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MCC Technology Report
MCC
Technology
Report
2013 年
【
変化を感じて
No.35-3
】
「記録的な猛暑」や「記録的な豪雨」等、ここ数年自然の変化が感じられます。
MCCの技術は、様々な変化にも素早く対応します。
CONTENTS
技術紹介
10:精度の変化を活かす
:『分布型洪水予測システムの一斉点検
実況レーダ雨量データに関して』
11:変化を検証する
:『一関遊水地初期越流堤の実物大越流実験』
12:災害時の変化に対応
:『河川敷における緊急輸送道路の計画』
13:IT技術の変化を活かす:『あめみず Map
Web サービスの構築』
三井共同建設コンサルタント株式会社
MITSUI CONSULTANTS Co.,Ltd.
MCC は、MITSUI CONSULTANTS Co.,Ltd.の略称です
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
巻
頭
言
■人間は忘れる生き物である・・・・・・・・
「人間は、20 分後には 42%、1 時間後には 56%、1 日後には 66%、1 ヶ月後には 79%を忘れる」
という調査がありますが、仙台に着任して 2 年半経過した今でも、震災直後に見た被災地の情
景を忘れることはできません。(というか一生忘れられません。)
一方、仙台で生活していると、震災を忘れ、前向きに生きようとしている人々がたくさんい
る事に気付きます。震災直後に参加したボランティア活動では、自分が被災者であるにもかか
わらず「被災程度が低いから手伝いに来た」という人に会いました。
家や家族を失い、仮設住宅での厳しい生活の中で「つらくない、がんばろう」といった気持
ちを持ち続け、明るく前へ進もうとしている人々が、いまだに大勢いることを決して忘れない
でください。そして、インフラの復旧や街の復興に我々建設コンサルタントが大きく関わって
いることも忘れないでください。
■やりがいのある仕事・・・・・・・・・・・
よく「やりがいのある仕事」という表現を使いますが、皆さんは今の仕事に「やりがい」を
感じていますか。入社当時は、「やりがいのある仕事をしたい」「自分にしかできない仕事がし
たい」と思っていたのではないでしょうか。逆に聞きます。「あなたには何ができますか」「何
の役に立てますか」
答えは、「やりがいのある仕事」など無く、「仕事にやりがいを感じている」ということが大
切であり、それは本人しかわからないことです。現地で被災者の方々と身近に接してきた私に
は、建設コンサルタントがいなければ事業が進まない「縁の下の力持ち」であるということが
誇りであり、それを糧に仕事をしてきました。
~「建設コンサルタント」無くして「復興」なし~
誰もそんなことは言いませんが、このような意識で「やりがい」を見出していくこと、自分
の「意識」を変えることこそが非常に大切であると感じます。
■超異常気象・・・・・・・・・・・・・・・
2013 年は、世界各地で大きな被害をもたらす極端な異常気象や現象が続いています。
オクラホマで起きた大竜巻では、小学生 20 人を含む 91 人が亡くなられ、日本でもゲリラ豪
雨が多発し、40℃を超える暑さ、異常渇水などが続々と発生しています。
1000 年に1度と言われる大津波が発生したように、今後どのような大災害に見舞われるか想
像もつきませんが、災害を未然に防ぎ、発生した災害を速やかに復旧し復興していくために、
建設コンサルタントが担う役割は決して小さくないことを意識の中に植え付けてください。
今回のテクノロジーレポートは、雨に関する技術紹介が多く、タイムリーな話題提供となっ
ています。これからも続くであろう異常気象・現象に対して、建設コンサルタントが出来る事
は山ほどあります。このレポートを機に、仕事に「誇り」と「使命感」を持ち、
「やりがい」を
見出してもらえることを期待しています。
(東北復興支援本部
伊藤
靖)
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
技術紹介 10
分布型洪水予測システムの一斉点検
実況レーダ雨量データに関して
奥田 隆利 OKUDA Takatoshi
河川・砂防事業部 第一グループ
電話
03-3205-5765
FAX 03-3204-6010
