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ASHE-PDC2014参加と米国ヘルスケア施設調査

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ASHE-PDC2014参加と米国ヘルスケア施設調査
ASHE-PDC2014 参加と米国ヘルスケア施設調査レポート
1.ASHE-PDC2014
(2014 年 3 月 18 日)
(1)展示会の概要
フロリダ州オーランドのコンベンションセンターで開催された「医療施設計
画・設計・建築に関する国際会議・展示会:The 2014 International Summit &
Exhibition on Health Facility Planning, Design & Construction (PDC Summit)」
に参加した。
(開催期間:2014 年 3 月 16 日~18 日、訪問日 3 月 18 日)
ASHE-PDC 開催会場
この展示会は、米国病院協会傘下の米国医療エンジニアリング学会(ASHE:
American Society for Healthcare Engineering ) と 米 国 建 築 学 会 ( AIA : The
American Institute of Architects)ならびに医療建築学会(AAH:Academy of
Architecture for Healthcare)の共催により開催されており、主催団体の一つで
ある米国医療エンジニアリング学会と会議名称の短縮表記で、
「ASHE-PDC」と通称
され、1987 年以降、毎年開催されている欧米における医療機器や建築等の総合展
示会である。
今回の ASHE においては、例年通り約 200 以上の企業や団体から展示が行われて
いたものの、会場規模としては、日本における HOSPEX 等よりも小さい印象であっ
た。会場は主に「各出展企業ブース」のゾーンと、「ARCHITECTURE FOR HEALTH
GALLERY」という設計作品のパネルが展示されている 2 つのゾーンに分かれており、
講演として PDC のサミットプログラムが 2 日間に分けて開催されていた。
サミットプログラム概要(上・下)
(2)サミットプログラムの概要
2014 年 PDC サミットプログラムのテーマは「Building for the Ages」となっ
て お り 、 開 催 さ れ た 3 日 間 の 中 で 、 そ れ ぞ れ 「 Planning 」、「 Design and
Construction」、「Performance Excellence」というテーマでプレゼンテーション
が開催されていた。
(3)技術展示の概要
技術展示の展示内容としては、確認できただけでも床材や壁材等の建築資材等
から、医療機器やシステム関連(ナースコール、ベッドサイド端末)
、ヘリポート
建設企業や CM 企業に至るまで多岐にわたってブースが出展されていた。
出展企業ブース(KBR Building Group)
次項に詳細説明を聞くことができたブースの内、2 カ所の展示内容の説明を記
す。
出展企業ブース(Amico)
1
1)CS&G:患者・家族誘導システム
アメリカの病院では、広大な土地を利用し、日本と比べて低層の横に広い作
りが一般的であり、また来院者の駐車場から、外来、病棟までのエリアも複雑
に入り組んでいる作りが多くなっている。そこで、今回展示されていた CS&G
の GPS を利用した誘導システムでは、患者家族は見舞い時に、病院内の看板(デ
〇CS&G:医療施設等における動線計画から、
サイン計画、ガイドマップ等の作成を行っ
ており、「way finding」Design をテーマと
して掲げている。
ジタルサイネージ)や個人端末(iPad、スマートフォン)等、任意の端末を利
用して、患者の入院位置を検索し、その場所まで GPS を利用した誘導により迷
うことなくたどり着くことができるというシステムであった。
説明者の話では、これらのシステムの利用により今まで紙で出していた病院
案内マップ等が不要となり、患者家族への誘導も容易になるという説明であっ
た。
近年は日本においてもスマートフォン等の携帯端末の普及から、病院内の無
線 LAN 設備の整備が進んでいることからも、案内のみならず、外来患者用の案
内票・外来スケジュール表等、現在紙で出力しているありとあらゆる情報の一
部を、データとして提供し、呼び出し等を個人の端末を利用する。いわゆる BYOD
(Bring your own device)のような考え方は、案内までの待ち時間等の有効利
用が可能となるだけでなく、複数科受診時の呼び出し順番の柔軟な変更等、運
用の幅を広げることにつながると推察される。
患者・家族誘導システム
今後、入院病室等の検索に関する考え方や個人端末情報管理等の運用ルール
をしっかり整理できれば、日本において積極的な導入も考えられるのではない
かという印象であった。
