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共同利用型バイオガスプラントのエネルギー 利用方法に関するライフ

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共同利用型バイオガスプラントのエネルギー 利用方法に関するライフ
2013 年 度
博士論文
共同利用型バイオガスプラントのエネルギー
利用方法に関するライフサイクル的評価
20733004
指導教員
中山
動物資源生産学
博敬
教授
干場
酪農学園大学大学院酪農学研究科
信司
目次
第Ⅰ章
序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.研究の背景
2.既往の研究
3.研究の目的
4.論文の構成
第Ⅱ章
バ イ オ ガ ス の 利 用 方 式 と エ ネ ル ギ ー 収 支 の 検 討 ・ ・ ・ 11
1.目的
2.方法
(1)エネルギー収支の検討範囲
(2)シミュレーションモデルの基礎としたバイオガスプラント
(3)シミュレーションモデル
1)シミュレーションモデルの概要
2)電力の計算
3)熱の計算
(4)設定条件
1)殺菌条件
2)消費熱量および気温
3)精製装置でのガス精製能力
4)コジェネレーターおよびガスボイラーのエネルギー効率
(5)シミュレーションケースごとに変えた条件
(6)シミュレーションの期間
(7)温室効果ガス排出量の算定
3.結果および考察
(1)プラント運転時の年間エネルギー収支とエネルギー生産効率
(2)温室効果ガス排出量の比較
(3)バイオガス利用方式の違いとエネルギー生産効率
(4)産出エネルギーの季節変化
4.小括
第Ⅲ章
ライフサイクル的視点によるバイオガスプラントのエネル
ギ ー 収 支 の 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 30
1.目的
2.方法
(1)設備の製造および施設の建設に必要なエネルギー量の算出
(2)ふん尿運搬等に必要なエネルギー量および消化液のエネルギ
ー価値の算出
3.結果および考察
4.小括
第Ⅳ章
バ イ オ ガ ス の 利 用 方 式 と 経 済 性 の 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 35
1.目的
2.方法
(1)バイオガスのエネルギー利用と代替可能な化石エネルギー
(2)バイオガスプラントにおける経済収支の検討範囲
3.結果および考察
(1)プラントの運転に伴う経済収支
(2)プラント建設費および更新費を考慮した経済収支
(3)経済収支改善方法の検討
1)建設費補助による支出軽減
2)副原料受け入れによる収入増加
3 )代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー の 単 価 引 き 上 げ に よ る 収 入 増 加
4.小括
第Ⅴ章
総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47
1.前章までに得られた結果と本章の目的
2.北海道における共同利用型バイオガスプラントの技術的改善の
提案
(1)北海道内における共同利用型バイオガスプラントでのエネル
ギー利用の現状
(2)デンマークにおける共同利用型バイオガスプラントでのエネ
ルギー利用の現状
(3)共同利用型バイオガスプラントの施設構成および施設管理の
改善提案
1)プラント内での熱利用方法の改善
2)バイオガスの脱硫および除湿の徹底
3.熱利用施設へのバイオガス輸送によるガス利用の検討
4.今後の北海道における共同利用型バイオガスプラントでのエネ
ルギー利用方法の提案
(1)バイオガスをガスボイラーのみで利用する場合
(2)バイオガスをコジェネレーターで利用する場合
(3)バイオガスを精製装置で利用する場合
5.バイオガスの利用方式別の経済性検討および産出エネルギー利
用方法提案の意義
要 約 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 65
謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 75
引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77
Abstract・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 86
第Ⅰ章
序論
1.研究の背景
北 海 道 の 乳 用 牛 の 飼 養 頭 数 は 1993 年 の 92 万 7 千 頭 を ピ ー ク に 漸
減 し 、2012 年 現 在 で は 全 国 の 約 57% を 占 め る 82 万 2 千 頭 が 飼 育 さ
れ て い る( 農 林 水 産 省 [46])。一 方 、北 海 道 の 酪 農 家 戸 数 は 減 少 し つ
づ け て お り 、酪 農 家 1 戸 当 た り の 乳 用 牛 飼 養 頭 数 は 年 々 増 加 し て い
る ( Fig.1-1)。 ま た 、 フ リ ー ス ト ー ル 牛 舎 導 入 農 家 割 合 が 増 加 傾 向
に あ り( 北 海 道 農 政 部 食 の 安 全 推 進 局 畜 産 振 興 課 [19])、フ リ ー ス ト
ー ル 牛 舎 か ら 発 生 す る 液 状 ふ ん 尿( Photo 1-1)の 適 正 な 管 理 が 重 要
となっている。
液状ふん尿の管理施設の一つに、メタン発酵(嫌気発酵)を利用
し た バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト が あ る(( 独 )北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [11])。
この施設ではふん尿を一定温度に保持しながら嫌気発酵させ、発酵
後に残る消化液を圃場へ散布して肥料として利用する。発酵時には
有機物の微生物分解によりバイオガスが発生する。このバイオガス
は 、 二 酸 化 炭 素 ( 以 下 、 CO 2 と 表 記 ) と 可 燃 性 で あ る メ タ ン が 混 合
さ れ た ガ ス で あ り( Raven and Gregersen[51])、エ ネ ル ギ ー と し て
利 用 す る こ と が で き る ( Fig.1-2)。
バイオガスはバイオマスを原料として生産された燃料であり、燃
焼 時 に 大 気 中 へ 放 出 さ れ る CO 2 は 、光 合 成 に よ っ て 固 定 さ れ た 炭 素
-1-
が 基 に な っ て い る 。従 っ て 、炭 素 の 循 環 で 見 る と 大 気 中 の CO 2 量 は
変 化 し な い た め カ ー ボ ン ニ ュ ー ト ラ ル と 呼 ば れ 、こ の CO 2 は 温 室 効
果ガスとして算定されないという特徴がある(例えば、農林水産省
[47]、 井 熊 [22])。
バイオガスプラントが多数稼働しているヨーロッパでは、家畜ふ
ん尿を発酵原料とするプラントのほかに、トウモロコシなどのエネ
ル ギ ー 作 物 を 発 酵 原 料 と す る プ ラ ン ト も 多 く 存 在 す る
( Johnny[27])。 バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト に は 農 家 個 々 で 設 置 す る 個 別
型プラント、あるいは複数の農家で利用する共同利用型プラントが
あ る ( Schulz and Eder[53])。 ド イ ツ で は 個 別 型 プ ラ ン ト が 多 く 、
2007 年 時 点 で 約 3,700 施 設 以 上 の バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト が 稼 働 し て
い る ( Teodorita[56])。 デ ン マ ー ク で は 共 同 利 用 型 プ ラ ン ト が 比 較
的 多 く 、2010 年 時 点 で は 23 施 設 の 共 同 利 用 型 プ ラ ン ト と 、60 施 設
の 個 別 型 プ ラ ン ト が 稼 働 中 で あ る ( Rikke et al [52])。 ヨ ー ロ ッ パ
でのバイオガス利用方法を見ると、ドイツでは主にコジェネレータ
ー( 以 下 、CHP と 表 記 )で 電 力 に 変 換 し て 売 電 し て い る( Daniel[7])。
これは、再生可能エネルギー法の施行により、バイオガス由来の発
電電力を高価格で買い上げる義務を電力供給会社に課す政策が導入
さ れ て い る た め で あ る ( 淡 路 [2])。 デ ン マ ー ク で も 電 力 会 社 は 再 生
エ ネ ル ギ ー 由 来 の 発 電 電 力 の 購 入 が 義 務 付 け ら れ て お り( 中 原 [44])、
-2-
主 に CHP で エ ネ ル ギ ー 変 換 し て 利 用 し て い る 。 ま た 、 CHP か ら 回
収した熱エネルギーは、多数の小規模地域暖房ネットワークで利用
さ れ て お り 、デ ン マ ー ク の 世 帯 に 必 要 な 熱 源 の 60% を 供 給 し て い る
( NEDO 海 外 レ ポ ー ト [4])。 さ ら に 、 精 製 後 の バ イ オ ガ ス は 天 然 ガ
スで走る車両の燃料として利用したり、天然ガス供給網に入れたり
することができ、スウェーデンではこのような利用が進んでいる
( NEDO 海 外 レ ポ ー ト [3])。
日本では、主に北海道においてバイオガスプラントが普及してお
り 、 2009 年 時 点 で 個 別 型 プ ラ ン ト が 28 施 設 、 共 同 利 用 型 プ ラ ン ト
が 2 施 設 稼 働 し て い る( 石 田 [24])。北 海 道 で の バ イ オ ガ ス 利 用 方 法
の現状は、ガスボイラーを用いて熱のみを利用する方法、または
CHP を 用 い て 熱 と 電 力 を 利 用 す る 方 法 に 大 別 す る こ と が で き る 。特
に 熱 の 利 用 で は 、北 海 道 は ヨ ー ロ ッ パ と 比 較 し て 冬 期 の 気 温 が 低 く 、
厳冬期には発酵槽等の加温に必要な熱が増加するため、余剰熱は少
な く な る と い う 特 徴 が あ る( 中 山 ら [39])。ま た 、近 年 、バ イ オ ガ ス
を膜分離してメタン濃度を高めたガス(以下、精製バイオガスと表
記 )へ 少 量 の LP ガ ス を 加 え 、都 市 ガ ス の 12A 規 格 に 適 合 す る ガ ス
( 以 下 、精 製 ガ ス と 表 記 )に 精 製 す る 移 動 式 の 精 製 圧 縮 充 填 装 置( 以
下、精製装置と表記)が開発され、実証試験が実施されている(北
海 道 開 発 局 開 発 管 理 部 開 発 調 査 課 [17])。精 製 ガ ス は 天 然 ガ ス 自 動 車
-3-
やガスコンロの燃料に使用することができる。
CHP を 用 い て 発 電 し た 電 力 は 、商 用 電 力 系 統 と 系 統 連 系 す る こ と
で 売 電 が 可 能 と な る 。 2003 年 4 月 1 日 に 施 行 さ れ た 「 電 気 事 業 者
に よ る 新 エ ネ ル ギ ー 等 の 利 用 に 関 す る 特 別 措 置 法 」( 以 下 、 RPS 制
度と表記)では、電気事業者に対して、新エネルギー等を利用して
得られる電気を一定量以上利用することが義務づけられた(経済産
業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 [34] )。 バ イ オ ガ ス を 燃 料 と す る 発 電 電 力 も
RPS 制 度 の 対 象 と な っ た が 、RPS 制 度 で の 売 却 電 力 単 価 は 、購 入 電
力 単 価 と 同 等 か 安 価 に 設 定 さ れ る 場 合 が あ り ( 中 山 ら [42])、 売 電
を積極的に行う動機付けにはならなかった。その後、再生可能エネ
ル ギ ー の 利 用 促 進 を 図 る た め に 、 2012 年 7 月 1 日 か ら 再 生 可 能 エ
ネ ル ギ ー に よ る 発 電 電 力 の 固 定 価 格 買 取 制 度 、い わ ゆ る FIT 制 度 が
始 ま っ た( 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 [32])。FIT 制 度 で の 売 電 単
価 は 、RPS 制 度 よ り 高 い 単 価 と な り 、中 山 ら [42]の 報 告 事 例 で は 、
時 間 帯 に よ り 約 4~ 9 倍 の 単 価 と な っ た 。 そ の た め 、 バ イ オ ガ ス 発
電 の 導 入 が 進 み 、 FIT 制 度 開 始 後 の 1 年 間 に 、 新 た に 7 施 設 の バ イ
オ ガ ス プ ラ ン ト が 稼 働 し て い る( 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 [33])。
このように、バイオガス発電による電力利用については、利用促
進に向けた制度が拡充されてきた。一方、バイオガスのエネルギー
利用は、前述のように熱としての利用や精製ガスとしての利用が可
-4-
能であり、どのような利用方法がエネルギー収支や経済収支から見
て効率的なのかを定量的に評価することは、今後、バイオガス利用
の促進を図る上で重要である。
エネルギー収支や経済収支を評価する際には、短期的評価のみで
はなく長期的な評価、すなわちライフサイクル的視点による評価が
必要である。ライフサイクル的評価手法には、ライフサイクルアセ
ス メ ン ト( 以 下 、LCA と 表 記 )や ラ イ フ サ イ ク ル シ ン キ ン グ が あ る
( 干 場 [21])。 LCA と は 、 対 象 と す る 製 品 を 生 み 出 す 資 源 の 採 掘 か
ら素材製造、生産だけでなく、製品の使用・廃棄段階まで、ライフ
サ イ ク ル 全 体 を 考 慮 し 、そ の 環 境 へ の 影 響 を 評 価 す る 手 法 で あ る( 伊
坪 ら [26])。 LCA は 、 1969 年 に ア メ リ カ の コ カ ・ コ ー ラ 社 が リ タ ー
ナブルびんとワンウェイ容器の選択に関する研究をミッドウェスト
研 究 所 へ 委 託 し 実 施 し た の が 始 ま り だ と さ れ て い る ( 伊 坪 ら [26])。
ま た 、 ラ イ フ サ イ ク ル シ ン キ ン グ で は 、 環 境 に 対 す る 影 響 ( LCA)
だけでなく、経済的評価(ライフサイクルコスト)や社会的評価も
含む。
2.既往の研究
バイオガスプラントにおけるエネルギー収支に関する研究は、こ
れ ま で に 多 数 報 告 さ れ て い る 。 菱 沼 ら [13]は 、 個 別 型 バ イ オ ガ ス プ
-5-
ラントを対象とし、産出されるエネルギーだけではなく、プラント
の建設および運転時に投入されるエネルギーを考慮したエネルギー
的 評 価 を 行 っ て い る 。 小 川 ら [48]は 、 共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ ラ ン
トにおいて、電力線を商用電力と接続する系統連系の方法が売電可
能なケースとそうではないケースでのエネルギー利用効率について
報 告 し て い る 。 Basrawi et al [5]は 、 日 本 に お け る 下 水 汚 泥 を 原 料
としたバイオガスプラントを対象として、外気温がバイオガスプラ
ントのエネルギーバランスにおよぼす影響を検討している。これら
の 報 告 で の バ イ オ ガ ス の 利 用 方 式 は 、CHP で 電 力 と 熱 に 変 換 す る ケ
ースを対象としている。産出されるエネルギーの利用に関する報告
で は 、Steubing et al [54]が ヨ ー ロ ッ パ に お い て 、木 質 バ イ オ マ ス 、
農 業 残 渣 、 家 畜 ふ ん 尿 、 下 水 汚 泥 を 13 通 り の 方 法 で 熱 、 電 力 お よ
び輸送燃料(エタノール)に変換し、化石エネルギーをバイオマス
エ ネ ル ギ ー で 代 替 し た 場 合 の 最 適 な 利 用 方 法 を 、 LCA の 手 法 で 約
1,500 通 り の 計 算 か ら 求 め て い る 。
バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト を 経 済 面 か ら 評 価 し た 研 究 で は 、 石 川 ら [25]
は共同利用型バイオガスプラントを対象とし、プラントの建設、運
転、産出エネルギーおよび消化液の肥料価値などを経済的に評価し
て い る 。 Yiridoe et al [58]は 、 カ ナ ダ の 酪 農 場 お よ び 養 豚 場 の バ イ
オガスプラントを対象として、エネルギー生産による経済性のほか
-6-
に、非市場性の相乗便益(ふん尿の臭い軽減、病原菌の減少、雑草
種子の発芽抑制、温室効果ガス削減)に関する経済的評価を行って
い る 。 Stowell et al [55]は 、 ア メ リ カ の ネ ブ ラ ス カ に お い て 、 酪 農
家のバイオガスプラントの導入に対する公共政策による経済的影響
力を検討している。これらの報告でのバイオガスの利用方式は、
CHP で 電 力 と 熱 に 変 換 す る ケ ー ス を 対 象 と し て い る 。
こ の よ う に 既 往 の 研 究 で は 、 バ イ オ ガ ス を 主 に CHP で 利 用 す る
ケ ー ス を 対 象 と し て い る 。 一 方 、 バ イ オ ガ ス の 利 用 方 式 は CHP の
ほか、前述のようにガスボイラーや精製装置があり、それぞれバイ
オ ガ ス の 利 用 過 程 が 異 な る が 、寒 冷 地 に お け る こ の 3 つ の 利 用 方 式
についてのエネルギー効率を比較検討した報告はいまだない。
3.研究の目的
この 3 つの利用方式のエネルギー生産効率を比較する場合には、
産出されるエネルギーの形態が熱、電力、精製ガスと異なるため、
バイオガスの発生から、産出されるエネルギーを利用するまでのエ
ネルギー収支を検討しなければならない。そのためには、バイオガ
スプラントから外部へエネルギーを供給する過程と、プラント外部
へ供給されるエネルギーを利用する過程にわけて検討する必要があ
る。なぜなら、バイオガスプラント運転時に必要となる電気および
-7-
熱エネルギーは、ガス利用方式によって異なることと、産出される
エネルギーの利用方法は、エネルギーの形態ごとに多岐にわたるた
めである。
また、バイオガスを発生させるためのプラントの建設にエネルギ
ーが投入されている。バイオガスプラントにおけるエネルギー収支
を評価するためには、プラントの建設に必要なエネルギー量を考慮
した、ライフサイクル的な視点からの評価が必要である。
さ ら に 、実 際 の エ ネ ル ギ ー 利 用 の 場 面 で は 経 済 性 が 重 要 視 さ れ る 。
従って、プラントの建設からバイオガスのエネルギー利用までを、
ライフサイクル的視点で経済的に評価することも必要である。
そこで本研究では、前述した研究の背景および既往の研究を踏ま
え、寒冷地の共同利用型バイオガスプラントにおいて、バイオガス
を ガ ス ボ イ ラ ー 、CHP、精 製 装 置 で 利 用 す る 場 合 の エ ネ ル ギ ー 生 産
効率および経済性について、ライフサイクル的視点から評価を行う
こ と を 目 的 と す る 。具 体 的 に は 、以 下 の 内 容 に つ い て 明 ら か に す る 。
(1)プラントの運転状況を模擬することが可能なシミュレーショ
ンプログラムを構築し、寒冷な北海道の気象条件下でのエネルギー
収支を求め、バイオガスの利用方式別に産出されるエネルギー量お
よびエネルギー生産効率を明らかにする。
(2)プラントの建設およびふん尿運搬にかかるエネルギー量を考
-8-
慮して、バイオガスの利用方式別にエネルギー収支を明らかにし、
ライフサイクル的視点でエネルギー利用方式を評価する。
(3)プラントで生産されたエネルギーを化石エネルギーと代替す
る場合の経済性を、プラントの建設、維持管理にかかる費用を考慮
したライフサイクル的視点で評価する。
(4)今後の北海道の地域づくりを見据えた、寒冷地での共同利用