弊社が開発した分布型洪水予測システムは、これまで全国数十の河川・ダムに導入され、洪水時の防災シス
テムの一翼を担っている。システムに蓄積された実際のデータを点検・検証し、今後の改良に役立てる一環と
して点検チームを組織し、納入したシステムの一斉点検を実施した。本稿では、洪水予測に使用する実況レー
ダ雨量に課題があり、予測精度に影響していたことを中心に課題の内容と改良方法を紹介する。
キーワード:洪水予測、分布型流出計算、レーダ雨量
1.はじめに
分布型流出計算モデルは、流域や水文量の
空間的な分布を直接モデルに反映し、力学的
法則に従い雨水が移動する機構を持つ優れた
モデルであるが、短所も存在する(表 1)。
表 1 分布型流出計算モデルの特徴
長所
・メッシュデータとの親和性が高い
・物理定数を使用
・任意地点の出力が可能
・低水~洪水まで計算できる
・降雨の時空間分布が反映
できる
短所
・計算負荷が大きい
・常に計算しておく必要がある
誤差の蓄積が
予測精度に影響
新
揖
琵
大
安
山
摺
香
勝
神
石
白
七
房
子
武
瀬
淵
木
宮
保
琶
井
倍
田
上
東
浦
崎
川
石
北
ダ ム
ダ ム
隈 川
川
川
川
川
川
湖
川
川
川 ・里
川 ダ ム
川
田 川
川
川
川
釜
鳴
阿
鳴
馬
岩
香 東 川
勝 浦 川
神 崎 川
石 川
白 石 川
七 北 田 川
新 宮 川
揖 保 川
琵 琶 湖
大 井 川
安 倍 川
山 田 川 ・里
摺 上 川 ダ ム
釜 房 ダ ム
川
鳴 子 ダ ム
阿 武 隈 川
川
川
川
鳴 瀬 川
馬 淵 川
岩 木 川
0.00
図 1 実況レーダ雨量と地上雨量の相関係数
国土交通省
全国合成レーダ雨量
気象庁解析雨量
気象庁レーダ雨量
1.60
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
新
揖
琵
大
安
山
摺
香
勝
神
石
白
七
房
子
武
瀬
淵
木
宮
保
琶
井
倍
田
上
東
浦
崎
川
石
北
ダ ム
ダ ム
隈 川
川
川
川
川
川
湖
川
川
川 ・里
川 ダ ム
川
田 川
川
川
川
釜
鳴
阿
鳴
馬
岩
石 川
白 石 川
香 東 川
勝 浦 川
神 崎 川
七 北 田 川
新 宮 川
揖 保 川
川
・里
ダ ム
ム
ム
川
山 田 川 ・里
摺 上 川 ダ ム
釜 房 ダ ム
琵 琶 湖
大 井 川
安 倍 川
川
川
川
川
田
川
川
湖
川
川
川
川
ダ
ダ
隈
川
川
川
鳴 子 ダ ム
阿 武 隈 川
東
浦
崎
川
石
北
宮
保
琶
井
倍
田
上
房
子
武
瀬
淵
木
鳴 瀬 川
馬 淵 川
岩 木 川
0.40
香
勝
神
石
白
七
新
揖
琵
大
安
山
摺
釜
鳴
阿
鳴
馬
岩
10 分毎
0.20
・里
ダ ム
ム
ム
川
5 分毎
1km×1km
0.40
川
田
川
川
湖
川
川
川
川
ダ
ダ
隈
川
川
川
更新間隔
1km×1km
レーダによる観測をア
メダスによる観測で補
正し、面的に隙間のな
い正確な雨量分布を
提供している。
解析雨量の精度を高
めるために、他機関
の雨量計による観測
結果も利用している。
0.60
東
浦
崎
川
石
北
宮
保
琶
井
倍
田
上
房
子
武
瀬
淵
木
メッシュサイズ
気象庁解析雨量
0.80
香
勝
神
石
白
七
新
揖
琵
大
安
山
摺
釜
鳴
阿
鳴
馬
岩
表 2 実況レーダ雨量の種類
概要
気象庁レーダ雨量
1.00
2.存在した課題
(1)実況レーダ雨量の種類
実況レーダ雨量は、リアルタイムで3種類
が配信されている(表 2)。
弊社の洪水予測システムは、1 河川を除き
配信間隔が洪水予測間隔と合致する『気象庁
レーダ雨量』を使用していた。
国土交通省
気象庁レーダ雨量
全国合成レーダ雨量
H22.2 現在、26 箇所の H25.3 現在、20 箇所の
レーダにより雨量観測 レーダにより雨量観測
を行っている。
を行っている。
H14 年度より、全国の
レーダ雨量の合成と
地上観測雨量による
補正が行われている。
国土交通省
全国合成レーダ雨量
気象庁解析雨量
1.20
特に洪水予測に使用する際には、常に計算
をしておく必要があるという特徴から、実況
レーダ雨量の誤差が予測精度に影響している
ことが点検により判明した。
種類
(2)実況レーダ雨量の精度
地上雨量と直上メッシュのレーダ雨量の
相関関係と総雨量比を整理し、実況レーダ
雨量の精度を評価した。
