勝手に除去することができない ようにしたという点から、経済当局が力を入れているデジタルコンテンツ産業の発展促 進を取り巻く法的環境が一応整ったことになる。ただ、著作権者の権利を確保すること を重く見た改正案に利用者団体は納得がいくはずはない。立法院の附帯決議で、利用者 団体と権利者団体は著作権侵害の例外とされるいわゆる「合理的利用」の範囲につき、 主務官庁を介した協議を通して双方が納得できる結論を年内に出すことになっているが、 今まで意見の開きが大きかっただけに、この溝をどう埋めるか、関係当局が頭を痛めて いるようだ。双方の歩み寄りができない場合、権利者団体が訴訟を提起するのに対抗し て、利用者団体がまた公平取引委員会に訴えたりする戦法に出るだろうから、訟争が 延々と続いていったらきりがない。けじめをつけるためにも、今こそ行政が実行力を見 せるべきときではないか。どういう出方をするか、関係者にとどまらず、国民の皆さん も事態の推移を見守っている。 ❏海賊版撲滅、違法コピー率 40%以下目指す 経済部は海賊行為への取締りを徹底させるため、合同捜査班を設けて光ディスク製造 工場の立入検査を頻繁に行っているほか、内政部は警政署のもとに設けてある知的財産 権保護の専門警察隊をさらに 220 人体制に増強して海賊版の取締に当たらせ、そして財 政部でも専門プロジェクトチームが設けられており、水際でのチェック体制を強化して いる。こうして各関連部会が連携して海賊版の撲滅に取り組むことが功を奏で、違法コ ピー率の減少につながった。BSA が世界各国における海賊版の使用状況を調査した結果 では、アジア太平洋地域における違法コピー率が平均で 53%、台湾は 43%で、日本に次 いで二番目に低いということは、知的財産権保護の行動計画が持続的に効果を高めてい ることがいえる。 ところで、水際措置のほうはどうなのか。米税関が発表した 2003 会計年度の模倣品 押収データをみてみよう。米税関で押収された台湾製品は金額にして 61 万ドル、2002 年の 2,650 万ドルと比べて大幅に減少している。さらに、今年上半期の最新報告では、 台湾模倣品の押収金額は 6 万ドルにとどまったことから、施策による抑止効果を現しつ つあることが裏付けられた。知的財産権保護の専門警察隊の法制化について、行政院は 先日、これを内政部警政署保安警察第二本隊の下に第五大隊として新たに設置すること を閣議決定し、10 月 1 日から本格的にスタートさせることを予定している。 「これからも積極的に関連部会と連携をとりながら、権利者団体とも協力していく。 また、知的財産権保護体制をいかに強化するかを検討し、並びに流通ルートへの厳重な 取締及び国民への宣伝強化によって違法コピー率を 40%以下に抑えるようにしたい」と、 経済部はあらためて今後の方針を強調した。 自由時報 2004.08.06 ほか (解説) 2002 年に「知的財産権保護行動計画」を始めて以来、関係当局による知財権侵害事件 の摘発が積極的に行われてきた。今は三ヵ年(2003 年 2005 年)行動計画のもと、取締 活動等を続けており、また知財権主務官庁の経済部も、各関連部会から関係者が集まっ た「知的財産権保護協調報告会議」という定例会を発足させた。知的財産権保護活動の 執行状況がこの会議で報告され、執行上の問題があれば、各関係当局が討議し処理の方 針を決めるという仕組みになっている。もちろん、知的財産権を保護するには、様々な 手を打たなければならない。まず第一に、法整備からはじめること。法律による保護の 枠組みができなければ、警察当局や司法当局は動きかねる。WTO 加盟に備えた知的財産 権諸法の改正はもちろん、加盟が実現した後も必要に応じて改正を行い続けた。去年 7 月の改正で著作権法は厳罰化する一方で、従来の 45 万元の罰金が一気に 800 万元に引 き上げられ、海賊版を作るなどの違法コピー行為についても親告罪から非親告罪にした。 それでも米側はまだまだ不十分であると厳しく指摘し、更なる改正を求めた。今年の著 作権法改正の背景にはこうした米側の大きなプレッシャーがあった。 40%以下の違法コピー率を目指して、光ディスク製造工場への夜間の大掛かりな立入 検査や専門警察機動隊による強力な取締の結果、夜市の露天商やパソコン周辺機器販売 の商店街からコピー商品が姿を消した。