型バイオガスプラントのエネルギー利用方法を提案する。
4.論文の構成
本論文は 5 つの章で構成し、各章の内容は以下の通りである。
第 1 章 で は 、バ イ オ ガ ス の エ ネ ル ギ ー 利 用 方 法 の 現 状 と 課 題 を 示
し、本研究の目的を述べる。
第 2 章 で は 、共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト の 運 転 を 模 擬 す る こ
とができるシミュレーションプログラムを構築し、プラントから産
出されるエネルギーの生産効率をバイオガスの利用方式別に明らか
に す る 。ま た 、産 出 さ れ る エ ネ ル ギ ー 量 の 季 節 変 化 に つ い て 述 べ る 。
第 3 章 で は 、バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト の 建 設 お よ び ふ ん 尿 運 搬 に 必 要
なエネルギー量を整理し、施設の更新年数を考慮したライフサイク
ル的視点でのエネルギー収支について述べる。
第 4 章 で は 、バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト で 生 産 さ れ た エ ネ ル ギ ー と 代 替
-9-
可能な化石エネルギーを整理し、施設の耐用年数を考慮したライフ
サイクル的視点での経済性について述べる。
第 5 章では、前章までに得られた結果をまとめ、寒冷地での共同
利用型バイオガスプラントのエネルギー利用方法について提案する。
- 10 -
第Ⅱ章
バイオガスの利用方式とエネルギー収支の検討
1.目的
バイオガスプラント稼働時には、プラント内での家畜ふん尿の移
送 ポ ン プ や 温 水 循 環 ポ ン プ を 動 か す た め に 電 力 が 必 要 で あ り 、ま た 、
家畜ふん尿を加温するために熱が必要である。これらの電力および
熱の必要量は時々刻々と変化する。また、外気温が上下することで
発酵槽などからの放熱量も変わるため、加温に必要な熱量が変化す
る 。こ の よ う に 、バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト の 運 転 状 況 は 外 的 要 因( 気 温 )
や内的要因(機器の稼働条件の設定)により変化し、その結果はプ
ラントのエネルギー収支に影響をおよぼす。
そこで本章では、バイオガスプラントから外部へエネルギーを供
給するまでの過程を対象に、稼働中の共同利用型バイオガスプラン
トで実測したデータをもとにプラントの稼働を模擬するシミュレー
ションモデルを構築し、年間および月単位でのエネルギー収支につ
い て 定 量 的 に 評 価 す る 。バ イ オ ガ ス 利 用 方 式 は ガ ス ボ イ ラ ー の 場 合 、
CHP の 場 合 お よ び 精 製 装 置 の 場 合 の 3 つ の ケ ー ス と す る 。ま た 、バ
イオガスプラントを運転するために投入した化石エネルギー量と、
バイオガスプラントから産出されたエネルギー量の比率から、効率
的なバイオガス利用方法を明らかにする。さらに、投入した化石エ
- 11 -
ネルギー量および精製時に排出されるオフガス中のメタン量ならび
に 精 製 ガ ス に 添 加 し た LP ガ ス 量 か ら 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 求 め 、
環境に対する負荷について明らかにする。これらを明らかにするこ
とにより、実際にバイオガスプラントを運転する際のバイオガス利
用方法について、産出エネルギー量と生産効率の両面から、定量的
に 検 討 す る こ と が 可 能 と な る ( 中 山 ら [41])。
2.方法
(1)エネルギー収支の検討範囲
バ イ オ ガ ス の 主 な 組 成 は 約 60% が メ タ ン 、約 40% が CO 2 で あ り 、
広 く 普 及 し て い る 都 市 ガ ス 用 や LP ガ ス 用 の 燃 焼 機 器 で は バ イ オ ガ
スを燃料として利用できない。したがって、バイオガスプラントか
ら外部へエネルギーを供給する場合には、利用しやすいエネルギー
に変換する必要がある。
Fig.2-1 に バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト に お け る エ ネ ル ギ ー 収 支 の 検 討 範
囲 を 示 す 。バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト で は 、バ イ オ ガ ス を CHP、ガ ス ボ イ
ラー、精製装置でエネルギー変換し、電力、熱、精製ガスを外部に
供給することができる。その際、各種装置の稼働に必要な電力や精
製 ガ ス に 添 加 す る LP ガ ス を 、 プ ラ ン ト 外 部 か ら 投 入 す る 必 要 が あ
る。また、エネルギー変換の過程において、燃焼などに伴う損失が
- 12 -
発 生 す る 。 そ こで 本 章 で の エ ネ ルギ ー 収 支の 検 討 は 、 産 出 エネ ル ギ
ー( E)か ら 投 入 化 石 エ ネ ル ギ ー( A)
A を 引 い て 、産 出 エ ネ ル ギ ー( E)
で 除 し た 値 を エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 ( (E- A)//E) と 定 義 し 、 こ れ を 指
標 と し て 評 価 す る こ と と す る ( 式 (1))
(
。 すな わ ち 、 エ ネ ル ギー 生 産
効 率 の 最 大 値 は 1 で あ り 、値 が 大き い ほ ど投 入 し た 化 石 エ ネル ギ ー
量 と 比 較 し て 産出 さ れ た エ ネ ル ギー 量 が 大き い こ と を 意 味 する 。
バ イ オ ガ ス プラ ン ト で は 嫌 気 発酵 に よ りバ イ オ ガ ス が 発 生す る が 、
発 酵 施 設 へ は 原料 と し て ふ ん 尿 が投 入 さ れ、 消 化 液 が 排 出 され る た
め 、 Fig .2-1 で は ふ ん 尿 と 消 化 液 の 流 れ を 破 線 で 示 し た 。 本 報 告 で
の エ ネ ル ギ ー 収支 の 検 討 は 、 バ イオ ガ ス の利 用 方 式 に 着 目 した も の
で あ る た め 、 式 (2
2)が 成 り 立 つ 。
投入化石エネルギー(A
A) + 発 生 バ イ オ ガ ス ( B)
= 損 失 ( D)
D + 産 出 エ ネ ル ギ ー ( E)
・・・・・・・(2)
ま た 、 バ イ オガ ス プ ラ ン ト で は、 発 生 した 電 力 や 熱 を 第 一義 に プ
- 13
3-
ラントの運転に利用するため、運転時の消費エネルギーについて評
価 で き る よ う に 、 発 生 エ ネ ル ギ ー ( C) を 求 め た 。
(2)シミュレーションモデルの基礎としたバイオガスプラント
シミュレーションモデルの主たる基礎データとした共同利用型バ
イオガスプラントは、北海道東部の別海町で稼働中の別海町資源循
環 セ ン タ ー ( 以 下 、 別 海 プ ラ ン ト と 表 記 ) で あ る 。 Fig.2-2 に 別 海
プ ラ ン ト の シ ス テ ム 構 成 の 概 要 を 、 Fig.2-3 に ふ ん 尿 の 動 き と 液 温
を示す。複数の酪農家から収集された乳牛ふん尿は原料受入槽で一
時 貯 留 さ れ 、 1,500m 3 の 発 酵 槽 へ 投 入 さ れ る 。 発 酵 槽 は 熱 交 換 機 で
加 温 さ れ 、約 37℃ に 維 持 さ れ る 。発 酵 後 の 消 化 液 は 殺 菌 槽 で 加 温 さ
れた後、消化液貯留タンクに移送され、圃場へ散布するまで貯留さ
れ る 。 殺 菌 槽 で は 、 消 化 液 を 7.5 時 間 以 上 、 55℃ に 保 持 し て い る 。
これは、複数の農家の乳牛ふん尿が混合されるため、雑草種子や病
原菌の拡散防止を目的としている。
発 酵 槽 で 発 生 し た バ イ オ ガ ス に は 、 メ タ ン お よ び CO 2 の ほ か に 、
硫 化 水 素 が 約 0.3% 含 ま れ て い る 。 硫 化 水 素 は 燃 焼 機 器 を 傷 め る た
め 、脱 硫 設 備 で 除 去 さ れ た の ち 、CHP ま た は ガ ス ボ イ ラ ー の 燃 料 と
し て 使 用 す る 。CHP で 発 電 さ れ た 電 力 は プ ラ ン ト 内 の 機 器 の 稼 働 に
利 用 さ れ 、余 剰 分 は 売 電 す る こ と が で き る 。ま た 、CHP ま た は ガ ス
- 14 -
ボイラーから発生する温水は、発酵槽および殺菌槽の加温に利用す
る。
(3)シミュレーションモデル
1)シミュレーションモデルの概要
バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト 運 転 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル は 中 山 ら [38]が
開発したモデルを基本とした。本シミュレーションモデルでは、プ
ラント内の各種装置の運転条件や外気温等の入力データから、プラ
ント内で消費するエネルギー量やプラント外部へ供給可能なエネル
ギー量等を計算することができる。本研究では、このシミュレーシ
ョンモデルのガス利用機器や各種パラメーターを別海プラントの実
測 値 を 基 に 変 更 し た 。 Table 2-1 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 必 要 な 主 な
入力条件を示す。シミュレーションの計算は時間間隔を1分刻みと
し 、 Excel VBA で 記 録 し た マ ク ロ 内 で 行 う ( (独 )土 木 研 究 所 寒 地 土
木 研 究 所 [8])。 1 分 刻 み で 連 続 し て 計 算 す る こ と に よ り 、 バ イ オ ガ
スプラントの実際の運転に近い状態でのシミュレーションが可能で
ある。シミュレーションの期間は、気温の年変化をシミュレーショ
ン結果に反映させるため、1年間とした。
- 15 -
2)電力の計算
ガ ス 利 用 方 式 が CHP の 場 合 の 電 力 の 計 算 は 、 下 記 の 手 順 で 行 っ
た 。 な お 、 ガ ス 利 用 方 式 が CHP 以 外 の 場 合 で は 、 電 力 は す べ て 商
用電力を利用することになる。
ア )そ の 時 点 で 稼 働 し て い る 機 器 の 消 費 電 力 の 合 計 を 1 分 間 毎 に 算
出する。
イ )消 費 電 力 が 発 電 電 力 よ り 少 な く 発 電 電 力 が 余 剰 と な る 場 合 は 売
電し、逆に不足する場合は買電する。
ウ )バ イ オ ガ ス を 貯 留 す る ガ ス ホ ル ダ ー の 容 量 は 350m 3 と す る 。 ガ
ス 貯 留 量 が 2m 3 以 上 あ れ ば CHP は 運 転 可 能 で あ る が 、 ガ ス 貯 留
量 が 一 旦 2m 3 未 満 に な る と 348m 3 ま で 貯 留 さ れ な い 限 り 、 CHP
は起動できないものとする。
3)熱の計算
ガ ス 利 用 方 式 が CHP の 場 合 の 熱 の 計 算 は 、下 記 の 手 順 で 行 っ た 。
な お 、 ガ ス 利 用 方 式 が CHP 以 外 の 場 合 で は 、 熱 は ガ ス ボ イ ラ ー と
重油ボイラーで供給することになる。
ア )プ ラ ン ト の 運 転 に 必 要 な 熱 量 は 、条 件 と し て 設 定 し た 発 酵 温 度 お
よび殺菌温度と気温から推定する。気温は気象庁のアメダス等 で
観測された毎時の値を用いる。
- 16 -
イ )Fig.2-4 に 示 し た 計 算 方 法 に し た が っ て 熱 の 供 給 を お こ な う 。
ウ )気 温 が 高 い と き に は 、 CHP で 生 じ た 熱 が 必 要 熱 量 よ り 大 き い た
め、循環温水の温度が上昇することがある。そこで、過剰な熱が
発生した場合は、次の1分間の必要 熱量からこの過剰分の熱を 差
し 引 く こ と に す る 。こ れ は 過 剰 分 の 熱 が 循 環 温 水 の 温 度 上 昇 と し
て蓄積されると考えるからである。ただし、循環温水温度が過度
に 上 昇 す る と CHP が オ ー バ ー ヒ ー ト す る お そ れ が あ る た め 、 今
回 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は 過 剰 熱 の 上 限 を 300MJ と し 、 こ れ を
超えた分についてはプラント外部へ供給可能な熱量として集計
した。
(4)設定条件
1)殺菌条件
前述のとおり、共同利用型バイオガスプラントでは基本的に消化
液 の 殺 菌 を 行 っ て い る 。Colleran[6]は 効 果 的 な 殺 菌 条 件 を 殺 菌 温 度
と加熱時間の組み合わせで示しており、シミュレーションでは殺菌
温 度 が 55℃ で 7.5 時 間 以 上 の 条 件 と し た 。
2)消費熱量および気温
プラントでの消費熱量は外気温の違いにより、夏期と冬期で大き
- 17 -
く 異 な る( 中 山 ら [37])。そ の た め 、夏 期 と 冬 期 の 気 温 の 違 い を シ ミ
ュレーションに反映させる必要がある。そこで、別海プラントでの
実測データから求めた「発酵温度-日平均気温」と発酵槽で必要な
熱 量 と の 関 係 を Fig.2-5 に 、
「 殺 菌 温 度 - 日 平 均 気 温 」と 殺 菌 層 で 必
要 な 熱 量 と の 関 係 を Fig.2-6 に 示 す 。 こ れ ら の 実 測 値 か ら 導 い た 推
定式を基に、シミュレーションでの必要熱量を求めた。
また、消費熱量として配管からの放熱も考慮する必要があるが、
別海プラントでの計測データからはそれを求めることができなかっ
た。そこで、他の施設での計測結果から配管放熱量を求めることと
した。
中 山 ら [36]は 、 共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト で あ る 湧 別 資 源 循
環試験施設(以下、湧別プラントと表記)において、プラント内で
消費される熱エネルギーを設備ごとに測定している。その結果によ
ると、
「 温 水 ト レ ー ス + 配 管 放 熱 」の 項 は 、プ ラ ン ト 全 体 で 消 費 さ れ
るエネルギー量の約3~4割を占めている。温水トレースとは、原
料輸送配管の凍結防止やガス配管内での結露防止のため、これらの
配管と断熱材との間に配置された細い温水配管のことである。ここ
で、湧別プラントで測定された「温水トレース+配管放熱」の測定
結果のうち、2分の1を配管放熱と仮定すると、放熱量はプラント
全 体 で 消 費 さ れ る 熱 量 の 18~ 26% を 占 め る こ と に な る 。
- 18 -
また、中山ら(未発表)は北海道鹿追町で稼働中の共同利用型バ
イオガスプラントである鹿追町環境保全センター(以下、鹿追プラ
ントと表記)において、冬期の熱収支を測定している。その結果に
よ る と 、配 管 か ら の 放 熱 は 、プ ラ ン ト 全 体 で 消 費 さ れ る 熱 量 の 15%
を占めることが明らかとなっている。そこで、シミュレーションで
の 配 管 放 熱 量 は 、プ ラ ン ト 全 体 で 消 費 さ れ る 熱 量 の う ち 20% を 占 め
るとして計算した。
気 温 は 別 海 町 に 設 置 さ れ て い る 気 象 庁 の ア メ ダ ス で 、1999 年 か ら
2008 年 の 10 年 間 に 観 測 さ れ た 値 の 1 時 間 ご と の 平 均 値 を 用 い た 。
3)精製装置でのガス精製能力
バ イ オ ガ ス の 精 製 方 法 は 主 に 、高 圧 水 法 、PSA 法 お よ び 膜 分 離 法
の 3 つ が あ る( 赤 石 [1])。い ず れ の 方 法 も バ イ オ ガ ス 中 の 約 40% を
占 め る CO 2 を 除 去 す る こ と で メ タ ン 濃 度 を 高 め て い る 。高 圧 水 法 で
は 一 定 の 圧 力 を か け た 水 の 中 に バ イ オ ガ ス を 通 す 。PSA 法 で は ゼ オ
ライトなどの吸着剤を満たした吸着塔内でバイオガスの加圧・減圧
を繰り返し行う。膜分離法では分離膜を収納した膜モジュールに、
加圧したバイオガスを通過させる。膜分離法は他の方法に比べて取
り扱いが容易でメンテナンスフリーな装置といわれている(東レリ
サ ー チ セ ン タ ー [57])。
- 19 -
シミュレーションモデルで用いた精製装置のパラメーターは、鹿
追プラントで実証試験中の膜分離方式の精製装置で得られた値を基
本 と し た 。 Fig.2-7 に 精 製 装 置 の ガ ス 流 量 と メ タ ン 濃 度 を 模 式 的 に
示 す 。こ の 装 置 の 1 時 間 当 た り の 処 理 能 力 は 、メ タ ン 濃 度 が 61.8%
の 原 料 バ イ オ ガ ス 5.39m 3 か ら 、 メ タ ン 濃 度 89.6% の 精 製 バ イ オ ガ
ス を 3.67m 3 生 産 す る こ と が で き る 。 一 方 、 膜 を 透 過 し た CO 2 を 多
く含むオフガスについては実測値が得られなかったため、原料バイ
オ ガ ス と 精 製 バ イ オ ガ ス の 実 測 値 か ら 計 算 し 、 メ タ ン 濃 度 2.5% で
1.72m 3 /h が 発 生 し た と 仮 定 し た 。な お 、シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は こ れ
ら の 実 測 デ ー タ を も と に 、 精 製 バ イ オ ガ ス 製 造 能 力 を 10 倍 に し た
設定値とした。この設定値は、バイオガスプラントから発生するバ
イオガスをすべて精製装置で利用できる能力に相当する。
4)コジェネレーターおよびガスボイラーのエネルギー効率
CHP は 定 格 出 力 120kW で 発 電 効 率 を 30% 、 熱 効 率 を 51% と し
た 。 ま た 、 ガ ス ボ イ ラ ー の ガ ス 消 費 量 は 29m 3 /h で 、 熱 効 率 は 80%
と し た 。 CHP の 発 電 効 率 、 熱 効 率 お よ び ガ ス ボ イ ラ ー の 熱 効 率 は 、
鹿 追 プ ラ ン ト で 稼 働 中 の CHP( 定 格 出 力 100kW) お よ び ガ ス ボ イ
ラ ー( ガ ス 消 費 量 29m 3 /h)で 実 測 し た 値 を 用 い た 。な お 、シ ミ ュ レ
ー シ ョ ン で CHP を 定 格 出 力 120kW に 設 定 し た 理 由 は 、バ イ オ ガ ス
- 20 -
プラントから発生するバイオガスを余すことなく利用できる能力と
したためである。
(5)シミュレーションケースごとに変えた条件
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス を Table 2-2 に 、 ケ ー ス ご と の バ イ オ ガ
ス 利 用 過 程 を Fig.2-8~ 2-10 に 示 す 。 ケ ー ス ご と の ガ ス ボ イ ラ ー の
台数は、ケース①では発生するバイオガスをすべて利用できる設定
とした。また、ケース②および③では、バイオガスプラント内で必
要 な 熱 量 を 供 給 す る こ と が 可 能 な 設 定 と し た 。な お 、CHP お よ び ガ
スボイラーから発生した電力および熱は、第一義にバイオガスプラ
ントの運転に利用し、余剰が発生した場合に外部へ供給する設定と
した。
(6)シミュレーションの期間
シミュレーションの期間は、年間のエネルギー収支については
1 月 1 日 か ら 12 月 31 日 ま で の 365 日 と し た 。ま た 、月 単 位 で の エ
ネ ル ギ ー 収 支 に つ い て は 、 1 月 か ら 12 月 の 1 カ 月 単 位 で 、 各 月 の
1 日 か ら そ の 月 の 最 終 日 ま で と し た 。 な お 、 2 月 は 28 日 と し た 。