予測システムに使用している気象庁レーダ
雨量は、解析雨量と比較すると総雨量比が少
なく、
常に計算が必要な分布型流出計算では、
誤差が蓄積しやすいことが判明した(図 1,図
2)。
図 2 実況レーダ雨量と地上雨量の総雨量比
各種レーダ雨量の面的精度は、累加雨量の
分布図により評価した。
気象庁レーダ雨量や国土交通省レーダ雨量
で生じているグランドクラッター※1 は、解析
雨量では除去されていることがわかる(図 3)。
※1 グランドクラッター;雨滴からの反射によるものの他にある
山や建物からの反射によるレーダ雨量計の受信電力。
降雨観測を精度良く行うために、現在では、主に MTI(Moving
1km×1km
Target Indicator)方式により、ある程度までグランドクラッターを
30 分毎
除去しているが、同時に降雨の成分にも影響を与えている。
-1-
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
気象庁解析雨量
気
国土交通省
全国合成レーダ雨量
洪
データなし
データなし
データなし
気象庁レーダ雨量
グランドクラッターに
よる弱雨域の発生
図 3 累加雨量による面的分布例
(3)降雨補正の導入
レーダ雨量は、面的な強度分布を捉えるこ
とができる一方で、量的な精度は地上局に
よる観測に劣るといわれている。
地上雨量によるレーダ雨量の補正は、予測
精度の向上に有効であると考えられる(図 6)。
R
R
A 観測所
d c1 ( a )  d a1 ( c )
Ra,Ma A-B 観測所
Ma
Mc
補正エリア

da
B 観測所
d a1  dc1
B-C
観測所
 ;あるメッシュの補正率
M
補正エリア
R ;地上雨量
dc
A-C 観測所 C 観測所
M
;直上メッシュ雨量
Rc,Mc
補正エリア
d ;地上観測所までの距離
1
3.解決する技術
(1)使用データの検定
予測システムの導入当初は、各種レーダ
雨量の精度に大きな差が無いものと考えて
いたが、本点検において必ずしもそうでない
ことが判明した。
予測システムに採用する雨量データは、
その精度を十分に確認したうえで決定する
ことが必要である。
(2)解析雨量の利用
比較的精度の高い解析雨量を用いることが
精度向上の面では適当であり、テストケース
ではかなりの精度向上が見られた(図 4)。
1
1
図 6 地上雨量による補正例(観測所 2 点で補正)
(4)X バンド MP レーダの利用
洪水予測の高度化の一環として、従来の
C バンドレーダ雨量計にかわり、
X バンド MP
レーダの整備が進められている。
X バンド MP レーダの定量観測範囲は半径
60km とされているが、テストケースでは観測
中心から遠いほど、弱雨域として評価される
傾向にあった(図 7)。
流入量
800
700
実績
600
気象庁合成レーダー雨量計算
500
気象庁解析雨量計算
400
300
200
100
0
9/20 12時
9/21 0時
9/21 12時
9/22 0時
9/22 12時
図 4 予測システムによる流出波形計算例
但し、解析雨量は 30 分~1 時間遅れで配信
されるため、10 分毎の予測に使用するため
には不足分の補填処理が必要である(図 5)。
図 5 解析雨量を用いた予測概念
図 7 X-RAIN と解析雨量の累加雨量分布比較
X バンド MP レーダの洪水予測システムへ
の採用は、予測対象流域における雨量の精度
を確認したうえで行うことが望ましい。
4.まとめ
洪水予測に使用する実況レーダ雨量には課
題があり、予測精度に影響していたことが確
認できた。
予測精度の向上には、与条件となる実況雨
量データの精度向上が不可欠であり、その補
正方法について提案を行った。
本点検のような成果品の追跡調査は、費用
や人材の面で簡単ではないが、新たな発見や
技術改良に役立つものであり、今後とも鋭意
努力していきたい。
-2-
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
技術紹介 11
一関遊水地初期越流堤の実物大越流実験
名尾 耕司 NAO Koji
河川・砂防事業部 第二グループ
電話
03-3205-5795
FAX 03-3205-5794
一関遊水地初期越流堤の越流堤被覆形式を決定するため、実物大実験施設による越流実験を実施した。実験では、最大法面流速の発生を
