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8. 軸受の形式と許容アキシアル荷重

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8. 軸受の形式と許容アキシアル荷重
8. 軸受の形式と許容アキシアル荷重
8.1 ラジアル玉軸受の接触角の変化と
── Fa=A Fa
8.1.1 アキシアル荷重による接触角の変化
=K
{ (sinα0+h)+cos α0−1} ───
cosα0
許容アキシアル荷重
f0
C0r
2
ラジアル玉軸受にアキシアル荷重がかかると,
2
3/2
sinα
………………………………………( 4 )
転動体と軌道とに弾性変形を生じて接触角が増大
し,接触幅も広くなる.発熱,焼付きなどが生じ
K:軸受の材料・設計により決まる定数
たときに,軸受を分解し走行跡を観察して,その
使用中の接触角の変化を調べて異常なアキシアル
すなわち,h を仮定し式
( 2 )より α を求め,そ
荷重がかかっていなかったかどうかを推定するこ
の h と α を式( 4 )に代入することにより,A Fa
が求められる.
とができる.
軸受にかかるアキシアル荷重 Fa と転動体荷重
この関係を利用して,アンギュラ玉軸受の内径
Q,荷重がかかったときの接触角 α の間には,
次の関係がある(6.4項(156ページ)の式( 3 ),
( 4 )及び式( 5 )を参照).
A Fa と
番号ごとに A の値を表 1 に示し, 図 1 に α の関係を示す.
例 題 1
Fa=Z Q sinα
2
2
2
3/2
=K Z Dw{ (sinα0+h)+cos α0−1}・sinα
………………………………………( 1 )
sinα0+h
2)
α=sin ─────────── …………(
2
2
(sinα0+h)+cos α0
−1
δa
δa
ただし h=─
─=─────
m
0
re+ri−Dw
すなわち,式( 2 )において δ a を変化させて,軌
道面を観察して得られた接触角に相当する α を
求め,その δ a,α を式( 1 )に入れて軸受にかか
ったアキシアル荷重 Fa を推定することができる.
しかし,この場合,軸受の設計諸元が分からな
いと求められないので,アキシアル荷重から,接
触角 α を近似的に求められるようにした.
基本静定格荷重 C0r は,単列ラジアル玉軸受
の場合,式( 3 )で表わされる.
C0r=f0 Z Dw cosα0 ……………………( 3 )
2
ただし f0:軸受各部の形状及び適用する応力
水準によって定まる係数
式( 1 )
,( 3 )より,式( 4 )が求められる.
172
図 1 アンギュラ玉軸受のアキシアル荷重による接触角の変化
アンギュラ玉軸受 7215C に純アキシアル荷
重 Fa=35.0 kN(基本静定格荷重の50%)がか
かったときの接触角の変化を算出してみる.
表 1 アンギュラ玉軸受における定数 A の値
表 1 より A=0.212 が求められ,図 1 より
A Fa=0.212×35.0=7.42,α≒26°が得られる.
初期接触角 15°であったものがアキシアル荷
重がかかったことにより 26°に変化したことに
なる.
単位:kN
−1
軸 受 の
内径番号
軸 受 系 列 70
15°
30°
40°
軸 受 系 列 72
15°
30°
40°
軸 受 系 列 73
15°
30°
40°
05
06
07
1.97
1.45
1.10
2.05
1.51
1.15
2.31
1.83
1.38
1.26
0.878
0.699
1.41
0.979
0.719
1.59
1.11
0.813
0.838
0.642
0.517
0.850
0.651
0.528
0.961
0.736
0.597
08
09
10
0.966
0.799
0.715
1.02
0.842
0.757
1.22
1.01
0.901
0.562
0.494
0.458
0.582
0.511
0.477
0.658
0.578
0.540
0.414
0.309
0.259
0.423
0.316
0.265
0.478
0.357
0.300
11
12
13
0.540
0.512
0.463
0.571
0.542
0.493
0.681
0.645
0.584
0.362
0.293
0.248
0.377
0.305
0.260
0.426
0.345
0.294
0.221
0.191
0.166
0.226
0.195
0.170
0.255
0.220
0.192
14
15
16
0.365
0.348
0.284
0.388
0.370
0.302
0.460
―
0.358
0.226
0.212
0.190
0.237
0.237
0.199
0.268
0.268
0.225
0.146
0.129
0.115
0.149
0.132
0.118
0.169
0.149
0.133
17
18
19
20
0.271
0.228
0.217
0.207
0.288
0.242
0.242
0.231
0.341
0.287
0.273
0.261
0.162
0.140
0.130
0.115
0.169
0.146
0.136
0.119
0.192
0.165
0.153
0.134
0.103
0.0934
0.0847
0.0647
0.106
0.0955
0.0866
0.0722
0.120
0.108
0.0979
0.0816
173
軸受の形式と許容アキシアル荷重
同様に深溝玉軸受についてはそれらの値を,
表 2 深溝玉軸受における定数 A の値
単位:kN
−1
表 2 及び図 2 に示す.
軸 受 の
内径番号
例 題 2