※韓国の Samsung Medical Center 等にも同様のシステムが導入されているとの
こと。
誘導サービスイメージ
2)aerocom:搬送システム(気送管)
〇aerocom:搬送機メーカー、1956 年に創
今回の ASHE においては、aerocom 社と SwissLog 社、Pevco 社という搬送機メ
設された気送管システムメーカー
ーカー3 社が出展していたが、その内 aerocom 社のブースにおいては、気送子
〇SwissLog:気送管に加え、無人搬送車等
(カプセル)の実物の展示に加えて『映像』による展示が行われていた。今回
を有する世界的搬送機メーカー
の展示において特に私が注目したのは、その映像で展示されていたジョージア
〇Pevco 社:搬送機メーカー、1978 年に創
州の Emory Neuroscience Center(アトランタ)において特注で導入されてい
設された気送管システムメーカー
るという aerocom 社のシステムである。その内容は半減期の短い放射性医薬品
を調製後、速やかに患者に投与するために、調製を安全キャビネット内のロボ
ットアームを利用して実施後、そのまま気送子内に封入し、直接検査室等に送
るというものであった。
出展者に対してアンプル等の破損危険性について尋ねたところ、レッドガラ
スと言われる特殊なガラスを利用しており、中身の破損は絶対にないとのこと
であった。
2
出展企業ブース(aerocom)
日本においても、放射性医薬品に限らず、放射線部門と薬剤部門の動線は他
の関連部門との兼ね合いや、人員配置等の問題から議論がなされるポイントと
なっている点である。
今回の展示内容のような調製から搬送までの一連の流れについて、今後日本
の病院において自動化が進むのか(※放射線医学総合研究所等の研究機関にお
いては既に一部自動化)という点については、想定されるリスク等の問題から
自動調製・搬送システム
容易ではないと考えられるが、将来的に安全面の課題解消や機械の小型化が進
み、実用的になれば動線計画等においてポイントとなると考えられる展示であ
った。
(4)設計作品パネル展示の概要
会場においては同時に医療建築物の設計作品展示もされており、 Baystate
Hospital の図面や、MD Anderson Cancer Center、Shawnee Mission Birth Center
設計作品パネル展示会場
等の設計作品パネル(パース、病棟構成図等)が展示されていた。
以下に今回展示されていた設計作品パネルの一部とその説明を記す。
1)Baystate Hospital
マサチューセッツ州のスプリングフィールドにある Baystate Hospital の将
来イメージは以下の写真の通りとなっている。病棟をみると、病室は基本的に
個室となっており、近年欧米では SS を各病室付近に分散した配置が一般的とな
っていたが、この図面においてはある程度中央に集約される形で配置されてい
た。
設計作品パネル展示(Baystate Hospital)
2)Hoag Health Center Huntington Beach
カリフォルニア州、ハンティトンビーチにある Hoag Health Center の外来診
察エリアの様子は以下の写真の通りとなっている。Hoag Health Center を始め、
欧米では患者のプライバシーに最も配慮し、外側廊下側への扉はなく、内側か
ら入るように設計されている。また、日本のような引き戸の使用は病院全体か
らも少なく(一部 ICU 等で引き開き戸)
、開き戸を採用しているため、個々の診
察室のスペース的にはあまり機能的でない印象であった。
3
設計作品パネル展示(Hoag Health Center Huntington Beach)
3)Cedars-Sinal Medical Center
下記写真はカリフォルニア州のロサンゼルスにある Cedars-Sinal Medical
Center の化学療法スペースである。展示されたパネルを見ると、患者個別のブ
ースを大きく吹き抜けのエリアにとっていることが非常に印象的であった。日
本においては、薬剤部との隣接関係等が重視される関係や、吹き抜けスペース
のコスト的な問題からも採用が難しい印象であるが、患者個々への配慮という
点では日本とは大きく考え方が異なる印象であった。
設計作品パネル展示
(Cedars-sinal medical center)
2.見学施設概要
日程
3/19(水)
①オーランド
視察
※医療施設視察日のみ
● Nemours Children’s Hospital 視察
● Cancer Center at Florida Hospital Memorial in Ormond Beach 視察
● PERKINS+WILL 設計事務所訪問
3/21(金)
● The Johns Hopkins Hospital 視察
②ワシントン DC
● Mercy Medical Center Rooftop Gardens 視察
① オーランド
② ワシントン D.C.