海賊版製造工場の情報を調査機関に通報して権 利侵害物品の製造に使われる機具等設備が押収された場合、通報者には最高 1000 万台 湾ドルの報奨金が支給される。このほか、密輸取締条例の改正が行われたことで、知財 権侵害にかかわる輸出入貨物について官没等処分をする権限も税関に与えられた。これ らの実績は、米 IIPA、BSA 等権利者団体や米税関が発表したデータから明らかになった ことで、決して台湾当局がアメリカを説得するためのでっち上げ話ではない。今まで総 勢 220 名隊員の臨時体制で知的財産権保護にあたっていた警察機動隊の法制化も近いう ちに実現される見通しで、警察官 315 名の編制で海賊版との戦いに勢いをつけ、内外に アピールする思惑がうかがえる。 一方、知的財産権事件担当専門検察官の育成についても、法務部では、理科大学と連 携して 10 名から 15 名の検察官を年に二回科学技術法科大学院へ派遣してゼミを行った りなどしている。また裁判所の知財権侵害者に対する量刑が軽すぎると外国企業からよ く批判されるのだが、ここ数年、裁判官の智財法違反事件における量刑が重くなる傾向 が見え始めている。例えば執行猶予付きの判決は 2002 年の 46%から今年 6 月までの 42% に減少、そして 6 ヶ月以下の懲役を言い渡された、或いは罰金をもって刑に代える案件 も 2002 年の 64%から今年 6 月までの 57%となっている。なお、知的財産専門高等裁判 所の設置も検討されているところである。 違法コピー対策は国を挙げて取り組むべき課題であって、政府機関はもちろん、国民 にもコピー商品や海賊版を買わない、使わないようにしてもらいたい。 ❏立体商標保護 裁判実務上起こる問題 去年、高等行政裁判所の「いちごキティ」商標異議申立事件(以下、本件訴訟)につ いての判決が法曹界でいろいろ論議を呼んでいる。2003 年 4 月の商標法改正で立体的形 状からなる標章が商標としての保護を与えられ得るようになったものの、「いちごキテ ィ」事件に提起された問題のように、立体物を商標として使用することと、平面的な商 標の立体商品化との異同をめぐって裁判所や主務官庁の見解はまちまちで、商標権が、 平面的な商標を立体物に使用することに及ぶかという問題について、裁判実務上民事、 刑事、行政事件における取扱いは一致していないし、改正商標法が施行された今でも、 未だ幾多の疑問を残したままである。 本件訴訟において、サンリオ台湾法人の「台湾三麗鴎」社は、いちごキティは同社所 有の周知商標「HELLO KITTY」をもとに創り出した変身キティシリーズの一つであり、 係争商標はいちごキティと同様の特徴を有し、両方には一貫性がみられ、刑事裁判にお いても商標の類似を構成すると認めたことから、その登録査定を取り消すべきだと主張 した。これに対し、本件被告の経済部は、「・・・いちごキティはわが国で商標登録を受 けていない。商標法が保護する対象をぬいぐるみやキーホルダーなどいちごキティのキ ャラクターグッズに広げて認めるには、現行制度からして適法性の問題がある」とした うえ、知的財産局の異議成立処分を取り消す訴願決定を下し、本件争点は「いちごキテ ィの使用態様は商標法が規定する使用形態に該当するかどうか」にあることを重ね重ね 強調した。ただ、行政裁判所ではこの点にもっと突っ込んで追究しなかった。 経済日報 2004.07.29 ほか (解説) 異議申立の根拠となる著名商標は、商標法第 6 条に規定する使用態様に合致すること が先決条件であり、旧法では立体的形状からなる商標を保護していない以上、商標法が 規定する使用態様に該当するものには立体商標が含まれていないはずである。いちごキ ティは著名商標であるかどうかは別として、使用態様に関する規定に合致しなければ、 商標法が保護する対象にはなれない。訴願決定はこのあたりに重点が置かれていたよう に思えるが、本件訴訟の判決ではいちごキティ商標の使用態様や立体商標の保護等問題 点に触れていない。 刑事裁判において、他人の商標の図案を平面的なものにするのでなく、立体商品化し て権利を侵害した場合、旧法第 62 条の「他人の商標の図案に類似するものを使用す る」侵害態様に該当して行為者に刑罰が科されるべきかどうかについて、賛否両論が併 行している。 