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(7)温室効果ガス排出量の算定
温室効果ガスの算定は「温室効果ガス排出量算定・報告マニュア
ル」
( 環 境 省・経 済 産 業 省 [29])に よ り 行 っ た 。今 回 の シ ミ ュ レ ー シ
ョンでの投入化石エネルギーは、電気事業者から購入する電力およ
び 精 製 ガ ス 添 加 用 LP ガ ス で あ る 。電 力 に つ い て は 、平 成 21 年 度 の
北 海 道 電 力 (株 )の 実 排 出 係 数 [28]を 用 い た ( Table 2-3)。 LP ガ ス に
つ い て は 、 前 述 の マ ニ ュ ア ル に 記 載 さ れ て い る 式 (3)よ り 、 LP ガ ス
の 体 積 を 質 量 に 換 算 し 、 Table 2-3 に 示 す 単 位 発 熱 量 お よ び 排 出 係
数 を 用 い て CO 2 排 出 量 を 算 定 し た 。ま た 、バ イ オ ガ ス 燃 焼 時 に 発 生
す る CO 2 は カ ー ボ ン ニ ュ ー ト ラ ル で あ る た め 温 室 効 果 ガ ス と し て
算定されないが、精製時に発生するオフガス中に含まれるメタンは
温 室 効 果 ガ ス で あ る た め 、 地 球 温 暖 化 係 数 の 21 を 乗 じ て CO 2 量 に
換 算 し た ( 環 境 省 ・ 経 済 産 業 省 [29] )。 す な わ ち 、 購 入 電 力 お よ び
LP ガ ス か ら の CO 2 排 出 な ら び に オ フ ガ ス 中 の メ タ ン に つ い て 温 室
効果ガスを算定した。
LPG 質 量 (t)= 1/458(t/m 3 )×LPG 体 積 (m 3 )
・・・・・・(3)
3.結果および考察
(1)プラント運転時の年間エネルギー収支とエネルギー生産効率
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Table 2-4 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス ご と の 年 間 の エ ネ ル ギ ー 収
支およびエネルギー生産効率の結果を示す。ケース①と②では、バ
イ オ ガ ス プ ラ ン ト か ら 発 生 す る バ イ オ ガ ス( B)は 12,110GJ/y で あ
る 。 た だ し ケ ー ス ③ は 、 バ イ オ ガ ス が 他 の 2 つ の ケ ー ス よ り 4GJ/y
多くなっている。これは、いずれのケースもガスホルダー内にバイ
オ ガ ス が 350m 3 貯 留 さ れ た 状 態 で シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 計 算 を 開 始
しているが、ケース③のみ、1年間の計算終了時のガスホルダー内
バイオガス残量が他の 2 つのケースより少ない、すなわち、バイオ
ガス消費量が多くなったため、このような結果となった。
バ イ オ ガ ス を ガ ス ボ イ ラ ー 、CHP お よ び 精 製 装 置 で 利 用 し て 発 生
す る エ ネ ル ギ ー 量 ( C) は 、 ケ ー ス ① と ケ ー ス ② が ほ ぼ 同 じ 量 で あ
り 、 ケ ー ス ③ は 添 加 用 LP ガ ス を 除 い て 考 え て も 、 他 の 2 つ の ケ ー
ス よ り 約 1,000GJ/y 多 く な っ た 。こ れ は 、精 製 時 に 発 生 す る オ フ ガ
ス中のメタンが少ないことと、燃焼前ガスとしてのエネルギー量を
示 し て い る か ら で あ る ( 損 失 (D))。
次 に 産 出 エ ネ ル ギ ー ( E) に つ い て 検 討 す る 。 ケ ー ス ① で は 電 力
はすべて購入電力でまかなうことになるが、熱についてはガスボイ
ラーでの発熱量がプラント運転時に消費する熱量より多いため、プ
ラ ン ト 外 部 へ 供 給 可 能 な 熱 エ ネ ル ギ ー を 3,998GJ/y 産 出 す る こ と が
で き る 。ケ ー ス ② で は 、CHP で の 発 熱 量 が プ ラ ン ト 運 転 時 に 消 費 す
- 23 -
る熱量より多いため、プラント外部へ供給可能な熱エネルギーを
834GJ/y 産 出 す る こ と が で き る 。 電 力 に つ い て は 、 発 電 量 が プ ラ ン
ト 運 転 時 に 消 費 す る 電 力 よ り 多 い た め 、 プ ラ ン ト 外 部 へ 2,352GJ/y
の 電 力 を 供 給 す る こ と が で き る 。た だ し 、CHP の ガ ス 消 費 量 が バ イ
オ ガ ス 発 生 量 よ り も 多 い た め 、 一 時 的 に CHP が 停 止 す る 時 間 帯 が
生じ、それに伴い、購入電力が投入されている。ケース③では、投
入 す る エ ネ ル ギ ー が 3 つ の ケ ー ス の う ち で 最 も 多 い 。そ の 内 訳 を 見
る と 、 購 入 電 力 の 増 加 と 精 製 ガ ス 添 加 用 LP ガ ス の 使 用 が そ の 要 因
となっている。購入電力が増加した理由は、精製装置の消費電力が
大 き い た め で あ る 。産 出 エ ネ ル ギ ー は 、精 製 ガ ス の 5,535GJ/y と な
った。
最 後 に 、産 出 エ ネ ル ギ ー( E)と 投 入 化 石 エ ネ ル ギ ー( A)に つ い
て 考 察 す る 。 産 出 エ ネ ル ギ ー ( E) を 得 る た め に 、 投 入 化 石 エ ネ ル
ギ ー ( A) が 投 入 さ れ て い る の で 、 真 に 生 み 出 さ れ た エ ネ ル ギ ー 量
は ( E) - ( A) と な る 。( E) - ( A) を 見 る と 、 ケ ー ス ② が 多 く 、
ケース①、ケース③の順に少なくなるが、ケース②とケース③の差
は 211GJ と 大 き な 差 で は な い 。 一 方 、 投 入 化 石 エ ネ ル ギ ー ( A) に
お け る ケ ー ス ② と ケ ー ス ③ の 差 は 、 ケ ー ス ③ が 2,560GJ 多 く 、( E)
-( A)の み で は 、エ ネ ル ギ ー 収 支 の 評 価 と し て 適 切 と は い え な い 。
そ こ で 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 ( (E- A)/E) を 求 め る と 、 ケ ー ス ②
- 24 -
が 0.95 と 最 も 大 き く 、ケ ー ス ① 、ケ ー ス ③ の 順 に 小 さ く な り 、ケ ー
ス ③ で は 0.51 を 示 し た 。す な わ ち 、ケ ー ス ③ で は 産 出 エ ネ ル ギ ー( E)
を得るために、その約半分に相当する化石エネルギーを消費してい
ることを示しており、エネルギー生産効率を評価の指標として用い
ることで、産出エネルギーと投入化石エネルギーの関係について、
明確にすることが可能となった。
(2)温室効果ガス排出量の比較
Table 2-5 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス ご と の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量
を示す。ケース①とケース②では購入電力により、それぞれ
125.3tCO 2 -eq/y、 17.4 tCO 2 -eq/y の 排 出 量 と な っ た 。 ケ ー ス ③ で は
購 入 電 力 の ほ か 、 精 製 ガ ス 添 加 用 LP ガ ス と 、 オ フ ガ ス 中 に 含 ま れ
る メ タ ン に よ り 、 合 計 315.6 tCO 2 -eq/y の 排 出 量 と な り 、 3 つ の ケ
ースの中で最も温室効果ガスの排出量が多い結果となった。
Table 2-4 お よ び Table 2-5 か ら 、産 出 エ ネ ル ギ ー 1GJ 当 た り の 温
室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 計 算 す る と 、 ケ ー ス ① で は 0.0313 tCO 2 -eq/y、
ケ ー ス ② で は 0.00546 tCO 2 -eq/y、 ケ ー ス ③ で は 0.0570 tCO 2 -eq/y
と な っ た 。す な わ ち 、産 出 エ ネ ル ギ ー を 1GJ 得 る た め に 、ケ ー ス ③
は ケ ー ス ② の 10 倍 以 上 の 温 室 効 果 ガ ス を 排 出 し て い る こ と が 明 ら
かとなった。
- 25 -
(3)バイオガス利用方式の違いとエネルギー生産効率
バイオガス利用方式が異なる 3 つのケースの年間のシミュレーシ
ョン結果より、産出エネルギー量は精製装置を用いるケース③が最
も 多 く 、 逆 に 最 も 少 な い の は CHP を 用 い る ケ ー ス ② で あ っ た 。 し
かしながら、エネルギー生産効率で評価すると、ケース②が最も効
率的であり、逆にケース③が最も効率が悪い結果となった。さらに
温室効果ガス排出量は、ケース②が最も少なく、ケース③が最も多
かった。すなわち、エネルギー生産効率が良く、環境に対する負荷
が 小 さ い バ イ オ ガ ス の 利 用 方 式 は 、CHP を 用 い る 場 合 で あ る こ と が
明らかとなった。
(4)産出エネルギーの季節変化
Fig.2-11~ 2-13 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス 毎 の 月 別 の 産 出 エ ネ ル
ギ ー と エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 を 示 す ( Nakayama et al [40])。 い ず れ
の ケ ー ス で も 、12~ 2 月 の 産 出 エ ネ ル ギ ー が 少 な く な っ た 。こ れ は 、
冬季の気温低下に伴い、プラント全体で必要な熱エネルギーが増加
し、ガスボイラーによるバイオガスの消費が増えたためである。逆
に、気温が上昇する夏季(7~9月)には、プラント全体で必要な
熱エネルギーが減少するため、産出エネルギーは多くなった。
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス 毎 に 考 察 す る と 、 Fig.2-11 の ガ ス ボ イ ラ
- 26 -
ーを用いるケースでは、エネルギー生産効率が夏季に大きく、冬季
に小さくなった。これは、プラントの運転に必要な購入電力(投入
化石エネルギー)は各月ともほぼ同じ量であるが、気温の変化に伴
い、産出される熱エネルギーに違いが生じるためである。
Fig.2-12 の CHP を 用 い る ケ ー ス で は 、 月 別 の 熱 エ ネ ル ギ ー 産 出
量 に 大 き な 違 い が 生 じ た 。3~ 11 月 は 、CHP で 発 生 す る 熱 エ ネ ル ギ
ーよりもプラント運転時に消費する熱エネルギーが少ないため、熱
エネルギーをプラント外部へ供給することが可能である。一方、冬
季は外部へ供給可能な熱エネルギーが発生しない。
プラント外部へ供給される熱エネルギーの用途としては、冬季の
暖 房 や 融 雪 が 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 CHP を 用 い る ケ ー ス の 場 合 、
プラント外部で熱エネルギーが必要な冬季にプラントから熱エネル
ギーを供給できないことが明らかとなった。逆に夏季には、ガスボ
イ ラ ー お よ び CHP の い ず れ を 用 い た ケ ー ス で も 、 プ ラ ン ト 外 部 へ
供給可能な熱エネルギーが増加することが明らかとなった。
Fig.2-13 の 精 製 装 置 を 用 い る ケ ー ス で は 、精 製 装 置 を 稼 働 す る た
めの購入電力が多いため、他の 2 つのケースと比較して、エネルギ
ー生産効率は良くない。しかしながら、汎用性が高く、貯蔵可能な
精製ガスとしてエネルギーを産出することができるため、需給の調
整が比較的容易であると考えられる。例えば、既に実用化されてい
- 27 -
るバイオガスとガソリンを切り替えて利用できる自動車では、精製
ガスの産出量が多い夏季には精製ガスのみを利用し、冬季にはガソ
リンを併用するなどで、需要家側での調整が可能と考えられる。
このように、季節による気温変化が大きい寒冷地では、冬季のプ
ラント内での熱需要が多いため、プラント外部に供給可能なエネル
ギー量が少なくなる。また、熱エネルギーをプラント外部へ供給す
る場合には、プラント外部での需要と供給にずれが生じる可能性が
あることが明らかとなった。したがって、バイオガスプラントから
外部へ供給するエネルギーの利用方法を検討する場合には、これら
の特徴を考慮することが重要である。
4.小括
家畜ふん尿を原料とするバイオガスプラントでは、発生するバイ
オ ガ ス を CHP で 燃 焼 さ せ て 電 力 お よ び 熱 エ ネ ル ギ ー と し て 利 用 す
る方法や、バイオガスを精製利用する方法、また、ガスボイラーの
みで燃焼させて熱として利用する方法がある。このように、バイオ
ガスの利用方法は複数想定されるが、ガス利用過程が異なるため、
産出されたエネルギー量を比較するだけではどの方法が効率的にエ
ネルギーを生産しているかの判断ができない。そこで本章では、稼
働中の共同利用型バイオガスプラントで実測したデータをもとにプ
- 28 -
ラントの稼働を模擬するシミュレーションモデルを構築し、バイオ
ガ ス 利 用 方 法 が ガ ス ボ イ ラ ー 、CHP お よ び 精 製 装 置 の 場 合 で の プ ラ
ント運転時のエネルギー収支について定量的に比較し、投入化石エ
ネルギー量と産出エネルギー量の比率から、効率的なバイオガス利
用方法を明らかにした。また、投入した化石エネルギー量および精
製時に排出されたオフガス中のメタン量ならびに精製ガスに添加し
た LP ガ ス 量 か ら 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 求 め 、 環 境 に 対 す る 負 荷 に
ついて明らかにした。
そ の 結 果 、 乳 牛 1,000 頭 分 の ふ ん 尿 を 管 理 す る バ イ オ ガ ス プ ラ ン
ト で は 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 が 最 も 良 い ガ ス 利 用 方 法 は CHP を 用
いた場合であることが明らかとなった。また、温室効果ガス排出量
の 最 も 少 な い ガ ス 利 用 方 法 は CHP を 用 い た 場 合 で あ り 、 最 も 多 い
の は 精 製 装 置 を 利 用 し た 場 合 で あ っ た 。産 出 エ ネ ル ギ ー 1GJ 当 た り
の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 は 、 精 製 装 置 を 利 用 し た 場 合 で は CHP を 利
用 し た 場 合 の 10 倍 以 上 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 産 出 エ ネ ル
ギーの季節変化は、冬季にプラント内での熱需要が多いため、プラ
ン ト 外 部 へ 供 給 可 能 な エ ネ ル ギ ー 量 が 少 な く な り 、 特 に CHP を 用
いて熱エネルギーをプラント外部で利用するケースでは、プラント
外部での需要と供給にずれが生じる可能性があることが明らかとな
った。
- 29 -
第Ⅲ章
ライフサイクル的視点によるバイオガスプラントのエネル
ギー収支の検討
1.目的
第Ⅱ章では、バイオガスプラントから外部へエネルギーを供給す
るまでの過程を対象に、バイオガスの利用方法別にエネルギー収支
を 明 ら か に し た 。バ イ オ ガ ス を 生 産 す る た め に は 、プ ラ ン ト の 建 設 、
更新やふん尿の運搬が必要であり、これらを行うためにはエネルギ
ーの投入が必要である。一方、消化液を肥料として利用することで
化学肥料使用量を削減できるため、消化液利用により化学肥料の製
造に必要なエネルギー相当がバイオガスプラントから産出されてい
ると見なすことができる。
そこで本章では、プラント建設およびふん尿運搬時に投入するエ
ネルギー量と、第Ⅱ章で明らかにしたプラントから産出されるエネ
ルギー量を整理し、施設の更新年数を考慮したライフサイクル的視
点でのエネルギー収支を明らかにする。
2.方法
(1)設備の製造および施設の建設に必要なエネルギー量の算出
バ イ オ ガ ス 利 用 設 備 で あ る ガ ス ボ イ ラ ー 、CHP お よ び 精 製 装 置 を
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製 造 す る 際 に 必 要 な エ ネ ル ギ ー 量 は 、 (独 )国 立 環 境 研 究 所 の 「 産 業
連 関 表 に よ る 環 境 負 荷 原 単 位 デ ー タ ブ ッ ク ( 3EID)」( 南 齋 ら [45])
を 用 い て 算 出 し た 。 3EID で は 、 主 に 生 産 額 百 万 円 当 た り の 環 境 負
荷原単位が整理されている。金額については、生産者価格と購入者
価格の 2 種類があり、ここでは、購 入者価格当たりの原単位を使用
し た 。 ま た 、 3EID で は 、 財 や サ ー ビ ス を 約 400 と い う 限 ら れ た 数
の 部 門 に 分 類 し て お り( 南 齋 ら [45])、す べ て の 部 門 に お い て 購 入 者
価格当たりの原単位が整理されているわけではない。そのため、部
門の選定は原単位が整理されている「その他の一般機械器具及び部
品」
( 部 門 番 号 219)と し た 。使 用 し た 環 境 負 荷 原 単 位( 購 入 者 価 格
ベ ー ス ) は 34.028GJ/百 万 円 で あ る 。 な お 、 バ イ オ ガ ス 利 用 設 備 の
価格は、業者からの見積又は聞取り値を用いた。
バイオガス利用設備以外のプラント設備の製造に必要なエネルギ
ーおよび建物の建設に必要なエネルギーは、
( 独 )北 海 道 開 発 土 木 研
究 所 [10]で 算 出 し て い る 施 設 建 設 に 伴 う CO 2 排 出 量 を 、灯 油 の 温 室
効 果 ガ ス 排 出 係 数 [28]で あ る 0.0185tC/GJ( = 0.0678tCO 2 /GJ) で
割ることでエネルギー量に換算した。各設備、施設の更新年数は税
制上の減価償却年数とした。
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(2)ふん尿運搬等に必要なエネルギー量および消化液のエネルギ
ー価値の算出
ふん尿の運搬および消化液の運搬・散布時には、運搬車輌の燃料
として軽油が消費される。
( 独 )北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [10]で は 、ふ
ん 尿 の 運 搬 時 お よ び 消 化 液 の 運 搬・散 布 時 に 排 出 さ れ る 年 間 の CO 2
量 を 105,244kg-CO 2 と 算 出 し て い る 。そ こ で 軽 油 消 費 に よ る エ ネ ル
ギ ー 量 は 、軽 油 の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 係 数 [29]で あ る 0.0187tC/GJ( =
0.0686tCO 2 /GJ) で 割 る こ と で 換 算 し た 。
消化液のエネルギー価値は、消化液散布により削減可能な化学肥
料を製造する際に必要なエネルギー量から求めた。化学肥料を製造
す る 際 に 必 要 な エ ネ ル ギ ー 量 は 、 大 久 保 [49]の 値 を 用 い た 。 消 化 液
の 肥 料 成 分 は ( 独 ) 北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [10]の 分 析 結 果 を 使 用 し