● Little Company of Mary Hospital 視察
3/24(月)
● VOA
③ シカゴ
Associates Inc. 設計事務所訪問
③シカゴ
● Ann & Robert H. Lurie Children’s Hospital Chicago 視察
今回の視察においては、上記の 6 つの医療機関と 2 か所の設計事務所の訪問を
行った。以下にその内、オーランドで訪問した Nemours Children's Hospital に
おける視察内容とその他の施設の視察概要を示す。
(1)Nemours Children's Hospital
病院種別
:こども病院
運営主体
:The Nemours Foundation
病床数
:100 床(最終的には 137 床)
延床面積
:630,000ft2(約 58,500 ㎡)
階数
:7F(地下1階 地上 6 階)
建設費
:$260million(総事業費$397million)
(約 147 万円/坪、$1=100 円換算)
4
Nemours Children's Hospital 施設外観
竣工年
:2012 年 11 月
設計
:Stanley Beam & Sears、PERKINS+WILL
平均在院日数
:3~4 日
看護配置
:4:1
:化学療法は3:1、ICU1:1~1:2
スタッフ数
:735 人
(医師 66 人、看護師 199 名、准看護師 1 名、その他スタッフ 469 人)
基準階病棟
:27 床
手術室数
:4 室(別途将来対応 2 室分)
1)立地環境について
Nemours Children's Hospital は、全国に 40 カ所グループの施設がある Nemours
財団が設立、
運営している病院であり、
総事業費は約 400 億円。Nemours Children's
Hospital が位置する『Lake Nona
Medical City』には退役軍人のための病院
や大学が近くにあり医療特区となっている。
病院の位置する場所は海抜 85 フィートの位置にあり、洪水の可能性があるため、
対策として地下は設けられておらず、外来と病棟エリアの
中央には洪水対策用の壁が南北にわたって設けられてい
た。また、現在の建物は病院(病棟)と外来(clinic)に
よる構成となっているが、今後将来的には病院敷地内に、
病室や救急、研究棟や office を拡張する予定とのことで
あった。
建物は 7 階建てで、実質の 1 階は G 階(ground)
、2 階
以降が 1~6 階と称されており、供給動線としては clinic
側にあるサービスヤードから、G 階を横断して病院側に搬
送し、エレベーターにて各階に物品の搬送を行っていると
のことであった。
2)病院コンセプト
病院建設におけるコンセプトとしては、小児の重篤な患者が対象であるため、
病院全体に自然光を積極的に取り入れ、スタッフに対しては職員専用ラウンジを
設けるなど、仕事をする場所のプライバシー(雑居な場所ではなく)等、スタッ
フケアにも配慮しているとのことであった。また、患者に対してももちろんであ
Kid-friendly main lobby
るが、スタッフのヒーリングを意識した庭園も設けられており、デザインに工夫
された椅子やテーブル等が並んでいた。
また、第 3 者評価として、Leed (リード:The Leadership in Energy and
Environmental Design)の gold 認証を所得しており、環境も人間も健康でいられ
るように設計・建築・運営されている建物とのことであった。
屋上庭園エリア
5
3)病室・病棟構成について
病棟は 1 フロア 27 床となっており、看護単位は 4 対 1。建物全体は 7 階建てで
あり、4 階から上が病棟フロアとなっていた。また現在は 100 床であるが、将来
的に 6 階が完成した際には既存の建物のみで 137 床になる予定である。
なお、病室構成としては病室全体の 90%が個室であり、残りの 1 割は双子等の
入院を考慮し、2 床室となっていた。
4)病室設備について
各病室の入り口にはインフォメーションディスプレイが設けられており、SS よ
り 30 秒ごとに患者情報が送られ更新されている。表示できる内容としては、入室