想定した単位幅越流量 1.2m3/s/m を通水し、通水による鉄線籠(30cm 厚・50cm 厚)の変形状態を 3D レーザスキャナで測定した。この結果、
鉄線籠(30cm 厚)は中詰石の移動及び金網変形が生じる【状態Ⅲ】変形状態,鉄線籠(50cm 厚)は中詰石の移動は生じるものの金網の変
形はほとんど生じない【状態Ⅱ】変形状態が得られた。これらの結果より一関初期越流堤では、変形が少ない鉄線籠(50cm 厚)を採用する
こととした。また両実験結果より鉄線籠の設計に有用な移動限界無次元限界掃流力(平坦場)0.21【状態Ⅱ】
,0.30【状態Ⅲ】の値を得た。
キーワード:越流堤、鉄線籠(平張)
、無次元限界掃流力、実物大越流実験
1.はじめに
越流堤の構造は土堤としての安定に加え、
越流水の作用に対して安全な構造とする必要
がある。このため越流堤表面はコンクリート
やアスファルトによるフェーシング構造、コ
ンクリートブロックや鉄線籠等、法覆工によ
り保護する構造とすることが多い 1)。
一関遊水地初期越流堤の被覆形式には、景
観性、経済性に優れる鉄線籠(平張)形式を
採用する方針としたが、本形式の安定性を精
度良く評価する手法が現行基準になかった。
そこで実物大実験施設による越流実験を実
施し安定性を確認した上で鉄線籠の採用可否
の判断をすることとした。
ここでは鉄線籠(平張)形式の越流堤に関
する実物大実験の例が少ないこと、実験によ
り本形式の安定性評価を行うための設計上の
基礎資料を得ることができたことからその内
容を紹介する。
2.存在した課題
護岸として堤防法面に設置された場合の鉄
線籠(平張)形式の力学的安定性の評価手法
は既に確立されている 2)3)。しかし同手法が対
象としている流れ場は、流体力と籠の重力の
作用方向が越流堤設置の場合と異なっている
(図-1)
。また、籠の安定を評価する際の籠
の変形限界値(限界掃流力)は、従来より用
いられているコロラド大学の値 2)3)や国総研
実験値 4)が提案されている。ここでコロラド
大学値は現在国内で一般的に用いられている
鉄線籠と異なる規格の金網を用いた実験値で
あり、国総研実験値は一般的な鉄線籠とほぼ
同様の鉄線籠を用いた実物大実験による評価
値である。国総研実験値に対して精度が期待
できるが、平坦場への設置状態の実験値であ
り越流堤への適用にあたっては移動限界に対
する設置斜面の影響を考慮する必要がある。
これらのことから鉄線籠の採用判断にあた
っては、一般手法の適用は不明な点も多く、
設計外力に対し如何に精度良く安定性を評価、
実証するかが課題であった。
【護岸の場合】
【越流堤の場合】
越流水の流れ
河川の流れ
鉄線籠
鉄線籠
外力(合力)の作用方向成分
流水の作用方向成分
重力の作用方向成分(斜面上)
図-1 護岸と越流堤における被覆材への外力作用方向
3.解決する技術
(1)実物大実験による鉄線籠の安定性の実証
1)実物大実験施設
精度良く安定性を把握するため実物の鉄線
籠を用いた実験施設を設計し越流実験を行っ
た 5)。施設の状況を写真-1、図-2 に示す。
旧磐井川
法尻部
法面部
天端部
<通水状況>
鉄線籠(50cm 厚)堤防
鉄線籠(30cm 厚)堤防
写真-1 実験施設(堤防部)全景
-3-
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
(2)実験により得られた越流堤被覆材の設計
に関する知見
実験で計測された水深等の水理量より、変
形が生じた地点の無次元掃流力を算出した。
これを式(2)[越流堤における被覆材への外力
作用方向を考慮した護岸補正式の変形式]に
より平坦場のものに換算し既往国総研値と比
較したところほぼ一致していた。これよりこ
れら限界掃流力の値τ*d(0.21【状態Ⅱ】
、
0.30【状態Ⅲ】
)及び、評価時に設置斜面の
効果を見込むことは妥当であると考えられる。
①実験条件:単位幅流量 1.2m3/s/m
②越流部諸元:越流部幅 3m,法面長 15m(水平),勾配 1:5
③鉄線籠諸元:鉄線籠(30cm 厚-中詰石平均粒径 10cm),
(50cm
厚-中詰石平均粒径 17.5cm)
図-2 実験堤防断面と実験条件
2)越流実験による鉄線籠の安定性の実証
1/150 年確率降雨時の洪水に対し最大法面
流速が発生する条件を想定した単位幅越流量
1.2m3/s/m を実験堤防に通水し、一般的な規
格である厚さ 30cm と厚さ 50cm の鉄線籠の変
形状況を 3D レーザスキャナにより観測した。
