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類推の補足(5回目)
ベース検索と準抽象化 ベース検索と準抽象化 • 人間の記憶がもし過度に抽象化されたもので あるとすると、 • 人間の記憶の構造が準抽象化によって組織 化されているはずである。 • だとすれば、準抽象化を表現するような手が かりを与えた場合は、その他の手がかりに比 べて、再生率が高くなることが予想される。 – そこからの絞り込みが出来ない、 – ターゲットとのマッチングがとりにくい • 一方、具体例がそのままはいっているとする と、 – 検索が困難になる – マッチのコストが高くつく 福田の実験 実験の結果 32 26 42 80 • 20種類の短い話(ベース)を用意。 • これらのうち15について、3種類の手がかり文を用 意した。 • ベースを読んで、filler課題を行った後、上記の手が かりの内のどれかが与えられて、再生する。 • 諺表現が手がかりとして、最も適切だった。 • 他の手がかりの2倍程度の再生率が得られ た。 • また、抽象手がかりは候補が選択できても、 そこからの自由度が高すぎるため、ニアミス が多い。 • 記憶中に準抽象的な構造が含まれている。 福田の実験結果 60 50 正答 誤認 その他 40 30 20 10 0 抽象 福田実験の結果 71 12 16 70 再生率 – 話の筋が似ている別の短い文 – 話のポイントを数語の単語で表したもの – その話をうまく表現する諺 40 5 55 具体 手がかり ことわざ 隠喩 • 基本的にAとBの間の類似関係に依存する。 • つまり、AとBは何らかの意味で似ている。 • 私の父親と熊の間で何らかの特徴が共通し ている。 • Aが通常属さないカテゴリーが用いられる。 1 換喩 提喩 • Bと空間的、時間的に隣接する、あるいは共 起するものでB全体を表す。 • 私はフローベールを読むのが好きだ。 • 「赤頭巾」は、赤い頭巾を指すのではなく、赤 頭巾をかぶった人を指す。 • ペンは剣よりも強しでは、ペンは書くこと、剣 は武力一般をを指す。 • 「霞ヶ関」、「永田町」、「おたく」も同様。 • カテゴリーの階層関係に基づく。 • 鳥が焼いてあれば焼き鳥というわけではない。 鳥−鶏というカテゴリー関係を用いている。 • 花見は「花」という上位カテゴリーで「桜」という 下位カテゴリーを表現する。 • 「我が社には新しい血が必要だ」では、「血」 で「人」を表している。 比喩の理解の古典的解釈 古典的解釈の問題点 • 通常のカテゴリーとは異なるカテゴリーが用 いられる • あ、比喩だと気づく • 類似点の探索 • オートニーの特徴不均衡モデル • 比喩のよさは喩辞、被喩辞の間の共有特徴 と各々の固有特徴との間の関係として捉えら れる。→つまり比喩は類似に基づく。 • 比喩文理解と通常文理解の読解時間に差がない • 選択制限違反 – 通常比喩文の喩辞、被喩辞はカテゴリー的関係にあってはならない。 – 「カレーは食物だ」は比喩ではない。 – しかし「クリントンはアメリカ人だ」は比ゆ的な解釈がなされる。 • 類似点の欠如 – 喩辞、被喩辞の間の類似性がきわめて低い場合でも比ゆ的解釈が 可能な場合がある。 – 「私の父親は熊だ」では、私の父親は誰も知らないが比喩としてこの 文を理解できる。 比喩とカテゴリー 比喩と準抽象化 • 比喩は類似関係ではない。 • AはBという比喩表現は、Bが表すカテゴリー にAが所属していることを指す。 • つまり、literalな文の理解と同じメカニズムで ある。 • ただし、BはBそのものを指すのではなく、Bが 典型的な事例となるアドホックカテゴリーを指 している。 • Glucksberg & Keysar • 比喩はマッチに基づくという仮説は成り立た ない。 • 私の父親は細川(元)首相(のよう)だ。 • ここで聞き手は「私の父親」については何も知 らない。 • よって、特徴マッチのしようがない。 2 準抽象化による類包含としての比 喩 準抽象化による類包含としての比 喩 • 比喩「xはyだ」はxはyに代表されるカテゴリー (準抽象化)のメンバーである、ということを表 現している。 • つまり、父親が細川首相が代表するあるカテ ゴリー(例えば、名門の出、元新聞記者、うそ つき)のメンバーであることを表現している。 • これによって、 概念的比喩 • 「イギリスは自由があってよいけれど、社会が非常に 冷たくできている。われわれの国には自由が乏しいが、 お互い非常に暖かく生きている。私は自由よりも暖か さのほうを選ぶ。」後進国からイギリスにきた留学生は、 しばしばこういうことを言います。ずいぶん近代化され たはずの日本人も、こういう不満を抱いてイギリスを 去っていく人はたくさんいるかと思いますが、先日もイ ランの学生がまったく同じ愚痴をこぼしておりました。 確かにイギリスには冷え切ったところがあります。 建築物の比喩 • このような建築物の比喩は頻繁に用いられる。 – 理論を支える根拠が必要だ。 – その理論は崩壊した。 – 彼の地位はぐらついている。 – 比喩の選択制限違反問題(クリントンはアメリカ 人だ) – 比喩の非対称性 • を説明することが出来る。 概念的比喩 • 「社会が非常に冷たくできている」 – 「社会」と「できている」の間にはある種の比喩が 存在している。 – 「できている」は、建物などの具体的な物体、特に 建物に対して用いられる。 – しかし、社会は物体ではない。 – ここには「社会」という抽象概念をあたかも具体的 な建物とする認識が存在している。 概念的比喩 • 「自由が乏しい」 – 乏しいの典型的用法は、 • 農地が乏しい • 酒が乏しい – このように数量化可能なものに使われる。 – 自由は数量化はできない。 – われわれは自由を何か数量化可能なものと見な している。 3 存在の比喩 空間の比喩 • 知識 • 楽しきは上、悲しきは下 – 彼は宗教について幅広い知識を持っている。 – 知識が乏しい – 頭が働く • 感情、意志 – 上機嫌、落胆、沈む • より多きは上、少なきは下 – 上昇、落ちる、低い • 地位の上下 – 根気不足 – 敵意を抱く – 絶頂期、登る、転げ落ちる、底辺 • 善は上、悪は下 – 膏血、高い志、下劣、低劣、身を落とす 空間の比喩 多い 少ない 概念メタファー 善 楽しい 上 下 悪 悲しい • 「われわれの愛も終わりに近づいている」 • 「愛が軌道に乗った」 • などの比喩は「愛は旅」という抽象的な比喩的構造 に基づいている。 • 「愛は旅」は「人生は旅」という比喩構造の下位カテ ゴリーとして存在している。 • これらの構造は階層関係になっており、通常のカテ ゴリー同様、われわれの長期記憶中に存在してい る。 4