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米最高裁によるクレーム解釈及び当事者系レビュー
米最高裁によるクレーム解釈及び当事者系レビュー開始の USPTO による決定に対する 上訴に関する見解 2016 年 6 月 20 日、米国最高裁判所は Cuozzo Speed Technologies v. Michelle Lee 訴訟 (Cuozzo)にその判決を下した。この重要な判決において、裁判所は、近年施行されたリ ーヒ・スミス米国発明法(Leahy-Smith America Invents Act) (以下 AIA)における二つのポイ ントを考慮した。AIA では、米国特許商標庁(USPTO)における「当事者系レビュー (inter partes review (IPR))」及び「付与後レビュー (post grant review (PGR))」のプロセスが導入 されている。一つ目のポイントは、AIA において、当事者系レビューを開始する USPTO の決定が控訴裁判所によるレビューから独立したものとするかどうかである。二つ目の ポイントは、議会が USPTO に与えたルール作りの権限は、USPTO に対して、裁判所に より適用される当業者により理解され得る「通常の意味(ordinary meaning)」基準ではな く、より広範な「最も広い合理的な解釈(broadest reasonable interpretation (BRI))」によ るクレーム解釈の基準の採用を許容するのかどうかである。このケースにおいて実際の ところ、最高裁判所は、これら両方の問いに対して肯定的に答えている、すなわち、現 状を維持し、新たな付与後のプロセスは USPTO の権限の範疇であるということを再確 認した。 IPR 開始決定に対するレビュー AIA では、第三者が USPTO に先行技術に対する発行特許のクレームの有効性の再考を 求める新たな手段を提供するために IPR プロセスが導入された。AIA において、IPR は、第三者により提出された請願及びそれに対する特許所有者により提出された応答が 考慮された後、請願において異議申立されているクレームの少なくとも一つに関して請 願人が勝訴すると思われる合理的な見込みがあることが証明されていると USPTO 長官 が決定した場合のみ、IPR が開始される(35 U.S.C. §314(A))。IPR の審理が開始される か又は請願が却下されていない場合、USPTO は、請願人により異議申立てされたクレ ームの有効性を決定する最終決定書(Final Written Decision)を発行しなければならない。 その後、IPR の当事者は、最終決定書における決定に対して裁判所に上訴できる(35 U.S.C. §319)。 最終決定書における決定に対して上訴する権利は明確であるが、USPTO による IPR を 開始する最初の決定それ自体が上訴の対象であるかどうかが Cuozzo における論点であ った。表向き、この問題に対する答えは、明らかに No (上訴不可)である。なぜなら ば、IPR 開始の決定は AIA において明示的に禁止されているからである。 35 U.S.C. §314(d) 上訴の不能 本セクションに基づく当事者系レビューを開始す るか否かについての長官による決定は,最終的なものであり、上訴することがで きない。 しかしながら、Cuozzo では、USPTO 長官は、請願書に特に記載されていない理由に 基づき IPR を開始することを決定した。したがって、問題の提起は、請願書に特に記載 されていない理由に基づき IPR を開始することにより、USPTO が AIA 下で付与された権 限を超えていたかどうかについてなされた。開始の決定の上訴が§314(d)により禁 止されていることが明らかであり、この問題は最初、連邦巡回控訴裁判所(Court of Appeals for the Federal Circuit)に訴えられた。最高裁は合意したが、このケースの事実と そのようなケースにその決定を制限するように注意を促した。 法的問題の検討は禁じられるものではないかもしれないが、我々は、例えば、当 事者系レビューを開始するための特許庁の決定を含むような、ここで問題となっ ている例外的でない請求の種類の司法審査を禁ずる[セクション 314(D)]と結論 づける。 さらに、最高裁判所は次のように明確に説明した。 