この結果に基づき金網の変形がほとんど見ら
れない厚さ 50cm の籠であれば安定性が確保
でき、初期越流堤形式として採用可能と判断
した。
 sd  f s ( )   d
 tan  
f s ( )  cos  1 

 tan  
(2)
τ*sd 、τ*d:斜面上、平坦場におかれた場合の無
次元限界掃流力、fs(θ)斜面補正式。θ:斜面角
度、φ 中詰石の安息角(玉石 30°、砕石 41°)
[鉄線籠(30cm 厚-中詰石平均粒径 10cm)
] 仕切網位置 隆起量+0.2m
状態Ⅲ
状態Ⅰ
状態Ⅱ
中詰石・金網変形無し
中詰石移動・金網変形無し
0.22 -0.24
0.20 -0.22
0.18 -0.20
0.16 -0.18
0.14 -0.16
0.12 -0.14
0.10 -0.12
0.08 -0.10
0.06 -0.08
0.04 -0.06
0.02 -0.04
0.00 -0.02
-0.02 -0.00
-0.04 --0.02
中詰石移動・金網変形
図-5 鉄線籠の変形状態 4)
0.80
移動限界無次元掃流力τ*(-)
[鉄線籠(50cm 厚-中詰石平均粒径 17.5cm)
]仕切網位置 隆起量+0.1m
0.22 -0.24
0.20 -0.22
0.18 -0.20
0.16 -0.18
0.14 -0.16
0.12 -0.14
0.10 -0.12
0.08 -0.10
0.06 -0.08
0.04 -0.06
0.02 -0.04
0.00 -0.02
-0.02 -0.00
-0.04 --0.02
図-4 鉄線籠変形量コンター
状態Ⅱ 金網無し(平坦)
状態Ⅱ 高剛性(平坦)
状態Ⅱ 柔剛性(平坦)
状態Ⅲ 一般カゴ(平坦)
状態Ⅲ 高剛性(斜面)
状態Ⅲ 一般カゴ(斜面・一関)
平坦補正有り
0.70
図-3 鉄線籠変形量コンター
通水前
(1)
一関状態Ⅲ
一関状態Ⅱ 0.30
0.50
0.21
状態Ⅱ 一般カゴ(平坦)
状態Ⅱ 高剛性(斜面)
状態Ⅱ 一般カゴ(斜面・一関)
状態Ⅲ 高剛性(平坦)
状態Ⅲ 柔剛性(平坦)
0.60
国総研状態Ⅲ
国総研状態Ⅱ
0.40
0.30
0.20
0.30
0.15
0.10
0.00
通水後
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
水深粒径比(h/dm)
図-6 無次元限界掃流力τ*d の国総研実験値 4)との比較
写真-2 中詰石の移動状況[鉄線籠 30cm 厚]
通水前
通水後
写真-3 中詰石の移動状況[鉄線籠 50cm 厚]
4.まとめ
越流実験により鉄線籠(平張)を採用した
検討プロセスを紹介した。また、本実験によ
り得られた移動限界無次元掃流力τ*d 等、鉄
線籠の越流堤への適用を考えるにあたり重要
となる設計上の基礎資料を得ることができた。
<参考文献>
1) 改定新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説・設計編Ⅰ(1997),pp10
2) (財)国土技術研究センター編(2007):改訂護岸の力学設計法,pp88
3) 国土交通省河川局治水課(2009)
:鉄線籠型護岸の設計・施工技術基準,pp14
4) 末次忠司・諏訪義雄・東高徳・平林桂(2001)
:流れに対する応答特性(変
形特性)に着目した既往かごマット工と剛性の強い金網を用いた小粒径かご
工の水理的評価、河川技術論文集,第 7 巻,pp121-126。
5) 安部剛・赤平博文・中野智仁・成田秋義・名尾耕司・横川勝美・本田正
修・服部敦・坂野章・齋藤由紀子(2013)
:鉄線籠(平張)による被覆され
た越流堤の現地実験による検討、河川技術論文集,第 19 巻、pp27-32。
-4-
MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
技術紹介 12
河川敷における緊急輸送道路の計画
木下 泰孝 KINOSHITA Yasunori
道路・橋梁事業部 第一グループ
電話
03-3205-5855
FAX 03-3205-5862
近年、大地震などの災害発生時に防災施設や被災地域等との確実な連絡を図るための緊急的な輸送路として、緊急用河川
敷道路の整備が行われている。また、それに伴い、緊急用河川敷道路から一般道路へアクセスするためのスロープ(防災用
坂路)も整備が進められている。本稿では、計画地点の河川敷利用や地形・地質、占用地などの制約条件、災害時の利用形