している患者の禁忌情報等が入室前に確認出来る様になっている。
また、各病室には一般的設備として医療ガスアウトレット近くに内視鏡のスコ
ープセットが設置されており、電子カルテ端末や患者用のマルチディスプレイに
ついても各室に常備されている状況であった。※病院内には院内学級はないが、
マルチディスプレイを利用し、スカイプ等を通じて学校の授業に参加できるよう
一般病室設備
になっているとのこと。
なお、病室によっては、骨折等の患者の牽引用のリフトがついており、病室内
の移動、トイレへの介助が容易に出来る様になっていた。
病室における衛生・感染管理の考え方としては、各病室の入り口、病室内にそ
れぞれ手袋やマスク等の収納スペースが設けられており、状況によって入室前、
入室後にそれぞれ準備ができるように衛生・感染管理等がなされていた。
その他、病室における施設維持管理の機能として、病室内のナースコールを利
用して清掃依頼や施設管理を呼べるようになっているとともに、ME 機器について
は、RF-ID のコンセントによる機器のロケーション管理がなされていた。
病室前インフォメーションディスプレイ
5)その他
病院の対象患者としては 0~18 歳までであり、現在の平均在院日数は 3~4 日、
状況によっては退院後に clinic 側にて対応を行っている。また、現在開院から
1.5 年経過しているが、稼働率は 40%であり、今後患者が増えることによって、
Dr や Ns を適宜増やす想定である。
総合受付カウンター
セキュリティ面への配慮としては、来院した見舞い客はまず、来院登録が必ず
必要とされており、患児自身には病院外への移動や連れ去り等への配慮として、
リストバンドと出入り口のセンサーによる管理が行われている。
患者搬送用の EV は横幅 2.45m、奥行き 4m の大型のものが設置されており、重
症者搬送時への配慮がなされていた。
※LEED とは Leadership in Energy and Environmental Design の略で米国グリーンビルディング協会が所管
患者・来院者チェックインシステム
している任意の認証制度。建築物全体の企画・設計から建築施工、運営・メンテナンスまでにわたって
省エネ、環境負荷を評価のポイント数の合計(総合計 110 点)によって評価。新築の商業施設やオフィスビルの評価ポイントの内訳は以下の通り。
1. 建築物(敷地)の持続可能性・交通の便等
4. 資材の再利用・リサイクル率
2. 水効率 ・節水性
5. 屋内環境の快適さ
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3. 省エネと再生可能エネルギーの使用
6. 革新性と設計プロセス等の特別なクレジット
7. 地域別優先クレジット
(2)Florida Hospital Memorial Cancer Institute
病院種別
:がんセンター(外来機能)
運営主体
:Florida Hospital
病床数
:18 台(リクライニングチェアのみ)
延床面積
:31,500ft2(約 2,900 ㎡)
階数
:1F
建設費
:$7million(約 79 万円/坪、$1=100 円換算)
竣工年
:2010 年 10 月
設計
:Hunton Brady Architects
看護配置
:4:1
Florida Hospital Memorial Cancer Institute は、Memorial Medical Center
施設立地場所
に隣接されており、最新の放射線治療装置や位置決め CT 装置等と 18 台のリクラ
イニングチェアにより、1 日約 35 名(最大 3 回転)のがん治療患者に対応できる
状況である。※現在は平均 12 名/日
施設全体のコンセプトとしては患者の治療環境向上を目的とし、星空を模した
LED 照明のある放射線治療室や、景色のよい化学療法室、水の流れる壁があり、
落ち着きのあるエントランス等、自然との調和が図られた施設となっていた。
エントランス(コンシェルジュカウンター)
眺めの良い化学療法室
放射線治療装置
(3)The Johns Hopkins Hospital
病院種別
:大学病院
運営主体
:Johns Hopkins Medicine