た ( Table 3-1)。 な お 、 消 化 液 中 の 肥 料 成 分 の す べ て が 化 学 肥 料 と
同等に作物に吸収されるわけではないため、それを補正するための
基 準 肥 効 率 ( 北 海 道 農 政 部 [18]) を 乗 じ て 、 代 替 可 能 な 化 学 肥 料 の
量 を 算 出 し た ( Table 3-2)。 消 化 液 の 生 産 量 は 、 18,250t/y( 50t×
365d) と し た 。
3.結果および考察
Table 3-3 に プ ラ ン ト 設 備 の 製 造 お よ び 建 設 に 投 入 さ れ た エ ネ ル
- 32 -
ギー量を示す。第Ⅱ章で明らかにしたプラントから産出されるエネ
ル ギ ー 量 ( Table 2-4 ) は 、 い ず れ の ガ ス 利 用 方 式 も 約 2,800 ~
3,000GJ/y で あ り 、Table 3-3 に 示 し た 1 年 当 た り の 投 入 エ ネ ル ギ ー
量 と 比 較 す る と 産 出 エ ネ ル ギ ー 量 が 多 い 結 果 と な っ た 。 Table 3-4
にふん尿運搬時および消化液運搬・散布時に投入されたエネルギー
量 を 、 Table 3-5 に 消 化 液 の 化 学 肥 料 代 替 に よ る エ ネ ル ギ ー 価 値 を
示す。消化液の化学肥料代替によるエネルギー量は、ふん尿および
消化液の運搬に必要なエネルギー量よりも多い結果となった。
次に、プラントの運転年数とエネルギー収支との関係をライフサ
イ ク ル 的 視 点 で 明 ら か に す る た め 、 Fig.3-1~ 3-3 に 、 プ ラ ン ト 運 転
開 始 か ら 35 年 目 ま で の エ ネ ル ギ ー 投 入 量 と 産 出 量 を 示 す 。 運 転 年
数 を 35 年 と し た の は 、耐 用 年 数 が 最 も 長 い CHP が 2 回 更 新 す る ま
での収支を見るためである。ガス利用方式がガスボイラー利用のケ
ー ス で は 6 年 目 以 降 に 、CHP 利 用 お よ び 精 製 装 置 利 用 の ケ ー ス で は
7 年目以降に、エネルギー産出量が投入量を上回ることが明らかと
なった。
4.小括
バイオガスを生産するためのプラントの建設、更新や原料である
ふん尿の運搬時には、エネルギー投入が必要である。また、消化液
- 33 -
を肥料として利用することで化学肥料使用量を削減できるため、消
化液利用により化学肥料の製造に必要なエネルギー相当がバイオガ
スプラントから産出されていると見なすことができる。
そこで本章では、プラント建設およびふん尿運搬時に投入するエ
ネルギー量と、第Ⅱ章で明らかにしたプラントから産出されるエネ
ルギー量を整理し、施設の耐用年数を考慮したライフサイクル的視
点でのエネルギー収支を明らかにした。
その結果、いずれのガス利用方式においても、プラント運転開始
後 6 年目または 7 年目以降にエネルギー産出量がエネルギー投入量
を上回ることが明らかとなった。
- 34 -
第Ⅳ章
バイオガスの利用方式と経済性の検討
1.目的
第Ⅲ章までに述べたように、バイオガスプラントから外部へ供給
可能なエネルギーはバイオガスの利用方式によって異なり、熱、電
力 、精 製 ガ ス の 形 で 供 給 す る こ と が で き る 。こ れ ら の エ ネ ル ギ ー は 、
既存の化石エネルギーと代替することができるが、代替可能な化石
エネルギーは複数存在し、また、化石エネルギーの価格およびエネ
ルギー量はそれぞれ異なる。従って、バイオガスプラントから外部
へ供給可能なエネルギーの経済的価値を評価するためには、代替可
能な化石エネルギー別に検討する必要がある。
また、エネルギーを産出するシステム全体としての経済性を評価
するためには、バイオガスプラントの建設費、維持管理費および更
新費を考慮した経済性を検討する必要がある。
そこで本章では、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネ
ルギーと代替可能な化石エネルギーを整理し、施設の耐用年数を考
慮したライフサイクル的視点での経済性を明らかにする。
2.方法
(1)バイオガスのエネルギー利用と代替可能な化石エネルギー
- 35 -
バイオガスの利用方式別に、産出されるエネルギーと代替可能な
化 石 エ ネ ル ギ ー と の 関 係 を Fig.4-1 に 示 す 。 バ イ オ ガ ス を ガ ス ボ イ
ラーで利用する場合には温水を産出する。代替可能な化石エネルギ
ー 由 来 の 温 水 は 、ボ イ ラ ー で 灯 油 、A 重 油 、都 市 ガ ス 、LP ガ ス を 燃
焼 す る ケ ー ス と し 、 ボ イ ラ ー の 熱 効 率 は 80% と し た 。
バ イ オ ガ ス を CHP で 利 用 す る 場 合 に は 、電 力 と 温 水 を 産 出 す る 。
代替可能な化石エネルギー由来の電力は商用電力とした。温水につ
いては、前述のボイラーのケースと同様とした。また、代替ではな
い が 、CHP か ら 産 出 さ れ た 電 力 は 、売 電 す る こ と で も 経 済 的 価 値 が
生 ま れ る 。 そ こ で 、 FIT 制 度 に よ る 売 電 を 行 う 場 合 を 想 定 し た 。
バ イ オ ガ ス を 精 製 装 置 で 利 用 す る 場 合 に は 、精 製 ガ ス を 産 出 す る 。
精製ガスの用途は、前述の通り、ボイラーやガスコンロでの利用お
よび自動車燃料としての利用が可能である。そこで、代替可能な化
石 エ ネ ル ギ ー は 、灯 油 、A 重 油 、都 市 ガ ス 、LP ガ ス 、ガ ソ リ ン と し
た。
(2)バイオガスプラントにおける経済収支の検討範囲
Fig.4-2 に バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト に お け る 経 済 収 支 の 検 討 範 囲 を 示
す。バイオガスプラントの収入は、産出されるエネルギーの経済的
価値、消化液の経済的価値、酪農家が支出するプラント利用費の
- 36 -
3 つである。
産出されるエネルギーの経済的価値は、代替可能な化石エネルギ
ー の 価 格 か ら 算 出 し た ( Table 4-1[15,16,23,30,31])。
消化液の経済的価値は、代替可能な化学肥料の価格から算出した
( Table 4-2)。消 化 液 の 肥 料 成 分 は( 独 )北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [10]
の 分 析 結 果 を 使 用 し た ( Table 3-1)。 な お 、 消 化 液 中 の 肥 料 成 分 の
すべてが化学肥料と同等に作物に吸収されるわけではないため、そ
れ を 補 正 す る た め の 基 準 肥 効 率 ( 北 海 道 農 政 部 [18]) を 乗 じ て 、 代
替 可 能 な 化 学 肥 料 の 量 を 算 出 し た( Table 3-2)。消 化 液 の 生 産 量 は 、
18,250t/y( 50t×365d) と し た 。
( 独 ) 北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [10]は 、 プ ラ ン ト 利 用 に よ る 経 済 的
効果の一つとして、個別酪農家において不要になる機械類の減価償
却 費 削 減 効 果 を 成 牛 1 頭 当 た り 換 算 で 、21,657 円 /y と 産 出 し て い る 。
そ こ で 、 こ こ で は 1,000 頭 分 に 相 当 す る 21,657,000 円 /y を プ ラ ン
ト利用費とした。
バイオガスプラントの支出は、初年度に支出するプラント建設費
( Table 4-3[10])、毎 年 支 出 す る プ ラ ン ト 運 転 経 費( Table 4-4[10])
および各設備の更新費とした。なお、プラント運転経費には、人件
費、修理費、点検交換費および購入化石エネルギー費が含まれてい
る。また、各設備の更新年数は税制上の減価償却年数とした。
- 37 -
3.結果および考察
(1)プラントの運転に伴う経済収支
こ こ で は 、 Fig.4-2 に 示 し た 経 済 収 支 の 検 討 範 囲 の う ち 、 支 出 の
項目のプラント建設費および更新費を除いた経済収支を検討する。
これにより、単年度におけるプラント運転経費とプラント運転によ
る収入の関係を明らかにすることができる。
Table 4-5~ 4-7 に 、 ガ ス 利 用 方 式 別 の 代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー
毎の収支を示す。すべてのケースで運転経費より収入が多い結果と
なり、経済収支がマイナスになることはなかった。代替可能な化石
エネルギー毎の比較では、いずれのガス利用方式においても、熱に
つ い て は A 重 油 で 代 替 す る 場 合 の 収 入 が 最 も 少 な く 、 LP ガ ス で 代
替 す る 場 合 の 収 入 が 最 も 多 く な っ た 。 電 力 を 産 出 す る CHP の ケ ー
ス で は 、 高 圧 電 力 と 代 替 す る ケ ー ス よ り 、 FIT 制 度 で 売 電 す る ケ ー
ス の 方 が 約 2,000 万 円 /y 多 い 結 果 と な り 、FIT 制 度 で 売 電 し て 熱 を
LP ガ ス で 代 替 す る ケ ー ス の 収 支 が 最 も 多 い こ と が 明 ら か と な っ た 。
(2)プラント建設費および更新費を考慮した経済収支
こ こ で は 、プ ラ ン ト 建 設 費 お よ び 更 新 費 と 、第 Ⅳ 章 3 .
( 1 )で 明
らかにした運転時の単年度収支から、プラントの運転年数と経済収
支との関係をライフサイクル的視点で明らかにする。なお、代替可
- 38 -
能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー は 、収 入 が 最 も 少 な い A 重 油 の 場 合 と 、収 入 が
最 も 多 い LP ガ ス の 場 合 で 評 価 す る 。 ま た 、 電 力 は FIT 制 度 を 利 用
して売電する場合で評価する。
Fig.4-3~ 4-5 に 、 プ ラ ン ト 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 入 と 支
出 を 示 す 。運 転 年 数 を 35 年 と し た の は 、耐 用 年 数 が 最 も 長 い( 16.9
年)施設が 2 回更新するまでの収支を見るためである。ガス利用方
式がガスボイラーのケースでは、収入と支出の差が最も小さくなる
年 数 は 運 転 開 始 後 13 年 目 で あ り 、 そ の 差 は LP ガ ス 代 替 の 場 合 で
- 218 百 万 円 、 A 重 油 代 替 の 場 合 で - 478 百 万 円 で あ っ た 。 同 様 に
CHP の ケ ー ス で は 、収 入 と 支 出 の 差 が 最 も 小 さ く な る 年 数 は 運 転 開
始 後 13 年 目 で あ り 、 LP ガ ス 代 替 の 場 合 で - 217 百 万 円 、 A 重 油 代
替 の 場 合 で - 271 百 万 円 で あ っ た 。 精 製 装 置 の ケ ー ス で は 、 収 入 と
支 出 の 差 が 最 も 小 さ く な る 年 数 は 運 転 開 始 後 12 年 目 で あ り 、LP ガ
ス 代 替 の 場 合 で - 390 百 万 円 、 A 重 油 代 替 の 場 合 で - 655 百 万 円 で
あった。すなわち、いずれのケースでも、収支はマイナスであるこ
とが明らかとなった。
(3)経済収支改善方法の検討
1)建設費補助による支出軽減
前述のように、プラント建設費および更新費を除いた単年度での
- 39 -
経済収支は、いずれのケースでもプラスとなるが、プラント建設費
および更新費を考慮したライフサイクル的視点での経済収支は、い
ずれのケースでもマイナスとなることが明らかとなった。したがっ
て経済収支を改善する方策の一つとして、建設費の負担を軽減する
ことを検討する。
そ こ で 、プ ラ ン ト 建 設 費 用 の 2 分 の 1 を 補 助 す る こ と を 想 定 し た
場 合 の 、 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 入 と 支 出 を Fig.4-6~ 4-8 に
示 す 。 た だ し 、 FIT 制 度 の 売 電 で 評 価 を 行 っ て い る CHP 利 用 の ケ
ー ス で は 、発 電 設 備 に 該 当 す る 発 酵 槽 、ガ ス ホ ル ダ ー 、攪 拌 機 、CHP
を補助の対象から除外した。ガス利用方式がガスボイラーのケース
では、A 重油代替の場合では収支がプラスにならなかったものの、
LP ガ ス 代 替 の 場 合 で 運 転 開 始 後 9 年 目 に 収 支 が プ ラ ス と な り 、 13
年 目 に 最 も 収 支 が 改 善 さ れ + 171 百 万 円 と な っ た 。 し か し な が ら 、
17 年 目 に は メ タ ン 発 酵 施 設 等 が 更 新 時 期 を 迎 え る た め 、更 新 費 へ の
補 助 を 想 定 し な け れ ば 、 27 年 目 と 32 年 目 を 除 き 、 収 支 が マ イ ナ ス
に な る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ガ ス 利 用 方 式 が CHP の 場 合 で は 、
LP ガ ス 代 替 の 場 合 で 運 転 開 始 後 11 年 目 に 、A 重 油 代 替 の 場 合 で 運
転 開 始 後 12 年 目 に 収 支 が プ ラ ス に な る こ と が 明 ら か と な っ た 。 最
も 収 支 が 改 善 さ れ る の は 運 転 開 始 後 13 年 目 の LP ガ ス 代 替 の 場 合 で
+ 110 百 万 円 と な っ た 。し か し な が ら 、運 転 開 始 後 14 年 目 以 降 の 収
- 40 -
支はマイナスで推移することが明らかとなった。ガス利用方式が精
製 装 置 の ケ ー ス で は 、LP ガ ス 代 替 の 場 合 で 運 転 開 始 後 12 年 目 と 13
年 目 に 収 支 が プ ラ ス と な っ た が 、14 年 目 以 降 は 収 支 が マ イ ナ ス の ま
ま推移した。
このように、プラント建設費を補助することにより、主要施設の
更新を迎えるまでは収支がプラスとなるが、更新費の補助がなけれ
ば、その後の収支はマイナスで推移することが明らかとなった。
2)副原料受け入れによる収入増加
モデルとした共同利用型バイオガスプラントは、乳牛ふん尿を主
原料とするが、地域で発生するその他のバイオマスを副原料として
投入することができる。ただし、発酵後の消化液を肥料として利用
することから、副原料として利用するバイオマスは、有害物質が含
まれていないことを確認する必要がある。別海プラントでこれまで
に投入された地域バイオマスには、町内で発生した合併浄化槽汚泥
や乳業工場汚泥、廃棄された乳製品などがある。これらを副原料と
し て 受 け 入 れ る 際 に 受 け 入 れ 費 用 を 徴 収 し て お り 、 平 成 19 年 度 の
実 績 で は 、 そ の 額 が 4,152 万 円 と 報 告 さ れ て い る (( 独 ) 土 木 研 究
所 [9])。
そ こ で 、 毎 年 4,152 万 円 の 副 原 料 受 け 入 れ 費 の 収 入 を 想 定 し た 場
- 41 -
合 の 、運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 入 と 支 出 を Fig.4-9~ 4-11 に 示
す。なお、ここでは建設費に対する補助は考慮しない。ガス利用方
式 が ガ ス ボ イ ラ ー の ケ ー ス で は 、A 重 油 代 替 の 場 合 で 運 転 開 始 後 26
年 目 に 収 支 が プ ラ ス に な り 、ま た LP ガ ス 代 替 の 場 合 で は 10 年 目 に
収 支 が プ ラ ス と な り 、そ の 後 一 時 的 に マ イ ナ ス に な る も の の 、20 年
目以降の収支はプラスで推移することが明らかとなった。ガス利用
方 式 が CHP の ケ ー ス で は 、A 重 油 代 替 の 場 合 で 運 転 開 始 後 11 年 目
に 、LP ガ ス 代 替 の 場 合 で 10 年 目 に 収 支 が プ ラ ス と な り 、そ の 後 一
時 的 に マ イ ナ ス に な る も の の 、 A 重 油 代 替 で は 21 年 目 以 降 の 、 LP
ガ ス 代 替 で は 20 年 目 以 降 の 収 支 は プ ラ ス で 推 移 す る こ と が 明 ら か
となった。ガス利用方式が精製装置のケースでは、A 重油代替の場
合 で は 収 支 が プ ラ ス に は な ら な か っ た が 、 LP ガ ス 代 替 の 場 合 で は
運 転 開 始 後 12 年 目 に 収 支 が プ ラ ス と な り 、 そ の 後 、 一 時 的 に マ イ
ナ ス に な る も の の 、22 年 目 以 降 の 収 支 は プ ラ ス で 推 移 す る こ と が 明
らかとなった。
このように、副原料受け入れによる収入増加により、長期的には
収支がプラスで推移することが明らかとなった。
3)代替可能な化石エネルギーの単価引き上げによる収入増加
ガ ス 利 用 方 式 が CHP の ケ ー ス で の 電 力 は 、 FIT 制 度 を 利 用 し て
- 42 -
売 電 す る 場 合 で 評 価 を 行 っ て き た 。 こ れ は 、 FIT 制 度 で の 電 力 買 取
価格が商用電力の価格より高く設定されており、収入が多くなるた
め で あ る 。 FIT 制 度 で は 、 電 力 に つ い て の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 源 の
利 用 の 促 進 を 目 的 と し た 価 格 設 定 と な っ て い る 。 こ こ で 、 1kWh=
3.6MJ と す る と 、FIT 制 度 で の メ タ ン 発 酵 ガ ス 化 発 電 の 買 取 価 格 が
40.95 円 /kWh で あ る の で 、1MJ 当 た り の 価 格 は 、40.95 円 ÷3.6MJ
= 11.4 円 と 考 え る こ と が で き る 。
そ こ で 、 代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー の 価 格 を 1MJ 当 た り 11.4 円
と 設 定 し た 場 合 で の 、 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 入 と 支 出 を
Fig.4-12~ 4-14 に 示 す 。な お 、こ こ で は 建 設 費 に 対 す る 補 助 は 考 慮
し な い 。ガ ス 利 用 方 式 が ガ ス ボ イ ラ ー の ケ ー ス で は 、運 転 開 始 後 12
年 目 に 収 支 が プ ラ ス と な り 、そ の 後 一 時 的 に マ イ ナ ス に な る も の の 、
23 年 目 以 降 の 収 支 は 、 34 年 目 を 除 き プ ラ ス と な る こ と が 明 ら か と
な っ た 。ガ ス 利 用 方 式 が CHP の ケ ー ス で は 、運 転 開 始 後 13 年 目 で
収 入 と 支 出 の 差 が - 149 百 万 円 と 最 も 小 さ く な る が 、 収 支 が プ ラ ス
になることはなかった。ガス利用方式が精製装置のケースでは、運
転 開 始 後 27 年 目 に 収 支 が プ ラ ス に な る が 28 年 目 に は マ イ ナ ス に も
ど り 、 30 年 目 に 収 支 は 再 び プ ラ ス に な る が 33 年 目 に は マ イ ナ ス に
なることが明らかとなった。
このように、代替可能な化石エネルギーの単価引き上げによる収
- 43 -
入増加により、ガス利用方式がガスボイラーのケースでは長期的な
収支はプラスとなり、精製装置のケースでは一時的にプラスとなる
