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生物多 - JBIF:地球規模生物多様性 情報機構日本ノード

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生物多 - JBIF:地球規模生物多様性 情報機構日本ノード
GBIFワークショップ
(通算第10回)
21世紀の生物多様性研究
生物多様性情報を
「文化」
を考える
めぐる
12月12日(土)
2015年
13:00∼16:35
国立科学博物館 上野本館 日本館講堂(2F)
http://www.kahaku.go.jp/userguide/access/index.html
要旨集
主 催:国立科学博物館/東京大学大学院総合文化研究科
後 援:国立遺伝学研究所
連絡先:noffi[email protected]
http://www.kahaku.go.jp/event/all.php?date=20151212
時 間
演 題
講演者(敬称略)
所 属
13 : 00 ∼ 13 : 05
開会あいさつ
細矢 剛
国立科学博物館
13 : 05 ∼ 13 : 35
GBIF ご紹介・趣旨説明
細矢 剛
国立科学博物館
桐原 崇
環境省自然環境局 生物多様性センター
13 : 35 ∼ 14 : 05
身近な生物情報を共有し活用する
~いきものログで広がる生物多様性への理解~
14 : 05 ∼ 14 : 35
休憩
14 : 35 ∼ 15 : 05
学校教育から小さな文化を再構築する
~市民科学者を育むプロセスを考える:
科学部活動を例に~
佐々木 宏展
摂津市立第二中学校
15 : 05 ∼ 15 : 35
ともに地図と道具をつくり 、
よりよくしていく仕組み
古川 泰人
北海道大学/マップコ
ンシェルジュ株式会社
15 : 35 ∼ 16 : 05
S-Net 自然史情報を構成する標本データと
その背景文化
福田 知子
国立科学博物館
16 : 05 ∼ 16 : 25
総合討論
16 : 25 ∼ 16 : 35
閉会あいさつ
伊藤 元己
東京大学
身近な生物情報を共有し活用する
∼いきものログで広がる生物多様性への理解∼
桐原 崇(環境省自然環境局生物多様性センター)
1. はじめに
生物情報を活用しようとしたとき、情報を管理する主体やフォーマットが異なり苦労した経験はないだろう
か。これまで、さまざまな主体により行われてきた調査・研究の成果や情報は主体ごとにばらばらに管理され
てきた。また、市民団体や個人の持つ情報は、地域の生物多様性をあらわす質の高い情報も多いが、その他の
情報に埋もれ上手く活用されないことが多かった。このような状況を改善し、わが国の生物多様性の把握と保
全を進めていくためには、多様な主体が連携し、各主体が持つ情報を一元的に運用していくことが求められて
いる。
生物多様性センターではインターネットを活用して全国の生物多様性情報を統合的に共有化して提供するシ
ステム「いきものログ」を構築し運用を行っている。いきものログは、環境省をはじめとする国の機関・地方
公共団体・研究機関・専門家・市民等が管理する生物多様性情報を登録し共有することができる。生物多様性
センターでは、各主体が管理する質の高い膨大な生物多様性情報を共有化し、わが国としての生物多様性情報
の蓄積と利活用を図るとともに、国際的にもこれをすすめていきたいと考えている。
図 1 いきものログ TOP ページ
http://ikilog.biodic.go.jp/
GBIF ワークショップ 21世紀の生物多様性研究
2
図 2 共有化のイメージ
さまざまな主体から生物多様性情報
を収集し、一元化して共有していく。
2. 生物多様性情報の共有化
例えば、都道府県が別々に蓄積している生物多様性情報を共有化し、一元的に運用することで、都道府県境
を越えたシームレスなデータを得ることができ、ひいては全国について生物多様性情報を共有化する効果が期
待される。また、いきものログは GBIF(地球規模生物多様性情報機構)と同じく Dar winCore を登録フォー
マットとして採用しており、蓄積されたデータの国際的な利活用も可能である。
3. 共有化における希少種情報の管理
いきものログでは、希少種等の情報を保護するため、特別な権限を持つユーザ以外には希少種等の詳細な位
置情報が公開されない制限を設けている。情報の持つ特性に合わせた適切な管理、運用を行い、共有化と利活
