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けんさの豆知識

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けんさの豆知識
けんさの豆知識
[14]便潜血検査について
2002 年 7 月発行
2010 年 12 月改訂
便潜血検査は、消化管出血の検査として行われています。便潜血検査は化学的方法
と免疫学的方法がありますが、免疫学的方法が主流になってきています。近年、高齢化
や食生活の欧米化に伴い大腸ガンのスクリーニング検査として広く普及しています。
化学的便潜血検査と免疫学的便潜血検査
○化学的便潜血検査(オルトトリジン法・グアヤック法)
化学的便潜血検査が陽性の場合は、上部および下部消化管出血が疑われます(下表)。
上部消化管出血が生じた場合、血液中のヘモグロビンは胃液や十二指腸液で変性を
受け、さらに腸管粘液および細菌によって分解・変性を受けます。化学的便潜血検
査は、変性ヘモグロビンにも反応するので、消化管のどの部位での出血も検出され
る利点を持ちますが、反面、食事や薬剤の影響を受け偽陽性・偽陰性となるため、食
事や投薬の制限が必要となります。検査前の3日間は食事制限をして、その後の便
を検査するのがよいとされています。食事制限は、野菜類は加熱処理すればほとん
ど影響がなくなります。生野菜も少量であれば問題ありません。肉魚は煮ても焼い
ても影響がありますが、白身の魚や鶏肉のささみは影響ありません。寿司の 1,2
個程度ならそれほど心配はありません。
表 便潜血検査(主に化学的方法)が陽性になる疾患
鼻腔
鼻出血
口腔
口腔内出血
食道
食道動脈瘤,食道ガン,食道潰瘍,食道炎,マロリー・ワイス症候群
胃
胃ガン,胃潰瘍,胃炎
小腸
十二指腸潰瘍,十二指腸炎,小腸腫瘍,小腸潰瘍,クローン病,メッケル憩室
大腸ガン,大腸ポリープ,潰瘍性大腸炎,クローン病,感染性大腸炎,
大腸
薬剤性大腸炎,大腸憩室
肛門
内・外痔核,痔瘻
全身性
血液疾患(白血病,血友病,紫斑病,DIC)
○免疫学的便潜血検査(便ヘモグロビン検査)
免疫学的便潜血検査は、ヒトヘモグロビンに特異的に反応するため、食事制限の必要
はありません。しかし、変性したヘモグロビンと反応しないので、上部消化管(胃や十
二指腸)出血を確実にとらえることができません。このことから免疫学的便潜血検査は、
下部消化管出血の検査として行われています。免疫学的便潜血検査は定性法が広く行わ
れていますが、近年、定量値測定が可能となり、定量値の濃度や連続性に着目すること
で疾患や病変の大きさの診断の一助となるという報告もあることから、定量値法は次第
に普及してきています。
便潜血検査が陽性の場合は…
大腸ガン以外の痔や大腸ポリープでも陽性になるので、すぐに、大腸ガンを心配しな
くてもよいと思われますが、もう一度便潜血検査を行うのではなく、医療機関で精密検
査(大腸内視鏡検査やバリウム検査〈注腸X線検査〉)を受けた方がよいとされています。
便潜血検査が陰性の場合は…
疾患から毎日出血し、いつも便に血が混ざるとは限りません。結果が陰性であっても
気になる方は、医療機関で精密検査(大腸内視鏡検査やバリウム検査〈注腸X線検査〉)
を受けた方がよいとされています。
疾患があるにもかかわらず、便潜血が陰性になる原因
・採便方法が不適切だった。
・早期ガン(特に平坦型または表面型といわれている癌)は、出血しないことのほうが
多いといわれている.
・病変から毎日出血しておらず、出血していない日に採便した。
・病変が小さく出血量が少なかった。 など
採便の仕方について
各医療機関、健診機関で使用する採便容器が多少ちがいますので、説明書を必ず読み
正しく採便して下さい。
当院で使用している免疫学的便潜血検査用採便容器の採便の仕方です。
採便の仕方
注意点
*採便後は冷暗所に保存する。 便を専用容器に採便せず、そのまま室温に放置する
と1日経過しただけで便ヘモグロビン濃度が低下していまいます。排便後専用容器に採
取し、冷蔵保存で速やかに提出して下さい。
*採便容器を肛門に直接刺さない。潜血の多い便表面を擦過して下さい。(表面擦過法
は厚生省老人保険課監修の大腸がん検診マニュアルで推奨されています) また、肛門
を誤って刺して出血し、偽陽性となる可能性があります。
*採便量は多すぎず、少なすぎず適量を採便する。多すぎても少なくても、偽陽性偽
陰性となる可能性があります。
*採便容器内の液を捨てない。液には、ヘモグロビンを安定させる試薬が入っていま
す。液がない状態で保存すると便ヘモグロビン濃度が著しく低下してしまいます。
*生理期間中の採便を控える。生理中に陽性の場合、疾患による出血か、生理の血液
が便に混入したのか判断に迷う場合があります。生理の血液が便に混入する可能性は低
いですが、生理中の採便は控えた方がよいとされています。
*トイレ洗浄剤に便をつけない。偽陰性になる可能性があります。
参考文献
・Medical Technology Vol.22 No.3 1994 206-207 便
・長尾修二:大腸癌スクリーニングにおける便中ヘモグロビン定量法の有用性 2000
・志和正明:便中ヘモグロビン濃度精密測定による大腸癌スクリーニングの検討 1999
・医学書院 今日の診療CD-ROM Vol.8
・中外医学社:検査値のみかた
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