こ と が 明 ら か と な っ た 。一 方 、ガ ス 利 用 方 式 が CHP の ケ ー ス で は 、
外部で利用可能なエネルギーの多くが電力であり、熱と代替する化
石エネルギーは少ないため、他の二つのケースほど収支が改善しな
かった。
4.小括
バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネルギーはバイオガ
スの利用方式によって異なり、熱、電力、精製ガスの形で供給する
ことができる。これらのエネルギーは、既存の化石エネルギーと代
替することができるが、代替可能な化石エネルギーは複数存在し、
ま た 、化 石 エ ネ ル ギ ー の 価 格 お よ び エ ネ ル ギ ー 量 は そ れ ぞ れ 異 な る 。
従って、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネルギーの経
済的価値を評価するためには、代替可能な化石エネルギー別に検討
する必要がある。また、エネルギーを産出するシステム全体として
の経済性を評価するためには、バイオガスプラントの建設費、維持
管理費および更新費を考慮した経済性を検討する必要がある。
そこで本章では、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネ
ルギーと代替可能な化石エネルギーを整理し、施設の耐用年数を考
- 44 -
慮したライフサイクル的視点での経済性を明らかにした。
その結果、プラント建設費および更新費を除いた単年度での経済
収支の検討では、すべてのケースで運転経費より収入が多い結果と
なり、経済収支がマイナスになることはなかった。
プラント建設費および更新費と単年度の運転時収支から、プラン
ト 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 経 済 収 支 を ラ イ フ サ イ ク ル 的 視 点 で
検討した結果、いずれのケースでも収支はマイナスであることが明
らかとなった。
そこで、経済収支改善方法として、建設費補助による支出軽減、
副原料受け入れによる収入増加、代替可能な化石エネルギーの単価
引 き 上 げ に よ る 収 入 増 加 の 3 つ の 方 法 を 想 定 し て 検 討 し た 。そ の 結
果 、プ ラ ン ト 建 設 費 用 の 2 分 の 1 を 補 助 す る こ と を 想 定 し た 場 合 で
は、いずれのケースでも、主要施設の更新を迎えるまでは収支がプ
ラスとなるが、更新費の補助がなければ、その後の収支はマイナス
で推移することが明らかとなった。
既 往 の 研 究 を 参 考 に 、 毎 年 4,152 万 円 の 副 原 料 受 け 入 れ 費 の 収 入
を想定した場合では、いずれのケースでも、長期的には収支がプラ
スで推移することが明らかとなった。
FIT 制 度 で の 電 力 買 取 価 格 を 参 考 に 、 代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー
の 価 格 を 1MJ 当 た り 11.4 円 と 想 定 し た 場 合 で は 、 ガ ス 利 用 方 式 が
- 45 -
ガスボイラーのケースでは長期的には収支がプラスで推移し、精製
装置のケースでは一時的に収支がプラスとなることが明らかとなっ
た 。 一 方 、 ガ ス 利 用 方 式 が CHP の ケ ー ス で は 、 収 支 は マ イ ナ ス で
推移することが明らかとなった。
- 46 -
第Ⅴ章
総合考察
1.前章までに得られた結果と本章の目的
本論文の第Ⅱ章では、家畜ふん尿を原料とするバイオガスプラン
ト に お け る バ イ オ ガ ス 利 用 に つ い て 、 バ イ オ ガ ス を CHP で 燃 焼 さ
せて電力および熱エネルギーとして利用する方法、バイオガスを精
製利用する方法、ガスボイラーのみで燃焼させて熱として利用する
方法を比較して、効率的なバイオガス利用方法を明らかにした。そ
の 結 果 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 が 最 も 良 い ガ ス 利 用 方 法 は CHP を 用
いた場合であることが明らかとなった。また、産出エネルギーの季
節変化を検討した結果では、冬季のプラント内での熱需要が多いた
め、冬季にプラント外部へ供給可能なエネルギー量が少なくなるこ
とが明らかとなった。
第Ⅲ章では、プラント建設およびふん尿運搬時に投入するエネル
ギー量と、第Ⅱ章で明らかにしたプラントから産出されるエネルギ
ー量を整理し、施設の耐用年数を考慮したライフサイクル的視点で
のエネルギー収支を明らかにした。その結果、いずれのガス利用方
式 に お い て も 、プ ラ ン ト 運 転 開 始 後 6 年 目 ま た は 7 年 目 以 降 に エ ネ
ルギー産出量がエネルギー投入量を上回ることが明らかとなった。
第Ⅳ章では、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネルギ
- 47 -
ーを既存の化石エネルギーと代替した場合の経済性について、バイ
オガスプラントの建設費、維持管理費および更新費を考慮した検討
を 行 っ た 。 プ ラ ン ト 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 支 を ラ イ フ サ イ
クル的視点で検討した結果、いずれのケースでも収支がマイナスで
あることが明らかとなった。そこで、経済収支改善方法として、建
設費補助による支出軽減、副原料受け入れによる収入増加、代替可
能な化石エネルギーの単価引き上げによる収入増加の 3 つの方法を
想定して検討した。その結果、副原料の受け入れ費の収入を想定し
た場合では、いずれのガス利用方式でも、長期的には収支がプラス
で推移することが明らかとなった。また、代替可能な化石エネルギ
ーの単価引き上げを想定した場合では、ガス利用方式がガスボイラ
ーの場合で、長期的な収支がプラスで推移することが明らかとなっ
た。
以上の結果から、バイオガスプラントでのガス利用を経済的に成
立させるためには、長期的に安定した収入を確保しなければならな
いことが明らかとなった。ただし、これらの検討では、3 つの異な
るガス利用方式のいずれでも、プラント外部へ供給可能なエネルギ
ーがすべて利用されることを想定している。しかしながら、実際の
バイオガスのエネルギー利用状況を見ると、発生するエネルギーの
うち、特に熱エネルギーを有効に利用しているとはいえない。
- 48 -
そこで本章では、北海道における共同利用型バイオガスプラント
でのエネルギー利用の現状を考察するとともに、共同利用型バイオ
ガスプラントの利用実績が豊富なデンマークの状況と対比し、今後
の北海道における共同利用型バイオガスプラントを活用したエネル
ギー利用方法を提案する。
2.北海道における共同利用型バイオガスプラントの技術的改善の
提案
(1)北海道内における共同利用型バイオガスプラントでのエネル
ギー利用の現状
2013 年 度 現 在 、北 海 道 内 で 稼 働 し て い る 共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ
ラ ン ト は 2 施 設 あ る 。 一 つ は 「 別 海 町 資 源 循 環 セ ン タ ー 」、 も う 一
つは「鹿追町環境保全センター」である。両施設とも、発生したバ
イ オ ガ ス を CHP で 電 力 と 熱 に 変 換 し 、 電 力 は 第 一 義 に プ ラ ン ト 内
機 器 の 稼 働 に 利 用 し 、残 り の 電 力 は FIT 制 度 を 利 用 し て 売 電 し て い
る 。 CHP か ら 発 生 し た 熱 は 、 発 酵 槽 な ど を 加 温 す る た め に 使 用 し 、
熱が不足する場合にはガスボイラーを用いて熱を供給している。
両施設とも、電力については電力線を介して売電、買電ができる
た め 、無 駄 を 生 じ る こ と な く 受 給 を 行 っ て い る 。一 方 熱 に つ い て は 、
冬 季 に は CHP か ら の 供 給 の み で は プ ラ ン ト 内 設 備 の 熱 需 要 を ま か
- 49 -
なうことができないため、ガスボイラーを用いて不足する熱を供給
しており、プラント外部へ供給可能な熱エネルギーは発生しない。
し か し な が ら 夏 季 に は CHP か ら 発 生 す る 熱 よ り 、 プ ラ ン ト 内 設 備
で消費する熱が少ないため、プラント外部へ供給可能な熱エネルギ
ーが発生する。これは、温水として発生するが、プラント近傍で夏
季に熱エネルギーを必要とする施設がないため、ラジエターを用い
て大気中へ強制的に廃熱しているのが現状である。
ま た 、殺 菌 槽 で 55℃ ま で 加 温 さ れ た 消 化 液 か ら の 積 極 的 な 熱 の 回
収は行われず、高温のまま屋外の消化液貯留槽へ移送される。別海
プラントでは、殺菌槽から消化液貯留槽へ移送する途中で、原料を
貯留している受入槽内を通過する設計となっているが、受入槽内の
原 料 全 体 を 加 温 す る た め 、効 率 的 に 熱 を 回 収 し て い る と は い え な い 。
(2)デンマークにおける共同利用型バイオガスプラントでのエネ
ルギー利用の現状
デ ン マ ー ク で は 1987 年 か ら 共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト の 開
発 を 継 続 し て き た が 、1998 年 以 降 、新 た な 共 同 利 用 型 バ イ オ ガ ス プ
ラ ン ト は 設 置 さ れ て い な か っ た ( Moller et al [35])。 し か し 2012
年 に は 、 8,000m 3 の 発 酵 槽 を 7 基 ( う ち 5 基 が 家 畜 ふ ん 尿 用 ) 備 え
た デ ン マ ー ク 国 内 最 大 の バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト 、Maabjerg bioenergy
- 50 -
が 稼 働 し た ( 中 山 [43] )。 デ ン マ ー ク で は ほ と ん ど の バ イ オ ガ ス が
CHP で 利 用 さ れ 、発 電 電 力 は 送 電 網 へ 売 電 し 、熱 は 地 域 暖 房 ま た は
農 家 暖 房 に 利 用 さ れ る 。バ イ オ ガ ス は 、CHP を 所 有 し て い る エ ネ ル
ギ ー 会 社 へ 販 売 し た り 、 バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト 自 ら が CHP プ ラ ン ト
を 所 有 し た り す る 場 合 が あ る ( Moller et al [35])。
著 者 は 2012 年 10 月 に 、デ ン マ ー ク の バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト を 視 察
する機会を得た。視察先は、前述のデンマーク国内最大のバイオガ
スプラント所在地であるホルステブロー市と、農家規模のバイオガ
ス プ ラ ン ト 約 60 基 か ら 発 生 す る バ イ オ ガ ス を 、 ガ ス パ イ プ ラ イ ン
で市中心部の地域暖房施設まで輸送する事業を計画しているリング
キュービング・スキャーン市である。リングキュービング・スキャ
ー ン 市 で は 、1,500m 3 の 発 酵 槽 を 2 つ 備 え た ComBigaS を 視 察 し た
( Photo 5-1)。 こ の プ ラ ン ト は 、 発 生 す る バ イ オ ガ ス す べ て を 地 域
暖房施設へ販売する仕様となっている。そのため、発酵槽の加温に
はヒートポンプを使用し、発酵後の消化液から熱を回収し、その熱
を 発 酵 槽 の 加 温 に 使 用 し て い る( Photo 5-2)。リ ン グ キ ュ ー ビ ン グ ・
スキャーン市では地域暖房施設も視察した。この施設では現在、天
然 ガ ス を 利 用 し て お り 、 CHP1 台 と 天 然 ガ ス ボ イ ラ ー 2 台 で 熱 を 供
給している。将来、天然ガスをバイオガスに切り替える計画となっ
て い る 。 こ の よ う な 施 設 が 市 内 に 13 施 設 あ り 、 デ ン マ ー ク 国 内 全
- 51 -
体 で は 450 以 上 の 施 設 が 稼 働 し て い る 。
ホ ル ス テ ブ ロ ー 市 で 視 察 し た Maabjerg bioenergy で は 、 家 畜 ふ
ん尿を原料とする嫌気発酵のほかに、下水汚泥発酵用の発酵槽が
2 基備えられている。家畜ふん尿と下水汚泥の発酵工程は明確に区
分されている。これは、発酵後の家畜ふん尿消化液を農地に散布す
る際に、下水汚泥消化液が混入しないようにするためである。発生
す る バ イ オ ガ ス の 3 分 の 1 は バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト 内 の CHP で 利 用
し、さらに 3 分の 1 は隣接する地域熱暖房施設へ販売し、残りの
3 分 の 1 は 15km 離 れ た 地 域 熱 暖 房 施 設 へ ガ ス 配 管 を 用 い て 販 売 し
て い る 。 そ れ ぞ れ の 地 域 熱 暖 房 施 設 で は バ イ オ ガ ス を CHP の 燃 料
と し て 使 用 し て い る 。Maabjerg bioenergy で は 消 化 液 に 対 し て 70℃
で 1 時 間 の 殺 菌 を 行 っ て お り 、殺 菌 後 の 消 化 液 は 熱 交 換 機 を 用 い て
原 料 と の 間 で 熱 交 換 を 行 っ て い る ( Photo 5-3)。 こ の バ イ オ ガ ス プ
ラントでは、殺菌後の消化液から熱を回収して発酵槽へ投入する原
料の加温に利用することで、プラント内での熱利用の効率を高め、
外部へ販売するバイオガスを増加させている。
このようにデンマークでは地域熱暖房施設が多数存在するため、
CHP で 発 生 し た 電 力 と 熱 を 有 効 に 利 用 す る こ と が で き る 。ま た 、バ
イオガスを供給する側であるバイオガスプラントは、多くのバイオ
ガスを販売しようとするために、プラント内で消費するバイオガス
- 52 -
を少なくするように施設が設計、運営されている
(3)共同利用型バイオガスプラントの施設構成および施設管理の
改善提案
1)プラント内での熱利用方法の改善
前述のように、北海道内で稼働中の共同利用型バイオガスプラン
ト で は 、 バ イ オ ガ ス を プ ラ ン ト 内 の CHP で 電 力 と 熱 に 変 換 し て 利
用しており、冬季はガスボイラーによる熱供給も行いながら、プラ
ン ト 内 で 必 要 な 熱 を 生 産 し て い る 。し か し な が ら 、殺 菌 槽 で 55℃ に
加温された消化液は、高温のまま屋外の貯留槽へ移送され、熱は大
気中へ放熱している。消化液中の熱エネルギーを発酵槽へ投入する
原料の加温に利用することができれば、特に冬季には、ガスボイラ
ーによる熱供給を減らすことが可能となり、その結果、プラント外
部へ供給可能なエネルギー量が増加すると考えられる。そこで、殺
菌 後 の 消 化 液 温 度 が 55℃ か ら 45℃ ま で 低 下 す る 分 に 相 当 す る 熱 量
2,093MJ/d を 、熱 交 換 機 で 原 料 液 の 加 温 に 利 用 す る 場 合 を 想 定 し た
エ ネ ル ギ ー 収 支 を 検 討 す る 。 Table 5-1 に シ ミ ュ レ ー シ ョ ン プ ロ グ
ラムで計算した結果を示す。真に生み出されたエネルギー量を示す
( E) - ( A) は 、 い ず れ の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ケ ー ス も 32~ 33% の
増 加 と な っ た 。 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 が 最 も よ い CHP を 利 用 す る ケ
- 53 -
ー ス で は 、 電 力 が 約 7% 増 加 し 、 熱 が 約 89% 増 加 し た 。 Fig.5-1 に
CHP を 利 用 す る ケ ー ス の 月 別 の 産 出 エ ネ ル ギ ー と エ ネ ル ギ ー 生 産
効 率 を 示 す 。 消 化 液 の 熱 回 収 を 行 わ な い ケ ー ス ( Fig.2-12) と 比 較
して、熱回収を行うケースでは冬季の発電量が増加するとともに、
プラント外部へ供給可能な熱エネルギーも産出されることが明らか
と な っ た 。ま た 、3 月 ~ 11 月 の 熱 エ ネ ル ギ ー 産 出 量 も 増 加 し て い る 。
このように、消化液からの熱回収を行うことで、産出エネルギーと
して電力および熱を増加させることが可能であり、熱回収の仕組み
を導入すべきである。
2)バイオガスの脱硫および除湿の徹底
実 際 に バ イ オ ガ ス を CHP で 燃 焼 利 用 し て い る バ イ オ ガ ス プ ラ ン
ト で は 、CHP 関 連 の ト ラ ブ ル が 頻 繁 に 発 生 し て い る が 、そ の 原 因 を
報 告 し た 事 例 は 少 な い (( 独 ) 北 海 道 開 発 土 木 研 究 所 [10])。 こ の 報
告 書 に は CHP 関 連 の ト ラ ブ ル と し て 、バ イ オ ガ ス の 濃 度 変 化 、CHP
へ の バ イ オ ガ ス 供 給 配 管 の 閉 塞 、CHP の 振 動 に よ る ビ ス の 緩 み が 掲
載 さ れ て い る 。ま た 、CHP 関 連 の ト ラ ブ ル で は な い が 、バ イ オ ガ ス
移送配管の閉塞がプラント内で発生しており、その原因は結露水や
イ オ ウ の 析 出 に よ る と 述 べ ら れ て い る 。バ イ オ ガ ス は 37℃ に 加 温 さ
れている発酵槽内で発生するため、多量の水蒸気が含まれている。
- 54 -
また、バイオガスには硫化水素が含まれているため、条件が整うと
イ オ ウ が 析 出 さ れ る 。 し た が っ て CHP を 安 定 し て 稼 働 さ せ る た め
には、発酵状態を安定させてバイオガスのメタン濃度の変動を少な
くするとともに、バイオガス中の除湿と脱硫を十分に行うことが重
要である。
3.熱利用施設へのバイオガス輸送によるガス利用の検討
第Ⅴ章2.
( 1 )で 述 べ た よ う に 、現 在 の 北 海 道 に お け る 共 同 利 用
型バイオガスプラントでは、産出されるエネルギーのうち、熱エネ
ルギーを有効に利用できていない。バイオガスプラントから産出さ
れるエネルギーを有効に利用するためには、地域内での新たなエネ
ルギー利用方法を検討する必要がある。前述のデンマークの事例で
は 、バ イ オ ガ ス を 地 域 暖 房 施 設 ま で 輸 送 し て 、CHP の 燃 料 と し て 利
用している。北海道の都市部では、地域熱暖房施設の稼働している
地域が存在するが、家畜ふん尿の発生地域とは離れており、デンマ
ークのようなガス利用方法を北海道内の既存の施設を活用して行う
ことは難しい。また、主に家畜ふん尿が発生する町村部において、
新たに地域熱暖房施設を整備することも考えられるが、既存住宅の
主な暖房設備はストーブであるため、現実的ではない。そこで、町
村部において通年にわたって熱需要の大きな施設を考えた場合、そ
- 55 -
の一つとして温水プールがある。そこで、バイオガスプラントから
発生するバイオガスを町中心部の施設までパイプラインで移送して、
温水プールの加温に利用する場合のエネルギー収支および経済性を
検討する。ここでは、鹿追町でのバイオガスの公共施設における利
用 検 討 時 の 諸 元 を 利 用 す る( 北 海 道 鹿 追 町 [20])。な お バ イ オ ガ ス プ
ラントの加温にはバイオガスをガスボイラーで燃焼利用し、それ以
外のバイオガスはパイプラインで町中心部へ移送する条件とする。
また、プラントの稼働に必要な電力はすべて購入することとする。
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 計 算 方 法 は 、第 Ⅴ 章 2 .