用を進めていくことで真に生物多様性の保全に資することができると考える。
4. いきものログの活用
いきものログでは、各主体が独自に市民参加型調査を実施できる機能や報告用アプリ、API の公開などを
行っている。これらの機能を活用することで、各主体が連携し、情報を効率的に収集、共有化できるだけでな
く、誰もが身近な観察から生物多様性情報の蓄積に参加することができ、生物多様性への理解が促進されると
ともに、蓄積された情報はわが国の生物多様性保全に係る基礎的情報として、自然環境行政等に広く活用され
ることが期待される。
図 3 地図表示画面
行政区画や各メッシュ精度での表示が可能で、背景図は地理院地図と白地図から選べ
る。外来種の分布位置情報は詳細な精度での閲覧が可能だが、希少種等の詳細な位置
情報は、特別な権限を持つユーザ以外には公開されない。
なお、普通種の分布位置情報については、2016 年 2 月に予定しているリニューアル
公開にあわせ、詳細な分布位置情報の公開を進めていく予定である。
生物多様性情報をめぐる「文化」を考える
3
学校教育から小さな文化を再構築する
∼市民科学者を育むプロセスを考える∼:
科学部活動を例に∼
佐々木 宏展(摂津市立第二中学校)
大学で生態学を学び、大阪府摂津市の公立中学校に赴任した。それまで当たり前であった生物多様性に関す
る話題は地元の人にまったく伝わらず、自分の中の前提が大きくゆらぐとともに、その温度差に驚いたのが始
まりである。赴任校の校区は、都市環境で、自然に関する経験も乏しい生徒ばかりであり、当然のことながら
身近な自然も認識されずにいる。かつて多くの学校教育において、ささやかに受け継がれていたであろうナ
チュラルヒストリーの文化は、徐々に姿を消しつつあるのではないだろうか。GBIF の目指す生物多様性情報
の オープン化 以前の問題が地域には山積されている。GBIF の根幹をなす博物館から公開された多くの生物
多様性情報は、科学部活動のような地域に根ざした活動のプロセスを経験し、博物館の取り組みと共同する中
で情報創出の一旦をになっていたことだろう。これらの生物多様性に関する在野の方々も、多くは高齢化とと
もに活動の衰退を迎えている。
学校教育における科学部活動は、古くから地域の生態系に根ざした取り組みを展開してきた。活動における
地理的なスケールは小規模であるものの、生物相のモニタリングだけでなく、生態系の攪乱履歴も含めた環境
の変化を把握しつづけてきた。ささやかではあるが、フィールドワークをベースとした人と自然の関わりを継
続的に実践してきた主体といえる。しかし、これらの活動も閉ざされた場合が多く、学校教育のみで完結して
いることが大半だったであろう。加えて、科学部活動を主導していた顧問も高齢化を迎え、大量退職とともに
地域のナチュラルヒストリー継承が分断されている場合が多い。
本タイトルにつけた 小さな文化 とは、地域のナチュラルヒストリーを基した科学部活動を再構築するプ
ロセスのことである。演者は、地域における 人と自然 の関わりをベースとして、 人と人 、 人と地域(生
涯学習やまちづくり) をつなぐ中で生物多様性情報を共有するあり方を模索してきた。これは、世界規模で
巨大科学を構想する GBIF では見失いがちな1つの生物情報や標本をめぐる 関わり のあり方の提案である。
生物多様性国家戦略から都道府県スケールの生物多様性地域戦略、市区町村レベルの地域戦略により、学校教
育に対して生物多様性に関する外的な要請は、盛り上がりを見せるものの、市民の主体性をもとにした内的な
取り組みはまだまだ見えてこない。そこで、ささやかではあるが学校教育(特に科学部活動を通して)古くか
ら受け継がれている地域のナチュラルヒストリーを継承し、子どもたちが今日的なツールを活用する中で、
小さな文化 をボトムアップ的に再構築する試行錯誤の過程を話題提供したい。
GBIF ワークショップ 21世紀の生物多様性研究
4
自然
学校
地域
生物多様性情報をめぐる「文化」を考える
5
ともに地図と道具をつくり 、
よりよくしていく仕組み
古川 泰人(北海道大学/マップコンシェルジュ株式会社)
「地図化」は生物多様性情報学においても重要なファクターである。
たとえば、種の分布データを地図化し、周辺環境データと考察することは、生物多様性保全では必須の作業
である。たとえば種データの地図化を行うには、GBIF や、iNaturarlist(http://www.inaturalist.org/)などから
位置情報のテキストデータをダウンロードし、GIS(地理情報システム)ソフトウェアを用いて、背景地図