病床数
:560 床(新築部分、全 1,059 床)
延床面積
:1,600,000ft2(約 148,600 ㎡)
階数
:12F
建設費
:$1,100million(再開発全体の事業費)
竣工年
:2012 年 5 月
設計
:PERKINS+WILL
病棟
:32 床×2 看護単位(ZAYED TOWER)
The Johns Hopkins Hospital 施設外観
:20 床×2 看護単位(CHILDREN’S CENTER)
:産科 35 床、NICU45 床、PICU40 床
:ICU96 床(うち CCU12 床、SICU18 床)
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手術室数
:33 室
内訳
脳外/一般 14 室、小児
10 室
心臓
3室
6 室、産科
The Johns Hopkins Hospital は全米のホスピタルランキング(2013-14)にお
ける全米 No.1 の病院に選出されており、
成人部門では 16 の専門分野中、
15 分野、
小児部門では 10 の専門分野中 10 分野が全米で上位にランクインしている病院で
オペラセットデザイナーにより
ある。
病院のデザインにおける大きな特徴としては、エントランスに設けられたオブ
Design されたオブジェクト
ジェクトの数々であり、これらはオペラのセットデザイナーが作成したものとの
こと。また、病院建設にあたってはカラーの専門チームも配置し、外観・内観と
もにデザインがなされたとのことであった。今回既存棟に加えて新たに整備され
た建物は 560 床(全 1,059 床)であり、総事業費は 1,000 億円とのことである。
救急専用入口(walk in)
小児救急専用入口(walk in)
カラーコーディネートされた
エレベータホール
(4)Mercy Medical Center
病院種別
:一般病院
運営主体
:Mercy Medical Center
病床数
:190 床
延床面積
:686,000ft2(約 63,700 ㎡)
階数
:20F
建設費
:$263.3million
Mercy Medical Center 施設外観
(約 136.6 万円/坪、$1=100 円換算)
竣工年
:2010 年 12 月
設計
:AECOM
平均在院日数
:3~4日
稼働率
:75%
看護配置
:5:1
基準階病棟
:30~32 床(約 90 ㎡/床)
手術室
:15 室
Mercy Medical
メインロビー
Center は 1874 年に創設され、婦人科、産科、小児の医療提
供と研究機能を有したアカデミックメディカルセンターである。
メイン施設の McAuley
Tower は 1963 年竣工、約 50 年が経過しており、2010
チャペル
8
年に増築がなされた状況である。なお、増築棟と既存棟は利用者用の 3 階の渡り
廊下と、サービスヤードである地下通路によってそれぞれ接続されている。
病院建築の大きな特徴としては、庭園建築の担当者を設けて整備された 3 フロ
アにまたがった屋上庭園であり、隣接地との融和を図り、患者への視覚的効果や
ルーフトップガーデンによる環境・建物への配慮を想定して整備されていた。
診療機能面においては、ICU 等が整備されており、各室の廊下側に分散された
スタッフコーナーが患者観察用として設けられていた。ただし、実際は分散スタ
ッフコーナーはあまり活用されておらず、入室前の準備業務等を行っているのみ
であるとのことであった。ICU の面積としては、1 室あたり 310sqf(約 28.8 ㎡:
トイレ込)であり、日本における特定集中治療室の施設基準面積よりも大きい状
況であった。
断面構成
一般病室
分散スタッフステーション
3 フロアにまたがった屋上庭園
(5)Little Company of Mary Hospital
病院種別
:総合病院
病床数
:西棟 96 床
延床面積
:西棟 370,000ft2 全体 2670,000ft2
階数
:8 階
建設費
:西棟$110million
施設全体 205 床
(約 147 万円/坪、$1=100 円換算)
竣工年
:2014 年 9 月予定
設計
:VOA Associates Inc.