( 3 )で 検 討 し た 、消 化
液から熱を回収する条件とする。
Table 5-2 に 、 年 間 の バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト の エ ネ ル ギ ー 収 支 結 果
を 示 す 。プ ラ ン ト か ら 外 部 へ 供 給 可 能 な バ イ オ ガ ス は 6,191GJ と な
った。プラントの運転に必要な電力はすべて購入することとなるた
め 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 は 0.83 と な っ た 。 Fig.5-2 に 月 別 の バ イ オ
ガ ス エ ネ ル ギ ー 量 と 、鹿 追 町 温 水 プ ー ル で 消 費 さ れ る 月 別 の A 重 油
エネルギー量を示す。なお、3 月は施設点検のためプールは閉館し
て い る 。冬 季 に は A 重 油 の 半 分 程 度 の エ ネ ル ギ ー 量 を バ イ オ ガ ス で
代替可能であるが、逆に夏季は、A 重油の 3 倍程度のエネルギー量
をバイオガスで代替可能であり、バイオガスを熱のみで利用すると
余剰熱が大量に発生することになる。
- 56 -
そ こ で 、 プ ラ ン ト か ら 移 送 さ れ た バ イ オ ガ ス を CHP で 電 力 と 熱
に 変 換 し て 利 用 す る ケ ー ス を 検 討 す る 。電 力 は FIT 制 度 を 用 い て 売
電 す る 条 件 と す る 。 Fig.5-3 に そ の 結 果 を 示 す 。 各 月 の 棒 グ ラ フ の
左側に A 重油をボイラーで燃焼させたときに得られる熱エネルギー
を 示 し 、 右 側 に バ イ オ ガ ス を CHP で 燃 焼 さ せ た と き に 得 ら れ る 電
力と熱エネルギーを示す。なお、前述の通り、冬期間はバイオガス
のみで必要熱量を代替することができないため、熱が不足する場合
に は 重 油 ボ イ ラ ー で 熱 を 供 給 す る 条 件 と す る 。 冬 季 は CHP か ら 供
給 さ れ る 熱 が あ る た め 、A 重 油 の 消 費 量 が 減 少 し 、7 月 ~ 9 月 で は 、
CHP か ら 供 給 さ れ る 熱 の み で A 重 油 の 熱 を 代 替 可 能 で あ り 、 余 剰
熱の発生量は少ない。
このように、バイオガスを熱需要の大きな施設まで移送して利用
する場合でも、バイオガスの利用方法によって産出されるエネルギ
ーの利用効率に違いが生じる。そこで、バイオガスプラントから外
部へ産出されたエネルギーが有効に利用されているかを評価するた
め 、 有 効 に 利 用 す る こ と が で き な か っ た 余 剰 エ ネ ル ギ ー を ( F) と
し 、式( 1)で 示 し た エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 の 分 子 か ら( F)を 引 い た
値 を 、エ ネ ル ギ ー 生 産 利 用 効 率(( E- A- F)/( E))と 定 義 す る( 式
( 4))。 エ ネ ル ギ ー 生 産 利 用 効 率 の 最 大 値 は 1 で あ り 、 値 が 大 き い
ほどプラントでのエネルギー産出の効率が良く、かつ、産出される
- 57 -
エ ネ ル ギ ー が 無駄 な く 有 効 に 利 用さ れ て いる こ と を 意 味 す る。 こ の
エ ネ ル ギ ー 生 産利 用 効 率 を 指 標 とす る こ とで 、 バ イ オ ガ ス プラ ン ト
で の エ ネ ル ギ ー生 産 か ら 、 そ の エネ ル ギ ーを 最 終 的 に 利 用 する ま で
を通した効率を評価できる 。
プ ラ ン ト か らプ ー ル へ 移 送 さ れた バ イ オガ ス を ガ ス ボ イ ラー で 利
用 す る ケ ー ス で の 年 間 エ ネ ル ギ ー 生 産 利 用 効 率 は 0. 51 と な り 、バ イ
オ ガ ス を CHP で 利 用 す る ケ ー ス で は 0.74 と な っ た 。す な わ ち 、CHP
を 用 い る こ と で 、夏 季 の 熱 エ ネ ルギ ー の 余剰 を 少 な く す る こと が で
き る た め 、 エ ネル ギ ー 生 産 利 用 効率 が 大 きい 結 果 と な っ た 。
で は 、 精 製 ガス を 熱 需 要 の 大 きな 施 設 まで 移 送 し て 利 用 する ケ ー
ス で は ど う で あろ う か 。 精 製 ガ スを 鋼 製 の高 圧 ガ ス 容 器 に 充填 し て
ト ラ ッ ク で 輸 送 す る 場 合 を 検 討 す る 。こ こ で は NEDO
O などによる実
験 事 業 [12]で 得 ら れ た 成 果 を 参 考 に 、プ ラ ン ト か ら プ ー ル ま で の 往
復 に か か る 燃 料 を 軽 油 2L
L と し て計 算 す る。 そ の 結 果 、 精 製ガ ス を
プ ー ル ま で 移 送 し て ガ ス ボ イ ラ ー ま た は CH
HP で 利 用 す る ケ ー ス で
の エ ネ ル ギ ー 生産 利 用 効 率 は 、 ガス 利 用 方式 が ガ ス ボ イ ラ ーの 場 合
- 58
8-
で 0.12、CHP の 場 合 で 0.37 と 、両 者 と も 効 率 が 悪 い 結 果 と な っ た 。
こ の う ち 、 精 製 ガ ス を ガ ス ボ イ ラ ー で 利 用 す る 場 合 で の 7~ 9 月 の
エネルギー生産利用効率はマイナスを示した。これは、プラントで
産出される精製ガスのエネルギーよりも、生産にかかる化石エネル
ギー量および余剰エネルギー量が多くなったためである。
つぎに、エネルギー生産利用効率が良かった、バイオガスをパイ
プ ラ イ ン で 移 送 し て CHP で 利 用 す る ケ ー ス に つ い て 、 第 Ⅳ 章 と 同
様の方法で、パイプラインの敷設費およびプラント等の建設費なら
びに維持管理費を考慮したライフサイクル的な経済収支を検討する。
前 述 の 調 査 報 告 書 [20]で は 、 ガ ス 用 ポ リ エ チ レ ン 管 を 3.7km 敷 設
す る 場 合 の 費 用 を 12,000 万 円 と 算 出 し て お り 、 こ の 金 額 を プ ラ ン
ト建設費に加えて収支を検討する。ガス管の耐用年数は、税制上の
減 価 償 却 年 数 が 13 年 と さ れ て い る た め こ の 値 を 使 用 す る 。 Fig.5-4
に 、 プ ラ ン ト 運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま で の 収 入 と 支 出 を 示 す 。 収 入
と 支 出 の 差 が 最 も 小 さ く な る 年 数 は 運 転 開 始 後 13 年 目 で あ る が 、
そ の 差 は - 395 百 万 円 で あ り 、 そ の 後 も 収 支 が プ ラ ス に な る こ と は
なかった。そこで、パイプライン敷設およびプラント建設費用の
2 分 の 1 を 補 助 す る こ と を 想 定 し た 場 合 の 、運 転 開 始 か ら 35 年 目 ま
で の 収 入 と 支 出 を Fig.5-5 に 示 す 。 な お 、 FIT 制 度 の 売 電 で 評 価 を
行っているため、発電設備については補助の対象から除外した。運
- 59 -
転 開 始 後 13 年 目 に 収 支 が - 9 百 万 円 ま で 改 善 さ れ る が 、 14 年 目 以
降の収支はマイナスで推移することが明らかとなった。
次に、経済収支改善方法として副原料受け入れによる収入増加を
想 定 し た 検 討 結 果 を Fig.5-6 に 示 す 。 こ の 場 合 、 建 設 費 に 対 す る 補
助 を 考 慮 し な く て も 、 運 転 開 始 後 13 年 目 に 収 入 と 支 出 の 差 が プ ラ
ス 76 百 万 円 と な り 、そ の 後 マ イ ナ ス と な る が 、24 年 目 以 降 か ら 33
年目まではプラスに転じることが明らかとなった。
さらに、代替する化石エネルギーの単価引き上げによる収入増加
を 想 定 し た 場 合 の 検 討 結 果 を Fig.5-7 に 示 す 。 建 設 費 に 対 す る 補 助
を 考 慮 し な く て も 、 運 転 開 始 後 13 年 目 に 収 支 が - 12 百 万 円 ま で 改
善 し 、 32 年 目 に プ ラ ス と な る こ と が 明 ら か と な っ た 。
このように、熱需要が大きな施設までバイオガスを移送し、その
施 設 で バ イ オ ガ ス を CHP で 利 用 す る こ と で 、 CHP か ら 産 出 さ れ る
熱を有効に利用できることが明らかとなった。しかしながら、ライ
フ サ イ ク ル 的 視 点 で 経 済 性 を 検 討 し た 場 合 、 FIT 制 度 で の 売 電 と A
重油の代替では収支がプラスになることはなかった。プラントの長
期的な収支を成立させるためには、副原料受け入れなどにより収入
増加をはかる必要がある。また、副原料の受け入れを行わない場合
は 、 FIT 制 度 に よ る 電 力 価 格 設 定 の よ う に 、 バ イ オ ガ ス 由 来 の 熱 エ
ネルギー利用促進のための新たな制度を整備する必要があると考え
- 60 -
られる。
4.今後の北海道における共同利用型バイオガスプラントでのエネ
ルギー利用方法の提案
北 海 道 で は 、 平 成 25 年 3 月 に 「 次 世 代 北 方 型 居 住 空 間 モ デ ル 構
想( 案 )~ 地 域 資 源 を 活 用 し た 持 続 可 能 な 地 域 作 り に 向 け て ~ 」[14]
を と り ま と め て い る 。こ の 構 想 で は 、
「地理的条件や土地利用に着目
し、地域資源を有効活用するための取組のモデル」が5つ示されて
お り 、そ の 中 の 一 つ に「 田 園 地 域 モ デ ル 」が あ る 。こ の モ デ ル で は 、
家畜ふん尿や農作物残さをバイオガスプラントの原料する有機資源
の有効活用に取り組むとしている。また、バイオガスプラントの周
辺に農業関係の施設を集積させて産業拠点を形成するとしている。
さらに、バイオガスを周辺施設への暖房、電力供給に利用したり、
有機資源運搬車輌の燃料として利用したりする取り組みが示されて
いる。そこで以下では、この「田園地域モデル」を参考に、前述の
エネルギー収支検討結果から得られた知見を加えて、バイオガスの
エネルギー利用方法を提案する。
(1)バイオガスをガスボイラーのみで利用する場合
バイオガスをガスボイラーのみで温水として利用する場合、ガス
- 61 -
利用設備がシンプルなため、設備の設置および維持管理が容易であ
る。ただし、熱エネルギーは夏季に多く産出され、冬季に少なくな
る特徴があるため、夏季に十分な需要を見込める施設を供給先に含
めるべきである。その際、冬季には熱が不足するため、他のエネル
ギーによる熱供給ができるような仕組みを整える必要がある。具体
的には、食品工場、温水プール、集合住宅への温水供給熱源として
の利用が考えられる。
(2)バイオガスをコジェネレーターで利用する場合
バ イ オ ガ ス を CHP で 利 用 す る 場 合 、 電 力 と 熱 の 両 方 の エ ネ ル ギ
ー を 得 る こ と が で き る 。電 力 は 電 力 線 を 介 し て の 送 電 が 容 易 で あ る 。
熱は前述のガスボイラーの項で記述したとおり、夏季に多く産出さ
れ、冬季に少なくなる特徴があるため、熱を利用する施設の選定に
注意が必要である。具体的には、温水プール、集合住宅への温水供
給熱源としての利用が考えられる。
(3)バイオガスを精製装置で利用する場合
バイオガスを精製装置で利用する場合、天然ガスと同等のガスを
得ることができる。第Ⅴ章3.で述べたとおり、精製ガスを遠方へ
運 搬 し て ガ ス ボ イ ラ ー や CHP で 利 用 す る こ と は 、 エ ネ ル ギ ー 生 産
- 62 -
利用効率から考えて適しているとはいえない。近年、都市部では都
市ガス導管へ精製ガスを注入することが可能となった(大阪ガス
[50])。し か し な が ら 、田 園 地 域 で 都 市 ガ ス 導 管 が 整 備 さ れ て い る と
ころはあまりない。したがって、精製ガスを需要家が受け取りにく
る仕組みを考える必要がある。具体的には、天然ガス自動車による
利用が考えられる。現在市販されている車種には、商用バン、箱形
トラック、バス、塵芥車などがある。精製されるガス量を消費する
のに適した車種と台数を整備することで、有効に利用可能と考えら
れる。ただし、第Ⅱ章で述べたように、夏季には冬季の約2倍の精
製ガスが産出される。そのため、夏季の産出量にあわせた需要を設
定する場合には精製ガスが冬季に不足することになるため、天然ガ
スを地域外から購入する必要がある。
5.バイオガスの利用方式別の経済性検討および産出エネルギー利
用方法提案の意義
こ れ ま で に 検 討 し た 結 果 の 概 要 を Table 5-3~ 5-6 に ま と め る 。乳
牛 ふ ん 尿 1,000 頭 分 の ふ ん 尿 を 管 理 す る バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト に お い
て、エネルギー生産効率またはエネルギー生産利用効率の最も良い
ガ ス 利 用 方 式 は 、 バ イ オ ガ ス を CHP で 利 用 す る ケ ー ス で あ る こ と
が明らかとなった。また、経済性は本来の目的であるふん尿管理に
- 63 -
伴う収入(プラント利用料、消化液の肥料価値)と、産出エネルギ
ーを既存の化石エネルギーと代替する経済価値のみでは、黒字化で
きないことが明らかとなった。経済性が成立するためには、産出す
る 電 力 は FIT 制 度 で の 売 電 が 必 須 で あ り 、熱 は 1MJ 当 た り 11.4 円
程度の高い価格で販売する必要があることが明らかとなった。
これらの結果は、自治体や農業経営者が共同利用型バイオガスプ
ラントの建設を検討する際に利用可能である。また、再生可能エネ
ルギーであるバイオガスの利用促進方法を検討する際に活用できる。
- 64 -
要約
第Ⅰ章
序論
北海道の酪農家 1 戸当たりの乳用牛飼養頭数は年々増加しており、
牛舎から発生する液状ふん尿の適正な管理が重要となっている。液
状ふん尿の管理施設の一つに、メタン発酵(嫌気発酵)を利用した
バイオガスプラントがある。この施設ではふん尿を一定温度に保持
しながら嫌気発酵させ、発酵後に残る消化液を圃場へ散布して肥料
として利用する。発酵時には有機物の微生物分解によりバイオガス
が発生し、エネルギーとして利用することができる。
バイオガスプラントが多数稼働しているヨーロッパでは、バイオ
ガスをコジェネレーターで電力に変換して売電し、発生した熱は地
域暖房ネットワークで利用している。また、バイオガスを精製し、
天然ガス自動車の燃料として使用している。
日本では、主に北海道においてバイオガスプラントが普及してい
る。北海道でのバイオガス利用方法は、ガスボイラーを用いて熱の
み を 利 用 す る 方 法 、 ま た は CHP を 用 い て 熱 と 電 力 を 利 用 す る 方 法
に大別することができる。また、近年、移動式の精製圧縮充填装置
が開発され、精製ガスを天然ガス自動車やガスコンロの燃料に使用
する実証試験が実施されている。
- 65 -
このように、バイオガスの利用方式はガスボイラー、コジェネレ
ーター、精製装置があるが、既往の研究では、寒冷地におけるこの
3 つの利用方式についてのエネルギー生産効率を比較して評価した
報告はいまだない。
そこで本論文では、寒冷地の共同利用型バイオガスプラントにお
いて、バイオガスをガスボイラー、コジェネレーター、精製装置で
利用する場合のエネルギー生産効率および経済性について、ライフ
サイクル的視点から評価を行った。具体的には、以下の内容につい
て明らかにした。
(1)バイオガスプラントの運転状況を模擬することが可能なシミ
ュレーションプログラムを構築し、寒冷な北海道の気象条件下での
エネルギー収支を求め、バイオガスの利用方式別に産出されるエネ
ルギー量およびエネルギー生産効率を明らかにした。
(2)プラントの建設およびふん尿運搬にかかるエネルギー量を考
慮して、バイオガスの利用方式別にエネルギー収支を明らかにし、
ライフサイクル的視点でエネルギー利用方式を評価した。
(3)プラントで生産されたエネルギーを化石エネルギーと代替す
る場合の経済性を、プラントの建設、維持管理にかかる費用を考慮
したライフサイクル的視点で評価した。
- 66 -
(4)今後の北海道の地域づくりを見据えた、寒冷地での共同利用
型バイオガスプラントを核としたエネルギー利用方法を提案した。
第Ⅱ章
バイオガスの利用方式とエネルギー収支の検討
前述のように、バイオガスの利用方法は複数想定されるが、ガス
利用過程が異なるため、産出されたエネルギー量を比較するだけで
はどの方法が効率的にエネルギーを生産しているかの判断ができな
い。そこで本章では、稼働中の共同利用型バイオガスプラントで実
測したデータをもとにプラントの稼働を模擬するシミュレーション
モ デ ル を 構 築 し 、バ イ オ ガ ス 利 用 方 法 が ガ ス ボ イ ラ ー 、CHP お よ び
精製装置の場合でのプラント運転時のエネルギー収支について定量
的 に 比 較 し 、投 入 化 石 エ ネ ル ギ ー 量 と 産 出 エ ネ ル ギ ー 量 の 比 率 か ら 、
効率的なバイオガス利用方法を明らかにした。また、投入した化石
エネルギー量および精製時に排出されたオフガス中のメタン量なら
び に 精 製 ガ ス に 添 加 し た LP ガ ス 量 か ら 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 を 求 め 、
環境に対する負荷について明らかにした。
そ の 結 果 、 乳 牛 1,000 頭 分 の ふ ん 尿 を 管 理 す る バ イ オ ガ ス プ ラ ン
ト で は 、 エ ネ ル ギ ー 生 産 効 率 が 最 も 良 い ガ ス 利 用 方 法 は CHP を 用
いた場合であることが明らかとなった。また、温室効果ガス排出量
の 最 も 少 な い ガ ス 利 用 方 法 は CHP を 用 い た 場 合 で あ り 、 最 も 多 い
- 67 -
の が 精 製 装 置 を 利 用 し た 場 合 で あ っ た 。産 出 エ ネ ル ギ ー 1GJ 当 た り
の 温 室 効 果 ガ ス 排 出 量 は 、 精 製 装 置 を 利 用 し た 場 合 で は CHP を 利
用 し た 場 合 の 10 倍 以 上 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 産 出 エ ネ ル
ギーの季節変化は、冬季のプラント内での熱需要が多いため、プラ
ン ト 外 部 に 供 給 可 能 な エ ネ ル ギ ー 量 が 少 な く な り 、 特 に CHP を 用
いて熱エネルギーをプラント外部で利用するケースでは、プラント
外部での需要と供給にずれが生じる可能性があることが明らかとな
った。
第Ⅲ章
ライフサイクル的視点によるバイオガスプラントのエネル
ギー収支の検討
バイオガスを生産するためのプラントの建設、更新や原料である
ふん尿の運搬時には、エネルギー投入が必要である。また、消化液
を肥料として利用することで化学肥料使用量を削減できるため、消
化液利用により化学肥料の製造に必要なエネルギー相当がバイオガ
スプラントから産出されていると見なすことができる。
そこで本章では、プラント建設およびふん尿運搬時に投入するエ
ネルギー量と、第Ⅱ章で明らかにしたプラントから産出されるエネ
ルギー量を整理し、施設の耐用年数を考慮したライフサイクル的視
点でのエネルギー収支を明らかにした。
- 68 -
その結果、いずれのガス利用方式においても、プラント運転開始
後 6 年目または 7 年目以降にエネルギー産出量がエネルギー投入量
を上回ることが明らかとなった。
第Ⅳ章
バイオガスの利用方式と経済性の検討
バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネルギーはバイオガ
スの利用方式によって異なり、熱、電力、精製ガスの形で供給する
ことができる。これらのエネルギーは、既存の化石エネルギーと代
替 す る こ と が で き る が 、代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー は 複 数 存 在 す る 。
ま た 、化 石 エ ネ ル ギ ー の 価 格 お よ び エ ネ ル ギ ー 量 は そ れ ぞ れ 異 な る 。
従って、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネルギーの経
済的価値を評価するためには、代替可能な化石エネルギー別に検討
する必要がある。また、エネルギーを産出するシステム全体として
の経済性を評価するためには、バイオガスプラントの建設費、維持
管理費および更新費を考慮した経済性を評価する必要がある。
そこで本章では、バイオガスプラントから外部へ供給可能なエネ
ルギーと代替可能な化石エネルギーを対比し、施設の耐用年数を考
慮したライフサイクル的視点での経済性を明らかにした。
プ ラ ン ト 運 転 開 始 後 35 年 目 ま で の 経 済 収 支 を ラ イ フ サ イ ク ル 的
視点で評価した結果、いずれのケースでも収支はマイナスであるこ
- 69 -
とが明らかとなった。
そこで、経済収支改善方法として、建設費補助による支出軽減、
副原料受け入れによる収入増加、代替可能な化石エネルギーの単価
引 き 上 げ に よ る 収 入 増 加 の 3 つ の 方 法 を 想 定 し た 検 討 を 行 っ た 。そ
の 結 果 、プ ラ ン ト 建 設 費 用 の 2 分 の 1 を 補 助 す る こ と を 想 定 し た 場
合では、いずれのケースでも、主要施設の更新を迎えるまでは収支
がプラスとなるが、更新費の補助がなければ、その後の収支はマイ
ナスで推移することが明らかとなった。
既 往 の 研 究 を 参 考 に 、 毎 年 4,152 万 円 の 副 原 料 受 け 入 れ 費 の 収 入
を想定した場合では、いずれのケースでも、長期的には収支がプラ
スで推移することが明らかとなった。
FIT 制 度 で の 電 力 買 取 価 格 を 参 考 に 、 代 替 可 能 な 化 石 エ ネ ル ギ ー
の 価 格 を 1MJ 当 た り 11.4 円 と 想 定 し た 場 合 は 、 ガ ス 利 用 方 式 が ガ
スボイラーのケースでは、長期的には収支がプラスで推移すること
が 明 ら か と な っ た 。 一 方 、 ガ ス 利 用 方 式 が CHP の ケ ー ス で は 、 収
支はマイナスで推移することが明らかとなった。
第Ⅴ章
総合考察
1.北海道における共同利用型バイオガスプラントの技術的改善の
提案
- 70 -
北海道内で稼働中の共同利用型バイオガスプラントでは、バイオ
ガスをプラント内のコジェネレーターで電力と熱に変換して利用し
ており、冬季はガスボイラーによる熱供給も行いながら、プラント
内 で 必 要 な 熱 を 生 産 し て い る 。し か し な が ら 、殺 菌 槽 で 55℃ に 加 温
された消化液は、高温のまま屋外の貯留槽へ移送され、熱は大気中
へ放熱している。消化液中の熱エネルギーを、発酵槽へ投入する原
料の加温に利用することができれば、特に冬季には、ガスボイラー
による熱供給を減らすことが可能となり、その結果、プラント外部
へ供給可能なエネルギー量が増加すると考えられる。そこで、殺菌
後 消 化 液 温 度 が 55 ℃ か ら 45 ℃ ま で 低 下 す る 分 に 相 当 す る 熱 量
2,093MJ/d を 、熱 交 換 機 で 原 料 液 の 加 温 に 利 用 す る 場 合 を 想 定 し た
エネルギー収支を算出した。その結果、エネルギー生産効率が最も
よいコジェネレーターを利用するケースでは、プラント外部へ供給
可 能 な 電 力 が 約 7% 増 加 し 、熱 が 約 89% 増 加 し た 。こ の よ う に 、消
化液からの熱回収を行うことで、プラント外部へ供給可能なエネル
ギーとしての電力および熱を増加させることが可能であり、熱回収
の仕組みを導入すべきである。
2.熱利用施設へのバイオガス輸送によるガス利用の検討
デ ン マ ー ク の 事 例 で は 、バ イ オ ガ ス を 地 域 暖 房 施 設 ま で 輸 送 し て 、
- 71 -
コ ジ ェ ネ レ ー タ ー の 燃 料 と し て 利 用 し て い る 。北 海 道 の 都 市 部 で は 、
地域熱暖房施設の稼働している地域が存在するが、家畜ふん尿の発
生地域とは離れており、デンマークのようなガス利用方法を北海道
内の既存の施設を活用して行うことは難しい。また、主に家畜ふん
尿が発生する町村部において、新たに地域熱暖房施設を整備するこ
と も 考 え ら れ る が 、既 存 住 宅 の 主 な 暖 房 設 備 は ス ト ー ブ で あ る た め 、
現実的ではない。そこで、バイオガスプラントから発生するバイオ
ガスを町中心部の施設までパイプラインで移送して、温水プールの
加温に利用する場合のエネルギー収支および経済性を評価した。
その結果、発生するバイオガスをパイプラインでプールまで移送
してコジェネレーターで利用するケースで、エネルギー効率が良い
ことが明らかとなった。しかしながら、ライフサイクル的視点で経
済 性 を 検 討 し た 結 果 、FIT 制 度 で の 売 電 と A 重 油 の 代 替 で は 収 支 が
プラスになることはなかった。すなわち、プラントの長期的な収支
を成立させるためには、副原料受け入れなどにより収入増加をはか
る必要があることが明らかとなった。また、副原料の受け入れを行
わ な い 場 合 は 、 FIT 制 度 に よ る 電 力 価 格 設 定 の よ う に 、 バ イ オ ガ ス
由来の熱エネルギー利用促進のための新たな制度を整備する必要
があると考えられる。
- 72 -
3.今後の北海道における共同利用型バイオガスプラントを核とし
たエネルギー利用方法の提案
バイオガスをガスボイラーのみで温水として利用する場合、ガス
利用設備がシンプルなため、設備の設置および維持管理が容易であ
る。ただし、熱エネルギーは夏季に多く産出され、冬季に少なくな
る特徴があるため、夏季に十分な需要を見込める施設を供給先に含
めるべきである。その際、冬季には熱が不足するため、他のエネル
ギーによる熱供給ができるような仕組みを整える必要がある。
バイオガスをコジェネレーターで利用する場合、電力と熱の両方
のエネルギーを得ることができる。電力は電力線を介しての送電が
容易である。熱は、夏季に多く産出され、冬季に少なくなる特徴が
あるため、熱を利用する施設の選定に注意が必要である。
バイオガスを精製装置で利用する場合、天然ガスと同等のガスを
得ることができる。精製ガスを遠方へ運搬してガスボイラーやコジ
ェネレーターで利用することは、エネルギー効率から考えて適して
いるとはいえない。したがって、精製ガスを需要家が受け取りにく
る仕組みを考える必要がある。
4.バイオガスの利用方式別の経済的評価および産出エネルギー利
用方法提案の意義
- 73 -
乳 牛 ふ ん 尿 1,000 頭 分 の ふ ん 尿 を 管 理 す る バ イ オ ガ ス プ ラ ン ト に
おいて、エネルギー生産効率の最も良いガス利用方式は、バイオガ
スをコジェネレーターで利用するケースであることが明らかとなっ
た。また、経済性は、ふん尿管理に伴う収入(プラント利用料、消
化液の肥料価値)と、産出エネルギーを既存の化石エネルギーと代
替する経済価値のみでは、黒字化できないことが明らかとなった。
経 済 性 が 成 立 す る た め に は 、産 出 す る 電 力 は FIT 制 度 で の 売 電 が 必
須 で あ り 、 熱 は 1MJ 当 た り 11.4 円 程 度 の 高 い 価 格 で 販 売 す る 必 要
があることが明らかとなった。
これらの結果は、自治体や農業経営者が共同利用型バイオガスプ
ラントの建設を検討する際に利用可能である。また、再生可能エネ
ルギーであるバイオガスの利用促進方法を検討する際に活用できる。
- 74 -
謝辞
本論文の作成にあたり、酪農学園大学大学院酪農学研究科教授干
場信司博士には、研究の実施および論文のとりまとめについて、終
始懇切に指導して頂くとともに、長年にわたり激励を頂いた。謹ん
で感謝申し上げる。また、副査を引き受けて頂いた酪農学園大学大
学院酪農学研究科森田茂博士および高橋圭二博士には、論文の細部
にわたるご指導を頂いたことに謹んで感謝申し上げる。
本研究で用いた基礎データは、
( 独 )北 海 道 開 発 土 木 研 究 所( 現( 独 )
土木研究所寒地土木研究所)が主体となって実施した「積雪寒冷地
における環境・資源循環プロジェクト」で得られたものである。寒
地土木研究所水利基盤チーム上席研究員中村和正博士には、バイオ
ガスプラントで得られたデータの解析およびシミュレーションプロ
グラムの構築について、多くのご助言とご指導を頂いた。また、同
研究所資源保全チーム石田哲也主任研究員には、バイオガスプラン
ト で 得 ら れ た 基 礎 デ ー タ の 整 理 に ご 協 力 を 頂 い た 。秀 島 好 昭 博 士( 元
寒地土木研究所寒地農業基盤研究グループ長)には、本研究の実施
を快く了解して下さるとともに励ましを頂いた。同研究所資源保全
チーム横濱充宏上席研究員および大深正徳総括主任研究員には、研
究推進に際しご配慮頂いた。そのほかの寒地農業基盤研究グループ
研究員の方々には、数々のご協力を頂いた。以上の各位に対し、謹
- 75 -
ん で 感 謝 申 し 上 げ る 。ま た 、
「 積 雪 寒 冷 地 に お け る 環 境・資 源 循 環 プ
ロジェクト」において実証試験を行った別海プラントおよび湧別プ
ラントの運転には、両プラントの運転員および多くの技術者の協力
を頂いたことに感謝申し上げる。
宇都宮大学准教授菱沼竜男博士には、バイオガス利用のエネルギ
ー収支評価方法についてご助言頂いたことに感謝申し上げる。北海
道大学名誉教授松田從三博士には、北海道バイオガス研究会による
デンマーク視察などにおいて、バイオガスプラントに関する多くの
知識をご教示頂いたことに感謝申し上げる。
株式会社グリーンプランの今井俊行氏には、精製圧縮装置のデー
タを提供頂いた。鹿追町役場の城石賢一氏および元鹿追町環境保全
センター職員の植松武泰氏には、鹿追町環境保全センターのデータ
計測に際しご配慮頂くとともに、バイオガスプラントを運転する際
の様々な事象についてご教示頂いた。以上の各位に対し、感謝申し
上げる。
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Abstract
Evaluation of Energy Usage in Centralized Biogas Plant from
Life Cycle Approach
Ⅰ . Introduction
As the number of dairy cattle per dairy farm increases in
Hokkaido, an appropriate treatment of liquid feces and urine
generated at cowsheds is essential. One of the facilities that treat
such a liquid manure is a methane (anaerobic) fermentation-based
biogas plant. It is the site where feces and urine is fermented under
an
anaerobic
condition
with
a
certain
temperature.
After
fermentation, digested slurry left over is spread over fields as
fertilizer. In the course of fermentation, organic matters are
bio-decomposed into gas, which can be used as energy.
There are many biogas plants operated in Europe. In those plants,
the combined heat and power (CHP) system converts biogas into
electricity to sell to power companies and households. Thermal