データの上に展開しなくてはらない。
近年、世界的規模でこれらの GIS ソフトウェアや背景データにもオープン化の波が押し寄せ、多種多様な貢
献者によってその進化スピードが加速している。たとえばオープンソース GIS ソフトウェアの QGIS(http://
qgis.org/)は日々プログラムの改善や新しい使い方の情報が共有され、オープンな地図作成プロジェクトであ
る OpenStreetMap(https://www.openstreetmap.org/)では、世界各地の道路や建物が常に更新されている。ま
た、Github(https://github.com/)といった世界中の集合知を活用してスピーディーな開発を進めるシステム
も国内外の民間組織や行政機関などで導入が進んでいる。
図 1 オープンソース GIS ソフト QGIS
GBIF ワークショップ 21世紀の生物多様性研究
6
これらの活動はごく一部の好事家による趣味や仕事ではなく、
「オープン」をキーワードに、開発者、地域
住民、行政が協力しあって主体的なイノベーションも生み出しつつある。例えば、オープンソースやオープン
データを活用し、各地域のエンジニアと住民がともに社会課題を解決していく Code for X(例えば http://
code4japan.org/)などのコミュニティ活動は、地図化以外にも問題解決のための様々な成果を生み出し、挑戦
を続けている。
本講演では、オープンデータやオープンソースを中心とした最新事例を紹介し、これにより GBIF コミュニ
ティが注目する「オープン化と共有の文化」や、今後確実に訪れるオープンサイエンスへのヒントとなれば幸
いである。
図 2 オープンな地図作成プロジェクト OpenStreetMap
図 3 開発プロジェクトのための共有ウェブサービス GitHub
生物多様性情報をめぐる「文化」を考える
7
S-Net 自然史情報を構成する標本データと
その背景文化
福田 知子(国立科学博物館)
S-Net(サイエンスミュージアム ネット)http://science-net.kahaku.go.jp/ の「自然史標本情報検索」は、全
国の標本保存機関の標本ラベル情報を収集したデータベースである。現在までに植物、昆虫、魚類、哺乳類な
ど約 360 万件の現生生物の標本データが掲載され、誰でも自由に日本語で検索できる。
自然史情報のデータベースである以上、S-Net の自然史情報検索は、自然史情報をより正しく反映している
ことが望ましい。しかし、標本に基づいていることから、S-Net のデータベースは標本の「文化」に左右される
側面がある。標本自体の文化としては、まず、分野の偏りがある。S-Net のデータのほぼ半分は植物、次に昆
虫・魚類のデータが占めており、菌類・両生爬虫類・哺乳類などの割合は数%となっている。これは、標本の
作りやすさや、それぞれの分野における標本の役割に関係していると思われる。時代・地域による偏りも大き
い。地衣類のように専門家の数が限られる分野ではデータが専門家の居る地域に偏る場合もみられる。さらに、
標本データ「提供」についての背景文化のために、提供できる・できない館があることから、提供館の偏りが
出ている。これは、データの提供館の活動の中での標本整理・保管に対する優先度、標本データのオープン化
に対する考え方や手続の方法等であり、館の形態や各館の方針によって様々な場合がある。
S-Net の自然史情報検索が、自然史情報をより正しく反映するには、以上に挙げたような標本文化による
データの歪みを修正することが必要である。データ空白地帯を埋めて地域的な偏りを是正し、ツール・方法の
GBIF ワークショップ 21世紀の生物多様性研究
8
提供により各館のデータ提供に関する負担を軽減するなど、データを提供しやすい環境をつくる工夫が必要と
考えられる。
データの内容の解析・是正と並行して、データの利用についても考えたい。標本に基づいたデータには、
データを実際の標本に戻って確認できること、生育場所他について個体レベルで情報を得られることなど、標
本ならではの利点がある。特に、植物・魚類などデータが豊富な分野では、多くの有用なデータが入手できる
可能性がある。今後、S-Net を使いやすい検索サイトにできるかどうかは、標本に関わるバイアスを考慮しつ
つ、どのように情報を取り出しやすい仕組みを構築できるかにかかっていると考えられる。
生物多様性情報をめぐる「文化」を考える
9
GBIFとは何か?