深溝玉軸受 6215 に純アキシアル荷重 Fa=
24.75 kN( 基 本 静 定 格 荷 重 の 50 %) が か か
ったときの接触角の変化を算出してみる.ただ
し,ラジアル内部すきま は普通すきま の中央値
(0.020mm)として計算する.
4.6項(99ページ図 3 )より初期接触角 10°が
得られる.また,表 2 より A=0.303 が求められ,
図 2 より A Fa=0.303×24.75≒7.5,α≒24°が
得られる.
05
軸 受 系 列 62
0°
5°
10°
15°
20°
06
1.76
1.22
1.77
1.23
1.79
1.24
1.83
1.27
1.88
1.30
07
0.900
0.903
0.914
0.932
0.958
08
0.784
0.787
0.796
0.811
0.834
09
0.705
0.708
0.716
0.730
0.751
10
0.620
0.622
0.630
0.642
0.660
11
0.490
0.492
0.497
0.507
0.521
12
0.397
0.398
0.403
0.411
0.422
13
0.360
0.361
0.365
0.373
0.383
14
0.328
0.329
0.333
0.340
0.349
15
16
0.298
0.276
0.299
0.277
0.303
0.280
0.309
0.285
0.317
0.293
17
18
19
20
0.235
0.202
0.176
0.155
0.236
0.203
0.177
0.156
0.238
0.206
0.179
0.157
0.243
0.210
0.183
0.160
0.250
0.215
0.188
0.165
図 2 深溝玉軸受のアキシアル荷重による接触角の変化
174
175
軸受の形式と許容アキシアル荷重
8.1.2 深溝玉軸受の許容アキシアル荷重
ここで言う許容アキシアル荷重とは,ラジアル
軸受にアキシアル荷重がかかると接触角が変化
し,玉と軌道との接触部に生じる接触だ円が,軌
道溝の肩に乗り上げる限界の荷重を指し,基本静
定格荷重 C0r から静アキシアル荷重係数 Y0 を
利用して求めた静等価荷重 P0 の限界値とは異な
る.また,軸受にかかるアキシアル荷重が P0 の
限界値以下でも接触だ円が溝の肩をこえることが
あるので注意を要する.
ラジアル玉軸受の許容アキシアル荷重 Fa max
は,次のように求めることができる.
8.1.1項の式( 1 )の右辺と式( 2 )より Fa 対
する接触角 α が求められ,Q は
Fa
Z sinα
Q=────
より求められる.
図1 また,図 1 の θ は5.4項 式
( 2 )より,次のよ
うに求められる.
( Σr )
Q
1/3
2a=A2 μ ── a
∴ θ≒─
─
r
したがって,許容アキシアル荷重は
γ ≧ α + θ
となる最大のアキシアル荷重を求めればよい.し
かしながら,この計算では軸受の内部諸元がわか
らないと,許容アキシアル荷重が求められないの
で,図 2 に深溝ラジアル玉軸受の許容アキシアル
荷重を求めた結果を示す.
176
図 2 深溝玉軸受の許容アキシアル荷重
177
軸受の形式と許容アキシアル荷重
8.2 円筒ころ軸受の許容アキシアル
荷重
なお,円筒ころ軸受に安定した耐アキシアル荷
重能力を発揮させるためには,軸受及び軸受周り
に次のような配慮が必要である.
円筒ころ軸受で内輪,外輪ともに つば 又は
つば輪をもつ形式の軸受は,ラジアル荷重と同時
○ アキシアル荷重を負荷させるときには,必ずラ
にある程度のアキシアル荷重を受けることができ
る.
ジアル荷重が負荷されていること.
○
その許容アキシアル荷重は,ころ端面と つば面
ころ端面と つば面との間に,潤滑剤が十分行
きわたるようにすること.
との滑りによる発熱,焼付きなどによって制約さ
○ 極圧性の高い潤滑剤を使用すること.
れる.
○ 慣らし運転を十分に行なうこと.
直径系列 3 の軸受にグリース潤滑又は油潤滑で,
○ 軸受の取付精度を良くすること.
連続的に負荷させたときの許容アキシアル荷重を
○
必要以上にラジアルすきま を大きく採らない
こと.
図 1 に示す.
グリース潤滑の場合(実験式)
また,軸受の回転速度が極めて低い場合,許容
2

900(k・d)
CA=9.8 f ──────−0.023×(k・d)2.5 (N)

n+1 500



900(k・d)
2.5 
= f ──────−0.023×(k・d) {kgf}
n+1 500

2



………………………………………( 1 )
油潤滑の場合(実験式)
490(k・d)

CA=9.8 f ────── −0.000135×(k・d)3.4(
 N)
n+1 000

2



490(k・d)
3.4 
= f ──────−0.000135×(k・d) {
 kgf}
n+1 000

2



………………………………………( 2 )
{
, kgf}
ここで CA:許容アキシアル荷重(N)
回 転 数 の50 % を 超 え る よ う な 場 合, 又 は 内 径
200mm を超えるような大型円筒ころ軸受の場
合は,潤滑,冷却などについて個々に十分な検討
が必要である.このような場合は NSK にご相
談ください.
f:負荷係数
区 分
f の値
連続負荷のとき
間欠負荷のとき
短時間負荷のとき
1
2
3
k:寸法係数
区 分
k の値
軸受の直径系列 2
軸受の直径系列 3
軸受の直径系列 4
0.75
1
1.2
d:呼び軸受内径(mm)
n:軸受の回転速度(min )
−1
図 1 円筒ころ軸受の 許容アキシアル荷重
178
179
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