我々は、我々の解釈は、当事者系レビューを開始する特許庁の決定に関連する法 令の適用や解釈に密接に関連する問題で構成されている、当事者系レビューを開 始する決定を攻撃するための根拠に適用されることを強調する。 §314(d)参照 (本セクションに基づく当事者系レビューを開始する…決定の上訴禁止) これ は、我々が、「本セクション」を超える範囲や影響の観点では、他のあまり密接 に関連しない法令に依存したり、解釈の問題があったりする法的問題を巻き込む 訴えについて、§314(d)の正確な効力を決定する必要がないし決定もしない ことを意味する。 請願人の一人が訴えられた後一年以上経ってから請願が提出されたときにやっと IPR 開始の決定の法的審査が禁止されていることを発見した連邦巡回控訴裁判所による初期 の決定を差し戻すための 2016 年 6 月 27 日に最高裁の決定によって、この局所的な判 決は強調された。このように、連邦巡回控訴裁判所は今や Cuozzo の判決のロジックの 適用、つまり、事実の異なるセットにおける§314(d)下での上訴禁止の範囲を決定 しなければならないだろう。 付与後手続中のクレーム解釈の基準 USPTO は、特許出願の審査において、「最も広い合理的な解釈(BRI)」基準に基づきク レームを解釈する。審査においてこの比較的広い解釈を使用するための一般的な理由の 一つは、もし USPTO により採られる解釈が特許許可を得るために広すぎる場合、特許 出願人はクレームの範囲を狭くする補正を行う機会があることである。したがって、 BRI 基準は、審査中に適用されたとき、クレームの文言の明確化及び特定を要求し、特 許権の範囲を確実に明確にするといった公共の利益をもたらす。一方、裁判所は、(ク レームを補正できない)訴訟におけるクレームの範囲を評価する際に、それらは当業者 によって理解されるようにクレームの範囲が解釈されることを意味する「通常の意味」 基準を伝統的に採用する。ほとんどの実務者は、クレームは、通常、BRI 基準より「通 常の意味」基準の下でより狭く解釈されることに同意するだろう。 上述したように、AIA は、付与後に特許の有効性を異議申立てる新しいプロセスを導 入した。AIA 自体においてクレーム解釈にいずれの基準が使用されるべきか特定されて いなかった。USPTO は、その施行規則において、BRI 基準を選択した。 37 CFR§42.100 (b)(クレームは特許明細書に照らしてその最も広い合理的な解釈に基づいて解釈され るべきである。) Cuozzo は、訴えにおいて、USPTO がこの規定を発行する法的権限を 欠いていたと主張した。連邦巡回控訴裁判所及び最高裁判所の両方は、この規定の発行 は AIA の下、USPTO に付与された権限の範囲内であったことを示し、同意しなかった。 付与後プロセス中の BRI 基準の使用に対する主な主張は、これらのプロセスが訴訟に 代わることを意図されており、本来判決に関連するものであるため、裁判所と同じ基準 が用いられるべきであるというものであった。確かに、IPR が訴訟に代わる迅速かつ安 価な手段であるという主張を支持する AIA に関連した立法経緯がある。この議論を受け て、最高裁判所は、IPR は訴訟ではなく、むしろ議会によって導入された「ハイブリッ ド」な手続きであり、議会は使用されるべき適切なクレーム解釈を定義しないことを選 択した。逆に、議会は明示的に USPTO にルール作りの権限を委任した。したがって、 最高裁は BRI 基準を適用する規定はそのルール作りの権限の合理的な行使であると判断 した。裁判所は、特許所有者は、IPR の間の(ほとんどの補正が認められておらず)権 利の問題としてクレームを補正できないという事実があるにもかかわらず、この結論に 達した。 パーティー及び法の助言者の両方によって提示された様々な主張に関して、裁判所 は、BRI 基準の使用は USPTO のルール作成の権限の範囲内であると判断し、どの基準が 実際最適であるかという問題にはならないし、問題にする必要がないという見解を示し た。 Cuozzo 及びその支持者は、通常の意味基準を支持して様々な主張を行った。特 許庁は独自の妥当な分析に基づいて、このような主張を受け入れるか否かについ て法的に制限されない。最も広い合理的な解釈標準を選択する特許庁の規定は、 上記の根拠に照らして合理的であると結論付けたが、我々は方針の問題として、 より良い代替手段があるかどうかを決定するわけではない。それは議会が特許庁 の特定の専門知識に委ねた問題である。