GBIF(地球規模生物多様性情報機構)はインターネットを介して、世界の生
物多様性情報を共有し、誰でも自由に利用できる仕組みをつくっています。
■ GBIFのビジョン
科学、社会及び持続可能な未来のために、生物多
様性情報が全域で自由に利用可能な世界の実現
を目指します。
GBIFのプログラムは多岐
にわたります。この状況を
簡 便 に 解 説 するため に 、
様々なパンフレットやグッ
ズ等が作成されています。
こ れ ら の 情 報 は 、G B I F
サイトのResources で
公開されています。
http://www.gbif.org/
resources/summary
570,330,653件 の
データを誰もが見ることができます
2015年9月現在
*OECD: 経済協力開発機構
■ GBIFの組織構成について
1. OECD*のメガサイエンスフォーラム(1998年)の勧告を経て、
2001年に発足した国際プロジェクトです。
2. 研究や政策決定などの目的に使用する生物多様性情報基盤を
整備し、生物多様性情報の集積と提供、情報集積・解析ツール
の開発、生物多様性情報に関わる活動の支援と能力開発を
行っています。
覚書(MOU)を交わすこ
とで各国や機関の参加が
3. 94の参加団体(37正規参加団体・16準参加団体・39その他
の参加団体・2連携団体;2015年現在、GBIF年報2014より)。
国または公共機関は覚書締結によって参加団体となります。
■ GBIFの使命
生物多様性情報を提供する世界随一の情報発信
源となり、環境と人類の福祉に役立つスマートソ
リューションを提供する事を目指します。
左図)GBIFでこれまで集積した生物多様性情報の
分布を示した地図。白い点が多い場所ほど
データ量が多いことを示します。
4. 事務局はデンマークのコペンハーゲン(コペンハーゲ
ン大学)におかれています。
5. 正規参加団体からの拠出金により運営されていま
す。日本では環境省が窓口になって拠出金を出してい
ます。
6. 現在保有する総レコード(資料+観察データ)数は約
5.7億です(2015年9月現在)。
7. 最初は種や標本レベルのデータを集中的に整備し、
将来は遺伝子や生態系レベルのデータにまでリンク
していきます。
認められます。MOUの
内容はホームページに公
開されています。
■ GBIFポータルの機能
http//www.gbif.org/
GBIFでは、全世界から集められた自然史標本情報、観察などに基づく
分布情報、チェックリストなどがこのホームページから発信されています。
以下のそれぞれの数字・項目をクリック
して検索できます。
全件(OCCURRENCES)
http://www.gbif.org/
種名(SPECIES)
GBIFポータルへは、こち
ら のリンクをどう ぞ。ス
データセット
(DATASETS)
マートフォンでも情報を閲
覧することができます。
データ提供機関
(DATA PUBLISHERS)
(データは2015年9月現在)
GBIFの果たす役割は以下
の論文で強調されています。
Guralnick, R. P et al.
(2007), Towards a
collaborative, global
infrastructure for
biodiversity
assessment. Ecology
Letters, 10:663‒672.
OCCURRENCESをクリックして全件検
索する際には、右ページの右上
Add a filter をクリックしてあらわれる
プルダウン・メニューの項目(種名、場
所、機 関コードなど)によって 絞り込
みを行います。
GBIFが提供するデータ
GBIFで維持されているデータは自然史標本データおよび観察データを中心にして
おり、そのデータ収集は世界各地からの貢献に基づいています。
現在では、GBIFデータポータルにおいて、およそ5.7億以上の情報が集積されて
います(2015年9月現在)。このデータ内訳は、毎年発刊される Annual Report やホームページにて紹介されています。分類群ごとのデータ集計や国別の
集計、論文での引用状況が分析され、課題のあるテーマや将来的に充実させるべ
きターゲットを定めて、データ整備の方向性が計画されています。
*本ページのデータはGBIF2014年報に依っています。
● 生物界・データタイプごとのレコード数
数(
ード
レコ
● GBIFデータの利用状況