energy is used under the local heating network. Biogas is also
purified to use as fuel for natural gas vehicle.
- 86 -
In Japan, Hokkaido leads the country's biogas plant operation.
The form of biogas utilization is categorized into using heat
converted by gas boiler, and using both heat and electricity
generated by CHP system. In addition, a portable equipment has
developed to purify, compress and replenish biogas, which has
been tested to demonstrate that the purified gas can be used for
natural gas vehicle and gas burners.
Biogas can be treated by gas-boiler, CHP system and purification
equipment. However, there are no previous reports that assess
those three forms of biogas utilization by comparing their energy
productive efficiency.
In this paper, the authors have conducted a life cycle assessment
of the productive and economic efficiency of biogas between the
three forms of utilization (gas boiling, CHP system and purification),
given that biogas is used in centralized biogas plants in cold
regions. We particularly focused on the following objectives:
(1) to establish a program in which biogas plant operation is
simulated, calculate the energy balance of biogas under the cold
climate of Hokkaido, and clarify the energy volume and energy
productive efficiency of biogas utilized in each form;
- 87 -
(2) to clarify the energy balance of biogas utilized in each form in
consideration of the energy volume required for plant construction
and maintenance, and conduct a life cycle assessment of each
energy utilization system;
(3) to conduct a life cycle assessment of biogas' economic
efficiency given that the biogas energy replaces fossil energy, with
consideration of costs for plant construction and maintenance;
(4) to propose possible methods for utilizing biogas energy
generated at centralized biogas plants in cold regions, toward
future community development in Hokkaido.
Ⅱ . Form of Utilizing Biogas and Energy Balance Assessment
A simulation model was created based on measurement data
gathered from centralized biogas plants in operation. The effects of
biogas utilization methods on energy balance during plant operation
were compared quantitatively for cases in which a gas boiler, a CHP
system or a purification system is used, to determine the most
efficient biogas utilization method. The greenhouse gas emissions
were also measured from the amounts of fossil energy input and
- 88 -
methane in the off-gas discharged during refinement, to clarify the
environmental burden.
The results revealed that the energy production efficiency was
the highest for biogas plants treating waste from 1,000 dairy cows
using a CHP. The greenhouse gas emission was the smallest in the
case using a CHP and the largest in the case using a purification
system. The greenhouse gas emission per GJ of output energy in
the case of using a purification system was more than ten times that
of the case using a CHP.
Ⅲ . Evaluation of energy balance on biogas plant operation
from Life Cycle Approach
Energy is used in constructing and renovating a biogas plant and
in transporting excreta, which is the raw material. However, using
the digested slurry that is produced by such plants as fertilizer can
reduce the usage of chemical fertilizers. Therefore, it is possible to
regard the use of digested slurry for fertilizer as offsetting the
energy required to manufacture chemical fertilizer.
In light of the above, this section compares the amount of energy
that is consumed when a plant is constructed and when excreta is
- 89 -
transported to the amount of energy that is produced at a plant
(covered in Section II). The aim is to clarify the life-cycle energy
balance in consideration of the durable years the facility.
It was revealed that the energy output exceeds the energy
consumption from the sixth or seventh year of plant operation,
regardless of the gas utilization method, i.e., those using a gas
boiler, a combined heat and power (CHP) system and a purification
system.
Ⅳ .
Form
of
Utilizing
Biogas
and
Economic
Efficiency
Assessment
Biogas-made energy is supplied from the plant in three forms:
heat, electricity and purified gas. These forms of biogas energy can
replace several types of fossil energy as alternative. The price and
the amount of energy vary according to the fossil energy. In light of
this, the economic value of the biogas energy supplied from the
plant must be assessed by fossil energy type. Also, the economic
efficiency in an energy-generating system needs to be assessed in
consideration
of
expenses
for
constructing,
renewing biogas plants.
- 90 -
maintaining
and
In this section, we compared biogas energy and replaceable
fossil energy, and then clarified the life cycle economy of biogas in
consideration of the plant's durable years.
When we conducted a life cycle assessment of the biogas plant in
economic efficiency, its economic balance was found to be negative
over 35 years since operation commenced, regardless of converted
biogas forms and replaced fossil fuels.
We assumed three possible methods for improving the economic
balance:
reducing
expense
with
construction
cost
subsidy,
increasing revenue by accepting auxiliary feedstock, and increasing
unit costs of replaced fossil energy. We then re-assessed the
economic balance under these conditions. In subsidizing half the
plant construction cost, the economic balance was positive in all
forms
until
when
main
facilities
were
renewed.
With
no
subsidization for renewal, the balance subsequent to the facility
renewal fell negative.
In accepting auxiliary feedstock equivalent to 41.52 million yen
based on previous studies, the long-term economic balance was
positive in all forms.
- 91 -
In defining the unit cost of fossil energy as 11.4 yen per MJ based
on the feed-in tariff (FIT) system, the long-term economic balance
was positive in the form of gas boiler, whereas it was negative in the
co-generating system.
Ⅴ . Discussion
1. Proposal on Technical Improvement of Centralized Biogas Plants
in Hokkaido
Digestive slurry heated to 55 °C in a sterilization tank is
transported to a storage tank outside, where the heat is lost into the
air. If thermal energy of the digested slurry is used to heat
feedstock fermented, this may help reduce the thermal heat supply
from gas boiler in winter. It may also allow more amount of energy
to be supplied out of the plant. To verify this, we calculated the
energy balance of the three biogas forms, given that the heat lost
when the sterilized digestive slurry is cooled down from 55 °C to
45 °C, 2,093 MJ/d, was used via a heat converter to heat the
material slurry. We found from the calculation that the CHP system
was the most efficient in energy production, showing that the
electricity supplied out of the plant increased by 7%, and the heat
- 92 -
by 89%. Thermal recycling from digested slurry can increase the
amount of electricity and heat supplied outside of the plant. Thus, it
is necessary to introduce the thermal recycling system.
2. Biogas Transportation to Facilities that Utilize Heat
In Denmark, biogas generated is transported to district heating
facilities and is used as fuel for the CHP system. In urban areas of
Hokkaido, meanwhile, there are district heating facilities in some
areas, remote from the places in which farm animal manure is
collected. This present condition makes it hard to introduce the
Denmark style of biogas transportation. Building district heating
facilities may be an option in areas where the manure is collected.
However, it is not practical in that most conventional houses use oil
stoves
instead
of
district
heating
system.
In
today's
local
infrastructure, one possible facilities where biogas heat can be
used yearly is a heated swimming pool. We assessed the energy
balance and economic efficiency of biogas when transporting
biogas from the plant through the pipe line to the heated pool in the
city centre.
- 93 -
By assessing three forms of biogas utilization, we found that the
CHP system is the most energy-efficient. However, the life cycle
assessment of economy revealed that the sales of electricity in the
FIT system to replace A heavy oil would never make the economic
balance positive. Therefore, it is clear that the revenue increase by
accepting auxiliary feedstock is necessary to achieve a long-term
economic balance of the biogas plant. It is considered that if
auxiliary feedstock is not accepted, a system similar to FIT should
be built to promote the use of thermal energy from biogas.
3. Proposal of Utilizing Energy Generated from Centralized Biogas
Plant in Hokkaido
In converting biogas into thermal energy to heat water, gas
boilers are simple-structured and easy to install and maintain. In
light that thermal energy is generated more in summer than winter,
operators should ensure that there are facilities that consume a
sufficient amount of heat in summer so as not to have excess heat
in that season. The operators also should ensure that alternative
type of energies are available to supply heat in winter to
compensate the shortage.
- 94 -
CHP system of biogas can bring us with both electricity and heat.
Electricity is easy to be transmitted via electric wires. The amount
of heat generated is subject to season: it increases in summer and
decreases in winter. Selecting facilities which use heat needs to be
carefully made.
Biogas purified is equivalent to natural gas, but it is not
appropriate, in terms of energy efficiency, to transport the purified
gas to remote areas and to use it by gas boilers or CHP system.
Therefore, some systems are required so that consumers can
receive purified gas on site, for example, consumers drive a natural
gas vehicle to the site and refuel the purified gas. It must be noted,
however, that purified gas generated in summer is twice that of
winter. It means that the amount of feedstock manure and the
resulting purified gas to fill the demand in summer cannot satisfy
the winter demand, and then natural gas needs to be purchased
from other areas to supplement the shortage.
4. Significance of the Economic Assessment of Biogas by Utilization
Form and the Proposal of Utilization of Energy Generated
- 95 -
In a biogas plant capable of managing cattle manure of 1,000
heads of cattle, the most energy-efficient method of utilizing biogas
is using biogas by the CHP system. In terms of economic efficiency,
biogas management never gains a positive figure by solely
replacing conventional fossil energy by the energy from manure,
assuming that the revenue is gained through manure management
at the plant and economic value of digested slurry as fertilizer. For
an economic benefit, the electricity generated needs to be sold
under FIT, and the heat needs to be sold with 11.4 yen per MJ.
These findings can be applicable when community associations
and farming managers construct centralized biogas plants, as well
as in designing the methods for promoting renewable biogas
energy.
- 96 -
90000
140
120
80000
100
70000
60000
80
50000
60
40000
30000
40
20000
Number of cattle per one dairy farm
Percentage of free stall(%)
Dairy farming households, Number of cattle(×10-1)
100000
Dairy farm
Number of cattle
Number of cattle per one dairy farming household
Perentage of free stall
20
10000
0
0
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
Year
Fig.1-1. Number of dairy farm in Hokkaido and Number of cattle per
one dairy farm
- 97 -
Photo 1-1. Cattle slurry in free stall( Photo by Nakayama)
- 98 -
Fig
g .1-2. Re
ecycling of
o livestoc
c k manuree
- 99
9-
- 100 -
Manure
Digested
slurry
Energy conversion facility
Generated
energy (C)
(E)
Purified gas (including
added LP gas)
Electricity
Heat
Energy output (E)
Gray box: scope of energy balance examination
(Loss during combustion/off-gas)
(Consumption during plant operation)
Loss (D)
Generated
biogas (B)
Fig.2-1. Energy balance in the biogas plant
Fermentation
facility
Electricity/heat
Fossil energy input (A)
LP gas (as an additive
Electricity
to purified gas)
(A)
(A)
- 101 Fig.2-2. System configuration of the centralized biogas plant
Winter:0℃(The determined by reference to the
Underground storage
measured value)
tank of the cow shed Summer:14℃(Assuming the same as the average
value of the ambient air temperature)
(Heat exchanger)
Receiving tank
Fermentation tank
Winter:8.4℃(Measured value)
Summer:21.0℃(Measured value)
Year-round:37℃
Gas holder with
digested slurry
Year-round:30℃
(Assuming that digested slurry temperature is
lowered while accumulated)
Sterilization tank
Every day:7.5 hours hold at 55℃
Digested slurry
storage tank
Fig.2-3. Transport of manure slurry
- 102 -
Table 2-1. Input conditions for the simulation
Input conditions
Concentration of methane in the biogas
Generation of biogas
Gas storage amount in the gas holder
Items related to the generation
Energy efficiency of gas boiler and CHP
and consumption of biogas
Gas consumption of gas boiler and CHP
Purified gas production volume by purification system
Amount of off-gas
Power consumption of the mixer and pump
Running time of the mixer and pump
Items related to the operation of
The amount of heat consumption in the fermentation
the biogas plant
tank and sterilization tank
Heat radiation from the hot-water piping
- 103 -
- 104 -
Turn on the combined
Turn on the heavy oil boiler.
Do not turn on the CHP
system, gas boiler or
heavy oil boiler.
Fig.2-4. Heat supply calculation method in the simulation for CHP
Turn on the gas boiler
Is there a heat
supply
shortage?
heat and power (CHP) system.
Is heat needed for plant
operation? (e.g., heating of the
fermentation tank)
Do not turn on the gas boiler.
No (broken line)
Yes (solid line)
Is biogas
usable?
Start
Amount of heat (MJ/d)
10000
8000
6000
4000
2000
0
0
10
20
30
40
50
Fermentation temperature – daily mean temperature
Fig.2-5. Relationship between fermentation temperature – daily
mean temperature and the heat supplied to the fermenter
(The amount of manure input into the fermentation tank is
40m 3 /d)
- 105 -
Amount of heat (MJ/d)
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
0
10
20
30
40
50
60
70
Sterilization temperature – daily mean temperature
Fig.2-6. Relationship between fermentation temperature – daily
mean temperature and the heat supplied to the
sterilization tank (The amount of manure input into the
fermentation tank is 40m 3 /d)
- 106 -
Purification system
(membrane module)
Raw biogas
Off-gas
5.39m3/h
(calculated value)
(Biogas – Purified gas)
CH4:61.8%
1.72m3/h
CH4 :2.5%
Purified biogas
3.67m3/h
CH4 :89.6%
Fig.2-7. Flow of gas in the purification system
- 107 -
Table 2-2. Units using biogas in each simulation case
Simulation
case no.
