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審査の要旨

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審査の要旨
第 8 号様式
論 文 審 査 の 要 旨
博士の専攻分野の名称
博
士
(
医
学
)
氏名
学位授与の要件
論
文
題
Bagus Herlambang
学位規則第4条第○
1 ・2項該当
目
New method for absolute spinal cord ischemia protection in rabbits
(ウサギでの新しい絶対的脊髄虚血保護法)
論文審査担当者
主
査
教
授
橋
本
浩
一
審査委員
教
授
松
本
昌
泰
審査委員
教
授
東
幸
仁
〔論文審査の要旨〕
胸腹部大動脈瘤手術においては,様々な脊髄保護法を用いて手術を行うが,対麻痺を完
全に防止する方法はまだない。本研究は,大動脈手術における重度脊髄虚血による脊髄傷
害を防ぐためのより良い方策を確立することを目的とした。ウサギ脊髄虚血モデルを用い,
脊髄傷害を防ぐために,脊髄の局所低体温と分節遮断した大動脈内へのラジカル・スカベ
ンジャーの注入の相乗効果を検討した。
開腹下に日本白色ウサギ(メス,9〜11 週)の大動脈を両側腎動脈直下から分岐部直上まで
30 分間遮断し,一過性脊髄虚血を作成した。治療の有無・種類により以下の 4 群に分けた
(各群n=16)。
I: シャム群
II: エダラボン群(エダラボン 1 mg/kg に 4℃の冷却生理食塩水で計 6 mL を注入)
III: 生理食塩水(4℃の冷却生理食塩水 6 mL)注入と経脊椎冷却パッドの併用群
IV: エダラボン(エダラボン 1 mg/kg に 4℃の冷却生理食塩水で計 6 mL)注入と経脊椎
冷却パッドの併用群
生理食塩水とエダラボンは分節遮断直後に大動脈内へ注入した。術後の評価は再灌流 8 時
間,24 時間,48 時間,168 時間後に Tarlov score を用いて神経学的に評価し,再灌流 48
時間と 168 時間後に脊髄前索における神経細胞を病理組織学的に評価し,脊髄組織におけ
るマロンジアルデヒド濃度を測定した。
Tarlov score は,再灌流 8 時間後では I 群,II 群,III 群でそれぞれ 4.0 ± 0.0(平均値
±SD),2.8 ± 0.7, 3.4 ± 0.7,再灌流 24 時間後では 4.0 ± 0.0,1.8 ± 0.9,2.2 ±
0.9,再灌流 48 時間後では 4.0 ± 0.0,1.5 ± 0.9,1.9 ± 0.6,再灌流 168 時間後では
4.0 ± 0.0,1.1 ± 0.8, 1.3 ± 1.0 であった。IV 群では,再灌流 8 時間,24 時間,
48 時間,168 時間後でいずれも 4.0 ± 0.0 と後肢運動機能は温存され,遅発性神経障害を
認めなかった。再灌流 48 時間後で,正常な運動神経細胞数は,I 群(54.1 ± 3.2)と IV
群(53.7 ± 3.1)は,II 群(32.8 ± 4.3)と III 群(36.3 ± 3.9)と比較して有意に
多かった(P < 0.001)。マロンジアルデヒド濃度は I 群(19.8 ± 5.9 nmol/mL)と IV 群
(22.6 ± 5.9 nmol/mL)は,II 群(64.8 ± 5.2 nmol/mL)と III 群(60.9 ± 7.1 nmol/mL)
と比較して有意に低かった(P < 0.001)。再灌流 168 時間後では,正常な運動神経細胞数
は,I 群(52.9 ± 2.4)と IV 群(50.8 ± 2.6)は,II 群(22.4 ± 5.5)と III 群(25.9
± 6.3)と比較して有意に多かった(P < 0.001)。マロンジアルデヒド濃度は I 群(20.7 ±
5.2 nmol/mL)と IV 群(23.4 ± 5.1 nmol/mL)は,II 群(68.9 ± 6.5 nmol/mL)と III
群(61.6 ± 7.3 nmol/mL)と比較して有意に低かった(P < 0.001)。
以上の結果から,本論文は常温で完全な対麻痺を作成できる 30 分間大動脈遮断のウサ
ギモデルの実験で,経脊椎冷却パッドまたは分節遮断した大動脈内への冷却エダラボンの
注入によって脊髄傷害は部分的に軽減されたが,これらの併用によって脊髄はより効果的
に保護されることを示した。このことは大動脈外科,特に胸腹部大動脈瘤手術の対麻痺軽
減に資すること大である。よって審査委員会委員全員は,本論文が著者に博士(医学)の
学位を授与するに十分な価値あるものと認めた。
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