Annual Report(年報)
には、新たに追 加された
データセットやGBIFデー
引用数
)
百万
タが 活 用された学 術 研
究、政策への適用事例が
紹介されています。
400
GBIFを議論している
GBIFデータを利用している
300
200
観察情報
100
標本情報
動物
植物
不明/その他
その他
分布情報には、目撃による観察情報と、証拠がある標
本情報があります。このなかでも最も多いのが、鳥類
の観察情報です。
0
2014
2008
2009
2010
2011
2012
2013
GBIFのデータを利用した論文が急増しています。
特に、地球規模での生物多様性研究への引用に
よって、その存在感が増しています。
市民科 学 者やボランティ
アによる野鳥観察の情報
が 各地のネットワークを
通じて集積されて、GBIF
に提供されています。
● 地域ごと・国ごとにみたデータ提供の状況
20
150
全レコードの提供者別内訳
10
16位
5
0
0
↓
I
50
国
100
ア
メ
リ
ス
カ
ウ
ェ
ー
デ
ン
イ
ギ
リ
オ
ス
ー
ス
ト
ラ
リ
ア
北米
37%
2014 年までの掲載数
B
ヨーロッパ
40%
15
韓
オセアニア
8%
公海
3%
オ
本
ー
ス
コ トリ
ス
タ ア
リ
メ カ
キ
ア
イ シコ
ル
ラ
ン
ド
アジア
3%
オ
ラ
ン
フ
ダ
ィ
ン
ラ
ン
ド
ド
イ
フ ツ
ラ
ノ ンス
ル
ウ
ェ
ー
O
B
ス IS
ペ
デ イン
ン
マ
南 ー
ア ク
フ
リ
カ
ベ
ル
ギ
ー
カ
ナ
日 ダ
アフリカ
4%
中南米
5%
データ数(単位・百万)
200
GBIF参加国別の分布データ数
現在は資料データ、観察データともに欧米が多く、アジアから提供されているデータは全データの約3%に
過ぎません。生物多様性に富んだアジア地域からのデータ提供が求められています。
アジア地域からのデータはまだまだ少なく、さらな
るデータの収集が求められています。
日本は情 報 提 供 数 が16
位ですが、その大半が、標
本に基づいた証拠付きの
データです。この点は国
内外で高く評 価されてい
ます。
日本ノードの活動
450万件のデータ、307のデータセットが、主に2つの機関から世界に
提供されています。
* S - N e tとは サイエンス
ミュージアムネットの略称
です。詳しくは下 記の本
文および最後のページを
参照ください。
日本でのGBIFに関する活動は、日本ノード運営委員会によって運
営されており、主に文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェ
クト(NBRP)によって支えられています。日本からは国立遺伝学
研究所および国立科学博物館からGBIFにデータが提供されてい
ます。国立科学博物館では全国の博物館から標本情報の提供を
受け、GBIFおよびS-Net*を通じて国内外に発信しています。国立
遺伝学研究所では、東京大学伊藤元己教授の研究室と協力し、
大学や各種研究機関・プロジェクト研究の成果・印刷物などに公
表されている既存の生物多様性情報を整備することで、GBIFに
情報を公開しています。第3期が開始された2012年からは、日本
ノードにおいても戦略目標を定め、データ整備や連携体制の整備
が進められています。
国際ネットワーク
国内ネットワーク
GBIF
S-Net
世界に発信
国立遺伝学
研究所
東京大学
各種研究機関
プ ロジェクト
印刷物など
主に国内利用
国 立 科 学
博 物 館
自然史博物館
大学博物館など
71団 体
研究会や講習会の実施を
通じたネットワーク形成
●日本ノードの戦略
1. 生物多様性情報の重要性に対する認知度を向上させる。
2. 生物多様性情報に関する博物館施設の機能を向上させる。
3. 一般から行政まで幅広く生物多様性情報の重要性を訴える。
4. 日本ノードのプレゼンスを向上する。
5. 関連プロジェクトとの連携を模索する。
6. アジア地域での共同的活動においてリーダーシップを発揮する。
■ 地域の博物館・研究機関からの情報を統合・発信するS-Net
S - NetのQRコードはこ
ちらをご利用下さい。
S-Netは、サイエンスミュージアムネットの略称で、国立科学博物館が
運営する自然史系博物館や科学館に関する情報ポータルサイトです。
国内の博物館・研究機関71機関が提供する自然史標本情報の検索が