態を把握し、その特性に応じた緊急用河川敷道路の計画を紹介する。
キーワード:大規模災害、緊急輸送道路、CBR、路床改良
1.はじめに
緊急用河川敷道路の道路計画では、計画地
点の河川敷利用や地形・地質、占用許可され
た施設などの制約条件、災害時の利用形態を
把握し、その特性に応じた設計を行うことが
重要となる。
以下に災害時の利用形態の特性に応じた緊
急用河川敷道路の計画事例を紹介する。
● 道路の概要
この道路は大規模な地震に伴い市街地の一
般道路等の交通機関が長期に渡って途絶する
際、災害時の物資の輸送道路となる。また、
緊急用河川敷道路はリバーステーションと接
続するため、
一般的に川表に計画されている。
計画区間付近における災害時の道路利用形
態を図-1 に示す。
されている区間であるため、多岐にわたる関
係者と調整することでルートを決定する必要
があった。
【課題②】坂路の検討
堤内地側の緊急輸送道路と接続させる坂路
の設置計画を検討する必要があった。
【課題③】路床改良の検討
この道路は川表に位置するため、地盤の強
度が弱いと想定された。そこで、CBR 試験を
実施したところ、現場 CBR 試験値は 3%未満
の箇所が多く路床改良を検討する必要があっ
た。
■課題①
【区間 A】
:堤防法尻から高水敷の占用地までの幅が狭い区間。
【区間 B】
:堤防法尻から高水敷の占用地までの幅が比較的広い区間。
【区間 C】
:坂路設置検討区間。
川裏
川表
第一次緊急輸送道路
堤防
アクセス道路
サイクリングロード
市街地
坂路取付
は困難
区間A
市街地
河川
第一次緊急輸送道路
区間C
占用地
(高水敷)
■課題③
リバー
ステーション
設計 CBR3%未満は
路床改良が必要
河川
区間B
① CBR=3.2% ④ CBR=0.5%
② CBR=0.5% ⑤ CBR=3.4%
③ CBR=0.4% ⑥ CBR=2.3%
設計箇所
図-1 緊急輸送道路ネットワーク図
■課題②
坂路の検討
区間 A~C:1.2km
図-2 課題説明図
2.存在した課題
当該路線の道路計画をするにあたっての課
題を以下に述べる(図-2 参照)
。
【課題①】制約条件を考慮したルート選定
この道路は野球場・サッカー場・陸上競技
場・公園・サイクリングロードなど多様な用途に利用
3.解決する技術
上記の技術的課題に対する解決策を以下に
述べる。
(1) ルート設定方法
多岐にわたる関係者との調整結果より、制
約条件について整理した上で区間割を行い、
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MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
ルート計画を実施した(図-3 参照)
。
【区間 A】
:堤防法尻から高水敷の占用地であ
るグラウンドまでの幅が狭い区間であるため、
サイクリングロードは緊急用河川敷道路内に再整備
を実施する。
【区間 B】
:堤防法尻から高水敷の占用地であ
るグラウンドまでの幅が比較的広いので、非
占用地(堤防法尻から 10m の範囲)を通行す
るルートを基本とする。
【区間 C】
:緊急用河川敷道路整備時は併せて
坂路を整備するため、坂路形状に合わせてサイ
クリングロードおよびグラウンド施設の再整備を
実施する。
また、堤防天端すりつけ高さは、現況堤防高
が計画堤防高より 50cm 程度低かったため、
将来改良を行う場合の計画堤防高+余盛り高
さを考慮した縦断計画とした(図-5 参照)。
将来改修時に計画堤防高にすり
つける場合は、この区間の坂路改
修も実施する必要がある。
計画堤防高+余盛り
アクセス道路
鉄橋
(JR線)
坂路
サイクリングロード
坂路の堤防天端すりつけ高さは,将来改良を行う場合の計画
堤防高+余盛り高さを考慮した縦断計画とする。
【区間 A】
:堤防法尻と占用地の幅が狭い箇所
図-5 縦断計画
緊急用河川敷道路
(3) 路床改良の設定
CBR 試験結果より、同一の土質と考えられ
る区間に分割し、各区間の CBR 値を求めた結
果を表-1 に示す。
CBR が 3%未満なの
再整備
【区間 B】
:堤防法尻と占用地の幅が広い箇所(標準断面)
表-1 区間の CBR 値算出結果
で路床改良が必要。
緊急用河川敷道路
過年度設計では改良層の CBR 値を 20%と設
定し改良厚さを決定していたが、本業務では
改良厚さ毎に必要な改良層の CBR 値を算出