手術室数
:10 室
分娩室
:7 室
Little Company of Mary Hospital
施設外観
Little Company of Mary Hospital は、シカゴのメトロポリタンエリアの南西
部に位置しており、関連施設として診断センターや健康教育センター、外来ケア
センター等の 13 の関連施設を有する医療機関である。
西棟 1 階女性専用エリア
病院の特徴としては、救急病院とシカゴ大学病院の医療腫瘍学(内科的腫瘍学)
グループと提携しているがんセンターを通じて、技術的に高度なサービスが提供
されている点である。また、もう一つの特徴としては、新たに建設され、今回視
察を行った西棟であり、1 階の女性専用エリア(WOMEN’S CENTER)
、2 階分娩室・
MFICU、3 階 NICU・母子同室の産科病棟と周産期領域に特化した棟となっている。
西棟 3 階 NICU、母子同室の産科病棟
9
視察においては、3 階の病室を視察したが、病室ベッドは父親の宿泊も想定した
特注のクイーンサイズベッドとなっていた。また、患者の状態や最終的な目標を
記載するグラスボードが設置されており、
「Date:入院日」や「RN:担当 Ns」
、
「CP:
看護アシスタント」
、
「Goal:日毎の内容」を記載し、看護師に問い合わせること
なく母親が自身に関する情報(状態、目標等)を知ることができるような工夫が
なされていた。
なお、現在は、東棟の改築工事がなされており、東棟の改修に伴い最終的には
敷地内配置図
250 床に増床する計画となっている。
患者の状態等を記載するグラスボード
特注のクイーンサイズベッド
家族宿泊用のソファーベッド
(6)Ann & Robert H. Lurie Children's Hospital
病院種別
:こども病院
運営主体
:Northwestern University
病床数
:288 床
延床面積
:1,250,000 sq.ft.(116,250 ㎥)
階数
:22 階
竣工年
:2012 年 6 月
設計
:Zimmer Gunsul Frasca Architects
:Solomon Cordwell Buenz
Ann & Robert H. Lurie
Children's Hospital の施設外観
:Anderson Mikos Architencts
平均在院日数
:1~2 日
手術室数
:21 床
NICU
:60 床
竣工年
:2012 年 6 月
世界一高層の小児専門病院
Ann & Robert H. Lurie Children's Hospital はシカゴの高層ビル群に囲まれ
た位置に立地している病床数 288 床の小児専門病院である。
病院の特徴としては、シカゴ水族館と同じ経営者が経営しており、各所に水族
館のデザインが取り入れられていた。また、フロアによってはシカゴに縁のある
有名なデザイナーやスポーツ選手、fire department(消防署)等がそれぞれサポ
ートを行い、各フロアデザイン等を行い、小児患者の不安軽減を図っていた。
医療機能としては、世界一高層である全 22 階建の内、2 階に救急、3 階~7 階
は外来や手術室、
8 階は精神、12 階から 16 階はそれぞれ重症患者のための治療室、
10
エントランスホール
17 階・18 階はがん・血液センターとなっており、クリーンエリアについては個別
空調となっていた。また、見学を行った 20 階の急性期・一般病棟については、他
のアメリカの一般的な病棟と同様に「分散型スタッフステーション」が重症患者
フロアの 2 病室に 1 箇所配置されている状況であった。
外来受付ホール
一般病室内設備
一般病室内設備
フロアマップ
3.海外視察を通じて
今回海外視察を行った病院の全般的な特徴としては、まず、患者・家族、そし
てスタッフに対する心理的負担軽減への配慮がなされているとともに、どの施設
においても LEED 認証取得を行うなど、環境面への配慮が行われている印象であっ
た。また、各施設を視察した印象としても、その特徴として、建築物、什器等も
含めてデザイン面へかなり重きが置かれており、デザイナーやカラーコーディネ
ータ、庭園建築担当者の配置、また水族館や消防署との連携など、各施設の特徴
を示すデザイン面への考慮がなされていた。
機能面の共通事項としては、どの病院においても個室があくまで中心であると
ともに、分散型スタッフステーションを有する病院が多い状況であった。ただし、
ASHE 見学時の施設展示にもあるように、その傾向は、現在の利用状況を加味し、
中央集約型に戻りつつあるようである。
なお、アメリカではその医療保険制度の違いから患者の自己負担額が大きいた
め、どの病院においても在院日数が3~4日程度と非常に短く、その短い在院期
間に最大限治療に専念できるよう、あらゆる設備が整えられている印象であった。
LEED 認証等にみられる環境面への配慮は、日本としても今後見習う点がまだま
だ残されていると感じたが、衛生・感染管理の視点、諸室配置・動線計画への配
慮など、日本とは考え方の異なる部分も多く見られ、日本的な細やかな点への気
配りや機能性の面は、決してアメリカに引けをとっているのではなく、むしろそ
ういった「視点」や「ノウハウ」の共有を行うことで、両国の医療施設は更なる
機能向上を果たしていくことができると思われる。
11
救急外来入口
ホールに配置された消防車(寄贈)
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