できる(362万件:2015年9月現在)ほか、各館イベントやホームペー
ジ内のコンテンツ、研究員・学芸員を検索できます(501名:2015年9
月現在)。
国内のより多くの博物館や研究機関によるデータ公開を進めるため
に、毎年ワークショップを開催して意見交流するほか、NPO法人西日
本自然史系博物館ネットワークなどの博物館連携を通じた情報集約や
ヘルプデスク対応を進めています。
URL: http://science-net.kahaku.go.jp/
■ 講習を通じて生物多様性情報の発信力と活用力を高める
右写真:
2012年3月には、兵庫県
立大学計算科学センター
にて講習を開催し、分布
情報をもとづいた生息地
の推定や気候変動への応
答シミュレーションについ
て実習しました。
日本ノードでは、生物多様性情報の提供者を対象とした講習会や実習
を開催しています。講習会は、国立科学博物館およびNPO法人西日本
自然史系博物館ネットワークが担当し、生物多様性情報に関するデー
タ提供者への技術講習やデータの高度利用やシミュレーションといっ
た高度な解析技法の実習などを行っています。年に数回は、全国の博
物館関係者が集まり、GBIFに関する意見交換や交流が図られていま
す。
広がる国内ネットワーク
70以上の機関が参加するサイエンスミュージアムネットや、各種プロジェクト
によるネットワークにより、日本からの情報発信の輪が広がっています。
データ提供館(~2014年度)
北海道
東 北
関 東
中 部
近 畿
小樽市総合博物館、帯広百年記念館、釧路市立博物館、美幌博物館、北海道大学、北海道大学総合
博物館
秋田県立博物館、岩手県立博物館、弘前大学農学生命科学部、福島大学、山形大学博物館、よねざ
わ昆虫館、陸前高田市立博物館
厚木市郷土資料館、我孫子市鳥の博物館、大磯町郷土資料館、神奈川県立生命の星・地球博物館、
かわさき宙と緑の科学館、環境省生物多様性センター、群馬県立自然史博物館、国立科学博物館、国
立環境研究所、埼玉県立自然の博物館、相模原市立博物館、首都大学東京、森林総合研究所、森林
総合研究所多摩森林科学園、製品評価技術基盤機構、千葉県立中央博物館、筑波大学、東京大学、
東京大学三崎臨海実験所、東京農業大学、栃木県立博物館、那須野が原博物館、農業環境技術研究
所、農業生物資源研究所、パルテノン多摩、平塚市博物館、真鶴町立遠藤貝類博物館、ミュージアム
パーク茨城県自然博物館、山階鳥類研究所、横須賀市自然・人文博物館、理化学研究所
北海道大学総合博物館
北海道を中心とした維管束植物のコレクション
のデータを公開。
「サーバの維持管理の手間なしにデータを公開
できるので助かります。」
帯
倉敷市立自然史博物館、芸北高原の自然館、島根県立三瓶自然館、山口大学
四 国
愛媛県総合科学博物館、愛媛大学、面河山岳博物館、黒潮生物研究財団、高知県立牧野植物園、徳
島県立博物館
九 州
鹿児島大学、鹿児島大学総合研究博物館、北九州市立自然史・歴史博物館、九州大学、九州大学総
合研究博物館、熊本市立熊本博物館、佐賀県立宇宙科学館、宮崎県総合博物館
琉 球
沖縄県立博物館・美術館、琉球大学、琉球大学資料館
兵 庫 県 立 人と自 然 の 博 物 館
よ
ね
ざ
わ
昆
虫
「生物情報の基礎資料として研究・GISマップ作
成などに利用しています。」
「自館の公開システムを持たなくても公開できる
点が助かります。」
島 根 県 立 三 瓶 自 然 館
富 山 市 科 学 博 物 館
北九州市立自然史・歴史博物館
●
●
●
「当該種の分布記録のチェックなどに利用してい
ます。」
●
●
●●
●
●
●
●
●
●
●
●
高 知 県 立 牧 野 植 物 園
高知県産標本、牧野富太郎の採集標本の他、
明治神宮植物調査の資料を含む矢野佐採集標
本のデータ。
「サーバーを構えなくてもデータ公開してもらえ
るのは利点。特定の植物の標本をどこの館が所有
しているか調べる時に便利です。」
●
手
県
立
博
物
館
主に岩手県産の鱗翅目を中心とする昆虫類、維
管束植物・蘚苔類のデータを公開。
●
●
●●●●
● ●
●
●
●
●
● ●
●
埼玉県立自然の博物館
日本国内各地で得られた無翅昆虫のデータ約3
万件のほか、おもに埼玉県内で得られた動植物
データなど約6万件を公開。
●
「館内で管理している収蔵資料のデータベースを、
簡単な手順で閲覧できるのでたいへん便利です。」
●
●
●
●
●
●