し、最も経済的な改良層の厚さおよび改良層
の CBR 値を算出した。算出結果は以下のとお
りである。
【区間 C】
:坂路設置箇所
緊急用河川敷道路
坂路設置
転回場
再整備
図-3 横断計画図
(2) 坂路の計画
計画道路付近の国道は、第一次緊急輸送道
路に指定されているため、緊急輸送車両の通
行を考慮した坂路(幅員 4.0m)を計画し、坂
路取付部の転回場については,セミトレーラの車両
走行軌跡により必要な幅員を設定した(図-4
参照)。
アクセス道路
坂路
川裏
堤防
サイクリングロード
川表
河川
・緊急用河川敷道路
・幅員 7.5m
図-4 転回場の幅員設定
【区間 A】
:改良層厚=30cm、改良層の CBR 値=8.2%
【区間B】
:改良層厚=45cm、
改良層のCBR 値=16.2%
なお、固化剤については、改良土が砂質土
のためセメント系を選定した。
4.まとめ
本業務では、高水敷において占用地が近接
する緊急用河川敷道路について、周辺環境や
制約条件に配慮した道路計画を実施した。道
路の計画、設計においては、河川・地質など
幅広い知識が必要であると同時に、発注者の
パートナーとして関係者と課題を調整するこ
ともコンサルタントとしての重要な役割にな
っており、当社の技術力を活かして、今後も
取り組んでいきたい。
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MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
技術紹介 13
【あめみず Map 】Web サービスの構築
崔 国慶 SAI Kokukei
情報システム事業室
電話
03-3205-5726
FAX 03-3205-6010
クラウド技術と Web 地図サービス技術を利用してだれもが見やすいレーダ雨量、テレメータ観測データ情報を提供する【あ
めみず Map】Web サービスを構築した。本サイトは Amazon 社が提供するクラウドサービス AWS を利用して運用し、Google
Maps API Web 地図サービスを採用して地図と連動(地図の移動、拡大、縮小が可能)した正確な位置情報と共にレーダ雨量、
テレメータ観測データ情報を提供している。本稿では、
【あめみず Map】の Web 地図サービス技術を中心に紹介する。
キーワード:クラウド、Web 地図サービス、レーダ雨量、テレメータ観測データ
1.はじめに
近年、地球温暖化等の進行とともに局所的
集中豪雨が増え、
洪水の被害が増加している。
そのため、レーダ雨量をはじめ、テレメー
タ観測データ(雨量、河川水位、ダム諸量等)
情報に対して住民の関心が高まっている。
そこで、クラウド技術と Web 地図サービス
技術を利用してだれもが見やすいレーダ雨量、
テレメータ観測データ等の情報を提供する
【あめみず Map】Web サービスを構築した。
2.存在した課題
集中豪雨の場合、住民は自分が位置してい
る周辺の雨量、河川水位等の危険な状況を把
握する情報に関心がある。
これに対し、国や地方自治体等の多くの公
共機関において、レーダ雨量、テレメータ観
測データ等情報を提供する Web サービスが
複数存在するが、全国範囲から詳細な市町村
レベルまでの各スケールで地図と連動(地図
の移動、拡大、縮小が可能)して正確な位置
情報と結合した Web サービスは少ない。
従来の技術手法では、地図と連動した Web
サービスを実現するためには次の課題がある。
①高いスペックのハードウェアが必要。
②高価で専門的なソフトウェアやシステム
の開発、維持管理に対しての高度な専門
知識が必要。
現状では、地図と連動した Web サービスの
開発はハードルが高く、地図画像データを利
用した Web サイトが多くみられる。
例として、図-1 にレーダ雨量を提供する気
象庁の解析雨量・降水短時間予報の Web 画面、
図-2 にテレメータ観測データを提供する国
交省の【川の防災情報】Web 画面を示す。
※拡大の範囲に
制限がある。
※全国と地方レベル
の 2 種類の地図画像
で構成している。
図-1 気象庁解析雨量・降水短時間予報の画面
(全国版と関東地方)
※拡大の範囲に
制限がある。
※都道府県レベルの
1 種類の地図画像で
構成している。
図-2 川の防災情報(国交省)テレメータ観測所
(東京都 23 区西部の例)
3.解決する技術
①クラウド技術の利用
【あめみず Map】では社内で蓄積したクラ