①
②
③
Units using biogas
Gas boiler × 3
CHP system × 1, gas boiler × 2
Purification system × 1, gas boiler × 2
- 108 -
- 109 -
Power
plant
Manure
Power
(A)
(B)
(C)
Heat
(E)
Use outside
the plant
(A): Fuel energy input
(E): Energy output
Gray box: scope of energy balance examination
(D)
Combustion loss
Gas boiler
Fig.2-8. Process of using biogas for gas boiler
(D)
Consumption during plant
Digested
operation
slurry
Fermentation facility
Biogas
- 110 -
Power
plant
Manure
Power
(A)
Digested
slurry
(B)
(C)
Heat
Heat
(E)
(E)
Use outside the
plant
Use outside the
plant
(A): Fuel energy input
(E): Energy output
Gray box: scope of energy balance examination
(D)
Combustion loss
Gas boiler
Power
(C)
(C)
Fig.2-9. Process of using biogas for CHP
(D)
Consumption
during plant
operation
Fermentation facility
Biogas
(B)
CHP
Combustion loss
(D)
- 111 -
Power
plant
Gas
plant
Manure
Power
(D)
Consumption
during plant
Digested
operation
slurry
Fermentation facility
(B)
Biogas
(B)
(C)
Heat
Use outside
the plant
(D)
Combustion
loss
(A): Fuel energy input
(E): Energy output
Gray box: scope of energy balance examination
Gas boiler
Purification
system
Purified gas
(including (E)
(C) added LP
gas)
Fig.2-10. Process of using biogas for purification system
(A)
LP gas (A)
Off-Gas
(D)
Table 2-3. Coefficients used for calculation of greenhouse gas emissions
Item
Actual emissions coefficient of
Hokkaido Electric Power Co., Inc.
Unit heating value of LP gas
Emissions coefficient of LP gas
※1:
※2:
Unit
t-CO2 /kWh
GJ/t
tC/GJ
Coefficient
Reference
0.000433
※1
50.8
※2
0.0161
※2
Ministry of the Environment [28]
Ministry of the Environment and Ministry of Economy, Trade and Industry [29]
- 112 -
Table 2-4. Energy balance and energy production efficiency
Simulation case
Fossil energy input (A)
(Breakdown)
Purchased electricity
LP gas (as an additive to purified gas)
Biogas (B)
Generated energy (C)
Electricity (CHP)
Heat generation (CHP)
Heat generation (gas boiler)
Purified gas (including added LP gas)
Loss (D)
(Breakdown)
Loss during combustion
Gas discharge during purification (off-gas)
Power consumption during plant operation
(purchased amount)
Power consumption during plant operation
(amount generated by CHP)
Heat consumption during plant operation
Energy output (E)
(Breakdown)
Electricity
Heat
Purified gas (including added LP gas)
(E)-(A)
(GJ/y)
③ Purification
② CHP system +
① Gas boiler
system + gas boiler
gas boiler
1,042
145
2,705
1,042
-
12,110
9,688
-
-
9,688
-
9,154
145
-
12,110
9,797
3,273
5,565
959
-
9,069
2,108
597
12,114
11,225
-
-
5,690
5,535
9,284
2,422
-
2,313
-
1,422
64
1,042
145
2,108
-
921
-
5,690
3,998
5,690
3,186
5,690
5,535
-
3,998
-
2,956
2,352
834
-
3,041
-
-
5,535
2,830
Energy production efficiency((E-A)/(E))
0.74
0.95
Notes:
1) (A) to (E) correspond to their equivalents in Fig. 2-8~Fig.2-10 showing the flow of energy.
2) (A) + (B) = (D) + (E)
- 113 -
0.51
- 114 -
-
Methane contained in off-gas
125.3
125.3
① Gas boiler
LP gas (as an additive to purified gas)
Purchased electricity
(Breakdown)
Greenhouse gas emissions
Simulation case
-
-
17.4
17.4
② CHP system
+
gas boiler
Table 2-5. Greenhouse gas emissions
26.9
35.3
253.4
315.6
③ Purification system
+
gas boiler
(t-CO2-eq/y)
700
Amount of energy(GJ)
600
The number indicates the
energy production efficiency
Heat
500
0.80
400
0.76
0.81
0.80
0.78
0.77
0.66 0.72
300
0.72
0.63
0.59 0.59
200
100
0
1
2
3
4
5
6
7
8
Month
9
10
11
12
Fig.2-11. Monthly change of energy production and the efficiency
for gas boiler
- 115 -
700
Amount of energy(GJ)
600
The number indicates the
energy production efficiency
Heat
Electricity
500
0.98 0.99
400
0.98
300
200
0.84 0.85
0.93
0.98
0.98
0.98
0.96
0.96
0.90
100
0
1
2
3
4
5
6
7
Month
8
9
10
11
12
Fig.2-12. Monthly change of energy production and the efficiency
for CHP
- 116 -
Purified gas (LP gas)
700
0.56
The number indicates the energy
production efficiency
600
Amount of energy (GJ)
Purified gas (methane)
0.55
0.55
0.54
0.53
0.53
500
0.50
400
300
0.49
0.46
0.44
0.41 0.41
200
100
0
1
2
3
4
5
6
7
Month
8
9
10
11
12
Fig.2-13. Monthly change of energy production and the efficiency
for purification system
- 117 -
Table 3-1. Fertilizer component in digested slurry
(FM%)
Digested slurry
Total nitrogen(T-N)
Phosphoric acid(P2O5)
Potassium(K2O)
0.28
0.10
0.39
- 118 -
Table 3-2. Fertilizer efficiency for converting fertilizer components in
digested slurry into fertilizer components in chemical
fertilizer
Digested slurry
Nitrogen
Phosphoric acid
Potassium
0.4
0.4
0.8
- 119 -
- 120 -
7
15
12
Useful life(y)
75
1191
18541
11
79
119
Biogas plant
18541
1415
(Except for the gas
13.1(※)
utilization equipment)
※: The Independent Administrative Institution the Civil Engineering Research Institute of Hokkaido[10]
Gas utilization equipment
Gas boiler
CHP
Purification system
Equipment and facility
Amount of energy consumed in
Amount of energy per
the construction and
year (GJ/y)
manufacture (GJ)
Table 3-3. Amount of energy that is consumed in the construction of facilities and
production equipment
Table 3-4. Amount of energy consumed during transportation of
livestock manure and digested slurry
Transport of livestock manure
Energy consumption(GJ/y)
822
Transport of digested slurry
488
Application of digested slurry
224
Total
1534
- 121 -
Table 3-5. Energy value of digested slurry that can be replaced with
chemical fertilizers
Nitrogen (N)
Amount of energy (GJ/y)
1258
Phosphoric acid (P)
92
Potassium (K)
382
Total
1732
- 122 -
300
Input energy
Energy producion
Energy(TJ)
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.3-1. Estimation of change over the years on energy balance for
gas boiler
- 123 -
300
Input energy
Energy production
Energy(TJ)
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.3-2. Estimation of change over the years on energy balance for CHP
- 124 -
300
Input energy
Energy production
Energy(GJ)
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.3-3. Estimation of change over the years on energy balance for
purification system
- 125 -
- 126 -
Fig.4-1. Available fossil energy in place of the biogas energy
- 127 -
Fig.4-2. Scope of economic balance examination in centralized biogas plant
Table 4-1. Replaces fossil energy and sales of electricity in the FIT
Unit
Amount of money
Reference
(Yen)
104.7
2013/2/25 value ※1
93.1
2013/2 value ※1
Kerosene
A-type heavy oil
L
Municipal gas
LP gas
m
3
167.95
m
L
3
695.1
L
Regular gasoline
High-voltage power
kWh
10.6
Sales of electricity in FIT
kWh
40.95
158.8
※1:Ministry of
Economy, Trade and Industry [30]
※2:Hokkaido Gas Co.,Ltd. [16]
※3:The Institute of Energy Economics, JAPAN [23]
※4:Hokkaido Electric Power Company,Inc. [15]
※5:Ministry of Economy, Trade and Industry [31]
- 128 -
2013/2 value ※2
2013/2 value ※3
2013/2/25 value ※1
2012/7/1 value ※4
2013 value ※5
Table 4-2. Price of chemical fertilizer
Ammonium sulfate (N)
20kg
Amount of money
(Yen)
1,034
Superphosphate (P2O5)
20kg
1,234
Estimate
Potassium sulfate (K2 O)
20kg
1,506
Estimate
Unit
- 129 -
Reference
Estimate
- 130 -
200,118
22,124
33,958
2,200
35,000
70,000
1 set
1 set
1 set
1
1
1
1 set
1 set
Amount of money
(thousand Yen)
236,496
313,734
※2: Estimate
4.7
11.7
7
15
12
13.9
16.9
16.1
Useful life (y)
※1: The Independent Administrative Institution the Civil Engineering Research Institute of Hokkaido[10]
Earthwork and structure and measuring instrument
Facility of anaerobic fermentation
Facility of energy utilization
(Except for gas boiler and CHP)
Transportation vehicle
Treatment facilities of auxiliary material
Gas boiler
CHP
Purification system
Unit
Table 4-3. Construction costs of the biogas plant
※2
※2
※1
※1
※1
※1
※1
※1
Reference
- 131 -
804
1,713
696
1,680
1,870
804
1,713
696
1,870
2,035
1,028
3,068
Repair cost
Fuel of light oil
Fossil energy
2,035
1,028
10,014
1,400
1,870
804
1,713
696
6,482
11,455
※3
※1
※1
※1
※2
※2
※1
※1
※1
※1
※3: Calculated from the energy balance simulation results in Section II
※2: Estimate
※1: The Independent Administrative Institution the Civil Engineering Research Institute of Hokkaido[10]
2,035
1,028
427
6,762
11,455
5,082
11,455
CHP
21,708
Maintenance checkup
(Breakdown)
Regular inspection
Desulfurizing agent
Inspection of the transportation
Inspection of CHP
Inspection of purification system
Inspection of other energy equip
Personnel expenses
Total cost
Gas boiler
22,669
(Unit: thousand Yen)
Purification system
Reference
31,015
Table 4-4. Operating costs of the biogas plant
- 132 -
21,657
16,181
14,257
21,657
16,181
11,899
27,068
Revenue - Expenditure
29,426
52,095
49,737
Kerosen
22,669
Revenue
(Breakdown)
Plant usage fee
Equivalent to chemical fertilizer costs
Equivalent to fossil energy costs (Heat)
Expenditure (Operating costs)
A-type heavy oil
22,669
33,575
21,657
16,181
18,406
56,244
47,038
21,657
16,181
31,869
69,707
(thousand Yen/y)
Municipal gas
LP gas
22,669
22,669
Table 4-5. Revenue and operating costs for gas boiler
- 133 21,657
16,181
2,482
6,925
25,537
Revenue - Expenditure
47,245
Revenue
(Breakdown)
Plant usage fee
Equivalent to chemical fertilizer costs
Equivalent to fossil energy costs (Heat)
Equivalent to fossil energy costs (Power)
Expenditure (Operating costs)
26,029
21,657
16,181
2,974
6,925
47,737
26,895
21,657
16,181
3,840
6,925
48,603
29,703
21,657
16,181
6,648
6,925
51,411
45,366
21,657
16,181
2,482
26,754
67,074
45,858
21,657
16,181
2,974
26,754
67,566
46,723
21,657
16,181
3,840
26,754
68,431
49,532
21,657
16,181
6,648
26,754
71,240
(thousand Yen/y)
A-type heavy
Municipal
A-type heavy
Municipal
Kerosen
LP gas
Kerosen
LP gas
oil
gas
oil
gas
+
+
+
+
+
+
Sales of
Sales of
+
+
High-voltage
High-voltage Sales of
Sales of
High-voltage
High-voltage
electricity in
electricity in
power
power
electricity in
electricity in
power
power
FIT
FIT
FIT
FIT
21,708
21,708
21,708
21,708
21,708
21,708
21,708
21,708
Table 4-6. Revenue and operating costs for CHP
- 134 -
21,657
16,181
15,791
21,657
16,181
13,179
20,002
Revenue - Expenditure
22,613
53,628
Kerosen
31,015
51,017
A-type heavy oil
31,015
Revenue
(Breakdown)
Plant usage fee
Equivalent to chemical fertilizer costs
Equivalent to fossil energy costs (Heat)
Expenditure (Operating costs)
27,209
21,657
16,181
20,386
58,224
Municipal gas
31,015
42,120
21,657
16,181
35,297
73,135
LP gas
31,015
Table 4-7. Revenue and operating costs for purification system
32,226
21,657
16,181
25,403
63,241
(thousand Yen/y)
Regular gasoline
31,015
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-3. Estimation of change over the years on economic balance
for gas boiler
- 135 -
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas, FIT)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil, FIT)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-4. Estimation of change over the years on economic balance
for CHP
- 136 -
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-5. Estimation of change over the years on economic balance
for purification system
- 137 -
4500
Expenditure (Subsidizing half the plant construction cost)
Amount of money (million Yen)
4000
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-6. Estimation of economic balance for gas boiler in the case
of including subsidy for plant construction cost
- 138 -
4500
Expenditure (Subsidizing half the plant construction cost)
Revenue (Replaced with LP gas, FIT)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil, FIT)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-7. Estimation of economic balance for CHP in the case of
including subsidy for plant construction cost
- 139 -
4500
Expenditure (Subsidizing half the plant construction cost)
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-8. Estimation of economic balance for purification system in
the case of including subsidy for plant construction cost
- 140 -
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-9. Estimation of economic balance for gas boiler in the case
of utilizing organic residues
- 141 -
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas, FIT)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil, FIT)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-10. Estimation of economic balance for CHP in the case of
utilizing organic residues
- 142 -
4500
Expenditure
Revenue (Replaced with LP gas)
Revenue (Replaced with A-type heavy oil)
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-11. Estimation of economic balance for purification system in
the case of utilizing organic residues
- 143 -
4500
Expenditure
Revenue
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-12. Estimation of economic balance for gas boiler in the case
of assuming unit cost increase for replacing fossil energy
- 144 -
4500
Expenditure
Amount of money (million Yen)
4000
Revenue
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-13. Estimation of economic balance for CHP in the case of
assuming unit cost increase for replacing fossil energy
- 145 -
4500
Expenditure
Amount of money (million Yen)
4000
Revenue
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.4-14. Estimation of economic balance for purification system in
the case of assuming unit cost increase for replacing fossil
energy
- 146 -
Photo 5-1. Farm-scale biogas plant in Ringkøbing-Skjern (ComBigaS,
Photo by Nakayama)
- 147 -
Photo 5-2. Heat pump for recovering heat from the digested slurry
(ComBigaS, Photo by Nakayama)
- 148 -
Photo 5-3. Heat exchanger for recovering heat from the digested
slurry (Maabjerg bioenergy, Photo by Nakayama)
- 149 -
- 150 -
80
986
4,735
1,042
-
4,735
4,952
Energy output (E)
Energy production efficiency((E-A)/(E))
(E)-(A)
Heat
Purified gas (including added LP gas)
(Breakdown)
Electricity
-
-
0.98
-
4,007
-
3,910
0.79
1,574
-
4,952
2,513
4,087
2,306
-
8,107
361
5,948
3,499
9,808
2,422
-
8,199
-
9,688
-
9,688
-
12,110
80
80
② CHP system +
gas boiler
Loss during combustion
Gas discharge during purification (off-gas)
Power consumption during plant operation
(purchased amount)
Power consumption during plant operation
(amount generated by CHP)
Heat
consumption during plant operation
(Breakdown)
Purified gas (including added LP gas)
Loss (D)
Heat generation (CHP)
Heat generation (gas boiler)
Electricity (CHP)
Generated energy (C)
Biogas (B)
-
12,110
1,042
LP gas (as an additive to purified gas)
1,042
(Breakdown)
Purchased electricity
① Gas boiler
Fossil energy input (A)
Simulation case
0.55
3,755
-
6,856
-
6,856
4,735
-
2,362
79
1,184
8,360
6,856
-
4,735
-
11,591
12,110
739
2,362
3,101
③ Purification
system + gas boiler
(GJ/y)
Table 5-1. Energy balance in the conditions for the recovery of heat from digested slurry
700
Amount of energy (GJ)
600
The number indicates the
energy production efficiency
0.99 0.99
500
0.98 0.99
400
300
Heat
0.96 0.97
0.97
0.99
Electricity
0.99
0.98
0.98
0.96
200
100
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
Month
Fig.5-1. Monthly change of energy production and the efficiency for
CHP in the condition for recovery of heat from digested
slurry
- 151 -
Table 5-2. Energy balance and energy production efficiency in the case of
supply biogas to the out of biogas plant
(GJ/y)
Simulation case
Gas boiler
Fossil energy input (A)
1,042
(Breakdown)
Purchased electricity
1,042
Biogas (B)
12,110
Generated energy (C)
4,735
Heat generation (gas boiler)
Loss (D)
4,735
1,184
(Breakdown)
Loss during combustion
1,184
Power consumption during plant operation
(purchased amount)
Heat consumption during plant operation
1,042
4,735
Energy output (E)
6,191
(Breakdown)
Biogas
6,191
(E)-(A)
5,149
Energy production efficiency((E-A)/(E))
- 152 -
0.83
800
Amount of energy (GJ)
A-type heavy oil (consumption)
Biogas (supply)
600
400
200
0
1
2
3
4
5
6
7
Month
8
9
10
11
12
Fig.5-2. Monthly biogas energy production and energy consumption
when using A-type heavy oil in a heated swimming pool
- 153 -
1000
CHP (Power)
CHP (Loss)
Oil bioler (Loss)
Oil bioler (Heat)
CHP (Heat)
Amount of energy (GJ)
800
600
400
200
6
7
Month
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
5
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
4
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
3
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
2
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
1
OB
CHP+OB
OB
CHP+OB
0
8
9
10
11
12
(OB : oil boiler)
Fig.5-3. Monthly change of energy consumption when using A-type
heavy oil and available energy when using biogas for CHP
in a heated swimming pool
- 154 -
4500
Expenditure
Amount of money (million Yen)
4000
Revenue
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.5-4. Estimation of economic balance for CHP in a heated swimming
pool
- 155 -
4500
Expenditure (Subsidizing half the plant construction cost)
Revenue
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.5-5. Estimation of economic balance for CHP at a heated swimming
pool in the case of including subsidy for plant construction cost
- 156 -
4500
Expenditure
Revenue
Amount of money (million Yen)
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.5-6. Estimation of economic balance for CHP at a heated swimming
pool in the case of utilizing organic residues
- 157 -
4500
Expenditure
Amount of money (million Yen)
4000
Revenue
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
5
10
15
20
25
30
35
Year
Fig.5-7. Estimation of economic balance for CHP at a heated swimming
pool in the case of assuming unit cost increase for replacing
fossil energy
- 158 -
Table 5-3. Energy production efficiency in three forms of biogas
utilization
Gas boiler
CHP
+
Gas boiler
Purification system
+
Gas boilre
Case that do not heat
recovery of digested slurry
0.74
0.95
0.51
Case for heat recovery of
digested slurry
0.79
0.98
0.55
- 159 -
- 160 -
△
○
○
△
△
△
Subsidizing half the plant construction cost
Auxiliary material acceptance
Increased unit costs of replaced fossil energy
○: surplus
△: deficit after surplus
×: deficit
×
Long time
×
Short time
No subsidizing plant construction cost
Plant operating years
Gas boiler
×
△
△
×
×
○
×
×
CHP
+
Gas boiler
Short time Long time
×
△
△
×
△
○
×
×
Purification system
+
Gas boilre
Short time Long time
Table 5-4. Summary of economic evaluation for three forms energy utilization
Table 5-5. Energy production and utilization efficiency in the case of using
biogas or purified biogas at a heated swimming pool
Biogas
Purified biogas
CHP
Gas boiler
+
Gas boiler
Gas boiler
CHP
+
Gas boiler
Energy production
efficiency
0.83
0.83
0.55
0.55
Energy production and
utilization efficiency
0.51
0.74
0.12
0.37
- 161 -
Table 5-6. Summary of economic evaluation for CHP at a heated
swimming pool
Plant operating years
CHP
+
Gas boiler
Short time Long time
No subsidizing plant construction cost
×
×
Subsidizing half the plant construction cost
×
×
Auxiliary material acceptance
△
△
Increased unit costs of replaced fossil energy
×
△
○: surplus
△: deficit after surplus
×: deficit
- 162 -
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