●●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●●
●
●●
● ●
●●
●
●●●●
●● ● ●
「世界の標本の有効活用の要となるデータベース
として期待しています。大型化石の標本なども含
まれるといいですね。」
類
研
究
所
「生物学の研究だけでなく、社会的な課題の解決にも
役立つツールです。」
神奈川県立生命の星・地球博物館
植物、動物から菌類に至るまで、神奈川県内を中心とす
る各地の標本および画像データを提供しています。特に
魚類画像と植物標本のデータは充実しています。
「登録データを手軽に検索できるので、様々な生
物のインベントリー調査の基礎資料として、有用
なツールになると思います。」
●
ナンジャモンジャゴケの発見者、髙木典雄氏の
蘚苔類植物標本などを所蔵し、データベース化
できたものから順次公開しています。
鳥
「収蔵する標本が世界とつながっている例示として、
GBIFを紹介しております。」
●
名 古 屋 大 学 博 物 館
階
当研究所が所蔵する日本最大の鳥類標本コレク
ションのデータを提供しています。戦前の東アジ
アのデータがその中核を占めています。
維 管 束 植 物 標 本 の デ ータのほか、昆 虫 類 の
データの公開を進めています。
●
●
山
相 模 原 市 立 博 物 館
●
●
●
●●
●
岩
●
●
●
●
●
●
●
●
●●
館
●
●
●
●
北部九州を中心とした動植物標本、及び当館に
寄贈いただいた大型コレクション(三宅貞祥甲
殻類コレクションなど)のデータ。
●
念
●
●
「生物分布から地域の特徴を見いだすことに使っ
ています。」
●
●
●
●
●
国産の貝類および甲殻類の標本データ10万件
を公開。
「県内産の維管束植物の分布状況を整理するた
めに利用しています。」
●
記
●
館
オサムシを中心とした国産・外国産昆虫標本
約10万点の山谷文仁(やまやぶんに)コレクショ
ンを収蔵・一部公開。
●
年
「都道府県レベルで生物の分布の有無を調べる時な
どに使っています。」
近畿地方を中心とした植物・昆虫コレクション
や、1万点以上にのぼる小林コレクションを中心
とした鳥類標本のデータを公開。
島根県産を中心とする維管束植物標本のデー
タ。
百
「小規模の地方博物館では、データベースの構築
や公開を単独で実施する事が困難な為、埋もれが
ちな地域の財産を多くの方に活用していただくた
めの情報発信に活用しています。」
飯田市美術博物館、石川県立自然史資料館、岐阜県博物館、小松市立博物館、十日町市立里山科学
館「森の学校」キョロロ、富山市科学博物館、豊田市自然観察の森、豊橋市自然史博物館、長岡市立
博物館、長野県環境保全研究所、名古屋大学博物館、福井市自然史博物館、ふじのくに地球環境史
ミュージアム、三重県総合博物館、三重大学
伊丹市昆虫館、大阪市立自然史博物館、大阪府営箕面公園昆虫館、大阪府立大学、貝塚市立自然遊
学館、橿原市昆虫館、きしわだ自然資料館、京都大学、京都大学瀬戸臨海実験所、京都大学総合博物
館、滋賀県立琵琶湖博物館、多賀町立博物館、高槻市立自然博物館、西宮市貝類館、姫路科学館、
兵庫県立人と自然の博物館、和歌山県立自然博物館
中 国
広
十勝地方を中心とする北海道東部の維管束植
物コレクションのデータを公開。植物標本棚の
整備も進めているところです。
国立遺伝学研究所経由
国立科学博物館経由
● 国立環境研究所経由
●
●
豊 田 市 自 然 観 察 の 森
豊田市内を中心とした植物および昆虫の標本
データを公開。
「自前のサーバーを用意できなくても、広くデータを
公開できる点が非常に助かります。特定の動植物の分
布状況を調べる際などに利用しています。」
●
●
●
真鶴町立遠藤貝類博物館
日本では数少ない貝類に特化した博物館。当館
が所蔵する貝類標本のデータや周辺海洋の生
● 国立遺伝学研究所経由
物写真データを提供しています。
「生物多様性を知るための基礎資料となるデータ
● 国立科学博物館経由
ベース。生物地理特性の調査やインベントリー調
● 国立環境研究所経由
査、ひいては社会的課題解決に非常に有用なデー
タであると考えています。」
日本国内にはまだ多数のデータが眠っています。日本は生物
多様性大国なのです。そのデータを生かし、活用するととも
に、世界に発信することが求められています。
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