ウド技術のノウハウを活用して Amazon 社が
提供するクラウドサービス AWS を用いるこ
とにより、高いスペックのハードウェアが容
易に整備できたi。
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MCC Technology Report
2013 No.35-3
三井共同建設コンサルタント株式会社
②Web 地図サービスの利用
【あめみず Map】ではインターネットで無
償利用可能な Web 地図サービス技術を利用
することにより、高価で専門的なソフトウェ
アを購入する必要がなく、システムの開発、
維持管理を容易にすることができた。
Web 地図サービスとは、インターネット上
でブラウザを通じて地図情報を利用可能にす
る仕組みである。近年、WebGIS 技術の進歩
により、Google Maps API や電子国土等の Web
地図サービスが無償で利用できるようになっ
た。
両者の特徴を整理すると表-1のようにな
る。
図-4、図-5 に【あめみず Map】のレーダ雨
量およびテレメータ観測データを表示する画
面を示す。
※地図の移動、拡大、縮小
が可能であり、全国範囲か
ら詳細な市町村レベルまで
多種な縮尺で利用できる。
※河川水位等の時系列
グラフが表示できる。
表-1 Google Maps API と電子国土の特徴
Google Maps API
電子国土
・一般の Web サイトに多 ・官公庁や地方自治体等
く利用されている。
の行政での利用が進
・住宅地図の精度で定評
んでいる
があるゼンリン社の地図 ・国土地理院が作成した
を利用している。
(1/25,000)数値地図
・多様で高性能な描画
を基本に、さらに詳細
API を提供されている。
な(1/2,500)都市計画
・充実した技術サーポト
図も利用できる。
と豊富な導入事例があ
る。
【あめみず Map】
では、
各種特徴を考慮し、
住民が使いやすい Google Maps API を採用す
ることとした。
テレメータ観測地点(雨量、河川水位、ダ
ム諸量)の位置情報はクラウドデータベース
Google Fusion Table に保存して、Google Maps
API と連携されるようになり、地図の描画ス
ピードが向上しユーザの利便性を高めた。
図-3 に【あめみず Map】のシステム構成を
示す。
Google Web 地図サービス
Amazon クラウドサーバ
kml ファイルを参照
※リアルタイムでレー
ダ雨量データを解凍し
kml ファイルを作成
+
※地図(観測所を含む)
と kml ファイルから合
成画像を作成
図-4 あめみず Map(PC 版)
※雨量観測所(中之島)のアイコ
ンをクリックすると時系列グ
ラフが表示できる。
図-5 あめみず Map(スマートフォンやタブレット向
けサイト)
4.まとめ
高いスペックのハードウェア、高価で専門
的なソフトウェアがなくてもインターネット
で利用できる Amazon 社が提供するクラウド
サービス AWS と Google 社の Web 地図サービス
を用いてだれもが見やすいレーダ雨量、テレ
メータ観測データ情報を提供する【あめみず
Map】を構築することができた。
今後、より使いやすいサイトを目指して機
能の改良および追加をしていく予定である。
※あめみず Map
はこちらへアクセス:
PC 版:http://rain.mcclabo.jp/
雨量強度を参照して
時系列グラフを作成
スマートフォン版:http://rain.mcclabo.jp/m/
i
ユーザ端末
参考:「公共システムにおけるクラウドの利用につい
て」、2013 年、MCC Technology Report N0.35-2
図-3 【あめみず Map】システム構成
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MCC
2013 年
Technology
Report
No.35-3
2013年9月 1 日発行
三井共同建設コンサルタント株式会社
〒 169-0075
東京都新宿区高田馬場1丁目4番15号
TEL 03-3207-0231( 代 )
ホームページ
MCC研究所
FAX 03-3205-5734
http://www.mccnet.co.jp
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