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15.2 遺伝子診断と遺伝子治療 15.2.1 遺伝子病の種類 15.2.2 遺伝子

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15.2 遺伝子診断と遺伝子治療 15.2.1 遺伝子病の種類 15.2.2 遺伝子
15.2.1 遺伝子病の種類
劣性の常染色体遺伝
フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血などでは、単一の遺伝子の変異が発病
に関係している。個人が変異遺伝子のホモ接合体でのみ発病する。
15.2 遺伝子診断と遺伝子治療
病気にかかりやすいか否かが、個人の遺伝子によって規定され
ていることがある。ここでは、遺伝病の代表的な例について述べる
とともに、病気関連遺伝子のクローン化とそれを用いた診断、なら
びに遺伝子治療について解説する。
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15.2.2 遺伝子診断
優性の常染色体遺伝
ハンチントン病や筋緊張性ジストロフィーなどでは、片方が変異しているだけで
必ず発病する。これらの病気の発病時期が成人後に限られている場合には、安
定に遺伝することができる。
伴性遺伝
血有病、デュシェンヌ筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMS)、赤
緑視覚障害などで、X染色体にリンクしているものが多い。Y染色体に関しては、
成長因子や睾丸形成遺伝子などのものがあるが、非常に頻繁に組換えなどが
起こっており、組換えに伴う遺伝子病は、ほとんど見られない。
母系遺伝
ミトコンドリア症などで、ミトコンドリアは母のみから受け継がれるので、母系の
子孫に全員に受け継がれる。
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様々な遺伝子多系
遺伝病において欠損する酵素や変異するタンパク質が知られている場合には、
生化学的にその酵素活性あるいは異常タンパク質を検出することによって診断
が可能である。一方、遺伝子による診断は、微量な生体サンプルから出発しても、
PCRなどによって増幅して診断することができる利点がある。例えば、胎児の診
断をする際に、羊水中に浮かんでいる胎児由来の細胞あるいは絨毛膜の一部
のサンプルを生検で採取し診断する事ができる。
また、ハンチントン病などの一定の年齢に達してから発病する病気についても、
発病以前に診断できる。
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○一塩基多型(Single nucleotide polymorphism:SNPs(スニップス))
遺伝情報のわずかな違いのこと。遺伝子を構成する塩基は1000~2000個に1個の割合で
個人ごとに違っており、これが体質に影響している。人間は数百万個のSNPを持っている。同
じ薬剤を与える場合でも、「薬の効果」「副作用の有無」「投与量」が違ってくる。
○コピー数多型(Copy Number Variation:
CNV)
通常ヒトの細胞には遺伝子は二個(2
コピー)あり、一つは父方、もう一つは母
方に由来するというのが定説となってい
ます。しかし近年、個人によっては一つの
細胞あたりある遺伝子が一個(1コピー)し
かなかったり、あるいは3個(3コピー)以
上存在するといった遺伝子の数の個人差
(コピー数多型=Copy Number Variation: CNV)があることが注目されている。
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15.2.2.1 RFLPによる診断
15.2.2.2 一本鎖立体構造多型解析(single‐strand conformation polymorphism :SSCP)
(Restriction Fragment Length Polymorphism )
1本鎖は、そのDNA配列に依存して分子内水素結合により高次構造を取る。そのため、
DNA配列に1塩基の置換があったとしても異なる立体構造を示すことになる。この立体構
造を保持したまま電気泳動を行えば、塩基置換に起因する立体構造の差異を検出するこ
とができる。この解析手法をSSCP(single‐strand conformation polymorphism)という。
病因となる遺伝子がクローン化されて
いる場合には、正常遺伝子と変異遺伝
子の差がはっきり出るような制限酵素の
組み合わせを用いて、特定遺伝子部位
のRFLP解析をすることによって、遺伝子
診断ができる。
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15.2.2.3 対立遺伝子特異的プローブ
遺伝子の点変異がアミノ酸を変換することによって病徴を示す場合、RFLPでも
検出できないことがある。この場合、正常遺伝子と変異遺伝子の塩基配列に相
当する2種の合成DNAプローブを作成し、サザーンハイブリダイゼイションを行う
事で検出可能になる。
15.2.2.4 ガンの遺伝子診断
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連鎖解析(linkage analysis)
連鎖解析とは、ヒトまたは動物の表現型情報と、いろいろな遺伝子座における対立遺伝子の
伝達の様式との関連を遺伝統計学的に解明する方法である。特にメンデル遺伝病のように浸
透率の高い遺伝性疾患の原因遺伝子探索に効果を発揮し、これまでにハンチントン病、デュ
シェンヌ型筋ジストロフィー、嚢胞性線維症をはじめとして、原因が分かっていなかった単一遺
伝性疾患のほとんどすべての原因遺伝子の存在領域を突き止め、またいくつかの多因子遺伝
病の研究にも成果を上げた。
実際には、既知の形質を示すDNAマーカーを全ゲノム上に均等にちらばるように約200個あ
まりが選ばれ、未知の形質(病気の原因)を示すDNAをDNAマーカーを利用して遺伝子の位
置を確定する分析。
各種のガン遺伝子の発現の有無とガンの転移しやすさ、化学療法剤の効果の
有無との関連性などがわかり始めている。ガン遺伝子の発現状態とガン細胞の
性格の関連性が正確にわかるようになれば、手術によるガン切除後の化学療法
や放射線療法の必要性や損得を予測できるようになる。
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15.2.3 遺伝子治療
欠損物質の注射による補填
遺伝的な病気のうち、特定の酵素や機能性のタンパク質の異常あるいは欠損
によって引き起こされるものは、個体にそれを補うことによって治療することがで
きる。数年間にわたって注射を続けなければならないという不便さが残る。
iPS(induced pluripotent stem cell )
形質転換した細胞の導入
不足している酵素やタンパク質の遺伝子を適当量だけ発現するようなプロモー
ターの支配下において個体の一部の細胞に導入する。生産されすぎると悪影響
を与えるものは、制御技術が確立しない限り実用化は困難である。ある程度多く
ても害がないものについては、遺伝子治療がやりやすい。
山中 伸弥 教授(京大)
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法律制定の背景と経緯
遺伝子組換えの法規
年/月
国際情勢
1992.06
「生物多様性条約」採択
1993.12
「生物多様性条約」発効
2000.01
「カルタヘナ議定書」採択
議定書締結のための法律・議案書を
国会提出
2003.03
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国内対応
2003.06
議定書の発行に必要な50カ国
締結
2003.09
議定書が発効
法律の成立・発布
2003.11
議定書の締結
2004.02
議定書が日本に対して発効
2004.02
法律の施行
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