否定説(高雄地方裁判所 92 年易字 210 号判決)によると、旧法で立体商標が登録さ れない以上、二次元の文字や図案をもって商標権を取得してから、かえって本来認めら れない権利を取得するのはおかしい、という。たとえ立体商標の登録出願を認めたとし ても、平面商標の立体商品化が絶対に禁止されることはない。いわゆる「立体商標」は 立体物を商標として使用することであって、商標の図案を「立体商品化」することとは 異なり、新法で立体商標を容認するからといって、商標の立体商品化の禁止に直結する ことはできない。他人の商標を立体商品化してできたものは商品で、商標ではない。刑 法では原則的に被告に不利な類推解釈を禁止している。あえて商標権者の商標を「使用 する」と解することは刑法の類推解釈禁止原則に反する。 ところで、他人の平面商標を商品化することは、旧法第 61 条第 1 項の商標権侵害を 構成し、同法第 66 条の損害賠償成立要件を満たすということになるかどうかについて、 民事裁判では刑事裁判の見解を採用するケースが多い。民事は罪刑法定主義のような制 限がなく、類推解釈をしてもよい。このため、民事裁判で商標権の保護範囲を平面商標 の立体化に及ぶように広く解釈することがよくある。 ❏ネットオークション コピー商品の新規販路 グローバル規模でネットオークションを運営している eBay が 3 年ぐらい前に開設し た ブ ラ ン ド 品 を 主 力 取 扱 商 品 と す る オ ン ラ イ ン シ ョ ッ プ 、 「 clothing, shoes & accessories」はオンラインショッピングの好調の波に乗ったように見事に売上げを伸 ばしてきたが、ネット上のブランド品販売の好況ぶりとは裏腹に、eBay のサイト上に出 品されているティファニーのジュエリー商品の 75%がニセモノだという指摘があり、6 月 21 日に Tiffany 本社から裁判へ持ち込まれたことがマスコミの報道であっという間 にインターネット上で話題となった。 工商時報 2004.08.27 (解説) ここ 10 年間、ネット通販は中国、イタリアに続き、世界で規模が三番目に大きい違 法コピー商品市場に成長している。専門店などで自分の目で直接確かめた上、購入する 対面販売と違って、ネット販売は商品を購入する前に品質などを確認しておくことが無 理で、バイヤーによる出品者への今までの評価、写真や商品説明だけが頼りだから、売 価が高く設定されているブランド品のコピー商品を真正品と偽ってオークションに出品 する悪質業者に騙された消費者の権利をどう保護するかが大きな課題となる。オークシ ョンを運営している事業者の eBay は、同サイトにコピー商品が販売されていることに ついて、専門家でないから正規品かコピー商品かを確かめるすべはないし、運営者とし て果すべき責務でもない、とコメントしている。 ある調査では、2003 年の台湾における個人向けオンラインオークションの取引額は 100 億元を超えているという。今年 1 月に、yahoo!オークションサイトで「オレンジマ マ」という超人気ストア(出品者)が出品していたバーバリー商品は全てニセモノであ ることが発覚し、1000 人以上の被害者を出していることが警察の調べで明らかになった。 警察の家宅捜査で押収された数え切れないコピー商品が体育館のスペースをいっぱいに したシーンが今でも強く印象に残っている。「オレンジママ」は、正規品とコピー商品 をいかに区別するかを教える本まで出して、マスコミの取材を受けたり、テレビ番組に も出てオークション取引の成功体験談を語ったりするほどの人気ぶりだった。 eBay や Yahoo を主とするオンラインオークションの台頭は、新規販路を開拓した意味で は大変ありがたい話しかもしれないが、ブランド品を専門店で買うより安く入手できると いうキャッチフレーズが消費者の購買意欲をあおり、ブランド品を目当てにオークション サイトに殺到するユーザーが増える一方、正規品か違法コピー商品かを判断する能力の欠 ける落札者があとになってニセモノであることに気づいてトラブったケースが相次いで起 きている。インターネット時代に即応した販売の新たな手法である反面、商標法違反や詐 欺などといった犯罪を生み出す温床にもなりつつある。